説明

GaN基板の保存方法、保存された基板ならびに半導体デバイスおよびその製造方法

【課題】特性のよい半導体デバイスの製造が可能なGaN基板の保存方法、保存された基板ならびに半導体デバイスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】GaN基板1を酸素濃度が18体積%および/または水蒸気濃度が12g/m3以下の雰囲気下で保存する。GaN基板の第1の主面の表面粗さRaを20nm以下、第2の主面の表面粗さRaを20μm以下とする。また、GaN基板の主面と(0001)面とのなすオフ角が、<1−100>方向に0.05°以上2°以下であり、<11−20>方向に0°以上1°以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造に用いられるGaN基板の保存方法、その保存方法で保存されたGaN基板、そのGaN基板上に少なくとも1層の半導体層が形成されている半導体デバイスおよびその半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN基板は、発光ダイオード(Light Emitting Diode、以下LEDという)、レーザダイオード(Laser Diode、以下LDという)などの半導体デバイスに広く用いられている。
【0003】
ここで、GaN基板を製造する工程と製造されたGaN基板を用いて半導体デバイスを製造する工程とは通常別工程であり、製造されたGaN基板は、一定期間保存されその後半導体デバイス製造のために用いられる。このため、製造されたGaN基板を収納し保存するための方法が提案されている(たとえば、特許文献1を参照)。
【0004】
しかし、GaN基板の従来の保存方法は、クリーンな大気中の雰囲気下で収納され保存されるものであるため、長期の保存により、GaN基板の表面が酸化され、特性のよい半導体デバイスを製造することが困難となっていた。
【特許文献1】特開2000−355392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決し、特性のよい半導体デバイスの製造が可能なGaN基板の保存方法、その保存方法で保存されたGaN基板、そのGaN基板上に少なくとも1層の半導体層が形成されている半導体デバイスおよびその半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、GaN基板を酸素濃度が18体積%以下および/または水蒸気濃度が25g/m3以下の雰囲気下で保存するGaN基板の保存方法である。
【0007】
本発明にかかるGaN基板の保存方法において、酸素濃度を5体積%以下および/または水蒸気濃度を17g/m3以下とすることができる。
【0008】
また、本発明にかかる保存方法により保存されるGaN基板において、第1の主面の表面粗さRaを20nm以下とすることができ、第2の主面の表面粗さRaを20μm以下とすることができる。また、第1の主面の表面粗さRaを5nm以下とすることができ、第2の主面の表面粗さRaを10μm以下とすることができる。
【0009】
また、本発明にかかるGaN基板の保存方法において、GaN基板の主面と(0001)面とのなすオフ角は、<1−100>方向に0.05°以上2°以下、<11−20>方向に0°以上1°以下とすることができる。また、かかるオフ角は、<1−100>方向に0.1°以上0.8°以下、<11−20>方向に0°以上0.6°以下とすることができる。ここで、主面とは第1の主面および第2の主面の両方を意味する。
【0010】
また、本発明は、上記保存方法によって保存されたGaN基板である。また、本発明は、上記保存方法によって保存されたGaN基板の第1の主面上に少なくとも1層の半導体層が形成されている半導体デバイスである。また、本発明は、上記保存方法によって保存されたGaN基板を基板として選択し、前記GaN基板の前記第1の主面上に少なくとも1層の半導体層を成長させる工程を含む半導体デバイスの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特性のよい半導体デバイスの製造が可能なGaN基板の保存方法、その保存方法で保存されたGaN基板、そのGaN基板上に少なくとも1層の半導体層が形成されている半導体デバイスおよびその半導体デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施形態1)
本発明にかかるGaN基板の保存方法は、GaN基板を酸素濃度が18体積%以下および/または水蒸気濃度が25g/m3以下の雰囲気下で保存することを特徴とする。
