アミノ置換糖脂質化合物を製造するための方法
式(I):
【化1】
(式中:R1、R2およびR3から選択される第1の基は、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個はアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分であるオリゴ糖鎖であり;R1、R2およびR3から選択される第2の基は、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であり;そしてR1、R2およびR3から選択される第3の基は、水素である)
の化合物を調製する方法であって、モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体と、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源またはその活性化誘導体、および必要であれば、非置換の単糖部分の供給源またはその活性化誘導体とを、任意選択で適切な触媒または活性化剤の存在下で、接触させる工程を含む方法が記載される。新規の化合物、ならびにその化合物のインサイチュ製造方法、ならびに乳化剤、界面活性剤および殺菌剤としての、特に食料および洗剤組成物における、それらの使用もまた記載される。
【化1】
(式中:R1、R2およびR3から選択される第1の基は、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個はアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分であるオリゴ糖鎖であり;R1、R2およびR3から選択される第2の基は、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であり;そしてR1、R2およびR3から選択される第3の基は、水素である)
の化合物を調製する方法であって、モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体と、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源またはその活性化誘導体、および必要であれば、非置換の単糖部分の供給源またはその活性化誘導体とを、任意選択で適切な触媒または活性化剤の存在下で、接触させる工程を含む方法が記載される。新規の化合物、ならびにその化合物のインサイチュ製造方法、ならびに乳化剤、界面活性剤および殺菌剤としての、特に食料および洗剤組成物における、それらの使用もまた記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一連のアミノ置換糖脂質化合物に関する。本発明はまた、それらの調製のための方法、ならびに多くの用途における、特に界面活性剤および乳化剤としての、それらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
グリコグリセロリピドまたは糖脂質は、自然界に見出される脂質のクラスである。この化合物は、最も多くの場合、モノまたはジアシルグリセロールにグリコシド結合した1個または2個の単糖単位を含有している。3個または4個の単糖単位を有する糖脂質もまた、知られている。それらは、それらが光合成膜中に位置している高等植物、藻類および細菌において特に重要であるが、それらは、動物においてはそれほど顕著ではない。
【0003】
グルコグリセロリピドは、それらを食品中の成分として興味深いものにする物理的および生物学的性質を有しており、いくつもの健康増進特性(例えば、胃腸管(GIT)における腫瘍生長の阻害、抗炎症効果および抗ウイルス効果)が報告されている:非特許文献1;2;3;4;5;6;7;8;9;および10を参照されたい。
【0004】
非特許文献11は、高度好熱好酸菌バキッルス・アキドカルダリウス(Bacillus acidocaldarius)からのグルコサミジル糖脂質の単離について記載している。全脂質の約64%を構成する主要化合物は、グルコピラノシル(1→4)グルコサミン(1→3)−ジアシルグリセロールの脂肪N−アシル誘導体であるようである。アミド結合した脂肪酸は、主として分岐ヘプタデカン酸であったが、11−シクロヘキシルウンデカン酸または13−シクロヘキシルトリデカン酸もあった。微量生成物は、O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2−アシルアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシルモノアシルグリセロールとして仮に同定された。
【0005】
細菌および藻類において、それぞれに異なる糖組み合わせを含有する多数の糖脂質が報告されている。例えば、1−(O−β−グルコサミニル)−2,3−ジグリセリドが、バキッルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)において同定された:非特許文献12を参照されたい。これは、生体中の全脂質グルコサミニドの約5%を構成し、クロマトグラフィにより他の脂質から分離された。この脂質は、グリセロール、脂肪酸およびグルコサミンを、1:2:1のモル割合で含有していた。脂肪酸は、エステル結合により結合していた。この脂質の部分酸加水分解またはアルカリ加水分解によって、1−(O−β−グルコサミニル)グリセロールが生じる。
【0006】
非特許文献13および14は、シアロシルグリセロール誘導体およびそれらの合成について記載している。これらの化合物において、N−アシルアミノ基は、単糖部分の4位にヒドロキシル基の代わりに存在する(グリセロール部分への結合点は1位である)。
【0007】
特許文献2は、単糖基をその1位でグリセロール部分に結合させたグリセリド誘導体について記載している。これらの化合物はまた、単糖部分の4位にヒドロキシル基の代わりにN−アシルアミノ基を有する。
【0008】
非特許文献15は、天然α−6−デヒドロキシ−6−アミノグルコグリセロリピドの合成について記載している。合成経路には、中間体3−O−(2’,3,4’−トリ−O−ベンジル−6−デヒドロキシ−6’−ベンジルオキシカルボニルアミノ−α−D−グルコピラノシル)−1−O−パルミトイルグリセロールが含まれる。
【0009】
非特許文献16は、アルケニル2−アセチルアミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシドの不斉ジヒドロキシル化について記載している。合成経路には、中間体(3’S)−4’−ベンゾイルオキシ−3’−ヒドロキシブチル3,4,6−トリ−O−アセチル−2−アセチルアミノ−2−デオキシ−β−グルコシドが含まれる。
【0010】
特許文献1は、グリコグリセロリピドおよびその殺菌薬としての使用について記載している。
【0011】
アニオン性およびカチオン性の界面活性溶液は、洗剤および乳化剤などの多くの用途において使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許出願公開第19634019A1号明細書
【特許文献2】特開平2−225489号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Colombo,D,et al.Cancer Letters(Shannon,Ireland),(2000)161,201−205
【非特許文献2】Colombo,D.,et al.Cancer Letters(Shannon,Ireland),(1998)123,233
【非特許文献3】Larsen,E.,et al;J.Nat.Prod.(2003)66,994−995
【非特許文献4】Morimoto,A.,et al.Phytochemistry,(1995)40,1433−1437
【非特許文献5】Nagatsu,A.,et al.Bioorg.Med.Chem.Lett.,1994,4,1619−1622
【非特許文献6】Nakata,K.J.Biochem.(Tokyo),(2000),127,731−737
【非特許文献7】Pahlsson,P.,et al.Arch.Biochem.Biophys.(2001)396,187−198
【非特許文献8】Shirahashi,H.,et al.Chem.Pharm.Bull.,1996,44,1404−1406
【非特許文献9】Shirahashi,H.,et al.Chem.Pharm.Bull.,1993,41,1664−1666
【非特許文献10】Janwitayanuchit,W.,et al,Phytochemistry(Elsevier),(2003),64,1253−1264
【非特許文献11】Langworthy,T.A.,et al.Biochimica et Biophysica Acta,(1976),431,550−569
【非特許文献12】Phizackerley,P.J.R.,et al.Biochem.J.,1972,126,499
【非特許文献13】Shimizu,C.et al.Chem.Pharm.Bull.1989,37(8),2258−2260
【非特許文献14】Chem.Pharm.Bull.1990,38(12),3347−3354
【非特許文献15】Wu et al.,Chin.J.Chem.,2008,26,1641−1646
【非特許文献16】Fairweather,J.K.et al.,Aust.J.Chem.,1998,51,471−482
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、モノグリセリドを、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分、好ましくはグルコサミンもしくはN−アセチルグルコサミン部分の供給源、またはそれらの任意の混合物と反応させることにより、バイオフレンドリーな荷電界面活性分子の合成について記載する。カチオン性分子は、多くの異なるモノグリセリドおよびアミノもしくはN−アシルアミノ単糖供給源からグリコシドを作製することによって製造され得る。この分子は、化学合成によって、または基質(例えば、グルコサミン単位の供給源として機能するキトサンもしくはキチンまたはキトサンオリゴマーもしくはキチンオリゴマー)からモノグリセリドへのアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の酵素転移によって、生成され得る。
【0015】
したがって、本発明の1つの態様によれば、O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2−アシルアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシルモノアシルグリセロール以外の、式(I):
【化1】
の化合物であって、式中:
R1、R2およびR3から選択される第1の基は、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個はアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分であるオリゴ糖鎖であり;R1、R2およびR3から選択される第2の基は、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であり;そして、
R1、R2およびR3から選択される第3の基は、水素である、
化合物が提供される。
【0016】
一部の実施形態において、(3’S)−4’−ベンゾイルオキシ−3’−ヒドロキシブチル3,4,6−トリ−O−アセチル−2−アセチルアミノ−2−デオキシ−β−グルコシド以外の、上で定義されるとおりの式(I)の化合物が提供される。
【0017】
一部の実施形態において、3−O−(2’,3,4’−トリ−O−ベンジル−6−デヒドロキシ−6’−ベンジルオキシカルボニルアミノ−α−D−グルコピラノシル)−1−O−パルミトイルグリセロール以外の、上で定義されるとおりの式(I)の化合物が提供される。
【0018】
一部の実施形態において、O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2−アシルアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシルモノアシルグリセロール以外の、式(I’):
【化2】
の化合物であって、式中:
R1、R2およびR3から選択される第1の基は、アミノもしくはN−アシルアミノ基がヘキソース部分の2位にヒドロキシル基の代わりに存在するアミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分であり、N−アシルアミノ基のアシル部分は1個〜6個の炭素原子を有するか、または第1の基は、2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個は上で定義されるとおりのアミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分であるオリゴ糖鎖であり;
R1、R2およびR3から選択される第2の基は、3個〜40個の炭素原子を有するアルカノイル基または3個〜40個の炭素原子および1個〜5個の二重結合を有するアルケノイル基であり;そして
R1、R2およびR3から選択される第3の基は、水素である、
化合物が提供される。
【0019】
本発明の別の態様によれば、上で定義されるとおりの式(I)または(I’)の化合物を調製する方法であって、モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体と、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源またはその活性化誘導体、および必要であれば、非置換の単糖部分の供給源またはその活性化誘導体とを、任意選択で適切な触媒または活性化剤の存在下で、接触させる工程を含む、方法が提供される。
【0020】
特に、本発明の好ましい態様によれば、上で定義されるとおりの式(I)または(I’)の化合物を調製する方法であって、モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールを、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源、および必要であれば、非置換の単糖部分の供給源およびトランスグリコシダーゼ酵素により処理する工程を含む方法が提供される。
【0021】
さらに、本発明の別の態様によれば、組成物中での上で定義されるとおりの式(I)または(I’)の化合物のインサイチュ生成のための方法であって、当該組成物は、以下の成分:
(i)モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体;
(ii)アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源またはその活性化誘導体;
(iii)必要であれば、非置換の単糖部分の供給源またはその活性化誘導体;および
(iv)必要であれば、適切な触媒または活性化剤
を含み、当該方法は、当該組成物に、その組成物中にまだ存在しない成分(i)および(ii)の任意のもの、ならびに必要であれば、その組成物中にまだ存在しない(iii)および/または(iv)を添加し、それらの成分が反応するのを可能にする工程を含む、方法が提供される。
【0022】
本発明によれば、本発明の化合物または本発明の方法によって製造された化合物を含む食料もまた提供される。
【0023】
本発明によれば、本発明の化合物または本発明の方法によって製造された化合物を含む洗剤組成物がさらに提供される。
【0024】
本発明のさらなる態様によれば、上記の化合物の、乳化剤としての使用が提供される。
【0025】
本発明のよりさらなる態様によれば、上記の化合物の、界面活性剤としての使用が提供される。
【0026】
本発明のなおさらなる態様によれば、上記の化合物の、殺菌剤としての使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】m/z 472.25の1−O−(2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール(化合物2)のNa付加物のMS2スペクトルである。
【図2】図1のMS2スペクトルにフラグメントを割り当てたものである。
【図3】m/z 430.24の1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール(化合物1)のNa付加物のMS2スペクトルである。
【図4】図3のMS2スペクトルにフラグメントを割り当てたものである。
【図5】表3に示されたHPLC/MS結果の略図を示している。
【図6】配列番号1(使用された配列)を示している。
【図7】配列番号2(成熟配列)を示している。
【図8】中間体2の1H NMRスペクトルである。
【図9】中間体2の13C NMRスペクトルである。
【図10】図14のMS2スペクトルにフラグメントを割り当てたものである。
【図11】図14のMS2スペクトルのフラグメントのさらなる説明である。
【図12】図13および図15のMSおよびMS3スペクトルにフラグメントを割り当てたものである。
【図13】中間体2のMSスペクトルである。
【図14】中間体2のMS2スペクトルである。
【図15】中間体2のMS3スペクトルである。
【図16】中間体3の1H NMRスペクトルである。
【図17】中間体3の13C NMRスペクトルである。
【図18】中間体3のMSスペクトルである。
【図19】図18のMS2スペクトルにフラグメントを割り当てたものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
単糖およびアミノ/N−アシルアミノ単糖
本出願において、用語「単糖」とは、その最も広い意味において、より単純な炭水化物へとさらに加水分解され得ない炭水化物部分を意味する。この用語は、その最も広い意味において、遊離単糖と、(出発物質、生成物または任意の中間体において)分子の他の部分(例えば、グリセロール、アシル基および他の単糖部分)に(好ましくはグリコシド結合により)結合した単糖部分との両方を対象として含むことが意図される。この用語はまた、その最も広い意味において、以下でより詳細に定義される、非置換単糖(すなわち、その単糖に通常存在するヒドロキシル基の全てが存在し、いずれも別の官能基で置換されていない単糖)と置換単糖(例えば、アミノおよびN−アシルアミノ単糖、酸化単糖およびデオキシ単糖)との両方を対象として含むことが意図される。
【0029】
単糖部分は、D型配置またはL型配置を有し得る。さらに、単糖部分は、アルドース部分またはケトース部分であり得る。
【0030】
好適には、単糖部分は、3個〜7個、好ましくは4個〜6個、より好ましくは5個〜6個の炭素原子を有し得る。1つの実施形態において、単糖部分はヘキソース部分であり(すなわち、この単糖部分は6個の炭素原子を有する)、その例としては、グルコース、ガラクトース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドースおよびタロースなどのアルドヘキソース、ならびにフルクトースおよびソルボースなどのケトヘキソースが挙げられる。好ましくは、ヘキソース部分は、グルコース部分である。別の実施形態において、単糖単位は、リボース、アラビノース、キシロースまたはリキソースなどのペントース部分である(すなわち、この単糖単位は5個の炭素原子を有する)。
【0031】
1つの実施形態において、単糖部分は、デオキシ単糖部分、すなわち、ヒドロキシル基のうちの1個以上(好ましくは1個または2個、より好ましくは1個のみ)が水素原子に置換されている単糖部分である。他の実施形態において、単糖は、デオキシ単糖ではなく、ヒドロキシル基は、いずれも水素原子に置換されていない。
【0032】
1つの実施形態において、単糖部分上の1個以上の第一級ヒドロキシル基は、酸化されてカルボン酸(−CO2H)基を形成し得る。この基は適切な塩基と塩を形成し得、そのような塩の例は当業者によく知られており、例えば、リチウム、ナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属、ならびにアンモニウムまたはモノ、ジ、トリおよびテトラアルキルアンモニウムが挙げられる。他の実施形態において、単糖は、酸化単糖ではなく、第一級ヒドロキシル基は、いずれも−CO2H基へと酸化されていない。
【0033】
用語「アミノ単糖」とは、少なくとも1個のアミン(−NR2)基(ここで、各基Rは、独立して水素またはC1〜6アルキルである)を、それに対応する数の単糖ヒドロキシル基の代わりに含有する、上で定義されるとおりの単糖を意味する。この用語は、その最も広い意味において、遊離アミノ単糖と、(出発物質、生成物または任意の中間体において)分子の他の部分(例えば、アシル基、グリセロール部分および他の単糖部分(これは、非置換単糖部分または置換単糖部分(例えば、さらなるアミノもしくはN−アシルアミノ置換単糖部分)であり得る))に(好ましくはグリコシド結合により)結合したアミノ単糖部分との両方を対象として含むことが意図される。
【0034】
アミン基NR2において、各基Rは、独立して、水素またはC1〜6アルキル(以下に定義されるとおり)である。基Rは、同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、各基Rは、独立して、水素またはC1〜4アルキルであり、より好ましくは、水素、メチルまたはエチルであり、最も好ましくは、水素またはメチルである。特に好ましい実施形態においては、両方の基Rが、水素である。
【0035】
上記のアミン基NR2の定義において、用語「アルキル」とは、1個〜6個の炭素原子を含有する、直鎖または分岐の、一価の飽和炭化水素鎖を意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシルおよびi−ヘキシルが挙げられる。好ましくは、「アルキル」は、C1〜4アルキルであり、最も好ましくは、メチルまたはエチルである。
【0036】
用語「N−アシルアミノ単糖」とは、アシル基R’−C(=O)−(ここで、R’は、水素または上で定義されるとおりのC1〜5アルキル基である)がアミン基上の基Rのうちの1つの代わりに存在する、上で定義されるとおりのアミノ単糖を意味する。換言すれば、用語「N−アシルアミノ単糖」とは、少なくとも1個のアシルアミノ(−NR−C(=O)−R’)基(ここで、Rは上で定義されるとおりである)を、その対応する数の単糖ヒドロキシル基の代わりに含有する、上で定義されるとおりの単糖を意味する。N−アシルアミノ基の定義におけるアシル基R’−C(=O)−は、合計1個〜6個の炭素原子(カルボニル炭素を含む)を有する。好適なアシル基の例としては、メタノイル(ホルミル)、エタノイル(アセチル)、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイルおよびヘキサノイルが挙げられる。好ましくは、アシル基は、2個〜4個の炭素原子を有する。より好ましくは、アシル基は、アセチルである。
【0037】
アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、D型配置またはL型配置を有し得る。さらに、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、アミノもしくはN−アシルアミノアルドースまたはアミノケトース部分であり得る。
【0038】
好適には、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、5個〜7個、好ましくは5個〜6個の炭素原子を有し得る。好ましい実施形態において、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、アミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分であり(すなわち、このアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は6個の炭素原子を有する)、その例としては、アミノ−もしくはN−アシルアミノ置換グルコース、ガラクトース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドースおよびタロースなどのアミノもしくはN−アシルアミノアルドヘキソース、ならびにアミノもしくはN−アシルアミノ置換フルクトースおよびソルボースなどのアミノもしくはN−アシルアミノケトヘキソースが挙げられる。好ましくは、アミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分は、アミノもしくはN−アシルアミノグルコース部分である。
【0039】
アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分上のアミノもしくはN−アシルアミノ基の数は、その単糖上の置換可能なヒドロキシル基の数によってのみ制限される。好適には、アミノ置換単糖部分は、1個〜3個、好ましくは1個または2個、より好ましくは1個のみのアミノ基またはN−アシルアミノ基を、その対応する数の単糖ヒドロキシル基の代わりに含有する。
【0040】
1個もしくは複数個のアミノもしくはN−アシルアミノ基は、単糖部分上のヒドロキシル基のうちの任意のものの代わりに存在し得る。例えば、それらは、2位、3位、4位、5位または6位に存在し得る(単糖は1位で分子のグリセロール部分に連結されている)。しかしながら、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分がアミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分である場合、アミノもしくはN−アシルアミノ基は、ヘキソース部分の2位にヒドロキシル基の代わりに存在することが好ましい。
