説明

III−V/II−VI半導体インターフェイス製造法

【課題】III−V/II−VI半導体インターフェイスを再現的に製造する。
【解決手段】III族元素ソース(68、170)、II族元素ソース(72、92’)、V族元素ソース(70、172)、及びVI族元素ソースを含む分子線エピタキシー(MBE)装置(50、150)を準備する。III−V半導体表面を有する基板(12)をMBE装置(50、150)内に位置決めする。基板(12)を次にIII−V半導体成長に適切な温度まで加熱し、結晶質III−V半導体バッファ層(14)を成長させる。基板の温度を交互分子線エピタキシーによってII−VI半導体成長に適切な温度まで調整し、結晶質II−VI半導体バッファ層(16)をIII−Vバッファ層上に成長させる。II族及びVI族ソースを操作して、III−Vバッファ層をVI族元素フラックスに暴露する前にII族元素フラックスに暴露させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[政府所有権]
米国政府は、Advanced Research Projects Agency(国防総省)及びDepartment of the Army(陸軍省)/Army Research Office(陸軍研究機関)承認の契約第DAAH04−94−C0049号、及びAdvanced Research Projects Agency(国防総省)及びOffice of Naval Research(海軍研究機関)承認の契約第N00014−92−C−0122号により本発明に一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、一般にII−VI半導体電子デバイスを製造するための方法に関する。厳密には、本発明は、III−V半導体及びII−VI半導体の層間インターフェイスを製造するための方法である。
【背景技術】
【0003】
[関連技術の説明]
ZnSe、MgZnSSe、及び他のII−VI半導体から製造される電子デバイスは、一般に知られている。実例により、これらや、他のII−VI半導体化合物から分子線エピタキシー(MBE)によって製造されるレーザーダイオードが、ハーゼ(Haase)その外の米国特許第5,291,507号、及びチェン(Cheng)その外の米国特許第5,319,219号で開示される。これらのデバイスは、典型的にGaAs、または他のIII−V半導体化合物の基板上に製造される。
【0004】
残念ながら、積層欠陥として知られる欠陥が、MBE成長中にIII−V及びII−VI半導体のインターフェイスに、またはその近傍に形成する。III−V/II−VIインターフェイス内の積層欠陥密度を測定するための技術は、知られており、カマタその外の記事Characterization of ZnSSe on GaAs by Etching and X−ray Diffraction, J. Crystal Growth、第142巻、31〜36頁(1994年)で開示される。これらの積層欠陥が、非放射再結合センターとして作用し、再結合エネルギーを散逸し、さらなる欠陥を発生させ、それによってこれらのデバイスの動作寿命を短縮するので、これらの積層欠陥の存在を最小限に抑えることが重要となる。
【0005】
III−V基板上にII−VI半導体を成長させるため、及びII−VI半導体成長用の基板を準備するための周知の方法が、後述の非特許文献1乃至5で開示される。
【0006】
一般に、あるアプローチは、天然酸素を取り除くために(II−VI成長チャンバ、または分離超高真空チャンバ内のいずれかで)加熱されている裸GaAs基板上にZnSeを核形成させることを含む。但し、この方法には問題が多々ある。GaAs表面を熱的に処理すると、表面粗さを増す傾向があり、基板の脱酸素が不完全となる可能性が残る。開始GaAs表面の化学量は、この方法で制御するのが困難である。II−VI成長チャンバ内のVI族元素によるGaAs表面の汚染が観察された。この方法で高質インターフェイスを再現的に得ることも困難である。
【0007】
他のアプローチは、Asフラックス下で分離GaAs成長チャンバ内でGaAs基板を吸着(Ga蒸着及び表面粗さを低減するべく)することを含む。GaAsバッファ層は、その基板上で成長されて平滑なGaAs表面を得る。このウェハーは、次に冷却され、真空中でII−VI成長チャンバに移され、ZnSe核形成のために約300℃まで加熱される。上述の技術に改良が加えられても、この成長法は、尚も、GaAsバッファ層の冷却や超高真空配管を介しての移送による汚染の増加、及びVI族ソースによる汚染など、多数の欠点を持つ。これらや他の理由で、十分なレベルの再現性が実証されなかった。
【0008】
一般に、これらの周知技術を用いて約1〜5×10/cm未満の積層欠陥密度でIII−V/II−VIインターフェイスを再現的に製造することは困難である。レーザーダイオード及び他のII−VI半導体デバイスの工業的実用性は、これらのデバイスがより低い積層欠陥密度で再現的に製造できるようにする方法によって大いに高められる。
【0009】
【非特許文献1】S.グハ(Guha)その外のStructural Quality and the Growth Mode in Epitaxial ZnSe/GaAs(100), J. Appl. Phys.,第73巻、5号、2294〜2300頁(1993年3月)。
【非特許文献2】J.ゲインズ(Gaines)その外のStructural Properties of ZnSe Films Grown by Migration Enhanced Epitaxy, J. Appl. Phys., 第73巻、5号、2294〜2300頁(1993年3月)。
【非特許文献3】D.リー(Li)その外のZnSe Nucleation on the GaAs(001):Se−(2×1) Surface Observed by Scanning Tunneling Microscopy, J. Vac. Sci Technol. B.(1994年7月/8月)。
【非特許文献4】チェン(Cheng)その外のMolecular−Beam Epitaxy Growth of ZnSe Using a Cracked Selemium Source, J. Vac. Sci. Technol. B., 第8巻、2号(1990年3月/4月)。
