説明

OVD検査装置及びOVD検査方法

【課題】基材に付与されているOVDの圧力跡、基材の波打ち若しくは搬送中の基材のバタツキ又はうねりに影響を受けず、安定してOVDの品質の検査を可能とし、比較的安価なOVDの検査装置の提供及びOVDの検査方法である。
【解決手段】OVD検査装置は、少なくとも基材の一部にOVDが付与された基材において、OVDの付与状態を検査する装置であって、OVDが付与された基材を搬送する搬送手段と、OVDに対してレーザー光を照射する照射手段と、照射手段から照射したレーザー光に対してOVDから反射した反射波を受信し、信号へ変換する受信手段と、受信手段で変換された信号と、あらかじめ定めた閾値とを比較判定する識別手段から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に付与されたOptically Variable Device(以下、「OVD」という。)をセンサーによって検知し、OVDの品質(OVDの有無、位置ずれ又は欠損)及びOVDの数量を検査するOVD検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
OVDは、レリーフ状の回折格子に金属を蒸着した箔のことで、立体画像の顕出やカラーシフトといった独特な光学的変化機能を持つものであり、近年、紙幣、金券、商品券、キャッシュカード及びクレジットカード等の貴重製品は、偽造防止効果を高める目的でOVDが付与されてきている。また、これらの貴重製品の中には、より高度な偽造防止技術として、多重回折格子と呼ばれる複数の微細な回折格子を複雑に構成したOVDであって、入射角度によって回折される光波長が異なる複数の図柄が組み込まれているものも利用されている。
【0003】
これらのOVDを付与した貴重製品の製造は、まず、用紙やプラスチックシートなどの基材に図柄や文字などの印刷を施し、次に転写又は圧着によって、シートタイプやパッチタイプ、あるいはスレッドタイプのOVD箔やOVDシートを、カードや紙等の基材に付与する場合が多い。
OVDを基材に転写又は圧着する方法としては、一般的には、OVD層を形成したOVDシート又はフィルムを、加熱された金属製の刻印と基材の間に配置し、OVDシートを刻印で基材に押圧するホットスタンプ方式又は加熱された刻印の代わりに、加熱されたロールを使用するロール転写方式などが利用されている。
【0004】
OVDは、貴重製品が本物であることを保証する要素であるため、貴重製品に付与されたOVDに欠陥があってはならないが、製造工程で、OVDを基材に転写又は圧着する際、基材のバタツキや機械等の調整不良、転写又は圧着条件等によっては、基材にOVDが付与されていないものや、OVDが付与されていても、適切な位置に付与されていないもの、適切な位置に付与されてはいるが、OVDに抜けや欠けなどの欠陥を有する貴重製品が発生する場合があった。
そこで、貴重製品に付与したOVDの状態については、全数検査して品質を保証することが、不可欠となっている。
【0005】
従来は、これらの検査を人間の目視による検査に頼っていたが、検査する者によって、良否の判定基準に差があるため、品質基準にバラツキが生じていた。また、人間が検査する方法では、多くの検査人員及び検査時間が必要となり、非効率であるため、人間に依存しない機械的な検査方法が求められていた。
【0006】
これらの問題を解消するために、表面形状の欠陥を検査する装置が多数開発されてきており、従来の品質検査装置としては、カード基材に代表される表面が均一で平らな製品のOVDを検査する「カード表面欠陥検査装置」がある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、別の方法として、OVD層を含む被検査物の搬送幅に亘るライン上領域に所定の入射角度で光照射し、OVD層に記録されたOVD再生像を撮像し、撮像したOVD再生像の光強度分布に基づき、判定手段により、OVD層の品質を検査する「品質検査装置」がある(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、本出願人が先に出願したOVD箔のの検査装置及び検査方法では、OVDを基材に付与した後、OVDのキャリアフィルムを再び巻き取った再巻箔について、光を照射した透過光により得られる光情報をもとに、正規の光情報と比較して、キャリアフィルム上に残ったOVD箔の有無により確実にOVDが付与されたか否かを検査する方法がある(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
