説明

めっき方法及びめっき装置

【課題】貫通電極用凹部の底部からのめっき膜の成長速度を遅くすることなく、貫通電極用凹部内に銅等の金属を、内部にボイド等の欠陥を生じさせることなく完全に充填することができるめっき方法を提供する。
【解決手段】表面に貫通電極用凹部12を有する基板Wとアノードとをめっき液中に互いに対峙させて配置し、基板Wとアノードとの間に電圧を印加しながら基板Wとアノードとの間のめっき液を攪拌して貫通電極用凹部12内へ金属を充填し、貫通電極用凹部内12への金属の充填量に相関して、基板とアノードとの間のめっき液の攪拌条件を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に上下に貫通する導通用の多数の貫通電極を有する基板を製造する際に、基板の表面に予め設けられた貫通電極用凹部内に銅等の金属を充填するのに使用されるめっき方法及びめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を多層に積層させる際に各層間を導通させるための手段として、基板の内部に上下に貫通する複数の銅等の金属からなる貫通電極を形成する技術が知られている。内部に銅からなる貫通電極を有する基板の製造例を図1を参照して説明すると、先ず、図1(a)に示すように、シリコン等からなる基材10の内部に、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、上方に開口する複数の貫通電極用凹部12を形成した基板Wを用意する。この貫通電極用凹部12の直径は、例えば1〜100μm、特に10〜20μmで、深さは、例えば70〜150μmである。そして、基板Wの表面に、電解めっきの給電層としての銅等からなるシード層14をスパッタリング等で形成する。
【0003】
次に、基板Wの表面に電解銅めっきを施すことで、図1(b)に示すように、基板Wの貫通電極用凹部12の内部に銅めっき膜16を充填するとともに、シード層14の表面に銅めっき膜16を堆積させる。
【0004】
その後、図1(c)に示すように、化学的機械的研磨(CMP)等により、基材10上の余剰な銅めっき膜16及びシード層14を除去し、同時に、貫通電極用凹部12内に充填した銅めっき膜16の底面が外部に露出するまで基材10の裏面側を研磨除去する。これによって、上下に貫通する銅(銅めっき膜16)からなる複数の貫通電極18を内部に有する基板Wを完成させる。
【0005】
貫通電極用凹部12は、直径に対する深さの比、即ちアスペクト比が一般に大きく、通常、このようなアスペクト比の大きな貫通電極用凹部12内に電解めっきによって成膜される銅(めっき膜)を、内部にボイド等の欠陥を生じさせることなく完全に充填するには長時間を要する。このため、この技術の実用化のためには、貫通電極用凹部内に銅を充填するのに要する時間をできるだけ短くする必要がある。
【0006】
めっき浴の攪拌速度を連続的にまたは断続的に増大させることにより、金の電着速度を変化させるようにした金合金めっき方法が提案されている(引用文献1参照)。また、めっき液中に浸漬させて水平面に沿って配置されるめっき液攪拌用のパドルを、上下位置調節機構を介して、基板と近離する方向に移動(上下動)させるようにしためっき装置が提案されている(引用文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−120693号公報
【特許文献2】特開平8−144084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アスペクト比の大きな貫通電極用凹部内に電解めっきによって成膜される銅を、内部にボイド等の欠陥を生じさせることなく完全に充填するには、貫通電極用凹部の内部に優先的にめっき膜を成長させる、いわゆるボトムアップ成長が必要となる。このボトムアップ成長は、貫通電極用凹部の開口部付近と内部において、めっき液に含まれる有機添加剤の一つである、めっき膜成長の抑制作用を持つレベリング剤の作用に差をつけることによって生じる。つまり、貫通電極用凹部の開口部付近のめっき液を攪拌すると、貫通電極用凹部の開口部付近でのめっき液中のレベリング剤による抑制作用大きくなり、一方、貫通電極用凹部の内部ではめっき液の撹拌が弱いため、めっき液中のレベリング剤による抑制作用が殆どなくなる。このため、貫通電極用凹部の内部から優先的にめっき膜が成長するボトムアップ成長が起こる。
【0009】
このように、ボトムアップ成長を起こさせるためには、貫通電極凹部の開口付近でのめっき液の強い撹拌が必要となる。そのため、めっき中にめっき液を積極的に撹拌したり、めっき中に基板表面に向けてめっき液を吹き付ける等の手段が一般に採用されている。これらの方法は、貫通電極用凹部のアスペクト比の大きなめっき初期段階では、貫通電極用凹部の開口部付近でのめっき液の撹拌が強く、貫通電極用凹部の内部でのめっき液の撹拌が弱くなるため、ボトムアップ成長に有効である。しかしながら、めっき膜の成長に伴って貫通電極用凹部が徐々にめっき膜で埋まり、貫通電極用凹部の未充填部のアスペクト比が小さくなっていくと、一定の条件で積極的にめっき液を撹拌しながらめっきを継続した場合、貫通電極用凹部の未充填部の内部にもめっき液中のレベリング剤による抑制効果が働いてしまい、めっき膜の成長速度が遅くなり、結果的にめっき時間が長くなってしまうという問題が生じることが判明した。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、貫通電極用凹部の底部からのめっき膜の成長速度を遅くすることなく、貫通電極用凹部内に銅等の金属を、内部にボイド等の欠陥を生じさせることなく完全に充填することができるようにしためっき方法及びめっき装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、基板表面に設けた貫通電極用凹部の内部に優先的に銅を析出させて貫通電極用凹部内を欠陥なく完全に銅で埋める技術において、貫通電極用凹部の底部から優先的にめっきを成長させる、いわゆるボトムアップめっきにおけるめっき膜の成長速度を極力低下させることなく、貫通電極用凹部内を銅で充填する方法について数多くの試験を行って検討した。その結果、銅イオン、支持電解質及びハロゲンイオンを含み、更に有機イオウ化合物、高分子化合物及び有機窒素化合物のうち少なくとも一つを含んだめっき液を用い、アノードと基板との間に電圧を印加しながら、めっき初期においてはめっき液を比較的高強度で攪拌してめっきを行って貫通電極用凹部内に銅(めっき膜)を析出させ、貫通電極用凹部が銅で完全に充填される前に、めっき液の攪拌を比較的低強度に変化させてめっきを継続することで目的を達成できることを見出し本発明を完成した。
