説明

MIF阻害剤

非置換または置換(C3−8)シクロアルキル、(C1−4)アルキル(C3−8)シクロアルキル、(C6−18)アリールまたは(C6−18)アリール(C1−4)アルキルにより窒素原子で置換されている3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オンおよび医薬としてのそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIF阻害剤、例えば薬学的に活性な、例えばヒトマクロファージ遊走阻害因子(MIF)の互変異性化酵素活性の阻害剤である化合物、例えば非置換または置換(C3−8)シクロアルキル、(C3−8)シクロアルキル(C1−4)アルキル、(C6−18)アリール、または(C6−18)アリール(C1−4)アルキルにより窒素原子で置換されている3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オンに関する。
【背景技術】
【0002】
MIFは多種多様な細胞および生物活性を有するサイトカインである(レビュー:Calandra et al., Nat.Rev.Immunol.3:791-800. 2003; Orita at al., Curr.Pharm.Design 8:1297-1317, 2002; Nishihira, J Interferon Cytokine Res 20:751-762, 2000; Swope & Lolis, Rev. Physiol. Biochem. Pharmacol. 139:1-32, 1999; Metz & Bucala, Adv. Immunol. 66:197-223, 1997参照)。MIFがマクロファージのランダムな遊走を阻害し、そして遅延型過敏反応に関連することが見いだされている(George & Vaughan, Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 111:514-521, 1962; Weiser et al., J. Immunol. 126:1958-1962, 1981; Bloom & Bennett, Science, 153:80-82, 1966; David, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 56:72-77, 1966)。MIFはまたマクロファージ付着、ファゴサイトーシスおよび殺腫瘍活性を増強することが見いだされている(Nathan et al., J. Exp. Med. 137:275-288, 1973; Nathan et al., J. Exp. Med. 133:1356-1376, 1971; Churchill et al., J. Immunol. 115:781-785, 1975)。
【0003】
組み換えヒトMIFは当初はヒトT細胞ライブラリーからクローン化され(Weiser et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 7522-7526, 1989)、そしてインビトロで細胞内寄生体および腫瘍細胞を殺す血液由来マクロファージを活性化し、IL−1βおよびTNFα発現を刺激し、そして一酸化窒素合成を誘導することが見いだされた(Weiser et al., J. Immunol. 147:2006-2011, 1991; Pozzi et al., Cellular Immunol. 145:372-379, 1992; Weiser et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:8049-8052, 1992; Cunha et al., J. Immunol. 150:1908-1912, 1993)。
【0004】
さらに最近、MIFが免疫系のサイトカイン生成物だけでなく、内分泌系、特に下垂体のホルモン様生成物でもあることを見いだした。この研究は、炎症応答の重症度を制限および抑制するグルココルチコイドの通常の活性がMIFにより阻害されるとの効果により、グルココルチコイド(内因性に放出されたおよび治療的投与による両方)の抗炎症性作用の負の調節剤としてMIFの強力な活性を強調し、したがって内因性MIF応答は様々な炎症性疾患および状態の原因または増悪因子として見なし得る(レビューDonnelly and Bucala, Molecular Medicine Today 3:502-507, 1997)。
【0005】
さらなる生物学的活性は刺激T細胞の調整(Bacher et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:7849-7854, 1996)、IgE合成の調整(Mikayama et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10056-60, 1993)、p53腫瘍抑制タンパク質の機能的不活化(Hudson et al., J. Exp. Med. 190:1375-1382, 1999)、グルコースおよび炭水化物代謝の制御(Sakaue et al., Mol. Med. 5:361-371, 1999)、ならびに腫瘍細胞増殖および血管形成の制御(Chesney et al., Mol Med. 5:181-191, 1999; Shimizu et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 264:751-758, 1999; Mitchell & Bucala, Cancer Biol. 10:359-366, 2000)を含む。アテローム発生(Lin et al., Circulation Res. 8:1202-1208, 2000)、喘息(Yamaguchi et al., Clin.Exp.Allergy 30:1244-1249, 2000)、およびマラリア(Martiney et al., Infection Immunity 68:2259-2267, 2000)におけるMIFの役割もまた関係する。
【0006】
抗MIF抗体は様々なモデル:エンドトキシンおよびエクソトキシン誘発毒素ショック(Bernhagen et al., Nature, 365:756-759, 1993; Kobayashi et al., Hepatology, 29:1752-1759, 1999; Calandra et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 95:11383-11388, 1998; Makita et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med. 158:573-579, 1998, Calandra et al., Nat. Med. 6:164-170, 2000)、T細胞活性(Bacher et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:7849-7854, 1996)、リウマチ性関節炎(Leech et al., Arthritis Rheum., 42:1601-1608, 1999)、ぶどう膜網膜炎(Kitaichi et al., Curr. Eye Res., 20:109-114, 2000)、糸球体腎炎(Yang et al., Mol.Med. 4: 413-424, 1998)、実験的急性脳脊髄炎(Denkinger et al., J. Immunol. 170: 1274-1282, 2003)、大腸炎(de Jong et al., Nat.Immunol. 2:1061-1066, 2001; Ohkawara et al., Gastroenterol. 123: 256-270, 2002)、および皮膚移植破壊(Hou et al., Transplantation 72: 1890-1897, 2001)を含む自己免疫疾患、ならびにアテローム性動脈硬化症(Chen et al. Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol. 24:709-714, 2004; Schober et al., Circulation 109:380-385, 2004)において活性化されていることが示されている。さらに、抗MIF抗体が腫瘍増殖および血管形成を阻害することが示されている(Chesney et al., Mol.Med. 5:181-191, 1999; Ogawa et al., Cytokine 12:309-314, 2000; Mitchell & Bucala, Cancer Biol. 10:359-366, 2000)。抗MIF抗体の活性に基づいて、低分子量MIF阻害剤の治療可能性は高い。
【0007】
MIFはD−ドパクロム互変異性化酵素と顕著な配列相同性(36%の同一性)を共有し、そして非生理的基質D−ドパクロム(Rosengren et al., Mol. Med. 2:143-149, 1996)およびL−ドパクロムメチルエステル(Bendrat et al., Biochemistry, 36:15356-15362, 1997)(図.1A)の互変異性体化を触媒する酵素活性を有する。さらに、フェニルピルビン酸およびp−ヒドロキシフェニルピルビン酸(Rosengren et al., FEBS Letter, 417:85-88, 1997)、ならびに3,4−ジヒドロキシフェニルクロムアミンおよびノルエピネフリンクロム(Matsunaga et al., J. Biol. Chem., 274:3268-3271, 1999)がMIFの基質である。ヒトMIFの3次元結晶構造はタンパク質がホモ三量体として存在することを示す(Lolis et al., Proc. Ass. Am. Phys. 108:415-419, 1996)。MIF互変異性化酵素活性の様々な阻害剤は下記に記載されている(例えば, Orita et al. J.Med.Chem. 44:540-547, 2001; Senter et al., Proc.Natl.Acad.Sci (USA) 99:144-149, 2002; Dios et al., J.Med.Chem. 45: 2410-2416, 2002; Lubetsky et al. J.Biol.Chem. 277:24976-24982, 2002)。
【発明の開示】
【0008】
我々は今回驚くべきことにMIF阻害剤として作用する新規クラスの化合物を見いだした。
【0009】
1つの局面において、本発明は
3−((C6−12)アリール)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
例えば3−(フェニル)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、3−(ナフチル)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−((C3−8)シクロアルキル)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
例えば3−(シクロヘキシル)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−((C6−12)アリール(C1−4)アルキル)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
例えば3−(ベンジル−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、および
3−((C3−8)シクロアルキル(C1−4)アルキル)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
好ましくは
3−(フェニル)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(ナフチル)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(シクロヘキシル)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、および
3−(ベンジル)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(フェニル)−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(ナフチル)−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(シクロヘキシル)−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、および
3−(ベンジル)−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(フェニル)−7−アミノスルホニルオキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(ナフチル)−7−アミノスルホニルオキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(シクロヘキシル)−7−アミノスルホニルオキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、および
3−(ベンジ)−7−アミノスルホニルオキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オンからなる群から選択される化合物を提供する。
【0010】
他の局面において、本発明は、式
【化1】

