説明

がんを処置し、診断し、そして検出するためのFXYD5調節剤

本発明は、特にがんを処置する方法、がんを処置するための組成物、そしてがんを診断および/または検出するための方法および組成物に関する。特に本発明は、FXYD5過剰発現に関連したがんを処置し、診断し、そして検出するための組成物および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は一般に、腫瘍学の分野に関する。より具体的には、本発明は、がんを処置する方法、がんを処置するための組成物、そしてがんを診断および/または検出するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
がんは、米国で死亡原因の第2位である。「がん」は多様なタイプのがん、すなわち乳がん、前立腺がん、肺がん、結腸がん、膵臓がん等を記述するために使用されるが、それぞれのがんのタイプは表現型レベルと遺伝子レベルのいずれにおいても異なる。変異のために1個以上の遺伝子の発現が制御不能となったときがんの特徴である無制御増殖が生じ、細胞増殖は最早制御することができない。
【0003】
がん転移は、細胞間接着を制御する分子の発現の変化を必要とする。カドヘリンは細胞間接着を仲介する膜貫通糖タンパク質であり、その脱制御が転移に関連している。例えば、上皮細胞の主たる接着細胞であるE−カドヘリンの発現の減少は、侵襲性表現型への細胞遷移に関連している(Perl et al. (1998) Nature 392, 190 - 193)。E−カドヘリンの活性の発現を制御する分子もがん転移に関与している。これらの分子の例には、E−カドヘリンを細胞骨格に結合させるカテニン、およびE−カドヘリン発現の転写リプレッサー、例えばSnailおよびSip−1が含まれる(Batlle et al., (2000) Nat. Cell. Biol. 2, 84-89; Comijn et al., (2001) 7. 1267- 1278)。
【0004】
Dysadherinとも知られるFXYDドメイン含有イオン輸送レギュレーター5(FXYD5)は、E−カドヘリン発現を制御することが提案されている(Ino et al., (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99(1), 365-370)。FXYD5は保存的35アミノ酸コア配列を有するスモールタイプI膜タンパク質群に属す。FXYDタンパク質群は胎児発生の初期に発現され、通常、液体および溶質の輸送に関与する組織(例えば腎臓、結腸、乳房/乳腺、膵臓、前立腺、肝臓、肺および胎盤)ならびに電気的に興奮し得る組織(例えば神経系、筋肉)に関連する。FXYDタンパク質群は、イオン輸送の制御に関与すると考えられている。多様なFXYDタンパク質がNa,K ATPアーゼと相互作用し、ポンプ活性を調節することが示されている。他のFXYDタンパク質群と比較して、FXYD5は長い細胞外ドメインと、短い細胞内ドメインを有する。
【0005】
しかし今日まで、がんにおけるFXYD5の役割は、十分に明らかにされていなかった。FXYD5を調節する組成物および方法を同定することが必要とされている。本発明は、これらおよび他の重要な必要に関する。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
ある局面において、本発明は、FXYD5調節剤と1種以上の薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。ある態様において、FXYD5調節剤は単離二本鎖RNA(dsRNA)である。ある態様において、FXYD5調節剤は配列番号:1に記載の配列、または配列番号:1と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一の配列の少なくとも10連続ヌクレオチドを含む単離オリゴヌクレオチドである。ある態様において、FXYD5調節剤はFXYD5の細胞外ドメインのエピトープと結合する抗体である。ある態様において、FXYD5調節剤はdsRNA、siRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0007】
ある局面において、本発明は、それを必要とする患者におけるがんまたはがんの症状を処置する方法であって、該患者に治療上有効量のFXYD5調節剤(例えばFXYD5阻害剤)を投与することを含む方法を提供する。
【0008】
ある局面において、本発明は、患者におけるFXYD5関連生物学的活性を調節する方法であって、該患者にFXYD5関連生物学的活性の調節に有効量のFXYD5調節剤を投与することを含む方法を提供する。
【0009】
ある局面において、本発明は、FXYD5治療に受容性の患者を同定する方法であって、患者サンプルのFXYD5差次的発現の有無を検出し、患者がFXYD5治療の候補であるとき、該患者に治療上有効量のFXYD5調節剤を投与し、そして患者がFXYD5治療の候補ではないとき、該患者に常套のがん治療剤を投与することを含む方法を提供する。
【0010】
ある局面において、本発明は、FXYD5を発現しているがん細胞の増殖を阻害する方法であって、該細胞と、細胞増殖の阻害に有効量のFXYD5調節剤を接触させることを含む方法を提供する。
【0011】
ある局面において、本発明は、FXYD5を発現している細胞集団のがん細胞表現型を阻害する方法であって、該細胞集団にがん細胞表現型の阻害に有効量のFXYD5調節剤(例えばFXYD5阻害剤)を投与することを含む方法を提供する。
【0012】
ある局面において、本発明は、サンプルにおけるFXYD5を発現している1個以上のがん細胞を検出する方法であって、イメージング剤と結合したFXYD5調節剤を含む組成物と該サンプルとを接触させて、サンプル中のイメージング剤の局在を検出することを含む方法を提供する。
【0013】
ある局面において、本発明は、少なくとも一方の細胞がFXYD5を発現している2個以上の細胞の相互作用を上昇させる方法であって、該細胞を含むサンプルに、有効量のFXYD5調節剤を投与することを含む方法を提供する。多様な態様において、FXYD5調節剤は、細胞−間細胞相互作用を直接または間接的に調節することによって2個以上の細胞の相互作用を上昇させるFXYD5アンタゴニストである。細胞間(例えば新生物細胞と他の体細胞間の)相互作用を上昇させることによって、該調節剤は新生物細胞の転移性向を低下させることができる。
【0014】
ある局面において、本発明は、CHO細胞または骨髄腫細胞において抗FXYD5抗体を発現させる方法を提供する。ある態様において、抗FXYD5抗体は1種以上のFXYD5関連生物学的活性を阻害する。ある態様において、該方法は、CHO細胞または骨髄腫細胞において抗FXYD5抗体をコードする核酸を発現させることを含む。
【0015】
ある局面において、本発明は、がんの阻害剤を同定する方法であって、FXYD5を発現している細胞と候補化合物およびFXYD5リガンドを接触させて、FXYD5関連活性が阻害されるかを測定することを含む方法を提供する。ある態様において、FXYD5関連活性の阻害ががんの阻害剤の指標である。
【0016】
ある局面において、本発明は、がんの阻害剤を同定する方法であって、FXYD5を発現している細胞と候補化合物およびFXYD5リガンドを接触させて、FXYD5の下流マーカーが阻害されるかを測定することを含む方法を提供する。ある態様において、下流マーカーの阻害ががんの阻害剤の指標である。
【0017】
ある局面において、本発明は、患者のFXYD5調節剤受容性を測定する方法であって、該患者のがんサンプルにおけるFXYD5の差次的発現のエビデンスを検出することを含む方法を提供する。ある態様において、FXYD5の差次的発現のエビデンスが患者のFXYD5調節剤受容性の指標である。
【0018】
ある局面において、本発明は、FXYD5タンパク質を含むサンプルからFXYD5タンパク質を精製する方法であって、固体支持体と結合したFXYD5抗体を含むアフィニティーマトリックスを得て、前記サンプルと該マトリックスを接触させてアフィニティーマトリックス−FXYD5タンパク質複合体を形成させ;残留サンプルからアフィニティーマトリックス−FXYD5タンパク質複合体を分離し;アフィニティーマトリックスからFXYD5タンパク質を遊離させることを含む方法を提供する。
【0019】
ある局面において、本発明は、FXYD5を発現している1個以上の細胞に細胞傷害剤または診断剤を送達する方法であって、FXYD5抗体またはそのフラグメントと複合化した細胞傷害剤または診断剤を得て、該抗体−薬剤複合体またはフラグメント−薬剤複合体に前記細胞を曝露することを含む方法を提供する。
【0020】
ある局面において、本発明は、がん患者の予後を測定する方法であって、患者サンプル中の細胞の細胞膜に結合したFXYD5の有無を検出することを含む方法を提供する。ある態様において、患者サンプル中の細胞の細胞膜に結合したFXYD5の非存在が、患者の良好な予後の指標である。
【0021】
本発明のこれらおよび他の局面は、下記本発明の詳細な説明において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、Affymetrix Gene Chip(登録商標)によって得た結腸がん、乳がんおよび前立腺がん組織、ならびに対応する正常結腸、乳房および前立腺組織のFXYD5遺伝子発現データを示す。
【図2】図2は、正常ヒト組織におけるFXYD5遺伝子発現データを示す。
【図3】図3は、正常ヒト組織におけるFXYD5遺伝子発現データを示す。
【図4】図4は、がん様組織および正常組織におけるFXYD5 mRNA発現のオリゴヌクレオチドアレイ分析を示す。
【図5】図5は、正常ヒト組織におけるFXYD5遺伝子発現のRT−PCR分析を示す。
【図6】図6は、細胞系におけるFXYD5遺伝子発現のRT−PCR分析を示す。
【図7】図7は、正常組織および結腸がんにおけるFXYD5遺伝子発現のRT−PCR分析を示す。
【図8】図8は、正常組織、乳がんおよび結腸がんにおけるFXYD5遺伝子発現のRT−PCR分析を示す。
【図9】図9は、転移性結腸がんにおけるFXYD5群の遺伝子発現を示す。
【図10】図10は、がん細胞系におけるFXYD5の細胞表面発現のFACS分析を示す。
【図11】図11は、HT29細胞の足場非依存性増殖に対するFXYD5アンチセンスオリゴヌクレオチドの効果の分析を示す。
【図12】図12は、HT29細胞の足場非依存性増殖に対するFXYD5アンチセンスオリゴヌクレオチドの効果の分析を示す。
【図13】図13は、PC3細胞の足場非依存性増殖に対するFXYD5 siRNAの効果の分析を示す。
【図14】図14は、PC3細胞の足場非依存性増殖に対するFXYD5アンチセンスRNAの効果の分析を示す。
【図15】図15は、HCT116細胞におけるFXYD5 siRNAの細胞傷害性分析を示す。
【図16】図16は、MRC9細胞におけるFXYD5 siRNAの細胞傷害性分析を示す。
【図17】図17は、LnCap細胞におけるFXYD5 siRNAと化学療法剤の組合せの細胞傷害性分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
本発明は、がんの処置、診断およびイメージング、特にFXYD5関連がんの処置、診断およびイメージングのための方法および組成物を提供する。
【0024】
本発明者らは特に、結腸がん、乳がん、前立腺がんおよび卵巣がんを含む多様ながんにおいてFXYD5が過剰発現しており、正常組織において発現が制限されていることを見出した。驚くべきことに、FXYD5の阻害は、がん細胞の細胞傷害を誘導するが、FXYD5を発現する正常細胞では細胞傷害を誘導しない。FXYD5の阻害はまた、がん細胞の足場非依存性増殖能も阻害する。さらにまたある態様において、本発明者らは、FXYD5の阻害とがんの化学療法処置の組合せが、細胞に対する相加的細胞傷害効果を発揮することを見出した。本発明のこれらおよび他の局面が本明細書において提供される。
【0025】
定義
本明細書において多様な定義が使用される。多くの用語は当業者に理解されるとおりの意味を有する。次または本明細書のいずこかに具体的に定義されている用語は、全体として本明細書の文脈において与えられる意味を有し、そして典型的には当業者によって理解されるとおりの意味を有する。
【0026】
本発明の実施には、特に定めのない限り、技術常識に含まれる化学、生化学、分子生物学、免疫学および薬学の定法を用いる。かかる技術は文献に十分に説明されている。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990); Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan, eds., Academic Press, Inc.); and Handbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds., 1986, Blackwell Scientific Publications); および Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989)を参照されたい。
【0027】
本明細書において使用するとき、単数表現“a”、“an”および“the”は、文脈が明確に異なることを示していない限り、複数表現を含む。従って、例えば“an antibody”という表現は、2個以上のかかる抗体の混合物を含む。
【0028】
本明細書において使用するとき、用語「約」は、記載の数値の+/−10%の範囲、または数値の+/−5%の範囲を意味する。
【0029】
本明細書において使用するとき、用語「FXYD5」は、FXYDドメイン含有イオン輸送レギュレーター5およびDysadherinとしても知られているタンパク質、ならびに該タンパク質をコードする核酸を意味する(例えば、GenBank(登録商標) Ref. No. NM_014164.4、GI No. 47778936、およびGenBank(登録商標)Ref. No. NM_144779.1、GI No. 47778937、ヌクレオチド配列; GenBank(登録商標)Ref. No. NP_054883.3, GI No. 21618361、アミノ酸配列参照)。例示的FXYD5配列は、配列番号:1および9(ヌクレオチド配列)ならびに配列番号:2(アミノ酸配列)を含む。配列番号:1のヌクレオチド87−623に対応するFXYD5のコード配列の例は、配列番号:8として記載している。配列番号:2のアミノ酸1−145に対応するFXYD5細胞外ドメインアミノ酸配列の例は、配列番号:10として記載している。配列番号:2のアミノ酸1−21に対応するFXYD5シグナルペプチド配列の例は、配列番号:11として記載している。
【0030】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、相互交換可能に使用し、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を意味する。これはコードおよび非コードアミノ酸、化学的または生化学的に修飾または誘導化したアミノ酸、ならびに修飾ペプチド主鎖を有するポリペプチドを含んでいてよい。該用語は、異種アミノ酸配列との融合タンパク質、N−末端メチオニン残基を有するかまたは有さない異種および同種リーダー配列との融合体を含むがこれらに限定されない融合タンパク質;免疫標識化タンパク質等を含む。
【0031】
用語「個体」、「対象」、「宿主」および「患者」は相互交換可能に使用し、診断、処置または治療が望まれる何れかの対象、特にヒトを意味する。他の対象は、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ等を含んでいてもよい。ある態様において、対象はヒトである。
【0032】
本明細書において使用するとき、「がん」は、原発性または転移性がんを意味する。用語「がん細胞」は、形質転換している細胞を意味する。この細胞は、がんを有する患者から単離することができ、あるいはインビトロでがん様になるように形質転換された細胞であってもよい。がん細胞は何れかの組織または細胞培養系を含む広範なタイプのサンプルに由来し得る。ある態様において、がん細胞は過形成細胞、腫瘍細胞または新生物である。ある態様において、がん細胞は、乳がん、皮膚がん、食道がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮がん、子宮頸がん、肺がん、膀胱がん、卵巣がん、多発性骨髄腫および黒色腫から単離する。ある態様において、がん細胞は一般に入手可能な確立された細胞系から入手する。ある態様において、がん細胞は既に存在する患者サンプルから、またはがん細胞を含むライブラリーから単離する。ある態様において、がん細胞は、単離し、次いで別の宿主に移植、例えば異種移植する。ある態様においてがん細胞は、SCIDマウスモデルに移植して使用する。ある態様において、がんは結腸がんである。ある態様において、がんは乳がんである。ある態様において、がんは卵巣がんまたは前立腺がんである。
【0033】
本明細書において使用するとき、用語「形質転換」は、子孫に安定的に遺伝する細胞の特徴における何らかの変化を意味する。ある態様において、「形質転換」は正常な細胞のがん様細胞、例えば腫瘍を引き起こし得るものへの変化を意味する。ある態様において、形質転換細胞は不死化されている。形質転換は広範な要因、例えば受容体リン酸化の非存在下での受容体の過剰発現、ウイルス感染、発がん遺伝子および/または腫瘍抑制遺伝子の変異、および/または細胞の増殖および/または不死化特性を変化させる何れかの他の技術によって引き起こされ得る。
【0034】
「がん様表現型」は、一般に、がん様細胞の特徴である多様な生物学的現象の何れかを意味し、かかる現象はがんのタイプによって変化し得る。がん様表現型は、一般に、例えば細胞成長または増殖(例えば無制御成長または増殖)、細胞サイクルの制御、細胞移動性、細胞間相互作用または転移等における異常によって同定される。
【0035】
本明細書において使用するとき、用語「転移」は、がんの起源から、例えば原発性腫瘍から離れた場所に拡がったがんを意味する。転移部位は、骨、リンパ節、肺、肝臓および脳を含むが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書において使用するとき、用語「血管形成」は、患者の血管の発達を意味する。
【0037】
本明細書において使用するとき、用語「臨床的エンドポイント」は、がんの指標である測定可能なイベントを意味する。臨床的エンドポイントは、最初の転移の時間、続く転移の時間、転移サイズおよび/または数、腫瘍の位置、腫瘍の侵襲性、生活の質、疼痛等を含むが、これらに限定されない。当業者は臨床的エンドポイントを決定し、測定する能力を有すると考えられる。臨床的エンドポイントを測定する方法は当業者に既知である。
【0038】
本明細書において使用するとき、用語「サンプル」は、患者由来の生物学的物質を意味する。本発明によってアッセイされるサンプルは、何れかの具体的なタイプに限定されない。サンプルは、非限定的な例として、1個の細胞、複数の細胞、組織、腫瘍、生物学的液体、生物学的分子または上記の何れかの上清または抽出物を含む。例には、生検のために単離した組織、切除術によって採取した組織、血液、尿、リンパ組織、リンパ液、脳脊髄液、粘膜および糞便サンプルが含まれる。使用するサンプルは、アッセイ形式、検出方法およびアッセイする腫瘍、組織、細胞または抽出物の性質によって変化する。サンプルの調製方法は当該技術分野において周知であり、使用する方法に適合するサンプルを得るために容易に適合させることができる。
【0039】
本明細書において使用するとき、用語「生物学的分子」は、ポリペプチド、核酸および糖を含むが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書において使用するとき、用語「調節」は、細胞内、外または表面上に存在する遺伝子、タンパク質または何れかの分子の性質または量の変化を意味する。変化は、分子の発現またはレベルの上昇または低下であり得る。用語「調節」はまた、細胞増殖、増殖、接着、細胞生存、アポトーシス、細胞内シグナル伝達、細胞から細胞へのシグナル伝達等を含むがこれらに限定されない生物学的機能/活性の性質または量の変化を含む。
【0041】
本明細書において使用するとき、用語「調節剤」は、がんに関連した1種以上の生理学的または生化学的イベントを調節する組成物を意味する。ある態様において、調節剤は、がんに関連した1種以上の生物学的活性を阻害する。ある態様において、調節剤は低分子、抗体、模倣物、デコイまたはオリゴヌクレオチドである。ある態様において、調節剤は、リガンド結合を阻止するか、またはリガンド結合部位と競合することによって作用する。ある態様において、調節剤はリガンド結合とは独立して作用する。ある態様において、調節剤はリガンド結合部位と競合しない。ある態様において、調節剤はがんに関与する遺伝子産物の発現を阻止する。ある態様において、調節剤はがんに関与する2種以上の生物分子の物理的相互作用を阻止する。ある態様において、本発明の調節剤は、がん細胞成長、腫瘍形成、がん細胞増殖、がん細胞生存、がん細胞転移、細胞移動、血管形成、FXYD5シグナル伝達、細胞間接着のFXYD5介在性阻害、細胞間相互作用、FXYD5介在性細胞−細胞膜間相互作用、FXYD5介在性細胞−細胞外マトリックス間相互作用、インテグリン介在性活性、FXYD5表面発現、FXYD5介在性細胞−細胞外マトリックス分解から選択される、1種以上のFXYD5生物学的活性を阻害する。ある態様において、FXYD5調節剤はFXYD5発現を阻害する。
【0042】
「遺伝子産物」は、遺伝子によって発現されるかまたは作製されるバイオポリマー生成物である。遺伝子産物は例えば、非スプライシングRNA、mRNA、スプライシング変異mRNA、ポリペプチド、翻訳後修飾されたポリペプチド、スプライシング変異ポリペプチド等であってよい。また、RNA遺伝子産物をテンプレートとして用いて製造するバイオポリマー生成物(すなわちRNAのcDNA)も、この用語に含まれる。遺伝子産物は酵素、組換え、化学によって、または遺伝子が起源とする細胞内で製造することができる。ある態様において、遺伝子産物がタンパク質性であるとき、これは生物学的活性を示す。ある態様において、遺伝子産物が核酸であるとき、これは生物学的活性を示すタンパク質性遺伝子産物に翻訳することができる。
【0043】
「FXYD5活性の調節」は、本明細書において使用するとき、薬剤とFXYD5ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの相互作用、FXYD5転写および/または翻訳の阻害(例えば、FXYD5遺伝子またはFXYD5転写産物と相互作用するアンチセンスRNAまたはsiRNAによる、FXYD5発現を促進する転写因子の調節による)等の結果であり得るFXYD5活性の上昇または低下を意味する。例えば、生物学的活性の調節は、生物学的活性の上昇または生物学的活性の低下を意味する。FXYD5活性の低下をもたらすFXYD5活性の調節は、本発明において特に興味深い。特に、細胞接着のFXYD5介在性阻害を測定することによって、FXYD5活性は評価することができる。FXYD5活性はまた、FXYD5ポリペプチドレベルを評価するNa,K−ATPアーゼ活性をアッセイすること、またはFXYD5転写レベルを評価することを含むがこれらに限定されない手段によって評価してもよい。FXYD5活性の比較はまた、FXYD5下流マーカーのレベルの測定、FXYD5シグナル伝達阻害の測定、FXYD5介在性がん細胞アポトーシスの活性化の測定、がん細胞増殖阻害の測定および腫瘍形成阻害の測定によって実施してもよい。
【0044】
本明細書において使用するとき、用語「阻害」は、活性または量の減少、低下、不活性化または下方制御を意味する。例えば、本発明の文脈において、FXYD5調節剤は、がん細胞成長、腫瘍形成、がん細胞増殖、がん細胞生存、がん細胞転移、細胞移動、血管形成、FXYD5シグナル伝達、細胞間接着のFXYD5介在性阻害、細胞間相互作用、FXYD5介在性細胞−細胞膜間相互作用、FXYD5介在性細胞−細胞外マトリックス間相互作用、インテグリン介在性活性、カドヘリン介在性活性、FXYD5表面発現およびFXYD5発現の1種以上を阻害し得る。阻害は対照と比較して、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%であり得る。
【0045】
本明細書において使用するとき、用語「がん細胞における差次的発現」および「がん細胞において差次的に発現しているポリヌクレオチド」は、本明細書において、相互交換可能に使用され、がん様細胞において、がん様でない同じ細胞型の細胞と比較したとき差次的に発現されている、例えばmRNAが少なくとも約25%、少なくとも約50%〜約75%、少なくとも約90%、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約50倍以上のレベル差(例えばより高いまたは低い)を示す遺伝子を意味するか、またはそれに対応するポリヌクレオチドを意味する。例えばインサイチュハイブリダイゼーションまたは組織の細胞型をある程度区別することができる別のアッセイ法を用いるとき、該比較は組織中で実施することができる。さらに、あるいは上記とは別に、その組織源から取り出した細胞間で、または一方の細胞をインサイチュで、そして第2の細胞をその組織源から取り出して比較を実施することもできる。ある態様において、FXYD5は、正常細胞と比較してがん細胞で上方制御されている。