【0012】
請求項1に記載の発明は、表面に貫通電極用凹部を有する基板とアノードとをめっき液中に互いに対峙させて配置し、前記基板と前記アノードとの間に電圧を印加しながら前記基板と前記アノードとの間のめっき液を攪拌して前記貫通電極用凹部内へ金属を充填し、前記貫通電極用凹部内への金属の充填量に相関して、前記基板と前記アノードとの間のめっき液の攪拌条件を変化させることを特徴とするめっき方法である。
【0013】
例えば、めっき初期においては、めっき液を比較的高強度で攪拌する攪拌条件でめっきを行い、これによって、貫通電極用凹部の内部に金属を優先的に析出(ボトムアップ成長)させ、貫通電極用凹部が金属で完全に充填される前の貫通電極用凹部の未充填部のアスペクト比が小さく大きくなった段階で、めっき液の攪拌を比較的低強度の攪拌条件に変化させてめっきを継続することで、めっき速度を落とすことなく、貫通電極用凹部内に銅等の金属を、内部にボイド等の欠陥を生じさせることなく完全に充填することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記基板と前記アノードとの間のめっき液の撹拌を基板表面近傍に配置した撹拌具の往復運動で行い、前記貫通電極用凹部内への金属の充填量に相関して、前記攪拌具の往復移動速度を高速から低速に変化させることを特徴とする請求項1記載のめっき方法である。
【0015】
このように、基板表面近傍に配置した攪拌具、例えば攪拌パドルの往復移動速度を高速から低速に、好ましくは段階的に変化させることで、めっき液の攪拌条件を変化させることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記攪拌具の往復移動速度を0〜150cm/secの範囲で変化させることを特徴とする請求項2記載のめっき方法である。
攪拌具の往復移動速度は、最低移動速度0cm/secから最高移動速度150cm/secの範囲で変化させることが好ましく、攪拌具による十分な撹拌効果を得るために、また装置設計の観点から、10〜100m/secの範囲で変化させることが更に好ましい。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記基板と前記アノードとの間のめっき液の撹拌を基板表面近傍に配置した撹拌具の往復運動で行い、前記貫通電極用凹部内への金属の充填量に相関して、前記攪拌具と基板表面との距離を変化させながら前記撹拌具の往復移動速度を調整することを特徴とする請求項1記載のめっき方法である。
【0018】
このように、攪拌具と基板表面との距離を、好ましくは段階的に変化させながら撹拌具の往復移動速度を調整することによっても、めっき液の攪拌条件を変化させることができる。攪拌具の往復移動速度の変化のみによってめっき液の攪拌条件を変化させると、攪拌具の電場遮蔽の影響によって、基板表面に形成されるめっき膜の膜厚分布が悪くなることがあるが、攪拌具と基板表面との距離を変化させることを組合せることによって、このような弊害を防止することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記攪拌具と基板表面との距離を5〜50mmの範囲で変化させることを特徴とする請求項4記載のめっき方法である。
攪拌具と基板表面との距離は、最短5mmから最長50mmの範囲で変化させることが好ましく、最短8mmから最長30mmの範囲で変化させることが更に好ましい。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記攪拌具と基板表面との距離を、基板を保持する基板ホルダ及び前記攪拌具の少なくとも一方を互いに近離する方向に移動させて変化させることを特徴とする請求項4または5記載のめっき方法である。
攪拌具は高速で往復運動するように構成されており、基板を保持する基板ホルダの方を移動させる方が構造的に簡単であるが、攪拌具、更には双方を移動させるようにしてもよい。
【0021】
請求項7に記載の発明は、基準値となるパラメータを監視し、該基準値に応じて、前記めっき液の攪拌条件を変化させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のめっき方法である。
【0022】
基準値となるパラメータとして、電解量やめっき膜厚等が挙げられる。そして、電解量やめっき膜厚等と貫通電極用凹部内に金属が充填された時々における該貫通電極用凹部の未充填部のアスペクト比との関係を実験等で予め求めておき、めっきの進行に伴って、貫通電極用凹部の未充填部のアスペクト比が、例えば2に達したことを電解量やめっき膜厚等から検知した時に、めっき液にの攪拌条件を変化させる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、めっき液を保持するめっき槽と、前記めっき槽内のめっき液に浸漬させて配置されるアノードと、表面に貫通電極用凹部を有する基板を保持して該基板に通電し、基板を前記アノードと対向する位置にめっき液に浸漬させて配置する基板ホルダと、前記アノードと前記基板ホルダで保持した基板との間に配置され、前記めっき槽内のめっき液を攪拌する攪拌具と、前記基板と前記アノードとの間に電圧を印加するめっき電源と、前記貫通電極用凹部内への金属の充填量に相関して、前記攪拌具をめっき処理中に制御する制御部を有することを特徴とするめっき装置である。
【0024】
請求項9に記載の発明は、前記攪拌具は基板表面近傍に配置され、前記制御部は、前記攪拌具の往復移動速度を制御することを特徴とする請求項8記載のめっき装置である。
【0025】
請求項10に記載の発明は、前記制御部は、前記貫通電極用凹部内への金属の充填量に相関して、前記攪拌具の往復移動速度を遅くすることを特徴とする請求項8または9記載のめっき装置である。
【0026】