【0041】
アミノもしくはN−アシルアミノ単糖の例としては、以下が挙げられる。
【0042】
アミノもしくはN−アシルアミノペントース(例えば、2−アミノ−2−デオキシ−(DまたはL)−アラビノース、3−デオキシ−3−(メチルアミノ)−L−アラビノース(4−epi−ゲントサミン(gentosamine))、2,4−ジアミノ−2,4−ジデオキシ−L−アラビノース、2,3,5−トリアミノ−2,3,5−トリデオキシ−D−アラビノン酸、2−アミノ−2−デオキシ−D−リボース、2−アミノ−2−デオキシペントフラノース、3−アミノ−3−デオキシ−D−リボース、2−アミノ−2−デオキシ−D−キシロース、3−デオキシ−3−(メチルアミノ)−D−キシロース(ゲントサミン)および5−アミノ−5−デオキシペントフラノース);
【0043】
アミノもしくはN−アシルアミノヘキソース、例えば、アミノもしくはN−アシルアミノアロースおよびアミノもしくはN−アシルアミノアルトロース(例えば、2−アミノ−2−デオキシ−D−アロース(D−アロサミン)、3,6−ジデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−D−アルトロース(ラビドサミン));アミノもしくはN−アシルアミノガラクトース(例えば、2−アミノ−2−デオキシ−D−ガラクトース(コンドロサミン、D−ガラクトサミン)、2,6−ジデオキシ−2−(メチルアミノ)−D−ガラクトース(メチルフコサミン)、4−アミノ−4,6−ジデオキシ−D−ガラクトース(トモサミン)、4,6−ジデオキシ−4−(メチルアミノ)−D−ガラクトース、2,4−ジアミノ−2,4,6−トリデオキシ−D−ガラクトース)、アミノもしくはN−アシルアミノグルコース(例えば、2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコース(D−グルコサミン、キトサミン)、2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−D−グルコース(N−アセチルグルコサミン)2−アミノ−2−デオキシ−L−グルコース、2−デオキシ−2−(メチルアミノ)−L−グルコース、2−アミノ−2,6−ジデオキシ−D−グルコース(D−キノボサミン)、3−アミノ−3−デオキシ−D−グルコース(カナサミン(kanasamine))、3,6−ジデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−D−グルコース(ミカミノース)、4−アミノ−4−デオキシ−D−グルコース、4−アミノ−4,6−ジデオキシ−D−グルコース(ビオサミン)、4,6−ジデオキシ−4−(メチルアミノ)−D−グルコース(バモサミン(bamosamine))、4,6−ジデオキシ−4−(ジメチルアミノ)−D−グルコース(アモサミン)、4−アミノ−4−デオキシ−D−グルクロンアミド、6−アミノ−6−デオキシ−D−グルコース、2,6−ジアミノ−2,6−ジデオキシ−D−グルコース(ネオサミンC));アミノもしくはN−アシルアミノグロース、アミノもしくはN−アシルアミノイドースおよびアミノもしくはN−アシルアミノマンノース(例えば、2−アミノ−2−デオキシ−D−グロース(D−グロサミン)、2−デオキシ−2−(メチルアミノ)−D−グロース、2−アミノ−2−デオキシ−L−グロース(L−グロサミン)、2,6−ジアミノ−2,6−ジデオキシ−L−イドース(ネオサミンB、パロモース)、3−アミノ−3,6−ジデオキシ−D−マンノース(ミコサミン)、4−アミノ−4,6−ジデオキシ−D−マンノース(ペロサミン))、または他のアミノもしくはN−アシルアミノヘキソース(例えば、2−アミノ−2,3−ジデオキシ−D−リボ−ヘキソース、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−D−アラビノ−ヘキソース(D−アコサミン)、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−L−アラビノ−ヘキソース(L−アコサミン)、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−3−C−メチル−L−アラビノ−ヘキソース(4−エピ−バンコサミン)、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−L−リキソ−ヘキソース(L−ダウノサミン)、2,3,6−トリデオキシ−3−(メチルアミノ)−L−リキソ−ヘキソース(2,3,6−トリデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−L−リキソ−ヘキソース(L−ロドサミン)、2,3,6−トリデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−D−キシロ−ヘキソース(D−アンゴロサミン)、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−L−リボ−ヘキソース(リストサミン)、2,3,6−トリデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−L−リボ−ヘキソース(L−メゴサミン(megosamine))、3,4,6−トリデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−D−キシロ−ヘキソース(デソサミン)、4−アミノ−2,3,4,6−テトラデオキシ−L−エリトロ−ヘキソース(トリポサミン(tolyposamine))、2,3,4,6−テトラデオキシ−4−(ジメチルアミノ)−D−エリトロ−ヘキソース(ホロサミン)、2,4−ジアミノ−2,3,4,6−テトラデオキシ−D−アラビノ−ヘキソース(カスガミン(kasugamine))、2,6−ジアミノ−2,3,6−トリデオキシ−D−リボ−ヘキソース(ネブロサミン(nebrosamine)、トブロサミン(tobrosamine))、2,6−ジアミノ−2,4,6−トリデオキシ−D−キシロ−ヘキソース、2,6−ジアミノ−2,3,4,6−テトラデオキシ−D−エリトロ−ヘキソース(プルプロサミンC(purpurosamine C))および2,6−ジアミノ−2,3,4,6−テトラデオキシ−6−N−メチル−D−エリトロ−ヘキソース);
【0044】
アミノもしくはN−アシルアミノヘプトース(例えば、2−アミノ−2,7−ジデオキシ−D−グリセロ−D−グルコ−ヘプトース、4−アミノ−4−デオキシ−(DまたはL)−グリセロ−D−グルコ−ヘプトース、4−アミノ−4−デオキシ−(DまたはL)−グリセロ−D−マンノ−ヘプトース、6−アミノ−6,7−ジデオキシ−D−グリセロ−D−グルコ−ヘプトース、2,6−ジアミノ−2,3,4,6,7−ペンタデオキシ−L−リキソ−ヘプトース(6−エピ−プルプロサミンB)、2,6−ジアミノ−2,3,4,6,7−ペンタデオキシ−D−リボ−ヘプタ−4−エノピラノース、2,6−ジアミノ−2,3,4,6,7−ペンタデオキシ−D−リボ−ヘプトース(プルプロサミンB)および2−アミノ−2,3,4,6,7−ペンタデオキシ−6−(メチルアミノ)−D−リボ−ヘプトース(プルプロサミンA))。
【0045】
本発明の化合物において、1個もしくは複数個のアミノ単糖部分のアシル化の程度は、0(すなわち、アミノ基は1つもアシル化されていない)から1(すなわち、全てのアミノ基がアシル化されている)まで可変である。好ましいアシル化の程度は、必要とされる官能基および完成品の意図される使用に依存し、カチオン性乳化剤として使用する予定の化合物は、(十分な塩基性−NR2基がプロトン化に利用可能であるためには)低度のアシル化を必要とするが、中性の化合物は、確実に塩基性基が過剰に存在しないようするために、高度のアシル化を必要とする。好ましくは、1個もしくは複数個のアミノ単糖部分のアシル化の程度は、0.05から0.8の範囲である。
【0046】
本発明の化合物において、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、グリコシド結合により、1個以上の(a)さらなるアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分(上で定義され例示されるとおり)および/または1個以上の(b)上に定義されるとおりの非置換単糖部分と結合して、2個〜4個の単糖部分を有するオリゴ糖鎖を形成し得る。本実施形態において、オリゴ糖鎖を形成している単糖部分のうちの少なくとも1個は、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分でなければならない。好ましくは、オリゴ糖鎖を形成している単糖部分のうちの1個または2個、より好ましくは1個のみが、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分である。1個もしくは複数個のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、オリゴ糖鎖上の任意の位置に存在し得る。しかしながら、1個のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、グリセロール主鎖に結合されていることが好ましい。
【0047】
本発明の化合物において、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、分子上に存在する唯一の単糖部分である(すなわち、このアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、非置換単糖部分にも、さらなるアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分にも結合されていない)ことが好ましい。
【0048】
好ましくは、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、グルコサミンまたはN−アセチルグルコサミンから選択される。
【0049】
アシル基
用語「アシル基」(特に本発明の化合物の第2の基の定義におけるものであるが、それに限らない)とは、直鎖または分岐鎖の、飽和または不飽和の、式R−C(=O)−(式中、Rはヒドロカルビル基である)の基を意味する。典型的に、そのようなアシル基は、合計3個〜40個の炭素原子、好ましくは6個〜30個の炭素原子(例えば、少なくとも8個〜24個の炭素原子、例えば、10個〜22個、例えば、10個、12個、14個、16個または18個の炭素原子)を有する。1つの特定の実施形態において、そのようなアシル基は、アルカノイル基(すなわち、基Rがアルキルである、完全飽和の完全脂肪族基)である。あるいは、そのようなアシル基は、アルケノイル基(すなわち、基Rがアルケニルである、不飽和の完全脂肪族基、すなわち、1個以上の二重結合を含有する不飽和脂肪族基)を含み、そのような基は、例えば、1個〜5個の二重結合、好ましくは1個、2個または3個の二重結合、より好ましくは1個または2個の二重結合を有し得る。
【0050】
アシル基の例としては、飽和アシル基、例えば、アルカノイル基(例えば、ブタノイル(ブチリル)、ヘキサノイル(カプロイル)、オクタノイル(カプリル)、デカノイル(カプリニル)、ドデカノイル(ラウロイル)、テトラデカノイル、(ミリストイル)、ヘキサデカノイル(パルミトイル)、オクタデカノイル(ステアロイル)、エイコサノイル(アラキドニル)、ドコサノイル(ベヘノイル)およびテトラコサノイル(リグノセロイル)基)、および不飽和アシル基、例えば、アルケノイル基(例えば、シス−テトラデカ−9−エノイル(ミリストレイル)、シス−ヘキサデカ−9−エノイル(パルミトレイル)、シス−オクタデカ−9−エノイル(オレイル)、シス シス−9,12−オクタデカジエノイル(リノレイル)、シス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレニル)、シス,シス,シス−6,9,12−オクタデカトリエノイル(ガモレイル(gamoleyl))、およびシス,シス,シス,シス−5,8,11,14−エイコサ−テトラエノイル(アラキドニル)基)が挙げられる。
【0051】
本態様において、好ましいアシル基は、6個〜24個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和(好ましくは飽和)のアシル基である。より好ましいアシル基は、8個〜18個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であり、特に、n−デカノイル(カプリニル)、n−ドデカノイル(ラウロイル)、n−テトラデカノイル(ミリストイル)、n−ヘキサデカノイル(パルミトイル)、n−オクタデカノイル(ステアロイル)、シス−オクタデカ−9−エノイル(オレイル)、シス,シス−9,12−オクタデカジエノイル(リノレイル)、およびシス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレニル)基である。特に好ましくは、n−デカノイル基およびn−オクタデカノイル基である。
【0052】
1つの態様において、アシル基は、合計3個〜40個の炭素原子、好ましくは6個〜30個の炭素原子(例えば、8個〜24個の炭素原子)を有するアルカノイル基である。1つの実施形態において、アシル基は、合計8個〜18個の炭素原子(例えば、8個、10個、12個、14個、16個または18個の炭素原子)を有するアルカノイル基である。
【0053】
1つの態様において、アシル基は、合計3個〜40個の炭素原子、好ましくは6個〜30個の炭素原子(例えば、8個〜24個の炭素原子)および1個〜5個、好ましくは1個、2個または3個、より好ましくは1個または2個の二重結合を有するアルケノイル基である。1つの実施形態において、アシル基は、合計8個〜18個の炭素原子(例えば、8個、10個、12個、14個、16個または18個の炭素原子)および1個〜3個の二重結合を有するアルケノイル基である。
【0054】
本発明の化合物において、R1、R2およびR3から選択される(好ましくはR1およびR3から選択される)第1の基は、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個はアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分であるオリゴ糖鎖である。
【0055】
より好ましくは、第1の基は、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分である。換言すれば、このアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、分子上に存在する唯一の単糖部分であり、さらなる非置換単糖またはアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分に結合されていないことが好ましい。
【0056】
好ましくは、第1の基は、アミノヘキソース部分もしくはアシル基が2個〜4個の炭素原子を有するN−アシルアミノヘキソース部分である。本実施形態において、アミノもしくはN−アシルアミノ基は、好ましくは、ヘキソース部分の2位に存在する。
【0057】
特に好ましい実施形態において、第1の基は、グルコサミンまたはN−アセチルグルコサミンから選択される。
【0058】
本発明の化合物において、R1、R2およびR3から選択される(好ましくは、R1およびR3から選択される)第2の基は、好ましくは、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基(好ましくは、アルカノイルもしくはアルケノイル基)である。好ましくは、第2の基は、6個〜24個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基(好ましくは、アルカノイルもしくはアルケノイル基)である。より好ましくは、第2の基は、8個〜18個の炭素原子、特に10個、12個、14個、16個または18個の炭素原子を有する、飽和もしくは不飽和(好ましくは飽和)のアシル基(好ましくは、アルカノイル基)である。さらにより好ましくは、第2の基は、n−デカノイル、n−ドデカノイル、n−テトラデカノイル、n−ヘキサデカノイル、n−オクタデカノイル、シス−オクタデカ−9−エノイル(オレイル)、シス,シス−9,12−オクタデカジエノイル(リノレイル)またはシス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレニル)である。
【0059】
特に好ましい実施形態において、第2の基は、n−デカノイルまたはn−オクタデカノイルである。
【0060】
本発明の化合物において、R1、R2およびR3から選択される第3の基は、水素である。好ましくは、R2が、水素である。
【0061】
本発明によれば、
R1およびR3から選択される第1の基が、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個はアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分であるオリゴ糖鎖であり;
R1およびR3から選択される第2の基が、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基(好ましくは、アルカノイルもしくはアルケノイル基)であり;そして
R2が、水素である
化合物が好ましい。
【0062】
本発明によれば、とりわけ、
第1の基(好ましくは、R1およびR3から選択される)が、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であり;そして
第2の基(好ましくは、R1およびR3から選択される)が、6個〜24個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基(好ましくは、アルカノイルもしくはアルケノイル基)である
化合物が好ましい。
【0063】
本発明によれば、特に、
第1の基(好ましくは、R1およびR3から選択される)が、アミノヘキソース部分もしくはアシル基が2個〜4個の炭素原子を有するN−アシルアミノヘキソース部分であり;そして
第2の基(好ましくは、R1およびR3から選択される)が、8個〜18個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基(好ましくは、アルカノイルもしくはアルケノイル基)である
化合物が好ましい。
【0064】
本発明によれば、なおさらには、
第1の基(好ましくは、R1およびR3から選択される)が、グルコサミンもしくはN−アセチルグルコサミンから選択され;そして
第2の基(好ましくは、R1およびR3から選択される)が、n−デカノイル、n−ドデカノイル、n−テトラデカノイル、n−ヘキサデカノイル、n−オクタデカノイル、シス−オクタデカ−9−エノイル(オレイル)、シス,シス−9,12−オクタデカジエノイル(リノレイル)またはシス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレニル)から選択される
化合物が好ましい。
【0065】
本発明の特に好ましい化合物は、1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール;1−O−(2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール;および1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−オクタデカノイルグリセロールから選択される。
【0066】
方法
本発明の化合物は、当業者に一般的に知られている多くの方法により調製され得る。概して、化合物は、モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体と、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源またはその活性化誘導体、および必要であれば、非置換の単糖部分の供給源またはその活性化誘導体とを、任意選択で適切な触媒または活性化剤の存在下で、接触させることによって、調製され得る。
【0067】
本発明の化合物がオリゴ糖鎖を含む場合、そのような化合物は、標的化合物よりも1つ少ない単糖部分を有する本発明の化合物をアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源またはその活性化誘導体と反応させて、このアミノもしくはN−アシルアミノ置換されていない単糖を鎖に付加することによっても形成され得る。したがって、本発明の化合物は中間体化合物よりも1つ多い単糖またはアミノもしくはN−アシルアミノ単糖を有する本発明のさらなる化合物の製造のための中間体として機能し得ることが、本発明の範囲内で想定される。
【0068】
本発明の化合物は、例えば食料もしくは飼料においてまたは洗剤もしくは洗濯用組成物において、インサイチュで(すなわち、化合物がその中で使用されることが意図される組成物中で)生成され得る。本態様は、以下でより詳細に説明される。
【0069】
モノグリセリド(モノアシルグリセロール)
本発明の化合物を調製するための出発物質のうちの1つは、モノグリセリドである。本明細書において、用語「モノグリセリド」(モノアシルグリセロールとしても知られる)とは、グリセロール部分にエステル結合により共有結合された1個のアシル基(上で定義され例示されるとおり)を含む化合物(グリセロール部分のその他の2個のOH基は、自由にアミノもしくはN−アシルアミノ置換単糖とグリコシド結合を形成することができる)を意味する。脂質受容体はモノグリセリドの混合物を含み得ることが、本発明の範囲内で想定される。
【0070】
モノグリセリドのアシル基は、グリセロール分子の3個の炭素のうちのいずれか1つの上に存在し得、したがって、モノグリセリドは1−モノアシルグリセロール、2−モノアシルグリセロール、またはそれらの混合物を含み得ることが、本発明の範囲内で想定される。好ましくは、モノグリセリドは、1−モノアシルグリセロールである。モノグリセリドの混合物が存在する場合、その混合物は、好適には少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、なおより好ましくは少なくとも90%、なおさらに好ましくは少なくとも95%、なおより好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも99%の1−モノアシルグリセロール(重量による)を含む。
【0071】
好適には、モノアシルグリセロールのアシル部分は、6個〜24個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基(好ましくは、アルカノイルもしくはアルケノイル基)である。好ましくは、モノアシルグリセロールのアシル部分は、8個〜18個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基(好ましくは、アルカノイルもしくはアルケノイル基)である。さらにより好ましくは、モノアシルグリセロールのアシル部分は、n−デカノイル、n−ドデカノイル、n−テトラデカノイル、n−ヘキサデカノイル、n−オクタデカノイル、シス−オクタデカ−9−エノイル(オレイル)、シス,シス−9,12−オクタデカジエノイル(リノレイル)またはシス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレニル)である。最も好ましくは、モノアシルグリセロールは、1−n−デカノイル−グリセロールまたは1−n−オクタデカノイル−グリセロールである。
【0072】
モノアシルグリセロールは、本発明の化合物の調製の間、1個以上の保護基により保護され得る。好適な保護基の例は、それらの付加および除去の方法と共に、Greene and Wuts,“Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis”,4th Edition,publ.Wiley,2006に記載されている。特に好ましい保護基は、ベンジルである。
【0073】
本発明の化合物を調製するために、モノアシルグリセロールは、活性化誘導体として存在し得る。本明細書において、モノアシルグリセロールに適用される場合、用語「活性化誘導体」とは、モノアシルグリセロールの1個以上(好ましくは1個のみ)のヒドロキシル基が脱離基に変換された誘導体を意味する。好適な脱離基の例としては、ハロゲン、アシルオキシ(ここで、アシルは上で定義され例示されている)およびアルキル−もしくはアリールスルホニルオキシ(例えば、ベンゼンスルホニルオキシまたはp−トルエンスルホニルオキシ)が挙げられる。好ましい脱離基は、ハロゲン、特に塩素である。
【0074】
アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源
本発明の化合物におけるアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源は、それが1個以上のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分を含有する限り、特に重要ではない。
【0075】
アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源において、アミノ単糖部分のアシル化の程度は、0(すなわち、アミノ基は1つもアシル化されていない)から1(すなわち、全てのアミノ基がアシル化されている)まで可変である。好ましくは、アミノ単糖部分のアシル化の程度は、0.05〜0.8の範囲であることが好ましい。
【0076】
アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分のヒドロキシル基および/またはアミノ基は、本発明の化合物の調製の間、1個以上の保護基により保護され得る。好適な保護基の例は、それらの付加および除去の方法と共に、Greene and Wuts,“Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis”,4th Edition,publ.Wiley,2006に記載されている。特に好ましい保護基は、アセチルである。
【0077】
本発明の化合物を調製するために、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源は、活性化誘導体として存在し得る。本明細書において、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源に適用される場合、用語「活性化誘導体」とは、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源の1個以上(好ましくは1個のみ)のヒドロキシル基が脱離基に変換された誘導体を意味する。好適な脱離基の例としては、ハロゲン、アシルオキシ(ここで、アシルは上で定義され例示されている)およびアルキル−もしくはアリールスルホニルオキシ(例えば、ベンゼンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ)が挙げられる。好ましい脱離基は、ハロゲン、特に塩素である。
【0078】
反応が酵素を使用して行われる場合、1個以上のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、供給源分子の残部にグリコシド結合により結合しており、このグリコシド結合が、転移の過程の中で酵素により加水分解される。
【0079】
1つの実施形態において、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖の供給源が、グリコシド結合により一緒に連結された1個より多くのアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分を含む高次の(higher)アミノもしくはN−アシルアミノ糖(すなわち、二糖、オリゴ糖または多糖)であり、その高次のアミノもしくはN−アシルアミノ糖中の1個以上のグリコシド結合を酵素が作用して加水分解し、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分をモノグリセリドに転移させることが好ましい。この点に関し、高次のアミノもしくはN−アシルアミノ糖を構成するアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、同じであっても異なっていてもよく、各々独立して、D型配置またはL型配置を有し得る。
【0080】
高次のアミノもしくはN−アシルアミノ糖を構成するアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、各々独立して、アルドース部分またはケトース部分であり得、同じ数の炭素原子を有していても異なる数の炭素原子を有していてもよい。好適には、各アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、3個〜8個、好ましくは4個〜6個、より好ましくは5個〜6個の炭素原子を有し得る。
【0081】
別の実施形態において、高次のアミノもしくはN−アシルアミノ糖を構成する単糖部分は、ヘキソース部分である。好ましくは、そのような高次の糖のヘキソース部分は、1個以上のアミノもしくはN−アシルアミノグルコース部分(特に、グルコサミンもしくはN−アセチルグルコサミン部分)を含む。1つの特に好ましい実施形態において、そのような高次の糖のヘキソース部分の全ては、アミノもしくはN−アシルアミノグルコース部分(特に、グルコサミンもしくはN−アセチルグルコサミン部分)である。
【0082】
アミノもしくはN−アシルアミノ高次糖を構成するアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、グリコシド結合により一緒に連結されている。単糖部分がヘキソース部分である場合、グリコシド結合は、1−α,1’−αグリコシド結合、1,2’−グリコシド結合(これは、1−α−2’もしくは1−β−2’グリコシド結合であり得る)、1,3’−グリコシド結合(これは、1−α−3’もしくは1−β−3’−グリコシド結合であり得る)、1,4’−グリコシド結合(これは、1−α−4’もしくは1−β−4’−グリコシド結合であり得る)、1,6’−グリコシド結合(これは、1−α−6’もしくは1−β−6’−グリコシド結合であり得る)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。好ましくは、グリコシド結合は、1,4’−グリコシド結合、好ましくは1−β−4’−グリコシド結合である。
【0083】
1つの実施形態において、高次のアミノもしくはN−アシルアミノ糖は、2個のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖単位を含む(すなわち、アミノもしくはN−アシルアミノ二糖である)。そのようなアミノもしくはN−アシルアミノ二糖のアシル化の程度は、0(すなわち、いずれのアミノ単糖部分上のどちらのアミノ基もアシル化されていないアミノ二糖)から1(すなわち、全てのアミノ単糖部分上の両方のアミノ基がアシル化されているN−アシルアミノ二糖)まで可変である。好ましくは、アミノ二糖のアシル化の程度は、0.05〜0.95の範囲である。
【0084】
好適なアミノもしくはN−アシルアミノ二糖の例としては、β−1,4−結合グルコサミン単位の二量体であるキトビオース、またはそのN−アシル誘導体、特にN−アセチルキトビオースが挙げられる。キトビオースのアシル化の程度は、0(すなわち、いずれのグルコサミン部分上のどちらのアミノ基もアシル化されていない)から1(すなわち、全てのグルコサミン部分上の両方のアミノ基がアシル化されている)まで可変である。1つの実施形態において、アシル化の程度は、0である。別の実施形態において、アシル化の程度は、1である。さらなる実施形態において、キトビオースのアシル化の程度は、0.05〜0.95の範囲である。
【0085】
【化3】
【0086】
別の実施形態において、高次のアミノもしくはN−アシルアミノ糖は、3個〜10個の単糖単位を含む(すなわち、アミノもしくはN−アシルアミノオリゴ糖である)か、またはグリコシド結合により一緒に連結された少なくとも10個のより高次のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖単位を含むアミノもしくはN−アシルアミノ多糖である。典型的に、そのようなアミノもしくはN−アシルアミノ多糖は、少なくとも40個、例えば、少なくとも100個(例えば、少なくとも200個(少なくとも500個、例えば、少なくとも1000個(例えば、少なくとも5000個、例えば、10000個、例えば、少なくとも50000個、例えば、100000個)を含む))のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖単位を含む。
【0087】
1つの実施形態において、アミノもしくはN−アシルアミノ多糖は、キチンを含む。キチンは、多糖であり;これは、N−アセチルグルコサミンの単位から合成される。これらの単位は、β−1,4−共有グリコシド結合(セルロースを構成するグルコース単位間の結合と同様)を形成する。
【0088】
別の1つの実施形態において、アミノもしくはN−アシルアミノ多糖は、ランダムに分布したβ−(1−4)−結合D−グルコサミン(脱アセチル化単位)およびN−アセチル−D−グルコサミン(アセチル化単位)からなる線状多糖である、キトサンを含む。
【0089】
好ましくは、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源は、キトサン、キトビオース、またはそのうちの任意のものの、アシル基が1個〜6個の炭素原子を有する、N−アシル誘導体から選択される。より好ましくは、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源は、キトサンもしくはキトビオース、またはそれらのうちのいずれかのN−アセチル誘導体から選択される。
【0090】
単糖供給源
本発明の化合物がオリゴ糖鎖を含み、その鎖中の単糖部分のうちの少なくとも1個が非置換単糖部分である場合、そのような化合物は、概して、モノアシルグリセロール(またはその活性化誘導体)またはアミノ置換糖脂質(すなわち、標的化合物よりも1つ少ない単糖部分を有する本発明の化合物)を(非置換)単糖供給源と反応させて、この非置換単糖を鎖に付加することによって形成される。
【0091】
本発明に従って転移されるべき単糖部分の供給源は、それが非置換単糖部分を含有する限り、特に重要ではない。本発明の化合物が化学合成により調製される場合、単糖部分の供給源は、上で説明され例示されるとおり、遊離単糖であり得る。しかしながら、本発明の化合物が酵素合成により調製される場合は、単糖部分は、供給源分子の残部にグリコシド結合により結合しており、このグリコシド結合が、転移の過程の中で酵素により加水分解される。
【0092】
特に、本発明の化合物が酵素合成により調製される場合は、単糖の供給源が、グリコシド結合により一緒に連結された1個より多くの単糖部分を含む高次の糖(すなわち、二糖、オリゴ糖または多糖)であり、その高次の糖中の1個以上のグリコシド結合を酵素が作用して加水分解し、単糖を受容体分子に転移させることが好ましい。本実施形態において、高次の糖を構成する単糖部分は、同じであっても異なっていてもよく、各々独立して、D型配置またはL型配置を有し得る。
【0093】
1つの実施形態において、高次の糖を構成する単糖部分は、各々独立して、アルドース部分またはケトース部分であり得、同じ数の炭素原子を有していても異なる数の炭素原子を有していてもよい。好適には、各単糖部分は、3個〜8個、好ましくは4個〜6個、より好ましくは5個〜6個の炭素原子を有し得る。
【0094】
1つの実施形態において、高次の糖を構成する単糖部分は、ヘキソース部分であり、その例としては、グルコース、ガラクトース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドースおよびタロースなどのアルドヘキソース、ならびにフルクトースおよびソルボースなどのケトヘキソースが挙げられる。好ましくは、そのような高次の糖のヘキソース部分は、1個以上のグルコース部分を含む。1つの特に好ましい実施形態において、そのような高次の糖のヘキソース部分の全てが、グルコース部分である。
【0095】
別の実施形態において、高次の糖を構成する単糖部分は、リボース、アラビノース、キシロースまたはリキソースなどのペントース部分である。好ましくは、そのような高次の糖のペントース部分は、アラビノースもしくはキシロース部分である。
【0096】
高次の糖を構成する単糖部分は、グリコシド結合により一緒に連結されている。単糖部分がヘキソース部分である場合、グリコシド結合は、1−α,1’−αグリコシド結合、1,2’−グリコシド結合(これは、1−α−2’もしくは1’−β−2’グリコシド結合であり得る)、1,3’−グリコシド結合(これは、1−α−3’もしくは1−β−3’−グリコシド結合であり得る)、1,4’−グリコシド結合(これは、1−α−4’もしくは1−β−4’−グリコシド結合であり得る)、1,6’−グリコシド結合(これは、1−α−6’もしくは1−β−6’−グリコシド結合であり得る)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0097】
1つの実施形態において、高次の糖は、2個の単糖単位を含む(すなわち、二糖である)。好適な二糖の例としては、マルトース、イソマルトース、イソマルツロース、ラクトース、スクロース、セロビオース、ニゲロース、コージビオース、トレハロースおよびトレハルロースが挙げられる。
【0098】
別の実施形態において、高次の糖は、鎖中に3個〜10個の単糖単位を含み(すなわち、オリゴ糖であり)、これは、分岐であっても非分岐であってもよい。好ましくは、オリゴ糖は、3個〜8個、より好ましくは3個〜6個の単糖単位を含む。好適なオリゴ糖の例としては、マルトデキストリン、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、メレジトース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース、セロヘキサオースおよびセロヘプタオースが挙げられる。
【0099】
別の実施形態において、高次の糖は、グリコシド結合により一緒に連結された少なくとも10個の単糖単位を含む、多糖である。典型的に、そのような多糖は、少なくとも40個、例えば、少なくとも100個(例えば、少なくとも200個(少なくとも500個、例えば、少なくとも1000個(例えば、少なくとも5000個、例えば、10000個、例えば、少なくとも50000個、例えば、100000個)を含む))の単糖単位を含む。
【0100】
一部の実施形態において、多糖は、10個〜500000個の単糖単位を含む。他の実施形態において、多糖は、100個〜1000個の単糖単位を含む。他の実施形態において、多糖は、1000個〜10000個の単糖単位を含む。他の実施形態において、多糖は、10000個〜100000個の単糖単位を含む。一部の実施形態において、多糖は、40個〜3000個、好ましくは200個〜2500個の単糖単位を含む。
【0101】
そのような多糖の例としては、澱粉およびその誘導体(例えば、カチオン性もしくはアニオン性、酸化またはリン酸処理澱粉)、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロースまたはその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース)、アルギン酸またはその塩もしくは誘導体、ポリデキストロース、ペクチン、プルラン、カラゲナン、ローカストビーンガムおよびグアーならびにそれらの誘導体(例えば、カチオン性もしくはアニオン性グアー)が挙げられる。
【0102】
1つの実施形態において、多糖は、澱粉を含む。澱粉は、グルコピラノース単位がα結合により結合しているグルコースポリマーである。これは、アミロースおよびアミロペクチンの混合物からなる。アミロースは、1,4’−α−グリコシド結合により一緒に結合された数百個のグルコース分子の直鎖からなる。これに対し、アミロペクチンは、数千個のグルコース単位でできた枝分れした分子であり、その主鎖は、1,4’−α−グリコシド結合を含むが、およそ25個のグルコース単位ごとに1,6’−α−グリコシド分岐を有する。
【0103】
1つの実施形態において、多糖は、グリコーゲンを含む。グリコーゲンは、動物において見出される、グルコース残基の分岐鎖からなる多糖である。
【0104】
1つの実施形態において、多糖は、セルロースを含む。セルロースは、1,4’−β−グリコシド結合により一緒に結合された数千個のグルコース単位から形成されるポリマーである。
【0105】
単糖部分の好ましい供給源としては、スクロースおよびマルトースが挙げられる。
【0106】
酵素合成
1つの態様において、本発明の化合物は、トランスグリコシダーゼ酵素を使用して調製され得、この酵素は、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源中のグリコシド結合の加水分解およびこの部分のモノグリセリド受容体分子への転移を触媒するものである。
【0107】
したがって、1つの実施形態において、本発明の化合物を調製する方法であって、モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールを、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源およびトランスグリコシダーゼ酵素により処理する工程を含む方法が提供される。
【0108】
本明細書において、用語「トランスグリコシダーゼ酵素」は、単糖部分(その最も広い態様または好ましい態様において、上で定義され例示されるとおりであり、特に非置換単糖部分および/またはアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分であるがこれに限定されない)を、1つの分子から別の分子に転移させることが可能な任意の酵素を対象として含むことが意図される。用語「トランスグルコシダーゼ」は、単糖部分がグルコース部分である場合に使用される。
【0109】
1つの実施形態において、トランスグリコシダーゼ酵素は、アミノグリコシルトランスフェラーゼ酵素である。本明細書において、用語「アミノグリコシルトランスフェラーゼ酵素」とは、好適なアミノもしくはN−アシルアミノ単糖供給源(上で定義され例示されるとおり)から受容体分子、好ましくはモノグリセリド(上で定義され例示されるとおり)への、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分(上で定義され例示されるとおり)の転移を触媒することが可能な酵素を意味する。
【0110】
好適には、この酵素のトランスグリコシダーゼ活性は、酵素の全活性の少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも5%を構成し得る。この酵素の残りの活性は、例えば、受容体基質が水である加水分解活性を実質的に含み得る。
【0111】
本発明において、酵素のトランスグリコシダーゼ活性(特にアミノグリコシルトランスフェラーゼ活性)百分率は、遊離単糖(具体的には、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖)のモル割合と、単糖(具体的には、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖)がモノグリセリドに結合している本発明の化合物の割合とを、反応の完了後に測定することによって計算され得る。遊離単糖(具体的には、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖)は、供給源分子の酵素加水分解の結果として生じるのに対して、本発明の化合物は、供給源分子からモノグリセリドへの単糖(具体的には、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖)の酵素転移の結果として生じる。
【0112】
典型的なトランスグリコシダーゼ酵素触媒反応は、以下の反応スキーム1に従う。
【0113】
【化4】
【0114】
スキーム1において、R’は、上で定義され例示されるとおりのアシル基のヒドロカルビル部分である。
【0115】
好適には、トランスグリコシダーゼ酵素は、酵素分類(Enzyme Classification:E.C.)3.2.1.21またはE.C3.2.1.74に分類される。
【0116】
1つの実施形態において、トランスグリコシダーゼ酵素は、β−グルコシダーゼ酵素である。β−グルコシダーゼは、2つのグルコース部分(例えば、二糖セロビオース)を結合しているβ1−>4結合に作用する、グルコシダーゼ酵素である。これは、グルコースの放出を伴う、β−D−グルコシド中の末端非還元性残基の加水分解を触媒する。
【0117】
驚くべきことに、本発明によれば、本発明において使用されるβ−グルコシダーゼ酵素がトランスグリコシダーゼ活性(上記のとおり)、特にアミノグリコシルトランスフェラーゼ活性をも示すことが見出された。これは、β−グルコシダーゼ酵素の主要活性が加水分解活性であるので、予想されなかったことであろう。
【0118】
典型的に、β−グルコシダーゼ酵素のトランスグリコシダーゼ活性は、酵素の全活性の少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも5%である。
【0119】
アミノ酸配列
本明細書に定義されるとおりの、脂質にアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分を転移させることが可能なトランスグリコシダーゼ酵素のアミノ酸配列、特に、以下に定義される配列番号1のアミノ酸配列を有する、またはそれと少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)の配列同一性を有するトランスグリコシダーゼ酵素が、本発明において使用され得る。
【0120】
本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸配列」は、用語「ポリペプチド」および/または用語「タンパク質」と同義である。用語「アミノ酸配列」は、場合によっては用語「ペプチド」と同義である。用語「アミノ酸配列」は、場合によっては用語「酵素」と同義である。
【0121】
アミノ酸配列は、好適な供給源から調製/単離され得るか、またはアミノ酸配列は、合成により作製され得るか、またはアミノ酸配列は、組換えDNA技術の使用により調製され得る。
【0122】
本発明において使用されるタンパク質は、他のタンパク質、特に他の酵素(例えば、アミラーゼ、プロテアーゼまたはリパーゼ)と共に使用され得る。したがって、本発明はまた、酵素の組み合わせを含む組成物をも使用し得、この組み合わせは、本発明において使用されるトランスグリコシラーゼ酵素と、例えば本明細書に記載されるような別のトランスグリコシダーゼ酵素であり得る、別の酵素とを含む。本態様は、後の節で述べられる。
【0123】
配列同一性/配列相同性/変異体/相同体/誘導体
本発明はまた、本明細書で定義される1つもしくは複数のアミノ酸配列と、または本明細書で定義される特定の特性を有するポリペプチドと、ある程度の配列同一性または配列相同性を有するポリペプチドの使用を包含する。本発明は、特に、以下に定義される配列番号1とある程度の配列同一性を有するペプチドまたはその相同体を包含する。本明細書において、用語「相同体」とは、対象アミノ酸配列または対象ヌクレオチド配列と配列同一性を有する実体を意味する。本明細書において、用語「相同性」は、「配列同一性」と同等として扱われ得る。
【0124】
相同なアミノ酸配列および/またはヌクレオチド配列は、トランスグリコシダーゼ酵素の機能的活性を保持しかつ/またはトランスグリコシダーゼ酵素の活性を増強するポリペプチドを、提供および/またはコードするはずである。
【0125】
本文脈において、相同配列は、対象配列と、少なくとも60%、例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であり得るアミノ酸配列を含むものと解釈される。典型的に、相同体は、対象アミノ酸配列と同一の活性部位などを含む。相同性は、類似性(すなわち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)の観点からも考えられ得るが、本発明の文脈においては、配列同一性の観点から相同性を表すことが好ましい。
【0126】
配列同一性比較は、目で、またはより一般的には、容易に入手可能な配列比較プログラムの助けを借りて行われ得る。こうした市販のコンピュータプログラムは、複雑な比較アルゴリズムを使用して、2つ以上の配列の間の1つもしくは複数の差異に繋がり得た進化的事象を最もよく反映するその2つ以上の配列をアラインメントする。したがって、これらのアルゴリズムは、同一または類似のアミノ酸のアラインメントに対して加点(rewarding)し、ギャップの挿入、ギャップ伸長および非類似アミノ酸のアラインメントに対して減点(penalising)する評点システムを用いて動作する。比較アルゴリズムの評点システムは、以下を含む:
i)1つのギャップが挿入される毎のペナルティスコアの割り当て(ギャップペナルティスコア)、
ii)既存のギャップが追加位置により伸長される毎のペナルティスコアの割り当て(伸長ペナルティスコア)、
iii)同一アミノ酸のアラインメントに対する高スコアの割り当て、および
iv)非同一アミノ酸のアラインメントに対する様々なスコアの割り当て。
【0127】
多くのアラインメントプログラムは、ギャップペナルティの修正を可能にする。しかしながら、そのような配列比較用ソフトウェアを使用する場合、デフォルト値を使用することが好ましい。
【0128】
非同一アミノ酸のアラインメントに付与されるスコアは、置換マトリックスとも呼ばれる評点マトリックスに従って割り当てられる。そのような置換マトリックスにおいて与えられるスコアは、あるアミノ酸が進化の中で別のアミノ酸に置換される可能性が様々であり、置換されるべきアミノ酸の物理的/化学的性質に依存するという事実を反映している。例えば、極性アミノ酸が別の極性アミノ酸に置換される可能性は、疎水性アミノ酸に置換されるのに比べて高い。したがって、評点マトリックスは、同一のアミノ酸には最も高いスコアを割り当て、非同一であるが類似したアミノ酸にはそれより低いスコアを割り当て、そして非同一非類似のアミノ酸にはそれよりさらに低いスコアを割り当てるであろう。最もよく使用されている評点マトリックスは、PAMマトリックス(Dayhoff et al.(1978)、Jones et al.(1992))、BLOSUMマトリックス(HenikoffおよびHenikoff(1992))およびGonnetマトリックス(Gonnet et al.(1992))である。
【0129】
そのようなアラインメントを実施するのに好適なコンピュータプログラムとしては、Vector NTI(Invitrogen Corp.)ならびにClustalV、ClustalWおよびClustalW2プログラム(Higgins DG & Sharp PM(1988)、Higgins et al.(1992)、Thompson et al.(1994)、Larkin et al.(2007)が挙げられるが、これらに限定されない。種々のアラインメントツールの品揃えが、www.expasy.org.のExPASy Proteomicsサーバーから利用可能である。配列アラインメントを実行し得るソフトウェアの別の例は、現在http://www.ncbi.nlm.nih.gov/で見出され得るNational Center for Biotechnology Informationのウェブページから入手可能であり、Altschul et al.J.Mol.Biol.(1990)215;403−410に最初に記載された、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)である。配列アラインメントを実行し得るソフトウェアのさらなる例は、Tatusova and Madden,FEMS Microbiol.Lett.(1999)174,247−250に最初に記載された、BLAST2である。
