ICカードモジュール、その製造方法及びICカード
【課題】 ICカードモジュールの薄型化と耐熱変形性の向上を図る。
【解決手段】 絶縁性薄板状基材13の表面と裏面の少なくとも何れか一方面に複数のインタフェース用電極12,14を貼着したモジュール基板11、補助部品、ICチップを備えたICカードモジュールにおいて、モジュール基板に、補助部品15,16とICチップ17を収容する凹部18,19,20を設け、補助部品15,16とICチップ17が、夫々の電極面がモジュール基板11の表面側に位置するように凹部18,19,20に接着固定され、補助部品15,16の電極と対応するICチップ17の電極パッド間、及び、インタフェース用電極12,14と対応するICチップ17の電極パッド間が夫々ワイヤボンディングにより電気的に接続され、補助部品15,16とICチップ17とボンディング用のワイヤ27が、モジュール基板11の表面側において樹脂封止されている。
【解決手段】 絶縁性薄板状基材13の表面と裏面の少なくとも何れか一方面に複数のインタフェース用電極12,14を貼着したモジュール基板11、補助部品、ICチップを備えたICカードモジュールにおいて、モジュール基板に、補助部品15,16とICチップ17を収容する凹部18,19,20を設け、補助部品15,16とICチップ17が、夫々の電極面がモジュール基板11の表面側に位置するように凹部18,19,20に接着固定され、補助部品15,16の電極と対応するICチップ17の電極パッド間、及び、インタフェース用電極12,14と対応するICチップ17の電極パッド間が夫々ワイヤボンディングにより電気的に接続され、補助部品15,16とICチップ17とボンディング用のワイヤ27が、モジュール基板11の表面側において樹脂封止されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード、ICカード用基材に埋め込んで使用されるICカードモジュール、及び、その製造方法に関し、特に、ICカードモジュールの薄型化や製造歩留りの向上に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道,バス等の公共交通期間の定期券や、銀行等の金融機関カード、個人認証用カードとしてICチップを搭載したICカードが実用化されている。斯かるICカードとして、接触式通信機能を有する接触型ICカード、非接触式通信機能を有する非接触型ICカード、及び、接触式と非接触式の両通信機能を併せ持ったコンビネーション型ICカードがあり、当該ICカードとしての情報処理機能を備えるICチップを内蔵したICカードモジュールをICカード用基材に埋め込んで形成される。
【0003】
例えば、非接触式通信機能を有する非接触型またはコンビネーション型ICカードでは、外部機器との間での非接触式通信機能のためのアンテナ共振回路形成するためのコンデンサや、ICチップの電源・グランド間の電圧変動抑制用の平滑用コンデンサ等は、一般にチップ型セラミックコンデンサと称する汎用補助部品をICチップ外部に外付けで用いることで、ICチップ内部に当該コンデンサ容量を作り込む必要がないことから、ICカードモジュールの製造コストを抑制することができる(例えば、下記の特許文献1、特許文献2等を参照)。
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/107263号パンフレット
【特許文献2】特開2003−67695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている非接触通信機能を有する半導体装置(ICカードモジュール)40は、図13及び図14に示すように、ICチップ17を搭載した配線基板41上に形成された電極42上に半田48を介して汎用のチップ型セラミックコンデンサ43,44が半田接合により電気的に接続され、当該コンデンサ43,44が接続した配線基板41上の電極42と対応するICチップ17上の電極パッドが相互にワイヤボンディングにより電気的に接続され、ICチップ17とチップ型セラミックコンデンサ43,44とボンディングワイヤ27を樹脂22で封止して形成されている。従って、特許文献1に開示されているICカードモジュールは、配線基板とチップ型セラミックコンデンサの各厚みの合計より厚くなるため、薄型化が困難であった。尚、図13は、従来のICカードモジュール40の内部構造及び裏面構造を透視して示す内部構造平面図(A)と、当該平面図を垂直に横切る互いに直交する2つの断面(B−B’断面とC−C’断面)における破断正面図(B)と破断側面図(C)を示す。また、図14は、図13に示す従来のICカードモジュール40のチップ型セラミックコンデンサ43,44を配線基板41上の電極42に半田接合により搭載した状態を示す要部拡大断面図である。従来のICカードモジュール40に使用されるチップ型セラミックコンデンサ43,44の電極45,46の表面には、半田接合用に錫めっき47が施されている。
【0006】
また、半田付け工法でチップ型セラミックコンデンサを配線基板上に搭載し、電気的接続するためには、配線基板を含めて環境汚染物質である鉛を含まない一般の半田を用いると、銀・銅・錫系半田ペーストの場合、溶融温度である220℃に対し安定した半田濡れ性を得るためには、約20℃高温の240℃で、5秒から10秒間高温に晒す必要がある。高温に晒されたガラスエポキシ系材料であるICカードモジュールの配線基板は、熱変形や反りが増大する。FR−4グレードのガラスエポキシ系材料の熱変化温度Tg(TMA法)は、耐熱性の高いものでも170℃で、ICカードモジュール用では150℃付近である。従って、上記材料の配線基板では、熱変化温度Tg(150〜170℃)より70〜90℃も高温の半田溶融処理温度(240℃)で熱処理するために、変形や反りが増大する。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、ICカード用基材に埋め込んで使用される、薄型化が可能で耐熱変形性が向上可能なICカードモジュールを提供する点にあり、第2の目的は、当該ICカードモジュールを用いて高信頼度のICカードを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の目的を達成するための本発明に係るICカードモジュールは、絶縁性薄板状基材の表面及び裏面の少なくとも何れか一方面に複数の導電性のインタフェース用電極を貼着してなるモジュール基板、及び、前記モジュール基板に搭載される1または複数の補助部品と1または複数のICチップを備えてなり、前記モジュール基板の表面側の所定の位置に、前記補助部品と前記ICチップを収容する凹部が設けられ、前記補助部品と前記ICチップが、夫々の電極面が前記モジュール基板の表面側に位置するように前記凹部に接着固定され、前記補助部品の電極と対応する前記ICチップの電極パッド間がワイヤボンディングにより電気的に接続され、前記インタフェース用電極と対応する前記ICチップの電極パッド間がワイヤボンディングにより電気的に接続され、前記補助部品と前記ICチップと前記ワイヤボンディングに使用したワイヤが、前記モジュール基板の表面側において樹脂封止されていることを特徴とする。
【0009】
上記特徴のICカードモジュールによれば、第1に、アンテナ共振回路形成用のコンデンサやICチップの電源・グランド間の電圧変動抑制用の平滑用コンデンサ等の汎用補助部品を用いることができ、ICチップ内部に当該コンデンサ容量を作り込む必要がないため、製造コストを抑制することができる。第2に、厚みのある補助部品及びICチップを収容するための凹部がモジュール基板に設けられているために、これらをモジュール基板上に搭載する場合に比べてICカードモジュール全体の厚みを薄型化できる。第3に、補助部品及びICチップが当該凹部に接着固定して、相互間の電気的接続はワイヤボンディングにより行うため、補助部品及びICチップのモジュール基板への搭載に従来一般的に使用されていた半田接合を用いないため、240℃にも及ぶ半田溶融温度で5秒から10秒間高温に晒されることがなく、モジュール基板の熱変形や反りを未然に防止できる。この結果、モジュール基板へのICチップ搭載不良率を低減でき、完成したICカードモジュールの耐環境試験性や耐機械強度試験性等の信頼性の向上が図れる。更には、半田リフローのためのリフロー炉等の大型設備が不要となり設備コストの低減も図れる。
【0010】
上記特徴のICカードモジュールは、更に、前記複数のインタフェース用電極の少なくとも一部が、前記モジュール基板の表面側の一部領域に貼着される少なくとも2つのアンテナ接続用端子であることを第2の特徴とする。これにより、複数のインタフェース用電極が非接触式通信機能用のアンテナ接続用端子として使用できるため、上記作用効果を奏する非接触型ICカードまたはコンビネーション型ICカード用のICカードモジュールを提供可能となる。
【0011】
上記何れかの特徴のICカードモジュールは、更に、前記複数のインタフェース用電極の少なくとも一部が、前記モジュール基板の裏面に相互に平面的に分離して貼着する複数のモジュール電極であって、前記モジュール基板が、前記ICチップの電極パッドと前記モジュール電極間をワイヤボンディングにより接続するために前記モジュール電極が露出するように開口した開口部を有し、前記モジュール電極の前記開口部内の露出面と対応する前記ICチップの電極パッド間が、前記開口部を通過するワイヤボンディングにより電気的に接続されていることを第3の特徴とする。これにより、複数のインタフェース用電極が接触式通信機能用の電極端子として使用できるため、上記作用効果を奏する接触型ICカードまたはコンビネーション型ICカード用のICカードモジュールを提供可能となる。
【0012】
上記第3の特徴のICカードモジュールは、更に、前記凹部が前記モジュール基板を貫通して形成され、前記補助部品と前記ICチップが、前記モジュール電極の前記凹部内に露出した露出面に絶縁性接着剤で接着固定されていることを特徴とする。これにより、前記凹部の深さを最大限に大きくでき、ICカードモジュール全体の厚みを更に薄型化できる。また、補助部品とICチップは、モジュール電極と絶縁性接着剤で接着固定されるため、補助部品とICチップとモジュール電極間の不適切な電気的接続が回避される。
【0013】
上記何れかの特徴のICカードモジュールは、更に、前記モジュール基板がガラスエポキシ系材料で作製されており、前記補助部品と前記ICチップを前記凹部に接着固定するのに使用される接着剤が、80℃〜120℃の温度範囲で硬化する接着剤、または、25℃付近の常温で硬化が促進する接着剤であることを特徴とする。更に、前記接着剤が、25℃付近の常温でありながら紫外線を照射することにより硬化する接着剤であることが好ましい。これにより、補助部品とICチップの凹部への接着固定に要する温度が、モジュール基板の熱変形温度より低温に維持できるため、モジュール基板の熱変形及び反り等を効果的に抑制できる。
【0014】
