説明

アクリル樹脂成形体

【課題】耐衝撃性を向上することができると共に、外観を損なうことなく耐候性を向上することができるアクリル樹脂成形体を提供する。
【解決手段】ゴムを添加したアクリル樹脂100質量部に対して、紫外線吸収剤を0.1〜1.0質量部、高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤を0〜0.5質量部、低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤を0.1〜1.0質量部、それぞれ含有するアクリル樹脂成形材料で、アクリル樹脂成形体を作製する。ゴムの添加によって耐衝撃性を向上することができると共に、紫外線吸収剤と、高分子量タイプや低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤を上記の配合量で含有することによって、紫外線吸収剤や光安定剤が表面にブリードして外観を損なうようなことなく、耐候性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋の外廻りのエクステリア部材などとして使用されるアクリル樹脂成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雨樋など家屋の外廻りでエクステリア部材として使用される樹脂成形体は、高い耐候性を要求されるので、紫外線吸収剤などを含有する樹脂組成物を成形して作製されている。特に長期間の使用が要求される樹脂成形体では、表面に無機系塗料やフッ素系塗料を塗装して、長期間の使用に耐えるようにしているが、このような高価な塗装を行なうと、コストの面で不利になる。
【0003】
そこで、樹脂のなかでも耐候性に優れているアクリル樹脂を用いて上記のような樹脂成形体を成形することが行なわれている。
【0004】
ここで、アクリル樹脂は弾性が不足し、耐衝撃性において問題があるので、弾性を高めて耐衝撃性を向上するためにゴムを添加することが行なわれている。しかし、アクリル樹脂にゴムを添加すると耐候性が低下するので、ゴムの添加量を多くすることはできないものであり、耐衝撃性と耐候性はトレードオフの関係にある。特に、ゴムを添加したアクリル樹脂を用いる場合、樹脂成形体の表面から吸水することにより耐候性が低下し易いものである。
【0005】
このため、ゴムの添加によって耐衝撃性を向上しつつ、耐候性を確保するために、アクリル樹脂にはさらに紫外線吸収剤や光安定剤が配合されている。しかし耐候性を確保するために紫外線吸収剤や光安定剤を大量に配合すると、この紫外線吸収剤や光安定剤が樹脂成形体の表面にブリードして、樹脂成形体の外観を損なうおそれがあるという問題があった。
【特許文献1】特開2006−305936号公報
【特許文献2】特開2007−9669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、耐衝撃性を向上することができると共に、外観を損なうことなく耐候性を向上することができるアクリル樹脂成形体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアクリル樹脂成形体は、ゴムを添加したアクリル樹脂100質量部に対して、紫外線吸収剤を0.1〜1.0質量部、高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤を0〜0.5質量部、低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤を0.1〜1.0質量部、それぞれ含有するアクリル樹脂成形材料が、成形されたものであることを特徴とするものである。
【0008】
この発明によれば、ゴムを添加することによって耐衝撃性を向上することができると共に、紫外線吸収剤と、高分子量タイプや低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤を上記の配合量で含有することによって、紫外線吸収剤や光安定剤が表面にブリードして外観を損なうようなことなく、耐候性を向上することができるものである。
【0009】
また本発明において、上記のゴムは、表面の少なくとも一部にシリコン系化合物が被覆されていることを特徴とするものである。
【0010】
この発明によれば、アクリル樹脂成形体の表面から吸水することを抑制することができ、水による劣化を抑えて耐候性が低下することを防ぐことができるものである。
【0011】
また本発明において、上記のゴムは、アクリル樹脂とゴムの合計100質量に対して10〜60質量部添加されていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、ゴムの添加によって耐候性や成形性を損なうことなく、耐衝撃性を向上することができるものである。
【0013】
また本発明において、上記のアクリル樹脂成形材料には、着色剤が含有されていることを特徴とするものである。
【0014】
この発明によれば、着色剤による光の遮断性によって、耐候性をより向上することができるものである。特にコアの表面にアクリル樹脂成形材料を一体成形して被覆する場合、アクリル樹脂成形材料の成形層を光が透過することを着色剤で遮断することができ、コアが光劣化することを防ぐことができるものである。