【非特許文献5】E.H.C. Parker編、The Technology and Physics of Molecular Beam Epitaxy, Prenum Press, 1985年。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、III−V/II−VI半導体インターフェイスを製造するための改良した方法である。この方法が1×10/cm未満の積層欠陥密度を有するこのタイプのインターフェイスを再現的に製造するために使用できることは、試験により実証された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この方法には、少なくともIII族元素ソース、II族元素ソース、V族元素ソース、及びVI族元素ソースを含む分子線エピタキシー(MBE)装置を準備することを含む。インターフェイスがその上に製造されるIII−V半導体表面を有する半導体基板は、MBE装置内に位置決めされる。この基板は、次にIII−V半導体成長に適切な温度まで加熱され、結晶質III−V半導体バッファ層をその基板のIII−V表面上に成長させる。半導体基板の温度は、次にII−VI半導体成長に適切な温度まで調整され、交互分子線エピタキシーによって結晶質II−VI半導体バッファ層をIII−Vバッファ層上に成長させる。II族及びVI族ソースは、III−Vバッファ層をVI族元素フラックスに暴露する前にIII−Vバッファ層をII族元素フラックスに暴露するように作動される。
【0012】
本発明の一実施例において、この方法は、超高真空移送管によって連通した第1及び第2のMBEチャンバを含むMBE装置内で実行される。この第1のMBEチャンバには、少なくともIII族元素ソース及びV族元素ソースを含む。この第2のMBEチャンバには、少なくともII族元素ソース及びVI族元素ソースを含む。この半導体基板は、第1のMBEチャンバ内で、III−V成長温度まで加熱され、III−Vバッファ層を基板上に成長させる。III−Vバッファ層を有する半導体基板は、次に超高真空移送管を通して第2のMBEチャンバに移送される。基板の温度はII−VI成長温度まで調整され、この基板はII族元素を蒸着させることによって処理される。II−VIバッファ層は、第2のMBEチャンバ内での単原子層エピタキシー(MEE)によって処理されたIII−Vバッファ層上に成長させる。
【0013】
他の実施例では、インターフェイスは、少なくともIII族元素ソース、II族元素ソース、バルブ付きV族元素ソース、バルブ付きVI族元素ソースを含むMBEチャンバ内で成長させる。この基板は加熱され、VI族ソースのバルブが閉じている間にIII−Vバッファ層が基板上に成長させる。この基板温度は、次に調整され、基板がII族元素を蒸着させることによって処理される。II−VIバッファ層は、V族ソースのバルブが閉じている間に単原子層エピタキシー(MEE)によって処理されたIII−Vバッファ層上に成長させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に従って製造されたIII−V/II−VI半導体インターフェイス10を含むレーザーダイオード8は、第1図に示される。レーザーダイオード8は、n型GaAs(すなわちIII−V)半導体基板12上に製造された利得導波型分離閉じ込めワイドバンドギャップII−VIデバイスである。示された実施例では、インターフェイス10には、基板12の表面上のn型GaAs半導体バッファ層14、及びGaAsバッファ層上のn型ZnSe(すなわちII−VI)半導体オーミック接触層またはバッファ層16を含む。インターフェイス10は、III−V基板12の結晶質格子と基板上に蒸着したII−VI半導体層の格子との間に低積層欠陥密度遷移を提供し、それによりレーザーダイオードの動作時の機能特性を高めることができる。1×10/cm未満の積層欠陥密度を有するIII−V/II−VIインターフェイス10は、この技術によって再現的に成長させた。
【0015】
このデバイスの分離/閉じ込め構造は、n型ZnSSe導光層20とp型ZnSSe導光層22とによって形成されたpn接合範囲内の真性型CdZnSSE量子井戸活性層18を含む。量子井戸層18内で発生された光は、n型MgZnSSeクラッド層24とp型MgZnSSeクラッド層26とによる導光層20、22の範囲内に閉じ込められる。p型ZnSeTe分布構成オーミック接触層28はp型クラッド層26の上に重なる。オーミック接触層28への電気的接触は、Pd電極30によってなされる。オーミック接触層28及び電極30は、絶縁層32に切り開かれた縞状に形成される。薄いTi層34及び最終Au層36は、電極30と絶縁層32との上に覆うように適用されてリードボンディングを容易にする。基板12の下側への電気的接触は、基板接触層38によってなされる。
【0016】
第2図は、レーザーダイオード8を製造するために、本発明の第1の実施例に従って使用される分子線エピタキシー(MBE)装置50を示す。示されるとおり、MBE装置50には、超高真空移送管56によって連通された第1の成長チャンバ52と第2の成長チャンバ54とを含む。チャンバ52には、高速電子銃58と蛍光スクリーンとを含み、反射高速電子線回折法(RHEED)を利用して半導体層の構造的特性を監視する。このチャンバー52には、フラックスモニター61、基板ヒーター62、熱電対64、及び赤外線高温計66をも含む。
【0017】
バッファ層14、16は、第1の成長チャンバ内の基板12上に成長させる。チャンバ52に設けられたソースには、シャッター付きGa(すなわちIII族元素)放出セル68、バルブ付きAs(すなわちV族元素)分解放出セル70、シャッター付きZn(すなわちII族元素)放出セル72、及びバルブ及びシャッター付きSe(すなわちVI族元素)分解放出セル74を含む。ここで説明される実施例では使用されないが、As放出セルのバルブに加えてシャッターを組み入れても望ましいものとなろう。Si放出セル76及びCl放出セル78(ソース材料としてZnClを使用する)が、n型ドーパントのソースとして提供される。ある実施例では、Seセル74のオリフィスは約5mmよりも小さい。好適実施例では、Seセル74のオリフィスは約2mmである。
【0018】
