説明

TFTアレイの欠陥検出方法およびTFTアレイの欠陥検出装置

【課題】TFTアレイのソース・ドレイン間のWeak-SD欠陥と呼ばれる抵抗を介して導通状態にある欠陥を、保持時間を長くすることなく短時間で検出する。
【解決手段】TFT基板のTFTアレイに対して電圧を印加し、電子線照射により得られる二次電子を検出してTFTアレイの欠陥を検出するTFTアレイの欠陥検出において、TFTのソースおよび/又はゲートへの電圧を印加する電圧パターンにおいて、電圧値および/又は印加時期によってTFTの内部リークによるリーク電流を増加させる特性パラメータに設定する。特性パラメータの設定において電圧値および/又は印加時期を設定することによってTFTの内部リークによるリーク電流を増加させ、増加させたリーク電流によってTFTの内部欠陥を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液晶基板等の製造過程等で行われるTFTアレイ検査工程に関し、TFTアレイのソース・ドレイン間の短絡検出、特に、Weak-SD欠陥と呼ばれる抵抗を介して導通状態にある欠陥の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶基板や有機EL基板等のTFTアレイが形成された半導体基板の製造過程では、製造過程中にTFTアレイ検査工程を含み、このTFTアレイ検査工程において、TFTアレイの欠陥検査が行われている。
【0003】
TFTアレイは、例えば液晶表示装置のピクセル(画素電極)を選択するスイッチング素子として用いられる。TFTアレイを備える基板は、例えば、走査線として機能する複数本のゲートラインが平行に配設されると共に、信号線として記載する複数本のソースラインがゲートラインに直交して配設され、両ラインが交差する部分の近傍にTFT(Thin film transistor)が配設され、このTFTにピクセル(画素電極)が接続される。
【0004】
液晶表示装置は、上記したTFTアレイが設けられた基板と対向基板との間に液晶層を挟むことで構成され、対向基板が備える対向電極と画素電極との間に画素容量が形成される。画素電極には、上記の画素容量以外に付加容量(Cs)が接続される。この付加容量(Cs)の一方は画素電極に接続され、他方は共通ラインあるいはゲートラインに接続される。共通ラインに接続される構成のTFTアレイはCs on Com型TFTアレイと呼ばれ、ゲートラインに接続される構成のTFTアレイはCs on Gate型TFTアレイと呼ばれる。
【0005】
このTFTアレイにおいて、走査線(ゲートライン)や信号線(ソースライン)の断線、走査線(ゲートライン)と信号線(ソースライン)の短絡、ピクセル(画素)を駆動するTFTの特性不良による画素欠陥等の欠陥検査を、例えば、対向電極を接地し、ゲートラインの全部あるいは一部に、例えば、−15V〜+15Vの直流電圧を所定間隔で印加し、ソースラインの全部あるいは一部に検査信号を印加することによって行っている。(例えば、特許文献1の従来技術。)
【0006】
TFTアレイ検査装置は、TFTアレイに検査用の駆動信号を入力し、そのときの電圧状態を検出することで欠陥検出を行うことができる。
【0007】
TFTアレイには、その製造プロセス中に様々な欠陥が発生する可能性がある。図7はTFTアレイを構成する各要素部分で生じる欠陥を説明するための図である。図7中の破線で示す各箇所において、ピクセル12oeとソースライン15eとの間の短絡欠陥(S−Dshort)を示し、ピクセル12eoとゲートライン14eとの間に短絡欠陥(G−Dshort)を示し、ピクセル12eoとCsラインとの間に短絡欠陥(D−Csshort)を示している。なお、図7中の符号13は、ピクセル(画素電極)とCsラインとの間の付加容量である。
【0008】
電子線を用いたTFTアレイ検査装置では、ピクセル(ITO電極)に対して電子線を照射し、この電子線照射によって放出される二次電子を検出することによって、ピクセル(ITO電極)に印加された電圧波形を二次電子波形に変えて、信号によるイメージ化し、これによってTFTアレイの電気的検査を行っている。
【0009】
前記図7に示すような各ピクセルに生じる欠陥を検査する駆動パターンとしては、例えば、図8に示すような検査パターンがある。なお、図8(a),(b)はゲート信号を示し、図8(c),(d)はソース信号を示している。
【0010】
検査用の駆動パターンは、一ゲート周期内に、ゲートをオンとした後に全ピクセルを+電圧に保持する+電圧保持時間と、次にゲートをオンとした後にピクセルを−電圧に保持する−電圧保持時間とを備える。+電圧保持時間では全ピクセルに+電圧が印加され、−電圧保持時間では全ピクセルに−電圧が印加される。欠陥検出は、+電圧保持時間で検出されるピクセル電圧と−電圧保持時間で検出されるピクセル電圧とを加算することによって欠陥検出を行っている。
【0011】
図8(a)〜(d)に示す駆動パターンは+電圧保持時間と−電圧保持時間との時間比率を1:1とする駆動パターン例であり、駆動パターンの一ゲート周期は例えば16msecとし、+電圧保持時間と−電圧保持時間の各保持時間は8msecとしている。
【0012】
このゲート信号とソース信号との組み合わせによって、TFTアレイの全ピクセルに正電圧(ここでは10v)と負電圧(ここでは−10v)を交互に印加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−307192号公報
【特許文献2】WO2010/089856
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
TFTアレイに発生する電気的欠陥は、欠陥種によって+電圧保持時間で検出される欠陥と−電圧保持時間で検出される欠陥があることが知られている。例えば、SD欠陥は+電圧保持時間で検出され易く、DCs欠陥は−電圧保持時間で検出され易い。
【0015】
従来使用される駆動パターンでは、一ゲート周期内に+電圧保持時間と−電圧保持時間を備え、+電圧保持時間で検出されるピクセル電圧と−電圧保持時間で検出されるピクセル電圧とを加算することによって欠陥検出を行っている。TFTアレイ検査は、一ゲート周期内を複数のフレームに分割し、各フレームの時間を単位として全ピクセルを走査してピクセル電圧を検出する。通常、一ゲート周期は10フレームを含んでおり、各フレームにおいて全ピクセルを走査することによって全部で10個の検出データが取得される。
【0016】
このような駆動パターンを用いた欠陥検出では、欠陥検出に寄与しない駆動パターン部分がピクセル電圧に与える影響によって欠陥検出率が低下するという問題があり、また、ピクセルの電圧変化が駆動パターンの印加電圧の保持時間に依存することによって、欠陥検出率が低下するという問題がある。