【0013】
GaN基板を酸素濃度が18体積%以下および/または水蒸気濃度が25g/m3以下の雰囲気下で保存することにより、GaN基板の表面の酸化を抑制することができ、特性のよい半導体デバイスの製造が可能となる。かかる観点から、酸素濃度が5体積%以下および/または水蒸気濃度が17g/m3以下であることが好ましく、酸素濃度が1体積%以下および/または水蒸気濃度が4g/m3以下であることがより好ましい。
【0014】
ここで、GaN基板を保存する雰囲気の酸素濃度を18体積%以下および/または水蒸気濃度を25g/m3以下にする方法には、特に制限はなく、たとえば、図1に示すような保存装置10を用いることができる。ここで、図1の保存装置10は、ガス導入管20、ガス導入弁29、ガス排出管40およびガス排出弁41を備えている。
【0015】
GaN基板を保存する雰囲気の酸素濃度を18体積%以下に低減する方法としては、たとえば、図1を参照して、保存装置10内にGaN基板1を配置して、ガス導入管20およびガス導入弁29を経由して保存装置10内に酸素濃度が18体積%以下のガス21を導入し、保存装置10内からガス排出管40およびガス排出弁49を経由して酸素濃度が18体積%より高いガス41を排出する方法(方法A−1という、以下同じ)がある。また、保存装置10内にGaN基板1とともに脱酸素剤31を配置する方法(方法A−2という、以下同じ)がある。また、方法A−1および方法A−2を併用することも可能である。
【0016】
ここで、酸素濃度が18体積%以下のガスは、特に制限はないが、GaN基板の表面と化学反応を起こさない観点から、酸素濃度が18体積%以下の窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスなどが好ましい。また、脱酸素剤は、特に制限はないが、GaN基板の表面と化学反応を起こさない観点から、活性酸化鉄、活性炭などが好ましい。
【0017】
また、GaN基板を保存する雰囲気の水蒸気濃度を25g/m3以下に低減する方法としては、たとえば、図1を参照して、保存装置10内にGaN基板1を配置して、この保存装置10内に水蒸気濃度が25g/m3以下のガス22を導入し、保存装置10から水蒸気濃度が25g/m3より高いガス42を排出する方法(方法B−1という、以下同じ)また、保存装置10内にGaN基板1とともに脱水剤32を配置する方法(方法B−2という、以下同じ)がある。また、方法B−1および方法B−2を併用することも可能である。
【0018】
ここで、水蒸気濃度が25g/m3以下のガスは、特に制限はないが、GaN基板の表面と化学反応を起こさない観点から、不純物としての水蒸気の濃度が1体積%以下の窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスなどが好ましい。また、脱水剤は、特に制限はないが、GaN基板の表面と化学反応を起こさない観点から、シリガゲル、活性炭などが好ましい。
【0019】
また、GaN基板を保存する雰囲気の酸素濃度を18体積%以下および水蒸気濃度を25g/m3以下とする方法としては、保存装置10内にGaN基板1を配置して、この保存装置10内に酸素濃度が18体積%以下かつ水蒸気濃度が25g/m3以下の低いガス23を導入し酸素濃度が18体積%より高くまたは水蒸気濃度が25g/m3より高いガス43を排出する方法(方法C−1)がある。また、保存装置10内にGaN基板1とともに脱酸素剤31と脱水剤32とを配置する方法(方法C−2という、以下同じ)がある。また、方法C−1および方法C−2を併用することも可能である。
【0020】
ここで、酸素濃度および水蒸気濃度がそれぞれ18体積%以下および25g/m3以下のガスは、特に制限はないが、GaN基板の表面と化学反応を起こさない観点から、酸素および水蒸気のそれぞれの濃度が18体積%以下および25g/m3以下の窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスなどが好ましい。
【0021】
また、酸素濃度の測定は、特に制限はないが、ガルバニ式酸素濃度計などにより行なうことができる。また、水蒸気濃度の測定は、特に制限はないが、誘電率水分計、カールフィッシャー式水分計などにより行なうことができる。
【0022】
また、GaN基板を保存する雰囲気の温度は、特に制限はないが、GaN基板の表面との化学反応を起こさない観点から、60℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。また、結露を防止する観点から、5℃以上が好ましく、10℃℃以上がより好ましい。