【0046】
FXYD5関連がんは、少なくとも1つのがんの症状が寛解、終了、遅延または予防されたとき、「阻害」されている。本明細書において使用するとき、FXYD5関連がんは、がんの再発または転移が減少、鈍化、遅延または予防されたとき、「阻害」されている。
【0047】
本明細書において使用するとき、用語「細胞接着のFXYD5介在性阻害の調節」は、少なくとも一方の細胞がFXYD5を差次的に発現している細胞間接着の、FXYD5阻害剤の存在下での調節(例えば増加)を意味する。この文脈において、細胞接着のFXYD5介在性阻害はFXYD5阻害剤によって、FXYD5阻害剤の非存在下での細胞接着のFXYD5介在性阻害と比較して少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、100%まで減少し得る。細胞接着の比較は、例えば目的の細胞を標識し、それを基質と接着している未標識細胞群とインキュベートし、洗浄して非接着群から接着物を分離して、実施することができる。この方法では、細胞接着は、基質に保持された標識の量を測定して、測定することができる。アッセイ系の例は、カルセインAM、CFMDA(5−クロロメチルフルオレセインジアセテート)、5(6)−CFDA−SE[5−(および−6)−カルボキシフルオレセインジアセテート、スクシンイミジルエステル]のような蛍光プローブで標識して、蛍光プレートリーダーまたはフローサイトメトリーで蛍光を測定することを含むが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書において使用するとき、用語「増殖を阻害」は、FXYD5介在性増殖の低下または阻止を意味し、当業者に既知の広範な方法で測定することができる。細胞増殖アッセイは、MTTアッセイ(例えば、Vybrant(登録商標)MTT細胞増殖アッセイキット(Invitrogen));BrdU取り込みアッセイ(例えば、Absolute-S SBIPアッセイ(Invitrogen));細胞内ATPレベル測定(該アッセイの商品版には、ATPLite(商標)-M、1,000アッセイキット(PerkinElmer)およびATP細胞生存アッセイキット(Bio Vision)を含む);DiOc18アッセイ、膜透過性染色(Invitrogen);グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性アッセイ(例えば、Vibrant細胞傷害アッセイ(Invitrogen))、細胞LDH活性測定、ならびにH−チミジン取り込みおよびCell Titer Glo アッセイ(Promega)を含むがこれらに限定されない。
【0049】
本明細書において使用するとき、用語「血管形成を阻害」は、FXYD5介在性血管形成の減少または阻止を意味する。血管形成は、当業者に既知の広範な方法で検出することができ、例えばSCIDマウス、ヌードマウスまたはC57BLマウスにおける、細胞増殖アッセイ、細胞移動アッセイ、細胞分化アッセイ、臓器培養(エクスビボ)アッセイ、ニワトリ絨毛尿膜(CAM)アッセイ、角膜血管形成アッセイ、Matrigelプラグアッセイおよび腫瘍体積アッセイを含むがこれらに限定されない。
【0050】
細胞移動アッセイは、ブラインドウェル走化性チャンバー、例えば修飾BoydenチャンバーおよびPhagokineticトラックアッセイを含むが、これらに限定されない。細胞分化アッセイは、コラーゲン、フィブリン塊またはMatrigelにおける管形成、次いで電子顕微鏡観察を含むが、これらに限定されない。臓器培養(エクスビボ)アッセイは、ラット大動脈輪アッセイおよびニワトリ大動脈弓アッセイを含むが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書において使用するとき、用語「細胞サイクル進行を阻害」は、細胞分裂の遅延または停止を意味する。細胞サイクル進行は、ブロモデオキシウリジン(BRDU)取り込みによってアッセイすることができる。かかるアッセイは、新たに合成されるDNAへのBRDUの取り込みによるDNA合成を実施している細胞群を同定する。新たに合成されたDNAは、抗BRDU抗体を用いて(Hoshino et al., 1986, int. J. Cancer 38, 369, Campana et al., 1988, J Immunol Meth 107, 79)、または他の手段によって検出することができる。細胞増殖はまた、ヒストンH3のリン酸化によって有糸分列を実施している細胞群を同定するリン−ヒストンH3染色によってアッセイしてもよい。セリン10でのヒストンH3のリン酸化は、ヒストンH3のセリン10残基のリン酸化形態に特異的な抗体を用いて検出する(Chadlee, D. N. 1995, J. Biol. Chem. 270: 20098-105)。細胞増殖はまた、[H]−チミジン取り込みを用いて試験してもよい(Chen, J., 1996, Oncogene 13:1395-403; Jeoung, J., 1995, J. Biol. Chem. 270:18367-73)。このアッセイは、DNA合成S期の定量的特徴付けが可能である。このアッセイにおいて、DNAを合成している細胞は、新たに合成したDNAに[H]−チミジンを取り込む。次いで取り込みは、シンチレーションカウンター(例えば、Beckman L S 3800 Liquid Scintillation Counter)でラジオアイソトープを計測するような標準的な技術によって測定することができる。別の増殖アッセイは、生存細胞で還元されたときに蛍光を発光して、細胞数の間接的測定が得られるAlamar Blue染色(Biosource Internationalから入手可能)を用いる(Voytik-Harbin S L et al., 1998, In Vitro Cell Dev Biol Anim 34:239-46)。さらに別の増殖アッセイであるMTSアッセイは、工業化学物質のインビトロ細胞傷害評価を利用しており、可溶性テトラゾリウム塩、MTSを用いる。MTSアッセイは商業的に入手可能であり、Promega CellTiter 96(登録商標) AQueous 非放射活性細胞増殖アッセイ(Cat.# G5421)を含む。細胞増殖はまた、軟寒天でのコロニー形成によってアッセイしてもよい(Sambrook et al., Molecular Cloning, Cold Spring Harbor (1989))。細胞増殖はまた、代謝的に活性な細胞の指標としてATPレベルを測定してアッセイしてもよい。かかるアッセイは商業的に入手可能であり、Cell Titer-Glo(商標)(Promega)を含む。細胞サイクル増殖はまた、フローサイトメトリーでアッセイしてもよい(Gray J W et al. (1986) Int J Radiat Biol Relat Stud Phys Chem Med 49:237-55)。ヨウ化プロピジウムで細胞を染色して、細胞サイクルの段階毎に細胞の集積を測定するフローサイトメトリーで評価してもよい。
【0052】
本明細書において使用するとき、用語「がん細胞アポトーシスの増加」は、FXYD5を差次的に発現するがん細胞の、FXYD5阻害剤の存在下でのアポトーシスの増加を意味する。本明細書において、がん細胞アポトーシスは、FXYD5阻害剤の非存在下でのがん細胞アポトーシスと比較して少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、100%まで、FXYD5阻害剤によって増加し得る。がん細胞アポトーシスの比較は、例えばDNA断片化、カスパーゼ活性、ミトコンドリア膜電位の減少、活性酸素種(ROS)の生産増加、細胞内酸性化、クロマチン凝縮、細胞表面のホスファチジルセリン(PS)レベル、および細胞膜透過性の上昇を測定することによって実施することができる。
【0053】
DNA断片化は、例えばTUNELアッセイ(末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼdUTPニック末端標識化)によって測定することができる。該アッセイの製品版は、例えばAPO-BrdU(商標)TUNELアッセイキット(Invitrogen)、APO-DIRECT(商標)キット(BD Biosciences Pharmingen)およびApoAlert(商標)DNA断片化アッセイキット(Clontech、Takara Bio Company)として広範に入手可能である。
【0054】
カスパーゼ活性は、特定のカスパーゼに特異的な蛍光基質、発色基質および発光基質によってモニターすることができる。少なくともカスパーゼ1、2、3、6、7、8および9について、市販のアッセイキットが入手可能である(例えば、Invitrogen、Chemicon、CalBiochem、BioSouroe International、Biovision参照)。
【0055】
ミトコンドリア膜電位の減少は、健常な活性ミトコンドリアにおいて差次的に蓄積する蛍光色素によって測定することができる。1つの非限定的な例は、InvitrogenのMitoTracker Redシステムである。
【0056】
活性酸素種(ROS)の生産は、例えばH2DCFDA(Invitrogen)を含む蛍光色素によって測定することができる。
【0057】
細胞内酸性化は、蛍光色素または発色色素によって測定することができる。
【0058】
クロマチン凝縮は、例えばHoechst 33342を含む蛍光色素によって測定することができる。
【0059】
ホスファチジルセリン(PS)レベルは、細胞表面で測定することができる。例えば、アネキシンVはPSに高い親和性を有する。標識化アネキシンVと細胞の結合をモニターするために、多様な商業的に入手可能なアッセイが好適である。
【0060】
細胞膜透過性は、アポトーシス細胞には侵入するが、壊死細胞には侵入し得ない蛍光色素、YO-PRO-1(Invitrogen)のような染色剤を用いて測定することができる。
【0061】
本明細書において使用するとき、用語「がん細胞の成長を阻害」は、FXYD5阻害剤の存在下で、FXYD5を差次的に発現するがん細胞の成長の阻害または阻止を意味する。この文脈において、がん細胞成長は、FXYD5阻害剤の非存在下でのがん細胞成長と比較して、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、100%までFXYD5阻害剤によって低下させることができる。がん細胞成長の比較は、例えばMTTアッセイ(例えば、Vybrant(登録商標)MTT細胞増殖アッセイキット(Invitrogen));BrdU取り込み(例えば、Absolute-S SBIPアッセイ(Invitrogen))、細胞内ATPレベル測定(例えば、ATPLite(商標)-M、1,000アッセイキット(PerkinElmer)またはATP細胞生存アッセイキット(Bio Vision)を用いる)、DiOc18アッセイ、膜透過性染色 (Invitrogen)、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性アッセイ(例えば、Vibrant細胞傷害アッセイ(Invitrogen))または細胞LDH活性測定を用いて実施することができる。
【0062】
本明細書において使用するとき、用語「腫瘍形成を阻害」は、FXYD5を差次的に発現する細胞を含む腫瘍の形成の、FXYD5阻害剤の存在下での阻害または阻止を意味する。この文脈において、腫瘍形成は、FXYD5阻害剤の非存在下での腫瘍形成と比較して、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、100%まで、FXYD5阻害剤によって低下させることができる。腫瘍形成の比較は、例えば細胞利用アッセイ(例えば、軟寒天中でのコロニー形成);典型的には目的細胞を動物に注射することによる腫瘍形成インビボモデル(例えば、無胸腺マウスまたはラット、放射線照射マウスまたはラット;脳、頬袋または目のような免疫特権組織への接種;同系動物の接種)、および所定の期間後の塊サイズのモニタリングを用いて実施することができる。
【0063】
本明細書において使用するとき、用語「がん細胞生存を阻害」は、FXYD5を発現するがん細胞の生存を阻害することを意味する。ある態様において、該用語は、FXYD5を発現するがん細胞のアポトーシスをもたらすことを意味する。この文脈において、FXYD5発現がん細胞の生存は、FXYD5阻害剤の非存在下または通常細胞のがん細胞生存と比較して少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、100%まで、阻害剤によって減少させることができる。
【0064】
本明細書において使用するとき、用語「細胞間相互作用のFXYD5阻害を調節」は、FXYD5を発現する2個以上の細胞間の相互作用の増加を意味する。ある態様において、該細胞間相互作用は、細胞シグナル伝達を導く。細胞間相互作用は、例えばPKH26とPKH67(Sigma)を含む別の蛍光膜染色剤で標識化した共培養、プレ標識化細胞間での膜交換の観察を含むが、これに限定されない当業者に既知の広範な方法によって検出することができる。
【0065】
「FXYD5下流マーカー」は、本明細書において使用するとき、正常または健常組織における遺伝子または活性による発現レベルと比較して、がん組織またはがん細胞で変化した発現レベルを示す遺伝子または活性、あるいはFXYD5調節剤の存在下で変化した特性(例えば細胞接着)である。ある態様において、下流マーカーは、FXYD5が本発明のFXYD5調節剤で影響されているとき、変化した発現レベルを示す。多様な態様において、E−カドヘリン活性および/またはβ−カテニン局在がFXYD5活性の下流マーカーとして使用される。例えば、低下したE−カドヘリン活性または発現は、上昇したFXYD5発現または活性の指標であり得る。β−カテニンの上昇した核局在はまた、上昇したFXYD5発現または活性の指標であってもよい。
【0066】
本明細書において使用するとき、用語「上方制御」は、活性または量の増加、活性化または刺激を意味する。上方制御は、対照と比較して少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも400%または少なくとも500%であり得る。
【0067】
本明細書において使用するとき、用語「N末端」は、タンパク質の最初の10アミノ酸を意味する。
【0068】
本明細書において使用するとき、用語「C末端」は、タンパク質の最後の10アミノ酸を意味する。
【0069】
用語「ドメイン」は、本明細書において使用するとき、生体分子の既知または予期される機能に寄与する生体分子の構造部分を意味する。ドメインは領域またはその部分と同延であってよく、特定の領域とは異なる生体分子の一部を、該領域の全体または部分に加えて、含んでいてもよい。
【0070】
本明細書において使用するとき、用語「細胞外ドメイン」は、細胞の外側または外部に存在する分子の一部を意味する。本発明の文脈において、N末端細胞外ドメインは、最初の膜貫通ドメインの直前までの該分子のN末端に存在する細胞外ドメインを意味する。
【0071】
本明細書において使用するとき、用語「リガンド結合ドメイン」は、FXYD5の対応する天然配列の少なくとも1個の定性的結合活性を保持した受容体の何れかの部分または領域を意味する。
【0072】
用語「領域」は、生体分子の1次構造の物理的に連続した部分を意味する。タンパク質の場合、領域は該タンパク質のアミノ酸配列の連続部分によって定義される。ある態様において、「領域」は生体分子の機能に関連している。
【0073】
用語「フラグメント」は、本明細書において使用するとき、生体分子の1次構造の物理的に連続した部分を意味する。タンパク質の場合、部分は該タンパク質のアミノ酸配列の連続部分によって定義され、少なくとも3〜5アミノ酸、少なくとも8〜10アミノ酸、少なくとも11〜15アミノ酸、少なくとも17〜24アミノ酸、少なくとも25〜30アミノ酸、そして少なくとも30〜45アミノ酸を意味する。オリゴヌクレオチドの場合、部分は該オリゴヌクレオチドの核酸配列の連続部分によって定義され、少なくとも9〜15ヌクレオチド、少なくとも18〜30ヌクレオチド、少なくとも33〜45ヌクレオチド、少なくとも48〜72ヌクレオチド、少なくとも75〜90ヌクレオチド、そして少なくとも90〜130ヌクレオチドを意味する。ある態様において、生体分子の部分は生物学的活性を有する。本発明の文脈において、FXYD5ポリペプチドフラグメントは、FXYD5ポリペプチド配列全体を含まない。ある態様において、FXYD5フラグメントは天然、全長FXYD5の1個以上の活性を保持する。
【0074】
本明細書において使用するとき、用語「FXYD5関連細胞/腫瘍/サンプル」等は、非がん様および/または非転移性細胞、サンプル、腫瘍または他の病変と比較してFXYD5の差次的発現によって特徴付けられる細胞、サンプル、腫瘍または他の病変を意味する。ある態様において、FXYD5関連細胞、サンプル、腫瘍または他の病変は、非転移性細胞、サンプル、腫瘍または他の病変と比較して、上昇したFXYD5発現のエビデンスによって特徴付けられる。
【0075】
本明細書において使用するとき、用語「抗体」は、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、二重機能/二重特異性抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および標的タンパク質またはそのフラグメントに特異的な相補性決定領域(CDR)移植抗体を意味する。さらに用語「抗体」は、インビボでの治療的抗体遺伝子導入を含む。Fab、Fab’、F(ab’)2、scFvおよびFvを含む抗体フラグメントも本発明によって提供される。
【0076】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において使用するとき、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体を意味し、すなわち当該集団に含まれるそれぞれの抗体は少量存在する可能性がある天然の変異を除き同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原性部位に指向されている。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を含むポリクローナル抗体製品とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対して指向されている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体によって汚染されずに生成されるという利点を有する。修飾語「モノクローナル」は、実質的に同種集団の抗体から得られた抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の製造法を要すると解釈されてはならない。例えば、本発明に使用するモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 [1975]によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって製造されてもよく、また組換えDNA法によって製造されてもよい(例えば米国特許第4,816,567号参照)。「モノクローナル抗体」はまた、ファージ抗体ライブラリーから、例えばClackson et al.,Nature,352:624628[1991]および Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載の技術を用いて単離することができる。
【0077】
モノクローナル抗体は本明細書において特に、「キメラ抗体」を含む。これは、所望の生物学的活性を発揮する限り、軽鎖および/または重鎖の一部が特定の種に由来するかまたは特定の抗体集団または亜集団に属する抗体の対応する配列と同一または類似するが、鎖の残りの部分が別の種に由来する抗体または別の抗体集団または亜集団に属する抗体の対応する配列と同一または類似する(米国特許第4,816,567号;および Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984))。本発明のキメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば旧世界猿、類人猿等)に由来する可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む、「霊長類化」抗体を含む。
【0078】
「抗体フラグメント」は、インタクト(intact)抗体の一部、ある態様においてその抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント;二重特異性抗体;リニアー抗体(Zapata et al., Protein Eng.,8(10):1057-1062 (1995));一本鎖抗体分子;および抗体フラグメントから形成した多重特異性抗体が含まれる。
【0079】
「インタクト」抗体は、抗原結合性可変領域と、軽鎖定常領域(CL)および重鎖定常領域、CH1、CH2およびCH3を含むものである。定常ドメインは天然配列定常ドメイン(例えばヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異体であってよい。好ましくは、インタクト抗体は1種以上のエフェクター機能を有する。
【0080】
抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列変異Fc領域)に起因する生物学的活性を意味する。抗体エフェクター機能の例は、C1q結合;補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体;BCR)の下方制御を含むがこれらに限定されない。
【0081】
「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」または「ADCC」は、特定の細胞傷害細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に分泌Igが結合して、これらの細胞傷害エフェクター細胞が抗原を有する標的細胞に特異的に結合して細胞毒素で標的細胞を実質的に殺すことができるようになる、細胞傷害の形態を意味する。抗体は細胞傷害細胞を「武装させ」、そしてかかる殺傷のために必須である。ADCCを介在する1次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球はFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet、Annu. Rev. Immunol. 9:457-92 (1991)の464ページ、表3に要約されている。目的分子のADCC活性を評価するため、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されているもののようなインビトロADCCアッセイを実施してもよい。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。これとは別に、またはこれに加えて、目的分子のADCC活性をインビボで、例えばClynes et al. (USA) 95:652-656 (1998)に記載されているもののような動物モデルで評価してもよい。
【0082】
「ヒトエフェクター細胞」は、1種以上のFcRを発現し、そしてエフェクター機能を発揮する白血球である。好ましくは、該細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、かつADCCエフェクター機能を発揮する。ADCCを仲介するヒト白血球の例は、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞および好中球を含み;PBMCとNK細胞が好ましい。エフェクター細胞はその天然源、例えば血液またはPBMCから、本明細書に記載のとおりに単離することができる。
