説明

UV硬化型水性乳剤、その製造方法及びこれを含む無溶剤塗料組成物

親環境的でありながら、油性UV硬化型塗料組成物の物性と同等な物性を有するプラスチック塗膜用のUV硬化型水性塗料組成物を提供する。
ポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオール、イソシアネート、ウレタン反応性カルボン酸、UV硬化型アクリルオリゴマー、UV硬化型アクリル単量体及びウレタン反応性アクリレートを金属触媒及びラジカル重合禁止剤の存在下で反応させて製造されたUV硬化型水性乳剤、及びそれに光開始剤が含まれるUV硬化型水性塗料組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はUV硬化型水性乳剤、その製造方法及びこれを含む無溶剤塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環境的に有害な有機溶媒を含まない多様なプラスチック用UV硬化型水性塗料組成物が開発されてきた。例えば、ドイツ特許第2936039号はアミノスルホン酸−アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を用いて製造された水性ウレタンアクリレートを含む塗料組成物を開示している。しかし、この方法は塗膜の表面にアルカリ金属イオンが存在するので、低い耐水性を有する塗膜を提供する。
【0003】
米国特許第4,287,039号には分散剤を用いてポリエステルウレタンアクリレートを分散する方法が記載されている。しかし、前記分散方法によって製造された塗膜は、塗膜上に湿気が存在するので耐水性、硬度、光沢が劣る。
【0004】
米国特許第5,135,963号、第6,011,078号、第6,207,744号、第6,335,397号、第6,436,540号及び第6,538,046号などには硬化型ポリウレタン水性コート分散物が公知されている。前記特許に開示されたUV硬化型ポリウレタン水性コート分散物は水での分散安定性のために大きい分子量を有するオリゴマーを用いるが、前記分散物を用いて得られる塗膜は低い架橋密度を有するので、プラスチックコートとしての要求条件を満たさない。

【特許文献1】ドイツ特許第2936039号
【特許文献2】米国特許第4,287,039号
【特許文献3】米国特許第5,135,963号
【特許文献4】米国特許第6,011,078号
【特許文献5】米国特許第6,207,744号
【特許文献6】米国特許第6,335,397号
【特許文献7】米国特許第6,436,540号
【特許文献8】米国特許第6,538,046号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は親環境的であり、かつ油性のUV硬化型塗料組成物と同等な物性を有するプラスチック塗膜用のUV硬化型水性塗料組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明の一実施様態によれば、
UV硬化型水性乳剤(または、エマルジョン)の全重量を基準として、
(a)ポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオール1〜10重量%、イソシアネート化合物1〜10重量%、反応性カルボン酸0.1〜5重量%、2〜9個のアクリレート官能基を有するUV硬化型アクリルオリゴマー1〜10重量%、及びUV硬化型アクリル単量体5〜20重量%のウレタン反応生成物;及び
(b)ウレタン反応性アクリレート(Urethane−reactive)0.1〜20重量%、ラジカル重合禁止剤0.01〜1重量%と水55〜75重量%を含むUV硬化型水性乳剤を提供する。
本発明の他の実施様態によれば、
(a)UV硬化型水性乳剤の全重量に対してポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオール1〜10重量%、イソシアネート化合物1〜10重量%、反応性カルボン酸0.1〜5重量%、2〜9個のアクリレート官能基を有するUV硬化型アクリルオリゴマー1〜10重量%及びUV硬化型アクリル単量体5〜20重量%からなる混合物を金属触媒下でウレタン反応させる段階;
(b)ウレタン反応性アクリレート0.1〜20重量%及びラジカル重合禁止剤0.01〜1重量%を段階(a)で得られたウレタン反応生成物に添加する段階;及び
(c)段階(b)で得られた混合物を塩基性化合物で中和させてものに水55〜75重量%を滴加する段階を含むUV硬化型水性乳剤の製造方法を提供する。
【0007】
本発明のまた他の実施様態によれば、