【0023】
また、実施形態1の保存方法において保存されるGaN基板は、保存装置内の酸素および/または水蒸気とGaN基板の表面との反応の抑制、またGaN基板の表面への酸素および/または水蒸気の吸着量の低減の観点から、第1の主面の表面粗さRaが20nm以下で第2の主面の表面粗さRaが20μm以下であることが好ましい。かかる観点から、第1の主面の表面粗さRaが5nm以下で第2の主面の表面粗さRaが10μm以下であることがより好ましい。GaN基板の主面(第1の主面および第2の主面の両方を意味する、以下同じ)の表面粗さRaと、GaN基板の主面に対する酸素および/または水蒸気の反応性ならびに吸着性との関係は、明らかではないが、一つの原因として、表面粗さRaを小さくすることにより表面積が減少することが関係しているものと考えられる。ここで、第1の主面とはその上に半導体層をエピタキシャル成長させる主面をいい、第2の主面とは上記第1の主面と反対側の主面をいう。また、表面粗さRaとは、粗さ曲面からその平均面の方向に所定の基準面積を抜き取り、この抜き取り部分の平均面から測定曲面までの偏差の絶対値を合計してそれを基準面積で平均した値をいう。かかる表面粗さRaは、非接触式光干渉計、3D−SEM(立体映像走査型電子顕微鏡)を用いて測定することができる。
【0024】
また、実施形態1の保存方法において保存されるGaN基板について、保存装置内の酸素および/または水蒸気とGaN基板の表面との反応の抑制、またGaN基板の表面への酸素および/または水蒸気の吸着量の低減の観点から、GaN基板の主面と(0001)面とのなすオフ角は、<1−100>方向に0.05°以上2°以下であり、<11−20>方向に0°以上1°以下であることが好ましい。かかる観点から、上記オフ角がは<1−100>方向に0.1°以上0.8°以下であり、<11−20>方向に0°以上0.6°以下であることがより好ましい。GaN基板の主面と(0001)面とのなすオフ角と、GaN基板の主面に対する酸素および/または水蒸気の反応性ならびに吸着性との関係は、明らかではないが、一つの原因として、所定のオフ角を有することにより、GaN基板の主面において酸素および/または水蒸気と結合できる点の数が変化することが関係しているものと考えられる。GaN基板の主面と(0001)面とのなすオフ角は、XRD(X線回折)法により測定することができる。
【0025】
なお、上記実施形態1において、図1を参照して、GaN基板1を収納した保存装置1内の雰囲気を本願発明における保存条件(たとえば、酸素濃度が18体積%以下および/または水蒸気濃度が25g/m3以下)とした中で、酸素および水蒸気を遮断できる保存容器(図示せず)(たとえば、アルミニウム製の袋など)にGaN基板1を封入することにより、GaN基板1を保存することもできる。また、保存容器により密封されたGaN基板は、保存装置1から取り出して保存することも可能である。
【0026】
(実施形態2)
本発明にかかる半導体デバイスは、図2を参照して、実施形態1の方法で保存されたGaN基板1の第1の主面上に少なくとも1層の半導体層210が形成されている。また、本発明にかかる半導体デバイスの製造方法は、図2を参照して、実施形態1の方法で保存されたGaN基板1を基板として選択し、このGaN基板1上に少なくとも1層の半導体層210を成長させる工程を含む。
【0027】
実施形態1の保存方法で保存されたGaN基板は表面の酸化が抑制されており、かかるGaN基板を基板上に少なくとも1層の半導体層6を成長させることにより、特性の高い半導体デバイスが得られる。
【0028】
GaN基板上に成長させる半導体層には、特に制限はないが、GaN基板上には、結晶格子の整合性が高い観点から、AlxGayIn1-x-yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)などのIII族窒化物層が好ましい。また、半導体層の成長方法には、特に制限はないが、GaN基板上に半導体層を容易にエピタキシャル成長させる観点から、HVPE(ハイドライド気相成長)法、MOCVD(有機金属化学気相堆積)法、MBE(分子線エピタキシ)法などが好ましく用いられる。
【0029】
図2を参照して、より具体的には、本実施形態の半導体デバイス200は、GaN基板1上に、半導体層210として、n型GaN層211、In0.2Ga0.8N層212、Al0.2Ga0.8N層213、p型GaN層214が順次形成され、さらにGaN基板11の下面(半導体層210が形成されていない面)にn側電極221、p型GaN層214の上面にはp側電極222が形成されており、発光230を発する。
