説明

ひずみ計測方法、ひずみ計測装置およびプログラム

【課題】測定対象5が受ける光の照度や照射方向の変化の影響を受けない、安定した計測ができる、ひずみ計測装置を提供する。
【解決手段】コンピュータ4は、測定対象5の所定領域6を表面高さ計測器2で計測して得られた当初表面高さ分布から、所定領域6の点A,Bをそれぞれ包含する微小領域a,bの表面高さ分布を抽出する微小領域抽出手段、所定領域6の、経時後表面高さ分布上の、前記微小領域a,bに最も近似する微小領域a’,b’内にあって、前記微小領域a,bにおける前記点A,Bに対応する点A’,B’の座標を算出する座標算出手段、及び測定対象5の線分AB方向のひずみを算出するひずみ算出手段として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体のひずみを非接触で計測するひずみ計測方法、ひずみ計測装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械的な強度を要求される物体、例えば、橋梁、ダム、水門、その他の土木構造物、船舶の船殻、航空機の胴体、翼、原動機の架構、車両、各種プラント、その他の機械、あるいは機械要素、部品等の機械的強度を確認するために、載荷試験が行われる。一般に載荷試験は、試験対象の物体にひずみゲージや変位計を取り付けて、当該物体に生じる変位を計測して行う。
【0003】
また、物体にモニタ装置を取り付け、当該物体の変位やひずみを監視して、当該物体の機械的な強度の低下を検知することも行われている。機械的な強度の低下を検知して、致命的な破壊が発生する前に適切な修理を行えば、災害を防ぐことができるからである。
【0004】
例えば、特許文献1には、診断対象部材に光ファイバを取り付けて、対象部材上の特定の部位のひずみ履歴を連続的に監視する構造物の診断方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、船体構造体の多様な箇所に光学的ひずみセンサを配置して、船体構造体に加わる動的負荷を連続監視する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、航空機の構造体に取り付けて、構造体に生じるひずみを検出する構造モニタリング用センサが開示されている。
【0007】
このように、物体の変位やひずみを監視するためには、物体にセンサを取り付ける必要があるが、特に大型構造物の場合、センサを取り付け、更にセンサの信号線を計測器やデータロガーまで配線する作業は煩雑なので、多くの経費を必要とする。また、大型構造物の監視は長期間にわたって行われるが、長期間に渡ってセンサを含むモニタ装置を保守するためには、多くの人手と経費を必要とする。
【0008】
そこで、本願発明者らは、被測定物の表面を撮像した画像を解析して被測定物のひずみを算出する方法を発明して、特許文献4において開示している。この方法に依れば、被測定物に固定されたセンサを必要としないので、上述したような問題は生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−257570号公報
【特許文献2】特表平10−511454号公報
【特許文献3】特表2007−505309号公報
【特許文献4】特開2007−170955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献4に開示した方法は、CCDカメラ等で撮像した画像を使用するので、照明条件の影響を受けやすいという問題がある。特に被測定物が屋外にある場合、自然光(太陽光)が被測定物に照射されるが、自然光の照度や照射方向は季節、時刻あるいは天候によって変化するので、安定した計測ができない。つまり、照度や照射方向によって画像の質が変化するので、精度のよい計測が出来ないという問題がある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被測定物にセンサを固定する必要がなく、つまり非接触での計測が可能で、被測定物が受ける光の照度や照射方向の変化の影響を受けない、ひずみ計測方法、ひずみ計測装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係るひずみ計測方法は、測定対象物の表面の所定領域の表面高さを計測して得られた当初表面高さ分布から、前記所定領域内の点Aを包含する微小領域a及び、点Bを包含する微小領域bの表面高さ分布を抽出する微小領域抽出段階と、前記微小領域a及びbの表面高さの分布と、経時後に前記測定対象物の前記所定領域の表面高さを計測して得られた経時後表面高さ分布を照合して、前記微小領域aの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域a’及び前記微小領域bの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域b’を求める照合段階と、前記微小領域a及びbにおける前記点A及びBに対応する前記微小領域a’及びb’内の点A’及びB’の座標を算出する座標算出段階と、当初の線分ABの長さlと経時後の線分A’B’の長さl’を下式に代入して、線分AB方向のひずみεを算出するひずみ算出段階を有することを特徴とする。
【数1】

【0013】