上記何れかの特徴のICカードモジュールは、更に、前記補助部品の電極の最表層部がニッケルめっき処理または銀めっき処理が施されていることを特徴とする。これにより、モジュール基板に補助部品が搭載された後に、モジュール基板の電極へのワイヤボンディングの接続性を高めるためのプラズマ等によるドライエッチング処理を当該能動部品の電極に対しても同時に行うことができるようになり、補助部品の電極に対する極細線による電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0015】
上記何れかの特徴のICカードモジュールは、更に、前記複数のICチップとして、ICカードに要求される本来の機能を実行するための第1のICチップと、ICタグ機能を実行する第2のICチップを備え、前記第2のICチップの電極パッドが、対応する前記第1のICチップの電極パッドとワイヤボンディングにより電気的に接続されていることを特徴とする。これにより、本来のICカード機能に加えて、ICタグ機能を備えたICカードモジュールが実現でき、本ICカードモジュールを搭載することで、ICタグ機能が付加されたICカードを提供できるようになる。
【0016】
上記第1の目的を達成するための本発明に係るICカードモジュールの製造方法は、前記補助部品の電極と対応する前記ICチップの電極パッド間、または、前記インタフェース用電極と対応する前記ICチップの電極パッド間を、ワイヤボンディングにより電気的に接続する際に、前記モジュール基板の裏面に近い方に前記ワイヤの一方端を先に接続し、引き続いて、前記裏面から遠い方に前記ワイヤの他方端を接続することで、前記ワイヤのルーピング形成位置を前記裏面側に近づけることを特徴とする。これにより、極細線のルーピング形成位置がモジュール基板の裏面側に近づくために、補助部品とICチップと極細線を封止する樹脂の厚みを薄くでき、結果としてICカードモジュールの更なる薄型化を図ることができる。
【0017】
上記第2の目的を達成するための本発明に係るICカードは、上記何れかの特徴を備えたICカードモジュールをICカード用基材に設けられた凹部に嵌め込み接着固定して形成されることを特徴とする。上記何れかの特徴を備えたICカードモジュールにおいて、薄型化と耐熱変形性の向上が図れるため、ICカード用基材に設けられた凹部における基材厚を増加でき、また、当該ICカードモジュールの信頼性が向上するため、完成品としてのICカードの信頼性も向上させることができる。
【0018】
更に、本発明に係るICカードは、銅またはアルミニウムにより形成されたアンテナ線を埋設してなるICカード用基材と、上記第2の特徴を備えたICカードモジュールを備えてなり、前記アンテナ線の両端部と、前記ICカードモジュールの前記アンテナ接続用端子を夫々電気的に接続するとともに、前記ICカードモジュールを前記ICカード用基材に設けられた凹部に嵌め込み接着固定して形成されることを特徴とする。これにより、高信頼度の非接触型ICカードまたはコンビネーション型ICカードを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明に係るICカードモジュールとその製造方法、及び、当該ICカードモジュールを使用したICカードについて、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に、本発明に係るICカードモジュール(以下、適宜、「本発明モジュール」と称する。)の内部構造及び裏面構造を透視して示す内部構造平面図(A)と、当該平面図を垂直に横切る互いに直交する2つの断面(B−B’断面とC−C’断面)における破断正面図(B)と破断側面図(C)を示す。
【0021】
また、図2に、本発明モジュール10に使用するモジュール基板11の平面図(A)と、当該平面図を垂直に横切る互いに直交する2つの断面(B−B’断面とC−C’断面)における破断正面図(B)と破断側面図(C)を示す。尚、図2の平面図(A)には裏面側に設けられた複数のモジュール電極12が破線で表示されている。
【0022】
また、図3に、本発明モジュール10の外部構造を示す平面図(A)と正面図(B)を示し、図4に、モジュール基板11の裏面側から見た本発明モジュール10の背面図(C)を示す。尚、図1乃至図4において、図13に示す従来のICカードモジュール40と共通する部位には同じ符号を付している。また、図1乃至図3の平面図は、何れもモジュール基板11の表面側から見た図である。
【0023】
図1乃至図4に示すように、本発明モジュール10は、ICカードを作製するのにICカード用基材に埋め込んで使用されるICカードモジュールであって、絶縁性薄板状基材13、絶縁性薄板状基材13の表面側に貼着されている1対のアンテナ接続用端子14、絶縁性薄板状基材13の裏面側に貼着されている接触式通信時に接続用端子として機能する8つのモジュール電極12、2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16、及び、ICカードの情報処理機能を実行するためのICチップ17を備えて構成される。
【0024】
尚、チップ型セラミックコンデンサ15,16とICチップ17は、夫々モジュール基板11の絶縁性薄板状基材13に設けられた凹部18,19,20に収容されている。尚、2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16は、夫々補助部品として使用され、例えば、一方のコンデンサ15は非接触式通信機能のためのアンテナ共振回路形成するためのコンデンサとして用いられ、他方のコンデンサ16はICチップ17の電源・グランド間の電圧変動抑制用の平滑用コンデンサとして用いられる。
【0025】
また、1対のアンテナ接続用端子14と8つのモジュール電極12は、夫々本発明モジュール10と外部装置間の通信時に使用されるインタフェース用電極に相当し、前者が非接触式通信時に後述するICカード用基材に埋設されたアンテナ線と接続して用いられ、後者が接触式通信時に使用される。
【0026】
更に、本発明モジュール10は、1対のアンテナ接続用端子14、及び、2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16の各電極が、対応するICチップ17上の電極パッドとワイヤボンディングにより電気的に接続され、8つのモジュール電極12の夫々が、絶縁性薄板状基材13に形成される8つの開口部21を各別に介して、対応するICチップ17上の電極パッドとワイヤボンディングにより電気的に接続され、ワイヤボンディング済みの2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16、ICチップ17、及び、ワイヤボンディングの各ワイヤ27が樹脂封止部22で封止され、最終形態として形成されている。
【0027】
モジュール基板11は、図2に示すように、絶縁性薄板状基材13とその両面に各別に貼着された1対のアンテナ接続用端子14と8つのモジュール電極12を備えて構成される。また、モジュール基板11の絶縁性薄板状基材13には、2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16とICチップ17を収容する凹部18,19,20が夫々形成され、更に、裏面側の8つのモジュール電極12の絶縁性薄板状基材13と対向する面が表面側に向けて露出するように開口した8つの開口部21が夫々形成されている。尚、本実施形態では、凹部18,19,20は、開口部21と同様に、絶縁性薄板状基材13を表裏貫通する空間として形成され、各底部は対応する位置のモジュール電極12によって遮蔽されている。
【0028】
次に、モジュール基板11の作製方法の一実施例について説明する。先ず、絶縁性薄板状基材13としてガラス繊維にエポキシ系樹脂を含浸した絶縁材を用意し、凹部18,19,20及び開口部21となる貫通穴を、パンチング金型やレーザー加工により形成する。プリント配線基板に用いるガラスエポキシ絶縁板は、100μmから160μmの厚みが一般的であるが、本実施形態では、絶縁性薄板状基材13の厚みは、一例として120μmを想定する。また、一般的なプリント配線基板では、スルーホールを開口した場合には、その表裏両面の導電体膜間を導通させるために、スルーホールの内壁面に銅めっきを施すが、本実施形態では、凹部18,19,20及び開口部21を形成してもその内壁面には銅めっきを施さない。
【0029】
次に、銅箔等のエッチングによるパターンニングが可能な導電体膜を絶縁性薄板状基材13の表裏両面に貼り付ける。導電体膜の厚みは8μm〜20μmの範囲のものを使用するが、一例として12μmの銅箔を用いる。引き続き、導電体膜はエッチング工法により必要部分を残して除去し、1対のアンテナ接続用端子14と8つのモジュール電極12の導体パターンを形成する。従来のモジュール基板では、必要部分にソルダーレジストを塗布するが、本実施形態ではソルダーレジストは使用しない。その後、酸化防止のために、表裏両面の各導体パターンに、無電解めっき工法や電解めっき工法によりニッケル及び金の表面処理を施す。ニッケルの厚みは3〜6μmで金の厚みは0.01〜0.1μmである。従って、メッキ厚は最大で6.1μmとなる。
【0030】
ICチップ17は、ウェハ製造プロセス段階では、一般に700μm前後の厚みでウェハの表面に上記情報処理機能を実行するための集積回路部が形成され、当該集積回路部が正常に形成できたか否かが電気的に試験される。その後、ウェハの状態で裏面より研磨処理され、100μmの厚さにまで加工される。研磨方法は砥石研磨でよい。また、研磨面の平滑度を上げる場合は、化学的な処理にて研磨の荒さ分を取り除くのが好ましい。その後、ウェハから個々のICチップとなる様に切断分割する。切断工法は、一般にダイシング工法と称し、円盤状薄板にダイヤモンド粒子を表面に処理したブレードを高速回転させながら、且つ、純度の高い水をかけながらウェハから出る切粉を洗い流しながら行う。
【0031】
チップ型セラミックコンデンサ15,16は夫々、長さ×幅×高さが0.6mm×0.3mm×0.3mmの「0603タイプ」と称するもの、また、長さ×幅×高さが0.4mm×0.2mm×0.2mmの「0402タイプ」と称するものを使用する。本実施形態では、一例として、「0402タイプ」のチップ型セラミックコンデンサを使用する。尚、コンデンサ容量は、アンテナ共振回路用コンデンサには100pFを、電源・グランド間の電圧抑制用の平滑用コンデンサには10000pFを、夫々使用する。
【0032】
チップ型セラミックコンデンサ15,16及びICチップ17は、モジュール基板11の絶縁性薄板状基材13を貫通して形成された凹部18,19,20に搭載する。具体的には、例えば、ビスフェノール系エポキシ樹脂を主材料とした絶縁性の熱硬化型接着剤28を、予めシリンジに収容しておき、当該シリンジの先に取り付けたニードル部の先端から、凹部18,19,20の底部(モジュール電極12の露出面)に塗布した後に、チップ型セラミックコンデンサ15,16及びICチップ17を夫々載置して接着固定する。尚、一例として、熱硬化接着剤28の厚みは仕上がりで10μmとした。この接着方式は、ディスペンサー塗布方式として液状樹脂を定量的に所定の位置に塗布する方法として知られている。尚、凹部18,19,20の平面視寸法(長さ及び幅)は、チップ型セラミックコンデンサ15,16及びICチップ17の平面視寸法に合わせて、これらが収容可能な寸法となっている。因みに、「0402タイプ」のチップ型セラミックコンデンサを使用する場合は、凹部18,19の平面視寸法は、周囲に夫々200μmずつの余裕を取って、800μm×600μmとする。
