アクチュエータの制御装置
【課題】誤った位置カウント値に基づいて出力軸の位置が制御され、出力軸の位置を適切に制御することができなくなってしまうことを抑制することのできるアクチュエータの制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置100は、モータ210の回転に伴って位置センサS4,S5から出力されるパルス信号に基づいて位置カウント値を計数することによって出力軸221の位置を検知している。電子制御装置100は、位置センサS4,S5から出力されるパルス信号に基づいてモータ210が所定の回転位相にあることを判定する。そして、同判定がなされたときに、モータ210に通電されている電流の大きさに基づいて前記判定がモータ210が何回転した状態においてなされたものであるかを判別するとともに、前記所定の回転位相に対応させて記憶させてある基準カウント値に基づいて位置カウント値を更新する。
【解決手段】電子制御装置100は、モータ210の回転に伴って位置センサS4,S5から出力されるパルス信号に基づいて位置カウント値を計数することによって出力軸221の位置を検知している。電子制御装置100は、位置センサS4,S5から出力されるパルス信号に基づいてモータ210が所定の回転位相にあることを判定する。そして、同判定がなされたときに、モータ210に通電されている電流の大きさに基づいて前記判定がモータ210が何回転した状態においてなされたものであるかを判別するとともに、前記所定の回転位相に対応させて記憶させてある基準カウント値に基づいて位置カウント値を更新する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はアクチュエータの制御装置に関し、特にモータの回転運動を出力軸の直線運動に変換して出力するアクチュエータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機関バルブのバルブ特性を変更する可変動弁機構が記載されている。この可変動弁機構は、制御軸を中心軸延伸方向に変位させることによって駆動され、制御軸の変位量に応じて機関バルブの作用角及びリフト量を変更するものである。この可変動弁機構は、具体的には、制御軸が中心軸延伸方向の一方に向かって変位したときに作用角及びリフト量を増大させ、同制御軸が中心軸延伸方向の他方に向かって変位したときに作用角及びリフト量を減少させる。
【0003】
特許文献1に記載の可変動弁機構の制御軸には、モータの回転運動を出力軸の直線運動に変換して出力するアクチュエータが接続されている。そして、この可変動弁機構を備える内燃機関にあっては、アクチュエータのモータを制御して同アクチュエータの出力軸に連結された可変動弁機構の制御軸を中心軸延伸方向に変位させることによって機関バルブの作用角及びリフト量を制御する。
【0004】
このような内燃機関におけるアクチュエータの制御装置には、モータの回転に伴って所定の回転角毎にパルス信号を出力する位置センサが設けられている。そして、アクチュエータの制御装置は、この位置センサから出力されるパルス信号を計数して位置カウント値とし、この位置カウント値に基づいて制御軸の位置を把握している。すなわち、アクチュエータの出力軸に連結された制御軸の変位量はアクチュエータのモータの回転角に応じて変化するため、この関係を利用してモータの回転角及び回転方向に対応して増減する位置カウント値に基づいて基準位置からの制御軸並びに出力軸の変位量を推定する。そして、このように推定される基準位置からの制御軸並びに出力軸の相対的な変位量に基づいて制御軸の位置並びに出力軸の位置を検知する。
【0005】
特許文献1に記載の内燃機関にあっては、こうして検知される制御軸の位置並びに出力軸の位置を、目標とする作用角及びリフト量に対応する位置に近づけるようにアクチュエータのモータをフィードバック制御することにより、機関バルブの作用角及びリフト量を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008‐223705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、機関停止中のようにアクチュエータの制御装置が稼働していないときには、制御装置による位置カウント値の計数が行われない。そのため、アクチュエータの制御装置が稼働していないときに可変動弁機構の制御軸及びアクチュエータの出力軸が何らかの理由によって中心軸延伸方向に変位した場合には、その変位が位置カウント値に反映されず、実際の制御軸の位置並びに出力軸の位置と、制御装置によって把握されている位置カウント値とが対応しなくなってしまう。
【0008】
実際の制御軸の位置並びに出力軸の位置と、制御装置によって把握されている位置カウント値とが対応しなくなると、次に内燃機関が運転されるときに誤った位置カウント値に基づいて制御軸の位置並びに出力軸の位置が制御され、適切に作用角及びリフト量を制御することができなくなってしまう。その結果、最悪の場合には上死点近傍まで上昇したピストンと開弁した機関バルブとが接触してしまうバルブスタンプが発生するおそれもある。
【0009】
尚、上記のように、誤った位置カウント値に基づいて出力軸の位置が制御されてしまうようになる課題は、上記のような可変動弁機構を駆動するアクチュエータのみならず、モータの回転角に基づいて位置カウント値を計数し、基準位置に対する出力軸の相対的な位置を算出するアクチュエータの制御装置にあっては、同様に生じ得るものである。
【0010】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、誤った位置カウント値に基づいて出力軸の位置が制御され、出力軸の位置を適切に制御することができなくなってしまうことを抑制することのできるアクチュエータの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、出力軸を中心軸延伸方向の一方に変位させるほど同出力軸に作用する反力が増大する状態で使用され、モータの回転運動を出力軸の直線運動に変換して出力するアクチュエータの制御装置であり、前記モータの回転に伴って位置センサから出力されるパルス信号に基づいて位置カウント値を計数することによって前記出力軸の位置を検知しているアクチュエータの制御装置において、前記モータが所定の回転位相にあることを判定する回転位相判定手段と、前記判定がなされたときに前記モータに通電されている電流の大きさに基づいて前記判定が前記モータが何回転した状態においてなされたものであるかを判別する回転回数判別手段とを備え、前記所定の回転位相にあることが判定されたときに、前記位置カウント値を、前記回転回数判別手段によって判別される回転回数毎に前記所定の回転位相に対応させて記憶させてある基準カウント値に基づいて更新することをその要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、所定の回転位相にあることが判定されたときに、出力軸の位置と位置カウント値との間にずれが生じていない状態において前記所定の回転位相に対応させて予め記憶させてある基準カウント値、すなわち正しい位置カウント値に対応する値として記憶されている基準カウント値に基づいて、位置カウント値が更新されるようになる。
【0013】
そのため、制御装置によって把握されている位置カウント値が実際の出力軸の位置に対応する値からずれている場合、すなわち誤った位置カウント値に基づいて出力軸の位置が制御されているときには、モータの回転位相が所定の回転位相になったときに、位置カウント値が基準カウント値に基づいて更新されるようになる。したがって、モータの回転位相が前記所定の回転位相になったときに、位置カウント値と実際の出力軸の位置とのずれが解消されるようになる。
【0014】
尚、出力軸の位置を制御するときにモータが複数回回転する場合には、モータの回転位相が所定の回転位相にある状態がモータの回転回数の分だけ複数回発生することとなる。そのため、出力軸の位置を制御するときにモータを複数回回転させる場合には、モータが所定の回転位相にあることが判定されたときに、その判定がモータが何回転した状態においてなされたものであるのかを判別しなければ、その判定に基づいて出力軸の位置を的確に推定することができない。
【0015】
これに対して、上記請求項1に記載の発明は、所定の回転位相にあることが判定されたときに、モータに通電されている電流の大きさに基づいてその判定がモータが何回転した状態においてなされたものであるかを判別する回転回数判別手段を備えている。
【0016】
出力軸を中心軸延伸方向の一方に変位させるほど出力軸に作用する反力が増大する状態で使用されるアクチュエータにあっては、一定の電圧を印可して出力軸の位置を目標とする位置にフィードバック制御するようにモータを駆動する場合に、出力軸が中心軸延伸方向の一方に変位して出力軸に作用する反力が増大するほど、モータに通電される電流の値が大きくなる。
【0017】
そのため、モータに通電される電流の値は、反力が大きくなる方向に出力軸の位置が変位しているときほど大きくなり、モータに通電されている電流の値と出力軸の位置、すなわちモータに通電されている電流の値とモータの回転回数との間には一定の相関関係が生じることとなる。したがって、モータが所定の回転位相にあることが判定されたときにモータに通電されている電流の大きさを参照すれば、その電流の大きさに基づいてモータの回転回数を推定することができる。すなわち、その電流が大きいときほど出力軸に作用する反力が大きくなる方向に向かってモータがより多く回転された状態であることを推定することができる。
【0018】
したがって、回転回数判別手段を備える上記請求項1に記載の発明によれば、モータが所定の回転位相にあることが判定されたときに、その判定がモータが何回転した状態においてなされたものであるかを判別することができ、モータの回転回数に対応した基準カウント値に基づいて位置カウント値を適切に更新することができる。
【0019】
要するに、上記請求項1に記載の発明によれば、モータが所定の回転位相にあることが判定されたときに、正しい位置カウント値に対応する基準カウント値に基づいて位置カウント値が的確に更新されるようになる。したがって、誤った位置カウント値に基づいて出力軸の位置が制御され、出力軸の位置を適切に制御することができなくなってしまうことを抑制することができるようになる。
【0020】
尚、アクチュエータ駆動中に検出される電流の値は、アクチュエータの使用条件等によってある程度ばらつく可能性がある。
これに対して、請求項2に記載されているように、モータに通電される電流の大きさに対して所定の幅を有して広がる判定領域を、モータの回転回数に対応するように1つずつ設定しておく構成を採用すれば、所定の回転位相にあることが判定されたときに通電されている電流の大きさが、複数設定された判定領域のうち、いずれの判定領域に属しているかを監視することにより、その判定が、モータが何回転した状態においてなされたものであるかを的確に推定することができるようになる。すなわち、検出される電流の大きさにある程度のばらつきが生じる場合であっても、モータに通電されている電流の大きさに基づいて、回転位相判定手段によってなされた判定がモータが何回転した状態においてなされたものであるかを的確に推定することができるようになる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、前記回転位相判定手段として、一定の位相毎にN極とS極とが切り替わるように交互に配設される複数の小磁極と、前記小磁極よりも大きな位相を占める1個の大磁極とをN極とS極とが交互に並ぶように円形に配設したロータと、前記各磁極と対向可能な位置に位相をずらして配設された2つの前記位置センサとを備え、前記モータの回転に伴って2つの前記位置センサからそれぞれ出力されるパルス信号に基づいて前記位置カウント値を計数するとともに、前記大磁極が前記位置センサを通過するときに検知されるパルス信号の変化に基づいて前記モータの回転位相が所定の回転位相にあることを判定する請求項1又は請求項2に記載のアクチュエータの制御装置である。
【0022】
回転位相判定手段の構成として具体的には、請求項3に記載されているように、ロータにおける所定の回転位相に対応する部位の磁極の配列を他の部位の磁極の配列と異ならせる構成を採用すればよい。こうした構成を採用すれば、位置センサによって出力されるパルス信号の変化態様が、所定の回転位相において他の回転位相と異なるようになり、パルス信号の変化を監視することによってモータの回転位相が所定の回転位相にあることを判定することができるようになる。
【0023】
そのため、モータの回転位相を監視するために新たなセンサ等を設けることなく、モータの回転位相が所定の回転位相にあるか否かを判定することができるようになり、新たにセンサを設けることによるコストの増大や、センサの取り付けにかかる製造工程の煩雑化を抑制することができる。
【0024】
ところで、制御軸を中心軸延伸方向に駆動することにより、機関バルブの作用角及びリフト量を変更する内燃機関の可変動弁機構にあっては、機関バルブの作用角及びリフト量を大きくする方向に制御軸を駆動するほど、バルブスプリングの付勢力による反力が大きくなるため、制御軸に作用する反力が大きくなる。
【0025】
すなわち、こうした内燃機関の可変動弁機構の制御軸を駆動するアクチュエータにあっては、出力軸を中心軸延伸方向の一方に変位させるほど同出力軸に作用する反力が増大するようになる。
【0026】
そこで、具体的には、上記請求項4に記載されているように、制御軸を中心軸延伸方向に駆動することにより、機関バルブの作用角及びリフト量を変更する内燃機関の可変動弁機構に接続され、出力軸と連結した制御軸を中心軸延伸方向に駆動する可変動弁機構のアクチュエータを制御する制御装置として、上記請求項1〜3のアクチュエータの制御装置を適用することができる。
【0027】
尚、モータに通電されている電流の大きさと基準カウント値との関係は、アクチュエータや可変動弁機構の経年変化によって変化してしまうことがある。そのため、モータに通電されている電流の大きさと基準カウント値の大きさとの関係を利用してモータの回転回数を判別する構成を採用している場合には、位置カウント値にずれが生じていない状態のときに出力軸を駆動し、電流の大きさと基準カウント値との関係を学習しなおすことが望ましい。
【0028】
また、可変動弁機構の制御軸に作用する反力は、機関運転状態に応じて変化する。そのため、請求項4に記載されているように機関バルブの作用角及びリフト量を変更する内燃機関の可変動弁機構を駆動するアクチュエータを制御するアクチュエータの制御装置として請求項1〜3に記載の発明を適用する場合には、一定の運転状態になっているときに電流の大きさと基準カウント値との関係を学習しなおすようにすることが望ましい。
【0029】
そこで、請求項5に記載の発明にあっては、機関運転状態が、一定の運転状態になっているときに、モータに通電されている電流の大きさと前記所定の回転位相に対応させて記憶させてある基準カウント値との関係を学習しなおすようにしている。
【0030】
このように一定の運転状態になっているときに電流の大きさと基準カウント値との関係を学習しなおす構成を採用すれば、同一の運転状態であることを条件に学習が行われるようになり、機関運転状態の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができるようになる。
【0031】
尚、内燃機関に供給されている作動油の油温が低いほど、アクチュエータ並びに可変動弁機構、更には内燃機関の動弁系等に供給されているその作動油の粘性が高くなる。そのため、内燃機関に供給されている作動油の油温が低いときほど、これらを駆動する際の抵抗が大きくなる。したがって、基準カウント値に対応する位置に出力軸を駆動したときにモータに通電される電流は、内燃機関に供給されている作動油の油温が低いときほど、大きくなる。
【0032】
そのため、請求項6に記載されているように、電流の大きさと基準カウント値との関係を学習するための一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータとして、少なくとも内燃機関に供給される作動油の温度を監視する構成を採用することが望ましい。
【0033】
こうした構成を採用すれば、少なくとも作動油の温度が略等しい状態であることを条件に学習を実行することにより、作動油の温度の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができるようになる。
【0034】
また、機関回転速度が高く、単位時間当りに機関バルブが開弁される回数が多いときほど、バルブスプリングの付勢力によって可変動弁機構の制御軸並びにアクチュエータの出力軸に作用する反力は大きくなる。そのため、機関回転速度が高いときほど、アクチュエータの出力軸に作用する反力は大きくなり、基準カウント値に対応する位置に出力軸を駆動したときにモータに通電される電流が大きくなる。
【0035】
そのため、請求項7に記載されているように、電流の大きさと基準カウント値との関係を学習するための一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータとして、少なくとも機関回転速度を監視する構成を採用することが望ましい。
【0036】
こうした構成を採用すれば、少なくとも機関回転速度が略等しい状態であることを条件に学習を実行することにより、機関回転速度の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができるようになる。
【0037】
また、アクチュエータの出力軸並びに可変動弁機構の制御軸の変位速度が速いときには、慣性力に逆らって速い速度で出力軸並びに制御軸を駆動していることになるため、変位速度が速いときほど、出力軸を駆動するために消費される電力は大きくなり、基準カウント値に対応する位置まで出力軸を駆動したときにモータに通電される電流が大きくなる。
【0038】
そのため、請求項8に記載されているように、電流の大きさと基準カウント値との関係を学習するための一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータとして、少なくとも出力軸並びに制御軸の変位速度を監視する構成を採用することが望ましい。
【0039】
こうした構成を採用すれば、少なくとも出力軸並びに制御軸の変位速度が略等しい状態であることを条件に学習を実行することにより、出力軸並びに制御軸の変位速度の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができるようになる。
【0040】
尚、出力軸と制御軸は一体に連結されており、同時に同量だけ変位するため、双方の変位速度を監視しなくても、どちらか一方の変位速度を監視すれば出力軸並びに制御軸の変位速度を監視することができる。
【0041】
前記所定の回転位相にあることが判定されたときに、基準カウント値に基づいて位置カウント値を更新する具体的な態様としては、請求項9に示されるように、回転位相判定手段によってモータの回転位相が所定の回転位相にあることが判定される度に、位置カウント値を所定の回転位相に対応する基準カウント値に一致させるように、基準カウント値に基づいて位置カウント値を更新する構成を採用することができる。
【0042】
またその他、請求項10に示されるように、回転位相判定手段によってモータの回転位相が所定の回転位相にあることが判定される度に、同制御装置によって把握されている位置カウント値と基準カウント値とを比較し、その乖離が大きいときに、位置カウント値を所定の回転位相に対応する基準カウント値に一致させるように、基準カウント値に基づいて位置カウント値を更新する構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の一実施形態にかかるアクチュエータによって駆動される可変動弁機構が搭載された内燃機関の断面図。
