説明

Ge−Cr合金スパッタリングターゲットの製造方法

【課題】相変化光ディスクの記録層と保護層との間中間層として、リアクティブスパッタリングによって成膜されるGeCrN系層の成膜速度及び膜組成のばらつきを抑制し、製品歩留まりを上げることができるGe−Cr合金スパッタリングターゲット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】Cr5〜50at%を含有するGe−Cr合金スパッタリングターゲットにおいて、相対密度が95%以上であることを特徴とするGe−Cr合金スパッタリングターゲット及び平ふるい下75μm以下のCr粉と、ふるい下250μm以下でありかつBET比表面積0.4m/g以下であるGe粉を均一に分散混合させた後、焼結することを特徴とするGe−Cr合金スパッタリングターゲットの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ge−Cr合金スパッタリングターゲットを用いてリアクティブスパッタリングによりGeCrN系薄膜を形成する際に、成膜速度のばらつきとそれに伴う組成ずれを抑制でき、安定したスパッタリング特性を得ることができるGe−Cr合金スパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ヘッドを必要とせずに記録・再生ができる高密度記録光ディスク技術が開発され、急速に関心が高まっている。この光ディスクは再生専用型、追記型、書き換え型の3種類に分けられるが、特に追記型又は書き換え型で使用されている相変化方式が注目されている。
相変化光ディスクは、基板上の記録薄膜をレーザー光の照射によって加熱昇温させ、その記録薄膜の構造に結晶学的な相変化(アモルファス⇔結晶)を起こさせて情報の記録・再生を行うものであり、より具体的にはその相間の光学定数の変化に起因する反射率の変化を検出して情報の再生を行うものである。
【0003】
上記の相変化は1〜数μm程度の径に絞ったレーザー光の照射によって行なわれる。この場合、例えば1μmのレーザービームが10m/sの線速度で通過するとき、光ディスクのある点に光が照射される時間は100nsであり、この時間内で上記相変化と反射率の検出を行う必要がある。
また、上記結晶学的な相変化すなわちアモルファスと結晶との相変化を実現する上で、溶融と急冷が光ディスクの相変化記録層だけでなく周辺の誘電体保護層やアルミニウム合金の反射膜にも繰返し付与されることになる。
【0004】
このようなことから相変化光ディスクは、Ge−Sb−Te系等の記録薄膜層の両側を硫化亜鉛−ケイ酸化物(ZnS・SiO)系の高融点誘電体の保護層で挟み、さらにアルミニウム合金反射膜を設けた四層構造となっている。
このなかで反射層と保護層はアモルファス部と結晶部との吸収を増大させ反射率の差が大きい光学的機能が要求されるほか、記録薄膜の耐湿性や熱による変形の防止機能、さらには記録の際の熱的条件制御という機能が要求される(例えば、非特許文献1参照)。
このように、高融点誘電体の保護層は昇温と冷却による熱の繰返しストレスに対して耐性をもち、さらにこれらの熱影響が反射膜や他の箇所に影響を及ぼさないようにし、かつそれ自体も薄く、低反射率でかつ変質しない強靭さが必要である。この意味において誘電体保護層は重要な役割を有する。
【0005】
一般に、DVD−RAM等の相変化光ディスクは、書き換え回数が10〜10回を保証しているが、上記の記録層を保護する目的で使用していた硫化亜鉛−ケイ酸化物(ZnS・SiO)系層からのS等の拡散により書き換え特性が劣化するという問題が出てきた。
この解決方法として、記録層と保護層との間に中間層を設けることが行なわれており、特にその中間層用材料としてGeCrN系の材料が提案されている。
GeCrN系の中間層を形成するに際しては、通常Ge−Cr合金ターゲットを使用し、窒素ガス雰囲気中でのリアクティブスパッタリング(反応性スパッタリング)が行なわれている。
しかし、従来のターゲットでは成膜速度のばらつきがあり、これが原因で膜組成のずれを引き起こし不良品となって歩留まりが低下するという問題が発生した。
【0006】
従来の技術としては、Ge−Cr系等の材料を使用し、厚さ方向と直交する組成不連続面を設定し、スパッタリング開始する側の面である上面と組成不連続面との間を第1の領域とし、さらに使用開始直後から複数の成分を所望の割合で含む薄膜が形成されるように、第1領域部中の各成分をスパッタ率の低いものほど上記薄膜の割合に比較して多くなるように設定した技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、従来のGe−Cr系等のスパッタリングターゲットとして、ターゲット表面の面方位をX線回折法で測定した際に、(111)面のピーク強度に対する(220)面のピーク強度の比(220)/(111)が0.3以上とされ、さらにこの(220)/(111)ピーク強度は、ターゲット表面全体としてのバラツキが±30%以内とされるターゲットが開示されている(特許文献2参照)。