【実施例】
【0030】
本発明にかかるGaN基板の保存方法およびこの保存方法により保存されたGaN基板を基板として選択し、前記GaN基板上に少なくとも1層の半導体層を成長させる工程を含む半導体デバイスについて、以下の実施例および比較例に基づいてさらに具体的に説明する。
【0031】
(比較例1)
図1を参照して、HVPE法により成長させた直径50.8mm×厚さ400μm、第1の主面の表面粗さRaが33nm、第2の主面の表面粗さRaが32.1μm、主面と(0001)面とのなすオフ角が、<1−100>方向に2.5°、<11−20>方向に1.2°のGaN基板1を、保存装置10に収納し、ガス導入管20およびガス導入弁29を介して酸素濃度が20体積%で水蒸気濃度が30g/m3の窒素および酸素の混合ガスを保存装置10内に導入し、保存装置10内の酸素濃度および水蒸気濃度の高いガスをガス排出管40およびガス排出弁49を介して排出することにより、保存装置10内の雰囲気の酸素濃度を20体積%、水蒸気濃度を30g/m3とした。かかる保存装置10中で、GaN基板1をウエハトレイ(図示せず)に入れた後、GaN基板1をウエハトレイとともにアルミニウム製の袋(図示せず)に封入した後、35℃で6ヶ月間保存した。
【0032】
次に、図2を参照して、上記の条件で6ヶ月間保存したGaN基板1上に、MOCVD法により、半導体層210として、厚さ5μmのn型GaN層211、厚さ3nmのIn0.2Ga0.8N層212、厚さ60nmのAl0.2Ga0.8N層213、厚さ150nmのp型GaN層214を順次成長させた。次いで、p型GaN層24の上面に厚さ100nmのp側電極222を形成した後、GaN基板の下面(半導体層210が形成されていない面)の中央部に直径80μm×厚さ100nmのn側電極221を形成し、500μm×500μmの大きさのチップに分割して、半導体デバイス200としてLEDを得た。比較例1のLEDのピーク波長450nmにおける発光強度を分光光度計により測定し、かかるLED10個における平均発光強度を1として、以下の比較例2および実施例1〜9のLEDの相対発光強度を求めた。結果を表1にまとめた。
【0033】
(比較例2)
図1を参照して、HVPE法により成長させた直径50.8mm×厚さ400μm、第1の主面の表面粗さRaが17nm、第2の主面の表面粗さRaが15μm、主面と(0001)面とのなすオフ角が、<1−100>方向に1.1°、<11−20>方向に0.8°のGaN基板1を、保存装置10に収納し、ガス導入管20およびガス導入弁29を介して酸素濃度が20体積%で水蒸気濃度が30g/m3の窒素および酸素の混合ガスを保存装置10内に導入し、保存装置10内の酸素濃度および水蒸気濃度の高いガスをガス排出管40およびガス排出弁49を介して排出することにより、保存装置10内の雰囲気の酸素濃度を20体積%、水蒸気濃度を30g/m3とした。かかる保存装置10中で、GaN基板1をウエハトレイ(図示せず)に入れた後、GaN基板1をウエハトレイとともにアルミニウム製の袋(図示せず)に封入した後、35℃で6ヶ月間保存した。その後、比較例1と同様にして、半導体デバイスであるLEDを作製した。得られたLEDの相対発光強度は、比較例1のLEDの相対発光強度1.0に対して、1.01であった。結果を表1にまとめた。
【0034】
(実施例1)
酸素濃度が18体積%で水蒸気濃度が25g/m3の窒素および酸素の混合ガスを保存装置10内に導入し、保存装置内の雰囲気の酸素濃度を18体積%、水蒸気濃度を25g/m3とした以外は、比較例1と同様にして、比較例1と同じ面粗さRaおよびオフ角を有するGaN基板をGaN基板を保存し、半導体デバイスであるLEDを作製した。得られたLEDの相対発光強度は、比較例1のLEDの相対発光強度1.0に対して、1.05であった。結果を表1にまとめた。
【0035】
(実施例2)
保存するGaN基板が、第1の主面が方面粗さRaが17nm、第2の主面の表面粗さが15μm、主面と(0001)面とのなすオフ角が、<1−100>方向に2.5°、<11−20>方向に1.2°である以外は、実施例1と同様の条件でGaN基板を保存し、半導体デバイスであるLEDを作製した。得られたLEDの相対発光強度は、比較例1のLEDの相対発光強度1.0に対して、1.05であった。結果を表1にまとめた。
【0036】
(実施例3)
保存するGaN基板が、第1の主面が方面粗さRaが33nm、第2の主面の表面粗さが32.1μm、主面と(0001)面とのなすオフ角が、<1−100>方向に1.1°、<11−20>方向に0.8°である以外は、実施例1と同様の条件でGaN基板を保存し、半導体デバイスであるLEDを作製した。得られたLEDの相対発光強度は、比較例1のLEDの相対発光強度1.0に対して、1.12であった。結果を表1にまとめた。