前記微小領域抽出段階は、前記所定領域内の点A及びB(i=1,2‥n:nは2以上の正の整数、以下同じ)を包含する微小領域a及びbの表面高さ分布を前記当初表面高さ分布から抽出し、前記照合段階は、前記微小領域a及びbの表面高さの分布と、前記経時後表面高さ分布を照合して、前記微小領域a及びbの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域a'及びb'を求め、前記座標算出段階は、前記微小領域a及びbにおける前記点A及びBに対応する前記微小領域a'及びb'内の点A'及びB'の座標を算出し、前記ひずみ算出段階は、線分Aの長さlおよび線分A'B'の長さl'に基づいて、線分A方向のひずみεを求めて、さらに、全てのひずみεの相和平均を前記所定領域のひずみとして算出するようにしてもよい。
【0014】
前記ひずみ算出段階は、全てのひずみεの中から異常値を除外して相和平均を算出するようにしてもよい。
【0015】
前記異常値は、例えば、事前に規定された範囲外の値である。
【0016】
全ての前記ひずみεの最大値および最小値を前記異常値としてもよい。
【0017】
また、前記所定領域の表面高さを計測して得られた表面高さ分布の表面高さが平均値以下となる領域の表面高さを前記平均値に置き換える溝部カット段階をさらに有するようにしてもよい。
【0018】
また、前記測定対象物の前記所定領域を事前に加工して凹凸面を形成する所定領域加工段階をさらに有するようにしてもよい。
【0019】
本発明に係るひずみ計測装置は、測定対象物の表面の所定領域の表面高さを計測して得られた当初表面高さ分布から、前記所定領域内の点Aを包含する微小領域a及び、点Bを包含する微小領域bの表面高さ分布を抽出する微小領域抽出手段と、前記微小領域a及びbの表面高さの分布と、経時後に前記測定対象物の前記所定領域の表面高さを計測して得られた経時後表面高さ分布を照合して、前記微小領域aの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域a’及び前記微小領域bの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域b’を求める照合手段と、前記微小領域a及びbにおける前記点A及びBに対応する前記微小領域a’及びb’内の点A’及びB’の座標を算出する座標算出手段と、当初の線分ABの長さlと経時後の線分A’B’の長さl’ に基づいて、線分AB方向のひずみεを算出するひずみ算出手段を備えることを特徴とする。
【0020】
前記微小領域抽出手段は、前記所定領域内の点A(i=1,2‥n:nは2以上の正の整数、以下同じ)を包含する微小領域a及び、点Bを包含する微小領域bの表面高さ分布を前記当初表面高さ分布から抽出し、前記照合手段は、前記微小領域a及びbの表面高さの分布と、前記経時後表面高さ分布を照合して、前記微小領域a及びbの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域a'及びb'を求め、前記座標算出手段は、前記微小領域a及びbにおける前記点A及びBに対応する前記微小領域a'及びb'内の点A'及びB'の座標を算出し、前記ひずみ算出手段は、線分Aの長さlおよび線分A'B'の長さl'に基づいて、線分A方向のひずみεを求めて、さらに、全てのひずみεの相和平均を前記所定の領域のひずみとして算出するようにしてもよい。
【0021】
前記所定領域の表面高さを計測して得られた表面高さ分布の表面高さが平均値以下となる領域の表面高さを前記平均値に置き換える溝部カット手段をさらに備えるようにしてもよい。
【0022】
本発明に係るプログラムは、コンピュータにインストールされて、当該コンピュータを、測定対象物の表面の所定領域の表面高さを計測して得られた当初表面高さ分布から、前記所定領域内の点Aを包含する微小領域a及び、点Bを包含する微小領域bの表面高さ分布を抽出する微小領域抽出手段と、前記微小領域a及びbの表面高さの分布と、経時後に前記測定対象物の前記所定領域の表面高さを計測して得られた経時後表面高さ分布を照合して、前記微小領域aの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域a’及び前記微小領域bの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域b’を求める照合手段と、前記微小領域a及びbにおける前記点A及びBに対応する前記微小領域a’及びb’内の点A’及びB’の座標を算出する座標算出手段と、当初の線分ABの長さlと経時後の線分A’B’の長さl’ に基づいて、線分AB方向のひずみεを算出するひずみ算出手段を備えるひずみ計測装置として機能させることを特徴とする。
【0023】
前記微小領域抽出手段は、前記所定領域内の点A(i=1,2‥n:nは2以上の正の整数、以下同じ)を包含する微小領域a及び、点Bを包含する微小領域bの表面高さ分布を前記当初表面高さ分布から抽出し、前記照合手段は、前記微小領域a及びbの表面高さの分布と、前記経時後表面高さ分布を照合して、前記微小領域a及びbの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域a'及びb'を求め、前記座標算出手段は、前記微小領域a及びbにおける前記点A及びBに対応する前記微小領域a'及びb'内の点A'及びB'の座標を算出し、前記ひずみ算出手段は、線分Aの長さlおよび線分A'B'の長さl'に基づいて、線分A方向のひずみεを求めて、さらに、全てのひずみεの相和平均を前記所定領域のひずみとして算出するようにしてもよい。
【0024】