【0015】
また本発明において、上記の着色剤として少なくとも光輝材を用いるにあたって、ゴムを添加したアクリル樹脂100重量部に対して光輝材が1〜9質量部、光輝材以外の着色剤が光輝材100質量部に対して0〜50質量部添加されていることを特徴とするものである。
【0016】
この発明によれば、光輝材を用いることによって、成形体にメタリック感の意匠を発現させることができるものである。
【0017】
また本発明は、金属と熱可塑性樹脂の少なくとも一方から形成されるコアの表面に、上記のアクリル樹脂成形材料が押出一体成形あるいは射出一体成形されたものであることを特徴とするものである。
【0018】
この発明によれば、耐衝撃性を向上し、また外観が損なわれることなく耐候性を向上したアクリル樹脂成形体を、押出一体成形や射出一体成形で製造することができるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ゴムを添加することによって耐衝撃性を向上することができると共に、紫外線吸収剤と、高分子量タイプや低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤を上記の配合量で含有することによって、紫外線吸収剤や光安定剤が表面にブリードして外観を損なうようなことなく、耐候性を向上することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0021】
本発明に係るアクリル樹脂成形体は、アクリル樹脂を主成分とするアクリル樹脂成形材料を成形することによって得ることができるものである。成形は、押出成形や射出成形など任意の方法で行なうことができる。
【0022】
本発明において用いる上記のアクリル樹脂成形材料において、アクリル樹脂の分子量等は特に制限されるものではないが、メルトフローレート(MFR:測定条件230℃、37.3N)が1〜35g/10minの範囲のものを用いるのが好ましい。このようなアクリル樹脂の市販品を例示すると、住友化学(株)製「LG」及び「LG2」、三菱レイヨン(株)製「MF」及び「VH5」、(株)クラレ製「GF」及び「EH」などがある。
【0023】
そして本発明ではこのアクリル樹脂にゴムを添加して用いるものである。このゴムとしては、特に限定されるものではないが、ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、シリコンゴムなどを使用することができる。
【0024】
またゴムの添加量も特に限定されるものではないが、アクリル樹脂とゴムの合計100質量に対して10〜60質量部の範囲が好ましい。ゴムを添加することによって、アクリル樹脂の低い弾性を補って耐衝撃性を高めることできるものであり、アクリル樹脂成形体の耐衝撃性を向上することができものである。ゴムの添加量が10質量部未満では、ゴムの添加によるこのような耐衝撃性向上の効果を十分に得られないおそれがあり、逆にゴムの添加量が60質量部を超えると、ゴムの量が過大になってアクリル樹脂成形体の耐候性が低下し、また成形性が悪くなるおそれがある。従って、ゴムの添加量を上記の範囲に設定することによって、耐候性を損なうことなく、アクリル樹脂成形体の耐衝撃性を向上することができるものである。
【0025】
また上記のゴムとしては、表面の一部あるいは全面にシリコン系化合物が被覆されているものを用いることが望ましい。このシリコン系化合物としては、シリコン樹脂や、シランカップリング剤などを用いることができる。シリコン樹脂でゴムの表面を被覆する場合、シリコン樹脂はゴムの分子にグラフトして結合していることが好ましい。このようにシリコン系化合物で被覆したゴムを用いることによって、ゴムの耐水性が向上して劣化を抑えることができ、アクリル樹脂成形体の耐候性の低下を防ぐことができるものである。
【0026】
本発明において用いる上記のアクリル樹脂成形材料には、さらに紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤が配合してある。このように紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を併用して配合することによって、アクリル樹脂成形体の耐候性を向上することができるものであり、またゴムの添加による耐候性の低下を補うことができるものである。
【0027】
紫外線吸収剤としては、特に限定されるものではないが、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、トリアジン系の紫外線吸収剤を用いることができる。
【0028】
例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「TINUVIN1130」)、イソオクチル−3−〔3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「TINUVIN384」)、2−(3−ドデシル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「TINUVIN571」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3'',4'',5'',6''−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「TINUVIN900」)などを例示することができる。
