説明

溶接装置

【課題】比較的細径の管内部の溶接を行うことのできる溶接装置を提供すること。
【解決手段】管の内部に挿入される挿入部1と、管の外部に配置されて挿入部1を管の内部に配置する非挿入部2と、挿入部1に設けられ、管の内部に配置された状態で管の内面に溶接を行う溶接トーチ11と、挿入部1に設けられ、溶接トーチ11の先端部11aが向く管の径方向に溶接トーチ11を移動させる溶接トーチ移動機構12と、非挿入部2に設けられ、先端に挿入部1が取り付けられて管に挿入される支持ロッド21を、当該支持ロッド21の軸S1廻りに回転移動させる回転移動機構22と、非挿入部2に設けられ、支持ロッド21を、当該支持ロッド21の軸S1の延在方向に沿って移動させる軸方向移動機構23と、非挿入部2に設けられ、溶接トーチ11に至り溶接ワイヤを供給する溶接ワイヤ供給機構24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、原子力容器に設けられた管の補修として溶接を行う溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載の原子炉容器の管台作業システムは、原子炉容器の管台内部で作業を行うものである。この作業のうち、例えば溶接部を切削し、そこに肉盛溶接を行う。そして、この原子炉容器の管台作業システムにおいて、溶接装置(溶接ユニット)は、アーク放電させるための溶接トーチと、溶接トーチの先端側へ溶接材となるワイヤを供給する溶接材供給手段と、溶接トーチの先端側を照明する照明手段と、溶接トーチの先端側を撮影する撮影手段と、管台に対する相対位置を検出する位置センサと、これらを支持する支持部材と、支持部材に取り付けられ案内装置の接続部に接続される被接続部とを有する(特許文献1:段落0059および図12参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−17670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、蒸気発生器を2機接続する2ループの原子炉においては、出口管台や入口管台の他に原子炉内に冷却水を注水するための注水配管が接続される注水管台が設けられている。かかる注水管台と注水配管との溶接部においても、保守のために内径寸法を計測する必要が生じる。
【0005】
しかし、上述した特許文献1の溶接装置は、内径がほぼ700mmの出口管台や入口管台の内径寸法の計測に適用されるもので、内径がほぼ90mmの注水管台に挿入することはできない。したがって、注水管台のような細径の管に挿入し、その内面の切削部分を溶接することのできる溶接装置が切望されている。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、比較的細径の管内部の溶接を行うことのできる溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の溶接装置は、管の内部に挿入される挿入部と、前記管の外部に配置されて前記挿入部を前記管の内部に配置する非挿入部と、前記挿入部に設けられ、前記管の内部に配置された状態で前記管の内面に溶接を行う溶接トーチと、前記挿入部に設けられ、前記溶接トーチの先端部が向く前記管の径方向に前記溶接トーチを移動させる溶接トーチ移動機構と、前記非挿入部に設けられ、先端に前記挿入部が取り付けられて管に挿入される支持ロッドを、当該支持ロッドの軸廻りに回転移動させる回転移動機構と、前記非挿入部に設けられ、前記支持ロッドを、当該支持ロッドの軸の延在方向に沿って移動させる軸方向移動機構と、前記非挿入部に設けられ、前記溶接トーチに至り溶接ワイヤを供給する溶接ワイヤ供給機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この溶接装置によれば、管の内部に配置される挿入部に、溶接トーチおよび溶接トーチ移動機構が設けられ、管の外部に配置される非挿入部に、回転移動機構、軸方向移動機構、および溶接ワイヤ供給機構が設けられているため、比較的細径の管であっても、その内部に溶接トーチおよび溶接トーチ移動機構を配置して溶接を行うことができる。
【0009】
また、本発明の溶接装置では、前記溶接トーチは、前記管が延在する軸方向に延在するベース部材の前端側に取り付けられ、前記溶接トーチ移動機構は、前記ベース部材の後端側に取り付けられて、前記ベース部材と共に前記溶接トーチを移動させることを特徴とする。
【0010】
この溶接装置によれば、ベース部材を介して溶接トーチと溶接トーチ移動機構との間に所定の距離をおくことで、比較的細径の管の内部において溶接トーチ移動機構に対する溶接トーチの熱の影響を抑えることができる。
【0011】
また、本発明の溶接装置は、前記挿入部に設けられ、前記溶接ワイヤの先端が前記溶接トーチの先端部に対して接近または離隔するように前記溶接ワイヤを移動可能に支持する溶接ワイヤ支持部を備え、当該溶接ワイヤ支持部が、前記溶接トーチ移動機構によって前記溶接トーチと共に移動可能に設けられていることを特徴とする。
【0012】
この溶接装置によれば、比較的細径の管であっても、その内部に溶接トーチおよび溶接トーチ移動機構を配置して溶接を行うと共に、溶接トーチに対する溶接ワイヤの位置を溶接ワイヤ支持部によって調整することができる。
【0013】
また、本発明の溶接装置では、前記溶接トーチは、前記管が延在する軸方向に延在するベース部材の前端側に取り付けられ、前記溶接ワイヤ支持部は、前記ベース部材の後端に取り付けられていると共に、前記溶接トーチ移動機構の移動部材に連結されていること特徴とする。
【0014】
この溶接装置によれば、ベース部材を介して溶接トーチと溶接ワイヤ支持部との間に所定の距離をおくことで、比較的細径の管の内部において溶接ワイヤ支持部に対する溶接トーチの熱の影響を抑えることができる。
【0015】
また、本発明の溶接装置は、前記挿入部に設けられ、前記溶接トーチによって溶接される周囲の温度を計測する温度計測手段と、前記挿入部に設けられ、前記温度計測手段によって計測される付近を撮像する温度計測部撮像手段と、挿入部に設けられ、前記温度計測部撮像手段を冷却する温度監視部冷却手段と、を備え、前記温度計測手段、前記温度計測部撮像手段および前記温度監視部冷却手段が、前記溶接トーチ移動機構によって前記溶接トーチと共に移動可能に設けられていることを特徴とする。
【0016】
この溶接装置によれば、比較的細径の管であっても、その内部に溶接トーチおよび溶接トーチ移動機構を配置して溶接を行うと共に、溶接される周囲の温度を温度計測手段および温度計測部撮像手段によって管理することができる。さらに、温度監視部冷却手段によって温度計測部撮像手段を冷却することで、比較的細径の管の内部において温度計測部撮像手段に対する溶接トーチの熱の影響を抑えることが可能になる。
【0017】