例えば3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オンであり、
[式中、
は非置換または置換
−(C3−8)シクロアルキル(C1−4)アルキル、
−(C6−18)アリール(C1−4)アルキル、
−(C3−8)シクロアルキル、または
−(C6−18)アリールであり、
例えば、(C6−18)アリールは所望により他の環(系)と縮環(annelated)していてもよく、
例えば、例えば(C6−18)アリール、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノスルホニルオキシ、(C1−4)アルコキシ、トリ(C1−6)アルキルシリルオキシ、ハロ(C1−4)アルキルまたはハロ(C1−4)アルコキシからなる群から選択される置換基を含み、
は水素または非置換もしくは置換ヒドロキシであり、
例えば水素、ヒドロキシ、アミノスルホニルオキシ、(C1−4)アルコキシ、トリ(C1−6)アルキルシリルオキシまたはハロ(C1−4)アルコキシである。]
の化合物を提供する。
【0011】
式Iの化合物において、好ましくは
が非置換または置換
−シクロヘキシル、
−フェニル、ナフチル、
−他の環(系)と縮環した、例えばクラウンエーテルと縮環したフェニル、
−フェニル(C1−4)アルキル、
例えば(C6−18)アリール、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノスルホニルオキシ、(C1−4)アルコキシ、トリ(C1−6)アルキルシリルオキシ、ハロ(C1−4)アルキル、ハロ(C1−4)アルコキシからなる群から選択される置換基を含む、
が水素、ヒドロキシ、アミノスルホニルオキシ、(C1−4)アルコキシ、トリ(C1−6)アルキルシリルオキシ、ハロ(C1−4)アルキルまたはハロ(C1−4)アルコキシである。
【0012】
他の局面において、本発明は、

−シクロヘキシル、
−ヒドロキシシクロヘキシル、例えば4−ヒドロキシシクロヘキシル、
−フェニル、
−ビフェニリル、例えばビフェニル−4−イル、
−ナフチル、例えばナフサ−1−イル、
−ヒドロキシフェニル、例えば3−ヒドロキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、
−メトキシフェニル、例えば4−メトキシフェニル、
−トリフルオロメトキシフェニル、例えば4−トリフルオロメトキシフェニル、
−ブロモフェニル、例えば4−ブロモフェニル、
−アミノスルホニルオキシフェニル、例えば3−アミノスルホニルオキシフェニル、4−アミノスルホニルオキシフェニル、
−(tert−ブチル)(ジメチル)シリルオキシフェニル、例えば4−(tert−ブチル)(ジメチル)シリルオキシフェニル、
−フェニルメチル、または
−18−クラウン−6、例えばベンゾ−18−クラウン−6と縮環したフェニルであり、
そしてRが上記定義のとおりである式Iの化合物を提供する。
【0013】
他の局面において、本発明は、
が上記定義のとおりであり、そして

