S100−p53タンパク質間相互作用のインヒビター、およびそれを使用して癌を阻害する方法
S100に結合し、かつS100−p53タンパク質間相互作用を阻害し、かつp53の腫瘍サプレッサー活性を活性化し、従って、抗新生物効果を有する、化合物が、本出願において、開示される。これらの化合物を同定する方法もまた、本出願において開示される。この方法は、S100とp53とを試験化合物の存在下で接触させる工程、および
p53へのS100の結合の阻害についてアッセイする工程を包含する。これらの化合物を含む組成物もまた、本出願において開示される。これらの化合物を使用して癌を処置する方法もまた、本出願において開示される。
p53へのS100の結合の阻害についてアッセイする工程を包含する。これらの化合物を含む組成物もまた、本出願において開示される。これらの化合物を使用して癌を処置する方法もまた、本出願において開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に記載される研究は、NIHからの助成金(助成金番号GM58888)およびAmerican Cancer Societyからの助成金(RPG0004001−CCG)によって支援された。連邦政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
(関連出願の援用)
本出願は、2002年3月29日出願の米国仮特許出願番号60/368,835の35 U.S.C.§119(e)(1)の下での利益を主張する。この米国仮特許出願の開示は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、例えば、S100に結合し、S100−p53相互作用を阻害し、そしてp53の腫瘍サプレッサーを活性化し、従って、抗新生物効果を有する、低分子化合物に関する。そして本発明は、これらの化合物を、例えば、S100へのp53の結合の阻害についてアッセイすることによって同定する方法、これらの化合物を含む組成物、およびこれらを使用して黒色腫および他の癌を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
(I.S100タンパク質)
現在、S100ファミリーのEF−ハンドCa2+結合タンパク質の20個より多くのメンバーが存在する。それらは、ヒト組織中に広く分布していることが公知である(Zimmerら、Brain Res.Bull.,37:417−429(1995);Donato,Int.J.Biochem.Cell.Biol.,33:637−668(2001);およびHeizmannら、Frontiers in Bioscience 7:1356−1368(2002))。S100タンパク質は、100%飽和硫酸アンモニウム中で可溶性(soluble)であるので、この名前を与えられた(Moore,Biochem.Biophys.Res.Com.,19:739−744(1965))。1メンバーであるS100Bは、21.5kDaの対称ホモダイマーであり、哺乳動物間で高度に保存されている(>95%)(Zimmerら、上記;およびMoore,上記)。カルモジュリンと類似する様式で、Ca2+依存性コンフォメーション変化が、S100Bが標的タンパク質に結合するために必要である(図1;Rustandiら、Nat.Struct.Biol.,7:570−574(2000);Rustandiら、Biochem.,37:1951−1960(1998);Weberら、「Interaction of Dimeric S100B(ββ) with the Tumor Suppressor Protein:A Model for Ca2+−dependent S100−Target Protein Interactions」,The Molecular Basis of Calcium Action in Biology and Medicine(Pochet,R.,Ed.),Kluwer Academic Publishers,Dordrecht,The Netherlands(2000);およびKligmanら、Trends Biochem.Sci.,13:437−443(1988))。
【0005】
一般に、低レベルのS100Bは、栄養(trophic)効果を有し、そして高レベルのS100Bは、毒性であり、制御されない細胞増殖を生じる(Castetsら、Brain Res.,46:208−216(1997);Van Eldikら、Biochimica et Biophysica Acta,1223:398−403(1994);Mariggioら、Neuroscience,60:29−35(1994);およびMcLendonら、Cancer diagnosis in vitro using monoclonal antibodies(Kubchik,H.Z.編)Vol.39,pp.31−66,Marcel Dekker,New York(1988))。S100Bレベルの増加が、腎細胞腫瘍において見出され(Takashiら、.Urol.Res.,22:251−255(1994))、そして悪性成熟T細胞において見出される(例えば、白血病患者における二重ネガティブCD4−/CD8−成熟T細胞)(Suzushimaら、Leuk.Lymph.,13:257−262(1994))。さらに、S100Bは、神経膠症を刺激する他のサイトカイン(例えば、インターロイキン−1βおよび塩基性線維芽細胞増殖因子)によって、アップレギュレートされる(Hinkleら、Neuroscience,82:33−41(1998))。
【0006】
S100Bの場合と同様に、多数の他のS100タンパク質が、組織特異的様式で調節される(Kligmanら、上記)。S100A1、カルサイクリン(calcyclin)(S100A6)、およびS100Bのレベルは、転移性ヒト乳房上皮細胞において有意に上昇され(Pedrocchiら、Int.J.Cancer,57:684−690(1994))、そしてトランスジェニックマウスにおけるS100A4マウス(mts1)のレベル増加は、転移性乳房腫瘍を誘導する(Chenら、J.Biol.Chem.,272:20283−20290(1997))。mts1の場合、タンパク質レベルは、ラットmts1開始部位の1300塩基上流にあるシス作用性エレメントを介して良性細胞株において制御され(Chenら、上記)、そしてmts1に対するアンチセンスRNAの発現は、高転移性Lewis肺癌腫の転移能を抑制する(Takenagaら、Oncogene,14:331〜337(1997))。S100B、mts1、およびカルサイクリンのタンパク質レベルは、悪性黒色腫と相関する。従って、S100タンパク質は、この癌のマーカーとして使用される(Maelandsmoら、Int.J.Cancer,74:464−469(1997);Boniら、J.Cutan.Pathol.,24:76−80(1997);Xiaら、CancerRes.,57:3055−3062(1997);Hanssonら、Anticancer Res.,17:3071〜3073(1997);および図2B)。
【0007】
S100抗体は、とりわけ、脳、肺、膀胱、腸、腎臓、頸部、乳房、皮膚、頭部および頸部、リンパ、精巣、咽頭、、および口を含む、いくつかの組織において悪性腫瘍を同定し分類するために臨床的に使用される(Takashiら、上記;Suzushimaら、上記;Pedrocchieら、上記;Fisherら、J.Clin.Path.,47:868−869(1994);Iniueら、J.Urol.,85:495−503(1994);Kerrebijnら、Cancer Immun.Immunother.,38:31〜37(1994);Colasanteら、Am.Rev.Resp.Dis.,148:752−759(1993);Zeidら、Path.,25:338−343(1993);Galloら、Arch.Otolarn.,117:1001−1010(1991);Wilsonら、J.Path.,163:25−30(1991);Leeら;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:2504−2508(1992);Leongら、J.Path.,162:35−41(1990);Nakanoら、Arch.Path.Lab.Med.,113:507−511(1989);Kuriharaら、J.Oral.Path.,14:289−298(1985);Matsushimaら、J.Surg.Onc.,55:108−113(1994);Renshawら、Mod.Path.,10:693−700(1997);Larockら、Vet.Path.,34:303−311(1997);およびHurleyら、J.Med.Primat.,26:172−180(1997))。
【0008】
(II.p53)
p53は、転写アクチベーターであり、細胞周期の停止およびアポトーシスについてシグナル伝達をし、そして正常な細胞機能の維持および調節において中心的役割を果す(Levineら、Nature,351:453−456(1991);およびLevine,Cell,88:323−331(1997))。p53の不活化は、細胞周期チェックポイント、アポトーシス、遺伝子増幅、中心体複製、および倍数性に影響を与える(Levine(1997),上記;Woodsら、Exp.Cell.Res.,264:56−66(2001);Burnsら、J.Cell.Physiol.,181:231−239(2001);Appellaら、Eur.J.Biochem.,268:2764−2772(2001);Arrowsmithら、Cell Death Differ.,6:1169−1173(1999);Privesら、J.Pathol.,187:112−126(1999);Vousden,Cell,103:691−694(2000);およびRyanら、Curr.Opin.Cell.Biol.,13:332−337(2001))。ヒト癌のうちの50%より多くで見出されるように、p53が変異によって不活化される場合、その細胞周期は、調節されずに進行し、そして細胞成長が増殖する。同様に、アポトーシス経路が誘導されない場合、増殖中の細胞は、癌性細胞へと形質転換する(Woodsら、上記;Burns,上記;Appellaら、上記;Arrowsmithら、上記;Privesら(1999),上記;Vousden,上記;Ryanら、上記;およびAgarwalら、J.Biol.Chem.,273:1−4(1998))。一方、p53のレベルが高すぎる場合、加齢に関連する問題が生じる(Tynerら、Nature,415:45−53(2002))。p53は、翻訳後修飾および細胞中の他のタンパク質との相互作用によって高度に調節される(Appellaら、上記;Minamotoら、Oncogene,20:3341〜3347(2001);Jayaramanら、Cell.Mol.Life Sci.,55:76−87(1999);Jimenezら、Oncogene 18:7656−7665(1999);およびMeek,Pathol.Biol.,45:804−814(1997))。
【0009】
(III.S100−p53相互作用)
S100Bおよびいくつかの他のS100タンパク質(すなわち、S100A1およびmts1)は、腫瘍サプレッサータンパク質であるp53と、癌細胞中で相互作用し、有意に減少したp53レベルを生じ、そして標的遺伝子のp53依存性転写活性化は、阻害される(Grigorianら、J.Biol.Chem.,276:22699−22708(2001);Linら、J.Biol.Chem.,276:35037−35041(2001);およびCarrierら、Proc.AACR,40:102(1999))。
【0010】
p53のC末端とS100カルシウム結合タンパク質(例えば、S100B)との間の相互作用は、特に興味深い。なぜなら、p53と同様に、S100タンパク質は、細胞周期進行に影響を与え、多数の腫瘍細胞において過剰発現され、そして腫瘍進行に関連するからである(Ilgら、Int.J.Cancer,68:325−332(1996))。これらの結果は、p53およびS100Bが、(i)インビトロで緊密に相互作用し(KD=24±10nM;Delphinら、J.Biol.Chem.,274:10539−10544(1999))、(ii)S100Bは、p53のPKC依存性リン酸化を阻害し(Wilderら、Protein Sci.,7:794−798(1998);およびBaudierら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,89:11627−11631(1992))、(iii)S100Bは、p53テトラマーを解離し(Baudierら、上記)、(iv)S100Bおよびp53のC末端の両方のサブユニットは、X型の4ヘリックスバンドル(bundle)構造モチーフを介して会合し(Weberら、上記;Jeffreyら、上記;およびLeeら、上記)、そして(v)3つのS100タンパク質(S100B、S100A1、mts1)は、インビボでp53の機能を阻害する(Grigorianら、上記;Linら、上記;およびCarrierら(1999),上記)という知見と相関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明において、原発性悪性黒色腫癌細胞において、S100Bが、細胞周期依存性様式で、p53と直接相互作用して、より低レベルの野生型p53を生じることが、示される。さらに、本発明において、S100Bプロモーターが、p53に結合する3つの配列を有することが見出された。このことは、その後、S100B転写が、p53自体の分解を誘発するフィードバックループにおいてp53によって調節されるという知見を支持する。
【0012】
(発明の要旨)
1つの実施形態において、本発明は、S100タンパク質(例えば、S100B、S100A1およびS100A4)に結合し、かつ阻害タンパク質(例えば、S100タンパク質)がp53に結合するのを阻害する、化合物を同定する方法に関する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、p53の機能(特に、p53活性化に起因するS100Bおよび他のS100タンパク質の過剰発現)を測定することによって、p53を活性化する化合物を同定する方法に関する。
【0014】
なお別の実施形態において、本発明は、上記の同定した化合物(ペンタミジンおよびその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない)を、S100Bおよび他のS100タンパク質のp53との結合を阻害する(すなわち、p53を活性化する)ために使用する方法に関する。
【0015】
なお別の実施形態において、本発明は、上記の同定された化合物(ペンタミジンおよびその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない)を、癌を処置するために使用する方法に関する。
【0016】
いかなる特定の機構にも拘束されることは望まないが、本発明の化合物は、S100Bおよび他のS100タンパク質(特に、そのp53結合ドメイン)と相互作用することによって、p53の不活化を阻害し、それによって新生物細胞増殖を減少または阻害すると考えられる。従って、本発明は、例えば、p53を活性化する化合物(特に、S100タンパク質ファミリーのメンバーと特異的に相互作用する化合物、より特に、S100タンパク質(例えば、S100B)がp53に結合するのを阻害する化合物)に関する。
【0017】
本発明のこれらの目的およびさらなる目的は、本発明の詳細な説明から明らかであり、本明細書中に規定される式(I)〜(XIII)により示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩およびその使用によって満たされる。
【0018】
(発明の詳細な説明)
上記のように、1つの実施形態において、本発明は、阻害タンパク質(例えば、S100Bおよび他のS100タンパク質)がp53に結合するのを阻害する化合物を同定する方法に関する。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、p53機能(特に、p53活性化に起因するS100の過剰発現)を測定することによって、p53を活性化する化合物を同定する方法に関する。
【0020】
なお別の実施形態において、本発明は、p53を活性化するために上記同定された化合物を使用する方法に関する。
【0021】
なお別の実施形態において、本発明は、癌を処置するために上記同定された化合物を使用する方法に関する。
【0022】
ペンタミジンが、S100−p53相互作用を阻害することが、本発明において見出された。ペンタミジンは、活性であり、かつFDAが(別の用途について)認可した薬物であるので、本発明はまた、S100に対して増加した結合親和性を有するペンタミジン誘導体に関する。従って、本発明の化合物は、式(I)〜(XIII)により示されるかまたはその薬学的に受容可能な塩であり、
式(I)は
【0023】
【化14】
【0024】
であり、
式(I)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
Xは、1〜8個の炭素原子を有するアルキルであり、そして
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり;
例えば、ペンタミジン
【0025】
【化15】
【0026】
であり、
式(II)は
【0027】
【化16】
【0028】
であり、式(II)において、Y1およびY2は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R11、R12、およびR13は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、メチルエステル、フェニルケトン、アリールエーテル、アリールチオ、アリールメチレン、酸素、カルボニル、カルボキシレート、エチレン、アミド、エステル、チオエステル、およびCZnH3−nからなる群より独立して選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり、そして
必要に応じてR11とR12と、またはR12とR13とは、C、N、O、またはSを含む5員縮合芳香環を形成し得;
例えば、{[(2,3−ジクロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド(化合物3)
【0029】
【化17】
【0030】
であり、
式(III)は
【0031】
【化18】
【0032】
であり、式(III)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8およびY9は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトンおよびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、イミン、エチレン、アミド、エステル、およびチオエステルからなる群より選択され、そして
フェニル芳香環のうちの1つ以上は、芳香環のうちの1つ以上の1〜3個の炭素原子をN原子で置換することによって、縮合芳香環、ヘテロ芳香環、または縮合芳香環(例えば、ナフチル環、ピリジニル環、キノリニル環、およびイソキノリニル環)によって置換され得、
例えば、{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド(化合物9)
【0033】
【化19】
【0034】
であり、
式(IV)は
【0035】
【化20】
【0036】
であり、式(IV)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトンおよびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり、
R15は、窒素またはNOであり、そして
R16は、負に荷電した官能基(例えば、NO2、またはSO2)であり、
例えば、2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレート)(化合物1)
【0037】
【化21】
【0038】
であり;
式(V)は
【0039】
【化22】
【0040】
であり、式(V)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1およびR2は、同じであってもまたは異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり、
例えば、2−クロロ−5−[N’−(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2−イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸(化合物31)
【0041】
【化23】
【0042】
であり;
式(VI)は
【0043】
【化24】
【0044】
であり、式(VI)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、およびY9は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R5およびR6は、各々(CH2)n1であり、(CH2)n1においてn1は0〜3であり、かつ(CH2)n1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、ベンズアミジン、フェニル環に連結した1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、カルボキシレート、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZ1nH3−nからなる群より選択される要素に連結されており、CZ1nH3−nにおいて、Z1は、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、およびsec−ブチルからなる群より選択され、nは、1〜3であり、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、そして
R7およびR8は、各々、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、およびsec−ブチル、およびCZ1nH3−nからなる群より選択され、CZ1nH3−nにおいて、Z1は、ハロゲンであり、nは、1〜3であり;
例えば、4−(4−{[1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸(化合物4)
【0045】
【化25】
【0046】
であり、
式(VII)は
【0047】
【化26】
【0048】
であり、式(VII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1、R2およびR3は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、カルボキシレート、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり;
例えば、1,2−(3−メチルチオトリアジン)−3,4−フェニル−6−[(2−メトキシフェノキシ)酢酸]モルホリン(化合物33)
【0049】
【化27】
【0050】
であり、
式(VIII)は
【0051】
【化28】
【0052】
であり、式(VIII)において、Y1、Y2、Y3、およびY4は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され;
例えば、4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル)−ヒドラゾノメチル}−安息香酸(化合物51)
【0053】
【化29】
【0054】
であり、
式(IX)は
【0055】
【化30】
【0056】
であり、式(IX)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、
R9は、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルからなる群より選択され、および
R10は、負に荷電した官能基(例えば、NO2またはSO2)であり;
例えば、1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸(化合物24)
【0057】
【化31】
【0058】
であり、
式(X)は
【0059】
【化32】
【0060】
であり、式(X)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、
例えば、(3−ベンゾイック)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸(化合物38)
【0061】
【化33】
【0062】
であり、
式(XI)は
【0063】
【化34】
【0064】
であり、式(XI)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY1lは、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、アミン、1〜3個の隣接するアミン、グアニジン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、
例えば、2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸(化合物39)
【0065】
【化35】
【0066】
であり、
式(XII)は
【0067】
【化36】
【0068】
であり、式(XII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり;
例えば、2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸(化合物44)
【0069】
【化37】
【0070】
であり、
式(XIII)は
【0071】
【化38】
【0072】
であり、式(XIII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1、R2およびR3は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、
例えば、5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸(化合物45)
【0073】
【化39】
【0074】
である。
【0075】
ペンタミジン(Sigma Chemicals;カタログ番号P0547)、化合物1(Maybridge Chemical Company,Ltd.;カタログ番号SPB03102)、化合物3(Maybridge Chemical Company,Ltd.;カタログ番号RJF01370)、化合物4(Maybridge Chemical Company,Ltd.;カタログ番号BTB12151)、化合物9(Maybridge Chemical Company,Ltd.;カタログ番号RFJ00706)、化合物24(Chembridge Corporation;カタログ番号5954029)、化合物31(Chembridge Corporation;カタログ番号5658092)、化合物33(Chembridge Corporation;カタログ番号5720358)、化合物38(Chembridge Corporation;カタログ番号5740132)、化合物39(Chembridge Corporation;カタログ番号5748750)、化合物44(Chembridge Corporation;カタログ番号5774211)、化合物45(Chembridge Corporation;カタログ番号5764589)および化合物51(Chembridge Corporation;カタログ番号6050433)は、商業的供給源から入手可能である。
【0076】
式(I)〜(XIII)の化合物は、公知の反応化学を使用して、公知の材料または従来から調製可能である材料から開始して、従来通り調製され得(Houben−Weyl,Methoden der Organischen Chemie,Methods of Organic Chemistry,Georg−Thieme−Verlag,Stuttgartを参照のこと)、そして/または慣用的化学修飾によって、市販の化合物から調製され得る。
【0077】