また、本発明の溶接装置は、前記挿入部に設けられ、前記溶接トーチの先端部の付近を撮像する溶接部撮像手段と、前記挿入部に設けられ、前記溶接トーチの先端部の付近を照らす照明手段と、前記挿入部に設けられ、前記溶接部撮像手段および前記照明手段を冷却する撮像冷却手段と、を備え、前記溶接部撮像手段、前記照明手段および前記撮像冷却手段が、前記溶接トーチ移動機構によって前記溶接トーチと共に移動可能に設けられていることを特徴とする。
【0018】
この溶接装置によれば、比較的細径の管であっても、その内部に溶接トーチおよび溶接トーチ移動機構を配置して溶接を行うと共に、溶接トーチの様子を溶接部撮像手段によって監視することができる。しかも、溶接トーチの溶接時の光を遮るため溶接部撮像手段にフィルタが設けられることになるが、照明手段を設けたことにより、溶接教示時などの溶接時以外での溶接トーチの様子を監視することができる。さらに、撮像冷却手段によって溶接部撮像手段および照明手段を冷却することで、比較的細径の管の内部において溶接部撮像手段および照明手段に対する溶接トーチの熱の影響を抑えることが可能になる。
【0019】
また、本発明の溶接装置は、前記支持ロッドに設けられており、前記挿入部側を撮像する挿入部撮像手段を備えることを特徴とする。
【0020】
この溶接装置によれば、挿入部を管に挿入する際に、当該挿入部の様子を挿入部撮像手段によって監視することができる。この結果、挿入部を管の内面に接触しないように監視して、溶接トーチや管の損傷を防止することができる。
【0021】
また、本発明の溶接装置では、前記溶接ワイヤ供給機構は、前記溶接ワイヤが巻かれるワイヤリールと、前記ワイヤリールから前記溶接ワイヤを送り出すワイヤ送出部と、前記ワイヤリールにおいて前記溶接ワイヤを巻き取る方向への回転を付勢するワイヤリール巻取手段と、を備えることを特徴とする。
【0022】
この溶接装置によれば、ワイヤリール巻取手段によってワイヤリールに溶接ワイヤが常に巻き取られるため、ワイヤリールに巻かれる溶接ワイヤが緩むことがなく、溶接において溶接ワイヤの送出を適宜行うことができる。また、溶接完了後に溶接ワイヤを逆送給する必要があり、この逆送給を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、比較的細径の管内部の溶接を行うことのできる溶接装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、原子力設備の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、原子炉容器の横断面図である。
【図3】図3は、注水管台の断面図である。
【図4】図4は、注水管台の切削・補修の説明図である。
【図5】図5は、注水管台の切削・補修の説明図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の一部裁断した側面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の挿入部の側面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の挿入部の平面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の挿入部の斜視図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の挿入部の斜視図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の溶接ワイヤ径方向移動機構の側面図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の溶接ワイヤ軸方向移動機構の側面図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の非挿入部の側面図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の非挿入部の平面図である。
【図15】図15は、図13におけるA−A断面拡大図である。
【図16】図16は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の非挿入部の動作を示す側面図である。
【図17】図17は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の制御系のブロック図である。
【図18】図18は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の挿入部の動作を示す側面図である。
【図19】図19は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の挿入部の動作を示す側面図である。
【図20】図20は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の他の挿入部の動作を示す側面図である。
【図21】図21は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の他の挿入部の動作を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0026】
図1は、原子力設備の一例を示す概略図であり、図2は、原子炉容器の横断面図である。図1に示すように、原子力設備100は、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)がある。この原子力設備100は、原子炉容器101、加圧器102、蒸気発生器103およびポンプ104が、一次冷却水管105により順次連結されて、一次冷却水の循環経路が構成されている。また、蒸気発生器103とタービン(図示省略)との間には、二次冷却水の循環経路が構成されている。
【0027】
この原子力設備100では、一次冷却水が原子炉容器101にて加熱されて高温・高圧となり、加圧器102にて加圧されて圧力を一定に維持されつつ、一次冷却水管105を介して蒸気発生器103に供給される。蒸気発生器103では、一次冷却水と二次冷却水との熱交換が行われることにより、二次冷却水が蒸発して蒸気となる。熱交換により蒸気となった二次冷却水は、タービンに供給される。タービンは、二次冷却水の蒸気により駆動される。そして、タービンの動力が発電機(図示省略)に伝達されて発電される。タービンの駆動に供された蒸気は、凝縮して水となり蒸気発生器103に供給される。一方、熱交換後の一次冷却水は、一次冷却水管105を介してポンプ104側に回収される。
【0028】
蒸気発生器103は、図1に示すように、半球形状に形成された下部において、入口側水室103aと出口側水室103bとが仕切板103cによって区画されて設けられている。入口側水室103aおよび出口側水室103bは、その天井部に設けられた管板103dによって蒸気発生器103の上部側と区画されている。蒸気発生器103の上部側には、逆U字形状の伝熱管103eが設けられている。この伝熱管103eは、入口側水室103aと出口側水室103bとを繋ぐように端部が管板103dに支持されている。また、入口側水室103aは、配管ノズルとしての入口管台103fが設けられ、この入口管台103fに入口側の一次冷却水管105が接続されている。一方、出口側水室103bは、配管ノズルとしての出口管台103gが設けられ、この出口管台103gに出口側の一次冷却水管105が接続されている。
