説明

はんだ付け用レーザーヘッド

【課題】CCDカメラを備えたレーザーヘッドにおいて、はんだ付け時に、はんだ付け対象からの高輝度の光によってハレーションが起きるのを防止する。
【解決手段】CCDカメラ9を、レーザービーム投射用の光学系2を介してはんだ付け対象10の画像を撮像するように構成し、該CCDカメラ9と上記光学系2のハーフミラー2cとの間に、はんだ付け対象10から送られてくる高輝度の光を遮断する選択透過性のフィルター23を、該CCDカメラ9と上記ハーフミラー2cとを結ぶ光路を遮る遮断位置と、該光路から離れる非遮断位置とに切換操作自在に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザービームを使用して半導体チップ等の電子部品をはんだ付けするレーザーはんだ付け装置における、上記レーザービームをはんだ付け対象に向けて投射するためのレーザーヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザービームを使用して電子部品等をはんだ付けする技術は、例えば特許文献1に記載されているように既に公知である。この技術は、光学レンズやハーフミラーなどの光学系を内蔵したレーザーヘッドを有していて、レーザー発振器から出力されるレーザービームを、上記光学系を通じてレーザーヘッドの先端の投射口に導き、この投射口を通じてはんだ付け対象に投射し、はんだを加熱、溶融させてはんだ付けするもので、非接触ではんだ付けを行うことができるという利点がある。
【0003】
また、上記レーザーヘッドがCCDカメラを備えていて、このCCDカメラで上記はんだ付け対象を撮像し、その画像をモニターで見ながら、はんだ付け開始前においては、実際に投射するレーザービームよりも出力を落としたテスト用レーザービーム(テストビーム)をはんだ付け対象に投射し、その投射位置やスポット径等を画像で確認しながら投射のための位置決め(ティーチング)を行い、はんだ付け時には、各はんだ付けポイント毎のはんだ付け作業が正常に行われているか否かといったようなことを観察するようにしている。
【特許文献1】特開2002−1521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、はんだ付け時に上記CCDカメラではんだ付け対象を撮像していると、レーザービームではんだが溶融した際に発生する高輝度の光や反射光等によってハレーションを起こすことがあり、ハレーションを起こすと、モニターの画面が白くぼやけてはんだ付けが行われている状態を観察しにくくなるという問題があった。
【0005】
そこで本発明の目的は、CCDカメラを備えたレーザーヘッドにおいて、はんだ付け開始前のティーチング時には、はんだ付け対象に投射したテストビームの観察を可能にして該レーザービームの位置決めを行うことができ、また、はんだ付け時には、はんだ付け対象で発生する高輝度の光によってハレーションが起きるのを防止してはんだ付け状態の観察を確実に行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明によれば、レーザー発振器から出力されるレーザービームをはんだ付け対象に投射してはんだ付けを行うためのレーザーヘッドであって、上記レーザービームをはんだ付け対象に投射するための光学系と、はんだ付け対象の画像を撮像するためのCCDカメラとを有し、上記CCDカメラは、撮像用の光軸を上記光学系の光軸と一致させて配設することにより、該光学系を介して上記はんだ付け対象の画像を撮像するように構成され、該CCDカメラと上記光学系との間に、はんだ付け対象から送られてくる光の一部を選択的に遮断する選択透過性のフィルターが、該CCDカメラと上記光学系とを結ぶ光路を遮る遮断位置と、該光路から離れる非遮断位置とに切換操作自在に配設されていることを特徴とするはんだ付け用レーザーヘッドが提供される。
【0007】
本発明においては、上記レーザーヘッドが筒状のハウジングを有し、該ハウジングの内部に上記光学系が設けられると共に、該ハウジングの側面に、上記レーザー発振器からの光ファイバーを接続するためのファイバー接続部が設けられ、上記光学系は、上記レーザー発振器から出力されたレーザービームは反射させるがその他の光は透過させるハーフミラーと、該ハーフミラーで反射されたレーザービームを収束させてはんだ付け対象に投射する光学レンズとを有していて、上記ハーフミラーの背面側に上記CCDカメラが配設されると共に、これらのハーフミラーとCCDカメラの間に上記フィルターが、該CCDカメラの撮像用光軸と直交する方向にスライド操作可能に配設されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、CCDカメラと光学系との間に、光の選択透過性を有するフィルターを、該CCDカメラと上記光学系とを結ぶ光路を遮る遮断位置と、該光路から離れる非遮断位置とに切換操作自在なるように配設したことにより、はんだ付け開始前におけるティーチング時には、上記フィルターを非遮断位置に切り換えることにより、はんだ付け対象に投射したテストビームの観察を可能にしてレーザービームの位置決め行うことができ、また、はんだ付け時には、上記フィルターを遮断位置に切り換えることにより、はんだ付け対象から送られて来る高輝度の光を遮断することによってハレーションが起きるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係るレーザーヘッドの一実施形態について説明する。図1に示すレーザーヘッドは、例えば、旋回自在かつ屈伸自在の多関節アームを有するはんだ付けロボットの上記多関節アームに取り付けて使用するもので、筒状のハウジング1を有している。このハウジング1は、レーザービームLBの投射用と撮像用とに共用される光学系2を内蔵した第1ハウジング部分1aと、この第1ハウジング部分1aの前端部(下端部)に同軸状に結合されて防塵ガラス3を担持する第2ハウジング部分1bと、この第2ハウジング部分1bの前端部(下端部)に同軸状に結合されて先端にレーザービームLBを投射するための投射口4を有する第3ハウジング部分1cとを有している。なお、上記光学系2の光軸L1とハウジング1の軸線とは一致している。