本発明に係るプログラムは、コンピュータにインストールされて、当該コンピュータを前記所定領域の表面高さを計測して得られた表面高さ分布から、前記所定領域の表面高さの平均値以下の表面高さを全て前記平均値に置き換えて、前記当初表面高さ分布及び前記経時後表面高さ分布を得る溝部カット手段をさらに備えるひずみ計測装置として機能させるものであってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、被測定物の表面の高さ分布に基づいて、ひずみを計測するので、被測定物が受ける光の照度や照射方向の変化の影響を受けない安定したひずみ計測が可能になる。また、被測定物にセンサやゲージを常設する必要がないので、センサやゲージを保守する手間が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態の一例を示すひずみ計測システムの概念的な構成図である。
【図2】表面高さ計測器の概念的な構成図である。
【図3】表面高さ計測器によって得られる測定対象の表面高さ分布の概念図である。
【図4】表面高さ分布を示すデータマトリクスの概念図である。
【図5】コンピュータの概念的な構成図である。
【図6】計測対象の表面上の点の変位を推定する方法を説明する概念図である。
【図7】X軸方向のひずみεを算出する方法を説明する概念図である。
【図8】Y軸方向のひずみεを算出する方法を説明する概念図である。
【図9】XY軸の対角線方向のひずみεxyを算出する方法を説明する概念図である。
【図10】微小領域抽出処理プログラムの概略を示すフローチャートである。
【図11】所定領域と微小領域の関係を説明する概念図である。
【図12】照合処理プログラムの概略を示すフローチャートである。
【図13】サブセットaとサブセットa’ の関係を説明する概念図である。
【図14】座標算出処理プログラムの概略を示すフローチャートである。
【図15】相関係数Cの2次曲線補間を説明する概念図である。
【図16】ひずみ算出処理プログラムの概略を示すフローチャートである。
【図17】平均処理プログラムの概略を示すフローチャートである。
【図18】溝部カット処理を説明する概念図である。
【図19】溝部カット処理プログラムの概略を示すフローチャートである。
【図20】実験に使用した試験片等の構成を示す図である。
【図21】実験結果を示すグラフである。
【図22】溝部カット処理を行った実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、適宜、図面を参照しながら説明する。
【0028】
本発明に係るひずみ計測システムは、例えば、図1に示すように構成される。つまり、ひずみ計測システム1は、表面高さ計測器2、データロガー3、及びコンピュータ4を備える。
【0029】
表面高さ計測器2は、測定対象5の表面の所定領域6の表面高さを計測する装置であり、その具体的な構成は後述する。
【0030】
データロガー3は、表面高さ計測器2で求めた所定領域6の表面高さ分布を示すデータを記録する装置である。なお、データロガー3の形式や構成等は特に限定されない。ひずみ計測システム1で処理されるデータを自由に書き込み/読み出すことが出来るような装置を公知の装置の中から選択すればよい。
【0031】
コンピュータ4は、表面高さ計測器2で計測され、データロガー3に記録された測定対象5の表面の所定領域6の表面高さ分布を解析して、所定領域6のひずみを算出する装置であり、その具体的な構成は後述する。
【0032】
さて、表面高さ計測器2は図2に示すように構成される。すなわち、表面高さ計測器2は、2次元レーザ変位計7と、精密送り装置8を備える。また、2次元レーザ変位計7はセンサヘッド9とコントローラ10とから構成される。
【0033】
2次元レーザ変位計7は、計測対象にレーザ光を照射する照射部と、前記計測対象で反射したレーザ光を撮像する撮像素子を備えて、前記撮像素子で撮像したレーザ光の画像に基づいて計測対象の表面の高さを計測するセンサである。なお、本実施形態で使用した2次元レーザ変位計の構成や原理については、例えば、特開2006−20399号公報、特開2006−45926号公報等に詳述されているので、説明を省略する。
【0034】
精密送り装置8は2次元レーザ変位計7を所定の微小距離だけ繰り返し移動させる装置であり、本実施形態ではマイクロメータを精密送り装置8として使用している。つまりマイクロメータのスピンドル8aの先端にセンサヘッド9を固定して、スピンドル8aを所定の微小長さだけ進退させてセンサヘッド9を移動させている。
【0035】
図3は、表面高さ計測器2によって得られる測定対象5の表面の所定領域6の表面高さ分布の概念図である。図3において、X軸は2次元レーザ変位計7が測定対象5に照射するレーザビームの幅方向に相当し、Y軸は精密送り装置8の送り方向に相当する。また、所定領域6の表面高さは、図示しないZ軸の座標で表示される。
【0036】
2次元レーザ変位計7は、X軸方向に3mmの幅を持つレーザビームを測定対象5に照射して、測定対象5で反射したレーザビームの画像を631個の画素に分解して、画素毎に測定対象5の高さ、つまりZ軸座標を算出することができる。したがって、2次元レーザ変位計7によれば、1回の計測で、測定対象5の表面に約4.8μmピッチでX軸方向に直列に並んだ631個の点のZ軸座標を得ることができ、得られた座標値は所定のフォーマットでデータロガー3に記録される。
【0037】