成長チャンバ54には、高速電子銃80、蛍光スクリーン82、基板ヒーター84、熱電対86、及びフラックスモニター90を含む。チャンバ52、54内の基板温度は、基板のバンドギャップ吸収端を監視する装置(図示せず)によっても測定される。このタイプの吸収端温度測定装置は一般に知られている。つまり、基板ヒーター82からの赤外線光は、チャンバー基板と窓との両方を通って、レンズ及び光ファイバとによって収集される。光ファイバに結合されたコンピューター制御式分光計は、収集された光のスペクトルを連続的に測定する。このバンドギャップ吸収端は、次に分光計によって明瞭に識別できる。吸収端の波長は、次に基板のバンドギャップに依存する周知の温度と比較されて基板温度を再現的に決定する。例えばGaAsのバンドギャップに依存する温度は、J.S.ブレークモアー(Blakemore)の記事Semiconducting and other major properties of gallium arsenide, Journal of Applied Physics,第53巻、10号、p.R155(1982年)で説明される。
【0019】
デバイス層24、20、18、22、26、28は、チャンバ54内で成長させられる。故に、チャンバ54に設けられたソースには、Zn放出セル92、ZnS放出セル94(ZnとSとの両方のソースとして)、Cd放出セル96、Se放出セル98、Mg放出セル100、及びTe放出セル102を含む。Cl放出セル104(ZnClソース材料を使用する)は、n型ドーパントのソースとして提供される。p型ドーパントは、N遊離基(プラズマ)ソース106によって提供される。遊離基ソース106は、フラップバルブ110を通って超純粋Nのソースに接続される。
【0020】
MBE装置50の上述の構成要素は市販されている。実例では、原型のレーザーダイオード8及び後述されるインターフェイスサンプルウェハーを製造するために使用されるMBE装置50には、ミネソタ州、セントポールのEPI MBE Equipment Group、及びPerkin Elmerからの放出セルを備えたPerkin Elmer Model 430装置を含む。ある実施例では、バルブ付きAsセル70は、EPIモデルPE−500V−Asセルであり、バルブ付きSeセル74は、EPIモデルPE−500V−Seセルである。二重フィラメントGaセル68は、バッファ層14の成長中の卵形面欠陥形成を最小限に抑えるために使用される。英国、オックスフォードシアのOxford Applied Research Ltd.からの遊離基プラズマソース106は、MBE装置内に組み込まれた。チャンバ52、54、及び移送管56は、イオンポンプ、クライオポンプ、及びターボ分子ポンプを用いる従来の方法でポンプ作動される。現場RHEED技術は、成長する半導体の再構成された表面層を監視するために使用された。これらのタイプの技術は、知られており、例えば、E.H.C. Parker, Plenum Press,1985年、編のThe Technology and Physics of Molecular Beam Epitaxyからの「MBE Surface and Interface Studies,」の第16章で開示されている。約500℃よりも低いと報告されるチャンバ52内の基板温度測定値は、一般に吸収端測定値に基づき、この温度よりも高い測定値は、一般に赤外線高温計66からの読みに基づく。MBE装置50が運転のために設定されて、ソース材料が充填された後、従来通りの手順が採用されて装置をベークし、充填材料のガス抜きを行う。レーザーダイオード8は、従来の方法でサンプルマニピュレータ(図示せず)によって装置50を通って移動されるインジウムフリーモリブデンブロック(図示せず)上に製造される。レーザーダイオード8が製造されるプロセスの次の説明の全体を通じて使用されるとき、用語「ウェハー」は、半導体基板12、及び引用されるプロセスの段階を経て成長させる、または基板上に蒸着させる半導体、金属、絶縁体、または他の材料の任意の層を意味する。
【0021】
チャンバ52は、III−V/II−VIインターフェイス10をその上に成長させるべくGaAs基板12の導入前にSe及び他の汚染を最小限に抑えるような方法で準備される。この準備手順には、サンプルマニピュレータ及び裸モリブデンブロック、Gaセル68及びZnセル72をガス抜きすることを含む。サンプルマニピュレータは、ガス抜きのために約60分間、約700℃まで裸モリブデンブロックサンプルを加熱することによってガス抜きされ、その後約400℃の温度まで下げられる。放出セル68、72は、それらをガス抜き期間、それらの動作温度よりも高い約30℃の温度まで加熱することによってガス抜きされる。ガス抜き後、Gaセル68及びZnセル72は、それらの動作温度(典型的にGaセルに対しては約1,080℃、Znに対しては320℃)まで下げられる。Gaセル68をガス抜きすると、チャンバ壁のSeとの化学反応を経てチャンバ52内の周囲Seのレベルも減少させる。Si及びClセル76、78の温度は、それぞれ、上述のガス抜き行程中にそれらの動作温度まで昇温される。As及びSeセル70、74のバルクるつぼは、それぞれ、それらの動作温度まで加熱され、ソース材料をチャンバ52から隔離するためにそれらのバルブ(及びSeセルのシャッター)を閉じた状態で、その温度に維持される。Seセル74の分解ゾーンは、このとき約600℃まで加熱され、Asセル70の分解ゾーンも、このときガス抜きのために約775℃まで加熱される。Seセル74の分解ゾーンは、Asセル70の動作中、約600℃の温度に留まって、セル上で凝縮し、後にZnSe成長中にガスを発生する可能性のあるAsの量を減少させる。チャンバ52の内部に設置されたチタニウム昇華ポンプ(図示せず)もこれらの行程中に作動されて汚染を低減する。先にサンプルブロックに据え付けられ、約300℃の温度で予備ガス抜きされたGaAs基板12は、次にマニピュレータによってチャンバ52内に位置決めされる。
【0022】
基板12は、GaAs バッファ層14の成長を準備するのに脱酸される。この行程は、基板12を酸素脱着すなわち脱酸温度(約600℃)まで加熱しながら、セル70のバルブを開くことによって実行されてチャンバ52内にAsフラックスを提供する。基板12の表面上のRHEEDパターンは、脱酸の指示を得るために加熱動作中に監視され、脱酸が明瞭に観察されるその(脱酸)温度が書き留められる、すなわち記録される。脱酸が観察されると、基板12の温度は、脱酸温度よりも約40℃〜50℃高い温度まで一定期間(約5分間)さらに上昇されていかなる残留酸素も除去する。基板12は、次に冷却され、脱酸温度(すなわち約600℃)にほぼ等しいIII−V半導体成長温度にまで安定化(典型的に5分以下)させる。
【0023】
基板のガス抜き及び脱酸行程に続いて、GaAsバッファ層14の成長は、Gaセル68のシャッターを開くことによって開始される。RHEEDパターンは、GaAsバッファ層14の成長中に監視され、Asフラックスは、成長中のAs安定化(2×4)再構成を維持するのに必要とされるよりも僅かに高いレベルに設定される。As分解セルの温度は、約775℃に維持される。Siセル76のシャッターも開かれて、従来方法で成長するGaAsバッファ層14をSiでn型にドープする。ある実施例では、層14は、約1〜5×1018cm−3の正味ドナー濃度にドープされる。これらの動作特性において、GaAsバッファ層14の成長速度は、約1μm/時であると観察された。