【0130】
ソフトウェアがアラインメントを生成すると、%類似性および%配列同一性を計算することができる。このソフトウェアは、典型的に、配列比較の一部としてこれを行い、数値結果を生成する。
【0131】
1つの実施形態において、配列アラインメントを実施するためにはClustalWソフトウェアを使用することが好ましい。好ましくは、ClustalWでのアラインメントは、以下のペアワイズアラインメントのためのパラメータを用いて実施される。
【0132】
【表1】
【0133】
ClustalW2は、例えば、EMBL−EBIウェブページwww.ebi.ac.ukのtools−sequence analysis−ClustalW2の項目下で、European Bioinformatics Instituteにより、インターネット上で提供されている。現在のClustalW2ツールの正確なアドレスは、www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2である。
【0134】
したがって、本発明はまた、本明細書において定義されるとおりのタンパク質の任意のアミノ酸配列の変異体、相同体および誘導体、特に下記に定義される配列番号1の変異体、相同体および誘導体の使用をも包含する。
【0135】
配列(特に、配列番号1)はまた、サイレントな変化を生じ、機能的に等価な物質をもたらす、アミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有し得る。意図的なアミノ酸置換は、その物質の二次的結合活性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性における類似性に基づいてなされ得る。例えば、負に荷電したアミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ;正に荷電したアミノ酸としては、リジンおよびアルギニンが挙げられ;そして類似の親水性値を有する非荷電の極性先端基をもつアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンが挙げられる。
【0136】
本発明はまた、行われ得る保存的置換(置換および置き換えは共に、本明細書において、既存のアミノ酸残基と代替残基との相互交換を意味するのに使用される)、すなわち、類似のものと類似のものとの置換(例えば、塩基性のものと塩基性のものとの置換、酸性のものと酸性のものとの置換、極性のものと極性のものとの置換など)をも包含する。非保存的置換(すなわち、あるクラスの残基から別のクラスの残基への置換、あるいは非天然アミノ酸(例えば、オルニチン(以下、Zと称する)、ジアミノ酪酸オルニチン(以下、Bと称する)、ノルロイシンオルニチン(以下、Oと称する)、ピリイルアラニン、チエニルアラニン、ナフチルアラニンおよびフェニルグリシン)を含めることを伴う置換)もまた行われ得る。
【0137】
なされ得る保存的置換は、例えば、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジンおよびヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸およびアスパラギン酸)、脂肪族アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)、極性アミノ酸(グルタミン、アスパラギン、セリン、スレオニン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン)、ヒドロキシルアミノ酸(セリン、スレオニン)、大型アミノ酸(フェニルアラニンおよびトリプトファン)および小型アミノ酸(グリシン、アラニン)の群内である。
【0138】
置換はまた、非天然アミノ酸(α*およびα二置換*アミノ酸、N−アルキルアミノ酸*、乳酸*、天然アミノ酸のハロゲン化物誘導体(例えば、トリフルオロチロシン*、p−Cl−フェニルアラニン*、p−Br−フェニルアラニン*、p−I−フェニルアラニン*)、L−アリル−グリシン*、β−アラニン*、L−α−アミノ酪酸*、L−γ−アミノ酪酸*、L−α−アミノイソ酪酸*、L−ε−アミノカプロン酸#、7−アミノヘプタン酸*、L−メチオニンスルホン#*、L−ノルロイシン*、L−ノルバリン*、p−ニトロ−L−フェニルアラニン*、L−ヒドロキシプロリン#、L−チオプロリン*、フェニルアラニン(Phe)のメチル誘導体(例えば、4−メチル−Phe*、ペンタメチル−Phe*)、L−Phe(4−アミノ)#、L−Tyr(メチル)*、L−Phe(4−イソプロピル)*、L−Tic(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボキシル酸)*、L−ジアミノプロピオン酸#およびL−Phe(4−ベンジル)*を含む)によってもなされ得る。上記の(相同的または非保存的置換に関する)説明では、記号*は誘導体の疎水性を示すのに利用されているのに対して、#は誘導体の親水性を示すのに利用されており、#*は両親媒性を示している。
【0139】
変異体アミノ酸配列は、配列の任意の2つのアミノ酸残基の間に挿入され得る好適なスペーサー基(アミノ酸スペーサー(例えば、グリシンもしくはβ−アラニン残基)の他に、アルキル基(例えば、メチル、エチルもしくはプロピル基)を含む)を含み得る。変異のさらなる形態は、ペプトイド形態の1個以上のアミノ酸残基の存在を含んでおり、当業者には十分に理解されるであろう。疑義を避けるために述べると、「ペプトイド形態」は、α−炭素置換基がα−炭素ではなく残基の窒素原子上にある変異体アミノ酸残基をいうのに使用される。ペプトイド形態のペプチドを調製するための方法は、当該技術分野において、例えば、Simon RJ et al.(1992),Horwell DC.(1995)において知られている。
【0140】
精製
1つの態様において、本発明において使用される配列は、好ましくは、精製された形態である。用語「精製(された)」とは、所与の成分が高いレベルで存在することを意味する。この成分は、望ましくは、組成物中に存在する主活性成分である。
【0141】
量/濃度
本発明のグリコシル化方法において必要とされるトランスグリコシダーゼの量は、特に限定されない。
【0142】
1つの実施形態において、本発明の酵素転移方法は、有効量のトランスグリコシダーゼ酵素を必要とする。本明細書において、用語「有効量」とは、測定可能な量のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分をモノグリセリド分子に転移させることが可能なトランスグリコシダーゼ酵素の量を意味する。
【0143】
脂質受容体分子に転移されたアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の量は、液体クロマトグラフィ−質量分析(LC−MS)を使用して測定され得る。
【0144】
例えば、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖供給源の量の減少または反応混合物中の生成物の量の増加が、反応の間の異なる時点で測定され得る。
【0145】
トランスグリコシダーゼ酵素は、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分をモノグリセリドへと転移させるという上記の必要とされる機能をそれが果たすことを可能にする、任意の濃度で存在し得る。
【0146】
1つの実施形態において、トランスグリコシダーゼは、モノグリセリド受容体1グラム当たり1〜1000単位のトランスグリコシダーゼ活性(U)、好ましくは2〜400U、最も好ましくは5〜200Uの濃度で存在する。
【0147】
1つの実施形態において、トランスグリコシダーゼは、モノグリセリド受容体1グラム当たり0.00033〜0.33g、好ましくは0.00067〜0.13g、最も好ましくは0.0017〜0.067gの濃度で存在する。
【0148】
トランスグリコシダーゼ酵素がβ−グルコシダーゼ酵素である場合、トランスグリコシダーゼ活性は、そのβ−グルコシダーゼ活性を参照して測定され得る。β−グルコシダーゼ活性の1単位は、アッセイ条件(pH4.8および50℃)下で、毎分1μmolのp−ニトロフェノールをp−ニトロフェニルβ−D−グルコピラノシドから生成する酵素量として定義される。次いで、必要とされるトランスグリコシダーゼ活性が、上で言及されたトランスグリコシダーゼ活性および加水分解活性の割合に基づき(全活性に対する%として)計算され得る。
【0149】
1つの実施形態において、トランスグリコシダーゼ酵素は、真菌由来のものであるか、または真菌由来のトランスグリコシダーゼ酵素と、少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有する。
【0150】
好ましくは、トランスグリコシダーゼ酵素は、トリコデルマ属種(Trichoderma species)に由来するか、またはトリコデルマ属種(Trichoderma species)由来のトランスグリコシダーゼ酵素と少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有する。
【0151】
特に好ましい実施形態において、トランスグリコシダーゼ酵素は、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)(配列番号1)であるか、それと少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有する。
【0152】
配列番号1の配列を有する酵素は、配列番号2の配列を有する成熟酵素のアミノ酸32〜744に相当し、最初の31個のアミノ酸は、シグナルペプチドを構成する。したがって、本明細書中での配列番号1への言及はまた、配列番号2のアミノ酸32〜744を有するペプチド、またはそれと少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するペプチドをも意味するとも解され得る。
【0153】
酵素組み合わせ
トランスグリコシダーゼ酵素(特に、アミノグリコシルトランスフェラーゼ酵素)は、1つ以上のさらなる活性剤と組み合わせて、本発明に従って使用され得る。そのような組合せは、組成物(特に、食料)中で一緒に使用される場合に、相乗作用を含む利点を提供し得る。
【0154】
特に、トランスグリコシダーゼ酵素(特に、アミノグリコシルトランスフェラーゼ酵素)は、活性剤として1種以上のさらなる酵素と組み合わせて、本発明に従って使用され得る。そのような組み合わせは、組成物(特に、食料)中で一緒に使用される場合に、相乗作用を含む利点を提供し得る。
【0155】
1つの実施形態において、そのさらなる酵素は、別のトランスグリコシダーゼ酵素(特に、さらなるアミノグリコシルトランスフェラーゼ酵素)であり、したがって、2つ(またはそれ以上)の異なるトランスグリコシダーゼ(特に、アミノグリコシルトランスフェラーゼ)酵素が、組み合わされて使用される。理論に拘束されることを望むものではないが、ある1つのアミノグリコシルトランスフェラーゼは、1個のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の、モノグリセリド受容体への転移を触媒し得、別のトランスグリコシダーゼ(例えば、アミノグリコシルトランスフェラーゼ)は、結果として生じるアミノもしくはN−アシルアミノグリコシルモノグリセリド上のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分への転移を触媒し、それにより、そのモノグリセリド上のグルカン鎖を伸長し得ることが想定される。
【0156】
1つの実施形態において、さらなる酵素は、グリコシダーゼ(E.C.3.2.1)である。理論に拘束されることを望むものではないが、グリコシダーゼと本発明のトランスグリコシダーゼ酵素とを組み合わせることは、グリコシダーゼがより長鎖の高次の糖のグリコシド結合を加水分解してより短鎖の高次の糖(特に、二糖およびオリゴ糖)にすることが可能であり、次いで、その単糖部分が、モノグリセリドまたはグリコシルモノグリセリド受容体へと、そのようなより長鎖の高次の糖からよりも容易に転移され得るという点で、特に有利であり得ることが想定される。グリコシダーゼは、α−グリコシダーゼまたはβ−グリコシダーゼであり得る。特に、グリコシダーゼは、アミラーゼ(例えば、α−アミラーゼ(E.C.3.2.1.1)またはβ−アミラーゼ(E.C.3.2.1.2))を含み得る。そのようなアミラーゼ酵素は、澱粉をより短鎖のオリゴ糖(例えば、マルトース)へと加水分解することが可能であり、次いで、グルコース部分が、マルトースからモノグリセリドまたはグリコシルモノグリセリドへと、元の澱粉分子からよりも容易に転移され得る。
【0157】
1つの実施形態において、さらなる酵素は、ヘキソシルトランスフェラーゼ(E.C.2.4.1)である。理論に拘束されることを望むものではないが、ヘキソシルトランスフェラーゼと本発明のトランスグリコシダーゼ酵素とを組み合わせることは、ヘキソシルトランスフェラーゼが、本発明のトランスグリコシダーゼ酵素が概してそれに対して不活性である化合物から単糖部分(例えば、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分)を転移させて、本発明のトランスグリコシダーゼ酵素がそれに作用して単糖部分をモノグリセリドまたはグリコシルモノグリセリドへと転移させ得る他の化合物(例えば、単糖または高次の糖(特に、二糖およびオリゴ糖))を形成することが可能であるという点で、特に有利であり得ることが想定される。また、理論に拘束されることを望むものではないが、グリコシルトランスフェラーゼおよび他のヘキソシルトランスフェラーゼが、1個以上の単糖部分を、モノグリセリドもしくはグリコシルモノグリセリド上に既に存在するかまたは先に本発明のトランスグリコシダーゼによってモノグリセリドもしくはグリコシルモノグリセリドに転移された、1個もしくは複数個の単糖部分に転移させ、それにより、モノグリセリド上のグルカン鎖を伸長し得ることが想定される。
【0158】
別の実施形態において、さらなる酵素は、カルボン酸エステルヒドロラーゼ(E.C.3.1.1)である。理論に拘束されることを望むものではないが、カルボン酸エステルヒドロラーゼと本発明のトランスグリコシダーゼ酵素とを組み合わせることは、カルボン酸エステルヒドロラーゼが、トリグリセリド(これには単糖部分を受容するのに必要な自由OH基がない)を本発明における受容体分子として機能し得るモノグリセリドへと部分的に加水分解することが可能であるという点で、特に有利であり得ることが想定される。特に、カルボン酸エステルヒドロラーゼは、カルボキシルエステラーゼ(E.C.3.1.1.1)を含み得る。
【0159】
本発明におけるトランスグリコシダーゼとの組み合わせに好適な酵素のさらなるクラスの例としては、オキシダーゼ(E.C.1.1.3)およびO−アシルトランスフェラーゼ(特に、E.C.2.3.1.43に分類されるもの)が挙げられる。
【0160】
化学合成−一般
式(I)の化合物は、以下の一般スキーム2および3に従って作製され得る。
【0161】
【化5】
【0162】
スキーム2において、式(I’)の化合物は、単一のアミノ単糖部分のみをグリセロー
ル単位に結合させた式(I)の化合物である。
R’は、アシル基(上で定義され例示されるとおり)のヒドロカルビル部分であり;
P1は、アミノ保護基であり、その例は、上で参照されたGreene & Wuts(2006)に記載されており、とりわけ、1個〜6個の炭素原子を有するアシル基、特に、アセチルであり;
P2は、ヒドロキシ保護基であり、とりわけ、1個〜6個の炭素原子を有するアシル基、特に、アセチルであり;
P3は、ヒドロキシ保護基であり、その例は、上で参照されたGreene & Wuts(2006)に記載されており、とりわけ、ベンジルであり;
LG1は、脱離基であり、例えば、ハロゲン、1個〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、または1個〜6個の炭素原子を有するアシルオキシ基であり、とりわけ、ハロゲン、特に、塩素であり;そして
LG2は、脱離基であり、例えば、ハロゲン、1個〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、または1個〜6個の炭素原子を有するアシルオキシ基であり、とりわけ、ハロゲン、特に、塩素である。
【0163】
工程(a):脱離基へのアノマーヒドロキシル基の同時変換を伴う非アノマーヒドロキシル基の保護は、例えば“Best Synthetic Methods:Carbohydrates”Elsevier Science Ltd.2003,pp69−80に記載されるような、標準的な方法によって行われ得る。典型的に、試薬P2−LG1は、酸塩化物、とりわけ、塩化アセチルである。
【0164】
工程(b):式(III)の保護されたアミノ糖と式(IV)の保護されたグリセロールとのカップリングは、酸の存在下で行われ得、この酸は、ブレンステッド酸(例えば、強鉱酸)またはルイス酸(例えば、ZnCl2)であり得る。
【0165】
工程(c):式(VI)の保護された化合物を提供する式(V)の化合物のアシル化は、式R−C(=O)−LG2(例えば、酸塩化物または酸無水物)のアシル化剤を用いて達成され得る。
【0166】
工程(d)および(e):式(VI)の化合物の脱保護は、標準的な方法(例えば、上で参照されたGreene & Wuts(2006)に記載されている方法)を使用して行われ得る。P1がアシルである場合、脱保護は、基P2だけが除去されて式(I)のN−アシルアミノ化合物が得られるように行われ得る。P2がアシルである場合の典型的な脱保護剤は、ヒドラジンである。P3がベンジルである場合の典型的な脱保護剤は、金属触媒(例えば、パラジウム)の存在下で水素である。
【0167】
【化6】
【0168】
スキーム3において:
R’は、スキーム2で定義されたとおりであり;
R’’は、HまたはP3であり、ここでP3は、スキーム2で定義されたとおりであり;
P4は、ヒドロキシ基およびアミノ基の両方を保護することが可能な基であり、その例は、上で参照されたGreene & Wuts(2006)に記載されており、とりわけ、アセチルであり;そして
LG3は、脱離基であり、例えば、ハロゲンまたは1個〜6個の炭素原子を有するアシルオキシ基であり、特に、アセチルオキシである。
【0169】
工程(a):脱離基へのアノマーヒドロキシル基の同時変換を伴う式(VII)のアミノ糖の非アノマーヒドロキシル基およびアミノ基の保護は、例えば“Best Synthetic Methods:Carbohydrates”Elsevier Science Ltd.2003,pp69−80に記載されるような、標準的な方法によって行われ得る。典型的に、試薬P4−LG3は、酸無水物であり、とりわけ、無水酢酸である。
【0170】
工程(b):式(VIII)の保護されたアミノ糖と式(IX)の保護されたモノアシルグリセロールとのカップリングは、酸触媒(例えば、強鉱酸)の存在下で行われ得る。典型的な触媒は、シリカ上に担持されたH2SO4である。
【0171】
工程(c)および(d):式(X)の化合物の脱保護は、例えば上で参照されたGreene & Wuts(2006)に記載されるような、標準的な方法を使用して行われ得る。P4がアシルである場合の典型的な脱保護剤は、ヒドラジンである。P3がベンジルである場合の典型的な脱保護剤は、金属触媒(例えば、パラジウム)の存在下で水素である。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明の化合物は、多くの用途における、特に、乳化剤および/または界面活性剤として、ならびに抗菌剤としての、使用を見出す。
【0173】
特に、本発明の化合物は、家庭内ケアにおいて洗剤としての用途を見出す、生分解性の天然のカチオン性界面活性剤である。本発明の化合物はまた、様々な細菌(グラム陰性およびグラム陽性の両方)ならびにカビおよび酵母に対して抗菌特性を示す。本発明の化合物は、熱可塑性プラスチック(押出物およびフィルムを含む)において界面活性抗菌効果を有し、パーソナルケア製品(一般用(OTC)クリームを含む)における抗菌薬および乳化促進物質としての用途を見出す。
【0174】
食料
本発明の化合物は、食料もしくは飼料中に組み込まれ得る、かつ/または食料もしくは飼料の調製において使用され得る。用語「食料」とは、本明細書で使用される場合、ヒトおよび/または動物の消費に適した物質を意味する。用語「飼料」とは、本明細書で使用される場合、特に、動物の消費に適した物質をいう。
【0175】
好適には、用語「食料」とは、本明細書で使用される場合、消費のための準備が整った形態の食料を意味し得る。あるいは、またはさらには、他方において、用語食料は、本明細書で使用される場合、食料の調製において使用される1つ以上の食材を意味し得る。
【0176】
食料は、用途および/または利用形態および/または投与形態に依存して、溶液の形で、または固体として、存在し得る。
【0177】
食品(例えば、機能性食品)として、またはその調製において使用される場合、本発明の化合物は、1つ以上の、栄養学的に受容可能なキャリア、栄養学的に受容可能な希釈剤、栄養学的に受容可能な賦形剤、栄養学的に受容可能なアジュバント、栄養学的に活性な成分と共に使用され得る。
【0178】
好ましい態様において、本発明は、本発明の化合物を含む食料(上で定義されるとおり)であって、以下:卵、卵ベースの製品(マヨネーズ、サラダドレッシング、ソース、アイスクリーム、卵粉、改質卵黄およびそれらから製造された製品が挙げられるが、これらに限定されない);焼いた品物(パン、ケーキ、甘い生地の製品、積層生地、液状バッター、マフィン、ドーナツ、ビスケット、クラッカーおよびクッキーを含む);菓子(チョコレート、キャンディー、キャラメル、ハルバ、ガム(無糖および砂糖入りガム、風船ガム、ソフト風船ガム、チューインガムを含む)およびプディングを含む);冷凍製品(シャーベットを含む)、好ましくは、冷凍乳製品(アイスクリームおよびアイスミルクを含む);乳製品(チーズ、バター、ミルク、コーヒークリーム、ホイップクリーム、カスタードクリーム、乳飲料およびヨーグルトを含む);ムース、植物性ホイップクリーム、肉製品(加工肉製品を含む);食用油脂、エアレーション(aerated)および非エアレーション(non−aerated)ホイップ製品、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、マーガリン、ショートニングおよびスプレッド(低脂肪および極低脂肪スプレッドを含む);ドレッシング、マヨネーズ、ディップ、クリームベースのソース、クリームベースのスープ、飲料、スパイスエマルジョンおよびソースのうちの1つ以上から選択される、食料を提供する。
【0179】
好適には、本発明に従う食料は、ケーキ、ペーストリー、菓子、チョコレート、ファッジなどを含む、「ファインフード(fine food)」であり得る。
【0180】
1つの態様において、本発明に従う食料は、生地製品または焼き製品、例えば、パン、揚げ製品、スナック、ケーキ、パイ、ブラウニー、クッキー、ヌードル、スナック品目、例えば、クラッカー、全粒粉クラッカー、プレッツェル、ポテトチップス、トルティーヤ、ナチョおよびパスタであり得る。
【0181】
さらなる態様において、本発明に従う食料は、植物由来食品(例えば、穀粉、プレミックス、油、脂肪、カカオバター、コーヒー用クリーム、サラダドレッシング、マーガリン、スプレッド、ピーナッツバター、ショートニング、アイスクリーム、料理用油)であり得る。
【0182】
別の態様において、本発明に従う食料は、乳製品(バター、ミルク、クリーム、チーズ(例えば、種々の形態(シュレッド、ブロック、スライスまたはすりおろしを含む)のナチュラル、プロセス、および模造チーズ)、クリームチーズ、アイスクリーム、フローズンデザート、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、バター脂肪、無水乳脂肪、他の乳製品を含む)であり得る。本発明に従う酵素は、乳製品における油脂安定度を改善し得る。
【0183】
別の態様において、本発明に従う食料は、動物由来成分を含有する食品(例えば、加工肉製品、料理用油、ショートニング)であり得る。
【0184】
さらなる態様において、本発明に従う食料は、飲料、果物、ミックスフルーツ、野菜、マリネードまたは果実酒であり得る。
【0185】
1つの態様において、本発明に従う食料は、植物由来油(すなわち、植物油)(例えば、オリーブ油、ヒマワリ油、ラッカセイ油またはナタネ油)である。
【0186】
本発明の化合物は、食料または飼料においてインサイチュで生成され得る。
【0187】
したがって、さらなる態様において、本発明は、食料または飼料組成物中での本発明の化合物のインサイチュ生成のための方法であって、当該組成物は、以下の成分:
(i)モノアシルグリセロール(上で定義され例示されるとおり)またはその活性化誘導体;
(ii)アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源(上で定義され例示されるとおり)またはその活性化誘導体;
(iii)必要であれば、非置換の単糖部分の供給源(上で定義され例示されるとおり)またはその活性化誘導体;および