【0017】
また、TFTアレイの欠陥種の中には、ピクセルの電圧変化が駆動パターンの印加電圧の保持時間に依存する場合がある。このような欠陥種を検出する場合には、従来のように一ゲート周期内で+電圧保持時間と−電圧保持時間を切り換えて電圧を印加すると、保持時間が短いため欠陥を検出するに十分な電圧変化が得られず、欠陥検出の検出効率が低下する。
【0018】
ピクセルの電圧変化が駆動パターンの印加電圧の保持時間に依存する欠陥種として、Weak-SD欠陥と呼ばれる場合があるものがある。図7において、ピクセル12ooに接続されるTFTはWeak-SD欠陥がある例を示している。このWeak-SD欠陥は、ピクセルとソースラインとの間の短絡欠陥(S−Dshort)において、ピクセルの画素電極とソースライン間が抵抗を介して導通状態にある欠陥種であり、抵抗によってリーク電流が小さいためピクセルの電圧降下が小さいため欠陥検出に長い時間を要する。したがって、このようなWeak-SD欠陥は、保持時間が短い場合には欠陥検出が困難である。
【0019】
Weak-SD欠陥を検出する方法として、保持時間を長くすることが知られている(特許文献2参照)。図9は、長い保持時間によってWeak-SD欠陥を検出する例を説明するための信号パターンを示している。
【0020】
図9は、本発明の1ゲート周期内における検査信号の信号パターンを示している。図9に示す検査信号の信号パターンでは、例えば、ゲートライン14(14o(図8(a)のGo)、14e(図8(b)のGe))のオンパルス信号を1ゲート周期に第1のフレームの初期段階で出力し、このときのソースライン15(15o(図8(c)のSo)、15e(図8(d)のSe)に印加される電圧(+10V)を、各交差部分のピクセル(画素)12(12oo,12oe,12eo,12ee)に、各TFT11(11oo,11oe,11eo,11ee)を通して印加する。
【0021】
1ゲート周期(図7の1〜10で示すフレーム期間)は任意の時間幅とすることができるが、一例として、例えば16msecとすることができる。図9の例では、説明の便宜から1ゲート周期を1〜10の10個のフレームとし、この全フレームに亘ってピクセル(画素)に+電圧(+10V)を保持させている。
【0022】
図9は全フレームに亘ってピクセル(画素)に+電圧を保持させたときに、ピクセルで検出される信号波形例を示し、図10はピクセルの電圧状態を示している。
【0023】
図9(f)は正常ピクセルの場合のピクセル波形を示し、図10(a)はこのときのピクセルの電圧状態を示している。正常ピクセルでは、保持されている+電圧(10V)が検出される。図9(g),(h)は欠陥ピクセルの場合のピクセル波形を示し、図10(b),(c)はこのときのピクセルの電圧状態を示している。
【0024】
図9(g)はピクセルの画素電極とソースライン間がショートしたSD欠陥の場合のピクセル波形を示している。このSD欠陥では、ソースラインの電圧(−14V)によってピクセル波形電圧は(−14V)となる。図10(b)では、正常ピクセルは(+10V)を示し、SD欠陥ピクセルは(−14V)を示している。
【0025】
図9(h)はピクセルの画素電極とソースライン間の絶縁不良の欠陥がある場合のピクセル波形を示している。図10(c)では、正常ピクセルは(+10V)を示し、絶縁不良ピクセルは(+10V)から(−14V)の間の電圧を示している。この絶縁不良はWeak-SD欠陥と称され、画素電極とソースライン間が抵抗を有して導通状態にある。
【0026】
このWeak-SD欠陥のような絶縁不良欠陥では、ソースラインの電圧(−14V)の影響によって、ピクセル波形電圧は(+10V)から徐々に(−14V)に向かって電圧が降下する。全フレームに亘ってピクセル(画素)に+電圧を保持させることによって、1ゲート周期の長い時間に亘る電圧変化を検出することによって、ピクセル波形電圧の変化が小さい場合であっても欠陥検出を行う。
【0027】
上記した、保持時間を長くすることによってWeak-SD欠陥を検出する方法では、検出時間が長くなるという問題がある。
【0028】
また、TFTアレイに光照射を行い、TFTのトランジスタ部のアモルファスシリコンの光起電力効果を利用するものの知られている。この光起電力効果を利用する検出方法では、欠陥ピクセルが正常と判断される場合があるほか、光照射ユニットを別途設置する必要があるため実用に至っていない。
【0029】
また、本発明の出願人は、Weak-SD欠陥の要因として、ソース側の配線とドレイン側のピクセルとの間の絶縁不良の他に、ソースとドレインとの間に設けられたTFTの内部欠陥があることを見出した。このTFTの内部欠陥を検出する方法は知られていない。
【0030】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、TFTアレイのソース・ドレイン間の短絡検出、特に、Weak-SD欠陥と呼ばれる抵抗を介して導通状態にある欠陥を検出することを目的とする。
【0031】
より詳細には、保持時間を長くすることなく、Weak-SD欠陥を短時間で検出することを目的とする。
【0032】
また、TFTの内部欠陥に基づいて発生するWeak-SD欠陥を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、TFT基板のTFTアレイに対して電圧を印加し、電子線照射により得られる二次電子を検出してTFTアレイの欠陥を検出するTFTアレイの欠陥検出において、TFTのソースおよび/又はゲートへの電圧を印加する電圧パターンにおいて、電圧値および/又は印加時期によってTFTの内部リークによるリーク電流を増加させる特性パラメータに設定する。この特性パラメータの設定によるリーク電流の増加によってピクセルの電圧降下が顕著となり、Weak-SD欠陥の検出が容易となる。
【0034】
本発明のTFTアレイの欠陥検出は、特性パラメータの設定において電圧値および/又は印加時期を設定することによってTFTの内部リークによるリーク電流を増加させ、増加させたリーク電流によってTFTの内部欠陥を検出する。
【0035】
特性パラメータはTFTの電気的特性を表すパラメータである。第1の態様では、ゲート・ソース間電圧に対するドレイン電流特性であるFETの伝達特性においてゲート・ソース間電圧を特性パラメータとし、ゲート・ソース間電圧を設定することによって、欠陥を検出するために測定するリーク電流を増加させる。
【0036】
また、第2の態様では、ゲートとソース間におけるダイオードの逆方向バイアス時の電圧電流特性において、逆方向バイアス電圧の電圧値と印加時間を特性パラメータとする。第2の態様は第1の形態および第2の形態を含む。第1の形態は逆方向バイアス電圧の印加時間を増大させることによって、欠陥を検出するために測定するリーク電流を増加させ、第2の形態は逆方向バイアス電圧の電圧値を増大させることによって、欠陥を検出するために測定するリーク電流を増加させる。