例えば、式(I)のペンタミジンの誘導体は、図15において示されるように、Nandiら、J.Ind.Chem.Soc.,70:527(1993)により記載されるように調製され得る。4−シアノフェノールが、一連のポリメチレンジブロミドを用いてアルキル化されて、対応するビス(4−シアノフェニルオキシ)アルカン(1a〜1e)が生じる。この後、そのシアノ中間体から一連のイミデートヒドロクロリドへの転換が行われ、この一連のイミデートヒドロクロリドは、水酸化ナトリウム水溶液を用いる処理によって、対応する遊離塩基(2a〜2e)へと転換される。その後、イミデート2a〜2eが、イセチオン酸のアンモニウム塩を用いて処理されて、最終標的化合物3a〜3eが得られる(図15を参照のこと)。この合成経路における出発化合物および/またはこの反応スキームにおける種々の段階の反応物を変化することによって、種々の置換基(Y1〜Y8;R1〜R2;および種々の長さのX,n=1〜8)は、式(I)において示されるペンタミジンの誘導体を生成するために慣用的に置換され得る。
【0078】
第2の例(すなわち、化合物4について)において、化合物4の慣用的合成が、下記に概説される:
【0079】
【化40】
【0080】
この合成経路(すなわち、化合物4について)における出発化合物および/またはこの反応スキームにおける種々の段階での反応物を変化することによって、種々の置換基(Y1〜Y9;R5〜R8;およびX2リンカー)が、式(VI)により示される化合物4の誘導体を生成するために慣用的に置換され得る。これらの2つの例(式(I)および(VI))により記載されるアプローチと同様のアプローチを使用して、他の合成経路(すなわち、化合物1、3、9、24、31、33、38、39、44、45および51の調製について)に対する慣用的改変が、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)および(XIII)に示される化合物を調製するためになされ得る。
【0081】
特定の薬学的に受容可能な塩は、本発明にとって重要ではなく、そのような塩としては、イセチオネート、HCl、オキサールアセテート、または他の塩が挙げられ得る。
【0082】
本発明の化合物は、癌を処置するために有用な組成物(例えば、薬学的組成物)中に、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤とともに存在し得る。
【0083】
本発明において使用される特定の薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤は、本発明にとって重要ではない。このようなキャリアまたは希釈剤の例が、The Handbook of Pharmaceutical Excipients,A.WadeおよびP.J.Weller編、第2版、American Pharmaceutical Association,Washington DC(1994)(これは、本明細書中に参考として援用される)に列挙される。クレモフォアELが、好ましい。
【0084】
本発明の式(I)〜(XIII)により示される化合物の特定の投与様式は、本発明にとって重要ではない。例えば、本化合物は、軟膏またはクリーム中にて、皮膚癌に局所投与され得る。リン酸緩衝液生理食塩水溶液を使用する静脈内投与は、別の選択肢である。
【0085】
本発明に従って投与されるべき式(I)〜(XIII)により示される化合物の特定の量は、投与様式、処置されるべき癌、単独投与されるかまたは他の薬物と組み合わせて投与されるか、ならびに処置されるべき被験体の年齢、体重および性別に依存して変動する。一般に、局所投与されるべき量は、約1〜300mg/m2体表面、好ましくは、20〜300mg/m2体表面の範囲内にある。
【0086】
本発明の化合物が薬学的効果を示す癌は、特に限定されない。しかし、本発明の化合物は、黒色腫、星状細胞腫、神経膠腫、ならびにS100Bタンパク質または他のS100タンパク質が増加している他の癌(例えば、脳、肺、膀胱、腸、腎臓、頸部、乳房、皮膚、頭部および頸部、リンパ、精巣、咽頭、および口の癌)に対して、特に有効である。
【0087】
p53へのS100タンパク質の結合の阻害は、蛍光結合/競合アッセイによってアッセイされ得る。例えば、S100Bへの結合は、蛍光ペプチド(例えば、F43W p53ペプチド(SHLKSKKGQSTSRHKKLMWKTE(配列番号1))またはTRTK−12ペプチド(TRTKIDWNKIL(配列番号2))であり、両方とも、蛍光トリプトファン残基を含む(実施例7を参照のこと))を用いてモニターされる。このようなアッセイにおいて、このペプチドの結合は、10〜20 mMの塩化カルシウム(pH 7.4)の存在下で、350〜370nmにおけるその蛍光強度の変化によってモニターされる。その後、試験化合物によるそのペプチドの置換が、対応する蛍光強度の減少によってモニターされ、そしてS100Bからの試験化合物の解離定数は、標準的競合式(KD=Kapp/(1+[蛍光ペプチド]/KDペプチド)を使用して、計算される。その後、試験化合物が結合するS100B上のアミノ酸残基が、NMR分光法を使用して、化学シフト変動(perturbation)によってモニターされ得る。
【0088】
p53活性化に起因するS100タンパク質(例えば、S100B)の過剰発現は、ウェスタンブロッティング技術によって測定され得る(図11および実施例1を参照のこと)。
【0089】
以下の実施例は、例示だけのために提供され、本発明の範囲を限定することは全く意図されない。
【実施例】
【0090】
(実施例1)
(原発性悪性黒色腫細胞における野生型のS100Bおよびp53のタンパク質レベル)
先述のように(Linら、前出)、100μgの原発性ヒト黒色腫C8146Aのタンパク質抽出物または100μgのヒト神経膠芽細胞腫U118のタンパク質抽出物に対して、ウェスタンブロット解析を行った。
【0091】
C8146A細胞は、Frank L.Meyskens博士(University of California、Irvine)から得た。そして、それを10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS、GIBCO−BRL)を含有するF−10培地で増殖させた。
【0092】
U118細胞は、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA)から購入した。そして、10%(v/v)FCSを含有するD−MEMで増殖させた。
【0093】
50mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、1.0%(v/v)Nonidet P−40、0.5%(w/v)デオキシコール酸ナトリウム、0.1%(w/v)SDS、1.0mM PMSF、10μg/mlアプロチニン、2.0μg/mlロイペプチンおよび5.0mM DTTを含むRIPA緩衝液中で、細胞を溶解して、細胞抽出物を得た。
【0094】
この細胞抽出物中のタンパク質を12%(w/v)ポリアクリルアミドゲル上で泳動し、ニトロセルロースに転写し、そしてp53マウスモノクローナル抗体(DO−1、Oncogene Research Products、Boston、MA)(1:1000希釈)、S100Bウサギポリクローナル抗体(Research Diagnostics Inc.、Flanders、NJ)(1:500希釈)、サイクリンD1モノクローナル抗体(Oncogene Research Products)(1:100希釈)、またはタンパク質の使用量のための基準として、アクチンマウスモノクローナル抗体(Oncogene Research Products)(1:5000希釈)のいずれかと反応させた。次いで、ブロットを、セイヨウワサビペルオキシダーゼと結合体化したそれぞれの2次抗体と反応させ、製造者が推奨するように、化学発光基質(ECL、Amersham Pharmacia Biotech Inc.、Piscataway、NJ)と反応させた。先述のように(Linら、前出)、組換えS100Bタンパク質コントロールを生産し、そして均一になるまで精製した。その結果を、図2A〜2Bに示す。
【0095】
図2A〜2Bに示すように、原発性悪性黒色腫細胞(C8146)は、相対的に高レベルのS100Bを確立したが、これらの癌細胞において、p53のレベルは、S100Bをほとんど含まないか、または全く含まない細胞(すなわち、U118)と比較して、著しく低かった。このインビボでの知見は、S100Bおよびp53の一過性の同時トランスフェクションにおいて見出されることと一致し、この場合、S100Bの添加によって、腫瘍サプレッサータンパク質のレベルが、有意に減少した(>100倍)(Linら、既出)。漸増量の組換えS100Bタンパク質を使用して、C8146細胞中のS100Bのレベルが、U118細胞よりも、少なくとも50倍は高いと推定された。
【0096】
(実施例2)
(S100Bとp53との相互作用は、カルシウム依存的である)
(A)アポ−S100BおよびCa2+が結合したS100Bの溶液構造
距離制限、双極子カップリング制限、二面角制限を使用して、ダイマーアポ−S100Bの3次元構造を決定した。アポ−S100Bのα−へリックス含量(Amburgeyら、J.Biomol.NMR、6:171〜179(1995))およびその対称的なダイマー境界面から生じる曖昧さのために、NOEの割当てが困難であった。そのため、2次元および3次元のNOESYスペクトルに、4次元NOESY実験を補足し、重複する問題を解決した。そして、非対称的に標識されたS100B(すなわち、非標識S100B:13C、15N標識S100Bの1:1混合物)を用いる13C−エディットの12C−フィルター実験を使用し、ダイマー境界面において、分子内NOE相関を分子間NOE相関から区別した(Drohatら、前出)。結果として、化学シフト値のみに基づいて、ロングレンジの分子間NOE相関の70%よりも多くが、割当てられた。NOEベースの構造は、ショートレンジの距離制限にのみ基づくので、この構造を、ロングレンジの双極子カップリング制限を使用して、精緻化した(Tjandraら、Science、278:1111〜1114(1997);Tjandraら、Nat.Struct.Biol.、4:443〜449(1997);およびDrohatら、Biochemistry、37:2729〜2740(1998))。アポ−S100Bの溶液構造が、非常に高い解像度(Qは約0.3)で、公表された(Drohatら(1996)、前出;および、Drohatら、Protein Science、8:800〜809(1999))。そして、それを図3に示す。実際は、動的特性がほとんどない領域においては、クオリティファクターは、さらに良好である(Q<0.2)。アポ−S100Bの最終構造(約15NMR制限距離/残基)は、X型の4へリックスバンドルを形成する逆平行のヘリックス対同士の垂直的結合を有する対称的なダイマー境界面を示す(図3)。このフォールディングの結果として、アポ−S100BのC末端のEFハンドは、カルモジュリン、トロポニンC、カルビンジン(Calbindin)D9K、カルサイクリン(Calcyclin)、およびパルブアルブミンのEFハンドとは異なる(Drohatら(1996)、前出;およびDrohatら(1999)、前出)。それはまた、広範囲の疎水性コアおよび、その高い可溶性と一致する荷電表面を有する。このアポ−タンパク質に関して、Ca2+が結合したS100Bの溶液構造(図1)が、NMRを使用して解明された。これは、Drohatら(1998、前出)および図4に示される。
【0097】
(B) S100Bダイマーおよびそのコンフォメーション変化
S100Bのアポ構造(図3)とCa2+が結合した構造(図4)との比較により、X型4へリックスバンドルのダイマー境界面におけるへリックス(1、1’、4、または4’)の方向に違いがないことが示された(図1)。これらの知見により、Drohatら、Protein Science、6:800〜809(1997);Landarら、Biochim Biophys Acta、1343:117〜129(1997);およびLandarら、Biochem.、37:17429〜17438(1998)に記載された、ゲル濾過データ、光散乱データ、および分析的超遠心分離データが、確認される。これらの文献は、S100Bダイマーが、Ca2+の存在下および非存在下の両方において、1.0nM未満の濃度において安定であることを示す(Drohatら(1997)前出;Landarら(1997)、前出;およびLandarら(1998)、前出)。従って、非共有結合性のダイマーが、細胞内でのS100タンパク質の状態であり、NMR構造は、生理学的に妥当なオリゴマー化状態である。しかし、第2EFハンド(典型的なEFハンド)において、Ca2+が添加された場合、へリックス3の位置に大きな変化が存在する(図1)。このEFハンドにおいて、Ca2+が添加された場合、ヘリックス3とヘリックス4との間のへリックス間角度において、90°の変化が観測される。このCa2+依存的なコンフォメーション変化によって、ヒンジ領域中の残基、C末端ループ中の残基、およびヘリックス3中の残基によって規定される裂溝(アポ構造中には、存在しない)が、露出される(図1)。Ca2+が結合したS100B上のこの表面(図1で黄色)が露出されることが、p53の結合にとって必要である(図1および図4)。
【0098】
(C)Ca2+−S100B−p53ペプチド複合体の溶液構造
S100Bとp53のC末端との間の相互作用の詳細を調査するために、p53367〜388ペプチドによるCa2+が結合したS100Bの力価測定を、Rustandiら(2000)、前出;Rustandiら(1998);前出;およびRustandiら、Protein Science、8:1743〜1751(1999)に記載されるように、NMR分光法によりモニタリングした。Ca2+の存在下において、p53367〜388が添加された場合に、HSQCスペクトル中のS100Bからの非常に多くの共鳴が、有意にシフトした。しかし、Ca2+の非存在下では、変化は、測定されなかった。これらのデータによって、p53ペプチドのS100Bとの相互作用のCa2+依存性が、確認された。S100B−p53 4量体(S100Bダイマーにつき2つのp53ペプチド)の大きさ(26kDa)および複雑性のために、対称的に標識したサンプル(S100Bサブユニットの両方を、完全に同位体標識する;p53は非標識)および非対称的に標識したサンプル(標識S100βサブユニットと非標識S100βサブユニットの50:50混合物;p53は標識しない)の両方を使用する、異核多次元(2D〜4D)NMRデータ(Cloreら、Determination of structures of larger proteins in solution by three− and four−dimensional heteronuclear magnetic resonance spectroscopy. NMR of proteins(Cloreら編)、CRC Press、Boca Raton、FL(1993);およびWaltersら、Methods Enzymol.、339:238〜258(2001))を収集することが必要であった。これらのNMRデータおよびS100B−p53ペプチド複合体の構造が、Rustandiら(2000)(前出)に記載されている。総じて、3,466個の実験的制限(約15個/残基)を使用して、Ca2+−S100Bに結合したp53367〜388の構造を計算した(図4)。
【0099】
(D)p53−S100B相互作用のCa2+依存性
p53−S100B相互作用のCa2+依存性は、3つ全てのS100B複合体(アポ−S100B、Ca2+が結合したS100B、およびp53が結合したS100B;図1)の構造を比較することにより、観測され得る。p53と相互作用する残基のほとんど(21個のうち18個)は、アポ−S100B構造中に埋没している(図1中の黄色)。しかし、Ca2+がS100Bに結合した場合、これらの同じ残基が、へリックス3の位置の大きな変化に起因して、露出される。このコンフォメーション変化が、p53との相互作用に必要である(図1)。この構造はまた、S100Bタンパク質の標的中で見出された(すなわち、ファージペプチドライブラリーのスクリーニングに由来する)コンセンサス配列を理解するために、有用であった。「S100B−コンセンサス配列」の多くが、p53のC末端において、見出され(Ivanenkovら、J.Biol.Chem.、270:14651〜14658(1995))、そして、p53ペプチドを、この配列により一致するように変異させた(F385W)場合、このp53ペプチドのS100Bに対する親和性は、5倍上昇する(Rustandiら(1998)、前出)。コンセンサス配列全体を含む12残基のペプチド(TRTK−12ペプチド)に結合したS100Bの3次元構造研究/動力学的研究が、Inmanら、J.Mol.Biol.、324:1003〜1014(2002)に記載されており、従って、TRTK−S100Bの構造およびp53 S100Bの構造の両方を、本明細書中で、薬物設計の仕事において使用した。
【0100】
(実施例3)
(悪性黒色腫におけるS100Bとp53との間の相互作用は、細胞周期依存的である。)
悪性黒色腫におけるS100Bとp53との間の相互作用は、細胞周期依存的であるかどうかを研究するために、C8146A原発性悪性黒色腫を、血清飢餓(0.5%(w/v))によって、同調化した。詳細には、黒色腫細胞の同調化は、血清飢餓により行った。この血清飢餓は、0.5%(v/v)FCS中で、48時間、細胞を増殖させ、次いで、FCSレベルを15%(v/v)まで上げ、そして次いで、収集する前に、種々の期間(すなわち、0時間と48時間との間)、細胞を増殖させることで行った。次いで、細胞を収集し、氷冷PBSで2回洗浄した。次に、この細胞のペレットを、溶解緩衝液(50mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、2.0mM CaCl2、1.0mM PMSF、2.0μg/ ml ロイペプチンおよび5.0mM DTTを含む)中で、溶解した。細胞(1/2容積の0.1mm ガラスビーズを含む)を、3回、凍結および融解させ、そして15,000rpmで遠心分離した。上清(1.0mg)を、p53抗体(DO−1)またはS100B抗体のいずれかと共に、4℃で2時間、インキュベートした。次いで、プロテインA−アガロースビーズ(50μl、Oncogene)を添加し、サンプルを、4℃で一晩、インキュベートした。このビーズを、スピンダウンし、溶解緩衝液で6回、洗浄した。そして、12%(w/v)SDS−PAGE上にローディングした。このサンプルを、ニトロセルロース膜に転写し、インキュベートした(すなわち、上記のように、S100B抗体またはp53抗体を使用して共免疫沈降した)。その結果を、図5A〜5Bに示す。
【0101】
図5A〜5Bに示すように、直接的S100B−p53相互作用が、インビボで起きる。S100Bは、ほとんどの細胞において、主に細胞質ゾル性であるが、p53は、G1の間は細胞質に局在し、Sの間は核に入り、転写活性化を開始する。図5Aに示したデータは、サイクリンD1(G1マーカー)の発現が、15%(v/v)血清中への黒色腫の放出後6〜8時間の間に最大であったことを示す。この理由により、6時間の時点を選択して、癌細胞の同調化したG1抽出物を調製した。同調していない指数増殖している癌細胞の、p53抗体を使用した免疫沈降(図5B、レーン1)は、たとえあったとしても、少しの量のS100Bしか、p53によって共免疫沈降され得ないことを示す。しかし、細胞をG1に同調化した場合(図5B、レーン3)、p53抗体によって免疫沈降され得るS100Bの量が、著しく上昇した。S100B抗体を使用して行われた相互免疫沈降実験(図5B、レーン2)によって、G1の間のp53とS100Bとの間の複合体の形成が確認された。G1において、この相互作用が起こるという事実は、重要である。なぜなら、この相は、DNAの複製の前に存在し、そしてp53が、傷害を受けたDNAに応答するための重要なチェックポイントであるからである。ほとんどの細胞では、p53は、G1の間は細胞質に局在し、Sの間は核に入って、その転写活性を提供する。1つの重要なp53の下流エフェクター遺伝子が、サイクリン依存性キナーゼインヒビターp21である。このインヒビターは、DNA損傷に応答して、pRBのリン酸化を防止し、細胞をG1に停止させる。このG1での停止によって、そのDNAを修復し損傷DNAが娘細胞に伝達するのを防止するための時間が、細胞に与えられると考えられる。G1の間の細胞質でのS100Bとp53との相互作用によって、Sの間の核へのp53の進入が防止され、p53の転写活性が阻害され得る。野生型p53に対するS100Bの総合的な効果によって、細胞の異常(例えば、非機能的なp53が生じる遺伝子増幅および遺伝子変異)を模倣し得る。p53のC末端と結合するかまたはp53のC末端を改変するほとんどのタンパク質は、腫瘍サプレッサーを活性化する。一方で、S100Bに対しては、逆の効果が観測された。S100Bが結合した場合、p53の機能は低下した(Linら、前出)。
【0102】
(実施例4)
(p53の機能のS100B阻害)
S100Bは、p53のリン酸化を阻害し(Wilderら、前出;およびRustandiら(1998)、前出)、そしてp53テトラマーを破壊する(Baudierら、前出)。これらの2つの機能は、p53の転写活性にとって重要である(Giacciaら、Genes and Develop.、12:2973〜2983(1998))。S100Bは、p53のDNA結合活性を低下させる(Linら、前出)。このことは、阻害的リン酸化およびテトラマーの形成の防止に加えて、S100Bは、p53の転写活性にも影響し得ることを示唆する(Linら、前出)。このことを立証するために、一過性トランスフェクションを、H1299ヒト大細胞肺癌細胞において、p53レポーター遺伝子構築物(pG13−CAT)(Kernら、Science、256:827〜830(1992))と同時に、S100B発現ベクターおよびp53発現ベクターを使用して、実行した。S100B単独でのトランスフェクションは、レポーター遺伝子に影響しなかったが、S100Bのp53との同時トランスフェクションは、転写活性を有意に低下させた(Linら、前出)。S100A1を使用したこれらの研究およびS100Bに関する研究おいて、S100A1が、p53の機能を阻害した(Carrierら、前出)。mtslを使用して行われた研究は、このS100タンパク質もまた、p53に結合し、その転写活性化を有意に阻害することを示す(Grigorianら、前出)。
【0103】
S100Bのp53との相互作用の重要性をさらに評価するために、p53およびその下流エフェクターの内の2つであるmdm2(または、ヒトについてはhdm2)およびp21のタンパク質レベルを試験した。詳細には、ヒト大細胞肺癌細胞(H1299)を、p53発現ベクターおよびS100B発現ベクターを使用して、一過的に同時トランスフェクションした。H1299細胞株は、Bert Vogelstein博士から得た。これらの細胞は、p53遺伝子のホモ接合性欠失に起因して、p53のヌル遺伝子型を有する。それゆえ、存在する唯一のp53は、トランスフェクションを介して導入された野生型のタンパク質である(Funk、Mol.Cell Biol.、12:2866〜2871(1992))。この結果を、図6Aに示す。
【0104】
図6Aに示すように、p53は、p53発現ベクターの非存在下では、検出されなかった(レーン1、2;図6A);その結果、mdm2タンパク質およびp21タンパク質の内因性レベルは、低かった。予想どおり、p53の発現によって、mdm2およびp21の発現が引き起こされた(図6A、レーン3)が、S100Bタンパク質との共発現によって、p53タンパク質の蓄積(100分の1未満に)、mdm2タンパク質レベルおよびp21タンパク質レベルは、著しく減少した(図6A、レーン4)。p53の非存在下(すなわち、コントロール実験)でのS100Bの発現(図6A、レーン2)は、基礎レベルのmdm2にもp21にも、有意には影響しなかった(図6A)。このデータは、p53レベル、mdm2レベルおよびp21レベルの減少は、S100Bに依存することを示す。
【0105】
次に、S100Bが、内因性のp53と相互作用し、mdm2およびp21の発現に影響し得るかどうかを研究した。ヒト乳癌細胞株MCF−7(野生型p53の遺伝子型を有する(Kastanら、Cell、71:587〜597(1992))を、S100Bを使用して、一過的にトランスフェクトした。S100Bのトランスフェクションの後で、内因性p53の生産を誘導するために、X線模倣試薬ブレオマイシンで細胞を処置した(または、処置しなかった)。その結果を、図6Bに示す。
【0106】
図6Bに示すように、基礎レベルのp53、mdm2およびp21が、ブレオマイシンへの曝露によって誘導され得る(図6B、レーン2)。内因性S100Bは、MCF−7では検出できないが(図6B、レーン1)、S100Bタンパク質の過剰発現により、p53のレベルが減少し、mdm2の蓄積およびp21の蓄積が、阻止された(図6B、レーン4)。これらのデータは、S100Bが、インビボで、p53の下流エフェクター遺伝子の内在性の発現を阻害することを示す。
【0107】
(実施例5)
(S100Bプロモーターの領域は、p53に結合する)
活性p53レベルが上昇した場合、細胞周期およびアポトーシスに関与する多数の遺伝子の転写が、活性化される。1つの周知の場合において、p53は、フィードバックループの一部としてp53自体のユビキチン依存性分解に関与するタンパク質である、mdm2の転写を活性化する(Privesら(1999),上記;Freedmanら、Cell Mol.Life Sci.,55:96−107(1999);およびMomandら、Gene,242:15−29(2000))。mdm2と同様の状況(ヒトにおけるhdm2)において、S100Bのプロモーターは、p53結合についてのコンセンサス配列に対応する3つの配列を有する(図7)。実際、このS100Bプロモーター中の一配列は、p53結合コンセンサス配列と完全に適合する(20/20ヌクレオチド適合;図7)。
【0108】
従って、移動度シフトアッセイを、精製p53を用いて実施して、S100Bのプロモーター中のこれらの配列が真正にp53結合部位であるか否かを、GADD45配列をポジティブコントロールとして使用して決定する。電気泳動移動度シフトアッセイを、本質的にはCarrierら、Mutation Res.,352:79−86(1996)により記載されるのと同様に実施した。但し、サケ精子DNA(1.0μg)および精製組換えp53を使用した。バキュロウイルスにより発現されたp53を、Protein Sciences Inc.(Baltimore,MD)から得た。バキュロウイルスにより発現されたp53(0.6μgおよび3.0μg)を、それぞれ、GADD45オリゴヌクレオチドおよびS100Bオリゴヌクレオチドへの結合のために使用した。以前に記載された通り(Carrierら(1996),上記)に、これらのプローブを、逆相HPLC(Vydac C−4)により精製し、そしてT4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England BioLabs)を用いて標識した。Sl00βプロモーター由来のオリゴヌクレオチド配列は、20個のコンセンサスp53結合部位の20ヌクレオチド、17ヌクレオチド、および16ヌクレオチドと適合し、それは以下の通りであった:
センス 5’−GCC TGG GCA AGC TCT GTG CTT CAC AGA GCA AGC CTG TGT−3’(配列番号3);
センス 5’−GTT CTG GGA CTT TCA CTA AAC TTC TCC TAC CAT−3’(配列番号4);および
センス 5’−CAG AGG GCA GGC CCG GCT GGG CCC TCC TGC TGA−3’(配列番号5)。
【0109】
結果は、図8において示される。
【0110】
図8において示されるように、より低移動度の複合体が、GADD45およびS100B(20/20ヌクレオチド)プローブ(それぞれ、レーン2および5)とともに生成された。さらに、両方のバンドは、p53抗体(それぞれ、レーン3および6)によってスーパーシフトされた。従って、これは、真正のp53複合体を示す。しかし、コンセンサス配列が完全に適合するにも関わらず、GADD45配列と比較した場合、5倍多くのタンパク質およびDNAが、S100Bプロモーター配列とのタンパク質−DNA複合体を生成するためには必要であった。このことは、コンセンサス配列中のT/A改変体のうちの2つが、GADD45配列(これは好ましい)においてTであるが、S100B配列においてはAであるという事実(図7)に起因し得る。これらのp53結合部位間の別の差異は、p53と相互作用する2つの10ヌクレオチドDNAストレッチを連結する、介在DNA配列の長さである(11ヌクレオチド 対 0ヌクレオチド;図7)。同様のデータが、S100Bプロモーター中の他の2つのp53コンセンサス部位を用いて得られた;しかし、これらの部位は、20/20配列よりもさらに低いp53親和性を有した。まとめると、これらのデータは、p53によるS100B転写の誘導は、それらのプロモーター中により高親和性のp53部位を含む遺伝子が占められた後にのみ生じることを示唆する。さらに、p53は、他のS100タンパク質(S100A2)(Tanら、FEBS Letter,445:265−268(1999))の転写を、それらのプロモーター領域において見出されるp53結合コンセンサス配列に結合することによって調節する可能性もまたある(図7)。