(iv)必要であれば、適切な触媒または活性化剤
を含み、当該方法は、当該組成物に、その組成物中にまだ存在しない成分(i)および(ii)の任意のもの、ならびに必要であれば、その組成物中にまだ存在しない(iii)および/または(iv)を添加し、それらの成分が反応するのを可能にする工程を含む、方法を提供する。
【0188】
清浄化組成物および洗剤組成物
本発明の化合物は、清浄化組成物および/または洗剤組成物の一成分を構成し得る。概して、清浄化組成物および洗剤組成物は、当該技術分野において十分に記載されており、好適な清浄化組成物および洗剤組成物のさらなる説明については国際公開第96/34946号パンフレット;国際公開第97/07202号パンフレット;および国際公開第95/30011号パンフレットが参照される。
【0189】
本発明の化合物は、例えば、手洗いもしくは機械洗い洗濯用洗剤組成物(汚れた布帛の前処理に適した洗濯用添加剤組成物およびリンス添加布帛柔軟剤組成物を含む)として配合され得るか、または一般家庭用硬表面清浄化作業における使用のための洗剤組成物として配合され得るか、または食器の手洗いもしくは機械洗い作業用に配合され得る。
【0190】
1つの実施形態において、本発明の洗濯用組成物は、本発明の化合物を、1種以上の酵素(例えば、プロテアーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、非マルトース生成アミラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、ラッカーゼ、および/もしくはペルオキシダーゼ、ならびに/またはそれらの組み合わせ)と組み合わせて含み得る。概して、1種もしくは複数種の選択された酵素の特性(例えば、pH最適条件、他の酵素および非酵素成分との適合性など)は、選択された洗剤と適合すべきであり、かつその1種もしくは複数種の酵素は、有効量で存在すべきである。
【0191】
プロテアーゼ:好適なプロテアーゼとしては、動物、植物または微生物由来のものが挙げられる。化学的に修飾されたまたはタンパク質工学により産生された変異体もまた、好適である。プロテアーゼは、セリンプロテアーゼまたはメタロプロテアーゼ(例えば、アルカリ性微生物プロテアーゼまたはトリプシン様プロテアーゼ)であり得る。アルカリ性プロテアーゼの例は、スブチリシンであり、とりわけ、バキッルス属種(Bacillus sp.)に由来するもの(例えば、スブチリシンNovo、スブチリシンCarlsberg、スブチリシン309(例えば、米国特許第6,287,841号明細書参照)、スブチリシン147、およびスブチリシン168(例えば、国際公開第89/06279号パンフレット参照))である。トリプシン様プロテアーゼの例は、トリプシン(例えば、ブタまたはウシ由来のもの)、およびフサリウム(Fusarium)プロテアーゼ(例えば、国際公開第89/06270号パンフレットおよび国際公開第94/25583号パンフレット参照)である。また、有用なプロテアーゼの例としては、国際公開第92/19729号パンフレットおよび国際公開第98/20115号パンフレットに記載されている変異体が挙げられるが、これらに限定されない。好適な市販のプロテアーゼ酵素としては、Alcalase(登録商標)、Savinase(登録商標)、Liquanase(登録商標)、Ovozyme(登録商標)、Polarzyme(登録商標)、Esperase(登録商標)、Everlase(登録商標)、およびKannase(登録商標)(Novozymes、以前のNovo Nordisk A/S);Excellase(商標)、Maxatase(登録商標)、Maxacal(商標)、Maxapem(商標)、Properase(登録商標)、Properase L(登録商標)、Purafect(登録商標)、Purafect L(登録商標)、PuraFast(商標)、OxP(商標)、FN2(商標)、およびFN3(商標)(Genencor−Danisco A/Sの一部門)が挙げられる。
【0192】
リパーゼ:この酵素は、カルボン酸エステル結合を加水分解してカルボキシレートを放出することが可能なリパーゼ(EC3.1.1)であり得る。リパーゼの例としては、トリアシルグリセロールリパーゼ(EC3.1.1.3)、ガラクトリパーゼ(EC3.1.1.26)、ホスホリパーゼA1(EC3.1.1.32)、ホスホリパーゼA2(EC3.1.1.4)およびリポタンパク質リパーゼA2(EC3.1.1.34)が挙げられるが、これらに限定されない。好適なリパーゼとしては、細菌または真菌由来のものが挙げられる。化学的に修飾されたまたはタンパク質工学により産生された変異体が含まれる。有用なリパーゼの例としては、フミコラ属(Humicola)(同義語テルモミュケス(Thermomyces))、例えば、H.ラヌギノサ(H.lanuginosa)(T.ラヌギノスス(T.lanuginosus))(例えば、欧州特許第258068号明細書および欧州特許第305216号明細書参照)およびH.インソレンス(H.insolens)(例えば、国際公開第96/13580号パンフレット参照)由来のリパーゼ;プセウドモナス(Pseudomonas)リパーゼ(例えば、P.アルカリゲネス(P.alcaligenes)またはP.プセウドアルカリゲネス(P.pseudoalcaligenes)由来のもの;例えば、欧州特許第218 272号明細書参照)、P.ケパキア(P.cepacia)(例えば、欧州特許第331 376号明細書参照)、P.ストゥトゼリ(P.stutzeri)(例えば、英国特許第1,372,034号明細書参照)、P.フルオレスケンス(P.fluorescens)、プセウドモナス属種(Pseudomonas sp.)SD705株(例えば、国際公開第95/06720号パンフレットおよび国際公開第96/27002号パンフレット参照)、P.ウィスコンシネンシス(P.wisconsinensis)(例えば、国際公開第96/12012号パンフレット参照);バキッルス(Bacillus)リパーゼ(例えば、B.スブティリス(B.subtilis)由来のもの;例えば、Dartois et al.(1993)参照)、B.ステアロテルモピルス(B.stearothermophilus)(例えば、特公昭64−744992号公報参照)、またはB.プミルス(B.pumilus)(例えば、国際公開第91/16422号パンフレット参照)が挙げられるが、これらに限定されない。配合物中での使用のために企図されるさらなるリパーゼ変異体としては、例えば、国際公開第92/05249号パンフレット、国際公開第94/01541号パンフレット、国際公開第95/35381号パンフレット、国際公開第96/00292号パンフレット、国際公開第95/30744号パンフレット、国際公開第94/25578号パンフレット、国際公開第95/14783号パンフレット、国際公開第95/22615号パンフレット、国際公開第97/04079号パンフレット、国際公開第97/07202号パンフレット、欧州特許出願公開第407225号明細書、および欧州特許第260105号明細書に記載されているものが挙げられる。一部の市販のリパーゼ酵素としては、Lipex(登録商標)、Lipolase(登録商標)およびLipolase(登録商標)Ultra(Novozymes、以前のNovo Nordisk A/S)が挙げられる。
【0193】
ポリエステラーゼ:好適なポリエステラーゼとしては、国際公開第01/34899号パンフレット(Genencor)および国際公開第01/14629号パンフレット(Genencor)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されず、本明細書において述べた他の酵素との任意の組み合わせで含まれ得る。
【0194】
アミラーゼ:組成物は、α−アミラーゼ(EC3.2.1.1)、G4生成アミラーゼ(EC3.2.1.60)、β−アミラーゼ(EC3.2.1.2)およびγ−アミラーゼ(EC3.2.1.3)などのアミラーゼを含み得る。これらは、細菌または真菌由来のアミラーゼを含み得、化学的に修飾されたまたはタンパク質工学により産生された変異体が含まれる。市販のアミラーゼは、例えば、Duramyl(登録商標)、Termamyl(商標)、Fungamyl(登録商標)およびBAN(商標)(Novozymes、以前のNovo Nordisk A/S)、Rapidase(登録商標)、およびPurastar(登録商標)(Danisco USA,Inc.)、LIQUEZYME(商標)、NATALASE(商標)、SUPRAMYL(商標)、STAINZYME(商標)、FUNGAMYLおよびBAN(商標)(Novozymes A/S)、RAPIDASE(商標)、PURASTAR(商標)およびPURASTAROXAM(商標)(Danisco USA Inc.から)、GRINDAMYL(商標)PowerFresh、POWERFlex(商標)およびGRINDAMYL PowerSoft(Danisco A/Sから)であるが、これらに限定されない。
【0195】
ペルオキシダーゼ/オキシダーゼ:組成物中での使用のために企図される好適なペルオキシダーゼ/オキシダーゼとしては、植物、細菌または真菌由来のものが挙げられる。化学的に修飾されたまたはタンパク質工学により産生された変異体が含まれる。有用なペルオキシダーゼの例としては、コプリヌス属(Coprinus)由来の(例えば、C.キネレウス(C.cinereus)およびその変異体(例えば、国際公開第93/24618号パンフレット、国際公開第95/10602号パンフレット、および国際公開第98/15257号パンフレットに記載されているもの)由来の)ペルオキシダーゼが挙げられる。市販のペルオキシダーゼとしては、GUARDZYME(登録商標)(Novozymes A/S)が挙げられる。
【0196】
セルラーゼ:好適なセルラーゼとしては、細菌または真菌由来のものが挙げられる。化学的に修飾されたまたはタンパク質工学により産生された変異体が含まれる。好適なセルラーゼとしては、バキッルス属(Bacillus)、プセウドモナス属(Pseudomonas)、フミコラ属(Humicola)、フサリウム属(Fusarium)、ティエラウィア属(Thielavia)、アクレモニウム属(Acremonium)由来のセルラーゼ(例えば、例えば米国特許第4,435,307号明細書;同第5,648,263号明細書;同第5,691,178号明細書;同第5,776,757号明細書;および国際公開第89/09259号パンフレットに開示されているフミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、ミュケリオプトラ・テルモピラ(Myceliophthora thermophila)およびフサリウム・オクシュスポルム(Fusarium oxysporum)から産生される真菌セルラーゼ)が挙げられる。使用のために企図される例示的なセルラーゼは、テキスタイルに対しカラーケア(color care)の利点を有するセルラーゼである。そのようなセルラーゼの例は、例えば、欧州特許第0495257号明細書;欧州特許第531372号明細書;国際公開第99/25846号パンフレット(Genencor International,Inc.)、国際公開第96/34108号パンフレット(Genencor International,Inc.)、国際公開第96/11262号パンフレット;国際公開第96/29397号パンフレット;および国際公開第98/08940号パンフレットに記載されているセルラーゼである。他の例は、セルラーゼ変異体(例えば、国際公開第94/07998号パンフレット;国際公開第98/12307号パンフレット;国際公開第95/24471号パンフレット;国際公開第99/01544号パンフレット;欧州特許第531 315号明細書;米国特許第5,457,046号明細書;同第5,686,593号明細書;および同第5,763,254号明細書に記載されているもの)である。市販のセルラーゼとしては、Celluzyme(登録商標)、Carezyme(登録商標)およびEndolase(登録商標)(Novozymes、以前のNovo Nordisk A/S);Clazinase(商標)およびPuradax(登録商標)HA(Genencor);ならびにKAC−500(B)(商標)(花王株式会社)が挙げられる。
【0197】
市販のマンナナーゼの例としては、MANNAWAY(商標)(Novozymes,Denmark)およびMannaStar(商標)(Genencor)が挙げられる。
【0198】
本発明の化合物は、1種以上の酵素を含有する別個の添加剤を添加することにより、またはこれらの酵素の全てを含む合わせた添加剤を添加することにより、洗剤組成物中に含まれ得る。本発明の化合物は、例えば粒質物、液体、スラリーなどとして、配合され得る。好ましい洗剤添加剤配合物は、粒質物、特に、非粉塵粒質物、液体、特に、安定化された液体、またはスラリーである。
【0199】
非粉塵粒質物は、例えば米国特許第4,106,991号明細書および同第4,661,452号明細書に開示されているように製造され得、任意選択で、当該技術分野において知られている方法によってコーティングされ得る。蝋質コーティング材の例は、1000〜20000の平均分子量を有するポリ(エチレンオキシド)製品(ポリエチレングリコール、PEG);16個〜50個のエチレンオキシド単位を有するエトキシル化ノニルフェノール;アルコールが12個〜20個の炭素原子を含有し、15個〜80個のエチレンオキシド単位が存在する、エトキシル化脂肪アルコール;脂肪アルコール;脂肪酸;ならびに脂肪酸のモノおよびジおよびトリグリセリドである。流動床技術による適用に適した皮膜形成コーティング材の例は、英国特許第1483591号明細書に示されている。液体酵素調製物は、例えば、ポリオール(例えば、プロピレングリコール)、糖もしくは糖アルコール、乳酸またはホウ酸を、確立された方法に従って添加することにより安定化され得る。保護された酵素は、欧州特許出願公開第A−238216号明細書に開示されている方法に従って調製され得る。
【0200】
本発明の洗剤組成物は、任意の好都合な形態(例えば、バー、タブレット、粉末、顆粒、ペーストまたは液体)であり得る。液体洗剤は、水性であり得、典型的に70%までの水および0〜30%の有機溶媒を含有するか、または非水性であり得る。
【0201】
洗剤組成物はまた、1つ以上のさらなる界面活性剤をも含み得、この界面活性剤は、非イオン性(半極性を含む)および/またはアニオン性および/またはカチオン性および/または双性イオン性であり得る。界面活性剤は、典型的に、0.1重量%〜60重量%のレベルで存在する。
【0202】
洗剤は、それに含まれる場合、アニオン性界面活性剤(例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩(脂肪アルコール硫酸塩)、アルコールエトキシ硫酸塩、第2級アルカンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル、アルキルもしくはアルケニルコハク酸またはセッケン)を、通常、約1%〜約40%含有する。
【0203】
洗剤は、それに含まれる場合、非イオン性界面活性剤(例えば、アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、ポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド、またはグルコサミンの他のN−アシルもしくはN−アルキル誘導体)を、通常、約0.2%〜約40%含有する。
【0204】
洗剤は、0〜65%の洗剤ビルダーまたは錯化剤(例えば、ゼオライト、ジホスフェート、トリホスフェート、ホスホネート、カーボネート、シトレート、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、アルキルもしくはアルケニルコハク酸、可溶性シリケートまたは層状シリケート(例えば、HoechstからのSKS−6)を含有し得る。
【0205】
洗剤は、1つ以上のポリマーを含み得る。例には、カルボキシメチルセルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピリジン−N−オキシド)、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリカルボキシレート(例えば、ポリアクリレート)、マレイン酸/アクリル酸コポリマーおよびラウリルメタクリレート/アクリル酸コポリマーがある。
【0206】
洗剤は、過酸形成漂白活性化剤(例えば、テトラアセチルエチレンジアミンまたはノナノイルオキシベンゼンスルホネート)と組み合され得る過酸化水素源(例えば、過ホウ酸塩または過炭酸塩)を含み得る漂白系を含有し得る。あるいは、漂白系は、例えば、アミド、イミドまたはスルホン型のペルオキシ酸を含み得る。
【0207】
本発明の洗剤組成物の1種もしくは複数種の酵素は、従来の安定化剤(例えば、ポリオール(例えば、プロピレングリコールまたはグリセロール)、糖もしくは糖アルコール、乳酸、ホウ酸、またはホウ酸誘導体(例えば、芳香族ホウ酸エステル)、またはフェニルボロン酸誘導体(例えば、4−ホルミルフェニルボロン酸))を使用して安定化され得、当該組成物は、例えば国際公開第92/19709号パンフレットおよび国際公開第92/19708号パンフレットに記載されているように配合され得る。
【0208】
洗剤はまた、他の従来の洗剤成分(例えば、粘土を含む柔軟仕上げ剤、気泡増強剤、泡抑制剤、錆止め剤、泥れ懸濁化剤、泥れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、蛍光増白剤、ヒドロトロープ、退色防止剤、または香料など)を含有し得る。
【0209】
洗剤組成物において、本発明の化合物は、洗浄液(wash liquor)1リットル当たり0.5〜25gの化合物、好ましくは洗浄液1リットル当たり0.75〜10gの化合物、特に洗浄液1リットル当たり1〜5gの化合物に相当する量で添加され得ることが、現在のところ企図される。
【0210】
洗濯用組成物におけるインサイチュでの使用
本発明の化合物は、洗濯用組成物においてインサイチュで生成され得る。
【0211】
したがって、さらなる態様において、本発明は、洗濯用組成物中での本発明の化合物のインサイチュ生成のための方法であって、当該組成物は、以下の成分:
(i)モノアシルグリセロール(上で定義され例示されるとおり)またはその活性化誘導体;
(ii)アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源(上で定義され例示されるとおり)またはその活性化誘導体;
(iii)必要であれば、非置換単糖部分の供給源(上で定義され例示されるとおり)またはその活性化誘導体;および
(iv)必要であれば、適切な触媒または活性化剤
を含み、当該方法は、当該組成物に、その組成物中にまだ存在しない成分(i)および(ii)の任意のもの、ならびに必要であれば、その組成物中にまだ存在しない(iii)および/または(iv)を添加し、それらの成分が反応するのを可能にする工程を含む、方法を提供する。
【0212】
上記の方法において、モノアシルグリセロールおよびアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源、またはその各々の活性化誘導体は、洗濯用組成物の初期成分として存在し得る。あるいは、初期に全くもしくは不十分にしかモノアシルグリセロールまたはアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源(またはその各々の活性化誘導体)が存在しない場合は、これらの成分は、組成物に添加され得る。
【0213】
非置換単糖部分の供給源(上で定義され例示されるとおり)またはその活性化誘導体は、第1の基が非置換単糖を含むオリゴ糖鎖である本発明の化合物をインサイチュで生成するために必要とされる。これは、洗濯用組成物の初期成分として存在し得る。あるいは、初期に全くもしくは不十分にしか非置換単糖源が存在しない場合は、この成分は、組成物に添加され得る。
【0214】
必要とされる場合、触媒(特に、酵素、とりわけ、トランスグリコシダーゼ酵素)が存在し得る。これは、洗濯用組成物の初期成分として存在し得る。あるいは、初期に全くもしくは不十分にしか触媒が存在しない場合は、この成分は、組成物に添加され得る。
【0215】
洗濯用組成物は、リパーゼ(E.C.3.1.1)をさらに含み得る。
【0216】
洗濯用組成物は、脂質(特に、トリグリセリドおよび/またはジグリセリドおよび/またはモノグリセリド)であり得る汚れをさらに含み得る。汚れは、表面(例えば、布帛)上にあり得る。したがって、本発明の洗濯用組成物は、表面(例えば、布帛)を含み得る。
【0217】
1つの実施形態において、洗濯用組成物は、本明細書において定義されるようなトランスグリコシダーゼ酵素と、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖供給源と、モノグリセリドを含む汚れとを含む。アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分がトランスグリコシダーゼ酵素によってモノグリセリドに転移され、本発明の化合物が生成される。
【0218】
1つの実施形態において、汚れはトリグリセリドを含み、洗濯用組成物はリパーゼをさらに含む。リパーゼによるトリグリセリドの加水分解は、モノグリセリドの供給源をもたらす。アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分がトランスグリコシダーゼ酵素によってモノグリセリドに転移されて、本発明の化合物が形成される。
【0219】
トリグリセリド、ジグリセリドまたはモノグリセリドを本発明の化合物に変換することは、脂質を含む汚れを布帛から除去するのを助け得る。
【実施例】
【0220】
実施例1:グリコシルトランスフェラーゼ反応のための基質としてのキトビオースのインビトロ調製
キトビオース基質は、低い程度のアシル化よび分子量を有する低分子量キトサンの試料から調製した。その手順は、Roncal et al.Carbohydrate Res.,342.2750−2756(2007)に記載されている。
【0221】
以下の基質を使用した:キトサンI:PrimexからのChitoclear(商標)1979。
【0222】
【表2】
【0223】
まず、1000mLの脱塩水に4.10gの酢酸ナトリウムを溶解させ、1%酢酸水溶液でpH4.5に調製することにより、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)を調製した。
【0224】
キトサン溶液:5%の選択されたキトサンを、上記の50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)に溶解させた。
【0225】
5gのキトサンを95gの緩衝液に加え、丸底ガラスフラスコ中で80℃まで加熱した。キトサンは溶解して、僅かに粘性の淡赤茶色の液体になった。溶液を40℃まで冷却し、0.05グラムのペプシン(Sigma)を加え、30分間反応させ、続いて90℃まで加熱してペプシンを不活性化する。
【0226】
N,N’−ジアセチル−キトビオース溶液(キトサンII)の調製
次いで、上記のアセテート緩衝液(pH4.5)中の5%N,N’−ジアセチル−キトビオース溶液を、5グラムのN,N’−ジアセチル−キトビオース(Sigma)を150mLガラスビーカーに入れ、80mLの緩衝液pH4.5を加えることによって調製した。この溶液を、N,N’−ジアセチル−キトビオースが溶解する80℃まで加熱した。溶液を冷却し、周囲温度で保存した。
【0227】
実施例2:実施例1の炭水化物溶液を基質として使用したグリコシルトランスフェラーゼによるモノグリセリドのインビトログリコシル化
C10ベースのモノグリセリド(グリセロールモノデカノエート、CAS No.26402−22−2)を、緩衝液ベースのインビトロ系において、トランスグリコシダーゼ反応のための受容体基質として試験する。
【0228】
調製:
モノデカノエート溶液:アセテート緩衝液(pH6.0)中の20%モノデカノエート
80gの緩衝液pH6.0を150mLのガラスビーカーに入れ、40〜44℃まで加熱し、20gの融解したグリセロールモノデカノエート(Danisco A/S)を加えた。このモノデカノエートを、20秒間Ultra Turaxを使用して水に分散させた。10グラムのモノグリセリド分散体を12×20mLホイートンガラス器(wheaton glass)に入れ、表2に従って処理する。
【0229】
【表3】
【0230】
表2において、使用したトランスグリコシダーゼ酵素は、Accellerase BG(3500 U/mL)として市販されている、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)由来のβ−グルコシダーゼであった。3500Uのこの酵素を使用した。
【0231】
これらのガラス器を、磁気攪拌および温度制御を備えた加熱ブロックに入れ、45℃まで加熱した。各ガラス器に炭水化物溶液の最初の部分を加え、100UのAccellerase BG(ロット16011709444)酵素溶液の添加により反応を開始し、45℃にて攪拌しながらインキュベートした。18時間後および26時間後に炭水化物溶液のさらなる部分を反応ガラス器に加えて、確実に反応混合物中の平衡が糖脂質形成に有利に働くようにした。48時間後に反応ガラス器を90℃の水浴中で2分間加熱処理して、酵素を不活性化した。25℃まで冷却し、1.5mLの試料を各反応ガラス器から取り出した。この試料を凍結乾燥により乾固させた。2mgの各試料を、100μLのクロロホルム/メタノール/水/蟻酸(50/50/10/0.5)中に懸濁させた。200μLのH2Oを添加し、試料混合物を激しく振盪させ、2つの液相を遠心分離により分離した。ポジティブモードでのエレクトロスプレーイオン化質量分析とオンラインで連結された逆相高速液体クロマトグラフィ(HPLC/ESP−MS)を使用して、液体クロマトグラフィ−質量分析(LC−MS)により、上相(H2O/メタノール)を可能性のある標的生成物について分析した。カラムはC18カラムであり、勾配は水/アセトンに基づいた。酢酸ナトリウムを、ポジティブモードでの付加物形成のために加えた。以下に示される標的アミノグリコシルおよびN−アシルアミノグリコシルモノグリセリド(化合物1および2)の形成、ならびにモノガラクトシルモノグリセリド(参照化合物1)を、MS/MSスペクトル分析により確認した(図1〜4参照)。