また、従来のGe−Cr系等のスパッタリングターゲットとして、ターゲットを構成する高純度Ge又はGe合金は、Ag含有量及びAu含有量がそれぞれ5ppm以下であり、さらに同Ag含有量及びAu含有量のバラツキがそれぞれ30%以内であるターゲットが開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−178724号公報
【特許文献2】特開2002−38258号公報
【特許文献3】特開2002−69624号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「光学」26巻1号 P.9〜15
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、相変化光ディスクの記録層と保護層との間の中間層として、リアクティブスパッタリングによって成膜されるGeCrN系層の成膜速度及び膜組成のばらつきを抑制し、製品歩留まりを上げることができるGe−Cr合金スパッタリングターゲット及びその製造方法得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、ターゲット密度、さらには密度、組成のばらつき等を最適条件にすることにより、成膜速度及び膜組成のばらつきを抑制し、製品歩留まりを上げることができるとの知見を得た。
本発明はこの知見に基づき、
1.Cr5〜50at%を含有するGe−Cr合金スパッタリングターゲットにおいて、相対密度が95%以上であることを特徴とするGe−Cr合金スパッタリングターゲット
2.相対密度が97%以上であることを特徴とする上記1記載のGe−Cr合金スパッタリングターゲット
3.ターゲット内の密度バラツキが±1.5%以内であることを特徴とする上記1又は2記載のGe−Cr合金スパッタリングターゲット
4.ターゲット内の組成バラツキが±0.5%以内であることを特徴とする上記1〜3のそれぞれに記載のGe−Cr合金スパッタリングターゲット
5.X線回折ピークにおいて、2θが20°〜30°におけるGe相の最大ピーク強度Aと30°〜40°におけるGeCr化合物相の最大ピーク強度Bの比B/Aが0.18以上であることを特徴とする上記1〜4のそれぞれに記載のGe−Cr合金スパッタリングターゲット
を提供する。
【0012】
本発明はさらに
6.75μm以下のCr粉と、250μm以下でありかつBET比表面積0.4m/g以下であるGe粉を均一に分散混合させた後、焼結することを特徴とするGe−Cr合金スパッタリングターゲットの製造方法
7.75μm以下のCr粉と、250μm以下でありかつBET比表面積0.4m/g以下であるGe粉を均一に分散混合させた後、焼結することを特徴とする上記1〜5のそれぞれに記載のGe−Cr合金スパッタリングターゲットの製造方法
8.BET比表面積0.1〜0.4m/gであるGe粉を均一に分散混合させた後、焼結することを特徴とする上記6又は7記載のGe−Cr合金スパッタリングターゲットの製造方法
9.ホットプレスを使用し、焼結温度760〜900°C、面圧75〜250kg/cmの条件で焼結することを特徴とする上記6〜8のそれぞれに記載のGe−Cr合金スパッタリングターゲットの製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高密度Ge−Cr合金スパッタリングターゲットを用いてリアクティブスパッタリングによりGeCrN系薄膜を形成する場合、成膜速度のばらつきとそれに伴う組成ずれを効果的に抑制でき、安定したスパッタリング特性を得ることができるという優れた効果を有する。これによって、不良品の発生率を著しく低減させることができる。またスパッタリングの際に、発生するパーティクルやノジュールを低減でき、膜厚均一性も向上できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】Ge粉の比表面積とGeCrターゲットの相対密度%との相関を示す図(グラフ)である。
【図2】Cr粒径(ふるい下)とGeCrターゲットの相対密度%との相関を示す図(グラフ)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のスパッタリングターゲットの特徴は、Cr5〜50at%を含有するGe−Cr合金スパッタリングターゲットの相対密度が95%以上であること、さらには相対密度が97%以上であることである。