【0029】
原子炉容器101は、図1に示すように、燃料集合体(図示省略)が挿抜できるように、容器本体101aとその上部に装着される容器蓋101bとにより構成されている。容器蓋101bは、容器本体101aに対して開閉可能に設けられている。容器本体101aは、上方が開口し、下方が半球形状とされて閉塞された円筒形状をなし、上部に一次冷却水としての軽水を給排する入口管台101cおよび出口管台101dが設けられている。出口管台101dは、蒸気発生器103の入口管台103fに連通するように一次冷却水管105が接続されている。また、入口管台101cは、蒸気発生器103の出口管台103gに連通するように一次冷却水管105が接続されている。また、原子炉容器101は、図2に示すように、容器本体101aにおいて入口管台101cおよび出口管台101dと同等高さの位置に、注水用の管である注水管台101eが設けられている。注水管台101eは、管である注水配管101fが溶接によって接続されている。
【0030】
図3は、注水管台の断面図であり、図4および図5は、注水管台の切削・補修の説明図である。注水管台101eは、上述した原子力設備100の安全性や信頼性を確保するため、定期的に検査が行われる。この検査の結果、図3に示す、注水管台101eと注水配管101fとの接続部分である溶接部101gに、経年変化によるクラックなどの表面欠陥が発生するおそれのある場合や、経年変化による表面欠陥が判明した場合、当該溶接部101gを切削・補修する。具体的には、図4に示すように、溶接部101gの内面を、注水管台101eおよび注水配管101fの内面の一部と共に切削し、切削された切削部Aに所定合金種の溶接肉盛Bを行い、溶接肉盛Bを行った部分およびその周囲を仕上げ加工する。また、欠陥が発生するおそれや欠陥が溶接部101gの内面から深い場所にある場合は、図5に示すように、溶接部101gの内面を、注水管台101eおよび注水配管101fの内面の一部と共に深く切削し、切削された切削部Aに所定合金種の溶接肉盛Bを行い、溶接肉盛Bを行った部分およびその周囲を仕上げ加工する。なお、図4に示す浅い切削および肉盛は、注水管台101eの内面の全周に沿って行う。また、図5に示す深い切削および肉盛は、注水管台101eの内面の局部または全周に沿って行う。なお、上記の切削や溶接は、欠陥の有無に係わらず行う場合もある。
【0031】
上記の切削・補修の箇所において、切削後に肉盛溶接を行うため、本実施の形態に係る溶接装置が適用される。図6は、本実施の形態に係る溶接装置の一部裁断した側面図であり、図7は、本実施の形態に係る溶接装置の挿入部の側面図であり、図8は、本実施の形態に係る溶接装置の挿入部の平面図であり、図9および図10は、本実施の形態に係る溶接装置の挿入部の斜視図であり、図11は、本実施の形態に係る溶接装置の溶接ワイヤ径方向移動機構の側面図であり、図12は、本実施の形態に係る溶接装置の溶接ワイヤ軸方向移動機構の側面図であり、図13は、本実施の形態に係る溶接装置の非挿入部の側面図であり、図14は、本実施の形態に係る溶接装置の非挿入部の平面図であり、図15は、図13におけるA−A断面拡大図であり、図16は、本実施の形態に係る溶接装置の非挿入部の動作を示す側面図である。
【0032】
溶接装置は、上述した原子炉容器101の内側であって注水管台101eから注水配管101fに至る管の内部に挿入されるもので、図6に示すように、管の内部に挿入される前側に設けられた挿入部1と、管の外部に配置される後側に設けられて挿入部1を管の内部に配置し、自身は管の内部に挿入されることのない非挿入部2とを有している。
【0033】
挿入部1は、図6に示すように、管の内部に挿入されるように、全体が管の内径よりも細径に形成されている。この挿入部1は、管に配置された状態で当該管が延在する軸方向に沿う軸S1の延在方向に長手状に形成されたベース部材1aを備える。そして、挿入部1は、ベース部材1aを基に、溶接トーチ11と、溶接トーチ移動機構12と、溶接ワイヤ支持部13と、温度監視部14と、溶接監視部15とを有している。
【0034】
溶接トーチ11は、図6および図7に示すように、ベース部材1aが管に挿入される前端に固定されている。この溶接トーチ11は、電極である先端部11aを、軸S1に直交する方向(管に配置された状態では管の軸方向に直交する径方向)に向けて設けられている。
【0035】
また、溶接トーチ11の近傍には、溶接トーチによって溶接される周囲を冷却する溶接冷却手段111が設けられている。溶接冷却手段111は、ベース部材1aに取り付けられて溶接トーチ11の近傍に配置されたエアノズル111aと、当該エアノズル111aに冷却ガス(例えばアルゴンガス)を供給する給気管111bとで構成されている。
【0036】
溶接トーチ移動機構12は、図6に示すように、ベース部材1aの後端側であって、後述する非挿入部2における支持ロッド21の前端に設けられ、溶接トーチ11の先端部11aが向く方向(軸S1に直交する管の径方向)に、ベース部材1aと共に溶接トーチ11を移動させるものである。溶接トーチ移動機構12は、図7に示すように、溶接トーチ駆動モータ12a、ネジロッド12b、ナット部12c、ガイドレール12d、移動部としてのスライダ12e、および移動検出センサ12fを有し、これらがケーシング12gに収容されている。ケーシング12gは、図6に示すように、支持ロッド21の前端に固定されている。
【0037】
ネジロッド12bは、溶接トーチ11の先端部11aが向く方向(軸S1に直交する管の径方向)に延在し、ケーシング12gに対して回転可能に取り付けられている。このネジロッド12bは、溶接トーチ駆動モータ12aの出力軸に歯車を介して連結されている。ナット部12cは、ネジロッド12bに螺合されている。ガイドレール12dは、溶接トーチ11の先端部11aが向く方向(軸S1に直交する管の径方向)に延在して、ケーシング12gに対して固定されている。このガイドレール12dは、平行に1対設けられている。スライダ12eは、1対のガイドレール12dに対し、当該ガイドレール12dの延在方向に沿って移動可能に設けられている。このスライダ12eは、ナット部12cと一体に固定されている。また、スライダ12eは、溶接トーチ11が固定されたベース部材1a側に連結されている。移動検出センサ12fは、抵抗式センサであって、溶接トーチ11の先端部11aが向く方向(軸S1に直交する管の径方向)に移動子が移動可能に設けられ、この移動子の移動に伴って抵抗値が変化することにより移動子の位置を検出する。この移動検出センサ12fは、移動子がスライダ12eに取り付けられている。
【0038】
