説明

hSLIMの免疫応答調節方法

本発明は、STAT依存性の遺伝子転写を調節する際に使用するためのヒトSLIMポリペプチドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、免疫応答を調節するための手段および方法に関する。
【0002】
本出願は、2005年3月10日に出願された仮出願第60/659,873号、2005年4月7日に出願された仮出願第60/668,984号、および2005年7月18日に出願された仮出願第11/183,324号の恩典を主張し、かつこれらを参照により組み入れる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
STATタンパク質(転写のシグナルトランスデューサーおよび活性化因子)は、シグナル伝達を媒介し、かつ転写因子としても作用する(Ihle et al., Trends Biochem Sci 19, 222-27, 1994(非特許文献1))。サイトカイン受容体の細胞質内ドメイン上の特異的なホスホチロシンペプチドと結合することにより、これらの因子は活性化する。これらのペプチドと結合すると、STATは、Jakチロシンキナーゼによってリン酸化される。活性化されたSTATは、転写因子として作用し、かつ2量体としてDNAに結合する。γインターフェロン、インターロイキン-1、およびインターロイキン-6を含むいくつかのサイトカインの作用は、少なくとも部分的に、STATタンパク質によって媒介される。したがって、STATシグナル伝達およびSTAT依存性転写を調節する方法、ならびにこれらの機能を調節する作用物質をスクリーニングする方法を有することは、治療的目的のために有用であると思われる。
【0004】
【非特許文献1】Ihle et al., Trends Biochem Sci 19, 222-27, 1994
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、単離および精製されたポリペプチドを提供する。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:4において示されるアミノ酸配列を含む。他の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:49において示されるアミノ酸配列を含む。さらに別の態様において、単離および精製されたポリペプチドは、SEQ ID NO:19において示されるアミノ酸配列からなる。本発明はまた、これらのポリペプチドのうちいずれか、およびSEQ ID NO:2に示される野生型hSLIMではない第2のポリペプチドを含む融合タンパク質も提供する。
【0006】
他の態様において、本発明は、これらのポリペプチドのうちいずれかのコード配列またはそのコード配列の相補配列を含む、単離および精製された核酸分子を提供し、その際、このコード配列は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5〜9、およびSEQ ID NO:41〜45をコードしない。核酸分子は、例えば、2本鎖分子、cDNA、またはRNAでよい。本発明はまた、これらの核酸分子を含むベクターも提供する。ベクターは、例えば、細菌ベクター、哺乳動物ベクター、バキュロウィルスベクターでよい。核酸分子はまた、本発明のポリペプチドのコード配列、およびコード配列の上流に位置し、かつコード配列の発現を制御するプロモーターを含む、発現構築物中に存在してもよい。
【0007】
本発明は、発現構築物を含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、例えば、哺乳動物細胞、ヒト細胞、細菌細胞、または昆虫細胞でよい。本発明は、宿主細胞がポリペプチドを発現する条件下で、培地中で宿主細胞を培養する段階、および培地または宿主細胞溶解物からそのポリペプチドを回収する段階を含む、本発明のポリペプチドを作製する方法を提供する。任意で、ポリペプチドは、亜鉛の存在下またはEDTA、DTPA、TPEN、およびEGTAの非存在下で、精製され、かつ/またはリフォールディングされてもよい。
【0008】
本発明は、SEQ ID NO:2において示されるアミノ酸配列を含む、酵素的に活性な野生型hSLIMを作製する方法を提供する。本方法は、野生型hSLIMを精製する段階、および/または亜鉛の存在下で野生型hSLIMをリフォールディングする段階を含む。精製および/またはリフォールディングは、EDTA、DTPA、TPEN、およびEGTAの非存在下で実施され得る。
【0009】
本発明の他の態様は、PDZドメインでもLIMドメインでもないhSLIMポリペプチドの一部分に特異的に結合する抗体である。抗体は、ヒト抗体のポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体でよい。これらは、Fab断片、F(ab')2断片、もしくはFv断片、単鎖抗体、または細胞内抗体でよい。これらの抗体は検出可能な標識を任意で含み得る。
【0010】
本発明はまた、STATタンパク質へのhSLIMポリペプチドの結合を妨害する化合物を同定するための方法も提供する。1つの態様において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および試験化合物が接触させられる。(1)第1のポリペプチドがhSLIMポリペプチドを含み、かつ第2のポリペプチドがSTATタンパク質を含むか、または(2)第1のポリペプチドがSTATタンパク質を含み、かつ第2のポリペプチドがhSLIMポリペプチドを含むかのいずれかである。第2のポリペプチドに結合されるか、第2のポリペプチドから移動させられるか、または第2のポリペプチドに結合するのを妨げられる第1のポリペプチドの量を決定する。試験化合物が、(1)第2のポリペプチドに結合される第1のポリペプチドの量を減少させるか、(2)第2のポリペプチドに結合された第1のポリペプチドに置き換わるか、または(3)第1のポリペプチが第2のポリペプチドに結合するのを妨げる場合、その試験化合物は、STATタンパク質へのhSLIMポリペプチドの結合を妨害する作用物質として同定される。(1)第2のポリペプチドに結合されるか、(2)第2のポリペプチドから移動させられるか、または(3)第2のポリペプチドに結合するのを妨げられる第1のポリペプチドの量を決定するために、抗体を使用することができる。いくつかの態様において、抗体は、hSLIMポリペプチドに特異的に結合する。他の態様において、抗体は、STATタンパク質に特異的に結合する。第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドのいずれかを、固体支持体に固定してよい。これらのポリペプチドのうち一方は、検出可能な標識を任意で含む。また、任意で、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドの一方または双方が融合タンパク質であってもよい。いくつかの態様において、第1のポリペプチドはhSLIMポリペプチドを含み、かつ第2のポリペプチドはSTAT1またはSTAT4を含む。他の態様において、第1のポリペプチドはSTAT1またはSTAT4を含み、かつ第2のポリペプチドはhSLIMポリペプチドを含む。
【0011】
本発明はまた、STAT1またはSTAT4を介した転写を妨害する化合物を同定するための方法も提供する。試験化合物、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、およびレポーター遺伝子の上流にSTAT1結合配列またはSTAT4結合配列を含むレポーター構築物を接触させて、転写混合物を形成させる。(1)第1のポリペプチドがhSLIMポリペプチドを含み、かつ第2のポリペプチドがSTAT1もしくはSTAT4を含むか、または(2)第1のポリペプチドがSTAT1もしくはSTAT4を含み、かつ第2のポリペプチドがhSLIMポリペプチドを含むかのいずれかである。転写混合物がSTAT4を含む場合には、転写混合物をIFNαと接触させ、または転写混合物がSTAT1を含む場合には、転写混合物をIFNγと接触させる。レポーター遺伝子の発現を分析する。試験化合物の存在下でのレポーター遺伝子の発現が、試験化合物の非存在下でのレポーター遺伝子の発現より少ない場合、その試験化合物は、STAT1またはSTAT4を介した転写を妨害する作用物質として同定される。STAT1結合配列またはSTAT4結合配列はGAS配列でよい。接触させる段階は、細胞系または無細胞系においてでよい。これらの方法はまた、試験化合物が、IFNγ産生、STAT1もしくはSTAT4を介した転写、STAT1もしくはSTAT4のリン酸化、Th1細胞もしくはTh2細胞の分化、またはT-bet活性を調節する能力を分析する段階も含み得る。
【0012】
本発明の他の態様は、STAT1またはSTAT4へのhSLIMの結合を妨害する化合物を同定するための方法を提供する。試験化合物と3種の組換えDNA構築物を含む細胞とを接触させる。第1の構築物は、配列特異的なDNA結合ドメインに融合された第1のポリペプチドをコードし、第2の構築物は、転写活性化ドメインに融合された第2のポリペプチドをコードし、かつ第3の構築物は、配列特異的なDNA結合ドメインによって認識されるDNAエレメントの下流にレポーター遺伝子を含む。第1のポリペプチドがhSLIMポリペプチドを含み、かつ第2のポリペプチドがSTAT1もしくはSTAT4を含むか、または第1のポリペプチドがSTAT1もしくはSTAT4を含み、かつ第2のポリペプチドがhSLIM1ポリペプチドを含むかのいずれかである。細胞を試験化合物と接触させ、かつ試験化合物の存在下で、レポーター遺伝子の発現を判定する。試験化合物の存在下でのレポーター遺伝子の発現が、試験化合物の非存在下でのレポーター遺伝子の発現より少ない場合、その試験化合物は、STAT1またはSTAT4へのhSLIMの結合を妨害する作用物質として同定される。これらの方法はまた、試験化合物が、IFNγ産生、STAT1もしくはSTAT4を介した転写、STAT1もしくはSTAT4のリン酸化、Th1細胞もしくはTh2細胞の分化、またはT-bet活性を調節する能力を分析する段階も含み得る。
【0013】
本発明の別の態様は、3種の組換えDNA構築物を含む細胞である。第1の構築物は、配列特異的なDNA結合ドメインを含む第1のポリペプチドをコードし、第2の構築物は、転写活性化ドメインを含む第2のポリペプチドをコードし、かつ第3の構築物は、配列特異的なDNA結合ドメインによって認識されるDNAエレメントの下流にレポーター遺伝子を含み、その際、第1のポリペプチドがhSLIMポリペプチドを含み、かつ第2のポリペプチドがSTATタンパク質を含むか、または第1のポリペプチドがSTATタンパク質を含み、かつ第2のポリペプチドがhSLIMポリペプチドを含むかのいずれかである。STATタンパク質は、例えば、STAT1またはSTAT4でよい。
【0014】
本発明はまた、hSLIMのE3リガーゼ活性のアゴニストまたはアンタゴニストを同定する方法も提供する。hSLIMポリペプチドを試験化合物と接触させ、かつhSLIMポリペプチドのE3リガーゼ活性を分析する。試験化合物の非存在下でのhSLIMポリペプチドのE3リガーゼ活性に比べて、試験化合物によってhSLIMポリペプチドのE3リガーゼ活性が増大する場合、試験化合物をhSLIM E3リガーゼ活性のアゴニストとして同定する。試験化合物の非存在下でのhSLIMポリペプチドのE3リガーゼ活性に比べて、試験化合物によってhSLIMポリペプチドのE3リガーゼ活性が低下する場合、試験化合物をhSLIM E3リガーゼ活性のアンタゴニストとして同定する。リガーゼ活性は、例えば、hSLIMポリペプチドのユビキチン化を検出することによって、またはSTATタンパク質のユビキチン化を検出することによって、分析することができる。STATタンパク質は、例えば、STAT1またはSTAT4でよい。いくつかの態様において、ユビキチン化は、蛍光共鳴エネルギー転移を用いて検出される。他の態様において、ユビキチン化は、DELFIAアッセイ法を用いて検出される。他の態様において、アルファスクリーン法が使用される。これらの方法はまた、試験化合物が、IFNγ産生、STAT1もしくはSTAT4を介した転写、STAT1もしくはSTAT4のリン酸化、Th1細胞もしくはTh2細胞の分化、またはT-bet活性を調節する能力を分析する段階も含み得る。
【0015】
本発明のスクリーニング方法において、hSLIMポリペプチドは、例えば、野生型hSLIM、WT-Δ52-hSLIM(SEQ ID NO:4)でよい。
【0016】
本発明は、活性物質、免疫調節物質、および生理学的に許容されるビヒクルを含む組成物を提供する。活性物質は、例えば、(1)hSLIMポリペプチド、(2)hSLIMポリペプチドをコードする核酸分子、(3)hSLIM遺伝子の転写をサイレンシングするsiRNA分子、(4)hSLIM遺伝子の転写を妨げるアンチセンスオリゴヌクレオチド、(5)hSLIMポリペプチドに特異的に結合する抗体でよい。免疫調節物質は、例えば、(1)ワクチン、(2)樹状細胞、または(3)モノクローナル抗体でよい。本発明の他の組成物は、SEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:16からなる群より選択されるsiRNA分子、ならびに生理学的に許容されるビヒクルを含む。siRNA分子は、ベクター中に存在してよく、ベクターは、例えば、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはアデノウイルスベクターでよい。生理学的に許容されるビヒクルは、非発熱性でよい。hSLIMポリペプチドは、例えば、野生型hSLIM、WT-Δ52-hSLIM(SEQ ID NO:4)でよい。
【0017】
本発明の他の態様は、T細胞によるIFNγ産生を改変(例えば減少もしくは増加)する方法を提供する。いくつかの態様において、T細胞は、hSLIMポリペプチド、またはhSLIMポリペプチドをコードする核酸分子と接触させられる。これらの方法は、T細胞によるIFNγ産生を減少させる。他の態様において、T細胞は、(a)請求項23記載の抗体、(b)SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10からなる群より選択されるsiRNA分子、ならびに(c)SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:27の一部分にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチド、からなる群より選択される反応物と接触させられる。これらの方法では、T細胞によるIFNγ産生が増加する。これらの態様のいずれかにおいて、T細胞は、Th1細胞またはTh2細胞でよい。これらの方法はインビトロまたはインビボで実施することができる。
【0018】
発明の詳細な説明
hSLIMポリペプチド