また、本出願人は、OVDの反射特性を踏まえて、OVDを付与した領域に赤外線又は赤外線を含む光源を照射し、可視光反射領域で可視光を遮断して赤外線を透過するフィルタを備えた画像入力手段で画像を読み取り、基準データと比較してOVDの付与状態を検査する方法を出願している(例えば、特許文献4参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平2−248845
【特許文献2】特許第3339426号
【特許文献3】特願2006−25194
【特許文献4】特願2004−259785
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載された発明は、搬送中にバタツキがおこりにくい剛度の高い基材の表面を検査するものであり、OVDを付与する基材、紙又はフィルムのように剛性が低く、搬送中にバタツキが生じやすい基材に付与されたOVDを正確に検査することは難しく、また、装置の構造上、検査部を版胴に設けて光学的に検査する場合は、OVDが乱反射するため、安定した検査が出来なかった。
また、特許文献1は、一つのOVDが一つの基材に付与されているものの検査であり、高速で搬送される一つの基材に対して複数のOVDが付与されたものの検査ではなかった。
【0012】
また、特許文献2に記載された発明では、OVDが付与された枚葉紙にバタツキが生じることにより、OVDの再生像が大きく変化して検査が不可能になることを防止するための品質管理装置が提供されているが、付与機等により高温高圧条件下で剛性の低い基材に付与したOVDを検査する条件として、レーザーセンサーを基材の搬送方向に垂直に配置した場合は、刻印等による加圧によってOVD付与部分に生じたわずかな凹み(圧力跡)や、高温高圧によって基材自体に生じた波打ち等の基材表面状態の悪さが起因して、OVDに照射したレーザー光の反射光量が一定しない(乱反射する)ため、精度のよいOVDの検査を行うことが出来なかった。
【0013】
この理由として、OVDは基材に完全に接着させるため、付与機等により高温高圧条件の下で行われることから、加圧したことによって生じたOVD付与部分の凹み(圧力跡)や、高温高圧によって生じた基材の波打ち等のように、基材の表層状態がわずかに変形しているため、基材に特定な角度で光を当て、その反射光をカメラで撮影しても、安定した反射画像データが得られないことにある。
特に、基材が、紙の場合、付与時の変形を受けやすいため、前述した検査方法での検査精度は低くなる傾向にあった。
【0014】
また、1枚の枚葉紙に複数列、複数行(例えば、縦4列×横5列=計20個)のOVDを付与したOVDを検査するような場合には、ホログラム部分の圧力跡や基材の波打ちに加え、搬送中の紙のバタツキやうねりが影響し、OVDに照射したレーザー光の反射光量が一定しないことから、OVDの検査精度があがらなかった。
【0015】
また、本出願人が先に出願した特許文献3については、OVDを付与した後のキャリアフィルムを対象に検査することで、基材上のOVDの状態を検査したこととするものであり、実際に基材上に付与されたOVD自体を検査するものではなかった。
【0016】
また、本出願人が先に出願した特許文献4については、実際の基材上のOVDを検査するものではあるが、赤外線を照射しなければならず、更に照射した光を画像処理することが必要となるため、検査するための装置が若干高価となる。
【0017】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、OVDの圧力跡、基材の波打ち若しくは搬送中の基材のバタツキ又はうねりに影響を受けず、安定したOVDの品質の検査を可能とし、比較的安価なOVD検査装置を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明は、基材上に付与されているOVDにラインタイプレーザーセンサーを基材の搬送方向に対し平行に配置することによって、基材上に付与されたOVDの付与状態(OVDの有無、OVDの位置、OVDの欠損及びOVDの個数)を検査するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、少なくとも基材の一部にOVDが付与された基材において、OVDの付与状態を検査する装置であって、OVDが付与された基材を搬送する搬送手段と、OVDに対してレーザー光を照射する照射手段と、照射手段から照射したレーザー光に対してOVDから反射した反射波を受信し、信号へ変換する受信手段と、受信手段で変換された信号と、あらかじめ定めた閾値とを比較判定する識別手段から成るOVD検査装置である。