−水素、
−ヒドロキシ、
−アミノスルホニルオキシである式Iの化合物を提供する。
【0014】
式Iの化合物において、定義される1つ1つの置換基は例えば互いに独立して定義される置換基の好ましい置換基であり得る。
【0015】
他の局面において、本発明は、
3−シクロヘキシル−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(4−メトキシフェニル)−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(4−ヒドロキシシクロヘキシル−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−フェニル−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(3−ヒドロキシフェニル)−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(4−ヒドロキシフェニル)−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(4−アミノスルファニルオキシフェニル)−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(4−(tert.ブチル)(ジメチル)シリルオキシフェニル)−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(6.7.9.10.12.13.15.16.18.19−デカヒドロ−5,8,11,14,17,20−ヘキサオキシベンゾシクロオクタデセン−2イル)−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(フェニルメチル)−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(4−トリフルオロメチルオキシフェニル)−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(4−メトキシフェニル)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(ビフェニル−4−イル)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(ナフサ−1−イル)−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(4−ブロモフェニル))−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(3−アミノスルファニルオキシフェニル)−7−アミノスルファニルオキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−シクロヘキシル−7−アミノスルファニルオキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(4−アミノスルファニルオキシフェニル)−7−アミノスルファニルオキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(4−メトキシフェニル)−7−アミノスルファニルオキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−フェニル−7−アミノスルファニルオキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−(4−ヒドロキシフェニル)−7−アミノスルファニルオキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、および
3−(フェニルメチル)−7−アミノスルファニルオキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オンからなる群から選択される化合物を提供する。
【0016】
他の局面において、本発明は式
【化2】

の化合物を提供する。
【0017】
本発明により提供される化合物はまた、本明細書で“本発明の(による)化合物”として記す。
【0018】
本発明の化合物は、任意の形態、例えば遊離形、塩形、溶媒和物形および溶媒和物の塩形の化合物を含む。
【0019】
他の局面において、本発明は、塩形の本発明の化合物を提供する。
【0020】
本発明の化合物の塩は、例えば金属塩または酸付加塩を含む薬学的に許容される塩を含む。金属塩は例えばアルカリまたはアルカリ土類金属塩を含み、酸付加塩は有機酸および無機酸、例えばHClとの塩を含む。遊離形の本発明の化合物は、塩形の対応する化合物に変換し得;そしてその逆も同様である。遊離形または塩形および溶媒和物形の本発明の化合物は、遊離形または塩形および非溶媒和物形の対応する化合物に変換し得;そしてその逆も同様である。
【0021】
本発明の化合物は、異性体およびその混合物;例えば光学異性体、ジアセテレオ異性体、シス/トランス配座異性体の形で存在し得る。本発明の化合物は、例えば不斉炭素原子を含み得、そしてしたがってエナンチオマーまたはジアステレオ異性体およびそれらの混合物、例えばラセミ体の形で存在し得る。任意の不斉炭素原子で置換基は(R)−、(S)−または(R;S)−配置、好ましくは(R)−または(S)−配置で存在し得る。
【0022】
例えば、式Iの化合物のRの意味におけるシクロアルキルに結合している、例えばシクロヘキシルのパラ以外の位置に結合している置換基は、該シクロアルキルに結合している7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン基に対して(R)−または(S)−配置であり得る。
【0023】
異性体混合物は、純粋な異性体を得るために適当な例えば慣用の方法にしたがって分離し得る。本発明は、任意の異性体形および任意の異性体混合物の本発明の化合物を含む。互変異性体が存在するとき本発明はまた式Iの化合物の互変異性体を含む。
【0024】
他の局面において、本発明は、式Iの化合物の製造方法を提供する
a.
【化3】

[式中、PROTはヒドロキシ保護基、例えばベンジルである。]または式
【化4】

の化合物、各々を

N−R
[式中、Rは上記定義のとおりである。]の化合物と還元剤、例えばNaBHの存在下で反応させ、式
【化5】

または式
【化6】

の化合物、各々を得
【0025】
b.得られた式IIIまたは式IIIAの化合物、各々をカルボニルジイミダゾールと塩基、例えばトリエチルアミンの存在下で反応させ、式
【化7】