【図2】同実施形態にかかる可変動弁機構の内部構造を示す破断斜視図。
【図3】同実施形態にかかるアクチュエータの構成と、同アクチュエータを制御する電子制御装置、並びに同アクチュエータによって駆動される可変動弁機構の関係を示す模式図。
【図4】同実施形態にかかるアクチュエータの電気角センサ及び位置センサの配設態様を示す模式図。
【図5】同実施形態にかかる電子制御装置によって計数される電気角カウント値及び位置カウント値の遷移態様を示す説明図。
【図6】電気角センサの出力するパルス信号と電気角カウント値との関係を示す表。
【図7】位置センサの出力するパルス信号と位置カウント値との関係を示す表。
【図8】位置カウント値更新ルーチンにかかる一連の処理の流れを示すフローチャート。
【図9】電流の大きさに基づいて更新に使用する基準カウント値を選択する方法を説明する説明図。
【図10】変更例としての位置カウント値更新ルーチンにかかる一連の処理の流れを示すフローチャート。
【図11】位置カウント値と出力軸の変位量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、この発明にかかるアクチュエータの制御装置を、内燃機関の可変動弁機構を駆動するアクチュエータを制御する電子制御装置として具体化した一実施形態について、図1〜9を参照して説明する。
【0045】
図1は、本実施形態にかかるアクチュエータ200によって駆動される可変動弁機構300が搭載された内燃機関の断面図である。図1に示されるように可変動弁機構300が搭載されたこの内燃機関の機関本体1は、シリンダブロック10とシリンダヘッド20とを組み合わせることにより構成されている。
【0046】
シリンダブロック10の内部に形成されたシリンダ11には、ピストン12が摺動可能に収容されている。そして、シリンダブロック10の上部にはシリンダヘッド20が組み付けられており、シリンダ11の内周面、ピストン12の上面、そしてシリンダヘッド20の下面によって燃焼室13が区画形成されている。
【0047】
シリンダヘッド20には、燃焼室13と連通する吸気ポート21及び排気ポート22が形成されている。吸気ポート21は図示しない吸気マニホールドと接続されて吸気通路30の一部を構成している。また、排気ポート22は、図示しない排気マニホールドと接続されて排気通路40の一部を構成している。
【0048】
図1に示されるようにシリンダヘッド20には、吸気通路30と燃焼室13とを連通・遮断する吸気バルブ31と、排気通路40と燃焼室13とを連通・遮断する排気バルブ41とが設けられている。各バルブ31,41にはリテーナ23が固定されているとともに、シリンダヘッド20とこれらリテーナ23との間にはバルブスプリング24が圧縮された状態で設けられている。これにより、各バルブ31,41は、バルブスプリング24の付勢力によって閉弁方向にそれぞれ付勢されている。
【0049】
また、シリンダヘッド20の内部には、各バルブ31,41にそれぞれ対応するようにラッシュアジャスタ25が設けられている。そして、このラッシュアジャスタ25と各バルブ31,41との間にはロッカアーム26が架設されている。図1に示されるように、このロッカアーム26は、その一端がラッシュアジャスタ25によって下方から支持されているとともに、他端が各バルブ31,41の基端部に当接されている。
【0050】
更に、シリンダヘッド20には、各バルブ31,41を開弁方向に駆動する吸気カムシャフト32及び排気カムシャフト42がそれぞれ回動可能に支持されている。図1の上方に示されるように吸気カムシャフト32には吸気カム32aが形成されており、排気カムシャフト42には排気カム42aが形成されている。
【0051】
図1の上方右側に示されるように排気カム42aの外周面は、排気バルブ41に当接しているロッカアーム26のローラ26aに当接されている。これにより、図1の排気カムシャフト42の右上に矢印で示されているように機関運転時に排気カムシャフト42が回転すると、排気カム42aの作用によりロッカアーム26がラッシュアジャスタ25によって支持された部分を支点として揺動する。その結果、排気バルブ41がロッカアーム26によって開弁方向にリフトされるようになる。
【0052】
一方、図1の上方左側に示されるように、吸気カム32aと、吸気バルブ31に当接しているロッカアーム26との間には可変動弁機構300が配設されている。この可変動弁機構300は入力アーム311と出力アーム321とを有しており、これら入力アーム311及び出力アーム321はシリンダヘッド20に固定された支持パイプ330を中心に揺動可能に支持されている。
【0053】
ロッカアーム26は、バルブスプリング24の付勢力によって出力アーム321側に向かって下方から付勢され、同ロッカアーム26の中間部分に設けられたローラ26aが下方から出力アーム321の外周面に当接している。
【0054】
また、可変動弁機構300の外周面には凸部313が設けられており、この凸部313がシリンダヘッド20内に固定されたスプリング50の付勢力により、図1の左側に矢印W1で示されているように付勢されている。これにより、可変動弁機構300は、支持パイプ330を中心に矢印W1で示されるように左回りに付勢され、入力アーム311の先端に設けられたローラ311aが吸気カム32aの外周面に当接するようになっている。
【0055】
したがって、図1における吸気カムシャフト32の右下に矢印で示されるように機関運転時に吸気カム32aが回転すると、吸気カム32aの作用により可変動弁機構300が支持パイプ330を中心に揺動するようになる。その結果、出力アーム321の作用によりロッカアーム26がラッシュアジャスタ25によって支持されている部分を支点として揺動するようになり、吸気バルブ31がロッカアーム26によって開弁方向にリフトされるようになる。
【0056】
可変動弁機構300の支持パイプ330には、制御軸340がその中心軸延伸方向に沿って移動可能に挿入されている。可変動弁機構300にあっては、この制御軸340を中心軸延伸方向に変位させることにより、支持パイプ330を中心とした入力アーム311と出力アーム321との相対位相差、すなわち図1に示される角度θを変更することができるようになっている。
【0057】
次に、図2を参照して可変動弁機構300の構成について詳しく説明する。尚、図2は可変動弁機構300の内部構造を示す破断斜視図である。シリンダヘッド20に固定された支持パイプ330の内部には、図2に示されるように制御軸340が支持パイプ330の中心軸延伸方向に移動可能に挿入されている。また、支持パイプ330には円筒状のスライダ350が支持パイプ330の中心軸延伸方向に移動可能に外嵌されている。
【0058】
この円筒状のスライダ350の内壁には、その周方向に沿って延伸する溝353が形成されている。そして、この溝353には制御軸340に形成された凹部(図示略)にその基端部が挿入された係止ピン341が嵌合されている。また、支持パイプ330の管壁にはその中心軸延伸方向に沿って延びる長孔331が形成されており、係止ピン341はこの長孔331を通じてスライダ350の溝353に係止されている。これにより、スライダ350は支持パイプ330及び制御軸340を中心に自由に回動し、且つ制御軸340の中心軸延伸方向の変位に連動して移動するようになっている。
【0059】
また、スライダ350の外周面には、その中央部分にヘリカルスプライン351が形成されるとともに、その両端部分にヘリカルスプライン351と逆向きに歯すじが傾斜したヘリカルスプライン352が形成されている。尚、図2にあっては説明の便宜上、スライダ350の右側部分のみを図示している。
【0060】
このスライダ350には、図2に示されるように入力部310と、これを挟むように配設される一対の出力部320とが外嵌されている。入力部310の内周面には、ヘリカルスプライン312が形成されており、このヘリカルスプライン312がスライダ350のヘリカルスプライン351と噛合している。また、入力部310の外周面には、径方向に突出する一対の入力アーム311が形成されており、これら一対の入力アーム311の間にはローラ311aが回動自在に支持されている。
【0061】
一方、一対の出力部320の内周面にはヘリカルスプライン322が形成されており、このヘリカルスプライン322がスライダ350のヘリカルスプライン352とそれぞれ噛合している。また、出力部320の外周面には、径方向に突出する出力アーム321がそれぞれ形成されている。
【0062】
このように形成された可変動弁機構300にあっては、制御軸340がその中心軸延伸方向に沿って変位すると、これに連動してスライダ350が中心軸延伸方向に変位する。スライダ350の外周面に形成されたヘリカルスプライン351,352はその歯すじの進行方向がそれぞれ異なっており、入力部310及び出力部320の内周面に形成されたヘリカルスプライン312,322とそれぞれ噛合されている。そのため、スライダ350がその中心軸延伸方向に変位すると、入力部310と出力部320はそれぞれ逆の方向に回動する。その結果、入力アーム311と出力アーム321との相対位相差が変更され、吸気バルブ31の作用角及びリフト量が変更される。
【0063】
具体的には、図2示される矢印Hi方向に制御軸340を変位させると、制御軸340とともにスライダ350がHi方向に移動する。それに伴って入力アーム311と出力アーム321との相対位相差、すなわち図1における角度θが大きくなり、吸気バルブ31の作用角及びリフト量が大きくなる。一方で、図2に示される矢印Lo方向に制御軸340を変位させると、制御軸340とともにスライダ350がLo方向に移動するのに伴って入力アーム311と出力アーム321との相対位相差が小さくなり、吸気バルブ31の作用角及びリフト量が小さくなる。
【0064】
本実施形態にかかる内燃機関にあっては、機関運転中に制御軸340を中心軸延伸方向に変位させ、可変動弁機構300を通じて吸気バルブ31の作用角及びリフト量を変更する。
【0065】
次に、制御軸340を中心軸延伸方向に変位させるアクチュエータ200の構成について、図3及び図4を参照して説明する。尚、図3は本実施形態にかかるアクチュエータ200の構成と、同アクチュエータ200を制御する電子制御装置100、並びに同アクチュエータ200によって駆動される可変動弁機構300の関係を示す模式図である。
【0066】
図3に示されるように、アクチュエータ200は、マグネット211とステータ212とから構成されるモータ210と、モータ210の回転運動を出力軸221の直線運動に変換する運動変換機構220とを含んで構成されている。可変動弁機構300の制御軸340は、その先端部がアクチュエータ200の出力軸221と留め具222によって連結されている。
【0067】
これにより、モータ210を所定の範囲、例えば10回転分の回転角範囲(0〜3600°)内で回転させることにより、モータ210の回転運動が運動変換機構220を通じて直線運動に変換され、出力軸221を介して制御軸340に入力されるようになる。その結果、制御軸340が出力軸221とともに中心軸延伸方向に変位して可変動弁機構300が駆動されるようになる。
【0068】
ちなみに、モータ210を正回転させると、制御軸340が図3の矢印Hi方向に変位し、上述したように可変動弁機構300の入力アーム311と出力アーム321との相対位相差が大きくなり、吸気バルブ31の作用角及びリフト量が増大する。一方で、モータ210を逆回転させると、制御軸340が図3の矢印Lo方向に変位し、入力アーム311と出力アーム321との相対位相差が小さくなり、吸気バルブ31の作用角及びリフト量が減少する。
【0069】
尚、制御軸340の矢印Hi方向への変位及び矢印Lo方向への変位は、制御軸340に設けられた図示しないストッパによってモータ210が10回転する分の範囲で規制されるようになっており、このストッパがシリンダヘッド20の一部に当接する位置が制御軸340の可動限界位置となっている。
【0070】
このように本実施形態にかかる内燃機関にあっては、アクチュエータ200を駆動して出力軸221に連結された制御軸340をその中心軸延伸方向に変位させることにより、吸気バルブ31の作用角及びリフト量を変更することができるようになっている。
【0071】
図3の左側に示されるようにアクチュエータ200を駆動するモータ210は、運動変換機構220の外周面に固定されたマグネット211と、電子制御装置100からの駆動指令に基づいて励磁されるステータ212とを含んで構成されている。
【0072】
そして、運動変換機構220の後端には、円盤状のロータ213が固定されている。図4に示されるように、このロータ213には、4つのN極と4つのS極とが等角度間隔で交互に並ぶように円形に形成された8極の多極マグネット214と、23個のN極と23個のS極とがそれぞれ交互に並ぶように円形に形成された46極の多極マグネット215とが同心円状に固定されている。
【0073】
尚、8極の多極マグネット214は、図4に示されるようにN極とS極とが45°毎に交互に切り替わるように全周に亘って均一に磁極が配設されている。これに対して、46極の多極マグネット215にあっては、図4に示されるように7.5°毎にN極とS極が交互に切り替わるように配設された45個の小磁極215aと、小磁極215aを3つ並べた大きさを有する1つの大磁極215bとがN極とS極とが交互に並ぶように配設されている。そのため、小磁極215aが交互に配設されている部分にあっては7.5°毎にN極とS極とが切り替わる一方、大磁極215bが配設されている部分にあっては、S極が22.5°に亘って広がっている。
【0074】
図3及び図4に示されるようにアクチュエータ200における多極マグネット214と対向する部位には電気角センサS1,S2,S3が互いに30°位相をずらして配設されている。一方、アクチュエータ200における多極マグネット215と対向する部位には位置センサS4,S5が互いに3.75°位相をずらして配設されている。
【0075】
これにより、モータ210の回転に伴ってロータ213が回転すると、各センサS1〜S5にN極とS極とが交互に対向するようになり、それぞれのセンサS1〜S5がN極に対応するハイ信号「H」とS極に対応するロー信号「L」とを交互に出力するようになる。
【0076】
図3に示されるように、これら電気角センサS1,S2,S3及び位置センサS4,S5は、内燃機関を統括的に制御する電子制御装置100に接続されており、これら電気角センサS1,S2,S3及び位置センサS4,S5から出力されるパルス信号は電子制御装置100に取り込まれる。そして、電子制御装置100は、これらのパルス信号に基づいてアクチュエータ200のモータ210を制御するとともに、内燃機関の各部を制御する。
【0077】
電子制御装置100は、中央演算処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、記憶データを書き換え可能な不揮発性メモリであるEEPROM等の各種メモリを備えている。
【0078】
電子制御装置100には、上記各センサS1〜S5の他に、運転者のアクセル操作量ACCPを検出するアクセルポジションセンサ111、吸気通路30を通じて燃焼室13に吸入される吸入空気量GAを検出するエアフロメータ112、機関回転速度NEを検出するクランクポジションセンサ113が接続されている。また、電子制御装置100には、吸気カムシャフト32の回転位相を検出するカムポジションセンサ114や、機関冷却水温THWを検出する水温センサ115等も接続されている。
【0079】
電子制御装置100は、これら各種センサ111〜115の出力信号を取り込み、取り込まれた出力信号に基づいて燃料噴射量や、点火時期の制御にかかる演算を実行するとともに、吸気バルブ31の作用角及びリフト量を機関運転状態に適したものとすべく、可変動弁機構300の駆動制御、すなわちアクチュエータ200の駆動制御を実行する。
【0080】
以下、アクチュエータ200の駆動制御について図5〜7を参照して説明する。上述したように電気角センサS1,S2,S3は互いに30°位相をずらして配設されている。そのため、モータ210の回転に伴って各電気角センサS1,S2,S3からは図5の上段に示されるようにハイ信号「H」とロー信号「L」とが交互に切り替わるパルス信号が回転角30°に相当する分だけずれた状態で出力される。
【0081】
電子制御装置100は、各電気角センサS1,S2,S3からのパルス信号のパターンに基づいて電気角カウント値Ceを算出する。具体的には、図6に示されるように各々電気角センサS1,S2,S3からハイ信号「H」とロー信号「L」のうち何れの信号が出力されているかに基づいて、電気角カウント値Ceを「0」,「1」,「2」,「3」,「4」,「5」のうちの何れかに設定する。
【0082】
尚、図6の表は、モータ210が正回転しているときには電気角カウント値Ceが「0」→「1」→「2」→「3」→「4」→「5」→「0」といった順序で順方向に変化する一方、逆回転しているときには「5」→「4」→「3」→「2」→「1」→「0」→「5」といった順序で逆方向に変化するように設定されている。これにより、図5に示されるようにモータ210の回転角が15°変化する度に電気角カウント値Ceが変化し、電気角カウント値Ceの値はモータ210の回転に伴って階段状に変化するようになる。
【0083】
尚、この電気角カウント値Ceの値「0」,「1」,「2」,「3」,「4」,「5」は、モータ210の通電相への通電パターンに対応している。すなわち、本実施形態にあっては、N極とS極とが交互になるように8つの磁極が円形に配設されたロータ213と、3つの電気角センサS1,S2,S3とによって8極3相電気角カウンタを構成している。そして、同電気角カウンタによって計数される電気角カウント値Ceに基づいてモータ210の通電相を切り替えてモータ210を制御するようにしている。
【0084】
尚、電気角カウンタの構成上、3つの電気角センサS1,S2,S3の全てがロー信号「L」又はハイ信号「H」を出力することはあり得ないため、図6に示されるように3つの電気角センサS1,S2,S3の全てがロー信号「L」又はハイ信号「H」を出力した場合には、電子制御装置100は電気角カウンタに異常が発生している旨を判定する。
【0085】
一方、位置センサS4,S5は、上述したように互いに3.75°位相をずらして配設されている。そのため、モータ210の回転に伴って各位置センサS4,S5からは図5の中段に示されるようにハイ信号「H」とロー信号「L」とが交互に切り替わるパルス信号が互いに回転角3.75°に相当する分だけずれた状態で出力される。
【0086】
電子制御装置100は、各位置センサS4,S5からのパルス信号の出力パターンに基づいて位置カウント値Cpを計数する。具体的には、図7に示されるように位置センサS4,S5の一方のセンサの出力信号が立ち上がりエッジ「↑」あるいは立ち下がりエッジ「↓」のいずれであるか、また他方のセンサの出力信号がハイ信号「H」あるいはロー信号「L」のいずれであるかに応じて、位置カウント値Cpに「+1」または「−1」を加算することにより、位置カウント値Cpを計数する。
【0087】
こうして位置センサS4,S5のパルス信号に基づいて計数される位置カウント値Cpは、図5の下段に示されるようにモータ210が正回転しているときにはモータ210の駆動に伴って増大する一方、逆回転しているときにはモータ210の駆動に伴って減少するようになる。そのため、電子制御装置100は、この位置カウント値Cpの値に基づいて基準位置からの出力軸221の変位量を検知し、出力軸221並びに制御軸340の位置を把握している。