【0037】
本発明の第1の態様および第2の態様は、TFTの電気的特性を特定する特性パラメータを設定することによって欠陥を検出するために測定するリーク電流を増加させることでTFT欠陥の検出を容易とするという技術的特徴において共通し、特に、ゲート・ソース間電圧を特性パラメータとして設定する技術的特徴を共通して備えるものである。
【0038】
[本発明のTFTアレイの欠陥検出方法]
本発明の第1の態様によるTFTアレイの欠陥検出方法は、TFTのソースに印加するソース電圧をTFTのゲートに印加するゲート電圧よりも高電圧に設定してTFTをオフ状態とし、オフ状態中のドレイン電圧の保持期間において、TFTのゲート・ソース間電圧とドレイン電流との特性において、ソース電圧をゲート電圧との電圧差を、ゲート・ソース間電圧の特性パラメータがゲート・ソース間のしきい値電圧あるいは零電圧に近似する電圧となるように設定する。
【0039】
TFTのゲート・ソース間電圧とドレイン電流との特性において、ドレイン電流はゲート・ソース間電圧を特性パラメータとして変化する。本発明の第1の態様は、正常なTFTの特性パラメータと、欠陥を有するTFTの特性パラメータとの相違を利用し、検出対象のTFTのゲート・ソース間電圧を、正常なゲート・ソース間のしきい値電圧(ピンチ・オフ電圧)あるいは零電圧に近似する電圧に設定することによって、TFTに内部リークがある場合に流れるドレイン電流を内部リークによるリーク電流として検出する。
【0040】
正常なTFTでは、FETの伝達特性において設定した特性パラメータではリーク電流は検出されないが、内部欠陥を有するTFTでは、特性パラメータのゲート・ソース間電圧をしきい値電圧(ピンチ・オフ電圧)あるいは零電圧に近似する電圧に設定することによって、リーク電流が流れる。
【0041】
リーク電流によってピクセルの電圧降下率を増大させることができるため、TFTの欠陥を短時間で検出することができる。
【0042】
なお、TFTアレイが備える各TFTのFETの伝達特性において、各しきい値電圧(ピンチ・オフ電圧)の個体差の偏差が少なく、一つのしきい値で定めることができる場合には、しきい値電圧(ピンチ・オフ電圧)によって特定パラメータであるゲート・ソース間電圧は設定することができる。
【0043】
また、各しきい値電圧(ピンチ・オフ電圧)の個体差の偏差が大きく、一つのしきい値で定めることができない場合には、ゲート・ソース間電圧差が零電圧によって特定パラメータであるゲート・ソース間電圧を設定することができる。
【0044】
本発明の第2の態様は、ゲートとソース間におけるダイオードの逆方向バイアス時の電圧電流特性において、逆方向バイアス電圧の電圧値と印加時間を特性パラメータとし、第1の形態は逆方向バイアス電圧の印加時間を増大させ、第2の形態は逆方向バイアス電圧の電圧値を増大させ、欠陥を検出するために測定するリーク電流を増加させる。
【0045】
本発明の第2の態様において、第1の形態によるTFTアレイの欠陥検出方法は、TFTのソースに印加するソース電圧をTFTのゲートに印加するゲート電圧よりも高電圧に設定してTFTをオフ状態とし、オフ状態中のドレイン電圧の保持期間前において、ソース電圧の印加により前記TFTのゲート・ソース間電圧の特性パラメータを逆バイアスに設定し、ソース電圧の印加期間の延長によって逆方向バイアス状態の保持期間を延長させ、TFTの内部リークによるリーク電流を増加させる。
【0046】
また、第2の形態によるTFTアレイの欠陥検出方法は、TFTのソースに印加するソース電圧をTFTのゲートに印加するゲート電圧よりも高電圧に設定してTFTをオフ状態とし、オフ状態中のドレイン電圧の保持期間前において、ソース電圧とゲート電圧との電圧差によりゲート・ソース間電圧の特性パラメータを逆方向バイアスに設定し、逆方向バイアスの電圧を降伏電圧の範囲内で増大させ、TFTの内部リークによるリーク電流を増加させる。
【0047】
さらに、第2の形態において、オフ状態のドレイン電圧の保持期間前におけるソース電圧の印加時期において、ソース電圧の増加および/又はゲートの低下によって、逆方向バイアスの電圧を増加させる。
【0048】
TFTにおいて、ゲート・ソース間におけるダイオード特性において、ゲート電圧をソース電圧よりも低くすることによって逆方向バイアスが設定される。
【0049】
この逆方向バイアスでは、ゲート・ソース間電圧の印加時間に応じて逆方向電流であるリーク電流の総電流量が増大し、また、ゲート・ソース間電圧が大きいほど逆方向電流であるリーク電流が増大する。
【0050】
本発明の第2の態様において、第1の形態では逆方向バイアスの印加時間を長くすることでリーク電流を増大させ、第2の形態では逆方向バイアスの電圧差を大きくすることでリーク電流を増大させる。
【0051】
[本発明のTFTアレイの欠陥検出装置]
本発明のTFTアレイの欠陥検出装置は、TFT基板のTFTアレイに対して電圧を印加し、電圧印加による電圧状態を電子線照射により得られる二次電子によって検出し、TFTアレイの欠陥を検査するTFTアレイの欠陥検出装置において、TFT基板に電子線を照射する電子線源と、TFT基板から放出される二次電子を検出する検出器と、TFT基板のTFTアレイに印加する検査信号を生成する検査信号生成部と、検出器の検出信号に基づいてTFTアレイの欠陥を検出する欠陥検出部とを備える。
【0052】
検査信号生成部は、TFTのソースおよび/又はゲートに印加する電圧において、印加電圧の電圧値および/又は印加時期をパターンパラメータとする電圧パターンを有する検査信号を生成する。検査信号は、TFTにおいてTFTの内部リークによるリーク電流を増加させる特性パラメータに設定する。
【0053】
欠陥検出部は、検出信号の印加によってピクセルに保持された保持電圧に基づいて、増加したリーク電流によるピクセルの電圧降下を検出することによってTFTアレイの欠陥検出を行う。
【0054】
本発明のTFTアレイの欠陥検出装置は、検出方法と同様に、電圧値および/又は印加時期による特性パラメータの設定において、第1の態様では、ゲート・ソース間電圧に対するドレイン電流特性であるFETの伝達特性においてゲート・ソース間電圧を特性パラメータとし、ゲート・ソース間電圧を設定することによって、欠陥を検出するために測定するリーク電流を増加させ、第2の態様では、ゲートとソース間におけるダイオードの逆方向バイアス時の電圧電流特性において、逆方向バイアス電圧の電圧値と印加時間を特性パラメータとする。
【0055】