【0020】
また、本発明は、OVDが搬送手段により搬送される搬送方向に対して平行に複数列ある場合に、照射手段をOVDに対応して搬送方向に平行して複数配列することを特徴とするOVD検査装置である。
【0021】
また、本発明は、識別手段がOVDの有無、形状、付与位置及び/又は数量を比較判定することを特徴とするOVD検査装置である。
【0022】
また、本発明は、少なくとも基材の一部にOVDが付与された基材において、OVDの付与状態を検査する方法であって、OVDが付与された前記基材を搬送し、基材上のOVDに対してレーザー光を照射し、照射したレーザー光に対してOVDから反射した反射波を受信し、受信した反射波を信号に変換し、変換した信号と、あらかじめ定めた閾値とを比較判定するOVD検査方法である。
【0023】
また、本発明は、あらかじめ定めた閾値がOVDにレーザー光を照射したときの反射光量と、基材にレーザー光を照射したときの反射光量との差を用いた値であることを特徴とするOVD検査方法である。
【0024】
また、OVDにレーザー光を照射したときの反射光量と、あらかじめ定めた閾値と比較することで、OVDの基材上への付与の有無、OVDの形状及び/又はOVDの付与位置を判定し、及び/又は一定時間内におけるレーザー光の受信回数によりOVDの個数を計数することを特徴とするOVD検査方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、基材に付与されるOVDの個数に関わらず、また、基材の表面状態(OVDの圧力跡)や搬送中の基材の表面振動(バタツキ等)に影響を受けず、基材上に付与されたOVDの状態(OVDの有無、OVDの位置、OVDの欠損)を検査することができ、さらに、基材上に付与されているOVDの個数を正確に計数することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
本発明によるOVD検査装置1は、OVDが付与された基材を搬送する搬送手段3とレーザー光を照射する照射手段4と、OVD2から反射された反射波を受信し、信号へ変換する受信手段7と、受信手段7によって得られた信号をあらかじめ定めた閾値と比較判定する識別手段8を具備して構成されたものであり、基材に付与されたOVDを検査対象とするものである。
【0028】
図1は、本発明のOVD検査装置の構成を示す概略側面図である。
【0029】
図1に示すように、OVDの付与された基材1が搬送手段3によって搬送され、照射手段4よりレーザー光5が照射され、基材1上に付与されたOVD2によって反射したレーザー光6を受信手段7が受信するように構成され、受信手段7によって得られた信号を識別手段8によって一定の閾値と比較判定するように構成されている。
【0030】
基材1及びOVD2に照射するレーザー光4は、基材1に付与されたOVD2の搬送上に、OVDに対応して配置されるように構成する。このOVDに対応するというのは、検査対象となる基材に複数のOVDが付与されている場合又は一つの製品に一つのOVDが付与された基材が複数配列されている(以下「多面版」という。)場合に、基材が搬送される方向に対して平行に複数配置されるように構成することである。例えば、図2に示すように、基材1上に複数個付与されたOVD(2a、2b、2c、2d)を検査対象とする場合は、基材1が搬送方向(矢印方向)に機械的に搬送されると、基材上に付与されているOVD(2a、2b、2c、2d)も矢印方向に移動するため、照射手段4は、基材に付与されたOVD(2a、2b、2c、2d)が移動する位置(軌道)の上部(4箇所)に基材の搬送方向に対して平行に取り設けられる。
【0031】