【0111】
(実施例6)
(S100B−p53相互作用の阻害は、p53腫瘍サプレッサー機能を回復する)
原発性悪性黒色腫細胞C8146は、比較的高いレベルのS100Bを有するが、p53レベルは、S100Bをほとんど含まないかまたは全く含まない細胞(すなわち、U118;図2A〜2B)と比較して、これらの癌細胞において顕著に低い。このインビボでの知見は、S100Bおよびp53の一過性同時トランスフェクションにおいて見出されるものと一致する。ここで、腫瘍サプレッサータンパク質のレベルは、S100Bの添加によって有意に減少された(>100分の1)(Linら、上記)。漸増量のS100B組換えタンパク質を使用すると、C8146細胞におけるS100Bのレベルは、U118細胞において少なくとも50倍高いと推定された。S100Bが、黒色腫癌細胞において低いp53レベルに対して直接寄与するか否かを決定するために、S100BのC末端に対応する小干渉RNA(siRNA)を調製し、黒色腫細胞中に導入した。
【0112】
使用した小干渉RNA(siRNA)は、23ヌクレオチド(nt)の二本鎖RNAからなった。これは、Xeragon Inc.(Huntsville,Al)によって合成された。このsiRNAの配列(すなわち、5’−ACU ACU GCC UGC CAC GAG UUC−3(配列番号6))は、S100β C末端(ヌクレオチド244〜265)+2つのdT 3’突出に対応する。
【0113】
種々の濃度のsiRNA(2.0nM、20nM)を、2.0μgのpCMV.3空ベクター(Stratagene,La Jolla,CA)とともにこれらの細胞に添加した。これらのsiRNAを、FuGENE試薬(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN)を製造業者の推奨に従ってを使用して、C8146A黒色腫細胞においてトランスフェクトした。これらの細胞を24時間後に収集し、そして上記のようにウェスタンブロットによって分析した。これらの結果が、図9に示される。
【0114】
図9において示されるように、S100BアンチセンスRNAの添加によって、S100Bレベルが低下し(3分の1)、対応して、p53レベルの増加(2.3倍)が観察された。同様に、p53により活性化される遺伝子であるp21のタンパク質レベルもまた、p53レベルが上昇した場合に、予期された通り、siS100Bの添加によってアップレギュレートされた(2.6倍)(図9)。まとめると、アンチセンスRNAを用いたこれらの結果は、S100Bが、原発性悪性黒色腫癌細胞内部での機能的p53のダウンレギュレーションに寄与することを示す。
【0115】
(実施例7)
(S100Bの低分子インヒビター)
上記の研究は、S100タンパク質レベルが上昇しておりかつp53レベルが減少している細胞(例えば、多くの癌(すなわち、悪性黒色腫)中の細胞)において、野生型p53活性を回復するためのS100Bの低分子インヒビターの設計を動機付けた。
【0116】
この低分子は、S100B上のp53結合部位に結合することによってS100B−p53相互作用を阻害し、そしてp53結合を阻害するように、設計した。従って、このようなインヒビターは、p53をS100B依存性分解経路から保護し、そして細胞内部における野生型p53機能を回復すると考えられる。本発明において、コンピューター支援型薬物設計(computer−aided drug design)(CADD)(Martin,J.Med.Chem.,35:2145−2154(1992);Ewingら、J.Comput.Chem.,18:1175−1189(1997);Makinoら、J.Comput.Aided Mol.Des.,13:513−532(1999);およびHicksら、Curr.Opin.Drug Disc.& Devel.,1:223−234(1998))を、NMRによる構造活性関連研究(structure activity relationship studies by NMR)(SAR by NMR)(Hajdukら、Science,278:497−499(1997);およびFesik,J.Biomolecular NMR,3:261−269(1994)(図10))と合わせることは、S100Bと結合した後にS100B−p53相互作用をブロックする新規な低分子を同定するための有効な方法であることが、見出された。CADDは、魅力的である。なぜなら、この研究は、利用可能な化合物に対して焦点を合わせ、それによって開始段階における化学合成を回避するからである。分子を、100万個の化合物の3Dデータベースからコンピューターにより選択し、そしてS100Bのp53結合部位に「配置」した(図10)。これらの低分子の方向およびコンフォメーションを、その後、S100B構造への適合が最大となるように調節した。好ましい相互作用エネルギーと多数の可能なリガンド−レセプター水素結合とを含む分子を、試験のために選択した。有望な化合物のNMR技術によるSAR(Hajdukら、上記;およびFesik,上記)および熱力学的結合研究を使用して、S100Bについての結合部位および親和性を評価した。
【0117】
100万個を超える化合物を、CADDを使用してスクリーニングし、これから、生物物理学的スクリーニングおよび生物学的スクリーニングを使用して、S100Bに結合する50個より多くの分子が同定された(KD=500nM−10uM;蛍光結合アッセイから)。1つのこのような分子であるペンタミジンは、特に興味深い。なぜなら、(i)ペンタミジンは、別の用途についてFDAが認可しており;そして本明細書中で、(ii)NMRおよび蛍光分光法により決定した場合に、p53結合部位においてS100Bに結合することが(KD=700nM)見出され(下記を参照のこと);(iii)ペンタミジンは、原発性ヒト悪性黒色腫細胞(野生型p53)中に入り、そしてその増殖を、8分の1より低く阻害し、正常なメラニン形成細胞に対してかなり低い効果(8分の1)を有し;(iv)ペンタミジンを用いる処理により、p53タンパク質レベルが部分的に回復した(このことは、これらが、S100−p53複合体を破壊することを示唆する);(v)放出されたp53は、ウェスタンブロットによって検出された場合、mdm2およびp21をアップレギュレートし、そして(vi)S100Bタンパク質レベルが、原発性黒色腫において10倍より大きく増加された(図11)からである。S100Bのアップレギュレーションは、驚くべきことではない。なぜなら、S100B遺伝子は、p53の転写調節下にあること、S100Bプロモーターにおいて、p53DNA結合コンセンサス配列と正確に適合する(20のうち20)ヌクレオチド配列(ヌクレオチド1705〜1735)が存在することが、本明細書中で発見されたからである。DNAバンドシフトアッセイは、p53が、S100Bプロモーター中のこの部位および他の2つのp53部位に結合し、これは、完全に適合する配列についてより特異的であることを示す(図7)。これらのデータは、この薬物が、S100B−p53相互作用を破壊すること、およびp53の回復は、p53標的遺伝子(例えば、p21、mdm2、およびS100B)を転写活性化することを暗示する。
【0118】
((a)結合力価測定)
CADD探索において同定したS100Bへのこの低分子の結合を、蛍光分光法を使用して測定した。同定した化合物は、以下の通りである:
ペンタミジンイセチオネート(Kd=1.4±1μM IC50約500nM);{[(2,3−ジクロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド(Kd<1μM IC50<2.5)(化合物3);{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド(Kd=4+/−1μM)(化合物9);2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート(Kd=2.7+/−1μM IC50=2.5μM)(化合物1);2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸(Kd約6μM IC50約25μM)(化合物31);4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸(Kd=2+/−1μM)(化合物4);1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシフェノキシ)酢酸]モルホリン(Kd<10μM IC50約25μM)(化合物33);4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸(Kd<10μM)(化合物51);2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸(Kd約24μM)(化合物44);5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸(Kd約12μM)(化合物45);1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸(Kd<200μM)(化合物24);(3−ベンゾイック)−1,3,ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸(Kd<200μM)(化合物38);および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸(Kd<200μM)(化合物39)。
【0119】
蛍光を発する化合物(すなわち、化合物9、31および33について)を、蛍光強度の変化を介して、S100Bへの直接結合アッセイによって測定した。蛍光を発しなかった化合物(化合物1、3、4(ペンタミジン)、24、38、39、44、45および51)について、2つのアプローチを使用した。第1に、チロシン蛍光の変化(S100BのTyr−17について)は、いくつかの場合において、結合を評価するために十分であった(Rustandiら(1998),上記;およびSzaboら、FEBS Lett.,94:249−252(1978))。しかし、低収量のチロシン残基と関連する問題を克復するために、S100BのF43W変異体を使用し(図12A)、その後、野生型S100Bを用いて競合研究を行った(図12B)。このS100B構築物において(F43WS100Bにおいて)、トリプトファン残基が、標的タンパク質結合部位に位置し、その結果、トリプトファン変異体の放射は、添加化合物の関数として、338nmにて簡単な様式で測定された。このF43W変異体は、野生型S100Bの同様の構造、Ca2+結合特性および標的結合特性を有する。別のアプローチは、野生型S100Bに蛍光プローブを結合し、この化合物との競合結合アッセイを行うことであった。この場合、蛍光プローブとしてp53から誘導した蛍光ペプチド(F385W)(KD=3.0μM)またはTRTK−12ペプチド(KD=0.2μM)を、化合物との競合研究におけるプローブとして使用した。結合定数を決定するための定常状態実験を、25℃にて維持した細胞(水晶キュベット)の温度を用いるAminco Bowman Series 2 Luminescence Spectrophotofluorometerにて実施した。2つの内部コントロールを、すべての力価測定において実施した。EGTAをS100Bに添加して、カルシウムをキレート化し、そしてその薬物との相互作用が、多数のタンパク質標的について観察されるCa2+依存性コンフォメーション変化を必要とするか否かを決定した(Weberら、上記)。さらに、この力価測定を、コントロールとしてカルシウムの非存在下において実施した。蛍光放射スペクトルを有するすべての化合物をまた、進行前に光脱色について慣用的に評価した。緩衝液もまた、蛍光を発し得るいかなる混入物についても慣用的にチェックした。
【0120】
((b)細胞アッセイ)
化合物が原発性悪性黒色腫細胞(細胞株:C8146AおよびHTB 64)および正常メラニン形成細胞(Cell Applications Inc.新生児包皮からの104−05)の増殖に対して有する効果を、測定した。ペンタミジンは、悪性黒色腫細胞の増殖をむしろ強力に(IC50=500nM)阻害することが見出された。正常メラニン形成細胞に対しての効果は弱かった(図13)。この増殖阻害定数(IC50値)は、上記に列挙された他の化合物から生じる。これらの研究において、代表的には約10,000個の細胞を、T25バイアル全体にわたり均しく分布させた。1日後、上記低分子(2.5μMまたは25μM)を含むかまたは含まない新しい培地を添加し、そしてその細胞を、さらに13日間増殖させた。いくつかの分子をDMSO中で送達したので、細胞増殖に対するDMSO(0.1〜0.2%(v/v))の効果もまた、チェックし、それが、これらのレベルに対して影響を有さないことが見出された(図13)。この時点において、これらの細胞をリン酸緩衝液生理食塩水(PBS)中で洗浄し、トリプシンを用いる処理によって収集し、そして5.0%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)、5.0%(v/v)新生仔ウシ血清(NCS)、および2.0%(w/v)ペニシリン/ストレプトマイシンを含むF10培地中に配置した。これらの細胞を、4連の試行において、血球計を用いて計数した。
【0121】
((c)NMR分光法)
NMR分光法実験を、実行して、S100Bのどのアミノ酸残基と、この低分子とが相互作用しているのかを決定した(図14)。この低分子と相互作用するS100Bの共鳴を、ホロ−S100B中に化合物を力価測定すること、および15N編集HSQCスペクトルにおいて骨格アミド−プロトン相関関係の化学シフトの変動(perturbation)をモニターすること(Moriら、J.Magnetic Resonance,B108:94−98(1995))によって、同定した。試験した低分子すべては、これらのHSQC化学シフト変動研究によって決定した場合、p53結合部位においてS100Bと結合することが見出された(図1および図14を参照のこと)。この化合物−Sl00B境界面をマッピングする例が、ホロ−S100Bと化合物4との間の相互作用について、図14A〜14Cにおいて提供される。研究した化合物すべての場合と同様に、化合物4は、S100BのC末端(ループ4)および「ヒンジ」と呼ばれるS100Bの別の領域(ループ2)と相互作用する。これらの残基は、化合物4との力価測定について、図14Cにおいて赤く強調されている。この低分子に結合したS100Bの共鳴割り当てを、3D NOESY−HSQC実験を使用して確認し、Drohatら(1998),上記;Rustadniら(2000),上記;およびRustadniら(1998),上記に記載されるようなCa2+負荷S100Bおよびp53ペプチドに結合したS100Bの骨格および側鎖の化学シフトもまた、この割当て手順において役立った。S100Bと相互作用するこのインヒビターの領域を、Mayerら、J.Am.Chem.Soc.,123:6108−6117(2001)により記載された通り、飽和移動差実験(STD)を介するエピトープマッピングを使用して同定した。図14Aにおいて、S100B近傍にあるこの化合物のプロトンが、矢印により示される。STDを割当てるために、1D Watergateおよび2D TOCSY(水抑制を備えるMLEVパルストレイン(pulse train)の両方を得た。
【0122】
すべてのNMRスペクトルを、4つの振動数チャネルおよび三重共鳴3軸勾配プローブを備えた、Bruker DMX600 NMR分光計(プロトンについて600.13MHz)を用いて、37℃にて得た。すべての場合において、1秒の弛緩遅延を使用した。間接的次元における求積検出を、States−TPPIフェーズサイクリングを用いて得た(Marionら、Biochem.,28:6150−6156(1989))。
【0123】
サンプルは、代表的には、100〜300μM S100B、30 mM Tris(pH 6.5〜7.4)、10mM CaCl2、0.3 mM NaN3、0.4mM EDTA、5.0mM DTT、5.0%(v/v)D2O(pH 6.5)からなった。サンプル条件を変化することが必要な場合、コントロールCa2+−S100B HSQCスペクトルを収集した。すべてのNMRデータを、処理プログラムnmrPipe(Delaglioら、J.Biomol.NMR,6:277−293(1995));およびnmrView(Merck))を使用して、コンピューターワークステーションにて処理した。間接次元における時間ドメインデータを、標準的な線形予測ルーチン(Zhuら、J.Magnetic Resonance,98:192−199(1992))を使用して、3分の1以下の分だけ拡張した。すべてのプロトン化学シフトを、37℃での外部TSP(0.0ppm)と比較して、4.658ppmとして得たH2OシグナルまたはHDOシグナルに関して報告した。15N化学シフトを、37℃での0点振動数の以下の比を使用して、間接的に参照した:15N対1Hについて0.10132905(Speraら、J.Am.Chem.Soc.,113:5490−5492(1991);Liveら、J.Am.Chem.Soc.,106:1939−1941(1984);およびEdisonら、Methods Enzymol.,239:3−79(1994)).
((d)構造ベースモデリング)
上記に列挙した化合物の結合、HSQC NMR力価測定、飽和移動差測定(STD)、およびNMRドッキング手順に基づいて、合成改変から利益を得る種々の低分子の領域を同定することが、可能であった。最初に、可変リンカー領域を備えるペンタミジン誘導体を、調製した(図15)。これは、より小さいSTDが、S100Bとペンタミジンリンカー領域との間で検出されるので、可能であった。最適なサイズのリンカー(すなわち、最も強力なIC50,KDを生じるリンカー)を、その後、他の「ペンタミジン」様誘導体(上記式(I)および(II)ならびに図15を参照のこと)の簡単な合成において使用した。
【0124】
同様に、ドッキング方法を使用して、S100Bに緊密に結合する(KD<2μM)他の化合物の誘導体(化合物3の誘導体および化合物4の誘導体を含む)を誘導した。
【0125】
化合物4について、癌細胞中への侵入を容易にするためにより弱い電荷を有する化合物を得るために、強調を与えた。
【0126】
((e)要旨)
S100タンパク質は、多数の癌においてアップレギュレートされるので、S100タンパク質は、腫瘍進行についてのマーカーとして臨床的に使用される。S100Bと腫瘍サプレッサーであるp53とのカルシウム依存性相互作用がインビボで生じること、およびこの相互作用がp53機能を阻害することが、本明細書中で発見された。従って、高レベルのS100タンパク質(例えば、S100B)は、S100Bレベルが上昇した細胞(例えば、悪性黒色腫)における制御されていない細胞増殖に寄与する。原理の証明として、Sl00B−p53相互作用の阻害が、野生型p53機能を回復することが、示された。従って、S100Bに結合しp53相互作用を阻害する低分子アナログが、p53機能を回復することを目的として開発された。このことは達成され、S100Bに結合し、S100B−p53複合体形成を阻害し、そして癌細胞(すなわち、悪性黒色腫)の増殖速度をp53機能の回復によって減少するいくつかの化合物が、見出された。これらの化合物の1つであるペンタミジンは、別の目的についてFDAによって認可された薬物であり、従って、この化合物は、徹底的に特徴付けられている。
【0127】
(実施例8)
(p53機能のS100Bによる調節についてのモデル)
S100Bがいかにしてp53機能を調節するかについてのモデルが、図16において示される。その活性形態で、テトラマーp53の各サブユニットは、Zn2+と結合し、そしてループ−シート−ヘリックスDNA結合ドメインのための足場として役立つ2つの逆平行βシートのサンドイッチを含む(Choら、Science,265:346−355(1994))。特定のDNA配列に結合する際(図16)、p53は、サイクリン依存性キナーゼインヒビター(p21WAF/CIP1)、細胞周期制御タンパク質(サイクリンG、GADD45)、アポトーシスに関与する遺伝子(すなわち、Bax)、および次いでフィードバック制御を介して細胞内部のp53タンパク質を負に調節するタンパク質(例えば、S100Bおよびhdm2)(Levineら(1991),上記;Levine(1997),上記;およびFreedmanら、上記)を含む、下流標的の転写を活性化する。S100Bについて、そのプロモーター領域に対するp53の親和性は、比較的低く(図8)、このことは、p53によるS100Bの誘導が、より高親和性のプロモーター部位が占められた後(すなわち、GADD45、p21などについて)にだけ生じることを示唆する。hdm2について、p53タンパク質レベルは、ユビキチン媒介経路によってダウンレギュレートされ、そしてhdm2−p53相互作用は、N末端トランス活性化ドメインにおけるp53のリン酸化状態に依存する(Schonら、J.Mol.Biol.,323:491−501(2002))。hdm2と同様に、S100Bもまた、p53に直接結合し、そして癌細胞におけるより低いp53タンパク質レベルに寄与する(図1および4、ならびに図6A−6B)。S100Bがいかにして細胞内部のp53レベルを低下することに寄与するかについての機構は未だ確立されていないが、p53テトラマーを解離し(Baudierら、上記)そして/またはp53の最もC末端側のドメイン(Rustandiら(1999);上記)およびテトラマー化ドメインにおけるにおけるコンフォメーション変化を引き起こすその能力に関連する(図16)と、考えられる。従って、現在、S100Bは、(i)p53により転写レベルで活性化され、かつその後で、(ii)フィードバック制御を介してp53機能を阻害する、2番目の公知のタンパク質である(図16)。
【0128】
hdm2(マウスにおけるmdm2)とS100Bとの間の別の類似性は、両方のタンパク質とp53との相互作用が、リン酸化によって調節されることである(Rustandiら(2000),上記;Schonら、上記;Wilderら、上記;およびBuschmannら、Cancer Res.,60:896−900(2000))。mdm2について、p53における1つの残基(T18)のリン酸化は、mdm2結合を阻害し(>10倍)、これはその後、p53が、mdm2/ユビキチン依存性分解するのを防ぐ(Schonら、上記;およびPietteら、Oncogene,15:1001−1010(1997))。同様に、p53のC末端におけるリン酸化およびアセチル化は、腫瘍サプレッサーがS100Bと相互作用するのを防ぎ得る(Rustandiら(2000),上記;およびYoumellら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,245:514−518(1998))。これもまた顕著であるのは、mdm2のN末端ドメインの3D構造が、これはカルシウムに結合しないという事実(Milner−White,J.Mol.Biol.,286:957−963(1999))にも関わらず、S100Bおよび他のEF−ハンド結合タンパク質(例えば、カルモジュリン)に似ていることである。S100タンパク質と同様に、mdm2は、構造的ホモログ(mdmX)とヘテロダイマーを形成し、このことは、それ自体の発癌活性を調節する(Stadら、EMBO Rep.,2:1029−1034(2001)).その最も活性な形態で、p53は、X型4ヘリックスバンドル(bundle)を形成するようにダイマーのダイマーとしてC末端領域中に保持される、テトラマーである(Jeffreyら、Science,267:1498−1502(1995);Leeら、Nat.Struct.Biol.,1:877−890(1994);およびCloreら、Science,265:386−391(1994))。このテトラマードメインに対して直接的にC末端は、「最もC末端」または「C末端負調節ドメイン」と呼ばれる塩基性領域である。従って、これらのタンパク質(hdm2 対 S100B)の間での重要な区別は、p53のC末端とのS100Bの相互作用が、Ca2+依存性であり(Rustandiら(1998),上記;およびBaudierら、上記)、そしてp53生物学をカルシウム媒介性シグナル伝達経路および細胞外増殖応答に連結し得(図17);一方で、hdm2は、カルシウム非依存性様式でp53のN末端に結合することである(Momandら、上記;およびPrives,Cell,95:5−8(1998))。
【0129】
S100Bとp53との間の相互作用は、細胞周期依存性様式で(すなわち、G1の間に;図5B)生じ、さらに、その細胞の内側でリン酸化およびカルシウムレベルによって調節される。この知見は、重要である。なぜなら、G1期は、DNA合成の前に存在し、そしてDNA損傷に応答してp53についての重要なチェックポイントを構成するからである。このp53 G1チェックポイントは、p53下流エフェクター遺伝子のうちの1つであるサイクリン依存性キナーゼインヒビターp21によって媒介される(Appellaら、上記;Privesら(1999),上記;およびVousden,上記)。このインヒビターは、DNA損傷に応答して、pRbのリン酸化を阻害しそしてG1において細胞を停止する。G1におけるこの停止は、細胞がそのDNAを修復する時間を可能にし、そして損傷したDNAが娘細胞へと伝達するのを妨げると、考えられる(Privesら(1999)、上記;およびVousden,上記)。S100Bは、p53によるp21のアップレギュレーションを阻害し(Linら,上記)、その結果、細胞周期の停止は、その存在が減少し、そしてその細胞周期は調節されないで進行することが、以前に示された。さらに、G1の間のS100Bとp53との間の相互作用は、Sの間にp53が核に侵入するのを阻害し得、そしてさらに、p53の転写活性を阻害し得る。従って、野生型p53に対するS100Bの全体的効果は、細胞異常(例えば、p53の非機能性変異体を生じる遺伝子増幅および変異を模倣し得る。
【0130】
野生型p53が存在する場合に癌がいかにして進行するかは完全には明らかではないが、このパラダイムについての1つの可能な説明は、p53を負に調節するタンパク質(例えば、S100B)のレベルの上昇が妥当であることである。野生型p53および高レベルのS100Bを伴う癌の例は、悪性黒色腫である。興味深いことに、S100カルシウム結合タンパク質(例えば、S100B)は、これらの細胞において上昇し、そして皮膚癌についてのマーカーとして使用される(Cochranら、Melanoma Res.,3:325−330(1993);Boniら、上記;およびMarksら、Exp.Cell Res.,187:59−64(1990))。さらに、野生型p53タンパク質レベルは、S100タンパク質を含まない細胞と比較した場合、悪性黒色腫において比較的低い(図2A〜2B)。原発性皮膚癌細胞について、p53とS100Bとの間に、細胞周期のG1の間に直接的相互作用が存在すること、および野生型p53レベルが、S100BのRNAに対してアンチセンスであるRNAの添加の際に回復され得ること(図9)が、本発明において示された。この結果は、インビボにおける野生型p53のダウンレギュレーションにS100Bを直接関連つけ、そしてこれは、p53およびS100Bの一過性同時トランスフェクションにおいて以前に観察されたp53タンパク質レベルの大きな減少(Linら、上記)と一致する。これらの結果を心に留めると、S100B−p53相互作用をブロックして野生型p53をより正常レベルへと回復する低分子インヒビターは、癌(例えば、悪性黒色腫)の処置のための治療剤として有用であると考えられる。
【0131】
本発明は、その特定の実施形態に関して詳細に記載されてきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の変更および改変が本発明においてなされ得ることが、当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0132】