請求項11に記載の発明は、めっき液を保持するめっき槽と、前記めっき槽内のめっき液に浸漬させて配置されるアノードと、表面に貫通電極用凹部を有する基板を保持して該基板に通電し、基板を前記アノードと対向する位置にめっき液に浸漬させて配置する基板ホルダと、前記アノードと前記基板ホルダで保持した基板との間に配置され、前記めっき槽内のめっき液を攪拌する攪拌具と、前記基板と前記アノードとの間に電圧を印加するめっき電源と、前記攪拌具及び前記基板ホルダの少なくとも一方を互いに近離する方向に移動させる移動機構を有することを特徴とするめっき装置である。
【0027】
請求項12に記載の発明は、前記攪拌具は基板表面近傍に配置された撹拌具を有し、前記移動機構を介して前記攪拌具と基板との距離と変化させることでめっき液の攪拌速度を調整することを特徴とする請求項11記載のめっき装置である。
【0028】
請求項13に記載の発明は、前記貫通電極用凹部内への金属の充填量に相関して、前記攪拌具と基板との距離をめっき処理中に段階的に広くすることを特徴とする請求項11または12記載のめっき装置である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、例えば、めっき初期においては、めっき液を比較的高強度で攪拌するめっき液の攪拌条件でめっきを行い、これによって、貫通電極用凹部の内部に金属を優先的に析出(ボトムアップ成長)させ、貫通電極用凹部が金属で完全に充填される前に、めっき液の攪拌を比較的低強度の攪拌条件に変化させてめっきを継続することで、めっき速度を落とすことなく、貫通電極用凹部内に金属を、内部にボイド等の欠陥を生じさせることなく完全に充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】内部に上下に貫通する複数の銅からなる貫通電極を有する基板の製造例を工程順に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態のめっき装置を備えためっき処理設備の全体配置図である。
【図3】図2に示すめっき処理設備に備えられている搬送ロボットの概要図である。
【図4】図3に示すめっき処理設備に備えられているめっき装置の概略断面図である。
【図5】図3に示すめっき処理設備に備えられているめっき装置の概略平面図である。
【図6】図4に示すめっき装置の攪拌パドル(攪拌具)を示す平面図である。
【図7】図6のA−A線断面図である。
【図8】それぞれ異なる攪拌パドルの変形例を示す図7相当図である。
【図9】図5に示すめっき装置のパドル駆動機構をめっき槽と共に示す概略図である。
【図10】本発明の実施形態において、貫通電極用凹部内に金属(銅)が充填される状態を工程順に示す図である。
【図11】本発明の実施形態における攪拌速度とめっき時間との関係を示すグラフである。
【図12】本発明の実施形態における攪拌速度とめっき時間との他の関係を示すグラフである。
【図13】(a)は、アスペクト比が2以上の貫通電極用凹部を有する基板に、攪拌パドルを高速で往復運動させながら銅めっきを行った時の銅の埋込み形状を示す概略図で、(b)は、アスペクト比が2以上の貫通電極用凹部を有する基板に、攪拌パドルを低速で往復運動させながら銅めっきを行った時の銅の埋込み形状を示す概略図である。
【図14】(a)は、アスペクト比が2以下の貫通電極用凹部を有する基板に、攪拌パドルを高速で往復運動させながら銅めっきを行った時の銅の埋込み形状を示す概略図で、(b)は、アスペクト比が2以下の貫通電極用凹部を有する基板に、攪拌パドルを低速で往復運動させながら銅めっきを行った時の銅の埋込み形状を示す概略図である。
【図15】(a)は、アスペクト比の異なる貫通電極用凹部を有する基板に、攪拌パドルを高速で往復運動させながら銅めっきを行った場合(高速攪拌)と、攪拌パドルを低速で往復運動させながらめっきを行った場合(高速攪拌)における、アスペクト比とファイリング率(%)との関係を示すグラフで、(b)は、ファイリング率の求め方の説明に付する図である。
【図16】表面にレジストパターンが形成されている基板を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下の例では、基板の表面に電解銅めっきを行い、基板の表面に予め設けられた貫通電極用凹部の内部に銅(めっき膜)を充填して、基板の内部に銅からなる貫通電極を形成するようにした例を示す。
【0032】
図2は、本発明の実施形態におけるめっき装置を備えためっき処理設備の全体配置図を示す。このめっき処理設備は、基板の前処理、めっき処理及びめっきの後処理のめっき全工程を連続して自動的に行うようにしたもので、外装パネルを取付けた装置フレーム110の内部は、仕切板112によって、基板のめっき処理及びめっき液が付着した基板の処理を行うめっき空間116と、それ以外の処理、すなわちめっき液に直接には関わらない処理を行う清浄空間114に区分されている。そして、めっき空間116と清浄空間114とを仕切る仕切板112で仕切られた仕切り部には、基板ホルダ160(図3参照)を2枚並列に配置して、この各基板ホルダ160との間で基板の脱着を行う、基板受渡し部としての基板脱着台162が備えられている。清浄空間114には、基板を収納した基板カセットを載置搭載するロード・アンロードポート120が接続され、更に、装置フレーム110には、操作パネル121が備えられている。
【0033】
清浄空間114の内部には、基板のオリフラやノッチなどの位置を所定方向に合わせるアライナ122と、めっき処理後の基板を洗浄し高速回転させてスピン乾燥させる2台の洗浄・乾燥装置124が配置されている。更に、これらの各処理装置、つまりアライナ122及び洗浄・乾燥装置124のほぼ中心に位置して、これらの各処理装置122,124、基板脱着台162及びロード・アンロードポート120に搭載した基板カセットとの間で基板の搬送と受渡しを行う第1搬送ロボット128が配置されている。
【0034】
清浄空間114内に配置されたアライナ122及び洗浄・乾燥装置124は、表面を上向きにした水平姿勢で基板を保持して処理する。搬送ロボット128は、表面を上向きにした水平姿勢で基板を保持して基板の搬送及び受渡しを行う。
【0035】
