説明

VOC不含マイクロエマルション

【課題】本発明の課題は、VOCs不含マイクロエマルションの状態にあり、かつ値打ちのある無色明澄外観及び場合によってより長い安定性を有することが可能で、界面活性剤含量は香料含量を超えない香料または賦香製品を提供することであった。
【解決手段】この課題は、油30%w/wと、イオン界面活性剤を多くと非イオン界面活性剤を少しとを含有する界面活性剤と、油/界面活性剤系のw/w割合は1より高く、界面活性剤でもなくVOC化合物でもない可溶化剤成分を10%w/wまでと、水少なくとも60%とを含有するVOC不含無色明澄水中油型マイクロエマルションにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は香料製造の分野に関連し、より正確には本発明は香料又は賦香組成物を、高度に透明な水ベースのVOC不含マイクロエマルションの状態で提供することである。
本発明のその他の観点は、前記マイクロエマルションの賦香成分としての使用、及び前記マイクロエマルションに関連した消費製品である。
【0002】
背景技術
一般的に、水ベースのマイクロエマルション含有香料は、既に先行技術において報告されている。しばしば、油である香料の分散のための前記マイクロエマルションは、短鎖アルコール又はその他のVOC化合物を大量に含有する。前記マイクロエマルションの問題は、VOCは現在では様々な理由のために望ましくないと考えられていることである。
一般的な観点において、香料製造産業のために便利であるかもしれないVOC不含マイクロエマルションは、既に公知技術において説明されている。
【0003】
一般的に、前記マイクロエマルションの調整においては、VOCsの非存在を回避するために、界面活性剤の総量を増やすことが大事であり、さもなければ終エマルションは、透明度及び/又は安定度不足の問題を呈し、これは香料製造においては許容できるものではない。しかし、終マイクロエマルションにおいて界面活性剤の量を増加させることは、香料の観点に関して、大幅に過剰な界面活性剤系を含有する製品を生じる。明らかに、界面活性剤の大幅な過剰量も、終製品に対して不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、VOCs不含マイクロエマルションの状態にあり、かつ値打ちのある無色明澄(crystal−clear)外観及び場合によってより長い安定性を有することが可能で、界面活性剤含量は香料含量を超えない香料または賦香製品に対する需要が未だにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の記載
意外にも本発明において、古典的な成分、即ち香料、界面活性剤系、及び水に加えて、適切な可溶化剤成分の適した量の使用が、上記した問題を解決することを見出した。
【0006】
従って、本発明の第一の対象は:
A)25℃で、少なくとも25mN/mの表面張力を有する、油1〜30%w/w;
B)1種類又は数種類のイオン界面活性剤、例えばアニオン、カチオン及び/又は両性界面活性剤と、1種類又は数種類の非イオン界面活性剤とを含有する界面活性剤系であって、前記イオン界面活性剤は、前記界面活性剤系の少なくとも50%w/wの量にあり、かつ前記非イオン界面活性剤は、前記界面活性剤系の多くとも50%w/wの量にあり;油/界面活性剤系のw/w割合が、1〜3である界面活性剤系;
C)以下のアンモニウム、アルカリ、及びアルカリ土類の塩からなるグループから選択される可溶化剤成分0.1〜10w/w:
i)芳香族又は非芳香族の、5員又は6員複素環式環と、1つ又は2つのカルボキシル官能基を含有するC〜C10化合物;
ii)C〜Cの、線形、分枝又は環式の、モノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸;
iii)安息香酸、ヒドロキシル安息香酸、又はアミノ安息香酸、1つ又は2つのC〜Cアルキル基によって置換されたC〜C12の、安息香酸、ヒドロキシル安息香酸、又はアミノ安息香酸;
iv)ベンゼンスルホン酸、1つ又は2つのC〜Cアルキル基によって置換されたC〜C11ベンゼンスルホン酸、場合によってヒドロキシル化したナフタレンスルホン酸、場合によって1つ又は2つのC〜Cアルキル基によって置換されたヒドロキシル化したC11〜C16ナフタレンスルホン酸;
v)ハロゲン化物、アスコルべート、重炭酸塩、チオシアナート;又は
vi)前記の混合物;及び
D)水少なくとも60%;
を含有し、400〜600nmで2.5cmセル中で25℃で測定される場合に、0〜90NTUの透明度を有するVOC不含水中油型(o/w)マイクロエマルションである。