【0088】
すなわち、アクチュエータ200の出力軸221に連結された制御軸340の変位量はアクチュエータ200のモータ210の回転角に応じて変化するため、この関係を利用してモータ210の回転角及び回転方向に対応して増減する位置カウント値Cpに基づいて基準位置からの制御軸340並びに出力軸221の変位量を推定する。
【0089】
そして、このように推定される基準位置からの制御軸340並びに出力軸221の相対的な変位量に基づいて制御軸340の位置並びに出力軸221の位置を検知する。
電子制御装置100は、こうして検知される制御軸340の位置を、目標とする作用角及びリフト量に対応する位置に近づけるようにアクチュエータ200のモータ210をフィードバック制御することにより、吸気バルブ31の作用角及びリフト量を制御する。
【0090】
ところで、機関停止中のように電子制御装置100への通電が行われておらず、電子制御装置100が稼働していないときには、電子制御装置100による位置カウント値Cpの計数が行われない。そのため、電子制御装置100が稼働していないときに可変動弁機構300の制御軸340が何らかの理由によって中心軸延伸方向に変位した場合には、その変位が位置カウント値Cpに反映されず、実際の制御軸340の位置と、電子制御装置100によって把握されている位置カウント値Cpとが対応しなくなってしまう。
【0091】
尚、可変動弁機構300の制御軸340には吸気バルブ31を閉弁方向に付勢するバルブスプリング24の付勢力が常に作用している。そのため、潤滑油の温度が高く、可変動弁機構300におけるフリクションが低下している場合や、機関停止状態が長時間継続した場合等には、バルブスプリング24の付勢力によって制御軸340が作用角及びリフト量を減少させる方向(Lo方向)に駆動され、上記のように機関停止中に制御軸340が変位してしまうことがある。
【0092】
実際の制御軸340の位置と、電子制御装置100によって把握されている位置カウント値Cpとが対応しなくなると、次に内燃機関が運転されるときに誤った位置カウント値Cpに基づいて制御軸340の位置が制御され、適切に作用角及びリフト量を制御することができなくなってしまう。その結果、最悪の場合には上死点近傍まで上昇したピストン12と開弁した吸気バルブ31とが接触してしまうバルブスタンプが発生するおそれもある。
【0093】
そこで、本実施形態にかかる内燃機関にあっては、機関運転中にアクチュエータ200のモータ210が所定の回転位相になったときに、位置カウント値Cpを、予めその回転位相に対応する位置カウント値Cpとして記憶されている基準カウント値Cp(N)に更新するようにしている。
【0094】
尚、本実施形態のアクチュエータ200にあっては、位置センサS4,S5から出力されるパルス信号に基づいてモータ210の回転位相が所定の回転位相にあることを判定するために、多極マグネット215を全周に亘って磁極が均一に配列されたものとせずに、上述したように小磁極215aよりも大きな大磁極215bを含んだ構成にしている。これにより、図5の中央に示されるようにこの大磁極215bが位置センサS4,S5を通過するときには、位置センサS4,S5から出力されるパルス信号が他の回転位相における変化態様と異なった変化態様を示すようになる。
【0095】
本実施形態にあっては、このように位置センサS4,S5から出力されるパルス信号が他の回転位相における変化態様とは異なった変化態様を示すようになる回転位相、すなわち大磁極215bが位置センサS4,S5を通過するときの回転位相を、所定の回転位相としての基準位相にしている。
【0096】
そして、モータ210の回転位相がこの基準位相にあると判定されたときに、この基準位相に対応する正しい位置カウント値Cpの値として出力軸221の位置と位置カウント値Cpとの間にずれが生じていない状態のときに予め記憶させておいた基準カウント値Cp(N)を読み出す。そして、この基準カウント値Cp(N)に基づいて位置カウント値Cpを更新する。
【0097】
尚、本実施形態のアクチュエータ200にあっては、可変動弁機構300の制御に伴って、モータ210が10回転する分の範囲内でアクチュエータ200が制御される。そのため、可変動弁機構300の制御に伴ってモータ210の回転位相が基準位相にある状態がモータ210の回転回数の分だけ最大で10回発生することとなる。そのため、モータ210が基準位相にあることが判定されたときに、その判定がモータ210が何回転した状態においてなされたものであるのかを判別しなければ、その判定に基づいて出力軸221の位置を的確に推定することができない。
【0098】
これに対して、本実施形態にあっては、基準位相にあることが判定されたときに、モータ210に通電されている電流の大きさに基づいて、その判定がLo方向における可動限界位置からモータ210が何回転した状態においてなされたものであるかを判別するようにしている。
【0099】
上述したように、可変動弁機構300の制御軸340には吸気バルブ31を閉弁方向に付勢するバルブスプリング24の付勢力が常に作用しているため、本実施形態のアクチュエータ200にあっては、出力軸221をHi方向に変位させるほど出力軸221に作用する反力が増大するようになる。そのため、出力軸221の位置を目標とする位置にフィードバック制御するようにモータ210を駆動すると、出力軸221がHi方向に変位して出力軸221に作用する反力が増大するほど、モータ210に通電される電流の値が大きくなる。
【0100】
すなわち、モータ210に通電される電流の値は、Hi方向に出力軸221の位置が変位しているときほど大きくなり、モータ210に通電されている電流の値と出力軸221の位置、すなわちモータ210に通電されている電流の値とモータ210の回転回数との間には一定の相関関係が生じることとなる。
【0101】
したがって、モータ210が所定の回転位相にあることが判定されたときにモータ210に通電されている電流の大きさを参照すれば、その電流の大きさに基づいてモータ210の回転回数を推定することができる。要するに、その電流が大きいときほどHi方向に向かってモータ210がより多く回転された状態であることを推定することができる。
【0102】
そこで、本実施形態の電子制御装置100は、モータ210が基準位相にあることが判定されたときに、モータ210に通電されている電流の大きさを参照し、このときの電流の大きさに基づいてその判定が、Lo方向の可動限界位置からモータ210が何回転した状態においてなされたものであるかを判別するようにしている。
【0103】
尚、上記の基準カウント値Cp(N)における括弧内の「N」は、Lo方向の可動限界位置からのモータ210の回転回数に毎に基準カウント値Cp(N)が設定されていることを示すものであり、「N」は回転回数を示している。例えば、モータ210の回転位相が、Lo方向の可動限界位置からモータ210が4回転した状態における基準位相にあるときには、その基準位相に対応する正しい位置カウント値Cpとして基準カウント値Cp(4)が選択され、位置カウント値Cpがこの基準カウント値Cp(4)に基づいて更新される。
【0104】
以下、こうした位置カウント値Cpの更新にかかる位置カウント値更新ルーチンについて図8を参照して具体的に説明する。尚、図8は位置カウント値更新ルーチンにかかる一連の処理の流れを示すフローチャートである。また、この位置カウント値更新ルーチンは、機関運転中に電子制御装置100によって所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0105】
この位置カウント値更新ルーチンを開始すると、図8に示されるように、電子制御装置100はまずステップS100においてモータ210の回転位相が基準位相にあるか否かを判定する。
【0106】
ここでは、電気角カウント値Ceの変化と、位置センサS4,S5によって出力されるパルス信号の変化との関係を監視することにより、モータ210の回転位相が基準位相にあるか否かを判定する。
【0107】
大磁極215bが位置センサS4,S5を通過する基準位相にあっては、図5の中央に示されるように、22.5°に亘って位置センサS4,S5から出力されるパルス信号が変化しなくなり、電気角カウント値Ceの変化とパルス信号の変化との関係が他の回転位相における関係と異なったものになる。
【0108】
具体的には、基準位相以外の回転位相にあっては、電気角カウント値Ceが変化するタイミングにあわせて位置センサS4から出力されるパルス信号も変化する。これに対して、基準位相にあっては、図5の中央に破線で示される部分のように電気角カウント値Ceが「0」と「1」との間で変化するタイミングにおいて、位置センサS4から出力されるパルス信号が変化しない。
【0109】
そこで、このステップS100では、電気角カウント値Ceの値が変化したタイミングにおいて位置センサS4から出力されているパルス信号が変化したか否かを監視し、電気角カウント値Ceの値が変化したタイミングにおいて位置センサS4から出力されているパルス信号が変化しなかった場合に、モータ210が基準位相にあることを判定する。
【0110】
尚、位置センサS4,S5から出力されるパルス信号に基づいてモータ210が基準位相にあることを判定するための方法は適宜変更することができる。
例えば、その他に、電気角カウント値Ceが1カウント分(例えば、正回転の場合は「1」→「2」、「5」→「0」等、逆回転の場合は「5」→「4」、「0」→「5」等)変化する間に位置カウント値Cpがいくつ変化するかを監視する構成を採用することもできる。この場合には、電気角カウント値Ceが1カウント分変化する間の位置カウント値Cpの変化が4カウント未満だった場合に、モータ210が基準位相にあることを判定する。
【0111】
このように、電気角カウント値Ceが1カウント分変化する間に位置カウント値Cpがいくつ変化するかを監視することによって、モータ210が基準位相にあることを判定することができるのは、以下のような理由による。
【0112】
図5に示されるように基準位相以外の回転位相にあっては、電気角カウント値Ceが1カウント分変化する間に位置カウント値Cpが4カウント分変化する。これに対して、大磁極215bが位置センサS4,S5を通過する基準位相にあっては位置カウント値Cpが変化しない。そのため、電気角カウント値Ceが1カウント分変化する間における位置カウント値Cpの変化を監視し、位置カウント値Cpの変化が4カウント未満だった場合には、これに基づいてモータ210が基準位相にあることを判定することができる。
【0113】
ステップS100において、モータ210の回転位相が基準位相にあることが判定されなかった場合(ステップS100:NO)には、電子制御装置100は、そのままこのルーチンを一旦終了する。
【0114】
一方、ステップS100において、モータ210の回転位相が基準位相にあることが判定された場合(ステップS210:YES)には、ステップS110へと進み、モータ210に通電されている電流の大きさに基づいて、今回判定された基準位相がLo方向の可動限界位置からモータ210が何回転した状態における基準位相であるかを判別する。
【0115】
具体的には、そのときモータ210に通電されている電流の大きさが図9に示されるようにモータ210の回転回数に対応するように設定された複数の判定領域のうち、いずれの判定領域に含まれるかに基づいてLo方向の可動限界位置からモータ210が何回転した状態における基準位相であるかを判別する。
【0116】
尚、図9に示される直線はこのアクチュエータ200における出力軸221の位置とモータ210に通電される電流の大きさとの関係を示している。各判定領域はモータ210の回転位相が基準位相にあるときにモータ210に通電されることが推定される電流の値(実線上に示される点)を中心に、電流値のばらつきを考慮して上下に幅を持たせて設定されている。また、本実施形態のアクチュエータ200は、上述したようにモータ210が10回転する分の範囲で駆動されるため、判定領域は回転回数に対応させて「1」から「10」まで10個設定されているが図9にあっては説明の便宜上、そのうちの「3」から「5」までの3つのみを図示している。
【0117】
ステップS110では、例えば、モータ210に通電されている電流の大きさが図9に示される回転回数「4」の判定領域に含まれる場合には、今回判定された基準位相がLo方向の可動限界位置から数えてモータ210が4回転した状態における基準位相であることを判別する。すなわち、この位置カウント値更新ルーチンにあっては、ステップS110の処理が、回転回数判別手段に相当する。
【0118】
こうしてモータ210が何回転した状態における基準位相であるかを判別すると、ステップS120へと進み、電子制御装置100は判別された回転回数に対応する基準カウント値Cp(N)を読み出す。
【0119】
例えば、ステップS110において4回転した状態における基準位相であることが判別された場合には、このステップS120を通じて図9に矢印で示されるようにこれに対応する基準カウント値Cp(4)が読み出されることになる。
【0120】
こうして基準カウント値Cp(N)を読み出すと、ステップS130へと進み、電子制御装置100は位置カウント値Cpを、ステップS120を通じて読み出された基準カウント値Cp(N)に一致させるように、基準カウント値Cp(N)に基づいて位置カウント値Cpを更新する。
【0121】
こうして位置カウント値Cpを更新すると電子制御装置100は、このルーチンを一旦終了する。
このような位置カウント値更新ルーチンを繰り返し実行することにより、モータ210の回転位相が基準位相になる度に位置カウント値Cpが正しい値に更新されるようになる。そのため、実際の制御軸340並びに出力軸221の位置と、位置カウント値Cpとが対応しなくなってしまった場合であっても、位置カウント値Cpのずれが速やかに解消されるようになる。
【0122】
尚、図9を参照して示したモータ210に通電されている電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係は、アクチュエータ200や可変動弁機構300の経年変化等によって変化してしまうことがある。
【0123】
そこで、本実施形態の電子制御装置100にあっては、電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係を適宜学習しなおすようにしている。
尚、可変動弁機構300の制御軸340に作用する反力は、機関運転状態に応じて変化する。そのため、電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係を学習しなおす場合には、機関運転状態が略同一の状態において学習を実行することが望ましい。
【0124】
そこで、本実施形態の電子制御装置100は、予め定めた一定の運転状態になっていることを条件に電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係を学習しなおすようにしている。具体的には、内燃機関に供給されている作動油の油温、機関回転速度NE、出力軸221並びに制御軸340の変位速度をパラメータとして設定し、これらの値が学習を行うための運転条件として設定された一定の範囲にあることを条件に学習を実行するようにしている。
【0125】
尚、作動油の温度は、機関冷却水温THWや、吸入空気量GAの積算値、機関回転速度NEの積算値等に基づいて推定することができ、出力軸221並びに制御軸340の変位速度は単位時間当りの出力軸221の変位量等に基づいて推定することができる。
【0126】
各パラメータが学習を行うための運転条件として設定された一定の範囲にある場合には、出力軸221の変位に伴ってモータ210に通電されている電流が変化する様子を監視し、このときの電流値の変化態様に基づいて出力軸の変位と電流の変化との関係を学習する。すなわち、実際に出力軸221が変位しているときの電流の変化に基づいて図9に示される実線の傾きを学習しなおす。
【0127】
そして、学習された直線の傾きに応じてモータ210に通電されている電流の大きさとそれに基づいて選択される基準カウント値Cp(N)との関係を補正し、アクチュエータ200や可変動弁機構300の経年変化等によって生じる電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係のずれを補償するようにしている。
【0128】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)基準位相にあることが判定されたときに、基準位相に対応させて予め記憶させてある基準カウント値Cp(N)、すなわち正しい位置カウント値Cpに対応する値として記憶されている基準カウント値Cp(N)に基づいて位置カウント値Cpが更新されるようになる。
【0129】
そのため、電子制御装置100によって把握されている位置カウント値Cpが実際の出力軸221の位置に対応する値からずれている場合、すなわち誤った位置カウント値Cpに基づいて出力軸221の位置が制御されているときには、基準位相になったときに、位置カウント値Cpが基準カウント値Cp(N)に基づいて更新されるようになる。したがって、モータ210の回転位相が基準位相になったときに、位置カウント値Cpと実際の出力軸221の位置とのずれが解消されるようになる。
【0130】
尚、上記実施形態のように出力軸221の位置を制御するときにモータ210が複数回回転する場合には、モータ210の回転位相が基準位相にある状態がモータの回転回数の分だけ複数回発生することとなる。そのため、出力軸221の位置を制御するときにモータ210を複数回回転させる場合には、モータ210が基準位相にあることが判定されたときに、その判定がモータ210が何回転した状態においてなされたものであるのかを判別しなければ、その判定に基づいて出力軸221の位置を的確に推定することができない。
【0131】
これに対して、上記実施形態にあっては、基準位相にあることが判定されたときに、モータ210に通電されている電流の大きさに基づいてその判定がモータ210が何回転した状態においてなされたものであるかを判別するようにしている(図10におけるステップS110)。
【0132】
そのため、その判定がモータ210が何回転した状態においてなされたものであるかを判別することができ、モータ210の回転回数に対応した基準カウント値Cp(N)に基づいて位置カウント値Cpを適切に更新することができる。
【0133】
要するに、上記実施形態の構成によれば、モータ210が基準位相にあることが判定されたときに、正しい位置カウント値Cpに対応する基準カウント値Cp(N)に基づいて位置カウント値Cpが的確に更新されるようになる。したがって、誤った位置カウント値Cpに基づいて出力軸221の位置が制御され、出力軸221の位置を適切に制御することができなくなってしまうことを抑制することができる。
【0134】
(2)アクチュエータ200を駆動しているときに検出される電流の値は、アクチュエータ200の使用条件等によってある程度ばらつく可能性がある。
これに対して、上記実施形態のように、モータ210に通電される電流の大きさに対して所定の幅を有して広がる判定領域を、モータ210の回転回数に対応するように1つずつ設定しておく構成を採用すれば、基準位相にあることが判定されたときに通電されている電流の大きさが、複数設定された判定領域のうち、いずれの判定領域に属しているかを監視することにより、その判定が、モータ210が何回転した状態においてなされたものであるかを的確に推定することができる。すなわち、検出される電流の大きさにある程度のばらつきが生じる場合であっても、モータ210に通電されている電流の大きさに基づいて、モータ210が基準位相にある旨の判定が、モータ210が何回転した状態においてなされたものであるかを的確に推定することができる。