本発明は、特に、STAT依存性の遺伝子発現を調節するために有用であるhSLIMポリペプチドを提供する。本発明による「hSLIMポリペプチド」には、SEQ ID NO:2において示される野生型hSLIM、およびSEQ ID NO:3〜7において示されるhSLIMアイソフォーム、ならびにSEQ ID NO:2との同一性が78〜99%である(例えば、SEQ ID NO:2と78%、79%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である)アミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。本発明のhSLIMポリペプチドは、好ましくは、以下の機能のうちの1つまたは複数を有する:STATタンパク質(特にSTAT1およびSTAT4)に結合する;E3リガーゼ活性によって、それ自体にユビキチン分子を転移させる;E3リガーゼ活性によって、STATタンパク質(特にSTAT1またはSTAT4)にユビキチン分子を転移させる;STATを介した転写(特にIFNγによって促進されるSTAT1を介した転写、およびIFNαによって促進されるSTAT4を介した転写)を阻害する;STATのリン酸化、T-bet活性、Th1細胞またはTh2細胞の分化、およびIFNγ産生など様々な機能に影響を及ぼす。
【0019】
いくつかの態様において、hSLIMポリペプチドは、1〜50個の保存的アミノ酸置換(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、または1〜25個、1〜15個、1〜10個、もしくは1〜5個の置換)により、SEQ ID NO:2において示される野生型hSLIMと異なる。保存的置換の例には、Gly⇔Ala、Val⇔Ile⇔Leu、Asp⇔Glu、Lys⇔Arg、Asn⇔Gln、およびPhe⇔Trp⇔Tyrが含まれるが、これらに限定されるわけではない。保存的アミノ酸置換は、典型的には、約1〜5個のアミノ酸(すなわち、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸)の範囲に入る。付加的なアミノ酸は、分子中の任意の位置、特にアミノ末端またはカルボキシ末端に付加され得る。アミノ酸付加は、1個、2個、5個、10個、25個、100個、またはそれ以上の付加的なアミノ酸であってよい。hSLIMポリペプチドは、好ましくは、TCEKCST(SEQ ID NO:24)および/またはRHPGCYTCA(SEQ ID NO:25)を含む。より好ましくは、hSLIMポリペプチドは、SEQ ID NO:2のアミノ酸284〜337を含む。
【0020】
関心対象の1つの具体的なhSLIMポリペプチド(WT-Δ52-hSLIMまたはΔ52-(h)SLIM)は、SEQ ID NO:4において示される。このポリペプチドは、SEQ ID NO:2において示される野生型hSLIMと比べて52個のアミノ酸を欠失している。実施例2を参照されたい。
【0021】
hSLIMポリペプチドには、点変異を有するものも含まれる(実施例3およびSEQ ID NO:26を参照されたい)。
【0022】
hSLIMポリペプチドを含む融合タンパク質
hSLIMポリペプチドは、融合タンパク質中に存在し得る。このような融合タンパク質は、ペプチド結合によって一つに融合された2つのポリペプチドセグメントを含む。第1のポリペプチドセグメントは、上記に定義したhSLIMポリペプチドである。第2のポリペプチドセグメントは、完全長タンパク質またはタンパク質断片でよい。融合タンパク質の構築において一般に使用されるタンパク質には、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)を含む自家蛍光タンパク質、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)が含まれる。さらに、ヒスチジン(His)タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV-Gタグ、およびチオレドキシン(Trx)タグを含むエピトープタグが、融合タンパク質構築物において使用される。他の融合タンパク質構築物には、マルトース結合タンパク質(MBP)、S-タグ、Lex A DNA結合ドメイン(DBD)融合物、GAL4 DNA結合ドメイン融合物、および単純ヘルペスウイルス(HSV)BP16タンパク質融合物が含まれ得る。融合タンパク質はまた、異種部分からhSLIMポリペプチドを切り離し、かつ精製することができるように、hSLIMポリペプチドのコード配列と異種タンパク質配列の間に位置する切断部位を含むように人工的に設計されてもよい。
【0023】
融合タンパク質は、当技術分野において公知のように、化学合成することができる。好ましくは、融合タンパク質は、2つのポリペプチドセグメントを共有結合的に連結することによって、または分子生物学分野の標準的手順によって、作製される。当技術分野において公知であるように、例えば、第2のポリペプチドセグメントをコードするヌクレオチドを有する適切なリーディングフレーム中にhSLIMポリペプチドのコード配列を含むDNA構築物を作製し、かつ宿主細胞中でそのDNA構築物を発現させることにより、組換えDNA法を用いて融合タンパク質を調製することができる。融合タンパク質を構築するための多くのキットが、Promega Corporation(Madison, WI)、Stratagene(La Jolla, CA)、CLONTECH(Mountain View, CA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA)、MBL International Corporation(MIC; Watertown, MA)、およびQuantum Biotechnologies(Montreal, Canada; 1-888-DNA-KITS)などの会社から入手可能である。
【0024】
hSLIM核酸分子
hSLIM核酸分子は、1本鎖または2本鎖でよく、かつRNA分子またはDNA分子のいずれかでよい。hSLIM核酸分子は、hSLIMポリペプチドのコード配列またはコード配列の相補配列を含む。野生型hSLIM(SEQ ID NO:2)のコード配列は、SEQ ID NO:1において示される。他のhSLIMコード配列は、SEQ ID NO:27〜35およびSEQ ID NO:40において示される。しかしながら、遺伝コードの縮重があるため、hSLIMポリペプチドをコードする任意のヌクレオチド配列が使用され得る。
【0025】
hSLIM核酸分子の調製
hSLIM核酸分子は、膜成分、タンパク質、および脂質など他の細胞構成要素を含まないように単離することができる。hSLIM核酸分子は、細胞によって産生させ、かつ標準的な核酸精製技術を用いて単離することができるか、またはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)のような増幅技術を用いて、もしくは自動合成機を用いることによって合成することができる。核酸分子を単離するための方法は、ルーチンであり、かつ当技術分野において公知である。核酸分子を得るための任意のこのような技術を用いて、単離されたhSLIM核酸分子を得ることができる。単離されたhSLIM核酸分子は、他の分子を含まないか、または他の分子を少なくとも70%、80%、もしくは90%除いた調製物中に存在する。
【0026】
hSLIM cDNA分子は、標準的な分子生物学技術により、hSLIM mRNAを鋳型として用いて作製することができる。その後、hSLIM cDNA分子は、当技術分野において公知であり、かつSambrook et al.(1989)のような手引書に開示されている分子生物学技術を用いて複製することができる。PCRのような増幅技術を使用して、ヒトゲノムDNAまたはcDNAのいずれかを鋳型として用いて、本発明の核酸分子のさらなるコピーを得ることができる。
【0027】
あるいは、合成化学技術を使用して、hSLIM核酸分子を合成することもできる。hSLIMポリペプチドをコードする配列は、当技術分野において周知の化学的方法を用いて、全体的にまたは部分的に合成することができる(その全体が参照により本明細書に組み入れられるCaruthers et al., Nucl. Acids Res. Symp. Ser. 215-223, 1980; Horn et al. Nucl. Acids Res. Symp. Ser. 225-232, 1980を参照されたい)。遺伝コードの縮重により、hSLIMポリペプチドをコードすると考えられる代替のヌクレオチド配列を合成することが可能になる。
【0028】
hSLIMポリペプチドの調製
hSLIMポリペプチドは、例えば、ヒト細胞からの精製、hSLIM核酸分子の発現、または直接的な化学合成によって、得ることができる。
【0029】
hSLIMポリペプチド精製
hSLIMポリペプチドは、hSLIM核酸分子をトランスフェクトされたヒト宿主細胞を含む、ポリペプチドを発現する任意のヒト細胞から精製することができる。精製されたhSLIMポリペプチドは、ある種のタンパク質、炭水化物、または脂質など通常は細胞中でhSLIMポリペプチドと結合する他の化合物から、当技術分野において周知の方法を用いて分離される。このような方法には、サイズ排除クロマトグラフィー、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、および分取用電気泳動が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0030】
酵素的に活性なhSLIMポリペプチド(すなわち、E3リガーゼ活性を有するhSLIMポリペプチド)は、亜鉛の存在下ならびに/またはEDTA、DTPA、TPEN、およびEGTAなどの亜鉛キレートの非存在下で、ポリペプチドを精製および/またはリフォールディングすることによって、調製することができる。
【0031】
精製されたhSLIMポリペプチドの調製物は少なくとも純度80%であり、好ましくは、これらの調製物の純度は、90%、95%、または99%である。調製物の純度は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動のような当技術分野において公知の任意の手段によって評価することができる。
【0032】
hSLIM核酸分子の発現
hSLIM核酸分子を発現させるために、挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含む発現ベクター中に核酸分子を挿入することができる。当業者には周知である方法を用いて、hSLIMポリペプチドをコードする配列ならびに適切な転写および翻訳の制御エレメントを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、インビトロの組換えDNA技術、合成技術、およびインビボの遺伝子組換えが含まれる。このような技術は、例えば、Sambrook et al.(1989)およびAusubel et al., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York, N.Y., 1989に記載されており、これらの参考文献は、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0033】
様々な発現ベクター/宿主系を用いて、hSLIMポリペプチドをコードする配列を含ませ、かつ発現させることができる。これらには、組換えバクテリオファージ、プラスミド、もしくはコスミドDNAの発現ベクターで形質転換された細菌;酵母発現ベクターで形質転換された酵母などの微生物、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系、ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)もしくは細菌発現ベクター(例えば、TiプラスミドもしくはpBR322プラスミド)で形質転換された植物細胞系、または動物細胞系、特に、ヒト系を含む哺乳動物系が含まれるが、これらに限定されるわけではない。その全体が参照により本明細書に組み入れられるWO 01/98340を参照されたい。
【0034】
宿主細胞
宿主細胞は、例えば、細菌細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、またはヒト細胞でよい。宿主細胞株は、挿入された配列の発現を調節する能力、または発現されたhSLIMポリペプチドを所望の様式で処理する能力に関して選択され得る。ポリペプチドのこのような修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化が含まれるが、これらに限定されるわけではない。ポリペプチドの「プレプロ」型を切断する翻訳後プロセッシングもまた、正確な挿入、フォールディング、および/または機能を促進するために使用され得る。翻訳後の活動のための特定の細胞機構および特徴的なメカニズムを有する様々な宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、HEK293、およびWI38)が、American Type Culture Collection(ATCC; 10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209)から入手可能であり、かつ外来タンパク質の正確な修正およびプロセッシングを確実にするように選択することができる。WO 01/98340を参照されたい。
【0035】
あるいは、hSLIM核酸分子を含み、かつhSLIMポリペプチドを発現する宿主細胞は、当業者に公知の様々な手順によって同定することもできる。例には、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ法(RIA)、および蛍光活性化細胞選別(FACS)が含まれる。その全体が参照により本明細書に組み入れられるHampton et al., SEROLOGICAL METHODS: A LABORATORY MANUAL, APS Press, St. Paul, Minn., 1990)およびMaddox et al., J. Exp.Med. 158, 1211-1216, 1983)。WO 01/98340も参照されたい。
【0036】
多種多様の標識および結合技術が当業者には公知であり、かつこれらは、様々な核酸アッセイ法およびアミノ酸アッセイ法において使用され得る。hSLIMポリペプチドをコードする核酸分子に関係した配列を検出するための標識されたハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプローブを作製するための方法には、オリゴ標識、ニックトランスレーション、エンドラベリング、または標識ヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。あるいは、mRNAプローブを作製するために、hSLIMポリペプチドをコードする配列をベクター中にクローニングすることもできる。このようなベクターは当技術分野において公知であり、市販されており、かつ、標識ヌクレオチドおよびT7、T3、またはSP6など適切なRNAポリメラーゼの添加によってインビトロでRNAプローブを合成するのに使用することができる。これらの手順は、様々な市販されているキット(Amersham Pharmacia Biotech、Promega、およびUS Biochemical)を用いて実施することができる。検出を容易にするために使用され得る適切なレポーター分子または標識には、放射性核種、酵素、および蛍光性物質、化学発光物質、または発色物質、ならびに基質、補助因子、阻害因子、および磁性粒子などが含まれる。
【0037】
hSLIMポリペプチドの発現および精製
hSLIMポリペプチドをコードするヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、細胞培養物からのタンパク質の発現および回収に適した条件下で培養することができる。形質転換細胞によって産生されたポリペプチドは、使用される配列および/またはベクターに応じて、分泌され得るか、または細胞内に含まれ得る。当業者には理解されるように、hSLIMポリペプチドをコードする核酸分子を含む発現ベクターは、原核細胞膜もしくは真核細胞膜を通って可溶性hSLIMポリペプチドが分泌されるように指示するか、または膜結合型hSLIMポリペプチドが膜に挿入されるように指示する、シグナル配列を含むように設計することができる。WO 01/98340を参照されたい。
【0038】
hSLIMポリペプチドの化学合成
hSLIMポリペプチドは、固相技術を用いる直接的ペプチド合成(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85, 2149-2154, 1963; Roberge et al., Science 269, 202-204, 1995)のような、アミノ酸配列を合成するための化学的方法を用いて作製することができる。タンパク質合成は、手動技術を用いて、または自動化によって実施することができる。自動合成は、例えばApplied Biosystems 431A Peptide Synthesizer(Perkin Elmer)を用いて実現することができる。任意で、hSLIMポリペプチドの断片を別々に合成し、かつ完全長分子を作製するための化学的方法を用いて結合してもよい。WO 01/98340を参照されたい。
【0039】
当業者には理解されるように、非天然のコドンを有する、hSLIMポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を作製することが有利な場合がある。例えば、特定の原核宿主または真核宿主によって好まれるコドンを選択して、タンパク質発現の速度を速めるか、または、天然の配列から生成される転写物よりも長い半減期のような望ましい特性を有するRNA転写物を作製することができる。
【0040】
当技術分野において一般に公知の方法を用い、本明細書において開示されるヌクレオチド配列を操作して、限定されるわけではないが、ポリペプチドまたはmRNA生成物のクローニング、プロセッシング、および/または発現を変更する改変を含む様々な理由でhSLIMポリペプチドのコード配列を改変することができる。ランダム断片化によるDNAシャッフリング、ならびに遺伝子断片および合成オリゴヌクレオチドのPCR再構成を用いて、ヌクレオチド配列を操作することができる。例えば、部位特異的変異誘発を用いて、新しい制限部位を挿入し、グリコシル化パターンを改変し、コドン選択を変更し、スプライスバリアントを作製し、変異を導入することなどができる。
【0041】
hSLIMポリペプチドに特異的に結合する抗体
hSLIMポリペプチドのエピトープに特異的に結合する、当技術分野において公知である任意のタイプの抗体を作製することができる。「抗体」という用語は、完全な免疫グロブリン分子、ならびに抗原に結合することができるその断片を含む。これらには、ハイブリッド(キメラ)抗体分子(例えば、Winter et al., Nature 349, 293-99, 1991; 米国特許第4,816,567号);F(ab')2断片およびF(ab)断片ならびにFv分子;非共有結合性ヘテロダイマー(例えば、Inbar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 69, 2659-62, 1972; Ehrlich et al., Biochem 19, 4091-96, 1980); 単鎖Fv分子(sFv)(例えば、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85, 5897-83, 1988); 二量体および三量体の抗体断片構築物;ミニ抗体(例えば、Pack et al., Biochem 31, 1579-84, 1992; Cumber et al., J. Immunology 149B, 120-26, 1992);ヒト化抗体分子(例えば、Riechmann et al., Nature 332, 323-27, 1988; Verhoeyan et al., Science 239, 1534-36, 1988; および1994年9月21日に公開された英国特許公開第2,276,169号);ならびにこのような分子から得られる任意の機能的断片、ならびにファージディスプレイ法のような非従来的なプロセスを通じて得られる抗体が含まれる。WO 01/98340を参照されたい。これらの各参考文献は、その全体が本明細書に組み入れられる。好ましくは、これらの抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体を得る方法は、当技術分野において周知である。細胞内抗体(「イントラボディ」)が好ましい。
【0042】
典型的には、少なくとも6個、8個、10個、または12個の連続的なアミノ酸が、エピトープを形成するのに必要である。しかしながら、非連続的なアミノ酸を含むエピトープは、より多くのアミノ酸、例えば少なくとも15個、25個、または50個のアミノ酸を必要とする場合がある。好ましくは、hSLIM抗体は、PDZドメインにもLIMドメインにも結合しない。
【0043】
hSLIM抗体は、治療用に、ならびに、ウェスタンブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ法、免疫組織化学的アッセイ法、免疫沈降法などの免疫化学的アッセイ法、または当技術分野において公知である他の免疫化学的アッセイ法において使用することができる。様々なイムノアッセイ法を用いて、所望の特異性を有する抗体を同定することができる。競合的結合またはイミノラジオメトリックアッセイ法のための多数のプロトコールは、当技術分野において周知である。このようなイムノアッセイ法は、典型的には、免疫原と、その免疫原に特異的に結合する抗体との複合体形成の測定を含む。
【0044】
本発明の抗体は、酵素標識、蛍光標識、発光標識、同位体標識、または親和性標識など検出可能な標識を含んでよい。
【0045】
典型的には、hSLIMポリペプチドに特異的に結合する抗体は、免疫化学的アッセイ法において使用された場合、他のタンパク質の場合に提供される検出シグナルよりも、少なくとも5倍、10倍、または20倍高い検出シグナルを提供する。好ましくは、hSLIMポリペプチドに特異的に結合する抗体は、免疫化学的アッセイ法において他のタンパク質を検出せず、かつ溶液からhSLIMポリペプチドを免疫沈降させることができる。
【0046】
hSLIMアンチセンスオリゴヌクレオチド
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定のDNA配列またはRNA配列に相補的なヌクレオチド配列である。細胞中に導入されると、相補的ヌクレオチドは、細胞によって産生された天然配列と結合して複合体を形成し、かつ転写または翻訳のいずれかを阻止する。好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが少なくとも11ヌクレオチドであるが、少なくとも12、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50、またはそれ以上のヌクレオチド長でもよい。より長い配列を使用することもできる。アンチセンスオリゴヌクレオチド分子をDNA構築物中に提供し、かつ前述したように細胞中に導入して、細胞中のhSLIM遺伝子生成物のレベルを減少させることができる。
【0047】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、または双方の組合せでよい。オリゴヌクレオチドは、手動で、または自動合成機によって、アルキルホスホナート、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、アルキルホスホノチオアート、アルキルホスホナート、ホスホルアミダート、リン酸エステル、カルバマート、アセトアミダート、カルボキシメチルエステル、カルボナート、およびリン酸トリエステルなどリン酸ジエステルではないヌクレオチド間結合により、1つのヌクレオチドの5'末端を別のヌクレオチドの3'末端と共有結合的に連結することにより、合成することができる。その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Brown, Meth. Mol. Biol. 20, 1-8, 1994; Sonveaux, Meth. Mol. Biol. 26, 1-72, 1994; Uhlmann et al., Chem.Rev. 90, 543-583, 1990を参照されたい。
【0048】
hSLIM遺伝子発現の改変は、hSLIM遺伝子の制御領域、5'領域、または調節領域と二重鎖を形成すると考えられるアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計することによって実現することができる。転写開始部位に由来するオリゴヌクレオチド、例えば開始部位から-10〜+10の間の位置が好ましい。同様に、「三重らせん」塩基対合の方法論を用いて、阻害を実行することができる。三重らせん対合は、ポリメラーゼ、転写因子、またはシャペロンの結合に十分なだけ二重らせんが開く能力を阻害するため、有用である。三重DNAを使用する治療的進歩は、文献に記載されている(例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Gee et al., HuberおよびCarr, MOLECULAR AND IMMUNOLOGIC APPROACHES, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, N. Y., 1994)。アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、転写物がリボソームに結合するのを妨げることにより、mRNAの翻訳を阻止するように設計することもできる。WO 01/98340を参照されたい。
【0049】
hSLIMのsiRNA分子
siRNA分子(「低分子干渉」RNAまたは「短鎖干渉」RNA)は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、US2004/0235171に記載されている。本発明によるhSLIM siRNA分子は、hSLIM遺伝子を標的とする、ヌクレオチドのRNA二重鎖である。二重鎖は、RNA分子の2つの領域の間の相補的対合によって形成される構造体である。siRNAの二重鎖部分のヌクレオチド配列は、hSLIM遺伝子のヌクレオチド配列に相補的であるため、ターゲティングが起こる。
【0050】
いくつかの態様において、siRNAの二重鎖の長さは、30ヌクレオチド未満である。いくつかの態様において、二重鎖は、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、または10ヌクレオチド長でよい。いくつかの態様において、二重鎖の長さは、19〜25ヌクレオチド長である。siRNAのRNA二重鎖部分は、ヘアピン構造の一部分でよい。二重鎖部分に加えて、ヘアピン構造は、二重鎖を形成する2つの配列の間に位置するループ部分を含んでもよい。ループの長さは様々でよい。いくつかの態様において、ループは、5、6、7、8、9、10、11、12、または13ヌクレオチド長である。ヘアピン構造はまた、3'または5'にオーバーハング部分を含み得る。いくつかの態様において、オーバーハングは、0、1、2、3、4、または5ヌクレオチド長の3'または5'のオーバーハングである。
【0051】
好ましいhSLIM siRNA分子は、SEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:16において示される。
【0052】
スクリーニング方法
本発明は、試験化合物を、hSLIMがSTAT1またはSTAT4などのSTATタンパク質に結合する能力、E3リガーゼ活性を含む、hSLIM機能に影響を及ぼす能力について、ならびに、STATのリン酸化、STATを介した転写、IFNγ産生、Th1細胞またはTh2細胞の分化、およびT-bet活性などhSLIMの下流の機能に影響を及ぼす能力についてスクリーニングするためのアッセイ法を提供する。
【0053】
hSLIMの結合活性またはhSLIMの機能活性を増大させる試験化合物は、喘息、アレルギー性鼻炎、および慢性のウイルス感染症、ならびに全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、重症筋無力症、多発性硬化症、I型糖尿病、シェーグレン症候群、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、橋本甲状腺炎、尋常性天疱瘡、強皮症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、多発性筋炎および皮膚筋炎、悪性貧血、強直性脊椎炎、血管炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病などの自己免疫障害を治療するための潜在的な治療物質である。
【0054】
hSLIMの結合活性またはhSLIMの機能活性を低減させる試験化合物は、悪性腫瘍(例えば、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連リンパ腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、乳癌、気管支腺腫、カルチノイド腫瘍、副腎皮質癌、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、子宮内膜癌、膣癌、上皮癌、子宮内膜癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、ヘアリー細胞白血病、肝臓癌、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、ホジキン病、肺癌、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、前立腺癌、網膜芽細胞腫、急性リンパ芽球性白血病、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍)、ならびに移植および移植片拒絶を治療するための潜在的な治療物質である。
【0055】
試験化合物
試験化合物は、当技術分野において既知の薬理学的作用物質でよく、またはいかなる薬理学的活性を有することもこれまで分かっていない化合物でもよい。これらの化合物は天然のもの、または実験室で設計されたものでよい。これらは、微生物、動物、または植物から単離することができ、かつ組換えによって作製するか、または当技術分野において公知の化学的方法によって合成することができる。所望の場合は、試験化合物は、限定されるわけではないが、生物学的ライブラリー、空間的に位置指定可能なパラレルな固相ライブラリーまたは液相ライブラリー、デコンボリューションを要する合成ライブラリー法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー法、およびアフィニティクロマトグラフィー選別を使用する合成ライブラリー法を含む、当技術分野において公知である多数のコンビナトリアルライブラリー法のいずれかを用いて得ることができる。