【0007】
短縮形w/wは、質量対質量割合を示し、即ち特定の成分の質量とマイクロエマルションの質量との間の割合である
「VOC」とは、本発明では、Enviromental Protection Agencyによって定義された揮発性有機化合物を意味し、特にC〜Cアルカノール、例えばエタノール、又はC〜Cアルカンジオール、例えばエチレングリコールを意味する。
【0008】
「マイクロエマルション」とは、本発明では自然発生的に生じ、かつ0゜〜80℃の温度において10〜150nmの液滴サイズを有する分散体を意味する。しかし、本発明の特定の実施態様によれば、本マイクロエマルションは、10〜60nm、又は10〜40nmの液滴サイズでさえ、0゜〜80℃の温度において有する。
【0009】
「透明度(clarity)」とは、本発明では、本発明のマイクロエマルションにより、90゜の角度での光散乱の尺度を意味する。本発明の特筆すべき実施態様によれば、前記マイクロエマルションは、上記で指定した同様の条件において測定した際に、0〜50NTUの透明度を有する。
【0010】
本発明の特定の実施態様においては、表面張力の特定の範囲も、本発明のマイクロエマルションを特徴付けてよい。確かに、本発明の特定の実施態様によれば、マイクロエマルションは、25℃で測定した際に、22〜30mN/m、又は24〜28mN/mの表面張力でさえも有する。従って、前記マイクロエマルションは、低極性油を大量に含有してよい。
【0011】
低極性油を大量に含有する高度に透明な(crystal clear)VOC不含マイクロエマルションを得る可能性は、意外な結果である。確かに、当業者には、低極性油を水中に可溶化させること、特に大量に可溶化させることは、ある種のVOCs、又は1よりも低い油/界面活性剤割合の使用なしでは困難であることは公知である。
【0012】
上記したように、本発明のマイクロエマルションは、非常に良好な安定性をも示し、例えば相分離は適当な時間枠内では観察されない。確かに、本発明のマイクロエマルションは通常は2〜60℃の温度で、少なくとも30日間安定である。更に、ある場合においては、ほとんど熱力学的な安定性、例えば2〜45℃の温度で6ヶ月より長い熱力学的な安定性が得られた。
【0013】
しかし、本発明のマイクロエマルションが非常に良好な安定性を示す温度範囲は、使用した、油、界面活性剤系及び可溶化剤成分の正確な性質と同様に、量の作用でもあることを述べておく。従って、ある場合においては、前記マイクロエマルションの安定温度範囲は、より狭く、例えば5゜〜45℃だけであるか、又はより広く、例えば0゜〜80℃である可能性がある。
【0014】
「油」とは、本発明では、ほとんど水に可溶でない親油性有機液体を意味する。適した油の例は、香料又は賦香組成物を少なくとも75%w/w、又は少なくとも90%w/wでさえも含有する液体である。前記油は、香料からなってもよい。更に、適した油の更なる例は、フレーバー又はフレーバー組成物である。
【0015】
特に、香料又は賦香組成物として、全ての賦香成分、又は、よりしばしば生じる通り、香料製造において現在使用される賦香成分の全ての混合物、例えば快い嗅覚効果を前記成分が添加される組成物に付予することが可能な化合物の全ての混合物が使用されてよい。前記賦香成分は、天然又は合成由来であってよい。前記賦香成分の詳細な記述は、いかなる場合においても包括的とはならないが、一般的な方法において、前記成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセタート、ニトリル、テルペン系炭化水素、窒素又は硫黄の複素環式化合物及び天然又は合成由来の精油にまで及ぶ、化学的な分類に属することを述べておく。前記成分の性質は、香料に関する専門書、例えば、S.Arctander(Perfume and Flavor Chemicals、Montclair N.J.、USA 1969)又は同様の参考書に見ることができ、これらのより詳細な記載はここでは示さない。前記成分を、一般的な知識に基づいて、及び賦香する製品の性質及び所望する嗅覚的な効果に従って選択することが、当業者は可能である。
【0016】