または式
【化8】

の化合物、各々を得
【0026】
c.所望により、Rがヒドロキシである置換基を含むとき、置換ヒドロキシ基を得るために該ヒドロキシ基を該置換基の反応性誘導体と反応させ、
例えば式Iの化合物のRがトリ(C1−6)アルキルシリルオキシである置換基を含む場合、トリ(C1−6)アルキルシリルハロゲン化物、例えばクロライドと、例えばイミダゾールの存在下で反応させ、
例えば式Iの化合物のRがアミノスルホニルオキシである場合、ヒドロキシ基をアミドクロロスルホン酸と反応させ
【0027】
d.所望により例えば触媒水素化による、脱保護、すなわち保護基PROTの除去をし、式Iの化合物を得
【0028】
e.所望により、式IIの化合物が出発物質として使用されるとき、段階dで得られるヒドロキシ基を得るために、置換ヒドロキシ基と該置換基の反応性誘導体を反応させ、
例えば式Iの化合物のRがトリ(C1−6)アルキルシリルオキシである場合、段階dで得られるヒドロキシ基をトリ(C1−6)アルキルシリルハロゲン化物、例えばクロライドと、例えばイミダゾールの存在下で反応させ、
例えばRがアミノスルホニルオキシである場合、段階dで得られるヒドロキシ基をアミドクロロスルホン酸と反応させ、そして
【0029】
f.得られる式Iの化合物を単離する。
【0030】
本明細書に記載の全ての化合物、例えば本発明の化合物は、適当な例えば慣用の方法にしたがって、例えば準じて、または例えば本明細書に記載のとおりに製造し得る。式IIまたは式IIIの化合物は既知であるか、または慣用の方法にしたがって、例えば準じて、得ることができる。
【0031】
我々は驚くべきことにインビトロでのMIFの酵素活性の阻害により、MIF阻害剤として本発明の化合物を同定した。MIF酵素活性の天然基質はまだ確実には分かっていない。しかし、MIFの互変異性化酵素活性は容易に基質D−ドパクロムおよびp−ヒドロキシフェニルピルビン酸(HPP)で証明できる(Rosengren et al. Molec.Med. 2:143-149, 1996; Rosengren E, FEBS Lett. 417:85-88, 1997)。本明細書で使用されるアッセイはマイクロタイタープレートフォーマットに適合させたこのようなHPPアッセイである:
【0032】
−ヒトMIFタンパク質はBernhagen et al. Biochemistry, 33:14144-14155, 1994にしたがって精製される。酵素の希釈は50mMのリン酸ナトリウムバッファー、1mMのEDTA、pH6.5で製造される。
【0033】
−HPPはAldrichから得る。エタノール中の60mMのHPPの貯蔵溶液を製造し、最大4時間氷上で維持する。基質の作業溶液(600μM)を50mMのリン酸ナトリウムバッファー、1mMのEDTA、pH6.5で貯蔵溶液の一定量を希釈することにより製造する。
【0034】
−UV透過マイクロタイタープレート(96ウェル)はCorning(Cat# 3635)から得る。阻害剤および酵素溶液は手動でエッペンドルフ12チャネルピペットを使用してピペッティングする。反応開始のために基質の添加を、プレートの96ウェル全てに同時に液体を添加できるIgel 96 pipetting station(OpalJena, Jena, Germany)で行う。
【0035】
−吸光度(OD)をSPECTRAmax 250リーダー(Molecular Devices)を使用し測定する。該リーダーは、SoftmaxPro 2.6.1ソフトフェアで作動する。
【0036】
−アッセイ:ブランクのために、マイクロタイタープレートの3つのウェルをバッファーのみで満たす。試験ウェルへ下記のものを連続してピペットで移す:
−50μlの阻害剤希釈物(または対照のためのバッファー)、
−50μlの酵素希釈物(55nM;アッセイの最終濃度:18.3nM)、
−50μlの新たな希釈基質作業溶液(600μM;最終濃度:200μM)。
【0037】
最終段階を96−チャネルピペッティング装置を使用し行う。次いでプレートを即座に(すなわち数秒以内)手動でSPECTRAmax 250リーダーに移し、吸光度(310nm)を測定する。
得られたデータから、IC50値をExcelTMおよびXLfitTMソフトフェアを使用し計算する。
【0038】
本発明の化合物は、アッセイにおいて活性を示し、すなわち化合物はMIF−(互変異性化酵素)−酵素活性を阻害し、そのため医薬として、例えばMIFが介在する疾患の処置のための使用が指示される。一般的に、該化合物は20nMから20μMの範囲内で最大の半分の阻害(IC50)のMIF互変異性化酵素活性の阻害を示す。好ましい化合物はIC50=20nMを示す実施例2の化合物である。
【0039】
本発明の化合物は、MIFが介在する疾患の処置または予防のために指示される。
【0040】
MIFが介在する疾患、例えば炎症性疾患、自己免疫疾患、神経因性障害および癌、例えば移植を含み、例えば下記のものを含む;
−サイトカイン介在毒性関連疾患、
例えばインターロイキン−2毒性を含む、
−骨関連疾患、
例えば骨粗鬆症を含む、