基材の搬送方向に対して垂直方向ではなく平行に配置する理由としては、OVDの乱反射の影響を受けにくく、OVDに照射したレーザー光の反射光量が安定するため、OVDの検査精度が上がることにある。そのため、基材が紙又はフィルム等のように剛性が低く、搬送中にバタツキが生じやすい基材に付与されているOVDを検査する場合でも、OVD付与時に基材に生じた圧力跡や基材の波打ち等のわずかな変形、さらに、搬送中の基材のバタツキやうねりによるOVDの乱反射の影響を受けずに精度の良い検査を行うことができる。
【0032】
OVD2に照射して反射したレーザー光6を受光する受信手段7についても同様に搬送される方向に対して平行に配置されるように構成することが望ましい。
【0033】
OVD2に照射するレーザー光としては、可視光半導体レーザー光が最も好ましいが、ラインタイプのレーザー光を用いても良い。
【0034】
また、照射手段、受信手段の設置位置は、基材に付与されたOVDの付与位置及び付与数によって適宜調整すればよい。
【0035】
次に、基材に付与されたOVDのレーザー光による検出方法について、図3を用いて説明する。
図3は基材1に付与されたOVD2を検査する模式図である。
まず、基材1は搬送方向(矢印方向)に移動し、Aの位置でOVD2に照射したレーザー光5に対して反射したレーザー光6を検出する(図3(a))。次に、基材1が、更に搬送方向(矢印方向)に移動し、OVD2上のBの位置で反射するレーザー光6を検出する(図3(b))。そして、更に基材1が矢印方向に移動し、Cの位置で反射するレーザー光6を検出する(図3(c))。このように、図3(a)から(c)のような工程を繰り返し行って検査を行う。
【0036】
この時、反射したレーザー光の強さを反射光量とし検出位置との関係を示しているのが図4である。レーザー光がOVDを照射した場合(図3B)、大きな反射光量を得ることができるので、レーザー光が基材を照射した場合(図3AおよびC)に反射する反射光量8よりも一般的に高い値となる。
【0037】
OVD2を検知する判断基準として閾値を使用する。閾値10は、検査における設定において任意に定めることができるが、図4では、OVD2にレーザー光を照射した場合、反射して戻ってくるレーザー光の反射光量と、基材1にOVD2と同様にレーザー光を照射し、反射し戻ってくるレーザー光の反射光量の差を半分にした値を用いたものを挙げている。
【0038】
ここで、本発明のOVD検査装置におけるOVDの有無検査について図5を用いて説明する。照射手段4より照射されるレーザー光5が基材1に付与されたOVD箇所を走査する場合(図5(a))には受信手段7において反射したレーザー光6が受光される。そして、受信手段6が受信したレーザー光6の強さを、識別手段8にてあらかじめ設定した閾値と比較し、閾値以上の強さのレーザー光であれば基材1上にOVD2が付与されていると判断し(図5(b))、閾値以下のレーザー光(図5(d))であれば基材1上にOVD2が付与されていないと判断する。
【0039】
以上のようにして、レーザー光反射光量と閾値の関係から基材上に付与されたOVDの有無についての検出が可能となる。
【0040】
OVD2の反射光量の数値は、センサーの設置時に角度調整において感度が最大値となるようにするとより安定して検査が行える。
【0041】
以上、OVDの有無検査について説明したが、前述した識別手段8において正規に付与されているOVDの大きさを時間的長さに変換し、検査対象の基材上に付与されたOVDが一定方向に移動し受信したレーザー光の時間的な長さを比較することにより、一部分のOVDが欠けている形状不良を検出することもできる。
【0042】
例えば図6(a)に示すように基材1上に付与されたOVD2が、正規の大きさの場合、反射光量のグラフは図6(b)のようにピークが現れるが、図6(c)のように、OVD2が通常の大きさより小さい場合、反射光量のグラフは図6(d)のように閾値10’を超える反射光量の移動方向の長さが短くなり、あらかじめ設定した付与位置タイミングの長さと異なることから、図6(c)で基材上に付与されたOVDより移動方向の長さが短いOVDが付与されていることが分かる。
【0043】
このことから大きさの異なる基材上のOVDを検出できるため、基材上に付与したOVDの一部欠損した判別が可能となる。
【0044】