【0135】
(3)上記実施形態のように、ロータ213における基準位相に対応する部位の磁極の配列を他の部位の磁極の配列と異ならせる構成を採用すれば、位置センサS4,S5によって出力されるパルス信号の変化態様が、基準位相において他の回転位相と異なるようになる。そのため、パルス信号の変化を監視することによってモータ210の回転位相が基準位相にあることを判定することができるようになる。
【0136】
したがって、モータ210の回転位相を監視するために新たなセンサ等を設けることなく、モータ210の回転位相が基準位相にあるか否かを判定することができるようになり、新たにセンサを設けることによるコストの増大や、センサの取り付けにかかる製造工程の煩雑化を抑制することができる。
【0137】
(4)機関運転状態が、一定の運転状態になっているときに、モータ210に通電されている電流の大きさと基準位相に対応させて記憶させてある基準カウント値Cp(N)との関係を学習しなおすようにしている。そのため、同一の運転状態であることを条件に学習が行われるようになり、機関運転状態の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができる。
【0138】
(5)内燃機関に供給されている作動油の油温が低いほど、アクチュエータ200並びに可変動弁機構300、更には内燃機関の動弁系等に供給されているその作動油の粘性が高くなる。そのため、内燃機関に供給されている作動油の油温が低いときほど、これらを駆動する際の抵抗が大きくなる。したがって、基準カウント値Cp(N)に対応する位置に出力軸221を駆動したときにモータ210に通電される電流は、内燃機関に供給されている作動油の油温が低いときほど、大きくなる。
【0139】
これに対して、上記実施形態にあっては、電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係を学習するための一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータの一つとして、内燃機関に供給される作動油の温度を監視するようにしている。そのため、作動油の温度が略等しい状態であることを条件に学習を実行することにより、作動油の温度の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができる。
【0140】
(6)機関回転速度NEが高く、単位時間当りに吸気バルブ31が開弁される回数が多いときほど、バルブスプリング24の付勢力によって可変動弁機構300の制御軸340並びにアクチュエータ200の出力軸221に作用する反力は大きくなる。そのため、機関回転速度NEが高いときほど、アクチュエータ200の出力軸221に作用する反力は大きくなり、基準カウント値Cp(N)に対応する位置に出力軸221を駆動したときにモータ210に通電される電流が大きくなる。
【0141】
これに対して、上記実施形態にあっては、電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係を学習するための一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータの一つとして、機関回転速度NEを監視するようにしている。そのため、機関回転速度NEが略等しい状態であることを条件に学習を実行することにより、機関回転速度NEの違いに起因する電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができる。
【0142】
(7)アクチュエータ200の出力軸221並びに可変動弁機構300の制御軸340の変位速度が速いときには、慣性力に逆らって速い速度で出力軸221並びに制御軸340を駆動していることになる。そのため、変位速度が速いときほど、出力軸221を駆動するために消費される電力は大きくなり、基準カウント値Cp(N)に対応する位置まで出力軸221を駆動したときにモータ210に通電される電流が大きくなる。
【0143】
これに対して、上記実施形態にあっては、電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係を学習するための一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータの一つとして、出力軸221並びに制御軸340の変位速度を監視するようにしている。そのため、出力軸221並びに制御軸340の変位速度が略等しい状態であることを条件に学習を実行することにより、出力軸221並びに制御軸340の変位速度の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができる。
【0144】
尚、出力軸221と制御軸340は一体に連結されており、同時に同量だけ変位するため、双方の変位速度を監視しなくても、どちらか一方の変位速度を監視すれば出力軸221並びに制御軸340の変位速度を監視することができる。
【0145】
尚、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態にあっては、回転位相判定手段として、位置センサS4,S5から出力されるパルス信号の変化と電気角カウント値Ceとの変化との関係を監視する構成を採用し、モータ210の回転位相が基準位相にあることが判定される度に、位置カウント値Cpを基準カウント値Cp(N)に基づいて更新する構成を示した。
【0146】
これに対して、モータ210の回転位相が基準位相にあることが判定される度に、電子制御装置100によって把握されている位置カウント値Cpと対応する基準カウント値Cp(N)とを比較し、その乖離が大きいときに、基準カウント値Cp(N)に基づいて位置カウント値Cpを更新する構成を採用することもできる。
【0147】
具体的には、図10に示されるように位置カウント値更新ルーチンにおけるステップS120とステップS130との間に、位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)の乖離の大きさを判定する処理であるステップS125を追加する。そして、ステップS125において位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)との乖離が大きい旨の判定がなされたときにのみ、基準カウント値Cp(N)に基づいて位置カウント値Cpを更新するようにすればよい。
【0148】
尚、図10に示される位置カウント値更新ルーチンにあっては、ステップS125において位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)との差の絶対値を算出し、その値が基準値よりも大きいことに基づいて位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)との乖離が大きい旨を判定するようにしている。これに対して位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)との乖離が大きいことを判定するための具体的な方法は、適宜変更することができる。すなわち、ステップS125における処理は、位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)とが乖離していることに基づいて、電子制御装置100によって把握されている出力軸221の位置が実際の出力軸221の位置からずれていることを判定することができるようになっていればよい。
【0149】
尚、このように位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)との乖離が大きいときにのみ位置カウント値Cpを更新する構成を採用する場合には、位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)との乖離が大きくなっていないときには、位置カウント値Cpが更新されなくなる。
【0150】
図5の下段に示されるように基準位相を通過するときには、位置カウント値Cpが増減しなくなる。そのため、位置カウント値Cpが基準カウント値Cp(N)に基づいて更新されない場合には、図11に示されるように、基準位相を通過する度に、位置カウント値Cpと出力軸221の基準位置からの変位量との関係が二点鎖線で示されるような比例関係からずれることになる。
【0151】
したがって、この場合には、位置カウント値Cpの値から単純に出力軸221並びに制御軸340の位置を推定することができなくなってしまう。
そこで、上記のように位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)との乖離が大きいときにのみ位置カウント値Cpを更新する構成を採用する場合には、こうした位置カウント値Cpのずれを補償するための構成を更に追加する必要がある。尚、こうした構成としては、基準位相を通過する度に、基準位相を通過することによって生じる一定のずれを補正するための補正値を位置カウント値Cpに加算する構成を採用することができる。また、その他には、図11に実線で示されるように基準位置からの変位量と位置カウント値Cpの値との関係を記憶した演算マップを用意し、この演算マップを逐一参照することによって位置カウント値Cpから出力軸221の位置を算出する構成を採用することができる。
【0152】
・上記実施形態にあっては、電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係を学習しなおす際の運転条件として内燃機関に供給されている作動油の油温、機関回転速度NE、出力軸221並びに制御軸340の変位速度をパラメータとして設定し、これらの値が一定の範囲にあることを条件に学習を実行するようにしていた。これに対して学習を行うための運転条件は、機関運転状態の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係のずれを排除することができるように設定されていればよく、学習を行うための運転条件は適宜変更することができる。
【0153】
・また、こうした学習を省略し、学習を行わない構成を採用することもできる。
・上記実施形態における多極マグネット215にあっては、小磁極215aを3つ並べた大きさの大磁極215bが設けられている。これにより、上記実施形態にあっては、大磁極215bが位置センサS4,S5を通過するときにパルス信号が他の回転位相における変化態様と異なる変化態様で変化するようになっている。これは位置センサS4,S5から出力されるパルス信号の変化態様に基づいてモータ210の回転位相が所定の回転位相になったことを判定するための回転位相判定手段の構成の一例である。
【0154】
そのため、位置センサS4,S5から出力されるパルス信号の変化態様に基づいてモータ210の回転位相が所定の回転位相になったことを判定することのできる構成であれば、多極マグネット215の構成や、位置センサS4,S5の配設位置等は適宜変更することができる。
【0155】
・また、上記実施形態にあっては、回転位相判定手段として、位置センサS4,S5のパルス信号の出力態様が変化したことに基づいてモータ210の回転位相が所定の回転位相にあることを判定する構成を示した。これに対してモータ210の回転位相が所定の回転位相にあることを判定することのできる構成であれば、回転位相判定手段の構成は適宜変更することができる。例えば、モータ210の回転位相が所定の回転位相にあるときに信号を出力するセンサを新たに設け、このセンサから出力される信号に基づいてモータ210の回転位相が所定の回転位相にあることを判定する構成を採用することもできる。
【0156】
・位相をずらして設けた位置センサS4,S5から出力されるパルス信号に基づいて位置カウント値Cpを計数する構成を示した。これに対して、基準位置からの制御軸340の変位量に対応する位置カウント値Cpを計数することができる構成であれば、位置カウント値Cpを計数するための位置センサの構成は適宜変更することができる。例えば位置センサS4,S5の取り付け位置や位置センサの個数、多極マグネット215の磁極の数等を変更することもできる。
【0157】
・同様に、モータ210の通電相を切り替え、モータ210を的確に制御することができる構成であれば、電気角カウント値Ceを設定するための電気角センサS1,S2,S3の取り付け位置や、電気角センサの個数、多極マグネット214の磁極の数等も変更することができる。
【0158】
・上記実施形態にあっては、本発明にかかるアクチュエータの制御装置を吸気バルブ31の作用角及びリフト量を変更する可変動弁機構300を備える内燃機関を統括的に制御する電子制御装置100として適用する構成を示したが、本願発明は排気バルブ41の作用角及びリフト量を変更する可変動弁機構を備える内燃機関にも適用することができる。
【0159】
・また、誤った位置カウント値に基づいて出力軸の位置が制御されてしまうようになる課題は、上記のような可変動弁機構300を駆動するアクチュエータ200のみならず、モータの回転角に基づいて位置カウント値Cpを計数し、基準位置に対する出力軸の相対的な位置を算出するアクチュエータの制御装置にあっては、同様に生じ得るものである。
【0160】
そのため、本発明は、可変動弁機構300を駆動するアクチュエータの制御装置に限定されることなく、モータの回転角に基づいて位置カウント値を計数し、基準位置に対する出力軸の相対的な位置を算出するアクチュエータの制御装置として広く適用することができる。
【符号の説明】
【0161】
1…機関本体、10…シリンダブロック、11…シリンダ、12…ピストン、13…燃焼室、20…シリンダヘッド、21…吸気ポート、22…排気ポート、23…リテーナ、24…バルブスプリング、25…ラッシュアジャスタ、26…ロッカアーム、26a…ローラ、30…吸気通路、31…吸気バルブ、32…吸気カムシャフト、32a…吸気カム、40…排気通路、41…排気バルブ、42…排気カムシャフト、42a…排気カム、50…スプリング、100…電子制御装置、111…アクセルポジションセンサ、112…エアフロメータ、113…クランクポジションセンサ、114…カムポジションセンサ、115…水温センサ、200…アクチュエータ、210…モータ、211…マグネット、212…ステータ、213…ロータ、214…多極マグネット、215…多極マグネット、215a…小磁極、215b…大磁極、220…運動変換機構、221…出力軸、222…留め具、300…可変動弁機構、310…入力部、311…入力アーム、311a…ローラ、312…ヘリカルスプライン、313…凸部、320…出力部、321…出力アーム、322…ヘリカルスプライン、330…支持パイプ、331…長孔、340…制御軸、341…係止ピン、350…スライダ、351…ヘリカルスプライン、352…ヘリカルスプライン、353…溝、S1,S2,S3…電気角センサ、S4,S5…位置センサ。
【技術分野】
【0001】
この発明はアクチュエータの制御装置に関し、特にモータの回転運動を出力軸の直線運動に変換して出力するアクチュエータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機関バルブのバルブ特性を変更する可変動弁機構が記載されている。この可変動弁機構は、制御軸を中心軸延伸方向に変位させることによって駆動され、制御軸の変位量に応じて機関バルブの作用角及びリフト量を変更するものである。この可変動弁機構は、具体的には、制御軸が中心軸延伸方向の一方に向かって変位したときに作用角及びリフト量を増大させ、同制御軸が中心軸延伸方向の他方に向かって変位したときに作用角及びリフト量を減少させる。
【0003】
特許文献1に記載の可変動弁機構の制御軸には、モータの回転運動を出力軸の直線運動に変換して出力するアクチュエータが接続されている。そして、この可変動弁機構を備える内燃機関にあっては、アクチュエータのモータを制御して同アクチュエータの出力軸に連結された可変動弁機構の制御軸を中心軸延伸方向に変位させることによって機関バルブの作用角及びリフト量を制御する。
【0004】
このような内燃機関におけるアクチュエータの制御装置には、モータの回転に伴って所定の回転角毎にパルス信号を出力する位置センサが設けられている。そして、アクチュエータの制御装置は、この位置センサから出力されるパルス信号を計数して位置カウント値とし、この位置カウント値に基づいて制御軸の位置を把握している。すなわち、アクチュエータの出力軸に連結された制御軸の変位量はアクチュエータのモータの回転角に応じて変化するため、この関係を利用してモータの回転角及び回転方向に対応して増減する位置カウント値に基づいて基準位置からの制御軸並びに出力軸の変位量を推定する。そして、このように推定される基準位置からの制御軸並びに出力軸の相対的な変位量に基づいて制御軸の位置並びに出力軸の位置を検知する。
【0005】
特許文献1に記載の内燃機関にあっては、こうして検知される制御軸の位置並びに出力軸の位置を、目標とする作用角及びリフト量に対応する位置に近づけるようにアクチュエータのモータをフィードバック制御することにより、機関バルブの作用角及びリフト量を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008‐223705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、機関停止中のようにアクチュエータの制御装置が稼働していないときには、制御装置による位置カウント値の計数が行われない。そのため、アクチュエータの制御装置が稼働していないときに可変動弁機構の制御軸及びアクチュエータの出力軸が何らかの理由によって中心軸延伸方向に変位した場合には、その変位が位置カウント値に反映されず、実際の制御軸の位置並びに出力軸の位置と、制御装置によって把握されている位置カウント値とが対応しなくなってしまう。
【0008】
実際の制御軸の位置並びに出力軸の位置と、制御装置によって把握されている位置カウント値とが対応しなくなると、次に内燃機関が運転されるときに誤った位置カウント値に基づいて制御軸の位置並びに出力軸の位置が制御され、適切に作用角及びリフト量を制御することができなくなってしまう。その結果、最悪の場合には上死点近傍まで上昇したピストンと開弁した機関バルブとが接触してしまうバルブスタンプが発生するおそれもある。
【0009】
尚、上記のように、誤った位置カウント値に基づいて出力軸の位置が制御されてしまうようになる課題は、上記のような可変動弁機構を駆動するアクチュエータのみならず、モータの回転角に基づいて位置カウント値を計数し、基準位置に対する出力軸の相対的な位置を算出するアクチュエータの制御装置にあっては、同様に生じ得るものである。