−脳および神経関連疾患、
例えば外傷および外傷後の炎症を含む、視床下部・下垂体・副腎系関連状態、神経変性疾患、脳血管疾患、中枢神経感染症、外傷性疾患、アルツハイマー病、脳障害を含む、
【0041】
−眼関連疾患、
例えばブドウ膜網膜炎、硝子体網膜症、角膜疾患、虹彩炎、虹彩毛様体炎、白内障、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症を含む、
−胃腸管関連疾患
例えば大腸炎、炎症性腸疾患、大腸炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、胃潰瘍、胃炎、食道炎を含む、
【0042】
−心臓および血管状態関連疾患、
例えば心臓疾患、増殖性血管疾患、脈管炎、結節性多発性動脈炎、虚血後の炎症、虚血性心疾患、心筋梗塞、卒中、末梢血管障害、肺高血圧を含む、
−肝臓および腎臓関連疾患、
例えば肝硬変症、肝炎、硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変を含む、
【0043】
−呼吸管および肺関連疾患、
例えば肺疾患、慢性肺疾患、急性(成人)呼吸窮迫症候群(ARDS)、喘息、喘息気管支炎、気管支拡張症、びまん性間質性肺疾患、塵肺症、線維化性肺胞炎を含む、
−皮膚および結合組織疾患関連疾患、
例えば湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、チャーグ・ストラウス症候群、日やけ、皮膚癌、創傷治癒を含む、
−アレルギー性疾患関連疾患、
例えば遅延型過敏症、アレルギー性鼻炎を含む、
【0044】
−血管形成関連疾患、
例えば修飾血管形成、血管形成関連腫瘍により特徴づけられる疾患を含み、
−細胞過増殖関連疾患、
例えば前癌状態、過増殖性疾患、原発性または転移癌、子宮癌および転移癌、固形腫瘍、腫瘍増殖、リンパ腫、B細胞またはT細胞リンパ腫、前癌状態、良性腫瘍、良性過増殖性疾患、腎臓癌腫、食道癌、胃癌、腎臓癌腫、膀胱癌、乳癌、大腸癌、肺癌、黒色腫、鼻咽腔癌、骨肉腫、卵巣癌、子宮癌;前立腺癌、皮膚癌、白血病、腫瘍新血管形成、血管腫、骨髄異形成疾患を含む、
【0045】
−糖尿病疾患関連疾患、
例えば糖尿病、糖尿病性網膜症、インスリン依存糖尿病、真性糖尿病を含む、
−子宮内膜症、睾丸機能障害関連疾患、
−感染症、例えば慢性感染疾患関連疾患、
例えば細菌性疾患、中耳炎、ライム病、甲状腺炎、ウイルス性疾患、寄生虫疾患、真菌疾患、マラリア、例えばマラリア貧血、敗血症、重度の敗血症、敗血症性ショック、例えばエンドトキシン誘発敗血症性ショック、エキソトキシン誘発毒素ショック、感染性(真の敗血症性)ショック、グラム陰性菌により引き起こされる敗血症性ショック、骨盤内炎症性疾患、AIDSを含む、
【0046】
−重症筋無力症関連疾患、
−腎炎関連疾患、
例えば糸球体腎炎、間質性腎炎、ウェゲナー肉芽腫症を含み、
−疼痛関連疾患、
−リウマチ性疾患関連疾患、
例えば関節炎、リウマチ性関節炎、骨関節症、乾癬性関節炎、結晶性関節症、痛風、偽痛風、ピロリン酸カルシウム沈着症、狼瘡症候群、全身性エリテマトーデス、硬化症、強皮症、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、脊椎関節症、全身性硬化症、反応性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎、多発筋炎を含む、
【0047】
−サルコイドーシス関連疾患、
−移植関連疾患、
例えば移植片対宿主拒絶反応、臓器移植拒絶反応に付随する障害、移植拒絶反応、移植臓器の保護を含む。
【0048】
好ましくは大腸炎、炎症性腸疾患、クローン病、大腸炎、潰瘍性大腸炎を含む胃腸管関連疾患;および関節炎、リウマチ性関節炎のようなリウマチ性疾患の関連疾患の処置または予防である。
【0049】
さらなる局面において、本発明は、例えばMIFが介在する疾患のための、例えば移植後の疾患を含む、例えば炎症性疾患、自己免疫疾患、神経因性障害および癌;
例えばサイトカイン介在毒性関連疾患、骨、脳、神経、眼、胃腸管、心臓および血管疾患、肝臓および腎臓、呼吸管および肺、皮膚および結合組織疾患、アレルギー性疾患、血管形成、細胞過増殖および癌、糖尿病疾患、子宮内膜症、睾丸機能障害、感染症、重症筋無力症、腎炎、疼痛、リウマチ性疾患、サルコイドーシスの処置または予防のための、ならびに移植後の疾患の処置および予防のための、医薬として使用するための本発明の化合物を提供する。
【0050】
さらなる局面において、本発明は、MIFが介在する例えば上記のような疾患の処置または予防のための医薬、例えば医薬組成物の製造のための本発明の化合物の使用を提供する。
【0051】
他の局面において、本発明は、処置を必要とする対象に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む、MIFが介在する例えば上記のような疾患の処置法または予防法を提供する。
【0052】
処置は処置および防止(予防)を含む。