さらに、あらかじめ識別手段に基材上のOVDの位置に関するタイミングを設定することで、OVDが基材上における正規な位置に付与されているか否かの付与位置を検査すること、また一定時間内に受信するレーザー光の回数によって、基材上に付与されているOVDの個数を計数することが可能となる。また、センサーによる一定時間内の応答速度は、速いほど検知回数が増して、検査精度が向上する。(今回使用した応答速度は、80μsecである。)
【0045】
本発明に関する実施形態を、実施例に基づき図面を参照にして説明するが、特許請求の範囲に記載の範囲であれば、これに限定するものではない。
【0046】
(実施例1)
本発明のOVD検査装置を印刷機に応用したものについて、実施例として説明する。本発明の印刷機Aの基本構成は、図7に示すように、給紙部B、印刷部C、排紙部D、OVD検査部E、判定制御部Fから成っている。給紙部Bは、用紙積載部aに積載された用紙bを搬送板cに沿って1枚毎に印刷部Cまで搬送させる。次に、印刷部Cは、給紙部Bから1枚毎に送り込まれた用紙bを、番号胴dと圧胴eの間に用紙bを通紙し、番号胴dに取設けた字輪fにより、用紙bの所定位置に番号を印刷する。
【0047】
さらに、排紙部Dは、印刷部Cで印刷された用紙bを、搬送チェーンgのグリッパーhで搬送し、1枚毎に排紙パイルi又は排紙パイルi’に搬送する。このとき排紙パイルiは正常な用紙bを積載し、排紙パイルi’は異常な用紙bを積載する機構としても良い。
また、OVD検査部Fは、給紙部Bの用紙積載部aから1枚毎に搬送された用紙bに付与されたOVDを照射手段jによりレーザー光を照射し、その反射光量を検出し、OVDの検査を行う。
【0048】
次にOVD検査部Fを上から観察した図8で説明するが、給紙部Bの搬送板c上に用紙bが搬送さた用紙bは、前当板k、横当板mに接触して位置決めを行い、番号印刷部Cに用紙bが送付される。レーザー受投光器jは、搬送板cの上部に取設け、用紙bに付与されたOVD2の搬送上に搬送方向と同じ方向に設定する。センサーと基材1との距離は、OVD2の大きさによって異なり、ラインタイプレーザーセンサーの照射するレーザー光の長さがOVD2より長くなるよう高さを調整する。例えば、OVDの大きさが20mm角程度の場合、センサーとOVDとの距離は、レーザーと用紙の距離は、50〜100mmが程度が望ましい。なお、レーザー受投光器jの取付位置は、用紙に付与したOVD2の付与箇所、付与位置及び付与数によって適宜調整することが望ましい。
【0049】
判定制御部Fには、検査部Eの受光装置jで受光したレーザー光の反射光量が送られ、OVD2が用紙bに正常に付与されているか否かの正損判定を行う。正損判定は、前述のとおりレーザー光の反射光量で判定し、例えば、一定の閾値を超えれば正常紙(以下「正紙」という。)、超えなければ異常紙(以下「損紙」という。)としても良いし、また、一定のレーザー反射幅を設定し、そのレーザー反射幅によりも長いと正紙、短いと損紙として検査しても良い。また、識別手段Fで正紙と判断した場合は、印刷部Cで印刷し、排紙部Dの排紙パイルiに用紙bは搬送されるが、判定制御部Fで損紙と判断した場合は、印刷部Cで番号印刷し、排紙部Dの損紙専用となる排紙パイルi’に用紙bを搬送する機能にしても良い。さらに、判定制御部Fで損紙と判断した場合は、損紙が印刷部Cを通過するタイミングで、胴dと圧胴eの間隙を開けて、印刷しないで、排紙部Dの損紙専用となるパイルi’に用紙bを搬送する機能にしても良い。
【0050】
上記実施例1では、基材として枚葉紙を用いているが、基材が巻き取られたロール紙等でも適用可能である。
【0051】
また、実施例1では、OVD検査装置を印刷機に搭載したものであるが、印刷機に限らず、どのような形態にも適用可能である。
【0052】
(実施例2)
本実施例2は、実施例1の形態と異なった印刷機A’を図9で説明するが、給紙部B’、印刷部C’、排紙部D’、OVD検査部E’、判定制御部F’は、実施例1と同じ機能や方法で行うため説明を省略し、異なる部位や方法のみを説明する。印刷機A’の特徴は、既に印刷やOVDが付与された用紙b’の印刷領域を検査できる機能を有することである。具体的には、給紙部B’と印刷部C’の間に印刷検査部Gを備え、用紙b’を検査胴oで吸引密着させて用紙b’の印刷領域を光学カメラpで画像入力した後、渡し胴qを経由して、印刷部B’に用紙を搬送させる。
【0053】