めっき空間116内には、仕切板112側から順に、基板ホルダ160の保管及び一時仮置きを行うストッカ164、例えば基板の表面を純水で洗浄するとともに、純水で濡らして親水性を良くする水洗前処理を行う前処理装置126、例えば基板の表面に形成したシード層表面の電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸などの無機酸またはクエン酸やシュウ酸などの有機酸溶液でエッチング除去する活性化処理装置166、基板の表面を純水で水洗する第1水洗装置168a、めっき処理を行うめっき装置170、第2水洗装置168b及びめっき処理後の基板の水切りを行うブロー装置172が順に配置されている。そして、これらの装置の側方に位置して、2台の第2搬送ロボット174a,174bがレール176に沿って走行自在に配置されている。この一方の第2搬送ロボット174aは、基板脱着台162とストッカ164との間で基板ホルダ160の搬送を行う。他方の第2搬送ロボット174bは、ストッカ164、前処理装置126、活性化処理装置166、第1水洗装置168a、めっき装置170、第2水洗装置168b及びブロー装置172の間で基板ホルダ160の搬送を行う。
【0036】
第2搬送ロボット174a,174bは、図3に示すように、鉛直方向に延びるボディ178と、このボディ178に沿って上下動自在でかつ軸心を中心に回転自在なアーム180を備えており、このアーム180に、基板ホルダ160を着脱自在に保持する基板ホルダ保持部182が2個並列に備えられている。基板ホルダ160は、表面を露出させ周縁部をシールした状態で基板Wを着脱自在に保持するように構成されている。基板ホルダ160は、前処理装置126、活性化処理装置166、第1水洗装置168a、めっき装置170、第2水洗装置168b及びブロー装置172の一部を構成する。
【0037】
ストッカ164、前処理装置126、活性化処理装置166、水洗装置168a,168b及びめっき装置170は、基板ホルダ160の両端部に設けた外方に突出する突出部160aを上端部に引っ掛けて、基板ホルダ160を鉛直方向に吊り下げた状態で支持する。前処理装置126には、内部に純水を保持する2個の前処理槽127が備えられ、図3に示すように、基板Wを装着した基板ホルダ160を鉛直状態で保持した第2搬送ロボット174bのアーム180を下降させ、基板ホルダ160を前処理槽127の上端部に引っ掛けて吊下げ支持することで、基板ホルダ160を基板Wごと前処理槽127内の純水に浸漬させて前処理を行うように構成されている。活性化処理装置166には、内部に薬液を保持する2個の活性化処理槽183が備えられ、図3に示すように、基板Wを装着した基板ホルダ160を鉛直状態で保持した第2搬送ロボット174bのアーム180を下降させ、基板ホルダ160を活性化処理槽183の上端部に引っ掛けて吊下げ支持することで、基板ホルダ160を基板Wごと活性化処理槽183内の薬液に浸漬させて活性化処理を行うように構成されている。
【0038】
同様に、水洗装置168a,168bには、内部に純水を保持した各2個の水洗槽184a,184bが、めっき装置170には、内部にめっき液を保持した複数のめっき槽186がそれぞれ備えられ、前述と同様に、基板ホルダ160を基板Wごとこれらの水洗槽184a,184b内の純水またはめっき槽186内のめっき液に浸漬させることで、水洗処理やめっき処理が行われるように構成されている。またブロー装置172は、基板Wを装着した基板ホルダ160を鉛直状態で保持した第2搬送ロボット174bのアーム180を下降させ、この基板ホルダ160に装着した基板Wにエアーや不活性ガスを吹きかけることで、基板のブロー処理を行うように構成されている。
【0039】
めっき装置170には、図4に示すように、内部に一定量のめっき液Qを保持するめっき槽186が備えられており、このめっき槽186のめっき液Q中に、基板ホルダ160で周縁部を水密的にシールし表面(被めっき面)を露出させて保持した基板Wを浸漬させて、基板ホルダ160を垂直に配置するようになっている。めっき液Qとして、この例では、銅イオン、支持電解質及びハロゲンイオンの他に、更に有機イオウ化合物、高分子化合物及び有機窒素化合物のうち少なくとも一つの有機添加物を含んだめっき液が使用される。支持電解質としては硫酸が、ハロゲンイオンとしては塩素が好ましく用いられる。
【0040】
各めっき槽186の外方の該めっき槽186に基板ホルダ160を垂下保持した時に基板ホルダ160の両端突出部160aに対向する位置には、図5に示すように、基板ホルダ160で保持した基板Wを下記の攪拌パドル232に近離する方向に移動させる一対の移動機構190が備えられている。この各移動機構190は、基板ホルダ160の各突出部160aを載置支持する支持ブロック192と、この支持ブロック192の移動の際の案内となるレール194と、支持ブロック192にロッド先端を連結したシリンダ196とから構成されている。これにより、基板ホルダ160の両端突出部160aを一対の移動機構190の各移動ブロック192上に位置させて、基板ホルダ160を各めっき槽186に垂下支持した状態で、シリンダ196を作動させることにより、基板Wを保持した基板ホルダ160を該基板Wが攪拌パドル232に近離する方向に移動させることができる。
【0041】
移動機構190により、基板ホルダ160で保持した基板Wの表面と撹拌パドル232との距離を、5〜50mmの範囲で、つまり最短5mmから最長50mmの範囲で変更できるようにすることが好ましく、8〜30mmの範囲で変更できるようにすることが更に好ましい。基板Wの表面と撹拌パドル232との距離を、移動機構190によりステップ的に変化させても、滑らかに変化させても良い。
【0042】
なお、この例では、基板Wを保持した基板ホルダ160を、移動機構190を介して、攪拌パドル232に近離する方向に移動させるようにしているが、攪拌パドル232を基板ホルダ160で保持した基板Wに近離する方向に移動させるようにしてもよく、更には基板ホルダ160及び攪拌パドル232の双方を互いに近離する方向に移動させるようにしてもよい。
【0043】
めっき槽186の上方外周には、めっき槽186の縁から溢れ出ためっき液Qを受け止めるオーバーフロー槽200が備えられている。オーバーフロー槽200の底部には、ポンプ202を備えた循環配管204の一端が接続され、循環配管204の他端は、めっき槽186の底部に設けられためっき液供給口186aに接続されている。これにより、オーバーフロー槽200内に溜まっためっき液Qは、ポンプ202の駆動に伴ってめっき槽186内に還流される。循環配管204には、ポンプ202の下流側に位置して、めっき液Qの温度を調節する恒温ユニット206と、めっき液内の異物をフィルタリング(除去)するフィルタ208が介装されている。
