説明

アクチュエーターの製造方法、アクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置

【課題】振動系を有する基体上に導体パターンを設けた構成において、比較的簡単に、長寿命化を図ることができるアクチュエーターの製造方法、アクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置を提供すること。
【解決手段】光スキャナー1の製造方法は、基板をエッチングした後に平坦化処理することにより、所定の軸まわりに回動可能な可動部、可動部に連結された連結部、連結部を支持する支持部、可動部および連結部に対して基板を貫通する貫通孔225を介して離間するとともに支持部に対して構造的な強度が前記支持部よりも弱い脆弱部を介して接続された除去可能な除去部26、を含む基体302を形成する第1の工程と、基体302の上方に導体パターン8を形成する第2の工程と、除去部26を除去する第3の工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエーターの製造方法、アクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によりシリコン基板を加工して形成された捩り振動子を有する構造体を用いたアクチュエーターが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなアクチュエーターは、例えば、プリンターやディスプレイ等において、光を走査する光スキャナーとして用いられる。
例えば、特許文献1に記載されたアクチュエーターは、平板状の可動部と、可動部を揺動可能に支持する1対のトーションバーとを有する。そして、かかるアクチュエーターは、可動部に設けられた平面コイルと、固定配置された永久磁石とを有し、平面コイルおよび永久磁石の相互の磁界の作用により可動部を回動させる。
【0003】
このようなアクチュエーターにおいては、平面コイルと可動部との間の電気的絶縁のため、平面コイルが絶縁層を介して可動部上に配置される。
また、可動部および1対のトーションバーを有する構造体は、シリコン基板をエッチングすることにより形成される。
かかる構造体をドライエッチングにより形成すると、可動部および各トーションバーの側面にいわゆるスキャロップと呼ばれる凹凸が形成されてしまう。また、かかる構造体をウェットエッチングにより形成すると、可動部と各トーションバーとの接続部にシリコン結晶面に起因する角部が形成されてしまう。
【0004】
このような凹凸や角部は、トーションバーに形成されていると、可動部の回動に伴って応力が集中しやすく、アクチュエーターの寿命を短くする原因となる。この為、凸凹部の平坦化及び角部に丸みを持たせる処理が必要となる。このような手法としては、シリコンの表面拡散運動を利用した熱処理が有効である。しかしながら、特許文献1に記載のアクチュエーターでは、基板上にコイルや配線を形成した後、可動部やトーションバーなどの構造体を形成している。このため、前述したような凹凸部の平坦化処理や角部の丸め処理を行なうと、処理によってコイルや配線にダメージを与えてしまうという問題がある。また、平坦化処理や丸め処理によるコイルや配線の劣化を防ぐために配線を保護する工程が必要になり、余計な工数やコストが掛かってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−175005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、振動系を有する基体上に導体パターンを設けた構成において、凹凸部の平坦化処理や角部の丸め処理が施され、優れた振動特性を有するアクチュエーターの製造方法、アクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のアクチュエーターの製造方法は、基板をエッチングした後に平坦化処理することにより、所定の軸まわりに回動可能な可動部、前記可動部に連結された連結部、前記連結部を支持する支持部、前記可動部および前記連結部に対して前記基板を貫通する貫通溝を介して離間するとともに前記支持部に対して構造的な強度が前記支持部よりも弱い脆弱部を介して接続された除去可能な除去部、を含む基体を形成する第1の工程と、
前記基体の上方に導電性を有する導体部を形成する第2の工程と、
前記除去部を除去する第3の工程とを有することを特徴とする。
このようなアクチュエーターの製造方法によれば、平坦化処理を施したアクチュエーターの基体を形成した後、基体の上方に導体部(導体パターン)を形成することができる。従って、平坦化処理によって導体部にダメージを与えることなく、平坦化処理が施された振動特性に優れたアクチュエーターを提供できる。
【0008】
本発明のアクチュエーターの製造方法では、前記脆弱部は、前記除去部と前記支持部とを局所的に接続する接続部で構成されていることが好ましい。
これにより、第1の工程において、脆弱部をエッチングにより簡単に形成することができる。また、このような脆弱部は、第3の工程において、例えば人手により簡単に破断することができる。
【0009】
本発明のアクチュエーターの製造方法では、前記平坦化処理は、水素アニール処理、水素アニール処理後にAr雰囲気でアニール処理を行う処理、フッ硝酢酸によるエッチング処理、熱酸化処理後にフッ酸によるエッチングを行なう処理、のいずれかであることが好ましい。
これにより、基体に形成された角部を丸めたり、基体に形成された凹凸部を平坦化したりすることができる。
【0010】
本発明のアクチュエーターの製造方法では、前記第2の工程前に、前記基体上に絶縁層を形成する工程を有し、
前記第2の工程では、前記絶縁層上に前記導体部を形成することが好ましい。
これにより、得られるアクチュエーターにおいて、導体部の各部同士の短絡を防止することができる。
本発明のアクチュエーターの製造方法では、前記基板は、シリコン基板であることが好ましい。
これにより、振動特性に優れたアクチュエーターを得ることができる。
【0011】
本発明のアクチュエーターの製造方法では、前記絶縁層は、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜で構成されていることが好ましい。
シリコン酸化膜は、絶縁性を有するとともに、シリコンの熱酸化処理により比較的簡単に形成することができる。また、平坦化処理として水素アニール処理を用いた場合、絶縁層の表面に微細な凹凸を形成することができる。このような凹凸を有する絶縁層は、光の反射を防止または抑制することができる。
本発明のアクチュエーターの製造方法では、前記導体部は、コイルと、前記コイルに電気的に接続された配線とを含むことが好ましい。
これにより、ムービングコイル型のアクチュエーターを得ることができる。
【0012】
本発明のアクチュエーターは、本発明の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、安価で、優れた振動特性を有するアクチュエーターを提供することができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記可動部は、前記可動部の上方に設けられ、かつ光反射性を有する光反射部を備えることが好ましい。
これにより、安価で、優れた振動特性を有する光学デバイスを提供することができる。
【0013】
本発明の光スキャナーは、所定の軸まわりに回動可能な可動部、前記可動部に連結する連結部、および前記連結部を支持する支持部、を含む基体と、
前記基体上に設けられ、導電性を有する導体部とを有し、
前記可動部は、前記可動部の表面に設けられ、光反射性を有する光反射部を備え、
本発明の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、安価で、優れた振動特性を有する光スキャナーを提供することができる。
【0014】
本発明の画像形成装置は、光を出射する光源と、
前記光源からの光を走査する光スキャナーとを備え、
前記光スキャナーは、
所定の軸まわりに回動可能な可動部、前記可動部に連結する連結部、および前記連結部を支持する支持部、を含む基体と、
前記基体上に設けられ、導電性を有する導体部とを有し、
前記可動部は、前記可動部の表面に設けられ、かつ光反射性を有する光反射部を備え、