(図面の詳細な説明)
本特許または本出願のファイルは、色付きで作成された少なくとも1つの図面を含む。色付き図面を含む本特許または本特許出願公開物のコピーは、請求しそして必要な費用を支払えば、特許庁によって提供される。
【図1】図1は、腫瘍サプレッサータンパク質であるp53(標的タンパク質)のC末端(アミノ酸367〜388)とS100BとのCa2+依存性相互作用を示す。リボン図が、アポ結合状態、カルシウム結合状態(ホロ結合状態)、およびp53結合状態(PDBエントリー:アポ−S100B;ホロ−S100B,1B4C;p53結合S100B,1DT7)におけるS100Bの原子解像3次元溶液構造について示される。赤および青で示されるのは、ダイマーS100Bのサブユニットであり、腫瘍サプレッサータンパク質であるp53のC末端の負調節ドメイン(残基367〜388)(緑色)と直接相互作用する残基について影を付けた領域(黄色)を含む。大きなコンフォメーション変化が、アポ−S100Bにカルシウムが付加する際に生じる。このコンフォメーション変化は、p53(緑色)との結合に関与する残基(黄色)を露出させる。そしてこれは、ホロ−S100Bへの腫瘍サプレッサーの結合のために必要とされる(Rustandiら(2000),上記;およびWeberら、上記)。
【図2】図2Aおよび2Bは、原発性悪性黒色腫細胞(C8146)、およびS100Bをほとんど含まないかまたは全く含まないコントロール細胞(神経膠芽細胞腫、U118)における、S100B(図2A)およびp53(図2B)のウェスタンブロットを示す。S100Bの量を評価するために使用した組換えS100Bのブロットもまた、示される。この図は、黒色腫がS100Bレベルを増加させ、そしてp53レベルを減少させたことを示す。
【図3】図3は、ダイマーのアポ−S100B(ββ)の20個のNMR構造の立体図であり、2つのS100βサブユニットが、青色および赤色で示されている。
【図4】図4は、Ca2+負荷S100Bダイマーと複合体化したp53の負調節ドメインの40個のNMR構造の骨格重層の立体図である。2つの異なるS100βサブユニットのヘリックスが、青色および赤色で着色されており、Ca2+イオンが、藤色であり、そしてp53の2つのサブユニットからのC末端(残基367−388)が、緑色である。
【図5】図5A〜5Bは、共免疫沈降実験によって検出された、原発性悪性黒色腫癌細胞における、細胞周期G1の間のS100Bとp53との相互作用を示す。図5Aは、G1についてのマーカーとして使用される細胞周期タンパク質であるサイクリンD1のウェスタンブロットを示す。図5Bは、S100B抗体およびp53抗体を用いる共免疫沈降を示す。S100Bとp53との相互作用は、非同調化細胞においては(たとえあったとしても)最小限である(図5B、レーン1)が、その細胞が血清枯渇によって同調化された場合には、有意に増加され、そして15%(v/v)血清の添加6時間後に、G1において解放される(図5B;レーン2、3)。
【図6】図6A〜6Bは、S100Bが、p53、mdm2およびp21のタンパク質レベルを減少することを示す。図6Aは、p53でトランスフェクトされ、S100Bでトランスフェクトされた(+)かまたはされていない(−)、H1299肺癌細胞のウェスタンブロットを示す。図6Bは、S100B(+)またはpCMV(−)で一過性トランスフェクトされ、そして10mg/mlブレオマイシンで処理されたかまたはされていない、乳癌MCF−7細胞のウェスタンブロットを示す。p53タンパク質、mdm2タンパク質、p21タンパク質、S100Bタンパク質およびアクチンタンパク質の位置が、示される。これらの結果は、S100Bの一過性トランスフェクションが、癌細胞においてp53の機能を阻害することを示す。
【図7】図7は、p53結合コンセンサス配列と適合するS100Bプロモーター領域を示す。ヌクレオチド1705〜1735は、p53結合についての20個のコンセンサスヌクレオチドのうちの20個に適合する。2つのさらなるp53結合部位が、S100Bプロモーター中に存在する;ヌクレオチド1455〜1478は、16個の部位に適合し、一方、ヌクレオチド149〜169は、17個の部位に適合する。mdm2(18/20)プロモーターおよびGADD45(19/20)プロモーター中のp53結合領域もまた、示される。この図は、3つのp53結合部位が、S100Bプロモーター中に存在することを示す。
【図8】図8は、GADD45遺伝子の3番目のイントロン由来のDNA(レーン1〜3)およびS100Bのプロモーター(20/20適合)由来のDNA(レーン4〜6)に対する、精製p53の移動度シフトアッセイの結果を示す。遊離プローブ、p53シフト、およびスーパーシフトバンドが、示される。GADD45シフトについて、0.3μgのp53および5.0ngの標識DNAが使用され、一方、6.0μgのp53および25ngのS100B標識DNAが、使用された。これらの結果は、p53が、S100Bプロモーターに結合し、そしておそらく、遺伝子(GADD45)後にS100Bレベルを調節することを示す。これは、p53が、GADD45遺伝子の3番目のイントロン由来のDNAに、S100Bプロモーター由来のDNAについて見出されるよりも低いp53レベルおよびDNAレベルで結合するからである。
【図9】図9は、小干渉S100βアンチセンスRNA(siS100β)を用いて黒色腫細胞をトランスフェクションした後の、p53、S100B、p21およびアクチンのウェスタンブロット分析を示す。S100β=ダイマーS100Bのサブユニット。使用したトランスフェクトRNAの量が、示される。これらの細胞は、トランスフェクションの24時間後に収集した。これらの結果は、悪性黒色腫細胞における阻害性S100Bタンパク質生成が、野生型p53機能を回復することを示す。この実験は、本発明の原理の証明を示す。
【図10】図10は、CADDおよびNMRから誘導した構造データおよび動的データを使用する、S100Bの合理的薬物設計を示す(左図)。本発明において、このアプローチからの研究は、薬物開発のために必要な、S100Bと結合しかつS100B−p53相互作用を阻害するリード化合物(右図、青色)を提供した。
【図11】図11は、薬物ペンタミジン(2.5μM)の添加によって、コントロール(1.0%(v/v)DMSO;および未処理)に対して、ヒト悪性黒色腫細胞におけるS100Bレベルが増加することを示す。野生型p53レベルは、S100B−p53相互作用を阻害することを介して、この薬物によって回復される。その後、上昇したp53は、フィードバック機構の一部として、S100Bをアップレギュレートする(図16)。このデータは、S100Bレベルの上昇をモニタリングすることが、特定の薬物がp53機能を回復する能力についてのアッセイとして使用され得ることを、示す。
【図12】図12A〜12Bは、ホロ−S100Bへのペンタミジンイセチオネートの結合研究を示す。図12Aは、4.0μM F43W S100B、10 mM CaCl2、40mM Tris(pH 7.5)を含む溶液中へのペンタミジンイセチオネートの力価測定を示す。図12Bは、F43W S100Bに結合したペンタミジンの、野生型S100Bとの競合研究を示す。これらの力価測定において、S100B変異体、F43W、およびペンタミジンイセチオネートの濃度が、この力価測定全体を通して一定に維持された。この競合研究は、野生型ホロ−S100Bとペンタミジンとの間で、結合定数(KD)700nMを生じた。
【図13】図13は、原発性悪性黒色腫細胞(C8146A)の増殖に対するペンタミジンイセチオネートの効果を示す。化合物(例えば、ペンタミジンイセチオネート)が、2種類の濃度の薬物(2.5μM,25μM)にて原発性黒色腫細胞株を使用して、4連試行でスクリーニングされた。ペンタミジンによる細胞増殖の阻害についてのIC50が、約500nMであることが見出された。対照的に、7.5分の1の効果(25μMの薬物にて)が、正常新生児メラニン形成細胞における増殖において見出された。これらのデータは、ペンタミジンイセチオネートが、正常なメラニン形成細胞よりも効率的に、原発性悪性黒色腫細胞増殖を阻害し得ることを示す。
【図14】図14A〜14Dは、NMR分光法を使用するホロ−S100B化合物4結合境界面のマッピングを示す。図14Aは、化合物4の構造を示し、これは、飽和移動差(STD)NMR実験において決定された、S100Bと相互作用する化合物の領域を示す(太い矢印)。図14Bは、ホロ−S100Bに結合する化合物4についてのSTDデータを示す。黒色で示されるのは、STDスペクトルであり、赤色で示されるのは、コントロールスペクトルである。図14Cは、STD実験および化学シフト変動(perturbation)実験によって決定された、ホロ−S100Bに結合した化合物4を示すリボン図を示す。ホロ−S100B上にて赤色で示されるのは、化合物4の結合の際の化学シフトの大きな変化を有することが見出された残基である。図14Dは、S100B中の各残基についての化学シフト変化を示し、各残基についての化学シフト変化の大きさを示す。これらのNMR実験についてのサンプル条件は、1.5mM 化合物4、0.150mM Ca2+−S100B、10mM CaCl2、30mM Tris(pH 6.5)、5.0mM DTT、0.3mM NaN3、および5.0%(v/v)D2Oからなった。化合物4の構造は、下記に示される。これらのデータは、S100B−薬物相互作用を最適化するために必要な、原子解像度でのS100B−薬物相互作用を特徴付けるための方法を示す。
【図15】図15は、種々のサイズのリンカー領域を用いてペンタミジンの誘導体を調製するための合成反応を示す。
【図16】図16は、野生型p53の活性化および不活化についてのモデルを示す。潜伏性(latent)p53の活性化は、ストレス応答依存性共有結合改変(M)(すなわち、リン酸化、スモイレーション(sumoylation)およびアセチル化)によって達成される。これらの改変は、p53のC末端の負調節ドメイン(緑色のヘリックス)およびp53テトラマードメインを、S100タンパク質結合および/または非特異的DNA結合から保護すると考えられる。活性化p53は、核に局在化し、核において、活性化p53は、アポトーシスに関与する遺伝子(すなわち、bax)および細胞周期依存性増殖停止に関与する遺伝子(すなわち、p21)の転写を、アップレギュレートする。フィードバックコントロール機構の一部として、p53はまた、それ自体の不活化に関与する遺伝子(すなわち、hdm2およびS100B)の転写をアップレギュレートする。増殖応答の一部として(↑Ca2+)、S100Bとp53との間のCa2+依存性相互作用は、p53におけるコンフォメーション変化およびその腫瘍サプレッサーのテトラマー解離を誘導し、これは、その分解に(すなわち、おそらくhdm2/ユビキチン依存性経路および/またはプロテアーゼ依存性経路を介する)に寄与する。
【図17】図17は、X線結晶学および/またはNMR(Ikuraら、Nat.Struct.Biol.,7:525−527(2000))によって決定された、色付きのコード化された3D構造とともに、p53のドメインを示す。p53ドメインの構造は、溶液中で遊離しているか、あるいはp53結合タンパク質またはp53結合DNAに結合しているかのいずれかである。
【配列表】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に記載される研究は、NIHからの助成金(助成金番号GM58888)およびAmerican Cancer Societyからの助成金(RPG0004001−CCG)によって支援された。連邦政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
(関連出願の援用)
本出願は、2002年3月29日出願の米国仮特許出願番号60/368,835の35 U.S.C.§119(e)(1)の下での利益を主張する。この米国仮特許出願の開示は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、例えば、S100に結合し、S100−p53相互作用を阻害し、そしてp53の腫瘍サプレッサーを活性化し、従って、抗新生物効果を有する、低分子化合物に関する。そして本発明は、これらの化合物を、例えば、S100へのp53の結合の阻害についてアッセイすることによって同定する方法、これらの化合物を含む組成物、およびこれらを使用して黒色腫および他の癌を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
(I.S100タンパク質)
現在、S100ファミリーのEF−ハンドCa2+結合タンパク質の20個より多くのメンバーが存在する。それらは、ヒト組織中に広く分布していることが公知である(Zimmerら、Brain Res.Bull.,37:417−429(1995);Donato,Int.J.Biochem.Cell.Biol.,33:637−668(2001);およびHeizmannら、Frontiers in Bioscience 7:1356−1368(2002))。S100タンパク質は、100%飽和硫酸アンモニウム中で可溶性(soluble)であるので、この名前を与えられた(Moore,Biochem.Biophys.Res.Com.,19:739−744(1965))。1メンバーであるS100Bは、21.5kDaの対称ホモダイマーであり、哺乳動物間で高度に保存されている(>95%)(Zimmerら、上記;およびMoore,上記)。カルモジュリンと類似する様式で、Ca2+依存性コンフォメーション変化が、S100Bが標的タンパク質に結合するために必要である(図1;Rustandiら、Nat.Struct.Biol.,7:570−574(2000);Rustandiら、Biochem.,37:1951−1960(1998);Weberら、「Interaction of Dimeric S100B(ββ) with the Tumor Suppressor Protein:A Model for Ca2+−dependent S100−Target Protein Interactions」,The Molecular Basis of Calcium Action in Biology and Medicine(Pochet,R.,Ed.),Kluwer Academic Publishers,Dordrecht,The Netherlands(2000);およびKligmanら、Trends Biochem.Sci.,13:437−443(1988))。
【0005】
一般に、低レベルのS100Bは、栄養(trophic)効果を有し、そして高レベルのS100Bは、毒性であり、制御されない細胞増殖を生じる(Castetsら、Brain Res.,46:208−216(1997);Van Eldikら、Biochimica et Biophysica Acta,1223:398−403(1994);Mariggioら、Neuroscience,60:29−35(1994);およびMcLendonら、Cancer diagnosis in vitro using monoclonal antibodies(Kubchik,H.Z.編)Vol.39,pp.31−66,Marcel Dekker,New York(1988))。S100Bレベルの増加が、腎細胞腫瘍において見出され(Takashiら、.Urol.Res.,22:251−255(1994))、そして悪性成熟T細胞において見出される(例えば、白血病患者における二重ネガティブCD4−/CD8−成熟T細胞)(Suzushimaら、Leuk.Lymph.,13:257−262(1994))。さらに、S100Bは、神経膠症を刺激する他のサイトカイン(例えば、インターロイキン−1βおよび塩基性線維芽細胞増殖因子)によって、アップレギュレートされる(Hinkleら、Neuroscience,82:33−41(1998))。
【0006】
S100Bの場合と同様に、多数の他のS100タンパク質が、組織特異的様式で調節される(Kligmanら、上記)。S100A1、カルサイクリン(calcyclin)(S100A6)、およびS100Bのレベルは、転移性ヒト乳房上皮細胞において有意に上昇され(Pedrocchiら、Int.J.Cancer,57:684−690(1994))、そしてトランスジェニックマウスにおけるS100A4マウス(mts1)のレベル増加は、転移性乳房腫瘍を誘導する(Chenら、J.Biol.Chem.,272:20283−20290(1997))。mts1の場合、タンパク質レベルは、ラットmts1開始部位の1300塩基上流にあるシス作用性エレメントを介して良性細胞株において制御され(Chenら、上記)、そしてmts1に対するアンチセンスRNAの発現は、高転移性Lewis肺癌腫の転移能を抑制する(Takenagaら、Oncogene,14:331〜337(1997))。S100B、mts1、およびカルサイクリンのタンパク質レベルは、悪性黒色腫と相関する。従って、S100タンパク質は、この癌のマーカーとして使用される(Maelandsmoら、Int.J.Cancer,74:464−469(1997);Boniら、J.Cutan.Pathol.,24:76−80(1997);Xiaら、CancerRes.,57:3055−3062(1997);Hanssonら、Anticancer Res.,17:3071〜3073(1997);および図2B)。
【0007】
S100抗体は、とりわけ、脳、肺、膀胱、腸、腎臓、頸部、乳房、皮膚、頭部および頸部、リンパ、精巣、咽頭、、および口を含む、いくつかの組織において悪性腫瘍を同定し分類するために臨床的に使用される(Takashiら、上記;Suzushimaら、上記;Pedrocchieら、上記;Fisherら、J.Clin.Path.,47:868−869(1994);Iniueら、J.Urol.,85:495−503(1994);Kerrebijnら、Cancer Immun.Immunother.,38:31〜37(1994);Colasanteら、Am.Rev.Resp.Dis.,148:752−759(1993);Zeidら、Path.,25:338−343(1993);Galloら、Arch.Otolarn.,117:1001−1010(1991);Wilsonら、J.Path.,163:25−30(1991);Leeら;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:2504−2508(1992);Leongら、J.Path.,162:35−41(1990);Nakanoら、Arch.Path.Lab.Med.,113:507−511(1989);Kuriharaら、J.Oral.Path.,14:289−298(1985);Matsushimaら、J.Surg.Onc.,55:108−113(1994);Renshawら、Mod.Path.,10:693−700(1997);Larockら、Vet.Path.,34:303−311(1997);およびHurleyら、J.Med.Primat.,26:172−180(1997))。
【0008】
(II.p53)
p53は、転写アクチベーターであり、細胞周期の停止およびアポトーシスについてシグナル伝達をし、そして正常な細胞機能の維持および調節において中心的役割を果す(Levineら、Nature,351:453−456(1991);およびLevine,Cell,88:323−331(1997))。p53の不活化は、細胞周期チェックポイント、アポトーシス、遺伝子増幅、中心体複製、および倍数性に影響を与える(Levine(1997),上記;Woodsら、Exp.Cell.Res.,264:56−66(2001);Burnsら、J.Cell.Physiol.,181:231−239(2001);Appellaら、Eur.J.Biochem.,268:2764−2772(2001);Arrowsmithら、Cell Death Differ.,6:1169−1173(1999);Privesら、J.Pathol.,187:112−126(1999);Vousden,Cell,103:691−694(2000);およびRyanら、Curr.Opin.Cell.Biol.,13:332−337(2001))。ヒト癌のうちの50%より多くで見出されるように、p53が変異によって不活化される場合、その細胞周期は、調節されずに進行し、そして細胞成長が増殖する。同様に、アポトーシス経路が誘導されない場合、増殖中の細胞は、癌性細胞へと形質転換する(Woodsら、上記;Burns,上記;Appellaら、上記;Arrowsmithら、上記;Privesら(1999),上記;Vousden,上記;Ryanら、上記;およびAgarwalら、J.Biol.Chem.,273:1−4(1998))。一方、p53のレベルが高すぎる場合、加齢に関連する問題が生じる(Tynerら、Nature,415:45−53(2002))。p53は、翻訳後修飾および細胞中の他のタンパク質との相互作用によって高度に調節される(Appellaら、上記;Minamotoら、Oncogene,20:3341〜3347(2001);Jayaramanら、Cell.Mol.Life Sci.,55:76−87(1999);Jimenezら、Oncogene 18:7656−7665(1999);およびMeek,Pathol.Biol.,45:804−814(1997))。
【0009】
(III.S100−p53相互作用)
S100Bおよびいくつかの他のS100タンパク質(すなわち、S100A1およびmts1)は、腫瘍サプレッサータンパク質であるp53と、癌細胞中で相互作用し、有意に減少したp53レベルを生じ、そして標的遺伝子のp53依存性転写活性化は、阻害される(Grigorianら、J.Biol.Chem.,276:22699−22708(2001);Linら、J.Biol.Chem.,276:35037−35041(2001);およびCarrierら、Proc.AACR,40:102(1999))。
【0010】
p53のC末端とS100カルシウム結合タンパク質(例えば、S100B)との間の相互作用は、特に興味深い。なぜなら、p53と同様に、S100タンパク質は、細胞周期進行に影響を与え、多数の腫瘍細胞において過剰発現され、そして腫瘍進行に関連するからである(Ilgら、Int.J.Cancer,68:325−332(1996))。これらの結果は、p53およびS100Bが、(i)インビトロで緊密に相互作用し(KD=24±10nM;Delphinら、J.Biol.Chem.,274:10539−10544(1999))、(ii)S100Bは、p53のPKC依存性リン酸化を阻害し(Wilderら、Protein Sci.,7:794−798(1998);およびBaudierら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,89:11627−11631(1992))、(iii)S100Bは、p53テトラマーを解離し(Baudierら、上記)、(iv)S100Bおよびp53のC末端の両方のサブユニットは、X型の4ヘリックスバンドル(bundle)構造モチーフを介して会合し(Weberら、上記;Jeffreyら、上記;およびLeeら、上記)、そして(v)3つのS100タンパク質(S100B、S100A1、mts1)は、インビボでp53の機能を阻害する(Grigorianら、上記;Linら、上記;およびCarrierら(1999),上記)という知見と相関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明において、原発性悪性黒色腫癌細胞において、S100Bが、細胞周期依存性様式で、p53と直接相互作用して、より低レベルの野生型p53を生じることが、示される。さらに、本発明において、S100Bプロモーターが、p53に結合する3つの配列を有することが見出された。このことは、その後、S100B転写が、p53自体の分解を誘発するフィードバックループにおいてp53によって調節されるという知見を支持する。
【0012】
(発明の要旨)
1つの実施形態において、本発明は、S100タンパク質(例えば、S100B、S100A1およびS100A4)に結合し、かつ阻害タンパク質(例えば、S100タンパク質)がp53に結合するのを阻害する、化合物を同定する方法に関する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、p53の機能(特に、p53活性化に起因するS100Bおよび他のS100タンパク質の過剰発現)を測定することによって、p53を活性化する化合物を同定する方法に関する。
【0014】
なお別の実施形態において、本発明は、上記の同定した化合物(ペンタミジンおよびその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない)を、S100Bおよび他のS100タンパク質のp53との結合を阻害する(すなわち、p53を活性化する)ために使用する方法に関する。
【0015】
なお別の実施形態において、本発明は、上記の同定された化合物(ペンタミジンおよびその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない)を、癌を処置するために使用する方法に関する。
【0016】
いかなる特定の機構にも拘束されることは望まないが、本発明の化合物は、S100Bおよび他のS100タンパク質(特に、そのp53結合ドメイン)と相互作用することによって、p53の不活化を阻害し、それによって新生物細胞増殖を減少または阻害すると考えられる。従って、本発明は、例えば、p53を活性化する化合物(特に、S100タンパク質ファミリーのメンバーと特異的に相互作用する化合物、より特に、S100タンパク質(例えば、S100B)がp53に結合するのを阻害する化合物)に関する。
【0017】
本発明のこれらの目的およびさらなる目的は、本発明の詳細な説明から明らかであり、本明細書中に規定される式(I)〜(XIII)により示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩およびその使用によって満たされる。
【0018】
(発明の詳細な説明)
上記のように、1つの実施形態において、本発明は、阻害タンパク質(例えば、S100Bおよび他のS100タンパク質)がp53に結合するのを阻害する化合物を同定する方法に関する。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、p53機能(特に、p53活性化に起因するS100の過剰発現)を測定することによって、p53を活性化する化合物を同定する方法に関する。
【0020】
なお別の実施形態において、本発明は、p53を活性化するために上記同定された化合物を使用する方法に関する。
【0021】
なお別の実施形態において、本発明は、癌を処置するために上記同定された化合物を使用する方法に関する。
【0022】
ペンタミジンが、S100−p53相互作用を阻害することが、本発明において見出された。ペンタミジンは、活性であり、かつFDAが(別の用途について)認可した薬物であるので、本発明はまた、S100に対して増加した結合親和性を有するペンタミジン誘導体に関する。従って、本発明の化合物は、式(I)〜(XIII)により示されるかまたはその薬学的に受容可能な塩であり、
式(I)は
【0023】
【化14】
【0024】
であり、
式(I)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
Xは、1〜8個の炭素原子を有するアルキルであり、そして
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり;
例えば、ペンタミジン
【0025】
【化15】
【0026】
であり、
式(II)は
【0027】
【化16】
【0028】
であり、式(II)において、Y1およびY2は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R11、R12、およびR13は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、メチルエステル、フェニルケトン、アリールエーテル、アリールチオ、アリールメチレン、酸素、カルボニル、カルボキシレート、エチレン、アミド、エステル、チオエステル、およびCZnH3−nからなる群より独立して選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり、そして
必要に応じてR11とR12と、またはR12とR13とは、C、N、O、またはSを含む5員縮合芳香環を形成し得;