【0056】
分子ライブラリーを合成するための方法は、当技術分野において周知である(例えば、De Witt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90, 6909, 1993; Erb et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91, 11422, 1994; Zuckermann et al., J. Med. Chem. 37, 2678, 1994; Cho et al., Science 261, 1303, 1993; Carell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33, 2059, 1994; Carell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33, 2061; Gallop et al., J. Med. Chem. 37, 1233, 1994を参照されたい)。化合物のライブラリーは、溶液中(例えば、Houghten, BioTechniques 13, 412-421, 1992を参照されたい)、またはビーズ(Lam, Nature 354, 82-84, 1991)、チップ(Fodor, Nature 364, 555-556, 1993)、細菌もしくは芽胞(Ladner,米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cull et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89, 1865-1869, 1992)、もしくはファージ(ScottおよびSmith, Science 249, 386-390, 1990; Devlin, Science 249, 404-406, 1990); Cwirla et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 97, 6378-6382, 1990; Felici, J. Mol. Biol. 222, 301-310, 1991;およびLadner, 米国特許第5,223,409号)上で提示され得る。これらの各参考文献は、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0057】
ハイスループットなスクリーニング
本発明のスクリーニング方法は、ハイスループットなスクリーニング形式で使用することができる。ハイスループットなスクリーニングによって、多くの別々の化合物を並行して試験し、その結果、多数の試験化合物を迅速にスクリーニングすることができる。最も一般的に確立された技術では96ウェルのマイクロタイタープレートを使用するが、384ウェルまたは1536ウェルのプレートも使用され得る。当技術分野において公知であるように、様々な機器、材料、ピペット、ロボット、プレート洗浄機、およびプレートリーダーは市販されている。
【0058】
結合アッセイ法
結合アッセイ法において、試験化合物またはhSLIMポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:4に示される野生型hSLIMもしくはWT-Δ52-hSLIM)のいずれかは、蛍光標識、放射性同位体標識、化学発光標識、または西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、もしくはルシフェラーゼなどの酵素標識など検出可能な標識を含み得る。その場合、hSLIMポリペプチドに結合している試験化合物の検出は、例えば、電波放出の直接計数によって、シンチレーション計数によって、または適切な基質が検出可能な生成物に変換されるのを測定することによって、遂行することができる。
【0059】
あるいは、hSLIMポリペプチドへの試験化合物の結合は、反応体のどれも標識せずに判定することもできる。例えば、マイクロフィジオメーターを用いて、試験化合物とhSLIMポリペプチドの結合を検出することができる。マイクロフィジオメーター(例えばCytosensor(商標))は、細胞がその環境を酸性にする速度を、光で位置指定可能な電位差センサー(LAPS)を用いて測定する分析用機器である。この酸性化速度の変化は、試験化合物とhSLIMポリペプチドとの相互作用の指標として使用され得る(McConnell et al., Science 257, 1906-1912, 1992)。
【0060】
試験化合物がhSLIMポリペプチドに結合する能力の判定はまた、リアルタイムな2分子相互作用解析(BIA)(SjolanderおよびUrbaniczky, Anal. Chem. 63, 2338-2345, 1991、ならびにSzabo et al., Curr. Opin. Struct. Biol. 5, 699-705, 1995)のような技術を用いて遂行することもできる。BIAは、いかなる反応体も標識せずに、リアルタイムで生体分子特異的な相互作用を研究するための技術である(例えば、BIAcore(商標))。光学的現象の表面プラズモン共鳴(SPR)における変化を、生物学的分子間のリアルタイムな反応の指標として使用することができる。
【0061】
本発明のさらに別の局面において、hSLIMポリペプチドを、2ハイブリッドアッセイ法または3ハイブリッドアッセイ法において「ベイトタンパク質」として使用して(例えば、米国特許第5,283,317号; Zervos et al., Cell 72, 223-232, 1993; Madura et al., J.Biol.Chem. 268, 12046-12054, 1993; Bartel et al., BioTechniques 14, 920-924, 1993; Iwabuchi et al., Oncogene 8, 1693-1696, 1993;およびBrent WO 94/10300を参照されたい)、hSLIMポリペプチドに結合するか、またはhSLIMポリペプチドと相互に作用し、かつその活性を調節する他のタンパク質を同定することができる。
【0062】
2ハイブリッドの系は、分離可能なDNA結合ドメインおよび活性化ドメインからなる大半の転写因子のモジュラー(modular)性に基づいている。手短に言えば、このアッセイ法は、2種の異なるDNA構築物を使用する。例えば、一方の構築物では、hSLIMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、公知の転写因子(例えばGAL-4)のDNA結合ドメインをコードするポリヌクレオチドに融合され得る。もう一方の構築物では、未確認のタンパク質(「プレイ」または「試料」)をコードするDNA配列は、公知の転写因子の活性化ドメインをコードするポリヌクレオチドに融合され得る。「ベイト」タンパク質および「プレイ」タンパク質がインビボで相互作用して、タンパク質依存性の複合体を形成することができる場合には、その転写因子のDNA結合ドメインおよび活性化ドメインは、接近する。この接近により、転写因子に応答する転写調節部位に機能的に連結されたレポーター遺伝子(例えばLacZ)の転写が可能になる。レポーター遺伝子の発現は検出することができ、かつ機能的な転写因子を含む細胞コロニーを単離し、それを用いて、hSLIMポリペプチドと相互作用するタンパク質をコードするDMA配列を得ることができる。
【0063】
反応体の一方または双方の未結合型から結合型を分離するのを容易にするため、ならびにアッセイ法の自動化に対応するために、hSLIMポリペプチド(もしくは核酸分子)または試験化合物のいずれかを固定化することが望ましい場合がある。したがって、hSLIMポリペプチド(もしくは核酸分子)または試験化合物のいずれかが、固体支持体に結合され得る。適切な固体支持体には、ガラススライドもしくはプラスチックスライド、組織培養プレート、マイクロタイターウェル、チューブ、シリコンチップ、または(限定されるわけではないが、ラテックスビーズ、ポリスチレンビーズ、もしくはガラスビーズを含む)ビーズのような粒子が含まれるが、これらに限定されるわけではない。共有結合および非共有結合、受動的吸着、または、ポリペプチド(もしくは核酸分子)もしくは試験化合物および固体支持体にそれぞれ結合された結合部分のペアの使用を含む、当技術分野において公知である任意の方法を用いて、酵素ポリペプチド(もしくはポリヌクレオチド)または試験化合物を固体支持体に結合させることができる。試験化合物は、個々の試験化合物の位置を追跡できるように、好ましくは、整列して固体支持体に結合される。hSLIMポリペプチド(または核酸分子)への試験化合物の結合は、反応物を入れるのに適した任意の容器中で遂行することができる。このような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管、および微量遠心機用チューブが含まれる。
【0064】
1つの態様において、hSLIMポリペプチドは、hSLIMポリペプチドが固体支持体に結合されるのを可能にするドメインを含む融合タンパク質中に存在する。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St.Louis, Mo.)またはグルタチオン誘導体化したマイクロタイタープレート上に吸着させることができ、これらは、次いで、試験化合物または試験化合物および吸着されていないhSLIMポリペプチドと混合される。次いで、この混合物は、複合体形成の助けとなる条件下で(例えば、塩およびpHに関して生理学的条件で)、インキュベートされる。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄して、任意の未結合成分を除去する。反応体の結合は、前述したように、直接的にまたは間接的に判定することができる。あるいは、複合体を固体支持体から分離させた後に、結合を判定することもできる。
【0065】
固体支持体上にタンパク質またはポリヌクレオチドを固定するための他の技術もまた、本発明のスクリーニングアッセイ法において使用することができる。例えば、hSLIMポリペプチド(もしくは核酸分子)または試験化合物のいずれかを、ビオチンおよびストレプトアビジンの結合を利用して固定化することができる。ビオチン化hSLIMポリペプチド(もしくは核酸分子)または試験化合物は、当技術分野において周知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals, Rockford, Ill.)を用いてビオチン-NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)から調製することができ、かつストレプトアビジンでコーティングした96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェル中に固定化することができる。あるいは、hSLIMポリペプチドに特異的に結合するが、hSLIMポリペプチドのE3リガーゼ活性部位のような所望の結合部位を妨害しない抗体を、プレートのウェルに誘導体化(derivatized)することができる。抗体結合によって、未結合の標的またはタンパク質をウェル中に捕捉することができる。
【0066】
GSTで固定化された複合体に関して前述した方法に加えて、このような複合体を検出するための方法には、hSLIMポリペプチドまたは試験化合物に特異的に結合する抗体を用いた複合体の免疫検出、hSLIMポリペプチドの活性検出に依拠する酵素結合アッセイ法、および非還元条件下でのSDSゲル電気泳動が含まれる。
【0067】
hSLIMポリペプチドまたは核酸分子に結合する試験化合物のスクリーニングは、完全な細胞において実施することもできる。(天然もしくは導入された)hSLIMポリペプチドまたは核酸分子を含む任意の細胞を、細胞ベースのアッセイ系において使用することができる。hSLIMポリペプチドまたは核酸分子への試験化合物の結合は、前述したように判定することができる。
【0068】
E3リガーゼ活性
基質タンパク質のユビキチン化は、3段階のプロセスを経て起こる。第1に、ユビキチンが、ユビキチン活性化酵素のE1によって活性化され、次いで、ユビキチン結合酵素のE2に引き渡される。次いで、活性化されたユビキチンは、E3ユビキチンリガーゼ酵素によって、標的タンパク質に結合させられる。hSLIMのようなRingを含むE3リガーゼの場合、E3リガーゼそれ自体もまた、ユビキチン化される。
【0069】
したがって、本発明のいくつかの態様において、試験化合物は、hSLIMポリペプチドのE3リガーゼ活性を増大または低減させる能力に関して試験される。試験化合物は、好ましくは、hSLIMポリペプチドのE3リガーゼ活性を、試験化合物の非存在下でのhSLIMポリペプチドのE3リガーゼ活性に比べて、少なくとも約10%、好ましくは約50%、より好ましくは約75%、90%、または100%、増大または低下させる。
【0070】
E3リガーゼ活性は、当技術分野において公知である任意の手段によって測定することができる。例えば、1-蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を用いて、無細胞アッセイ法においてユビキチン転移を測定することができる。1つの態様において、このアッセイ法は、ユビキチン化されたhSLIMを検出する。別の態様において、このアッセイ法は、STAT1またはSTAT4などのSTATタンパク質をhSLIMがユビキチン化する能力を検出する。
【0071】
いずれのFRETアッセイ形式においても、ユビキチンは、ビオチンで前標識され、かつE1およびE2によってhSLIMに転移させられる。目的がhSLIMのユビキチン化を検出することである場合、GST-hSLIMまたはHA-hSLIMなどのタグ化hSLIMがこのアッセイ法において使用される。タグ化hSLIMは、ATPおよびビオチン-ユビキチンの存在下で、E1およびE2と共にインキュベートされる。化合物および対照が反応に添加される。酵素反応の終結時に、Bio-Ubでタグ化したhSLIMは、アロフィコシアニンで標識したストレプトアビジン(APC-SA)、次いで、LANCEユーロピウム(Eu3+)キレートで標識した(それぞれ抗GSTまたは抗HAなどの)抗タグ抗体と共にプレインキュベートされる。ユビキチン化が存在する場合、Eu3+およびAPCは接近しており、2つの蛍光標識間でのエネルギー転移が可能になる。
【0072】
あるいは、His-STAT1またはhis-STAT4などのタグ化STATは、ビオチン-ユビキチンと一緒に、E1、E2、およびhSLIMと共にインキュベートされる。Bio-Ub-STATは、アロフィコシアニンで標識したストレプトアビジン(APC-SA)およびLANCE Eu3+で標識した(抗hisのような)抗タグ抗体を用いて検出される。FRETは、340nmでのEu3+の励起および665nmのAPC発光波長での時間分解蛍光を用いて測定される。
【0073】
ユビキチン転移はまた、アロフィコシアニンで標識したストレプトアビジン(APC-SA)を用いて測定することもでき、かつLANCE Eu3+で標識した抗タグ抗体は、DELFIAアッセイ法の読出し用に使用される。