【0083】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域と結合する受容体を記述するために使用する。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体と結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体、ならびにこれらの受容体の対立遺伝子多型および別のスプライシング形態を含む。FcγRII受容体は、細胞質ドメインが第1に異なる類似アミノ酸配列を有するFcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)を含む。活性化受容体FcγRIIAは、細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)含む。阻害受容体FcγRIIBは、細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(ITIM)を含む(M. in Daron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)の概説を参照されたい)。FcRはRavetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994);および de Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330- 41 (1995)に概説されている。将来に同定されるものを含む他のFcRが、本明細書において、「FcR」に包含される。該用語はまた、母体のIgGの胎児への移動に関与する新生児受容体、FcRnも含む(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) および Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))。
【0084】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解する分子の能力を意味する。補体活性化経路は、補体系の第1成分(C1q)と、同種抗原と複合化した分子(例えば抗体)の結合によって開始する。補体活性化を評価するため、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載のとおりに実施してもよい。
【0085】
本明細書において使用するとき、用語「エピトープ」は、ポリペプチドの抗原性決定部分を意味する。ある態様において、エピトープは該エピトープに固有の空間配置に3個以上のアミノ酸を含み得る。ある態様において、エピトープは直線または立体構造エピトープである。一般に、エピトープは少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、そして少なくとも12個のアミノ酸からなり、より通常、少なくとも8〜10個のアミノ酸からなる。アミノ酸の空間配置を決定する方法は当該技術分野において既知であり、例えばX線結晶学および2次元核磁気共鳴を含む。
【0086】
用語「アンタゴニスト」は、最も広範な意味で使用され、本明細書に記載の腫瘍細胞抗原の生物学的活性を部分的または完全に阻止し、阻害し、または中和するあらゆる分子を含む。同様に、用語「アゴニスト」は、最も広範な意味で使用され、本明細書に記載の腫瘍細胞抗原の生物学的活性を模倣するあらゆる分子を含む。好適なアゴニスト分子またはアンタゴニスト分子は特に、アゴニストまたはアンタゴニスト抗体または抗体フラグメント、腫瘍細胞抗原のフラグメントまたはアミノ酸配列変異体、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子有機分子等を含む。腫瘍細胞抗原のアゴニストまたはアンタゴニストを同定する方法は、目的の抗原を発現する腫瘍細胞と候補アゴニストまたはアンタゴニスト分子を接触させて、通常は腫瘍細胞抗原に関連する、1種以上の生物学的活性の検出可能な変化を測定することからなり得る。アンタゴニストはまた、合理的設計またはファージディスプレイによって生産したペプチドであってもよい(例えば、1998年8月13日公開のWO98/35036参照)。1つの態様において、選択分子は「CDR模倣物」または抗体のCDRに基づいて設計した抗体アナログであってよい。かかるペプチドはそれ自体アゴニストであってよいが、該ペプチドは所望により、細胞傷害剤と融合させてペプチドのアンタゴニスト特性を追加または向上させてもよい。
【0087】
本明細書において使用するとき、用語「オリゴヌクレオチド」は、一連の結合したヌクレオチド残基を意味する。オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびsiRNAオリゴヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。オリゴヌクレオチドはDNA配列の一部を含み、少なくとも約10ヌクレオチド、約500ヌクレオチド以下を有する。ある態様において、オリゴヌクレオチドは、約10ヌクレオチド〜約50ヌクレオチド、約15ヌクレオチド〜約30ヌクレオチド、約20ヌクレオチド〜約25ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは化学的に合成してもよく、またプローブとして使用してもよい。ある態様において、オリゴヌクレオチドは一本鎖である。ある態様において、オリゴヌクレオチドは二本鎖の少なくとも一部を含む。ある態様において、オリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。ある態様において、オリゴヌクレオチドはRNA干渉オリゴヌクレオチド(RNAiオリゴヌクレオチド)である。
【0088】
本明細書において使用するとき、用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、FXYD5の転写または翻訳に関連するポリヌクレオチド配列(例えばFXYD5ポリヌクレオチドのプロモーター)を含む、FXYD5ポリヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有する非修飾または修飾核酸を意味し、該アンチセンスポリヌクレオチドは、FXYD5ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができる。特に興味のあるものは、インビトロまたはインビボでFXYD5ポリペプチドコードポリヌクレオチドの転写および/または翻訳を阻害することができるアンチセンスポリヌクレオチドである。
【0089】
本明細書において使用するとき、用語「siRNAオリゴヌクレオチド」、「RNAiオリゴヌクレオチド」、「低分子干渉RNA」、または「siRNA」は、相互交換可能に使用され、RNA干渉(RNAi)とも知られる転写後遺伝子サイレンシングに関与するオリゴヌクレオチドを意味する。該用語は、RNA干渉「RNAi」が可能な分子を意味する(Kreutzer et al., WO 00/44895;Zernicka-Goetz et al. WO 01/36646;Fire、WO 99/32619;Mello and Fire、WO 01/29058参照)。siRNA分子は一般にRNA分子であるが、化学的に修飾されたヌクレオチドおよび非ヌクレオチドをさらに含む。siRNA遺伝子ターゲッティング実験は、細胞への一時的siRNA移入によって実施する(リポソーム介在トランスフェクション、エレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションのような常套の方法で実施する)。siRNA分子は、通常はRNAiを開始する長い二本鎖RNA(dsRNA)のRNアーゼIIIプロセッシング生成物に類似した、特徴的な2〜3ヌクレオチド3’オーバーハング末端を有する21〜23ヌクレオチドRNAである。
【0090】
本明細書において使用するとき、用語「治療上有効量」は、治療上有効量の医薬を個体に投与したとき、該個体の1種以上の臨床的エンドポイント、がん細胞の増殖および/または生存またはがん細胞の転移の減少または逆転として観察される薬効が生じる医薬の量を意味する。治療上有効量は、典型的には、有効成分を含まない組成物を同じ状況の個体に投与したとき観察される効果と比較した効果によって決定される。ある対象についての正確な有効量は、対象のサイズ、健康、状態の性質および程度、ならびに投与に選択した治療剤または治療剤の組合せに依存する。しかし、ある状況についての有効量は、平常の実験によって決定され、臨床医の判断の範囲内である。
【0091】
本明細書において使用するとき、用語「組合せ」または「組み合わせる」は、他の治療レジメンと共に本発明のFXYD5調節剤を投与することを意味する。
【0092】
本明細書において使用するとき、用語「受容性」は、FXYD5治療が受け入れられる処置方法である患者、すなわち陽性に応答する可能性がある患者を意味する。FXYD5治療に受容性であるがん患者は、FXYD5治療に受容性でない患者と比較して、高レベルのFXYD5を発現する。FXYD5治療に良好な候補ではないがん患者は、がん細胞中またはがん細胞上においてFXYD5レベルを欠くか、またはそれが低い腫瘍サンプルを有するがん患者を含む。
【0093】
本明細書において使用するとき、用語「検出」は、活性(例えば遺伝子発現)または生体分子(例えばポリペプチド)のエビデンスを確立し、発見し、または確認することを意味する。
【0094】
「天然配列」ポリペプチドは、天然由来のポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するものである。かかる天然配列ポリペプチドは、自然界から単離することができるか、または組換えもしくは合成的手法によって作成することができる。したがって、天然配列ポリペプチドは、天然に生じるヒトポリペプチド、マウスポリペプチド、または何れか他の生物種由来のポリペプチドのアミノ酸配列を有し得る。
【0095】
用語「アミノ酸配列変異体」は、天然配列ポリペプチドとある程度異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。通常、アミノ酸配列変異体は、天然リガンドの少なくとも1個の受容体結合ドメインまたは天然受容体の少なくとも1個のリガンド結合ドメインと少なくとも約70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、および少なくとも99%相同性を有する。アミノ酸配列変異体は、天然アミノ酸配列のアミノ酸配列中のある位置に置換、欠失および/または挿入を有する。
【0096】
本明細書において使用するとき、用語「相同ヌクレオチド配列」もしくは「相同アミノ酸配列」またはそれらの変形は、ヌクレオチドレベルまたはアミノ酸レベルで、少なくとも特定のパーセンテージの相同性によって特徴付けられる配列を意味し、「配列同一性」と相互交換可能に使用される。相同ヌクレオチド配列は、タンパク質のアイソフォームをコードする配列を含む。かかるアイソフォームは、例えば別のRNAスプライシングによって、同じ生物種の異なる組織で発現し得る。あるいは、アイソフォームは別の遺伝子によってコードされていてもよい。相同ヌクレオチド配列は、哺乳類を含むがこれに限定されないヒト以外の種のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0097】
相同ヌクレオチド配列は、天然に生じる対立遺伝子変異型および本明細書に記載のヌクレオチド配列の突然変異型も含むが、これらに限定されない。相同アミノ酸配列は、保存的アミノ酸置換を含むアミノ酸配列、および該ポリペプチドが同じ結合および/または活性を有するものを含む。ある態様において、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、野生型配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有しているとき、相同である。ある態様において、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50または50−60個のヌクレオチド/アミノ酸置換、付加または欠失を有するとき、相同である。ある態様において、相同アミノ酸配列は5個以下(例えば5個またはそれ未満)、または3個以下(例えば3個またはそれ未満)の保存的アミノ酸置換を有する。相同アミノ酸配列はまた、保存的アミノ酸置換を含み、かつ該ポリペプチドが天然FXYD5と同じ結合および/または活性を有するアミノ酸配列を含む。ある態様において、FXYD5ホモログの変化した発現レベルはがんの指標である。
【0098】
相同率または同一性率は、例えばSmith and Watermanのアルゴリズム(Adv. Appl. Math., 1981, 2, 482-489)を用いるGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for UNDC, Genetics Computer Group, University Research Park, Madison WI)で、初期設定を用いて測定することができる。ある態様において、プローブと標的間の相同性は、約70%〜約80%である。ある態様において、核酸は配列番号:1またはその一部と約85%、約90%、約92%、約94%、約95%、約97%、約98%、約99%および約100%の相同性であるヌクレオチドを有する。
【0099】
相同性はまた、ポリペプチドレベルであってもよい。ある態様において、ポリペプチドは配列番号:2またはその一部と約80%、約85%、約90%、約92%、約94%、約95%、約97%、約98%、約99%および約100%相同である。
【0100】
本明細書において使用するとき、用語「プローブ」は、多様な長さの核酸配列を意味する。ある態様において、プローブは少なくとも約10ヌクレオチド、約6,000ヌクレオチド以下を含む。ある態様において、プローブは少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも50または少なくとも75連続ヌクレオチドを含む。プローブは、同一、類似または相補的核酸配列の検出に使用する。より長いプローブは、通常天然または組換え源から得られ、標的配列に高度に特異的であり、そしてオリゴマーよりもゆっくりと標的にハイブリダイズする。プローブは一本鎖または二本鎖であってよく、PCR、膜利用ハイブリダイゼーション、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)またはELISA様技術において特異性を有するように設計する。
【0101】
本明細書において使用するとき、用語「混合」は、1個以上の化合物、細胞、分子等を同じ領域で混合するプロセスを意味する。これは例えば、試験管、ペトリ皿または1個以上の化合物、細胞または分子を混合することができるあらゆる容器中で実施することができる。
【0102】
本明細書において使用するとき、用語「単離」は、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは抗体が天然に生じる環境とは別の環境に存在するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体または宿主細胞を意味する。細胞を単離する方法は当業者に周知である。単離されたポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは抗体は、一般に、実質的に精製されている。
【0103】
本明細書において使用するとき、用語「実質的に精製」は、天然環境から採取された化合物(例えばポリヌクレオチドまたはポリペプチドまたは抗体)を意味し、本来関連している他の成分を少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも90%含まない。
【0104】
本明細書において使用するとき、用語「結合」は、2個以上の生体分子または化合物間の物理的または化学的相互作用を意味する。結合は、イオン性、非イオン性、水素結合、ファンデルワールス、疎水性相互作用等を含む。結合は直接または間接であってよく、間接結合は他の生体分子または化合物を介するか、またはその影響のためである。直接結合は他の分子または化合物を介さず、またはその影響のためではなく生じる相互作用を意味するが、他の実質的な化学中間体を含まない。
【0105】
本明細書において使用するとき、用語「接触」は、ある分子を第2の分子に物理的に、直接または間接的に近づけることを意味する。該分子はバッファー、塩、溶液等の何れかの中に存在していてもよい。「接触」は、例えば核酸分子を含むビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコまたはマイクロアレイ等にポリヌクレオチドを入れることを含む。接触はまた、例えばポリペプチドを含むビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコまたはマイクロアレイ等に抗体を入れることを含む。接触は、インビボ、エクスビボまたはインビトロで実施してよい。
【0106】
本明細書において使用するとき、用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」または「ストリンジェントな条件」は、プローブ、プライマーまたはオリゴヌクレオチドが標的配列に結合するが、他の配列にはほとんど結合しない条件を意味する。ストリンジェントな条件は配列に依存し、状況が変われば異なる。より長い配列はより高温でその適切な相補鎖に特異的にハイブリダイズする。一般に、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度およびpHで、特定の配列の熱融点(Tm)よりも約5℃低く選択する。Tmは、標的配列に相補的なプローブの50%が標的配列と平衡状態でハイブリダイズする温度である(所定のイオン強度、pHおよび核酸濃度下で)。標的配列は一般に過剰に存在するため、Tmで50%のプローブが、平衡状態でその相補鎖にハイブリダイズする。典型的に、ストリンジェントな条件は、塩濃度がナトリウムイオン約1.0M未満、典型的にはナトリウムイオン(または他の塩)約0.01〜1.0M、pH7.0〜8.3であり、温度が、短いプローブ、プライマーまたはオリゴヌクレオチド(例えば10〜50オリゴヌクレオチド)について少なくとも約30℃、長いプローブ、プライマーまたはオリゴヌクレオチドについて少なくとも約60℃であるものである。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような脱安定化剤を加えて得ることもできる。
【0107】
本明細書において使用するとき、用語「緩やかなストリンジェンシー条件」は、プローブ、プライマーまたはオリゴヌクレオチドがその標的配列にハイブリダイズするが、他の配列には限られた数がハイブリダイズする条件を意味する。緩やかな条件は配列に依存し、状況が変われば異なる。緩やかな条件は当該技術分野において周知であり、特にManitatis et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory; 2nd Edition (December 1989))に記載されている。
【0108】
本明細書に記載の核酸組成物は、例えば、生物学的サンプル(例えばヒト細胞抽出物)のmRNAまたはかかるサンプルから生産されたcDNAの検出用プローブとしてのポリペプチドを作成するため、該ポリヌクレオチドのさらなるコピーを作成するため、リボザイムまたはオリゴヌクレオチド(一本鎖または二本鎖)を作成するため、そして一本鎖DNAプローブまたは三本鎖形成オリゴヌクレオチドとして使用することができる。本明細書に記載のプローブは、例えばサンプル中の本明細書に記載のポリペプチドの有無を測定するために使用することができる。該ポリペプチドは、がんに関連したポリペプチドに特異的な抗体を作成するために使用することができ、したがって該抗体は本明細書に詳細に記載されるように、診断方法、予後診断方法等に有用である。ポリペプチドはまた、本明細書により詳細に記載されるように、治療的介入のための標的として有用である。本発明の抗体はまた、例えば、インビトロおよびインビボ診断方法および治療方法の両方を含め、本発明のポリペプチドを精製し、検出し、そして標的とするために使用することができる。例えば、該抗体は、生物学的サンプル中の本発明のポリペプチドレベルを定性的および定量的に測定するためのイムノアッセイにおいて有用である。例えば、Harlow et al., Antibodies A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988)を参照されたい。これらおよび他の使用は、以下により詳細に記載されている。
【0109】
本明細書において使用するとき、用語「イメージング剤」は、本発明の抗体、低分子またはプローブに結合し、当該技術分野において既知の技術を用いて検出可能である組成物を意味する。本明細書において使用するとき、用語「遺伝子発現のエビデンス」は、遺伝子が発現していることを示す何れかの測定可能な指標を意味する。
【0110】
用語「薬学的に許容される担体」は、抗体またはポリペプチド、遺伝子および他の治療剤のような治療剤を投与するための担体を意味する。該用語は、それ自体が組成物を投与された個体に有害な抗体の生産を誘導することなく、過度の毒性なく投与することができる何れかの医薬担体を意味する。好適な担体は、大きく、ゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖、ポリ乳糖、ポリグリコール酸、ポリマー状アミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体、および不活性ウイルス粒子であり得る。かかる担体は当業者に周知である。治療用組成物の薬学的に許容される担体は、水、食塩水、グリセロールおよびエタノールのような液体を含んでいてもよい。湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化物質等の補助物質も、かかるビークルに存在していてよい。
【0111】
本発明の方法および組成物によって処置することができるがんの具体的な例は、FXYD5に関連したがんを含むが、これらに限定されない。本明細書において使用するとき、「FXYD5に関連したがん」は、非がん様細胞と比較してFXYD5を差次的に発現する細胞によって特徴付けられるがんを意味する。本発明はまた、FXYD5ががん細胞成長、腫瘍形成、がん細胞増殖、がん細胞転移、細胞移動、血管形成、FXYD5シグナル伝達、細胞間接着、細胞間相互作用、FXYD5介在性細胞−細胞膜間相互作用、FXYD5介在性細胞−細胞外マトリックス間相互作用、インテグリン介在性活性、FXYD5表面発現およびFXYD5発現に関与する何れかの腫瘍細胞型に適用することができる。ある態様において、がんは結腸がん、乳がん、皮膚がん、食道がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮がん、子宮頸がん、肺がん、膀胱がん、卵巣がん、多発性骨髄および黒色腫である。ある態様において、がんはER陽性乳がんである。ある態様において、がんはER−陰性乳がんである。ある態様において、かかるがんは、対照と比較して少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%または少なくとも約300%のFXYD5の差次的発現を示す。
【0112】
本発明は、FXYD5過剰発現に関連した疾患および障害の処置、阻害および管理、ならびにかかる疾患および障害の症状の処置、阻害および管理を提供する方法および組成物を提供する。本発明のいくつかの態様は、がん転移、がん細胞増殖、がん細胞成長およびがん細胞侵襲を含むがこれらに限定されないがんを処置し、阻害しまたは管理する方法および組成物に関する。
【0113】
本発明はさらに、本発明のFXYD5調節剤と組み合わせた他の有効成分を含む方法を提供する。ある態様において、該方法はさらに、患者に1種以上の常套のがん治療剤を投与することを含む。ある態様において、本発明の方法はさらに、患者を1種以上の化学療法、放射線療法または外科手術で処置することを含む。例えば、ある態様において、本発明は、FXYD5調節剤と組合せて、メトトレキセートおよび/またはドキソルビシンで患者を処置する。
【0114】
本発明はまた、外科手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法および生物学的治療のような現行または標準のがん処置に部分的または完全に難治性になったがんまたは他の過増殖性細胞障害または疾患の処置、阻害または管理のための方法および組成物を提供する。
【0115】
本発明はまた、本発明のFXYD5調節剤、特にFXYD5抗体を用いてがんを診断し、および/またはがんの進行を予測する診断方法および/またはイメージング方法を提供する。ある態様において、本発明は、腫瘍および/または転移をイメージングおよび局在化する方法、ならびに診断方法および予後診断方法を提供する。ある態様において、本発明は、FXYD5関連治療の妥当性を評価する方法を提供する。
【0116】
FXYD5調節剤
本発明は、特にがんの処置、診断、検出またはイメージングのためのFXYD5調節剤を提供する。FXYD5調節剤はまた、がんの処置用医薬の製造にも有用である。