組成物全重量を基準として、(A)本発明のUV硬化型水性乳剤90〜99重量%(B)光開始剤1〜10重量%を含むUV硬化型水性塗料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるUV硬化型水性塗料組成物は有機溶剤を含まないため、親環境的でありながら、既存のUV硬化型油性塗料と同等なプラスチックコーティング特性を有するので、無溶剤形態の親環境的なプラスチック水性コーティング液として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
<UV硬化型水性乳剤>
本発明のUV硬化型水性乳剤は、UV硬化型水性乳剤の全重量を基準として、ポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオール1〜10重量%、イソシアネート化合物1〜10重量%、反応性カルボン酸0.1〜5重量%、2〜9個のアクリレート官能基を有するUV硬化型アクリルオリゴマー1〜10重量%、UV硬化型アクリル単量体5〜20重量%、ウレタン反応性アクリレート0.1〜20重量%及びラジカル重合禁止剤0.01〜1重量%を金属触媒の存在下で混合することによって得られる。
【0010】
次に、本発明によるUV硬化型水性乳剤の製造方法を詳しく説明する。
<段階(a)>
前記反応は中和滴定法によって測定されるイソシアネート含量(%NCO)が2〜5%になるまで行われる。
【0011】
i)ポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオール
本発明で用いられるポリカーボネートポリオールの代表的な例としてはPCDL T4692またはPCDL T5651(旭化成社製)が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、通常、2官能基のポリエステルジオールを用いることができ、室温で過量のジオールをジカルボン酸と混合し、この混合物を金属触媒の存在下で150〜215℃、好ましくは約210℃で中和滴定法を用いて測定される生成物の酸価が0.5mg KOH/g以下になるまで約24時間エステル縮合反応させることによって得ることができる。前記ジオールはジカルボン酸1当量を基準として1.2〜1.7当量の量で用いることができる。
【0012】
前記ポリエステルジオールの製造時に用いられるジオールの代表的な例としては、炭素原子2〜15個を有するグリコール、例えばネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール及びトリプロピレングリコールなど、好ましくはネオペンチルグリコールを用いる。また、ジカルボン酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、イソフタル酸、無水フタル酸、クロトン酸、イタコン酸及びこれらのモノアルキルエステルなど、好ましくはアジピン酸またはイソフタル酸を用いる。
【0013】
ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールは、好ましくは数平均分子量が1,000〜3,000g/mol範囲であり、逆滴定法によるOH値が50〜200mg KOH/gであるものが好ましい。
【0014】
ポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオールは、UV硬化型水性乳剤の全重量を基準として、1〜10重量%、好ましくは4〜8重量%の量で用いられる。
【0015】
ii)イソシアネート化合物
本発明で用いられるイソシアネート化合物としては、2個以上のイソシアネート官能基を有する脂肪族または芳香族イソシアネートが好ましく、その代表的な例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(1,6−hexamethylene diisocynate)、イソホロンジイソシアネート(isophorone diisocynate)、1,4−シクロへキシルジイソシアネート(1,4−cyclohexyl diisocyanate)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(2,2,4−trimethyl hexamethylene diisocynate)及びテトラメチルキシレンジイソシアネート(tetramethylxylene diisocynate)などが挙げられる。
【0016】
前記イソシアネート化合物はUV硬化型水性乳剤の全重量を基準として1〜10重量%、好ましくは3〜7重量%の量で用いられる。イソシアネート化合物の量が10重量%を超過する場合、硬化塗膜の架橋密度が高すぎて、塗膜が脆くなり、熱や衝撃によってクラックが発生しやすく、1重量%未満の場合、塗膜の機械的物性が低下する。
【0017】
iii)反応性カルボン酸