【0232】
【化7】
化合物1:3−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−1−n−デカノイルグリセロール
MW:407.50グラム/モル
【0233】
【化8】
化合物2:3−O−(2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−1−n−デカノイルグリセロール
MW=449.54グラム/モル
【0234】
【化9】
参照化合物1:1−O−(D−ガラクトピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール
【0235】
【表4】
【0236】
実施例3および4:3−O−グルコサミニル−1−n−オクタデカノイルグリセロールの化学合成
実施例3:
化合物3を、以下のスキーム4に従って作製した。
【化10】
スキーム4において、「Bn」はベンジルである。
【0237】
中間体1:2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシルクロリド
この化合物は、例えば“Best Synthetic Methods:Carbohydrates”,Elsevier Science Ltd.2003,pp69−80に記載されているような、文献手順に従って、N−アセチル−D−グルコサミンから調製した。
【0238】
中間体2:1−O−(2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル)−2−O−ベンジル−グリセロール
中間体1の化合物(8g)を、磁気攪拌機、乾燥管付き冷却器および温度計を備えた500mLの三つ口丸底フラスコに計り入れた。この化合物をCH2Cl2(250mL)に溶解し、モレキュラーシーブ(4Å、2g)、2−O−ベンジル−グリセロール(4.8g)およびZnCl2(1.8g)を加えた。この溶液を一晩還流させ、室温まで冷却した。反応混合物を、NaHCO3(飽和水溶液、2×200mL)および水(200mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。生成物を、カラムクロマトグラフィにより精製した。中間体2の構造を、1H−NMR、13C−NMRおよびポジティブモードでの注入エレクトロスプレー−MSにより確認した(図8〜15参照)。
【0239】
中間体3:1−O−(2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル)−2−O−ベンジル−3−n−オクタデカノイルグリセロール
中間体2の化合物(0.5g)を、10mLの乾燥CHCl3に溶解させ、60mgのピリジンを加え、0℃まで冷却した。0.21gのn−オクタデカノイルクロリドを、10mLの乾燥CHCl3に溶解させ、温度を0℃で維持しながら1時間の間に反応物に滴下した。この反応を、室温にて24時間継続させる。3mLの水を反応混合物に加え、分離した。有機相を、NaHCO3(飽和水溶液、2×3mL)および水(3×2mL)で洗浄した。有機相を、MgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。
【0240】
中間体3の構造を、1H−NMR、13C−NMRおよびポジティブモードでの注入エレクトロスプレー−MSにより確認した(図16〜18参照)。
【0241】
中間体4:1−O−(2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル)−3−n−オクタデカノイルグリセロール
中間体3の化合物におけるベンジル保護基は、Eur.J.Org.Chem.,2006,4,978−985に記載されている標準的な手順に従う水素化により除去し得る。
【0242】
化合物3:1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル)−3−n−オクタデカノイルグリセロール
中間体4の糖部分上のアセチル保護基の除去は、J.Agric.Food Chem.2008,56,6691−6700に記載されている手順に従って、加ヒドラジン分解により達成され得ることが予想される。
【0243】
実施例4:
化合物3の代替的な合成を、以下のスキーム5に示す。
【化11】
スキーム5において、「Bn」はベンジルである。
【0244】
中間体5:2−アセトアミド−1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノース
この化合物は、例えば“Best Synthetic Methods:Carbohydrates”,Elsevier Science Ltd.2003,pp69−80に記載されているような、文献手順に従って、D−グルコサミン塩酸塩から調製した。
【0245】
中間体3:1−O−(2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル)−2−O−ベンジル−3−n−オクタデカノイルグリセロール
H2SO4−シリカを、濃H2SO4(1mL)を乾燥Et2O(50mL)中のシリカゲル(10g)のスラリーに加えることによって調製し、このスラリーを5分間振盪させた。溶媒を減圧下で蒸発させると、易流動性のH2SO4−シリカが結果として得られ、これを一晩110℃で乾燥させた。
【0246】
中間体5の化合物、2−ベンジル−1−n−オクタデカノイルグリセロールおよびH2SO4−シリカを、乾燥CHCl3に溶解させ、この反応混合物を、加熱して還流させた。およそ4時間後に、反応混合物を室温まで冷却し、Celite(登録商標)に通して濾過した。生成物を、カラムクロマトグラフィにより精製した。中間体3の構造を、1H−NMR、13C−NMRおよびポジティブモードでの注入エレクトロスプレー−MSにより確認した(図16〜18参照)。
【0247】
中間体4:1−O−(2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル)−3−n−オクタデカノイルグリセロール
および
化合物3:1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル)−3−n−オクタデカノイルグリセロール
脱保護は、実施例3について上で記載したようにして達成されることが予想される。
【0248】
上記の明細書において言及された全ての文献は、参照により本明細書に援用される。記載された本発明の方法およびシステムの、本発明の範囲および精神から逸脱することのない、種々の修正および変更が、当業者には明らかであろう。本発明を特定の好ましい実施形態に関して記載してきたが、特許請求の範囲に記載された発明が、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際は、記載された発明を実施するための形態の、化学、生化学およびバイオテクノロジーまたは関連分野における当業者にとっては明らかな種々の修正は、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【0249】
本発明の態様を、以下の番号付けされた項において定義する。
【0250】
1.O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2−アシルアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシルモノアシルグリセロール以外の、式(I):
【化12】
の化合物であって、式中:
R1、R2およびR3から選択される第1の基は、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個はアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分であるオリゴ糖鎖であり;
R1、R2およびR3から選択される第2の基は、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であり;そして
R1、R2およびR3から選択される第3の基は、水素である、
化合物。
【0251】
2.式中:
R1およびR3から選択される第1の基が、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個はアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分であるオリゴ糖鎖であり;
R1およびR3から選択される第2の基が、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であり;そして
R2が、水素である、
第1項に記載の化合物。
【0252】
3.第1の基が、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分である、第1項または第2項に記載の化合物。
【0253】
4.第1の基が、アミノヘキソース部分もしくはアシル基が2個〜4個の炭素原子を有するN−アシルアミノヘキソース部分である、第3項に記載の化合物。
【0254】
5.アミノもしくはN−アシルアミノ基が、ヘキソース部分の2位に存在する、第4項に記載の化合物。
【0255】
6.第1の基が、グルコサミンまたはN−アセチルグルコサミンから選択される、第5項に記載の化合物。
【0256】
7.第2の基が、6個〜24個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基である、第1項〜第6項のいずれか一項に記載の化合物。
【0257】
8.第2の基が、8個〜18個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基である、第7項に記載の化合物。
【0258】
9.第2の基が、n−デカノイル、n−ドデカノイル、n−テトラデカノイル、n−ヘキサデカノイル、n−オクタデカノイル、シス−オクタデカ−9−エノイル(オレイル)、シス,シス−9,12−オクタデカジエノイル(リノレイル)またはシス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレニル)である、第8項に記載の化合物。
【0259】
10.1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール;1−O−(2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール;および1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−オクタデカノイルグリセロールから選択される、第1項に記載の化合物。
【0260】
11.モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体と、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源またはその活性化誘導体、および必要であれば、非置換の単糖部分の供給源またはその活性化誘導体とを、任意選択で適切な触媒または活性化剤の存在下で、接触させる工程を含む、第1項〜第10項のいずれか一項に記載の化合物を調製する方法。
【0261】
12.触媒または活性化剤が、トランスグリコシダーゼ酵素である、第11項に記載の方法。
【0262】
13.モノアシルグリセロールのアシル部分が、6個〜24個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基である、第11項または第12項に記載の方法。
【0263】
14.モノアシルグリセロールのアシル部分が、8個〜18個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基である、第13項に記載の方法。
【0264】
15.モノアシルグリセロールのアシル部分が、n−デカノイル、n−ドデカノイル、n−テトラデカノイル、n−ヘキサデカノイル、n−オクタデカノイル、シス−オクタデカ−9−エノイル(オレイル)、シス,シス−9,12−オクタデカジエノイル(リノレイル)またはシス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレニル)である、第14項に記載の方法。
【0265】
16.モノアシルグリセロールが、1−n−デカノイル−グリセロールまたは1−n−オクタデカノイル−グリセロールである、第15項に記載の方法。
【0266】
17.アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源が、キトサン、キトビオース、もしくはそれらのうちの任意のものの、アシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシル誘導体、またはそれらのうちの任意のものの混合物から選択される、第11項〜第16項のいずれか一項に記載の方法。
【0267】
18.アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源が、キトサンもしくはキトビオース、またはそれらのうちのいずれかのN−アセチル誘導体から選択される、第17項に記載の方法。
【0268】
19.トランスグリコシダーゼ酵素が、酵素分類(E.C.)3.2.1.21または3.2.1.74に分類される、第11項〜第17項のうちのいずれか一項に記載の方法。
【0269】
20.トランスグリコシダーゼ酵素が、アミノグリコシルトランスフェラーゼ酵素である、第11項〜第17項のいずれか一項に記載の方法。
【0270】
21.トランスグリコシダーゼ酵素が、β−グルコシダーゼ酵素である、第11項〜第17項のいずれか一項に記載の方法。
【0271】
22.トランスグリコシダーゼ酵素が、真菌由来のものであるか、または真菌由来のトランスグリコシダーゼ酵素と少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有する、第11項〜第21項のいずれか一項に記載の方法。
【0272】
23.トランスグリコシダーゼ酵素が、トリコデルマ属種(Trichoderma species)に由来するか、またはトリコデルマ属種(Trichoderma species)由来のトランスグリコシダーゼ酵素と少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有する、第11項〜第21項のいずれか一項に記載の方法。
【0273】
24.トランスグリコシダーゼ酵素が、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)(配列番号1)であるか、またはそれと少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有する、第11項〜第21項のいずれか一項に記載の方法。
【0274】
25.組成物中での第1項〜第10項のいずれか一項に定義されるとおりの化合物のインサイチュ生成のための方法であって、当該組成物は、以下の成分:
(i)モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体;
(ii)アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源またはその活性化誘導体;
(iii)必要であれば、非置換の単糖部分の供給源またはその活性化誘導体;および
(iv)必要であれば、適切な触媒または活性化剤
を含み、当該方法は、当該組成物に、その組成物中にまだ存在しない成分(i)および(ii)の任意のもの、ならびに必要であれば、その組成物中にまだ存在しない(iii)および/または(iv)を添加し、それらの成分が反応するのを可能にする工程を含む、方法。
【0275】
26.第1項〜第10項のいずれか一項に定義されるとおりの化合物、または請求項10〜24のいずれか一項に定義されるとおりの方法によって製造された化合物を含む、食料または飼料。
【0276】
27.1種以上の酵素をさらに含む、第26項に記載の食料または飼料。
【0277】
28.1種以上の酵素が、プロテアーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、非マルトース生成アミラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、ラッカーゼ、および/もしくはペルオキシダーゼ、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、第27項に記載の食料または飼料。
【0278】
29.第1項〜第10項のうちのいずれか一項に定義されるとおりの化合物、または第10項〜第24項のいずれか一項に定義されるとおりの方法によって製造された化合物を含む、洗剤組成物。
【0279】
30.1種以上の酵素をさらに含む、第27項に記載の洗剤組成物。
【0280】
31.1種以上の酵素が、プロテアーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、ラッカーゼ、および/もしくはペルオキシダーゼ、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、第28項に記載の洗剤組成物。
【0281】
32.第1項〜第10項のいずれか一項に記載の化合物の、乳化剤としての使用。
【0282】
33.化合物が、1種以上の酵素と組み合わせて使用される、第32項に記載の使用。
【0283】
34.1種以上の酵素が、プロテアーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、非マルトース生成アミラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、ラッカーゼ、および/もしくはペルオキシダーゼ、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、第33項に記載の使用。
【0284】
35.第1項〜第10項のいずれか一項に記載の化合物の、界面活性剤としての使用。
【0285】
36.化合物が、1種以上の酵素と組み合わせて使用される、第35項に記載の使用。
【0286】
37.1種以上の酵素が、プロテアーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、非マルトース生成アミラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、ラッカーゼ、および/もしくはペルオキシダーゼ、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、第36項に記載の使用。
【0287】
38.第1項〜第10項のうちのいずれか一項に記載の化合物の、抗菌剤としての使用。
【0288】
39.化合物が、1種以上の酵素と組み合わせて使用される、第38項に記載の使用。
【0289】
40.1種以上の酵素が、プロテアーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、非マルトース生成アミラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、ラッカーゼ、および/もしくはペルオキシダーゼ、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、第39項に記載の使用。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一連のアミノ置換糖脂質化合物に関する。本発明はまた、それらの調製のための方法、ならびに多くの用途における、特に界面活性剤および乳化剤としての、それらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
グリコグリセロリピドまたは糖脂質は、自然界に見出される脂質のクラスである。この化合物は、最も多くの場合、モノまたはジアシルグリセロールにグリコシド結合した1個または2個の単糖単位を含有している。3個または4個の単糖単位を有する糖脂質もまた、知られている。それらは、それらが光合成膜中に位置している高等植物、藻類および細菌において特に重要であるが、それらは、動物においてはそれほど顕著ではない。
【0003】
グルコグリセロリピドは、それらを食品中の成分として興味深いものにする物理的および生物学的性質を有しており、いくつもの健康増進特性(例えば、胃腸管(GIT)における腫瘍生長の阻害、抗炎症効果および抗ウイルス効果)が報告されている:非特許文献1;2;3;4;5;6;7;8;9;および10を参照されたい。
【0004】
非特許文献11は、高度好熱好酸菌バキッルス・アキドカルダリウス(Bacillus acidocaldarius)からのグルコサミジル糖脂質の単離について記載している。全脂質の約64%を構成する主要化合物は、グルコピラノシル(1→4)グルコサミン(1→3)−ジアシルグリセロールの脂肪N−アシル誘導体であるようである。アミド結合した脂肪酸は、主として分岐ヘプタデカン酸であったが、11−シクロヘキシルウンデカン酸または13−シクロヘキシルトリデカン酸もあった。微量生成物は、O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2−アシルアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシルモノアシルグリセロールとして仮に同定された。
【0005】
細菌および藻類において、それぞれに異なる糖組み合わせを含有する多数の糖脂質が報告されている。例えば、1−(O−β−グルコサミニル)−2,3−ジグリセリドが、バキッルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)において同定された:非特許文献12を参照されたい。これは、生体中の全脂質グルコサミニドの約5%を構成し、クロマトグラフィにより他の脂質から分離された。この脂質は、グリセロール、脂肪酸およびグルコサミンを、1:2:1のモル割合で含有していた。脂肪酸は、エステル結合により結合していた。この脂質の部分酸加水分解またはアルカリ加水分解によって、1−(O−β−グルコサミニル)グリセロールが生じる。
【0006】
非特許文献13および14は、シアロシルグリセロール誘導体およびそれらの合成について記載している。これらの化合物において、N−アシルアミノ基は、単糖部分の4位にヒドロキシル基の代わりに存在する(グリセロール部分への結合点は1位である)。
【0007】
特許文献2は、単糖基をその1位でグリセロール部分に結合させたグリセリド誘導体について記載している。これらの化合物はまた、単糖部分の4位にヒドロキシル基の代わりにN−アシルアミノ基を有する。
【0008】
非特許文献15は、天然α−6−デヒドロキシ−6−アミノグルコグリセロリピドの合成について記載している。合成経路には、中間体3−O−(2’,3,4’−トリ−O−ベンジル−6−デヒドロキシ−6’−ベンジルオキシカルボニルアミノ−α−D−グルコピラノシル)−1−O−パルミトイルグリセロールが含まれる。
【0009】
非特許文献16は、アルケニル2−アセチルアミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシドの不斉ジヒドロキシル化について記載している。合成経路には、中間体(3’S)−4’−ベンゾイルオキシ−3’−ヒドロキシブチル3,4,6−トリ−O−アセチル−2−アセチルアミノ−2−デオキシ−β−グルコシドが含まれる。
【0010】
特許文献1は、グリコグリセロリピドおよびその殺菌薬としての使用について記載している。
【0011】
アニオン性およびカチオン性の界面活性溶液は、洗剤および乳化剤などの多くの用途において使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許出願公開第19634019A1号明細書
【特許文献2】特開平2−225489号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Colombo,D,et al.Cancer Letters(Shannon,Ireland),(2000)161,201−205
【非特許文献2】Colombo,D.,et al.Cancer Letters(Shannon,Ireland),(1998)123,233
【非特許文献3】Larsen,E.,et al;J.Nat.Prod.(2003)66,994−995
【非特許文献4】Morimoto,A.,et al.Phytochemistry,(1995)40,1433−1437
【非特許文献5】Nagatsu,A.,et al.Bioorg.Med.Chem.Lett.,1994,4,1619−1622
【非特許文献6】Nakata,K.J.Biochem.(Tokyo),(2000),127,731−737
【非特許文献7】Pahlsson,P.,et al.Arch.Biochem.Biophys.(2001)396,187−198
【非特許文献8】Shirahashi,H.,et al.Chem.Pharm.Bull.,1996,44,1404−1406
【非特許文献9】Shirahashi,H.,et al.Chem.Pharm.Bull.,1993,41,1664−1666
【非特許文献10】Janwitayanuchit,W.,et al,Phytochemistry(Elsevier),(2003),64,1253−1264