【0010】
上記第1ハウジング部分1aは、円筒形をした前筒部6aと角筒形をした後筒部6bとを相互に接続することにより構成されたもので、上記前筒部6aの内部には、上記光軸L1に沿って一対の光学レンズ2a,2bが内蔵され、上記後筒部6bの内部には、上記光軸L1に対して45度傾斜するハーフミラー2cが内蔵されている。
【0011】
また、上記後筒部6bの上端にはカメラ用取付部8が形成され、この取付部8にCCDカメラ9が取り付けられており、このCCDカメラ9で上記光学系2のハーフミラー2c及び光学レンズ2a,2bを通してはんだ付け対象10を正面から撮像できるようになっている。上記CCDカメラ9で撮像された画像は、図示しないモニターに映し出され、はんだ付けの開始前には、上記レーザービームLBの投射スポットとはんだ付けポイントとの位置決め(ティーチング)に利用され、はんだ付け時には、はんだ付けが正常に行われているか否か等の観察に用いられる。
【0012】
更に、上記後筒部6bの側面の上記ハーフミラー2cに対応する位置には、ファイバー接続部12が形成され、このファイバー接続部12に、図示しないレーザー発振器から延びる光ファイバー13の先端部が、上記ハーフミラー2cに対して45度の入射角でレーザービームを投射可能なるように接続されている。このハーフミラー2cは、上記レーザー発振器から出力されたはんだ付け用のレーザービームLBは反射するが、その他のレーザービームや可視光は透過させる性質を有するものである。
【0013】
そして、はんだ付け作業時に、上記光ファイバー13から入射されたレーザービームLBが、上記ハーフミラー2cで光軸L1に沿って90度屈折されたあと、2つの光学レンズ2a,2bを通って上記投射口4からはんだ付け対象10に投射され、はんだ付けが行われるようになっている。このとき、特に図示はしていないが、ハウジング1に付設されたはんだ供給装置から糸はんだがはんだ付け対象10に供給され、この糸はんだが上記レーザービームで溶融されてはんだ付けが行われる。
【0014】
また、上記はんだ付け対象10の状態は、上記2つの光学レンズ2a,2bとハーフミラー2cとを通してCCDカメラ9により撮像され、モニターに映し出される。従って、上記光学系2とCCDカメラ9とは、上記ハーフミラー2cから2つの光学レンズ2a,2bを通ってはんだ付け対象10に至る光路において、一つの光軸L1を共有している。換言すれば、上記CCDカメラ9の撮像用光軸L2と上記光学系2の光軸L1とは互いに一致している。
【0015】
上記第2ハウジング部分1bは短円筒形をしていて、上記第1ハウジング1における前筒部6aの下端面(前端面)に、シール部材15を介して複数の固定用のねじ16で着脱自在に取り付けられている。この第2ハウジング部分1bには、その側面に開口するガラス装着孔17が形成され、この装着孔17内に、ガラス保持枠18に保持された上記防塵ガラス3が、このガラス保持枠18を介して着脱自在なるように取り付けられている。換言すれば、上記防塵ガラス3を保持するガラス保持枠18が、上記装着孔17内に、側面の挿脱口17aを通じて着脱自在なるように装着されている。
【0016】
上記防塵ガラス3は、光軸L1の前方側に位置する光学レンズ2bと投射口4との間に介在してこの光学レンズ2bを外気から遮断し、外気中の異物がこの光学レンズ2bに付着するのを防止するためのもので、特に、はんだ付け時に発生するはんだ煙や、はんだが溶けたときに飛散するはんだボール等が光学レンズ2bに接触するのを防止し、該光学レンズ2bに煤状の汚れやはんだ屑による汚れが付着するのを防ぐものである。
図中19は、上記ガラス保持枠18と第2ハウジング部分1bとの間の気密を保つためのシール部材である。
【0017】
また、上記第3ハウジング部分1cは、上記第2ハウジング部分1bより小径の円筒状をした基端部20と、この基端部20から次第に先細り状をなすように延びて先端に上記投射口4を有する円錐部21とを有している。上記基端部20には、気体源に接続するためのポート22を設け、このポート22から供給される気体を上記投射口4からはんだ付け対象10に向けて噴射するように構成することもできる。上記気体としては、窒素ガス等の不活性ガスや、窒素ガスなどの不活性ガスと水素ガスなどの還元ガスとを混合した混合ガス等がある。これらのガスは、ヒーターで加熱することにより所定の温度まで昇温させた状態で噴射することが望ましい。
【0018】