【0117】
ある態様において、FXYD5調節剤はオリゴヌクレオチド、低分子、模倣物、デコイ、または抗体である。ある態様において、FXYD5調節剤は、対照と比較して少なくとも25%、50%、75%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または100%FXYD5生物学的活性を阻害する。ある態様において、FXYD5調節剤は対照と比較して少なくとも25%、50%、75%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または100%FXYD5発現を阻害する。
【0118】
抗体
ある態様において、FXYD5調節剤はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、またはFabフラグメントである。抗体は例えば酵素、ラジオアイソトープまたは蛍光色素で標識されていてもよい。ある態様において、抗体はFXYD5以外のポリペプチドに対して約1×10Ka未満の結合親和性を有する。ある態様において、FXYD5調節剤は少なくとも1×10Kaの親和性でFXYD5と結合するモノクローナル抗体である。
【0119】
本発明はまた、例えばイムノアッセイを用いた競合的結合を検出するための何れかの既知の方法によって測定したとき、抗体と本発明のエピトープの結合を競合的に阻害する抗体を提供する。ある態様において、該抗体はエピトープとの結合を少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%または少なくとも50%阻害する。
【0120】
ある態様において、抗体はヒト化抗体である。ヒト化抗体は多様な方法、例えば以下の方法によって得ることができる:(1)非ヒト相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワークおよび定常領域に移植すること(当該技術分野で「ヒト化」と呼ばれる工程)または、(2)非ヒト変異ドメイン全体を移植するが、それをヒト様表面で表面残基を置換して「覆う」(cloaking)こと(当該技術分野で「貼合せ」と呼ばれる工程)。本発明において、ヒト化抗体は「ヒト化」および「貼合せ」抗体のいずれをも含む。同様に、ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されているトランスジェニック動物、例えばマウスにヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入して製造することができる。チャレンジによって、ヒト抗体製造が観察され、これは遺伝子配置、集合および抗体レパートリーを含むあらゆる点でヒトに見られるものと極めて類似している。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号および次の科学文献:Marks et al., Bio/Technology 10, 779-783 (1992);Lonberg et al., Nature 368 856-859 (1994);Morrison, Nature 368, 812-13 (1994);Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996);Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995);Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci, U.S.A., 81:6851-6855 (1984);Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65-92 (1988);Verhoeyer et al., Science 239:1534-1536 (1988);Padlan, Molec. Immun. 28:489-498 (1991);Padlan, Molec. Immunol. 31(3):169-217 (1994);およびKettleborough, CA. et al., Protein Eng. 4(7):773-83 (1991)に記載されている(各々参照により本明細書に引用する)。
【0121】
本発明の抗体は、多様なメカニズムで機能し得る。ある態様において、抗体は、抗体標的細胞に対する溶解攻撃である抗体依存性細胞傷害(ADCC)を惹起する。ある態様において、抗体は例えば、抗原結合、アポトーシス誘導、および補体依存性細胞傷害(CDC)を含む複数の治療機能を有する。
【0122】
ある態様において、本発明の抗体は、本発明のポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用し得る。例えばある態様において、本発明は、FXYD5とリガンド間の相互作用を部分的または完全に阻止する抗体を提供する。ある態様において、本発明の抗体は、本明細書に記載のエピトープまたはその一部と結合する。ある態様において、抗体の非存在下での活性と比較して少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%または少なくとも50%リガンド活性または受容体活性を調節する抗体を提供する。
【0123】
ある態様において、FXYD5抗体は次の活性の1種以上を仲介する:E−カドヘリン発現または活性の上方制御、Na/ATPアーゼ活性の調節、がん細胞成長の阻害、腫瘍形成の阻害、がん細胞生存の阻害、がん細胞増殖の阻害、がん細胞転移の阻害、細胞移動の阻害、FXYD5介在性シグナル伝達の阻害、細胞間接着の増加、アクチンの調節、FXYD5リガンドと結合するFXYD5の阻害、血管形成の阻害、細胞外マトリックスとの細胞相互作用の阻害、およびがん細胞アポトーシスの上方制御。
【0124】
ある態様において、本発明は、中和抗体を提供する。ある態様において、中和抗体は、受容体アンタゴニストとして作用し、すなわちリガンド介在性受容体活性化の生物学的活性の全てまたはサブセットを阻害する。ある態様において、該抗体は、本明細書に記載の本発明のペプチドの特定の生物学的活性を含む、生物学的活性のアゴニスト、アンタゴニストまたは逆アゴニストとして特定され得る。
【0125】
本発明の抗体は、単独で、または化学療法剤のような他の組成物との組合せで使用することができる。抗体はさらに、異種ポリペプチドとNまたはC末端で組換え的に融合しているか、またはポリペプチドまたは他の組成物と化学的に複合化(共有コンジュゲートおよび非共有コンジュゲートを含む)されていてもよい。例えば、本発明の抗体は、検出アッセイにおいて標識として有用な分子、および異種ポリペプチド、薬剤、放射性核種または毒物のようなエフェクター分子と組換え的に融合または複合化していてよい。例えば、PCT公報WO 92/08495、WO 91/14438、WO 89/12624、米国特許第5,314,995号、および EP 396,387を参照されたい。
【0126】
キメラ抗体およびヒト化抗体に加えて、完全ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウス(例えば、米国特許第6,075,181号、第6,091,001号および第6,114,598号参照、全て参照により本明細書に引用する)またはヒト免疫グロブリン遺伝子のファージディスプレイライブラリー(例えば、McCafferty et al., Nature, 348 552-554 (1990)、 Clackson et al., Nature, 352 624-628 (1991)および Marks et al., J. Mol. Biol., 222 581-597 (1991) 参照)に由来し得る。ある態様において、抗体はscFv−ファージディスプレイライブラリーによって作成および同定することができる。抗体ファージディスプレイ技術は、商業的起源、例えばXoma(Berkeley、CA)から入手することができる。
【0127】
モノクローナル抗体は、Kohler et al (1975) Nature 256 495-496の方法またはその変法を用いて作成することができる。典型的には、抗原を含む溶液でマウスを免疫化する。免疫化は、食塩水、好ましくはアジュバント、例えばフロイント完全アジュバント中に抗原含有溶液を混合または乳化し、該混合物またはエマルジョンを非経腸的に注射して実施することができる。当該技術分野において既知の何れかの免疫化方法を用いて、本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。動物を免疫化した後、脾臓(および所望により多様な大きさのリンパ節)を採取して、1種類の細胞に単離する。目的の抗原でコーティングしたプレートまたはウェルに細胞懸濁液を適用して脾臓細胞をスクリーニングしてもよい。抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB細胞はプレートと結合し、濯ぎ流されない。得られたB細胞または全単離脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを形成し、選択培地で培養する。得られた細胞を連続希釈または限定希釈によって播種し、目的の抗原と特異的に結合する(そして無関係の抗原には結合しない)抗体の生産についてアッセイする。選択したモノクローナル抗体(mAb)を分泌するハイブリドーマは、次いでインビトロ(例えば、組織培養ボトルまたは中空糸反応器)またはインビボ(マウスの腹水として)で培養する。
【0128】
発現のためのハイブリドーマの使用とは別の方法として、抗体は、米国特許第5,545,403号、第5,545,405号および第5,998,144号(各々参照により本明細書に引用する)に記載のように、CHOまたは骨髄腫細胞系のような細胞系で作製することができる。簡潔には、軽鎖と重鎖を発現することができるベクターをそれぞれ細胞系にトランスフェクトする。別のベクター上の2種のタンパク質をトランスフェクトすると、キメラ抗体が作成され得る。Immunol. 147 8, Banchereau et al. (1991) Clin. Immunol. Spectrum 3:8、およびBanchereau et al. (1991) Science 251: 70(これらは全て、参照により本明細書に引用する)。
【0129】
ヒト抗体はまた、当該技術分野において既知の技術、例えばファージディスプレイライブラリー[Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991), Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]を用いて作成してもよい。ヒトモノクローナル抗体の製造には、Cole et al.およびBoerner et al.の技術も利用可能である[Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985) および Boerner et al., J. Immunol., 147(1):86 95 (1991)]。ヒト化抗体は、例えば(1)非ヒト相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワークおよび定常領域に移植すること(当該技術分野で「ヒト化」と呼ばれる工程)または、(2)非ヒト変異ドメイン全体を移植するが、それをヒト様表面で表面残基を置換して「覆う」(cloaking)こと(当該技術分野で「貼合せ」と呼ばれる工程)を含む多様な方法で得てもよい。本発明において、ヒト化抗体は「ヒト化」および「貼合せ」抗体のいずれをも含む。同様に、ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されているトランスジェニック動物、例えばマウスにヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入して製造することができる。チャレンジによって、ヒト抗体製造が観察され、これは遺伝子配置、集合および抗体レパートリーを含むあらゆる点でヒトに見られるものと極めて類似している。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号および次の科学文献:Marks et al., Bio/Technology 10, 779-783 (1992);Lonberg et al., Nature 368 856-859 (1994);Morrison, Nature 368, 812-13 (1994);Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996);Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995);Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci, U.S.A., 81:6851-6855 (1984);Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65-92 (1988);Verhoeyer et al., Science 239:1534-1536 (1988);Padlan, Molec. Immun. 28:489-498 (1991);Padlan, Molec. Immunol. 31(3):169-217 (1994);およびKettleborough, CA. et al., Protein Eng. 4(7):773-83 (1991)に記載されている(各々参照により本明細書に引用する)。完全ヒト化抗体は、Morphosys (Martinsried/Planegg, Germany)のような商品を用いたスクリーニングアッセイにおいて同定することができる。
【0130】
用語「相補性決定領域」は、天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性および特異性を共に定義するアミノ酸配列を意味する。例えばChothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987); Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services NIH Publication No. 91-3242 (1991)参照。用語「定常領域」は、エフェクター機能を与える抗体分子の部分を意味する。本発明において、マウス定常領域はヒト定常領域によって置換される。対象ヒト化抗体の定常領域はヒト免疫グロブリン由来である。重鎖定常領域は5つのアイソタイプ:アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマまたはミューから選択され得る。抗体をヒト化する一つの方法は、非ヒト重鎖および軽鎖配列をヒト重鎖および軽鎖配列と整列させ、選択し、そしてかかるアラインメント、ヒト化配列のコンホメーションを予測する分子モデリングおよび親抗体のコンホメーションとの比較に基づき、非ヒトフレームワークをヒトフレームワークで置換することを含む。このプロセスの後、ヒト化配列モデルの予測コンホメーションが親非ヒト抗体の非ヒトCDRのコンホメーションとほぼ近似するまで、CDRの構造を障害するCDR領域の残基の復帰変異を反復する。かかるヒト化抗体はさらに誘導化して、例えばAshwell受容体による取り込みおよびクリアランスを促進することができる。例えば米国特許第5,530,101号および第5,585,089号(参照により本明細書に引用する)参照。
【0131】
ヒト化抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作するトランスジェニック動物を用いて製造することができる。例えば、WO 98/24893はヒトIg遺伝子座を有するトランスジェニック動物であって、内因性重鎖および軽鎖遺伝子座の不活性化のために機能的内因性免疫グロブリンを生産しない動物を開示している。WO 91/10741はまた、免疫原に対する免疫応答を付加することができるトランスジェニック非霊長類哺乳類宿主であって、抗体が霊長類定常領域および/または可変領域を有しており、そして内因性免疫グロブリンコード化遺伝子座が置換または不活性化されている宿主を開示している。WO 96/30498は、哺乳類における免疫グロブリン遺伝子座を修飾するための、例えば定常または可変領域の全てまたは一部を置換して修飾抗体分子を形成するためのCre/Loxシステムの使用を開示している。WO 94/02602は、不活性化された内因性Ig遺伝子座および機能的ヒトIg遺伝子座を有する非ヒト哺乳類宿主を開示している。米国特許第5,939,598号は、マウスが内因性重鎖を欠いており、1個以上の異種定常領域を含む異種免疫グロブリン遺伝子座を発現するトランスジェニックマウスを製造する方法を開示している。本発明の抗体はまた、米国特許第5,766,886号に記載されているようなヒト化操作技術を用いて作成してもよい(参照により本明細書に引用する)。
【0132】
上記トランスジェニック動物を用いて、免疫応答を作成して抗原分子を選択することができ、そして抗体産生細胞を動物から除去してヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを製造するために使用することができる。免疫化プロトコル、アジュバント等は当業者に既知であり、例えばWO 96/33735に記載のトランスジェニックマウスの免疫化に用いる。モノクローナル抗体は対応するタンパク質の生物学的活性を阻害または中和する能力について試験することができる。
【0133】
本発明の抗体は、Fang et al. (2005), Nat. Biotechnol. 23, 584-590に記載のように、インビボ治療抗体遺伝子トランスファーによって対象に投与することができる。例えば組換えベクターを作成して、MAb重鎖と軽鎖コーディング配列間に位置するポリペプチドの酵素非依存性共翻訳的自己切断を仲介するペプチドからなる、多シストロン発現カセットを送達することができる。発現は化学量論量の両方のMAb鎖を与える。酵素非依存性共翻訳的自己切断を仲介するペプチドの好ましい例は、口蹄疫由来2Aペプチドである。
【0134】
全長抗体の所望の親和性を保持している限り、抗体のフラグメントは、本発明の方法での使用に好適である。したがって、抗FXYD5抗体のフラグメントは、FXYD5との結合能を保持している。かかるフラグメントは、対応する全長抗FXYD5抗体と類似の特性によって特徴付けられ、すなわち該フラグメントはヒト細胞表面で発現するヒトFXYD5抗原と特異的に結合する。
【0135】
ある態様において、本抗体はFXYD5の細胞外ドメインの1個以上のエピトープと結合する。ある態様において、本抗体は、FXYD5関連生物学的活性の1種以上を調節する。ある態様において、本抗体はがん細胞成長、腫瘍形成およびがん細胞増殖の1種以上を阻害する。
【0136】
ある態様において、本抗体はFXYD5の細胞外ドメインの1個以上のエピトープと結合するモノクローナル抗体である。
【0137】
本発明の好適な抗体は、直線エピトープまたは立体配置エピトープ、またはそれらの組合せを認識し得る。
【0138】
本発明の抗体が結合し得る他の潜在的エピトープを予測する方法は、当該技術分野において周知であり、Kyte-Doolittle 分析(Kyte, J. and Dolittle, R.F., J. Mol. Biol. (1982) 157:105-132)、Hopp and Woods分析 (Hopp, T.P. and Woods, K.R., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1981) 78:3824-3828; Hopp, T.J. and Woods, K.R., Mol. Immunol. (1983) 20-483-489; Hopp, T.J., J. Immunol. Methods (1986) 88:1-18.)、Jameson-Wolf 分析 (Jameson, B.A. and Wolf, H., Comput. Appl. Biosci. (1988) 4:181-186.)、およびEmini 分析(Emini, E.A., Schlief, W.A., Colonno, RJ. and Wimmer, E., Virology (1985) 140:13-20)を含むが、これらに限定されない。
【0139】
ある態様において、潜在的エピトープは理論上の細胞ドメインによって同定する。TMpred (K. Hofinann & W. Stoffel (1993) TMbase - A database of membrane spanning proteins segments Biol. Chem. Hoppe- Seyler 374, 166参照) またはTMHMM (A. Krogh, B. Larsson, G. von Heijne, and E. L. L. Sonnhammer. Predicting transmembrane protein topology with a hidden Markov model- Application to complete genomes. Journal of Molecular Biology, 305(3):567-580, January 2001)のような分析アルゴリズムを用いて、かかる予測を実施してもよい。SignalP 3.0 (Bednsten et al., (2004) J. Mol. Biol. 2004 Jul 16;340(4):783-95)のような他のアルゴリズムを用いて、シグナルペプチドの存在を予測し、該ペプチドが全長タンパク質のどこから切断されるかを予測することができる。細胞の外側に存在するタンパク質の部分は、抗体相互作用の標的として使用してもよい。
【0140】
1)抗体が結合活性の閾値レベルを示し、そして/または2)抗体が既知の関連ポリペプチド分子と顕著に交叉反応しないとき、該抗体は「特異的に結合する」と定義される。抗体の結合親和性は当業者によって、例えばScatchard分析(Scatchard, Ann. NY Acad. Sci. 51: 660-672, 1949)によって容易に測定することができる。ある態様において本発明の抗体は、標的がん関連ポリペプチドの標的エピトープまたは模倣デコイと少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、100倍、10倍、10倍、10倍、10倍またはそれ以上結合する。
【0141】
ある態様において、本抗体は、10−4M以下、10−7M以下、10−9M以下の高い親和性、またはサブナノモルの親和性(0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1nMまたはそれ未満)で結合する。ある態様において、FXYD5に対する本抗体の結合親和性は、少なくとも1×10Kaである。ある態様において、FXYD5に対する本抗体の結合親和性は、少なくとも1×10Ka、少なくとも1×10Ka、少なくとも2×10Ka、少なくとも1×10Kaまたはそれ以上である。本発明の抗体はまた、本発明のポリペプチドに対する結合親和性の点で記載または特定してもよい。ある態様において、結合親和性は、5×10−2M、10−2M、5×10−3M、10−3M、5×10−4M、10−4M、5×10−5M、10−5M、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M、10−15M未満、またはそれ未満のKdを有するものを含む。
【0142】
ある態様において、本発明の抗体は、例えば標準的なウェスタンブロット分析(Ausubel et al.)を用いてFXYD5ポリペプチドと結合するが、既知の関連ポリペプチド(例えば他のFXYD群ポリペプチド)と結合しないとき、既知の関連ポリペプチド分子と結合しない。
【0143】
ある態様において、本発明の抗体は、FXYD5のオルソログ、ホモログ、パラログまたは変異体、またはその組合せおよび下位組合せと結合する。ある態様において、本発明の抗体は、FXYD5のオルソログ、ホモログ、パラログまたは変異体、またはその組合せおよび下位組合せと結合しない。
【0144】