2次元レーザ変位計7による計測が1回完了したら(X軸方向に並んだ631個の点のZ軸座標が得られたら)、精密送り装置8を操作してセンサヘッド9をY軸方向に約5μm移動させて2次元レーザ変位計7による計測を行う。これを631回繰り返すと、測定対象5の表面に幅約3mm、高さ約3.2mmの広がりを有する所定領域6にマトリクス状に配列された398,161(=631×631)個の点のZ軸座標がデータロガー3に記録される。つまり、所定領域6の表面高さの分布が、図4に示すような、398,161個のデータマトリクスの形でデータロガー3に記録される。
【0038】
さて、コンピュータ4は、例えば、図5に示すように構成される。すなわち、コンピュータ4は、中央処理装置11、記憶装置12、通信インターフェイス13、キーボード14、モニタ15等を備える。また、コンピュータ4はキーボード14によって操作されて、記憶装置12に記録されたプログラムを中央処理装置11が実行する。また、中央処理装置11は、該プログラムにしたがって、通信インターフェイス13を介してデータロガー3からデータを読み出し、所定の処理を行って、その結果をモニタ15に表示し、記憶装置12に記録する。また、通信インターフェイス13を介して、当該処理の結果を図示しないプリンタに出力することができる。あるいは、当該処理の結果を図示しない他のコンピュータに送信することができる。
【0039】
次に、ひずみ計測システム1の原理を簡単に説明する。
【0040】
一般に、構造物は、面内に荷重が加わるように設計されるので、面外方向(板厚方向)のひずみは、面内方向のひずみに比べて十分小さい。例えば、測定対象5にXY平面内の荷重が加わる場合に、測定対象5はXY平面内で変形するが、Z軸方向には殆ど変化しない。そのため、測定対象5の表面の微小領域は、その微小領域内で表面高さ分布を保ったまま、XY平面内で移動する。
【0041】
したがって、図6に示すように、測定対象5に荷重を加える前に、所定領域6内の表面高さ分布を計測し、所定領域6内の点Aを包含する微小領域aの表面高さ分布、及び所定領域6内の別の点Bを包含する微小領域b(ここでは、点A及びBが、それぞれ微小領域a及びbの中心に位置するような微小領域a及びbを設定している)の表面高さ分布をそれぞれ求め、その後、測定対象5に荷重を加えた後の所定領域6’内の表面高さ分布を計測し、所定領域6’内で表面高さ分布が微小領域a,bに最も近似する微小領域a’,b’を見つければ、所定領域6内の点A,Bが、微小領域aにおける点A及び微小領域bにおける点Bにそれぞれ対応する、微小領域a’ 内の点A’及び微小領域b’内の点B’(ここでは、点A’及びB’は、それぞれ微小領域a’及びb’の中心に位置する)に移動したと推定できる。
【0042】
そして、荷重を加える前の所定領域6内の点A,B間の距離、つまり線分ABの長さをl、荷重を加えた後の所定領域6’内の点A’,B’間の距離、つまり線分A’B’の長さをl’とすると、荷重の印加によって点A,B間に生じたひずみεは、は次式で得られる。
【0043】
【数2】

【0044】
また、図7に示すように、点A,BがX軸方向に並ぶように選べば、X軸方向のひずみεは次式で得られる。
【0045】
【数3】

【0046】
また、図8に示すように、点A,BがY軸方向に並ぶように選べば、Y軸方向のひずみεは次式で得られる。
【0047】
【数4】

【0048】
また、図9に示すように、点A,BがXY軸の対角線方向に並ぶように選べば、対角線方向のひずみεxyは次式で得られる。
【0049】
【数5】

【0050】
また、ε、ε、εxyが得られれば、主ひずみγmaxが次式で得られる。
【0051】
【数6】

【0052】
また、同様な手順を経て、所定領域6内の複数の点A,B(i=1,2‥n:nは2以上の正の整数)が、荷重を加えた後に点A’,B’(i=1,2‥n)に移動することを知って、線分Aの長さl及び線分A’B’の長さl’から、ひずみεを求めて、ひずみε(i=1,2‥n)の総和をnで除して求めた、ひずみε(i=1,2‥n)の相和平均εmeanで所定領域6のひずみを代表させてもよい。
【0053】
なお、上記方法では、線分ABおよび線分A’B’の長さだけに基づいて、ひずみεを算出するので、線分AA’および線分BB’の長さはひずみεの値に影響しない(図6参照)。そのため、表面高さ計測器2と測定対象5の相対位置の再現性はひずみεの計測精度には影響しない。したがって、測定対象5に荷重を加える前に、表面高さ計測器2を測定対象5に固定して、所定領域6内の高さ分布を計測し、その後、表面高さ計測器2を測定対象5から取り外し、経時後に、再度、表面高さ計測器2を測定対象5に固定する場合に、表面高さ計測器2は、表面高さ計測器2の検出範囲内に所定領域6が包含される程度の精度で位置決めされれば十分である。表面高さ計測器2の測定対象5に対する相対位置が多少ずれて、線分AA’及び線分BB’の長さが変動しても、線分AB及び線分A’B’の長さは変動しないからである。
【0054】
また、所定領域6の表面の高さ(Z座標)は、表面高さ計測器2に固定された座標で表示されるが、例えば所定領域6の表面の高さの平均を求めて、該平均を基準とする相対的な高さで、所定領域6の表面の高さ分布を表示するようにすれば、表面高さ計測器2の測定対象5に対する相対高さは、所定領域6の表面の高さ分布の表示に影響を与えない。そのため、表面高さ計測器2を測定対象5に取り付ける時の高さ方向(Z軸方向)の相対位置の再現性はひずみεの計測精度には影響しない。
【0055】
