説明

アミジン及びその誘導体並びにそれを含有する医薬組成物

式(I)のアミジン及びその誘導体が記載される。その製造方法及び医薬組成物も記載される。本発明のアミジンは、IL−8によって誘発される好中球走化性の阻害に有用である。本発明の化合物は、乾癬、潰瘍性大腸炎、黒色腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ、特発性線維症、腎炎の治療、並びに虚血及び再灌流によって引き起こされる障害の予防及び治療に用いられる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の簡単な説明
本発明は、多形核好中球(PMN白血球)の炎症部位における過剰動員に起因する組織障害の予防及び治療に用いられる、アミジン及びその誘導体並びにそれを含有する医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
技術水準
特定の血液細胞(マクロファージ、顆粒球、好中球、多形核球)は、(ケモカインと呼ばれる物質によって刺激された場合)走化性と呼ばれるプロセスによって刺激物質の濃度勾配に沿って遊走することで化学的な刺激に応答する。主要な公知の刺激物質又はケモカインは、補体C5aの分解産物、細菌表面の溶解によって生成する一部のN−ホルミルペプチドや合成由来のペプチド、例えばホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(f−MLP)に代表され、主にインターロイキン8(IL−8、CXCL8ともいう)を含めたさまざまなサイトカインに代表される。インターロイキン8は、線維芽細胞やマクロファージといったほとんどの有核細胞によって産生される内在性走化性因子である。
【0003】
好中球の過剰動員を特徴とする一部の病態では、その部位での組織障害が重篤であるほど好中球細胞の浸潤を伴う。近年、虚血後再灌流及び肺高酸素症に関連する障害の判定において、好中球活性化の役割が広く実証されている。
【0004】
IL−8の生物活性は、インターロイキンと、7回膜貫通型受容体ファミリーに属するヒト好中球及びある種のT細胞の表面に発現するCXCR1及びCXCR2膜受容体との相互作用によって仲介される、(L.Xuら、J.Leukocyte Biol.、57、335、1995)。CXCR1とCXCR2とを識別することのできる選択的リガンドが知られている:GRO−αはCXCR2選択的走化性因子の1例である。
【0005】
CXCR1活性化はIL−8によって介在される走化性において重大な役割を果たしていることが知られているが、最近では、CXCR2活性化が乾癬のような慢性炎症性疾患において病態生理学的役割を果たす可能性があると考えられている。実際に、乾癬におけるIL−8の病態生理学的役割は、ケラチン生成細胞の機能に対するIL−8の作用によっても裏付けられている。
【0006】
実際、IL−8は、ともに乾癬発症機序の重要な側面である上皮細胞増殖及び血管新生の強力な刺激物質であることが示されている(A.Tuschilら、J Invest Dermatol、99、294、1992;Koch AEら、Science、258、1798、1992)。
【0007】
また、黒色腫の進行及び転移におけるIL−8の病態生理学的役割がCXCR2活性化によって仲介される可能性があるという証拠も蓄積されつつある(L.R.Bryanら、Am J Surg、174、507、1997)。
【0008】
肺疾患(肺障害、急性呼吸窮迫症候群、喘息、慢性肺炎症、及び嚢胞性線維症)、特に、CXCR2受容体経路を介したCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の発症機序におけるIL−8の潜在的な病原性役割が広範に記載されている(D.WP Hay及びH.M.Sarau.、Current Opinion in Pharmacology 2001、1:242−247)。
【0009】
ケトプロフェンの単一の(S)及び(R)エナンチオマーによるラセミ化合物の抗炎症活性への寄与、及びケモカインの調節におけるそれらの役割に関する研究は(P.Ghezziら、J.Exp.Pharm.Ther.、287、969、1998)、2つのエナンチオマー並びにそれらのキラル及び非キラル有機塩基との塩が、ヒトPMN白血球においてIL−8によって誘発される走化性及び細胞内Ca2+イオン濃度の上昇を用量依存的方法で阻害できることを実証している(米国特許出願第6,069,172号)。続いて、ケトプロフェンは、IL−8生物活性の阻害特性を、フルルビプロフェン、イブプロフェン及びインドメタシンなどの非ステロイド抗炎症薬(NSAID)のクラスに属する他の分子と共有することが実証された(C.Bizzarriら、Biochem.Pharmacol.61、1429、2001)。NSAIDに典型的なシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害活性は、乾癬、特発性肺線維症、急性呼吸不全、再灌流による障害及び腎炎などの好中球依存性の病理学的状態並びに炎症性病態の治療との関連で、これらの化合物の治療応用を制限する。シクロオキシゲナーゼに対する作用に由来するプロスタグランジン合成の阻害は、TNF−αのように好中球の望ましくない炎症性作用を増幅する役割を果たすサイトカインの産生増加を伴う。
【0010】
「in vivo」投与に好適な、IL−8生物活性の強力且つ選択的な阻害剤の新規クラス。R−2−アリールプロピオン酸アミド及びN−アシルスルホンアミドは、IL−8によって誘発される好中球走化性及び脱顆粒の有効な阻害剤として記載されている(WO01/58852号;WO00/24710号)。更に、新規R及びS−2−フェニルプロピオン酸が、望ましくないCOX阻害作用を完全に欠失した強力なIL−8阻害剤として、近年、WO03/043625号に記載されている。
【発明の詳細な説明】
【0011】
本発明者らは、新規クラスのアミジン及びその誘導体が、IL−8によって誘発される好中球走化性及び脱顆粒を有効に阻害する能力を示すことを発見した。
【0012】
したがって、本発明は、式(I)のアミジン及びその誘導体並びにその医薬的に許容可能な塩を提供するものである:
【0013】
【化1】

【0014】
式中、Arは、非置換フェニル基、若しくはハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、ヒドロキシ、C〜C−アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、C〜C−アシルアミノ、ハロゲン−C〜C−アルキル、ハロゲン−C〜C−アルコキシ、ベンゾイルから独立して選択される1以上の基で置換されたフェニル基であるか、又はピリジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドールから選択される置換若しくは非置換5〜6員ヘテロアリール環である。