油、特に香料を含有する油の場合には、場合によって適した溶媒をも、油の25%w/wの量まで、しかし有利には10%w/wより少なく含有してよい。溶媒(VOCでない)の存在は、単分子相の油を得るために、又は前記油の表面張力を調節するために有利である。適した溶媒の例として、極性又は非極性低分子量溶媒、例えばイソパラフィン、パラフィン、炭化水素、シリコーンオイル、過フッ化脂肪族エーテル、グリコールエーテル、グリコールエーテルエステル、又はケトンを挙げてよい。前記溶媒を限定しない例は、ジメチコーン又はシクロメチコーンを含み、これらはChemsil Silicon INC.によってCosmetic Fluid(R) 1288の商標名のもとで製品化され、及びそれぞれCosmetic Fluid(R) 1387、ホホバ油、過フッ化イソブチルメチルエーテル、ジエチルフタラート、ジプロピレングリコール及びミリスチン酸イソプロピルである。
【0017】
その他に可能性のある、油の成分は固定剤である。
【0018】
油の物理的な特性に関し、後者は特定の範囲内にある表面張力を有しなくてはならないことを既に言及した。特定の実施態様に従って、油は25℃で25〜40mN/mの表面張力を有する。従って、油として低極性油を、特に低極性香料を使用することが可能である。「低極性の油又は香料」とは、本発明では例えば、非常に疎水性な成分が豊富な油又は香料、又は極性溶媒を少量しか含まないか、又は完全に極性溶媒を含まない油又は香料を意味する。
【0019】
低極性香料として、テルペンを5%w/w又は20%w/wから99%w/wまで、又は/及びムスクを5〜30%w/wを含有する前記香料を挙げてよい;パーセンテージは、前記油の質量に対して相対的である。
【0020】
前記テルペンは、ウッド又はシトラス由来であってよく、その例はテルピネオール又はd−リモネンであってよい。ムスクの限定しない例は、ヘキサデカノリドである。
【0021】
上記したように、油はマイクロエマルション総質量の1〜30%である。特定の実施態様によれば、油含量は、マイクロエマルションの総質量に対して、有利には3から、又は5から、20%w/wまでである。
【0022】
本発明のまた別の必須要素である界面活性剤系は、前記界面活性剤系の50%w/wより多いイオン性分画と、前記界面活性剤系の50%w/wより少ない非イオン性分画とからなると説明されてもよい。
【0023】
イオン性分画は、1つのイオン界面活性剤を含むか、又は本発明の実施態様に従って、イオン界面活性剤の混合物を含む。イオン界面活性剤は、アニオン、カチオン又は両性界面活性剤の種類である。
【0024】
適したアニオン界面活性剤は、C〜C24のモノスルホン酸又はジスルホン酸、アルキル硫酸、アルキルアリール硫酸、アルキルアリールホスファート、又はカルボン酸、及びスルホン酸又はカルボン酸を有するポリエチレングリコールコポリマーも含んでよい。特定の、しかし前記アニオン界面活性剤を限定しない例は、C〜C12ジアルキルスルホコハク酸(例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、C〜C24アルカリールスルホン酸(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、C〜C15アルキル硫酸(例えばドデシル硫酸ナトリウム)、C10〜C20アシルグルタミン酸(例えばココイルグルタミン酸ナトリウム)又はポリエチレングリコール/ジメチコーンスルホコハク酸(例えばPEG−12 ジメチコーンスルホコハク酸二ナトリウム、The McIntyre GroupからMackanate(R)DC−50の商標名で公知)のナトリウム、カリウム、アンモニウム、又はモノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、又はトリエタノールアンモニウムの塩である。
【0025】
適したカチオン界面活性剤は、脂肪酸のC10〜C35のアンモニウム誘導体、アルコール、アルキルアミドモルホリン又はアミンの塩、及び前記アンモニウム誘導体を有するか又は脂肪族アミンを有するIPDI(イソホロンジイソシアナート)コポリマー及び場合によってポリエチレングリコールを含む。特定の、しかし前記カチオン界面活性剤を限定しない例は、C2030第四級アンモニウムアルキル(例えば臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、又は臭化ジドデシルアンモニウム)、CアルキルN−ココイル−L−アルギナート例えばエチルN−ココイル−L−アルギナートのDL−2−ピロリドン−5−カルボン酸の塩、Ajinomoto Co.、Inc.によって商標名CAE(R)のもとで製品化)、(C1020アミド)(C)アルキルモルホリン(例えば乳酸イソステアルアミドプロピルモルホリン)、N−C1020アミド(C〜Cアルキル)−N,N−ジ(C〜C−アルキル)−N−(C〜C−アルキル)アンモニウムを有するIPDIコポリマー(例えばビス(N−リシンオールエミドプロピルーN,N−ジメチル)/N−エチル アンモニウム硫酸塩/IPDIコポリマー、ALZOから商標名Polyquat(R) PPI−RCの商標名のもとでも公知である)、又はポリエチレングリコール/C10〜C20脂肪族アルキルアミン/IPDIコポリマー(例えばPEGコクアミン/IPDIコポリマー状界面活性剤、ALZOから商標名Polyderm(R) PPI−CA−15のもとでも公知である)のハロゲン化物、サルファート又はカルボキシラートである。