【0024】
GaAsバッファ層14の成長は、放出セル68、76を閉じる(遮断)することによって停止される。このウェハーは、次にZnSeバッファ層16の成長に適した温度まで冷却される。製造プロセスのある実施例では、このウェハーは、約20分間の時間をかけて約315℃まで冷却される。この冷却はAsフラックスの下で開始される。
【0025】
特に、ウェハーが、GaAs成長温度よりも約20℃〜30℃低い温度まで降下すると、Asセル70のバルブは閉じられる。その直後に、RHEEDパターンは、As安定化(2×4)からGa安定化(3×1)に変わる。さらなる冷却の後、RHEEDパターンは、As安定化(2×4)再構成に緩やかに戻る(約400℃〜450℃の温度で)。Asセル70のバルブが閉じられた後、Asセルの分解ゾーンは約500℃まで冷却される。この時に、Seセル74の分解ゾーンは、Seの分解が望まれないので、Se分子の分解がほとんど、または全く生じない温度の、約350℃まで冷却される。GaAsバッファ層14のこの成長行程は、閉じられたSeセル74のバルブで実行される。GaAsバッファ層14は、原型のレーザーダイオード8内で約200〜400nmの範囲内の厚みに成長させた。
【0026】
上述の温度でAsセル70のバルブを閉じることによって、その温度は、バルブの閉時において表面上のAsが去って、最初ウェハーの表面がAs欠陥となるほど十分に高くなると考えられる。但し、さらに冷却されると、下に在るGaAsからのAsは、表面に現れてその空きを埋めるようである。このプロセスは、Asが表面にちょうど来る程度(すなわち越えない)となるように自己制御式であっても良く、それにより積層欠陥がほとんど生じない。
【0027】
GaAsバッファ層14の製造に続いてウェハーが冷却すると(すなわち、Asセル70のバルブが閉じられた後)、ウェハーをZnフラックスに暴露する(すなわちZn処理する)べくZnセル72のシャッターを開くことによってZeSeバッファ層16の成長が準備される。ある実施例では、Znセル72は、ウェハーの温度が約375℃〜425℃まで減少し、かつRHEEDパターンが完全にAs安定化(2×4)に変わった後にシャッターが開かれる。
【0028】
Znセル72のシャッターを開いても、直ちにRHEEDパターンに検出可能な変化は生じない。故に、表面再構成は、As安定化(2×4)のままである。但し、ウェハーを継続的に冷却すると、RHEEDパターンは、2×パターンの半分程度のストリークが約5℃〜10℃の温度降下の過程で消え、As安定化(2×4)から(1×4)へと段階的な再構成変化を示す。この再構成変化が起こる遷移温度は、典型的に約320℃〜330℃である。このウェハーは、次に、遷移温度よりも僅かに低い約315℃のZnSe成長温度に調整されてZnSe層16の成長中に2次元の核形成ができるようにする。成長温度がより高くなると(例えば、遷移温度に接近またはそれよりも高い温度)、益々3次元核形成が起こり、より高い積層欠陥密度となることが観察された。その理由は、Znが遷移温度以上の温度ではGaAsバッファ層14の表面に接着しないということにある。但し、採用された成長温度において、2次元核形成ができるほど十分なZnがバッファ層14の表面上に存在するようである。
【0029】
ZnSeバッファ層16の成長は、ウェハー温度が所望のZnSe成長温度で安定化された後に開始される。ここで説明される実施例では、バッファ層16の成長は、原子層エピタキシー(ALE)及び/または単原子層エピタキシー(MEE)などの交互ビームエピタキシー技術を用いて開始される。これらの半導体成長技術は、一般に知られており、例えばゲインズ(Gaines)その外の記事、Structural Properties of ZnSe Films Grown by Migration Enhanced Epitaxy, J. Appl. Phys., 73巻、6号、2835〜2840頁(1992年3月15日)で開示される。これらの技術を用いて、少なくともバッファ層16の初期部分が、Zn及びSeの一連のオーバーレイ層(例えば単分子層)として形成される。残りのバッファ層16は、約150nmの臨界厚み未満の厚みに従来のMBE技術によって成長させることができる。バッファ層16の成長に続いて観察されるRHEEDパターンは、平滑な2次元成長を示す鮮明ですじ状のパターン(2×1)である。
【0030】
バッファ層16のZn及びSe単分子層の組成及び厚みの制御は、ALE及び/またはMEEによって精密に達成される。単分子層成長は、Znセル72及びSeセル74のシャッターが開/閉されるシーケンス及びタイミングによって主に制御される。Seセル74のバルブは、バッファ層14の成長中は開いたままである。下記のものは、セル72、74、78が作動されてバッファ層16の少なくとも初期部分を成長させるシーケンス及びタイミングである。
【0031】
1.Zn蒸着期間Znセルのシャッターを開く。
【0032】
2.Zn蒸着期間に続いてZnセルのシャッターを閉じ、成長中断期間Znセルシャッター及びSeセルシャッターを閉じたままにする。
【0033】
3.Se蒸着期間Seセルのシャッターを開く。
【0034】
4.Se蒸着期間に続いてSeセルのシャッターを閉じ、成長中断期間Seセルシャッター及びZnセルシャッターを閉じたままにする。
【0035】
5.1〜4のステップを蒸着サイクルの所定回数反復してZnSeバッファ層を成長させる。
【0036】
6.第3サイクル毎にZnセルのシャッターの開閉と共にClセルのシャッターを開閉してZnをドープする、故にZnSeバッファ層をn型にする。
【0037】
ある実施例では、原型のレーザーダイオード8が、上述の方法で、それぞれ約4秒間のZn蒸着期間とSe蒸着期間とで製造された。この実施例での成長中断期間は、約2秒間であった。21回から84回までの蒸着サイクルが使用されて後述されたサンプルウェハー上にバッファ層16を製造した。これらの条件下での蒸着速度は、1サイクル当たり約0.5単分子層であった。これらの原型は、Seバルブが開かれてバッファ層16の第1のSe単分子層を蒸着するまでそれを閉じて成長させた。結果として得られるこれらのバッファ層16の厚みは、約10〜20nmであった。
【0038】