【0074】
FRETまたはDELFIAの代替のアプローチは、アルファスクリーン法としても公知である近接アッセイ法である。タグ化hSLIMタンパク質は、前述したようにユビキチン化される。ユビキチン化されたタグ化hSLIMは、抗タグアクセプタービーズおよびストレプトアビジンドナービーズによって捕捉される。ユビキチン化されたタグ化hSLIMに同時に結合することにより誘導される、アクセプタービーズおよびドナービーズの接近によって、アルファスクリーンシグナルの生成が可能になる。
【0075】
STATタンパク質の転写活性
細胞ベースのレポーターアッセイ法を用いて、STAT1またはSTAT4などのSTATタンパク質の転写活性を測定することができる。
【0076】
STAT1およびSTAT4は、リン酸化および活性化されると、核へと移行し、かつ特定のプロモーター上のコンセンサス部位に結合し、それによって遺伝子発現を調節する、転写因子である。これらの特性を用いて、細胞ベースのレポーターアッセイ法が開発された。STAT結合部位、すなわちインターフェロンγによって活性化される配列(GAS)部位が、レポータープラスミド中のフォチナス・ピラリス(Photinus pyralis)(ホタル)ルシフェラーゼ遺伝子の上流の6つの反復配列(repeat)中にクローニングされた。STAT1またはSTAT4の転写活性化により、ルシフェラーゼ発現が増大する。hSLIMによるSTATタンパク質の調節は、産生されるGAS-Lucの量に反映される。ルシフェラーゼ発現は、照度計を用いて定量され、かつ発光と直接相関している。
【0077】
このアッセイ系を用いて、以下の実施例において示されるデータが得られ、かつこのアッセイ系は、ハイスループットなアッセイ系向けに容易に修正することができる。懸濁状態で増殖させた細胞は、適切な構築物でトランスフェクトし、かつ96ウェルプレート、384ウェルプレート、または1536ウェルプレートなどのマルチウェルプレートに入れることができる。これらの細胞は、追加のみ(add-only)の形式を用いて、化合物の存在下または非存在下でインターフェロンにて刺激され、溶解され、かつルシフェラーゼ発現について評価される。
【0078】
hSLIM遺伝子発現
別の態様において、試験化合物は、hSLIM遺伝子発現に影響を及ぼす能力についてスクリーニングされる。hSLIM核酸分子が試験化合物と接触させられ、かつ核酸分子のRNA生成物またはポリペプチド生成物の発現が判定される。試験化合物の存在下での適切なmRNAまたはポリペプチドの発現レベルが、試験化合物の非存在下でのmRNAまたはポリペプチドの発現レベルと比較される。次いで、この比較に基づいて、試験化合物は、発現の調節物質として同定され得る。
【0079】
このようなスクリーニングは、無細胞アッセイ系または完全な細胞のいずれかにおいて実施することができる。hSLIM核酸分子を発現する任意の細胞が、細胞ベースのアッセイ系において使用され得る。hSLIM核酸分子は細胞中に天然に存在してもよく、または前述したもののような技術を用いて導入されてもよい。初代培養物または樹立細胞株のいずれかを使用することができる。
【0080】
hSLIMのmRNAまたはポリペプチドの発現レベルは、mRNAまたはポリペプチドを検出するための当技術分野において周知の方法によって決定することができる。質的方法または定量的方法のいずれも使用することができる。hSLIM核酸分子のポリペプチド生成物の存在は、例えば、ラジオイムノアッセイ法、ウェスタンブロット法、および免疫組織化学などの免疫化学的方法を含む、当技術分野において公知の様々な技術を用いて、決定することができる。あるいは、ポリペプチド合成は、hSLIMポリペプチド中への標識アミノ酸の取込みを検出することにより、インビボで、細胞培養物中で、またはインビトロの翻訳系において判定することもできる。
【0081】
IFNγ産生
IFNγ産生は、例えば実施例7において開示したようにして測定することができる。
【0082】
Th1またはTh2の細胞分化
Th1活性に関するインビトロのアッセイ法は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,657,055号; Sundrud et al., J. Immunol. 171, 3542-49, 2003; Shirota et al., J. Immunol. 173, 5002-07, 2004;およびSzabo et al., Annu.Rev.Immunol. 21, 713-58, 2003において開示されている。
【0083】
T-bet活性
T-bet活性に対するhSLIM調節の影響は、当技術分野において周知の方法を用いて評価することができる。その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Afkarian et al., Nature Immunol. 3, 549-57, 2002; Lametschwandtner et al., J. Allergy Clin. Immunol. 113, 987-94, 2004を参照されたい。
【0084】
hSLIM薬学的組成物
本発明はまた、前述したもののような様々な障害を治療するために患者に投与することができる薬学的組成物も提供する。本発明の薬学的組成物は、例えば、hSLIMポリペプチド、hSLIM核酸分子、hSLIMアンチセンスオリゴヌクレオチド、hSLIM遺伝子発現に影響を及ぼすsiRNA、hSLIMポリペプチドに特異的に結合する抗体、または前述の方法によって同定されたhSLIMポリペプチド活性の調節物質を含み得る。薬学的組成物はまた、ワクチン、樹状細胞、およびモノクローナル抗体などの免疫調節物質を含む、付加的な治療物質も含み得る。
【0085】
これらの組成物は、単独で、または、安定化化合物のような少なくとも1種の他の作用物質と組み合わせて投与され得、これらは、限定されるわけではないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、および水を含む任意の生理学的に許容される無菌の薬学的ビヒクル中で投与され得る。典型的には、このようなビヒクルは非発熱性である。これらの組成物は、単独で、または他の治療物質と組み合わせて、患者に投与され得る。
【0086】
活性成分に加えて、これらの薬学的組成物は、薬学的に使用され得る製剤に活性化合物を加工するのを容易にする賦形剤および助剤を含む、薬学的に許容される適切な担体も含み得る。このような成分は、当技術分野において周知である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる01/98340およびREMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Maack Publishing Co., Easton, Pa.)を参照されたい。
【0087】
薬学的組成物を調製した後、適切な容器にそれらを入れ、かつ指定された状態を治療するためにラベルを貼ることができる。そのようなラベリングは、投与の量、頻度、および方法を含む。
【0088】
本発明の薬学的組成物は、限定されるわけではないが、経口、肺、リンパ節内(intranodal)、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、非経口、局所、舌下、または直腸の手段を含む、任意の数の経路によって投与され得る。経口投与用の薬学的組成物は、経口投与に適した投薬量で、当技術分野において周知の薬学的に許容される担体を用いて製剤化することができる。このような担体を用いることにより、薬学的組成物を、患者が経口摂取するための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、および懸濁剤などとして製剤化できるようになる。
【0089】
本開示において引用されるすべての特許、特許出願、および参考文献は、参照により本明細書に明確に組み入れられる。上記の開示は、一般的に本発明を説明する。より完全な理解は、以下の具体的な実施例を参照することにより得ることができるが、それらは、例証のために提供されるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0090】
実施例1
ヒトSLIMのクローニング
完全長WT-SLIM:SUPERSCRIPT III(商標)RT-PCRキット(Invitrogen)を用いて、ヒト精巣全RNAにおいてワンステップRT-PCRを実施することによって、ヒトSLIMをコードしているcDNAをクローニングした。使用されたhSLIMに対する遺伝子特異的プライマーは、以下の配列を有する。

【0091】
次いで、1KbのPCR生成物を、哺乳動物発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)および細菌発現ベクターpGEX(Amersham)中に導入し(directed)、サブクローニングした。配列の解析およびアライメントにより、このcDNA種(SEQ ID NO:1)が、ヒト(Homo sapiens)のPDZおよびLIMドメイン2(ミスティク(mystique))、転写変異体2に対するGeneBank BC021556およびNP067643(SEQ ID NO:2)の登録配列のオープンリーディングフレームに同一な、352アミノ酸残基(SEQ ID NO:2)のオープンリーディングフレームをコードすることが明らかになる。これら2つの配列間には1つだけ塩基対の違いがある。しかしながら、アミノ酸配列は同一である。
【0092】
実施例2
逆転写PCRおよびアイソフォーム同定
ヒトSLIM cDNA配列は、いくつかのタンパク質ファミリーに存在する、次の2つの保存されたドメインを含む:N末端のPDZドメインおよびC末端のLIMドメイン(図1を参照されたい)。SLIM特異的cDNAを増幅するために、本発明者らは、PDZモチーフの3'側およびLIMドメインの5'側にプライマーを配置することによってこれらのドメインを回避するPCRプライマーを設計した(図3)。ヒトSLIMプライマーの配列は以下のとおりであった。

【0093】
トランスフェクション後24〜72時間目に細胞を回収し、かつTRIZOL(登録商標)抽出(Invitrogen)を実施して全RNAを単離した。SUPERSCRIPT III(商標)逆転写酵素、オリゴdT、およびFirst Strand cDNA合成キット(Invitrogen)を用いて、等量の全RNAをcDNAに逆転写した。10pMのフォワードプライマーおよびリバースプライマー、ならびにPLATINUM(登録商標)Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を用いて、30〜32サイクルの増幅で、SLIM特異的PCRを実施した。グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プライマーを対照として使用した。PCR生成物を2%アガロースゲル上で分離し、かつ臭化エチジウムで染色した。
【0094】
同様のアプローチをアイソフォーム同定のために使用した。具体的には、ヒトの脳、肺、脾臓、および精巣に由来する全RNAをBiochainから購入した。前述したように、PCR反応を実施した。PCR生成物をアガロースゲル上で分離し、個々のバンドを抽出し、クローニングし、かつ個々のクローンの配列を確認した。個々のアイソフォームをpGEX6発現ベクター(Amersham)中にサブクローニングし、かつタンパク質発現について検証した。
【0095】
SLIMアイソフォームWT-Δ52-hSLIM:CD4+T細胞において優勢に発現されるアイソフォームはWT-Δ52-hSLIM(SEQ ID NO:4)であり、これは、完全長WT-hSLIMと比べて52個のアミノ酸を欠いており、aa154から開始する。組換えWT-Δ52-hSLIMを作製するために、PCRによってWT-hSLIMを増幅し、かつRT-PCR生成物のAfl II/Nru I断片を用いて、WT-hSLIM中の対応する部分を置換した。
【0096】
実施例3
hSLIM点変異体の作製
バイオインフォマティクス解析に基づくと、hSLIMタンパク質は、N末端にPDZモチーフ、およびC末端にLIMドメインを有する(図1)。LIMドメインは、C3HC4亜鉛フィンガーまたはRINGフィンガーとして公知である、亜鉛原子2つと結合することが判明している、40〜60残基からなる保存されたシステインの豊富なドメインを含む。亜鉛結合モチームの3次構造は、「交差ブレース(cross-brace)」モチーフと呼ばれ、RINGフィンガータンパク質の酵素活性のために重要であると思われる(Lorick et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96, 11364, 1999)。hSLIM中に存在するRINGドメインを、酵素的に活性なタンパク質に由来する類似ドメインと比較する配列アライメント解析に基づいて、本発明者らは、アミノ酸286および289に2つの重要なシステインが位置することを決定した(図13を参照されたい)。QUICKCHANGE MUTAGENESIS(商標)キット(Stratagene)を用いて、C286およびC289をセリンに変異させて、Mu-hSLIM、別名Mu-SLIM C1C2を作製した。これら2つの変異を含むMu-hSLIM配列を様々な発現系にクローニングして、細菌GST-Mu-SLIM、別名GST-Mu-SLIM C1C2および哺乳動物Mu-SLIMを発現させた。
【0097】
実施例4
組換えヒトSLIMタンパク質の作製
細菌によって発現されたGST-SLIM:EcoR1およびNot1の制限部位を用いて、hSLIM cDNAをコードするオープンリーディングフレームを、細菌発現プラスミドpGEX6(Amersham)中にクローニングした。IPTGで誘導された大腸菌(E.coli)BL-21においてGST-hSLIMを発現させた。0.5% TRITON(登録商標)X-100、リゾチーム(lysosyme)、およびプロテアーゼ阻害剤を含むpH8.0のTris-Cl緩衝液中で超音波処理することによって、細胞を溶解させた。50mMグリシンおよび8.5M尿素を含むpH8.0のTris-Cl緩衝液中に封入体を再懸濁し、Tris-Cl(pH8.0)に対して透析して、タンパク質をリフォールディングさせた。グルタチオン樹脂(Amersham)を用いてタンパク質抽出物を精製し、かつ5mMグルタチオンを用いて溶出させた。
【0098】
バキュロウイルスによって発現されたヘマグルチニンタグ化SLIM(HA-SLIM):hSLIM cDNAをコードするオープンリーディングフレームを、ポリヘドリンプロモーターを含み、かつ強力なタンパク質発現を支援するバキュロウイルス発現プラスミドpBluBac 4.5(Invitrogen)中にクローニングした。Sf9昆虫細胞中へのpBlueBac-hSLIMベクターおよびBac-N-Blueベクターのコトランスフェクションによって、ウイルスを作製した。hSLIMをコードするウイルスで形質導入されたHIGH-FIVE(商標)細胞において、タンパク質を生成させた。プロテアーゼ阻害剤を含む1%TRITON(登録商標)X-100緩衝液中で超音波処理することによって、細胞を溶解させた。抗HAマトリックス(Roche)を使用するアフィニティー精製によって、組換えhSLIMタンパク質を精製した。
【0099】