本発明の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、安価で、信頼性に優れる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光スキャナー(アクチュエーター)を示す平面図(上面図)である。
【図2】図1中のA−A線断面図である。
【図3】図1に示す光スキャナーに備えられた基体(可動部、支持部および1対の弾性部を備える構造体)を示す平面図(下面図)である。
【図4】図3に示す基体の部分拡大図である。
【図5】図1に示す光スキャナーの製造方法を説明する断面図である。
【図6】図1に示す光スキャナーの製造方法を説明する断面図である。
【図7】図6(b)に示す第1の工程後の基体を示す平面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る光スキャナー(アクチュエーター)を示す平面図(上面図)である。
【図9】図8中のA−A線断面図である。
【図10】図8に示す光スキャナーの製造方法における第1の工程後の基体を示す平面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る光スキャナー(アクチュエーター)を示す平面図(上面図)である。
【図12】図11に示す光スキャナーの製造方法における第1の工程後の基体を示す平面図である。
【図13】本発明の画像形成装置の実施形態(プロジェクター)を示す概略図である。
【図14】本発明の画像形成装置の実施形態(ヘッドアップディスプレイ)を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のアクチュエーターの製造方法、アクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、本発明のアクチュエーターを光スキャナーに適用した場合を例に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の光スキャナーの第1実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態に係る光スキャナー(アクチュエーター)を示す平面図(上面図)、図2は、図1中のA−A線断面図、図3は、図1に示す光スキャナーに備えられた基体(可動部、支持部および1対の弾性部を備える構造体)を示す平面図(下面図)、図4は、図3に示す基体の部分拡大図である。なお、以下では、説明の便宜上、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0018】
図1に示すように、光スキャナー1は、振動系を含む板状の基体2と、基体2を支持する支持体3と、基体2の振動系を振動させる駆動手段4とを有する。
また、基体2は、光反射部211が設けられた可動部(可動板)21と、可動部21に連結する1対の連結部23、24と、1対の連結部23、24とを支持する支持部22とを有している。支持部22は連結部23、24を介して可動部21を支持しているとも言え、1対の連結部23、24は可動部21と支持部22とを連結しているとも言える。
このような光スキャナー1では、駆動手段4の駆動力により、各連結部23、24を捩り変形させながら、可動部21を連結部23、24に沿った所定の軸(いわゆる回動中心軸)まわりに回動させる。これにより、光反射部211で反射した光を所定の一方向に走査することができる。
【0019】
以下、光スキャナー1を構成する各部を順次詳細に説明する。
[基体]
基体2は、前述したように、光反射部211が設けられた可動部21と、可動部21を支持する支持部22と、可動部21と支持部22とを連結する1対の連結部23、24とを有する。
【0020】
このような基体2は、シリコンで構成されており、可動部21、支持部22および連結部23、24が一体的に形成されている。この基体2は、後に詳述するように、シリコン基板をエッチングした後に、除去部26を除去することにより形成されたものであり、基体2には、厚さ方向に貫通した異形状の貫通孔25が形成されている。この貫通孔25は、可動部21、支持部22、および連結部23、24の側面によって構成されているとも言える。
【0021】
シリコンは軽量かつSUSなみの剛性を有するため、基体2がシリコンで構成されていることにより、優れた振動特性を有する基体2が得られる。また、シリコンは後述するようにエッチングにより高精度な寸法精度で加工が可能であるので、シリコン基板を用いて基体2を形成することにより、所望の形状(所望の振動特性)を有する基体2を得ることができる。シリコン基板としては、一般的に単結晶シリコン基板が用いられる。
【0022】
以下、基体2についてさらに詳述する。
支持部22は、図1に示すように、枠状をなしている。より具体的には、支持部22は、四角環状をなしている。なお、支持部22の形状としては、1対の連結部23、24を介して可動部21を支持することができれば、特に限定されず、例えば、各連結部23、24に対応して分割された形状をなしていてもよい。
【0023】
このような支持部22の内側には、可動部21が設けられている。
可動部21は、板状をなしている。また、本実施形態では、可動部21は、平面視にて、四角形(本実施形態では正方形)をなしている。なお、可動部21の平面視形状は、四角形に限定されず、例えば、十字形状、五角形、六角形等の他の多角形、円形、楕円形等であってもよい。
このような可動部21の上面には、光反射性を有する光反射部211が設けられている。
【0024】
各連結部23、24は、後述の回動中心軸Xに沿って長い長手形状をなしており、弾性変形可能に構成されている。また、連結部23および連結部24は、可動部21を介して対向している。このような連結部23、24は、それぞれ、可動部21を支持部22に対して回動可能とするように、可動部21と支持部22とを連結している。1対の連結部23、24は、回動中心軸Xに沿って同軸的に設けられており、この回動中心軸Xを回動中心軸として、可動部21が支持部22に対して回動する。
【0025】
また、各連結部23、24は、その横断面形状が四角形をなしている。本実施形態では、各連結部23、24は、基体2の板面に沿って互いに平行な上面および下面と、この上面および下面に対して垂直でかつ互いに平行な1対の側面とを有する。なお、各連結部23、24の横断面形状は、これに限定されず、例えば、台形をなしていてもよいし、平行四辺形をなしていてもよい。また、各連結部23、24は、互いに平行な複数の梁部材で構成されていてもよい。
【0026】
このような基体2において、連結部23、24の縁部、および、可動部21および支持部22の縁部のうちの連結部23、24近傍部分(可動部21および支持部22の縁部と連結部23、24の縁部とを接続する縁部)がそれぞれ平坦化処理されている。本実施形態では、基体2の貫通孔25の壁面251が、後述する除去部26を除去した後の脆弱部に対応する部位261を除いて、全域に亘って平坦化処理されている。貫通孔25の壁面251のうち、除去部26を除去した後の脆弱部に対応する部位261は、除去部26を破断によって除去して形成された面であるため、平坦化処理された可動部21および連結部23、24の側面よりも表面粗さ(例えばRaの値)が大きくなっている。また、脆弱部に対応する部位261の位置は、貫通孔25の壁面251のうち、可動部21および連結部23、24を構成する位置を避けて設けられていなければならない。従って、例えば、脆弱部に対応する部位261は、貫通孔25の壁面251のうち、連結部23、24の側面と対向する支持部22の側面の部分に設けられる。
【0027】
なお、縁部とは、各部の外形部分とその周辺部分を示している。特に、本実施形態では、可動部21および支持部22ならびに連結部23、24の縁部は、各部の貫通孔25に面している部分にあたる。
より具体的に説明すると、図2に示すように、可動部21の側面212が平坦化処理されている。また、可動部21の上面および下面の縁部に形成された角部213が平坦化処理により丸められている。
【0028】
また、図4に示すように、連結部23の1対の側面231および支持部22の側面221が平坦化処理されている。
また、可動部21の側面212と連結部23の側面231との境界部付近に形成された1対の角部232、および、連結部23の側面231と支持部22の側面221との境界部付近に形成された角部233が、それぞれ、平坦化処理により丸められている。
【0029】