【0029】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ステアリルオキシベンゾフェノンなどを例示することができる。
【0030】
サリシレート系紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどを例示することができる。
【0031】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えばヒドロキシフェニルトリアジン系として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「TINUVIN400」、「TINUVIN411L」、「TINUVIN1577FF」などがあり、その他には、CYTECINDUSTRIESINC社製「CYASORB UV−1164」などを例示することができる。
【0032】
この紫外線吸収剤の配合量は、上記のゴムを添加したアクリル樹脂100質量部に対して0.1〜1.0質量部の範囲が好ましい。紫外線吸収剤の配合量が0.1質量部未満であると、アクリル樹脂成形体の耐候性を向上する効果を十分に得ることができない。逆に1.0質量部を超えると、紫外線吸収剤の量が過剰になって、アクリル樹脂成形体の表面に紫外線吸収剤がブリードし、アクリル樹脂成形体の外観が損なわれることになる。従って、紫外線吸収剤の配合量を上記の範囲に設定することによって、ブリードを防ぎつつ、アクリル樹脂成形体の耐候性を向上することができるものである。
【0033】
またヒンダードアミン系光安定剤としては、高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤と、低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤とを用いるものである。高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤は分子量が2000以上5000未満のものであり、本発明では特に2000〜3000の範囲の分子量のものが好ましい。低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤は分子量が200以上2000未満のものであり、本発明では特に300〜600の範囲の分子量のものが好ましい。尚、分子量は数平均分子量を意味するものであり、ゲル浸透クロマトグラフィー法で測定した値である。
【0034】
高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤としては、ポリ((6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミンと(コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの混合物)の混合物、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチレル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物などを例示することができる。
【0035】
低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−セバケートの混合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「TINUVIN292」)、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「TINUVIN123」などを例示することができる。
【0036】
ヒンダードアミン系光安定剤の配合量は、ゴムを添加したアクリル樹脂100質量部に対して、高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤を0〜0.5質量部、低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤を0.1〜1.0質量部の範囲に設定するものである。ヒンダードアミン系光安定剤の配合による耐候性の向上の効果は主として低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤によって得ることができるものであり、高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤は必須成分ではないが、アクリル樹脂成形体が長期間暴露されるときに、低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤が消費されて効果が低下した後にも、高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤が徐々に表面付近に現れて効果を発揮し、低分子量タイプによる効果の低下を補うことができるものである。低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤の配合量が0.1質量部未満であると、アクリル樹脂成形体の耐候性を十分に高めることができない。