さて、上記の原理に基づいて、所定領域6の表面高さ分布から測定対象5のひずみεを算出するために、コンピュータ4の記憶装置12に次のようなプログラムがインストールされ、中央処理装置11がこれらを実行する。
【0056】
(1)微小領域抽出処理プログラム
(2)照合処理プログラム
(3)座標算出処理プログラム
(4)ひずみ算出処理プログラム
(5)平均処理プログラム
(6)溝部カット処理プログラム
【0057】
以下、各プログラムの概略フローを説明する。
【0058】
[微小領域抽出処理プログラム]
微小領域抽出処理プログラムは、測定対象5に荷重が印加される前に計測された所定領域6の表面高さ分布(初期表面高さ分布)から、所定領域6内の点A,Bの近傍の微小領域a、bの表面高さの分布を抽出するプログラムであり、おおよそ、図10に示すような処理が実行される。
【0059】
まず点Aの座標(x、y)が入力される(ステップS11)。なお、座標(x、y)の入力はキーボード14を使って手動で、あるいは上位のプログラムから自動で行われる。
【0060】
次に、図11に示すように、所定領域6全体の初期表面高さ分布を示すデータマトリクスから、座標(x、y)の近傍の微小領域aに属するデータマトリクスを抽出する(以下、微小領域aに属するデータマトリクスを「サブセットa」と呼ぶ)。例えば、サブセットaの大きさを4行4列とする場合に、所定領域6の初期表面高さ分布を示す631行631列のデータマトリクスの座標(x、y)の上方の2行から下方の2行まで、および左方の2列から右方の2列の範囲にある要素を取り出してしてサブセットaを抽出する(ステップS12)。
【0061】
最後に、サブセットaを記憶装置12に格納して(ステップS13)、微小領域抽出処理プログラムを終了する。
【0062】
[照合処理プログラム]
照合処理プログラムは、微小領域抽出処理プログラムで抽出されたサブセットaと、測定対象5に荷重が印加された後に計測された所定領域6の表面高さ分布(経時後表面高さ分布)を照合して、サブセットaに最も近似する前記経時後表面高さ分布上のサブセットa’を求めるプログラムであり、おおよそ、図12に示すような処理が実行される。
【0063】
まず、記憶装置12からサブセットaを読み出す(ステップS21)。次に、経時後表面高さ分布を示すデータマトリクスから、サブセットαを切り出して(ステップS22)、サブセットaとの近似性を評価する(ステップS23)。
【0064】
サブセットαとサブセットaとの近似性の評価は、経時後表面高さ分布を示すデータマトリクスに含まれる全てのサブセットαについて行われ、全てのサブセットαの近似性の評価が終わったら(ステップS24:Yes)、ステップS25に進み、サブセットaとの近似性が最大になるサブセットα、つまりサブセットaに最も近似するサブセットαをサブセットa’に決定する。
【0065】
そして、サブセットa’を記憶装置12に格納して(ステップS26)、照合処理プログラムを終了する。
【0066】
なお、サブセットの近似性の評価には、次に示すような相関計数Cを使用する。
【0067】
すなわち、図13に示すように、サブセットaの中心座標をP(X,Y)、サブセットa’の中心座標をP’(X+u,Y+v)とすると、サブセットaに対するサブセットa’の相関係数Cは次式で表される。
【0068】
【数7】

【0069】
ここで、Zu(X+i,Y+j)およびZd(X+u+i,Y+v+j)はサブセットaおよびサブセットa’の対応する点の高さ(Z座標値)である。なおMは、サブセットaおよびサブセットa’の大きさをN行N列とする場合に、M=2N−1となる整数である。つまり、相関係数Cは、サブセットaおよびサブセットa’の対応する点の高さ(Z座標値)の差の絶対値の総和であり、相関係数Cが小さいほどサブセットaに対するサブセットa’の近似性が高いと言える。
【0070】
したがって、全てのu,vについて、相関係数Cを算出して、相関係数Cを最小にするu,vを決定すれば、サブセットaに最も近似するサブセットa’を決定することができる。
【0071】
あるいは、次式に示すような相関係数Cを使用してもよい。
【0072】
【数8】

【0073】
[座標算出処理プログラム]
座標算出処理プログラムは、サブセットの中心の点の座標を算出するプログラムであり、おおよそ、図14に示すような処理が行われる。すなわち、まず記憶装置12から、例えばサブセットa’を読み出す(ステップS31)。次に、サブセットa’の中心の点A’の座標(x’、y’)を算出して(ステップS32)、座標(x’、y’)を記憶装置12に格納して(ステップS33)、処理を終える。
【0074】
さて、測定対象5に荷重を加える前に、座標(x、y)の位置にあった点Aが、サブセットa’の中心の点A’に変位すると仮定して、点A’の座標(x’、y’)を求めたが、図15に示すように、離散的に得られる相関係数C(X+u−1,Y+v−1)、C(X+u,Y+v)、C(X+u+1,Y+v+1)の間を2次曲線で近似補間して、相関係数Cが最小となる点Eの座標を点A’の座標(x’、y’)としてもよい。このような近似補間を行えば、精度の高い変位の推定ができる。
【0075】
[ひずみ算出処理プログラム]
ひずみ算出処理プログラムは、照合処理プログラムと座標算出処理プログラムを実行して、測定対象5に荷重を加える前に所定範囲6にあった点A,Bが、測定対象5に荷重を加えると点A’,B’に移動することを知って、測定対象5の線分AB方向のひずみを算出するプログラムであり、おおよそ、図16に示すような処理が行われる。