なお、図示しないが、連結部24の1対の側面も、連結部23の側面231と同様に、平坦化処理されている。また、可動部21の側面212と連結部24の側面との境界部付近に形成された1対の角部、および、連結部24の側面と支持部22の側面221との境界部付近に形成された角部も、角部232、233と同様、それぞれ、平坦化処理により丸められている。
このような平坦化処理により、1対の連結部23、24の捩り変形を伴う可動部21の回動の際に、各連結部23、24に生じる応力集中を防止または緩和することができる。その結果、光スキャナー1の長寿命化を図ることができる。なお、かかる平坦化処理については、後に詳述する。
【0030】
また、基体2の上面(一方の板面)上には、絶縁層61が設けられ、一方、基体2の下面(他方の板面)上には、絶縁層62が設けられている。そして、絶縁層62の基体2とは反対側の面上には、コイル41、配線72、74および電極73、75で構成された導体パターン8が設けられている。なお、コイル41、配線72、74および電極73、75については、駆動手段4の説明において詳述する。また、図1、3、4、7では、説明の便宜上、絶縁層61、62の図示を省略している。
【0031】
絶縁層61、62は、基体2を基体2の厚さ方向から平面視したときに、連結部23、24の縁部、および、前記可動部21の縁部と前記連結部23、24の縁部とを接続する第1接続縁部214、ならびに、前記支持部22の縁部と前記連結部23、24の縁部とを接続する第2接続縁部222、を除いて設けられる。すなわち、絶縁層61、62は、連結部23、24の縁部、および、可動部21および支持部22の縁部のうちの連結部23、24近傍部分を除くように設けられているとも言える。
これにより、後述するように、基体2上に絶縁層61、62が形成された状態で比較的簡単に、可動部21および支持部22の側面全域を平坦化処理することができる。また、この平坦化処理に伴って、連結部23、24およびその近傍部の縁部や角部を丸め処理することができる。
【0032】
よって、可動部21の回動に伴って連結部23、24に生じる応力集中を防止または緩和することができる。その結果、光スキャナー1の長寿命化を図ることができる。
より具体的に説明すると、絶縁層61、62は、可動部21の側面、各連結部23、24の側面および支持部22の側面には形成されていない。そのため、可動部21の側面、各連結部23、24の側面および支持部22の側面には、それぞれ、絶縁層が実質的に形成されていない面、すなわち、シリコンで構成された面が露出している。
【0033】
なお、本明細書において、「絶縁層が実質的に形成されていない」とは、絶縁層が全く形成されていないことの他、自然酸化により形成されたシリコン酸化膜などの絶縁層が形成されていることをも含む概念であり、より具体的には、絶縁層が形成されていても、その平均厚さが10nm未満であることをいう。また、絶縁層61、62は、自然酸化により形成された極薄い絶縁層ではなく、10nm以上の厚さを有するものである。
【0034】
そして、絶縁層61は、基体2の上面のうち、可動部21の上面(すなわち光反射部211)、各連結部23、24の上面の縁部、および、支持部22の上面の縁部のうちの各連結部23、24との境界部近傍部分を除いて、それ以外の部分を覆うように設けられている。そのため、可動部21の上面(すなわち光反射部211)、各連結部23、24の上面の縁部、および、支持部22の上面の縁部のうちの各連結部23、24との境界部近傍部分には、それぞれ、絶縁層が実質的に形成されていない面、すなわち、シリコンで構成された面が露出している。
【0035】
すなわち、絶縁層61は、基体2を板厚方向から平面視したときに、可動部21の上面、連結部23、24の縁部、および、可動部21および支持部22の縁部のうちの連結部23、24近傍部分を除いて、基体2の上面の略全域を覆うように設けられている。これにより、後述するように絶縁層61が迷光防止機能を有する場合、その迷光防止機能を効果的に発揮することができる。
【0036】
一方、絶縁層62は、基体2の下面のうち、可動部21の下面の縁部、各連結部23、24の下面の縁部、および、支持部22の下面の縁部のうちの各連結部23、24との境界部近傍部分を除いて、それ以外の部分を覆うように設けられている。そのため、可動部21の下面の縁部、各連結部23、24の下面の縁部、および、支持部22の下面の縁部のうちの各連結部23、24との境界部近傍部分には、それぞれ、絶縁層が実質的に形成されていない面、すなわち、シリコンで構成された面が露出している。
【0037】
すなわち、絶縁層62は、基体2を板厚方向から平面視したときに、連結部23、24の縁部、および、可動部21および支持部22の縁部のうちの連結部23、24近傍部分を除いて、基体2の下面の略全域を覆うように設けられている。これにより、導体パターン8の各部同士の絶縁を確実なものとすることができる。また、後述するように絶縁層62が迷光防止機能を有する場合、その迷光防止機能を効果的に発揮することができる。
【0038】
このような絶縁層61、62は、可動部21の側面、各連結部23、24の側面および支持部22の側面だけでなく、これらの側面近傍の上面部分および下面部分を除くように形成されているので、後述するように、基体2上に絶縁層61、62を形成した状態で、平坦化処理を行うことにより、各側面を全域に亘って平坦化するとともに、各角部を丸めることができる。
この絶縁層61、62は、それぞれ、例えば、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜で構成されている。なお、このような絶縁層61、62の形成方法については、後述する基体2の製造方法の説明において、詳述する。
【0039】
このような絶縁層61、62は、それぞれ、絶縁性を有する。そのため、絶縁層62上に設けられたコイル41、配線72、74および電極73、75で構成された導体パターンの各部同士の短絡を防止することができる。
特に、絶縁層61、62は、シリコン酸化膜で構成されているのが好ましい。より具体的には、絶縁層61、62は、シリコン熱酸化膜で構成されているのが好ましい。
シリコン酸化膜は、絶縁性を有するとともに、シリコンの熱酸化処理により比較的簡単に形成することができる。また、平坦化処理として水素アニール処理を用いた場合、絶縁層61、62の表面に微細な凹凸を形成することができる。このような凹凸を有する絶縁層61、62は、光の反射を防止または抑制することができる。
【0040】
このように、絶縁層61、62をシリコン酸化膜で構成した場合、絶縁層61、62は、光スキャナー1に用いる光に対して反射を防止する機能をも有する。すなわち、絶縁層61、62は、光スキャナーに用いる光に対して反射を防止する反射防止膜を構成する。また、絶縁層61、62をシリコン酸化膜で構成した場合、絶縁層61、62は、光を拡散する機能をも有する。このような光反射防止機能および光拡散機能を有する絶縁層61、62は、光が可動部21の光反射部211で反射する以外の光が他の部分で反射して迷光となるのを防止することができる。すなわち、絶縁層61、62は、それぞれ、迷光を防止する迷光防止層を構成する。
また、絶縁層61、62の厚さは、それぞれ、特に限定されないが、例えば、10nm以上1500nm以下程度である。
【0041】
[支持体]
支持体3は、前述した基体2を支持する機能を有する。また、支持体3は、後述する駆動手段4の永久磁石42、43を支持する機能をも有する。
この支持体3は、上方に開放する凹部31を有する箱状をなしている。言い換えると、支持体3は、板状をなす板状部32と、その板状部32の上面の外周部に沿って設けられた枠状をなす枠状部33とで構成されている。
このような支持体3の上面のうち凹部31の外側の部分、すなわち、枠状部33の上面には、前述した基体2の支持部22の下面が接合されている。これにより、基体2の可動部21および1対の連結部23、24と支持体3との間には、可動部21の回動を許容する空間が形成されている。
【0042】
このような支持体3の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、石英ガラス、パイレックスガラス(「パイレックス」は登録商標)、テンパックスガラス等のガラス材料や、単結晶シリコン、ポリシリコン等のシリコン材料、LTCC(低温焼結セラミックス)等が挙げられる。
また、基体2と支持体3との接合方法としては、支持体3の構成材料、形状等に応じて適宜決められるものであり、特に限定されないが、接着剤を用いた方法、陽極接合法、直接接合法等が挙げられる。
【0043】
[駆動手段]