【0033】
図5に、チップ型セラミックコンデンサ15,16を凹部18,19内に搭載した状態の要部拡大断面図を示す。尚、図5において、図14に示すチップ型セラミックコンデンサ43,44を配線基板41上に半田接合により電気的に接続している従来のICカードモジュールの要部拡大断面図と共通する部位には同じ符号を付している。図5に示すように、チップ型セラミックコンデンサ15,16は、誘電体23を挟んで多数の電極板が積層され、各電極板が1層おきに左右に分離して2つの電極24,25が形成されている。本実施形態では、各電極24,25の最表層部にニッケルめっき処理または銀めっき処理によるめっき部26を形成したものを使用する。
【0034】
上記絶縁性の接着剤28は、80℃〜120℃で10分間加熱すると硬化する熱硬化型接着剤、或いは、25℃付近の常温で1.5〜2時間放置すると硬化する常温硬化型接着剤等が使用できる。尚、市販されている接着剤において硬化温度が25℃付近の常温硬化型接着剤を用いた方が、熱硬化型接着剤を用いる場合に比べ、モジュール基板の熱的ストレスが少ないが、一般的に接着剤の硬化進行時間が長くなる傾向にある。更に、上記絶縁性の接着剤は、紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化型接着剤も使用できる。紫外線硬化型接着剤は、上述の通り、できるだけ25℃付近の常温で、且つ、短時間で凹部18,19,20に塗布した接着剤を硬化させることで基板の変形や反りを抑制して生産性を高めるために有効である。紫外線硬化型接着剤に照射する紫外線は、水銀ランプが短波長紫外線の出力が高いので、水銀ランプを用いることで、硬化進行時間が短く、約5秒程度で硬化が完了する。
【0035】
尚、チップ型セラミックコンデンサ15,16だけでなく、その後に搭載するICチップ17の取り付けにおいても、モジュール基板11が熱変形や反りが抑制されることから、ICチップの搭載工程でのICチップ搭載不良率が高く、完成したモジュールの耐環境試験性や耐機械強度試験性等の信頼性が低いという従来の問題点を克服することができる。
【0036】
次に、1対のアンテナ接続用端子14、2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16の各電極、及び、8つのモジュール電極12の夫々と、対応するICチップ17上の電極パッド間におけるワイヤボンディングについて説明する。
【0037】
チップ型セラミックコンデンサ15,16とICチップ17は、モジュール基板11に搭載した後に、1対のアンテナ接続用端子14、8つのモジュール電極12、及び、2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16の各電極が、対応するICチップ17上の電極パッドと、金またはアルミニウムの直径20〜30μm程度の極細線のボンディングワイヤ27を用いてワイヤボンディングにより電気的に接続される。ワイヤボンディングは、金線であれば、超音波併用熱圧着工法で接続する。この場合のモジュール基板の温度は110℃で行う。また、アルミニウム線であれば、超音波工法で接続する。この場合のモジュール基板の温度は25℃で行う。
【0038】
尚、1対のアンテナ接続用端子14、8つのモジュール電極12、及び、2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16の各電極と、対応するICチップ17上の電極パッド間を、ワイヤボンディングする際に、モジュール基板11の裏面に近い方、例えば、8つのモジュール電極12の開口部21内の露出面にボンディングワイヤ27の一方端を先に接続し、引き続いて、モジュール基板11の裏面から遠い方、例えば、対応するICチップ17上の電極パッドにボンディングワイヤ27の他方端を接続することで、ボンディングワイヤ27のルーピング形成位置を裏面側に近づけることができる。この結果、ボンディングワイヤ27を樹脂封止する樹脂の高さを低く抑えることができ、本発明モジュール10の薄型化が図れる。
【0039】
チップ型セラミックコンデンサ15,16とICチップ17がモジュール基板11に搭載され、ワイヤボンディングが完了した本発明モジュール10の半完成品は、ICチップ封止用のエポキシ系樹脂を、モールド金型で射出成型するか、或いは、シリンジに入れた当該樹脂を滴下して、ワイヤボンディング済みの2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16、ICチップ17、ワイヤボンディングの各ワイヤ27、開口部21内のモジュール電極12、及び、その周辺部を樹脂封止して、樹脂封止部22が形成される。
【0040】
本実施形態では、金またはアルミニウムのワイヤ27で、チップ型セラミックコンデンサ15,16の電極とICチップ17の対応する電極パッド間を結線したループ部分(ルーピング形成位置)が最も高くなる(モジュール基板11の裏面側から最も離間する)ので、チップ型セラミックコンデンサ15,16の最高部の高さ+50μmを、ルーピング形成位置の管理値とした。また、当該最高ループ位置での樹脂封止部22の高さは、当該最高ループ位置の高さに更に50μmを加えた高さに設定する。
【0041】
樹脂封止後に、本発明モジュール10に対して電気的特性テストを行い異常のないことを確認する。尚、図6に示すように、モジュール基板11は、電気的特性テストの完了直後までは、本発明モジュール10が多数個搭載されたシート状態である。従って、本発明モジュール10は、金型や回転切り歯、または、レーザー照射等を使用して、シート状態から個別に分割されて完成する。個別に分割された本発明モジュール10は、ICカード用基材に埋め込んでICカードとして組み立てられる。
【0042】
図7及び図8に示すように、個別に分割された本発明モジュール10をICカード用基材30に取り付けるには、本発明モジュール10をICカード用基材30の凹部31にモジュール基板11の裏面側(8つのモジュール電極12側)を外側に露出するようにして嵌め込み、カード用基材30の凹部31の外縁部32と本発明モジュール10のモジュール基板11表面側の樹脂封止部22の外周面とを両面接着テープ等の接着剤33で貼り付ける。ここで、本発明モジュール10をICカード用基材30に取り付ける際に、ICカード用基材30に埋設されたアンテナ線34の両端部35と、本発明モジュール10のモジュール基板11表面側に露出して形成された1対のアンテナ接続用端子14を夫々、半田または銀ペースト等の導電性接着剤36にて電気的に接続し、その後表裏からICカード基材を熱圧着する処理を同時に行うと、接触式及び非接触式通信が可能なコンビネーション型ICカード29が形成される。図9は、上記コンビネーション型ICカードが形成される場合における、本発明モジュール10のICチップ17とアンテナ接続用端子14、アンテナ線34、及び、アンテナ共振回路形成用のチップ型セラミックコンデンサ15との電気的な相互接続関係を示す等価回路図である。図9に示すように、アンテナ接続用端子14を経由してアンテナ線34と接続するICチップ17の1対の電極パッドと、チップ型セラミックコンデンサ15の両電極と夫々接続するICチップ17の1対の電極パッドは、ICチップ17内部において夫々各別に導通しており、アンテナ線34とチップ型セラミックコンデンサ15によりアンテナ共振回路が形成されている。
【0043】
尚、ICカード用基材30に予めアンテナ線34を埋設することなく、本発明モジュール10をICカード用基材30に取り付けた場合は、接触式ICカードが形成される。また、予め文字や図柄等を印刷したICカード用基材30を用いたり、或いは、ICカード用基材30の表面または裏面に後で印刷したりすることで、ICカードの表裏の券面に、文字、図柄、写真イメージ等を追加することができる。
【0044】
次に、本発明モジュール10における薄型化効果について説明する。本発明モジュール10では、上述の如く、チップ型セラミックコンデンサ15,16及びICチップ17のモジュール基板11への搭載が、モジュール基板11の絶縁性薄板状基材13を貫通して形成された凹部18,19,20に収容する形態であるため、凹部18,19,20の深さ分だけ、チップ型セラミックコンデンサ15,16及びICチップ17の搭載高さを低くすることができる。以下、具体的な数値例に基づいて説明する。
【0045】
先ず、本発明モジュール10の厚みを計算する。各部の厚みは、1)絶縁性薄板状基材13の厚みが120μm、2)モジュール基板11の両面の導体パターン(アンテナ接続用端子14及びモジュール電極12)の各厚みが12μm、3)導体パターン上のニッケルめっきの厚みが6μm、4)当該ニッケルめっき上の金めっきの厚みが0.1μm、5)チップ型セラミックコンデンサ15,16の電極部を加えた厚みが200μm、6)チップ型セラミックコンデンサ15,16を接着する接着剤の界面厚みが10μm、7)チップ型セラミックコンデンサ15,16の電極部からワイヤ27の最高ルーピング形成位置までの高さが50μm、8)ICチップ17の厚みが100μm、9)ICチップ17を接着する接着剤の界面厚みが10μm、10)ICチップ17の電極パッドからワイヤ27の最高ルーピング形成位置までの高さが50μm、11)各ワイヤ27の最高ルーピング形成位置の最高点から樹脂封止部22の頂部までの高さが50μm、と夫々想定する。上記想定条件に基づいて、本発明モジュール10の厚みを計算すると、12μm(導体パターン)+6.1μm(ニッケル+金めっき)×2+200μm(コンデンサ)+10μm(接着剤)+50μm(ルーピング高さ)+50μm(ルーピング上の樹脂厚)=334.2μmとなる。
【0046】
一方、従来技術によるICカードモジュールの厚みを計算すると、6.1μm(ニッケル+金めっき)+12μm(導体パターン)+120μm(絶縁性薄板状基材)+12μm(導体パターン)+6.1μm(ニッケル+金めっき)+10μm(半田)+200(コンデンサ)+50(コンデンサ上の樹脂厚)=416.2μmとなる。即ち、従来技術のICカードモジュールの厚みに比べ、本発明モジュールの厚みは、82μm薄く仕上げることができる。これにより、本発明モジュール10では従来に比べ薄型化が可能となった。
【0047】