Rは以下から選択される:
− H、C〜C−アルキル、フェニル、C〜C−フェニルアルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルコキシ;
− 式−(CH−NRaRbの残基、ここで、nは0〜5の整数であり、RaとRbはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニルであるか、あるいはRaとRbはそれらが結合している窒素原子とともに式(II)の3〜7員複素環を形成する:
【0015】
【化2】

【0016】
式中、Wは、単結合、O、S、N−Rcを表し、Rcは、H、C〜C−アルキル又はC−C−アルキルフェニルであり、nは0〜4の整数である。
R’は、H、CH、CHCHである。
あるいは、RとR’は式(III)の5〜7員複素環を形成することができる:
【0017】
【化3】

【0018】
式中、Xは、残基−O(CH−を表し、nは1〜3の整数であるか、又は残基−(CH−を表し、nは2〜4の整数であるか、又はエチレン残基−CH=CH−を表す。
【0019】
RがC〜C−アルキルである場合、このようなアルキル基は、酸素又は硫黄のようなヘテロ原子によって場合により妨害され得る。例えば、Rは式−CH−CH−Z−CH−CHOR”の残基であり得、ここで、R”はH又はC〜C−アルキルである。
【0020】
式(I)の化合物はキラル化合物であり、本発明はラセミ化合物並びに単一の(R)及び(S)エナンチオマーを提供する。
【0021】
本発明の更なる目的は、医薬としての使用するための、上で定義した式(I)の化合物を提供することである。特に、本発明は、IL−8によって誘発されるヒトPMN走化性の阻害剤として使用するための式(I)の化合物を提供する。
【0022】
Arがフェニル基である場合、好ましいフェニル基は以下によって置換されている:
− 3(メタ)位では、直鎖若しくは分岐鎖のC〜C−アルキル基、C〜C−アルケニル基又はC〜C−アルキニル基、置換又は非置換フェニル、直鎖又は分岐鎖C〜C−ヒドロキシアルキル、C〜C−アシル、置換又は非置換ベンゾイルから選択される基;
− 4(パラ)位では、C〜C−アルキル基、C〜C−アルケニル基又はC〜C−アルキニル基、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アシルアミノ、置換又は非置換ベンゾイルアミノ、C〜C−スルホニルオキシ、置換又は非置換ベンゼンスルホニルオキシ、C〜C−アルカンスルホニルアミノ、置換又は非置換ベンゼンスルホニルアミノ、C〜C−アルカンスルホニルメチル、置換又は非置換ベンゼンスルホニルメチル、2−フリル基;3−テトラヒドロフリル基;2−チオフェニル基;2−テトラヒドロチオフェニル基、又はC〜C−(アルカノイル、シクロアルカノイル、アリールアルカノイル)−C〜C−アルキルアミノ、例えばアセチル−N−メチル−アミノ、ピバロイル−N−エチル−アミノ基から選択される基。
【0023】
Arが芳香族複素環である場合、好ましい芳香族複素環は、ピロール、チオフェン、フランである。
【0024】
好ましいR基は、
− H、C〜C−アルキル、C〜C−フェニルアルキル;
− 式−(CH−NRaRbの残基、ここで、nは2〜3の整数であり、より好ましくは3であり、NRaRb基はN,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、1−ピペリジル、4−モルホリル、1−ピロリジル、1−ピペラジニル、1−(4−メチル)ピペラジニルである。
【0025】
より好ましくは、NRaRb基はN,N−ジメチルアミン又は1−ピペリジルである。
【0026】
好ましいR’基はHであり;
RとR’が式(III)の複素環を形成する場合、Xは、残基−O(CH−を表し、nは1又は2の整数であるか、又は残基−(CHを表すことが好ましい。
【0027】
本発明の特に好ましい化合物は、以下の通りである:
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン塩酸塩、
(+)2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン塩酸塩、
(−)2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン塩酸塩、
(R,S)2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオンアミジン塩酸塩、
(R,S)2−[(3−フルオロ−4−フェニル)フェニル]プロピオンアミジン塩酸塩、
(R,S)2−(4−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオンアミジン塩酸塩、
(R,S)2−(5−ベンゾイル−2−チオフェン)プロピオンアミジン塩酸塩、
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)−N−[3”−(N’−ピペリジノ)プロピル]プロピオンアミジン二塩酸塩、
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)−N−メチル−プロピオンアミジン塩酸塩、
(R,S)2−(3−ベンゾイルフェニル)−N−[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル]プロピオンアミジン塩酸塩、
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン酢酸塩、
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)−N−[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル]プロピオンアミジン、
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)−N−ベンジル プロピオンアミジン、
(R,S)3−[1−(4−イソブチルフェニル)エチル]−5,6−ジヒドロ−2H−1,2,4−オキサジアジン、
(R,S)2−[1−(4−イソブチルフェニル)エチル]−4,5−ジヒドロ−2H−1,3−イミダゾール。
【0028】
本発明の化合物は、IL−8によって誘発されるヒトPMN走化性の強力且つ選択的な阻害剤である。
【0029】