【0010】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、誤った位置カウント値に基づいて出力軸の位置が制御され、出力軸の位置を適切に制御することができなくなってしまうことを抑制することのできるアクチュエータの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、出力軸を中心軸延伸方向の一方に変位させるほど同出力軸に作用する反力が増大する状態で使用され、モータの回転運動を出力軸の直線運動に変換して出力するアクチュエータの制御装置であり、前記モータの回転に伴って位置センサから出力されるパルス信号に基づいて位置カウント値を計数することによって前記出力軸の位置を検知しているアクチュエータの制御装置において、前記モータが所定の回転位相にあることを判定する回転位相判定手段と、前記判定がなされたときに前記モータに通電されている電流の大きさに基づいて前記判定が前記モータが何回転した状態においてなされたものであるかを判別する回転回数判別手段とを備え、前記所定の回転位相にあることが判定されたときに、前記位置カウント値を、前記回転回数判別手段によって判別される回転回数毎に前記所定の回転位相に対応させて記憶させてある基準カウント値に基づいて更新することをその要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、所定の回転位相にあることが判定されたときに、出力軸の位置と位置カウント値との間にずれが生じていない状態において前記所定の回転位相に対応させて予め記憶させてある基準カウント値、すなわち正しい位置カウント値に対応する値として記憶されている基準カウント値に基づいて、位置カウント値が更新されるようになる。
【0013】
そのため、制御装置によって把握されている位置カウント値が実際の出力軸の位置に対応する値からずれている場合、すなわち誤った位置カウント値に基づいて出力軸の位置が制御されているときには、モータの回転位相が所定の回転位相になったときに、位置カウント値が基準カウント値に基づいて更新されるようになる。したがって、モータの回転位相が前記所定の回転位相になったときに、位置カウント値と実際の出力軸の位置とのずれが解消されるようになる。
【0014】
尚、出力軸の位置を制御するときにモータが複数回回転する場合には、モータの回転位相が所定の回転位相にある状態がモータの回転回数の分だけ複数回発生することとなる。そのため、出力軸の位置を制御するときにモータを複数回回転させる場合には、モータが所定の回転位相にあることが判定されたときに、その判定がモータが何回転した状態においてなされたものであるのかを判別しなければ、その判定に基づいて出力軸の位置を的確に推定することができない。
【0015】
これに対して、上記請求項1に記載の発明は、所定の回転位相にあることが判定されたときに、モータに通電されている電流の大きさに基づいてその判定がモータが何回転した状態においてなされたものであるかを判別する回転回数判別手段を備えている。
【0016】
出力軸を中心軸延伸方向の一方に変位させるほど出力軸に作用する反力が増大する状態で使用されるアクチュエータにあっては、一定の電圧を印可して出力軸の位置を目標とする位置にフィードバック制御するようにモータを駆動する場合に、出力軸が中心軸延伸方向の一方に変位して出力軸に作用する反力が増大するほど、モータに通電される電流の値が大きくなる。
【0017】
そのため、モータに通電される電流の値は、反力が大きくなる方向に出力軸の位置が変位しているときほど大きくなり、モータに通電されている電流の値と出力軸の位置、すなわちモータに通電されている電流の値とモータの回転回数との間には一定の相関関係が生じることとなる。したがって、モータが所定の回転位相にあることが判定されたときにモータに通電されている電流の大きさを参照すれば、その電流の大きさに基づいてモータの回転回数を推定することができる。すなわち、その電流が大きいときほど出力軸に作用する反力が大きくなる方向に向かってモータがより多く回転された状態であることを推定することができる。
【0018】
したがって、回転回数判別手段を備える上記請求項1に記載の発明によれば、モータが所定の回転位相にあることが判定されたときに、その判定がモータが何回転した状態においてなされたものであるかを判別することができ、モータの回転回数に対応した基準カウント値に基づいて位置カウント値を適切に更新することができる。
【0019】
要するに、上記請求項1に記載の発明によれば、モータが所定の回転位相にあることが判定されたときに、正しい位置カウント値に対応する基準カウント値に基づいて位置カウント値が的確に更新されるようになる。したがって、誤った位置カウント値に基づいて出力軸の位置が制御され、出力軸の位置を適切に制御することができなくなってしまうことを抑制することができるようになる。
【0020】
尚、アクチュエータ駆動中に検出される電流の値は、アクチュエータの使用条件等によってある程度ばらつく可能性がある。
これに対して、請求項2に記載されているように、モータに通電される電流の大きさに対して所定の幅を有して広がる判定領域を、モータの回転回数に対応するように1つずつ設定しておく構成を採用すれば、所定の回転位相にあることが判定されたときに通電されている電流の大きさが、複数設定された判定領域のうち、いずれの判定領域に属しているかを監視することにより、その判定が、モータが何回転した状態においてなされたものであるかを的確に推定することができるようになる。すなわち、検出される電流の大きさにある程度のばらつきが生じる場合であっても、モータに通電されている電流の大きさに基づいて、回転位相判定手段によってなされた判定がモータが何回転した状態においてなされたものであるかを的確に推定することができるようになる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、前記回転位相判定手段として、一定の位相毎にN極とS極とが切り替わるように交互に配設される複数の小磁極と、前記小磁極よりも大きな位相を占める1個の大磁極とをN極とS極とが交互に並ぶように円形に配設したロータと、前記各磁極と対向可能な位置に位相をずらして配設された2つの前記位置センサとを備え、前記モータの回転に伴って2つの前記位置センサからそれぞれ出力されるパルス信号に基づいて前記位置カウント値を計数するとともに、前記大磁極が前記位置センサを通過するときに検知されるパルス信号の変化に基づいて前記モータの回転位相が所定の回転位相にあることを判定する請求項1又は請求項2に記載のアクチュエータの制御装置である。
【0022】
回転位相判定手段の構成として具体的には、請求項3に記載されているように、ロータにおける所定の回転位相に対応する部位の磁極の配列を他の部位の磁極の配列と異ならせる構成を採用すればよい。こうした構成を採用すれば、位置センサによって出力されるパルス信号の変化態様が、所定の回転位相において他の回転位相と異なるようになり、パルス信号の変化を監視することによってモータの回転位相が所定の回転位相にあることを判定することができるようになる。
【0023】
そのため、モータの回転位相を監視するために新たなセンサ等を設けることなく、モータの回転位相が所定の回転位相にあるか否かを判定することができるようになり、新たにセンサを設けることによるコストの増大や、センサの取り付けにかかる製造工程の煩雑化を抑制することができる。
【0024】
ところで、制御軸を中心軸延伸方向に駆動することにより、機関バルブの作用角及びリフト量を変更する内燃機関の可変動弁機構にあっては、機関バルブの作用角及びリフト量を大きくする方向に制御軸を駆動するほど、バルブスプリングの付勢力による反力が大きくなるため、制御軸に作用する反力が大きくなる。
【0025】
すなわち、こうした内燃機関の可変動弁機構の制御軸を駆動するアクチュエータにあっては、出力軸を中心軸延伸方向の一方に変位させるほど同出力軸に作用する反力が増大するようになる。
【0026】
そこで、具体的には、上記請求項4に記載されているように、制御軸を中心軸延伸方向に駆動することにより、機関バルブの作用角及びリフト量を変更する内燃機関の可変動弁機構に接続され、出力軸と連結した制御軸を中心軸延伸方向に駆動する可変動弁機構のアクチュエータを制御する制御装置として、上記請求項1〜3のアクチュエータの制御装置を適用することができる。
【0027】
尚、モータに通電されている電流の大きさと基準カウント値との関係は、アクチュエータや可変動弁機構の経年変化によって変化してしまうことがある。そのため、モータに通電されている電流の大きさと基準カウント値の大きさとの関係を利用してモータの回転回数を判別する構成を採用している場合には、位置カウント値にずれが生じていない状態のときに出力軸を駆動し、電流の大きさと基準カウント値との関係を学習しなおすことが望ましい。
【0028】
また、可変動弁機構の制御軸に作用する反力は、機関運転状態に応じて変化する。そのため、請求項4に記載されているように機関バルブの作用角及びリフト量を変更する内燃機関の可変動弁機構を駆動するアクチュエータを制御するアクチュエータの制御装置として請求項1〜3に記載の発明を適用する場合には、一定の運転状態になっているときに電流の大きさと基準カウント値との関係を学習しなおすようにすることが望ましい。
【0029】
そこで、請求項5に記載の発明にあっては、機関運転状態が、一定の運転状態になっているときに、モータに通電されている電流の大きさと前記所定の回転位相に対応させて記憶させてある基準カウント値との関係を学習しなおすようにしている。
【0030】
このように一定の運転状態になっているときに電流の大きさと基準カウント値との関係を学習しなおす構成を採用すれば、同一の運転状態であることを条件に学習が行われるようになり、機関運転状態の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができるようになる。
【0031】
尚、内燃機関に供給されている作動油の油温が低いほど、アクチュエータ並びに可変動弁機構、更には内燃機関の動弁系等に供給されているその作動油の粘性が高くなる。そのため、内燃機関に供給されている作動油の油温が低いときほど、これらを駆動する際の抵抗が大きくなる。したがって、基準カウント値に対応する位置に出力軸を駆動したときにモータに通電される電流は、内燃機関に供給されている作動油の油温が低いときほど、大きくなる。
【0032】
そのため、請求項6に記載されているように、電流の大きさと基準カウント値との関係を学習するための一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータとして、少なくとも内燃機関に供給される作動油の温度を監視する構成を採用することが望ましい。
【0033】
こうした構成を採用すれば、少なくとも作動油の温度が略等しい状態であることを条件に学習を実行することにより、作動油の温度の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができるようになる。
【0034】
また、機関回転速度が高く、単位時間当りに機関バルブが開弁される回数が多いときほど、バルブスプリングの付勢力によって可変動弁機構の制御軸並びにアクチュエータの出力軸に作用する反力は大きくなる。そのため、機関回転速度が高いときほど、アクチュエータの出力軸に作用する反力は大きくなり、基準カウント値に対応する位置に出力軸を駆動したときにモータに通電される電流が大きくなる。
【0035】
そのため、請求項7に記載されているように、電流の大きさと基準カウント値との関係を学習するための一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータとして、少なくとも機関回転速度を監視する構成を採用することが望ましい。
【0036】
こうした構成を採用すれば、少なくとも機関回転速度が略等しい状態であることを条件に学習を実行することにより、機関回転速度の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができるようになる。
【0037】
また、アクチュエータの出力軸並びに可変動弁機構の制御軸の変位速度が速いときには、慣性力に逆らって速い速度で出力軸並びに制御軸を駆動していることになるため、変位速度が速いときほど、出力軸を駆動するために消費される電力は大きくなり、基準カウント値に対応する位置まで出力軸を駆動したときにモータに通電される電流が大きくなる。
【0038】
そのため、請求項8に記載されているように、電流の大きさと基準カウント値との関係を学習するための一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータとして、少なくとも出力軸並びに制御軸の変位速度を監視する構成を採用することが望ましい。
【0039】
こうした構成を採用すれば、少なくとも出力軸並びに制御軸の変位速度が略等しい状態であることを条件に学習を実行することにより、出力軸並びに制御軸の変位速度の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができるようになる。
【0040】
尚、出力軸と制御軸は一体に連結されており、同時に同量だけ変位するため、双方の変位速度を監視しなくても、どちらか一方の変位速度を監視すれば出力軸並びに制御軸の変位速度を監視することができる。
【0041】
前記所定の回転位相にあることが判定されたときに、基準カウント値に基づいて位置カウント値を更新する具体的な態様としては、請求項9に示されるように、回転位相判定手段によってモータの回転位相が所定の回転位相にあることが判定される度に、位置カウント値を所定の回転位相に対応する基準カウント値に一致させるように、基準カウント値に基づいて位置カウント値を更新する構成を採用することができる。
【0042】
またその他、請求項10に示されるように、回転位相判定手段によってモータの回転位相が所定の回転位相にあることが判定される度に、同制御装置によって把握されている位置カウント値と基準カウント値とを比較し、その乖離が大きいときに、位置カウント値を所定の回転位相に対応する基準カウント値に一致させるように、基準カウント値に基づいて位置カウント値を更新する構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の一実施形態にかかるアクチュエータによって駆動される可変動弁機構が搭載された内燃機関の断面図。
【図2】同実施形態にかかる可変動弁機構の内部構造を示す破断斜視図。
【図3】同実施形態にかかるアクチュエータの構成と、同アクチュエータを制御する電子制御装置、並びに同アクチュエータによって駆動される可変動弁機構の関係を示す模式図。
【図4】同実施形態にかかるアクチュエータの電気角センサ及び位置センサの配設態様を示す模式図。
【図5】同実施形態にかかる電子制御装置によって計数される電気角カウント値及び位置カウント値の遷移態様を示す説明図。
【図6】電気角センサの出力するパルス信号と電気角カウント値との関係を示す表。
【図7】位置センサの出力するパルス信号と位置カウント値との関係を示す表。
【図8】位置カウント値更新ルーチンにかかる一連の処理の流れを示すフローチャート。
【図9】電流の大きさに基づいて更新に使用する基準カウント値を選択する方法を説明する説明図。
【図10】変更例としての位置カウント値更新ルーチンにかかる一連の処理の流れを示すフローチャート。
【図11】位置カウント値と出力軸の変位量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、この発明にかかるアクチュエータの制御装置を、内燃機関の可変動弁機構を駆動するアクチュエータを制御する電子制御装置として具体化した一実施形態について、図1〜9を参照して説明する。
【0045】
図1は、本実施形態にかかるアクチュエータ200によって駆動される可変動弁機構300が搭載された内燃機関の断面図である。図1に示されるように可変動弁機構300が搭載されたこの内燃機関の機関本体1は、シリンダブロック10とシリンダヘッド20とを組み合わせることにより構成されている。
【0046】
シリンダブロック10の内部に形成されたシリンダ11には、ピストン12が摺動可能に収容されている。そして、シリンダブロック10の上部にはシリンダヘッド20が組み付けられており、シリンダ11の内周面、ピストン12の上面、そしてシリンダヘッド20の下面によって燃焼室13が区画形成されている。
【0047】
シリンダヘッド20には、燃焼室13と連通する吸気ポート21及び排気ポート22が形成されている。吸気ポート21は図示しない吸気マニホールドと接続されて吸気通路30の一部を構成している。また、排気ポート22は、図示しない排気マニホールドと接続されて排気通路40の一部を構成している。
【0048】
図1に示されるようにシリンダヘッド20には、吸気通路30と燃焼室13とを連通・遮断する吸気バルブ31と、排気通路40と燃焼室13とを連通・遮断する排気バルブ41とが設けられている。各バルブ31,41にはリテーナ23が固定されているとともに、シリンダヘッド20とこれらリテーナ23との間にはバルブスプリング24が圧縮された状態で設けられている。これにより、各バルブ31,41は、バルブスプリング24の付勢力によって閉弁方向にそれぞれ付勢されている。
【0049】
また、シリンダヘッド20の内部には、各バルブ31,41にそれぞれ対応するようにラッシュアジャスタ25が設けられている。そして、このラッシュアジャスタ25と各バルブ31,41との間にはロッカアーム26が架設されている。図1に示されるように、このロッカアーム26は、その一端がラッシュアジャスタ25によって下方から支持されているとともに、他端が各バルブ31,41の基端部に当接されている。
【0050】
更に、シリンダヘッド20には、各バルブ31,41を開弁方向に駆動する吸気カムシャフト32及び排気カムシャフト42がそれぞれ回動可能に支持されている。図1の上方に示されるように吸気カムシャフト32には吸気カム32aが形成されており、排気カムシャフト42には排気カム42aが形成されている。
【0051】
図1の上方右側に示されるように排気カム42aの外周面は、排気バルブ41に当接しているロッカアーム26のローラ26aに当接されている。これにより、図1の排気カムシャフト42の右上に矢印で示されているように機関運転時に排気カムシャフト42が回転すると、排気カム42aの作用によりロッカアーム26がラッシュアジャスタ25によって支持された部分を支点として揺動する。その結果、排気バルブ41がロッカアーム26によって開弁方向にリフトされるようになる。
【0052】
一方、図1の上方左側に示されるように、吸気カム32aと、吸気バルブ31に当接しているロッカアーム26との間には可変動弁機構300が配設されている。この可変動弁機構300は入力アーム311と出力アーム321とを有しており、これら入力アーム311及び出力アーム321はシリンダヘッド20に固定された支持パイプ330を中心に揺動可能に支持されている。
【0053】
ロッカアーム26は、バルブスプリング24の付勢力によって出力アーム321側に向かって下方から付勢され、同ロッカアーム26の中間部分に設けられたローラ26aが下方から出力アーム321の外周面に当接している。
【0054】
また、可変動弁機構300の外周面には凸部313が設けられており、この凸部313がシリンダヘッド20内に固定されたスプリング50の付勢力により、図1の左側に矢印W1で示されているように付勢されている。これにより、可変動弁機構300は、支持パイプ330を中心に矢印W1で示されるように左回りに付勢され、入力アーム311の先端に設けられたローラ311aが吸気カム32aの外周面に当接するようになっている。
【0055】
したがって、図1における吸気カムシャフト32の右下に矢印で示されるように機関運転時に吸気カム32aが回転すると、吸気カム32aの作用により可変動弁機構300が支持パイプ330を中心に揺動するようになる。その結果、出力アーム321の作用によりロッカアーム26がラッシュアジャスタ25によって支持されている部分を支点として揺動するようになり、吸気バルブ31がロッカアーム26によって開弁方向にリフトされるようになる。
【0056】