逆に低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤の配合量が1.0質量部を超えて多くなると、アクリル樹脂成形体の表面にブリードして外観を損なうおそれがある。また高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤の配合量が0.5質量部を超えると、同様にアクリル樹脂成形体の表面にブリードするおそれがあり、また却って耐候性が低下するおそれがある。上記のように高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤は必須成分ではないが、低分子量タイプとこの高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤を併用することによって、長期に亘ってアクリル樹脂成形体の耐候性を向上することができるので、高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤は0.05〜0.5質量部の範囲で配合するようにするのが、より好ましい。
【0037】
本発明において用いるアクリル樹脂成形材料には、さらに着色剤を配合するのが好ましい。アクリル樹脂成形材料に着色剤を配合してアクリル樹脂成形体を着色することによって、着色剤による光の遮断性で、耐候性をより向上することができるものである。特に後述のようにコアの表面にアクリル樹脂成形材料を一体成形して被覆する場合、アクリル樹脂成形材料の成形層を光が透過することを着色剤で遮断することができ、コアが光劣化することを防ぐことができるものである。
【0038】
この着色剤としては、無機顔料、焼成顔料、有機顔料、染料など、任意のものを用いることができる。さらに、マイカや金属粉などの光輝材を用いることもできる。着色剤の配合量は特に限定されるものではないが、後述のように光輝材を用いてメタリック感の意匠を発現させるものでない場合には、ゴムを添加したアクリル樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部程度が好ましい。
【0039】
また着色剤として上記のようなマイカや金属粉などの光輝材を用いることによって、成形体にメタリック感の意匠を発現させることができる。このように光輝材を添加してメタリック感の意匠を発現させる場合には、光輝材の添加量は、ゴムを添加したアクリル樹脂100質量部に対して1〜9質量部の範囲が好ましい。光輝材の添加量が1質量部未満であると、メタリック感を十分に得ることができないものであり、逆に光輝材の添加量が9質量部を超えると、衝撃性低下が大きくて、成形体として必要な衝撃性を得られなくなるおそれがある。またこのように着色剤として光輝材を用いる場合、光輝材以外の着色剤は特に必須成分ではないが、光輝材以外の着色剤を併用するようにしてもよい。この場合、光輝材以外の着色剤は、光輝材100質量部に対して50質量部以下(0質量部を含む)であることが望ましい。光輝材以外の着色剤が50質量部を超えると、光輝材以外の着色剤による隠蔽力が大きくなり過ぎて、光輝材によるメタリック感の表現が不十分になるおそれがある。
【0040】
本発明において用いるアクリル樹脂成形材料には、上記の成分の他に、必要に応じて、酸化防止剤、滑剤などを配合することもできる。滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、高級アルコール系、金属石鹸系など、任意のものを用いることができる。
【0041】
上記の各成分を配合して調製されるアクリル樹成形材料を成形することによって、本発明に係るアクリル樹脂成形体を得ることができるものである。成形の方法は、押出成形及び射出成形を用いることができる。このように成形するにあたって、アクリル樹成形材料のみで単層に成形したり、他の成形材料で成形した層と積層した複層で成形したりすることができ、さらにアクリル樹脂成形材料をコアの表面に一体成形することもできる。
【0042】
図1(a)は押出成形でコア1にアクリル樹脂成形材料を一体成形するようにした例を示すものであり、長尺のコア1を送って押出金型5に通しながら、押出機6から本発明のアクリル樹脂成形材料を押出金型5に供給して成形することによって、図1(b)のようにコア1の表面にアクリル樹脂成形材料からなる表面成形層2を被覆したアクリル樹脂成形体Aを得ることができる。この場合、図1(b)のようにコア1の両面に表面成形層2を形成する他に、コア1の片面のみに表面成形層2を形成することもできる。
【0043】
またコア1は平面形状のものの他に異形断面形状のものであってもよく、例えば図2(a)のような上面開口の断面コ字形のコア1や、図2(b)のような上面開口の断面C字形のコア1を用いて、このコア1の表面にアクリル樹脂成形材料を一体押出成形して表面成形層2を形成することによって、軒樋Aとしてアクリル樹脂成形体Aを作製することができるものである。この場合、図2(a)(b)の例ではアクリル樹脂成形材料からなる表面成形層2を、耐候性が必要な外側の表面のみに形成するようにしているが、表裏両面に表面形成層2を形成するようにしてもよい。
【0044】
