説明

S/O型サスペンションの製造方法

【課題】、油相の選択の幅が広く、水溶性固体薬剤の濃度を高めることが容易で、有機溶媒の除去工程を必要としないS/Oサスペンションの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のS/Oサスペンションの製造方法は、水溶性固体薬剤と、水と、第1の界面活性剤と、該第1の界面活性剤よりも大きなHLB値を有する第2の界面活性剤と、を混合する混合工程(S2)と、該混合工程で得られた混合液から水分を除去して水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体を得る複合化工程(S3)と、該水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体を油相に分散させてS/Oサスペンションとする分散工程(S4)と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油相中に水溶性固体の微粒子が均一に分散して懸濁状態となったS/O型サスペンションの製造方法に関し、皮膚に塗布する化粧品や軟膏、経口投与する薬等に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
最近、水溶性固体薬剤の新規な製剤として、親油性界面活性剤で水溶性固体薬剤を被覆し、油中に分散させたS/O型サスペンションからなる製剤が注目されている。このS/O型サスペンションからなる製剤は、水溶性固体薬剤が油相中に封入されているため、皮膚からの吸収を高めたり、これをさらにO/W型エマルションとすることにより、薬剤を外部環境から保護することができる。また、油相として植物油を使用すれば、小腸に存在するリパーゼにより油が分解され、コントロールドリリースも可能となる。
【0003】
このため、様々なS/O型サスペンションの製造方法が開発されている。
例えば、固体薬剤の水溶液を、界面活性剤を溶かした油相中に分散してW/O型エマルションとしておき、さらにこのW/O型エマルションから水分を除去してS/O型サスペンションとする方法(特許文献1)や、界面活性剤を溶かした有機溶媒中に、固体薬剤の水溶液を分散してW/O型エマルションとしておき、さらにこのW/O型エマルションから水分及び有機溶媒を除去した後、油性成分に分散してS/O型サスペンションとする方法(特許文献2)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4349639号
【特許文献2】特許第4426749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたS/O型サスペンションの製造方法では、固体薬剤の水溶液を油相中に分散させるために、油相に溶解可能な界面活性剤を選ぶ必要がある。このため、S/O型サスペンションの製造方法として汎用性に乏しく、油相を自由に選ぶことができなかった。例えば、上記特許文献1に記載されている乳化剤であるテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを、油相であるスクワランに溶解させようとしても溶解しないため、そのような組み合わせでは、S/O型サスペンションを得ることができないのである。
【0006】
また、一端W/O型エマルションを形成してから水分を除去してS/O型サスペンションとする方法であるため、W/O型エマルションの容量が大きくなり、エネルギー消費量が大きいとともに、水溶性固体薬剤の水溶液濃度を低くしないとS/O型サスペンション中の分散粒子の粒径が小さくならないという問題があった。換言すれば、製造上の仕込み容量を一定とした場合、1回あたりの水溶性固体物質の処理量が少なくなるという問題があった。このため、S/O型サスペンション中における水溶性固体薬剤の割合を高めるためには、S/O型サスペンションの製造工程を複数回繰り返すことが必要となり、製造に手間と労力と大きなエネルギーとが必要とされるという問題点があった。
【0007】
また、上記特許文献2に記載されたS/O型サスペンションの製造方法では、固体薬剤の水溶液を、界面活性剤を溶かした有機溶媒中に分散してW/O型エマルションとしておき、さらにこのW/O型エマルションから水分及び有機溶媒を除去した後、油性成分に分散してS/O型サスペンションとする方法であるため、有機溶媒が必要不可欠となる。そして、次工程で有機溶媒を含んだ溶液の凍結乾燥工程が必要とされるため、有機溶媒の揮散による凍結乾燥機の損傷および環境汚染という問題点がある。さらには、界面活性剤中に取り込まれた有機溶媒は揮散し難いため、有機溶媒がS/O型サスペンションに残留するおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、適用できる油相の種類が豊富であり、水溶性固体薬剤の濃度を高めることが容易であって、有機溶媒の除去工程を必要としないS/Oサスペンションの製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のS/Oサスペンションの製造方法は、水溶性固体薬剤と、水と、第1の界面活性剤と、該第1の界面活性剤よりも大きなHLB値を有する第2の界面活性剤と、を混合する混合工程と、該混合工程で得られた混合液から水分を除去して水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体を得る複合化工程と、該水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体を油相に分散させてS/Oサスペンションとする分散工程と、を有することを特徴とする