次に、本発明モジュール10における信頼性向上効果について説明する。本発明モジュール10では、チップ型セラミックコンデンサ15,16のモジュール基板11へ搭載するのに、半田を用いる代わりに接着剤を用いて、モジュール基板11が熱変形し始める170℃〜180℃以下の温度で処理するために、モジュール基板11に熱変形や反りが起こらない。この結果、チップ型セラミックコンデンサ15,16の搭載後にICチップ17を搭載する工程での不良率が低く、信頼性の高いICカードモジュールの製造が可能となった。本発明モジュール10と従来のICカードモジュールについて、チップ型セラミックコンデンサ搭載後のシート状態でのモジュール基板の反り傾向をシミュレーションした結果を、図10及び図11に夫々示す。これより、図10に示すように、本発明モジュール10では熱変形や反りが、従来のICカードモジュールの結果(図11)に比較して改善されていることが分かる。
【0048】
次に、本発明に係るICカードモジュールの別実施形態について説明する。
【0049】
〈1〉上記実施形態では、ICチップ17とともにモジュール基板11に搭載される補助部品が、アンテナ共振回路形成用のコンデンサと電圧変動抑制用の平滑用コンデンサに用いる2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16である場合を想定して説明したが、補助部品は必ずしもチップ型セラミックコンデンサに限定されるものではなく、他の受動部品であってもよく、更には、ICカードの情報処理機能を実行するためのICチップ以外の他の機能を奏するICチップであっても構わない。
【0050】
例えば、上記実施形態の本発明モジュール10は、ISO/IEC14443のTypeA/Bや、Fekica対応のICカード用モジュールとして使用可能であるが、ICチップ17と2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16に加え、補助部品としてICタグ機能用チップ37を追加することにより、ICカードとICタグの2つの機能を1つのICカード用モジュールで実現可能となる。例えば、上記実施形態と同様の実装工法を用いることで、図12に示すようなICタグ機能が追加されたICカード用モジュールが作製される。
【0051】
ICタグ機能用チップ37は、ICカードモジュール用のICチップ17と比べ、高いセキュリティー機能を持たせないことや、ID(個体識別)用に極小容量のメモリ機能を備えたものが現在主流であり、そのチップサイズは0.5mm×0.5mm程度と極めて小さいにも拘わらず非接触通信距離が3m〜7mと大きいことが特徴である。
【0052】
〈2〉上記実施形態では、本発明モジュール10は、インタフェース用電極として1対のアンテナ接続用端子14と8つのモジュール電極12を備え、コンビネーション型ICカードと接触式ICカードの両方に適用可能な構成となっているが、接触式ICカードにのみ適用する場合には、1対のアンテナ接続用端子14とアンテナ共振回路形成用のコンデンサ15は必ずしも設ける必要はない。また、非接触式ICカードにのみ適用する場合には、8つのモジュール電極12とそれらとの接続用の8つの開口部21は必ずしも設ける必要はない。但し、凹部18,19,20は、絶縁性薄板状基材13を貫通しない形態とするか、貫通する場合には、凹部18,19,20の各底部を遮蔽するモジュール電極12に代わる遮蔽材を設ける必要がある。後者の場合、8つのモジュール電極12をそのまま使用して、開口部21だけを設けないか、或いは、モジュール電極12との各ワイヤボンディングを行わない形態としても構わない。
【0053】
〈3〉上記実施形態では、本発明モジュール10の各部の寸法を例示して詳細に説明したが、当該寸法等は本発明の理解の容易のために例示したものであり、本発明モジュール10が当該寸法のものに限定されるものではない。また、使用する各部の材料も例示であり、本発明モジュール10の構成を限定するものではない。
【0054】
本発明は、ICカードモジュール、その製造方法及びICカードに利用可能であり、特に、ICカードモジュールの薄型化や製造歩留りの向上に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明によるICカードモジュールの一実施形態の構成を示す(A)内部構造平面図、(B)破断正面図、及び、(C)破断側面図
【図2】図1に示すICカードモジュールで使用するモジュール基板の構成を示す(A)平面図、(B)破断正面図、及び、(C)破断側面図
【図3】図1に示すICカードモジュールの外部構成を示す(A)平面図、及び、(B)正面図
【図4】図1に示すICカードモジュールの外部構成を示す背面図
【図5】図1に示すICカードモジュールのチップ型セラミックコンデンサを凹部内に搭載した状態を示す要部拡大断面図
【図6】シート状態のモジュール基板の配置例を示す図
【図7】図1に示すICカードモジュールのアンテナ接続用端子とICカード用基材に埋め込んだアンテナ線との接続状態を示す図
【図8】図7に示すICカードモジュールとICカード用基材の断面A−A’における要部拡大断面図
【図9】本発明によるICカードモジュールを使用したコンビネーション型ICカードのアンテナ共振回路の等価回路図
【図10】本発明によるICカードモジュールのモジュール基板の反り傾向をシミュレーションした結果を示す図表
【図11】従来のICカードモジュールのモジュール基板の反り傾向をシミュレーションした結果を示す図表
【図12】本発明によるICカードモジュールの別実施形態の構成を示す(A)内部構造平面図、及び、(B)破断側面図
【図13】従来のICカードモジュールの一構成例を示す(A)内部構造平面図、(B)破断正面図、及び、(C)破断側面図
【図14】図13に示す従来のICカードモジュールのチップ型セラミックコンデンサを配線基板上に搭載した状態を示す要部拡大断面図
【符号の説明】
【0056】
10: 本発明に係るICカードモジュール
11: モジュール基板
12: モジュール電極(インタフェース用電極)
13: 絶縁性薄板状基材
14: アンテナ接続用端子(インタフェース用電極)
15: チップ型セラミックコンデンサ(アンテナ共振回路形成用コンデンサ)
16: チップ型セラミックコンデンサ(平滑用コンデンサ)
17: ICチップ
18,19,20: 凹部
21: 開口部
22: 樹脂封止部(樹脂)
23: 誘電体
24,25: コンデンサの電極
26: めっき部
27: ボンディングワイヤ
28: 絶縁性接着剤
29: 本発明に係るコンビネーション型ICカード
30: ICカード用基材
31: ICカード用基材の凹部
32: 凹部の外縁部
33: 接着剤
34: アンテナ線
35: アンテナ線の両端部
36: 導電性接着剤
37: ICタグ機能用チップ
40: 従来のICカードモジュール
41: 配線基板
42: チップ型セラミックコンデンサ接続用の電極
43,44: チップ型セラミックコンデンサ
45,46: コンデンサの電極
47: 錫めっき
48: 半田
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード、ICカード用基材に埋め込んで使用されるICカードモジュール、及び、その製造方法に関し、特に、ICカードモジュールの薄型化や製造歩留りの向上に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道,バス等の公共交通期間の定期券や、銀行等の金融機関カード、個人認証用カードとしてICチップを搭載したICカードが実用化されている。斯かるICカードとして、接触式通信機能を有する接触型ICカード、非接触式通信機能を有する非接触型ICカード、及び、接触式と非接触式の両通信機能を併せ持ったコンビネーション型ICカードがあり、当該ICカードとしての情報処理機能を備えるICチップを内蔵したICカードモジュールをICカード用基材に埋め込んで形成される。
【0003】
例えば、非接触式通信機能を有する非接触型またはコンビネーション型ICカードでは、外部機器との間での非接触式通信機能のためのアンテナ共振回路形成するためのコンデンサや、ICチップの電源・グランド間の電圧変動抑制用の平滑用コンデンサ等は、一般にチップ型セラミックコンデンサと称する汎用補助部品をICチップ外部に外付けで用いることで、ICチップ内部に当該コンデンサ容量を作り込む必要がないことから、ICカードモジュールの製造コストを抑制することができる(例えば、下記の特許文献1、特許文献2等を参照)。
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/107263号パンフレット
【特許文献2】特開2003−67695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている非接触通信機能を有する半導体装置(ICカードモジュール)40は、図13及び図14に示すように、ICチップ17を搭載した配線基板41上に形成された電極42上に半田48を介して汎用のチップ型セラミックコンデンサ43,44が半田接合により電気的に接続され、当該コンデンサ43,44が接続した配線基板41上の電極42と対応するICチップ17上の電極パッドが相互にワイヤボンディングにより電気的に接続され、ICチップ17とチップ型セラミックコンデンサ43,44とボンディングワイヤ27を樹脂22で封止して形成されている。従って、特許文献1に開示されているICカードモジュールは、配線基板とチップ型セラミックコンデンサの各厚みの合計より厚くなるため、薄型化が困難であった。尚、図13は、従来のICカードモジュール40の内部構造及び裏面構造を透視して示す内部構造平面図(A)と、当該平面図を垂直に横切る互いに直交する2つの断面(B−B’断面とC−C’断面)における破断正面図(B)と破断側面図(C)を示す。また、図14は、図13に示す従来のICカードモジュール40のチップ型セラミックコンデンサ43,44を配線基板41上の電極42に半田接合により搭載した状態を示す要部拡大断面図である。従来のICカードモジュール40に使用されるチップ型セラミックコンデンサ43,44の電極45,46の表面には、半田接合用に錫めっき47が施されている。
【0006】
また、半田付け工法でチップ型セラミックコンデンサを配線基板上に搭載し、電気的接続するためには、配線基板を含めて環境汚染物質である鉛を含まない一般の半田を用いると、銀・銅・錫系半田ペーストの場合、溶融温度である220℃に対し安定した半田濡れ性を得るためには、約20℃高温の240℃で、5秒から10秒間高温に晒す必要がある。高温に晒されたガラスエポキシ系材料であるICカードモジュールの配線基板は、熱変形や反りが増大する。FR−4グレードのガラスエポキシ系材料の熱変化温度Tg(TMA法)は、耐熱性の高いものでも170℃で、ICカードモジュール用では150℃付近である。従って、上記材料の配線基板では、熱変化温度Tg(150〜170℃)より70〜90℃も高温の半田溶融処理温度(240℃)で熱処理するために、変形や反りが増大する。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、ICカード用基材に埋め込んで使用される、薄型化が可能で耐熱変形性が向上可能なICカードモジュールを提供する点にあり、第2の目的は、当該ICカードモジュールを用いて高信頼度のICカードを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の目的を達成するための本発明に係るICカードモジュールは、絶縁性薄板状基材の表面及び裏面の少なくとも何れか一方面に複数の導電性のインタフェース用電極を貼着してなるモジュール基板、及び、前記モジュール基板に搭載される1または複数の補助部品と1または複数のICチップを備えてなり、前記モジュール基板の表面側の所定の位置に、前記補助部品と前記ICチップを収容する凹部が設けられ、前記補助部品と前記ICチップが、夫々の電極面が前記モジュール基板の表面側に位置するように前記凹部に接着固定され、前記補助部品の電極と対応する前記ICチップの電極パッド間がワイヤボンディングにより電気的に接続され、前記インタフェース用電極と対応する前記ICチップの電極パッド間がワイヤボンディングにより電気的に接続され、前記補助部品と前記ICチップと前記ワイヤボンディングに使用したワイヤが、前記モジュール基板の表面側において樹脂封止されていることを特徴とする。