【0076】
すなわち、まず記憶装置12から点A,B及び点A’,B’の座標を読み出す(ステップS41)。次に、線分ABの長さlを算出し(ステップS42)、線分A’B’の長さl’を算出する(ステップS43)。
【0077】
そして、次式にしたがって、測定対象5の線分AB方向のひずみεを算出し(ステップS44)、結果を記憶装置12に格納し(ステップS45)、処理を終える。
【0078】
【数9】

【0079】
[平均処理プログラム]
平均処理プログラムは、所定領域6内の複数の線分A(i=1,2‥n:nは2以上の正の整数)方向のひずみεを求めて、それらの相和平均を算出するプログラムであり、おおよそ、図17に示すような処理が行われる。
【0080】
すなわち、微小領域抽出処理プログラムからひずみ算出処理プログラムを繰り返し実行して、ひずみε(i=1,2‥n)を算出し(ステップS51)、ε(i=1,2‥n)の総和をnで除して相和平均εmeanを算出し(ステップS52)、結果を記憶装置12に格納し(ステップS53)、処理を終える。
【0081】
さて、計測時のエラー等によって、ε(i=1,2‥n)に異常な値が含まれる場合がある。このような場合にε(i=1,2‥n)をそのまま総和して、相和平均εmeanを算出すると、相和平均εmeanの値も真の値からずれてしまう。そこで、閾値を定めて、その閾値を超えるようなε(i=1,2‥n)を相和平均εmean算出の対象から除外すれば、相和平均εmeanの信頼性が向上する。
【0082】
あるいは、ε(i=1,2‥n)の最大値と最小値を除外して、相和平均εmeanを算出するようにしてもよい。
【0083】
[溝部カット処理プログラム]
ひずみ計測システム1では、縦横約3mmの所定範囲6内の398,161(=631×631)個の点の高さを表面高さ計測器2で計測して、所定範囲6の表面高さ分布を取得するが、所定範囲6の表面高さが低い部位(溝部)の測定値に異常値が混じる場合がある。この異常値は、2次元レーザ変位計7の特性に起因するものであり、排除することは難しい。そのため、所定範囲6の表面高さが低い部位の測定値は信頼性が低いという問題がある。
【0084】
そこで、図18に示すように、表面高さ計測器2で計測した所定範囲6の表面高さ分布を溝部カット処理プログラムで処理して、所定領域6の表面高さの平均値を算出し、表面高さが前記平均値以下である部位の表面高さを全て前記平均に置き換えれば、上記の問題を解決できる。
【0085】
溝部カット処理プログラムは、おおよそ、図19に示すような処理を行う。すなわち、所定範囲6の表面高さの平均値Zmeanを算出し(ステップS61)、所定範囲6の表面高さ分布を示すデータマトリクスの要素ZがZmean以下ならば、Zの値をZmeanに置き換え(ステップS62)、その結果を記憶装置12に格納して(ステップS63)、処理を終える。
【0086】
[実施例(実験)]
図20に示すように、ひずみゲージ16を貼り付けた試験片17を精密バイス18で挟んで、試験片17に圧縮荷重を加え、その時に試験片17に生じるひずみを、ひずみ計測システム1とひずみゲージ16で計測して、両者の測定値を比較した。
【0087】
なお、試験片17は、10mm角のアルミニウム(JIS A6063)の角棒を長さ25mmに切断したものである。また、試験片17の表面には、平ノミをほぼ平行に繰り返し打ち付けて、凹凸面19を形成している。この凹凸面19の表面高さ分布を、ひずみ計測システム1の表面高さ計測器2で計測した。
【0088】
図21は、横軸にひずみゲージ16による計測値を取り、縦軸にひずみ計測システム1による計測値を取って、実験結果(黒い正方形のマーク)をプロットした図である。実験結果が図の対角線(破線)に並べば、ひずみ計測システム1による測定値とひずみゲージ16による測定値が一致していることになる訳だが、図21は両者が良く一致していることを示している。
【0089】
また、ひずみ計測システム1の表面高さ計測器2で計測した凹凸面19の表面高さ分布に、前述した溝部カット処理を行って、試験片17のひずみを求めた結果とひずみゲージ16による測定値の関係を図22に示す。
【0090】
図22と図21を比較すれば、表面高さ分布に溝部カット処理を行うと、ひずみ計測システム1による測定値とひずみゲージ16による測定値がさらに良く一致する、つまりひずみ計測システム1の計測精度が向上することが解る。
【0091】
なお、本明細書では、点A,B,A’,B’がそれぞれ微小領域a,b,a’,b’の中心に位置する例を示したが、点A,B,A’,B’は微小領域a,b,a’,b’の中心以外の位置にあってもよい。例えば、点A及びBがそれぞれ微小領域a及びbの幅(行方向寸法)の70%、高さ(列方向寸法)の30%の場所に位置するように微小領域a及びbを設定してもよい。この場合、点A’及びB’がそれぞれ微小領域a’及びb’において占める位置は、点A及びBが微小領域a及びbにおいて占める位置に対応するから、点A’及びB’の座標はそれぞれ微小領域a’及びb’の幅(行方向寸法)の70%、高さ(列方向寸法)の30%の位置に定められる。
【0092】
以上説明したように、本発明によれば、物体の表面の高さを計測して得られた当該物品の表面高さ分布に基づいて、当該物体の表面のひずみを計測するので、当該物品の表面にゲージやセンサ等を取り付ける必要がない。
【0093】
そのため、特に、屋外に設置される大型構造物のひずみを長期間に渡って計測するような場合、ゲージやセンサ等の耐久性を考える必要がないので、計測が容易になる。