本発明の式(I)化合物は、有機及び無機の医薬的に許容可能な酸との付加塩形態で一般に単離される。
【0030】
そのような酸の例は、塩酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、クエン酸から選択される。
【0031】
式(I)の化合物は、式(IV)の対応するニトリル誘導体をMeOH/HCl溶液中で処理し:
【0032】
【化4】

【0033】
(式中、Arは上で定義した通りの意味を有する)、続いてイミダート中間体をジクロロメタンのような無水有機溶媒中で式NHRのアミンと反応させることによって得られる(式中、Rは上で定義した通りの意味を有する)。
【0034】
R基とR’基が式(III)の複素環を形成する式(I)の化合物は、Al(CHのような好適な触媒とともに、式(V)のアミドを直接環化することによって得られる:
【0035】
【化5】

【0036】
式中、Xは上で定義した通りの意味を有する。
【0037】
あるいは、R基とR’基が式(III)の複素環を形成している式(I)の化合物は、式(I)のアミジン(式中、R’はHであり、RはH又はOHである)と、式L−K−L’の試薬(式中、LとL’はハロゲン、メシレートなどのような一般的な脱離基である)との塩基存在下における直接反応によって得られ、RとR’がともにHである場合は、Kは残基−(CH−を表し、nは2〜4の整数であり;RがOHであり、R’がHである場合は、Kは残基−(CH−を表し、nは1〜3の整数である。
【0038】
本発明の式(I)の化合物を、IL−8及びGRO−αの画分によって誘発される多形核白血球(以後、PMNと称する)及び単球の走化性を阻害する能力についてin vitroで評価した。この目的のため、健常成人ボランティアから採取したヘパリン化ヒト血液からPMNを単離するために、単核球をデキストラン沈降で除去し(W.J.Mingら、J.Immunol.、138、1469、1987に開示された手順による)、赤血球を低張液で除去した。トリパンブルーを用いた色素排除法によって細胞生死率を算出し、一方で、Diff Quick染色後の細胞遠心物について循環多形核球の比率を概算した。
【0039】
走化性実験に刺激物質としてヒト組換えIL−8(Pepro Tech)を用い、実際に同一の結果を得た:凍結乾燥したタンパク質を、0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するある量のHBSSに溶解し、10−5M濃度の保存溶液を得た。これは、走化性アッセイのためにHBSSで10−9M濃度まで希釈される。
【0040】
走化性アッセイ(W.Falketら、J.Immunol.Methods、33、239、1980による)のあいだ、孔径5μmのPVP不含フィルター及び反復に好適なマイクロチャンバーを用いた。
【0041】
本発明の式(I)の化合物を10−6〜10−10Mの濃度範囲で評価した;この目的のために、本発明の化合物をマイクロチャンバーの下部孔及び上部孔に同一濃度で加えた。本発明の式(I)の化合物による、IL−8で誘発されるヒト単球走化性を阻害する能力の評価は、Van Damme J.ら(Eur.J.Immunol.、19、2367、1989)によって開示された方法にしたがって実施した。
【0042】
本発明の特に好ましい化合物は、Ar基が、3’−ベンゾイルフェニル、3’−(4−クロロ−ベンゾイル)−フェニル、3’−(4−メチル−ベンゾイル)−フェニル、3’−アセチル−フェニル、3’−プロピオニル−フェニル、3’−イソブタノイル−フェニル、4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−フェニル、4’−ベンゼンスルホニルオキシ−フェニル、4’−トリフルオロメタンスルホニルアミノ−フェニル、4’−ベンゼンスルホニルアミノ−フェニル、4’−ベンゼンスルホニルメチル−フェニル、4’−アセトキシフェニル、4’−プロピオニルオキシ−フェニル、4’−ベンゾイルオキシ−フェニル、4’−アセチルアミノ−フェニル、4’−プロピオニルアミノ−フェニル、4’−ベンゾイルアミノ−フェニルである、式(I)の化合物であり、GRO−αによって誘発されるPMN走化性を有効に阻害する更なる特性を示す;この活性は、CXCR2経路が具体的に又はCXCR1シグナル伝達と連動して関与するIL−8に関連した病状におけるこれら化合物の治療的使用を可能にする。
【0043】
IL−8及びGRO−αで誘発される生物活性の2重阻害剤は、目的の治療応用を考慮すると非常に好ましいが、CXCR1 IL−8受容体又はCXCR2 GRO−α/IL−8受容体に選択的に作用する記載の化合物は、以下に記載するような特定の病状の管理に有用な治療応用を見出すことができる。
【0044】
PatrignaniらによってJ.Pharmacol.Exper.Ther.、271、1705、1994に開示された手順にしたがい、血液全体でex vivoで評価したところ、式(I)の化合物は、シクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害剤として全体的に有効でないことがわかった。
【0045】
ほとんどの場合、式(I)の化合物は、マウスマクロファージにおいてリポ多糖刺激(LPS、1μg/mL)によって10−5〜10−7Mの濃度範囲で誘発されるPGEの産生を妨げない。記録され得るPGE産生の阻害は、ほとんど統計的有意性の限界であり、多くは既定値の15〜20%以下である。プロスタグランジン合成の阻害は、マクロファージ細胞にとって、好中球活性化の重要なメディエーターであり、サイトカインであるインターロイキン8の産生の刺激であるTNF−αの合成(LPS又は過酸化水素によって誘発される)を増幅させる刺激となるが、CO阻害における有効性の減少は、本発明の化合物の治療応用に利点となる。
【0046】
上で議論した実験的証拠、並びに好中球の活性化及び浸潤に関与するプロセスにおいてインターロイキン8(IL−8)及びこれと起源を同じくするものによって果たされる役割を鑑みると、本発明の化合物は、乾癬のような疾患の治療に特に有用である(R.J.Nicholoffら、Am.J.Pathol.、138、129、1991)。本発明の化合物で治療できる更なる疾患は、腸の慢性炎症性病状、例えば潰瘍性大腸炎(Y.R.Mahidaら、Clin.Sci.、82、273、1992)、及び黒色腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ(M.Selzら、J.Clin.Invest.、87、463、1981)、特発性線維症(E.J.Miller、先に引用、及びP.C.Carreら、J.Clin.Invest.、88、1882、1991)、腎炎(T.Wadaら、J.Exp.Med.、180、1135、1994)であり、虚血及び再灌流によって引き起こされる障害の予防及び治療である。