ポリウレタンアクリレートに親水基を導入するための反応性カルボン酸の代表的例としては、ジメチロールプロピオン酸(DMPA,dimethylol propionic acid)及びジメチロールブタン酸(DMBA,dimethylolbutanoic acid)などがあり、反応途中の粘度を低く維持するためにはDMBAを用いることが好ましい。
【0018】
前記反応性カルボン酸はUV硬化型水性乳剤の全重量を基準に0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜2重量%の量で用いられる。前記反応性カルボン酸の量が5重量%を超過する場合、蒸留水に対する溶解度が増加して乳剤の粘度が上昇し、0.1重量%未満の場合、乳剤が形成されないか、または貯蔵安定性が低下する。
【0019】
iv)UV硬化型アクリルオリゴマー
既存の油性のUV硬化型塗料組成物と同等な物性を有するプラスチック塗膜を得るために、UV硬化型アクリルオリゴマーを添加して分散させる。
本発明で用いられるUV硬化型アクリルオリゴマーの代表的な例としては、アクリレート官能基2〜9個を有するウレタンアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エステルアクリレート、ポリエステルアクリレート及びこれらの混合物などがあり、市販製品としては6アクリレート官能基を有するEB−1290、EB−830(SK−UCB社製、韓国)及び3アクリレート官能基を有するEB−4883、EB−9260、EB−9384(SK−UCB社製、韓国)などが用いられる。前記オリゴマーはUV硬化型水性乳剤全重量に対して1〜10重量%、好ましくは6〜9重量%の量で用いる。
【0020】
前記乳剤の物性は4個以上のアクリレート官能基を有する高官能性オリゴマーと3個以下のアクリレート官能基を有する低官能性オリゴマーとを混合することによって調節することができる。前記低官能性オリゴマー:高官能性オリゴマーの重量比は1:0.5〜1:3の範囲であり得る。高官能性オリゴマーの割合が前記範囲より高い際は硬化塗膜の架橋密度が高すぎて塗膜が脆くなり、熱や衝撃によってクラックが発生し、前記範囲未満の際は塗膜の化学的及び機械的物性が低下する。
【0021】
v)UV硬化型アクリル単量体
本発明で用いられるUV硬化型アクリル単量体は有機溶剤の代わりに反応性希釈剤として用いられ、硬化速度を調節するとともに接着性を向上させ、また、反応物の粘度を調節する役割をする。
【0022】
UV硬化型アクリル単量体は反応性ヒドロキシ基を含有しない。その代表的な例としては、脂肪族多価アルコールのアクリル酸エステルまたはそのアルコキシ誘導体のアクリル酸のエステル、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate;TMPTA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(tripropyleneglycol diacrylate;TPGDA)、1,6−ヘキサメチレンジオールジアクリレート(1,6−hexamethylenediol diacrylate;HDDA)、1,4−ブタンジオールジアクリレート(1,4−butanediol diacrylate; 1,4−BDDA)、1,3−イソブタンジオールジアクリレート(1,3−isobutanediol diacrylate)、イソボニルアクリレート(isobonyl acrylate;IBOA)またはこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
前記単量体はUV硬化型水性乳剤の全重量を基準として、5〜20重量%、好ましくは12〜16重量%の量で用いられる。前記量が20重量%を超過する場合、塗膜の硬化速度が遅くなり塗膜の機械的及び化学的物性が悪くなり、前記量が5重量%未満の際は、反応物の粘度が上昇しUV硬化型乳剤が不安定になる。
【0024】
本発明において、前記UV硬化型アクリル単量体は前記UV硬化型アクリルオリゴマーを基準として50〜500重量%の量で用いることができる。
【0025】
vi)金属触媒
UV硬化型水性乳剤の製造反応は金属触媒の存在下で加速化され得る。前記反応に用いられる金属触媒の代表的な例としてはスズ系金属化合物であるジブチルスズジラウリレート(dibutyltindilaurylate)及びアミン系化合物であるDBU(1,8−diazabicyclo[5,4,0]undec−7−ene)などが挙げられ、前記金属触媒は有効触媒量で用いられる。
【0026】
<段階(b)>
段階(b)の反応は70〜90℃でフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)によるスペクトルから2,260cm−1でのイソシアネートのピークが完全に消失するまで行われる。