ある態様において、抗体は既知の関連ポリペプチドに対してスクリーニングして、FXYD5ポリペプチドと特異的に結合する抗体群を単離してもよい。例えば、ヒトFXYD5ポリペプチドに特異的な抗体は、適切なバッファー条件下で不溶性マトリックスと接着するFXYDタンパク質(FXYD5を除く)を含むカラムを流れる。かかるスクリーニングによって、密接に関連したポリペプチドと非交叉反応性のポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を単離することができる(Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane (eds.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988; Current Protocols in Immunology, Cooligan et al. (eds.), National Institutes of Health, John Wiley and Sons, Inc., 1995)。特異的抗体のスクリーニングおよび単離は、当該技術分野において周知である(Fundamental Immunology, Paul (eds.), Raven Press, 1993; Getzoff et al., Adv. in Immunol. 43: 1-98, 1988; Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Goding, J. W. (eds.), Academic Press Ltd., 1996; Benjamin et al., Ann. Rev. Immunol. 2: 67-101, 1984参照)。かかるアッセイの代表例は、同時免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、放射性免疫沈降法、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ドットブロットまたはウェスタンブロットアッセイ、阻害または競合アッセイおよびサンドイッチアッセイを含む。
【0145】
ある態様において、本発明の抗体は、Thr19−Ala33(配列番号:3)、Leu54−Asp82(配列番号:4)、Pro89−Ala97(配列番号:5)、Pro100−Lys125(配列番号:6)、Ser127−Phe135(配列番号:7)から選択されるFXYD5のエピトープと特異的に結合しない。ある態様において、本抗体は、Shimamura et al., J. Clin. Oncol., 21:659, 2003に記載のmAbs NCC−3G10またはNCC−M53によって結合するエピトープ以外のFXYD5のエピトープと結合する。
【0146】
本発明はまた、標的タンパク質に特異的なSMIPまたは結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である抗体を提供する。これらの構築物は、抗体エフェクター機能を実施するために必要な免疫グロブリンドメインと融合した抗原結合ドメインを含む一本鎖ポリペプチドを含む。例えば、WO03/041600、米国特許公報20030133939および米国特許公報20030118592参照。
【0147】
ある態様において、本発明の抗体は中和抗体である。ある態様において、抗体はターゲッティング抗体である。ある態様において、抗体は標的との結合によって内部化された(internalized)抗体である。ある態様において、抗体は標的との結合によって内部化されず、表面に残る。
【0148】
本発明の抗体は、問題の腫瘍細胞抗原との結合によって速やかに内部化する能力について、または結合後細胞表面に残る能力についてスクリーニングしてもよい。ある態様において、例えばあるタイプの免疫複合体の構成において、毒性部分の放出に内部化が必要であるとき、抗体の内部化能力が望まれ得る。あるいは、抗体がADCCまたはCDCを促進するために使用されるとき、細胞表面に残ることがより望まれ得る。スクリーニング方法は、これらのタイプの行動を分類するために使用することができる。例えば、腫瘍細胞抗原を有する細胞は、濃度約1μg/mLのヒトIgG1(対照抗体)または本発明の抗体の1種と、氷上(内部化を阻止するために0.1%ナトリウムアジドと共に)または37℃(ナトリウムアジドの非存在下)で3時間、該細胞をインキュベートしたとき、使用することができる。該細胞を次いで、冷染色バッファー(PBS+1%BSA+0.1%ナトリウムアジド)で洗浄し、ヤギ抗ヒトIgG−FITCで30分間、氷上で染色する。幾何平均蛍光強度(MFI)をFACS Caliburで記録する。氷上、ナトリウムアジドの存在下で本発明の抗体とインキュベートした細胞と、ナトリウムアジドの非存在下、37℃でインキュベートした細胞間でMFIに差が見られないとき、該抗体は内部化されずに、細胞表面に結合したままであるものであると推測される。しかし、37℃、ナトリウムアジドの非存在下で細胞をインキュベートしたとき、表面の染色され得る抗体の減少が観察されるならば、該抗体は内部化し得るものと推測される。
【0149】
抗体複合体
ある態様において、本発明の抗体は複合化することができる。ある態様において、複合化抗体はがん治療、がんの診断またはがん様細胞のイメージングに有用である。
【0150】
診断適用のために、本抗体は典型的に、検出可能なもので標識化する。多様な標識が利用可能であり、一般に次のカテゴリーに分類することができる:
(a) 次に記載のもののような放射性核種。抗体は例えば、Current Protocols in Immunology, Volumes 1 and 2、Coligen et al., Ed. Wiley-Interscience, New York, N. Y., Pubs. (1991)に記載の技術を用いてラジオアイソトープで標識することができる。例えば放射活性はシンチレーションカウンティングを用いて測定することができる。
(b) 希土類キレート(ユーロピウムキレート)または蛍光色素およびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリンおよびTexas Redのような蛍光標識を用いることができる。蛍光ラベルは、例えば上記Current Protocols in Immunologyに記載の技術を用いて抗体と複合化することができる。蛍光は蛍光光度計を用いて定量することができる。
(c) 多様な酵素−基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号はこれらのいくつかの概説を提供する。酵素は一般に、多様な技術を用いて測定可能な発色基質の化学的変化を触媒する。例えば、酵素は基質の色の変化を触媒することがあり、これは分光光度計で測定することができる。あるいは、酵素は基質の蛍光または化学発光を変化させることもある。蛍光の変化を定量するための技術は上記している。化学発光基質は化学反応によって電気的に励起し、測定可能な(例えば化学発光計を用いて)光を放出するか、または蛍光アクセプターにエネルギーを供与する。酵素標識の例は、ルシフェラーゼ(例えばホタルルシフェラーゼまたは細菌ルシフェラーゼ; 米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸エステルデヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えばホースラディッシュ ペルオキシダーゼ(HRPO)、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソザイム、サッカライドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、ヘテロ環オキシダーゼ(例えばウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼ等を含む。酵素と抗体を複合化する技術は、O’Sullivan et al., Methods for the Preparation of Enzyme- Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay、Methods in Enzym. (ed J. Langone & H. Van Vunakis), Academic press, New York, 73:147-166 (1981)に記載されている。
【0151】
抗体はまた、インビボ診断アッセイのために使用してもよい。ある態様において、免疫シンチグラフィーを用いて腫瘍が局在化され得るように、抗体は放射性核種で標識されている。便宜のために、本発明の抗体は、キット、すなわち所定量の薬剤と診断アッセイを実施するための指示書の同梱組合せ物で提供してもよい。抗体が酵素で標識されているとき、該キットは酵素が必要とする基質および補因子(例えば、検出可能な蛍光または発色を提供する基質前駆体)を含んでいてもよい。さらに、他の添加剤、例えば安定化剤、バッファー(例えばブロックバッファーまたは溶解バッファー)等を含んでいてもよい。多様な薬剤の相対量は、アッセイの感度を実質的に最適化する薬剤溶液の濃度を得るため、広範に変化してよい。特に、薬剤は、溶解したときに最適な濃度を有する薬剤溶液が得られる賦形剤を含む、乾燥粉末、通常凍結乾燥粉末として提供してもよい。
【0152】
ある態様において、抗体は1個以上のマイタンシン分子(例えば約1〜約10個/抗体分子のマイタンシン分子)と複合化している。マイタンシンは例えば、May−SH3に還元され、修飾抗体と反応して(Chan et al., Cancer Research 52: 127-131 (1992))マイタンシノイド抗体免疫複合体を生じ得るMay−SS−Meに変換してもよい。ある態様において、複合体は、約10〜11MのIC50を有する(Payne (2003) Cancer Cell 3:207- 212参照)極めて強力なマイタンシン誘導体DM1(N2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−l−オキソプロピル)−マイタンシン)(例えば2002年12月12日公開、WO02/098883参照)、またはDM4(N2’−デアセチル−N2’(4−メチル−4−メルカプト−l−オキソペンチル)−マイタンシン)(例えば2004年12月2日公開、WO2004/103272参照)であってよい。
【0153】
ある態様において、抗体複合体は、1個以上のカリケアマイシン分子と複合化した抗腫瘍細胞抗原抗体を含む。カリケアマイシン群の抗生物質は、サブピコモル濃度で二本鎖DNA破壊を生じることができる。使用することができるカリケアマイシンの構造アナログは、ガンマ1I、アルファ2I、アルファ3I、N−アセチルガンマ1I、PSAGおよびシータI1を含むが、これらに限定されない(Hinman et al., Cancer Research 53: 3336-3342 (1993)および Lode et al., Cancer Research 58: 2925-2928 (1998))。また、米国特許第5,714,586号;第5,712,374号;第5,264,586号;および第5,773,001号も参照されたい(各々参照により本明細書に明示的に引用する)。
【0154】
ある態様において、本抗体は、多くのがんで過剰生産される酵素によって活性形態で放出され得るプロドラッグと複合化している。例えば、抗体複合体は、活性成分がプラスミンによって複合体から放出される、ドキソルビシンのプロドラッグ形態と製造することができる。プラスミンは多くのがん様組織で過剰生産されることが知られている(Decy et al., (2004) FASEB Journal 18(3):565-567参照)。
【0155】
ある態様において、本抗体は酵素的に活性な毒素またはそのフラグメントと複合化する。ある態様において、毒素は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(緑膿菌由来)、シュードモナス属内毒素、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、リボヌクレアーゼ(RNase)、デオキシリボヌクレアーゼ(Dnase)、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリス阻害剤、ゲロニン、マイトジェリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、ネオマイシンおよびトリコテセンを含むが、これらに限定されない。例えば、1993年10月28日公開、WO 93/21232を参照されたい。ある態様において、毒素は低い内因性免疫原性を有し、がん様細胞が該毒素に抵抗性となる機会を減少させる作用メカニズム(例えば細胞傷害メカニズム対細胞増殖抑制メカニズム)を有する。
【0156】
ある態様において、複合体は本発明の抗体と免疫調節剤間で製造する。例えば、ある態様において、免疫賦活オリゴヌクレオチドを使用してもよい。これらの分子は抗原特異的抗体応答を導き得る強力な免疫原である(Datta et al., (2003) Ann. N.Y. Acad. Sci 1002: 105-111)。さらなる免疫調節化合物は、幹細胞増殖因子、例えば「S1因子」、リンホトキシン、例えば腫瘍壊死因子(TNF)、造血因子、例えばインターロイキン、コロニー刺激因子(CSF)、例えば顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージ刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン(IFN)、例えばインターフェロンアルファ、ベータまたはガンマ、エリスロポエチンおよびトロンボポエチンを含み得る。
【0157】
ある態様において、放射性核種複合抗体が提供される。ある態様において、かかる抗体は、32P、33P、47Sc、59Fe、64Cu、67Cu、75Se、77As、89Sr、90Y、99Mo、105Rh、109Pd、125I、131I、142Pr、143Pr、149Pm、153Sm、161Th、166Ho、169Er、177Lu、186Re、188Re、189Re、194Ir、198Au、199Au、211Pb、212Pb、213Bi、58Co、67Ga、80mBr、99mTc、103mRh、109Pt、161Ho、189mOs、192Ir、152Dy、211At、212Bi、223Ra、219Rn、215Po、211Bi、225Ac、221Fr、217At、213Bi、255Fmおよびそれらの組合せおよび下位組合せを用いて製造することができる。ある態様において、ホウ素、ガドリニウムまたはウラン原子が該抗体と複合化する。ある態様において、ホウ素原子が10Bであり、ガドリニウム原子が157Gdであり、ウラン原子が235Uである。
【0158】
ある態様において、放射性核種複合体は、20〜10,000keVのエネルギーを有する放射性核種を有する。放射性核種は、1000keV未満のエネルギーを有するオージェ放射体であるか、20〜5000keVのエネルギーを有するP放射体であるか、または2000〜10,000keVのエネルギーを有するアルファまたは“α”放射体であり得る。
【0159】
ある態様において、ガンマ、ベータまたはポジトロン放出アイソトープである放射性核種を含む診断用放射性核種複合体が提供される。ある態様において、該放射性核種は、20〜10,000keVのエネルギーを有する。ある態様において、該放射性核種は、18F、51Mn、52mMn、52Fe、55Co、62Cu、64Cu、68Ga、72As、75Br、76Br、82mRb、83Sr、89Zr、94mTc、51Cr、57Co、58Co、59Fe、67Ga、75Se、97Ru、99mTc、114mIn、123I、125I、13Liおよび197Hgから選択される。
【0160】
ある態様において、本発明の抗体は、光活性剤または造影剤である診断剤と複合化している。光活性化合物は、クロマジェン(chromagen)または染色剤のような化合物を含んでいてもよい。造影剤は、例えば常磁性イオンであってよく、ここで該イオンは、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)およびエルビウム(III)から選択される金属を含む。造影剤は、X線技術またはコンピュータ断層撮影法に使用される放射線を通さない化合物、例えばヨウ素、イリジウム、バリウム、ガリウムおよびタリウム化合物であってもよい。放射線を通さない化合物は、バリウム、ジアトリゾ酸、ヨード化ケシ油エチルエステル、クエン酸ガリウム、イオカルミン酸、イオセタミン酸、ヨーダミド、ヨージパミド、ヨードキサム酸、イオグラミド(iogulamide)、イオヘキソール、イオパミドール、イオパノ酸、イオプロセム酸(ioprocemic acid)、イオセファム酸(iosefamic acid)、イオセル酸(ioseric acid)、イオスラミドメグルミン、イオセメチン酸(iosemetic acid)、イオタスル、ヨーテトル酸、イオタラム酸、イオトロクス酸、イオキサグル酸、イオキソトリゾ酸、イポダート、メグルミン、メトリザミド、メトリゾエート、プロピリオドン、および塩化タリウムから選択されてもよい。ある態様において、診断用免疫複合体は、本発明の抗体と複合化したガス充填リポソームのような超音波増強剤を含んでいてもよい。診断用免疫複合体は、手術中、内視鏡的または血管内の腫瘍またはがん診断および検出方法を含むが、これらに限定されない多様な方法のために使用することができる。
【0161】
ある態様において抗体複合体は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、イミノチオラン(IT)のような多様な二官能タンパク質カップリング剤、イミドエステルの二官能誘導体(例えばアジプイミド酸ジメチルHCL)、活性エステル(例えばスベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えばビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン(tolyene)2,6−ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて製造する。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al., Science 238 1098 (1987)の記載に準じて製造することができる。炭素−14標識された1−イソチオシアネートベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、抗体との放射性ヌクレオチドの複合化のための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞への細胞傷害剤の放出を促進する「切断」リンカーであってよい。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chan et al. Cancer Research 52: 127-131 (1992))を使用することができる。薬剤はさらに、糖基を介して本発明の抗体と結合していてもよい。
【0162】
ある態様において、本発明の抗体と細胞傷害剤を含む融合タンパク質は、例えば組換え技術またはペプチド合成によって製造することができる。ある態様において、細胞傷害剤と複合化した抗腫瘍抗原抗体を含むかかる免疫複合体は、患者に投与される。ある態様において、それが結合する免疫複合体および/または腫瘍細胞抗原タンパク質は細胞によって内部化されて、それが結合するがん細胞の殺傷における免疫複合体の治療効果の増進をもたらす。ある態様において、細胞傷害剤は、がん細胞の核酸を標的とし、またはそれに干渉する。かかる細胞傷害剤の例は、マイタンシノイド、カリケアマイシン、リボヌクレアーゼおよびDNAエンドヌクレアーゼを含む。
【0163】
ある態様において、本抗体は腫瘍プレターゲティングに利用するための「受容体」(例えばストレプトアビジン)と複合化する。該抗体−受容体複合体は患者に投与され、次いで除去剤(clearing agent)を用いて非結合複合体を循環系から除去し、次いで細胞傷害剤(例えば放射性ヌクレオチド)に結合する「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0164】
ある態様において、本抗体は標的細胞ライソゾーム内に放出される細胞傷害分子と複合化する。例えば、タンパク質分解ライソゾーム酵素であるカテプシンBによって切断され、次いで抗体複合体が内部化し得るバリン−シトルリン結合を介して、薬剤モノメチルアウリスタチンE(MMAE)が結合する(例えば、2003年4月3日公開、WO03/026577参照)。ある態様において、MMAEは、切断部分としてヒドラゾン官能基を含む酸に不安定なリンカーを用いて抗体と結合し得る(例えば、2002年11月11日公開、WO02/088172参照)。
【0165】
抗体依存性酵素介在プロドラッグ治療(ADEPT)
ある態様において、本発明の抗体は、プロドラッグを活性な抗がん剤に変換するプロドラッグ活性化酵素(例えば、ペプチジル化学療法剤、WO81/01145参照)と複合化することによって、ADEPTに使用することができる。例えば、WO 88/07378および米国特許第4,975,278号を参照されたい。
【0166】
ある態様において、ADEPTに有用な免疫複合体の酵素成分は、より活性な、細胞傷害形態に変換するような方法でプロドラッグに対して作用し得る何れかの酵素を含む。
【0167】
ADEPTに有用な酵素は、リン酸エステル含有プロドラッグを遊離薬剤に変換するのに有用なアルカリホスファターゼ;硫酸エステル含有プロドラッグを遊離薬剤に変換するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性の5−フルオロシトシンを抗がん剤である5−フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬剤に変換するのに有用なプロテアーゼ、例えばセラチアペプチダーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼおよびカテプシン(例えばカテプシンBおよびL);D−アミノ酸置換基を含むプロドラッグを変換するのに有用なD−アラニルカルボキシペプチダーゼ;糖化プロドラッグを遊離薬剤に変換するのに有用な糖切断酵素、例えばβガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼ;βラクタムで誘導化した薬剤を遊離薬剤に変換するのに有用なβラクタマーゼ;ならびにフェノキシアセチルまたはフェニルアセチル基でアミン窒素を誘導化した薬剤を遊離薬剤に変換するのに有用なペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼを含むが、これらに限定されない。ある態様において、本発明のプロドラッグを遊離活性薬剤に変換するために、「アブザイム」としても知られる酵素活性を有する抗体を使用してもよい(例えば、Massey, Nature 328: 457-458 (1987)参照)。抗体−アブザイム複合体は、該アブザイムを腫瘍細胞集団に送達するために本明細書に記載のとおりに製造することができる。
【0168】
ある態様において、ADEPT酵素は、上記ヘテロ2官能性架橋剤の使用のような当該技術分野において周知の技術によって、抗体と共有結合していてもよい。ある態様において、本発明の酵素の少なくとも機能的活性部位と結合した本発明の抗体の抗原結合領域を少なくとも含む融合タンパク質は、当該技術分野において周知の組換えDNA技術を用いて構成することができる(例えば、Neuberger et al., Nature, 312: 604-608 (1984)参照)。
【0169】
ある態様において、細胞傷害的方法よりも細胞増殖抑制的方法で作用する抗体の同定は、非処理対照培地と比較して、処理した標的細胞培地の生存率を測定して実施することができる。生存率は、Cell Titer-Blue(登録商標)細胞生存率アッセイまたはCell Titer- Glo(登録商標)Luminescent細胞生存率アッセイ(Promega、それぞれのカタログ番号G8080 と G5750)のような当該技術分野において周知の方法を用いて検出することができる。ある態様において、例えば上記方法によって測定したとき、細胞死の何らかのエビデンスが無く、対照と比較して、処置によって細胞数の減少が生じているとき、抗体は潜在的に細胞増殖抑制性であると考えられる。
【0170】