可変動弁機構300の支持パイプ330には、制御軸340がその中心軸延伸方向に沿って移動可能に挿入されている。可変動弁機構300にあっては、この制御軸340を中心軸延伸方向に変位させることにより、支持パイプ330を中心とした入力アーム311と出力アーム321との相対位相差、すなわち図1に示される角度θを変更することができるようになっている。
【0057】
次に、図2を参照して可変動弁機構300の構成について詳しく説明する。尚、図2は可変動弁機構300の内部構造を示す破断斜視図である。シリンダヘッド20に固定された支持パイプ330の内部には、図2に示されるように制御軸340が支持パイプ330の中心軸延伸方向に移動可能に挿入されている。また、支持パイプ330には円筒状のスライダ350が支持パイプ330の中心軸延伸方向に移動可能に外嵌されている。
【0058】
この円筒状のスライダ350の内壁には、その周方向に沿って延伸する溝353が形成されている。そして、この溝353には制御軸340に形成された凹部(図示略)にその基端部が挿入された係止ピン341が嵌合されている。また、支持パイプ330の管壁にはその中心軸延伸方向に沿って延びる長孔331が形成されており、係止ピン341はこの長孔331を通じてスライダ350の溝353に係止されている。これにより、スライダ350は支持パイプ330及び制御軸340を中心に自由に回動し、且つ制御軸340の中心軸延伸方向の変位に連動して移動するようになっている。
【0059】
また、スライダ350の外周面には、その中央部分にヘリカルスプライン351が形成されるとともに、その両端部分にヘリカルスプライン351と逆向きに歯すじが傾斜したヘリカルスプライン352が形成されている。尚、図2にあっては説明の便宜上、スライダ350の右側部分のみを図示している。
【0060】
このスライダ350には、図2に示されるように入力部310と、これを挟むように配設される一対の出力部320とが外嵌されている。入力部310の内周面には、ヘリカルスプライン312が形成されており、このヘリカルスプライン312がスライダ350のヘリカルスプライン351と噛合している。また、入力部310の外周面には、径方向に突出する一対の入力アーム311が形成されており、これら一対の入力アーム311の間にはローラ311aが回動自在に支持されている。
【0061】
一方、一対の出力部320の内周面にはヘリカルスプライン322が形成されており、このヘリカルスプライン322がスライダ350のヘリカルスプライン352とそれぞれ噛合している。また、出力部320の外周面には、径方向に突出する出力アーム321がそれぞれ形成されている。
【0062】
このように形成された可変動弁機構300にあっては、制御軸340がその中心軸延伸方向に沿って変位すると、これに連動してスライダ350が中心軸延伸方向に変位する。スライダ350の外周面に形成されたヘリカルスプライン351,352はその歯すじの進行方向がそれぞれ異なっており、入力部310及び出力部320の内周面に形成されたヘリカルスプライン312,322とそれぞれ噛合されている。そのため、スライダ350がその中心軸延伸方向に変位すると、入力部310と出力部320はそれぞれ逆の方向に回動する。その結果、入力アーム311と出力アーム321との相対位相差が変更され、吸気バルブ31の作用角及びリフト量が変更される。
【0063】
具体的には、図2示される矢印Hi方向に制御軸340を変位させると、制御軸340とともにスライダ350がHi方向に移動する。それに伴って入力アーム311と出力アーム321との相対位相差、すなわち図1における角度θが大きくなり、吸気バルブ31の作用角及びリフト量が大きくなる。一方で、図2に示される矢印Lo方向に制御軸340を変位させると、制御軸340とともにスライダ350がLo方向に移動するのに伴って入力アーム311と出力アーム321との相対位相差が小さくなり、吸気バルブ31の作用角及びリフト量が小さくなる。
【0064】
本実施形態にかかる内燃機関にあっては、機関運転中に制御軸340を中心軸延伸方向に変位させ、可変動弁機構300を通じて吸気バルブ31の作用角及びリフト量を変更する。
【0065】
次に、制御軸340を中心軸延伸方向に変位させるアクチュエータ200の構成について、図3及び図4を参照して説明する。尚、図3は本実施形態にかかるアクチュエータ200の構成と、同アクチュエータ200を制御する電子制御装置100、並びに同アクチュエータ200によって駆動される可変動弁機構300の関係を示す模式図である。
【0066】
図3に示されるように、アクチュエータ200は、マグネット211とステータ212とから構成されるモータ210と、モータ210の回転運動を出力軸221の直線運動に変換する運動変換機構220とを含んで構成されている。可変動弁機構300の制御軸340は、その先端部がアクチュエータ200の出力軸221と留め具222によって連結されている。
【0067】
これにより、モータ210を所定の範囲、例えば10回転分の回転角範囲(0〜3600°)内で回転させることにより、モータ210の回転運動が運動変換機構220を通じて直線運動に変換され、出力軸221を介して制御軸340に入力されるようになる。その結果、制御軸340が出力軸221とともに中心軸延伸方向に変位して可変動弁機構300が駆動されるようになる。
【0068】
ちなみに、モータ210を正回転させると、制御軸340が図3の矢印Hi方向に変位し、上述したように可変動弁機構300の入力アーム311と出力アーム321との相対位相差が大きくなり、吸気バルブ31の作用角及びリフト量が増大する。一方で、モータ210を逆回転させると、制御軸340が図3の矢印Lo方向に変位し、入力アーム311と出力アーム321との相対位相差が小さくなり、吸気バルブ31の作用角及びリフト量が減少する。
【0069】
尚、制御軸340の矢印Hi方向への変位及び矢印Lo方向への変位は、制御軸340に設けられた図示しないストッパによってモータ210が10回転する分の範囲で規制されるようになっており、このストッパがシリンダヘッド20の一部に当接する位置が制御軸340の可動限界位置となっている。
【0070】
このように本実施形態にかかる内燃機関にあっては、アクチュエータ200を駆動して出力軸221に連結された制御軸340をその中心軸延伸方向に変位させることにより、吸気バルブ31の作用角及びリフト量を変更することができるようになっている。
【0071】
図3の左側に示されるようにアクチュエータ200を駆動するモータ210は、運動変換機構220の外周面に固定されたマグネット211と、電子制御装置100からの駆動指令に基づいて励磁されるステータ212とを含んで構成されている。
【0072】
そして、運動変換機構220の後端には、円盤状のロータ213が固定されている。図4に示されるように、このロータ213には、4つのN極と4つのS極とが等角度間隔で交互に並ぶように円形に形成された8極の多極マグネット214と、23個のN極と23個のS極とがそれぞれ交互に並ぶように円形に形成された46極の多極マグネット215とが同心円状に固定されている。
【0073】
尚、8極の多極マグネット214は、図4に示されるようにN極とS極とが45°毎に交互に切り替わるように全周に亘って均一に磁極が配設されている。これに対して、46極の多極マグネット215にあっては、図4に示されるように7.5°毎にN極とS極が交互に切り替わるように配設された45個の小磁極215aと、小磁極215aを3つ並べた大きさを有する1つの大磁極215bとがN極とS極とが交互に並ぶように配設されている。そのため、小磁極215aが交互に配設されている部分にあっては7.5°毎にN極とS極とが切り替わる一方、大磁極215bが配設されている部分にあっては、S極が22.5°に亘って広がっている。
【0074】
図3及び図4に示されるようにアクチュエータ200における多極マグネット214と対向する部位には電気角センサS1,S2,S3が互いに30°位相をずらして配設されている。一方、アクチュエータ200における多極マグネット215と対向する部位には位置センサS4,S5が互いに3.75°位相をずらして配設されている。
【0075】
これにより、モータ210の回転に伴ってロータ213が回転すると、各センサS1〜S5にN極とS極とが交互に対向するようになり、それぞれのセンサS1〜S5がN極に対応するハイ信号「H」とS極に対応するロー信号「L」とを交互に出力するようになる。
【0076】
図3に示されるように、これら電気角センサS1,S2,S3及び位置センサS4,S5は、内燃機関を統括的に制御する電子制御装置100に接続されており、これら電気角センサS1,S2,S3及び位置センサS4,S5から出力されるパルス信号は電子制御装置100に取り込まれる。そして、電子制御装置100は、これらのパルス信号に基づいてアクチュエータ200のモータ210を制御するとともに、内燃機関の各部を制御する。
【0077】
電子制御装置100は、中央演算処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、記憶データを書き換え可能な不揮発性メモリであるEEPROM等の各種メモリを備えている。
【0078】
電子制御装置100には、上記各センサS1〜S5の他に、運転者のアクセル操作量ACCPを検出するアクセルポジションセンサ111、吸気通路30を通じて燃焼室13に吸入される吸入空気量GAを検出するエアフロメータ112、機関回転速度NEを検出するクランクポジションセンサ113が接続されている。また、電子制御装置100には、吸気カムシャフト32の回転位相を検出するカムポジションセンサ114や、機関冷却水温THWを検出する水温センサ115等も接続されている。
【0079】
電子制御装置100は、これら各種センサ111〜115の出力信号を取り込み、取り込まれた出力信号に基づいて燃料噴射量や、点火時期の制御にかかる演算を実行するとともに、吸気バルブ31の作用角及びリフト量を機関運転状態に適したものとすべく、可変動弁機構300の駆動制御、すなわちアクチュエータ200の駆動制御を実行する。
【0080】
以下、アクチュエータ200の駆動制御について図5〜7を参照して説明する。上述したように電気角センサS1,S2,S3は互いに30°位相をずらして配設されている。そのため、モータ210の回転に伴って各電気角センサS1,S2,S3からは図5の上段に示されるようにハイ信号「H」とロー信号「L」とが交互に切り替わるパルス信号が回転角30°に相当する分だけずれた状態で出力される。
【0081】
電子制御装置100は、各電気角センサS1,S2,S3からのパルス信号のパターンに基づいて電気角カウント値Ceを算出する。具体的には、図6に示されるように各々電気角センサS1,S2,S3からハイ信号「H」とロー信号「L」のうち何れの信号が出力されているかに基づいて、電気角カウント値Ceを「0」,「1」,「2」,「3」,「4」,「5」のうちの何れかに設定する。
【0082】
尚、図6の表は、モータ210が正回転しているときには電気角カウント値Ceが「0」→「1」→「2」→「3」→「4」→「5」→「0」といった順序で順方向に変化する一方、逆回転しているときには「5」→「4」→「3」→「2」→「1」→「0」→「5」といった順序で逆方向に変化するように設定されている。これにより、図5に示されるようにモータ210の回転角が15°変化する度に電気角カウント値Ceが変化し、電気角カウント値Ceの値はモータ210の回転に伴って階段状に変化するようになる。
【0083】
尚、この電気角カウント値Ceの値「0」,「1」,「2」,「3」,「4」,「5」は、モータ210の通電相への通電パターンに対応している。すなわち、本実施形態にあっては、N極とS極とが交互になるように8つの磁極が円形に配設されたロータ213と、3つの電気角センサS1,S2,S3とによって8極3相電気角カウンタを構成している。そして、同電気角カウンタによって計数される電気角カウント値Ceに基づいてモータ210の通電相を切り替えてモータ210を制御するようにしている。
【0084】
尚、電気角カウンタの構成上、3つの電気角センサS1,S2,S3の全てがロー信号「L」又はハイ信号「H」を出力することはあり得ないため、図6に示されるように3つの電気角センサS1,S2,S3の全てがロー信号「L」又はハイ信号「H」を出力した場合には、電子制御装置100は電気角カウンタに異常が発生している旨を判定する。
【0085】
一方、位置センサS4,S5は、上述したように互いに3.75°位相をずらして配設されている。そのため、モータ210の回転に伴って各位置センサS4,S5からは図5の中段に示されるようにハイ信号「H」とロー信号「L」とが交互に切り替わるパルス信号が互いに回転角3.75°に相当する分だけずれた状態で出力される。
【0086】
電子制御装置100は、各位置センサS4,S5からのパルス信号の出力パターンに基づいて位置カウント値Cpを計数する。具体的には、図7に示されるように位置センサS4,S5の一方のセンサの出力信号が立ち上がりエッジ「↑」あるいは立ち下がりエッジ「↓」のいずれであるか、また他方のセンサの出力信号がハイ信号「H」あるいはロー信号「L」のいずれであるかに応じて、位置カウント値Cpに「+1」または「−1」を加算することにより、位置カウント値Cpを計数する。
【0087】
こうして位置センサS4,S5のパルス信号に基づいて計数される位置カウント値Cpは、図5の下段に示されるようにモータ210が正回転しているときにはモータ210の駆動に伴って増大する一方、逆回転しているときにはモータ210の駆動に伴って減少するようになる。そのため、電子制御装置100は、この位置カウント値Cpの値に基づいて基準位置からの出力軸221の変位量を検知し、出力軸221並びに制御軸340の位置を把握している。
【0088】
すなわち、アクチュエータ200の出力軸221に連結された制御軸340の変位量はアクチュエータ200のモータ210の回転角に応じて変化するため、この関係を利用してモータ210の回転角及び回転方向に対応して増減する位置カウント値Cpに基づいて基準位置からの制御軸340並びに出力軸221の変位量を推定する。
【0089】
そして、このように推定される基準位置からの制御軸340並びに出力軸221の相対的な変位量に基づいて制御軸340の位置並びに出力軸221の位置を検知する。
電子制御装置100は、こうして検知される制御軸340の位置を、目標とする作用角及びリフト量に対応する位置に近づけるようにアクチュエータ200のモータ210をフィードバック制御することにより、吸気バルブ31の作用角及びリフト量を制御する。
【0090】
ところで、機関停止中のように電子制御装置100への通電が行われておらず、電子制御装置100が稼働していないときには、電子制御装置100による位置カウント値Cpの計数が行われない。そのため、電子制御装置100が稼働していないときに可変動弁機構300の制御軸340が何らかの理由によって中心軸延伸方向に変位した場合には、その変位が位置カウント値Cpに反映されず、実際の制御軸340の位置と、電子制御装置100によって把握されている位置カウント値Cpとが対応しなくなってしまう。
【0091】
尚、可変動弁機構300の制御軸340には吸気バルブ31を閉弁方向に付勢するバルブスプリング24の付勢力が常に作用している。そのため、潤滑油の温度が高く、可変動弁機構300におけるフリクションが低下している場合や、機関停止状態が長時間継続した場合等には、バルブスプリング24の付勢力によって制御軸340が作用角及びリフト量を減少させる方向(Lo方向)に駆動され、上記のように機関停止中に制御軸340が変位してしまうことがある。
【0092】
実際の制御軸340の位置と、電子制御装置100によって把握されている位置カウント値Cpとが対応しなくなると、次に内燃機関が運転されるときに誤った位置カウント値Cpに基づいて制御軸340の位置が制御され、適切に作用角及びリフト量を制御することができなくなってしまう。その結果、最悪の場合には上死点近傍まで上昇したピストン12と開弁した吸気バルブ31とが接触してしまうバルブスタンプが発生するおそれもある。
【0093】
そこで、本実施形態にかかる内燃機関にあっては、機関運転中にアクチュエータ200のモータ210が所定の回転位相になったときに、位置カウント値Cpを、予めその回転位相に対応する位置カウント値Cpとして記憶されている基準カウント値Cp(N)に更新するようにしている。
【0094】
尚、本実施形態のアクチュエータ200にあっては、位置センサS4,S5から出力されるパルス信号に基づいてモータ210の回転位相が所定の回転位相にあることを判定するために、多極マグネット215を全周に亘って磁極が均一に配列されたものとせずに、上述したように小磁極215aよりも大きな大磁極215bを含んだ構成にしている。これにより、図5の中央に示されるようにこの大磁極215bが位置センサS4,S5を通過するときには、位置センサS4,S5から出力されるパルス信号が他の回転位相における変化態様と異なった変化態様を示すようになる。
【0095】
本実施形態にあっては、このように位置センサS4,S5から出力されるパルス信号が他の回転位相における変化態様とは異なった変化態様を示すようになる回転位相、すなわち大磁極215bが位置センサS4,S5を通過するときの回転位相を、所定の回転位相としての基準位相にしている。
【0096】
そして、モータ210の回転位相がこの基準位相にあると判定されたときに、この基準位相に対応する正しい位置カウント値Cpの値として出力軸221の位置と位置カウント値Cpとの間にずれが生じていない状態のときに予め記憶させておいた基準カウント値Cp(N)を読み出す。そして、この基準カウント値Cp(N)に基づいて位置カウント値Cpを更新する。
【0097】
尚、本実施形態のアクチュエータ200にあっては、可変動弁機構300の制御に伴って、モータ210が10回転する分の範囲内でアクチュエータ200が制御される。そのため、可変動弁機構300の制御に伴ってモータ210の回転位相が基準位相にある状態がモータ210の回転回数の分だけ最大で10回発生することとなる。そのため、モータ210が基準位相にあることが判定されたときに、その判定がモータ210が何回転した状態においてなされたものであるのかを判別しなければ、その判定に基づいて出力軸221の位置を的確に推定することができない。
【0098】
これに対して、本実施形態にあっては、基準位相にあることが判定されたときに、モータ210に通電されている電流の大きさに基づいて、その判定がLo方向における可動限界位置からモータ210が何回転した状態においてなされたものであるかを判別するようにしている。
【0099】
上述したように、可変動弁機構300の制御軸340には吸気バルブ31を閉弁方向に付勢するバルブスプリング24の付勢力が常に作用しているため、本実施形態のアクチュエータ200にあっては、出力軸221をHi方向に変位させるほど出力軸221に作用する反力が増大するようになる。そのため、出力軸221の位置を目標とする位置にフィードバック制御するようにモータ210を駆動すると、出力軸221がHi方向に変位して出力軸221に作用する反力が増大するほど、モータ210に通電される電流の値が大きくなる。
【0100】
すなわち、モータ210に通電される電流の値は、Hi方向に出力軸221の位置が変位しているときほど大きくなり、モータ210に通電されている電流の値と出力軸221の位置、すなわちモータ210に通電されている電流の値とモータ210の回転回数との間には一定の相関関係が生じることとなる。
【0101】
したがって、モータ210が所定の回転位相にあることが判定されたときにモータ210に通電されている電流の大きさを参照すれば、その電流の大きさに基づいてモータ210の回転回数を推定することができる。要するに、その電流が大きいときほどHi方向に向かってモータ210がより多く回転された状態であることを推定することができる。