【0027】
vii)ウレタン反応性アクリレート
本発明で用いられるウレタン反応性アクリレートは分子当り1個以上のヒドロキシ基及び1個〜6個のアクリレート官能基を有するのが好ましい。前記ウレタン反応性アクリレートの代表的な例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(2−HPA)、カプロラクトンアクリレート(Tone M−100,UCC社製)、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物などが挙げられる。好ましくはペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物である。前記混合物において、ペンタエリスリトールトリアクリレートまたはジペンタエリスリトールテトラアクリレートの含量は50〜60重量%の範囲であることが望ましい。
【0028】
前記ウレタン反応性アクリレートはUV硬化型水性乳剤の全重量を基準として、0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲の量に用いられる。
【0029】
viii)ラジカル重合禁止剤
本発明で用いられるラジカル重合禁止剤の代表的な例としては、ハイドロキノン(hydroquinone)、p−メトキシフェノール(p−methoxyphenol)、ニトロベンゼン(nitrobenzene)、BHT(2,6−di−tetra−butyl−4−methylphenol)などがある。
【0030】
前記ラジカル重合禁止剤はUV硬化型水性乳剤の全重量を基準として、0.01〜1重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲の量で用いられる。
【0031】
<段階(c)>
水での分散安定性を高めるために、塩基性化合物を用いて段階(b)で得られたウレタン反応生成物のカルボキシル基を全部または一部中和させ、これにUV硬化型水性乳剤の全重量を基準として、55〜75重量%の量の水を滴加して25〜45重量%の固形分を有する水性乳剤を得ることができる。
【0032】
前記塩基性化合物の代表的な例としては、有機または無機塩基、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物{さんかぶつ}、炭酸塩または炭酸水素塩、及びアンモニアまたは第1級、第2級または第3級アミンなどがあり、特に水酸化ナトリウム、またはトリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンまたはジエチルエタノールアミンのような第3級アミンを用いることが好ましい。本反応に用いられる塩基性化合物はカルボン酸に対して0.8〜1当量の範囲であり得る。
【0033】
<UV硬化型水性塗料組成物>
本発明のUV硬化型水性塗料組成物は組成物の全重量を基準として、(A)前記UV硬化型水性乳剤90〜99重量%及び(B)光開始剤1〜10重量%を含む。
【0034】
紫外線によってラジカルを形成して不飽和炭化水素を架橋させる役割をする光開始剤の代表的な例としては、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン(1−hydroxy cyclohexyl phenyl ketone)(Irgacure 184,チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(bis(2,4,6−trimethyl benzoyl)phenyl phosphine oxide)(Irgacure 819,チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン(2,4,6−trimethyl benzoyl diphenyl phosphine,TPO)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン(2−hydroxy−2−methyl−1−phenyl−1−propane)(Darocur 1173,チバガイギー社製)、イルガキュア500(Irgacure 500)、ベンゾフェノン(benzophenone,BP)及びこれらの混合物が挙げられ、これは全組成物の全重量に対して1〜10、好ましくは2〜6重量%の量で用いられる。
【0035】
また、本発明の塗料組成物は塗膜の滑り性(slip)及び光沢を向上させるためにレベリング剤を全組成物に対して0.1〜5重量%の量で更に含むことができ、このレベリング剤は塗料組成物に用いられる通常の如何なる物質であり得、TEGO Rad 2200N(TEGO Chemie社製)、BYK−333、BYK−347、BYK−348(BYK Chemie社製)及びこれらの混合物が好ましい。