上記ハウジング1の上端のカメラ用取付部8には、上記CCDカメラ9と光学系2のハーフミラー2cとの間の位置に、該ハーフミラー2cを透過した光の一部を選択的に遮断してその他の光は透過させる選択透過性のフィルター23が配設されている。このフィルター23は、はんだ付け対象10から上記ハーフミラー2cを通して送られてくる光30の中から、高輝度の光、例えば、レーザービームLBによるはんだの溶融で発生する光や該レーザービームLBによる反射光等を遮断するもので、図2及び図3からも分かるように、矩形のプレート状に形成されていて、上記取付部8に形成した収容部24内に撮像用光軸L2と直交する方向にスライド自在に配設され、摘み25によって切換操作されるようになっている。そして、該摘み25による切換操作により、上記CCDカメラ9とハーフミラー2cとの間の光路を遮って該ハーフミラー2cを透過した光30の一部を選択的に遮断する遮断位置(図1及び図2の位置)と、該光路から離れて上記ハーフミラー2cを透過した光を全く遮らない非遮断位置(図3の位置)とを占めるものである。
【0019】
図示した例では、上記フィルター23が、矩形の周枠26の内部を隣接する2つの部分に区分し、その一方の部分に光の選択透過性を有するフィルター部材27を取り付け、他方の部分にガラス等からなる透明部材28を取り付けることにより構成されている。そして、上記周枠26の側部に、上記摘み25が、上記取付部8の上方に突出するように上向きに取り付けられ、この摘み25が、該取付部8に形成された操作溝8a内で移動できるようになっている。
しかし、上記フィルター23はこのような構成に限定されるものではなく、上記透明部材28の部分は省略し、フィルター部材27の部分だけで該フィルター23を構成することもできる。
また、上記フィルター23を設ける位置は、図示したようなハーフミラー2cに近接した位置に限るものではなく、CCDカメラ9に近接させて設けても良く、これにより、小形のフィルター23を使用することができる。
【0020】
かくしてCCDカメラ9とハーフミラー2cとの間に上記フィルター23を設けたことにより、はんだ付け開始前のティーチングにおいて、実際のレーザービームLBより小さい出力のテストビームを使用して投射スポットとはんだ付けポイントとの位置決めを行う際には、該フィルター23を図3の非遮断位置に切り換えておくことにより、はんだ付け対象10に投射されたテストビームを上記CCDカメラ9で観察しながら、該テストビームの位置及びビーム径等を確認してその位置決めを行うことができる。
また、はんだ付け時には、上記フィルター23をスライドさせて図1及び図2の遮断位置に切り換えることにより、はんだ付け対象10から送られてくる高輝度の光、例えば、レーザービームLBによるはんだの溶融で発生する光や該レーザービームLBによる反射光等がこのフィルター23で遮断されるため、ハレーションを生じることなくはんだ付け対象10を確実に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るレーザーヘッドの断面図である。
【図2】図1のA−A線での断面図で、フィルターが遮断位置にある場合を示すものである。
【図3】図2と同様位置での断面図で、フィルターが非遮断位置にある場合を示すものである。
【符号の説明】
【0022】
1 ハウジング
2 光学系
2a,2b 光学レンズ
2c ハーフミラー
9 CCDカメラ
10 はんだ付け対象
12 ファイバー接続部
23 フィルター
L1 光学系の光軸
L2 撮像用の光軸
LB レーザービーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー発振器から出力されるレーザービームをはんだ付け対象に投射してはんだ付けを行うためのレーザーヘッドであって、上記レーザービームをはんだ付け対象に投射するための光学系と、はんだ付け対象の画像を撮像するためのCCDカメラとを有し、
上記CCDカメラは、撮像用の光軸を上記光学系の光軸と一致させて配設することにより、該光学系を介して上記はんだ付け対象の画像を撮像するように構成され、該CCDカメラと上記光学系との間に、はんだ付け対象から送られてくる光の一部を選択的に遮断する選択透過性のフィルターが、該CCDカメラと上記光学系とを結ぶ光路を遮る遮断位置と、該光路から離れる非遮断位置とに切換操作自在に配設されていることを特徴とするはんだ付け用レーザーヘッド。
【請求項2】
上記レーザーヘッドが筒状のハウジングを有し、該ハウジングの内部に上記光学系が設けられると共に、該ハウジングの側面に、上記レーザー発振器からの光ファイバーを接続するためのファイバー接続部が設けられ、
上記光学系は、上記レーザー発振器から出力されたレーザービームは反射させるがその他の光は透過させるハーフミラーと、該ハーフミラーで反射されたレーザービームを収束させてはんだ付け対象に投射する光学レンズとを有していて、上記ハーフミラーの背面側に上記CCDカメラが配設されると共に、これらのハーフミラーとCCDカメラの間に上記フィルターが、該CCDカメラの撮像用光軸と直交する方向にスライド操作可能に配設されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザーヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−173659(P2008−173659A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8190(P2007−8190)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(390014834)株式会社ジャパンユニックス (21)
【Fターム(参考)】