【0026】
適した両性界面活性剤は、C10〜C25ベタイン、アンホアセタート、及びイミダゾリン誘導体、又はポリエチレングリコール/脂肪族アミン/グリシン/IPDIコポリマーを含む。特定の、しかし前記両性界面活性剤を限定しない例は、C10〜C20脂肪族アミドC〜Cアルキルベタイン(例えばココアミドプロピルベタイン)、ココアンホアセタート及びラウロアンホアセタート(例えばココアンホ酢酸ナトリウム、Mackam(R)HPC−32の商標名でMcIntyre Groupによって製品化され公知である)、及びポリエチレングリコール/C10〜C20脂肪族アルキルアミン/グリシン/IPDIコポリマー(例えばPEG−13ソイアミン−グリシン/IPDIコポリマー、Polytaine(R)PPI−SA−15の商標名で、ALZOから公知でもある)である。
【0027】
非イオン分画は、1つの非イオン界面活性剤を含有するか、又は本発明の実施態様に従って、9〜18のHLB値を有する非イオン界面活性剤の混合物を含有してもよい。前記界面活性剤の適した例は以下であり、5〜20つのEO又はPOユニットを含有するエトキシル化及び/又はプロポキシル化した(C〜C12アルキル)フェノールエーテル(例えばポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、一般的な商標名Polystep(R)のもとで公知でもある)、3〜30つのEOユニットを含有するポリエチレングリコールソルビトールエステル(例えばオレイン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸を有するソルビトールエステル、ICIからTweens(R)又はLONZAからGlycosperse(R)の商標名で公知でもある)、C〜C20脂肪酸を有するスクロースエステル(例えばオレイン酸、パルミチン酸、又はステアリン酸を有するスクロースエステル、例えばRyoto Sugar Ester M−1695としてMitsubishi−Kagaku Foods Corporationによって製品化)、2〜30つのEOユニットを含有するエトキシル化脂肪族C〜C20アルコール(例えばエトキシル化第二級C〜C20アルコール)、C〜C20ポリグリセリルエステル(例えばグリセロールポリエチレングリコールオキシステアラート、BASFによって商標名Chremophor(R)CO40のもとで製品化)、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのブロックコポリマー、(例えば商標名Pluronics(R)のもとでBASFから公知である)、2〜30つのEOユニットを含有するエトキシル化グリコールエーテル(例えばPEG−10ステアリルエーテル、商標名Volpo(R)S−10のもとでCRODAから公知である)、又は、2〜10つのEOユニットを含有する脂肪族C〜C11カルボン酸のポリエチレングリコールモノエステル又はポリエチレングリコールジエステル(EOはエチレンオキシド及びPOはポリエチレンオキシドを表す)。
【0028】
本発明によるマイクロエマルションを得るための界面活性剤系の量は、ほとんど、存在する油の量及び使用した可溶化剤成分に依存する。一般的には、可溶化剤成分は、以下に更に開示した量において使用した場合に、油/界面活性剤系のw/w割合が、1〜3であることに気づいた。しかし、しばしば、1.2又は1.5〜2.0の割合を得ることが可能である。
【0029】
本発明のマイクロエマルションのまた別の必須成分は、可溶化剤成分である。「可溶化剤成分」の表現により、本発明では低い分子量、例えば400g/molより少ない低い分子量の有機塩又は無機塩、又は前記前駆体を意味する。可溶化剤成分として、前記塩の混合物も使用してよい。
【0030】