【0010】
本発明のS/Oサスペンションの製造方法では、まず混合工程において水溶性固体薬剤と、水と、第1の界面活性剤と、該第1の界面活性剤よりも大きなHLB値を有する第2の界面活性剤とを混合する。そして、次に複合化工程として、混合工程で得られた混合液から水分を除去して水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体を得る。最後に、分散工程として、水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体を油相に分散させてS/Oサスペンションとする。
【0011】
本発明のS/Oサスペンションの製造方法によりS/Oサスペンションが容易に得られる理由については、完全には明確となっていないが、次のように推測される。すなわち、混合工程において用いられた第2の界面活性剤は、第1の界面活性剤よりも大きなHLB値を有する(すなわち、親水性の傾向が第1の界面活性剤よりも強い)。このため、図1に示すように、複合化工程において得られる水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体10は、中心に水溶性固体薬剤粒子11が存在し、その表面には、親水性の傾向の強い第2の界面活性剤の存在割合の多い層12が形成され、第2の界面活性剤の存在割合の多い層の外側には、より親油性の傾向が強い第1の界面活性剤の存在割合の多い層13が形成されているものと考えられる。
【0012】
このため、水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体の油相への分散が容易となり、適用できる油相の種類が豊富となる。
また、水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体の混合工程及び複合化工程においては、油相を使用することなく、水溶性固体薬剤の水溶液と第1および第2の界面活性剤の混合物から水を留去するだけである。このため、特許文献2に示されているような、いったんW/O型エマルションを形成させてから水分を除去してS/O型サスペンションとする方法において問題となっていた、油性成分を共存させなければならないことによる製造容量の増大化や、水溶性固体薬剤の水溶液濃度を低くしないと分散粒子の粒径が小さくならないという問題を回避することができる。このため、ひいては、1回の製造における水溶性薬剤の処理量の大幅な効率化がなされ、エネルギー消費量も少なくすることができる。
【0013】
さらには、水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体の調製に有機溶剤を用いていないため、有機溶剤の除去も必要がない。
【0014】
したがって、本発明のS/Oサスペンションの製造方法によれば、適用できる油相の種類が豊富となり、水溶性固体薬剤の濃度を高めることが容易であって、有機溶媒の除去工程も必要としない。
【0015】
本発明のS/Oサスペンションの製造方法では、第1の界面活性剤及び/又は第2の界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることが好ましい。非イオン性界面活性剤はイオン性界面活性剤よりも人体に対する刺激性が少なく、このため、水溶性薬剤の化粧品類、経口投与剤等、人体に接触するところで用いた場合の安全性に優れている。
【0016】
また、第1の界面活性剤のHLB値が4以下であることも好ましい。発明者らの試験結果によれば、第1の界面活性剤のHLB値が4以下であれば、水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体の油相への分散が容易となる。この理由は、前述したように、水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体の最外殻表面において、より親油性の傾向が強い小さなHLB値を有する第1の界面活性剤の存在割合が多い層を形成しているためと推定される。さらに好ましいのは、第1の界面活性剤のHLB値が3.5以下であり、最も好ましいのは3.0以下である。
【0017】
また、第2の界面活性剤のHLB値は5以上17未満であることが好ましい。発明者らの試験結果によれば、第2の界面活性剤のHLB値が5以上17未満であれば、水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体の油相への分散が容易となる。この理由は、前述したように、水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体の水溶性固体薬剤と接する層には、より親水性の傾向が強い大きなHLB値を有する第2の界面活性剤の存在割合の多い層を形成し、水溶性固体薬剤との複合体を強固なものとするためと推定される。さらに好ましいのは、第2の界面活性剤のHLB値が6以上16.5未満であり、最も好ましいのは6.5以上16未満である。
【0018】
また、第1の界面活性剤及び第2の界面活性剤の融点は30℃以下であることが好ましい。こうであれば、第1の界面活性剤及び第2の界面活性剤の界面活性剤としての機能が30℃以下で発揮されるため、混合工程、複合化工程及び分散工程を30℃以下の温度で行うことができ、水溶性固体薬剤の加熱による変化を防止できるとともに、S/Oサスペンションの製造に必要なエネルギー消費を小さくすることができる。