【0047】
CXCR1及びCXCR2の活性化の阻害剤は、上で詳述したように、特に、2つのIL−8受容体の活性化が疾患の発症において重大な病態生理学的役割を果たすと推定される慢性炎症性病態(例えば乾癬)の治療に、有用な応用を見出す。
【0048】
実際、CXCR1の活性化は、IL−8介在PMN走化性に必須であることが知られている(Hammond Mら、J Immunol、155、1428、1995)。一方、CXCR2の活性化は、乾癬患者のIL−8介在性上皮細胞増殖及び血管新生に必須であると推定されている(Kulke Rら、J Invest Dermatol、110、90、1998)。
【0049】
更に、CXCR2の選択的アンタゴニストは、慢性閉塞性肺疾患COPDのような重要な肺疾患の管理に、特に有用な治療応用を見出す(D.WP Hay及びH.M.Sarau.、Current Opinion in Pharmacology 2001、1:242−247)。
【0050】
したがって、本発明の更なる目的は、乾癬、潰瘍性大腸炎、黒色腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ、特発性線維症、腎炎の治療、並びに虚血及び再灌流によって引き起こされる障害の予防及び治療に使用するための化合物を提供することであり、上記のような疾患を治療するための医薬の製造におけるそのような化合物の使用を提供することである。本発明の化合物及びその好適な担体を含む医薬組成物も、本発明の範囲内である。
【0051】
本発明の化合物は、慣用的に使用されるアジュバント、担体、希釈剤又は賦形剤とともに、実際、医薬組成物及びその単位用量の形態で使用されることができ、そのような形態では、経口用途では、錠剤若しくは充填カプセルのような固体として、又は溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル、若しくはそれらを充填したカプセルのような液体として、又は非経口(皮下を含む)用途の滅菌注射液の形態で使用することができる。そのような医薬組成物及びその単位剤形は、成分を慣用の比率で含むことができ、追加の活性化合物又は成分はあってもなくてもよく、そのような単位剤形は、採用すべき意図する日用量範囲に見合う好適な有効量の活性成分を含有してもよい。
【0052】
医薬として使用する場合、本発明のアミジンは典型的には医薬組成物の形態で投与される。そのような組成物は医薬分野に周知の方法で調整することができ、少なくとも1種の活性化合物を含む。通常、本発明の化合物は医薬的に有効量で投与される。実際に投与される化合物量は、典型的には、治療すべき状態、選択した投与経路、実際に投与する化合物、個々の患者の年齢、体重及び反応性、患者の症状の重篤度などを含めた関連する状況に基づいて決定されるであろう。
【0053】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸内、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、及び鼻腔内を含めたさまざまな経路で投与することができる。意図する送達経路に応じて、化合物を注射用又は経口用組成物として製剤化することが好ましい。経口投与用組成物は、バルク液剤又は懸濁液、又はバルク散剤の形態をとることができる。しかしながら、より一般的には、正確な投薬を容易にするために、組成物は単位剤形で提供される。「単位剤形」という用語は、ヒト被験者及び他の哺乳動物に対し、ユニタリー用量として好適な物理的に別個の単位を意味し、各単位は、所望の治療効果を生ずるように計算された所定量の活性物質を、好適な医薬賦形剤とともに含有する。典型的な単位剤形には、液体組成物の場合は予め分量が決められたプレフィルドアンプル若しくはシリンジ、又は固体組成物の場合は丸剤、錠剤、カプセルなどが含まれる。そのような組成物では、酸化合物は通常微量成分(約0.1〜約50重量%、又は好ましくは約1〜約40重量%)であり、残りは、所望の投薬形態の形成に役立つさまざまなビヒクル又は担体及び加工助剤である。
【0054】
経口投与に好適な液体形態は、好適な水性又は非水性ビヒクルを、バッファー、懸濁剤及び分散剤、着色剤、着香料などとともに含めることができる。以下に記載する注射用組成物を含めた液体形態は、ヒドロペルオキシド又はペルオキシドの形成のような光の触媒作用を避けるために常に遮光して保存される。固体形態は、例えば、以下の成分、又は同様の性質を有する化合物を含めることができる:微晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンのような結合剤;デンプン又は乳糖のような賦形剤、アルギン酸、Primogel、又はコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素のような流動促進剤;ショ糖又はサッカリンのような甘味剤;又はペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香料のような着香料。
【0055】
注射用組成物は、典型的には、当該技術分野に公知の注射用滅菌生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水又は他の注射用担体に基づいている。上記のように、そのような組成物中の式(I)の酸誘導体は、典型的には、しばしば0.05〜10重量%の範囲の微量成分であり、残りは注射用担体などである。平均日用量は、疾患の重篤度及び患者の状態(年齢、性別及び体重)などのさまざまな因子に依存するであろう。用量は一般に1日あたり式(I)の化合物1mg又は数mg〜1500mgで変化し、場合により複数回投与に分けられるであろう。本発明の化合物は毒性が低いため、より高用量を長期間にわたって投与することもできる。
【0056】
経口投与用又は注射用組成物の上記成分は単なる代表例である。更なる材料及び処理技術などは、本明細書に援用される、『レミントンの薬学ハンドブック』、第18版、1990、Mack出版社、イーストン、ペンシルバニアの第8部に記載されている。
【0057】
本発明の化合物は、徐放性の形態で又は徐放性薬物送達システムから投与することもできる。代表的な徐放性材料に関する記載も、上記レミントンのハンドブックの援用した資料に見出すことができる。
【0058】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明の範囲を限定するものとみなされると解釈すべきではない。
【0059】