その性質によれば界面活性剤でも溶媒でもない前記化合物は、水への有機化合物の可溶化度を上昇させることが見出されてきた。事実、かつ意外にも、前記塩又はその前駆体は、前記界面活性剤系の油の可溶化能力を促進することが可能である。言い換えると、上記又は下記のように定義された可溶化剤成分の存在下において、同量の界面活性剤は、可溶化剤成分が存在してない場合よりも、より多い油を水相に可溶化させることが可能である。
【0031】
更に、このように得られたマイクロエマルションの透明度は、著しく、かつ意外にも、可溶化剤成分の存在によって改善された。
【0032】
従って、前記塩の少なくとも1つの存在は、少なくとも1の油/界面活性剤系割合、同様に無色明澄外観、即ち高い透明度、より好ましいのであれば低い濁り度を保証するために、必須であることが見出された。
【0033】
本発明の特定の実施態様によれば、適した塩は、ピリジンカルボン酸、プロリン酸、ピロリドンカルボン酸、安息香酸、ヒドロキシル安息香酸、アミノ安息香酸、L−乳酸、L−アスコルビン酸、重炭酸塩、ハロゲン化物、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、1つ又は2つのC〜Cアルキル基によって置換された、安息香酸、ヒドロキシル安息香酸又はアミノ安息香酸のC〜C10誘導体(例えばp−メチル安息香酸又はp−イソプロピル−ヒドロキシル−安息香酸のナトリウム塩)、ベンゼンスルホン酸、1つ又は2つのメチル又はエチル基によって置換されたC〜Cベンゼンスルホン酸(例えばトルエンスルホン酸カリウム)、場合によってヒドロキシル化したナフタレンスルホン酸、1つ又は2つのCアルキル基によって置換された場合によってヒドロキシル化したC11〜C16ナフタレンスルホン酸(例えばブチルフタレンスルホン酸ナトリウム)、C〜Cアルカン酸(例えばペンタン酸のナトリウム塩)のナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムの塩、及び前記塩の全ての混合物からなるグループから選択される。
【0034】
本発明の特定の実施態様によれば、可溶化剤成分は、有利には以下の化合物から選択されてよい:ピロリドンカルボン酸ナトリウム塩(Ajidew NL−50としてAjinomotoから公知である)、安息香酸ナトリウム、L−乳酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、又はコハク酸二ナトリウムである。前記塩の全ての混合物も使用されてよい。
【0035】
上記したように、可溶化剤成分は、マイクロエマルションの総質量に対して0.1〜10%w/wの量において存在する。
【0036】
本発明によるマイクロエマルションを得るための、可溶化剤の正確な量は、油の正確な性質、界面活性剤混合物の正確な性質、特に界面活性剤混合物のイオン性分画及び非イオン性分画のw/w割合の性質、及び存在する油の量に依存する。しかし、一般的にかつ特定の実施態様によれば、前記量は有利には0.1〜5%w/wからなり、又は0.1〜2%w/wからなってもよい。
【0037】
本マイクロエマルションの四番目の構成要素、例えば水に関して、脱イオン水を使用することが有利であることを述べておく。
【0038】
本発明のマイクロエマルションは、選択的な構成要素として、1つ又は複数の成分、例えば着色剤、抗菌剤、酸化防止剤、保存剤、キレート剤又はUV阻害剤を含んでもよい。前記材料の種類は、当業者にとっては公知であり、かつ更なる説明を必要としない。前記成分がマイクロエマルションに添加される場合には常に、これらは3%w/w、又は2%w/wより多くてはならず、前記パーセントはマイクロエマルションの総質量に対して相対的である。
【0039】
本発明のマイクロエマルションは、この分野で公知の全ての方法によって調整されてよい。適した方法は、界面活性剤系を水中に可溶化し、透明なミセル溶液を生じることを含む。生じるミセル溶液に対して、可溶化剤成分が、緩やかな撹拌下で添加され、必要であれば選択的な成分が、最初の油不含マイクロエマルションを生じるために添加される。緩やかな混合下で、生じる油不含マイクロエマルションは、相応量の香料を容易に可溶化し、等方的に透明な、単分子層マイクロエマルション生成物を生じる。強い機械的な力、例えば剪断力は、本発明のマイクロエマルションを製造するためには必要でない。
【0040】
上記した油不含マイクロエマルションは従って優れた可溶化溶媒であり、これは、油、例えば香料又はフレーバーを含有する高度に透明なマイクロエマルションを得ることを可能にする。従って、
I)上記で定義した界面活性剤系1.0〜45%w/w;
II)上記で定義した可溶化剤0.2〜15%w/w;及び
III)水、100%まで;