【0019】
また、本発明のS/Oサスペンションの製造方法において、水溶性固体薬剤としては、水中に溶解可能な固体薬剤であれば適宜用いることができる。このような水溶性固体薬剤としては、例えばアスコルビン酸等の水溶性抗酸化剤、シアノコバラミン等の水溶性ビタミン類、水溶性タンパク質、水溶性抗菌剤、水溶性抗癌剤、水溶性鎮痛消炎剤等の各種水溶性薬剤等が挙げられる。これらの中でも、水溶性固体薬剤がリン酸L-アスコルビルマグネシウムであれば、これをS/Oサスペンションとすることにより、皮膚からのリン酸L-アスコルビルマグネシウムの吸収効率を向上させ、美白効果を高めることができる。
【0020】
本発明のS/Oサスペンションの製造方法として、具体的には、水溶性固体薬剤をリン酸L-アスコルビルマグネシウムとし、第1の界面活性剤をペンタエルカ酸スクロースとし、第2の界面活性剤をテトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット(30E.O.)あるいはトリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(20E.O.)とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体の模式断面図である。
【図2】実施形態のS/Oサスペンションの製造方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
実施形態のS/Oサスペンションの製造方法では、次の工程を順に行う。
【0023】
<溶解工程>
まず水溶性固体薬剤を水に溶かして水溶液とする。水溶性固体薬物は、固体であって水溶性の物質であれば、目的に応じて適宜選択できる。たとえば、美白剤として使用されているリン酸L-アスコルビルマグネシウムなどが挙げられる。また、水溶性固体薬物を溶解させる溶媒としては、水を用いるが、pH緩衝剤が添加された水であってもよい。
このときの溶液濃度については、特に制限はないが、水溶性固体薬剤の水に対する溶解度や、製造しようとするS/Oサスペンションの濃度等を考慮して適宜選択する。
【0024】
<混合工程>
次に、上記水溶液と、第1の界面活性剤と、第1の界面活性剤よりも大きなHLB値を有する第2の界面活性剤とを加えて混合する。混合方法としては特に制限はないが、プロペラによる機械撹拌や、超音波を併用しての撹拌、ホモジナイザー、ホモミキサー、混練機等が挙げられる。第1の界面活性剤及び第2の界面活性剤の種類については、第2の界面活性剤のHLB値が第1の界面活性剤よりも大きいものを選択する。
また、第1の界面活性剤と第2の界面活性剤との混合割合は、混合工程終了後又は複合化工程終了後に、2相に分離せずに均一に分散されていれば特に限定はない。
【0025】
第1の界面活性剤はHLB値が4以下であることが好ましく、特に好ましいのは3.5以下であり、最も好ましいのは3.0以下である。
HLB値が4以下の第1の界面活性剤として、具体的にはヘキサエルカ酸スクロース、ペンタエルカ酸スクロース、ポリオレイン酸スクロース、ポリラウリン酸スクロース、テトライソステアリン酸ジグリセリル、テトラグリセリンペンタオレイン酸エステル、テトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、トリオレイン酸ソルビタン及びデカオレイン酸デカグリセリンが挙げられる。これらから1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
また、第2の界面活性剤はHLB値が5以上17未満であることが好ましく、特に好ましいのは6以上16.5未満であり、最も好ましいのは6.5以上16未満である。
HLB値が5以上17未満の第2の界面活性剤として、具体的にはテトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリル、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリグリセリンイソステアリン酸エステル、ポリグリセリンラウリン酸エステル及びポリグリセリンオレイン酸エステルが挙げられる。これらから1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
なお、第1及び第2の界面活性剤のHLB値は、アトラス法、グリフィン法、デイビス法、川上法などを用いて計算することができる。例えば川上法の計算方法を例に挙げれば、次のようになる。
HLB=7+11.7log(Mw/Mo) ・・・(I)
ここで、式(I)においてMwは親水性基部の分子量、Moは親油性基部の分子量をそれぞれ表す。
【0028】
<複合化工程>
そして、混合工程で得られた混合液から水を除去し、水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体を得る。水の除去方法としては、減圧下での凍結乾燥方法のほか、加熱したり、減圧下で加熱したりする方法が挙げられる。減圧下での凍結乾燥方法を用いれば、熱安定性の低い水溶性固体薬剤や界面活性剤を用いることができるため、好ましい。
【0029】
<分散工程>
最後に、水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体を油相に分散させてS/Oサスペンションを得る。この分散方法に関しては特に限定はないが、プロペラによる機械的撹拌、ホモジナイザーや、ホモミキサーなど、乳化や分散において一般に用いられている方法等を用いることができ、さらには超音波を単独あるいは併用で用いたり、加熱したりしてもよい。