【0009】
上記特徴のICカードモジュールによれば、第1に、アンテナ共振回路形成用のコンデンサやICチップの電源・グランド間の電圧変動抑制用の平滑用コンデンサ等の汎用補助部品を用いることができ、ICチップ内部に当該コンデンサ容量を作り込む必要がないため、製造コストを抑制することができる。第2に、厚みのある補助部品及びICチップを収容するための凹部がモジュール基板に設けられているために、これらをモジュール基板上に搭載する場合に比べてICカードモジュール全体の厚みを薄型化できる。第3に、補助部品及びICチップが当該凹部に接着固定して、相互間の電気的接続はワイヤボンディングにより行うため、補助部品及びICチップのモジュール基板への搭載に従来一般的に使用されていた半田接合を用いないため、240℃にも及ぶ半田溶融温度で5秒から10秒間高温に晒されることがなく、モジュール基板の熱変形や反りを未然に防止できる。この結果、モジュール基板へのICチップ搭載不良率を低減でき、完成したICカードモジュールの耐環境試験性や耐機械強度試験性等の信頼性の向上が図れる。更には、半田リフローのためのリフロー炉等の大型設備が不要となり設備コストの低減も図れる。
【0010】
上記特徴のICカードモジュールは、更に、前記複数のインタフェース用電極の少なくとも一部が、前記モジュール基板の表面側の一部領域に貼着される少なくとも2つのアンテナ接続用端子であることを第2の特徴とする。これにより、複数のインタフェース用電極が非接触式通信機能用のアンテナ接続用端子として使用できるため、上記作用効果を奏する非接触型ICカードまたはコンビネーション型ICカード用のICカードモジュールを提供可能となる。
【0011】
上記何れかの特徴のICカードモジュールは、更に、前記複数のインタフェース用電極の少なくとも一部が、前記モジュール基板の裏面に相互に平面的に分離して貼着する複数のモジュール電極であって、前記モジュール基板が、前記ICチップの電極パッドと前記モジュール電極間をワイヤボンディングにより接続するために前記モジュール電極が露出するように開口した開口部を有し、前記モジュール電極の前記開口部内の露出面と対応する前記ICチップの電極パッド間が、前記開口部を通過するワイヤボンディングにより電気的に接続されていることを第3の特徴とする。これにより、複数のインタフェース用電極が接触式通信機能用の電極端子として使用できるため、上記作用効果を奏する接触型ICカードまたはコンビネーション型ICカード用のICカードモジュールを提供可能となる。
【0012】
上記第3の特徴のICカードモジュールは、更に、前記凹部が前記モジュール基板を貫通して形成され、前記補助部品と前記ICチップが、前記モジュール電極の前記凹部内に露出した露出面に絶縁性接着剤で接着固定されていることを特徴とする。これにより、前記凹部の深さを最大限に大きくでき、ICカードモジュール全体の厚みを更に薄型化できる。また、補助部品とICチップは、モジュール電極と絶縁性接着剤で接着固定されるため、補助部品とICチップとモジュール電極間の不適切な電気的接続が回避される。
【0013】
上記何れかの特徴のICカードモジュールは、更に、前記モジュール基板がガラスエポキシ系材料で作製されており、前記補助部品と前記ICチップを前記凹部に接着固定するのに使用される接着剤が、80℃〜120℃の温度範囲で硬化する接着剤、または、25℃付近の常温で硬化が促進する接着剤であることを特徴とする。更に、前記接着剤が、25℃付近の常温でありながら紫外線を照射することにより硬化する接着剤であることが好ましい。これにより、補助部品とICチップの凹部への接着固定に要する温度が、モジュール基板の熱変形温度より低温に維持できるため、モジュール基板の熱変形及び反り等を効果的に抑制できる。
【0014】
上記何れかの特徴のICカードモジュールは、更に、前記補助部品の電極の最表層部がニッケルめっき処理または銀めっき処理が施されていることを特徴とする。これにより、モジュール基板に補助部品が搭載された後に、モジュール基板の電極へのワイヤボンディングの接続性を高めるためのプラズマ等によるドライエッチング処理を当該能動部品の電極に対しても同時に行うことができるようになり、補助部品の電極に対する極細線による電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0015】
上記何れかの特徴のICカードモジュールは、更に、前記複数のICチップとして、ICカードに要求される本来の機能を実行するための第1のICチップと、ICタグ機能を実行する第2のICチップを備え、前記第2のICチップの電極パッドが、対応する前記第1のICチップの電極パッドとワイヤボンディングにより電気的に接続されていることを特徴とする。これにより、本来のICカード機能に加えて、ICタグ機能を備えたICカードモジュールが実現でき、本ICカードモジュールを搭載することで、ICタグ機能が付加されたICカードを提供できるようになる。
【0016】
上記第1の目的を達成するための本発明に係るICカードモジュールの製造方法は、前記補助部品の電極と対応する前記ICチップの電極パッド間、または、前記インタフェース用電極と対応する前記ICチップの電極パッド間を、ワイヤボンディングにより電気的に接続する際に、前記モジュール基板の裏面に近い方に前記ワイヤの一方端を先に接続し、引き続いて、前記裏面から遠い方に前記ワイヤの他方端を接続することで、前記ワイヤのルーピング形成位置を前記裏面側に近づけることを特徴とする。これにより、極細線のルーピング形成位置がモジュール基板の裏面側に近づくために、補助部品とICチップと極細線を封止する樹脂の厚みを薄くでき、結果としてICカードモジュールの更なる薄型化を図ることができる。
【0017】
上記第2の目的を達成するための本発明に係るICカードは、上記何れかの特徴を備えたICカードモジュールをICカード用基材に設けられた凹部に嵌め込み接着固定して形成されることを特徴とする。上記何れかの特徴を備えたICカードモジュールにおいて、薄型化と耐熱変形性の向上が図れるため、ICカード用基材に設けられた凹部における基材厚を増加でき、また、当該ICカードモジュールの信頼性が向上するため、完成品としてのICカードの信頼性も向上させることができる。
【0018】
更に、本発明に係るICカードは、銅またはアルミニウムにより形成されたアンテナ線を埋設してなるICカード用基材と、上記第2の特徴を備えたICカードモジュールを備えてなり、前記アンテナ線の両端部と、前記ICカードモジュールの前記アンテナ接続用端子を夫々電気的に接続するとともに、前記ICカードモジュールを前記ICカード用基材に設けられた凹部に嵌め込み接着固定して形成されることを特徴とする。これにより、高信頼度の非接触型ICカードまたはコンビネーション型ICカードを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明に係るICカードモジュールとその製造方法、及び、当該ICカードモジュールを使用したICカードについて、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に、本発明に係るICカードモジュール(以下、適宜、「本発明モジュール」と称する。)の内部構造及び裏面構造を透視して示す内部構造平面図(A)と、当該平面図を垂直に横切る互いに直交する2つの断面(B−B’断面とC−C’断面)における破断正面図(B)と破断側面図(C)を示す。
【0021】
また、図2に、本発明モジュール10に使用するモジュール基板11の平面図(A)と、当該平面図を垂直に横切る互いに直交する2つの断面(B−B’断面とC−C’断面)における破断正面図(B)と破断側面図(C)を示す。尚、図2の平面図(A)には裏面側に設けられた複数のモジュール電極12が破線で表示されている。
【0022】
また、図3に、本発明モジュール10の外部構造を示す平面図(A)と正面図(B)を示し、図4に、モジュール基板11の裏面側から見た本発明モジュール10の背面図(C)を示す。尚、図1乃至図4において、図13に示す従来のICカードモジュール40と共通する部位には同じ符号を付している。また、図1乃至図3の平面図は、何れもモジュール基板11の表面側から見た図である。
【0023】
図1乃至図4に示すように、本発明モジュール10は、ICカードを作製するのにICカード用基材に埋め込んで使用されるICカードモジュールであって、絶縁性薄板状基材13、絶縁性薄板状基材13の表面側に貼着されている1対のアンテナ接続用端子14、絶縁性薄板状基材13の裏面側に貼着されている接触式通信時に接続用端子として機能する8つのモジュール電極12、2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16、及び、ICカードの情報処理機能を実行するためのICチップ17を備えて構成される。
【0024】
尚、チップ型セラミックコンデンサ15,16とICチップ17は、夫々モジュール基板11の絶縁性薄板状基材13に設けられた凹部18,19,20に収容されている。尚、2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16は、夫々補助部品として使用され、例えば、一方のコンデンサ15は非接触式通信機能のためのアンテナ共振回路形成するためのコンデンサとして用いられ、他方のコンデンサ16はICチップ17の電源・グランド間の電圧変動抑制用の平滑用コンデンサとして用いられる。
【0025】
また、1対のアンテナ接続用端子14と8つのモジュール電極12は、夫々本発明モジュール10と外部装置間の通信時に使用されるインタフェース用電極に相当し、前者が非接触式通信時に後述するICカード用基材に埋設されたアンテナ線と接続して用いられ、後者が接触式通信時に使用される。
【0026】