この高密度Ge−Cr合金ターゲットは、75μm以下(「ふるい下75μm」本願明細書中、同様に使用する)のCr粉と、250μm以下(「ふるい下250μm」本願明細書中、同様に使用する)、BET比表面積0.4m/g以下、好ましくは0.3m/g以下であるGe粉を均一に分散混合させた後、焼結することによって製造することができる。
【0016】
このような高密度Ge−Cr合金ターゲットは、リアクティブスパッタリングによって成膜されるGeCrN系薄膜の成膜速度及び膜組成のばらつきを抑制し、不良品の発生を著しく低減させることができる。
そしてこのようにして形成されるGeCrN系薄膜は、相変化光ディスクの記録層と保護層との中間層として極めて有効である。
Ge粉の比表面積とGeCrターゲットの相対密度%との関係を図1に示す。また、Cr粒径とGeCrターゲットの相対密度%との関係を図2に示す。これらは、それぞれの粉末のふるい下で使用した場合のターゲットの相関図である。また、これらはいずれもGe−20at%Cr、800°C×150kg/cmの条件ホットプレスした場合である。
【0017】
Ge−Cr合金スパッタリングターゲットの相対密度が95%未満であると、成膜速度及び膜組成のばらつきが増加し、製品歩留まりが低下する。
また、ふるい下75μmを超えるCr粉、ふるい下250μmを超えかつBET比表面積0.4m/gを超えるGe粉を使用して焼結した場合、相対密度95%以上が達成できず、同様に成膜速度及び膜組成のばらつきが増加し、製品歩留まりが低下する。
また、Ge−Cr合金スパッタリングターゲット内の密度バラツキが±1.5%以内であること、さらにはターゲット内の組成バラツキが±0.5%以内であることが望ましい。これによって成膜速度及び膜組成のばらつきをさらに改善することができる。
Ge−Cr合金スパッタリングターゲット内には、GeCr化合物相及びGe相が存在し、X線回折ピークにおいて、2θが20°〜30°におけるGe相の最大ピーク強度Aと30°〜40°におけるGeCr化合物相の最大ピーク強度Bの比B/Aが0.18以上であることが望ましい。これによって、均一性をさらに改善することができる。
【0018】
Ge−Cr合金スパッタリングターゲットの製造に際しては、BET比表面積0.1〜0.4m/gであるGe粉を均一に分散混合させた後、焼結することが望ましい。
さらに、上記焼結に際しては、ホットプレスを使用し、焼結温度760〜900°C、面圧75〜250kg/cmの条件で焼結することが望ましい。
これによって、さらに安定した相対密度が95%以上のGe−Cr合金スパッタリングターゲットを製造することができる。
また、スパッタリングターゲットの密度の向上は、空孔を減少させ結晶粒を微細化し、ターゲットのスパッタ面を均一かつ平滑にすることができるので、スパッタリング時のパーティクルやノジュールを低減させ、さらにターゲットライフも長くすることができるという著しい効果を有する。
【実施例】
【0019】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0020】
(実施例1)
純度5N(99.999%)、ふるい下100μmのGe粉と3N(99.9%)、ふるい下55μmのCr粉を準備し、これらの粉をGe−20at%Crとなるように調合し、これを乾式混合した後、カーボン製ダイスに充填し、温度800°C、圧力150kg/cmの条件でホットプレスを行った。
この焼結体を仕上げ加工してターゲットとした。ターゲットの相対密度は99%(100%密度で5.54g/cm)であった。このターゲットの3箇所から任意に採取したサンプルの密度をアルキメデスにより測定した。この結果を表1に示す。
【0021】
同様にターゲットの3箇所から任意に採取したサンプルの組成分析した。この結果を表2に示す。また、ターゲット内より採取したバルクサンプルの、基板と対向する面側のX線回折強度を測定した結果を表3に示す。
次に、このターゲットを用いて、窒素含有アルゴン雰囲気(Ar:N=25:50sccm)下、電力200Wの条件でリアクティブスパッタリングし、基板上に300Åの厚さにGeCrN膜を形成した。膜厚及び透過率のばらつきの測定結果をそれぞれ表4及び表5に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
【表4】

【0026】
【表5】

【0027】
(実施例2)
純度5N(99.999%)、ふるい下200μmのGe粉と3N(99.9%)、ふるい下55μmのCr粉を準備し、これらの粉をGe−20at%Crとなるように調合し、これを乾式混合した後、カーボン製ダイスに充填し、温度800°C、圧力100kg/cmの条件でホットプレスを行った。
この焼結体を仕上げ加工してターゲットとした。ターゲットの相対密度は96%(100%密度で5.54g/cm)であった。このターゲットの3箇所から任意に採取したサンプルの密度をアルキメデスにより測定した。この結果を表1に示す。