このような溶接トーチ移動機構12は、溶接トーチ駆動モータ12aの駆動によってネジロッド12bが回転する。すると、ネジロッド12bに螺合関係にあるナット部12cが、ガイドレール12dに案内されているスライダ12eと共に、溶接トーチ11の先端部11aが向く方向(軸S1に直交する管の径方向)に移動する。このため、スライダ12eの移動に伴ってベース部材1aと共に溶接トーチ11が移動する。また、溶接トーチ11の移動した位置は、移動検出センサ12fによって検出される。また、上述したように溶接トーチ11の近傍において、ベース部材1aに溶接冷却手段111が取り付けられているため、この溶接冷却手段111も溶接トーチ移動機構12によって溶接トーチ11と共に移動する。
【0039】
なお、溶接トーチ移動機構12は、溶接トーチ11の先端部11aが向く方向(軸S1に直交する管の径方向)に延在しつつケーシング12gに対して回転可能に支持された回転軸12hを有している。この回転軸12hは、溶接トーチ駆動モータ12aの出力軸に対して歯車を介して連結され、かつ、ケーシング12gに対して軸S1に沿う中心軸廻りに回転可能に支持された回転子12iと歯車を介して転結されている。この回転子12iは、ケーシング12gの後側の外部から、図示しない工具が嵌合するように構成されている。このため、溶接トーチ駆動モータ12aが故障した場合、回転子12iに工具を嵌合して回せば、回転軸12hおよび溶接トーチ駆動モータ12aの出力軸を経てネジロッド12bを回転させることができ、この結果、手動で溶接トーチ11を移動させることが可能である。
【0040】
溶接ワイヤ支持部13は、溶接トーチ11の先端部11aの近傍にて先端が配置される溶接ワイヤを支持するものである。さらに、溶接ワイヤ支持部13は、溶接ワイヤの先端が溶接トーチ11の先端部11aに対して接近または離隔するように溶接ワイヤを移動可能に支持するものである。ここで、溶接ワイヤは、図7〜図10に示すように、コンジットライナ3に挿通されることで、非挿入部2側から挿入部1の溶接トーチ11の先端部11aに至り案内される。溶接ワイヤ支持部13は、このコンジットライナ3を支持している。溶接ワイヤ支持部13は、図8〜図10に示すように、ベース部材1aと溶接トーチ移動機構12のスライダ12eとの間に設けられた溶接ワイヤ軸方向移動機構131と、コンジットライナ3が取り付けられていると共に溶接ワイヤ軸方向移動機構131に取り付けられた溶接ワイヤ径方向移動機構132とを有している。
【0041】
溶接ワイヤ軸方向移動機構131は、図8〜図10に示すように、そのケーシング131aが、ベース部材1aの後端に固定され、かつ図7に示すように、溶接トーチ移動機構12のスライダ12eに連結部材131bを介して連結されている。溶接ワイヤ軸方向移動機構131は、図11に示すように、ケーシング131aに、溶接ワイヤ軸方向駆動モータ131c、ネジロッド131d、ナット部131e、ガイドレール131f、およびスライダ131gが収容されている。
【0042】
ネジロッド131dは、軸S1に沿う管の軸方向に延在し、ケーシング131aに対して回転可能に取り付けられている。このネジロッド131dは、溶接ワイヤ軸方向駆動モータ131cの出力軸に歯車を介して連結されている。ナット部131eは、ネジロッド131dに螺合されている。ガイドレール131fは、軸S1に沿う管の軸方向に延在して、ケーシング131aに対して固定されている。スライダ131gは、ガイドレール131fに対し、当該ガイドレール131fの延在方向に沿って移動可能に設けられている。このスライダ131gは、ナット部131eと一体に固定されている。また、スライダ131gは、後述する溶接ワイヤ径方向移動機構132のケーシング132aが連結されている。
【0043】
このような溶接ワイヤ軸方向移動機構131は、溶接ワイヤ軸方向駆動モータ131cの駆動によってネジロッド131dが回転する。すると、ネジロッド131dに螺合関係にあるナット部131eが、ガイドレール131fに案内されているスライダ131gと共に、軸S1に沿う管の軸方向に移動する。このため、スライダ131gの移動に伴って溶接ワイヤ径方向移動機構132と共にコンジットライナ3が移動する。この結果、コンジットライナ3に挿入されている溶接ワイヤが軸S1に沿う管の軸方向に移動する。
【0044】
溶接ワイヤ径方向移動機構132は、上述したように、そのケーシング132aが、溶接ワイヤ軸方向移動機構131のスライダ131gに連結されている。溶接ワイヤ径方向移動機構132は、図12に示すように、ケーシング132aに、溶接ワイヤ径方向駆動モータ132c、ネジロッド132d、ナット部132e、ガイドレール132f、およびスライダ132gが収容されている。
【0045】
ネジロッド132dは、溶接トーチ11の先端部11aが向く方向(軸S1に直交する管の径方向)に延在し、ケーシング132aに対して回転可能に取り付けられている。このネジロッド132dは、溶接ワイヤ径方向駆動モータ132cの出力軸に歯車を介して連結されている。ナット部132eは、ネジロッド132dに螺合されている。ガイドレール132fは、溶接トーチ11の先端部11aが向く方向(軸S1に直交する管の径方向)に延在して、ケーシング132aに対して固定されている。スライダ132gは、ガイドレール132fに対し、当該ガイドレール132fの延在方向に沿って移動可能に設けられている。このスライダ132gは、ナット部132eと一体に固定されている。また、スライダ132gは、溶接ワイヤを挿通するコンジットライナ3が取り付けられている。
【0046】
このような溶接ワイヤ径方向移動機構132は、溶接ワイヤ径方向駆動モータ132cの駆動によってネジロッド132dが回転する。すると、ネジロッド132dに螺合関係にあるナット部132eが、ガイドレール132fに案内されているスライダ132gと共に、溶接トーチ11の先端部11aが向く方向(軸S1に直交する管の径方向)に移動する。このため、スライダ132gの移動に伴ってコンジットライナ3が移動する。この結果、コンジットライナ3に挿入されている溶接ワイヤが溶接トーチ11の先端部11aが向く方向(軸S1に直交する管の径方向)に移動する。
【0047】
また、溶接ワイヤ支持部13は、溶接ワイヤ軸方向移動機構131が、ベース部材1aと溶接トーチ移動機構12のスライダ12eとの間に設けられ、かつ溶接ワイヤ軸方向移動機構131が、コンジットライナ3が取り付けられて溶接ワイヤ軸方向移動機構131に設けられていることから、溶接トーチ移動機構12によって溶接トーチ11と共に移動する。
【0048】
温度監視部14は、溶接に際し、溶接トーチ11によって溶接前の管台表面の温度を監視するものである。本実施の形態において行われる溶接は、テンパービード溶接が適用されるため、温度管理を行う必要がある。温度監視部14は、図7〜図10に示すように、温度計測手段141、温度計測部撮像手段142および温度監視部冷却手段143(図10参照)を有している。温度計測手段141は、例えば放射温度計が適用され、非接触で温度を計測する。この温度計測手段141は、ベース部材1aに設けられており、溶接時の温度の影響を低減するため、溶接トーチ11の先端部11aが向く方向と相反する方向において温度を計測するように配置されている。温度計測部撮像手段142は、ベース部材1aに設けられており、温度計測手段141によって温度が計測される付近を撮像するものである。温度計測部撮像手段142は、温度計測手段141によって温度が計測される部分を明確にするため、撮像画面上にマーキングを入れる。温度監視部冷却手段143は、温度計測部撮像手段142の周囲を覆う水冷ジャケットに、溶接トーチ11の冷却に用いる冷却水が供給されるものである。この温度監視部14は、ベース部材1aに設けられていることから、溶接トーチ移動機構12によって溶接トーチ11と共に移動する。