【0094】
また、本発明によれば、計測対象の物品に計測用のリードやケーブル等を配線する必要がない。そのため、例えば、回転機械のロータ部のような配線が困難な部位のひずみ計測に特に適している。
【0095】
本発明の具体的な適用対象を例示すると、橋梁(例えば、橋桁の応力集中部)、車両(例えば車軸)、船舶(例えば、重要な構造部材)、航空機(例えば、主翼の桁部)、原動機(例えば、タービンの動翼)などの予防保全などが挙げられる。
【0096】
なお、本明細書では、試験片17に平ノミを当てて凹凸面19を形成した例、つまり、人為的、意図的に凹凸が形成された表面の高さ分布から、ひずみを求める例を示したが、本発明の適用対象はこのような物体には限定されない。本発明によれば、人為的、意図的に形成された凹凸面だけでなく、物体の素材が本来備えている不規則かつ微細な凹凸(表面高さ)に基づいて、ひずみを計測することができる。
【0097】
あるいは、ひずみ計測の対象となる部位を事前に加工して、本発明のひずみ計測に適した凹凸面を形成するようにしてもよい。
【0098】
また、物品の表面の微細な凹凸を計測する技術の進歩発展により、本発明が応用される分野は、さらに拡がると考えられる。
【0099】
また、本明細書では、精密送り装置8(マイクロメーター)を手動で操作して、2次元レーザ変位計7のセンサヘッド9を移動させて、所定領域6の表面高さ分布を取得する例を示したが、本発明の技術的範囲は、このような装置で取得された表面高さ分布を利用するものには限定されない。各種の装置・方法で取得された表面高さ分布を使用して、本発明を実施することができる。
【0100】
例えば、精密送り装置8に電子的に制御される精密アクチュエータを使用して、2次元レーザ変位計7と精密送り装置8をコンピュータ4に制御させて、所定領域6の表面高さ分布を自動的に計測できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 ひずみ計測システム
2 表面高さ計測器
3 データロガー
4 コンピュータ
5 測定対象
6 所定領域
7 2次元レーザ変位計
8 精密送り装置
9 センサヘッド
10 コントローラ
11 中央処理装置
12 記憶装置
13 通信インターフェイス
14 キーボード
15 モニタ
16 ひずみゲージ
17 試験片
18 精密バイス
19 凹凸面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の表面の所定領域の表面高さを計測して得られた当初表面高さ分布から、前記所定領域内の点Aを包含する微小領域a及び、点Bを包含する微小領域bの表面高さ分布を抽出する微小領域抽出段階と、
前記微小領域a及びbの表面高さの分布と、経時後に前記測定対象物の前記所定領域の表面高さを計測して得られた経時後表面高さ分布を照合して、前記微小領域aの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域a’及び前記微小領域bの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域b’を求める照合段階と、
前記微小領域a及びbにおける前記点A及びBに対応する前記微小領域a’及びb’内の点A’及びB’の座標を算出する座標算出段階と、
当初の線分ABの長さlと経時後の線分A’B’の長さl’を下式に代入して、線分AB方向のひずみεを算出するひずみ算出段階を有する
ことを特徴とするひずみ計測方法。
【数1】

【請求項2】
前記微小領域抽出段階は、前記所定領域内の点A(i=1,2‥n:nは2以上の正の整数、以下同じ)を包含する微小領域a及び、点Bを包含する微小領域bの表面高さ分布を前記当初表面高さ分布から抽出し、
前記照合段階は、前記微小領域a及びbの表面高さの分布と、前記経時後表面高さ分布を照合して、前記微小領域a及びbの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域a'及びb'を求め、
前記座標算出段階は、前記微小領域a及びbにおける前記点A及びBに対応する前記微小領域a'及びb'内の点A'及びB'の座標を算出し、
前記ひずみ算出段階は、線分Aの長さlおよび線分A'B'の長さl'に基づいて、線分A方向のひずみεを求めて、さらに、全てのひずみεの相和平均を前記所定領域のひずみとして算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のひずみ計測方法。
【請求項3】
前記ひずみ算出段階は、全てのひずみεの中から異常値を除外して相和平均を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載のひずみ計測方法。
【請求項4】
前記異常値は、事前に規定された範囲外の値である
ことを特徴とする請求項3に記載のひずみ計測方法。
【請求項5】
前記異常値は、全ての前記ひずみεの最大値および最小値である
ことを特徴とする請求項3に記載のひずみ計測方法。
【請求項6】
前記所定領域の表面高さを計測して得られた表面高さ分布の表面高さが平均値以下となる領域の表面高さを前記平均値に置き換える溝部カット段階をさらに有する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のひずみ計測方法。
【請求項7】