ある態様において、当該技術分野において既知のアッセイを用いたインビボスクリーニングアッセイを実施して、ADCCを促進する抗体を同定してもよい。例示的アッセイの1つは、インビトロADCCアッセイである。クロム51標識した標的細胞を作成するため、腫瘍細胞系を組織培養プレート中で増殖させ、滅菌PBS中10mMのEDTAを用いて採取する。採取した細胞を細胞培養培地で2回洗浄する。37℃で1時間、時折撹拌しながら、200μCiのクロム51(New England Nuclear/DuPont)で細胞(5×10個)を標識化する。標識した細胞を細胞培養培地で3回洗浄し、次いで濃度1×10細胞/mLに再懸濁する。オプソニン化せずに細胞を用いるか、またはアッセイ前に、PBMCアッセイ中100ng/mLおよび1.25ng/mL、またはNKアッセイ中20ng/mLおよび1ng/mLの試験抗体とインキュベーションしてオプソニン化する。末梢血単核細胞は、健常ドナーから血液をヘパリンに採取し、等体積のリン酸緩衝化食塩水(PBS)で希釈して調製する。次いで血液をLYMPHOCYTE SEPARATION MEDIUM(登録商標)(LSM Organon Teknika)で層状にして、製造業者の指示書に準じて遠心分離する。単核細胞はLSM−血漿界面から採取され、PBSで3回洗浄する。最終濃度1×10細胞/mLになるようにエフェクター細胞を細胞培養培地に懸濁する。LSMで精製後、NK細胞単離キットおよび磁性カラム(Miltenyi Biotech)を製造業者の指示書の通りに用いる負の選択によって、PBMCからナチュラルキラー(NK)細胞を単離する。単離NK細胞を回収し、洗浄し、細胞培養培地に再懸濁して、濃度2×10細胞/mLとする。NK細胞の同一性は、フローサイトメトリー分析によって確認する。多様なエフェクター標的比は、マイクロタイタープレートの列に沿って細胞培養培地で2倍(最終体積100μL)にエフェクター(PBMCまたはNK)細胞を連続希釈して調製する。エフェクター細胞濃度は、PBMCについて1.0×10個/mL〜2.0×10個/mL、そしてNKについて2.0×10個/mL〜3.9×10個/mLの範囲である。エフェクター細胞の滴定後、1×10個/mLのクロム51標識した細胞(オプソニン化または非オプソニン化)100μLを該プレートの各ウェルに加える。これによって、PBMCについて100:1、そしてNKについて20:1の初期エフェクター標的比となる。全てのアッセイは2連で実施し、各プレートは自発的溶解(エフェクター細胞なし)と全溶解(標的細胞と、100μLの1%ドデシル硫酸ナトリウム、1Nの水酸化ナトリウム)の両方についての対照を含む。該プレートを37℃で18時間インキュベートし、その後、上清回収システム(Skatron Instrument, Inc.)を用いて細胞培養上清を回収し、Minaxi auto-gamma 5000 シリーズガンマカウンター(Packard)で1分間測定する。次の式:細胞傷害率=(サンプルcpm−自発的溶解)/(全溶解−自発的溶解)×100を用いて、細胞傷害のパーセントして結果を表す。
【0171】
CDCを促進する抗体を同定するために、当業者は当該技術分野において既知のアッセイを実施してもよい。例示的アッセイの1つは、インビトロCDCアッセイである。腫瘍細胞抗原を発現する細胞とヒト(または別の起源)補体含有血清を、多様な濃度の試験抗体の存在下または非存在下でインキュベートして、インビトロでCDC活性を測定することができる。次いで、ALAMAR BLUE(登録商標)を用いて生存細胞を定量することによって、細胞傷害を測定する(Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202 163-171 (1997))。対照アッセイは抗体の非存在下、および抗体の存在下であるが熱不活性化血清を用い、および/または問題の腫瘍細胞抗原を発現しない細胞を用いて実施する。あるいは、腫瘍抗原または腫瘍抗原由来ペプチドで赤血球をコーティングすることができ、次いで赤血球溶解を観察してCDCをアッセイしてもよい(例えば、Karjalainen and Mantyjarvi, Acta Pathol Microbiol Scand. 1981 Oct; 89(5):315-9参照)。
【0172】
細胞死を誘導する抗体を選択するために、例えばヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルーまたは7−アミノアクチノマイシンD(7AAD)取り込みによって示される膜インテグリティの減少を、対照と比較して評価してもよい。例示的アッセイの1つは、腫瘍抗原発現細胞を用いたPI取り込みアッセイである。このアッセイによると、10%の熱不活性化FBS(Hyclone)と2mMのL−グルタミンを補ったダルベッコ修飾イーグル培地(D−MEM):ハムF−12(50:50)で腫瘍細胞抗原発現細胞を培養する。(従って、該アッセイは補体および免疫エフェクター細胞の非存在下で実施する)。密度3×10個/ディッシュで腫瘍細胞を100×20mmディッシュに播種し、一夜接触させる。次いで培地を除去し、新鮮な培地のみ、または適切なモノクローナル抗体を10μg/mL含む培地で置換する。該細胞を3日間インキュベートする。各処置の後、単層をPBSで洗浄し、トリプシン処理して分離させる。次いで細胞を1200rpmで5分間、4℃で遠心分離し、ペレットを3mLの氷冷Ca2+結合バッファー(10mMのヘペス、pH7.4、140mMのNaCl、2.5mMのCaCU)に再懸濁し、細胞塊を除去するために35mmのストレーナーキャップ付12×75チューブに等分する(1mL/チューブ、1群あたり3チューブ)。次いでチューブにPI(10μg/mL)を加える。FACSCAN(商標)フローサイトメーターおよびFACSCONVERT(商標)CellQuest ソフトウェア(Becton Dickinson)を用いてサンプルを分析することができる。PI取り込みによって測定したとき、統計的に有意なレベルの細胞死を誘導する抗体が、細胞死誘導抗体として選択されてもよい。
【0173】
抗体はまた、PETイメージング剤としてF−アネキシンを用いて、アポトーシス活性についてインビボでスクリーニングしてもよい。この方法では、アネキシンVを18Fで放射性標識して、研究している抗体の用量に従って試験動物に投与する。アポトーシスプロセスに生じる最も初期の事象の1つは、細胞膜の内側から、アネキシンが接触可能な細胞の外側表面へのホスファチジルセリンの移行である。次いで動物をPETイメージングに付す(Yagle et al., J Nucl Med. 2005 Apr; 46(4): 658-66参照)。動物はまた、犠牲にして、個々の臓器または腫瘍を採取し、標準的なプロトコルに準じてアポトーシスマーカーについて分析をしてもよい。
【0174】
ある態様において、がんは遺伝子発現産物の過剰発現によって特徴付けることができるが、本願はさらに、腫瘍抗原過剰発現がんであるとは考えられていないがんを処置する方法を提供する。がんにおける腫瘍抗原発現を測定するために、多様な診断/予後アッセイが利用可能である。ある態様において、遺伝子発現生成物過剰発現は、免疫組織化学的(IHC)に分析することができる。腫瘍生検のパラフィン包埋組織切片をIHCアッセイに付して、次の腫瘍抗原タンパク質染色強度基準に照らし合わせてよい:
スコア0:染色が観察されないか、腫瘍細胞の10%未満で膜染色が観察される。
スコア1+:腫瘍細胞の10%以上でわずかに/かろうじて認識可能な膜染色が検出される。細胞は膜の一部にのみ染色されている。
スコア2+:腫瘍細胞の10%以上で弱〜中度の完全な膜染色が観察される。
スコア3+:腫瘍細胞の10%以上で中〜強度の完全な膜染色が観察される。
【0175】
腫瘍抗原過剰発現評価において0または1+のスコアを有する腫瘍は、腫瘍抗原を過剰発現してないと特徴付けることができ、2+または3+のスコアを有する腫瘍は、腫瘍抗原を過剰発現していると特徴付けることができる。
【0176】
上記方法とは別に、またはそれに加えて、腫瘍における腫瘍抗原過剰発現の程度(もしあれば)を測定するために、ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織の蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイ、例えばINFORM(商標)(Ventana, Ariz.が販売)またはPATHVISION(商標)(Vysis, III)を実施してもよい。
【0177】
さらに、抗体はポリマーとの共有結合によって化学的に修飾して、例えばその循環半減期を低下させることができる。各抗体分子は1個以上(すなわち1、2、3、4、5またはそれ以上)のポリマー分子と結合していてよい。ポリマー分子は好ましくは、リンカー分子によって抗体と結合している。ポリマーは、一般に、合成または天然由来のポリマー、例えば所望により置換された直鎖または分枝鎖ポリアルケン、ポリアルケニレンまたはポリオキシアルキレンポリマー、または分枝鎖または非分枝鎖ポリサッカライド、例えばホモまたはヘテロポリサッカライドであってよい。ある態様において、ポリマーはポリオキシエチレンポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)である。PEGは室温で水溶性であり、一般式R(O−CH−CHO−R(式中、Rは水素またはアルキル基またはアルカノール基のような保護基であってよい)を有する。ある態様において、保護基は1〜8個の炭素を有する。ある態様において、保護基はメチルである。記号nは、1〜1000、または2〜500の正の整数である。ある態様において、PEGは平均分子量1000〜40,000、2000〜20,000、または3,000〜12,000を有する。ある態様において、PEGは少なくとも1個のヒドロキシ基を有する。ある態様において、ヒドロキシは末端ヒドロキシ基である。ある態様において、これは阻害剤の遊離アミノ基と反応して活性化されるヒドロキシ基である。しかし、本発明の共有結合したPEG/抗体を得るための反応基のタイプおよび量が変化し得ると理解される。好ましいポリマーおよびそれをペプチドと結合する方法は、米国特許第4,766,106号;第4,179,337号;第4,495,285号;および第4,609,546号に示されており、これらを全体について、参照により本明細書に引用する。
【0178】
安全性試験
本発明の抗体は、安全性および毒物学的特徴について研究することができる。これらのタイプの研究のガイドラインは、USDA CBER部が発行している文書“Points to Consider in the Manufacture and Testing of Monoclonal Antibody Products for Human Use”(文書番号 94D-0259、1997年2月28日)に見ることができ、これを参照により本明細書に引用する。一般に、候補抗体は、多数のヒト組織サンプルおよび/または単離ヒト細胞型を用いた前臨床試験においてスクリーニングして、非標的組織結合および交叉反応性について評価するべきである。これらのヒト組織試験の結果が満足のいくものであれば、多様な動物種に由来する組織サンプルまたは単離細胞のパネルをスクリーニングして、一般に毒物学的研究に使用するのに好適な種を同定することができる。交叉反応しない動物種が同定されると、他のタイプのモデルは適切であると見なすことができる。これらの他のモデルは、ヒト腫瘍細胞をげっ歯類宿主に移植する異種移植片モデル、または毒物学的研究で選択した動物種において対応する腫瘍細胞抗原を認識する代替モノクローナル抗体の使用のような研究を含んでいてよい。これらのタイプの代替モデルから得たデータは最初の概算であり、高等種で進めるには注意すべきであると理解されるべきである。
【0179】
候補ネイキッド抗体について、単純忍容性を探索する研究を実施してもよい。これらの研究において、候補分子の治療指標は、何れかの用量依存的薬力学的効果を観察することによって特徴付けることができる。広範な用量を用いることができる(例えば0.1mg/kg〜100mg/kg)。腫瘍細胞抗原数の差、交叉反応性動物標的についての候補抗体の親和性、そして抗体結合後の細胞応答の差は、治療指標を推測するために考慮しなければならない。候補抗体をヒトで試験するときに初期用量設定についての判断を補助するために、適切な動物モデルでの薬力学的試験および薬物動態学的試験も実施しなければならない。
【0180】
候補免疫複合体について、複合体の安定性試験をインビボで実施しなければならない。最適には、免疫複合体のそれぞれの成分についての薬力学的研究および薬物動態学的研究を実施して、候補免疫複合体から生じるあらゆる分解生成物の結果を測定するべきである。ギルド初期用量についての判断を補助するために、適切な動物モデルで上記の通り、薬力学的研究および薬物動態学的研究も実施すべきである。薬剤がネイキッド抗体による前処置と組み合わせて投与されるとき、安全性試験を設計するためにさらなる検討を行わなければならない。安全性試験はネイキッド抗体単独で実施しなければならず、試験は、免疫複合体の最大用量がこのタイプの処置レジメンにおいてより低くなる免疫複合体について考慮して設計しなければならない。
【0181】
放射性免疫複合体について、生体内分布データを測定するために動物組織分布試験を実施するべきである。さらに、合計用量の投与された放射活性物質の代謝分解の検討を、投与後初期および後の時点の両方で実施すべきである。放射性免疫複合体は、血清または血漿を用いてインビトロ安定性について試験することができ、遊離放射性核種、放射性免疫複合体および標識化非抗体化合物の割合を測定するための方法は、開発されるべきである。
【0182】
オリゴヌクレオチド
ある態様において、FXYD5調節剤はオリゴヌクレオチドである。ある態様において、FXYD5調節剤は配列番号:12〜26から選択される配列を含むオリゴヌクレオチドである。
【0183】
ある態様において、オリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAiオリゴヌクレオチドである。ある態様において、オリゴヌクレオチドはFXYD5遺伝子または遺伝子発現産物の領域、ドメイン、一部または断片と相補的である。ある態様において、オリゴヌクレオチドは約5〜約100ヌクレオチド、約10〜約50ヌクレオチド、約12〜約35ヌクレオチド、および約18〜約25ヌクレオチドを含む。ある態様において、オリゴヌクレオチドは、FXYD5遺伝子または遺伝子発現産物の領域、一部、ドメインまたは断片と少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%相同である。ある態様においてFXYD5遺伝子または遺伝子産物の少なくとも15、20、25、30、35、40、50または100連続ヌクレオチドにわたって、実質的な配列相同性が存在する。ある態様において、FXYD5遺伝子または遺伝子発現産物の全長にわたって、実質的な配列相同性が存在する。ある態様において、オリゴヌクレオチドは緩やかまたはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号:1のヌクレオチド配列を有する核酸分子と結合する。
【0184】
ある態様において、FXYD5調節剤は二本鎖RNA(dsRNA)分子であり、RNAi(RNA干渉)を介して働く。ある態様において、dsRNAの一方の鎖は、FXYD5遺伝子の領域、一部、ドメインまたは断片と少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%相同である。ある態様において、FXYD5遺伝子の少なくとも15、20、25、30、35、40、50、100、200、300、400、500または1000連続ヌクレオチドにわたって、実質的な配列相同性が存在する。ある態様において、FXYD5ヌクレオチド配列またはその相補配列の全長にわたって、実質的または完全な配列相同性が存在する。
【0185】
ある態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に使用する。この配列は、ゲノム配列またはcDNA配列に基づく(またはそれから設計した)ものであってよく、特定の細胞または組織における同一、類似または相補的DNAまたはRNAの存在を増幅、確認または検出するために使用する。
【0186】
低分子
ある態様において、FXYD5調節剤は低分子である。本明細書において使用するとき、用語「低分子」は、約10キロダルトン未満の分子量を有する有機または無機非ポリマー化合物を意味する。低分子の例は、ペプチド、オリゴヌクレオチド、有機化合物、無機化合物等を含む。ある態様において、低分子は約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、約2または約1キロダルトンの分子量を有する。
【0187】
模倣物
ある態様において、FXYD5調節剤は模倣物である。本明細書において使用するとき、用語「模倣物」は、あるペプチドの活性を模倣する化合物を意味するものとして使用する。模倣物は非ペプチドであるが、非ペプチド結合で結合したアミノ酸を含んでいてもよい。1997年6月10日に発行された米国特許第5,637,677号およびその親出願(これらを全て、参照により本明細書に引用する)は、模倣物の製造について詳しい説明が含まれている。簡潔には、FXYD5の3次元構造と特異的に相互作用するペプチドの3次元構造は、ペプチドではない分子によって複製される。ある態様において、FXYD5模倣物は、FXYD5の模倣物またはFXYD5のリガンドの模倣物である。
【0188】
デコイ
ある態様において、FXYD5調節剤は、FXYD5ポリペプチドの少なくとも一部を含むデコイである。ある態様において、デコイは、FXYD5リガンドとの結合について、天然FXYD5ポリペプチドと競合する。ある態様において、本デコイは定性、定量および/または可視化を容易にするために標識されている。他の態様において、本デコイはさらに、デコイまたはデコイ−リガンド複合体の単離および/または分離を容易にするための部分を含む。ある態様において、本デコイは抗体または抗体フラグメントと融合したFXYD5ポリペプチドの少なくとも一部を含む。
【0189】
がんを処置および予防する方法
本発明は、対象のがんまたはがんの症状を処置し、および/または予防する方法であって、該対象に治療上有効量の1種以上の本発明のFXYD5調節剤を投与することを含む方法を提供する。ある態様において、がんはFXYD5の過剰発現に関連したがんである。ある態様において、がんは、結腸がん、乳がん、皮膚がん、食道がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮がん、子宮頸がん、肺がん、膀胱がん、卵巣がん、多発性骨髄腫または黒色腫である。ある態様において、がんは非ホルモン制御組織に存在する。ある態様において、乳がんはER陽性乳がん、ER陰性乳がんまたは転移性乳がんである。ある態様において、乳がんは導管腺がん、小葉腺がんまたは転移性腺がんである。ある態様において、対象はがんを有すると、またはがんの傾向があると診断されている。
【0190】
がんの症状は、当該技術分野において周知であり、そして乳房のしこり、乳頭の変化、乳房嚢胞、乳房疼痛、死亡、体重減少、衰弱、疲労過多、摂食障害、食欲喪失、慢性咳、息切れの悪化、喀血、血尿、血便、吐き気、嘔吐、肝臓転移、肺転移、骨転移、腹部膨満、むくみ、腹腔内貯水、膣出血、便秘症、腹部膨満感、結腸穿孔、急性腹膜炎(感染、熱、疼痛)、疼痛,吐血、大量の発汗、熱、高血圧、貧血、下痢、黄疸、目眩、寒気、筋痙攣、結腸転移、肺転移、膀胱転移、肝臓転移,骨転移、腎臓転移、および膵臓転移、嚥下困難等を含むが、これらに限定されない。
【0191】
調節化合物の治療上有効量は、医薬品化学者に周知の方法によって実験的に決定することができ、そして特に、患者の年齢、状態の重症度、および望まれる最終的な医薬製剤に依存する。本発明の調節剤の投与は、例えば、吸入もしくは座薬によって、または粘膜組織に、例えば膣、直腸、尿道、頬側および舌下組織に洗浄することによって、経口的に、局所的に、鼻腔内に、腹腔内に、非経腸的に、静脈内に、リンパ管内に、腫瘍内に、筋肉内に、傷口内に、動脈内に、皮下に、眼内に、滑液内に、経上皮的に、および経皮的に行うことができる。ある態様において、当該阻害剤を洗浄によって、経口的に、または動脈内に投与する。他の好適な導入方法には、再充填可能または生分解性デバイス、および遅延もしくは徐放ポリマーデバイスも含まれ得る。上記の通り、本発明の治療組成物はまた、他の既知の抗がん剤または他の既知の抗骨疾患処置レジメンとのコンビナトリアル治療の一部として投与することができる。
【0192】
本発明はさらに、患者のFXYD5関連生物学的活性を調節する方法を提供する。該方法は、患者に1種以上のFXYD5生物学的活性を調節するのに有効量のFXYD5調節剤を投与することを含む。FXYD5生物学的活性を測定するための好適なアッセイは、本明細書に記載されている。
【0193】
本発明はまた、それを必要とする患者におけるがん細胞増殖を阻害する方法であって、治療上有効量のFXYD5調節剤を患者に投与することを含む方法を提供する。FXYD5関連細胞増殖を測定するための好適なアッセイは、当業者に既知であり、本明細書に記載されている。
【0194】
本発明はさらに、それを必要とする患者におけるがんを阻害する方法を提供する。該方法は、本明細書に記載のとおり患者がFXYD5治療の候補であるかを決定して、患者がFXYD5治療の候補であれば該患者に治療上有効量の1種以上のFXYD5調節剤を投与することを含む。患者がFXYD5治療の候補でなければ、該患者は常套のがん処置で処置する。
【0195】
本発明は、がんを有すると診断された、または有する疑いがある患者においてがんを阻害する方法を提供する。該方法は、患者に治療上有効量の1種以上のFXYD5調節剤を投与することを含む。
【0196】
本発明はまた、FXYD5を発現している細胞集団にアポトーシスを誘導する方法を提供する。ある態様において、該方法は、細胞集団とFXYD5調節剤および化学療法剤を接触させることを含む。ある態様において、FXYD5調節剤はFXYD5タンパク質レベルを阻害する。ある態様において、細胞集団とFXYD5調節剤および化学療法剤の接触は、相加効果を有する。
【0197】
本発明はまた、患者の2個以上の細胞の相互作用を阻害する方法であって、該患者に治療上有効量のFXYD5調節剤を投与することを含む方法を提供する。FXYD5関連細胞相互作用を測定するための好適なアッセイは、当業者に既知であり、本明細書に記載されている。
【0198】
本発明はまた、患者の1種以上のがんの症状を調節する方法であって、該患者に治療上有効量の本明細書に記載のFXYD5組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0199】
本発明はさらに、それを必要とする患者における細胞増殖を阻害する方法であって、該患者に治療上有効量のFXYD5調節剤を投与することを含む方法を提供する。FXYD5関連足場非依存性細胞増殖を測定するための好適なアッセイは、本明細書に記載されている。
【0200】
本発明はまた、それを必要とする患者におけるがん細胞の移動を阻害する方法であって、該患者に治療上有効量のFXYD5調節剤を投与することを含む方法を提供する。FXYD5関連細胞移動を測定するための好適なアッセイは、当業者に既知である。
【0201】
本発明はさらに、それを必要とする患者におけるがん細胞の接着を阻害する方法であって、該患者に治療上有効量のFXYD5調節剤を投与することを含む方法を提供する。FXYD5関連細胞接着を測定するための好適なアッセイは、当業者に既知である。
【0202】
本発明はまた、がん、がん転移を発症する素因を有する患者または転移を有しており、したがって再発または反復しやすい患者を予防的に処置する方法を提供する。該方法は、例えばがんまたは転移性腫瘍の家族歴を有するか、またはがん転移の遺伝的素因を示す高リスク個体において特に有用である。ある態様において、腫瘍はFXYD5関連腫瘍である。さらに、該方法は、外科手術による切除または常套のがん処置によってFXYD5関連腫瘍を処置した患者の、FXYD5関連腫瘍の再発を予防するために有用である。
【0203】
本発明はまた、がん進行の阻害および/またはがんの退縮を引き起こす方法であって、患者に治療上有効量のFXYD5調節剤を投与することを含む方法を提供する。
【0204】
ある態様において、抗がん処置を必要とする患者は、化学療法および/または放射線療法と共に、本発明のFXYD5調節剤で処置される。例えば、FXYD5調節剤の投与後、該患者は治療上有効量の抗がん放射線療法で処置してもよい。ある態様において、化学療法処置(例えばメトトレキセートおよび/またはドキソルビシンによる)は、FXYD5調節剤との組合せによって提供する。ある態様において、FXYD5調節剤は、化学療法および放射線療法との組合せで投与する。
【0205】
処置方法は、患者に1種以上のFXYD5調節剤の単回用量または複数用量を投与することを含む。ある態様において、FXYD5調節剤は、滅菌、ピロゲンを含まない、薬学的に許容される担体または希釈剤との組合せにおいてFXYD5調節剤を含む注射用医薬組成物として投与する。
【0206】
ある態様において、本発明の治療レジメンは、外科手術、放射線療法、ホルモン除去および/または化学療法を含むが、これらに限定されない常套の処置レジメンと共に使用される。本発明のFXYD5調節剤の投与は、常套のがん処置の前、同時または後に行うことができる。ある態様において、2種以上の異なるFXYD5調節剤を患者に投与する。
【0207】
ある態様において、患者に投与するFXYD5調節剤の量は、がん細胞成長、腫瘍形成、がん細胞増殖、がん細胞転移、細胞移動、血管形成、FXYD5シグナル伝達、細胞間接着のFXYD5介在性阻害、FXYD5介在性細胞−細胞膜間相互作用、FXYD5介在性細胞−細胞外マトリックス間相互作用、インテグリン介在性活性、FXYD5介在性細胞−細胞外マトリックス分解およびFXYD5発現の1種以上の阻害に有効である。ある態様において患者に投与するFXYD5調節剤の量は、アポトーシスによるがん細胞死を増進するのに有効である。