略語:THF:テトラヒドロフラン;DMF:ジメチルホルムアミド;AcOEt:酢酸エチル。
実験方法
【実施例1】
【0060】
Granik、Russ.Chem.Rev.、52、377−393(1983)に記載の手順から出発して、以下の非置換アミジンを調製することができる:
1a (R,S)2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン塩酸塩
2−(4−イソブチルフェニル)プロピオニトリル
WO00/24710号に記載の手順にしたがって調製した4−イソブチル−α−メチルフェニルアセトアミド(2g;9.7ミリモル)を、トルエン/トリクロロメタン(2:1)溶液(30mL)に溶解する。20%ホスゲン(15.5mL、30ミリモル)のトルエン溶液を加え、得られる混合物を、出発試薬が完全に消滅するまで不活性雰囲気下で撹拌したまま12時間放置する。溶媒を減圧下で蒸発させた後、粗生成物を酢酸エチル(20mL)に溶解し、有機相をNaHCO飽和溶液(2×20mL)で洗浄し、次にNaCl飽和溶液(2×15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空下で蒸発させて、2−(4−イソブチルフェニル)プロピオニトリルを無色オイルとして得る(1.45g;7.76ミリモル)。収率80%。H−NMR(CDCl):δ7.42(d,2H,J=7Hz);7.28(d,2H,J=7Hz);4.05(q,1H,J=8Hz);2.65(d,2H,J=8Hz);1.95(m,1H);1.80(d,3H,J=8Hz);1.05(d,6H,J=8Hz)。
【0061】
2−(4−イソブチルフェニル)プロピオニトリル(0.2g;1.07ミリモル)のジエチルエーテル/メチルアルコール(1:1)混合物溶液(20mL)をT=0〜5℃で冷却し、気体HClを溶液中に1時間泡立たせる。次に温度を室温まで上昇させ、混合物を一晩撹拌する。溶媒を減圧下で蒸発させた後、粗生成物をメチルアルコール(10mL)に溶解し、T=0〜5℃で冷却する。アンモニアを1時間泡立たせ、得られる混合物を室温で一晩撹拌したまま放置する。溶媒を減圧下で蒸発させた後、粗生成物をジエチルエーテル(15mL)に懸濁させ、室温で撹拌したまま2時間放置する。2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン塩酸塩(I)を真空でろ過することによって白色固体として単離する(0.193g;0.80ミリモル)。収率75%。H−NMR(DMSO−d):δ8.80−8.50(bs,NCl);7.40(d,2H,J=7Hz);7.15(d,2H,J=7Hz);3.98(q,1H,J=8Hz);2.42(d,2H,J=8Hz);1.90(m,1H);1.57(d,3H,J=8Hz);0.88(d,6H,J=8Hz)。
【0062】
上記方法にしたがい、好適なカルボン酸を用いて、以下の化合物を調製した:
1b (R,S)2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオンアミジン塩酸塩
上記手順にしたがい、対応のα−メチルフェニルアセトアミドを用いて、2−(3’−ベンゾイルフェニル)プロピオニトリルから調製した。通常の調製はWO01/58852号に記載されている。
収率70%。融点110〜113℃。H−NMR(DMSO−d):δ7.86(s,1H);7.80−7.50(m,8H+N+N);4.13(q,1H,J=7Hz);1.60(d,3H,J=7Hz)。
【0063】
1c (R,S)2−[(3−フルオロ−4−フェニル)フェニル]プロピオンアミジン塩酸塩
上記手順にしたがい、対応のα−メチルフェニルアセトアミドを用いて、2−(3−フルオロ−4−フェニル)プロピオニトリルから調製した。通常の調製はWO01/58852号に記載されている。
収率53%。融点143〜145℃。H−NMR(DMSO−d):δ9.18(bs,NCl);8.85(bs,N);7.67−7.30(m,8H);4.15(q,1H,J=7Hz);1.62(d,3H,J=7Hz)。
【0064】
1d (R,S)2−(4−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオンアミジン塩酸塩
上記手順にしたがい、対応のα−メチルフェニルアセトアミドを用いて、2−(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオニトリルから調製した。
収率68%。H−NMR(DMSO−d):δ7.47(d,2H,J=8Hz);7.25(d,2H,J=8Hz);6.55(bs,N+NCl);3.92(q,1H,J=7Hz);1.56(d,3H,J=7Hz)。
【0065】
1e (R,S)2−(5−ベンゾイル−2−チオフェン)プロピオンアミジン塩酸塩
上記手順にしたがい、対応のプロピオンアミドを用いて、2−(5−ベンゾイル−2−チオフェン)プロピオニトリルから調製した。
収率60%。H−NMR(DMSO−d):δ7.9(d,2H,J=8Hz);7.7−7.4(m,4H);7.0(d,1H,J=8Hz);6.55(bs,N+NCl);3.9(q,1H,J=7Hz);1.56(d,3H,J=7Hz)。
【0066】
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジンの光学分割
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン塩酸塩から出発し、光学分割によって、2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジンの単一(+)及び(−)エナンチオマーを得た。遊離塩基は、塩酸塩を強塩基性アンバーライトIRA−910樹脂で処理することによって得た。
【0067】
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジンを、(L)及び(D)酒石酸塩のメタノール溶液で処理することによって、対応の(L)及び(D)酒石酸塩を調製した。イソプロパノール(又はアセトン)溶液からの酒石酸塩の連続結晶化工程によって、光学的に純粋な(+)及び(−)の2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン異性体を得た。
【0068】
酒石酸塩を強塩基性アンバーライトIRA−910樹脂で処理することによって遊離塩基を得た。
【0069】
1f (+)2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン
[α]=+28.1(c=0.5,MeOH)