上述のものなどGaAs/ZnSeインターフェイスを含む多数のサンプルウェハーが、GaAs基板上で成長させた。これらのサンプルウェハーは、下記の成長パラメータの範囲を有するバッファ層で成長させた。これらのサンプルの積層欠陥密度は、カマタその外の記事、Characterization of ZnSSe on GaAs by Etching and X−ray Diffraction, Journal of Crystal Growth, 142巻、31〜36頁(1994年)に記述されたものと本質的に同じ手順を利用して測定された。各サンプルは、Br:メタノールの溶液で軽くエッチングされ、その表面は暗視野光学顕微鏡で観察された。それらの積層欠陥密度は、細長い地形的特徴として明瞭に見ることができた。次に示されるものは、これらのサンプルの成長詳細と、測定された積層欠陥密度(/cm)である。
【0039】
【表1】

【0040】
最初の6つのサンプルは、最小限の過剰Asを有するAs安定化(2×4)表面を生成し、しかもその表面はAsが不足した状態とならないようにAsのバルブが閉じていなければならない基板温度の範囲があることを示す。過剰なAsは、積層欠陥のソースであると考えられるが、Asが不足しすぎると表面が粗くなる、故に同じように積層欠陥を形成することとなる。第7と8番目のサンプルは、Zn処理の必要性を示す。つまり、サンプル7の基板温度は、Znを付着させるには高すぎ、しかもサンプル8は、(GaAs表面を飽和させるほど十分な長期間Zn暴露ではないMEEの第1のセグメント以外は)単に成長前にZn暴露を受けていない。いずれの場合も、(2×4)RHEEDパターンは、Zn処理が不十分であることを指示するものとなる。これらのサンプルによって明示されると、上述の方法は、1×10cm未満の積層欠陥密度を有するインターフェイスを再現的に製造されることを可能にし、1×10cmより低い密度が実証されている。1つのチャンバ内でバルブ付きV族及びVI族ソースを使用し、ZnSeバッファ層の成長前にGaAsバッファ層をZnフラックスに暴露するべくソースの作動を通じて行うZn処理は、異価インターフェイスのクロス汚染を明らかに最小限に抑え、それによって不均質性の存在を低減する。バルブ付きV族ソースを使用すると、低ウェハー温度において最小限の過剰Asを有するAs安定化(2×4)表面の準備(Zn処理前の)も可能となる。比較的高成長温度及びMEE核形成を用いると、明らかに成長表面上の原子移動度を増して各単分子層を十分な微細構造集積体と一体化させる。但し、上述のサンプルデータは、ウェハー温度が(2×4)から(1×4)までの遷移温度よりも低くて比較的低欠陥のインターフェイスを生成することを示す。
【0041】
基板12上のインターフェイス10の製造に続いて、このウェハーは、マニピュレータによって移送管56を経てチャンバ54内に移動される。レーザーダイオード8の製造は、次に任意の従来の、または周知の方法で完成される。ある実施例では、成長チャンバ54及び関連したソースは、従来の方法で設定される。より低いMgZn1−xSe1−y:Clクラッド層24は、Mgセル100、ZnSセル94、Seセル98、及びClセル104で成長させた合金である。x及びyの典型値は、それぞれ0.1と0.15であり、GaAs基板12にクラッド層24を呼称格子整合し、しかも2.85eVバンドギャップを提供する。セル94、98、100、104の温度は、約1.0μm/hrの成長速度及び約1×1018cm−3のドーピング濃度(N−N)を提供するフラックスを発生するように設定される。クラッド層24は、この実施例で約315℃の温度のウェハーで約1.0μmの厚みまで成長させる。
【0042】
第1図に示されていないが、ZnSe:Clのほぼ10層の単分子層からなるバッファ層を、ZnSeバッファ層16とクラッド層24との両方の上部表面にチャンバ54内のMEEによって成長させて、次の層(すなわち、クラッド層24及び導光層20のそれぞれ)の成長前に表面を平滑にし易くする。Znセル92、Seセル98、及びClセル104がこれらのバッファ層を成長させるべく作動されるシーケンス及びタイミングは、上述のバッファ層16についてのものと同一である。これらの成長条件(例えば、ソースフラックス及びウェハー温度)は、MEEの2サイクル毎にZnSeの1つの単分子層周りに蒸着させるように選択される。
【0043】
クラッド層24の成長後、及び導光層20の成長前に、このウェハーは、クラッド層がセル92、94、96、98、100、102、104、106と直面しないようにそれて、セルとクラッド層との間に何の直接フラックス通路もないように回転される。それによってシャッターガス抜きからの汚染が低減され、しかもフラックス測定のためにクラッド層24の表面上に材料を蒸着させずにそのシャッターを一時的に開くことができる。ZnSソース94の温度は、ZSe1−y導光層20の成長のために下げられ、このソースのフラックスはGaAs基板12に対してこの導光層をほぼ格子整合させるべく収率y・0.065に設定される。Clソース104の温度も下げられて正味ドナードーピング濃度N−N・2×1017cm−3を生成する。
【0044】
ZnSSe導光層20の成長は、バッファ層のMEE成長の直後に開始する。この導光層20の成長速度は約0.75μm/hrである。この導光層20は、約0.15μmの厚みに成長させる。典型的に、クラッド層24に近接する導光層20の下方部分は、Clでn型にドープされる一方、上方のドーピング防止部分はドープされない。
【0045】
セル94、98の動作条件を妨害することなく、セル104のシャッターを閉じた状態で、CdZn1−xSe1−y量子井戸層18が、Cdセル96のシャッターを開くことによって導光層20上に成長させられる。量子井戸層18は、故にドープされず、x・0.25及びy・0.15となるべく推定される組成でほぼ5nmの厚みに成長させる。
【0046】
量子井戸層18の完成に続いてCdセル96のシャッターを閉じることによって、導光層22の成長が中断することなく開始する。量子井戸層18に近接する導光層20の下方ドーピング防止部分はドープされず、しかも残りの上方部分はNでp型にドープされる。導光層22の成長は、Nプラズマの発生を開始するべく下方部分と上方部分との間で停止できるが、必ずしも停止される必要はない。プラズマ発生はNフラップバルブ110開いてNをチャンバ54に流入させることによって開始する。チャンバ54内のN圧力が約1〜5×10−6Torrに達すると、プラズマソース106の電源のスイッチが入れられる。導光層22の成長は、それから、典型的に約0.15μmの厚みまで継続する。
【0047】