【0037】
(実施例4)
基板の第1の主面の表面粗さRaが17nm、第2の主面の表面粗さRaが15μm、主面と(0001)面とのなすオフ角が、<1−100>方向に1.1°、<11−20>方向に0.8°であるGaN基板を、酸素濃度が3体積%で水蒸気濃度が12g/m3の窒素および酸素の混合ガスを保存装置内に導入し、保存装置内の雰囲気の酸素濃度を3体積%、水蒸気濃度を12g/m3とした以外は、比較例1と同様にしてGaN基板を保存し、半導体デバイスであるLEDを作製した。得られたLEDの相対発光強度は、比較例1のLEDの相対発光強度1.0に対して、1.15であった。結果を表1にまとめた。
【0038】
(実施例5)
基板の第1の主面の表面粗さRaが2nm、第2の主面の表面粗さRaが2.4μm、主面と(0001)面とのなすオフ角が、<1−100>方向に0.5°、<11−20>方向に0.2°であるGaN基板を、酸素濃度が0.6体積%で水蒸気濃度が1g/m3の窒素および酸素の混合ガスを保存装置内に導入し、保存装置内の雰囲気の酸素濃度を0.6体積%、水蒸気濃度を1g/m3とした以外は、比較例1と同様にしてGaN基板を保存し、半導体デバイスであるLEDを作製した。得られたLEDの相対発光強度は、比較例1のLEDの相対発光強度1.0に対して、1.19であった。結果を表1にまとめた。
【0039】
(実施例6)
基板の第1の主面の表面粗さRaが2nm、第2の主面の表面粗さRaが2.4μm、主面と(0001)面とのなすオフ角が、<1−100>方向に0.5°、<11−20>方向に0.2°であるGaN基板を、酸素濃度が0.6体積%で水蒸気濃度が30g/m3の窒素および酸素の混合ガスを保存装置内に導入し、保存装置内の雰囲気の酸素濃度を0.6体積%、水蒸気濃度を30g/m3とした以外は、比較例1と同様にしてGaN基板を保存し、半導体デバイスであるLEDを作製した。得られたLEDの相対発光強度は、比較例1のLEDの相対発光強度1.0に対して、1.09であった。結果を表1にまとめた。
【0040】
(実施例7)
基板の第1の主面の表面粗さRaが2nm、第2の主面の表面粗さRaが2.4μm、主面と(0001)面とのなすオフ角が、<1−100>方向に0.5°、<11−20>方向に0.2°であるGaN基板を、酸素濃度が20体積%で水蒸気濃度が1g/m3の窒素および酸素の混合ガスを保存装置内に導入し、保存装置内の雰囲気の酸素濃度を20体積%、水蒸気濃度を1g/m3とした以外は、比較例1と同様にしてGaN基板を保存し、半導体デバイスであるLEDを作製した。得られたLEDの相対発光強度は、比較例1のLEDの相対発光強度1.0に対して、1.12であった。結果を表1にまとめた。
【0041】
(実施例8)
基板の第1の主面の表面粗さRaが2nm、第2の主面の表面粗さRaが2.4μm、主面と(0001)面とのなすオフ角が、<1−100>方向に0.1°、<11−20>方向に0.05°であるGaN基板を、酸素濃度が0.6体積%で水蒸気濃度が1g/m3の窒素および酸素の混合ガスを保存装置内に導入し、保存装置内の雰囲気の酸素濃度を0.6体積%、水蒸気濃度を1g/m3とした以外は、比較例1と同様にしてGaN基板を保存し、半導体デバイスであるLEDを作製した。得られたLEDの相対発光強度は、比較例1のLEDの相対発光強度1.0に対して、1.19であった。結果を表1にまとめた。
【0042】
(実施例9)
基板の第1の主面の表面粗さRaが2nm、第2の主面の表面粗さRaが2.4μm、主面と(0001)面とのなすオフ角が、<1−100>方向に0.7°、<11−20>方向に0.6°であるGaN基板を、酸素濃度が0.6体積%で水蒸気濃度が1g/m3の窒素および酸素の混合ガスを保存装置内に導入し、保存装置内の雰囲気の酸素濃度を0.6体積%、水蒸気濃度を1g/m3とした以外は、比較例1と同様にしてGaN基板を保存し、半導体デバイスであるLEDを作製した。得られたLEDの相対発光強度は、比較例1のLEDの相対発光強度1.0に対して、1.19であった。結果を表1にまとめた。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の結果を図3にまとめた。図3は、酸素濃度(体積%)を横軸とし、水蒸気濃度(g/m3)を縦軸とする座標中に、比較例1,2(白丸の点)および実施例1〜9(黒丸の点)をプロットしたものである。また、各点における数値は、比較例1,2、実施例1〜9のいずれかのLEDの相対発光強度を示す。