を含有し、25℃で20〜35mN/mの表面張力を有する前記油不含マイクロエマルションは、本発明のまた別の対象である。
【0041】
本発明の有利な実施態様によれば、油不含マイクロエマルションにおいて、界面活性剤系のw/w量は3.5%〜15%におよび、一方で可溶化剤のw/w量は0.1〜10%に、又は0.1〜5%にさえおよぶ。
【0042】
上記の通り、本発明のマイクロエマルションは、香料を周囲空間に分散させることが可能な消費製品の製造に殊に適している。前記消費製品は、本発明の対象でもある。
【0043】
適した消費製品は、適した容器と共に、及び場合によってエアロゾルを製造するための手段と共に、上記したマイクロエマルションを含有する。前記消費製品を限定しない例は、室内用デオドラント、又はエアフレッシュナー、又は、毛髪又は皮膚用調製物、例えば良質の香料製品である。
【0044】
その他の実施態様において、前記消費製品は、本発明によるマイクロエマルション及び消費製品用ベースを含有する。透明度のために、「消費製品用ベース」とは、本発明では賦香成分と相容性である消費製品を意味することを述べておく。言い換えると、本発明による賦香製品は、機能的な組成物、及び場合によって、消費製品に相応する更なる利得剤、例えば洗剤又はエアリフレッシュナー、及び少なくとも1つの本発明のマイクロエマルションの嗅覚的に有効な量を含有する。適した消費製品ベースは、例えば表面洗浄剤、衛生製品、ヘアケア製品、例えばシャンプー、ボディケア製品、コスメティック調整物、布リフレッシュナー、アイロンウォーター、又はワイプ用品である。
【0045】
消費製品の成分の性質及び種類は、ここではより詳細な記述を必要とせず、これがいかなる場合にも包括的とはならないからで、当業者がその一般的な知識をベースに、かつ前記製品の性質及び所望の効果により、選択することが可能である。
【0046】
本発明の更なる対象は、本発明によるマイクロエマルションの、賦香成分としての使用である。言い換えると、組成物の又は製品の匂い特性を、付予するか、促進するか、改善するか、又は修正するにあたり、前記方法は前記組成物又は製品に、上記に定義したマイクロエマルションの嗅覚的に有効な量を添加することを含む方法である。
【0047】
ここで、本発明を以下の実施例を用いて更に詳細に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
実施例1
本発明による、水中香料マイクロエマルションの調製
テルペン約70%を含有する香料を、以下の成分を前混合することで得た。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
1)ペンタデカノリド;由来:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
2)1−(オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エタノン 由来:International Flavors&Fragrances、USA
3)3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール;由来:Givaudan−Roure SA、Vernier、Switzerland
4)ジヒドロジャスモン酸メチル;由来:Firmenich SA、Geneva、Switzerland。
【0052】
一般的な方法において、本発明によるマイクロエマルションは、第一工程において、ビーカーにおいて脱イオン水、界面活性剤、及び可溶化剤成分を共に混合することで得られた。混合物を、室温において、数分間、全ての一般的な混合装置、例えばマグネチック攪拌機を用いて緩やかに撹拌した。場合によって、撹拌の間に、混合物を窒素ガスシールによって保護してよい。第二工程において、前記水溶液の撹拌下で、フラグランスを添加する。マイクロエマルションが、数分間のうちに生じた。通常は、透明な生成物は、10分間より少ないうちに得られるが、しばしば、即座にでも得られる。
【0053】
この一般的な手順に従い、表1及び2の、油/界面活性剤系割合1.71を有するマイクロエマルションが得られた:
【表3】

【0054】
【表4】

1)LCWからの非イオン界面活性剤の水性ブレンド89.7%
2)Ajinomoto Inc.からのピロリドンカルボン酸ナトリウム50%水溶液
3)87%水溶液、由来:Lonza
【表5】

【0055】
1)NTUは比濁計濁度単位(Nephelometric Turbidity Unit)であり、濁り度計VWR、モデル66120−200(タングステンランプ及び2つの光ヴォルタセルを有し入射光に対して90゜に中心配置、レスポンス400〜600nm)において測定された。