導光層22の完成に続いて、セル94、98、106のシャッターが閉じられる。このウェハーは、次に、導光層22の上部表面がセル100、92、94、98、及びプラズマソース106からそれて直面しない位置に回転される。ZnSセル94の温度は、次に約820℃の元の値まで上昇される。セル94の温度が安定した後、ウェハーは、回転されて元の位置に戻され、MgZn1−xSe1−y:Nクラッド層26の成長が開始される。このクラッド層26は約1時間の期間で約1.0μmの厚みに成長させられ、正味アクセプタ濃度N−N・2×1017cm−3にドープされる。第1図に示されていないが、薄いZnSe:Nバッファ層が、約0.5〜0.7μm/hrの成長速度で約5分間クラッド層26の上部表面上に成長させられる。
【0048】
クラッド層26、及びそのクラッド層上のZnSe:Nバッファ層の完成に続いて、このウェハーは、ZnSe:Nバッファ層がセル92、98、102、及びプラズマソース106からそれて直面しないように再び回転される。ウェハーの温度は、次にグレイディッドp型ZnSeTeオーミック接触層28を成長させるために約250℃まで下降され、このウェハーは回転されて元の位置に戻される。プラズマソース106の電力も、下げられてこの低ウェハー温度における正味アクセプタ濃度N−N ・2×1018cm−3にまで成長接触層28をドープする。
【0049】
接触層28の第1の層(別掲せず)は、ZnSe:Nの層である。ZnSe:N及びZnTe:Nの交互層の短周期超格子は、Teのセル102を使用して第1の層上に成長させられる。ZnTe層の厚みが増される一方、ZnSe:N層の厚みは、接触層の組成を等級づけるべくクラッド層26からの距離が増すと共に減少する。ZnTe:Nの最終層は、約5分間0.5〜0.7μm/hrの速度で超格子の頂部に成長させられる。接触層28の個々の層の全ては、中断することなく成長させられる。28などのグレイディッドオーミック接触層及び関連した製造方法は、一般に知られており、例えば Y.ファン(Fan)その外の記事、Ohmic Contact to p−Zn(S, Se) Using Pseudograged Zn(Te,Se) Structure, J. Vac. Sci. Technol. B.第11巻、4号(1993年7月)、及びGraded Band Gap Ohmic Contact to P−ZnSe, Appl. Phys. Lett., 第61巻、26号(1992年12月)で開示される。
【0050】
接触層28の完成に続いて、このウェハーは、冷却され、MBEチャンバ54から取り出される。レーザーダイオード10は、次に、Pd電極30、絶縁層32、Ti層34、Au層36、及び接触層38をウェハーに適用することによる、チェン(Cheng)その外の米国特許第5,319,219号で示されるものなどの従来の方法で完成される。
【0051】
ある実施例では、接触層38は、基板を数マイクロメートル除去するべく短時間(例えば2分間)GaAs基板12の下方表面をエッチングすることによって形成される。従来のGaAs腐食剤(例えば5HO−1H−1NHOH)がこのために使用できる。5ナノメートルのPd、25ナノメートルのGe、及び200ナノメートルのAuが、基板12の腐食された表面上に順次蒸着させる。Pd、Ge、Au層を含むウェハーは、次に180℃で約2分間窒素または窒素形成ガス内でアニール処理される。他の実施例では、基板表面はほぼ150μmの厚みにまで研磨され、それがエッチングされる前に平滑に磨かれる。
【0052】
第3図は、レーザーダイオード8を製造するべく本発明の第2の実施例に従って使用される分子線エピタキシー(MBE)装置150を示す。示されるごとく、MBE装置150には、超高真空移送管158によって連通された第1の成長チャンバ152及び第2の成長チャンバ54’を含む。チャンバ152には、高速電子銃160及び蛍光スクリーン162を含み、反射高速電子回折(RHEED)を利用して半導体層の構造特性を監視する。チャンバ152には、フラックスモニター164、基板ヒーター166、及び熱電対168をも含む。GaAsバッファ層14は、第1の成長チャンバ152内の基板上に成長させる。チャンバ152に据え付けられたソースには、シャッター付きGa放出セル170、バルブ付きAs分解セル172、及びSi放出セル174(n型ドーパントのソースとして)を含む。
【0053】
成長チャンバ54’は、MBE装置50を参照して上述されたチャンバ54と同一であり、チャンバ54のものと同一であるチャンバ54’の特徴は、参照符号にプライム記号を付けた(例えば「x’」)こと以外同一符号で示される。示されるごとく、チャンバ54’には、高速電子銃80’、蛍光スクリーン82’、基板ヒーター84’、熱電対86’、及びフラックスモニター90’を含む。ZnSeバッファ層16及びデバイス層24、20、18、22、26、28は、チャンバ54’内で成長させる。チャンバ54’に据え付けられたソースには、Zn放出セル92’、ZnS放出セル94’(Sのソースとして)、Cd放出セル96’、Se放出セル98(直径で約5mm未満の、好ましくは約2mmのオリフィスを有する)、Mg放出セル100’、及びTe放出セル102’を含む。Cl放出セル104’(ZnClソース材料を使用する)は、n型ドーパントのソースとして提供される。p型ドーパントは、N遊離基(プラズマ)ソース106’によって提供される。遊離基ソース106’は、フラップバルブ110’を介して超純粋Nのソース108’に接続される。
【0054】
GaAsバッファ層14は、チャンバ152内の基板上に成長させる。このために、サンプルブロックに据え付けられ、約300℃の温度で予備ガス抜きされる基板12が、マニピュレータによってチャンバ152内に配置される。基板12は、GaAsバッファ層14の成長を準備するのに脱酸される。この行程は、セル172のバルブを開いて、チャンバ152内にAsフラックスを提供しながら、基板12をその酸素脱着、すなわち脱酸温度(約600℃)にまで加熱することによって行われる。基板12の表面上のRHEEDパターンは、脱酸の指示を得るためにこの加熱動作中に監視され、脱酸が明白に観察されるその(脱酸)温度は書き留められる、すなわち記録される。脱酸が観察されると、基板12の温度は、一定期間(約5分間)その脱酸温度よりも約40℃〜50℃高い温度までさらに昇温されていかなる残留酸素も除去する。基板12は、次に脱酸温度(すなわち約600℃)にほぼ等しいIII−V半導体成長温度まで冷却され、安定化(典型的に5分以下)される。
【0055】