【0208】
組合せ治療
ある態様において、本発明は、がんに対してさらに改善された効果を得るための2種以上のFXYD5調節剤を含む組成物を提供する。ある態様において、FXYD5調節剤はモノクローナル抗体である。2種以上のFXYD5抗体を含む組成物は、がんを有するか、またはがんを有する素因を有する個人または哺乳類に投与することができる。1種以上の抗体はまた、他の治療剤、例えば細胞傷害罪またはがん化学療法剤と共に投与してもよい。2種以上の治療剤の同時投与は、薬剤がそれらの治療効果を発揮する時間が重複していれば、同じ時点で、または同じ経路で投与する必要はない。異なる日または週に投与される同時または逐次投与が意図される。
【0209】
ある態様において、本発明の方法は、異なる抗体の組合せまたは「カクテル」の投与を意図する。かかる抗体カクテルは、異なるエフェクター機構を利用する抗体を含むか、または細胞傷害抗体と免疫エフェクター機能性に依存する抗体とを直接組み合わせる場合と同程度の利点を有することがある。かかる組合せ抗体は、相乗治療効果を示すこともある。
【0210】
ある態様において、組合せ治療は向上した処置を提供する。「向上した処置」は、相加、相乗または増強効果の何れかを意味する。例えばLNCaPにおいて、FXYD5ノックダウンと化学療法剤の組合せは相加効果を有する。ある態様において向上した処置は、1種以上の化学療法剤と共に、1種以上のFXYD5調節剤を投与することを含む。
【0211】
細胞傷害剤は、細胞の機能を阻害または阻止し、そして/または細胞の破壊を引き起こす物質を意味する。当該用語は、放射性同位体(例えば131I、125I、90Yおよび186Re)、化学療法剤、および毒素、例えば酵素的に活性な細菌、真菌、植物もしくは動物起源の毒素または合成毒素、あるいはそのフラグメントを含むことを意図する。非細胞傷害剤は、細胞の機能を阻害または阻止せず、そして/または細胞の破壊を引き起こさない物質を意味する。非細胞傷害剤は、活性化されて細胞傷害性になり得る。非細胞傷害剤はビーズ、リポソーム、マトリックスまたは粒子を含んでいてもよい(例えば、米国特許公開公報2003/0028071および2003/0032995参照、これらを参照により本明細書に引用する)。かかる薬剤は本発明の抗体と複合化、共役、結合または関連し得る。
【0212】
ある態様において、常套のがん医薬が本発明の組成物と共に投与される。常套の含意約は:
a) がん化学療法剤;
b) さらなる薬剤;
c) プロドラッグ
を含む。
【0213】
がん化学療法剤は、次のものを含むが、これらに限定されない:アルキル化剤、例えばカルボプラチンおよびシスプラチン;窒素マスタードアルキル化剤;ニトロソウレアアルキル化剤、例えばカルムスチン(BCNU);代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート;フォリン酸;プリンアナログ代謝拮抗剤、メルカプトプリン;ピリミジンアナログ代謝拮抗剤、例えばフルオロウラシル(5−FU)およびゲムシタビン(Gemzar(登録商標));ホルモン性抗新生物剤、例えばゴセレリン、ロイプロリド、およびタモキシフェン;天然抗新生物剤、例えばアルデスロイキン、インターロイキン−2、ドセタキセル、エトポシド(VP−16)、インターフェロンアルファ、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、およびトレチノイン(ATRA);抗生物質性天然抗新生物剤、例えばブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダウノマイシンおよびミトマイシン、例えばミトマイシンC;およびビンカアルカロイド天然抗新生物剤、例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン;ヒドロキシウレア;アセグラトン、アドリアマイシン、イフォスファミド、エノシタビン、エピチオスタノール、アクラルビシン、アンシタビン、ニムスチン、塩酸プロカルバジン、カルボクオン、カルボプラチン、カルモフール、クロモマイシンA3、抗腫瘍多糖類、抗腫瘍血小板因子、シクロホスファミド(Cytoxin(登録商標))、シゾフィラン、シタラビン(シトシンアラビノシド)、デカルバジン、チオイノシン、チオテパ、テガフール、ドラスタチン、ドラスタチンアナログ、例えばアウリスタチン、CPT−11(イリノテカン)、ミトザントロン、ビノレルビン、テニポシド、アミノプテリン、カルミノマイシン、エスペラミシン(例えば米国特許第4,675,187号参照)、ネオカルジノスタチン、OK−432、ブレオマイシン、フルツロン、ブロキシウリジン、ブスルファン、ホンバン、ペプロマイシン、ベスタチン(Ubenimex(登録商標))、インターフェロン−β、メピチオスタン、ミトブロニトール、メルファラン、ラミニンペプチド、レンチナン、カワラタケ(Coriolus versicolor)抽出物、テガフール/ウラシル、エストラムスチン(エストロゲン/メクロレタミン)。
【0214】
がん患者の治療に使用することができるさらなる薬剤には、次のものが含まれる:EPO、G−CSF、ガンシクロビル;抗生物質、ロイプロリド;メペリジン;ジドブジン(AZT);変異体およびアナログを含むインターロイキン1〜18;インターフェロンまたはサイトカイン、例えばインターフェロンα、β、γ、ホルモン、例えば黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)およびアナログ、ならびにゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH);成長因子、例えば形質転換成長因子−β(TGF−β)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、神経成長因子(NGF)、成長ホルモン放出因子(GHRF)、上皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子ホモログ因子(FGFHF)、肝細胞成長因子(HGF)、およびインシュリン成長因子(IGF);腫瘍壊死因子−αおよびβ(TNF−αおよびβ);侵襲阻害因子−2(IIF−2);骨形成タンパク質1−7(BMP1−7);ソマトスタチン;チモシン−α−1;γ−グロブリン;スーパーオキシドジスムターゼ(SOD);補体因子;抗血管新生因子;抗原物質;およびプロドラッグ。
【0215】
プロドラッグは、親薬剤と比較して腫瘍細胞に毒性が低いかまたは存在しない薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体形態であって、酵素的に活性なまたはより活性な親形態に活性化または変換され得るものを意味する。例えば、Wilman, “Prodrugs in Cancer Chemotherapy” Biochemical Society Transactions, 14, pp. 375-382, 615th Meeting Belfast (1986)およびStella et al., “Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,” Directed Drug Delivery, Borchardt et al., (ed.), pp. 247-267, Humana Press (1985)参照。プロドラッグには、リン酸含有プロドラッグ、チオリン酸含有プロドラッグ、硫酸含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸修飾プロドラッグ、糖化プロドラッグ、βラクタム含有プロドラッグ、所望により置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシンおよび他の5−フルオロウリジンを含むがこれらに限定されず、これらはより活性な細胞毒性遊離薬剤に変換することができる。本発明において使用するためのプロドラッグ形態に誘導化することができる細胞毒性薬剤の例には、上記化学療法剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0216】
臨床的局面
ある態様において、本発明の方法および組成物は、結腸がん、乳がん、皮膚がん、食道がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮がん、子宮頸がん、肺がん、膀胱がん、卵巣がん、多発性骨髄腫および黒色腫に特に有用である。ある態様において、がんは導管腺がん、小葉腺がんまたは転移性腺がんである。
【0217】
医薬組成物
本発明はまた、1種以上の本明細書に記載のFXYD5調節剤と薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。ある態様において、当該医薬組成物を注射液として、液体溶液または懸濁液として製造し;注射前に液体ビークル溶液または懸濁液とするのに適した固体形態として製造してもよい。リポソームは薬学的に許容される担体の定義に含まれる。薬学的に許容される塩、例えば鉱酸塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等;および有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等も、医薬組成物中に存在していてよい。薬学的に許容される賦形剤の全議論は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (1995) Alfonso Gennaro, Lippincott, Williams, & Wilkinsで入手可能である。
【0218】
FXYD5を検出する方法
本発明はまた、FXYD5を検出する方法を提供する。ある態様において、FXYD5は患者または患者サンプル中に存在する。ある態様において、当該方法は、患者に1種以上のFXYD5調節剤を含む組成物を投与し、そして患者におけるイメージング剤の局在を検出することを含む。ある態様において、前記患者サンプルはがん細胞を含む。ある態様において、前記FXYD5調節剤はイメージング剤と結合しているか、または検出可能に標識されている。ある態様において、前記FXYD5調節剤はイメージング剤と複合化された抗FXYD5抗体であり、そして患者に投与して1個以上の腫瘍を検出するか、またはFXYD5治療に対する患者の受容性を決定する。前記標識化抗体は、細胞上の高密度の受容体と結合し、それによって腫瘍細胞に蓄積する。標準的なイメージング技術を用いて、腫瘍の部位を検出することができる。
【0219】
本発明はまた、FXYD5を発現しているかまたは過剰発現している細胞または腫瘍をイメージング/検出する方法であって、FXYD5調節剤を含む組成物をサンプルと接触させ、そしてサンプル中のFXYD5調節剤の存在を検出することを含む方法を提供する。ある態様において、前記サンプルは患者サンプルである。ある態様において、患者サンプルはがん細胞を含む。ある態様において、前記FXYD5調節剤はイメージング剤と結合しているか、または検出可能に標識されている。
【0220】
本発明はまた、患者、細胞またはサンプル中に存在するFXYD5の量を定量する方法を提供する。当該方法は、1種以上の抗体、プローブまたは低分子を患者またはサンプルに投与して、当該サンプル中に存在するFXYD5の量を検出することを含む。ある態様において、当該抗体、プローブまたは低分子は、イメージング剤と結合しているか、または検出可能に標識されている。かかる情報は、例えば腫瘍がFXYD5に関連しているか、そしてしたがって、特定の処置を使用するべきか避けるべきかを示す。ある態様において、当該技術分野において周知の標準的な方法を用いて、腫瘍細胞を含むと考えられるサンプルを得て、そして標識化抗体、プローブ、オリゴヌクレオチドおよび低分子と接触させる。未結合の標識化抗体、プローブ、オリゴヌクレオチドまたは低分子を除去した後、前記細胞と結合した標識化抗体、ペプチド、オリゴヌクレオチドまたは模倣物の量を、あるいは未結合として除去された抗体、ペプチド、オリゴヌクレオチドまたは模倣物の量を測定する。当該情報は、存在するFXYD5の量と直接関係する。
【0221】
イメージングは、当業者に周知の方法を用いて行うことができる。例えばラジオシンチグラフィー、核磁気共鳴イメージング(MRI)またはコンピュータ断層撮影(CTスキャン)によってイメージングを行うことができる。イメージング剤に最も一般的に使用される放射性標識は、放射性ヨウ素またはインジウムを含む。CTスキャンによるイメージングは、鉄キレートのような重金属を用いてもよい。MRIスキャンは、ガドリニウムまたはマンガンのキレートを用いてもよい。さらに、陽電子放出断層撮影(PET)は、酸素、窒素、鉄、炭素またはガリウムの陽電子放出を用いてもよい。かかる方法は当業者に既知である。かかる方法の例は、A. Takeda et al, Cancer Research 61, 5065-5069, July 1, 2001; および C. Frederickson, Sci STKE. 2003 May 13;2003(182)(各々その全体を参照により本明細書に引用する)に記載されている。
【0222】
ある態様において、FXYD5調節剤は、FXYD5抗体である。ある態様において、該調節剤はイメージング剤と結合しているか、または検出可能に標識されている。ある態様において、イメージング剤は18F、43K、52Fe、57Co、67Cu、67Ga、77Br、87MSr、86Y、90Y、99MTc、111In、123I、125I、127Cs、129Cs、131I、132I、197Hg、203Pb、または206Biである。
【0223】
検出方法は当業者に周知である。例えば、ポリヌクレオチドを検出する方法は、PCR、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、RNA保護、およびDNAハイブリダイゼーション(インサイチュハイブリダイゼーションを含む)を含むが、これらに限定されない。ポリペプチドを検出する方法は、ウェスタンブロッティング、ELISA、酵素活性アッセイ、スロットブロッティング、ペプチド質量フィンガープリント、電気泳動、免疫化学および免疫組織化学を含むが、これらに限定されない。検出方法の他の例には、ラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光イムノアッセイ、フルオロイムノアッセイ、時間分解フルオロイムノアッセイ(TR FIA)、2色蛍光顕微鏡観察、または免疫クロマトグラフアッセイ(ICA)(全て当業者に周知である)を含むが、これらに限定されない。本発明のいくつかの好ましい態様において、ポリヌクレオチド発現を、PCR方法論を用いて検出し、そしてポリペプチド生産をELISA技術を用いて検出する。
【0224】
細胞傷害剤または診断剤を細胞に送達する方法
本発明はまた、FXYD5を発現する1個以上の細胞に細胞傷害剤または診断剤を送達する方法を提供する。ある態様において、該方法は、細胞傷害剤または診断剤と複合化した本発明のFXYD5調節剤と細胞を接触させることを含む。
【0225】
がん患者の予後を測定する方法
ある態様において、FXYD5関連がんを有する患者の予後を測定する方法は、患者サンプル中の細胞の細胞膜に結合したFXYD5を検出することを含む。ある態様において、患者サンプル中の細胞の細胞膜に結合したFXYD5の検出は、延長された生存および/または本発明のFXYD5調節剤および/または常套のがん医薬による処置の成功の良好な予後を示さない。
【0226】
ある態様において、FXYD5は配列番号:1の配列を有する核酸によってコードされる。ある態様において、FXYD5は配列番号:2の配列を有する。
【0227】
FXYD5治療に対する受容性を測定する方法
本発明はまた、FXYD5治療に対する患者の受容性を測定する方法を提供する。該方法は、患者または患者サンプルにおけるFXYD5の差次的発現のエビデンスの有無を検出することを含む。患者またはサンプルにおけるFXYD5の差次的発現のエビデンスの存在は、FXYD5治療に受容性の患者の指標である。ある態様において、患者またはサンプルにおけるFXYD5の差次的発現のエビデンスの非存在は、FXYD5治療の候補でない患者の指標である。
【0228】
ある態様において、本治療方法は、それを必要とする患者にイメージング剤と結合したFXYD5調節剤を含む組成物を投与して、該患者における遺伝子または遺伝子産物の有無を検出することを含む、第1にFXYD5治療に受容性の患者を同定することを含んでいる。ある態様において、本治療方法はさらに、患者がFXYD5治療の候補であるとき該患者に1種以上のFXYD5調節剤を投与し、そして患者がFXYD5治療の候補でないとき該患者を常套のがん処置で処置することを含む。
【0229】
ある治療方法において、患者ががんを有するか、またはがんに罹患しやすいと同定されたとき、該患者に1種以上のFXYD5調節剤を単独で、または他の抗がん医薬との組合せで投与する。
【0230】
がんの進行を評価する方法
本発明はまた、患者のがんの進行を評価する方法であって、第1の時点での生物学的サンプル中のFXYD5の発現生成物のレベルを第2の時点での同じ発現生成物のレベルと比較することを含む方法を提供する。第1の時点と比較して第2の時点での発現生成物のレベルの変化は、がんの進行の指標である。
【0231】
スクリーニング方法
本発明はまた、抗がん剤をスクリーニングする方法を提供する。該方法は、FXYD5を発現している細胞と候補化合物を接触させて、FXYD5関連生物学的活性が調節されるかを測定することを含む。ある態様において、がん細胞成長、インテグリン介在性活性、カドヘリン介在性活性、腫瘍形成、がん細胞増殖、がん細胞転移、細胞移動、血管形成、FXYD5シグナル伝達、細胞間接着のFXYD5介在性阻害およびFXYD5発現の1種以上の阻害は、抗がん剤の指標である。
【0232】
本発明はさらに、がんの阻害剤を同定する方法を提供する。該方法は、FXYD5を発現している細胞と候補化合物およびFXYD5リガンドを接触させて、FXYD5関連生物学的活性が調節されるかを測定することを含む。ある態様において、がん細胞成長、インテグリン介在性活性、カドヘリン介在性活性、腫瘍形成、がん細胞増殖、がん細胞転移、細胞移動、血管形成、FXYD5シグナル伝達、細胞間接着のFXYD5介在性阻害およびFXYD5発現の1種以上の阻害は、がん阻害剤の指標である。ある態様において、患者に投与するFXYD5調節剤の量は、がん細胞アポトーシスの増進に有効なものである。
【0233】
ある態様において、本発明は、例えば下流マーカーの活性またはレベルを調節する能力について推定調節剤をスクリーニングして、抗がん剤、特に抗転移性がん剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0234】
FXYD5を精製する方法
ある態様において、本発明は、FXYD5を含むサンプルからFXYD5タンパク質を精製する方法を提供する。該方法は、固体支持体と結合した本発明のFXYD5抗体を含むアフィニティーマトリックスを得て、前記サンプルと該マトリックスを接触させてアフィニティーマトリックス−FXYD5タンパク質複合体を形成させ;残留サンプルからアフィニティーマトリックス−FXYD5タンパク質複合体を分離し;アフィニティーマトリックスからFXYD5タンパク質を遊離させることを含む方法を提供する。
【0235】
キット
いくつかの態様において、本発明はFXYD5過剰発現に関連した遺伝子または遺伝子産物をイメージングおよび/または検出するためのキットを提供する。本発明のキットは、検出用抗体、低分子、オリゴヌクレオチド、デコイ、模倣物またはプローブならびに本発明の方法を行うための指示書を含む。所望により、キットは次の1個以上を含んでいてもよい:対照(ポジティブおよび/またはネガティブ)、対照のための容器、ポジティブまたはネガティブな結果の代表的な例の写真または描写。
【0236】
本明細書に記載の特許、特許出願、受託番号および公報の各々は、その全体について、ここに参照により本明細書に引用する。
【0237】
本明細書に記載のものに加えて、上記記載の点から本発明の多様な修飾が当業者に明らかであろう。かかる修飾も添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。本発明はさらに、下記実施例において詳述されるが、これは説明の目的のためであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0238】
実施例1:FXYD5遺伝子発現分析
マイクロアレイデータを用いて、多様な原発性腫瘍および正常組織におけるFXYD5の発現を測定した。結果は、図1〜4に図示する。これらはFXYD5が乳がんおよび結腸がんで有意に上方制御されていることを示す。図1に結果を示している実験において、、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)した結腸がん組織、乳がん組織および前立腺がん組織からmRNAを単離し、該mRNAをそれぞれの正常組織(RSM=参照標準混合物)または各組織サンプル内でがん細胞に隣接する正常細胞のプールと比較した。x軸のA項内のサンプルは、原発性乳がん、LCMに由来し;B項内のサンプルは正常乳房サンプル、RSMに由来し;C項内のサンプルは転移性結腸がん、LCMに由来し;D項内のサンプルは正常結腸、LCMに由来し;E項内のサンプルは原発性結腸がんに由来し;F項内のサンプルは正常結腸、RSMに由来し;G項内のサンプルは正常前立腺、LCMに由来し;H項内のサンプルは原発性前立腺がん、LCMに由来し;I項内のサンプルは正常前立腺、RSMに由来する。サンプルは、Affymetrix(登録商標)GeneChips(登録商標)(Affymetrix, Inc., Santa Clara, CA)によるオリゴヌクレオチドアレイ分析によって試験した。FXYD5プローブセット17989および24320を用いた正常ヒト組織におけるFXYD5 mRNAの発現は、それぞれ図2および3に示す。
【0239】
Human Genome U133 Plus 2 0 Array(Affymetrix, Inc.)を用いたがん様組織および正常組織におけるFXYD5 mRNA発現のオリゴヌクレオチドアレイ分析のグラフ表示は、図4に示す。正常組織タイプおよびがん様組織タイプは、横軸に沿って並べられている。がん様組織は、例えば‘c_’、例えば“c_breast_duct”とラベルしており、これは乳がん組織サンプルを意味し、そして正常組織は‘n_’で示す。組織タイプはさらに、知られていれば、組織のタイプおよびサブタイプでラベルされている。例えば、“c_breast_duct”は乳管に局在した乳がん由来のがん様組織である。サブタイプが外科手術による除去によっても明らかではないかまたは知られていないとき、ラベルは‘特定されていない’という‘ns’と表記する。図4の縦軸の各スポットは、1人の患者由来の組織サンプルを意味し、垂直軸上の各スポットの高さ(直線的)はプローブセットの相対的発現レベルを意味する。分析を行う前に、各プローブセットを大きな、多様なサンプルのセット間でその構成プローブの動態を分析することによってキャリブレーションした。このキャリブレーションによって、各プローブの相対的感受性を決定し、そしてプローブセット応答がプローブ間で直線である強度範囲を決定した。この範囲未満の強度は「検出されず」と称し、上のものは「飽和」と称される。サンプル間でのハイブリダイゼーションおよびラベリング効率の差のため、キャリブレーションの適用後に本発明者らは各チップを正規化した。これによって、サンプル間で異なる遺伝子発現についての範囲の上限および下限が生じた。
【0240】
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用いて、正常組織サンプルおよびがん組織サンプルにおける相対的FXYD5 mRNAレベルも試験した(図5〜8)。多様な正常またはがん組織または細胞系を、半定量的RT−PCR(GeneAmp(登録商標), Applied Biosystems, Foster City, CA)によって、多様なプライマーセットを用いて比較した。プライマー224252_s_atおよび218084_x_atからのデータを図5に示す。これは、他の試験した正常組織と比較して、胎盤組織においてFXYD5発現が上方制御されたことを示している。図6に示すデータは、HUVEC、HMVEC−d、MDA−231、184B5、hMEC−Q、hMEC−Prol、MSC−正常、HT1090およびMRC9細胞系においてFXYD5発現が最も高いことを示している。プライマーセット“ABTP 241-242”由来のデータを図8に示す。これはmda231、A431、skov3、HMEC、PRECおよびMRC9細胞系においてFXYD5発現が最も高いことを示している。プライマーセット“ABTP 555-556”由来のデータを図7に示す。これは結腸がん組織においてFXYD5発現のレベルが高いことを示している。正常結腸組織では、FXYD5発現は低いか、または観察されなかった。