例えば、{[(2,3−ジクロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド(化合物3)
【0029】
【化17】
【0030】
であり、
式(III)は
【0031】
【化18】
【0032】
であり、式(III)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8およびY9は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトンおよびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、イミン、エチレン、アミド、エステル、およびチオエステルからなる群より選択され、そして
フェニル芳香環のうちの1つ以上は、芳香環のうちの1つ以上の1〜3個の炭素原子をN原子で置換することによって、縮合芳香環、ヘテロ芳香環、または縮合芳香環(例えば、ナフチル環、ピリジニル環、キノリニル環、およびイソキノリニル環)によって置換され得、
例えば、{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド(化合物9)
【0033】
【化19】
【0034】
であり、
式(IV)は
【0035】
【化20】
【0036】
であり、式(IV)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトンおよびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり、
R15は、窒素またはNOであり、そして
R16は、負に荷電した官能基(例えば、NO2、またはSO2)であり、
例えば、2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレート)(化合物1)
【0037】
【化21】
【0038】
であり;
式(V)は
【0039】
【化22】
【0040】
であり、式(V)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1およびR2は、同じであってもまたは異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり、
例えば、2−クロロ−5−[N’−(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2−イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸(化合物31)
【0041】
【化23】
【0042】
であり;
式(VI)は
【0043】
【化24】
【0044】
であり、式(VI)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、およびY9は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R5およびR6は、各々(CH2)n1であり、(CH2)n1においてn1は0〜3であり、かつ(CH2)n1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、ベンズアミジン、フェニル環に連結した1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、カルボキシレート、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZ1nH3−nからなる群より選択される要素に連結されており、CZ1nH3−nにおいて、Z1は、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、およびsec−ブチルからなる群より選択され、nは、1〜3であり、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、そして
R7およびR8は、各々、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、およびsec−ブチル、およびCZ1nH3−nからなる群より選択され、CZ1nH3−nにおいて、Z1は、ハロゲンであり、nは、1〜3であり;
例えば、4−(4−{[1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸(化合物4)
【0045】
【化25】
【0046】
であり、
式(VII)は
【0047】
【化26】
【0048】
であり、式(VII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1、R2およびR3は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、カルボキシレート、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり;
例えば、1,2−(3−メチルチオトリアジン)−3,4−フェニル−6−[(2−メトキシフェノキシ)酢酸]モルホリン(化合物33)
【0049】
【化27】
【0050】
であり、
式(VIII)は
【0051】
【化28】
【0052】
であり、式(VIII)において、Y1、Y2、Y3、およびY4は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され;
例えば、4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル)−ヒドラゾノメチル}−安息香酸(化合物51)
【0053】
【化29】
【0054】
であり、
式(IX)は
【0055】
【化30】
【0056】
であり、式(IX)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、
R9は、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルからなる群より選択され、および
R10は、負に荷電した官能基(例えば、NO2またはSO2)であり;
例えば、1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸(化合物24)
【0057】
【化31】
【0058】
であり、
式(X)は
【0059】
【化32】
【0060】
であり、式(X)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、
例えば、(3−ベンゾイック)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸(化合物38)
【0061】
【化33】
【0062】
であり、
式(XI)は
【0063】
【化34】
【0064】
であり、式(XI)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY1lは、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、アミン、1〜3個の隣接するアミン、グアニジン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、
例えば、2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸(化合物39)
【0065】
【化35】
【0066】
であり、
式(XII)は
【0067】
【化36】
【0068】
であり、式(XII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり;
例えば、2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸(化合物44)
【0069】
【化37】
【0070】
であり、
式(XIII)は
【0071】
【化38】
【0072】
であり、式(XIII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1、R2およびR3は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル(例えば、アルキルエステル、アシルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アシルチオエステル、またはアリールチオエステル)、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、
例えば、5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸(化合物45)
【0073】
【化39】
【0074】
である。
【0075】
ペンタミジン(Sigma Chemicals;カタログ番号P0547)、化合物1(Maybridge Chemical Company,Ltd.;カタログ番号SPB03102)、化合物3(Maybridge Chemical Company,Ltd.;カタログ番号RJF01370)、化合物4(Maybridge Chemical Company,Ltd.;カタログ番号BTB12151)、化合物9(Maybridge Chemical Company,Ltd.;カタログ番号RFJ00706)、化合物24(Chembridge Corporation;カタログ番号5954029)、化合物31(Chembridge Corporation;カタログ番号5658092)、化合物33(Chembridge Corporation;カタログ番号5720358)、化合物38(Chembridge Corporation;カタログ番号5740132)、化合物39(Chembridge Corporation;カタログ番号5748750)、化合物44(Chembridge Corporation;カタログ番号5774211)、化合物45(Chembridge Corporation;カタログ番号5764589)および化合物51(Chembridge Corporation;カタログ番号6050433)は、商業的供給源から入手可能である。
【0076】
式(I)〜(XIII)の化合物は、公知の反応化学を使用して、公知の材料または従来から調製可能である材料から開始して、従来通り調製され得(Houben−Weyl,Methoden der Organischen Chemie,Methods of Organic Chemistry,Georg−Thieme−Verlag,Stuttgartを参照のこと)、そして/または慣用的化学修飾によって、市販の化合物から調製され得る。
【0077】
例えば、式(I)のペンタミジンの誘導体は、図15において示されるように、Nandiら、J.Ind.Chem.Soc.,70:527(1993)により記載されるように調製され得る。4−シアノフェノールが、一連のポリメチレンジブロミドを用いてアルキル化されて、対応するビス(4−シアノフェニルオキシ)アルカン(1a〜1e)が生じる。この後、そのシアノ中間体から一連のイミデートヒドロクロリドへの転換が行われ、この一連のイミデートヒドロクロリドは、水酸化ナトリウム水溶液を用いる処理によって、対応する遊離塩基(2a〜2e)へと転換される。その後、イミデート2a〜2eが、イセチオン酸のアンモニウム塩を用いて処理されて、最終標的化合物3a〜3eが得られる(図15を参照のこと)。この合成経路における出発化合物および/またはこの反応スキームにおける種々の段階の反応物を変化することによって、種々の置換基(Y1〜Y8;R1〜R2;および種々の長さのX,n=1〜8)は、式(I)において示されるペンタミジンの誘導体を生成するために慣用的に置換され得る。
【0078】
第2の例(すなわち、化合物4について)において、化合物4の慣用的合成が、下記に概説される:
【0079】
【化40】
【0080】
この合成経路(すなわち、化合物4について)における出発化合物および/またはこの反応スキームにおける種々の段階での反応物を変化することによって、種々の置換基(Y1〜Y9;R5〜R8;およびX2リンカー)が、式(VI)により示される化合物4の誘導体を生成するために慣用的に置換され得る。これらの2つの例(式(I)および(VI))により記載されるアプローチと同様のアプローチを使用して、他の合成経路(すなわち、化合物1、3、9、24、31、33、38、39、44、45および51の調製について)に対する慣用的改変が、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)および(XIII)に示される化合物を調製するためになされ得る。
【0081】
特定の薬学的に受容可能な塩は、本発明にとって重要ではなく、そのような塩としては、イセチオネート、HCl、オキサールアセテート、または他の塩が挙げられ得る。
【0082】
本発明の化合物は、癌を処置するために有用な組成物(例えば、薬学的組成物)中に、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤とともに存在し得る。
【0083】
本発明において使用される特定の薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤は、本発明にとって重要ではない。このようなキャリアまたは希釈剤の例が、The Handbook of Pharmaceutical Excipients,A.WadeおよびP.J.Weller編、第2版、American Pharmaceutical Association,Washington DC(1994)(これは、本明細書中に参考として援用される)に列挙される。クレモフォアELが、好ましい。
【0084】
本発明の式(I)〜(XIII)により示される化合物の特定の投与様式は、本発明にとって重要ではない。例えば、本化合物は、軟膏またはクリーム中にて、皮膚癌に局所投与され得る。リン酸緩衝液生理食塩水溶液を使用する静脈内投与は、別の選択肢である。
【0085】
本発明に従って投与されるべき式(I)〜(XIII)により示される化合物の特定の量は、投与様式、処置されるべき癌、単独投与されるかまたは他の薬物と組み合わせて投与されるか、ならびに処置されるべき被験体の年齢、体重および性別に依存して変動する。一般に、局所投与されるべき量は、約1〜300mg/m2体表面、好ましくは、20〜300mg/m2体表面の範囲内にある。
【0086】
本発明の化合物が薬学的効果を示す癌は、特に限定されない。しかし、本発明の化合物は、黒色腫、星状細胞腫、神経膠腫、ならびにS100Bタンパク質または他のS100タンパク質が増加している他の癌(例えば、脳、肺、膀胱、腸、腎臓、頸部、乳房、皮膚、頭部および頸部、リンパ、精巣、咽頭、および口の癌)に対して、特に有効である。
【0087】
p53へのS100タンパク質の結合の阻害は、蛍光結合/競合アッセイによってアッセイされ得る。例えば、S100Bへの結合は、蛍光ペプチド(例えば、F43W p53ペプチド(SHLKSKKGQSTSRHKKLMWKTE(配列番号1))またはTRTK−12ペプチド(TRTKIDWNKIL(配列番号2))であり、両方とも、蛍光トリプトファン残基を含む(実施例7を参照のこと))を用いてモニターされる。このようなアッセイにおいて、このペプチドの結合は、10〜20 mMの塩化カルシウム(pH 7.4)の存在下で、350〜370nmにおけるその蛍光強度の変化によってモニターされる。その後、試験化合物によるそのペプチドの置換が、対応する蛍光強度の減少によってモニターされ、そしてS100Bからの試験化合物の解離定数は、標準的競合式(KD=Kapp/(1+[蛍光ペプチド]/KDペプチド)を使用して、計算される。その後、試験化合物が結合するS100B上のアミノ酸残基が、NMR分光法を使用して、化学シフト変動(perturbation)によってモニターされ得る。
【0088】
p53活性化に起因するS100タンパク質(例えば、S100B)の過剰発現は、ウェスタンブロッティング技術によって測定され得る(図11および実施例1を参照のこと)。
【0089】
以下の実施例は、例示だけのために提供され、本発明の範囲を限定することは全く意図されない。
【実施例】
【0090】
(実施例1)
(原発性悪性黒色腫細胞における野生型のS100Bおよびp53のタンパク質レベル)
先述のように(Linら、前出)、100μgの原発性ヒト黒色腫C8146Aのタンパク質抽出物または100μgのヒト神経膠芽細胞腫U118のタンパク質抽出物に対して、ウェスタンブロット解析を行った。
【0091】
C8146A細胞は、Frank L.Meyskens博士(University of California、Irvine)から得た。そして、それを10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS、GIBCO−BRL)を含有するF−10培地で増殖させた。
【0092】
U118細胞は、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA)から購入した。そして、10%(v/v)FCSを含有するD−MEMで増殖させた。
【0093】
50mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、1.0%(v/v)Nonidet P−40、0.5%(w/v)デオキシコール酸ナトリウム、0.1%(w/v)SDS、1.0mM PMSF、10μg/mlアプロチニン、2.0μg/mlロイペプチンおよび5.0mM DTTを含むRIPA緩衝液中で、細胞を溶解して、細胞抽出物を得た。
【0094】
この細胞抽出物中のタンパク質を12%(w/v)ポリアクリルアミドゲル上で泳動し、ニトロセルロースに転写し、そしてp53マウスモノクローナル抗体(DO−1、Oncogene Research Products、Boston、MA)(1:1000希釈)、S100Bウサギポリクローナル抗体(Research Diagnostics Inc.、Flanders、NJ)(1:500希釈)、サイクリンD1モノクローナル抗体(Oncogene Research Products)(1:100希釈)、またはタンパク質の使用量のための基準として、アクチンマウスモノクローナル抗体(Oncogene Research Products)(1:5000希釈)のいずれかと反応させた。次いで、ブロットを、セイヨウワサビペルオキシダーゼと結合体化したそれぞれの2次抗体と反応させ、製造者が推奨するように、化学発光基質(ECL、Amersham Pharmacia Biotech Inc.、Piscataway、NJ)と反応させた。先述のように(Linら、前出)、組換えS100Bタンパク質コントロールを生産し、そして均一になるまで精製した。その結果を、図2A〜2Bに示す。
【0095】
図2A〜2Bに示すように、原発性悪性黒色腫細胞(C8146)は、相対的に高レベルのS100Bを確立したが、これらの癌細胞において、p53のレベルは、S100Bをほとんど含まないか、または全く含まない細胞(すなわち、U118)と比較して、著しく低かった。このインビボでの知見は、S100Bおよびp53の一過性の同時トランスフェクションにおいて見出されることと一致し、この場合、S100Bの添加によって、腫瘍サプレッサータンパク質のレベルが、有意に減少した(>100倍)(Linら、既出)。漸増量の組換えS100Bタンパク質を使用して、C8146細胞中のS100Bのレベルが、U118細胞よりも、少なくとも50倍は高いと推定された。
【0096】
(実施例2)
(S100Bとp53との相互作用は、カルシウム依存的である)
(A)アポ−S100BおよびCa2+が結合したS100Bの溶液構造
距離制限、双極子カップリング制限、二面角制限を使用して、ダイマーアポ−S100Bの3次元構造を決定した。アポ−S100Bのα−へリックス含量(Amburgeyら、J.Biomol.NMR、6:171〜179(1995))およびその対称的なダイマー境界面から生じる曖昧さのために、NOEの割当てが困難であった。そのため、2次元および3次元のNOESYスペクトルに、4次元NOESY実験を補足し、重複する問題を解決した。そして、非対称的に標識されたS100B(すなわち、非標識S100B:13C、15N標識S100Bの1:1混合物)を用いる13C−エディットの12C−フィルター実験を使用し、ダイマー境界面において、分子内NOE相関を分子間NOE相関から区別した(Drohatら、前出)。結果として、化学シフト値のみに基づいて、ロングレンジの分子間NOE相関の70%よりも多くが、割当てられた。NOEベースの構造は、ショートレンジの距離制限にのみ基づくので、この構造を、ロングレンジの双極子カップリング制限を使用して、精緻化した(Tjandraら、Science、278:1111〜1114(1997);Tjandraら、Nat.Struct.Biol.、4:443〜449(1997);およびDrohatら、Biochemistry、37:2729〜2740(1998))。アポ−S100Bの溶液構造が、非常に高い解像度(Qは約0.3)で、公表された(Drohatら(1996)、前出;および、Drohatら、Protein Science、8:800〜809(1999))。そして、それを図3に示す。実際は、動的特性がほとんどない領域においては、クオリティファクターは、さらに良好である(Q<0.2)。アポ−S100Bの最終構造(約15NMR制限距離/残基)は、X型の4へリックスバンドルを形成する逆平行のヘリックス対同士の垂直的結合を有する対称的なダイマー境界面を示す(図3)。このフォールディングの結果として、アポ−S100BのC末端のEFハンドは、カルモジュリン、トロポニンC、カルビンジン(Calbindin)D9K、カルサイクリン(Calcyclin)、およびパルブアルブミンのEFハンドとは異なる(Drohatら(1996)、前出;およびDrohatら(1999)、前出)。それはまた、広範囲の疎水性コアおよび、その高い可溶性と一致する荷電表面を有する。このアポ−タンパク質に関して、Ca2+が結合したS100Bの溶液構造(図1)が、NMRを使用して解明された。これは、Drohatら(1998、前出)および図4に示される。
【0097】
(B) S100Bダイマーおよびそのコンフォメーション変化
S100Bのアポ構造(図3)とCa2+が結合した構造(図4)との比較により、X型4へリックスバンドルのダイマー境界面におけるへリックス(1、1’、4、または4’)の方向に違いがないことが示された(図1)。これらの知見により、Drohatら、Protein Science、6:800〜809(1997);Landarら、Biochim Biophys Acta、1343:117〜129(1997);およびLandarら、Biochem.、37:17429〜17438(1998)に記載された、ゲル濾過データ、光散乱データ、および分析的超遠心分離データが、確認される。これらの文献は、S100Bダイマーが、Ca2+の存在下および非存在下の両方において、1.0nM未満の濃度において安定であることを示す(Drohatら(1997)前出;Landarら(1997)、前出;およびLandarら(1998)、前出)。従って、非共有結合性のダイマーが、細胞内でのS100タンパク質の状態であり、NMR構造は、生理学的に妥当なオリゴマー化状態である。しかし、第2EFハンド(典型的なEFハンド)において、Ca2+が添加された場合、へリックス3の位置に大きな変化が存在する(図1)。このEFハンドにおいて、Ca2+が添加された場合、ヘリックス3とヘリックス4との間のへリックス間角度において、90°の変化が観測される。このCa2+依存的なコンフォメーション変化によって、ヒンジ領域中の残基、C末端ループ中の残基、およびヘリックス3中の残基によって規定される裂溝(アポ構造中には、存在しない)が、露出される(図1)。Ca2+が結合したS100B上のこの表面(図1で黄色)が露出されることが、p53の結合にとって必要である(図1および図4)。
【0098】
(C)Ca2+−S100B−p53ペプチド複合体の溶液構造
S100Bとp53のC末端との間の相互作用の詳細を調査するために、p53367〜388ペプチドによるCa2+が結合したS100Bの力価測定を、Rustandiら(2000)、前出;Rustandiら(1998);前出;およびRustandiら、Protein Science、8:1743〜1751(1999)に記載されるように、NMR分光法によりモニタリングした。Ca2+の存在下において、p53367〜388が添加された場合に、HSQCスペクトル中のS100Bからの非常に多くの共鳴が、有意にシフトした。しかし、Ca2+の非存在下では、変化は、測定されなかった。これらのデータによって、p53ペプチドのS100Bとの相互作用のCa2+依存性が、確認された。S100B−p53 4量体(S100Bダイマーにつき2つのp53ペプチド)の大きさ(26kDa)および複雑性のために、対称的に標識したサンプル(S100Bサブユニットの両方を、完全に同位体標識する;p53は非標識)および非対称的に標識したサンプル(標識S100βサブユニットと非標識S100βサブユニットの50:50混合物;p53は標識しない)の両方を使用する、異核多次元(2D〜4D)NMRデータ(Cloreら、Determination of structures of larger proteins in solution by three− and four−dimensional heteronuclear magnetic resonance spectroscopy. NMR of proteins(Cloreら編)、CRC Press、Boca Raton、FL(1993);およびWaltersら、Methods Enzymol.、339:238〜258(2001))を収集することが必要であった。これらのNMRデータおよびS100B−p53ペプチド複合体の構造が、Rustandiら(2000)(前出)に記載されている。総じて、3,466個の実験的制限(約15個/残基)を使用して、Ca2+−S100Bに結合したp53367〜388の構造を計算した(図4)。
【0099】
(D)p53−S100B相互作用のCa2+依存性
p53−S100B相互作用のCa2+依存性は、3つ全てのS100B複合体(アポ−S100B、Ca2+が結合したS100B、およびp53が結合したS100B;図1)の構造を比較することにより、観測され得る。p53と相互作用する残基のほとんど(21個のうち18個)は、アポ−S100B構造中に埋没している(図1中の黄色)。しかし、Ca2+がS100Bに結合した場合、これらの同じ残基が、へリックス3の位置の大きな変化に起因して、露出される。このコンフォメーション変化が、p53との相互作用に必要である(図1)。この構造はまた、S100Bタンパク質の標的中で見出された(すなわち、ファージペプチドライブラリーのスクリーニングに由来する)コンセンサス配列を理解するために、有用であった。「S100B−コンセンサス配列」の多くが、p53のC末端において、見出され(Ivanenkovら、J.Biol.Chem.、270:14651〜14658(1995))、そして、p53ペプチドを、この配列により一致するように変異させた(F385W)場合、このp53ペプチドのS100Bに対する親和性は、5倍上昇する(Rustandiら(1998)、前出)。コンセンサス配列全体を含む12残基のペプチド(TRTK−12ペプチド)に結合したS100Bの3次元構造研究/動力学的研究が、Inmanら、J.Mol.Biol.、324:1003〜1014(2002)に記載されており、従って、TRTK−S100Bの構造およびp53 S100Bの構造の両方を、本明細書中で、薬物設計の仕事において使用した。
【0100】
(実施例3)
(悪性黒色腫におけるS100Bとp53との間の相互作用は、細胞周期依存的である。)
悪性黒色腫におけるS100Bとp53との間の相互作用は、細胞周期依存的であるかどうかを研究するために、C8146A原発性悪性黒色腫を、血清飢餓(0.5%(w/v))によって、同調化した。詳細には、黒色腫細胞の同調化は、血清飢餓により行った。この血清飢餓は、0.5%(v/v)FCS中で、48時間、細胞を増殖させ、次いで、FCSレベルを15%(v/v)まで上げ、そして次いで、収集する前に、種々の期間(すなわち、0時間と48時間との間)、細胞を増殖させることで行った。次いで、細胞を収集し、氷冷PBSで2回洗浄した。次に、この細胞のペレットを、溶解緩衝液(50mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、2.0mM CaCl2、1.0mM PMSF、2.0μg/ ml ロイペプチンおよび5.0mM DTTを含む)中で、溶解した。細胞(1/2容積の0.1mm ガラスビーズを含む)を、3回、凍結および融解させ、そして15,000rpmで遠心分離した。上清(1.0mg)を、p53抗体(DO−1)またはS100B抗体のいずれかと共に、4℃で2時間、インキュベートした。次いで、プロテインA−アガロースビーズ(50μl、Oncogene)を添加し、サンプルを、4℃で一晩、インキュベートした。このビーズを、スピンダウンし、溶解緩衝液で6回、洗浄した。そして、12%(w/v)SDS−PAGE上にローディングした。このサンプルを、ニトロセルロース膜に転写し、インキュベートした(すなわち、上記のように、S100B抗体またはp53抗体を使用して共免疫沈降した)。その結果を、図5A〜5Bに示す。