基板ガス抜き及び脱酸行程に続いて、GaAsバッファ層14の成長が、Gaセル170のシャッターを開くことによって開始される。RHEEDパターンは、GaAsバッファ層の成長中監視され、Asフラックスは必要とされるよりも僅かに高いレベルに設定されて、成長中のAs安定化(2×4)再構成を維持する。As分解セルの温度は、約775℃に維持される。Siセル174のシャッターも開かれて、従来の方法で成長するGaAsバッファ層14をSiでn型にドープする。ある実施例では、層14は約1〜5×1018cm−3の正味ドナー濃度にドープされる。これらの動作特性において、GaAsバッファ層14の成長速度は、約1μm/時と観察された。
【0056】
GaAsバッファ層14の成長は、Ga及びSi放出セル170、174をそれぞれ閉じる(遮断)することによって停止される。そのウェハーは、次に移送路を経て移動するのに適切な温度に冷却される。製造方法のある実施例では、このウェハーは約20分の時間をかけて約300℃の温度まで冷却される。この冷却は、最初Asフラックスの下で行われる。バッファ層が、GaAs成長温度よりも約20℃〜30℃低い温度に到達すると、Asセル172のバルブは閉じられる。その直後に、RHEEDパターンは、As安定化(2×4)からGa安定化(3×1)に変化する。さらに冷却すると、RHEEDパターンは、緩やかに変化して(約400〜450℃の温度で)As安定化(2×4)に戻る。Asセル172のバルブが閉じられた後、Asセルの分解ゾーンは、500℃まで冷却される。
【0057】
他の実施例(図示せず)では、シャッター付きAs分解放出セルが、バルブ付きAs分解セル172の代わりに使用される。この実施例では、Asセルは、GaAsバッファ層14の成長後にウェハーが約300℃の温度に冷却されたときにシャッターが閉じられる。RHEEDパターンは、最終的に(2×4)から、GaAs表面上に過剰Asが存在することを示すc(4×4)まで変化する。これはバッファ層14を準備するための最良の方法であるとは現在では考えられていないが、後述される移送及びZnSe成長開始技術を用いることによって比較的低積層欠陥密度を達成することが尚も可能である。
【0058】
GaAsバッファ層14の成長に続いて、ウェハーは、移送管158を経てチャンバ152からチャンバ54’に移送される。このウェハー移送は、移送管158内の粒子による汚染を最小限に抑えるべく素早く実行され、約300℃の温度で開始される。この上昇させた温度で移送を開始すると、移送中にバッファ層14の表面上で汚染物質が凝縮するのを最小限に抑え易くする。移送前のウェハーをこの温度で維持すると、チャンバ152内の任意の残留Asがバッファ層14の表面に付着することを防止する。この移送方法は、故にバッファ層14、16との間のインターフェイスにおける積層欠陥を低減し易くする。
【0059】
このウェハーがチャンバ54’に移送された後、その温度は速やかに上昇される。開始GaAs表面がc(4×4)である実施例では、温度は、RHEEDパターンが、過剰Asの除去を示すa(2×1)または(2×4)に変わるまで昇温される。このRHEEDパターン変化は、典型的に、ほぼ10分間でこのレベルまで上昇される約450℃の基板温度において観察される。約1mmの中央オリフィスを備えたプラグを有するSe放出セル98’を使用すると、より広いオリフィスを備えた、またはオリフィスプラグを備えていない放出セルよりも良好なSeフラックスの遮断を提供する。温度が上げられている期間、そのウェハーは、任意のソースとGaAsバッファ層14の表面との間にいかなる直接路も存在しないようにチャンバ54’内に配置される。このウェハーは、パターン変化を観察するべくRHEEDパターンが監視される場合、回転されてバッファ層14の表面をソースに向ける。このような成長チャンバ54’の動作は、バッファ層14、16の間のインターフェイスにおける積層欠陥の起こりそうなソースを低減する。
【0060】
c(4×4)RHEEDパターンが変化する遷移温度は、記録される。基板は、次に約1または2分間その遷移温度よりも約20℃高い温度にまで加熱されて完全な遷移を確実に行う。次に、このウェハーは、約280℃〜320℃のZnSe成長温度まで冷却される。Zn放出セル92’のシャッターは、その温度が約400℃より下に降下すると開かれてウェハーをZnフラックスに暴露させる。
【0061】
開始GaAs表面が(2×4)である他の実施例では、ウェハーの温度は、約10分間の時間にわたってZnSe成長温度(約280℃〜320℃)まで昇温される。その温度が昇温されると同時に、そのウェハーは、チャンバ内の任意のソースとGaAsバッファ層14の表面との間にいかなる直接路も存在しないようにチャンバ54’内で方向回転される。ウェハーの温度が安定化されると、そのウェハーは成長の準備のためにバッファ層14の表面をソースに向くように回転される。Zn放出セル92’のシャッターは、次に開かれてそのウェハーをZnフラックスに暴露させる。
【0062】
他の実施例では、Zn放出セル92’のシャッターは、ウェハー温度が約430℃〜470℃の呼称値に達して開かれると同時に、バッファ層14の表面はソースと直面せずにそれるように回転される。ソースとGaAsバッファ層14の表面との間にいかなる直接路もないので、汚染の可能性がさらに低減される。このウェハーは、次にその表面に向けて回転され、温度がZnSe成長温度に調節されるとRHEEDパターンが観察される。
【0063】
ZnSeバッファ層16の成長は、ウェハー温度が所望のZnSe成長温度で安定化すると開始される。ZnSeバッファ層16は、次にMBE装置50を参照して上述された交互分子線エピタキシー技術(例えば、ALEまたはMEE)を利用して成長させられる。GaAs基板上に上記方法でMBE装置150を用いて成長させたGaAs/ZnSeインターフェイスを含むサンプルウェハーは、ほぼ1×10/cmに近い積層欠陥密度であった。ZnSeバッファ層16の成長に続いて、チャンバ54’は、上述のMBE装置50のチャンバ54と同様の方法で作動されてデバイス層24、20、18、22、26、28を成長させることができる。クラッド層24の成長前に、ZnSeの層(図示せず)は、上記MEE成長技術を使用してバッファ層16上に成長させることができる。ある実施例では、MEEが10サイクル以上使用されて、レーザーダイオード8の次の層を成長させる前に、バッファ層16上にZnSeの層を成長させる。接触層28の成長が完了すると、そのウェハーは、冷却され、MBEチャンバ54’から取り出され、電極30、絶縁層32、Ti層34、Au層36、及び接触層38をそのウェハーに適用することによるチェン(Cheng)その外の米国特許第5,319,219号に記述されるような従来の方法で完成される。