【非特許文献11】Langworthy,T.A.,et al.Biochimica et Biophysica Acta,(1976),431,550−569
【非特許文献12】Phizackerley,P.J.R.,et al.Biochem.J.,1972,126,499
【非特許文献13】Shimizu,C.et al.Chem.Pharm.Bull.1989,37(8),2258−2260
【非特許文献14】Chem.Pharm.Bull.1990,38(12),3347−3354
【非特許文献15】Wu et al.,Chin.J.Chem.,2008,26,1641−1646
【非特許文献16】Fairweather,J.K.et al.,Aust.J.Chem.,1998,51,471−482
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、モノグリセリドを、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分、好ましくはグルコサミンもしくはN−アセチルグルコサミン部分の供給源、またはそれらの任意の混合物と反応させることにより、バイオフレンドリーな荷電界面活性分子の合成について記載する。カチオン性分子は、多くの異なるモノグリセリドおよびアミノもしくはN−アシルアミノ単糖供給源からグリコシドを作製することによって製造され得る。この分子は、化学合成によって、または基質(例えば、グルコサミン単位の供給源として機能するキトサンもしくはキチンまたはキトサンオリゴマーもしくはキチンオリゴマー)からモノグリセリドへのアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の酵素転移によって、生成され得る。
【0015】
したがって、本発明の1つの態様によれば、O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2−アシルアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシルモノアシルグリセロール以外の、式(I):
【化1】
の化合物であって、式中:
R1、R2およびR3から選択される第1の基は、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個はアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分であるオリゴ糖鎖であり;R1、R2およびR3から選択される第2の基は、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であり;そして、
R1、R2およびR3から選択される第3の基は、水素である、
化合物が提供される。
【0016】
一部の実施形態において、(3’S)−4’−ベンゾイルオキシ−3’−ヒドロキシブチル3,4,6−トリ−O−アセチル−2−アセチルアミノ−2−デオキシ−β−グルコシド以外の、上で定義されるとおりの式(I)の化合物が提供される。
【0017】
一部の実施形態において、3−O−(2’,3,4’−トリ−O−ベンジル−6−デヒドロキシ−6’−ベンジルオキシカルボニルアミノ−α−D−グルコピラノシル)−1−O−パルミトイルグリセロール以外の、上で定義されるとおりの式(I)の化合物が提供される。
【0018】
一部の実施形態において、O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2−アシルアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシルモノアシルグリセロール以外の、式(I’):
【化2】
の化合物であって、式中:
R1、R2およびR3から選択される第1の基は、アミノもしくはN−アシルアミノ基がヘキソース部分の2位にヒドロキシル基の代わりに存在するアミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分であり、N−アシルアミノ基のアシル部分は1個〜6個の炭素原子を有するか、または第1の基は、2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個は上で定義されるとおりのアミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分であるオリゴ糖鎖であり;
R1、R2およびR3から選択される第2の基は、3個〜40個の炭素原子を有するアルカノイル基または3個〜40個の炭素原子および1個〜5個の二重結合を有するアルケノイル基であり;そして
R1、R2およびR3から選択される第3の基は、水素である、
化合物が提供される。
【0019】
本発明の別の態様によれば、上で定義されるとおりの式(I)または(I’)の化合物を調製する方法であって、モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体と、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源またはその活性化誘導体、および必要であれば、非置換の単糖部分の供給源またはその活性化誘導体とを、任意選択で適切な触媒または活性化剤の存在下で、接触させる工程を含む、方法が提供される。
【0020】
特に、本発明の好ましい態様によれば、上で定義されるとおりの式(I)または(I’)の化合物を調製する方法であって、モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールを、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源、および必要であれば、非置換の単糖部分の供給源およびトランスグリコシダーゼ酵素により処理する工程を含む方法が提供される。
【0021】
さらに、本発明の別の態様によれば、組成物中での上で定義されるとおりの式(I)または(I’)の化合物のインサイチュ生成のための方法であって、当該組成物は、以下の成分:
(i)モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体;
(ii)アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源またはその活性化誘導体;
(iii)必要であれば、非置換の単糖部分の供給源またはその活性化誘導体;および
(iv)必要であれば、適切な触媒または活性化剤
を含み、当該方法は、当該組成物に、その組成物中にまだ存在しない成分(i)および(ii)の任意のもの、ならびに必要であれば、その組成物中にまだ存在しない(iii)および/または(iv)を添加し、それらの成分が反応するのを可能にする工程を含む、方法が提供される。
【0022】
本発明によれば、本発明の化合物または本発明の方法によって製造された化合物を含む食料もまた提供される。
【0023】
本発明によれば、本発明の化合物または本発明の方法によって製造された化合物を含む洗剤組成物がさらに提供される。
【0024】
本発明のさらなる態様によれば、上記の化合物の、乳化剤としての使用が提供される。
【0025】
本発明のよりさらなる態様によれば、上記の化合物の、界面活性剤としての使用が提供される。
【0026】
本発明のなおさらなる態様によれば、上記の化合物の、殺菌剤としての使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】m/z 472.25の1−O−(2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール(化合物2)のNa付加物のMS2スペクトルである。
【図2】図1のMS2スペクトルにフラグメントを割り当てたものである。
【図3】m/z 430.24の1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール(化合物1)のNa付加物のMS2スペクトルである。
【図4】図3のMS2スペクトルにフラグメントを割り当てたものである。
【図5】表3に示されたHPLC/MS結果の略図を示している。
【図6】配列番号1(使用された配列)を示している。
【図7】配列番号2(成熟配列)を示している。
【図8】中間体2の1H NMRスペクトルである。
【図9】中間体2の13C NMRスペクトルである。
【図10】図14のMS2スペクトルにフラグメントを割り当てたものである。
【図11】図14のMS2スペクトルのフラグメントのさらなる説明である。
【図12】図13および図15のMSおよびMS3スペクトルにフラグメントを割り当てたものである。
【図13】中間体2のMSスペクトルである。
【図14】中間体2のMS2スペクトルである。
【図15】中間体2のMS3スペクトルである。
【図16】中間体3の1H NMRスペクトルである。
【図17】中間体3の13C NMRスペクトルである。
【図18】中間体3のMSスペクトルである。
【図19】図18のMS2スペクトルにフラグメントを割り当てたものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
単糖およびアミノ/N−アシルアミノ単糖
本出願において、用語「単糖」とは、その最も広い意味において、より単純な炭水化物へとさらに加水分解され得ない炭水化物部分を意味する。この用語は、その最も広い意味において、遊離単糖と、(出発物質、生成物または任意の中間体において)分子の他の部分(例えば、グリセロール、アシル基および他の単糖部分)に(好ましくはグリコシド結合により)結合した単糖部分との両方を対象として含むことが意図される。この用語はまた、その最も広い意味において、以下でより詳細に定義される、非置換単糖(すなわち、その単糖に通常存在するヒドロキシル基の全てが存在し、いずれも別の官能基で置換されていない単糖)と置換単糖(例えば、アミノおよびN−アシルアミノ単糖、酸化単糖およびデオキシ単糖)との両方を対象として含むことが意図される。
【0029】
単糖部分は、D型配置またはL型配置を有し得る。さらに、単糖部分は、アルドース部分またはケトース部分であり得る。
【0030】
好適には、単糖部分は、3個〜7個、好ましくは4個〜6個、より好ましくは5個〜6個の炭素原子を有し得る。1つの実施形態において、単糖部分はヘキソース部分であり(すなわち、この単糖部分は6個の炭素原子を有する)、その例としては、グルコース、ガラクトース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドースおよびタロースなどのアルドヘキソース、ならびにフルクトースおよびソルボースなどのケトヘキソースが挙げられる。好ましくは、ヘキソース部分は、グルコース部分である。別の実施形態において、単糖単位は、リボース、アラビノース、キシロースまたはリキソースなどのペントース部分である(すなわち、この単糖単位は5個の炭素原子を有する)。
【0031】
1つの実施形態において、単糖部分は、デオキシ単糖部分、すなわち、ヒドロキシル基のうちの1個以上(好ましくは1個または2個、より好ましくは1個のみ)が水素原子に置換されている単糖部分である。他の実施形態において、単糖は、デオキシ単糖ではなく、ヒドロキシル基は、いずれも水素原子に置換されていない。
【0032】
1つの実施形態において、単糖部分上の1個以上の第一級ヒドロキシル基は、酸化されてカルボン酸(−CO2H)基を形成し得る。この基は適切な塩基と塩を形成し得、そのような塩の例は当業者によく知られており、例えば、リチウム、ナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属、ならびにアンモニウムまたはモノ、ジ、トリおよびテトラアルキルアンモニウムが挙げられる。他の実施形態において、単糖は、酸化単糖ではなく、第一級ヒドロキシル基は、いずれも−CO2H基へと酸化されていない。
【0033】
用語「アミノ単糖」とは、少なくとも1個のアミン(−NR2)基(ここで、各基Rは、独立して水素またはC1〜6アルキルである)を、それに対応する数の単糖ヒドロキシル基の代わりに含有する、上で定義されるとおりの単糖を意味する。この用語は、その最も広い意味において、遊離アミノ単糖と、(出発物質、生成物または任意の中間体において)分子の他の部分(例えば、アシル基、グリセロール部分および他の単糖部分(これは、非置換単糖部分または置換単糖部分(例えば、さらなるアミノもしくはN−アシルアミノ置換単糖部分)であり得る))に(好ましくはグリコシド結合により)結合したアミノ単糖部分との両方を対象として含むことが意図される。
【0034】
アミン基NR2において、各基Rは、独立して、水素またはC1〜6アルキル(以下に定義されるとおり)である。基Rは、同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、各基Rは、独立して、水素またはC1〜4アルキルであり、より好ましくは、水素、メチルまたはエチルであり、最も好ましくは、水素またはメチルである。特に好ましい実施形態においては、両方の基Rが、水素である。
【0035】
上記のアミン基NR2の定義において、用語「アルキル」とは、1個〜6個の炭素原子を含有する、直鎖または分岐の、一価の飽和炭化水素鎖を意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシルおよびi−ヘキシルが挙げられる。好ましくは、「アルキル」は、C1〜4アルキルであり、最も好ましくは、メチルまたはエチルである。
【0036】
用語「N−アシルアミノ単糖」とは、アシル基R’−C(=O)−(ここで、R’は、水素または上で定義されるとおりのC1〜5アルキル基である)がアミン基上の基Rのうちの1つの代わりに存在する、上で定義されるとおりのアミノ単糖を意味する。換言すれば、用語「N−アシルアミノ単糖」とは、少なくとも1個のアシルアミノ(−NR−C(=O)−R’)基(ここで、Rは上で定義されるとおりである)を、その対応する数の単糖ヒドロキシル基の代わりに含有する、上で定義されるとおりの単糖を意味する。N−アシルアミノ基の定義におけるアシル基R’−C(=O)−は、合計1個〜6個の炭素原子(カルボニル炭素を含む)を有する。好適なアシル基の例としては、メタノイル(ホルミル)、エタノイル(アセチル)、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイルおよびヘキサノイルが挙げられる。好ましくは、アシル基は、2個〜4個の炭素原子を有する。より好ましくは、アシル基は、アセチルである。
【0037】
アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、D型配置またはL型配置を有し得る。さらに、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、アミノもしくはN−アシルアミノアルドースまたはアミノケトース部分であり得る。
【0038】
好適には、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、5個〜7個、好ましくは5個〜6個の炭素原子を有し得る。好ましい実施形態において、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、アミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分であり(すなわち、このアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は6個の炭素原子を有する)、その例としては、アミノ−もしくはN−アシルアミノ置換グルコース、ガラクトース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドースおよびタロースなどのアミノもしくはN−アシルアミノアルドヘキソース、ならびにアミノもしくはN−アシルアミノ置換フルクトースおよびソルボースなどのアミノもしくはN−アシルアミノケトヘキソースが挙げられる。好ましくは、アミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分は、アミノもしくはN−アシルアミノグルコース部分である。
【0039】
アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分上のアミノもしくはN−アシルアミノ基の数は、その単糖上の置換可能なヒドロキシル基の数によってのみ制限される。好適には、アミノ置換単糖部分は、1個〜3個、好ましくは1個または2個、より好ましくは1個のみのアミノ基またはN−アシルアミノ基を、その対応する数の単糖ヒドロキシル基の代わりに含有する。
【0040】
1個もしくは複数個のアミノもしくはN−アシルアミノ基は、単糖部分上のヒドロキシル基のうちの任意のものの代わりに存在し得る。例えば、それらは、2位、3位、4位、5位または6位に存在し得る(単糖は1位で分子のグリセロール部分に連結されている)。しかしながら、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分がアミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分である場合、アミノもしくはN−アシルアミノ基は、ヘキソース部分の2位にヒドロキシル基の代わりに存在することが好ましい。
【0041】
アミノもしくはN−アシルアミノ単糖の例としては、以下が挙げられる。
【0042】
アミノもしくはN−アシルアミノペントース(例えば、2−アミノ−2−デオキシ−(DまたはL)−アラビノース、3−デオキシ−3−(メチルアミノ)−L−アラビノース(4−epi−ゲントサミン(gentosamine))、2,4−ジアミノ−2,4−ジデオキシ−L−アラビノース、2,3,5−トリアミノ−2,3,5−トリデオキシ−D−アラビノン酸、2−アミノ−2−デオキシ−D−リボース、2−アミノ−2−デオキシペントフラノース、3−アミノ−3−デオキシ−D−リボース、2−アミノ−2−デオキシ−D−キシロース、3−デオキシ−3−(メチルアミノ)−D−キシロース(ゲントサミン)および5−アミノ−5−デオキシペントフラノース);
【0043】
アミノもしくはN−アシルアミノヘキソース、例えば、アミノもしくはN−アシルアミノアロースおよびアミノもしくはN−アシルアミノアルトロース(例えば、2−アミノ−2−デオキシ−D−アロース(D−アロサミン)、3,6−ジデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−D−アルトロース(ラビドサミン));アミノもしくはN−アシルアミノガラクトース(例えば、2−アミノ−2−デオキシ−D−ガラクトース(コンドロサミン、D−ガラクトサミン)、2,6−ジデオキシ−2−(メチルアミノ)−D−ガラクトース(メチルフコサミン)、4−アミノ−4,6−ジデオキシ−D−ガラクトース(トモサミン)、4,6−ジデオキシ−4−(メチルアミノ)−D−ガラクトース、2,4−ジアミノ−2,4,6−トリデオキシ−D−ガラクトース)、アミノもしくはN−アシルアミノグルコース(例えば、2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコース(D−グルコサミン、キトサミン)、2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−D−グルコース(N−アセチルグルコサミン)2−アミノ−2−デオキシ−L−グルコース、2−デオキシ−2−(メチルアミノ)−L−グルコース、2−アミノ−2,6−ジデオキシ−D−グルコース(D−キノボサミン)、3−アミノ−3−デオキシ−D−グルコース(カナサミン(kanasamine))、3,6−ジデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−D−グルコース(ミカミノース)、4−アミノ−4−デオキシ−D−グルコース、4−アミノ−4,6−ジデオキシ−D−グルコース(ビオサミン)、4,6−ジデオキシ−4−(メチルアミノ)−D−グルコース(バモサミン(bamosamine))、4,6−ジデオキシ−4−(ジメチルアミノ)−D−グルコース(アモサミン)、4−アミノ−4−デオキシ−D−グルクロンアミド、6−アミノ−6−デオキシ−D−グルコース、2,6−ジアミノ−2,6−ジデオキシ−D−グルコース(ネオサミンC));アミノもしくはN−アシルアミノグロース、アミノもしくはN−アシルアミノイドースおよびアミノもしくはN−アシルアミノマンノース(例えば、2−アミノ−2−デオキシ−D−グロース(D−グロサミン)、2−デオキシ−2−(メチルアミノ)−D−グロース、2−アミノ−2−デオキシ−L−グロース(L−グロサミン)、2,6−ジアミノ−2,6−ジデオキシ−L−イドース(ネオサミンB、パロモース)、3−アミノ−3,6−ジデオキシ−D−マンノース(ミコサミン)、4−アミノ−4,6−ジデオキシ−D−マンノース(ペロサミン))、または他のアミノもしくはN−アシルアミノヘキソース(例えば、2−アミノ−2,3−ジデオキシ−D−リボ−ヘキソース、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−D−アラビノ−ヘキソース(D−アコサミン)、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−L−アラビノ−ヘキソース(L−アコサミン)、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−3−C−メチル−L−アラビノ−ヘキソース(4−エピ−バンコサミン)、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−L−リキソ−ヘキソース(L−ダウノサミン)、2,3,6−トリデオキシ−3−(メチルアミノ)−L−リキソ−ヘキソース(2,3,6−トリデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−L−リキソ−ヘキソース(L−ロドサミン)、2,3,6−トリデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−D−キシロ−ヘキソース(D−アンゴロサミン)、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−L−リボ−ヘキソース(リストサミン)、2,3,6−トリデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−L−リボ−ヘキソース(L−メゴサミン(megosamine))、3,4,6−トリデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−D−キシロ−ヘキソース(デソサミン)、4−アミノ−2,3,4,6−テトラデオキシ−L−エリトロ−ヘキソース(トリポサミン(tolyposamine))、2,3,4,6−テトラデオキシ−4−(ジメチルアミノ)−D−エリトロ−ヘキソース(ホロサミン)、2,4−ジアミノ−2,3,4,6−テトラデオキシ−D−アラビノ−ヘキソース(カスガミン(kasugamine))、2,6−ジアミノ−2,3,6−トリデオキシ−D−リボ−ヘキソース(ネブロサミン(nebrosamine)、トブロサミン(tobrosamine))、2,6−ジアミノ−2,4,6−トリデオキシ−D−キシロ−ヘキソース、2,6−ジアミノ−2,3,4,6−テトラデオキシ−D−エリトロ−ヘキソース(プルプロサミンC(purpurosamine C))および2,6−ジアミノ−2,3,4,6−テトラデオキシ−6−N−メチル−D−エリトロ−ヘキソース);
【0044】
アミノもしくはN−アシルアミノヘプトース(例えば、2−アミノ−2,7−ジデオキシ−D−グリセロ−D−グルコ−ヘプトース、4−アミノ−4−デオキシ−(DまたはL)−グリセロ−D−グルコ−ヘプトース、4−アミノ−4−デオキシ−(DまたはL)−グリセロ−D−マンノ−ヘプトース、6−アミノ−6,7−ジデオキシ−D−グリセロ−D−グルコ−ヘプトース、2,6−ジアミノ−2,3,4,6,7−ペンタデオキシ−L−リキソ−ヘプトース(6−エピ−プルプロサミンB)、2,6−ジアミノ−2,3,4,6,7−ペンタデオキシ−D−リボ−ヘプタ−4−エノピラノース、2,6−ジアミノ−2,3,4,6,7−ペンタデオキシ−D−リボ−ヘプトース(プルプロサミンB)および2−アミノ−2,3,4,6,7−ペンタデオキシ−6−(メチルアミノ)−D−リボ−ヘプトース(プルプロサミンA))。
【0045】
本発明の化合物において、1個もしくは複数個のアミノ単糖部分のアシル化の程度は、0(すなわち、アミノ基は1つもアシル化されていない)から1(すなわち、全てのアミノ基がアシル化されている)まで可変である。好ましいアシル化の程度は、必要とされる官能基および完成品の意図される使用に依存し、カチオン性乳化剤として使用する予定の化合物は、(十分な塩基性−NR2基がプロトン化に利用可能であるためには)低度のアシル化を必要とするが、中性の化合物は、確実に塩基性基が過剰に存在しないようするために、高度のアシル化を必要とする。好ましくは、1個もしくは複数個のアミノ単糖部分のアシル化の程度は、0.05から0.8の範囲である。
【0046】
本発明の化合物において、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、グリコシド結合により、1個以上の(a)さらなるアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分(上で定義され例示されるとおり)および/または1個以上の(b)上に定義されるとおりの非置換単糖部分と結合して、2個〜4個の単糖部分を有するオリゴ糖鎖を形成し得る。本実施形態において、オリゴ糖鎖を形成している単糖部分のうちの少なくとも1個は、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分でなければならない。好ましくは、オリゴ糖鎖を形成している単糖部分のうちの1個または2個、より好ましくは1個のみが、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分である。1個もしくは複数個のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、オリゴ糖鎖上の任意の位置に存在し得る。しかしながら、1個のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、グリセロール主鎖に結合されていることが好ましい。