【0044】
更に、めっき槽186の底部には、内部に多数のめっき液流通口を有する底板210が配置されている。これによって、めっき槽186の内部は、上方の基板処理室214と下方のめっき液分散室212に区画されている。更に、底板210には、下方に垂下する遮蔽板216が取付けられている。
【0045】
これによって、この例のめっき装置170では、めっき液Qは、ポンプ202の駆動に伴ってめっき槽186のめっき液分散室212に導入され、底板210に設けられた多数のめっき液流通口を通過して基板処理室214内に流入し、基板ホルダ160で保持された基板Wの表面に対して略平行に上方に向けて流れてオーバーフロー槽200内に流出するようになっている。
【0046】
めっき槽186の内部には、基板Wの形状に沿った円板状のアノード220がアノードホルダ222に保持されて垂直に設置されている。この各アノードホルダ222は、めっき槽186内にめっき液Qを満たした時に、アノード220がめっき槽186内のめっき液Q中に浸漬され、基板ホルダ160で保持してめっき槽186内に配置される基板Wと対面するように、図5に示すように、その突出端部において、めっき槽186の外方に配置された支持ブロック223に支持されている。更に、めっき槽186の内部には、アノード220とめっき槽186内に配置される基板ホルダ160との間に位置して、めっき槽186内の電位分布を調整する調整板(レギュレーションプレート)224が配置されている。調整板224は、この例では、筒状部226と矩形状のフランジ部228からなり、材質として、誘電体である塩化ビニールを用いている。筒状部226は、電場の拡がりを十分制限できるような開口の大きさ、及び軸心に沿った長さを有している。調整板224のフランジ部228の下端は、底板210に達している。
【0047】
めっき槽186の内部には、めっき槽186内に配置される基板ホルダ160と調整板224との間に位置して、鉛直方向に延び、基板Wと平行に往復運動して、基板ホルダ160と調整板224との間のめっき液Qを攪拌する攪拌具としての攪拌パドル232が配置されている。めっき中にめっき液Qを攪拌パドル(攪拌具)232で攪拌することで、十分な銅イオンを基板Wの表面に均一に供給することができる。
【0048】
攪拌パドル232は、図6及び図7に示すように、板厚tが3〜5mmの一定の厚みを有する矩形板状部材で構成され、内部に複数の長穴232aを平行に設けることで、鉛直方向に延びる複数の格子部232bを有するように構成されている。攪拌パドル232の材質は、例えばPVC、PPまたはPTFEなどの樹脂、またはSUSやチタンをフッ素樹脂などで被覆したものであり、少なくともめっき液と接触する部分を電気的絶縁状態にすることが望ましい。攪拌パドル232の垂直方向の長さL及び長孔232aの長さ方向の寸法Lは、基板Wの垂直方向の寸法よりも十分に大きくなるように設定されている。また、攪拌パドル232の横方向の長さHは、攪拌パドル232の往復運動の振幅(ストローク)と合わせた長さが基板Wの横方向の寸法よりも十分に大きくなるように設定されている。
【0049】
長穴232aの幅及び数は、長穴232aと長孔232aの間の格子部232bが効率良くめっき液を攪拌し、長穴232aをめっき液が効率良く通り抜けるように、格子部232bが必要な剛性を有する範囲で格子部232bが可能な限り細くなるように決めることが好ましい。
【0050】
この例では、図7に示すように、各格子部232bの横断面が長方形になるように長穴232aを垂直に開けている。図8(a)に示すように、格子部232bの横断面の四隅に面取りを施してもよく、また図8(b)に示すように、格子部232bの横断面が平行四辺形になるように格子部232bに角度を付けても良い。また、攪拌具としての攪拌パドルとして、鉛直方向に延びる1または複数の棒状体を使用しても良い。
【0051】
図5及び図9に示すように、攪拌パドル232は、攪拌パドル232の上端に固着したクランプ236によって、水平方向に延びるシャフト238に固定され、シャフト238は、シャフト保持部240に保持されつつ左右に摺動できるようになっている。シャフト238の端部は、攪拌パドル232を左右に直進往復運動させるパドル駆動部242に連結され、パドル駆動部242は、モータ244の回転をクランク機構(図示せず)によりシャフト238の直進往復運動に変換する。この例では、パドル駆動部242のモータ244の回転速度を制御することにより、攪拌パドル232の往復移動速度を制御する制御部246が備えられている。
【0052】
なお、パドル駆動部の機構は、クランク機構だけでなく、ボールねじによりサーボモータの回転をシャフトの直進往復運動に変換するようにしたものや、リニアモータによってシャフトを直進往復運動させるようにしたものでも良い。制御部246によって、攪拌パドル232の往復移動速度を0〜150cm/secの範囲で、つまり最低移動速度0cm/secから最高移動速度150cm/secの範囲で変化させるようにすることが好ましく、10〜100cm/secの範囲で変化させるようにすることが更に好ましい。攪拌パドル232の往復移動速度が10〜100cm/secの範囲から外れると基板表面に形成されるめっき膜の膜厚分布が悪くなってしまう。攪拌パドル232の往復移動速度は、攪拌パドル232の往復運動における平均の移動速度である。なお、撹拌パドル232の往復移動速度を、制御部246によりステップ的に変化させても、所定の減速度、例えば20〜100cm/sec程度の減速度に従って変化させても良い。
【0053】
めっき装置170には、めっき時に陽極が導線を介してアノード220に、陰極が導線を介して基板Wの表面にそれぞれ接続されるめっき電源250が備えられている。
【0054】
次に、図2に示すめっき処理設備を使用して、図10に示すように、シリコン等からなる基材10の内部に、アスペクト比が2以上の貫通電極用凹部12を形成し、表面にシード層14を形成した基板Wの該貫通電極用凹部12内に銅(銅めっき膜16)を充填するようにした一連に処理について説明する。