【0064】
本発明は好適実施例を参照して説明してきたが、当業者には、変更が、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく形式及び詳細において実行可能であることは理解されよう。厳密に言えば、GaAs基板上のZnSeインターフェイスを参照して説明したが、本発明は、GaP及び他のIII−V半導体基板上にZnSSe、CdZnSSe、MgZnSSe、及び他のII−VI半導体化合物の層を成長させるためにも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明により製造されたIII−V/II−VI半導体インターフェイスを含むII−VI半導体レーザーダイオードの構造を示す(一定の縮尺率でない)断面図である。
【図2】第1図に示されるIII−V/II−VIインターフェイス及びレーザーダイオードを製造するために本発明の第1実施例に従って使用された分子線エピタキシー装置の概略図である。
【図3】第1図に示されるIII−V/II−VIインターフェイス及びレーザーダイオードを製造するために本発明の第2実施例に従って使用された分子線エピタキシー装置の概略図である。
【符号の説明】
【0066】
12 N型GaAs基盤
14 N型GaAsバッファ層
16 N型ZnSeバッファ層
18 CdZnSSe量子井戸
20 N型ZnSSe導光層
22 P型ZnSSe導光層
24 N型MgZnSSeクラッド層
26 P型MgZnSSeクラッド層
28 接触層
30 Pd
32 絶縁層
38 接触層
50 分子線エピタキシー(MBE)装置
68 III族元素ソース
70 V族元素ソース
72 II族元素ソース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III−V/II−VI半導体インターフェイスを製造する方法であって、
少なくともIII族元素ソースと、II族元素ソースと、V族元素ソースと、バルブを備えたVI族元素ソースとを含む分子線エピタキシー(MBE)装置を準備するステップと、
前記インターフェイスがその上に製造されるべきIII−V半導体表面を有する半導体基板を準備し、前記基板を前記MBE装置内に配置するステップと、
VI族元素ソース上のバルブが閉じられている間に、III−V半導体成長に適した温度に前記半導体基板を加熱し、前記基板のIII−V半導体表面上に結晶性III−V半導体バッファ層を成長させるステップと、
前記III−Vバッファ層を成長させた後にII−VI半導体成長に適した温度に前記半導体基板の温度を調整し、前記III−Vバッファ層上に結晶性II−VI半導体バッファ層を成長させるステップであって、当該ステップは、
前記半導体基板の温度を、III−V半導体成長温度よりも低いII−VI半導体成長温度まで低下させるステップと、
前記半導体基板の温度が、III−V半導体成長温度より低くII−VI半導体成長温度よりも高い温度に達した時、III−Vバッファ層をII族元素フラックスに曝すためにII族ソースを操作するステップと、さらに
前記半導体基板の温度がII−VI半導体成長温度に達したとき、交互ビームエピタキシーによってII−VIバッファ層を成長させるために、II族およびVI族ソースを操作するステップを含み、当該ステップは、III−Vバッファ層をII族元素フラックスに曝露して、III−Vバッファ層をVI族元素フラックスに曝露しVI族元素の層を成長させる以前にII族元素の層が成長するように、II族およびVI族ソースを操作する、III−V/II−VI半導体インターフェイスを製造する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記III−V半導体成長温度は600℃であり、II−VI半導体成長温度は315℃で、さらに、前記II族元素フラックスはZnを含む、III−V/II−VI半導体インターフェイスを製造する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
MBE装置を準備する前記ステップは、
少なくともIII族元素ソースおよびV族元素ソースを含む第1のMBEチャンバを準備するステップと、
少なくともII族元素ソースおよびVI族元素ソースを含む第2のMBEチャンバを準備するステップと、
前記第1および第2のMBEチャンバ間に超高真空移送管を準備するステップと、を含み、
半導体基板を加熱し、III−Vバッファ層を成長させる前記ステップは、
前記第1のMBEチャンバ内で前記半導体基板を加熱するステップと、
前記第1のMBEチャンバ内で前記III−Vバッファ層を成長させるステップと、を含み、
前記半導体基板の温度を調整し、前記II−VIバッファ層を成長させるステップは、
前記移送管を介して前記第1のチャンバから前記第2のチャンバにIII−Vバッファ層を備えた前記半導体基板を移送するステップと、
前記III−Vバッファ層が(2×4)再構成を示した後、前記第2のMBEチャンバ内の交互ビームエピタキシーによって前記III−Vバッファ層上に前記II−VIバッファ層を成長させるステップであって、前記III−Vバッファ層をVI族元素フラックスに曝露しVI族元素の層を成長させる以前に前記III−Vバッファ層をII族元素フラックスに曝露することを含む、前記II−VIバッファ層を成長させるステップと、を含む、III−V/II−VI半導体インターフェイスを製造する方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記温度の調整は、温度を315℃以上でかつ600℃以下とし、さらに前記II族元素フラックスはZnを含む、III−V/II−VI半導体インターフェイスを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−4962(P2008−4962A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233233(P2007−233233)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【分割の表示】特願平9−522092の分割
【原出願日】平成8年12月5日(1996.12.5)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【出願人】(507301280)フィリップス エレクトロニクス ナムローゼ フェンノートシャップ (1)
【Fターム(参考)】