更に、本発明モジュール10は、1対のアンテナ接続用端子14、及び、2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16の各電極が、対応するICチップ17上の電極パッドとワイヤボンディングにより電気的に接続され、8つのモジュール電極12の夫々が、絶縁性薄板状基材13に形成される8つの開口部21を各別に介して、対応するICチップ17上の電極パッドとワイヤボンディングにより電気的に接続され、ワイヤボンディング済みの2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16、ICチップ17、及び、ワイヤボンディングの各ワイヤ27が樹脂封止部22で封止され、最終形態として形成されている。
【0027】
モジュール基板11は、図2に示すように、絶縁性薄板状基材13とその両面に各別に貼着された1対のアンテナ接続用端子14と8つのモジュール電極12を備えて構成される。また、モジュール基板11の絶縁性薄板状基材13には、2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16とICチップ17を収容する凹部18,19,20が夫々形成され、更に、裏面側の8つのモジュール電極12の絶縁性薄板状基材13と対向する面が表面側に向けて露出するように開口した8つの開口部21が夫々形成されている。尚、本実施形態では、凹部18,19,20は、開口部21と同様に、絶縁性薄板状基材13を表裏貫通する空間として形成され、各底部は対応する位置のモジュール電極12によって遮蔽されている。
【0028】
次に、モジュール基板11の作製方法の一実施例について説明する。先ず、絶縁性薄板状基材13としてガラス繊維にエポキシ系樹脂を含浸した絶縁材を用意し、凹部18,19,20及び開口部21となる貫通穴を、パンチング金型やレーザー加工により形成する。プリント配線基板に用いるガラスエポキシ絶縁板は、100μmから160μmの厚みが一般的であるが、本実施形態では、絶縁性薄板状基材13の厚みは、一例として120μmを想定する。また、一般的なプリント配線基板では、スルーホールを開口した場合には、その表裏両面の導電体膜間を導通させるために、スルーホールの内壁面に銅めっきを施すが、本実施形態では、凹部18,19,20及び開口部21を形成してもその内壁面には銅めっきを施さない。
【0029】
次に、銅箔等のエッチングによるパターンニングが可能な導電体膜を絶縁性薄板状基材13の表裏両面に貼り付ける。導電体膜の厚みは8μm〜20μmの範囲のものを使用するが、一例として12μmの銅箔を用いる。引き続き、導電体膜はエッチング工法により必要部分を残して除去し、1対のアンテナ接続用端子14と8つのモジュール電極12の導体パターンを形成する。従来のモジュール基板では、必要部分にソルダーレジストを塗布するが、本実施形態ではソルダーレジストは使用しない。その後、酸化防止のために、表裏両面の各導体パターンに、無電解めっき工法や電解めっき工法によりニッケル及び金の表面処理を施す。ニッケルの厚みは3〜6μmで金の厚みは0.01〜0.1μmである。従って、メッキ厚は最大で6.1μmとなる。
【0030】
ICチップ17は、ウェハ製造プロセス段階では、一般に700μm前後の厚みでウェハの表面に上記情報処理機能を実行するための集積回路部が形成され、当該集積回路部が正常に形成できたか否かが電気的に試験される。その後、ウェハの状態で裏面より研磨処理され、100μmの厚さにまで加工される。研磨方法は砥石研磨でよい。また、研磨面の平滑度を上げる場合は、化学的な処理にて研磨の荒さ分を取り除くのが好ましい。その後、ウェハから個々のICチップとなる様に切断分割する。切断工法は、一般にダイシング工法と称し、円盤状薄板にダイヤモンド粒子を表面に処理したブレードを高速回転させながら、且つ、純度の高い水をかけながらウェハから出る切粉を洗い流しながら行う。
【0031】
チップ型セラミックコンデンサ15,16は夫々、長さ×幅×高さが0.6mm×0.3mm×0.3mmの「0603タイプ」と称するもの、また、長さ×幅×高さが0.4mm×0.2mm×0.2mmの「0402タイプ」と称するものを使用する。本実施形態では、一例として、「0402タイプ」のチップ型セラミックコンデンサを使用する。尚、コンデンサ容量は、アンテナ共振回路用コンデンサには100pFを、電源・グランド間の電圧抑制用の平滑用コンデンサには10000pFを、夫々使用する。
【0032】
チップ型セラミックコンデンサ15,16及びICチップ17は、モジュール基板11の絶縁性薄板状基材13を貫通して形成された凹部18,19,20に搭載する。具体的には、例えば、ビスフェノール系エポキシ樹脂を主材料とした絶縁性の熱硬化型接着剤28を、予めシリンジに収容しておき、当該シリンジの先に取り付けたニードル部の先端から、凹部18,19,20の底部(モジュール電極12の露出面)に塗布した後に、チップ型セラミックコンデンサ15,16及びICチップ17を夫々載置して接着固定する。尚、一例として、熱硬化接着剤28の厚みは仕上がりで10μmとした。この接着方式は、ディスペンサー塗布方式として液状樹脂を定量的に所定の位置に塗布する方法として知られている。尚、凹部18,19,20の平面視寸法(長さ及び幅)は、チップ型セラミックコンデンサ15,16及びICチップ17の平面視寸法に合わせて、これらが収容可能な寸法となっている。因みに、「0402タイプ」のチップ型セラミックコンデンサを使用する場合は、凹部18,19の平面視寸法は、周囲に夫々200μmずつの余裕を取って、800μm×600μmとする。
【0033】
図5に、チップ型セラミックコンデンサ15,16を凹部18,19内に搭載した状態の要部拡大断面図を示す。尚、図5において、図14に示すチップ型セラミックコンデンサ43,44を配線基板41上に半田接合により電気的に接続している従来のICカードモジュールの要部拡大断面図と共通する部位には同じ符号を付している。図5に示すように、チップ型セラミックコンデンサ15,16は、誘電体23を挟んで多数の電極板が積層され、各電極板が1層おきに左右に分離して2つの電極24,25が形成されている。本実施形態では、各電極24,25の最表層部にニッケルめっき処理または銀めっき処理によるめっき部26を形成したものを使用する。
【0034】
上記絶縁性の接着剤28は、80℃〜120℃で10分間加熱すると硬化する熱硬化型接着剤、或いは、25℃付近の常温で1.5〜2時間放置すると硬化する常温硬化型接着剤等が使用できる。尚、市販されている接着剤において硬化温度が25℃付近の常温硬化型接着剤を用いた方が、熱硬化型接着剤を用いる場合に比べ、モジュール基板の熱的ストレスが少ないが、一般的に接着剤の硬化進行時間が長くなる傾向にある。更に、上記絶縁性の接着剤は、紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化型接着剤も使用できる。紫外線硬化型接着剤は、上述の通り、できるだけ25℃付近の常温で、且つ、短時間で凹部18,19,20に塗布した接着剤を硬化させることで基板の変形や反りを抑制して生産性を高めるために有効である。紫外線硬化型接着剤に照射する紫外線は、水銀ランプが短波長紫外線の出力が高いので、水銀ランプを用いることで、硬化進行時間が短く、約5秒程度で硬化が完了する。
【0035】
尚、チップ型セラミックコンデンサ15,16だけでなく、その後に搭載するICチップ17の取り付けにおいても、モジュール基板11が熱変形や反りが抑制されることから、ICチップの搭載工程でのICチップ搭載不良率が高く、完成したモジュールの耐環境試験性や耐機械強度試験性等の信頼性が低いという従来の問題点を克服することができる。
【0036】
次に、1対のアンテナ接続用端子14、2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16の各電極、及び、8つのモジュール電極12の夫々と、対応するICチップ17上の電極パッド間におけるワイヤボンディングについて説明する。
【0037】
チップ型セラミックコンデンサ15,16とICチップ17は、モジュール基板11に搭載した後に、1対のアンテナ接続用端子14、8つのモジュール電極12、及び、2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16の各電極が、対応するICチップ17上の電極パッドと、金またはアルミニウムの直径20〜30μm程度の極細線のボンディングワイヤ27を用いてワイヤボンディングにより電気的に接続される。ワイヤボンディングは、金線であれば、超音波併用熱圧着工法で接続する。この場合のモジュール基板の温度は110℃で行う。また、アルミニウム線であれば、超音波工法で接続する。この場合のモジュール基板の温度は25℃で行う。
【0038】
尚、1対のアンテナ接続用端子14、8つのモジュール電極12、及び、2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16の各電極と、対応するICチップ17上の電極パッド間を、ワイヤボンディングする際に、モジュール基板11の裏面に近い方、例えば、8つのモジュール電極12の開口部21内の露出面にボンディングワイヤ27の一方端を先に接続し、引き続いて、モジュール基板11の裏面から遠い方、例えば、対応するICチップ17上の電極パッドにボンディングワイヤ27の他方端を接続することで、ボンディングワイヤ27のルーピング形成位置を裏面側に近づけることができる。この結果、ボンディングワイヤ27を樹脂封止する樹脂の高さを低く抑えることができ、本発明モジュール10の薄型化が図れる。
【0039】
チップ型セラミックコンデンサ15,16とICチップ17がモジュール基板11に搭載され、ワイヤボンディングが完了した本発明モジュール10の半完成品は、ICチップ封止用のエポキシ系樹脂を、モールド金型で射出成型するか、或いは、シリンジに入れた当該樹脂を滴下して、ワイヤボンディング済みの2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16、ICチップ17、ワイヤボンディングの各ワイヤ27、開口部21内のモジュール電極12、及び、その周辺部を樹脂封止して、樹脂封止部22が形成される。
【0040】
本実施形態では、金またはアルミニウムのワイヤ27で、チップ型セラミックコンデンサ15,16の電極とICチップ17の対応する電極パッド間を結線したループ部分(ルーピング形成位置)が最も高くなる(モジュール基板11の裏面側から最も離間する)ので、チップ型セラミックコンデンサ15,16の最高部の高さ+50μmを、ルーピング形成位置の管理値とした。また、当該最高ループ位置での樹脂封止部22の高さは、当該最高ループ位置の高さに更に50μmを加えた高さに設定する。
【0041】
樹脂封止後に、本発明モジュール10に対して電気的特性テストを行い異常のないことを確認する。尚、図6に示すように、モジュール基板11は、電気的特性テストの完了直後までは、本発明モジュール10が多数個搭載されたシート状態である。従って、本発明モジュール10は、金型や回転切り歯、または、レーザー照射等を使用して、シート状態から個別に分割されて完成する。個別に分割された本発明モジュール10は、ICカード用基材に埋め込んでICカードとして組み立てられる。