【0101】
図5A〜5Bに示すように、直接的S100B−p53相互作用が、インビボで起きる。S100Bは、ほとんどの細胞において、主に細胞質ゾル性であるが、p53は、G1の間は細胞質に局在し、Sの間は核に入り、転写活性化を開始する。図5Aに示したデータは、サイクリンD1(G1マーカー)の発現が、15%(v/v)血清中への黒色腫の放出後6〜8時間の間に最大であったことを示す。この理由により、6時間の時点を選択して、癌細胞の同調化したG1抽出物を調製した。同調していない指数増殖している癌細胞の、p53抗体を使用した免疫沈降(図5B、レーン1)は、たとえあったとしても、少しの量のS100Bしか、p53によって共免疫沈降され得ないことを示す。しかし、細胞をG1に同調化した場合(図5B、レーン3)、p53抗体によって免疫沈降され得るS100Bの量が、著しく上昇した。S100B抗体を使用して行われた相互免疫沈降実験(図5B、レーン2)によって、G1の間のp53とS100Bとの間の複合体の形成が確認された。G1において、この相互作用が起こるという事実は、重要である。なぜなら、この相は、DNAの複製の前に存在し、そしてp53が、傷害を受けたDNAに応答するための重要なチェックポイントであるからである。ほとんどの細胞では、p53は、G1の間は細胞質に局在し、Sの間は核に入って、その転写活性を提供する。1つの重要なp53の下流エフェクター遺伝子が、サイクリン依存性キナーゼインヒビターp21である。このインヒビターは、DNA損傷に応答して、pRBのリン酸化を防止し、細胞をG1に停止させる。このG1での停止によって、そのDNAを修復し損傷DNAが娘細胞に伝達するのを防止するための時間が、細胞に与えられると考えられる。G1の間の細胞質でのS100Bとp53との相互作用によって、Sの間の核へのp53の進入が防止され、p53の転写活性が阻害され得る。野生型p53に対するS100Bの総合的な効果によって、細胞の異常(例えば、非機能的なp53が生じる遺伝子増幅および遺伝子変異)を模倣し得る。p53のC末端と結合するかまたはp53のC末端を改変するほとんどのタンパク質は、腫瘍サプレッサーを活性化する。一方で、S100Bに対しては、逆の効果が観測された。S100Bが結合した場合、p53の機能は低下した(Linら、前出)。
【0102】
(実施例4)
(p53の機能のS100B阻害)
S100Bは、p53のリン酸化を阻害し(Wilderら、前出;およびRustandiら(1998)、前出)、そしてp53テトラマーを破壊する(Baudierら、前出)。これらの2つの機能は、p53の転写活性にとって重要である(Giacciaら、Genes and Develop.、12:2973〜2983(1998))。S100Bは、p53のDNA結合活性を低下させる(Linら、前出)。このことは、阻害的リン酸化およびテトラマーの形成の防止に加えて、S100Bは、p53の転写活性にも影響し得ることを示唆する(Linら、前出)。このことを立証するために、一過性トランスフェクションを、H1299ヒト大細胞肺癌細胞において、p53レポーター遺伝子構築物(pG13−CAT)(Kernら、Science、256:827〜830(1992))と同時に、S100B発現ベクターおよびp53発現ベクターを使用して、実行した。S100B単独でのトランスフェクションは、レポーター遺伝子に影響しなかったが、S100Bのp53との同時トランスフェクションは、転写活性を有意に低下させた(Linら、前出)。S100A1を使用したこれらの研究およびS100Bに関する研究おいて、S100A1が、p53の機能を阻害した(Carrierら、前出)。mtslを使用して行われた研究は、このS100タンパク質もまた、p53に結合し、その転写活性化を有意に阻害することを示す(Grigorianら、前出)。
【0103】
S100Bのp53との相互作用の重要性をさらに評価するために、p53およびその下流エフェクターの内の2つであるmdm2(または、ヒトについてはhdm2)およびp21のタンパク質レベルを試験した。詳細には、ヒト大細胞肺癌細胞(H1299)を、p53発現ベクターおよびS100B発現ベクターを使用して、一過的に同時トランスフェクションした。H1299細胞株は、Bert Vogelstein博士から得た。これらの細胞は、p53遺伝子のホモ接合性欠失に起因して、p53のヌル遺伝子型を有する。それゆえ、存在する唯一のp53は、トランスフェクションを介して導入された野生型のタンパク質である(Funk、Mol.Cell Biol.、12:2866〜2871(1992))。この結果を、図6Aに示す。
【0104】
図6Aに示すように、p53は、p53発現ベクターの非存在下では、検出されなかった(レーン1、2;図6A);その結果、mdm2タンパク質およびp21タンパク質の内因性レベルは、低かった。予想どおり、p53の発現によって、mdm2およびp21の発現が引き起こされた(図6A、レーン3)が、S100Bタンパク質との共発現によって、p53タンパク質の蓄積(100分の1未満に)、mdm2タンパク質レベルおよびp21タンパク質レベルは、著しく減少した(図6A、レーン4)。p53の非存在下(すなわち、コントロール実験)でのS100Bの発現(図6A、レーン2)は、基礎レベルのmdm2にもp21にも、有意には影響しなかった(図6A)。このデータは、p53レベル、mdm2レベルおよびp21レベルの減少は、S100Bに依存することを示す。
【0105】
次に、S100Bが、内因性のp53と相互作用し、mdm2およびp21の発現に影響し得るかどうかを研究した。ヒト乳癌細胞株MCF−7(野生型p53の遺伝子型を有する(Kastanら、Cell、71:587〜597(1992))を、S100Bを使用して、一過的にトランスフェクトした。S100Bのトランスフェクションの後で、内因性p53の生産を誘導するために、X線模倣試薬ブレオマイシンで細胞を処置した(または、処置しなかった)。その結果を、図6Bに示す。
【0106】
図6Bに示すように、基礎レベルのp53、mdm2およびp21が、ブレオマイシンへの曝露によって誘導され得る(図6B、レーン2)。内因性S100Bは、MCF−7では検出できないが(図6B、レーン1)、S100Bタンパク質の過剰発現により、p53のレベルが減少し、mdm2の蓄積およびp21の蓄積が、阻止された(図6B、レーン4)。これらのデータは、S100Bが、インビボで、p53の下流エフェクター遺伝子の内在性の発現を阻害することを示す。
【0107】
(実施例5)
(S100Bプロモーターの領域は、p53に結合する)
活性p53レベルが上昇した場合、細胞周期およびアポトーシスに関与する多数の遺伝子の転写が、活性化される。1つの周知の場合において、p53は、フィードバックループの一部としてp53自体のユビキチン依存性分解に関与するタンパク質である、mdm2の転写を活性化する(Privesら(1999),上記;Freedmanら、Cell Mol.Life Sci.,55:96−107(1999);およびMomandら、Gene,242:15−29(2000))。mdm2と同様の状況(ヒトにおけるhdm2)において、S100Bのプロモーターは、p53結合についてのコンセンサス配列に対応する3つの配列を有する(図7)。実際、このS100Bプロモーター中の一配列は、p53結合コンセンサス配列と完全に適合する(20/20ヌクレオチド適合;図7)。
【0108】
従って、移動度シフトアッセイを、精製p53を用いて実施して、S100Bのプロモーター中のこれらの配列が真正にp53結合部位であるか否かを、GADD45配列をポジティブコントロールとして使用して決定する。電気泳動移動度シフトアッセイを、本質的にはCarrierら、Mutation Res.,352:79−86(1996)により記載されるのと同様に実施した。但し、サケ精子DNA(1.0μg)および精製組換えp53を使用した。バキュロウイルスにより発現されたp53を、Protein Sciences Inc.(Baltimore,MD)から得た。バキュロウイルスにより発現されたp53(0.6μgおよび3.0μg)を、それぞれ、GADD45オリゴヌクレオチドおよびS100Bオリゴヌクレオチドへの結合のために使用した。以前に記載された通り(Carrierら(1996),上記)に、これらのプローブを、逆相HPLC(Vydac C−4)により精製し、そしてT4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England BioLabs)を用いて標識した。Sl00βプロモーター由来のオリゴヌクレオチド配列は、20個のコンセンサスp53結合部位の20ヌクレオチド、17ヌクレオチド、および16ヌクレオチドと適合し、それは以下の通りであった:
センス 5’−GCC TGG GCA AGC TCT GTG CTT CAC AGA GCA AGC CTG TGT−3’(配列番号3);
センス 5’−GTT CTG GGA CTT TCA CTA AAC TTC TCC TAC CAT−3’(配列番号4);および
センス 5’−CAG AGG GCA GGC CCG GCT GGG CCC TCC TGC TGA−3’(配列番号5)。
【0109】
結果は、図8において示される。
【0110】
図8において示されるように、より低移動度の複合体が、GADD45およびS100B(20/20ヌクレオチド)プローブ(それぞれ、レーン2および5)とともに生成された。さらに、両方のバンドは、p53抗体(それぞれ、レーン3および6)によってスーパーシフトされた。従って、これは、真正のp53複合体を示す。しかし、コンセンサス配列が完全に適合するにも関わらず、GADD45配列と比較した場合、5倍多くのタンパク質およびDNAが、S100Bプロモーター配列とのタンパク質−DNA複合体を生成するためには必要であった。このことは、コンセンサス配列中のT/A改変体のうちの2つが、GADD45配列(これは好ましい)においてTであるが、S100B配列においてはAであるという事実(図7)に起因し得る。これらのp53結合部位間の別の差異は、p53と相互作用する2つの10ヌクレオチドDNAストレッチを連結する、介在DNA配列の長さである(11ヌクレオチド 対 0ヌクレオチド;図7)。同様のデータが、S100Bプロモーター中の他の2つのp53コンセンサス部位を用いて得られた;しかし、これらの部位は、20/20配列よりもさらに低いp53親和性を有した。まとめると、これらのデータは、p53によるS100B転写の誘導は、それらのプロモーター中により高親和性のp53部位を含む遺伝子が占められた後にのみ生じることを示唆する。さらに、p53は、他のS100タンパク質(S100A2)(Tanら、FEBS Letter,445:265−268(1999))の転写を、それらのプロモーター領域において見出されるp53結合コンセンサス配列に結合することによって調節する可能性もまたある(図7)。
【0111】
(実施例6)
(S100B−p53相互作用の阻害は、p53腫瘍サプレッサー機能を回復する)
原発性悪性黒色腫細胞C8146は、比較的高いレベルのS100Bを有するが、p53レベルは、S100Bをほとんど含まないかまたは全く含まない細胞(すなわち、U118;図2A〜2B)と比較して、これらの癌細胞において顕著に低い。このインビボでの知見は、S100Bおよびp53の一過性同時トランスフェクションにおいて見出されるものと一致する。ここで、腫瘍サプレッサータンパク質のレベルは、S100Bの添加によって有意に減少された(>100分の1)(Linら、上記)。漸増量のS100B組換えタンパク質を使用すると、C8146細胞におけるS100Bのレベルは、U118細胞において少なくとも50倍高いと推定された。S100Bが、黒色腫癌細胞において低いp53レベルに対して直接寄与するか否かを決定するために、S100BのC末端に対応する小干渉RNA(siRNA)を調製し、黒色腫細胞中に導入した。
【0112】
使用した小干渉RNA(siRNA)は、23ヌクレオチド(nt)の二本鎖RNAからなった。これは、Xeragon Inc.(Huntsville,Al)によって合成された。このsiRNAの配列(すなわち、5’−ACU ACU GCC UGC CAC GAG UUC−3(配列番号6))は、S100β C末端(ヌクレオチド244〜265)+2つのdT 3’突出に対応する。
【0113】
種々の濃度のsiRNA(2.0nM、20nM)を、2.0μgのpCMV.3空ベクター(Stratagene,La Jolla,CA)とともにこれらの細胞に添加した。これらのsiRNAを、FuGENE試薬(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN)を製造業者の推奨に従ってを使用して、C8146A黒色腫細胞においてトランスフェクトした。これらの細胞を24時間後に収集し、そして上記のようにウェスタンブロットによって分析した。これらの結果が、図9に示される。
【0114】
図9において示されるように、S100BアンチセンスRNAの添加によって、S100Bレベルが低下し(3分の1)、対応して、p53レベルの増加(2.3倍)が観察された。同様に、p53により活性化される遺伝子であるp21のタンパク質レベルもまた、p53レベルが上昇した場合に、予期された通り、siS100Bの添加によってアップレギュレートされた(2.6倍)(図9)。まとめると、アンチセンスRNAを用いたこれらの結果は、S100Bが、原発性悪性黒色腫癌細胞内部での機能的p53のダウンレギュレーションに寄与することを示す。
【0115】
(実施例7)
(S100Bの低分子インヒビター)
上記の研究は、S100タンパク質レベルが上昇しておりかつp53レベルが減少している細胞(例えば、多くの癌(すなわち、悪性黒色腫)中の細胞)において、野生型p53活性を回復するためのS100Bの低分子インヒビターの設計を動機付けた。
【0116】
この低分子は、S100B上のp53結合部位に結合することによってS100B−p53相互作用を阻害し、そしてp53結合を阻害するように、設計した。従って、このようなインヒビターは、p53をS100B依存性分解経路から保護し、そして細胞内部における野生型p53機能を回復すると考えられる。本発明において、コンピューター支援型薬物設計(computer−aided drug design)(CADD)(Martin,J.Med.Chem.,35:2145−2154(1992);Ewingら、J.Comput.Chem.,18:1175−1189(1997);Makinoら、J.Comput.Aided Mol.Des.,13:513−532(1999);およびHicksら、Curr.Opin.Drug Disc.& Devel.,1:223−234(1998))を、NMRによる構造活性関連研究(structure activity relationship studies by NMR)(SAR by NMR)(Hajdukら、Science,278:497−499(1997);およびFesik,J.Biomolecular NMR,3:261−269(1994)(図10))と合わせることは、S100Bと結合した後にS100B−p53相互作用をブロックする新規な低分子を同定するための有効な方法であることが、見出された。CADDは、魅力的である。なぜなら、この研究は、利用可能な化合物に対して焦点を合わせ、それによって開始段階における化学合成を回避するからである。分子を、100万個の化合物の3Dデータベースからコンピューターにより選択し、そしてS100Bのp53結合部位に「配置」した(図10)。これらの低分子の方向およびコンフォメーションを、その後、S100B構造への適合が最大となるように調節した。好ましい相互作用エネルギーと多数の可能なリガンド−レセプター水素結合とを含む分子を、試験のために選択した。有望な化合物のNMR技術によるSAR(Hajdukら、上記;およびFesik,上記)および熱力学的結合研究を使用して、S100Bについての結合部位および親和性を評価した。
【0117】
100万個を超える化合物を、CADDを使用してスクリーニングし、これから、生物物理学的スクリーニングおよび生物学的スクリーニングを使用して、S100Bに結合する50個より多くの分子が同定された(KD=500nM−10uM;蛍光結合アッセイから)。1つのこのような分子であるペンタミジンは、特に興味深い。なぜなら、(i)ペンタミジンは、別の用途についてFDAが認可しており;そして本明細書中で、(ii)NMRおよび蛍光分光法により決定した場合に、p53結合部位においてS100Bに結合することが(KD=700nM)見出され(下記を参照のこと);(iii)ペンタミジンは、原発性ヒト悪性黒色腫細胞(野生型p53)中に入り、そしてその増殖を、8分の1より低く阻害し、正常なメラニン形成細胞に対してかなり低い効果(8分の1)を有し;(iv)ペンタミジンを用いる処理により、p53タンパク質レベルが部分的に回復した(このことは、これらが、S100−p53複合体を破壊することを示唆する);(v)放出されたp53は、ウェスタンブロットによって検出された場合、mdm2およびp21をアップレギュレートし、そして(vi)S100Bタンパク質レベルが、原発性黒色腫において10倍より大きく増加された(図11)からである。S100Bのアップレギュレーションは、驚くべきことではない。なぜなら、S100B遺伝子は、p53の転写調節下にあること、S100Bプロモーターにおいて、p53DNA結合コンセンサス配列と正確に適合する(20のうち20)ヌクレオチド配列(ヌクレオチド1705〜1735)が存在することが、本明細書中で発見されたからである。DNAバンドシフトアッセイは、p53が、S100Bプロモーター中のこの部位および他の2つのp53部位に結合し、これは、完全に適合する配列についてより特異的であることを示す(図7)。これらのデータは、この薬物が、S100B−p53相互作用を破壊すること、およびp53の回復は、p53標的遺伝子(例えば、p21、mdm2、およびS100B)を転写活性化することを暗示する。
【0118】
((a)結合力価測定)
CADD探索において同定したS100Bへのこの低分子の結合を、蛍光分光法を使用して測定した。同定した化合物は、以下の通りである:
ペンタミジンイセチオネート(Kd=1.4±1μM IC50約500nM);{[(2,3−ジクロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド(Kd<1μM IC50<2.5)(化合物3);{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド(Kd=4+/−1μM)(化合物9);2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート(Kd=2.7+/−1μM IC50=2.5μM)(化合物1);2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸(Kd約6μM IC50約25μM)(化合物31);4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸(Kd=2+/−1μM)(化合物4);1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシフェノキシ)酢酸]モルホリン(Kd<10μM IC50約25μM)(化合物33);4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸(Kd<10μM)(化合物51);2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸(Kd約24μM)(化合物44);5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸(Kd約12μM)(化合物45);1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸(Kd<200μM)(化合物24);(3−ベンゾイック)−1,3,ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸(Kd<200μM)(化合物38);および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸(Kd<200μM)(化合物39)。
【0119】
蛍光を発する化合物(すなわち、化合物9、31および33について)を、蛍光強度の変化を介して、S100Bへの直接結合アッセイによって測定した。蛍光を発しなかった化合物(化合物1、3、4(ペンタミジン)、24、38、39、44、45および51)について、2つのアプローチを使用した。第1に、チロシン蛍光の変化(S100BのTyr−17について)は、いくつかの場合において、結合を評価するために十分であった(Rustandiら(1998),上記;およびSzaboら、FEBS Lett.,94:249−252(1978))。しかし、低収量のチロシン残基と関連する問題を克復するために、S100BのF43W変異体を使用し(図12A)、その後、野生型S100Bを用いて競合研究を行った(図12B)。このS100B構築物において(F43WS100Bにおいて)、トリプトファン残基が、標的タンパク質結合部位に位置し、その結果、トリプトファン変異体の放射は、添加化合物の関数として、338nmにて簡単な様式で測定された。このF43W変異体は、野生型S100Bの同様の構造、Ca2+結合特性および標的結合特性を有する。別のアプローチは、野生型S100Bに蛍光プローブを結合し、この化合物との競合結合アッセイを行うことであった。この場合、蛍光プローブとしてp53から誘導した蛍光ペプチド(F385W)(KD=3.0μM)またはTRTK−12ペプチド(KD=0.2μM)を、化合物との競合研究におけるプローブとして使用した。結合定数を決定するための定常状態実験を、25℃にて維持した細胞(水晶キュベット)の温度を用いるAminco Bowman Series 2 Luminescence Spectrophotofluorometerにて実施した。2つの内部コントロールを、すべての力価測定において実施した。EGTAをS100Bに添加して、カルシウムをキレート化し、そしてその薬物との相互作用が、多数のタンパク質標的について観察されるCa2+依存性コンフォメーション変化を必要とするか否かを決定した(Weberら、上記)。さらに、この力価測定を、コントロールとしてカルシウムの非存在下において実施した。蛍光放射スペクトルを有するすべての化合物をまた、進行前に光脱色について慣用的に評価した。緩衝液もまた、蛍光を発し得るいかなる混入物についても慣用的にチェックした。
【0120】
((b)細胞アッセイ)
化合物が原発性悪性黒色腫細胞(細胞株:C8146AおよびHTB 64)および正常メラニン形成細胞(Cell Applications Inc.新生児包皮からの104−05)の増殖に対して有する効果を、測定した。ペンタミジンは、悪性黒色腫細胞の増殖をむしろ強力に(IC50=500nM)阻害することが見出された。正常メラニン形成細胞に対しての効果は弱かった(図13)。この増殖阻害定数(IC50値)は、上記に列挙された他の化合物から生じる。これらの研究において、代表的には約10,000個の細胞を、T25バイアル全体にわたり均しく分布させた。1日後、上記低分子(2.5μMまたは25μM)を含むかまたは含まない新しい培地を添加し、そしてその細胞を、さらに13日間増殖させた。いくつかの分子をDMSO中で送達したので、細胞増殖に対するDMSO(0.1〜0.2%(v/v))の効果もまた、チェックし、それが、これらのレベルに対して影響を有さないことが見出された(図13)。この時点において、これらの細胞をリン酸緩衝液生理食塩水(PBS)中で洗浄し、トリプシンを用いる処理によって収集し、そして5.0%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)、5.0%(v/v)新生仔ウシ血清(NCS)、および2.0%(w/v)ペニシリン/ストレプトマイシンを含むF10培地中に配置した。これらの細胞を、4連の試行において、血球計を用いて計数した。
【0121】
((c)NMR分光法)
NMR分光法実験を、実行して、S100Bのどのアミノ酸残基と、この低分子とが相互作用しているのかを決定した(図14)。この低分子と相互作用するS100Bの共鳴を、ホロ−S100B中に化合物を力価測定すること、および15N編集HSQCスペクトルにおいて骨格アミド−プロトン相関関係の化学シフトの変動(perturbation)をモニターすること(Moriら、J.Magnetic Resonance,B108:94−98(1995))によって、同定した。試験した低分子すべては、これらのHSQC化学シフト変動研究によって決定した場合、p53結合部位においてS100Bと結合することが見出された(図1および図14を参照のこと)。この化合物−Sl00B境界面をマッピングする例が、ホロ−S100Bと化合物4との間の相互作用について、図14A〜14Cにおいて提供される。研究した化合物すべての場合と同様に、化合物4は、S100BのC末端(ループ4)および「ヒンジ」と呼ばれるS100Bの別の領域(ループ2)と相互作用する。これらの残基は、化合物4との力価測定について、図14Cにおいて赤く強調されている。この低分子に結合したS100Bの共鳴割り当てを、3D NOESY−HSQC実験を使用して確認し、Drohatら(1998),上記;Rustadniら(2000),上記;およびRustadniら(1998),上記に記載されるようなCa2+負荷S100Bおよびp53ペプチドに結合したS100Bの骨格および側鎖の化学シフトもまた、この割当て手順において役立った。S100Bと相互作用するこのインヒビターの領域を、Mayerら、J.Am.Chem.Soc.,123:6108−6117(2001)により記載された通り、飽和移動差実験(STD)を介するエピトープマッピングを使用して同定した。図14Aにおいて、S100B近傍にあるこの化合物のプロトンが、矢印により示される。STDを割当てるために、1D Watergateおよび2D TOCSY(水抑制を備えるMLEVパルストレイン(pulse train)の両方を得た。
【0122】
すべてのNMRスペクトルを、4つの振動数チャネルおよび三重共鳴3軸勾配プローブを備えた、Bruker DMX600 NMR分光計(プロトンについて600.13MHz)を用いて、37℃にて得た。すべての場合において、1秒の弛緩遅延を使用した。間接的次元における求積検出を、States−TPPIフェーズサイクリングを用いて得た(Marionら、Biochem.,28:6150−6156(1989))。
【0123】
サンプルは、代表的には、100〜300μM S100B、30 mM Tris(pH 6.5〜7.4)、10mM CaCl2、0.3 mM NaN3、0.4mM EDTA、5.0mM DTT、5.0%(v/v)D2O(pH 6.5)からなった。サンプル条件を変化することが必要な場合、コントロールCa2+−S100B HSQCスペクトルを収集した。すべてのNMRデータを、処理プログラムnmrPipe(Delaglioら、J.Biomol.NMR,6:277−293(1995));およびnmrView(Merck))を使用して、コンピューターワークステーションにて処理した。間接次元における時間ドメインデータを、標準的な線形予測ルーチン(Zhuら、J.Magnetic Resonance,98:192−199(1992))を使用して、3分の1以下の分だけ拡張した。すべてのプロトン化学シフトを、37℃での外部TSP(0.0ppm)と比較して、4.658ppmとして得たH2OシグナルまたはHDOシグナルに関して報告した。15N化学シフトを、37℃での0点振動数の以下の比を使用して、間接的に参照した:15N対1Hについて0.10132905(Speraら、J.Am.Chem.Soc.,113:5490−5492(1991);Liveら、J.Am.Chem.Soc.,106:1939−1941(1984);およびEdisonら、Methods Enzymol.,239:3−79(1994)).