【0049】
溶接監視部15は、溶接に際し、溶接トーチ11によって溶接される周囲の様子を監視するものであり、図7〜図10に示すように、溶接部撮像手段151、照明手段152および撮像冷却手段153を有している。溶接部撮像手段151は、ベース部材1aに設けられており、溶接トーチ11の先端部11aの付近を撮像するものである。この溶接部撮像手段151は、溶接時の光を遮って撮像を行うためにフィルタが設けられている。照明手段152は、溶接トーチ11がベース部材1aに取り付けられる基部に対して溶接トーチ11よりも前側に延在して固定された支持部材154に取り付けられており、挿入部1の最も前側に配置されている。そして、照明手段152は、挿入部1の最も前側から、溶接トーチ11の先端部11aの付近を照らす。撮像冷却手段153は、溶接時の温度の影響を抑えるため、溶接部撮像手段151および照明手段152を冷却するものである。この撮像冷却手段153は、溶接部撮像手段151や照明手段152の周囲を覆う水冷ジャケットに、溶接トーチ11の冷却に用いる冷却水が供給されるものである。この溶接監視部15は、溶接部撮像手段151がベース部材1aに設けられ、照明手段152が溶接トーチ11の基部に支持部材154を介して設けられていることから、溶接トーチ移動機構12によって溶接トーチ11と共に移動する。
【0050】
非挿入部2は、上述した挿入部1が前端に配置された支持ロッド21を基に構成されており、回転移動機構22と、軸方向移動機構23と、溶接ワイヤ供給機構24と、挿入部撮像手段27とを有している。
【0051】
支持ロッド21は、前端に固定された挿入部1を管の内部に配置するものである。この支持ロッド21は、図13〜図15に示すように、管の内部に挿入し得る外径であって、内部が中空の円筒状に形成されており、軸S1を中心として配置されている。この支持ロッド21は、その前端に挿入部1に設けられた溶接トーチ移動機構12のケーシング12gが固定されている。また、図には明示しないが、支持ロッド21は、その中空に形成された内部に、上述した溶接トーチ11の電源ケーブル、溶接トーチ駆動モータ12aの電源ケーブル、移動検出センサ12fの信号ケーブル、溶接ワイヤ軸方向駆動モータ131cの電源ケーブル、溶接ワイヤ径方向駆動モータ132cの電源ケーブル、温度計測手段141の信号ケーブル、温度計測部撮像手段142の電源ケーブル、溶接部撮像手段151の電源ケーブル、照明手段152の電源ケーブル、撮像冷却手段153(溶接トーチの冷却構造)の給水チューブ、およびコンジットライナ3が挿通されていることで、各ケーブル類が支持ロッド21を通して管の外部に引き出されるように構成されている。また、支持ロッド21は、その後端側に上記ケーブル類を巻き付けるためのケーブルリール26が設けられている。また、支持ロッド21は、その中空に形成された内部に、工具挿入管211が設けられている。工具挿入管211は、支持ロッド21の前端から後端にかけて長手状に延在し、前端が、溶接トーチ移動機構12における回転子12iに向き合って配置されている。このため、手動で溶接トーチ11を移動させる場合、工具挿入管211を経て容易に回転子12iに対して工具を嵌合させることが可能である。
【0052】
回転移動機構22は、支持ロッド21を軸S1廻りに回転移動させるもので、図13〜図15に示すように、回転移動支持部221、回転駆動モータ222、駆動プーリ223、従動プーリ224および駆動ベルト225を有している。
【0053】
回転移動支持部221は、支持ロッド21を軸S1廻りに回転可能に支持するものであって、図13に示すように、筒状に形成されて支持ロッド21の周りに配置されており、支持ロッド21との間にベアリング221aを介して設けられている。この回転移動支持部221は、非挿入部2の基部となるフレーム25に支持されている。フレーム25は、ほぼ円筒形状に形成されており、後端において外周に突出するフランジ25aが設けられている。このフレーム25は、図13に示すように、管の外部において、原子炉容器101の内側に気中作業環境を構成する有底筒状のプラットフォーム(特開2011−17670号公報のプラットフォームに相当)106に固定される。具体的に、プラットフォーム106は、筒状の側壁に、管に通じる円形の窓穴106aが設けられており、この窓穴106aに取付基部107が固定されている。取付基部107は、円筒状に形成され、窓穴106aに挿入された状態でプラットフォーム106内に配置される端部の外周に突出するフランジ107aが設けられている。この取付基部107は、窓穴106aに対し、円筒状の中心を管の軸に合わせて固定される。フレーム25は、この取付基部107に挿通されて取付基部107のフランジ107aに対してフランジ25aが固定されることで、支持ロッド21の軸S1を管の軸に合わせて取り付けられる。
【0054】
回転駆動モータ222は、図13に示すように、出力軸222aを軸S1と平行にして回転移動支持部221に固定されている。
【0055】
駆動プーリ223は、図13および図15に示すように、回転駆動モータ222の出力軸222aに設けられている。
【0056】
従動プーリ224は、図13および図15に示すように、支持ロッド21の外周に設けられている。
【0057】
駆動ベルト225は、図13および図15に示すように、駆動プーリ223と従動プーリ224とに掛け回される無端状にベルトである。
【0058】
この回転移動機構22は、回転駆動モータ222が駆動すると、出力軸222aの回転が、駆動プーリ223から駆動ベルト225を介して従動プーリ224に伝達されることで、支持ロッド21が、後述の溶接ワイヤ供給機構24、および後述の挿入部撮像手段27と軸S1廻りに回転する。この結果、支持ロッド21の前端に取り付けられている挿入部1が軸S1廻りに回転する。
【0059】
軸方向移動機構23は、支持ロッド21を軸S1の延在方向に沿って移動させるもので、図13〜図15に示すように、軸方向移動支持部231、軸方向駆動モータ232、ネジロッド233およびナット部234を有している。
【0060】
軸方向移動支持部231は、図14〜図16に示すように、フレーム25に設けられており、支持ロッド21を挟むように軸S1と平行に配置された1対のレール231aを有している、各レール231aは、図15に示すように、当該レール231aに沿って軸S1に沿う方向に移動するスライダ231bが設けられている。スライダ231bは、回転移動支持部221が取り付けられている。すなわち、軸方向移動支持部231は、フレーム25と回転移動支持部221との間に設けられて、回転移動支持部221をフレーム25に支持させ、かつフレーム25に対して回転移動支持部221を軸S1に沿う方向に移動可能に支持している。