【0042】
図7及び図8に示すように、個別に分割された本発明モジュール10をICカード用基材30に取り付けるには、本発明モジュール10をICカード用基材30の凹部31にモジュール基板11の裏面側(8つのモジュール電極12側)を外側に露出するようにして嵌め込み、カード用基材30の凹部31の外縁部32と本発明モジュール10のモジュール基板11表面側の樹脂封止部22の外周面とを両面接着テープ等の接着剤33で貼り付ける。ここで、本発明モジュール10をICカード用基材30に取り付ける際に、ICカード用基材30に埋設されたアンテナ線34の両端部35と、本発明モジュール10のモジュール基板11表面側に露出して形成された1対のアンテナ接続用端子14を夫々、半田または銀ペースト等の導電性接着剤36にて電気的に接続し、その後表裏からICカード基材を熱圧着する処理を同時に行うと、接触式及び非接触式通信が可能なコンビネーション型ICカード29が形成される。図9は、上記コンビネーション型ICカードが形成される場合における、本発明モジュール10のICチップ17とアンテナ接続用端子14、アンテナ線34、及び、アンテナ共振回路形成用のチップ型セラミックコンデンサ15との電気的な相互接続関係を示す等価回路図である。図9に示すように、アンテナ接続用端子14を経由してアンテナ線34と接続するICチップ17の1対の電極パッドと、チップ型セラミックコンデンサ15の両電極と夫々接続するICチップ17の1対の電極パッドは、ICチップ17内部において夫々各別に導通しており、アンテナ線34とチップ型セラミックコンデンサ15によりアンテナ共振回路が形成されている。
【0043】
尚、ICカード用基材30に予めアンテナ線34を埋設することなく、本発明モジュール10をICカード用基材30に取り付けた場合は、接触式ICカードが形成される。また、予め文字や図柄等を印刷したICカード用基材30を用いたり、或いは、ICカード用基材30の表面または裏面に後で印刷したりすることで、ICカードの表裏の券面に、文字、図柄、写真イメージ等を追加することができる。
【0044】
次に、本発明モジュール10における薄型化効果について説明する。本発明モジュール10では、上述の如く、チップ型セラミックコンデンサ15,16及びICチップ17のモジュール基板11への搭載が、モジュール基板11の絶縁性薄板状基材13を貫通して形成された凹部18,19,20に収容する形態であるため、凹部18,19,20の深さ分だけ、チップ型セラミックコンデンサ15,16及びICチップ17の搭載高さを低くすることができる。以下、具体的な数値例に基づいて説明する。
【0045】
先ず、本発明モジュール10の厚みを計算する。各部の厚みは、1)絶縁性薄板状基材13の厚みが120μm、2)モジュール基板11の両面の導体パターン(アンテナ接続用端子14及びモジュール電極12)の各厚みが12μm、3)導体パターン上のニッケルめっきの厚みが6μm、4)当該ニッケルめっき上の金めっきの厚みが0.1μm、5)チップ型セラミックコンデンサ15,16の電極部を加えた厚みが200μm、6)チップ型セラミックコンデンサ15,16を接着する接着剤の界面厚みが10μm、7)チップ型セラミックコンデンサ15,16の電極部からワイヤ27の最高ルーピング形成位置までの高さが50μm、8)ICチップ17の厚みが100μm、9)ICチップ17を接着する接着剤の界面厚みが10μm、10)ICチップ17の電極パッドからワイヤ27の最高ルーピング形成位置までの高さが50μm、11)各ワイヤ27の最高ルーピング形成位置の最高点から樹脂封止部22の頂部までの高さが50μm、と夫々想定する。上記想定条件に基づいて、本発明モジュール10の厚みを計算すると、12μm(導体パターン)+6.1μm(ニッケル+金めっき)×2+200μm(コンデンサ)+10μm(接着剤)+50μm(ルーピング高さ)+50μm(ルーピング上の樹脂厚)=334.2μmとなる。
【0046】
一方、従来技術によるICカードモジュールの厚みを計算すると、6.1μm(ニッケル+金めっき)+12μm(導体パターン)+120μm(絶縁性薄板状基材)+12μm(導体パターン)+6.1μm(ニッケル+金めっき)+10μm(半田)+200(コンデンサ)+50(コンデンサ上の樹脂厚)=416.2μmとなる。即ち、従来技術のICカードモジュールの厚みに比べ、本発明モジュールの厚みは、82μm薄く仕上げることができる。これにより、本発明モジュール10では従来に比べ薄型化が可能となった。
【0047】
次に、本発明モジュール10における信頼性向上効果について説明する。本発明モジュール10では、チップ型セラミックコンデンサ15,16のモジュール基板11へ搭載するのに、半田を用いる代わりに接着剤を用いて、モジュール基板11が熱変形し始める170℃〜180℃以下の温度で処理するために、モジュール基板11に熱変形や反りが起こらない。この結果、チップ型セラミックコンデンサ15,16の搭載後にICチップ17を搭載する工程での不良率が低く、信頼性の高いICカードモジュールの製造が可能となった。本発明モジュール10と従来のICカードモジュールについて、チップ型セラミックコンデンサ搭載後のシート状態でのモジュール基板の反り傾向をシミュレーションした結果を、図10及び図11に夫々示す。これより、図10に示すように、本発明モジュール10では熱変形や反りが、従来のICカードモジュールの結果(図11)に比較して改善されていることが分かる。
【0048】
次に、本発明に係るICカードモジュールの別実施形態について説明する。
【0049】
〈1〉上記実施形態では、ICチップ17とともにモジュール基板11に搭載される補助部品が、アンテナ共振回路形成用のコンデンサと電圧変動抑制用の平滑用コンデンサに用いる2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16である場合を想定して説明したが、補助部品は必ずしもチップ型セラミックコンデンサに限定されるものではなく、他の受動部品であってもよく、更には、ICカードの情報処理機能を実行するためのICチップ以外の他の機能を奏するICチップであっても構わない。
【0050】
例えば、上記実施形態の本発明モジュール10は、ISO/IEC14443のTypeA/Bや、Fekica対応のICカード用モジュールとして使用可能であるが、ICチップ17と2つのチップ型セラミックコンデンサ15,16に加え、補助部品としてICタグ機能用チップ37を追加することにより、ICカードとICタグの2つの機能を1つのICカード用モジュールで実現可能となる。例えば、上記実施形態と同様の実装工法を用いることで、図12に示すようなICタグ機能が追加されたICカード用モジュールが作製される。
【0051】
ICタグ機能用チップ37は、ICカードモジュール用のICチップ17と比べ、高いセキュリティー機能を持たせないことや、ID(個体識別)用に極小容量のメモリ機能を備えたものが現在主流であり、そのチップサイズは0.5mm×0.5mm程度と極めて小さいにも拘わらず非接触通信距離が3m〜7mと大きいことが特徴である。
【0052】
〈2〉上記実施形態では、本発明モジュール10は、インタフェース用電極として1対のアンテナ接続用端子14と8つのモジュール電極12を備え、コンビネーション型ICカードと接触式ICカードの両方に適用可能な構成となっているが、接触式ICカードにのみ適用する場合には、1対のアンテナ接続用端子14とアンテナ共振回路形成用のコンデンサ15は必ずしも設ける必要はない。また、非接触式ICカードにのみ適用する場合には、8つのモジュール電極12とそれらとの接続用の8つの開口部21は必ずしも設ける必要はない。但し、凹部18,19,20は、絶縁性薄板状基材13を貫通しない形態とするか、貫通する場合には、凹部18,19,20の各底部を遮蔽するモジュール電極12に代わる遮蔽材を設ける必要がある。後者の場合、8つのモジュール電極12をそのまま使用して、開口部21だけを設けないか、或いは、モジュール電極12との各ワイヤボンディングを行わない形態としても構わない。
【0053】
〈3〉上記実施形態では、本発明モジュール10の各部の寸法を例示して詳細に説明したが、当該寸法等は本発明の理解の容易のために例示したものであり、本発明モジュール10が当該寸法のものに限定されるものではない。また、使用する各部の材料も例示であり、本発明モジュール10の構成を限定するものではない。
【0054】
本発明は、ICカードモジュール、その製造方法及びICカードに利用可能であり、特に、ICカードモジュールの薄型化や製造歩留りの向上に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明によるICカードモジュールの一実施形態の構成を示す(A)内部構造平面図、(B)破断正面図、及び、(C)破断側面図
【図2】図1に示すICカードモジュールで使用するモジュール基板の構成を示す(A)平面図、(B)破断正面図、及び、(C)破断側面図
【図3】図1に示すICカードモジュールの外部構成を示す(A)平面図、及び、(B)正面図
【図4】図1に示すICカードモジュールの外部構成を示す背面図
【図5】図1に示すICカードモジュールのチップ型セラミックコンデンサを凹部内に搭載した状態を示す要部拡大断面図
【図6】シート状態のモジュール基板の配置例を示す図
【図7】図1に示すICカードモジュールのアンテナ接続用端子とICカード用基材に埋め込んだアンテナ線との接続状態を示す図
【図8】図7に示すICカードモジュールとICカード用基材の断面A−A’における要部拡大断面図
【図9】本発明によるICカードモジュールを使用したコンビネーション型ICカードのアンテナ共振回路の等価回路図
【図10】本発明によるICカードモジュールのモジュール基板の反り傾向をシミュレーションした結果を示す図表
【図11】従来のICカードモジュールのモジュール基板の反り傾向をシミュレーションした結果を示す図表
【図12】本発明によるICカードモジュールの別実施形態の構成を示す(A)内部構造平面図、及び、(B)破断側面図
【図13】従来のICカードモジュールの一構成例を示す(A)内部構造平面図、(B)破断正面図、及び、(C)破断側面図
【図14】図13に示す従来のICカードモジュールのチップ型セラミックコンデンサを配線基板上に搭載した状態を示す要部拡大断面図
【符号の説明】
【0056】
10: 本発明に係るICカードモジュール
11: モジュール基板
12: モジュール電極(インタフェース用電極)
13: 絶縁性薄板状基材
14: アンテナ接続用端子(インタフェース用電極)
15: チップ型セラミックコンデンサ(アンテナ共振回路形成用コンデンサ)
16: チップ型セラミックコンデンサ(平滑用コンデンサ)
17: ICチップ
18,19,20: 凹部
21: 開口部
22: 樹脂封止部(樹脂)
23: 誘電体
24,25: コンデンサの電極
26: めっき部
27: ボンディングワイヤ