【0055】
先ず、上記基板Wをその表面(被めっき面)を上にした状態で基板カセットに収容し、この基板カセットをロード・アンロードポート120に搭載する。このロード・アンロードポート120に搭載した基板カセットから、第1搬送ロボット128で基板Wを1枚取出し、アライナ122に載せて基板Wのオリフラやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。一方、基板脱着台162にあっては、ストッカ164内に鉛直姿勢で保管されていた基板ホルダ160を第2搬送ロボット174aで取出し、これを90゜回転させた水平状態にして基板脱着台162に2個並列に載置する。
【0056】
そして、アライナ122に載せてオリフラやノッチなどの位置を所定の方向に合わせた基板Wを第1搬送ロボット128で搬送し、基板脱着台162に載置された基板ホルダ160に周縁部をシールして装着する。そして、この基板Wを装着した基板ホルダ160を第2搬送ロボット174aで2基同時に把持し、上昇させた後、ストッカ164まで搬送し、90゜回転させて基板ホルダ160を垂直な状態となし、しかる後、下降させ、これによって、2基の基板ホルダ160をストッカ164に吊下げ保持(仮置き)する。これを順次繰返して、ストッカ164内に収容された基板ホルダ160に順次基板を装着し、ストッカ164の所定の位置に順次吊り下げ保持(仮置き)する。
【0057】
一方、第2搬送ロボット174bにあっては、基板を装着しストッカ164に仮置きした基板ホルダ160を2基同時に把持し、上昇させた後、前処理装置126に搬送する。そして、この前処理装置126で、前処理槽127内に入れた純水等の前処理液に基板Wを浸漬させて前処理(水洗前処理)を施す。このとき使用する前処理液としての純水は、純水中の溶存酸素濃度を真空脱気装置や不活性ガスの導入により制御し、好ましくは2mg/L以下とする。次に、この基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、活性化処理装置166に搬送し、活性化処理槽183に入れた硫酸や塩酸などの無機酸またはクエン酸やシュウ酸などの有機酸溶液に基板を浸漬させてシード層表面の電気抵抗の大きい酸化膜をエッチングし、清浄な金属面を露出させる。このときに使用する酸溶液は前記前処理用の純水と同様に酸溶液中の溶存酸素濃度を制御することができる。更に、この基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、第1水洗装置168aに搬送し、この水洗槽184aに入れた純水で基板の表面を水洗する。
【0058】
水洗が終了した基板Wを装着した基板ホルダ160を、前記と同様にしてめっき装置170のめっき槽186の上方に搬送する。めっき槽186にあっては、この内部に所定の組成を有する所定量のめっき液Qを満たし循環させておく。そして、基板Wを保持した基板ホルダ160を下降させ、基板ホルダ160の突出部160aを移動機構190の支持ブロック192に載置保持して、基板ホルダ160で保持した基板Wをめっき槽186内のめっき液Qに浸漬させた第1位置に配置する。この第1位置における基板Wの表面と攪拌パドル232との距離は、5mm(好ましくは8mm)以上で、50mm(好ましくは30mm)から下記の基板を第2位置に移動させる移動距離を差し引いた値以下の距離である。
【0059】
次に、めっき電源250の陽極をアノード220に、陰極を基板Wのシード層14(図10参照)にそれぞれ接続する。この状態で、攪拌パドル232を基板Wと平行に第1往復移動速度で往復運動させて、調整板224と基板Wとの間のめっき液Qを攪拌パドル232で攪拌し、これによって、基板Wの表面にめっき膜16(図10参照)を成長させる。この時の攪拌パドル232の往復移動速度は、150cm/sec(好ましくは110cm/sec)以下で、0cm/sec(好ましくは10cm/sec)に下記の第2往復移動速度を加えた値以下の速度、例えば40〜80cm/secである。つまり、基板Wを第1位置に位置させて、攪拌パドル232を基板Wと平行に第1往復移動速度で往復運動させる第1のめっき液の攪拌条件でめっきを行い、これによって、図10(a)に示すように、貫通電極用凹部12の内部に優先的に銅めっき膜16を成長させる、いわゆるボトムアップ成長を起こさせる。
【0060】
そして、例えばめっきの際の電解量やめっき膜16の膜厚等を監視して、図10(b)に示すように、貫通電極用凹部12のめっき膜16で充填されていない未充填部12aのアスペクト比が、例えば2に達したことを検知したとき、めっき液の攪拌条件を変化させる。このように、貫通電極用凹部12のめっき膜16で充填されていない未充填部12aのアスペクト比が、例えば2に達しか否かを検知するにあたり、電解量やめっき膜厚等と貫通電極用凹部内に金属が充填された時々における該貫通電極用凹部の未充填部のアスペクト比との関係を実験等で予め求めておく。
【0061】
つまり、図11に示すように、未充填部12aのアスペクト比が、例えば2に達した時間tに、攪拌パドル232の往復移動速度を、第1往復移動速度から該第1往復移動速度より低速の第2往復移動速度、例えば10〜20cm/secの往復移動速度に変化させる。なお、この例では、攪拌パドル232の往復移動速度をステップ的に変化させているが、図12に示すように、所定の減速度、例えば20〜100cm/sec程度の減速度に従って変化させても良い。同時に、基板ホルダ160で保持した基板Wを、移動機構190を介して、前記第1位置よりも基板Wの表面と攪拌パドル232との距離が広い第2位置に移動させる。
【0062】
そして、めっき処理を継続して、図10(c)に示すように、貫通電極用凹部12内が完全に銅めっき膜16で埋まり、かつシード層14の表面に所定膜厚の銅めっき膜16が堆積された時に、図11に示すように、アノード220と基板Wとの間への電圧の印加を停止し(時間t)、攪拌パドル232の往復運動を停止させてめっきを終了する。
【0063】
このように、貫通電極用凹部12の未充填部12aのアスペクト比が、例えば2に達したときに、めっき液の攪拌条件を、比較的高強度の攪拌から比較的低強度の攪拌に変更することで、めっき速度を低下させることなく、貫通電極用凹部12の内部に銅を完全に充填することができる。以下、この理由を説明する。