((d)構造ベースモデリング)
上記に列挙した化合物の結合、HSQC NMR力価測定、飽和移動差測定(STD)、およびNMRドッキング手順に基づいて、合成改変から利益を得る種々の低分子の領域を同定することが、可能であった。最初に、可変リンカー領域を備えるペンタミジン誘導体を、調製した(図15)。これは、より小さいSTDが、S100Bとペンタミジンリンカー領域との間で検出されるので、可能であった。最適なサイズのリンカー(すなわち、最も強力なIC50,KDを生じるリンカー)を、その後、他の「ペンタミジン」様誘導体(上記式(I)および(II)ならびに図15を参照のこと)の簡単な合成において使用した。
【0124】
同様に、ドッキング方法を使用して、S100Bに緊密に結合する(KD<2μM)他の化合物の誘導体(化合物3の誘導体および化合物4の誘導体を含む)を誘導した。
【0125】
化合物4について、癌細胞中への侵入を容易にするためにより弱い電荷を有する化合物を得るために、強調を与えた。
【0126】
((e)要旨)
S100タンパク質は、多数の癌においてアップレギュレートされるので、S100タンパク質は、腫瘍進行についてのマーカーとして臨床的に使用される。S100Bと腫瘍サプレッサーであるp53とのカルシウム依存性相互作用がインビボで生じること、およびこの相互作用がp53機能を阻害することが、本明細書中で発見された。従って、高レベルのS100タンパク質(例えば、S100B)は、S100Bレベルが上昇した細胞(例えば、悪性黒色腫)における制御されていない細胞増殖に寄与する。原理の証明として、Sl00B−p53相互作用の阻害が、野生型p53機能を回復することが、示された。従って、S100Bに結合しp53相互作用を阻害する低分子アナログが、p53機能を回復することを目的として開発された。このことは達成され、S100Bに結合し、S100B−p53複合体形成を阻害し、そして癌細胞(すなわち、悪性黒色腫)の増殖速度をp53機能の回復によって減少するいくつかの化合物が、見出された。これらの化合物の1つであるペンタミジンは、別の目的についてFDAによって認可された薬物であり、従って、この化合物は、徹底的に特徴付けられている。
【0127】
(実施例8)
(p53機能のS100Bによる調節についてのモデル)
S100Bがいかにしてp53機能を調節するかについてのモデルが、図16において示される。その活性形態で、テトラマーp53の各サブユニットは、Zn2+と結合し、そしてループ−シート−ヘリックスDNA結合ドメインのための足場として役立つ2つの逆平行βシートのサンドイッチを含む(Choら、Science,265:346−355(1994))。特定のDNA配列に結合する際(図16)、p53は、サイクリン依存性キナーゼインヒビター(p21WAF/CIP1)、細胞周期制御タンパク質(サイクリンG、GADD45)、アポトーシスに関与する遺伝子(すなわち、Bax)、および次いでフィードバック制御を介して細胞内部のp53タンパク質を負に調節するタンパク質(例えば、S100Bおよびhdm2)(Levineら(1991),上記;Levine(1997),上記;およびFreedmanら、上記)を含む、下流標的の転写を活性化する。S100Bについて、そのプロモーター領域に対するp53の親和性は、比較的低く(図8)、このことは、p53によるS100Bの誘導が、より高親和性のプロモーター部位が占められた後(すなわち、GADD45、p21などについて)にだけ生じることを示唆する。hdm2について、p53タンパク質レベルは、ユビキチン媒介経路によってダウンレギュレートされ、そしてhdm2−p53相互作用は、N末端トランス活性化ドメインにおけるp53のリン酸化状態に依存する(Schonら、J.Mol.Biol.,323:491−501(2002))。hdm2と同様に、S100Bもまた、p53に直接結合し、そして癌細胞におけるより低いp53タンパク質レベルに寄与する(図1および4、ならびに図6A−6B)。S100Bがいかにして細胞内部のp53レベルを低下することに寄与するかについての機構は未だ確立されていないが、p53テトラマーを解離し(Baudierら、上記)そして/またはp53の最もC末端側のドメイン(Rustandiら(1999);上記)およびテトラマー化ドメインにおけるにおけるコンフォメーション変化を引き起こすその能力に関連する(図16)と、考えられる。従って、現在、S100Bは、(i)p53により転写レベルで活性化され、かつその後で、(ii)フィードバック制御を介してp53機能を阻害する、2番目の公知のタンパク質である(図16)。
【0128】
hdm2(マウスにおけるmdm2)とS100Bとの間の別の類似性は、両方のタンパク質とp53との相互作用が、リン酸化によって調節されることである(Rustandiら(2000),上記;Schonら、上記;Wilderら、上記;およびBuschmannら、Cancer Res.,60:896−900(2000))。mdm2について、p53における1つの残基(T18)のリン酸化は、mdm2結合を阻害し(>10倍)、これはその後、p53が、mdm2/ユビキチン依存性分解するのを防ぐ(Schonら、上記;およびPietteら、Oncogene,15:1001−1010(1997))。同様に、p53のC末端におけるリン酸化およびアセチル化は、腫瘍サプレッサーがS100Bと相互作用するのを防ぎ得る(Rustandiら(2000),上記;およびYoumellら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,245:514−518(1998))。これもまた顕著であるのは、mdm2のN末端ドメインの3D構造が、これはカルシウムに結合しないという事実(Milner−White,J.Mol.Biol.,286:957−963(1999))にも関わらず、S100Bおよび他のEF−ハンド結合タンパク質(例えば、カルモジュリン)に似ていることである。S100タンパク質と同様に、mdm2は、構造的ホモログ(mdmX)とヘテロダイマーを形成し、このことは、それ自体の発癌活性を調節する(Stadら、EMBO Rep.,2:1029−1034(2001)).その最も活性な形態で、p53は、X型4ヘリックスバンドル(bundle)を形成するようにダイマーのダイマーとしてC末端領域中に保持される、テトラマーである(Jeffreyら、Science,267:1498−1502(1995);Leeら、Nat.Struct.Biol.,1:877−890(1994);およびCloreら、Science,265:386−391(1994))。このテトラマードメインに対して直接的にC末端は、「最もC末端」または「C末端負調節ドメイン」と呼ばれる塩基性領域である。従って、これらのタンパク質(hdm2 対 S100B)の間での重要な区別は、p53のC末端とのS100Bの相互作用が、Ca2+依存性であり(Rustandiら(1998),上記;およびBaudierら、上記)、そしてp53生物学をカルシウム媒介性シグナル伝達経路および細胞外増殖応答に連結し得(図17);一方で、hdm2は、カルシウム非依存性様式でp53のN末端に結合することである(Momandら、上記;およびPrives,Cell,95:5−8(1998))。
【0129】
S100Bとp53との間の相互作用は、細胞周期依存性様式で(すなわち、G1の間に;図5B)生じ、さらに、その細胞の内側でリン酸化およびカルシウムレベルによって調節される。この知見は、重要である。なぜなら、G1期は、DNA合成の前に存在し、そしてDNA損傷に応答してp53についての重要なチェックポイントを構成するからである。このp53 G1チェックポイントは、p53下流エフェクター遺伝子のうちの1つであるサイクリン依存性キナーゼインヒビターp21によって媒介される(Appellaら、上記;Privesら(1999),上記;およびVousden,上記)。このインヒビターは、DNA損傷に応答して、pRbのリン酸化を阻害しそしてG1において細胞を停止する。G1におけるこの停止は、細胞がそのDNAを修復する時間を可能にし、そして損傷したDNAが娘細胞へと伝達するのを妨げると、考えられる(Privesら(1999)、上記;およびVousden,上記)。S100Bは、p53によるp21のアップレギュレーションを阻害し(Linら,上記)、その結果、細胞周期の停止は、その存在が減少し、そしてその細胞周期は調節されないで進行することが、以前に示された。さらに、G1の間のS100Bとp53との間の相互作用は、Sの間にp53が核に侵入するのを阻害し得、そしてさらに、p53の転写活性を阻害し得る。従って、野生型p53に対するS100Bの全体的効果は、細胞異常(例えば、p53の非機能性変異体を生じる遺伝子増幅および変異を模倣し得る。
【0130】
野生型p53が存在する場合に癌がいかにして進行するかは完全には明らかではないが、このパラダイムについての1つの可能な説明は、p53を負に調節するタンパク質(例えば、S100B)のレベルの上昇が妥当であることである。野生型p53および高レベルのS100Bを伴う癌の例は、悪性黒色腫である。興味深いことに、S100カルシウム結合タンパク質(例えば、S100B)は、これらの細胞において上昇し、そして皮膚癌についてのマーカーとして使用される(Cochranら、Melanoma Res.,3:325−330(1993);Boniら、上記;およびMarksら、Exp.Cell Res.,187:59−64(1990))。さらに、野生型p53タンパク質レベルは、S100タンパク質を含まない細胞と比較した場合、悪性黒色腫において比較的低い(図2A〜2B)。原発性皮膚癌細胞について、p53とS100Bとの間に、細胞周期のG1の間に直接的相互作用が存在すること、および野生型p53レベルが、S100BのRNAに対してアンチセンスであるRNAの添加の際に回復され得ること(図9)が、本発明において示された。この結果は、インビボにおける野生型p53のダウンレギュレーションにS100Bを直接関連つけ、そしてこれは、p53およびS100Bの一過性同時トランスフェクションにおいて以前に観察されたp53タンパク質レベルの大きな減少(Linら、上記)と一致する。これらの結果を心に留めると、S100B−p53相互作用をブロックして野生型p53をより正常レベルへと回復する低分子インヒビターは、癌(例えば、悪性黒色腫)の処置のための治療剤として有用であると考えられる。
【0131】
本発明は、その特定の実施形態に関して詳細に記載されてきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の変更および改変が本発明においてなされ得ることが、当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0132】
(図面の詳細な説明)
本特許または本出願のファイルは、色付きで作成された少なくとも1つの図面を含む。色付き図面を含む本特許または本特許出願公開物のコピーは、請求しそして必要な費用を支払えば、特許庁によって提供される。
【図1】図1は、腫瘍サプレッサータンパク質であるp53(標的タンパク質)のC末端(アミノ酸367〜388)とS100BとのCa2+依存性相互作用を示す。リボン図が、アポ結合状態、カルシウム結合状態(ホロ結合状態)、およびp53結合状態(PDBエントリー:アポ−S100B;ホロ−S100B,1B4C;p53結合S100B,1DT7)におけるS100Bの原子解像3次元溶液構造について示される。赤および青で示されるのは、ダイマーS100Bのサブユニットであり、腫瘍サプレッサータンパク質であるp53のC末端の負調節ドメイン(残基367〜388)(緑色)と直接相互作用する残基について影を付けた領域(黄色)を含む。大きなコンフォメーション変化が、アポ−S100Bにカルシウムが付加する際に生じる。このコンフォメーション変化は、p53(緑色)との結合に関与する残基(黄色)を露出させる。そしてこれは、ホロ−S100Bへの腫瘍サプレッサーの結合のために必要とされる(Rustandiら(2000),上記;およびWeberら、上記)。
【図2】図2Aおよび2Bは、原発性悪性黒色腫細胞(C8146)、およびS100Bをほとんど含まないかまたは全く含まないコントロール細胞(神経膠芽細胞腫、U118)における、S100B(図2A)およびp53(図2B)のウェスタンブロットを示す。S100Bの量を評価するために使用した組換えS100Bのブロットもまた、示される。この図は、黒色腫がS100Bレベルを増加させ、そしてp53レベルを減少させたことを示す。
【図3】図3は、ダイマーのアポ−S100B(ββ)の20個のNMR構造の立体図であり、2つのS100βサブユニットが、青色および赤色で示されている。
【図4】図4は、Ca2+負荷S100Bダイマーと複合体化したp53の負調節ドメインの40個のNMR構造の骨格重層の立体図である。2つの異なるS100βサブユニットのヘリックスが、青色および赤色で着色されており、Ca2+イオンが、藤色であり、そしてp53の2つのサブユニットからのC末端(残基367−388)が、緑色である。
【図5】図5A〜5Bは、共免疫沈降実験によって検出された、原発性悪性黒色腫癌細胞における、細胞周期G1の間のS100Bとp53との相互作用を示す。図5Aは、G1についてのマーカーとして使用される細胞周期タンパク質であるサイクリンD1のウェスタンブロットを示す。図5Bは、S100B抗体およびp53抗体を用いる共免疫沈降を示す。S100Bとp53との相互作用は、非同調化細胞においては(たとえあったとしても)最小限である(図5B、レーン1)が、その細胞が血清枯渇によって同調化された場合には、有意に増加され、そして15%(v/v)血清の添加6時間後に、G1において解放される(図5B;レーン2、3)。
【図6】図6A〜6Bは、S100Bが、p53、mdm2およびp21のタンパク質レベルを減少することを示す。図6Aは、p53でトランスフェクトされ、S100Bでトランスフェクトされた(+)かまたはされていない(−)、H1299肺癌細胞のウェスタンブロットを示す。図6Bは、S100B(+)またはpCMV(−)で一過性トランスフェクトされ、そして10mg/mlブレオマイシンで処理されたかまたはされていない、乳癌MCF−7細胞のウェスタンブロットを示す。p53タンパク質、mdm2タンパク質、p21タンパク質、S100Bタンパク質およびアクチンタンパク質の位置が、示される。これらの結果は、S100Bの一過性トランスフェクションが、癌細胞においてp53の機能を阻害することを示す。
【図7】図7は、p53結合コンセンサス配列と適合するS100Bプロモーター領域を示す。ヌクレオチド1705〜1735は、p53結合についての20個のコンセンサスヌクレオチドのうちの20個に適合する。2つのさらなるp53結合部位が、S100Bプロモーター中に存在する;ヌクレオチド1455〜1478は、16個の部位に適合し、一方、ヌクレオチド149〜169は、17個の部位に適合する。mdm2(18/20)プロモーターおよびGADD45(19/20)プロモーター中のp53結合領域もまた、示される。この図は、3つのp53結合部位が、S100Bプロモーター中に存在することを示す。
【図8】図8は、GADD45遺伝子の3番目のイントロン由来のDNA(レーン1〜3)およびS100Bのプロモーター(20/20適合)由来のDNA(レーン4〜6)に対する、精製p53の移動度シフトアッセイの結果を示す。遊離プローブ、p53シフト、およびスーパーシフトバンドが、示される。GADD45シフトについて、0.3μgのp53および5.0ngの標識DNAが使用され、一方、6.0μgのp53および25ngのS100B標識DNAが、使用された。これらの結果は、p53が、S100Bプロモーターに結合し、そしておそらく、遺伝子(GADD45)後にS100Bレベルを調節することを示す。これは、p53が、GADD45遺伝子の3番目のイントロン由来のDNAに、S100Bプロモーター由来のDNAについて見出されるよりも低いp53レベルおよびDNAレベルで結合するからである。
【図9】図9は、小干渉S100βアンチセンスRNA(siS100β)を用いて黒色腫細胞をトランスフェクションした後の、p53、S100B、p21およびアクチンのウェスタンブロット分析を示す。S100β=ダイマーS100Bのサブユニット。使用したトランスフェクトRNAの量が、示される。これらの細胞は、トランスフェクションの24時間後に収集した。これらの結果は、悪性黒色腫細胞における阻害性S100Bタンパク質生成が、野生型p53機能を回復することを示す。この実験は、本発明の原理の証明を示す。
【図10】図10は、CADDおよびNMRから誘導した構造データおよび動的データを使用する、S100Bの合理的薬物設計を示す(左図)。本発明において、このアプローチからの研究は、薬物開発のために必要な、S100Bと結合しかつS100B−p53相互作用を阻害するリード化合物(右図、青色)を提供した。
【図11】図11は、薬物ペンタミジン(2.5μM)の添加によって、コントロール(1.0%(v/v)DMSO;および未処理)に対して、ヒト悪性黒色腫細胞におけるS100Bレベルが増加することを示す。野生型p53レベルは、S100B−p53相互作用を阻害することを介して、この薬物によって回復される。その後、上昇したp53は、フィードバック機構の一部として、S100Bをアップレギュレートする(図16)。このデータは、S100Bレベルの上昇をモニタリングすることが、特定の薬物がp53機能を回復する能力についてのアッセイとして使用され得ることを、示す。
【図12】図12A〜12Bは、ホロ−S100Bへのペンタミジンイセチオネートの結合研究を示す。図12Aは、4.0μM F43W S100B、10 mM CaCl2、40mM Tris(pH 7.5)を含む溶液中へのペンタミジンイセチオネートの力価測定を示す。図12Bは、F43W S100Bに結合したペンタミジンの、野生型S100Bとの競合研究を示す。これらの力価測定において、S100B変異体、F43W、およびペンタミジンイセチオネートの濃度が、この力価測定全体を通して一定に維持された。この競合研究は、野生型ホロ−S100Bとペンタミジンとの間で、結合定数(KD)700nMを生じた。
【図13】図13は、原発性悪性黒色腫細胞(C8146A)の増殖に対するペンタミジンイセチオネートの効果を示す。化合物(例えば、ペンタミジンイセチオネート)が、2種類の濃度の薬物(2.5μM,25μM)にて原発性黒色腫細胞株を使用して、4連試行でスクリーニングされた。ペンタミジンによる細胞増殖の阻害についてのIC50が、約500nMであることが見出された。対照的に、7.5分の1の効果(25μMの薬物にて)が、正常新生児メラニン形成細胞における増殖において見出された。これらのデータは、ペンタミジンイセチオネートが、正常なメラニン形成細胞よりも効率的に、原発性悪性黒色腫細胞増殖を阻害し得ることを示す。
【図14】図14A〜14Dは、NMR分光法を使用するホロ−S100B化合物4結合境界面のマッピングを示す。図14Aは、化合物4の構造を示し、これは、飽和移動差(STD)NMR実験において決定された、S100Bと相互作用する化合物の領域を示す(太い矢印)。図14Bは、ホロ−S100Bに結合する化合物4についてのSTDデータを示す。黒色で示されるのは、STDスペクトルであり、赤色で示されるのは、コントロールスペクトルである。図14Cは、STD実験および化学シフト変動(perturbation)実験によって決定された、ホロ−S100Bに結合した化合物4を示すリボン図を示す。ホロ−S100B上にて赤色で示されるのは、化合物4の結合の際の化学シフトの大きな変化を有することが見出された残基である。図14Dは、S100B中の各残基についての化学シフト変化を示し、各残基についての化学シフト変化の大きさを示す。これらのNMR実験についてのサンプル条件は、1.5mM 化合物4、0.150mM Ca2+−S100B、10mM CaCl2、30mM Tris(pH 6.5)、5.0mM DTT、0.3mM NaN3、および5.0%(v/v)D2Oからなった。化合物4の構造は、下記に示される。これらのデータは、S100B−薬物相互作用を最適化するために必要な、原子解像度でのS100B−薬物相互作用を特徴付けるための方法を示す。
【図15】図15は、種々のサイズのリンカー領域を用いてペンタミジンの誘導体を調製するための合成反応を示す。
【図16】図16は、野生型p53の活性化および不活化についてのモデルを示す。潜伏性(latent)p53の活性化は、ストレス応答依存性共有結合改変(M)(すなわち、リン酸化、スモイレーション(sumoylation)およびアセチル化)によって達成される。これらの改変は、p53のC末端の負調節ドメイン(緑色のヘリックス)およびp53テトラマードメインを、S100タンパク質結合および/または非特異的DNA結合から保護すると考えられる。活性化p53は、核に局在化し、核において、活性化p53は、アポトーシスに関与する遺伝子(すなわち、bax)および細胞周期依存性増殖停止に関与する遺伝子(すなわち、p21)の転写を、アップレギュレートする。フィードバックコントロール機構の一部として、p53はまた、それ自体の不活化に関与する遺伝子(すなわち、hdm2およびS100B)の転写をアップレギュレートする。増殖応答の一部として(↑Ca2+)、S100Bとp53との間のCa2+依存性相互作用は、p53におけるコンフォメーション変化およびその腫瘍サプレッサーのテトラマー解離を誘導し、これは、その分解に(すなわち、おそらくhdm2/ユビキチン依存性経路および/またはプロテアーゼ依存性経路を介する)に寄与する。
【図17】図17は、X線結晶学および/またはNMR(Ikuraら、Nat.Struct.Biol.,7:525−527(2000))によって決定された、色付きのコード化された3D構造とともに、p53のドメインを示す。p53ドメインの構造は、溶液中で遊離しているか、あるいはp53結合タンパク質またはp53結合DNAに結合しているかのいずれかである。
【配列表】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
p53へのS100の結合を阻害する化合物を同定する方法であって、
S100とp53とを試験化合物の存在下で接触させる工程、および
p53へのS100の結合の阻害についてアッセイする工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項3】
p53を活性化する化合物を同定する方法であって、
試験化合物を、S100を発現する細胞と接触させる工程、および
S100の過剰発現についてアッセイする工程、
を包含し、該過剰発現は、p53活性化を示す、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項5】
p53を活性化する方法であって、
S100およびp53を発現する細胞を、請求項1または請求項3の方法により同定される化合物と接触させる工程、
を包含する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項7】
p53を活性化する方法であって、
S100およびp53を発現する細胞を、式(I)〜(XIII)のいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩と接触させる工程、
を包含し、
式(I)は
【化1】
であり、
式(I)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
Xは、1〜8個の炭素原子を有するアルキルであり、そして
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり;
式(II)は
【化2】
であり、式(II)において、Y1およびY2は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R11、R12、およびR13は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、メチルエステル、フェニルケトン、アリールエーテル、アリールチオ、アリールメチレン、酸素、カルボニル、カルボキシレート、エチレン、アミド、エステル、チオエステル、およびCZnH3−nからなる群より独立して選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり、そして
必要に応じてR11とR12と、またはR12とR13とは、C、N、O、またはSを含む5員縮合芳香環を形成し得;
式(III)は
【化3】
であり、式(III)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8およびY9は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトンおよびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、イミン、エチレン、アミド、エステル、およびチオエステルからなる群より選択され、そして
該フェニル芳香環のうちの1つ以上は、該芳香環のうちの1つ以上の1〜3個の炭素原子をN原子で置換することによって、縮合芳香環、ヘテロ芳香環、または縮合芳香環によって置換され得、
式(IV)は
【化4】
であり、式(IV)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトンおよびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり、
R15は、窒素またはNOであり、そして
R16は、負に荷電した官能基であり;
式(V)は
【化5】
であり、式(V)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1およびR2は、同じであってもまたは異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり;
式(VI)は
【化6】
であり、式(VI)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、およびY9は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R5およびR6は、各々(CH2)n1であり、(CH2)n1においてn1は0〜3であり、かつ該(CH2)n1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、ベンズアミジン、フェニル環に連結した1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZ1nH3−nからなる群より選択される要素に連結されており、該CZ1nH3−nにおいて、Z1は、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、およびsec−ブチルからなる群より選択され、nは、1〜3であり、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、そして
R7およびR8は、各々、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、およびsec−ブチル、およびCZ1nH3−nからなる群より選択され、CZ1nH3−nにおいて、Z1は、ハロゲンであり、nは、1〜3であり;
式(VII)は
【化7】
であり、式(VII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1、R2およびR3は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり;
式(VIII)は
【化8】
であり、式(VIII)において、Y1、Y2、Y3、およびY4は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され;
式(IX)は
【化9】
であり、式(IX)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、
R9は、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルからなる群より選択され、および
R10は、負に荷電した官能基であり;
式(X)は
【化10】
であり、式(X)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、
式(XI)は
【化11】
であり、式(XI)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY1lは、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、アミン、1〜3個の隣接するアミン、グアニジン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、
式(XII)は
【化12】
であり、式(XII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり;そして
式(XIII)は
【化13】
であり、式(XIII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1、R2およびR3は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択される、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、前記化合物が、ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2−イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシ−フェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸からなる群より選択される、方法。
【請求項10】
p53へのS100の結合を阻害する方法であって、
S100およびp53を発現する細胞を、請求項7において規定される式(I)〜(XIII)のうちのいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩と接触させる工程、
を包含する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、前記化合物が、ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロ−アニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2−イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシ−フェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3,ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸である、方法。
【請求項13】
癌を処置するための方法であって、
請求項1または3の方法により同定される化合物の有効量を、癌を保有する被験体に投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項14】
癌を処置するための方法であって、
請求項7において規定される式(I)〜(XIII)のいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩の有効量を、癌を保有する被験体に投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記化合物が、ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロ−アニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシフェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3,ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸である、方法。
【請求項16】
請求項13または14に記載の方法であって、前記癌が、黒色腫、星状細胞腫および神経膠腫からなる群より選択される、方法。
【請求項17】
請求項1または3の方法により同定される化合物と、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む、抗癌組成物。
【請求項18】
請求項7において規定される式(I)−(XIII)のうちのいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む、抗癌組成物。
【請求項19】
抗癌組成物であって、
化合物ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシフェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3,ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸と、
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と、
を含む、抗癌組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
p53へのS100の結合を阻害する化合物を同定する方法であって、
S100とp53とを試験化合物の存在下で接触させる工程、および
p53へのS100の結合の阻害についてアッセイする工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項3】
p53を活性化する化合物を同定する方法であって、
試験化合物を、S100を発現する細胞と接触させる工程、および
S100の過剰発現についてアッセイする工程、
を包含し、該過剰発現は、p53活性化を示す、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項5】
p53を活性化する方法であって、
S100およびp53を発現する細胞を、請求項1または請求項3の方法により同定される化合物と接触させる工程、
を包含する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項7】
p53を活性化する方法であって、
S100およびp53を発現する細胞を、式(I)〜(XIII)のいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩と接触させる工程、
を包含し、
式(I)は
【化1】
であり、
式(I)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
Xは、1〜8個の炭素原子を有するアルキルであり、そして
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり;
式(II)は
【化2】
であり、式(II)において、Y1およびY2は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R11、R12、およびR13は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、メチルエステル、フェニルケトン、アリールエーテル、アリールチオ、アリールメチレン、酸素、カルボニル、カルボキシレート、エチレン、アミド、エステル、チオエステル、およびCZnH3−nからなる群より独立して選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり、そして
必要に応じてR11とR12と、またはR12とR13とは、C、N、O、またはSを含む5員縮合芳香環を形成し得;
式(III)は
【化3】