28: 絶縁性接着剤
29: 本発明に係るコンビネーション型ICカード
30: ICカード用基材
31: ICカード用基材の凹部
32: 凹部の外縁部
33: 接着剤
34: アンテナ線
35: アンテナ線の両端部
36: 導電性接着剤
37: ICタグ機能用チップ
40: 従来のICカードモジュール
41: 配線基板
42: チップ型セラミックコンデンサ接続用の電極
43,44: チップ型セラミックコンデンサ
45,46: コンデンサの電極
47: 錫めっき
48: 半田
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカード用基材に埋め込んで使用されるICカードモジュールであって、
絶縁性薄板状基材の表面及び裏面の少なくとも何れか一方面に複数の導電性のインタフェース用電極を貼着してなるモジュール基板、及び、前記モジュール基板に搭載される1または複数の補助部品と1または複数のICチップを備えてなり、
前記モジュール基板の表面側の所定の位置に、前記補助部品と前記ICチップを収容する凹部が設けられ、
前記補助部品と前記ICチップが、夫々の電極面が前記モジュール基板の表面側に位置するように前記凹部に接着固定され、
前記補助部品の電極と対応する前記ICチップの電極パッド間がワイヤボンディングにより電気的に接続され、
前記インタフェース用電極と対応する前記ICチップの電極パッド間がワイヤボンディングにより電気的に接続され、
前記補助部品と前記ICチップと前記ワイヤボンディングに使用したワイヤが、前記モジュール基板の表面側において樹脂封止されていることを特徴とするICカードモジュール。
【請求項2】
前記複数のインタフェース用電極の少なくとも一部が、前記モジュール基板の表面側の一部領域に貼着される少なくとも2つのアンテナ接続用端子であることを特徴とする請求項1に記載のICカードモジュール。
【請求項3】
前記複数のインタフェース用電極の少なくとも一部が、前記モジュール基板の裏面に相互に平面的に分離して貼着する複数のモジュール電極であって、
前記モジュール基板が、前記ICチップの電極パッドと前記モジュール電極間をワイヤボンディングにより接続するために前記モジュール電極が露出するように開口した開口部を有し、
前記モジュール電極の前記開口部内の露出面と対応する前記ICチップの電極パッド間が、前記開口部を通過するワイヤボンディングにより電気的に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載のICカードモジュール。
【請求項4】
前記凹部が前記モジュール基板を貫通して形成され、
前記補助部品と前記ICチップが、前記モジュール電極の前記凹部内に露出した露出面に絶縁性接着剤で接着固定されていることを特徴とする請求項3に記載のICカードモジュール。
【請求項5】
前記モジュール基板がガラスエポキシ系材料で作製されており、
前記補助部品と前記ICチップを前記凹部に接着固定するのに使用される接着剤が、80℃〜120℃の温度範囲で硬化する接着剤、または、25℃付近の常温で硬化が促進する接着剤であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のICカードモジュール。
【請求項6】
前記接着剤が、25℃付近の常温でありながら紫外線を照射することにより硬化する接着剤であることを特徴とする請求項5に記載のICカードモジュール。
【請求項7】
前記補助部品の電極の最表層部がニッケルめっき処理または銀めっき処理が施されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のICカードモジュール。
【請求項8】
前記複数のICチップとして、ICカードに要求される本来の機能を実行するための第1のICチップと、ICタグ機能を実行する第2のICチップを備え、
前記第2のICチップの電極パッドが、対応する前記第1のICチップの電極パッドとワイヤボンディングにより電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のICカードモジュール。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載のICカードモジュールの製造方法であって、
前記補助部品の電極と対応する前記ICチップの電極パッド間、または、前記インタフェース用電極と対応する前記ICチップの電極パッド間を、ワイヤボンディングにより電気的に接続する際に、
前記モジュール基板の裏面に近い方にワイヤボンディング用のワイヤの一方端を先に接続し、引き続いて、前記裏面から遠い方に前記ワイヤの他方端を接続することで、前記ワイヤのルーピング形成位置を前記裏面側に近づけることを特徴とするICカードモジュールの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか1項に記載のICカードモジュールをICカード用基材に設けられた凹部に嵌め込み接着固定して形成されることを特徴とするICカード。
【請求項11】
銅またはアルミニウムにより形成されたアンテナ線を埋設してなるICカード用基材と、請求項2に記載のICカードモジュールを備えてなり、
前記アンテナ線の両端部と、前記ICカードモジュールの前記アンテナ接続用端子を夫々電気的に接続するとともに、前記ICカードモジュールを前記ICカード用基材に設けられた凹部に嵌め込み接着固定して形成されることを特徴とするICカード。
【請求項1】
ICカード用基材に埋め込んで使用されるICカードモジュールであって、
絶縁性薄板状基材の表面及び裏面の少なくとも何れか一方面に複数の導電性のインタフェース用電極を貼着してなるモジュール基板、及び、前記モジュール基板に搭載される1または複数の補助部品と1または複数のICチップを備えてなり、
前記モジュール基板の表面側の所定の位置に、前記補助部品と前記ICチップを収容する凹部が設けられ、
前記補助部品と前記ICチップが、夫々の電極面が前記モジュール基板の表面側に位置するように前記凹部に接着固定され、
前記補助部品の電極と対応する前記ICチップの電極パッド間がワイヤボンディングにより電気的に接続され、
前記インタフェース用電極と対応する前記ICチップの電極パッド間がワイヤボンディングにより電気的に接続され、
前記補助部品と前記ICチップと前記ワイヤボンディングに使用したワイヤが、前記モジュール基板の表面側において樹脂封止されていることを特徴とするICカードモジュール。
【請求項2】
前記複数のインタフェース用電極の少なくとも一部が、前記モジュール基板の表面側の一部領域に貼着される少なくとも2つのアンテナ接続用端子であることを特徴とする請求項1に記載のICカードモジュール。
【請求項3】
前記複数のインタフェース用電極の少なくとも一部が、前記モジュール基板の裏面に相互に平面的に分離して貼着する複数のモジュール電極であって、
前記モジュール基板が、前記ICチップの電極パッドと前記モジュール電極間をワイヤボンディングにより接続するために前記モジュール電極が露出するように開口した開口部を有し、
前記モジュール電極の前記開口部内の露出面と対応する前記ICチップの電極パッド間が、前記開口部を通過するワイヤボンディングにより電気的に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載のICカードモジュール。
【請求項4】
前記凹部が前記モジュール基板を貫通して形成され、
前記補助部品と前記ICチップが、前記モジュール電極の前記凹部内に露出した露出面に絶縁性接着剤で接着固定されていることを特徴とする請求項3に記載のICカードモジュール。
【請求項5】
前記モジュール基板がガラスエポキシ系材料で作製されており、
前記補助部品と前記ICチップを前記凹部に接着固定するのに使用される接着剤が、80℃〜120℃の温度範囲で硬化する接着剤、または、25℃付近の常温で硬化が促進する接着剤であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のICカードモジュール。
【請求項6】
前記接着剤が、25℃付近の常温でありながら紫外線を照射することにより硬化する接着剤であることを特徴とする請求項5に記載のICカードモジュール。
【請求項7】
前記補助部品の電極の最表層部がニッケルめっき処理または銀めっき処理が施されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のICカードモジュール。
【請求項8】
前記複数のICチップとして、ICカードに要求される本来の機能を実行するための第1のICチップと、ICタグ機能を実行する第2のICチップを備え、
前記第2のICチップの電極パッドが、対応する前記第1のICチップの電極パッドとワイヤボンディングにより電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のICカードモジュール。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載のICカードモジュールの製造方法であって、
前記補助部品の電極と対応する前記ICチップの電極パッド間、または、前記インタフェース用電極と対応する前記ICチップの電極パッド間を、ワイヤボンディングにより電気的に接続する際に、
前記モジュール基板の裏面に近い方にワイヤボンディング用のワイヤの一方端を先に接続し、引き続いて、前記裏面から遠い方に前記ワイヤの他方端を接続することで、前記ワイヤのルーピング形成位置を前記裏面側に近づけることを特徴とするICカードモジュールの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか1項に記載のICカードモジュールをICカード用基材に設けられた凹部に嵌め込み接着固定して形成されることを特徴とするICカード。
【請求項11】
銅またはアルミニウムにより形成されたアンテナ線を埋設してなるICカード用基材と、請求項2に記載のICカードモジュールを備えてなり、
前記アンテナ線の両端部と、前記ICカードモジュールの前記アンテナ接続用端子を夫々電気的に接続するとともに、前記ICカードモジュールを前記ICカード用基材に設けられた凹部に嵌め込み接着固定して形成されることを特徴とするICカード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図5】
【図10】
【図11】
【図14】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図14】
【公開番号】特開2008−97073(P2008−97073A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274695(P2006−274695)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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