【0030】
また、油相に使用される油性成分は特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。たとえば、大豆油、オリブ油、ホホバ油などの植物油、魚油などの動物油、流動パラフィン、スクワランなどの炭化水素、中鎖脂肪酸トリグリセライドなどを使用することができ、またこれらの成分を混合して使用することもできる。
また、油相には、必要性に応じて親油性の増粘剤を添加してもよい。これにより、油相の粘度が増すため、ゲル化製剤としてのS/Oサスペンションを得ることもできる。
【0031】
本発明のS/Oサスペンションの製造方法においては、発明の課題達成を阻害しない範囲で、必要に応じて副次的な添加物を加えて様々な改質を行うことが可能である。副次的な添加物の例としては、抗酸化剤、保存料、増粘剤、香料、着色剤、顔料、抗菌剤、安定剤等が挙げられる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1-1〜1-4)
<溶解工程>
水溶性固体薬剤としてのリン酸L-アスコルビルマグネシウム(以下APMと略することがある)0.5gを、精製水9.5gに溶解してAPM水溶液を得た。
【0034】
<混合工程>
次に、第1の界面活性剤としてのペンタエルカ酸スクロース4.75gと、第2の界面活性剤としてのテトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット(30E.O.)4.75gとを秤り取り、上記APM水溶液を加えてよく撹拌し、均一に分散させて混合液とした。なお、ペンタエルカ酸スクロースのHLB値は2であり、テトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット(30E.O.)のHLB値は11.1である。
【0035】
<複合化工程>
上記混合工程で得られた混合液を凍結乾燥し、粘性のある液体としてAPM−界面活性剤の複合体を得た。
【0036】
<分散工程>
上記APM−界面活性剤の複合体1.0gを秤量し、これに、油(実施例1-1では大豆油99g、実施例1-2ではスクワラン99g、実施例1-3ではスクワラン:ホホバ油=8:2(質量比)の混合油99g、実施例1-4ではスクワラン:ホホバ油=8:2(質量比)の混合油99g及び微量のビタミンE及び香料)を加えて超音波を付与しながらスパーテルによって混合し、実施例1-1〜1-4のS/Oサスペンションを得た。
また、比較例1は第2の界面活性剤を添加せず、第1の界面活性剤としてペンタエルカ酸スクロースを9.5g添加した。比較例2は第1の界面活性剤を添加せず、第2の界面活性剤としてテトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット(30E.O.)を9.5g添加した。
【0037】
表1に実施例1-1〜1-4及び比較例2のS/Oサスペンションの組成、並びに比較例1の組成を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
こうして得られた実施例1-1〜1-4のS/Oサスペンションは大豆油の場合には淡黄色(大豆油の色)で、ほぼ透明、その他においては無色でほぼ透明であり、調製後5日経過しても肉眼観察による外観の変化は認められなかった。また、実施例1-2のS/Oサスペンションは、動的光散乱法にて粒子径を測定したところ、約200ナノメートルであった。
これに対して比較例1の調製物は、混合工程において、2相分離し、均一混合物にさせることができなかったため、S/Oサスペンションの調製までには至らなかった。また、比較例2のS/Oサスペンションは、調製後4日経過した時点で、すでに沈殿が析出していた。
【0040】
(実施例2-1〜2-5)
実施例2-1〜2-5では、下記表2の組成のS/Oサスペンションを調製した。調製方法は実施例1-1〜1-4と同様であり説明を省略する。これらのS/Oサスペンションは無色ほぼ透明であり、調製後5日経過しても肉眼観察による外観の変化は認められなかった。
【0041】
【表2】

【0042】
(実施例3-1〜3-3)
実施例3-1〜3-3では、下記表3の組成のS/Oサスペンションを調製した。調製方法は実施例1-1〜1-4と同様であり説明を省略する。これらのS/Oサスペンションは大豆油の場合には淡黄色ほぼ透明、その他においては無色ほぼ透明であり、調製後5日経過しても肉眼観察による外観の変化は認められなかった。
【0043】
【表3】

【0044】
(実施例4-1〜4-2)
実施例4-1〜4-2では、下記表4の組成のS/Oサスペンションを調製した。調製方法は実施例1-1〜1-4と同様であり説明を省略する。これらのS/Oサスペンションは淡黄色ほぼ透明であり、調製後5日経過しても肉眼観察による外観の変化は認められなかった。
【0045】
【表4】

【0046】
(実施例5-1〜5-2)
実施例5-1〜5-2では、下記表5の組成のS/Oサスペンションを調製した。調製方法は実施例1-1〜1-4と同様であり説明を省略する。また、比較例3は第1の界面活性剤を添加せず、第2の界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(10E.O.)を9.5g添加した。こうして得られた実施例5-1〜5-2のS/Oサスペンションは淡黄色ほぼ透明であり、調製後5日経過しても肉眼観察による外観の変化は認められなかった。これに対して、比較例3のS/Oサスペンションは、1日後に沈殿が析出した。