第2の態様において、第1の形態では逆方向バイアス電圧の印加時間を増大させることによって、欠陥を検出するために測定するリーク電流を増加させ、第2の形態では逆方向バイアス電圧の電圧値を増大させることによって、欠陥を検出するために測定するリーク電流を増加させる。
【0056】
第1の態様および第2の態様は、TFTの電気的特性を特定する特性パラメータを設定することによって欠陥を検出するために測定するリーク電流を増加させることでTFT欠陥の検出を容易とするという技術的特徴において共通し、特に、ゲート・ソース間電圧を特性パラメータとして設定する技術的特徴を共通して備えるものである。
【0057】
本発明の第1の態様によるTFTアレイの欠陥検出装置において、電圧パターンは、TFTのソースに印加するソース電圧を前記TFTのゲートに印加するゲート電圧よりも高電圧に設定してTFTをオフ状態とし、オフ状態中のドレイン電圧の保持期間において、ソース電圧を前記ゲート電圧との電圧差を、TFTのゲート・ソース間電圧とドレイン電流との特性において、ゲート・ソース間電圧の特性パラメータがゲート・ソース間のしきい値電圧あるいは零電圧に近似する電圧となるように設定する。
【0058】
第1の態様において、電圧パターンは、TFTのオフ状態中のドレイン電圧の保持期間において、ソース電圧を、ゲート電圧よりも高く、かつゲート電圧に近似した電圧に設定する電圧設定し、あるいは、ソース電圧よりも低く、かつソース電圧に近似した電圧に設定するように電圧設定し、ゲート・ソース間電圧の特性パラメータをゲート・ソース間のしきい値電圧あるいは零電圧に近似する電圧となるように設定する。
【0059】
第2の態様において、電圧パターンは、TFTのソースに印加するソース電圧をTFTのゲートに印加するゲート電圧よりも高電圧に設定してTFTをオフ状態とし、オフ状態中のドレイン電圧の保持期間前において、ソース電圧と前記ゲート電圧との電圧差によりゲート・ソース間電圧の特性パラメータを逆方向バイアスに設定し、逆方向バイアスの電圧を降伏電圧以内の範囲で増加させ、TFTの内部リークによるリーク電流を増加させる。
【0060】
第2の態様のTFTアレイの欠陥検出装置において、第1の形態の電圧パターンは、TFTのソースに印加するソース電圧をTFTのゲートに印加するゲート電圧よりも高電圧に設定してTFTをオフ状態とし、オフ状態中のドレイン電圧の保持期間前において、ソース電圧の印加によりTFTのゲート・ソース間電圧の特性パラメータを逆バイアスに設定し、ソース電圧の印加期間の延長によって前記逆方向バイアス状態の保持期間を延長させ、TFTの内部リークによるリーク電流を増加させる。
【0061】
本発明の第2の態様のTFTアレイの欠陥検出装置において、第2の形態の電圧パターンは、オフ状態のドレイン電圧の保持期間前におけるソース電圧の印加時期において、ソース電圧の増加および/又は前記ゲートの低下によって、逆方向バイアスの電圧を増加させる。
【発明の効果】
【0062】
以上説明したように、本発明のTFTアレイの欠陥検出方法およびTFTアレイの欠陥検出装置によれば、TFTのソースおよび/又はゲートに印加する電圧値や印加時期によってTFTの内部リークによるリーク電流を増加させる特性パラメータに設定し、この設定によってリーク電流を増加させることによってピクセルの電圧降下を顕著として検出を容易とすることによって、Weak-SD欠陥と呼ばれる抵抗を介して導通状態にある欠陥を、保持時間を長くすることなく検出することができ、また、TFTの内部欠陥に基づいて発生するWeak-SD欠陥を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のTFTアレイの欠陥検出装置の概略図である。
【図2】本発明のTFTアレイの欠陥検出の第1の態様を説明するための図である。
【図3】本発明のTFTアレイの欠陥検出の第1の態様を説明するための図である。
【図4】本発明のTFTアレイの欠陥検出の第2の態様の第1の形態を説明するための図である。
【図5】本発明のTFTアレイの欠陥検出の第2の態様の第1の形態を説明するための図である。
【図6】本発明のTFTアレイの欠陥検出の第2の態様の第2の形態を説明するための図である。
【図7】TFTアレイを構成する各要素部分で生じる欠陥を説明するための図である。
【図8】ピクセルの電圧状態を示す図である。
【図9】Weak-SD欠陥を検出する従来例を説明するための信号パターンの図である。
【図10】ピクセルの電圧状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。以下、本発明のTFTアレイの欠陥検出装置の構成例について図1を用いて説明し、本発明のTFTアレイの欠陥検出の各態様について図2〜図6を用いて説明する。
【0065】
図2,3を用いて本発明の第1の態様を説明し、図4〜図6を用いて本発明の第2の態様を説明する。第2の態様については、第1の形態を図4,5を用いて説明し、第2の形態を図6を用いて説明する。
【0066】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0067】
図1は、本発明のTFTアレイの欠陥検出装置の概略図である。
TFTアレイの欠陥検出装置1は、TFT基板10にアレイ欠陥検出用の検査信号を生成する検査信号生成部4と、検査信号生成部4で生成した検査信号をTFT基板10に印加するプローバ8と、TFT基板の電圧印加状態を検出する機構(2,3,5)と、検出信号に基づいてTFTアレイの欠陥を検出する欠陥検出部6を備える。
【0068】
プローバ8は、プローブピン(図示していない)が設けられたプローバフレームを備える。プローバ8は、TFT基板10上に載置する等によってプローブピンをTFT基板10上に形成した電極に接触させ、TFTアレイに検査信号を印加する。
【0069】
TFT基板の電圧印加状態を検出する機構は種々の構成とすることができる。図1に示す構成は、電子線による検出構成であり、TFT基板10上に電子線を照射する電子線源2、照射された電子線によってTFT基板10から放出される二次電子を検出する二次電子検出器3、二次電子検出器3の検出信号を信号処理してTFT基板10上の電位状態を検出する信号処理部5等を備える。
【0070】
電子線が照射されたTFTアレイは、印加された検査信号の電圧に応じた二次電子を放出するため、この二次電子を検出することによって、TFTアレイの電位状態を検出することができる。
【0071】
欠陥検出部6は、信号処理部5で取得したTFTアレイの電位状態に基づいて、正常状態における電位状態と比較することによってTFTアレイの欠陥を検出する。
【0072】
なお、ここでは、TFT基板の電圧印加状態を検出する機構(2,3,5)を用いてTFTアレイの欠陥を検出する構成例を示しているが、TFT基板がTFTアレイのみを備える段階の場合には、検査信号を印加する治具に液晶層や対向電極を設けることで一時的に液晶表示装置を構成して、上記のようにして欠陥検査を行っても良い。