【0036】
さらに、塗膜の物性を向上させるために本発明の塗料組成物は通常の添加剤、例えば、XP−1045、XP−0596、XP−0768(Hanse Chemie社製)などを全組成物に対して0.1〜2重量%の量で更に含むことができる。
【0037】
<塗膜>
本発明による塗膜は、本発明の塗料組成物を基材の表面にスプレーコート、ディップコート、フローコートまたはスピンコートして室温でコート層を乾燥させ、紫外線照射によって乾燥した層を硬化させて製造し得る。本発明の塗膜は20〜50μmの範囲の厚さを有し、接着性、鉛筆硬度、光沢性及び耐湿性、耐薬品性、耐磨耗性及び耐酸性などの物性に優れる。
【0038】
上述したように、本発明の有機溶剤を含まないUV硬化型水性乳剤を含む本発明のUV硬化型塗料組成物は、親環境的でありながら既存の油性のUV硬化型塗料組成物と同等な特性を有する塗膜を提供し、従って、親環境的なプラスチック水性コート製品として有用である。
【0039】
以下、本発明を下記実施例によりさらに詳しく説明する。但し、これらの実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定することはない。
【0040】
<ポリエステルジオールの製造>
【製造例1】
【0041】
4口丸低フラスコにネオペンチルグリコール535g、アジピン酸665g及びジブチルスズオキシド(DBTO)0.3gを加え、この混合物を窒素雰囲気下で150℃に加熱した。縮合反応の開始とともに温度を150℃に1時間維持した後、反応温度を5℃/minの速度で210℃に昇温し、210℃に置いた時にトルエン300gを添加した。反応生成物の酸価が0.5mg KOH/gになったことを確認した時、生成混合物を共沸蒸留(azeotropic distillation)した。反応を終了させた後、180℃、真空状態下で残存するトルエン、水及び未反応物質を除去してヒドロキシ基の値によって計算された数平均分子量が1,000g/molであるポリエステルジオールを得た。
【製造例2】
【0042】
ネオペンチルグリコール550g、ジカルボン酸としてアジピン酸370gとイソフタル酸280gの混合物を用いたことを除いては、製造例1と同様な方法により、ヒドロキシ基の値によって計算された数平均分子量が2,000g/molであるポリエステルジオールを製造した。
【0043】
<UV硬化型水性乳剤の製造>
【製造例3】
【0044】
4口丸低フラスコに前記製造例1及び2で製造されたポリエステルジオールそれぞれ27g及び53g、ウレタン反応性カルボン酸としてジメチロールブタン酸(DMBA)18g、イソホロンジイソシアネート(IPDI)64g、UV硬化型アクリルオリゴマーとしてEB−1290(SK−UCB社製)80g、UV硬化型アクリル単量体としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)70g及びヘキサメチレンジオールジアクリレート(HDDA)60gを攪拌しながら添加した。その後、これにラジカル重合禁止剤としてp−メトキシフェノール(HQ−MME)0.1g及び反応触媒としてジブチルスズジラウレート(DBTDL)0.1gを加えて得られた混合物を85℃で攪拌した。イソシアネート(NCO%)の含量が2.2%に到逹したら、ウレタン反応性アクリレートとして2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)17g及び触媒としてジブチルスズジラウレート(DBTDL)0.1gを順次添加し、生成混合物をFT−IRによるスペクトル上においてイソシアネートピークが消失するまで温度85℃で反応させた。前記反応物の温度を50℃に下げ、トリエチルアミン(TEA)11gを約10分間滴下した後、得られた混合物を同じ温度で1時間維持させて中和させた。蒸留水600gをかき混ぜながら投入し、2個のアクリレート官能基を有するポリウレタンアクリレート分散剤を含むUV硬化型水性乳剤を製造した。
【製造例4】
【0045】
EB−1290 80gの代りにEB−1290 40g及びEB−9260(SK−UCB社製)40gを用い、UV硬化型アクリル単量体としてTMPTA 80g及びHDDA 50gを用いたことを除いては、前記製造例3と同様な方法により2官能基を有するポリウレタンアクリレート分散剤を含むUV硬化型水性乳剤を製造した。
【製造例5】
【0046】
EB−1290 80gの代りにUV硬化型アクリルオリゴマーとしてEB−1290 40g及びEB−9260 40gを用い、TMPTA 70g及びHDDA 60gの代りにTMPTA 70g、HDDA 40g及びイソボニルアクリレート (IBOA)35gを用いたことを除いては、前記製造例3と同様な方法により2官能基を有するポリウレタンアクリレート分散剤を含むUV硬化型水性乳剤を製造した。