【0241】
多様なFXYD群(FXYDl、FXYD2、FXYD3、FXYD5、FXYD6およびFXYD7)のmRNA発現を、結腸がんサンプルにおいて試験した。図9に示すとおり、結腸がん細胞においてFXYD2およびFXYD5発現が上方制御されていた。他のFXYD群の発現は低いか、または存在しなかった。
【0242】
実施例2:FXYD5タンパク質発現分析
FACSフローサイトメトリー(FACS)分析を用いて、多様ながん細胞系におけるFXYD5の細胞表面発現を測定した。抗FXYD5抗体で染色した非透過化HT1080、MDA231、PC3およびLnCAP細胞のFACS分析によって、全てのこれらの細胞系が細胞表面でFXYD5を発現していることを見出した(図10、下のパネル)。下のパネルの下隣の平均値は、各細胞系の相対位置を示している。MDA231細胞は最も高いレベルの細胞表面FXYD5発現を示し、HT1080細胞、PC3そしてLnCAPと続いた。染色の特異性は、ペプチド競合で確認した(図10、上のパネル)。
【0243】
免疫組織化学。抗FXYD5抗体を用いて、免疫組織化学的分析(IHC)をヒト組織で実施した。IHCによって、正常結腸においてFXYD5発現が存在しないことが示された。結腸がん、肝臓転移性がんおよび前立腺がん組織は、FXYD5タンパク質発現について陽性であった(データは示さず)。
【0244】
実施例3:FXYD5 siRNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドは軟寒天増殖を阻害する。
PC3およびHT29細胞をsiRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドでトランスフェクトして、足場非依存性増殖に対するFXYD5阻害の効果を測定した。
【0245】
siRNA実験のために、PC3細胞を次の1つでトランスフェクトした:FXYD5に対するsiRNA、C295−4si(CCAGATGCAGTCTACACAGAA;配列番号:23);ポジティブコントロールとしてsiRNA Eg5si;またはネガティブコントロールとしてPGL3si。PGL3siは、無関係の遺伝子配列を標的とする。第4セットの細胞はトランスフェクトしなかった。
【0246】
アンチセンス実験のために、PC3またはHT29細胞を次のアンチセンスオリゴヌクレオチドの1つでトランスフェクトした:対照として、Eg5を標的とするC109−3;FXYD5を標的とするC295−3;またはFXYD5を標的とするC295−4。細胞はまた、ネガティブコントロールとして各配列の逆相補体を含むオリゴヌクレオチドでトランスフェクトした。該細胞は0.35%軟寒天に播種し、培地中での増殖を7日後に、Alamar Blueを用いて定量した。
【0247】
該細胞の足場非依存性細胞増殖に対するFXYD5遺伝子発現の効果は、軟寒天中のコロニー形成によって測定した。軟寒天アッセイは、まず非組織培養処理プレートをPoly−HEMAでコーティングして、細胞とプレートの接着を防止して実施した。非トランスフェクト細胞はトリプシンを用いて収穫し、培地中で2回洗浄した。血球計を用いて細胞を計測し、培地で10細胞/mlに再懸濁した。50μlのアリコートをpolyHEMAコーティング96ウェルプレートに入れ、トランスフェクトさせた。各トランスフェクション混合物について、担体分子、好ましくはリピトイドまたはコレステロイドを水中実質濃度0.5nMに調製し、超音波処理して、均一な溶液を得て、0.45μmのPVDF膜で濾過した。
【0248】
アンチセンス、siRNA、または対照オリゴヌクレオチドを滅菌Millipore水中実際実質100μMに調製した。オリゴヌクレオチドはさらに、マイクロチューブ中で、OptiMEM(商標)(Gibco/BRL)で2μM、またはOptiMEM(商標)で約20μgのオリゴ/mlに希釈した。別のマイクロチューブ中で、典型的には1.5〜2nmolリピトイド/μgオリゴヌクレオチドの量のリピトイドまたはコレステロイドは、オリゴヌクレオチドの希釈で使用したものと同じ体積のOptiMEM(商標)で希釈した。希釈したオリゴヌクレオチドは速やかに希釈したリピトイドに加え、上下にピペッティングして混合した。最終濃度約300nMとなるように、細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを加えた。最終濃度約66nMとなるように、siRNAを加えた。37℃で約30分間トランスフェクションした後、最終濃度0.35%アガロースとなるように、細胞に3%のGTGアガロースを加え、上下にピペッティングした。細胞層アガロースが凝固した後、培地100μlを各ウェルの上面に添加した。約7日でコロニーが形成した。増殖の読み出しのために、20μlのAlamar Blueを各ウェルに加え、該プレートを約15分間撹拌した。6〜24時間インキュベーション後に、蛍光を読み込んだ(励起波長530nm/放出波長590nm)。
【0249】
PC3細胞のアンチセンス実験の結果を図14に示す;PC3細胞のsiRNA実験の結果を図13に示す。FXYD5 siRNAは、ポジティブコントロールと比較可能なレベルでがん細胞の足場非依存性増殖を阻害した。HT29細胞のアンチセンス実験の結果を図11および12に示す。FXYD5を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、がん細胞の足場非依存性増殖を阻害した。
【0250】
FXYD5調節剤を用いたがん細胞系のコロニー形成の阻害は、FXYD5が転移性表現型の作成および/または維持に関与していることを示している。
【0251】
実施例4:FXYD5 siRNAはがん細胞の細胞傷害を誘導するが、正常細胞では誘導しない
FXYD5 siRNAでの実験によって、FXYD5の阻害はがん細胞に細胞傷害性であるが、正常細胞にはそうではないことが示された。簡潔には、HCT116細胞、PC3細胞、または正常非発がん性繊維芽(MRC9)細胞を次のsiRNAの1つでトランスフェクトした:Eg5si(ポジティブコントロール)、PGL3si(ネガティブコントロール)、C295−3(FXYD5 siRNA)、またはC295−4(FXYD5 siRNA)。非トランスフェクト細胞の細胞傷害も測定した。トランスフェクションは、上記実施例に記載のとおりに実施した。図15〜17について、膜損傷のために培地中に放出されたLDH酵素の量を測定して、細胞傷害をモニターした。Roche Molecular BiochemicalsのCytotoxicity Detection Kitを用いてLDH活性を測定した。データは、培地中に放出されたLDH対同じ時点および処置でウェルに存在する総LDHの比として得られる(rLDH/tLDH)。
【0252】
図15〜16に示すとおり、FXYD5 siRNAは、HCT116細胞およびPC3細胞において、ネガティブコントロールsiRNAよりもかなりの程度、細胞傷害を誘導した(それぞれ図15および16)。3日目までに、MRC9細胞におけるFXYD5 siRNA誘導性細胞傷害の程度は、ネガティブコントロールsiRNAのものと同程度であった(図16)。したがって、がん細胞は、非がん様細胞と比較して、FXYD5阻害により高い感受性を示す。FXYD5と拮抗する薬剤は、新生物性傷害の処置に好適な治療指標を示し得る。
【0253】
実施例5:化学療法剤との組合せにおけるFXYD5阻害
細胞の化学療法処置と組み合わせたFXYD5阻害を試験した。オリゴヌクレオチドトランスフェクションを実施例3に記載のとおりに実施した。LnCaP細胞は、次のアンチセンスオリゴヌクレオチドの1つでトランスフェクトした:FXYD5を標的とするCHIR295−3;FXYD5を標的とするCHIR295−4;Bcl2を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド;またはこれらの1つの逆相補体。非トランスフェクト細胞も分析した。細胞のサブセットはまた、多様な濃度のメトトレキセート(MTX)またはドキソルビシン(DOXO)で処理した。上記実施例に記載のとおり、膜損傷のために培地中に放出されたLDH酵素の量を測定して、細胞傷害を測定した。
【0254】
図17に示すとおり、化学療法剤との組合せ処置は、細胞傷害に対して相加効果を有していた。
【0255】
実施例6:FXYD5エピトープ
抗体認識および製造のためのFXYD5の直線エピトープを、当該技術分野において既知の多様な方法の何れかによって同定することができる。ある例示的方法は、抗原のアミノ酸配列由来のペプチドの抗体結合能を証明することを含む。結合は、BIACORE法またはELISA法を用いて評価することができる。他の技術は、平面固体支持体(チップ)上でペプチドライブラリーを抗体に曝露して、固相スクリーニングに使用する多様な方法の何れかで結合を検出することを含む。さらに、ファージディスプレイを用いてペプチドのライブラリーをスクリーニングし、数回バイオパンニングの後、エピトープを選択することができる。
【0256】
実施例7:調節剤
ある態様において、FXYD5調節剤は:
(a) FXYD5の細胞外ドメイン(ECD)のエピトープと結合する抗体;
(b) 配列番号:1、8、9または12〜26の何れかに記載の配列の少なくとも19連続ヌクレオチド、またはその全長相補鎖を含む第1ヌクレオチド鎖と、該第1鎖と実質的に相補的な配列を含む第2ヌクレオチド鎖を含んでなる単離二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、890ヌクレオチド長未満であるdsRNA分子;
(c) 配列番号:1、5〜21、24および25から選択される配列と少なくとも90%同一の配列の少なくとも10連続ヌクレオチド、またはその全長相補鎖を含む単離核酸分子;
(d) 低分子;
(e) 模倣物;
(f) 可溶性受容体;および
(g) デコイ
から選択される。
【0257】
ある態様において、FXYD5調節剤はFXYD5ポリペプチドの抗原領域を含むか、またはそれに関する。本発明のある態様において、FXYD5調節剤は、配列番号:2の配列の1種以上を含み、そして/またはそれに特異的に結合する。
【0258】
ある態様において、FXYD5調節剤は、配列番号:2の1個以上のエピトープと結合するモノクローナル抗体であって、該エピトープは各々、配列番号:2の約6〜20連続アミノ酸からなるモノクローナル抗体である。ある態様において、該抗体は、Thr19−Ala33(配列番号:3)、Leu54−Asp82(配列番号:4)、Pro89−Ala97(配列番号:5)、Pro100−Lys125(配列番号:6)およびSer127−Phe135(配列番号:7)から選択されるFXYD5のエピトープ以外のFXYD5のエピトープと特異的に結合しないモノクローナル抗体である。
【0259】
ある態様において、FXYD5調節剤は、配列番号:1、8、9および12〜26から選択される配列と少なくとも90%同一の配列の少なくとも10連続ヌクレオチド、またはその全長相補鎖を含む単離核酸分子である。ある態様において、FXYD5調節剤はアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAオリゴヌクレオチドであり、配列番号:12〜26から選択される配列を有する。
【0260】
FXYD5アンチセンスおよびsiRNAオリゴ
【表1】

【0261】
本発明を特定の態様についての記載によって説明してきたが、様々な変化をつけることができ、均等物が本発明の真の精神および範囲から離れることなく置換され得ることを、当業者によって理解されるべきである。さらに、多くの修正を行って具体的な状況、物質、物質の組成物、方法、方法工程または複数工程を、本発明の対象、精神および範囲に適用することができる。全てのかかる修飾は、本発明の範囲に含まれると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とする患者におけるがんまたはがん症状を処置する方法であって、当該患者に治療上有効量のFXYD5調節剤と、1種以上の薬学的に許容される担体を投与することを含む方法。
【請求項2】
調節を必要とする患者におけるFXYD5活性を調節する方法であって、当該患者に、FXYD5活性の調節に有効量のFXYD5調節剤と、1種以上の薬学的に許容される担体を投与することを含む方法。
【請求項3】
FXYD5を発現するがんの増殖を阻害する方法であって、該がん細胞に、該細胞の増殖を対照と比較して少なくとも20%阻害するのに有効量のFXYD5調節剤と、1種以上の薬学的に許容される担体を投与することを含む方法。
【請求項4】
阻害を必要とする患者における患者のがん表現型を阻害する方法であって、当該患者に、治療上有効量のFXYD5調節剤と1種以上の薬学的に許容される担体を含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項5】
FXYD5を発現するがん細胞の1種以上の活性を調節する方法であって、該がん細胞に、1種以上の活性の調節に有効量のFXYD5調節剤と1種以上の薬学的に許容される担体を含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項6】
がん細胞におけるFXYD5とFXYD5リガンドの相互作用を阻害する方法であって、該がん細胞に、FXYD5リガンドの存在下で有効量のFXYD5調節剤を投与し、それによって該細胞のFXYD5とFXYD5リガンドの相互作用を阻害することを含む方法。
【請求項7】
FXYD5を発現するがん細胞のアポトーシスを誘導する方法であって、該がん細胞に、有効量のFXYD5調節剤と1種以上の薬学的に許容される担体を投与することを含む方法。
【請求項8】
患者または細胞にさらにメトトレキサートまたはドキソルビシンを投与することを含む、請求項1〜7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
FXYD5調節剤が
(a) FXYD5の細胞外ドメイン(ECD)のエピトープと結合する抗体;
(b) 配列番号:1、8、9または12〜26の何れかに記載の配列の少なくとも19連続ヌクレオチド、またはその全長相補鎖を含む第1ヌクレオチド鎖と、該第1鎖と実質的に相補的な配列を含む第2ヌクレオチド鎖を含んでなる単離二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、890ヌクレオチド長未満であるdsRNA分子;
(c) 配列番号:1、8、9および12〜26から選択される配列と少なくとも90%同一性を有する配列の少なくとも10連続ヌクレオチド、またはその全長相補鎖を含む単離核酸分子;
(d) 低分子;
(e) 模倣物;
(f) 可溶性受容体;および
(g) デコイ
から選択される、請求項1〜7の何れかに記載の方法。
【請求項10】
FXYD5調節剤が、細胞増殖またはアポトーシスを測定するインビトロアッセイにおいて、FXYD5を発現するがん細胞の増殖を少なくとも25%阻害する、請求項1〜7の何れかに記載の方法。
【請求項11】
FXYD5調節剤が、対照と比較してFXYD5発現を少なくとも50%阻害する、請求項1〜7の何れかに記載の方法。
【請求項12】
FXYD5調節剤が配列番号:12〜26から選択される配列を有するオリゴヌクレオチドである、請求項1〜7の何れかに記載の方法。
【請求項13】
FXYD5調節剤がモノクローナル抗体である、請求項1〜7の何れかに記載の方法。
【請求項14】
モノクローナル抗体が配列番号:2の1個以上のエピトープと結合し、該1個以上のエピトープはそれぞれ配列番号:2の約6〜20連続アミノ酸からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
がんが結腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、皮膚がん、食道がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮がん、子宮頸がん、肺がん、膀胱がん、多発性骨髄腫および黒色腫から選択される、請求項1、3または4の何れかに記載の方法。
【請求項16】
がんが結腸腺がんまたは扁平上皮がんである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
がんが腺管がん、小葉腺がんおよび転移性腺がんから選択される乳がんである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
がん細胞が乳がん細胞、皮膚がん細胞、食道がん細胞、肝臓がん細胞、膵臓がん細胞、前立腺がん細胞、子宮がん細胞、子宮頸がん細胞、肺がん細胞、膀胱がん細胞、卵巣がん細胞、多発性骨髄腫細胞および黒色腫細胞から選択される、請求項3、5、6または7の何れかに記載の方法。
【請求項19】
さらに1種以上の化学療法、放射線療法または外科手術によって患者を処置することを含む、請求項1、2または4の何れかに記載の方法。
【請求項20】
がん症状が乳房のしこり、乳頭の変化、乳房嚢胞、乳房疼痛、死亡、体重減少,衰弱、疲労過多、摂食障害、食欲喪失、慢性咳,息切れの悪化、喀血、血尿、血便、吐き気、嘔吐、肝臓転移、肺転移、骨転移、腹部膨満、むくみ、腹腔内貯水、膣出血、便秘症、腹部膨満感、結腸穿孔、急性腹膜炎、疼痛、吐血、大量の発汗、熱、高血圧、貧血、下痢、黄疸、目眩、寒気、筋痙攣、結腸転移、肺転移、膀胱転移、肝臓転移、骨転移、腎臓転移および膵臓転移、ならびに嚥下困難から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
FXYD5治療に受容性の患者を同定する方法であって:
(a) 患者サンプルのFXYD5差次的発現の有無を検出し、ここで該サンプルのFXYD5差次的発現の存在がFXYD5治療の候補である患者の指標であり、該サンプルのFXYD5差次的発現の非存在がFXYD5治療の候補ではない患者の指標である;
(b) 患者がFXYD5治療の候補であるとき、該患者に治療上有効量の請求項1に記載の組成物を投与し;そして
(c) 患者がFXYD5治療の候補ではないとき、該患者に常套のがん治療剤を投与すること
を含む方法。
【請求項22】
サンプルにおけるFXYD5を発現する1種以上のがん細胞を検出する方法であって、イメージング剤と結合したFXYD5調節剤を含む組成物と該サンプルを接触させて、該サンプル中のイメージング剤の局在を検出することを含む方法。
【請求項23】
組成物がイメージング剤と複合化したFXYD5抗体を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
イメージング剤が18F、43K、52Fe、57Co、67Cu、67Ga、77Br、87MSr、86Y、90Y、99MTe、111In、123I、125I、127Cs、129Cs、131I、132I、197Hg、203Pbまたは206Biである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
CHO細胞または骨髄腫細胞において1種以上のFXYD5関連生物学的活性を阻害する抗FXYD5抗体を発現する方法であって、前記CHO細胞または骨髄腫細胞において抗FXYD5抗体をコードする核酸を発現することを含む方法。
【請求項26】
対照と比較してFXYD5の過剰発現によって特徴付けられるがんの阻害剤を同定する方法であって、FXYD5を発現する細胞と、候補化合物およびFXYD5リガンドを接触させて、FXYD5の下流マーカーが調節されるかを測定することを含む方法、ここで、下流マーカーの調節ががんの阻害剤の指標である。
【請求項27】
下流マーカーがE−カドヘリンである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
患者のFXYD5調節剤受容性を測定する方法であって、該患者サンプルのFXYD5の差次的発現のエビデンスを検出することを含む方法、ここで、FXYD5の差次的発現のエビデンスが患者のFXYD5調節剤受容性の指標である。
【請求項29】
FXYD5調節剤と1種以上の薬学的に許容される担体を含む組成物であって、該FXYD5調節剤が:
(a) FXYD5の細胞外ドメイン(ECD)のエピトープと結合する抗体;
(b) 配列番号:1、8、9または12〜26の何れかに記載の配列の少なくとも19連続ヌクレオチド、またはその全長相補鎖を含む第1ヌクレオチド鎖と、該第1鎖と実質的に相補的な配列を含む第2ヌクレオチド鎖を含んでなる単離二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、890ヌクレオチド長未満であるdsRNA分子;
(c) 配列番号:1、8、9および12〜26から選択される配列と少なくとも90%同一性を有する配列の少なくとも10連続ヌクレオチド、またはその全長相補鎖を含む単離核酸分子;
(d) 低分子;
(e) 模倣物;
(f) 可溶性受容体;および
(g) デコイ
を含む、組成物。
【請求項30】
さらに化学療法剤を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
化学療法剤がメトトレキセートまたはドキソルビシンである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
FXYD5調節剤ががん細胞成長、がん細胞生存、腫瘍形成およびがん細胞増殖を対照と比較して少なくとも50%阻害する、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
組成物が滅菌注射液である、請求項29に記載の組成物。
【請求項34】
単離核酸分子がdsRNA、低分子干渉RNA(siRNA)またはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項29に記載の組成物。
【請求項35】
FXYD5調節剤が、FXYD5ポリペプチドと少なくとも1×10Kaの親和性で特異的に結合するモノクローナル抗体である、請求項29に記載の組成物。
【請求項36】
FXYD5ポリペプチドが配列番号:2と少なくとも95%同一の配列を有する、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
FXYD5ポリペプチドが配列番号:2の配列を有する、請求項35に記載の組成物。
【請求項38】
FXYD5ポリペプチドが、配列番号:1および配列番号:9から選択される配列と少なくとも95%同一の配列を含む核酸によってコードされる、請求項35に記載の組成物。
【請求項39】
モノクローナル抗体がキメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体またはFabフラグメントである、請求項35に記載の組成物。
【請求項40】
モノクローナル抗体が配列番号:2の1個以上のエピトープと結合する、請求項35に記載の組成物。
【請求項41】
モノクローナル抗体が配列番号:2の22−145アミノ酸の1個以上のエピトープと特異的に結合する、請求項35に記載の組成物。
【請求項42】
請求項35に記載の抗体を生産する単離細胞。
【請求項43】
請求項35に記載の抗体を生産するハイブリドーマ。
【請求項44】
請求項35に記載の抗体を生産する非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項45】
配列番号:2の1個以上のエピトープを含む、エピトープ含有単離ポリペプチド。
【請求項46】
請求項45に記載のエピトープ含有単離ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項47】
1個以上のエピトープのそれぞれが配列番号:2の約6〜約20連続アミノ酸からなる、請求項45に記載のエピトープ含有単離ポリペプチド。
【請求項48】
1個以上のエピトープのそれぞれが配列番号:2の約10〜約20連続アミノ酸からなる、請求項45に記載のエピトープ含有単離ポリペプチド。
【請求項49】
1個以上のエピトープの少なくとも1個が配列番号:2の少なくとも21連続アミノ酸からなる、請求項45に記載のエピトープ含有単離ポリペプチド。
【請求項50】
配列番号:2の少なくとも2個のエピトープを含み、ここで該エピトープがそれぞれ配列番号:2の約6〜約20連続アミノ酸からなる、請求項45に記載のエピトープ含有単離ポリペプチド。
【請求項51】
請求項45に記載のエピトープ含有単離ポリペプチドで対象を免疫化して得られる、単離FXYD5抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−526029(P2010−526029A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501252(P2010−501252)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/058616
【国際公開番号】WO2008/121797
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】