【0073】
検査信号生成部4は、TFT基板10上に形成されるTFTアレイを駆動する検査信号の電圧パターンを生成する。この電圧パターンは、TFT欠陥によるリーク電流を増加させるようなTFTの電気的特性の特性パラメータを設定するものである。
【0074】
本発明の第1の態様では、ゲート・ソース間電圧に対するドレイン電流特性であるFETの伝達特性においてゲート・ソース間電圧を特性パラメータとし、ゲート・ソース間電圧を設定することによって、欠陥を検出するために測定するリーク電流を増加させる電圧パターンを生成する。
【0075】
本発明の第2の態様では、ゲートとソース間におけるダイオードの逆方向バイアス時の電圧電流特性において、逆方向バイアス電圧の電圧値と印加時間を特性パラメータとし、第1の形態では逆方向バイアス電圧の印加時間を増大させることによって、欠陥を検出するために測定するリーク電流を増加させ電圧パターンを生成し、第2の形態では逆方向バイアス電圧の電圧値を増大させることによって、欠陥を検出するために測定するリーク電流を増加させる電圧パターンを生成する。
【0076】
走査制御部9は、TFT基板10上のTFTアレイにおいて電子線を走査させるために、ステージ7や電子線源2を制御する。ステージ7は、載置するTFT基板10をXY方向に移動し、また、電子線源2はTFT基板10に照射する電子線をXY方向に振ることで、電子線の照射位置を移動させる。電子線の照射位置が検出位置となる。
【0077】
なお、上記したTFTアレイの欠陥検出装置の構成は一例であり、この構成に限られるものではない。
【0078】
[本発明の第1の態様]
本発明のTFTアレイの欠陥検出の第1の態様について図2,3を用いて説明する。
本発明の第1の態様は、特性パラメータの設定において電圧値および/又は印加時期を設定することによってTFTの内部リークによるリーク電流を増加させることで行うTFTの内部欠陥検出において、特性パラメータとしてTFTの電気的特性を表すパラメータを用い、ゲート・ソース間電圧に対するドレイン電流特性であるFETの伝達特性においてゲート・ソース間電圧を特性パラメータとし、ゲート・ソース間電圧を設定することによって、欠陥を検出するために測定するリーク電流を増加させる。
【0079】
図2(a),(b)は、TFTに印加する電圧パターンのソース電圧およびゲート電圧を表し、図2(c)はゲート・ソース間電圧(Vgs)を表している。また、図2(d)はFETの伝達特性を表す特性図であり、横軸をゲート・ソース間電圧Vgsとし、縦軸をドレイン電流Idとしている。なお、電圧パターンはTFTのドレインを通して画素電極に正の電圧+Vsを印加する場合を示している。
【0080】
電圧パターンは、ゲート電圧を+Vgとしてゲートをオン状態とするとともにソース電圧を+Vとして画素電極に正の電圧+Vsを印加する期間(図中の符号Aで示す)と、ソース電圧を+Vとしたままでゲート電圧−Vgとしてゲートをオフ状態とする期間(図中の符号Bで示す)と、ソース電圧を−Vとしゲート電圧−Vgとする期間(図中の符号Cで示す)を含む。
【0081】
期間Cは、ゲート電圧−Vgを印加することによってゲートをオフ状態とし、画素電極を印加された電圧に保持する。TFTに内部欠陥等によるWeak−SD欠陥がある場合には、ソースとドレイン間は大きな抵抗値で短絡した状態にあるため、期間Cにおいて、TFTを介してリーク電流が流れ、画素電極の電圧が降下する。この画素電極の電圧降下を検出することによってWeak−SD欠陥を検出することができる。
【0082】
本発明の第1の態様は、この期間Cにおいて、ソース電圧−Vsをゲート電圧−Vgよりも低電圧としてゲートをオフ状態とすると共に、ソース電圧−Vsをゲート電圧−Vgに近づけることによって、あるいは、ソース電圧−Vsとゲート電圧−Vgの差分をしきい値電圧Vgs(th)に近づけることによってリーク電流を増加させ、リーク電流を増加させることによって画素電極の電圧降下を速め、Weak−SD欠陥の検出時間を短縮する。なお、しきい値電圧Vgs(th)は、ピンチオフ電圧に相当する。
【0083】
図2(a)、(c)において、期間C中のC1はソース電圧−Vsが高い電圧−Vshである場合を示し、期間C中のC2はソース電圧−Vsがゲート電圧−Vgに近い場合を示している。
【0084】
図2(d)に示すFETの伝達特性において、符号A,B,C1,C2は、前記した各期間A,B,Cにおける動作点を示している。期間Aでは、ゲート・ソース間電圧Vgsはしきい値電圧Vgs(th)より大きいため(図2(c)中のA)、ゲート・ソース間電圧Vgsに対応したドレイン電流Idが流れ、画素電極はドレイン電流Idによって充電されソース電圧に応じた所定電圧となる。
【0085】
期間Bでは、ゲート・ソース間電圧Vgsはしきい値電圧Vgs(th)より小さいため(図2(c)中のB)、TFTはオフ状態となる。
【0086】
期間Cの電圧保持期間では、通常、TFTをオフ状態とするために、ソース電圧−Vsをゲート電圧−Vgよりも十分に大きくしてゲート・ソース間電圧Vgsをしきい値電圧Vgs(th)より小さくなるように設定する(図2(c)中のC1)。
【0087】
本発明の第1の態様では、TFTの伝達特性のしきい値電圧Vgs(th)の変動によってTFTの内部欠陥を検出する。TFTの伝達特性において、しきい値電圧Vgs(th)が設定されたゲート・ソース間電圧Vgsよりも大きい場合には、TFTはオフ状態にあるためドレイン電流Idは流れない。一方、しきい値電圧Vgs(th)が変動して、設定されたゲート・ソース間電圧Vgsよりも小さくなった場合には、ドレイン電流Idが流れる。図2(d)において、符号C1はしきい値電圧Vgs(th)がゲート・ソース間電圧Vgsよりも十分に大きい場合を示しており、しきい値電圧Vgs(th)の変動幅が大きいときにドレイン電流が流れる。
【0088】
しきい値電圧Vgs(th)の変動による電流は、ゲート・ソース間電圧Vgsとしきい値電圧Vgs(th)との差が小さいほど電流が流れ易くなる。図2(d)において、符号C2はソース電圧−Vsがゲート電圧−Vgに近い場合のゲート・ソース間電圧Vgsを示している。また、図2(d)において、破線はしきい値電圧Vgs(th)の変動したときの伝達特性を示している。
【0089】
本発明の第1の態様は、ゲート・ソース間電圧Vgsをしきい値電圧Vgs(th)に近づけることによって、しきい値電圧Vgs(th)の変動による電流検出を容易とする。
【0090】
また、TFTの特性のばらつきによってしきい値電圧Vgs(th)を特定することが困難である場合には、ゲート電圧とソース電圧の電圧差が零となるように、ゲート電圧およびソース電圧を設定することによって、しきい値電圧Vgs(th)の変動による電流検出を容易とすることもできる。ゲート電圧とソース電圧の電圧差はゲート・ソース間電圧Vgsであることから、上記した電圧設定は、ゲート・ソース間電圧Vgsを零に近づける場合と同様である。