このようなコア1としては、鋼板などの金属材で形成したものや、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂で成形したものを用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとABSのアロイ樹脂などを用いることができ、さらにコア1は耐候性等が特に要求されないので、これらの樹脂をリサイクルしたリサイクル樹脂を用いることもできる。
【0045】
上記の図1(a)の実施の形態では、予め成形されたコア1を用い、このコア1を押出金型5に通しながら押出機6からアクリル樹脂成形材料を押し出すことによって、コア1に表面成形層2を被覆するようにしたが、図3(a)の実施の形態では、押出金型5にアクリル樹脂成形材料を押し出す押出機6と、コア1用の樹脂を押し出す押出機9とが接続してある。このものでは、押出機9から押出金型5に押し出される樹脂でコア1を成形しながら、押出機6から押出金型5にアクリル樹脂成形材料を押し出すことによって、成形されたコア1の表面にアクリル樹脂成形材料からなる表面成形層2を被覆したアクリル樹脂成形体Aを成形することができるものであり、例えば上記の図2(a)(b)と同様な軒樋Aを作製することができるものである。
【0046】
この図3(a)の方法によれば、コア1が中空の筒状のものでも成形することができるものであり、例えば図3(b)のような丸型のたて樋Aや図3(c)のような角型のたて樋Aを作製することができるものである。図3(b)(c)の例ではアクリル樹脂成形材料からなる表面成形層2を、耐候性が必要なコア1の外側の表面のみに形成するようにしているが、コア1の表裏両面に表面形成層2を形成するようにしてもよい。
【0047】
図3(a)のようにコア1を成形する樹脂としては、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとABSのアロイ樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができ、さらにコア1は耐候性等が特に要求されないので、これらの樹脂をリサイクルしたリサイクル樹脂を用いることもできる。
【0048】
図4(a)は押出一体成形の他の一例を示すものであり、押出金型5に、本発明のアクリル樹脂成形材料を供給する成形機6と、他の成形材料、例えばベース用成形材料を供給する成形機7とが接続してあり、長尺のコア1を送って押出金型5に通しながら、押出機6,7からそれぞれ本発明のアクリル樹脂成形材料とベース用成形材料を押出金型5に供給して成形することによって、図4(b)のように、コア1の表面にベース用成形材料からなるベース層8を被覆して形成すると共に、ベース層8の表面にアクリル樹脂成形材料からなる表面成形層2を被覆したアクリル樹脂成形体Aを得ることができる。この場合もコア1の両面に表面成形層2を形成する他に、コア1の片面のみに表面成形層2を形成することもできる。
【0049】
コア1として例えば図4(c)のような上面が開口する断面コ字形の金属製コア1を用いて、このコア1の表面にアクリル樹脂成形材料とベース用成形材料を同時一体押出成形して、ベース層8と表面成形層2を形成することによって、金属芯の軒樋Aを作製することができるものであり、この場合、図4(c)の例ではアクリル樹脂成形材料からなる表面成形層2を、耐候性が必要な外側の表面のみに形成するようにしているが、表裏両面に表面形成層2を形成するようにしてもよい。
【0050】
上記のベース用成形材料としては、ABS、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂成形材料を用いることができるものであり、このベース用成形材料で成形されるベース層8は耐候性等が特に要求されないので、リサイクル樹脂などを利用することもできる。
【0051】
尚、上記のように軒樋Aやたて樋Aを押出一体成形で製造するにあたって、図5(a)(c)のように、表面成形層2の表面に押出方向に沿う凹凸10を設けるようにしてもよく、さらに図5(b)(d)のように、表面成形層2の表面に不定形な凹凸11を設けるようにしてもよい。尚、図5(a)(b)は、図2(a)(b)、図3(b)(c)の一部を示し、図5(c)(d)は図4(c)の一部を示す。図5(a)(c)のような押出方向に沿う凹凸10の形成は、押出金型5に凹凸10に対応する凹凸部を設けることによって行なうことができるものである。また図5(b)(d)のような不定形な凹凸11の形成は、アクリル樹脂成形材料に発泡剤を添加して発泡させたり、あるいはアクリル樹脂成形材料に中空形状の発泡体を添加したりすることによって、行なうことができるものである。
【0052】
また、本発明のアクリル樹脂成形材料を射出金型に射出・注入することによって、射出成形してアクリル樹脂成形体Aを成形することができる。図6(a)は、アクリル樹脂成形材料の一層でアクリル樹脂成形体Aを成形したものを示す。また図6(b)はコア1を射出金型にセットした状態でアクリル樹脂成形材料を射出金型に射出・注入することによって、コア1の表面にアクリル樹脂成形材料からなる表面成形層2を一体成形して作製したアクリル樹脂成形体Aを示す。
【0053】