【0045】
表1および図3の比較例1,2および実施例1〜9から明らかなように、酸素濃度が18体積%以下および/または水蒸気濃度が25g/m3以下の雰囲気下で保存したGaN基板上に少なくとも1層以上の半導体層が形成されている半導体デバイスは、酸素濃度が18体積%より高くおよび水蒸気濃度が25g/m3より高い雰囲気下で保存したGaN基板上に少なくとも1層以上の半導体層が形成されている半導体デバイスに比べて、その特性が向上している。また、実施例4〜9から明らかなように、GaN基板の保存雰囲気を酸素濃度が5体積%以下および/または水蒸気濃度を17g/m3以下とすることにより半導体デバイスの特性はより向上している。また、GaN基板の第1の主面の表面粗さRaを20nm以下、第2の主面の表面粗さRaを20μm以下とすること、または、GaN基板の主面と(0001)面とのなすオフ角が、<1−100>方向に0.05°以上2°以下であり、<11−20>方向に0°以上1°以下とすることによっても半導体デバイスの特性は向上している。
【0046】
なお、上記実施例および比較例は、GaN基板の保管期間を6ヶ月として行なったが、保管期間が6ヶ月未満であっても、6ヶ月を超えても同様の効果が得られることは確認済みである。
【0047】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明にかかるGaN基板の保存方法の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明にかかる半導体デバイスの製造方法の一実施形態を示す模式断面図でる。
【図3】GaN基板の保存雰囲気の酸素濃度および水蒸気濃度と、半導体デバイスの特性との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 GaN基板、10 保存装置、20 ガス導入管、29 ガス導入弁、31 脱酸素剤、32 脱水剤、21,22,23,41,42,43 ガス、40 ガス排出管、49 ガス排出弁、200 半導体デバイス、210 半導体層、211 n型GaN層、212 In0.2Ga0.8N層、213 Al0.2Ga0.8N層、214 p型GaN層、221 n側電極、222 p側電極、230 発光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaN基板を酸素濃度が18体積%以下および/または水蒸気濃度が25g/m3以下の雰囲気下で保存するGaN基板の保存方法。
【請求項2】
前記酸素濃度が5体積%以下および/または前記水蒸気濃度が17g/m3以下である請求項1に記載のGaN基板の保存方法。
【請求項3】
前記GaN基板において、第1の主面の表面粗さRaが20nm以下であり、第2の主面の表面粗さRaが20μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のGaN基板の保存方法。
【請求項4】
前記第1の主面の表面粗さRaが5nm以下であり、前記第2の主面の表面粗さRaが10μm以下であることを特徴とする請求項3に記載のGaN基板の保存方法。
【請求項5】
前記GaN基板の主面と(0001)面とのなすオフ角が、<1−100>方向に0.05°以上2°以下であり、<11−20>方向に0°以上1°以下であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のGaN基板の保存方法。
【請求項6】
前記オフ角が、<1−100>方向に0.1°以上0.8°以下であり、<11−20>方向に0°以上0.6°以下であることを特徴とする請求項5に記載のGaN基板の保存方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかの保存方法で保存されたGaN基板。
【請求項8】
請求項7のGaN基板の前記第1の主面上に少なくとも1層の半導体層が形成されている半導体デバイス。
【請求項9】
請求項7のGaN基板を基板として選択し、前記GaN基板の前記第1の主面上に少なくとも1層の半導体層を成長させる工程を含む半導体デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−335583(P2007−335583A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164832(P2006−164832)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】