このような処置のために、もちろん適当な用量は、例えば使用される本発明の化合物の化学的性質および薬物動態学的データ、個々の宿主、投与経路ならびに処置される疾患の性質および重症度に依存して変化し得る。
【0053】
本明細書で使用される“薬学的有効量”は、MIF放出および生産により特徴づけられる疾患の発症または重症度の減少をもたらす本発明の化合物の量を意味する。このような化合物の毒性および治療効果は、例えば、LD50(集団の50%を致死させる量)およびED50(集団の50%において治療有効な量)を測定するために、細胞培養または実験動物における標準薬学的、薬理学的、および毒物学法により測定でき、例えば細胞増殖アッセイまたは動物試験から得られるデータをヒトにおいて使用するための用量決定に使用し得る。本発明の化合物の用量は、好ましくは毒性がほとんどないかまたは無毒性であるED50(またはED99)を含む血中濃度の範囲である。用量は適用する用量形および投与経路に依存し得る。正確な医薬組成物、投与経路および用量は、患者の状態を考慮して各医師により選択し得る(例えばFingl et al., 1975, in “The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Ch. 1 p. 1参照)。
【0054】
投与量および投与間隔は、所望の活性または最小阻害濃度(MIC)を維持するために十分である活性部分の血漿中濃度を提供するために個々に調整し得る。MICは、各化合物について変化し得るが、例えば、MIF活性の50−97%阻害を達成するために必要な濃度をインビトロデータから予測できる。MICを達成するために必要な用量は個々の特徴および投与経路に依存し得る。しかし、HPLCアッセイ、バイオアッセイまたは免疫学的アッセイを血漿中濃度を決定するために使用することができる。投与間隔はまたMIC値を使用し決定され得る。化合物を期間の10−90%、好ましくは30−90%およびもっとも好ましくは50−90%でMICを超える血漿中濃度を維持するレジメンを使用し投与すべきである。
【0055】
しかし、一般的に、大型哺乳類、例えばヒトにおいて満足のいく結果のために、示される1日用量は、都合良く例えば1日に4回までの分割投与で投与される本発明の活性化合物の約0.5mgから1000mg(例えば約0.00625mg/kgから約12.5mg/kg)の範囲である。
【0056】
本発明の化合物は、例えば被覆または非被覆錠剤、カプセル、例えばアンプル、バイアルの形態の注射溶液または懸濁液形態、クリーム、ゲル、ペースト、吸引用粉末形、チンキ剤、リップスティック、ドロップ、スプレーの形態または坐薬の形態で任意の慣用の経路、例えば経腸、例えば経鼻、口腔内、経直腸、経口投与;非経腸、例えば静脈内、筋肉内、皮下投与;または局所的、例えば経皮、経鼻、気管内投与により投与し得る。
【0057】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩形、例えば酸付加塩形または金属塩形、または遊離形;所望により溶媒和物形で投与し得る。塩形の本発明の化合物は、遊離形;所望により溶媒和物形の本発明の活性化合物と同程度の活性を示す。
【0058】
さらなる局面において、本発明は、本発明の化合物と例えば少なくとも1種の医薬賦形剤、例えば適当な担体および/または希釈剤、例えば増量剤、結合剤、崩壊剤、流動調節剤、滑剤、糖および甘味剤、香味料、防腐剤、安定剤、湿潤剤および/または乳化剤、可溶化剤、浸透圧調節用塩および/またはバッファーを共に含む医薬組成物を提供する。
【0059】
本発明の医薬組成物は、例えば1種またはそれ以上の、例えば担体、希釈剤および本発明の化合物を医薬組成物への製造を容易にする補助剤を含む薬学的に許容される賦形剤を使用し、慣用の方法にしたがい、例えば混合、溶解、糖衣錠形成、浮遊(levitating)、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥により製造し得る。本発明の化合物の製造および投与のための有用な技術は、例えば“Remington's Pharmaceutical Sciences” Mack Publishing Co., Easton, Pa.,最新版で見つけることができる。
【0060】
医薬組成物は、例えば
−経口摂取のための錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液のような経口投与;
−例えば錠剤形またはトローチ剤形の、口腔投与、
−例えば本発明の化合物が適当な高圧ガスを使用して加圧型パックからまたはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で好都合には送達されるか、または化合物と適当な粉末基剤、例えばラクトースもしくはデンプンの粉末混合物を含み製剤され得る、吸入器もしくは吹き入れ器において使用するための例えばゼラチンのカプセル形の、吸入による投与