【0028】
同様にターゲットの3箇所から任意に採取したサンプルの組成分析した。この結果を表2に示す。また、ターゲット内より採取したバルクサンプルの、基板と対向する面側のX線回折強度を測定した結果を表3に示す。
次に、このターゲットを用いて、窒素含有アルゴン(Ar:N=25:50sccm)雰囲気下、電力200Wの条件でリアクティブスパッタリングし、基板上に300Åの厚さにGeCrN膜を形成した。膜厚及び透過率のばらつきの測定結果をそれぞれ表4及び表5に示す。
【0029】
(実施例3)
純度5N(99.999%)、ふるい下75μmのGe粉と3N(99.9%)、ふるい下25μmのCr粉を準備し、これらの粉をGe−50at%Crとなるように調合し、これを乾式混合した後、カーボン製ダイスに充填し、温度800°C、圧力150kg/cmの条件でホットプレスを行った。
この焼結体を仕上げ加工してターゲットとした。ターゲットの相対密度は97%(100%密度で5.97g/cm)であった。このターゲットの3箇所から任意に採取したサンプルの密度をアルキメデスにより測定した。この結果を表1に示す。
【0030】
同様にターゲットの3箇所から任意に採取したサンプルの組成分析した。この結果を表2に示す。また、ターゲット内より採取したバルクサンプルの、基板と対向する面側のX線回折強度を測定した結果を表3に示す。
次に、このターゲットを用いて、窒素含有アルゴン(Ar:N=25:50sccm)雰囲気下、電力200Wの条件でリアクティブスパッタリングし、基板上に300Åの厚さにGeCrN膜を形成した。膜厚及び透過率のばらつきの測定結果をそれぞれ表4及び表5に示す。
【0031】
(比較例1)
純度5N(99.999%)、ふるい下300μmのGe粉と3N(99.9%)、ふるい下150μmのCr粉を準備し、これらの粉をGe−20at%Crとなるように調合し、これを乾式混合した後、カーボン製ダイスに充填し、温度800°C、圧力50kg/cmの条件でホットプレスを行った。
この焼結体を仕上げ加工してターゲットとした。ターゲットの相対密度は90%(100%密度で5.54g/cm)であった。このターゲットの3箇所から任意に採取したサンプルの密度をアルキメデスにより測定した。この結果を表1に示す。
【0032】
同様にターゲットの3箇所から任意に採取したサンプルの組成分析した。この結果を表2に示す。また、ターゲット内より採取したバルクサンプルの、基板と対向する面側のX線回折強度を測定した結果を表3に示す。
次に、このターゲットを用いて、窒素含有アルゴン(Ar:N=25:50sccm)雰囲気下、電力200Wの条件でリアクティブスパッタリングし、基板上に300Åの厚さにGeCrN膜を形成した。膜厚及び透過率のばらつきの測定結果をそれぞれ表4及び表5に示す。
【0033】
(比較例2)
純度5N(99.999%)、ふるい下350μmのGe粉と3N(99.9%)、ふるい下75μmのCr粉を準備し、これらの粉をGe−20at%Crとなるように調合し、これを乾式混合した後、カーボン製ダイスに充填し、温度750°C、圧力100kg/cmの条件でホットプレスを行った。
この焼結体を仕上げ加工してターゲットとした。ターゲットの相対密度は93%(100%密度で5.54g/cm)であった。このターゲットの3箇所から任意に採取したサンプルの密度をアルキメデスにより測定した。この結果を表1に示す。
【0034】
同様にターゲットの3箇所から任意に採取したサンプルの組成分析した。この結果を表2に示す。また、ターゲット内より採取したバルクサンプルの、基板と対向する面側のX線回折強度を測定した結果を表3に示す。
次に、このターゲットを用いて、窒素含有アルゴン(Ar:N=25:50sccm)雰囲気下、電力200Wの条件でリアクティブスパッタリングし、基板上に300Åの厚さにGeCrN膜を形成した。膜厚及び透過率のばらつきの測定結果をそれぞれ表4及び表5に示す。
【0035】
表1に示す実施例1〜3及び比較例1〜2から明らかなように、実施例1〜3の相対密度はいずれも95%以上であり、実施例1及び実施例3については、相対密度97%以上を達成している。そしていずれも、ターゲット内の密度ばらつきが±1.5%以内であった。
これらに対し、比較例1及び比較例2の相対密度は95%未満であり、ターゲット内の密度ばらつきが±1.5%を超えていた。
表2は組成のばらつきを示すものであるが、実施例1〜3のターゲット内の組成ばらつきはいずれも±0.5%以内であった。
これらに対し、比較例1及び比較例2のターゲット内の組成ばらつきは±0.5%を超えていた。
【0036】