【0102】
そこで、本実施形態の電子制御装置100は、モータ210が基準位相にあることが判定されたときに、モータ210に通電されている電流の大きさを参照し、このときの電流の大きさに基づいてその判定が、Lo方向の可動限界位置からモータ210が何回転した状態においてなされたものであるかを判別するようにしている。
【0103】
尚、上記の基準カウント値Cp(N)における括弧内の「N」は、Lo方向の可動限界位置からのモータ210の回転回数に毎に基準カウント値Cp(N)が設定されていることを示すものであり、「N」は回転回数を示している。例えば、モータ210の回転位相が、Lo方向の可動限界位置からモータ210が4回転した状態における基準位相にあるときには、その基準位相に対応する正しい位置カウント値Cpとして基準カウント値Cp(4)が選択され、位置カウント値Cpがこの基準カウント値Cp(4)に基づいて更新される。
【0104】
以下、こうした位置カウント値Cpの更新にかかる位置カウント値更新ルーチンについて図8を参照して具体的に説明する。尚、図8は位置カウント値更新ルーチンにかかる一連の処理の流れを示すフローチャートである。また、この位置カウント値更新ルーチンは、機関運転中に電子制御装置100によって所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0105】
この位置カウント値更新ルーチンを開始すると、図8に示されるように、電子制御装置100はまずステップS100においてモータ210の回転位相が基準位相にあるか否かを判定する。
【0106】
ここでは、電気角カウント値Ceの変化と、位置センサS4,S5によって出力されるパルス信号の変化との関係を監視することにより、モータ210の回転位相が基準位相にあるか否かを判定する。
【0107】
大磁極215bが位置センサS4,S5を通過する基準位相にあっては、図5の中央に示されるように、22.5°に亘って位置センサS4,S5から出力されるパルス信号が変化しなくなり、電気角カウント値Ceの変化とパルス信号の変化との関係が他の回転位相における関係と異なったものになる。
【0108】
具体的には、基準位相以外の回転位相にあっては、電気角カウント値Ceが変化するタイミングにあわせて位置センサS4から出力されるパルス信号も変化する。これに対して、基準位相にあっては、図5の中央に破線で示される部分のように電気角カウント値Ceが「0」と「1」との間で変化するタイミングにおいて、位置センサS4から出力されるパルス信号が変化しない。
【0109】
そこで、このステップS100では、電気角カウント値Ceの値が変化したタイミングにおいて位置センサS4から出力されているパルス信号が変化したか否かを監視し、電気角カウント値Ceの値が変化したタイミングにおいて位置センサS4から出力されているパルス信号が変化しなかった場合に、モータ210が基準位相にあることを判定する。
【0110】
尚、位置センサS4,S5から出力されるパルス信号に基づいてモータ210が基準位相にあることを判定するための方法は適宜変更することができる。
例えば、その他に、電気角カウント値Ceが1カウント分(例えば、正回転の場合は「1」→「2」、「5」→「0」等、逆回転の場合は「5」→「4」、「0」→「5」等)変化する間に位置カウント値Cpがいくつ変化するかを監視する構成を採用することもできる。この場合には、電気角カウント値Ceが1カウント分変化する間の位置カウント値Cpの変化が4カウント未満だった場合に、モータ210が基準位相にあることを判定する。
【0111】
このように、電気角カウント値Ceが1カウント分変化する間に位置カウント値Cpがいくつ変化するかを監視することによって、モータ210が基準位相にあることを判定することができるのは、以下のような理由による。
【0112】
図5に示されるように基準位相以外の回転位相にあっては、電気角カウント値Ceが1カウント分変化する間に位置カウント値Cpが4カウント分変化する。これに対して、大磁極215bが位置センサS4,S5を通過する基準位相にあっては位置カウント値Cpが変化しない。そのため、電気角カウント値Ceが1カウント分変化する間における位置カウント値Cpの変化を監視し、位置カウント値Cpの変化が4カウント未満だった場合には、これに基づいてモータ210が基準位相にあることを判定することができる。
【0113】
ステップS100において、モータ210の回転位相が基準位相にあることが判定されなかった場合(ステップS100:NO)には、電子制御装置100は、そのままこのルーチンを一旦終了する。
【0114】
一方、ステップS100において、モータ210の回転位相が基準位相にあることが判定された場合(ステップS210:YES)には、ステップS110へと進み、モータ210に通電されている電流の大きさに基づいて、今回判定された基準位相がLo方向の可動限界位置からモータ210が何回転した状態における基準位相であるかを判別する。
【0115】
具体的には、そのときモータ210に通電されている電流の大きさが図9に示されるようにモータ210の回転回数に対応するように設定された複数の判定領域のうち、いずれの判定領域に含まれるかに基づいてLo方向の可動限界位置からモータ210が何回転した状態における基準位相であるかを判別する。
【0116】
尚、図9に示される直線はこのアクチュエータ200における出力軸221の位置とモータ210に通電される電流の大きさとの関係を示している。各判定領域はモータ210の回転位相が基準位相にあるときにモータ210に通電されることが推定される電流の値(実線上に示される点)を中心に、電流値のばらつきを考慮して上下に幅を持たせて設定されている。また、本実施形態のアクチュエータ200は、上述したようにモータ210が10回転する分の範囲で駆動されるため、判定領域は回転回数に対応させて「1」から「10」まで10個設定されているが図9にあっては説明の便宜上、そのうちの「3」から「5」までの3つのみを図示している。
【0117】
ステップS110では、例えば、モータ210に通電されている電流の大きさが図9に示される回転回数「4」の判定領域に含まれる場合には、今回判定された基準位相がLo方向の可動限界位置から数えてモータ210が4回転した状態における基準位相であることを判別する。すなわち、この位置カウント値更新ルーチンにあっては、ステップS110の処理が、回転回数判別手段に相当する。
【0118】
こうしてモータ210が何回転した状態における基準位相であるかを判別すると、ステップS120へと進み、電子制御装置100は判別された回転回数に対応する基準カウント値Cp(N)を読み出す。
【0119】
例えば、ステップS110において4回転した状態における基準位相であることが判別された場合には、このステップS120を通じて図9に矢印で示されるようにこれに対応する基準カウント値Cp(4)が読み出されることになる。
【0120】
こうして基準カウント値Cp(N)を読み出すと、ステップS130へと進み、電子制御装置100は位置カウント値Cpを、ステップS120を通じて読み出された基準カウント値Cp(N)に一致させるように、基準カウント値Cp(N)に基づいて位置カウント値Cpを更新する。
【0121】
こうして位置カウント値Cpを更新すると電子制御装置100は、このルーチンを一旦終了する。
このような位置カウント値更新ルーチンを繰り返し実行することにより、モータ210の回転位相が基準位相になる度に位置カウント値Cpが正しい値に更新されるようになる。そのため、実際の制御軸340並びに出力軸221の位置と、位置カウント値Cpとが対応しなくなってしまった場合であっても、位置カウント値Cpのずれが速やかに解消されるようになる。
【0122】
尚、図9を参照して示したモータ210に通電されている電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係は、アクチュエータ200や可変動弁機構300の経年変化等によって変化してしまうことがある。
【0123】
そこで、本実施形態の電子制御装置100にあっては、電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係を適宜学習しなおすようにしている。
尚、可変動弁機構300の制御軸340に作用する反力は、機関運転状態に応じて変化する。そのため、電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係を学習しなおす場合には、機関運転状態が略同一の状態において学習を実行することが望ましい。
【0124】
そこで、本実施形態の電子制御装置100は、予め定めた一定の運転状態になっていることを条件に電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係を学習しなおすようにしている。具体的には、内燃機関に供給されている作動油の油温、機関回転速度NE、出力軸221並びに制御軸340の変位速度をパラメータとして設定し、これらの値が学習を行うための運転条件として設定された一定の範囲にあることを条件に学習を実行するようにしている。
【0125】
尚、作動油の温度は、機関冷却水温THWや、吸入空気量GAの積算値、機関回転速度NEの積算値等に基づいて推定することができ、出力軸221並びに制御軸340の変位速度は単位時間当りの出力軸221の変位量等に基づいて推定することができる。
【0126】
各パラメータが学習を行うための運転条件として設定された一定の範囲にある場合には、出力軸221の変位に伴ってモータ210に通電されている電流が変化する様子を監視し、このときの電流値の変化態様に基づいて出力軸の変位と電流の変化との関係を学習する。すなわち、実際に出力軸221が変位しているときの電流の変化に基づいて図9に示される実線の傾きを学習しなおす。
【0127】
そして、学習された直線の傾きに応じてモータ210に通電されている電流の大きさとそれに基づいて選択される基準カウント値Cp(N)との関係を補正し、アクチュエータ200や可変動弁機構300の経年変化等によって生じる電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係のずれを補償するようにしている。
【0128】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)基準位相にあることが判定されたときに、基準位相に対応させて予め記憶させてある基準カウント値Cp(N)、すなわち正しい位置カウント値Cpに対応する値として記憶されている基準カウント値Cp(N)に基づいて位置カウント値Cpが更新されるようになる。
【0129】
そのため、電子制御装置100によって把握されている位置カウント値Cpが実際の出力軸221の位置に対応する値からずれている場合、すなわち誤った位置カウント値Cpに基づいて出力軸221の位置が制御されているときには、基準位相になったときに、位置カウント値Cpが基準カウント値Cp(N)に基づいて更新されるようになる。したがって、モータ210の回転位相が基準位相になったときに、位置カウント値Cpと実際の出力軸221の位置とのずれが解消されるようになる。
【0130】
尚、上記実施形態のように出力軸221の位置を制御するときにモータ210が複数回回転する場合には、モータ210の回転位相が基準位相にある状態がモータの回転回数の分だけ複数回発生することとなる。そのため、出力軸221の位置を制御するときにモータ210を複数回回転させる場合には、モータ210が基準位相にあることが判定されたときに、その判定がモータ210が何回転した状態においてなされたものであるのかを判別しなければ、その判定に基づいて出力軸221の位置を的確に推定することができない。
【0131】
これに対して、上記実施形態にあっては、基準位相にあることが判定されたときに、モータ210に通電されている電流の大きさに基づいてその判定がモータ210が何回転した状態においてなされたものであるかを判別するようにしている(図10におけるステップS110)。
【0132】
そのため、その判定がモータ210が何回転した状態においてなされたものであるかを判別することができ、モータ210の回転回数に対応した基準カウント値Cp(N)に基づいて位置カウント値Cpを適切に更新することができる。
【0133】
要するに、上記実施形態の構成によれば、モータ210が基準位相にあることが判定されたときに、正しい位置カウント値Cpに対応する基準カウント値Cp(N)に基づいて位置カウント値Cpが的確に更新されるようになる。したがって、誤った位置カウント値Cpに基づいて出力軸221の位置が制御され、出力軸221の位置を適切に制御することができなくなってしまうことを抑制することができる。
【0134】
(2)アクチュエータ200を駆動しているときに検出される電流の値は、アクチュエータ200の使用条件等によってある程度ばらつく可能性がある。
これに対して、上記実施形態のように、モータ210に通電される電流の大きさに対して所定の幅を有して広がる判定領域を、モータ210の回転回数に対応するように1つずつ設定しておく構成を採用すれば、基準位相にあることが判定されたときに通電されている電流の大きさが、複数設定された判定領域のうち、いずれの判定領域に属しているかを監視することにより、その判定が、モータ210が何回転した状態においてなされたものであるかを的確に推定することができる。すなわち、検出される電流の大きさにある程度のばらつきが生じる場合であっても、モータ210に通電されている電流の大きさに基づいて、モータ210が基準位相にある旨の判定が、モータ210が何回転した状態においてなされたものであるかを的確に推定することができる。
【0135】
(3)上記実施形態のように、ロータ213における基準位相に対応する部位の磁極の配列を他の部位の磁極の配列と異ならせる構成を採用すれば、位置センサS4,S5によって出力されるパルス信号の変化態様が、基準位相において他の回転位相と異なるようになる。そのため、パルス信号の変化を監視することによってモータ210の回転位相が基準位相にあることを判定することができるようになる。
【0136】
したがって、モータ210の回転位相を監視するために新たなセンサ等を設けることなく、モータ210の回転位相が基準位相にあるか否かを判定することができるようになり、新たにセンサを設けることによるコストの増大や、センサの取り付けにかかる製造工程の煩雑化を抑制することができる。
【0137】
(4)機関運転状態が、一定の運転状態になっているときに、モータ210に通電されている電流の大きさと基準位相に対応させて記憶させてある基準カウント値Cp(N)との関係を学習しなおすようにしている。そのため、同一の運転状態であることを条件に学習が行われるようになり、機関運転状態の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができる。
【0138】
(5)内燃機関に供給されている作動油の油温が低いほど、アクチュエータ200並びに可変動弁機構300、更には内燃機関の動弁系等に供給されているその作動油の粘性が高くなる。そのため、内燃機関に供給されている作動油の油温が低いときほど、これらを駆動する際の抵抗が大きくなる。したがって、基準カウント値Cp(N)に対応する位置に出力軸221を駆動したときにモータ210に通電される電流は、内燃機関に供給されている作動油の油温が低いときほど、大きくなる。
【0139】
これに対して、上記実施形態にあっては、電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係を学習するための一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータの一つとして、内燃機関に供給される作動油の温度を監視するようにしている。そのため、作動油の温度が略等しい状態であることを条件に学習を実行することにより、作動油の温度の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができる。
【0140】
(6)機関回転速度NEが高く、単位時間当りに吸気バルブ31が開弁される回数が多いときほど、バルブスプリング24の付勢力によって可変動弁機構300の制御軸340並びにアクチュエータ200の出力軸221に作用する反力は大きくなる。そのため、機関回転速度NEが高いときほど、アクチュエータ200の出力軸221に作用する反力は大きくなり、基準カウント値Cp(N)に対応する位置に出力軸221を駆動したときにモータ210に通電される電流が大きくなる。
【0141】
これに対して、上記実施形態にあっては、電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係を学習するための一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータの一つとして、機関回転速度NEを監視するようにしている。そのため、機関回転速度NEが略等しい状態であることを条件に学習を実行することにより、機関回転速度NEの違いに起因する電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができる。
【0142】
(7)アクチュエータ200の出力軸221並びに可変動弁機構300の制御軸340の変位速度が速いときには、慣性力に逆らって速い速度で出力軸221並びに制御軸340を駆動していることになる。そのため、変位速度が速いときほど、出力軸221を駆動するために消費される電力は大きくなり、基準カウント値Cp(N)に対応する位置まで出力軸221を駆動したときにモータ210に通電される電流が大きくなる。
【0143】
これに対して、上記実施形態にあっては、電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係を学習するための一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータの一つとして、出力軸221並びに制御軸340の変位速度を監視するようにしている。そのため、出力軸221並びに制御軸340の変位速度が略等しい状態であることを条件に学習を実行することにより、出力軸221並びに制御軸340の変位速度の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係のずれを排除して適切に学習を実行することができる。
【0144】
尚、出力軸221と制御軸340は一体に連結されており、同時に同量だけ変位するため、双方の変位速度を監視しなくても、どちらか一方の変位速度を監視すれば出力軸221並びに制御軸340の変位速度を監視することができる。
【0145】
尚、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態にあっては、回転位相判定手段として、位置センサS4,S5から出力されるパルス信号の変化と電気角カウント値Ceとの変化との関係を監視する構成を採用し、モータ210の回転位相が基準位相にあることが判定される度に、位置カウント値Cpを基準カウント値Cp(N)に基づいて更新する構成を示した。
【0146】
これに対して、モータ210の回転位相が基準位相にあることが判定される度に、電子制御装置100によって把握されている位置カウント値Cpと対応する基準カウント値Cp(N)とを比較し、その乖離が大きいときに、基準カウント値Cp(N)に基づいて位置カウント値Cpを更新する構成を採用することもできる。
【0147】