駆動手段4は、コイル41および1対の永久磁石42、43を有し、前述した基体2の可動部21を電磁駆動方式(より具体的にはムービングコイル方式)により回動駆動させるものである。電磁駆動方式は、大きな駆動力を発生させることができる。そのため、電磁駆動方式を採用する駆動手段4によれば、低駆動電圧化を図りつつ、可動部21の振れ角を大きくすることができる。
【0044】
コイル41は、図2に示すように、可動部21の下面に絶縁層62を介して設けられている。このコイル41は、可動部21の光反射部211とは反対側の面上に設けられた絶縁層62上に設けられているため、基体2の光反射部211とは反対側の板面を有効利用することができる。また、光反射部211の設計の自由度が低下することはない。
本実施形態では、コイル41は、図3に示すように、可動部21の板面に沿って渦巻状に形成されている。このような渦巻状のコイル41は、単に環状に形成したコイルに比し大きな磁力を発生させることができ、また、可動部21の厚さ方向に積層して形成したコイルに比し構成が簡単で製造も容易である。すなわち、コイル41の構成を比較的簡単なものとするとともに、駆動電圧を抑えつつ、コイル41に生じる磁力を大きくすることができる。
【0045】
また、コイル41を構成する素線の一端(渦巻きの外周側の端)は、配線72を介して電極73に電気的に接続されている。また、コイル41を構成する素線の他端(渦巻きの中心側の端)は、配線74を介して電極75に電気的に接続されている。これにより、電極73と電極75との間に電圧を印加することにより、コイル41に通電することができる。
【0046】
配線72は、連結部23の下面上に、連結部23の長手方向に沿って設けられ、配線74は、連結部24の下面上に、連結部24の長手方向に沿って設けられている。
また、電極73、74は、それぞれ、支持部22の下面上に設けられている。
また、配線74は、可動部21の中央部付近まで延びて形成されており、可動部21上でコイル41と交差している。従って、配線74とコイル41との間には、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜等で構成された絶縁層63が設けられ、電気的に短絡しないように構成されている。
なお、コイル41を構成する素線の他端(渦巻きの中心側の端)と配線74との接続は、ボンディングワイヤーを介して行ってもよい。
【0047】
このような導体パターン8を構成するコイル41、配線72、74および電極73、75の構成材料としては、それぞれ、導電性を有するとともに、特に限定されないが、例えば、Cu、Ag、Al、Pt、Ir、Os、Re、W、Ta、Ru、Tc、Mo、Nb、Au、Cr、Ni、等が挙げられる。また、これらの構成材料を複数組み合わせて用いても良い。
【0048】
一方、1対の永久磁石42、43は、支持体3に接合・固定されている。
永久磁石42は、可動部21の回動中心軸Xに対して一方側(図1、2にて左側)に設けられ、また、永久磁石43は、可動部21の回動中心軸Xに対して他方側(図1、2にて右側)に設けられている。そして、1対の永久磁石42、43は、可動部21を介して対向している。
また、永久磁石42は、可動部21側をN極、その反対側をS極とするように設置され、永久磁石43は、可動部21側をS極、その反対側をN極とするように設置されている。したがって、1対の永久磁石42、43は、可動部21付近に、非回動時の可動部21の板面に平行で、かつ、可動部21の回動中心軸Xに直角な方向の磁界を発生させる。
【0049】
このような永久磁石42、43としては、それぞれ、特に限定されず、例えば、ネオジム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、ボンド磁石などの、硬磁性体を着磁したものを好適に用いることができる。
なお、コイル41の磁界との相互作用により可動部21を回動し得るものであれば、永久磁石の数、配置や極性等は、図示のものに限定されないことは言うまでもない。
【0050】
以上のような構成を有する光スキャナー1は、次のようにして作動する。
電極73と電極75との間に周期的に変化する電圧(交番電圧、間欠的な直流等)を印加する。これにより、コイル41の上側がN極、下側がS極となる第1の磁界と、コイル41の上側がS極、下側がN極となる第2の磁界とが、交互にかつ周期的に発生する。
第1の電界では、コイル41の上側が永久磁石43側に引きつけられ、反対にコイル41の下側が永久磁石42側に引き付けられ、可動部21が回動中心軸Xを中心に図2にて時計回りに回動する(第1の状態)。反対に、第2の電界では、コイル41の上側が永久磁石42側に引きつけられ、反対にコイル41の下側が永久磁石43側に引き付けられ、可動部21が回動中心軸Xを中心に図2にて反時計回りに回動する(第2の状態)。このような第1の状態と第2の状態とが交互に繰り返され、可動部21が回動中心軸Xを中心に回動する。
このように、1対の永久磁石42、43の磁界中に配された可動部21は、各連結部23、24を捩れ変形させながら、支持部22に対し回動(振動)する。
以上説明したように構成された光スキャナー1によれば、後述する製造方法を用いて製造することができ、これにより、安価で、優れた振動特性を有する。
【0051】
(アクチュエーターの製造方法)
以上のような光スキャナー1は、例えば、次のようにして製造することができる。
以下、本発明のアクチュエーターの製造方法の一例として、光スキャナー1の製造方法を説明する。
図5および図6は、それぞれ、図1に示す光スキャナーの製造方法を説明する断面図、図7は、図6(b)に示す第1の工程後の基体を示す平面図である。なお、図5および図6は、それぞれ、図2に対応する断面で示されている。
光スキャナー1の製造方法は、[A]可動部21、連結部23、24、支持部22および除去部26を有する基体302を形成する第1の工程と、[B]導体パターン8(導体部)を形成する第2の工程と、[C]除去部26を除去する第3の工程とを有する。
【0052】
[A]第1の工程
−A1−
まず、図5(a)に示すように、シリコン基板102を用意する。
このシリコン基板102は、後述するエッチング、平坦化処理および除去部26の除去を経ることにより基体2となる基板である。
【0053】
−A2−
次に、図5(b)に示すように、シリコン基板102の上面上に絶縁層161を一様に形成するとともに、シリコン基板102の下面上に絶縁層162を一様に形成する。
この絶縁層161、162は、それぞれ、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜で構成されている。
絶縁層161、162の形成方法としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、絶縁層161、162をシリコン酸化膜とする場合には、熱酸化法を用いることができ、また、絶縁層161、162をシリコン窒化膜とする場合、プラズマCVD、LPCVD等の気相成膜法を用いることができる。
【0054】
−A3−
次に、絶縁層161、162の一部を除去することにより、図5(c)に示すように、絶縁層61、62を形成する。
より具体的に説明すると、まず、絶縁層161、162上にそれぞれレジスト膜(図示せず)を形成する。このレジスト膜の構成材料としては、ポジ型またはネガ型のレジスト材料を用いることができる。
【0055】
次に、このレジスト膜を露光および現像することにより、絶縁層61、62の平面視形状に対応した形状をなすマスクを形成し、そのマスクを用いて、絶縁層161、162の一部をエッチングにより除去し、その後、マスク(レジスト膜)を除去する。
上記エッチングとしては、特に限定されないが、例えば、リアクティブイオンエッチング(RIE)、CFを用いたドライエッチング等が挙げられる。
また、マスク(レジスト膜)の除去方法としては、特に限定されないが、例えば、硫酸による洗浄、Oアッシング等が挙げられる。
【0056】
このように、後述する第2の工程[B]の前に、シリコン基板102上に絶縁層61、62を形成する工程を有することにより、第2の工程[B]において、絶縁層61上に導体パターン8を形成することができる。これにより、得られる光スキャナー1において、導体パターン8の各部同士の短絡を防止することができる。
なお、絶縁層61、62を形成する工程は、後述する工程−A5−の後、または、工程A6−の後であってもよい。絶縁層61、62を形成する工程を工程A6−の後に行う場合、基体302の表面の全域にわたって絶縁層を形成してもよい。