【0091】
本発明の第1の態様では、ゲート電圧とソース電圧の何れか一方の電圧を他方の電圧に近づくように設定することによって、ゲート電圧とソース電圧の電圧差を零とすることができる。
【0092】
図3は本発明の第1の態様の電圧パターン例を示している。図3(a),(b)は、ソース電圧をゲート電圧に近づける例であり、図3(c),(d)は、ゲート電圧をソース電圧に近づける例である。
【0093】
図3(a)に示すソース電圧は、TFTをオフ状態とした電圧保持期間において、ソース電圧−Vsを図3(b)に示すゲート電圧−Vgよりも高電圧とした状態で、ゲート電圧−Vgに近い電圧に設定する例である。
【0094】
また、図3(d)に示すソース電圧は、TFTをオフ状態とした電圧保持期間において、ゲート電圧−Vgをソース電圧−Vsよりも低電圧とした状態で近い電圧に設定する例である。
【0095】
[本発明の第2の態様]
本発明のTFTアレイの欠陥検出の第2の態様について図4〜6を用いて説明する。
本発明の第2の態様は、ゲートとソース間におけるダイオードの逆方向バイアス時の電圧電流特性において、逆方向バイアス電圧の電圧値と印加時間を特性パラメータとし、特性パラメータの設定によって欠陥を検出するために測定するリーク電流を増加させる。
【0096】
TFTのゲート・ソース間におけるダイオード特性において、ゲート電圧をソース電圧よりも低くすることによって逆方向バイアスが設定される。逆方向バイアスでは、ゲート・ソース間電圧の印加時間に応じて逆方向電流であるリーク電流の総電流量が増大し、また、ゲート・ソース間電圧が大きいほど逆方向電流であるリーク電流が増大する。
【0097】
第1の形態では逆方向バイアスの印加時間を長くすることでリーク電流を増大させ、第2の形態では逆方向バイアスの電圧差を大きくすることでリーク電流を増大させる。
【0098】
[第1の形態]
第1の形態によるTFTアレイの欠陥検出は、TFTのソースに印加するソース電圧をTFTのゲートに印加するゲート電圧よりも高電圧に設定してTFTをオフ状態とし、オフ状態中のドレイン電圧の保持期間前において、ソース電圧の印加によりTFTのゲート・ソース間電圧の特性パラメータを逆バイアスに設定し、ソース電圧の印加期間の延長によって逆方向バイアス状態の保持期間を延長させ、TFTの内部リークによるリーク電流を増加させる。
【0099】
図4(a),(b)は、TFTに印加する電圧パターンのソース電圧およびゲート電圧を表し、図4(c)はゲート・ソース間電圧(Vgs)を表し、図4(d)はドレイン電圧を表している。また、図4(e)はFETのゲート・ソース間にダイオード特性を表す特性図であり、横軸をゲート・ソース間電圧Vgsとし、縦軸をゲート電流Ig電流としている。なお、電圧パターンはTFTのドレインを通して画素電極に正の電圧+Vsを印加する場合を示している。
【0100】
電圧パターンは、ゲート電圧を+Vgとしてゲートをオン状態とするとともにソース電圧を+Vとして画素電極に正の電圧+Vsを印加する期間(図中の符号aで示す)と、ソース電圧を+Vとしたままでゲート電圧−Vgとしてゲートをオフ状態とする期間(図中の符号bで示す)と、ソース電圧を−Vとしゲート電圧−Vgとする期間(図中の符号cで示す)を含む。
【0101】
期間b,cは、ゲート電圧−Vgを印加することによってゲートをオフ状態とし、画素電極を印加された電圧に保持する。TFTに内部欠陥等によるWeak−SD欠陥がある場合には、ソースとドレイン間は大きな抵抗値で短絡した状態にあり、期間b,cにおいて、TFTを介してリーク電流が流れ、画素電極の電圧が降下する。この画素電極の電圧降下を検出することによってWeak−SD欠陥を検出することができる。
【0102】
期間b,cでは、図4(c)に示すように、TFTのゲート・ソース間に逆方向バイアスが印加される。ダイオード特性は、図4(e)に示すように、Vs<Vgとする順方向バイアスの電圧を印加した場合には順方向に電流が流れる。電圧パターンの期間aはこの順方向バイアスの場合を示している。
【0103】
一方、ダイオード特性において、Vs>Vgとする逆方向バイアスの電圧を印加した場合には逆方向電流となる。電圧パターンの期間b,cはこの逆方向バイアスの場合を示している。期間bに印加される電圧は、期間cに印加される電圧よりも逆方向に大きい電圧を印加する。
【0104】
図4(e)に示すように、ダイオード特性の逆方向電流は、逆方向バイアスの電圧が大きいほど増加し、さらに大きな逆方向電圧が印加されて降伏電圧を超えるとブレークダウンする。
【0105】
本発明の第1の形態は、逆方向バイアスの期間b,cの内、大きな逆方向バイアスを印加する期間bの時間幅を長く設定することによってリーク電流を増加させ、リーク電流を増加させることによって画素電極の電圧降下を速め、Weak−SD欠陥の検出時間を短縮する。
【0106】
図4(e)において、符号bは逆方向バイアスの期間bにおける動作点を示し、符号cは逆方向バイアスの期間cにおける動作点を示している。
【0107】
動作点bの逆方向電流は動作点cの逆方向電流よりも大きいため、期間bの時間幅を期間cの時間幅よりも長く設定することによって、逆方向電流によるリーク電流の総量が大きくなる。これによって、画素電極の電圧降下の降下率を大きくし、画素電極の電圧状態によって検出するWeak−SD欠陥の検出時間を短縮することができる。
【0108】
図4(d)に示すドレイン電圧は画素電極の電圧の降下状態を示し、期間bにおけるリーク電流による電圧降下を示している。図4(f)〜(h)は、電圧パターンの各期間a,b,cにおけるTFTの状態を模式的に示している。
【0109】
図4(f)は、ゲート電圧を+Vg(=+20V)、ソース電圧を+Vs(=+10V)とした期間aの場合を示している。ゲート・ソース間電圧Vgsは+10Vとなり、TFTはオン状態となる。図4(g)は、ゲート電圧を−Vg(=−15V)、ソース電圧を+Vs(=+10V)とした期間bの場合を示している。ゲート・ソース間電圧Vgsは-25Vとなり、TFTはオフ状態となる。
【0110】
また、図4(h)は、ゲート電圧を−Vg(=−15V)、ソース電圧を−Vs(=−10V)とした期間cの場合を示している。ゲート・ソース間電圧Vgsは-5Vとなり、TFTはオフ状態となる。
【0111】
期間bのゲート・ソース間には-25Vの逆方向バイアスが印加され、期間cのゲート・ソース間には-5Vの逆方向バイアスが印加される。この逆方向バイアスによって、期間bでは期間cよりも大きな逆方向電流によるリーク電流が流れる。
【0112】