哺乳動物細胞において発現されたHA-SLIM:hSLIM cDNAをコードするオープンリーディングフレームを、CMVプロモーターを含み、かつ強力なタンパク質発現を支援する哺乳動物発現プラスミドpCDNA3.1(Invitrogen)中にクローニングした。HAタグは、SLIMタンパク質配列のアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかに挿入した。293T細胞の一過性トランスフェクションによって、組換えhSLIMタンパク質を生成させた。プロテアーゼ阻害剤を含む1%TRITON(登録商標)X-100緩衝液中で超音波処理することによって、細胞を溶解させ、かつ抗HAマトリックス(Roche)を使用するアフィニティー精製によって、組換えhSLIMタンパク質を精製した。
【0100】
実施例5
ユビキチン転移アッセイ法
SLIMのユビキチン化反応:1mM DTTおよび5mM MgCl2を含む反応緩衝液中、ATP、ウサギE1、ヒト組換えE2、およびビオチン化ユビキチン(Boston Biochem)の存在下で、組換えヒトSLIMタンパク質をインキュベートした。反応は、総体積20μlで、30℃で3〜16時間、実施した。
【0101】
SLIMによるSTATユビキチン化:組換えヒトSTAT1(Biosource)または組換えSTAT4(Abnova)を前述の反応物に含め、かつ30℃で3〜16時間インキュベートした。試料をSDS-PAGE上で分離し、PVDFに移し、かつアビジン-HRP(Becton Dickinson)で免疫ブロットした。抗SLIM抗体または抗STAT抗体でブロットをオーバーレイした。
【0102】
実施例6
RNAiトランスフェクションによるインビトロでのノックダウン
MACS(登録商標)T細胞単離キット(Miltenyi)を使用するネガティブ選択によって、ヒト初代CD4+T細胞をバフィコートから単離した。T細胞株NUCLEOFECTOR(商標)キット(Amaxa)を用いて、エレクトロポレーションにより、ヒトジャーカット細胞株およびヒト初代CD4+T細胞にsiRNAをトランスフェクトした。内因性hSLIM発現を効果的にノックダウン(KS)するために使用したsiRNAオリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりであった。

【0103】
遺伝子特異的なノックダウン(KD)は、ジャーカット細胞においては抗SLIM pAbを用いたウェスタンブロット法によって、かつCD4+T細胞においてはRT-PCRによって、確認した。オフターゲット効果は、アクチンおよびSTAT1を含む様々なタンパク質に関して、ウェスタンブロット法によって確認した。
【0104】
実施例7
ヒトCD4+T細胞におけるサイトカイン産生
T細胞の生物学的応答に対するSLIMノックダウンの影響を判定するために、本発明者らは、ヒトインターフェロンγ(IFNγ)産生に対するインビトロノックダウン(KD)の影響を調査した。非トランスフェクト細胞およびRNAiをトランスフェクトされた細胞を未処理のままにするか、またはIFNαもしくはIL12(R and D Systems)の存在下もしくは非存在下で抗CD3+/抗CD28で刺激した。ヒトIFNγの産生は、FACS解析によって個々の細胞において、および間接的サンドイッチELISAによって細胞培養上清において調査した。
【0105】
細胞内FACSの場合、免疫染色の前に、細胞をブレフェルディンAで3時間処理した。細胞をCD69の表面発現に関して染色し、洗浄し、次いでCYTOFIX/CYTOPERM(商標)(BD Biosciences)を用いて透過化処理した。透過化処理した細胞を、フィコエリトリン(PE)に結合させた対照抗体または抗IFNγ抗体で染色した。
【0106】
炭酸/重炭酸コーティング緩衝液中のマウス抗ヒトIFNγモノクローナル抗体(BioSource)でコーティングしたNunc MAXISORP(商標)96ウェルプレートを用いて、ヒトIFNγELISAを実施し、かつSUPERBLOCK(登録商標)ブロッキング緩衝液(Pierce)を用いてブロッキングした。細胞培養上清中のIFNγの存在は、SA-HRP二次抗体(BD Biosciences)およびTMB基質系(KPL)において、ビオチン化マウス抗IFNγモノクローナル抗体(BioSource)を用いて検出した。
【0107】
実施例8
STAT1およびSTAT4の転写活性に対するSLIMの影響
合計2×105個の293T細胞に、GAS-Lucのみ、STAT1+GAS、またはSLIM+STAT1+GAS-LucのプラスミドcDNAを一過性にトランスフェクトした。一部の実験では、STAT1の代わりにSTAT4を使用した。すべてのトランスフェクションにおいて、トランスフェクション効率の対照としてウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼを含めた。デュプリケートな試料を36〜48時間増殖させた。細胞は、刺激しないままにするか、または500U IFNαもしくは50ng/ml IFNγで16時間処理した。細胞をルシフェラーゼ緩衝液(Promega)中で洗浄および溶解し、かつ20〜50μgのタンパク質を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。
【0108】
実施例9
SLIMタンパク質およびSTATタンパク質の結合
ヒトSLIMがインビボでSTAT1および/またはSTAT4と結合するかどうかを判定するために、293T細胞に以下のcDNAの組合せを一過性にトランスフェクトした:STAT1のみ、SLIMのみ、またはSLIM+STAT1。デュプリケートな試料を48時間増殖させた。細胞を未処理のままにするか、または50ng/mlのIFNγで15〜20分間処理した。プロテアーゼ阻害剤およびホスファターゼ阻害剤を含む0.5%TRITON(登録商標)X-100緩衝液中に細胞を溶解し、かつ抗STAT1 Ab(Santa Cruz)を用いて免疫沈降させた。ウェスタンブロットを、抗SLIM pAb、続いて抗STAT1オーバーレイでプローブした。一部の実験では、STAT1の代わりにSTAT4 cDNAを使用した。この場合、細胞は、未処理のままにするか、または500U/mlのIFNαで15〜20分間処理し、かつ抗STAT4 pAb(Santa Cruz)を用いて免疫沈降させた。
【0109】
実施例10
ヒトSLIMタンパク質に特異的な抗体の作製
ヒトSLIMは、N末端のPDZドメインおよびC末端のLIMドメインを有する他のタンパク質との相同性をそのアミノ末端およびカルボキシ末端に示す。しかしながら、これらの2つのドメインの外側のアミノ酸配列(すなわちSLIMの中央の部分)は、ヒトSLIMに特有である。ヒトSLIMに特異的な抗体を作製し、かつPDZタンパク質およびLIMタンパク質に対する交差反応性を最低限に抑えるために、本発明者らは、PDZドメインおよびLIMドメインを欠くヒトSLIM、すなわちΔPDZ-ΔLIM-SLIM、またはヒトSLIMの中央部分を発現するベクターを作製した。ΔPDZ-ΔLIM-SLIMをPCRで増幅し、かつpET21b(+)(Novagen)の制限部位EcoRI(5')およびXhoI(3')の間にクローニングした。ヒスチジンタグは、ΔPDZ-ΔLIM-SLIMのC末端に位置した。開始コドンは、T7タグに位置した。
ΔPDZ-ΔLIM-SLIM(PDZおよびLIM無し)に対するEcoRI部位プライマー:

ΔPDZ-ΔLIM-SLIM(PDZおよびLIM無し)に対するXhoI部位プライマー:


【0110】
C-His-ΔPDZ-ΔLIM-SLIMのアミノ酸配列(すなわち200アミノ酸、約21kDa)。

【0111】
C-His-ΔPDZ-ΔLIM-SLIMタンパク質を大腸菌BL-21において発現させた。100mM NaH2PO4 pH8.0、10mM Tris HCl、pH8.0、8M尿素中で超音波処理することによって細胞を溶解させ、次いでNickel-NTA樹脂(QIAGEN)と共にインキュベートした。樹脂を洗浄し、かつ50mMイミダゾールを用いてタンパク質を溶出させた。ポリクローナルAbを産生させるために、精製したタンパク質をアジュバントと共にウサギに注射した。
【0112】
実施例11
SLIMアイソフォームWT-Δ52-SLIMのE3リガーゼ活性
実施例4で説明したようにして、GST-Δ52-hSLIMタンパク質(アイソフォーム3に相当、PDZドメインおよびLIMドメインを維持する部分的欠失、CD4+細胞において発現される)を発現させ、かつ大腸菌から精製した。GST-Δ52-hSLIMタンパク質を、E1、E2、およびユビキチンの存在下、30℃でインキュベートした。NuPageゲル上でタンパク質を分離し、かつアビジン-HRPでブロットした。SLIMのローディングを示すために、抗SLIM pAbでブロットをオーバーレイした。
【0113】
図24に示す結果により、WT-Δ52-hSLIMが、独自のユビキチン化を誘導することによってE3リガーゼ活性を示すことが示される。ユビキチン転移は、用量依存的な様式で生じる。WT-Δ52-hSLIMは、WT- hSLIMと比べて高い活性を示す。
【0114】
実施例12
WT-SLIMおよびWT-Δ52-HSLIMによるSTAT-1のユビキチン化
GST-Δ52-hSLIMタンパク質(アイソフォーム3に相当、PDZドメインおよびLIMドメインを維持する部分的欠失、CD4+細胞において発現される)を、E1、E2、組換えSTAT1、およびユビキチンの存在下、30℃でインキュベートした。NuPageゲル上でタンパク質を分離し、かつアビジン-HRPでブロットした。ローディングを示すために、抗STAT1 pAbでブロットをオーバーレイした。
【0115】
図25に示す結果により、WT-Δ52-hSLIMが、生物学的に関連する下流の基質であるSTAT1にユビキチンを転移させることによってE3リガーゼ活性を示すことが示される。
【0116】
実施例13
WT-Δ52-SLIMユビキチン化を促進するヒトE2酵素の同定
ユビキチン転移は、3種の酵素、すなわちE1、E2、およびE3のカスケードを介して起こる。いくらかの程度の特異性はE2によって与えられるが、基質特異性の大半は、E3によって伝達される。本アッセイ法において、本発明者らは、最も可能性が高い8種のヒトE2酵素のうちどれがSLIMによるユビキチン転移を優先的に媒介するかを判定した。
【0117】
GST-Δ52-hSLIMタンパク質を、E1、2種のヒトE2アイソフォーム、およびユビキチンの存在下、30℃でインキュベートした。NuPageゲル上でタンパク質を分離し、かつアビジン-HRPでブロットした。UbcH2、H3、H5b、H5c、H6、H7、およびH10を含む、その他のE2酵素を評価した。
【0118】
図26に示す結果により、WT-Δ52-hSLIMが、UbcH5aの存在下で優先的なユビキチン化を示すことが示される。
【0119】
実施例14
hSLIMのLIMドメイン点変異体の作製
他のタンパク質由来のRingモチーフとhSLIM LIMドメインのアライメントにより、コンセンサス部位のC1、C2、C5、およびC6に対応する位置に、保存されたシステインが存在することが明らかになった。第1の2つのシステインは、LIMドメインのループ1中に位置し、第2の2つのシステインは、ループ2中に位置する。
【0120】
本発明者らは、3種のLIMドメイン点変異体を作製した。これらの変異体の配列を図27に示す。Mu-SLIM C1C2は、C286およびC289においてシステインがセリンに置換されている。Mu-SLIM C5C6は、C310およびC312においてシステインがセリンに置換されている。Mu-SLIM C1C2 C5C6では、4つのシステインすべてをセリンに変異させた。
【0121】
実施例15
WT-hSLIMおよびMu-GST-hSLIMの発現および精製
WT-hSLIM遺伝子およびMu-hSLIM遺伝子を細菌発現系においてクローニングした。前述したようにタンパク質を発現させ、かつ精製した。サイプロルビーで染色したゲル(図28A)および抗SLIMウェスタンブロット(図28B)により、組換えhSLIMタンパク質の発現および精製を示す。
【0122】
実施例16
WT-hSLIMおよびMu-hSLIMのユビキチン転移活性
E1、E2、ユビキチン、およびヒトSTAT1の存在下でWT-hSLIMタンパク質およびMu-GST-hSLIMタンパク質をインキュベートした。NuPageゲル上でタンパク質を分離し、かつアビジン-HRPでブロットした(図29A)。SLIMのローディングを示すために、抗STAT1mAbでブロットをオーバーレイした(図29B)。
【0123】
WT hSLIMおよびhSLIMのLIMドメイン点変異体のユビキチン転移活性を比較することにより、LIMドメインのループ1またはループ2のいずれかの保存されたシステインの点変異によってSLIMのユビキチン転移活性が低下し、かつSTAT基質のユビキチン化が妨げられることが示された。
【0124】
実施例17
組換えGST-hSLIMのユビキチン転移活性
E1、E2、およびユビキチンの存在下でWT-hSLIMタンパク質およびMu-GST-hSLIMタンパク質をインキュベートして、野生型hSLIMおよびhSLIMの点変異体のユビキチン転移活性を比較した。NuPageゲル上でタンパク質を分離し、かつアビジン-HRPでブロットした(図30A)。SLIMのローディングを示すために、抗SLIM pAbでブロットをオーバーレイした(図30B)。
【0125】
hSLIMのLIMドメイン中の保存されているシステインの点変異は、SLIMタンパク質へのユビキチン転移を阻害し、かつそのユビキチン転移活性を低下させる。
【0126】
実施例18
STAT1活性に対するLIMドメイン点変異体の影響
STAT1およびGAS応答エレメントをコードするレポーター構築物と共に、野生型(WT)-SLIMまたは点変異体(MU)-SLIMのいずれかを293T細胞に一過性にトランスフェクトした。細胞を未処理のままにするか、またはIFNγで刺激し、かつGAS-Luc活性を解析した。
【0127】
STAT1転写アッセイ法を制御するために、STAT1およびGAS応答エレメントをコードするレポーター構築物と共に、野生型(WT)-SLIMまたは点変異体(MU)-SLIMのいずれかを293T細胞に一過性にトランスフェクトした。細胞を溶解させ、かつSLIM発現に関して解析した。WT-hSLIMおよびhSLIMの点変異体は、293T細胞において用量依存的な様式で発現される。これらの結果を図32に示す。
【0128】
これらの結果を図31に示す。IFNγで処理すると、用量依存的な様式でWT-SLIMによって阻害される、STAT1を介したGAS-luc活性は増大する。一方、どちらのhSLIM変異体も、GAS-Luc活性に対してはほとんど影響を及ぼさなかった。
【0129】
実施例19
UbcH5およびUbcH6とhSLIMとの結合
ジャーカットE6.1細胞をTriton(T)、オクチルβグルコシド(OβG)、またはBrij-35(B)中に溶解した。遠心分離によって細胞溶解物を清澄化し、かつセファロースビーズに結合させたWT-hSLIMと共にインキュベートした。NuPageゲル上で試料を分離し、かつUbcのH3、H5、H6、H7、およびH10の結合に関してウェスタンブロット法によって解析した。細胞溶解物全体をウェスタンブロット法の対照として使用した(E6.1 wcl)。
【0130】