−例えば、本発明の医薬組成物が、所望によりさらなる製剤用薬剤、例えば懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤を含み例えば油性または水性ビヒクルの例えば懸濁液形、溶液形もしくは乳液形である;あるいは、活性成分が使用前に適当なビヒクル(液体)、例えば水と構成するための粉末形であり得る、例えば単位用量形、例えばアンプル剤または多回投与量容器の、ボーラス注射または持続注入による、注射による非経腸投与、
−例えば、慣用の坐薬基剤、例えばカカオバターまたは他のグリセリドを含む、坐薬または停留かん腸のような直腸投与、
−ゲル、クリームを含む、局所投与
のための医薬組成物を含む。
【0061】
本発明の1種の化合物またはそれ以上の化合物は、単独でまたは1種もしくはそれ以上の他の薬学的活性剤と一緒に本発明にしたがった薬学的処置のために使用し得る。
【0062】
他の薬学的薬剤は、例えばMIFが介在する疾患、例えば移植後疾患を含む、例えば炎症性疾患、自己免疫性疾患、神経因性障害および癌の処置に有用であるものを含む。このような他の薬学的活性剤は、例えばステロイド、グルココルチコイド、他の炎症性サイトカイン(例えば抗−TNF−α抗体、抗−IL−1抗体、抗−IFN−γ抗体)、または他のサイトカイン、例えばIL−1RAもしくはIL−10の阻害剤、細胞内または細胞外MIFの内在量を減少させる他の薬剤、例えばMIF−抗体、他のMIF−LMW阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、フィブラート系の高脂血症治療薬、抗癌剤、または免疫調節化合物、例えば免疫抑制剤;または例えば上記のような個々の薬剤の組合せ剤を含む。
【0063】
このような免疫調節化合物は、免疫抑制剤、例えばコルチコステロイド;アザチオプレン;カルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリン、例えばシクロスポリンA;mTOR−阻害剤、例えばラパマイシン、例えばラパマイシン、32−デオキソラパマイシン、16−ペンタ−2−イニルオキシ−32−デオキソラパマイシン、16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−ラパマイシン、16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−40−0−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、40−0−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン(エベロリムス)、CCI779、AP23573、AP22549、イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)の阻害剤、例えばミコフェノール酸、塩形のミコフェノール酸、例えばミコフェノール酸モフェチル;マクロフィリン(macrophilin)−12結合化合物、例えばアスコマイシン、例えばFK506(タクロリムス)、S1P受容体調節剤、例えばFTY720および免疫抑制抗体、例えば免疫抑制性モノクローナル抗体、例えばCD3、CD4、CD25、CD28もしくはCD45に対するモノクローナル抗体;または他の免疫調節化合物を含む。
【0064】
組合せ剤は、2種またはそれ以上の薬学的活性剤が同じ製剤である固定された組合せ剤;別々の製剤の2種またはそれ以上の薬学的活性剤が例えば共投与のための指示書とともに同じパッケージで販売されるキット;および薬学的活性剤が別々にパッケージされているが、同時または連続投与のための指示書を含む自由な組合せ剤を含む。
【0065】
他の局面において、本発明は、例えば少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と一緒に、例えば少なくとも1種の本発明の化合物を活性成分として、1種またはそれ以上の他の薬学的活性剤(例えばこの他の薬学的活性剤は、例えばステロイド、グルココルチコイド、他の炎症性サイトカイン(例えば、抗−TNF−α抗体、抗−IL−1抗体、抗−IFN−γ抗体)、他のサイトカイン例えばIL−1RAまたはIL−10の阻害剤、細胞内または細胞外MIFの内在量を減少させる他の薬剤、例えばMIF−抗体、他のMIF−LMW阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、フィブラート系の高脂血症治療薬、抗癌剤、または免疫調節化合物からなる群から選択される)とともに含む、例えば固定された組合せ剤、キットおよび自由な組合せ剤を含む組合せ剤;または例えば上記のような個々の薬剤の組合せ剤の医薬組成物を提供する。
【0066】
さらなる局面において、本発明は、非置換または置換(C3−8)シクロアルキル、(C1−4)アルキル(C3−8)シクロアルキル、(C6−18)アリール、または(C6−18)アリール(C1−4)アルキルにより窒素原子で置換されている7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
例えば式
【化9】