であり、式(III)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8およびY9は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトンおよびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、イミン、エチレン、アミド、エステル、およびチオエステルからなる群より選択され、そして
該フェニル芳香環のうちの1つ以上は、該芳香環のうちの1つ以上の1〜3個の炭素原子をN原子で置換することによって、縮合芳香環、ヘテロ芳香環、または縮合芳香環によって置換され得、
式(IV)は
【化4】
であり、式(IV)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトンおよびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり、
R15は、窒素またはNOであり、そして
R16は、負に荷電した官能基であり;
式(V)は
【化5】
であり、式(V)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1およびR2は、同じであってもまたは異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり;
式(VI)は
【化6】
であり、式(VI)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、およびY9は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R5およびR6は、各々(CH2)n1であり、(CH2)n1においてn1は0〜3であり、かつ該(CH2)n1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、ベンズアミジン、フェニル環に連結した1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZ1nH3−nからなる群より選択される要素に連結されており、該CZ1nH3−nにおいて、Z1は、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、およびsec−ブチルからなる群より選択され、nは、1〜3であり、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、そして
R7およびR8は、各々、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、およびsec−ブチル、およびCZ1nH3−nからなる群より選択され、CZ1nH3−nにおいて、Z1は、ハロゲンであり、nは、1〜3であり;
式(VII)は
【化7】
であり、式(VII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1、R2およびR3は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり;
式(VIII)は
【化8】
であり、式(VIII)において、Y1、Y2、Y3、およびY4は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され;
式(IX)は
【化9】
であり、式(IX)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、
R9は、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルからなる群より選択され、および
R10は、負に荷電した官能基であり;
式(X)は
【化10】
であり、式(X)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、
式(XI)は
【化11】
であり、式(XI)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY1lは、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、アミン、1〜3個の隣接するアミン、グアニジン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、
式(XII)は
【化12】
であり、式(XII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり;そして
式(XIII)は
【化13】
であり、式(XIII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1、R2およびR3は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択される、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、前記化合物が、ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2−イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシ−フェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸からなる群より選択される、方法。
【請求項10】
p53へのS100の結合を阻害する方法であって、
S100およびp53を発現する細胞を、請求項7において規定される式(I)〜(XIII)のうちのいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩と接触させる工程、
を包含する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、前記化合物が、ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロ−アニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2−イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシ−フェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3,ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸である、方法。
【請求項13】
癌を処置するための方法であって、
請求項1または3の方法により同定される化合物の有効量を、癌を保有する被験体に投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項14】
癌を処置するための方法であって、
請求項7において規定される式(I)〜(XIII)のいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩の有効量を、癌を保有する被験体に投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記化合物が、ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロ−アニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシフェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3,ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸である、方法。
【請求項16】
請求項13または14に記載の方法であって、前記癌が、黒色腫、星状細胞腫および神経膠腫からなる群より選択される、方法。
【請求項17】
請求項1または3の方法により同定される化合物と、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む、抗癌組成物。
【請求項18】
請求項7において規定される式(I)−(XIII)のうちのいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む、抗癌組成物。
【請求項19】
抗癌組成物であって、
化合物ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシフェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3,ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸と、
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と、
を含む、抗癌組成物。
【請求項1】
p53へのS100の結合を阻害する化合物を同定する方法であって、
S100とp53とを試験化合物の存在下で接触させる工程、および
p53へのS100の結合の阻害についてアッセイする工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項3】
p53を活性化する化合物を同定する方法であって、
試験化合物を、S100を発現する細胞と接触させる工程、および
S100の過剰発現についてアッセイする工程、
を包含し、該過剰発現は、p53活性化を示す、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項5】
p53を活性化する方法であって、
S100およびp53を発現する細胞を、請求項1または請求項3の方法により同定される化合物と接触させる工程、
を包含する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項7】
p53を活性化する方法であって、
S100およびp53を発現する細胞を、式(I)〜(XIII)のいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩と接触させる工程、
を包含し、
式(I)は
【化1】
であり、
式(I)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
Xは、1〜8個の炭素原子を有するアルキルであり、そして
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり;
式(II)は
【化2】
であり、式(II)において、Y1およびY2は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R11、R12、およびR13は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、メチルエステル、フェニルケトン、アリールエーテル、アリールチオ、アリールメチレン、酸素、カルボニル、カルボキシレート、エチレン、アミド、エステル、チオエステル、およびCZnH3−nからなる群より独立して選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり、そして
必要に応じてR11とR12と、またはR12とR13とは、C、N、O、またはSを含む5員縮合芳香環を形成し得;
式(III)は
【化3】
であり、式(III)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8およびY9は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトンおよびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、イミン、エチレン、アミド、エステル、およびチオエステルからなる群より選択され、そして
該フェニル芳香環のうちの1つ以上は、該芳香環のうちの1つ以上の1〜3個の炭素原子をN原子で置換することによって、縮合芳香環、ヘテロ芳香環、または縮合芳香環によって置換され得、
式(IV)は
【化4】
であり、式(IV)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトンおよびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり、
R15は、窒素またはNOであり、そして
R16は、負に荷電した官能基であり;
式(V)は
【化5】
であり、式(V)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1およびR2は、同じであってもまたは異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり;
式(VI)は
【化6】
であり、式(VI)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、およびY9は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R5およびR6は、各々(CH2)n1であり、(CH2)n1においてn1は0〜3であり、かつ該(CH2)n1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、ベンズアミジン、フェニル環に連結した1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZ1nH3−nからなる群より選択される要素に連結されており、該CZ1nH3−nにおいて、Z1は、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、およびsec−ブチルからなる群より選択され、nは、1〜3であり、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、そして
R7およびR8は、各々、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、およびsec−ブチル、およびCZ1nH3−nからなる群より選択され、CZ1nH3−nにおいて、Z1は、ハロゲンであり、nは、1〜3であり;
式(VII)は
【化7】
であり、式(VII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1、R2およびR3は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり;
式(VIII)は
【化8】
であり、式(VIII)において、Y1、Y2、Y3、およびY4は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され;
式(IX)は
【化9】
であり、式(IX)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、
R9は、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルからなる群より選択され、および
R10は、負に荷電した官能基であり;
式(X)は
【化10】
であり、式(X)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、
式(XI)は
【化11】
であり、式(XI)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY1lは、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、アミン、1〜3個の隣接するアミン、グアニジン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、
式(XII)は
【化12】
であり、式(XII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり;そして
式(XIII)は
【化13】
であり、式(XIII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1、R2およびR3は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択される、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、前記化合物が、ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2−イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシ−フェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸からなる群より選択される、方法。
【請求項10】
p53へのS100の結合を阻害する方法であって、
S100およびp53を発現する細胞を、請求項7において規定される式(I)〜(XIII)のうちのいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩と接触させる工程、
を包含する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、前記化合物が、ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロ−アニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2−イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシ−フェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3,ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸である、方法。
【請求項13】
癌を処置するための方法であって、
請求項1または3の方法により同定される化合物の有効量を、癌を保有する被験体に投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項14】
癌を処置するための方法であって、
請求項7において規定される式(I)〜(XIII)のいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩の有効量を、癌を保有する被験体に投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記化合物が、ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロ−アニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシフェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3,ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸である、方法。
【請求項16】
請求項13または14に記載の方法であって、前記癌が、黒色腫、星状細胞腫および神経膠腫からなる群より選択される、方法。
【請求項17】
請求項1または3の方法により同定される化合物と、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む、抗癌組成物。
【請求項18】
請求項7において規定される式(I)−(XIII)のうちのいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む、抗癌組成物。
【請求項19】
抗癌組成物であって、
化合物ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシフェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3,ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸と、
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と、
を含む、抗癌組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
p53へのS100の結合を阻害する化合物を同定する方法であって、
S100とp53とを試験化合物の存在下で接触させる工程、および
p53へのS100の結合の阻害についてアッセイする工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項3】
p53を活性化する化合物を同定する方法であって、
試験化合物を、S100を発現する細胞と接触させる工程、および
S100の過剰発現についてアッセイする工程、
を包含し、該過剰発現は、p53活性化を示す、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項5】
p53を活性化する方法であって、
S100およびp53を発現する細胞を、請求項1または請求項3の方法により同定される化合物と接触させる工程、
を包含する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項7】
p53を活性化する方法であって、
S100およびp53を発現する細胞を、式(I)〜(XIII)のいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩と接触させる工程、
を包含し、
式(I)は
【化1】
であり、
式(I)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
Xは、1〜8個の炭素原子を有するアルキルであり、そして
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり;
式(II)は
【化2】
であり、式(II)において、Y1およびY2は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R11、R12、およびR13は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、メチルエステル、フェニルケトン、アリールエーテル、アリールチオ、アリールメチレン、酸素、カルボニル、カルボキシレート、エチレン、アミド、エステル、チオエステル、およびCZnH3−nからなる群より独立して選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり、そして
必要に応じてR11とR12と、またはR12とR13とは、C、N、O、またはSを含む5員縮合芳香環を形成し得;
式(III)は
【化3】
であり、式(III)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8およびY9は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトンおよびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、イミン、エチレン、アミド、エステル、およびチオエステルからなる群より選択され、そして
該フェニル芳香環のうちの1つ以上は、該芳香環のうちの1つ以上の1〜3個の炭素原子をN原子で置換することによって、縮合芳香環、ヘテロ芳香環、または縮合芳香環によって置換され得、
式(IV)は
【化4】
であり、式(IV)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトンおよびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり、
R15は、窒素またはNOであり、そして
R16は、負に荷電した官能基であり;
式(V)は
【化5】
であり、式(V)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1およびR2は、同じであってもまたは異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは1〜3であり;
式(VI)は
【化6】
であり、式(VI)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、およびY9は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R5およびR6は、各々(CH2)n1であり、(CH2)n1においてn1は0〜3であり、かつ該(CH2)n1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、ベンズアミジン、フェニル環に連結した1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZ1nH3−nからなる群より選択される要素に連結されており、該CZ1nH3−nにおいて、Z1は、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、およびsec−ブチルからなる群より選択され、nは、1〜3であり、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、そして
R7およびR8は、各々、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、およびsec−ブチル、およびCZ1nH3−nからなる群より選択され、CZ1nH3−nにおいて、Z1は、ハロゲンであり、nは、1〜3であり;
式(VII)は
【化7】
であり、式(VII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1、R2およびR3は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり;
式(VIII)は
【化8】
であり、式(VIII)において、Y1、Y2、Y3、およびY4は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され;
式(IX)は
【化9】
であり、式(IX)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、
R9は、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルからなる群より選択され、および
R10は、負に荷電した官能基であり;
式(X)は
【化10】
であり、式(X)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、
式(XI)は
【化11】
であり、式(XI)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY1lは、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、アミン、1〜3個の隣接するアミン、グアニジン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択され、
式(XII)は
【化12】
であり、式(XII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、およびY7は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、そして
R1は、1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり;そして
式(XIII)は
【化13】
であり、式(XIII)において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10は、各々、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ハロゲン、メチルエーテル、メチルケトン、およびメチルエステルからなる群より独立して選択され、
R1、R2およびR3は、同じであっても異なっていてもよく、かつ1〜3個の隣接するアミジン、1〜3個の隣接するアミン、1〜3個の隣接するグアニジン、アミド、尿素、カルバミド、カルボネート、カルボキシレート、無水物、チオアミド、チオ尿素、チオカルバミド、チオカルボネート、チオ無水物、ヒドロキシル、エステル、およびCZnH3−nからなる群より選択され、CZnH3−nにおいて、Zはハロゲンであり、nは、1〜3であり、そして
X2は、イオウ、SO2、SO、NHSO2、メチレン、酸素、カルボニル、エチレン、アミド、イミン、エステルおよびチオエステルからなる群より選択される、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、前記化合物が、ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2−イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシ−フェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸からなる群より選択される、方法。
【請求項10】
p53へのS100の結合を阻害する方法であって、
S100およびp53を発現する細胞を、請求項7において規定される式(I)〜(XIII)のうちのいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩と接触させる工程、
を包含する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記S100がS100Bである、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、前記化合物が、ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロ−アニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2−イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシ−フェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3,ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸である、方法。
【請求項13】
癌を処置するための方法であって、
請求項1または3の方法により同定される化合物の有効量を、癌を保有する被験体に投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項14】
癌を処置するための方法であって、
請求項7において規定される式(I)〜(XIII)のいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩の有効量を、癌を保有する被験体に投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記化合物が、ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロ−アニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシフェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3,ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸である、方法。
【請求項16】
請求項13または14に記載の方法であって、前記癌が、黒色腫、星状細胞腫および神経膠腫からなる群より選択される、方法。
【請求項17】
請求項1または3の方法により同定される化合物と、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む、抗癌組成物。
【請求項18】
請求項7において規定される式(I)−(XIII)のうちのいずれかにより示される化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む、抗癌組成物。
【請求項19】
抗癌組成物であって、
化合物ペンタミジンイセチオネート;{[(2,3−ジクロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;{[(2−ベンゾイル−4−クロロアニリノ)(イミノ)メチル]アミノ}メタンイミドアミド;2−[2−(3−ニトロフェニル)−2−オキソエトキシ]−5−(トリ−フルオロメチル)ピリジニウム−1−オレエート;2−クロロ−5−[N’(5−(3−クロロ−4−ベンゾイック)−フラン−2イルメチレン−ヒドラジノ]−安息香酸;4−(4−{[(1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)アミノ]スルホニル}アニリノ)−4−オキソブタン酸;1,2−(3−メチルチオトリアジン),3,4−フェニル,6−[(2−メトキシフェノキシ)酢酸]モルホリン;4−{[2−(3,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアジン−6−イル)−アセチル]−ヒドラゾノメチル}−安息香酸;2−(3−tert−ブチルカルバモイル−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸;5−{[2−(3−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボニル]−アミノ}−イソフタル酸;1−エチル−6−フルオロ−7−[N’−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸;(3−ベンゾイック)−1,3,ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−スルファニル−4−安息香酸;および2−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルカルバモイル)−フェニル]−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−カルボン酸と、
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と、
を含む、抗癌組成物。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2006−508330(P2006−508330A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−581715(P2003−581715)
【出願日】平成15年3月28日(2003.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2003/008678
【国際公開番号】WO2003/084475
【国際公開日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【出願人】(502399237)ユニバーシティ オブ メリーランド,ボルチモア (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年3月28日(2003.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2003/008678
【国際公開番号】WO2003/084475
【国際公開日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【出願人】(502399237)ユニバーシティ オブ メリーランド,ボルチモア (5)
【Fターム(参考)】
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