1g (−)2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン
[α]=−28.0(c=0.5,MeOH)
【実施例2】
【0070】
2a (R,S)2−(4−イソブチルフェニル)−N−[3−(N−ピペリジノ)プロピル]プロピオンアミジン二塩酸塩
2−(4−イソブチルフェニル)プロピオニトリル(0.15g;0.80ミリモル)のジエチルエーテル/メチルアルコール(1:1)混合物溶液(10mL)をT=0〜5℃で冷却し、気体HClを溶液中に1時間泡立たせる。次に、温度を室温まで上昇させ、混合物を一晩撹拌する。溶媒を減圧下で蒸発させた後、粗生成物をメチルアルコール(10mL)に溶解し、T=0〜5℃で冷却する。3−ピペリジノプロピルアミン(0.15g;0.96ミリモル)のメチルアルコール溶液(5mL)を滴下し、得られる混合物を室温で一晩撹拌したまま放置する。溶媒を減圧下で蒸発させた後、粗製オイルを2N HCl(溶液、pH=2)に懸濁させ、生成物をジクロロメタン(3×15mL)で抽出する。いっしょにした有機抽出物をNaCl飽和溶液(2×15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空下で蒸発させ、2−(4’−イソブチルフェニル)−N−[3−(N−ピペリジノ)プロピル]プロピオンアミジン二塩酸塩をガラス状固体として得る(0.193g;0.48ミリモル)。収率60%。H−NMR(CDCl):δ10.88(bs,NCl);10.22(bs,NCl);9.82(bs,NCl);7.64(bs,N);7.41(d,2H,J=8Hz);7.15(d,2H,J=8Hz);4.39(q,1H,J=8Hz);3.78(m,2H);3.45(m,2H);3.10(m,2H);2.75(m,2H);2.46(d,2H,J=8Hz);2.32−2.05(m,3H);2.00−1.68(m,9H);0.90(d,6H,J=8Hz)。
【0071】
上記方法にしたがい、好適なアミンを遊離塩基として用いて、以下の化合物を調製した:
2b (R,S)2−(4−イソブチルフェニル)−N−メチル−プロピオンアミジン塩酸塩
実施例1に記載の手順にしたがい、対応のα−メチルフェニルアセトアミドを用いて、2−(4−イソブチルフェニル)プロピオニトリルから調製した。
収率75%。H−NMR(DMSO−d):δ10.15(bs,NCl);7.12(m,4H);4.25(bs,N);3.71(m,1H);2.90(s,3H);2.48(d,2H,J=8Hz);1.91(m,1H);1.55(d,3H,J=8Hz);0.93(d,6H,J=8Hz)。
【0072】
2c (R,S)2−(3−ベンゾイルフェニル)−N−[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル]プロピオンアミジン塩酸塩
実施例1に記載の手順にしたがい、対応のα−メチルフェニルアセトアミドを用いて、2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオニトリルから調製した。
収率48%。H−NMR(DMSO−d):δ7.81(d,2H,J=8Hz);7.74(s,1H);7.67(d,1H,J=8Hz);7.59(d,1H,J=8Hz);7.52−7.27(m,4H+N);3.65(q,1H,J=7Hz);3.25(t,2H,J=6Hz);2.27(t,2H,J=6Hz);2.09(s,6H);1.66(m,2H);1.46(d,6H,J=7Hz)。
【実施例3】
【0073】
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン酢酸塩
2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジンを調製するための代替手順として、Judkins B.D.、Allen D.G.、Cook T.A.、Evans B.及びSardharwala T.E.、Synth.Comm.、26(23)、4315−4367(1996)に記載の方法にしたがった。
【0074】
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)−N−ヒドロキシ−プロピオンアミジン
ヒドロキシルアミン塩酸塩(0.38g、5.32ミリモル)とナトリウムtert−ブトキシド(0.5g、5.28ミリモル)との混合物のエチルアルコール溶液(10mL)を室温で15分間撹拌する;沈殿をろ過して除去し、母液を2−(4−イソブチルフェニル)プロピオニトリル(0.11g、0.49ミリモル)の純エチルアルコール溶液(3mL)に滴下する。得られる溶液を18時間還流する。室温で冷却後、溶媒を減圧下で蒸発させ、粗製残渣をトリクロロメタン(25mL)に希釈し、5%クエン酸溶液(2×15mL)で洗浄し、次にNaCl飽和溶液(2×15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空下で蒸発させ、2−(4−イソブチルフェニル)−N−ヒドロキシ−プロピオンアミジンを生じ、n−ヘキサン(0.075g、0.34ミリモル)からの結晶化後、白色固体として単離する。収率70%。融点75〜78℃。H−NMR(CDCl):δ7.25(d,2H,J=7Hz);7.12(d,2H,J=7Hz);5.030(bs,1H,N);4.35(bs,2H,N−O);3.58(q,1H,J=8Hz);2.48(d,2H,J=8Hz);1.87(m,1H);1.50(d,3H,J=8Hz);0.92(d,6H,J=8Hz)。
【0075】
2−(4−イソブチルフェニル)−N−ヒドロキシ−プロピオンアミジン(0.097g、0.44ミリモル)を酢酸(3mL)に溶解し、室温で無水酢酸(0.06mL、0.66ミリモル)で処理する。活性炭(0.03g)上の10% Pdを加え、出発試薬が完全に消滅するまでHをフラスコに泡立たせる。メチルアルコール(5mL)を加え、触媒をセライトケーク上でろ過して除去し、溶媒を減圧下で蒸発させて油状残渣を得る。粗製残渣をn−ヘキサンから結晶化させて、2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン酢酸塩を白色固体として得る(0.106g、0.4ミリモル)。収率91%。融点>220℃。H−NMR(DMSO−d):δ8.70−8.50(bs,N+N);7.42(d,2H,J=7Hz);7.23(d,2H,J=7Hz);3.85(q,1H,J=8Hz);2.52(d,2H,J=8Hz);1.97(m,1H);1.75(s,3H);1.60(d,3H,J=8Hz);0.95(d,6H,J=8Hz)。