第1の形態は、逆方向バイアス印加時において、大きな逆方向電圧を印加する期間bの時間幅を長く設定することによってリーク電流を増加させ、リーク電流の増加によって画素電極の電圧降下を速め、Weak−SD欠陥の検出時間を短縮する。
【0113】
図5は本発明の第2の態様の第1の形態の電圧パターン例を示している。図5(a)〜(c)は第1の形態による電圧パターンを示し、図5(d)〜(f)は従来の電圧パターン例を示している。
【0114】
第1の形態の電圧パターンのソース電圧(図5(a))と従来の電圧パターンのソース電圧(図5(d))とを比較すると、第1の形態による期間bの時間幅T1は従来の期間bの時間幅T2よりも長く設定される。この期間bの時間幅の設定によって、第1の形態のドレイン電圧(図5(c))は、従来のドレイン電圧(図(5f))よりも速く電圧降下する。
【0115】
[第2の形態]
また、第2の形態によるTFTアレイの欠陥検出は、TFTのソースに印加するソース電圧をTFTのゲートに印加するゲート電圧よりも高電圧に設定してTFTをオフ状態とし、オフ状態中のドレイン電圧の保持期間前において、ソース電圧とゲート電圧との電圧差によりゲート・ソース間電圧の特性パラメータを逆方向バイアスに設定し、逆方向バイアスの電圧を降伏電圧の範囲内で増大させ、TFTの内部リークによるリーク電流を増加させる。
【0116】
図6(a)〜(d)は、TFTに印加する電圧パターンのソース電圧およびゲート電圧を表し、図6(e)はゲート・ソース間電圧(Vgs)を表し、図6(f)はドレイン電圧を表している。また、図6(g)はFETのゲート・ソース間にダイオード特性を表す特性図であり、横軸をゲート・ソース間電圧Vgsとし、縦軸をゲート電流Ig電流としている。なお、電圧パターンはTFTのドレインを通して画素電極に正の電圧+Vsを印加する場合を示している。
【0117】
電圧パターンは、ゲート電圧を+Vgとしてゲートをオン状態とするとともにソース電圧を+Vとして画素電極に正の電圧+Vsを印加する期間(図中の符号aで示す)と、ソース電圧を+Vとしたままでゲート電圧−Vgとしてゲートをオフ状態とする期間(図中の符号bで示す)と、ソース電圧を−Vとしゲート電圧−Vgとする期間(図中の符号cで示す)を含む。
【0118】
期間b,cは、ゲート電圧−Vgを印加することによってゲートをオフ状態とし、画素電極を印加された電圧に保持する。TFTに内部欠陥等によるWeak−SD欠陥がある場合には、ソースとドレイン間は大きな抵抗値で短絡した状態にあり、期間b,cにおいて、TFTを介してリーク電流が流れ、画素電極の電圧が降下する。この画素電極の電圧降下を検出することによってWeak−SD欠陥を検出することができる。
【0119】
期間b,cでは、図6(e)に示すように、TFTのゲート・ソース間に逆方向バイアスが印加される。ダイオード特性は、図6(g)に示すように、Vs<Vgとする順方向バイアスの電圧を印加した場合には順方向に電流が流れる。電圧パターンの期間aはこの順方向バイアスの場合を示している。
【0120】
一方、ダイオード特性において、Vs>Vgとする逆方向バイアスの電圧を印加した場合には逆方向電流となる。電圧パターンの期間b,cはこの逆方向バイアスの場合を示している。期間bに印加される電圧は、期間cに印加される電圧よりも逆方向に大きい電圧を印加する。
【0121】
図6(g)に示すように、ダイオード特性の逆方向電流は、逆方向バイアスの電圧が大きいほど増加し、さらに大きな逆方向電圧が印加されて降伏電圧を超えるとブレークダウンする。
【0122】
本発明の第2の形態は、逆方向バイアスの期間b,cの内、逆方向バイアスを印加する期間bにおける逆方向電圧を大きく設定することによってリーク電流を増加させ、リーク電流を増加させることによって画素電極の電圧降下を速め、Weak−SD欠陥の検出時間を短縮する。
【0123】
図6(g)において、符号bは逆方向バイアスの期間bにおける動作点を示し、符号cは逆方向バイアスの期間cにおける動作点を示している。
【0124】
逆方向電圧を大きく設定することによって、逆方向電流によるリーク電流の総量が大きくなる。これによって、画素電極の電圧降下の降下率を大きくし、画素電極の電圧状態によって検出するWeak−SD欠陥の検出時間を短縮することができる。
【0125】
期間bにおける逆方向電圧の設定は、ゲート電圧に負方向に大きな−Vgを設定する形態、ソース電圧に正方向に大きな+Vsを大きく設定する形態、あるいは、ソース電圧に正方向に大きな+Vsを大きく設定するとともに、ゲート電圧に負方向に大きな−Vgを設定する形態によって行うことができる。
【0126】
図6(a),(b)に示す電圧パターンは、ゲート電圧に負方向に大きな−Vgを設定する例を示し、図6(c),(d)に示す電圧パターンは、ソース電圧に正方向に大きな+Vsを大きく設定する例を示している。図6(f)に示すドレイン電圧は画素電極の電圧の降下状態を示し、期間bにおけるリーク電流による電圧降下を示している。
【0127】
図6(h)〜(j)は、電圧パターンの各期間a,b,cにおけるTFTの状態を模式的に示している。
【0128】
図6(h)は、ゲート電圧を+Vg(=+20V)、ソース電圧を+Vs(=+10V)とした期間aの場合を示している。ゲート・ソース間電圧Vgsは+10Vとなり、TFTはオン状態となる。図6(i)は、ゲート電圧を−Vg(=−20V又は−15V)、ソース電圧を+Vs(=+10V又は+15V)とした期間bの場合を示している。ゲート・ソース間電圧Vgsは-30Vとなり、TFTはオフ状態となる。
【0129】
また、図6(j)は、ゲート電圧を−Vg(=−15V)、ソース電圧を−Vs(=−10V)とした期間cの場合を示している。ゲート・ソース間電圧Vgsは-5Vとなり、TFTはオフ状態となる。
【0130】
期間bのゲート・ソース間には-30Vの逆方向バイアスが印加される。この逆方向バイアスの電圧を大きくすることによって、期間bにおいて大きな逆方向電流によるリーク電流が流れる。
【0131】
第2の形態は、逆方向バイアス印加時において、期間bに印加する逆方向電圧を大きく設定することによってリーク電流を増加させ、リーク電流の増加によって画素電極の電圧降下を速め、Weak−SD欠陥の検出時間を短縮する。
【0132】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、液晶製造装置におけるTFTアレイ検査工程の他、有機ELや種々の半導体基板が備えるTFTアレイの欠陥検査に適用することができる。
【符号の説明】
【0134】
1…アレイの欠陥検出装置
2…電子線源
3…二次電子検出器
4…検査信号生成部
5…信号処理部
6…欠陥検出部
7…ステージ
8…プローバ
9…走査制御部
10…基板
11A…エリア
12…ピクセル