[式中、Rは非置換または置換(C3−8)シクロアルキル、(C1−4)アルキル(C3−8)シクロアルキル、(C6−18)アリール、(C6−18)アリール(C1−4)アルキルであり、(C6−18)アリールは所望により他の環(系)と縮環されており、そして置換基は非置換および置換ヒドロキシからなる群から選択され;
例えばRはシクロヘキシル、ヒドロキシシクロヘキシル、フェニル、ヒドロキシフェニル、メトキシフェニル、アミノスルホニルオキシフェニル、(tert−ブチル)(ジメチル)シリルオキシフェニル、フェニルメチル、または18−クラウン−6、例えばベンゾ−18−クラウン−6と縮環されたフェニルである。]の化合物を提供する。
【0067】
本発明を説明する下記実施例において、温度の言及は摂氏(℃)であり、未補正である。
下記略称を使用する:
EX.:実施例 EtOH:エタノール
m.p.:融点 RT:室温
【実施例】
【0068】
実施例1

【化10】

の3−シクロヘキシル−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オンの製造
A.3−シクロヘキシル−7−メトキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン
40gのシクロヘキシルアミンをRTで800mlの無水EtOH中の26gの2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンズアルデヒド溶液に加える。得られた混合物を1.5時間撹拌し、0°に冷却し、そして20gのNaBHを少量ずつ加える。得られた混合物を3時間RTで撹拌し、HOに注ぎ、得られた混合物をCHClに抽出する。2相が形成され、分離する。得られた有機層を乾燥させ、42gのカルボニル−ジイミダゾールを加え、得られた混合物を16時間RTで撹拌する。さらに21.5gのカルボニル−ジイミダゾールを加え、得られた混合物を3時間撹拌し、1N HCl、飽和NaHCOの水溶液および塩水で洗浄し、乾燥させ、真空濃縮する。3−シクロヘキシル−7−メトキシ−3,4−ジヒドロベンゾ[e][1,3]−オキサジン−2−オンを得る。m.p.:76−77°。
1H-NMR (CDCl3):δ6.99 (d, J = 8.4 Hz, 1 H), 6.66 (dd, J = 2.5 +8.4 Hz, 1 H), 6.57 (d, J = 2.5 Hz, 1 H), 4.30 (s, 2 H), 4.24 (tt, J = 3.6 + 11.6 Hz, 1 H); 3.78 (s, 3 H), 1.33-1.90 (m, 9 H), 1.02-1.20 (m, 1H)。
【0069】
段階Aによって得られる化合物のサンプルをシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーに付し、精製3−シクロヘキシル−7−メトキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オンを含む画分をHClで処理する。塩酸塩形の3−シクロヘキシル−7−メトキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オンを得る。m.p.:169−172°。
1H-NMR (CDCl3):δ6.86 (d, J = 8.25 Hz, 1 H), 6.41 (d, J = 2.55 Hz, 1 H), 6.33 (dd, J = 2.55 + 8.25 Hz, 1 H), 3.96 (s, 2 H), 3.76 (s, 3 H), 2.53 (tt, J = 3.7 + 10 Hz, 1 H), 1.92-2.03 (m, 2 H), 1.56-1.80 (m, 3 H), 1.03-1.37 (m, 5 H)。
【0070】
B.3−シクロヘキシル−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オンの製造
66gの3−シクロヘキシル−7−メトキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オンおよび200gのHClピリジニウムの混合物を撹拌しながら220°で45分間金属浴上で溶媒なしで加熱する。発生したHClガスを吸収する。得られた混合物をRTに冷却し、得られた溶解物をHOおよび酢酸エチルに溶解させ、得られた2相を分離する。得られた水性層を酢酸エチルに抽出し、1N HClで洗浄し、乾燥させ、真空濃縮する。得られた残渣をシリカゲルで濾過し、得られた濾過残渣を濃縮する。3−シクロヘキシル−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オンは結晶形で得る。m.p.193−196°。
1H-NMR (CDCl3):δ7.19 (br.s, 1 H), 6.95 (d, J = 8.3 Hz, 1 H), 6.65 (dd, J = 2.4 + 8.3 Hz, 1 H), 4.30 (s, 2 H), 4.23 (tt, J = 3.6 + 11.6 Hz, 1 H), 1.30-1.90 (m, 9 H), 1.02-1.20 (m, 1 H)。
【0071】
実施例2
下記表1のEX.17の化合物の製造法
3−シクロヘキシル−7−アミノスルホニルオキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オンの製造
22.5gの3−シクロヘキシル−7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オンを42.3gの塩化スルホン酸アミドで溶媒なしで処理する。得られた混合物を60°で減圧下(100mbar)で1時間撹拌する。得られた混合物をRTに冷却し、酢酸エチルおよび水を加え、混合物を抽出する。得られた有機層を乾燥させ、真空濃縮する。3−シクロヘキシル−7−アミノスルホニルオキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オンを得る。
1H-NMR (DMSO-d6): d 8.06 (br.s, 2 H), 7.36 (d, J = 8.3 Hz, 1 H), 7.06 (dd, J = 2.3 + 8.3 Hz, 1 H), 6.96 (d, J = 2.3 Hz, 1 H), 4.46 (s, 2 H), 3.99 (tt, J = 3.6 + 11.6 Hz, 1 H), 1.20-1.84 (m, 9 H), 1.00-1.19 (m, 1 H). 13C NMR (d6-DMSO): d 25.376, 25.641, 29.039, 41.450, 56.165, 109.794, 117.801, 118.292, 127.513, 149.593, 150.048, 150.211。
【0072】
適当な出発物質を使用するが、実施例1および所望により実施例2に示したのと同様に、式
【化11】

およびRが表1に記載のとおりであり、下記融点(“F.p.”)および/または“H−NMR−データ”(特に記載のない限りH−NMR−データはCDCl中で測定する)を有する化合物を得る。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−((C6−12)アリール)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−((C3−8)シクロアルキル)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、
3−((C6−12)アリール(C1−4)アルキル)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン、または
3−((C3−8)シクロアルキル(C1−4)アルキル)−3,4−ジヒドロ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2−オン。
【請求項2】

【化1】

[式中、
は非置換または置換
−(C3−8)シクロアルキル(C1−4)アルキル、
−(C6−18)アリール(C1−4)アルキル、
−(C3−8)シクロアルキル、または
−(C6−18)アリールであり、
置換基は(C6−18)アリール、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノスルホニルオキシ、(C1−4)アルコキシ、トリ(C1−6)アルキルシリルオキシ、ハロ(C1−4)アルキルまたはハロ(C1−4)アルコキシを含み、
は水素、ヒドロキシ、アミノスルホニルオキシ、(C1−4)アルコキシ、トリ(C1−6)アルキルシリルオキシまたはハロ(C1−4)アルコキシである。]
の請求項1に記載の化合物。
【請求項3】

−シクロヘキシル、
−ヒドロキシシクロヘキシル、
−フェニル、
−ビフェニリル、
−ナフチル、
−ヒドロキシフェニル、
−メトキシフェニル、
−トリフルオロメトキシフェニル、
−ブロモフェニル、
−アミノスルホニルオキシフェニル、
−(tert−ブチル)(ジメチル)シリルオキシフェニル、または
−18−クラウン−6と縮環したフェニルであり、そして
が請求項2に定義のとおりである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が請求項2または3に定義のとおりであり、そして

−水素、
−ヒドロキシ、
−アミノスルホニルオキシである、請求項2または3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】

【化2】

の請求項1から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
塩形の請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
医薬として使用するための請求項1から6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
MIFが介在する疾患の処置または予防のための医薬の製造のための請求項1から6のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項9】
処置の必要な対象に治療有効量の請求項1から6のいずれかに記載の化合物を投与することを含む、MIFが介在する疾患の処置法または予防法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかに記載の化合物と少なくとも1種の医薬賦形剤をともに含む医薬組成物。
【請求項11】
さらに1種またはそれ以上の他の薬学的活性成分を含む請求項10に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2008−517020(P2008−517020A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537198(P2007−537198)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011233
【国際公開番号】WO2006/045505
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】