具体的には、図10に示されるように位置カウント値更新ルーチンにおけるステップS120とステップS130との間に、位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)の乖離の大きさを判定する処理であるステップS125を追加する。そして、ステップS125において位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)との乖離が大きい旨の判定がなされたときにのみ、基準カウント値Cp(N)に基づいて位置カウント値Cpを更新するようにすればよい。
【0148】
尚、図10に示される位置カウント値更新ルーチンにあっては、ステップS125において位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)との差の絶対値を算出し、その値が基準値よりも大きいことに基づいて位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)との乖離が大きい旨を判定するようにしている。これに対して位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)との乖離が大きいことを判定するための具体的な方法は、適宜変更することができる。すなわち、ステップS125における処理は、位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)とが乖離していることに基づいて、電子制御装置100によって把握されている出力軸221の位置が実際の出力軸221の位置からずれていることを判定することができるようになっていればよい。
【0149】
尚、このように位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)との乖離が大きいときにのみ位置カウント値Cpを更新する構成を採用する場合には、位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)との乖離が大きくなっていないときには、位置カウント値Cpが更新されなくなる。
【0150】
図5の下段に示されるように基準位相を通過するときには、位置カウント値Cpが増減しなくなる。そのため、位置カウント値Cpが基準カウント値Cp(N)に基づいて更新されない場合には、図11に示されるように、基準位相を通過する度に、位置カウント値Cpと出力軸221の基準位置からの変位量との関係が二点鎖線で示されるような比例関係からずれることになる。
【0151】
したがって、この場合には、位置カウント値Cpの値から単純に出力軸221並びに制御軸340の位置を推定することができなくなってしまう。
そこで、上記のように位置カウント値Cpと基準カウント値Cp(N)との乖離が大きいときにのみ位置カウント値Cpを更新する構成を採用する場合には、こうした位置カウント値Cpのずれを補償するための構成を更に追加する必要がある。尚、こうした構成としては、基準位相を通過する度に、基準位相を通過することによって生じる一定のずれを補正するための補正値を位置カウント値Cpに加算する構成を採用することができる。また、その他には、図11に実線で示されるように基準位置からの変位量と位置カウント値Cpの値との関係を記憶した演算マップを用意し、この演算マップを逐一参照することによって位置カウント値Cpから出力軸221の位置を算出する構成を採用することができる。
【0152】
・上記実施形態にあっては、電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係を学習しなおす際の運転条件として内燃機関に供給されている作動油の油温、機関回転速度NE、出力軸221並びに制御軸340の変位速度をパラメータとして設定し、これらの値が一定の範囲にあることを条件に学習を実行するようにしていた。これに対して学習を行うための運転条件は、機関運転状態の違いに起因する電流の大きさと基準カウント値Cp(N)との関係のずれを排除することができるように設定されていればよく、学習を行うための運転条件は適宜変更することができる。
【0153】
・また、こうした学習を省略し、学習を行わない構成を採用することもできる。
・上記実施形態における多極マグネット215にあっては、小磁極215aを3つ並べた大きさの大磁極215bが設けられている。これにより、上記実施形態にあっては、大磁極215bが位置センサS4,S5を通過するときにパルス信号が他の回転位相における変化態様と異なる変化態様で変化するようになっている。これは位置センサS4,S5から出力されるパルス信号の変化態様に基づいてモータ210の回転位相が所定の回転位相になったことを判定するための回転位相判定手段の構成の一例である。
【0154】
そのため、位置センサS4,S5から出力されるパルス信号の変化態様に基づいてモータ210の回転位相が所定の回転位相になったことを判定することのできる構成であれば、多極マグネット215の構成や、位置センサS4,S5の配設位置等は適宜変更することができる。
【0155】
・また、上記実施形態にあっては、回転位相判定手段として、位置センサS4,S5のパルス信号の出力態様が変化したことに基づいてモータ210の回転位相が所定の回転位相にあることを判定する構成を示した。これに対してモータ210の回転位相が所定の回転位相にあることを判定することのできる構成であれば、回転位相判定手段の構成は適宜変更することができる。例えば、モータ210の回転位相が所定の回転位相にあるときに信号を出力するセンサを新たに設け、このセンサから出力される信号に基づいてモータ210の回転位相が所定の回転位相にあることを判定する構成を採用することもできる。
【0156】
・位相をずらして設けた位置センサS4,S5から出力されるパルス信号に基づいて位置カウント値Cpを計数する構成を示した。これに対して、基準位置からの制御軸340の変位量に対応する位置カウント値Cpを計数することができる構成であれば、位置カウント値Cpを計数するための位置センサの構成は適宜変更することができる。例えば位置センサS4,S5の取り付け位置や位置センサの個数、多極マグネット215の磁極の数等を変更することもできる。
【0157】
・同様に、モータ210の通電相を切り替え、モータ210を的確に制御することができる構成であれば、電気角カウント値Ceを設定するための電気角センサS1,S2,S3の取り付け位置や、電気角センサの個数、多極マグネット214の磁極の数等も変更することができる。
【0158】
・上記実施形態にあっては、本発明にかかるアクチュエータの制御装置を吸気バルブ31の作用角及びリフト量を変更する可変動弁機構300を備える内燃機関を統括的に制御する電子制御装置100として適用する構成を示したが、本願発明は排気バルブ41の作用角及びリフト量を変更する可変動弁機構を備える内燃機関にも適用することができる。
【0159】
・また、誤った位置カウント値に基づいて出力軸の位置が制御されてしまうようになる課題は、上記のような可変動弁機構300を駆動するアクチュエータ200のみならず、モータの回転角に基づいて位置カウント値Cpを計数し、基準位置に対する出力軸の相対的な位置を算出するアクチュエータの制御装置にあっては、同様に生じ得るものである。
【0160】
そのため、本発明は、可変動弁機構300を駆動するアクチュエータの制御装置に限定されることなく、モータの回転角に基づいて位置カウント値を計数し、基準位置に対する出力軸の相対的な位置を算出するアクチュエータの制御装置として広く適用することができる。
【符号の説明】
【0161】
1…機関本体、10…シリンダブロック、11…シリンダ、12…ピストン、13…燃焼室、20…シリンダヘッド、21…吸気ポート、22…排気ポート、23…リテーナ、24…バルブスプリング、25…ラッシュアジャスタ、26…ロッカアーム、26a…ローラ、30…吸気通路、31…吸気バルブ、32…吸気カムシャフト、32a…吸気カム、40…排気通路、41…排気バルブ、42…排気カムシャフト、42a…排気カム、50…スプリング、100…電子制御装置、111…アクセルポジションセンサ、112…エアフロメータ、113…クランクポジションセンサ、114…カムポジションセンサ、115…水温センサ、200…アクチュエータ、210…モータ、211…マグネット、212…ステータ、213…ロータ、214…多極マグネット、215…多極マグネット、215a…小磁極、215b…大磁極、220…運動変換機構、221…出力軸、222…留め具、300…可変動弁機構、310…入力部、311…入力アーム、311a…ローラ、312…ヘリカルスプライン、313…凸部、320…出力部、321…出力アーム、322…ヘリカルスプライン、330…支持パイプ、331…長孔、340…制御軸、341…係止ピン、350…スライダ、351…ヘリカルスプライン、352…ヘリカルスプライン、353…溝、S1,S2,S3…電気角センサ、S4,S5…位置センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸を中心軸延伸方向の一方に変位させるほど同出力軸に作用する反力が増大する状態で使用され、モータの回転運動を出力軸の直線運動に変換して出力するアクチュエータの制御装置であり、前記モータの回転に伴って位置センサから出力されるパルス信号に基づいて位置カウント値を計数することによって前記出力軸の位置を検知しているアクチュエータの制御装置において、
前記モータが所定の回転位相にあることを判定する回転位相判定手段と、前記判定がなされたときに前記モータに通電されている電流の大きさに基づいて前記判定が前記モータが何回転した状態においてなされたものであるかを判別する回転回数判別手段とを備え、前記所定の回転位相にあることが判定されたときに、前記位置カウント値を、前記回転回数判別手段によって判別される回転回数毎に前記所定の回転位相に対応させて記憶させてある基準カウント値に基づいて更新する
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータの制御装置において、
前記回転回数判別手段は、前記モータに通電される電流の大きさに対して前記モータの回転回数にそれぞれ対応する判定領域が1つずつ設定されており、前記モータが前記所定の回転位相にあることが前記回転位相判定手段によって判定されたときに前記モータに通電されている電流の大きさが、前記判定領域のうち、いずれの判定領域に属しているかに応じて前記回転位相判定手段による前記判定が、同モータが何回転した状態においてなされたものであるかを判別する
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項3】
前記回転位相判定手段として、一定の位相毎にN極とS極とが切り替わるように交互に配設される複数の小磁極と、前記小磁極よりも大きな位相を占める1個の大磁極とをN極とS極とが交互に並ぶように円形に配設したロータと、前記各磁極と対向可能な位置に位相をずらして配設された2つの前記位置センサとを備え、
前記モータの回転に伴って2つの前記位置センサからそれぞれ出力されるパルス信号に基づいて前記位置カウント値を計数するとともに、前記大磁極が前記位置センサを通過するときに検知されるパルス信号の変化に基づいて前記モータの回転位相が前記所定の回転位相にあることを判定する
請求項1又は請求項2に記載のアクチュエータの制御装置。
【請求項4】
制御軸を中心軸延伸方向に駆動することにより、機関バルブの作用角及びリフト量を変更する内燃機関の可変動弁機構に接続され、前記出力軸と連結した前記制御軸を中心軸延伸方向に駆動する可変動弁機構のアクチュエータを制御する
請求項1〜3のいずれか一項に記載のアクチュエータの制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のアクチュエータの制御装置において、
機関運転状態が、一定の運転状態になっているときに、前記モータに通電されている電流の大きさと前記所定の回転位相に対応させて記憶させてある基準カウント値との関係を学習しなおす
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のアクチュエータの制御装置において、
前記一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータとして前記内燃機関に供給される作動油の温度を監視する
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のアクチュエータの制御装置において、
前記一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータとして機関回転速度を監視する
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載のアクチュエータの制御装置において、
前記一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータとして前記出力軸並びに前記制御軸の変位速度を監視する
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のアクチュエータの制御装置において、
前記回転位相判定手段によって前記モータの回転位相が前記所定の回転位相にあることが判定される度に、前記位置カウント値を前記所定の回転位相に対応する前記基準カウント値に一致させるように、前記基準カウント値に基づいて前記位置カウント値を更新する
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のアクチュエータの制御装置において、
前記回転位相判定手段によって前記モータの回転位相が前記所定の回転位相にあることが判定される度に、同制御装置によって把握されている位置カウント値と前記基準カウント値とを比較し、
その乖離が大きいときに、前記位置カウント値を前記所定の回転位相に対応する前記基準カウント値に一致させるように、前記基準カウント値に基づいて前記位置カウント値を更新する
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項1】
出力軸を中心軸延伸方向の一方に変位させるほど同出力軸に作用する反力が増大する状態で使用され、モータの回転運動を出力軸の直線運動に変換して出力するアクチュエータの制御装置であり、前記モータの回転に伴って位置センサから出力されるパルス信号に基づいて位置カウント値を計数することによって前記出力軸の位置を検知しているアクチュエータの制御装置において、
前記モータが所定の回転位相にあることを判定する回転位相判定手段と、前記判定がなされたときに前記モータに通電されている電流の大きさに基づいて前記判定が前記モータが何回転した状態においてなされたものであるかを判別する回転回数判別手段とを備え、前記所定の回転位相にあることが判定されたときに、前記位置カウント値を、前記回転回数判別手段によって判別される回転回数毎に前記所定の回転位相に対応させて記憶させてある基準カウント値に基づいて更新する
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータの制御装置において、
前記回転回数判別手段は、前記モータに通電される電流の大きさに対して前記モータの回転回数にそれぞれ対応する判定領域が1つずつ設定されており、前記モータが前記所定の回転位相にあることが前記回転位相判定手段によって判定されたときに前記モータに通電されている電流の大きさが、前記判定領域のうち、いずれの判定領域に属しているかに応じて前記回転位相判定手段による前記判定が、同モータが何回転した状態においてなされたものであるかを判別する
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項3】
前記回転位相判定手段として、一定の位相毎にN極とS極とが切り替わるように交互に配設される複数の小磁極と、前記小磁極よりも大きな位相を占める1個の大磁極とをN極とS極とが交互に並ぶように円形に配設したロータと、前記各磁極と対向可能な位置に位相をずらして配設された2つの前記位置センサとを備え、
前記モータの回転に伴って2つの前記位置センサからそれぞれ出力されるパルス信号に基づいて前記位置カウント値を計数するとともに、前記大磁極が前記位置センサを通過するときに検知されるパルス信号の変化に基づいて前記モータの回転位相が前記所定の回転位相にあることを判定する
請求項1又は請求項2に記載のアクチュエータの制御装置。
【請求項4】
制御軸を中心軸延伸方向に駆動することにより、機関バルブの作用角及びリフト量を変更する内燃機関の可変動弁機構に接続され、前記出力軸と連結した前記制御軸を中心軸延伸方向に駆動する可変動弁機構のアクチュエータを制御する
請求項1〜3のいずれか一項に記載のアクチュエータの制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のアクチュエータの制御装置において、
機関運転状態が、一定の運転状態になっているときに、前記モータに通電されている電流の大きさと前記所定の回転位相に対応させて記憶させてある基準カウント値との関係を学習しなおす
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のアクチュエータの制御装置において、
前記一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータとして前記内燃機関に供給される作動油の温度を監視する
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のアクチュエータの制御装置において、
前記一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータとして機関回転速度を監視する
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載のアクチュエータの制御装置において、
前記一定の運転状態になっているか否かを判定するためのパラメータとして前記出力軸並びに前記制御軸の変位速度を監視する
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のアクチュエータの制御装置において、
前記回転位相判定手段によって前記モータの回転位相が前記所定の回転位相にあることが判定される度に、前記位置カウント値を前記所定の回転位相に対応する前記基準カウント値に一致させるように、前記基準カウント値に基づいて前記位置カウント値を更新する
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のアクチュエータの制御装置において、
前記回転位相判定手段によって前記モータの回転位相が前記所定の回転位相にあることが判定される度に、同制御装置によって把握されている位置カウント値と前記基準カウント値とを比較し、
その乖離が大きいときに、前記位置カウント値を前記所定の回転位相に対応する前記基準カウント値に一致させるように、前記基準カウント値に基づいて前記位置カウント値を更新する
ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−2080(P2012−2080A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135326(P2010−135326)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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