前記測定対象物の前記所定領域を事前に加工して凹凸面を形成する所定領域加工段階をさらに有する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のひずみ計測方法。
【請求項8】
測定対象物の表面の所定領域の表面高さを計測して得られた当初表面高さ分布から、前記所定領域内の点Aを包含する微小領域a及び、点Bを包含する微小領域bの表面高さ分布を抽出する微小領域抽出手段と、
前記微小領域a及びbの表面高さの分布と、経時後に前記測定対象物の前記所定領域の表面高さを計測して得られた経時後表面高さ分布を照合して、前記微小領域aの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域a’及び前記微小領域bの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域b’を求める照合手段と、
前記微小領域a及びbにおける前記点A及びBに対応する前記微小領域a’及びb’内の点A’及びB’の座標を算出する座標算出手段と、
当初の線分ABの長さlと経時後の線分A’B’の長さl’を下式に代入して、線分AB方向のひずみεを算出するひずみ算出手段を備える
ことを特徴とするひずみ計測装置。
【数2】

【請求項9】
前記微小領域抽出手段は、前記所定領域内の点A(i=1,2‥n:nは2以上の正の整数、以下同じ)を包含する微小領域a及び、点Bを包含する微小領域bの表面高さ分布を前記当初表面高さ分布から抽出し、
前記照合手段は、前記微小領域a及びbの表面高さの分布と、前記経時後表面高さ分布を照合して、前記微小領域a及びbの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域a'及びb'を求め、
前記座標算出手段は、前記微小領域a及びbにおける前記点A及びBに対応する前記微小領域a'及びb'内の点A'及びB'の座標を算出し、
前記ひずみ算出手段は、線分Aの長さlおよび線分A'B'の長さl'に基づいて、線分A方向のひずみεを求めて、さらに、全てのひずみεの相和平均を前記所定領域のひずみとして算出する
ことを特徴とする請求項8に記載のひずみ計測装置。
【請求項10】
前記所定領域の表面高さを計測して得られた表面高さ分布の表面高さが平均値以下となる領域の表面高さを前記平均値に置き換える溝部カット手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載のひずみ計測装置。
【請求項11】
コンピュータにインストールされて、当該コンピュータを、
測定対象物の表面の所定領域の表面高さを計測して得られた当初表面高さ分布から、前記所定領域内の点Aを包含する微小領域a及び、点Bを包含する微小領域bの表面高さ分布を抽出する微小領域抽出手段と、
前記微小領域a及びbの表面高さの分布と、経時後に前記測定対象物の前記所定領域の表面高さを計測して得られた経時後表面高さ分布を照合して、前記微小領域aの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域a’及び前記微小領域bの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域b’を求める照合手段と、
前記微小領域a及びbにおける前記点A及びBに対応する前記微小領域a’及びb’内の点A’及びB’の座標を算出する座標算出手段と、
当初の線分ABの長さlと経時後の線分A’B’の長さl’を下式に代入して、線分AB方向のひずみεを算出するひずみ算出手段を備える
ひずみ計測装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【数3】

【請求項12】
前記微小領域抽出手段は、前記所定領域内の点A(i=1,2‥n:nは2以上の正の整数、以下同じ)を包含する微小領域a及び、点Bを包含する微小領域bの表面高さ分布を前記当初表面高さ分布から抽出し、
前記照合手段は、前記微小領域a及びbの表面高さの分布と、前記経時後表面高さ分布を照合して、前記微小領域a及びbの表面高さ分布に最も近似する前記経時後表面高さ分布上の微小領域a'及びb'を求め、
前記座標算出手段は、前記微小領域a及びbにおける前記点A及びBに対応する前記微小領域a'及びb'内の点A'及びB'の座標を算出し、
前記ひずみ算出手段は、線分Aの長さlおよび線分A'B'の長さl'に基づいて、線分A方向のひずみεを求めて、さらに、全てのひずみεの相和平均を前記所定の領域のひずみとして算出する
ことを特徴とする請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
コンピュータにインストールされて、当該コンピュータを、
前記所定領域の表面高さを計測して得られた表面高さ分布から、前記所定領域の表面高さの平均値以下の表面高さを全て前記平均値に置き換えて、前記当初表面高さ分布及び前記経時後表面高さ分布を得る溝部カット手段をさらに備える
ひずみ計測装置として機能させることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−53157(P2011−53157A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204164(P2009−204164)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【出願人】(591065549)福岡県 (121)
【Fターム(参考)】