【0057】
−A4−
次に、図5(c)に示すように、絶縁層62上に、基体2の平面視形状に対応した形状をなすマスク200を形成する。
より具体的に説明すると、まず、絶縁層62上にそれぞれレジスト膜(図示せず)を形成する。このレジスト膜の構成材料としては、ポジ型またはネガ型のレジスト材料を用いることができる。
次に、このレジスト膜を露光および現像することにより、基体2の平面視形状に対応した形状をなすマスク200を形成する。
なお、このマスク200は、絶縁層61上に形成してもよいし、絶縁層61上および絶縁層62上の双方に形成してもよい。
【0058】
−A5−
次に、マスク200を介してシリコン基板102をドライエッチングすることにより、図6(a)に示すように、基体2に対応した形状をなす基体202を形成する。
この基体202には、かかるドライエッチングにより厚さ方向に貫通する貫通孔125が形成されている。この貫通孔125の壁面には、ドライエッチングにより形成された微細な凹凸が形成されている。このような貫通孔125は、後述する平坦化処理を経て貫通孔225となる。
この貫通孔125は、幅狭に形成された貫通溝である。
【0059】
また、基体202は、図7に示すように、可動部121と、可動部121に連結された連結部123、124と、連結部123、124を支持する支持部122と、可動部121および連結部123、124に対して貫通孔125を介して離間するとともに支持部122に対して支持部122よりも構造的な強度が弱い脆弱部127を介して接続された除去可能な除去部126とを有する。なお、脆弱部127は、可動部121および連結部123、124に接続することはできない。従って、例えば、除去部126を挟んで可動部121および連結部123、124の反対側の支持部122に接続される。
【0060】
可動部121は、後述する平坦化処理を経ることにより可動部21となるものである。また、連結部123、124は、後述する平坦化処理を得ることにより連結部23、24となるものである。また、支持部122は、後述する平坦化処理および除去部26の除去を経ることにより支持部22となるものである。
また、除去部126は、後述する平坦化処理を経ることにより除去部26となるものであり、後述する第3の工程で除去されるものである。
また、脆弱部127は、後述する第3の工程で破断されるものである。これにより、第3の工程において除去部26を除去することができる。
【0061】
脆弱部127は、貫通孔125が除去部126と支持部122との間において間欠的に形成されていないことにより形成されている。言い換えれば、この脆弱部127は、除去部126と支持部122とを局所的に接続する複数の接続部で構成されている。これにより、第1の工程において、脆弱部127を可動部121等の形成と同時にエッチングにより簡単に形成することができる。また、このような脆弱部127は、後述する第3の工程において、例えば人手により簡単に破断することができる。本実施形態では、脆弱部127を構成する複数の接続部が、同一直線状に互いに間隔を隔てて並んで設けられ、かつ、除去部126の片側に偏在している。そのため、後述する第3の工程において、除去部26の脆弱部127とは反対側の部分に外力を付与することにより、脆弱部127を簡単に破断し、除去部26を除去することができる。
なお、脆弱部127は、除去部26に外力を付与することにより支持部22を損傷することなく破断することができるものであれば、前述した構成に限定されず、例えば、薄肉化された薄肉部で構成されていてもよい。また、脆弱部127を構成する複数の接続部の数、配置、形状、大きさ等は、図示のものに限定されるものではない。
【0062】
また、貫通孔125(貫通溝)の幅は、基体202の厚さに応じて決められるものであり、後述する第2の工程において、基体302の表面がレジスト材料を均一に塗布し得る程度の平坦性を確保できれば、特に限定されないが、例えば、1μm以上100μm以下であるのが好ましく、3μm以上50μm以下であるのがより好ましく、5μm以上30μm以下であるのがさらに好ましい。これに対し、かかる幅が小さすぎると、後述する工程において、除去部126(26)と可動部121(21)または連結部123(23)、124(24)とが固着してしまい、除去部26の除去が困難になる場合がある。一方、かかる幅が大きすぎると、後述する第2の工程において、基体302の表面の平坦性が悪化して、レジスト材料を基体302の表面に均一に塗布することが難しくなる。
【0063】
また、貫通孔125の形成に用いるドライエッチングとしては、特に限定されず、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等を用いることができる。
なお、貫通孔125の形成方法としては、KOH水溶液等を用いたウェットエッチングを用いてもよい。この場合、シリコン基板102の上面にもマスク200を形成すればよい。
【0064】
−A6−
次に、マスク200を除去する。
マスク200(レジスト膜)の除去方法としては、特に限定されないが、例えば、硫酸による洗浄、Oアッシング等が挙げられる。
その後、基体202に平坦化処理を施す。これにより、図6(b)に示すように、基体302を得る。
【0065】
この基体302は、可動部21と、可動部21に連結された連結部23、24と、連結部23、24を支持する支持部22と、可動部21および連結部23、24に対して貫通孔225を介して離間するとともに支持部22に対して支持部22よりも構造的な強度が弱い脆弱部127を介して接続された除去可能な除去部26とを有する。
【0066】
ここで、貫通孔225の壁面と、基体302の上面および下面のうちの貫通孔225の両開口端近傍でかつ絶縁層61、62に覆われていない部分とがそれぞれ露出している。
そのため、貫通孔225の壁面が平坦化されるとともに、貫通孔225の壁面に存在する角部、すなわち、可動部21の側面と各連結部23、24の側面との境界部付近、および、支持部22の側面と各連結部23、24の側面との境界部付近が丸められる。
さらに、基体302の上面および下面のうちの貫通孔225の両開口端付近でかつ絶縁層61、62に覆われていない部分も丸められる。
【0067】
このような平坦化処理としては、特に限定されないが、例えば、熱処理(より具体的には、数torr程度の減圧〜大気圧の圧力下、900〜1300℃程度、Hを導入したAr雰囲気下で行う水素アニール処理、または、水素アニール処理後、雰囲気ガスを切り替え、大気圧付近下、900〜1300℃程度、Ar雰囲気でアニール処理を連続で行う処理)を好適に用いることができる。これにより、可動部21、支持部22および連結部23、24の側面の平坦化処理、および、可動部21、支持部22および連結部23、24の縁部や角部の丸め処理を行うことができる。さらに、フッ硝酢酸によるエッチング処理や、熱酸化処理とフッ酸によるエッチングを繰り返す処理によっても、平坦化処理を行なうことができる。
また、絶縁層61、62がシリコン酸化膜で構成されている場合、平坦化処理として水素アニール処理用いると、絶縁層61、62の表面に微細な凹凸が形成される。
【0068】
以上のような第1の工程によれば、シリコン基板102をエッチングした後に平坦化処理することにより、可動部21、連結部23、24および支持部22を形成するので、連結部23、24および連結部23、24の周辺の角部が丸められるとともに表面の凹凸部が平坦化される。そのため、得られる光スキャナー1は、可動部21の回動に伴って連結部23、24および連結部23、24の周辺に生じる応力集中を防止または緩和することができる。
また、第1の工程における平坦化処理は、第2の工程前に行うので、基体202上に導体部(導体パターン8)が形成されていない状態で行うことができる。そのため、平坦化処理によって導体部にダメージを与えることが無く、さらに、平坦化処理を行うに際し、基体202上の導体部を保護する処理が不要となる。
【0069】
[B]第2の工程
−B1−
次に、図6(c)に示すように、絶縁層62上にコイル41を含む導体パターン8を形成する。また、絶縁層63も形成する。
より具体的には、例えば、コイル41、配線72および電極73を一括して形成し、絶縁層63を形成した後に、配線74および電極75を一括して形成する。
【0070】
かかる導体パターン8(コイル41、配線72、74および電極73、75)の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、金属箔の接合等が挙げられる。