図33は、WT-hSLIMが、試験されたユビキチン結合酵素5種のうち2種(UbcH6およびUbcH6)と優先的に結合することを示す。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】野生型hSLIM(SEQ ID NO:2)をコードする核酸配列(SEQ ID NO:1)。PDZドメインをコードするヌクレオチド配列は太字にし、かつ下線を引いている。LIMドメインをコードするヌクレオチド配列はイタリック体にし、かつ下線を引いている。
【図2A】野生型hSLIM(アイソフォーム1)のアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)。PDZドメインは太字にし、かつ下線を引いている。LIMドメインはイタリック体にし、かつ下線を引いている。
【図2B】hSLIMアイソフォームのアミノ酸配列(SEQ ID NO:3)。PDZドメインは太字にし、かつ下線を引いている。LIMドメインはイタリック体にし、かつ下線を引いている。
【図3】ヒトSLIMドメインの直線的な概略図。タンパク質に結合するPDZドメインは、SEQ ID NO:2のアミノ酸5〜82であり、亜鉛に結合するLIMドメインは、SEQ ID NO:2のアミノ酸284〜337である。理論上のpI/Mwは、8.76/37.5kDaである。
【図4】ミスティクアイソフォーム(GenBankアクセッション番号によって特定される;サブジェクト(Sbjct))と野生型hSLIM(SEQ ID NO:2)(クエリー(Query))とのアライメント。図4Aは、野生型hSLIM(SEQ ID NO:2)とマウスAAH24556またはAAL65265(SEQ ID NO:8)とのアライメント。529ビット(1363)、期待値=e-149、一致=277/354(78%)、ポジティブ=299/354(84%)、ギャップ=7/354(1%)である。図4Bは、野生型hSLIM(SEQ ID NO:2)とヒトNP067643(SEQ ID NO:2)のアライメントである。一致=277/354(78%)、ポジティブ=299/354(84%)、ギャップ=7/354(1%)。図4Cは、野生型hSLIM(SEQ ID NO:2)とチンパンジー(Pan troglodytes)XP519648(SEQ ID NO:9)のアライメントである。スコア=423ビット(1088)、期待値=e-117、一致=224/235(95%)、ポジティブ=224/235(95%)、ギャップ=1/235(0%)。図4Dは、野生型hSLIM(SEQ ID NO:2)とヒトNP932159(SEQ ID NO:5)のアライメントである。スコア=497ビット(1279)、期待値=e-139、一致=255/255(100%)、ポジティブ=255/255(100%)。図4Eは、野生型hSLIM(SEQ ID NO:2)とヒトNP789847(SEQ ID NO:6)のアライメントである。スコア=650ビット(1677)、期待値=0.0、一致=327/327(100%)、ポジティブ=327/327(100%)。図4Fは、野生型hSLIM(SEQ ID NO:2)とヒトAAL65265(SEQ ID NO:7)のアライメントである。スコア=464ビット(1193)、期待値=e-129、一致=237/242(97%)、ポジティブ=238/242(97%)。図4Gは、野生型hSLIM(SEQ ID NO:2)とヒトAAG16633(SEQ ID NO:3)のアライメントである。スコア=582ビット(1499)、期待値=e-164、一致=304/352(86%)、ポジティブ=307/352(86%)、ギャップ=27/352(7%)。
【図5】選択されたヒト組織におけるRT-PCTによるhSLIM発現生成物を示すアガロースゲル。プライマーの位置を右側に示す。アイソフォーム1(野生型hSLIM)は肺において優先的に発現される(上側のバンド)。アイソフォーム3は、CD4+T細胞および脾臓において優先的に発現される(下側のバンド)。
【図6】CD4+細胞およびE6.1細胞におけるRT-PCTによるhSLIM発現生成物を示すアガロースゲル。
【図7】hSLIMアイソフォームの一部分のアライメント。アイソフォーム1、すなわち完全長の野生型hSLIM(SEQ ID NO:2)は、肺において差次的に発現される。アイソフォーム3は、部分的に欠失しているがPDZドメインおよびLIMドメインを維持しており(SEQ ID NO:4)、CD4+細胞において発現される。アイソフォーム2(断片を示す、SEQ ID NO:10)はPDZドメインの後を切り取られている。
【図8】様々な発現系におけるヒトSLIMタンパク質の発現を示す抗hSLIMウェスタンブロット。図8Aは、細菌発現系である。図8Bは、哺乳動物発現系である。図8Cは、バキュロウイルス発現系である。
【図9】ジャーカットE6.1細胞における内因性hSLIM発現に対するRNAiの影響。ヒトジャーカットT細胞株に、対照RNAiまたはSLIMに特異的な(SL1およびSL2)RNAiをトランスフェクトした。FACSによってトランスフェクション効率を評価した。細胞毒性およびタンパク質のノックダウンを、セルタイター(cell titer)およびウェスタンブロット法によってそれぞれ評価した。E6.1細胞におけるトランスフェクション効率は74%であり、明らかな毒性もオフターゲット効果もなかった。ウェスタンブロット解析では、SLIM RNAi 3〜6μgをトランスフェクトした細胞におけるhSLIMタンパク質の減少が示されている。無関係な遺伝子の発現は、対照細胞およびトランスフェクト細胞において変わらず一定であり、オフターゲット効果が無いことが示された。
【図10】CD4+T細胞におけるhSLIMタンパク質発現に対するRNAiの影響。ヒトCD4+T細胞をバフィコートから精製し、かつ対照(ScrおよびFITC)RNAiまたはSLIM特異的(SL2)RNAiをトランスフェクトした。FACSによってトランスフェクション効率を評価した。それぞれ、RT-PCRによってSLIMノックダウンを、ウェスタンブロット法によってオフターゲット効果を評価した。RNAi 6μgをトランスフェクトした細胞において、トランスフェクション効率は79%であった。PCR解析により、SLIM RNAi 6μgをトランスフェクトした細胞におけるhSLIM mRNAの減少が示される。無関係な遺伝子の発現は、対照細胞およびトランスフェクト細胞において変わらず一定であり、オフターゲット効果が無いことが示された。
【図11】SLIMノックダウンの影響。図11Aは、CD4+T細胞におけるIFNγ産生に対するSLIMノックダウンの影響である。非トランスフェクトCD4+T細胞またはSLIM RNAiもしくは対照RNAiをトランスフェクトされた細胞を、抗CD3+抗CD28で48時間処理し、洗浄し、かつ5日間放置した。FACS解析の前に、細胞を刺激しないままにするか、または抗CD3+抗CD28で24時間処理した。SLIM発現の部分的なノックダウンにより、IFNγ産生は亢進する。図11Bは、CD4+T細胞におけるIFNγ産生に対するSLIMノックダウンの影響である。非トランスフェクトCD4+T細胞またはSLIM RNAiもしくは対照RNAiをトランスフェクトされた細胞を、抗CD3+抗CD28で48時間処理し、洗浄し、かつ5日間放置した。ELISA解析の前に、細胞を刺激しないままにするか、または抗CD3+抗CD28で所定の時間処理した。SLIM発現の部分的なノックダウンにより、IFNγ産生は亢進する。
【図12】hSLIMのE3リガーゼ活性。組換えSLIMタンパク質のユビキチン化。E1、E2、およびユビキチンの存在下、30℃でGST-SLIMタンパク質をインキュベートした。NuPageゲル上でタンパク質を分離し、かつアビジン-HRPでブロットした。SLIMのローディングを示すために、抗SLIM pAbでブロットをオーバーレイした。hSLIMは、特有のユビキチン化を誘導することによってE3リガーゼ活性を示す。ユビキチン転移は、用量依存的な様式で生じる。
【図13】ユビキチン転移に対する亜鉛およびEDTAの影響。GST-SLIMタンパク質を亜鉛およびEDTAで2時間処理し、洗浄し、かつE1、E2、およびユビキチンの存在下、30℃でインキュベートした。NuPageゲル上でタンパク質を分離し、かつアビジン-HRPでブロットした。抗SLIM pAbでブロットをオーバーレイした。タンパク質を亜鉛で処理すると、hSLIMのE3リガーゼ活性は改善された。一方、EDTAはhSLIMの酵素活性を阻害した。
【図14】LIM-ドメイン点変異体の作製。他のタンパク質(SEQ ID NO:21〜23)由来のRingモチーフとhSLIM LIMドメイン(SEQ ID NO:20)のアライメントにより、コンセンサス部位のC1およびC2に対応する位置に、保存されたシステインが存在することが明らかになった。これら2つのシステイン、C286およびC289をセリンに変異させ、それによってhSLIMのLIM-ドメイン点変異体を作製した。
【図15】WT-SLIMおよびMu-SLIM、別名Mu-SLIM C1C2のユビキチン転移活性。本発明者らは、野生型(WT)および点変異体(Mu)のGST-SLIMタンパク質のE3リガーゼ活性を比較した。以前に説明したように、この反応を実施した。NuPageゲル上でタンパク質を分離し、かつアビジン-HRPでブロットした。C1およびC2の位置をセリンに変異させた場合、WT-SLIMと比べて、hSLIMのE3リガーゼ活性は低下した。これらの結果により、完全なLIMドメインが活性に関連することが示され、かつhSLIMの3次構造を乱すことにより、酵素活性が妨げられることが示唆される。
【図16】rhSLIMによるSTAT1のユビキチン化。本発明者らは、WT-SLIMタンパク質およびMu-SLIM C1C2タンパク質が、生理的基質であるSTAT1をユビキチン化する能力を比較した。様々な用量のSTAT1の存在下で、組換えhSLIMをインキュベートし、かつ以前に説明したように、反応を実施した。NuPageゲル上でタンパク質を分離し、かつアビジン-HRPでブロットした。WT-SLIMはSTAT1のユビキチン化を媒介し、かつSTAT1およびhSLIMの双方に対する強力なE3リガーゼ活性を示す。Mu-SLIM C1C2のユビキチン転移能力は、WT-SLIMに比べて低下していた。
【図17】WT-SLIMおよびMu-SLIM C1C2によるSTAT4転写活性の調節。図17Aでは、GAS応答エレメントをコードするレポーター構築物と共に、STAT4またはSTAT4+WT-SLIMもしくはSTAT4+Mu-SLIMを、293T細胞に一過性にトランスフェクトした。細胞を未処理のままにするか、またはIFNαで刺激し、かつGAS-Luc活性を解析した。IFNαで処理すると、用量依存的な様式でWT-SLIMによって阻害される、STAT4を介したGAS-luc活性は増大する。一方、Mu-SLIMは、GAS-luc活性に対してほとんど影響を及ぼさない。図17Bは、293T細胞におけるSTAT4リン酸化である。STAT4またはSTAT4+WT-SLIMもしくはSTAT4+Mu-SLIMを293T細胞に一過性にトランスフェクトし、かつ未処理のままにするか、またはIFNαで刺激した。抗STAT4 Abまたは対照Abを用いて細胞溶解物を免疫沈降させ、かつSTAT4リン酸化について解析した。IFNα処理により、293T細胞におけるSTAT4リン酸化は亢進する。
【図18】WT-SLIMおよびMu-SLIM C1C2によるSTAT1転写活性の調節。GAS応答エレメントをコードするレポーター構築物と共に、STAT1またはSTAT1+WT-SLIMもしくはSTAT1+Mu-SLIMを、293T細胞に一過性にトランスフェクトした。細胞を未処理のままにするか、またはIFNγで刺激し、かつGAS-Luc活性を解析した。IFNγで処理すると、用量依存的な様式でWT-SLIMによって阻害される、STAT1を介したGAS-luc活性は増大する。一方、Mu-SLIMは、GAS-luc活性に対してほとんど影響を及ぼさない。
【図19】293T細胞におけるSLIMおよびSTAT1の結合。STAT1のみ、またはHA-SLIMおよびSTAT1を、293T細胞に一過性にトランスフェクトした。細胞を未処理のままにするか、またはIFNγで15分間処理した。細胞を溶解させ、抗STAT1 Abを用いて免疫沈降させ、かつHA-SLIMの存在についてブロットした。293T細胞中で同時に発現させた場合、STAT1およびSLIMは共沈殿する。
【図20】293T細胞におけるSLIMおよびSTAT4の結合。STAT4のみ、またはHA-SLIMおよびSTAT4を、293T細胞に一過性にトランスフェクトした。細胞を未処理のままにするか、またはIFNaで20分間処理した。細胞を溶解させ、抗STAT4 Abを用いて免疫沈降させ、かつHA-SLIMの存在についてブロットした。結果:293T細胞中で同時に発現させた場合、STAT4およびSLIMは共沈殿する。
【図21】hSLIM特異的抗体の作製。ヒトSLIMに特異的な抗体を作製し、かつ他のPDZドメインタンパク質およびLIMドメインタンパク質に対する交差反応性を最低限に抑えるために、本発明者らは、PDZドメインおよびLIMドメインを欠くヒトSLIM、すなわちDPDZ-DLIM-SLIMを発現するベクターを作製した。pAb作製のために、Hisタグ化タンパク質をウサギに導入した。
【図22】ミスティク核酸配列の多重配列アライメント。図22Aは、gi|47940542|gb|BC071774.1(SEQ ID NO:27)およびgi|40288188|ref|NM_021630.4|(SEQ ID NO:28)のCLUSTAL W(1.74) アライメントである。図22Bは、gi|40288188|ref|NM_021630.4|(SEQ ID NO:28)、gi|40288187|ref|NM_176871.2|(SEQ ID NO:29)、およびgi|40288186|ref|NM_198042.2(SEQ ID NO:30)のアライメントである。図22Cは、gi|40288186|ref|NM_198042.2(SEQ ID NO:30)、gi|18204288|gb|BC021556.1(SEQ ID NO:31)、gi|21751684|dbj|AK092968.1(SEQ ID NO:32)、gi|16552238|dbj|AK056748.1|(SEQ ID NO:33)、gi|33151167|gb|AY070438.1|(SEQ ID NO:34)、およびgi|10445214|gb|AY007729.1(SEQ ID NO:35)のアライメント。図22Dは、gi|47940542|gb|BC071774.1|(SEQ ID NO:27)、gi|40288186|ref|NM_198042.2(SEQ ID NO:30)、gi|18204288|gb|BC021556.1(SEQ ID NO:37)、gi|16552238|dbj|AK056748.1|(SEQ ID NO:38)、gi|33151167|gb|AY070438.1|(SEQ ID NO:40)、gi|10445214|gb|AY007729.1(SEQ ID NO:39)のアライメントである。図22Eは、wt-SLIM(SEQ ID NO:1)、gi|22122422|ref|NM_145978.1|(SEQ ID NO:36)、gi|19354024|gb|BC024556.1|(SEQ ID NO:37)、gi|55630341|ref|XM_519648.1|(SEQ ID NO:38)、およびgi|55167726|gb|BV210713.1|(SEQ ID NO:39)のアライメントである。