表3は、実施例1〜3と比較例1〜2の前記Ge相の最大ピーク強度Aと30°〜40°におけるGeCr化合物同の最大ピーク強度Bの比B/Aを示すものであるが、実施例1〜3は本発明の条件である0.18以上を満たしている。しかし、比較例1〜2についてはB/Aが0.18未満であった。
以上の特性を持つターゲットを使用して、膜厚及び透過率のばらつきをみた評価結果を表4に示したが、実施例1〜3は膜厚及び透過率のばらつきが著しく少ないことが分かる。これに対して比較例1〜2はいずれも膜厚及び透過率のばらつきが大きく、ターゲットとして好ましくないことが分かる。
【0037】
また、本発明の高密度スパッタリングターゲットは、スパッタ時に発生するパーティクルやノジュールを低減でき、膜厚均一性も向上できる効果を有することが分かった。これに対し、比較例1〜2は密度が低いことに起因してスパッタリングの際に異常放電が発生し、そしてこれらに起因してパーティクル(発塵)やノジュールが増加するという問題があることが分かった。
以上から、本発明のスパッタリングターゲットは、相変化光ディスクの記録層と保護層との間中間層として、リアクティブスパッタリングによって成膜されるGeCrN系層の形成に極めて有効であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の高密度Ge−Cr合金スパッタリングターゲットを用いてリアクティブスパッタリングによりGeCrN系薄膜を形成する場合、成膜速度のばらつきとそれに伴う組成ずれを効果的に抑制でき、安定したスパッタリング特性を得ることができるという優れた効果を有する。これによって、不良品の発生率を著しく低減させることができる。またスパッタリングの際に、発生するパーティクルやノジュールを低減でき、膜厚均一性も向上できる効果を有するので、このようにして作製したターゲットを用いて形成した薄膜は、DVD−RAMの相変化光ディスク等の保護膜として有用である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cr5〜50at%を含有するGe−Cr合金スパッタリングターゲットにおいて、相対密度が95%以上であることを特徴とするGe−Cr合金スパッタリングターゲット。
【請求項2】
相対密度が97%以上であることを特徴とする請求項1記載のGe−Cr合金スパッタリングターゲット。
【請求項3】
ターゲット内の密度バラツキが±1.5%以内であることを特徴とする請求項1又は2記載のGe−Cr合金スパッタリングターゲット。
【請求項4】
ターゲット内の組成バラツキが±0.5%以内であることを特徴とする請求項1〜3のそれぞれに記載のGe−Cr合金スパッタリングターゲット。
【請求項5】
X線回折ピークにおいて、2θが20°〜30°におけるGe相の最大ピーク強度Aと30°〜40°におけるGeCr化合物相の最大ピーク強度Bの比B/Aが0.18以上であることを特徴とする請求項1〜4のそれぞれに記載のGe−Cr合金スパッタリングターゲット。
【請求項6】
75μm以下のCr粉と、250μm以下でありかつBET比表面積0.4m/g以下であるGe粉を均一に分散混合させた後、焼結することを特徴とするGe−Cr合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項7】
75μm以下のCr粉と、250μm以下でありかつBET比表面積0.4m/g以下であるGe粉を均一に分散混合させた後、焼結することを特徴とする請求項1〜5のそれぞれに記載のGe−Cr合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項8】
BET比表面積0.1〜0.4m/gであるGe粉を均一に分散混合させた後、焼結することを特徴とする請求項6又は7記載のGe−Cr合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項9】
ホットプレスを使用し、焼結温度760〜900°C、面圧75〜250kg/cmの条件で焼結することを特徴とする請求項6〜8のそれぞれに記載のGe−Cr合金スパッタリングターゲットの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−187651(P2009−187651A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16239(P2009−16239)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【分割の表示】特願2003−17025(P2003−17025)の分割
【原出願日】平成15年1月27日(2003.1.27)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】