また、絶縁層63の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、プラズマCVD等の気相成膜法を用いることができる。
【0071】
以上のような第2の工程[B]によれば、基体302に除去部26が可動部21および連結部23.24に対して貫通孔225を介して離間して設けられているので、その貫通孔225の幅を小さくすることにより、基体302を無加工の平坦な基板と同様に取り扱うことができる。これにより、第2の工程において、基体302の表面にレジスト材料を均一に塗布することができる。そのため、フォトリソグラフィを用いて導体パターン8を形成することができる。
【0072】
[C]第3の工程
次に、除去部26を除去する。これにより、図6(d)に示すように、基体2が得られる。
除去部26の除去は、特に限定されないが、人手により除去部26に外力を付与して脆弱部127を破断することにより行うことができる。なお、脆弱部127を構成する複数の接続部をエッチング以外の方法、例えば、レーザー、刃具等により切断または破断することにより、除去部26を除去することも可能である。また、破断により除去部26を除去することによって、脆弱部127に対応する部位の面が形成される。従って、除去部を除去した後の脆弱部127に対応する部位の表面は、平坦化処理された面よりも表面粗さが大きくなる。例えば、表面粗さを平均粗さRaで比較すると、平坦化処理された面のRaよりも、脆弱部127に対応する部位の表面のRaの方が大きい値となる。
その後、図示しないが、基体2に支持体3を接合し、1対の永久磁石42、43を設置する。
以上の工程により、光スキャナー1が得られる。
【0073】
以上説明したような光スキャナー1の製造方法によれば、第1の工程[A]において、シリコン基板102をエッチングした後に平坦化処理することにより、可動部21、連結部23、24および支持部22を形成するので、連結部23、24および連結部23、24の周辺の角部が丸められるとともに表面の凹凸部が平坦化される。そのため、得られる光スキャナー1は、可動部21の回動に伴って連結部23、24および連結部23、24の周辺に生じる応力集中を防止または緩和することができる。
【0074】
また、このような平坦化処理は、第2の工程[B]の前に行うので、基体202上に導体部(導体パターン8)が形成されていない状態で行うことができる。そのため、平坦化処理を行うに際し、基体202上の導体部を保護する処理が不要となる。
また、第2の工程[B]において、基体302に除去部26が可動部21および連結部23、24に対して貫通孔225を介して離間して設けられているので、その貫通孔225の幅を小さくすることにより、基体302を無加工の平坦な基板と同様に取り扱うことができる。そのため、第2の工程[B]において、フォトリソグラフィを用いて導体パターン8を形成することができる。
さらに、除去部26は支持部22に対して支持部22よりも構造的に強度が弱い脆弱部127を介して接続されているので、第3の工程[C]において、除去部26を例えば人手により容易に除去することができる。
このようなことから、振動系を有する基体2上に導体パターン8を設けた構成において、比較的簡単に、長寿命化を図ることができる。
また、このような製造方法を用いて製造された光スキャナー1、安価で、優れた振動特性を有する。
【0075】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図8は、本発明の第2実施形態に係る光スキャナー(アクチュエーター)を示す平面図(上面図)、図9は、図8中のA−A線断面図、図10は、図8に示す光スキャナーの製造方法における第1の工程後の基体を示す平面図である。
【0076】
以下、第2実施形態の光スキャナーについて、前述した実施形態の光スキャナーとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実施形態の光スキャナーは、支持部の構成が異なる以外は、第1実施形態の光スキャナー1とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0077】
本実施形態の光スキャナー1Aは、図8および図9に示すように、支持体3に支持された基体2Aを有する。
基体2Aは、可動部(可動板)21と、可動部21に連結する1対の連結部23、24と、1対の連結部23、24とを支持する支持部22Aとを有している。
支持部22Aは、連結部23を支持する支持部22aと、連結部24を支持する支持部22bとで構成されている。
このように構成された光スキャナー1Aも前述した第1実施形態の光スキャナー1と同様にして製造することができる。
【0078】
光スキャナー1Aの製造に際しては、第1の工程において、シリコン基板をエッチングすることにより、図10に示すような基体202Aを形成した後、この基体202Aを平坦化処理する。なお、図10は、1枚のシリコン基板から基体2Aを製造する場合の例を示している。
この基体202Aは、可動部121と、可動部121に連結された連結部123、124と、連結部123、124を支持する支持部122a、122bと、可動部121および連結部123、124に対して貫通孔125Aを介して離間するとともに支持部122a、122bに対して支持部122a、122bよりも構造的に強度が弱い脆弱部127Aを介して接続された除去可能な除去部126Aとを有する。
【0079】
脆弱部127Aは、貫通孔125Aが除去部126Aと支持部122a、122bとの間において間欠的に形成されていないことにより形成されている。この脆弱部127Aは、除去部126Aと支持部122a、122bとを局所的に接続する複数の接続部で構成されている。
このような基体202Aは、平坦化処理された後、前述した第1実施形態の光スキャナー1の製造方法と同様の第2の工程および第3の工程に供される。これにより、光スキャナー1Aが得られる。
以上説明したような第2実施形態によっても、振動系を有する基体2A上に導体パターン8を設けた構成において、比較的簡単に、長寿命化を図ることができる。
【0080】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図11は、本発明の第3実施形態に係る光スキャナー(アクチュエーター)を示す平面図(上面図)、図12は、図11に示す光スキャナーの製造方法における第1の工程後の基体を示す平面図である。
【0081】
以下、第3実施形態の光スキャナーについて、前述した実施形態の光スキャナーとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第3実施形態の光スキャナーは、2次元走査可能な振動系を有する光スキャナー(アクチュエーター)に本発明を適用した以外は、第1実施形態の光スキャナー1とほぼ同様である。
【0082】
本実施形態の光スキャナー1Bは、図11に示すように、互いに直交する軸線X1、Y1まわりに回動する2つの振動系を有する基体2Bと、基体2Bの各振動系を駆動する駆動手段4Bとを備える。また、図示しないが、光スキャナー1Bは、基体2Bを支持する支持体(図示せず)を備える。
基体2Bは、枠状の第1の可動部21Bと、第1の可動部21Bに連結する1対の第1の連結部23B、24Bと、1対の第1の連結部23B、24Bを支持する枠状の支持部22Bと、第1の可動部21Bの内側に設けられた板状の第2の可動部51と、第1の可動部21Bに支持されるとともに第2の可動部51に連結する1対の第2の連結部53、54とを有する。
ここで、第1の可動部21Bおよび1対の第1の連結部23B、24Bが軸線X1まわりに回動する第1の振動系を構成し、また、第2の可動部51および1対の第2の連結部53、54が軸線Y1まわりに回動する第2の振動系を構成する。
【0083】
第1の振動系において、第1の可動部21Bは、第1の可動部21Bの板厚方向からの平面視にて、四角環状をなしている。なお、第1の可動部21Bの平面視形状は、枠状をなしていれば、特に限定されず、例えば、円環状をなしていてもよい。
このような第1の可動部21Bの上面には、第1のコイル44が設けられている。この第1のコイル44は、第1の連結部23B、24B上に設けられた配線72B、74Bを介して、支持部22B上に設けられた電極73B、75Bに電気的に接続されている。
【0084】