このように射出成形でアクリル樹脂成形体Aを成形する場合、軒継手、止まり、たて継手、エルボ、集水器などの雨樋部品を作製することができる。図7(a)は軒樋Aを接続する軒継手Aを示すものである。また図7(b)は軒継手Aの断面を示すものであり、図7(b)の例では、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとABSのアロイ樹脂などの熱可塑性樹脂や、あるいはこれらの樹脂のリサイクル樹脂などで形成したコア1の外面に、アクリル樹脂成形材料からなる表面成形層2を一体成形して被覆することによって、軒継手Aを作製するようにしてある。
【0054】
射出成形でアクリル樹脂成形体Aを成形する場合、さらに、窓枠、エアコンカバー、幅木、門柱、ポストなどのようなエクステリア商品を作製することもできる。図8(a)は窓枠Aを示すものであり、図8(b)に示すように、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとABSのアロイ樹脂などの熱可塑性樹脂や、あるいはこれらの樹脂のリサイクル樹脂などで窓枠本体として形成したコア1の表面に、アクリル樹脂成形材料からなる表面成形層2を一体成形して被覆するようにしてある。窓枠Aの表面のうち、壁面内に組み込まれ外部に露出することがない面には、表面成形層2を形成する必要はない。
【0055】
図9(a)はエアコンカバーAを示すものであり、図9(b)に示すように、上記と同様な樹脂でカバー本体として形成したコア1の表面に、アクリル樹脂成形材料からなる表面成形層2を一体成形して被覆するようにしてある。エアコンカバーAの表面のうち外部に露出することがない面には、表面成形層2を形成する必要はない。
【0056】
図10(a)は壁11と床12の間に取付けられる幅木Aを示すものであり、図10(b)に示すように、上記と同様な樹脂で幅木本体として形成したコア1の表面に、アクリル樹脂成形材料からなる表面成形層2を一体成形して被覆するようにしてある。幅木Aの表面のうち外部に露出することがない面には、表面成形層2を形成する必要はない。
【0057】
図11(a)は門柱Aを示すものであり、図11(b)に示すように、門柱本体として内部中空に形成したコア1の外側の表面に、アクリル樹脂成形材料からなる表面成形層2を一体成形して被覆するようにしてある。門柱本体となるコア1は上記と同様な樹脂で形成することができるが、さらに発泡樹脂で形成することもできる。また門柱Aの表面のうち外部に露出することがない面には、表面成形層2を形成する必要はない。
【0058】
図12(a)はポストAを示すものであり、図12(b)に示すように、取出し口13を有するポスト本体として箱状に形成したコア1の内外の表面に、アクリル樹脂成形材料からなる表面成形層2を一体成形して被覆するようにしてある。ポスト本体となるコア1は上記と同様な樹脂で形成することができるが、さらに発泡樹脂で形成することもできる。またポストAの表面のうち外部に露出することがない面には、表面成形層2を形成する必要はない。
【実施例】
【0059】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0060】
(実施例1〜16、比較例1〜6)
次の材料を用い、表1に示す配合量でこれらの材料を混合・混練することによって、アクリル樹脂成形材料を調製した。
1.アクリル樹脂
住友化学(株)製メタクリル樹脂「LG」(MFR10g/10min)
2.ゴム
・シリコン樹脂被覆アクリルゴム:三菱レイヨン(株)製アクリルゴム「S2001」(シリコン樹脂が表面にグラフトしている)
・アクリルゴム(被覆なし):三菱レイヨン(株)製アクリルゴム「W450」
3.紫外線吸収剤
・トリアジン系紫外線吸収剤:サイテックインダストリーズ社製「UV1164」
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「TINUVIN234」
4.ヒンダードアミン系光安定剤
・高分子量タイプ:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「CHIMASSORB944FDL」(分子量約2000〜3100)
・低分子量タイプ:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「TINUVIN765」(分子量約500)
5.着色剤
無機顔料:酸化鉄
そして実施例1〜14,16、比較例1〜6については、上記のアクリル樹脂成形材料と、ベース用成形材料(塩化ビニル樹脂(充填剤、安定剤等含有))を用い、またコアとして鋼板を用い、図3(a)のように2層同時一体押出成形をして、図3(b)のようなアクリル樹脂成形体を得た。また実施例15については、上記のアクリル樹脂成形体を射出成形して、図6(a)のような単層のアクリル樹脂成形体を得た。
【0061】
上記の実施例1〜16、比較例1〜6について、耐候性、耐衝撃性、ブリード性、成形性を評価した。これらの試験方法を次に示す。またこれらの結果を表1に示す。
1.耐候性
実施例1〜16、比較例1〜6で得たアクリル樹脂成形体について、スーパーUV試験機(岩崎電気社製)を用いて、UV照射と水シャワーによる結露を繰り返す促進試験を行ない、UVをトータル600時間照射した。そして促進試験を行なう前と、促進試験を行なった後の、アクリル樹脂成形体の表面の色変化を目視観察し、次の基準で評価した。「△」以上が合格である。