13…付加容量(Cs)
14…ゲートライン
15…ソースライン
16…Csライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TFT基板のTFTアレイに対して電圧を印加し、電子線照射により得られる二次電子を検出してTFTアレイの欠陥を検出するTFTアレイの欠陥検出方法であって、
TFTのソースおよび/又はゲートに印加する電圧において、当該印加電圧の電圧値および/又は印加時期により、TFTの内部リークによるリーク電流を増加させる特性パラメータに設定し、
当該増加したリーク電流によるピクセルの電圧降下を検出することによって、TFTアレイの欠陥検出を行うことを特徴とするTFTアレイの欠陥検出方法。
【請求項2】
前記TFTのソースに印加するソース電圧を前記TFTのゲートに印加するゲート電圧よりも高電圧に設定してTFTをオフ状態とし、
前記オフ状態中のドレイン電圧の保持期間において、
当該TFTのゲート・ソース間電圧とドレイン電流との特性において、前記ソース電圧を前記ゲート電圧との電圧差を、ゲート・ソース間電圧の特性パラメータがゲート・ソース間のしきい値電圧あるいは零電圧に近似する電圧となるように設定することを特徴とする、請求項1に記載のTFTアレイの欠陥検出方法。
【請求項3】
前記TFTのオフ状態中のドレイン電圧の保持期間において、
前記ソース電圧を、
前記ゲート電圧よりも高く、かつ前記ゲート電圧に近似した電圧に設定する電圧設定することを特徴とする、請求項2に記載のTFTアレイの欠陥検出方法。
【請求項4】
前記TFTのソースに印加するソース電圧を前記TFTのゲートに印加するゲート電圧よりも高電圧に設定してTFTをオフ状態とし、
前記オフ状態中のドレイン電圧の保持期間前において、
前記ソース電圧の印加により前記TFTのゲート・ソース間電圧の特性パラメータを逆バイアスに設定し、
前記ソース電圧の印加期間の延長によって前記逆方向バイアス状態の保持期間を延長させ、前記TFTの内部リークによるリーク電流を増加させることを特徴とする、請求項1に記載のTFTアレイの欠陥検出方法。
【請求項5】
前記TFTのソースに印加するソース電圧を前記TFTのゲートに印加するゲート電圧よりも高電圧に設定してTFTをオフ状態とし、
前記オフ状態中のドレイン電圧の保持期間前において、
前記ソース電圧と前記ゲート電圧との電圧差により前記ゲート・ソース間電圧の特性パラメータを逆方向バイアスに設定し、
前記逆方向バイアスの電圧を降伏電圧の範囲内で増大させ、前記TFTの内部リークによるリーク電流を増加させることを特徴とする、請求項1に記載のTFTアレイの欠陥検出方法。
【請求項6】
前記オフ状態のドレイン電圧の保持期間前における前記ソース電圧の印加時期において、
前記ソース電圧の増加および/又は前記ゲートの低下によって、前記逆方向バイアスの電圧を増加させることを特徴とする、請求項5に記載のTFTアレイの欠陥検出方法。
【請求項7】
TFT基板のTFTアレイに対して電圧を印加し、当該電圧印加による電圧状態を電子線照射により得られる二次電子によって検出し、TFTアレイの欠陥を検査するTFTアレイの欠陥検出装置であって、
TFT基板に電子線を照射する電子線源と、
TFT基板から放出される二次電子を検出する検出器と、
TFT基板のTFTアレイに印加する検査信号を生成する検査信号生成部と、
前記検出器の検出信号に基づいてTFTアレイの欠陥を検出する欠陥検出部とを備え、
前記検査信号生成部は、
TFTのソースおよび/又はゲートに印加する電圧において、当該印加電圧の電圧値および/又は印加時期をパターンパラメータとする電圧パターンを有する検査信号を生成し、
前記検査信号は、TFTにおいてTFTの内部リークによるリーク電流を増加させる特性パラメータに設定し、
前記欠陥検出部は、前記検出信号の印加によってピクセルに保持された保持電圧に基づいて、前記増加したリーク電流によるピクセルの電圧降下を検出することによってTFTアレイの欠陥検出を行うことを特徴とする、TFTアレイの欠陥検出装置。
【請求項8】
前記電圧パターンは、
前記TFTのソースに印加するソース電圧を前記TFTのゲートに印加するゲート電圧よりも高電圧に設定してTFTをオフ状態とし、
前記オフ状態中のドレイン電圧の保持期間において、
当該TFTのゲート・ソース間電圧とドレイン電流との特性において、前記ソース電圧を前記ゲート電圧との電圧差を、ゲート・ソース間電圧の特性パラメータがゲート・ソース間のしきい値電圧あるいは零電圧に近似する電圧となるように設定することを特徴とする、請求項7に記載のTFTアレイの欠陥検出装置。
【請求項9】
前記電圧パターンは、
前記TFTのオフ状態中のドレイン電圧の保持期間において、
前記ソース電圧を、
前記ゲート電圧よりも高く、かつ前記ゲート電圧に近似した電圧に設定する電圧設定することを特徴とする、請求項8に記載のTFTアレイの欠陥検出装置。
【請求項10】
前記電圧パターンは、
前記TFTのソースに印加するソース電圧を前記TFTのゲートに印加するゲート電圧よりも高電圧に設定してTFTをオフ状態とし、
前記オフ状態中のドレイン電圧の保持期間前において、
前記ソース電圧の印加により前記TFTのゲート・ソース間電圧の特性パラメータを逆バイアスに設定し、
前記ソース電圧の印加期間の延長によって前記逆方向バイアス状態の保持期間を延長させ、前記TFTの内部リークによるリーク電流を増加させることを特徴とする、請求項7に記載のTFTアレイの欠陥検出装置。
【請求項11】
前記電圧パターンは、
前記TFTのソースに印加するソース電圧を前記TFTのゲートに印加するゲート電圧よりも高電圧に設定してTFTをオフ状態とし、
前記オフ状態中のドレイン電圧の保持期間前において、
前記ソース電圧と前記ゲート電圧との電圧差により前記ゲート・ソース間電圧の特性パラメータを逆方向バイアスに設定し、
前記逆方向バイアスの電圧を降伏電圧の範囲内で増大させ、前記TFTの内部リークによるリーク電流を増加させることを特徴とする、請求項7に記載のTFTアレイの欠陥検出装置。
【請求項12】
前記電圧パターンは、
前記オフ状態のドレイン電圧の保持期間前における前記ソース電圧の印加時期において、
前記ソース電圧の増加および/又は前記ゲートの低下によって、前記逆方向バイアスの電圧を増加させることを特徴とする、請求項11に記載のTFTアレイの欠陥検出装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−194107(P2012−194107A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59376(P2011−59376)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】