また、OVD検査部E’は、検査胴oの上方に位置し、光学カメラpで印刷領域を検査した後、レーザー受投光器j’でOVDの検査を行う。光学カメラp及びレーザー受投光器j’で得られた情報は、判定制御部F’で一括判定され、正紙と判断した場合は、印刷部C’で印刷し、排紙部D’のパイルi’’に用紙C’は搬送されるが、しかし、判定制御部F’で損紙と判断した場合は、印刷部C’で印刷し、排紙部D’の損紙専用となるパイルi’’’に用紙b’を搬送する機能にしても良い。さらに判定制御部F’で損紙と判断した場合は、損紙が番号印刷部C’を通過するタイミングで、圧胴e’と番号胴d’との間隙を開けて、印刷しないで、排紙部D’の損紙専用となるパイルi’’’に用紙b’を搬送する機能にしても良い。なお、レーザー受投光器j’は、光学カメラpを検査する前に取設けても構わないし、検査胴を印刷物の表裏を検査するために2箇所設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】OVD検査装置概要側面図
【図2】レーザー光照射位置概要図
【図3】基材に付与したOVD2を検査する模式図
【図4】レーザー反射状態を示す図である。
【図5】OVD有無検出図
【図6】OVD形状異常検出図
【図7】OVD検査装置搭載型番号印刷機
【図8】OVDの検出図である。
【図9】OVD検査装置搭載型番号印刷機
【符号の説明】
【0055】
1 基材
2 OVD
3 搬送手段
4 照射手段
5 照射レーザー光
6 反射レーザー光
7 受信手段
8 識別手段
9 反射光量
10 閾値
11 設定タイミング
A、A’ 番号印刷機
B、B’ 給紙部
C、C’ 番号印刷部
D、D’ 排紙部
E、E’ OVD検査部
F、F’ 識別部(識別手段)
G 印刷検査部
a、a’ 用紙積載部
b、b’ 用紙
c、c’ 搬送板
d、d’ 番号胴
e、e’ 圧胴
f、f’ 字輪
g、g’ 搬送チェーン
h、h’ グリッパー
i、i’、i’’、i’’’ 排紙パイル
j、j’ レーザー受投光器
k 前当板
m 横当板
p 光学カメラ
q 渡胴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材の一部にOVDが付与された基材において、前記OVDの付与状態を検査する装置であって、前記OVDが付与された基材を搬送する搬送手段と、前記OVDに対してレーザー光を照射する照射手段と、前記照射手段から照射したレーザー光に対して前記OVDから反射した反射波を受信し、信号へ変換する受信手段と、前記受信手段で変換された信号と、あらかじめ定めた閾値とを比較判定する識別手段から成るOVD検査装置。
【請求項2】
前記照射手段は、前記OVDが前記搬送手段により搬送される搬送方向に対して平行に複数列ある場合に、前記OVDに対応して搬送方向に平行して複数配列することを特徴とする請求項1記載のOVD検査装置。
【請求項3】
前記識別手段は、前記OVDの有無、形状、付与位置及び/又は数量を比較判定することを特徴とする請求項1又は2記載のOVD検査装置。
【請求項4】
少なくとも基材の一部にOVDが付与された基材において、前記OVDの付与状態を検査する方法であって、前記OVDが付与された前記基材を搬送し、前記基材上の前記OVDに対してレーザー光を照射し、前記照射したレーザー光に対して前記OVDから反射した反射波を受信し、前記受信した反射波を信号に変換し、前記変換した信号と、あらかじめ定めた閾値とを比較判定するOVD検査方法。
【請求項5】
前記あらかじめ定めた閾値は、前記OVDに前記レーザー光を照射したときの反射光量と、前記基材に前記レーザー光を照射したときの反射光量との差を用いた値であることを特徴とする請求項4記載のOVD検査方法。
【請求項6】
前記OVDに前記レーザー光を照射したときの反射光量と、前記あらかじめ定めた閾値と比較することで、前記OVDの基材上への付与の有無、OVDの形状及び/又はOVDの付与位置を判定し、及び/又は一定時間内における前記レーザー光の受信回数によりOVDの個数を計数することを特徴とする請求項4又は5記載のOVD検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−64579(P2008−64579A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242217(P2006−242217)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】