【0061】
軸方向駆動モータ232は、図13〜図16に示すように、出力軸232aを軸S1に直交してフレーム25に固定されている。
【0062】
ネジロッド233は、図13〜図16に示すように、軸S1と平行に延在する棒状体であって、その周囲にボールネジ溝が設けられている。このネジロッド233は、フレーム25に対して回転可能に支持されている。また、ネジロッド233は、その後端に設けられた傘歯車が、軸方向駆動モータ232の出力軸232aに設けられた傘歯車と噛合されている。
【0063】
ナット部234は、図13〜図16に示すように、ネジロッド233のボールネジ溝に螺合するものである。このナット部234は、回転移動支持部221に固定されている。
【0064】
この軸方向移動機構23は、軸方向駆動モータ232が駆動すると、出力軸232aの回転が、ネジロッド233に伝達されることで、ネジロッド233が回転する。すると、図16に示すように、ネジロッド233に螺合するナット部234が、ネジロッド233の延在方向である軸S1に沿う方向に移動する。このため、ナット部234が固定された回転移動支持部221が、レール231aに沿って軸S1に沿う方向に移動し、回転移動支持部221に支持されている支持ロッド21が、回転移動機構22、後述の溶接ワイヤ供給機構24、および後述の挿入部撮像手段27と共に軸S1に沿う方向に移動する。この結果、支持ロッド21の前端に取り付けられている挿入部1が軸S1に沿う方向に移動する。
【0065】
溶接ワイヤ供給機構24は、溶接トーチ11に至り溶接ワイヤを供給するもので、図13、図14および図16に示すように、支持ロッド21の後端に取り付けられ、ワイヤリール241、ワイヤリール巻取手段242、およびワイヤ送出部243を有している。
【0066】
ワイヤリール241は、溶接ワイヤを巻き取るもので、図13、図14および図16に示すように、軸S1に直交する回転軸241aの廻りに回転可能に設けられている。
【0067】
ワイヤリール巻取手段242は、図13および図16に示すように、ワイヤリール241の回転軸241aに巻装されたバネ材からなる。このワイヤリール巻取手段242は、後述のワイヤ送出部243によってワイヤリール241から溶接ワイヤが引き出され、ワイヤリール241が矢印α方向に回転した場合、バネ材が巻かれることで、溶接ワイヤを巻き取る方向である矢印β方向へのワイヤリール241の回転を付勢する。
【0068】
ワイヤ送出部243は、ワイヤリール241から溶接ワイヤを送り出すもので、図13および図16に示すように、送出駆動モータ243aと、この送出駆動モータ243aによって回転駆動される駆動ローラ243bと、駆動ローラ243bに当接する従動ローラ243cと、従動ローラ243cを駆動ローラ243bに押圧する押圧部243dとを有している。すなわち、ワイヤ送出部243は、駆動ローラ243bと従動ローラ243cとの間に溶接ワイヤを挟んだ状態とし、送出駆動モータ243aを駆動することで、各ローラ243b,243cの間で溶接ワイヤを送り出す。
【0069】
挿入部撮像手段27は、挿入部1側を撮像するもので、図13、図14および図16に示すように、支持ロッド21の前端部に固定されている。この挿入部撮像手段27は、軸S1に直交する管の径方向で対をなして設けられ、かつ支持ロッド21に取り付けられた状態で、管の内径よりも小さい外形の範囲に設けられている。
【0070】
図17は、本実施の形態に係る溶接装置の制御系のブロック図である。上述した溶接装置は、溶接トーチ11、溶接トーチ移動機構12の溶接トーチ駆動モータ12a、溶接トーチ移動機構12の移動検出センサ12f、溶接ワイヤ軸方向移動機構131の溶接ワイヤ軸方向駆動モータ131c、溶接ワイヤ径方向移動機構132の溶接ワイヤ径方向駆動モータ132c、溶接部撮像手段151、照明手段152、温度計測手段141、温度計測部撮像手段142、および挿入部撮像手段27、回転移動機構22の回転駆動モータ222、軸方向移動機構23の軸方向駆動モータ232、および溶接ワイヤ供給機構24の送出駆動モータ243aが制御部4に接続されている。また、制御部4は、溶接冷却手段111のエアノズル111aに冷却ガスを供給するためのエアポンプ51と、温度監視部冷却手段143、撮像冷却手段153および溶接トーチ11に冷却水を供給するための冷却水ポンプ52とが接続されている。
【0071】
制御部4は、マイコンなどで構成され、記憶部41および演算部42が接続されている。記憶部41は、RAMやROMなどから構成され、プログラムやデータが格納されている。記憶部41に格納されるデータは、主に、溶接トーチ11の先端部11aが管の内面に対して接近または離隔した際のアーク電圧の変動データや、移動検出センサ12fの検出による溶接トーチ11の移動位置のデータや、温度計測手段141で測定された溶接される周囲の温度のデータや、各モータ131c,132c,222,232の駆動に伴う各移動速度のデータや、送出駆動モータ243aの駆動に伴う溶接ワイヤの送り速度のデータなどがある。また、演算部42は、主に、アーク電圧の変動に基づいて溶接トーチ11のアーク長を一定に保つための溶接トーチ移動機構12による溶接トーチ11の移動量(移動速度)を演算する。
【0072】
具体的に、制御部4による溶接装置の動作を説明する。図18および図19は、本実施の形態に係る溶接装置の挿入部の動作を示す側面図である。
【0073】
この溶接装置の動作は、対象の管(例えば、注水管台101eおよび注水配管101fの溶接部101g)の検査を行い、当該管に欠陥が発生するおそれや欠陥が発生した場合に、当該欠陥部が切削された切削部分を肉盛溶接するためのものである。この場合、図6に示すように、対象の管に溶接装置を設置する。この場合、挿入部1を管の内部に挿入するにあたり、図18に示すように、溶接トーチ11が管の内面に接触しないように、溶接トーチ移動機構12によって溶接トーチ11の先端部11aを管の内面から離隔させておく。また、挿入部1を管の内部に挿入するにあたり、挿入部撮像手段27によって挿入部1を撮影し、挿入部1と管の内面との位置関係を確認する。挿入部撮像手段27によって挿入部1を撮影する際は、照明手段152を点灯させるとよい。なお、図18および図19においては、管の内面が周方向全周に亘って比較的浅く(例えば、3.5mm程度)切削されている場合を示している。
【0074】
まず、溶接前に温度計測を行う。この温度計測においては、温度計測手段141によって非接触で温度を計測する部位(管の切削部の面)が温度計測部撮像手段142のマーキングに一致するように、適宜、軸方向移動機構23によって挿入部1を軸S1に沿う管の軸方向に移動させ、回転移動機構22によって挿入部1を軸S1廻りに管の周方向に回転移動させ、かつ溶接トーチ移動機構12によってベース部材1aを移動させる。
【0075】