【製造例6】
【0047】
前記製造例1及び2で製造されたポリエステルジオールそれぞれ19g及び38g、イソシアネートとしてIPDI 46g、UV硬化型アクリル単量体としてTMPTA 60g及びHDDA 70g、ウレタン反応性アクリレートとしてペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(1/1モル比)66g及びTEA 8gを用いたことを除いては、製造例3と同様な方法により6官能基を有するポリウレタンアクリレート分散剤を含むUV硬化型水性乳剤を製造した。
【製造例7】
【0048】
UV硬化型アクリルオリゴマーとしてEB−1290 40g及びEB−9260(SK−UCB社製)40g、UV硬化型アクリル単量体としてTMPTA 60g及びHDDA 60gを用いたことを除いては、前記製造例6と同様な方法により6個の官能基を有するポリウレタンアクリレート分散剤を含むUV硬化型水性乳剤を製造した。
【製造例8】
【0049】
UV硬化型アクリルオリゴマーとしてEB−1290 30g及びEB−9260 30g、UV硬化型アクリル単量体としてTMPTA 60g、HDDA 50g、及びIBOA 50gを用いたことを除いては、前記製造例6と同様な方法により6個の官能基を有するポリウレタンアクリレート分散剤を含むUV硬化型水性乳剤を製造した。
【製造例9】
【0050】
前記製造例1及び2で製造されたポリエステルジオールをそれぞれ15g及び31g、ウレタン反応性カルボン酸としてジメチロールブタン酸(DMBA)10g、IPDI 37g及びウレタン反応性アクリレートとしてジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物90gを用いたことを除いては、製造例6と同様な方法により10個の官能基を有するポリウレタンアクリレート分散剤を含むUV硬化型水性乳剤を製造した。
【製造例10】
【0051】
UV硬化型アクリルオリゴマーとしてEB−1290 30g及びEB−9260(SK−UCB社製)40g及びUV硬化型アクリル単量体としてTMPTA 60g及びHDDA 70gを用いたことを除いては、前記製造例9と同様な方法により10個の官能基を有するポリウレタンアクリレート分散剤を含むUV硬化型水性乳剤を製造した。
【製造例11】
【0052】
UV硬化型アクリルオリゴマーとしてEB−1290 30g及びEB−9260 40g、及びUV硬化型アクリル単量体としてTMPTA 50g、HDDA 50g及びIBOA 50gを用いたことを除いては、前記製造例9と同様な方法により10個の官能基を有するポリウレタンアクリレート分散剤を含むUV硬化型水性乳剤を製造した。
【0053】
<UV硬化型乳剤塗料組成物の製造>
「実施例1〜9」
製造例3で得られたUV硬化型水性乳剤95重量%、光開始剤としてのDarocur 1173(チバガイギー社製)3重量%及びレベリング剤としてのBYK−333 1.4重量%とBYK−347(BYK Chemie社製)0.6重量%を混合し、その結果得られた混合物を30分間攪拌して無溶剤のUV硬化型乳剤塗料組成物を製造した(実施例1)。
【0054】
製造例4〜11で得られたUV硬化型水性乳剤をそれぞれ用いて前記工程と類似する工程で8個の無溶剤のUV硬化型塗料組成物を製造した(実施例2〜9)。
【比較例1】
【0055】
通常のUV硬化型塗料組成物の組成に基づいて、EB−1290 15重量%及びEB−9260 11重量%、トリメチロールプロパントリアクリレート 6重量%及びヘキサメチレンジオールジアクリレート7重量%をトルエン30重量%、メチルイソブチルケトン15重量%、酢酸エチル5重量%及びエチルセルソルブ5重量%の混合物に攪拌しながらこれに光開始剤としてのDarocur 1173 5重量%及びレベリング剤としてBTK−333(BYK Chemie社)1重量%を添加し、その結果得られた混合物を30分間攪拌してUV硬化型油性塗料を製造した(不揮発分、45%)。
【0056】
<塗膜の製造>
「実施例10〜18」
【0057】
実施例1〜9で得られたUV硬化型水性塗料組成物をそれぞれUVP−9500SI(S)(SSCP Co.,Ltd社製)がコートされたポリカーボネート(polycarbonate)基板上にスプレーコート法でコーティングした後、得られた被覆物を60℃で5分間乾燥させた後、フュージョンランプ(Fusion Lamp,Fusion Systems社製)を用いてライン速度(line speed)10m/min、光量380mJ/cmの硬化条件下で2回光硬化させて総9個の塗膜を製造した。
【比較例2】
【0058】
前記比較例1で製造されたUV硬化型塗料組成物を用い、60℃で1〜2分間乾燥したことを除いては実施例10〜18と同様な方法により塗膜を製造した。