【実施例4】
【0076】
Weintraub L.、Oles S.R.及びKalish N.、J.Org.Chem.、33(4)、1679−1681(1968)に記載の代替方法にしたがって、2−(4−イソブチルフェニル)−N−アルキル−プロピオンアミジンを調製した。
【0077】
4a (R,S)2−(4−イソブチルフェニル)−N−[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル]プロピオンアミジン
WO00/24710号に記載の手順にしたがって調製した4−イソブチル−α−メチルフェニルアセトアミド(1g;4.9ミリモル)を、不活性雰囲気下、室温で無水ジクロロメタン(10mL)に溶解し、トリエチルオキソニウム テトラフルオロボーレート(1.0MのCHCl溶液、5mL、5ミリモル)で処理する。得られる溶液を室温で一晩撹拌したまま放置する。減圧下で溶媒を蒸発させた後、粗製中間体を不活性雰囲気下、室温でジエチルエーテル(5mL)中に希釈し、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン(0.61mL、4.9ミリモル)で処理する。得られる溶液を2時間還流する。室温で冷却後、溶媒を減圧下で蒸発させ、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィ(溶離液:CHCl/シクロヘキサン/CHOH/NHOH 60:24:17:2)で精製する。純粋な2−(4−イソブチルフェニル)−N−[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル]プロピオンアミジンを黄白色オイルとして得る(0.82g、2.84ミリモル)。収率58%。H−NMR(DMSO−d):δ7.39(d,2H,J=8Hz);7.14(d,2H,J=8Hz);4.15(q,1H,J=7Hz);3.25(t,2H,J=7Hz);2.42(d,2H,J=7Hz);2.16(t,2H,J=7Hz);2.06(s,3H);1.80(m,1H);1.65(m,2H);1.53(d,3H,J=7Hz);0.84(d,6H,J=7Hz)。
【0078】
上記方法にしたがい、N−ベンジルアミンを用いて、以下の化合物を調製した:
4b (R,S)2−(4−イソブチルフェニル)−N−ベンジル プロピオンアミジン
収率65%。H−NMR(CDCl):δ7.35−7.18(m,5H);7.15(d,2H,J=8Hz);7.05(d,2H,J=8Hz);5.05(bs,2H,N);4.30(s,2H);3.65(q,1H,J=7Hz);2.45(d,2H,J=7Hz);1.91(m,1H);1.55(d,3H,J=7Hz);0.95(d,6H,J=7Hz)。
【実施例5】
【0079】
(R,S)3−[1−(4−イソブチルフェニル)エチル]−5,6−ジヒドロ−2H−1,2,4−オキサジアジン
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)−N−ヒドロキシ−プロピオンアミジン(50mg、0.23ミリモル、実施例3に記載の調製物)を室温で10mlのクロロホルムに溶解する。この溶液に過剰量の炭酸ナトリウム及び0.28ミリモルの1,2−ジクロロエタン(28mg;20%過剰)を室温で加える。懸濁液を5時間還流する。冷却後、無機塩をろ過して除去し、ろ液をブライン(2×10mL)で洗浄する。溶媒を減圧下で除去し、標題化合物をシリカゲルカラムのクロマトグラフィ(n−ヘキサン/酢酸エチル 9/1)で精製し、29mgの黄白色オイルとして得る(収率51%)。
【0080】
H−NMR(CDCl):δ7.35(d,2H,J=7Hz);7.15(d,2H,J=7Hz);3.70(q,1H,J=8Hz);3.6−3.4(m,4H);2.42(d,2H,J=8Hz);2,3−2.1(m,2H);1.90(m,1H);1.57(d,3H,J=8Hz);0.88(d,6H,J=8Hz)。
【実施例6】
【0081】
(R,S)2−[1−(4−イソブチルフェニル)エチル]−4,5−ジヒドロ−2H−1,3−イミダゾール)
(R,S)−2−[(4−イソブチル)フェニル]−プロピオンアミジン塩酸塩(100mg、0.49ミリモル、実施例1aに記載の調製物)を、室温、不活性雰囲気下で25mLの無水クロロホルムに懸濁させ、大過剰の(10〜50当量)tButOKで処理した。懸濁液に、0.59ミリモルの1,2−ジクロロエタン(58mg;20%過剰)を加えた。次に懸濁液を24時間還流した。室温で懸濁させた固体をろ過し、ろ液を5%リン酸緩衝液(pH5)及びブラインで洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させたろ液を蒸発させた;残渣オイルをシリカゲルカラムのクロマトグラフにかけ、純粋な標題化合物(73mg;収率65%)を得た。
【0082】
H−NMR(CDCl):δ7.40(d,2H,J=7Hz);7.15(d,2H,J=7Hz);3.75(q,1H,J=8Hz);3.5−3.6(m,4H);2.42(d,2H,J=8Hz);1.90(m,1H);1.57(d,3H,J=8Hz);0.88(d,6H,J=8Hz)。
【0083】
実施例1〜6の化合物の化学構造を表1に報告する。
【0084】
【表1−1】

【0085】
【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のアミジン及びその医薬的に許容可能な塩:
【化1】

式中、Arは、非置換フェニル基、若しくはハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、ヒドロキシ、C〜C−アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、C〜C−アシルアミノ、ハロゲン−C〜C−アルキル、ハロゲン−C〜C−アルコキシ、ベンゾイルから独立して選択される1以上の基で置換されたフェニル基であるか、又はピリジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドールから選択される置換若しくは非置換5〜6員ヘテロアリール環である;
Rは以下から選択される:
− H、C〜C−アルキル、フェニル、C〜C−フェニルアルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルコキシ;
− 式−(CH−NRaRbの残基、ここで、nは0〜5の整数であり、RaとRbはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニルであるか、あるいはRaとRbはそれらが結合している窒素原子とともに式(II)の3〜7員複素環を形成する:
【化2】

式中、Wは、単結合、O、S、N−Rcを表し、Rcは、H、C〜C−アルキル又はC〜C−アルキルフェニルである;
R’は、H、CH、CHCHである;
あるいは、RとR’は式(III)の5〜7員複素環を形成することができる:
【化3】

式中、Xは、残基−O(CH−を表し、nは1〜3の整数であるか、又は残基−(CH−を表し、nは2〜4の整数であるか、又はエチレン残基−CH=CH−を表す。
【請求項2】
Arが、3’−ベンゾイルフェニル、3’−(4−クロロ−ベンゾイル)−フェニル、3’−(4−メチル−ベンゾイル)−フェニル、3’−アセチル−フェニル、3’−プロピオニル−フェニル、3’−イソブタノイル−フェニル、4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−フェニル、4’−ベンゼンスルホニルオキシ−フェニル、4’−トリフルオロメタンスルホニルアミノ−フェニル、4’−ベンゼンスルホニルアミノ−フェニル、4’−ベンゼンスルホニルメチル−フェニル、4’−アセトキシフェニル、4’−プロピオニルオキシ−フェニル、4’−ベンゾイルオキシ−フェニル、4’−アセチルアミノ−フェニル、4’−プロピオニルアミノ−フェニル、4’−ベンゾイルアミノ−フェニルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rは、以下から選択される:
− 水素;
− 式−(CH−NRaRbの残基、ここで、nは2〜3の整数であり、NRaRb基は、N,N−ジメチルアミン又は1−ピペリジルから選択される、そして、
R’はHである;
又はRとR’は式(III)の複素環を形成し、ここで、Xは、残基−O(CH−を表し、nは1若しくは2の整数であるか、又は残基−(CHを表す、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン塩酸塩、
(+)2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン塩酸塩、
(−)2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン塩酸塩、
(R,S)2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオンアミジン塩酸塩、
(R,S)2−[(3−フルオロ−4−フェニル)フェニル]プロピオンアミジン塩酸塩、
(R,S)2−(4−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオンアミジン塩酸塩、
(R,S)2−(5−ベンゾイル−2−チオフェン)プロピオンアミジン塩酸塩、
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)−N−[3”−(N’−ピペリジノ)プロピル]プロピオンアミジン二塩酸塩、
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)−N−メチル−プロピオンアミジン塩酸塩、
(R,S)2−(3−ベンゾイルフェニル)−N−[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル]プロピオンアミジン塩酸塩、
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミジン酢酸塩、
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)−N−[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル]プロピオンアミジン、
(R,S)2−(4−イソブチルフェニル)−N−ベンジル プロピオンアミジン、
(R,S)3−[1−(4−イソブチルフェニル)エチル]−5,6−ジヒドロ−2H−1,2,4−オキサジアジン、
(R,S)2−[1−(4−イソブチルフェニル)エチル]−4,5−ジヒドロ−2H−1,3−イミダゾール、
から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の式(I)の化合物の製造方法であって、式(IV)のニトリル誘導体:
【化4】

(式中、Arは請求項1で定義した通りの意味を有する)と、式NHRのアミン(式中、Rは請求項1で定義した通りの意味を有する)との反応を含む、前記方法。
【請求項6】
RとR’が式(III)の複素環を形成している請求項1に記載の式(I)の化合物の製造方法であって、塩基の存在下における、式(I)のアミジン(式中、R’はHであり、RはH又はOHである)と、式L−K−L’の試薬(式中、LとL’は脱離基である)との反応を含み、RとR’がともにHである場合は、Kは残基−(CH−を表し、nは2〜4の整数であり;RがOHであり、R’がHである場合は、Kは残基−(CH−を表し、nは1〜3の整数である、前記方法。
【請求項7】
医薬として使用するための請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
IL−8で誘発されるヒトPMN走化性の阻害剤として使用するための、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
乾癬、潰瘍性大腸炎、黒色腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ、特発性線維症、腎炎の治療、並びに虚血及び再灌流によって引き起こされる障害の予防及び治療のための医薬の製造における、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項10】
混合剤中の請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物と、その好適な担体とを含む医薬組成物。

【公表番号】特表2007−506706(P2007−506706A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527406(P2006−527406)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052201
【国際公開番号】WO2005/028425
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506102293)ドムペ・ファ.ル.マ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (11)
【Fターム(参考)】