【0047】
【表5】

【0048】
(実施例6)
実施例6では、下記表6の組成のS/Oサスペンションを調製した。調製方法は実施例1-1〜1-4と同様であり説明を省略する。このS/Oサスペンションはピンク色透明であり、調製後5日経過しても肉眼観察による外観の変化は認められなかった。
【0049】
【表6】

【0050】
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、水溶性薬剤を皮膚から吸収させたり経口投与したりするために用いられるS/O型サスペンションの製造に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
10…水溶性固体薬剤−界面活性剤
11…水溶性固体薬剤粒子
12、13…層
20…油相
S1…溶解工程
S2…混合工程
S3…複合化工程
S4…分散工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性固体薬剤と、水と、第1の界面活性剤と、該第1の界面活性剤よりも大きなHLB値を有する第2の界面活性剤と、を混合する混合工程と、
該混合工程で得られた混合液から水分を除去して水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体を得る複合化工程と、
該水溶性固体薬剤−界面活性剤の複合体を油相に分散させてS/Oサスペンションとする分散工程と、
を有することを特徴とするS/Oサスペンションの製造方法。
【請求項2】
第1の界面活性剤及び/又は第2の界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1に記載のS/Oサスペンションの製造方法。
【請求項3】
第1の界面活性剤のHLB値が4以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のS/Oサスペンションの製造方法。
【請求項4】
第1の界面活性剤がヘキサエルカ酸スクロース、ペンタエルカ酸スクロース、ポリオレイン酸スクロース、ポリラウリン酸スクロース、テトライソステアリン酸ジグリセリル、テトラグリセリンペンタオレイン酸エステル、テトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、トリオレイン酸ソルビタン及びデカオレイン酸デカグリセリンの群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のS/Oサスペンションの製造方法。
【請求項5】
第2の界面活性剤のHLB値が5以上17未満であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のS/Oサスペンションの製造方法。
【請求項6】
第2の界面活性剤が、テトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリル、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリグリセリンイソステアリン酸エステル、ポリグリセリンラウリン酸エステル及びポリグリセリンオレイン酸エステルの群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のS/Oサスペンションの製造方法。
【請求項7】
第1の界面活性剤及び第2の界面活性剤の融点は30℃以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のS/Oサスペンションの製造方法。
【請求項8】
水溶性固体薬剤がリン酸L-アスコルビルマグネシウムであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のS/Oサスペンションの製造方法。
【請求項9】
水溶性固体薬剤がリン酸L-アスコルビルマグネシウムであり、第1の界面活性剤がペンタエルカ酸スクロースであり、第2の界面活性剤がテトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット(30E.O.)であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のS/Oサスペンションの製造方法。
【請求項10】
水溶性固体薬剤がリン酸L-アスコルビルマグネシウムであり、第1の界面活性剤がペンタエルカ酸スクロースであり、第2の界面活性剤がトリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(20E.O.)であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のS/Oサスペンションの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−152655(P2012−152655A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11230(P2011−11230)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(504005736)株式会社ビオメディクス (2)
【Fターム(参考)】