【0059】
<塗膜の物性評価>
実施例10〜18及び比較例2で得られた塗膜の物理・化学的特性を下記方法によって測定した。:
【0060】
(1)接着性:ASTM D3359−87
塗膜を1mm間隔の格子状に切って1m×1mの升目100個を形成した。形成されたパターンに接着テスト用のテープを強く貼り付けてから急激にはがす動作を3回繰り返した。前記パターンの状態を確認し、その結果を次の基準に従って評価した。:
5B:端部及び格子内での剥離。
4B:端部での若干の剥離と格子の5%未満が剥離。
3B:端部での剥離及び破損があり、格子の15%未満が剥離。
【0061】
(2)鉛筆硬度:ASTM D3363−74
塗膜試片を45゜の角度で一定の圧力下で多様な硬度の鉛筆で引っかき、これを5回繰り返した。塗膜層に一つでも傷や破損が生じた場合の鉛筆硬度でもって示した。
【0062】
(3)光沢
塗膜試片の光沢度をBYK−GARDNER社製の光沢計を用いて入射角と受光角がそれぞれ60゜にして測定し、その測定結果を基準面の光沢度を100としたときの百分率で表示した。
【0063】
(4)耐磨耗性
肉眼で確認することができるまで基材の表面を消しゴムで40回/minの速度で 500g荷重下で摩擦させ、耐磨耗性を摩擦数で示した。
◎:2,000回以上、○:1,700〜2,000回
【0064】
(5)耐薬品性
塗膜試片の表面を99.3%のメタノールに浸積させた後、基材の表面を肉眼で確認することができるまで消しゴムで40回/minの速度で500g荷重下で摩擦させ、耐薬品性を摩擦数で示した。
◎:300回以上、○:260〜300回
【0065】
(6)耐湿性
温度50℃、湿度95%の条件下で塗膜試片を72時間露出させた後、外観変形及び接着性を評価した。
◎:優秀、○:良好
【0066】
(7)耐酸性
pH4.6の標準溶液に塗膜試片を72時間浸積させた後、外観変形及び接着性を試験した。
◎:優秀、○:良好
【0067】
(8)UV試験(QUV)
塗膜試片をUVテスター機(QUV、Q−Pannel社製、米国)を用いて72時間放置した後、外観変形及び接着性を試験した。
前記のように測定された塗膜の物性を下記表1に示した。
【0068】
【表1】

【0069】
前記表1に示したように、本発明の塗料組成物を用いて得た塗膜は通常の組成物を用いて得た塗膜に比べて接着性、鉛筆硬度、光沢、耐摩耗性、耐薬品性、耐湿性及び耐酸性などの物性が同等以上であり、本発明の塗膜は環境へ悪影響を与えないで得ることができる。
【0070】
本発明を前記具体的な実施例と関連して記述したが、添付された特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲内で当分野の熟練者が本発明を多様に変形及び変化させ得ることは勿論のことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV硬化型水性乳剤の全重量を基準として、
(a)ポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオール1〜10重量%、イソシアネート化合物1〜10重量%、反応性カルボン酸0.1〜5重量%、2〜9個のアクリレート官能基を有するUV硬化型アクリルオリゴマー1〜10重量%、及びUV硬化型アクリル単量体5〜20重量%のウレタン反応生成物;及び
(b)ウレタン反応性(Urethane−reactive)アクリレート0.1〜20重量%、ラジカル重合禁止剤0.01〜1重量%、及び水55〜75重量%を含むUV硬化型水性乳剤。
【請求項2】
前記ポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオールが、数平均分子量が1,000〜3,000g/mol範囲の平均分子量と50〜200mg KOH/gのOH値を有することを特徴とする請求項1に記載のUV硬化型水性乳剤。
【請求項3】
前記反応性カルボン酸が、ジメチロールプロピオン酸(DMPA,dimethylol propionic acid)またはジメチロールブタン酸(DMBA,dimethylol butanoic acid)であることを特徴とする請求項1に記載のUV硬化型水性乳剤。
【請求項4】
前記UV硬化型アクリルオリゴマーが、ウレタンアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エステルアクリレート、ポリエステルアクリレート及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のUV硬化型水性乳剤。
【請求項5】
前記UV硬化型アクリルオリゴマーが、4個以上のアクリレート官能基を有するオリゴマー及び3個以下のアクリレート官能基を有するオリゴマーの混合物であることを特徴とする請求項4に記載のUV硬化型水性乳剤。