第1の連結部23B、24Bは、それぞれ、軸線X1に沿って長い長手形状をなしており、弾性変形可能である。第1の連結部23B、24Bは、それぞれ、第1の可動部21Bを支持部22Bに対して回動可能とするように、第1の可動部21Bと支持部22Bとを連結している。このような、第1の連結部23B、24Bは、互いに同軸的に設けられており、軸線X1を中心として、第1の可動部21Bが支持部22Bに対して回動するように構成されている。
【0085】
第2の振動系において、第2の可動部51は、第2の可動部の板厚方向からの平面視にて、四角形をなしている。なお、第2の可動部51の形状は、第1の可動部21Bの内側に配置することができれば、特に限定されず、例えば、平面視にて、円形状、十字形状、四角形以外の多角形状等をなしていてもよい。
このような第2の可動部51の上面には、光反射性を有する光反射部511が設けられている。また、第2の可動部51の下面には、第2のコイル45が設けられている。この第2のコイル45は、図示しないが、1対の配線を介して、支持部22B上に設けられた1対の電極に電気的に接続されている。
【0086】
第2の連結部53、54は、それぞれ、軸線Y1に沿って長い長手形状をなしており、弾性変形可能である。第2の連結部53、54は、それぞれ、第2の可動部51を第1の可動部21Bに対して回動可能とするように、第2の可動部51と第1の可動部21Bとを連結している。このような第2の連結部53、54は、互いに同軸的に設けられており、軸線Y1を中心として、第2の可動部51が第1の可動部21Bに対して回動するように構成されている。
ここで、第1の可動部21Bは、1対の連結部53、54を支持する支持部52を構成するとも言える。
【0087】
このような基体2Bの2つの振動系を駆動する駆動手段4Bは、前述した第1のコイル44と、第2のコイル45と、1対の永久磁石46、47と、第1のコイル44および第2のコイル45に通電する電源(図示せず)とを有する。
1対の永久磁石46、47は、平面視にて、基体2Bを介して対向して設けられている。この1対の永久磁石46、47は、平面視にて軸線X1、Y1の双方に傾斜する軸線aに沿って基体2Bを貫く磁界を発生させるように設けられている。
【0088】
ここで、平面視における軸線X1、Y1に対する軸線aの傾斜角度は、30〜60度であるのが好ましく、40〜50度であるのがより好ましく、ほぼ45度であるのがさらに好ましい。このように永久磁石46、47を設けることで、円滑に、第1の可動部21Bを軸線X1、Y1まわりにそれぞれ回動させることができる。本実施形態では、線分aは、軸線X1、Y1に対して約45度傾斜している。
【0089】
このような1対の永久磁石46、47による磁界のもと、図示しない電源は、第1のコイル44に、第1の周波数で電圧または電流が周期的に変化する第1の電圧が印加するとともに、第2のコイル45に、第2の周波数で電圧または電流が周期的に変化する第2の電圧を印加すると、第1の可動部21Bが軸線X1まわりに第1の周波数で回動するとともに、第2の可動部51が軸線Y1まわりに第2の周波数で回動する。
【0090】
これにより、光スキャナー1Bは、1つの光スキャナーで光を2次元的に走査することができる。そのため、2次元走査を必要とする機器の小型化を図ることができる。また、このような光スキャナー1Bを用いると、1次元走査の光スキャナーを2つ組み合わせて2次元走査を実現する場合のような2つの光スキャナー間のアライメントが不要であるため、2次元走査を必要とする機器の製造が容易となる。
このように構成された光スキャナー1Bも前述した第1実施形態の光スキャナー1と同様にして製造することができる。
【0091】
光スキャナー1Bの製造に際しては、第1の工程において、シリコン基板をエッチングすることにより、図12に示すような基体202Bを形成した後、この基体202Bを平坦化処理する。
この基体202Bは、第1の可動部152と、第1の可動部152に連結された第1の連結部123B、124Bと、第1の連結部123B、124Bを支持する支持部122Bと、第1の可動部152および第1の連結部123B、124Bに対して貫通孔125Bを介して離間するとともに支持部122Bに対して支持部122Bよりも構造的な強度が弱い脆弱部127Bを介して接続された除去可能な除去部126Bとを有する。
【0092】
また、基体202Bは、第2の可動部151と、第1の可動部152に支持されるとともに第2の可動部151に連結された第2の連結部153、154と、第2の可動部151および第2の連結部153、154に対して貫通孔325を介して離間するとともに第1の可動部152に対して支持部122Bよりも構造的な強度が弱い脆弱部129を介して接続された除去可能な除去部128とを有する。
【0093】
第1の可動部152は、平坦化処理を経ることにより第1の可動部21Bとなるものである。また、第1の連結部123B、124Bは、平坦化処理を得ることにより第1の連結部23B、24Bとなるものである。また、支持部122Bは、平坦化処理、および、平坦化処理後の除去部126Bの除去を経ることにより支持部22Bとなるものである。
また、除去部126Bは、平坦化処理され、第2の工程において第1のコイル44および第2のコイル45等の形成した後に、第3の工程において脆弱部127Bの破断により除去されるものである。
【0094】
また、第2の可動部151は、平坦化処理を経ることにより第2の可動部51となるものである。また、第2の連結部153、154は、平坦化処理を得ることにより第2の連結部53、54となるものである。
また、除去部128は、平坦化処理され、第2の工程において第1のコイル44および第2のコイル45等の形成した後に、第3の工程において脆弱部129の破断により除去されるものである。
以上説明したような第3実施形態によっても、振動系を有する基体2B上に導体パターンを設けた構成において、比較的簡単に、長寿命化を図ることができる。
【0095】
以上説明したような光スキャナーは、例えば、プロジェクター、レーザープリンター、イメージング用ディスプレイ、バーコードリーダー、走査型共焦点顕微鏡などの画像形成装置に好適に適用することができる。その結果、優れた描画特性を有する画像形成装置を提供することができる。
このような画像形成装置よれば、前述したような光スキャナー1を有するので、安価で、信頼性に優れる。
【0096】
(画像形成装置)
ここで、本発明の画像形成装置の実施形態を説明する。
(プロジェクター)
図13は、本発明の画像形成装置の実施形態(プロジェクター)を示す概略図である。なお、以下では、説明の便宜上、スクリーンSCの長手方向を「横方向」といい、長手方向に直角な方向を「縦方向」という。
【0097】
図13に示すプロジェクター9は、レーザーなどの光を照出する光源装置91と、クロスダイクロイックプリズム92と、1対の本発明の光スキャナー93、94(例えば、光スキャナー1と同様の構成の光スキャナー)と、固定ミラー95とを有している。
光源装置91は、赤色光を照出する赤色光源装置911と、青色光を照出する青色光源装置912と、緑色光を照出する緑色光源装置913とを備えている。
クロスダイクロイックプリズム92は、4つの直角プリズムを貼り合わせて構成され、赤色光源装置911、青色光源装置912、緑色光源装置913のそれぞれから照出された光を合成する光学素子である。
【0098】
このようなプロジェクター9は、赤色光源装置911、青色光源装置912、緑色光源装置913のそれぞれから、図示しないホストコンピューターからの画像情報に基づいて照出された光をクロスダイクロイックプリズム92で合成し、この合成された光が、光スキャナー93、94によって走査され、さらに固定ミラー95によって反射され、スクリーンSC上でカラー画像を形成するように構成されている。
【0099】
ここで、光スキャナー93、94の光走査について具体的に説明する。
まず、クロスダイクロイックプリズム92で合成された光は、光スキャナー93によって横方向に走査される(主走査)。そして、この横方向に走査された光は、光スキャナー94によってさらに縦方向に走査される(副走査)。これにより、2次元カラー画像をスクリーンSC上に形成することができる。このような光スキャナー93、94として本発明の光スキャナーを用いることで、極めて優れた描画特性を発揮することができる。
【0100】
ただし、プロジェクター9としては、光スキャナーにより光を走査し、対象物に画像を形成するように構成されていれば、これに限定されず、例えば、固定ミラー95を省略してもよい。