2)スピンドルYULA−15を有するeBrookfield Viscometerで、30rpmで測定。
【0056】
実施例2
本発明による、水中香料マイクロエマルションの調製
表1記載したのと同様の手順に従い、表3及び4の、油/界面活性剤系比1.09を有するマイクロエマルションが得られた:
【表6】

【0057】
【表7】

【0058】
実施例3
本発明による、水中香料マイクロエマルションの調製
香料は、以下の成分を前混合することで得られた:
【表8】

【0059】
【表9】

*ジプロピレングリコール(DIPG)中
**トリエタノールアミン中
1)8,12−エポキシ−13,14,15,16−テトラノルラブダン
2)由来:International Flavors and Fragrances、USA
3)5−アリル−1,2,3−トリメトキシベンゼン;由来:Calchauvet、Grasse、France
4)由来:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
5)ペンタデカノリド;由来:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
6)ジヒドロジャスモン酸メチル;由来:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
7)cis異性体高含量を有するジヒドロジャスモン酸メチル;由来:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
8)1−(オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エタノン;由来:International Flavors and Fragrances、USA
9)3−ヘキセニルメチルカルボナート;由来:International Flavors and Fragrances、USA
10)9−デセン−1−オール;由来:International Flavors and Fragrances、USA。
【0060】
例1に記載した同様の手順及び香料に従い、表5及び6の、油/界面活性剤系比1.71を有するマイクロエマルションが得られた:
【表10】

【0061】
【表11】

【0062】
実施例4
本発明による、水中香料マイクロエマルションの調製
例1に記載したのと同様の手順に従い、表7及び8の、油/界面活性剤系比1.09を有するマイクロエマルションが得られた:
【表12】

【0063】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)25℃で、少なくとも25mN/mの表面張力を有する、油1〜30%w/w;
B)1種類又は数種類のイオン界面活性剤と、1種類又は数種類の非イオン界面活性剤とを含有する界面活性剤系であって、前記イオン界面活性剤は、前記界面活性剤系の少なくとも50%w/wの量にあり、かつ前記非イオン界面活性剤は、前記界面活性剤系の多くとも50%w/wの量にあり;油/界面活性剤系のw/w割合が、1〜3である界面活性剤系;
C)可溶化剤成分としてのピロリドンカルボン酸のナトリウム塩0.1〜10%w/w:
及び
D)水少なくとも60%;
を含有し、
a)C〜C12ジアルキルスルホコハク酸、C〜C24アルカリールスルホン酸、C〜C15アルキル硫酸、C10〜C20アシルグルタミン酸、及びポリエチレングリコール/ジメチコーンスルホコハク酸の、ナトリウム、カリウム、アンモニウム及び、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、及びトリエタノールアンモニウムの塩からなるグループから、アニオン界面活性剤は選択され;
b)C20〜C30第四級アンモニウムアルキル、CアルキルN−ココイル−L−アルギナート、(C10〜C20アミド)(Cアルキル)モルホリン、N−C1020アミド(Cアルキル)−N,N−ジ(Cアルキル)−N−(Cアルキル)アンモニウムを有するIPDIコポリマー、及びポリエチレングリコール/C1020脂肪族アルキルアミン/IPDIコポリマーのハロゲン化物、サルファート又はカルボキシラートからなるグループからカチオン界面活性剤は選択され;
c)C10〜C20脂肪族アミドC〜Cアルキルベタイン、ココアンホアセタート及びラウロアンホアセタート、及びポリエチレングリコール/C10〜C20脂肪族アルキルアミン/グリシン/IPDIコポリマーからなるグループから、両性界面活性剤は選択され;