【図23】ミスティクタンパク質のClustalアライメント。gi|21361888|ref|NP_067643.2|(SEQ ID NO:41)、gi|38327612|ref|NP_932159.1|(SEQ ID NO:42)、gi|28866957|ref|NP_789847.1|(SEQ ID NO:43)、gi|33151168|gb|AAL65265.1|(SEQ ID NO:44)、gi|10445215|gb|AAG16633.1|(SEQ ID NO:5)、WT-SLIM(SEQ ID NO:2)、hSLIM-D-52欠失(SEQ ID NO:4)、gi|22122423|ref|NP_666090.1|(SEQ ID NO:46)、gi|19354025|gb|AAH24556.1|(SEQ ID NO:47)、gi|55630342|ref|XP_519648.1|、および(SEQ ID NO:48)。
【図24】SLIMアイソフォームWT-Δ52-SLIMのE3リガーゼ活性を示すェスタンブロット。
【図25】WT-hSLIMおよびWT-SLIM-Δ52によるSTAT-1のユビキチン化を示すウェスタンブロット。
【図26】WT-SLIM-Δ52ユビキチン化を促進するヒトE2酵素の同定を示すウェスタンブロット。
【図27】野生型hSLIMおよび様々なhSLIM変異体のリングドメイン配列の比較。「SLIMリングドメイン」ならびにWT-SLIM(SEQ ID NO:50);Mu-SLIMC1C2(SEQ ID NO:51);Mu-SLIM C5C6(SEQ ID NO:52);およびMuSLIM C1C2C5C6(SEQ ID NO:53)。
【図28】サイプロルビー(Sypro ruby)で染色したゲル(図28A)および抗SLIMウェスタンブロット(図28B)により、組換えhSLIMタンパク質の発現および精製を示す。
【図29】アビジン-HRPブロット(図29A)および抗hSLIMブロット(図29B)。
【図30】アビジン-HRPブロット(図30A)および抗SLIMブロット(図30B)。
【図31】STAT1転写活性に対する野生型SLIMおよび変異体SLIMの影響を示す棒グラフ。
【図32】抗SLIMブロット。
【図33】抗UbcH5ブロット(図33A)および抗UbcH6ブロット(図33B)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)SEQ ID NO:4において示されるアミノ酸配列を含むか;
(ii)SEQ ID NO:49において示されるアミノ酸配列を含むか;または
(iii)SEQ ID NO:19において示されるアミノ酸配列からなる、
単離および精製されたポリペプチド。
【請求項2】
(iv)請求項1記載のポリペプチドのコード配列;または
(v)該コード配列の相補配列を含み、
該コード配列がSEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5〜9、またはSEQ ID NO:41〜45をコードしない、
単離および精製された核酸分子。
【請求項3】
(vi)二本鎖;
(vii)一本鎖;
(viii)RNA;
(ix)cDNA;
(x)ベクター;または
(xi)コード配列、および該コード配列の上流に位置し、該コード配列の発現を制御するプロモーターを含む発現構築物である、
請求項2記載の核酸分子。
【請求項4】
以下の段階を含む、請求項1記載のポリペプチドを作製する方法:
(i)請求項2記載の核酸分子を含む宿主細胞を、該宿主細胞が該ポリペプチドを発現する条件下、培地中で培養する段階であって、該核酸分子が発現構築物である段階;および
(ii)該培地または宿主細胞溶解物から該ポリペプチドを回収する段階。
【請求項5】
亜鉛の存在下、またはEDTA、DTPA、TPEN、およびEGTAの非存在下で、ポリペプチドを精製および/またはリフォールディングする段階をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
以下の段階を含む、SEQ ID NO:2において示されるアミノ酸配列を含む酵素的に活性な野生型hSLIMを作製する方法:
(a)野生型hSLIMを精製する段階;ならびに
(b)亜鉛の存在下で該野生型hSLIMをリフォールディングする段階、ならびに任意で、EDTA、DTPA、TPEN、およびEGTAの非存在下で該野生型hSLIMを精製および/またはリフォールディングする段階。
【請求項7】
hSLIM、またはPDZドメインでもLIMドメインでもないその一部分に特異的に結合し、かつ検出可能なラベルを任意で含む、抗体。
【請求項8】
ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、Fab断片、F(ab')2断片、Fv断片、単鎖抗体、または細胞内抗体である、請求項7記載の抗体。
【請求項9】
以下の段階を含む、STATタンパク質へのhSLIMポリペプチドの結合を妨害する化合物を同定するための方法:
(a)第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および試験化合物を接触させる段階であって、
(1)該第1のポリペプチドがhSLIMポリペプチドを含み、かつ該第2のポリペプチドがSTATタンパク質を含むか;または
(2)該第1のポリペプチドがSTATタンパク質を含み、かつ該第2のポリペプチドがhSLIMポリペプチドを含むかのいずれかである、段階;ならびに
(b)該第2のポリペプチドに結合されるか、該第2のポリペプチドから移動させられるか、または該第2のポリペプチドに結合するのを妨げられる該第1のポリペプチドの量を決定する段階;ならびに
(c)該試験化合物が、
(1)該第2のポリペプチドに結合される該第1のポリペプチドの量を減少させるか;
(2)該第2のポリペプチドに結合された該第1のポリペプチドに置き換わるか;または
(3)該第1のポリペプチが該第2のポリペプチドに結合するのを妨げる場合、
STATタンパク質へのhSLIMポリペプチドの結合を妨害する作用物質として該試験化合物を同定する段階。
【請求項10】
以下の段階を含む、STAT1またはSTAT4を介した転写を妨害する化合物を同定するための方法:
(a)試験化合物、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、およびレポーター遺伝子の上流にSTAT1結合配列またはSTAT4結合配列を含むレポーター構築物を接触させて、転写混合物を形成させる段階であって、
(1)該第1のポリペプチドがhSLIMポリペプチドを含み、かつ該第2のポリペプチドがSTAT1もしくはSTAT4を含むか;または
(2)該第1のポリペプチドがSTAT1もしくはSTAT4を含み、かつ該第2のポリペプチドがhSLIMポリペプチドを含むかのいずれかである、段階;
(b)転写混合物がSTAT4を含む場合には、該転写混合物をIFNαと接触させる段階、または転写混合物がSTAT1を含む場合には、該転写混合物をIFNγと接触させる段階;
(b)レポーター遺伝子の発現を分析する段階;ならびに
(c)試験化合物の存在下での該レポーター遺伝子の発現が、試験化合物の非存在下での該レポーター遺伝子の発現より少ない場合、STAT1またはSTAT4を介した転写を妨害する作用物質として該試験化合物を同定する段階。
【請求項11】
以下の段階を含む、STAT1またはSTAT4へのhSLIMの結合を妨害する化合物を同定するための方法:
(a)試験化合物と3種の組換えDNA構築物を含む細胞とを接触させる段階であって、
(1)第1の構築物は、配列特異的なDNA結合ドメインに融合された第1のポリペプチドをコードし;
(2)第2の構築物は、転写活性化ドメインに融合された第2のポリペプチドをコードし;かつ
(3)第3の構築物は、配列特異的なDNA結合ドメインによって認識されるDNAエレメントの下流にレポーター遺伝子を含み、かつ、
(i)該第1のポリペプチドがhSLIMポリペプチドを含み、かつ該第2のポリペプチドがSTAT1もしくはSTAT4を含むか;または
(ii)該第1のポリペプチドがSTAT1もしくはSTAT4を含み、かつ該第2のポリペプチドがhSLIMポリペプチドを含むかのいずれかである、段階;
(b)前記細胞を試験化合物と接触させる段階;
(c)該試験化合物の存在下でレポーター遺伝子の発現を決定する段階;および
(d)試験化合物の存在下での該レポーター遺伝子の発現が、試験化合物の非存在下での該レポーター遺伝子の発現より少ない場合、STAT1またはSTAT4へのhSLIMの結合を妨害する作用物質として該試験化合物を同定する段階。
【請求項12】
3種の組換えDNA構築物を含む細胞であって、
(a)第1の構築物は、配列特異的なDNA結合ドメインを含む第1のポリペプチドをコードし;
(b)第2の構築物は、転写活性化ドメインを含む第2のポリペプチドをコードし;かつ
(c)第3の構築物は、配列特異的なDNA結合ドメインによって認識されるDNAエレメントの下流にレポーター遺伝子を含み、
(1)該第1のポリペプチドがhSLIMポリペプチドを含み、かつ該第2のポリペプチドがSTATタンパク質を含むか;または、
(2)該第1のポリペプチドがSTATタンパク質を含み、かつ該第2のポリペプチドがhSLIMポリペプチドを含むかのいずれかである、
細胞。
【請求項13】
以下の段階を含む、hSLIMのE3リガーゼ活性のアゴニストまたはアンタゴニストを同定する方法:
(a)hSLIMポリペプチドを試験化合物と接触させる段階;および
(b)該hSLIMポリペプチドのE3リガーゼ活性を分析する段階であって:
(1)試験化合物の非存在下でのhSLIMポリペプチドのE3リガーゼ活性に比べて、試験化合物によってhSLIMポリペプチドのE3リガーゼ活性が増大する場合、該試験化合物がhSLIM E3リガーゼ活性のアゴニストとして同定されるか;または
(2)試験化合物の非存在下でのhSLIMポリペプチドのE3リガーゼ活性に比べて、試験化合物によってhSLIMポリペプチドのE3リガーゼ活性が低下する場合、該試験化合物がhSLIM E3リガーゼ活性のアンタゴニストとして同定される、段階。
【請求項14】
以下を含む組成物:
(a)以下からなる群より選択される活性物質:
(1)hSLIMポリペプチド;
(2)該hSLIMポリペプチドをコードする核酸分子;
(3)hSLIM遺伝子の転写をサイレンシングするsiRNA分子;
(4)hSLIM遺伝子の転写を妨げるアンチセンスオリゴヌクレオチド;
(5)hSLIMポリペプチドに特異的に結合する抗体;
(b)以下からなる群より選択される免疫調節物質:
(1)ワクチン;
(2)樹状細胞;
(3)モノクローナル抗体;および
(c)生理学的に許容されるビヒクル。
【請求項15】
活性物質がsiRNA分子であり、かつ該siRNA分子が、SEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:16からなる群より選択される、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
T細胞を以下のものと接触させる段階を含む、T細胞によるIFNγ産生を改変する方法:
T細胞によるIFNγ産生を減少させる、(a)hSLIMポリペプチドもしくは(b)hSLIMポリペプチドをコードする核酸分子;または
T細胞によるIFNγ産生を増加させる、(c)請求項7記載の抗体、(d)SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10からなる群より任意で選択されるsiRNA分子、または(e)(c)SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:27の一部分にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A−1】
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【図22A−2】
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【図22A−3】
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【図22B−1】
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【図22B−2】
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【図22B−3】
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【図22B−4】
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【図22C−1】
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【図22C−2】
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【図22C−3】
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【図22C−4】
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【図22D−1】
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【図22D−2】
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【図22D−3】
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【図22D−4】
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【図22E−1】
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【図22E−2】
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【図22E−3】
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【図22E−4】
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【図23−1】
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【図23−2】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公表番号】特表2008−537480(P2008−537480A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500699(P2008−500699)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/000188
【国際公開番号】WO2006/098793
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507302829)マンカインド コーポレ−ション (16)
【Fターム(参考)】