このように構成されたプロジェクター9によれば、前述した光スキャナー1と同様の構成の光スキャナー93、94を備えるので、安価に、高品位な画像を得ることができる。
【0101】
(ヘッドアップディスプレイ)
図14は、本発明の画像形成装置の実施形態(ヘッドアップディスプレイ)を示す概略図である。なお、以下では、前述したプロジェクター9と同様の構成については、その説明を省略する。
図14に示すヘッドアップディスプレイ9Aは、自動車、飛行機等の移動体において、各種情報をフロントウインドウSC1に投影する装置である。
【0102】
このヘッドアップディスプレイ9Aは、赤色光源装置911、青色光源装置912および緑色光源装置913と、クロスダイクロイックプリズム92と、1対の本発明の光スキャナー93、94と、固定ミラー95Aとを有している。
ここで、固定ミラー95Aは、凹面ミラーであり、光スキャナー94からの光をフロントウインドウSC1に投影する。すると、移動体の操縦者は、フロントウインドウSC1に対して前方に位置する仮想面SC2に虚像として表示像を視認することができる。
【0103】
以上、本発明のアクチュエーターの製造方法、アクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明のアクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。また、本発明のアクチュエーターの製造方法では、任意の工程を付加することもできる。
【0104】
また、前述した実施形態では、可動部が平面視において回動中心軸およびそれに垂直な線分の少なくとも一方に対して対称な形状をなす場合を説明したが、これに限定されず、可動部が平面視において回動中心軸およびそれに垂直な線分のいずれに対しても非対称な形状をなしていてもよい。
また、前述した実施形態では、可動部を支持部に対して回動可能に連結する連結部が1対設けられた場合を例に説明したが、可動部を支持部に対して回動可能に連結するものであれば、連結部の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0105】
また、前述した実施形態では、本発明のアクチュエーターを光スキャナーに適用した場合を例に説明したが、本発明のアクチュエーターは、これに限定されず、例えば、光スイッチ、光アッテネーター等の他の光学デバイスに適用することも可能である。
また、前述した実施形態では、可動部を回動させる駆動手段がムービングコイル型の電磁駆動方式を採用した構成を例に説明したが、かかる駆動手段は、ムービングマグネット型の電磁駆動方式であってもよいし、また、静電駆動方式、圧電駆動方式等の電磁駆動方式以外の駆動方式を採用するものであってもよい。
また、前述した実施形態では、基体上に絶縁層を介して設けた導体パターンがコイルを有する場合を例に説明したが、かかる導体パターンは、電気的導通のためのものであれば、これに限定されず、例えば、各種駆動源への通電のための配線、各種センサーに接続された配線等を含むものであってもよい。
【符号の説明】
【0106】
1、1A、1B、2B‥‥光スキャナー 2、2A、2B‥‥基体 3‥‥支持体 4、4B‥‥駆動手段 8‥‥導体パターン 9‥‥プロジェクター 9A‥‥ヘッドアップディスプレイ 21、21B‥‥可動部 22、22A、22a、22B、22b‥‥支持部 23、23B‥‥連結部 24、24B‥‥連結部 25‥‥貫通孔 26‥‥除去部 31‥‥凹部 32‥‥板状部 33‥‥枠状部 41‥‥コイル 42‥‥永久磁石 43‥‥永久磁石 44、45‥‥コイル 46、47‥‥永久磁石 51‥‥可動部 52‥‥支持部 53、54‥‥連結部 61‥‥絶縁層 62‥‥絶縁層 63‥‥絶縁層 72、72B‥‥配線 73、73B‥‥電極 74、74B‥‥配線 75、75B‥‥電極 91‥‥光源装置 92‥‥クロスダイクロイックプリズム 93‥‥光スキャナー 94‥‥光スキャナー 95、95A‥‥固定ミラー 102‥‥シリコン基板 121‥‥可動部 122、122a、122B、122b‥‥支持部 123、123B、124、124B‥‥連結部 125、125A、125B‥‥貫通孔 126、126A、126B‥‥除去部 127、127A、127B‥‥脆弱部 128‥‥除去部 129‥‥脆弱部 151、152‥‥可動部 153、154‥‥連結部 161‥‥絶縁層 162‥‥絶縁層 200‥‥マスク 202、202A、202B‥‥基体 211‥‥光反射部 212‥‥側面 213‥‥角部 214‥‥第1接続縁部 221‥‥側面 222‥‥第2接続縁部 225‥‥貫通孔 231‥‥側面 232‥‥角部 233‥‥角部 251‥‥壁面 261‥‥部位 302‥‥基体 325‥‥貫通孔 511‥‥光反射部 911‥‥赤色光源装置 912‥‥青色光源装置 913‥‥緑色光源装置 SC‥‥スクリーン SC1‥‥フロントウインドウ SC2‥‥仮想面 X‥‥回動中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をエッチングした後に平坦化処理することにより、所定の軸まわりに回動可能な可動部、前記可動部に連結された連結部、前記連結部を支持する支持部、前記可動部および前記連結部に対して前記基板を貫通する貫通溝を介して離間するとともに前記支持部に対して構造的な強度が前記支持部よりも弱い脆弱部を介して接続された除去可能な除去部、を含む基体を形成する第1の工程と、
前記基体の上方に導電性を有する導体部を形成する第2の工程と、
前記除去部を除去する第3の工程とを有することを特徴とするアクチュエーターの製造方法。
【請求項2】
前記脆弱部は、前記除去部と前記支持部とを局所的に接続する接続部で構成されている請求項1に記載のアクチュエーターの製造方法。
【請求項3】
前記平坦化処理は、水素アニール処理、水素アニール処理後にAr雰囲気でアニール処理を行う処理、フッ硝酢酸によるエッチング処理、熱酸化処理後にフッ酸によるエッチングを行なう処理、のいずれかである請求項1または2に記載のアクチュエーターの製造方法。
【請求項4】
前記第2の工程前に、前記基体上に絶縁層を形成する工程を有し、
前記第2の工程では、前記絶縁層上に前記導体部を形成する請求項1ないし3のいずれかに記載のアクチュエーターの製造方法。
【請求項5】
前記基板は、シリコン基板である請求項1ないし4のいずれかに記載のアクチュエーターの製造方法。
【請求項6】
前記絶縁層は、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜で構成されている請求項5に記載のアクチュエーターの製造方法。
【請求項7】
前記導体部は、コイルと、前記コイルに電気的に接続された配線とを含む請求項1ないし6のいずれかに記載のアクチュエーターの製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の製造方法を用いて製造されたことを特徴とするアクチュエーター。
【請求項9】
前記可動部は、前記可動部の上方に設けられ、かつ光反射性を有する光反射部を備える請求項8に記載のアクチュエーター。
【請求項10】
所定の軸まわりに回動可能な可動部、前記可動部に連結する連結部、および前記連結部を支持する支持部、を含む基体と、
前記基体上に設けられ、導電性を有する導体部とを有し、
前記可動部は、前記可動部の表面に設けられ、光反射性を有する光反射部を備え、
請求項1ないし7のいずれかに記載の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする光スキャナー。
【請求項11】
光を出射する光源と、
前記光源からの光を走査する光スキャナーとを備え、
前記光スキャナーは、
所定の軸まわりに回動可能な可動部、前記可動部に連結する連結部、および前記連結部を支持する支持部、を含む基体と、
前記基体上に設けられ、導電性を有する導体部とを有し、
前記可動部は、前記可動部の表面に設けられ、かつ光反射性を有する光反射部を備え、
請求項1ないし7のいずれかに記載の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−27942(P2013−27942A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164026(P2011−164026)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】