次に、溶接教示を行う。この溶接教示においては、図19に示すように、溶接トーチ移動機構12によってベース部材1aを移動させることで、溶接トーチ11の先端部11aを切削部における管の内面に接触させることで短絡検出し、かつ軸方向移動機構23によって挿入部1を軸S1に沿う管の軸方向に移動させる。そしてこの教示を回転移動機構22によって挿入部1を軸S1廻りに管の周方向に回転移動させて、所定角度(例えば30度)ごとに行う。このように教示した教示データを記憶部41に記憶しておく。
【0076】
次に、溶接を行う。この溶接においては、上述した教示データに従って、軸方向移動機構23によって挿入部1を軸S1に沿う管の軸方向に移動させ、回転移動機構22によって挿入部1を軸S1廻りに管の周方向に回転移動させ、溶接トーチ移動機構12によってベース部材1aを移動させ、かつ溶接ワイヤ供給機構24によって溶接ワイヤを供給する。また必要に応じ、溶接ワイヤ軸方向移動機構131や溶接ワイヤ径方向移動機構132によって溶接ワイヤの位置を調整する。そして、溶接は、軸S1に沿う管の軸方向に行い、これを軸S1廻りに管の周方向に引き続き行う。
【0077】
また、溶接に際し、溶接開始位置のクレータ部の温度を計測する。この計測においては、温度計測手段141によって非接触で温度を計測するクレータ部が温度計測部撮像手段142のマーキングに一致するように、適宜、軸方向移動機構23によって挿入部1を軸S1に沿う管の軸方向に移動させ、回転移動機構22によって挿入部1を軸S1廻りに管の周方向に回転移動させ、かつ溶接トーチ移動機構12によってベース部材1aを移動させる。この温度計測と同時に、エアポンプ51を駆動して溶接冷却手段111のエアノズル111aから冷却ガスを噴射し、管の内部の温度を低下させる。
【0078】
図20および図21は、本実施の形態に係る溶接装置の他の挿入部の動作を示す側面図である。ここで、欠陥が発生するおそれや欠陥が溶接部101gの内面から比較的深い場所にある場合は、図20および図21のように、管局部的に深く(例えば最大24mm程度)切削される。このような、局部的な切削部の溶接に対し、本実施の形態の溶接装置は、溶接トーチ11を軸S1に交差する管の径方向により移動させる必要があるため、これにより溶接監視部15が管の内面に接触することがないように、当該溶接監視部15が管の内面から離隔して設けられている。具体的には、溶接部撮像手段151のベース部材1aへの取付位置を、ベース部材1aの側部に配置すると共に、照明手段152の一部を切り欠いて形成する。なお、図20および図21に示す溶接装置による動作については、上述の動作と同様である。
【0079】
そして、溶接後では、溶接ワイヤを溶接トーチ11から離隔させるように、溶接ワイヤ供給機構24の送出駆動モータ243aを送出時とは逆に駆動し、溶接ワイヤを逆送りする。この際、溶接ワイヤ供給機構24のワイヤリール241にワイヤリール巻取手段242が設けられていることから、ワイヤリール241に溶接ワイヤが巻き取られる。このため、溶接ワイヤを逆送りしても、ワイヤリール241に巻かれる溶接ワイヤが緩むことがなく、次の溶接において溶接ワイヤの送出が適宜行える。
【0080】
このように、本実施の形態の溶接装置は、管の内部に挿入される挿入部1と、管の外部に配置されて挿入部1を管の内部に配置する非挿入部2と、挿入部1に設けられ、管の内部に配置された状態で管の内面に溶接を行う溶接トーチ11と、挿入部1に設けられ、溶接トーチ11の先端部11aが向く管の径方向に溶接トーチ11を移動させる溶接トーチ移動機構12と、非挿入部2に設けられ、先端に挿入部1が取り付けられて管に挿入される支持ロッド21を、当該支持ロッド21の軸S1廻りに回転移動させる回転移動機構22と、非挿入部2に設けられ、支持ロッド21を、当該支持ロッド21の軸S1の延在方向に沿って移動させる軸方向移動機構23と、非挿入部2に設けられ、溶接トーチ11に至り溶接ワイヤを供給する溶接ワイヤ供給機構24と、を備える。
【0081】
この溶接装置によれば、管の内部に配置される挿入部1に、溶接トーチ11および溶接トーチ移動機構12が設けられ、管の外部に配置される非挿入部2に、回転移動機構22、軸方向移動機構23、および溶接ワイヤ供給機構24が設けられているため、比較的細径の管であっても、その内部に溶接トーチ11および溶接トーチ移動機構12を配置して溶接を行うことが可能になる。
【0082】
また、溶接トーチ11は、管が延在する軸方向に延在するベース部材1aの前端側に取り付けられ、溶接トーチ移動機構12は、ベース部材1aの後端側に取り付けられて、ベース部材1aと共に溶接トーチ11を移動させる。
【0083】
この溶接装置によれば、ベース部材1aを介して溶接トーチ11と溶接トーチ移動機構12との間に所定の距離をおくことで、比較的細径の管の内部において溶接トーチ移動機構12に対する溶接トーチ11の熱の影響を抑えることが可能になる。
【0084】
また、本実施の形態の溶接装置は、挿入部1に設けられ、溶接ワイヤの先端が溶接トーチ11の先端部11aに対して接近または離隔するように溶接ワイヤを移動可能に支持する溶接ワイヤ支持部13を備え、当該溶接ワイヤ支持部13が、溶接トーチ移動機構12によって溶接トーチ11と共に移動可能に設けられている。
【0085】
この溶接装置によれば、比較的細径の管であっても、その内部に溶接トーチ11および溶接トーチ移動機構12を配置して溶接を行うと共に、溶接トーチ11に対する溶接ワイヤの位置を溶接ワイヤ支持部13によって調整することが可能になる。
【0086】
また、本実施の形態の溶接装置は、溶接トーチ11は、管が延在する軸方向に延在するベース部材1aの前端側に取り付けられ、溶接ワイヤ支持部13は、ベース部材1aの後端に取り付けられていると共に、溶接トーチ移動機構12の移動部材(スライダ12e)に連結されている。
【0087】
この溶接装置によれば、ベース部材1aを介して溶接トーチ11と溶接ワイヤ支持部13との間に所定の距離をおくことで、比較的細径の管の内部において溶接ワイヤ支持部13に対する溶接トーチ11の熱の影響を抑えることが可能になる。
【0088】
また、本実施の形態の溶接装置は、挿入部1に設けられ、溶接トーチ11によって溶接される周囲の温度を計測する温度計測手段141と、挿入部1に設けられ、温度計測手段141によって計測される付近を撮像する温度計測部撮像手段142と、挿入部1に設けられ、温度計測部撮像手段142を冷却する温度監視部冷却手段143と、を備え、温度計測手段141、温度計測部撮像手段142および温度監視部冷却手段143が、溶接トーチ移動機構12によって溶接トーチ11と共に移動可能に設けられている。
【0089】
この溶接装置によれば、比較的細径の管であっても、その内部に溶接トーチ11および溶接トーチ移動機構12を配置して溶接を行うと共に、溶接される周囲の温度を温度計測手段141および温度計測部撮像手段142によって管理することが可能になる。さらに、温度監視部冷却手段143によって温度計測部撮像手段142を冷却することで、比較的細径の管の内部において温度計測部撮像手段142に対する溶接トーチ11の熱の影響を抑えることが可能になる。