「◎」:変化なし
「○」:やや変化あり(目視で変化がわかりにくいレベル)
「△」:やや変化あり(目視で変化が容易にわかるレベル)
「×」:変化あり(変化が目立つレベル)
2.耐衝撃性
実施例1〜14,16、比較例1〜6については、押出成形して20mm×20mm×厚み1mmの試験片を作製し、実施例15については射出成形して同じ寸法の試験片を作製した。そして、デュポン衝撃試験機((株)安田精機製作所製)によって、23℃の雰囲気下、3/16インチφの撃芯と1kgの落下錘を用いて試験を行ない、破損発生時の落下錘の落下高さから、デュポン衝撃エネルギーを求めて、評価した。
3.ブリード性
上記のスーパーUV試験機を用いて促進試験を行なった後のアクリル樹脂成形体の表面を目視観察し、ブリードの発生の状態を、次の基準で評価した。「○」以上が合格である。
「◎」:表面美麗で問題なし
「○」:ややブツブツが表面に析出しているが、製品として問題がないレベル
「×」:表面に析出したブツブツが外観異常として問題になるレベル
4.成形性
実施例1〜16、比較例1〜6で得たアクリル樹脂成形体の外観を観察し、充填不良などの成形不良があるかどうかを、次の基準で評価した。
「◎」:成形不良が全くない
「○」:一部にわずかの成形不良があるが、製品として問題がないレベル
「×」:成形表面にブツ(凹凸)等の異常があり、製品として問題になるレベル
【0062】
【表1】

【0063】
実施例1〜16では、ゴムを添加したアクリル樹脂100質量部に対して、紫外線吸収剤0.1〜1.0質量部、高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤0〜0.5質量部、低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤0.1〜1.0質量部の範囲で含有するアクリル樹脂成形材料を用いているので、耐候性、耐衝撃性、ブリード性のいずれもが良好な結果を示すものであった。
【0064】
一方、比較例1は紫外線吸収剤の量が少ないために耐候性が悪く、比較例2は紫外線吸収剤の量が多すぎるために、耐候性は良好であるが、ブリード性が悪いものであった。また比較例3は高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤が多すぎるために耐候性が悪いものであった。これは、高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤の過剰の含有によって、低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤や比較的低分子の紫外線吸収剤の効果が表面に現れることを阻害しているためであると考えられる。比較例4は低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤が少ないために耐候性が悪く、比較例5は低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤が多すぎるためにブリード性が悪いものであった。さらに比較例6はゴムが添加されていないために、耐衝撃性が悪く耐衝撃性試験で測定できないものであった。
【0065】
また、実施例13にみられるように、添加するゴムとしてシリコン被覆していないゴムを用いると、耐候性がやや低下するものであり、シリコン被覆したゴムを用いることが好ましいことが確認される。これは、ゴムに被覆したシリコンによる撥水性によって水分の影響を小さくすることができることによると考えられる。
【0066】
さらに実施例1,11,12,14にみられるように、シリコン被覆したゴムの添加量を増やすことによって、耐衝撃性が向上すると同時に、耐候性も向上する傾向がある。これは、シリコン被覆したゴムを用いることによって耐候性の低下を抑制しているためであると考えられる。尚、実施例14はゴムの添加量が上限値になるように多くした例を示すものであり、性能の上では問題はないが、成形がし難くなっている。そして実施例14の量を超えてゴムの添加量が多くなると、材料の混練や成形が困難になるものであった。
【0067】
また、実施例16は着色剤を配合していない例を示すものであり、アクリル樹脂成形材料による表面成形層は耐候性等に特に問題がないが、光が表面成形層を透過するので、表面成形層の下のベース層が光劣化し、この劣化による変色によってアクリル樹脂成形材料の外観がやや変化があるように見えるものであった。
【0068】
実施例1〜14,16は押出成形を、実施例15は射出成形をしたものであるが、いずれも成形性に特に問題はなく、アクリル樹脂成形材料を押出成形にも射出成形にも適用できることが確認された。
【0069】
(実施例17〜24)
着色剤として光輝材(マイカ:30メッシュ)と顔料(酸化鉄)を表2に示す配合量で配合し、またアクリル樹脂、ゴム、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤を実施例1と同じ配合に設定することによって、上記と同様にしてアクリル樹脂成形材料を調製し、さらに図3(a)のように2層同時一体押出成形をして、図3(b)のようなアクリル樹脂成形体を得た。
【0070】