【0064】
図13(a)は、アスペクト比が2以上の貫通電極用凹部12を有する基板Wに対して、例えば40〜80cm/secの高速で攪拌パドルを往復運動させてめっき液を攪拌しながら、一定条件で一定時間の銅めっきを行って、貫通電極用凹部12の内部に銅めっき膜16を充填した時の銅の埋込み形状を示す。図13(b)は、アスペクト比が2以上の貫通電極用凹部12を有する基板Wに対して、例えば10〜20cm/secの低速で攪拌パドルを往復運動させてめっき液を攪拌しながら、一定条件で一定時間の銅めっきを行って、貫通電極用凹部12の内部に銅めっき膜16を充填した時の銅の埋込み形状を示す。
【0065】
この図13(a)及び図13(b)から、アスペクト比が2以上の貫通電極用凹部12を有する基板Wに対してめっきを行う時には、攪拌パドルを低速で往復運動させるよりも高速で往復運動させてめっき液を攪拌させた方が、銅の埋込み速度が速くなることが判る。
【0066】
一方、図14(a)は、アスペクト比が2以下の貫通電極用凹部12にを有する基板Wに対して、例えば40〜80cm/secの高速で攪拌パドルを往復運動させてめっき液を攪拌しながら、一定条件で一定時間の銅めっきを行って、貫通電極用凹部12の内部に銅めっき膜16を充填した時の銅の埋込み形状を示す。図14(b)は、アスペクト比が2以下の貫通電極用凹部12を有する基板Wに対して、例えば10〜20cm/secの低速で攪拌パドルを往復運動させてめっき液を攪拌しながら、一定条件で一定時間の銅めっきを行って、貫通電極用凹部12の内部に銅めっき膜16を充填した時の銅の埋込み形状を示す。
【0067】
この図14(a)及び図14(b)から、アスペクト比が2以下の貫通電極用凹部12を有する基板Wに対してめっきを行う時には、攪拌パドルを高速で往復運動させるよりも低速で往復運動させてめっき液を攪拌させた方が、銅の埋込み速度が速くなることが判る。
【0068】
上記のように、貫通電極用凹部のアスペクト比によって、高速で攪拌パドルを往復運動させてめっき液を攪拌させながらめっきを行った方がめっき速度が速い場合と、低速で攪拌パドルを往復移動させてめっき液を攪拌させてめっきを行った方がめっき速度が速い場合というように、めっき液の攪拌の効果に逆転現象が生じる。
【0069】
この例によれば、前述のように、貫通電極用凹部12の未充填部12aのアスペクト比が、例えば2に達したときに、めっき液の攪拌条件を、比較的高強度のめっき液の攪拌から比較的低強度のめっき液の攪拌に変更することで、例えば図13(a)に示す埋込み性能と図14(b)に示す埋込み性能を組合せて、めっき速度が低下するのを防止することができる。
【0070】
図15(a)は、アスペクト比の異なる貫通電極用凹部を有する基板に対して、攪拌パドルを高速(例えば40〜80cm/sec)で往復運動させてめっき液を攪拌しながらめっきを行った場合(高速攪拌)と、攪拌パドルを低速(例えば10〜20cm/sec)で往復運動させてめっき液を攪拌しながらめっきを行った場合(高速攪拌)における、アスペクト比とファイリング率(%)との関係を示す。ファイリング率(%)は、図15(b)に示すように、貫通電極用凹部に内部に埋込まれためっき膜の高さdに対する貫通電極用凹部の高さhの比(d/h)の百分率で求められる。
【0071】
図10に示すように、貫通電極用凹部12を有する基板Wにめっきを行って、貫通電極用凹部12の内部に銅めっき膜16を成長させると、銅めっき膜16の成長と共に貫通電極用凹部12の未充填部12aのアスペクト比が徐々に小さくなる。図15(a)から、アスペクト比が徐々に小さく貫通電極用凹部を有する基板に対して、めっき液の撹拌条件を一定のままでめっきを行うと、めっき成長が進むに従ってフィリング性能が低下することが判る。アスペクト比が小さい貫通電極用凹部を有する基板に対して、めっき液の撹拌を弱くしたほうがフィリング性がよいので、めっき成長に伴って貫通電極用凹部の未充填部のアスペクト比が小さくなるに従い、めっき液の撹拌を段階的に弱くすることでフィリング性能の低下を抑制でき、短時間でのめっき充填に繋がる。
【0072】
そして、めっき終了後、基板を装着した基板ホルダ160を第2搬送ロボット174bで再度保持してめっき槽186から引き上げてめっき処理を終了する。
【0073】
そして、前述と同様にして、基板ホルダ160を第2水洗装置168bまで搬送し、この水洗槽184bに入れた純水に浸漬させて基板の表面を純水洗浄する。しかる後、この基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、ブロー装置172に搬送し、ここで、不活性ガスやエアーを基板に向けて吹き付けて、基板ホルダ160に付着しためっき液や水滴を除去する。しかる後、この基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、ストッカ164の所定の位置に戻して吊下げ保持する。
【0074】
第2搬送ロボット174bは、上記作業を順次繰り返し、めっきが終了した基板を装着した基板ホルダ160を順次ストッカ164の所定の位置に戻して吊下げ保持する。一方、第2搬送ロボット174aにあっては、めっき処理後の基板を装着しストッカ164に戻した基板ホルダ160を2基同時に把持し、前記と同様にして、基板脱着台162上に載置する。
【0075】
そして、清浄空間114内に配置された第1搬送ロボット128は、この基板脱着台162上に載置された基板ホルダ160から基板を取出し、いずれかの洗浄・乾燥装置124に搬送する。そして、この洗浄・乾燥装置124で、表面を上向きにして水平に保持した基板を、純水等で洗浄し、高速回転させてスピン乾燥させた後、この基板を第1搬送ロボット128でロード・アンロードポート120に搭載した基板カセットに戻して、一連のめっき処理を完了する。
【0076】
前述の例では、攪拌パドル232に対する基板Wの位置の変更と攪拌パドル232の往復移動速度の変更とを組合せて、めっき液の攪拌条件を変化させているが、攪拌パドル232の往復移動速度の変更のみでめっき液の攪拌条件を変化させるようにしてもよい。攪拌パドル232の往復移動速度の変更のみでめっき液の攪拌条件を変化させた場合は、攪拌パドル232による電場遮蔽の影響によって基板表面のめっき膜厚分布が悪くなることがあるが、攪拌パドル232に対する基板Wの位置の変更と攪拌パドル232の往復移動速度の変更とを組合せることで、このような弊害を防止することができる。