【請求項6】
前記3個以下のアクリレート官能基を有するオリゴマーが、前記4個以上のアクリレート官能基を有するオリゴマーと1:0.5〜1:3の重量比で混合されることを特徴とする請求項5に記載のUV硬化型水性乳剤。
【請求項7】
前記UV硬化型アクリル単量体が、脂肪族多価アルコールのアクリル酸エステルまたはそのアルコキシ誘導体であることを特徴とする請求項1に記載のUV硬化型水性乳剤。
【請求項8】
前記UV硬化型アクリル単量体が、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate;TMPTA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(tripropyleneglycol diacrylate;TPGDA)、1,6−ヘキサメチレンジオールジアクリレート(1,6−hexamethylenediol diacrylate;HDDA)、1,4−ブタンジオールジアクリレート(1,4−butanediol diacrylate;1,4−BDDA)、1,3−イソブタンジオールジアクリレート(1,3−isobutanediol diacrylate)、イソボニルアクリレート(isobonyl acrylate;IBOA)及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載のUV硬化型水性乳剤。
【請求項9】
前記UV硬化型アクリル単量体の量が前記UV硬化型アクリルオリゴマーを基準として50〜500重量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のUV硬化型水性乳剤。
【請求項10】
前記ウレタン反応性アクリレートが、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(2−HPA)、カプロラクトンアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物またはジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のUV硬化型水性乳剤。
【請求項11】
(a)UV硬化型水性乳剤の全重量に対してポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオール1〜10重量%、イソシアネート化合物1〜10重量%、反応性カルボン酸0.1〜5重量%、2〜9個のアクリレート官能基を有するUV硬化型アクリルオリゴマー1〜10重量%及びUV硬化型アクリル単量体5〜20重量%の混合物を金属触媒下でウレタン反応させる段階;
(b)ウレタン反応性アクリレート0.1〜20重量%及びラジカル重合禁止剤0.01〜1重量%を段階(a)で得られたウレタン反応生成物に添加する段階;及び
(c)段階(b)で得られた混合物を塩基性化合物で中和させ、これに水55〜75重量%を滴加する段階を含むUV硬化型水性乳剤の製造方法。
【請求項12】
前記段階(a)の反応が生成物を基準としてイソシアネート含量(%NCO)が2〜5%になるまで行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記塩基性化合物がアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物、酸化物{さんかぶつ}、炭酸塩または炭酸水素塩、及びアンモニアまたは第1級、第2級または第3級アミンで構成された群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記金属触媒がスズ系化合物またはアミン化合物であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
組成物全重量を基準として、(A)請求項1記載のUV硬化型水性乳剤90〜99重量%(B)光開始剤1〜10重量%を含むUV硬化型水性塗料組成物。
【請求項16】
請求項15記載の塗料組成物の硬化された塗膜を有するプラスチック製品。

【公表番号】特表2009−523188(P2009−523188A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550247(P2008−550247)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000245
【国際公開番号】WO2007/081186
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(504432301)エスエスシーピー・カンパニー・リミテッド (8)
【Fターム(参考)】