実施例17〜24について、耐候性、耐衝撃性、ブリード性、成形性を上記と同様にして評価し、また目視によりメタリック感(マイカの光輝感)が得られているかを次の判断基準で評価した。結果を表2に示す。
「◎」:メタリック感あり
「○」:やや光輝感がないがメタリック感はあるレベル
「×」:光輝感がなくメタリックの外観といえないレベル
【0071】
【表2】

【0072】
表2にみられるように、ゴムを添加したアクリル樹脂100重量部に対して光輝材が1〜9質量部の範囲であり、顔料が光輝材100質量部に対して50質量部以下である、実施例17〜21はいずれも、良好なメタリック外観を得ることができた。一方、光輝材の添加量が少ない実施例22や、光輝材に対する顔料の量が多い実施例24では、メタリック外観を得ることが難しいものであった。また光輝材の添加量が多い実施例23では耐衝撃性がやや低下するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)は成形の方法の概略図、(b)はアクリル樹脂成形体の断面図である。
【図2】アクリル樹脂成形体としての軒樋を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の他の一例を示すものであり、(a)は成形の方法の概略図、(b)(c)はそれぞれアクリル樹脂成形体としてのたて樋を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の他の一例を示すものであり、(a)は成形の方法の概略図、(b)はアクリル樹脂成形体の断面図、(c)はアクリル樹脂成形体としての軒樋を示す断面図である。
【図5】(a)〜(d)は軒樋やたて樋の一部の拡大断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)(b)はそれぞれアクリル樹脂成形体の断面図である。
【図7】アクリル樹脂成形体としての軒継手を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図8】アクリル樹脂成形体としての窓枠を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は(a)のa−a線断面図である。
【図9】アクリル樹脂成形体としてのエアコンカバーを示すものであり、(a)は斜視図、(b)は(a)のa−a線断面図である。
【図10】アクリル樹脂成形体としての幅木を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は(a)のa−a線断面図である。
【図11】アクリル樹脂成形体としての門柱を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は(a)のa−a線断面図である。
【図12】アクリル樹脂成形体としてのポストを示すものであり、(a)は斜視図、(b)は(a)のa−a線断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 コア
2 表面成形層
A アクリル樹脂成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムを添加したアクリル樹脂100質量部に対して、紫外線吸収剤を0.1〜1.0質量部、高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤を0〜0.5質量部、低分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤を0.1〜1.0質量部、それぞれ含有するアクリル樹脂成形材料が、成形されたものであることを特徴とするアクリル樹脂成形体。
【請求項2】
上記のゴムは、表面の少なくとも一部にシリコン系化合物が被覆されていることを特徴とする請求項1に記載のアクリル樹脂成形体。
【請求項3】
上記のゴムは、アクリル樹脂とゴムの合計100質量に対して10〜60質量部添加されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクリル樹脂成形体。
【請求項4】
上記のアクリル樹脂成形材料には、着色剤が含有されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアクリル樹脂成形体。
【請求項5】
着色剤として少なくとも光輝材を用いるにあたって、ゴムを添加したアクリル樹脂100重量部に対して光輝材が1〜9質量部、光輝材以外の着色剤が光輝材100質量部に対して0〜50質量部添加されていることを特徴とする請求項4に記載のアクリル樹脂成形体。
【請求項6】
金属と熱可塑性樹脂の少なくとも一方から形成されるコアの表面に、アクリル樹脂成形材料が押出一体成形あるいは射出一体成形されたものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアクリル樹脂成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−173864(P2009−173864A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246905(P2008−246905)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】