d)5〜20つのEO又はPOユニットを含有する、エトキシル化及びプロポキシル化した(C〜C12アルキル)フェノールエーテル、3〜30つのEOユニットを含有するポリエチレングリコールソルビトールエーテル、C〜C20脂肪酸を有するスクロースエステル、2〜30つのEOユニットを含有する、エトキシル化脂肪族C〜C20アルコール、C〜C20ポリグリセリルエステル、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのブロックコポリマー、2〜30つのEOユニットを含有する、エトキシル化グリコールエーテル、及び、2〜10つのEOユニットを含有する、脂肪族C〜C11カルボン酸のポリエチレングリコールモノエステル及びポリエチレングリコールジエステルからなるグループから非イオン界面活性剤は選択される
400〜600nmで2.5cmセル中で25℃で測定される場合に、0〜90NTUの透明度を有するVOC不含o/w賦香用マイクロエマルション。
【請求項2】
400〜600nmで2.5cmセル中で25℃で測定される場合に、透明度は0〜50NTUである、請求項1記載の賦香用マイクロエマルション。
【請求項3】
25℃で測定される場合に、前記マイクロエマルションが22〜30mN/mの表面張力を有する、請求項1又は2記載の賦香用マイクロエマルション。
【請求項4】
前記油は、香料を少なくとも75%含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の賦香用マイクロエマルション。
【請求項5】
前記油は、香料を少なくとも90%含む、請求項4記載の賦香用マイクロエマルション。
【請求項6】
前記香料は、テルペン5%w/w〜99%w/w、又は/及びムスク5〜30%w/wを含む、請求項4記載の賦香用マイクロエマルション。
【請求項7】
前記油は、25〜40mN/mの表面張力を25℃で有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の賦香用マイクロエマルション。
【請求項8】
油/界面活性剤系のw/w割合は1.2〜2.0である、請求項1から7までのいずれか1項記載の賦香用マイクロエマルション。
【請求項9】
可溶化剤成分はマイクロエマルションの0.1〜5%w/wである、請求項1から8までのいずれか1項記載の賦香用マイクロエマルション。
【請求項10】
25℃で、22〜30mN/mの表面張力を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の賦香用マイクロエマルション。
【請求項11】
容器と共に、及び場合によってエアロゾルを製造するための手段と共に、請求項1から10までのいずれか1項記載の賦香用マイクロエマルションを含有する、消費製品。
【請求項12】
室内用デオドラント、又は毛髪又は皮膚用調製物の種類の請求項11記載の消費製品。
【請求項13】
請求項1から10までのいずれか1項記載の賦香用マイクロエマルションと、消費製品ベースとを含有する、消費製品。
【請求項14】
組成物の又は製品の匂い特性を、付予するか、促進するか、改善するか、又は修正するにあたり、前記組成物又は製品に、請求項1に記載した賦香用マイクロエマルションの嗅覚的に有効な量を添加することを含む、組成物の又は製品の匂い特性を、付予するか、促進するか、改善するか、又は修正する方法。
【請求項15】
I)請求項1に記載した界面活性剤系1.0〜45%w/w;
II)請求項1に記載した可溶化剤0.2〜15%w/w;及び
III)水、100%まで;
を含有し、25℃で20〜35mN/mの表面張力を有する、油不含かつVOC不含賦香用マイクロエマルション。
【請求項16】
請求項1に記載した界面活性剤系3.5〜15%w/wと、請求項1に記載した可溶化剤0.1〜10%w/wとを含有する、請求項15記載の賦香用マイクロエマルション。

【公開番号】特開2009−102650(P2009−102650A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14249(P2009−14249)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【分割の表示】特願2006−506602(P2006−506602)の分割
【原出願日】平成16年4月19日(2004.4.19)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】