【0090】
また、本実施の形態の溶接装置は、挿入部1に設けられ、溶接トーチ11の先端部11aの付近を撮像する溶接部撮像手段151と、挿入部1に設けられ、溶接トーチ11の先端部11aの付近を照らす照明手段152と、挿入部1に設けられ、溶接部撮像手段151および照明手段152を冷却する撮像冷却手段153と、を備え、溶接部撮像手段151、照明手段152および撮像冷却手段153が、溶接トーチ移動機構12によって溶接トーチ11と共に移動可能に設けられている。
【0091】
この溶接装置によれば、比較的細径の管であっても、その内部に溶接トーチ11および溶接トーチ移動機構12を配置して溶接を行うと共に、溶接トーチ11の様子を溶接部撮像手段151によって監視することが可能になる。しかも、溶接トーチ11の溶接時の光を遮るため溶接部撮像手段151にフィルタが設けられることになるが、照明手段152を設けたことにより、溶接教示時などの溶接時以外での溶接トーチ11の様子を監視することが可能になる。さらに、撮像冷却手段153によって溶接部撮像手段151および照明手段152を冷却することで、比較的細径の管の内部において溶接部撮像手段151および照明手段152に対する溶接トーチ11の熱の影響を抑えることが可能になる。
【0092】
また、本実施の形態の溶接装置は、支持ロッド21に設けられており、挿入部1側を撮像する挿入部撮像手段27を備える。
【0093】
この溶接装置によれば、挿入部1を管に挿入する際に、当該挿入部1の様子を挿入部撮像手段27によって監視することが可能になる。この結果、挿入部1を管の内面に接触しないように監視して、溶接トーチ11や管の損傷を防止することが可能になる。
【0094】
また、本実施の形態の溶接装置は、溶接ワイヤ供給機構24は、溶接ワイヤが巻かれるワイヤリール241と、ワイヤリール241から溶接ワイヤを送り出すワイヤ送出部243と、ワイヤリール241において溶接ワイヤを巻き取る方向への回転を付勢するワイヤリール巻取手段242と、を備える。
【0095】
この溶接装置によれば、ワイヤリール巻取手段242によってワイヤリール241に溶接ワイヤが常に巻き取られるため、ワイヤリール241に巻かれる溶接ワイヤが緩むことがなく、溶接において溶接ワイヤの送出を適宜行うことが可能になる。また、溶接完了後に溶接ワイヤを逆送給する必要があり、この逆送給を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0096】
1 挿入部
1a ベース部材
2 非挿入部
11 溶接トーチ
11a 先端部
111 溶接冷却手段
12 溶接トーチ移動機構
13 溶接ワイヤ支持部
14 温度監視部
141 温度計測手段
142 温度計測部撮像手段
15 溶接監視部
151 溶接部撮像手段
152 照明手段
153 撮像冷却手段
21 支持ロッド
22 回転移動機構
23 軸方向移動機構
24 溶接ワイヤ供給機構
27 挿入部撮像手段
241 ワイヤリール
242 ワイヤリール巻取手段
243 ワイヤ送出部
S1 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内部に挿入される挿入部と、
前記管の外部に配置されて前記挿入部を前記管の内部に配置する非挿入部と、
前記挿入部に設けられ、前記管の内部に配置された状態で前記管の内面に溶接を行う溶接トーチと、
前記挿入部に設けられ、前記溶接トーチの先端部が向く前記管の径方向に前記溶接トーチを移動させる溶接トーチ移動機構と、
前記非挿入部に設けられ、先端に前記挿入部が取り付けられて管に挿入される支持ロッドを、当該支持ロッドの軸廻りに回転移動させる回転移動機構と、
前記非挿入部に設けられ、前記支持ロッドを、当該支持ロッドの軸の延在方向に沿って移動させる軸方向移動機構と、
前記非挿入部に設けられ、前記溶接トーチに至り溶接ワイヤを供給する溶接ワイヤ供給機構と、
を備えることを特徴とする溶接装置。
【請求項2】
前記溶接トーチは、前記管が延在する軸方向に延在するベース部材の前端側に取り付けられ、前記溶接トーチ移動機構は、前記ベース部材の後端側に取り付けられて、前記ベース部材と共に前記溶接トーチを移動させることを特徴とする請求項1に記載の溶接装置。
【請求項3】
前記挿入部に設けられ、前記溶接ワイヤの先端が前記溶接トーチの先端部に対して接近または離隔するように前記溶接ワイヤを移動可能に支持する溶接ワイヤ支持部を備え、当該溶接ワイヤ支持部が、前記溶接トーチ移動機構によって前記溶接トーチと共に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接装置。
【請求項4】
前記溶接トーチは、前記管が延在する軸方向に延在するベース部材の前端側に取り付けられ、前記溶接ワイヤ支持部は、前記ベース部材の後端に取り付けられていると共に、前記溶接トーチ移動機構の移動部材に連結されていること特徴とする請求項3に記載の溶接装置。
【請求項5】
前記挿入部に設けられ、前記溶接トーチによって溶接される周囲の温度を計測する温度計測手段と、
前記挿入部に設けられ、前記温度計測手段によって計測される付近を撮像する温度計測部撮像手段と、
挿入部に設けられ、前記温度計測部撮像手段を冷却する温度監視部冷却手段と、
を備え、前記温度計測手段、前記温度計測部撮像手段および前記温度監視部冷却手段が、前記溶接トーチ移動機構によって前記溶接トーチと共に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の溶接装置。
【請求項6】
前記挿入部に設けられ、前記溶接トーチの先端部の付近を撮像する溶接部撮像手段と、
前記挿入部に設けられ、前記溶接トーチの先端部の付近を照らす照明手段と、
前記挿入部に設けられ、前記溶接部撮像手段および前記照明手段を冷却する撮像冷却手段と、
を備え、前記溶接部撮像手段、前記照明手段および前記撮像冷却手段が、前記溶接トーチ移動機構によって前記溶接トーチと共に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の溶接装置。
【請求項7】
前記支持ロッドに設けられており、前記挿入部側を撮像する挿入部撮像手段を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の溶接装置。
【請求項8】
前記溶接ワイヤ供給機構は、前記溶接ワイヤが巻かれるワイヤリールと、前記ワイヤリールから前記溶接ワイヤを送り出すワイヤ送出部と、前記ワイヤリールにおいて前記溶接ワイヤを巻き取る方向への回転を付勢するワイヤリール巻取手段と、を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−103243(P2013−103243A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247882(P2011−247882)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】