【0077】
また、基板近傍のめっき液の攪拌を、攪拌パドルの往復運動ではなく、例えばめっき液の基板表面に向かう噴流で行うようにした場合には、めっき液の噴流速度を高速から低速に変化させることで、めっき液の攪拌条件を変化させようにしてもよい。
【0078】
なお、めっき時に印加する電流として、直流電流やパルス電流などが使用できる。めっき初期は比較的低い電流密度でめっきを行い、貫通電極用凹部の内部がめっき膜で充填されるに従って電流密度を上げることが好ましい。
【0079】
更に図16に示すように、基板Wの表面に、貫通電極用凹部12の周囲を囲むレジストパターン20が形成されており、貫通電極用凹部12の内部をほぼ完全にめっき膜で充填させた後、レジストパターン20の内部にめっき膜を成長させる場合には、比較的高い電流密度でめっきを行って、レジストパターン20の内部にめっき膜を成長させることが好ましい。この場合、貫通電極用凹部12の内部にめっき膜を成膜している間は、めっき液の撹拌を段階的に弱くし、貫通電極用凹部12の内部にめっき膜を完全に充填した後、レジストパターン20の内部に比較的高い電流密度でめっき膜を成膜する際に、金属イオンの供給を促進させるためにめっき液の撹拌を強くすることが望ましい。
【0080】
これまで本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0081】
12 貫通電極用凹部
14 シード膜
16 銅めっき膜
124 洗浄・乾燥装置
126 前処理装置
160 基板ホルダ
164 ストッカ
166 活性化処理装置
168a,168b 水洗装置
170 めっき装置
172 ブロー装置
186 めっき槽
190 移動機構
220 アノード
224 調整板
232 攪拌パドル(攪拌具)
242 パドル駆動部
246 制御部
250 めっき電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に貫通電極用凹部を有する基板とアノードとをめっき液中に互いに対峙させて配置し、
前記基板と前記アノードとの間に電圧を印加しながら前記基板と前記アノードとの間のめっき液を攪拌して前記貫通電極用凹部内へ金属を充填し、
前記貫通電極用凹部内への金属の充填量に相関して、前記基板と前記アノードとの間のめっき液の攪拌条件を変化させることを特徴とするめっき方法。
【請求項2】
前記基板と前記アノードとの間のめっき液の撹拌を基板表面近傍に配置した撹拌具の往復運動で行い、前記貫通電極用凹部内への金属の充填量に相関して、前記攪拌具の往復移動速度を高速から低速に変化させることを特徴とする請求項1記載のめっき方法。
【請求項3】
前記攪拌具の往復移動速度を0〜150cm/secの範囲で変化させることを特徴とする請求項2記載のめっき方法。
【請求項4】
前記基板と前記アノードとの間のめっき液の撹拌を基板表面近傍に配置した撹拌具の往復運動で行い、前記貫通電極用凹部内への金属の充填量に相関して、前記攪拌具と基板表面との距離を変化させながら前記撹拌具の往復移動速度を調整することを特徴とする請求項1記載のめっき方法。
【請求項5】
前記攪拌具と基板表面との距離を5〜50mmの範囲で変化させることを特徴とする請求項4記載のめっき方法。
【請求項6】
前記攪拌具と基板表面との距離を、基板を保持する基板ホルダ及び前記攪拌具の少なくとも一方を互いに近離する方向に移動させて変化させることを特徴とする請求項4または5記載のめっき方法。
【請求項7】
基準値となるパラメータを監視して、該基準値に応じて、前記めっき液の攪拌条件を変化させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のめっき方法。
【請求項8】
めっき液を保持するめっき槽と、
前記めっき槽内のめっき液に浸漬させて配置されるアノードと、
表面に貫通電極用凹部を有する基板を保持して該基板に通電し、基板を前記アノードと対向する位置にめっき液に浸漬させて配置する基板ホルダと、
前記アノードと前記基板ホルダで保持した基板との間に配置され、前記めっき槽内のめっき液を攪拌する攪拌具と、
前記基板と前記アノードとの間に電圧を印加するめっき電源と、
前記貫通電極用凹部内への金属の充填量に相関して、前記攪拌具をめっき処理中に制御する制御部を有することを特徴とするめっき装置。
【請求項9】
前記攪拌具は基板表面近傍に配置され、前記制御部は、前記攪拌具の往復移動速度を制御することを特徴とする請求項8記載のめっき装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記貫通電極用凹部内への金属の充填量に相関して、前記攪拌具の往復移動速度を遅くすることを特徴とする請求項8または9記載のめっき装置。
【請求項11】
めっき液を保持するめっき槽と、
前記めっき槽内のめっき液に浸漬させて配置されるアノードと、
表面に貫通電極用凹部を有する基板を保持して該基板に通電し、基板を前記アノードと対向する位置にめっき液に浸漬させて配置する基板ホルダと、
前記アノードと前記基板ホルダで保持した基板との間に配置され、前記めっき槽内のめっき液を攪拌する攪拌具と、
前記基板と前記アノードとの間に電圧を印加するめっき電源と、
前記攪拌具及び前記基板ホルダの少なくとも一方を互いに近離する方向に移動させる移動機構を有することを特徴とするめっき装置。
【請求項12】
前記攪拌具は基板表面近傍に配置され、前記移動機構を介して前記攪拌具と基板との距離と変化させることでめっき液の攪拌速度を調整することを特徴とする請求項11記載のめっき装置。
【請求項13】
前記貫通電極用凹部内への金属の充填量に相関して、前記攪拌具と基板との距離をめっき処理中に広くすることを特徴とする請求項11または12記載のめっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−255028(P2010−255028A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104199(P2009−104199)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】