【0047】
本発明の化合物において、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、分子上に存在する唯一の単糖部分である(すなわち、このアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、非置換単糖部分にも、さらなるアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分にも結合されていない)ことが好ましい。
【0048】
好ましくは、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、グルコサミンまたはN−アセチルグルコサミンから選択される。
【0049】
アシル基
用語「アシル基」(特に本発明の化合物の第2の基の定義におけるものであるが、それに限らない)とは、直鎖または分岐鎖の、飽和または不飽和の、式R−C(=O)−(式中、Rはヒドロカルビル基である)の基を意味する。典型的に、そのようなアシル基は、合計3個〜40個の炭素原子、好ましくは6個〜30個の炭素原子(例えば、少なくとも8個〜24個の炭素原子、例えば、10個〜22個、例えば、10個、12個、14個、16個または18個の炭素原子)を有する。1つの特定の実施形態において、そのようなアシル基は、アルカノイル基(すなわち、基Rがアルキルである、完全飽和の完全脂肪族基)である。あるいは、そのようなアシル基は、アルケノイル基(すなわち、基Rがアルケニルである、不飽和の完全脂肪族基、すなわち、1個以上の二重結合を含有する不飽和脂肪族基)を含み、そのような基は、例えば、1個〜5個の二重結合、好ましくは1個、2個または3個の二重結合、より好ましくは1個または2個の二重結合を有し得る。
【0050】
アシル基の例としては、飽和アシル基、例えば、アルカノイル基(例えば、ブタノイル(ブチリル)、ヘキサノイル(カプロイル)、オクタノイル(カプリル)、デカノイル(カプリニル)、ドデカノイル(ラウロイル)、テトラデカノイル、(ミリストイル)、ヘキサデカノイル(パルミトイル)、オクタデカノイル(ステアロイル)、エイコサノイル(アラキドニル)、ドコサノイル(ベヘノイル)およびテトラコサノイル(リグノセロイル)基)、および不飽和アシル基、例えば、アルケノイル基(例えば、シス−テトラデカ−9−エノイル(ミリストレイル)、シス−ヘキサデカ−9−エノイル(パルミトレイル)、シス−オクタデカ−9−エノイル(オレイル)、シス シス−9,12−オクタデカジエノイル(リノレイル)、シス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレニル)、シス,シス,シス−6,9,12−オクタデカトリエノイル(ガモレイル(gamoleyl))、およびシス,シス,シス,シス−5,8,11,14−エイコサ−テトラエノイル(アラキドニル)基)が挙げられる。
【0051】
本態様において、好ましいアシル基は、6個〜24個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和(好ましくは飽和)のアシル基である。より好ましいアシル基は、8個〜18個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であり、特に、n−デカノイル(カプリニル)、n−ドデカノイル(ラウロイル)、n−テトラデカノイル(ミリストイル)、n−ヘキサデカノイル(パルミトイル)、n−オクタデカノイル(ステアロイル)、シス−オクタデカ−9−エノイル(オレイル)、シス,シス−9,12−オクタデカジエノイル(リノレイル)、およびシス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレニル)基である。特に好ましくは、n−デカノイル基およびn−オクタデカノイル基である。
【0052】
1つの態様において、アシル基は、合計3個〜40個の炭素原子、好ましくは6個〜30個の炭素原子(例えば、8個〜24個の炭素原子)を有するアルカノイル基である。1つの実施形態において、アシル基は、合計8個〜18個の炭素原子(例えば、8個、10個、12個、14個、16個または18個の炭素原子)を有するアルカノイル基である。
【0053】
1つの態様において、アシル基は、合計3個〜40個の炭素原子、好ましくは6個〜30個の炭素原子(例えば、8個〜24個の炭素原子)および1個〜5個、好ましくは1個、2個または3個、より好ましくは1個または2個の二重結合を有するアルケノイル基である。1つの実施形態において、アシル基は、合計8個〜18個の炭素原子(例えば、8個、10個、12個、14個、16個または18個の炭素原子)および1個〜3個の二重結合を有するアルケノイル基である。
【0054】
本発明の化合物において、R1、R2およびR3から選択される(好ましくはR1およびR3から選択される)第1の基は、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個はアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分であるオリゴ糖鎖である。
【0055】
より好ましくは、第1の基は、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分である。換言すれば、このアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、分子上に存在する唯一の単糖部分であり、さらなる非置換単糖またはアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分に結合されていないことが好ましい。
【0056】
好ましくは、第1の基は、アミノヘキソース部分もしくはアシル基が2個〜4個の炭素原子を有するN−アシルアミノヘキソース部分である。本実施形態において、アミノもしくはN−アシルアミノ基は、好ましくは、ヘキソース部分の2位に存在する。
【0057】
特に好ましい実施形態において、第1の基は、グルコサミンまたはN−アセチルグルコサミンから選択される。
【0058】
本発明の化合物において、R1、R2およびR3から選択される(好ましくは、R1およびR3から選択される)第2の基は、好ましくは、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基(好ましくは、アルカノイルもしくはアルケノイル基)である。好ましくは、第2の基は、6個〜24個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基(好ましくは、アルカノイルもしくはアルケノイル基)である。より好ましくは、第2の基は、8個〜18個の炭素原子、特に10個、12個、14個、16個または18個の炭素原子を有する、飽和もしくは不飽和(好ましくは飽和)のアシル基(好ましくは、アルカノイル基)である。さらにより好ましくは、第2の基は、n−デカノイル、n−ドデカノイル、n−テトラデカノイル、n−ヘキサデカノイル、n−オクタデカノイル、シス−オクタデカ−9−エノイル(オレイル)、シス,シス−9,12−オクタデカジエノイル(リノレイル)またはシス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレニル)である。
【0059】
特に好ましい実施形態において、第2の基は、n−デカノイルまたはn−オクタデカノイルである。
【0060】
本発明の化合物において、R1、R2およびR3から選択される第3の基は、水素である。好ましくは、R2が、水素である。
【0061】
本発明によれば、
R1およびR3から選択される第1の基が、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個はアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分であるオリゴ糖鎖であり;
R1およびR3から選択される第2の基が、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基(好ましくは、アルカノイルもしくはアルケノイル基)であり;そして
R2が、水素である
化合物が好ましい。
【0062】
本発明によれば、とりわけ、
第1の基(好ましくは、R1およびR3から選択される)が、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であり;そして
第2の基(好ましくは、R1およびR3から選択される)が、6個〜24個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基(好ましくは、アルカノイルもしくはアルケノイル基)である
化合物が好ましい。
【0063】
本発明によれば、特に、
第1の基(好ましくは、R1およびR3から選択される)が、アミノヘキソース部分もしくはアシル基が2個〜4個の炭素原子を有するN−アシルアミノヘキソース部分であり;そして
第2の基(好ましくは、R1およびR3から選択される)が、8個〜18個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基(好ましくは、アルカノイルもしくはアルケノイル基)である
化合物が好ましい。
【0064】
本発明によれば、なおさらには、
第1の基(好ましくは、R1およびR3から選択される)が、グルコサミンもしくはN−アセチルグルコサミンから選択され;そして
第2の基(好ましくは、R1およびR3から選択される)が、n−デカノイル、n−ドデカノイル、n−テトラデカノイル、n−ヘキサデカノイル、n−オクタデカノイル、シス−オクタデカ−9−エノイル(オレイル)、シス,シス−9,12−オクタデカジエノイル(リノレイル)またはシス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレニル)から選択される
化合物が好ましい。
【0065】
本発明の特に好ましい化合物は、1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール;1−O−(2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール;および1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−オクタデカノイルグリセロールから選択される。
【0066】
方法
本発明の化合物は、当業者に一般的に知られている多くの方法により調製され得る。概して、化合物は、モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体と、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源またはその活性化誘導体、および必要であれば、非置換の単糖部分の供給源またはその活性化誘導体とを、任意選択で適切な触媒または活性化剤の存在下で、接触させることによって、調製され得る。
【0067】
本発明の化合物がオリゴ糖鎖を含む場合、そのような化合物は、標的化合物よりも1つ少ない単糖部分を有する本発明の化合物をアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源またはその活性化誘導体と反応させて、このアミノもしくはN−アシルアミノ置換されていない単糖を鎖に付加することによっても形成され得る。したがって、本発明の化合物は中間体化合物よりも1つ多い単糖またはアミノもしくはN−アシルアミノ単糖を有する本発明のさらなる化合物の製造のための中間体として機能し得ることが、本発明の範囲内で想定される。
【0068】
本発明の化合物は、例えば食料もしくは飼料においてまたは洗剤もしくは洗濯用組成物において、インサイチュで(すなわち、化合物がその中で使用されることが意図される組成物中で)生成され得る。本態様は、以下でより詳細に説明される。
【0069】
モノグリセリド(モノアシルグリセロール)
本発明の化合物を調製するための出発物質のうちの1つは、モノグリセリドである。本明細書において、用語「モノグリセリド」(モノアシルグリセロールとしても知られる)とは、グリセロール部分にエステル結合により共有結合された1個のアシル基(上で定義され例示されるとおり)を含む化合物(グリセロール部分のその他の2個のOH基は、自由にアミノもしくはN−アシルアミノ置換単糖とグリコシド結合を形成することができる)を意味する。脂質受容体はモノグリセリドの混合物を含み得ることが、本発明の範囲内で想定される。
【0070】
モノグリセリドのアシル基は、グリセロール分子の3個の炭素のうちのいずれか1つの上に存在し得、したがって、モノグリセリドは1−モノアシルグリセロール、2−モノアシルグリセロール、またはそれらの混合物を含み得ることが、本発明の範囲内で想定される。好ましくは、モノグリセリドは、1−モノアシルグリセロールである。モノグリセリドの混合物が存在する場合、その混合物は、好適には少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、なおより好ましくは少なくとも90%、なおさらに好ましくは少なくとも95%、なおより好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも99%の1−モノアシルグリセロール(重量による)を含む。
【0071】
好適には、モノアシルグリセロールのアシル部分は、6個〜24個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基(好ましくは、アルカノイルもしくはアルケノイル基)である。好ましくは、モノアシルグリセロールのアシル部分は、8個〜18個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基(好ましくは、アルカノイルもしくはアルケノイル基)である。さらにより好ましくは、モノアシルグリセロールのアシル部分は、n−デカノイル、n−ドデカノイル、n−テトラデカノイル、n−ヘキサデカノイル、n−オクタデカノイル、シス−オクタデカ−9−エノイル(オレイル)、シス,シス−9,12−オクタデカジエノイル(リノレイル)またはシス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレニル)である。最も好ましくは、モノアシルグリセロールは、1−n−デカノイル−グリセロールまたは1−n−オクタデカノイル−グリセロールである。
【0072】
モノアシルグリセロールは、本発明の化合物の調製の間、1個以上の保護基により保護され得る。好適な保護基の例は、それらの付加および除去の方法と共に、Greene and Wuts,“Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis”,4th Edition,publ.Wiley,2006に記載されている。特に好ましい保護基は、ベンジルである。
【0073】
本発明の化合物を調製するために、モノアシルグリセロールは、活性化誘導体として存在し得る。本明細書において、モノアシルグリセロールに適用される場合、用語「活性化誘導体」とは、モノアシルグリセロールの1個以上(好ましくは1個のみ)のヒドロキシル基が脱離基に変換された誘導体を意味する。好適な脱離基の例としては、ハロゲン、アシルオキシ(ここで、アシルは上で定義され例示されている)およびアルキル−もしくはアリールスルホニルオキシ(例えば、ベンゼンスルホニルオキシまたはp−トルエンスルホニルオキシ)が挙げられる。好ましい脱離基は、ハロゲン、特に塩素である。
【0074】
アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源
本発明の化合物におけるアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源は、それが1個以上のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分を含有する限り、特に重要ではない。
【0075】
アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源において、アミノ単糖部分のアシル化の程度は、0(すなわち、アミノ基は1つもアシル化されていない)から1(すなわち、全てのアミノ基がアシル化されている)まで可変である。好ましくは、アミノ単糖部分のアシル化の程度は、0.05〜0.8の範囲であることが好ましい。
【0076】
アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分のヒドロキシル基および/またはアミノ基は、本発明の化合物の調製の間、1個以上の保護基により保護され得る。好適な保護基の例は、それらの付加および除去の方法と共に、Greene and Wuts,“Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis”,4th Edition,publ.Wiley,2006に記載されている。特に好ましい保護基は、アセチルである。
【0077】
本発明の化合物を調製するために、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源は、活性化誘導体として存在し得る。本明細書において、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源に適用される場合、用語「活性化誘導体」とは、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源の1個以上(好ましくは1個のみ)のヒドロキシル基が脱離基に変換された誘導体を意味する。好適な脱離基の例としては、ハロゲン、アシルオキシ(ここで、アシルは上で定義され例示されている)およびアルキル−もしくはアリールスルホニルオキシ(例えば、ベンゼンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ)が挙げられる。好ましい脱離基は、ハロゲン、特に塩素である。
【0078】
反応が酵素を使用して行われる場合、1個以上のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、供給源分子の残部にグリコシド結合により結合しており、このグリコシド結合が、転移の過程の中で酵素により加水分解される。
【0079】
1つの実施形態において、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖の供給源が、グリコシド結合により一緒に連結された1個より多くのアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分を含む高次の(higher)アミノもしくはN−アシルアミノ糖(すなわち、二糖、オリゴ糖または多糖)であり、その高次のアミノもしくはN−アシルアミノ糖中の1個以上のグリコシド結合を酵素が作用して加水分解し、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分をモノグリセリドに転移させることが好ましい。この点に関し、高次のアミノもしくはN−アシルアミノ糖を構成するアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、同じであっても異なっていてもよく、各々独立して、D型配置またはL型配置を有し得る。
【0080】
高次のアミノもしくはN−アシルアミノ糖を構成するアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、各々独立して、アルドース部分またはケトース部分であり得、同じ数の炭素原子を有していても異なる数の炭素原子を有していてもよい。好適には、各アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、3個〜8個、好ましくは4個〜6個、より好ましくは5個〜6個の炭素原子を有し得る。
【0081】
別の実施形態において、高次のアミノもしくはN−アシルアミノ糖を構成する単糖部分は、ヘキソース部分である。好ましくは、そのような高次の糖のヘキソース部分は、1個以上のアミノもしくはN−アシルアミノグルコース部分(特に、グルコサミンもしくはN−アセチルグルコサミン部分)を含む。1つの特に好ましい実施形態において、そのような高次の糖のヘキソース部分の全ては、アミノもしくはN−アシルアミノグルコース部分(特に、グルコサミンもしくはN−アセチルグルコサミン部分)である。
【0082】
アミノもしくはN−アシルアミノ高次糖を構成するアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分は、グリコシド結合により一緒に連結されている。単糖部分がヘキソース部分である場合、グリコシド結合は、1−α,1’−αグリコシド結合、1,2’−グリコシド結合(これは、1−α−2’もしくは1−β−2’グリコシド結合であり得る)、1,3’−グリコシド結合(これは、1−α−3’もしくは1−β−3’−グリコシド結合であり得る)、1,4’−グリコシド結合(これは、1−α−4’もしくは1−β−4’−グリコシド結合であり得る)、1,6’−グリコシド結合(これは、1−α−6’もしくは1−β−6’−グリコシド結合であり得る)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。好ましくは、グリコシド結合は、1,4’−グリコシド結合、好ましくは1−β−4’−グリコシド結合である。
【0083】
1つの実施形態において、高次のアミノもしくはN−アシルアミノ糖は、2個のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖単位を含む(すなわち、アミノもしくはN−アシルアミノ二糖である)。そのようなアミノもしくはN−アシルアミノ二糖のアシル化の程度は、0(すなわち、いずれのアミノ単糖部分上のどちらのアミノ基もアシル化されていないアミノ二糖)から1(すなわち、全てのアミノ単糖部分上の両方のアミノ基がアシル化されているN−アシルアミノ二糖)まで可変である。好ましくは、アミノ二糖のアシル化の程度は、0.05〜0.95の範囲である。
【0084】
好適なアミノもしくはN−アシルアミノ二糖の例としては、β−1,4−結合グルコサミン単位の二量体であるキトビオース、またはそのN−アシル誘導体、特にN−アセチルキトビオースが挙げられる。キトビオースのアシル化の程度は、0(すなわち、いずれのグルコサミン部分上のどちらのアミノ基もアシル化されていない)から1(すなわち、全てのグルコサミン部分上の両方のアミノ基がアシル化されている)まで可変である。1つの実施形態において、アシル化の程度は、0である。別の実施形態において、アシル化の程度は、1である。さらなる実施形態において、キトビオースのアシル化の程度は、0.05〜0.95の範囲である。
【0085】
【化3】
【0086】
別の実施形態において、高次のアミノもしくはN−アシルアミノ糖は、3個〜10個の単糖単位を含む(すなわち、アミノもしくはN−アシルアミノオリゴ糖である)か、またはグリコシド結合により一緒に連結された少なくとも10個のより高次のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖単位を含むアミノもしくはN−アシルアミノ多糖である。典型的に、そのようなアミノもしくはN−アシルアミノ多糖は、少なくとも40個、例えば、少なくとも100個(例えば、少なくとも200個(少なくとも500個、例えば、少なくとも1000個(例えば、少なくとも5000個、例えば、10000個、例えば、少なくとも50000個、例えば、100000個)を含む))のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖単位を含む。
【0087】
1つの実施形態において、アミノもしくはN−アシルアミノ多糖は、キチンを含む。キチンは、多糖であり;これは、N−アセチルグルコサミンの単位から合成される。これらの単位は、β−1,4−共有グリコシド結合(セルロースを構成するグルコース単位間の結合と同様)を形成する。
【0088】
別の1つの実施形態において、アミノもしくはN−アシルアミノ多糖は、ランダムに分布したβ−(1−4)−結合D−グルコサミン(脱アセチル化単位)およびN−アセチル−D−グルコサミン(アセチル化単位)からなる線状多糖である、キトサンを含む。
【0089】
好ましくは、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源は、キトサン、キトビオース、またはそのうちの任意のものの、アシル基が1個〜6個の炭素原子を有する、N−アシル誘導体から選択される。より好ましくは、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源は、キトサンもしくはキトビオース、またはそれらのうちのいずれかのN−アセチル誘導体から選択される。
【0090】
単糖供給源
本発明の化合物がオリゴ糖鎖を含み、その鎖中の単糖部分のうちの少なくとも1個が非置換単糖部分である場合、そのような化合物は、概して、モノアシルグリセロール(またはその活性化誘導体)またはアミノ置換糖脂質(すなわち、標的化合物よりも1つ少ない単糖部分を有する本発明の化合物)を(非置換)単糖供給源と反応させて、この非置換単糖を鎖に付加することによって形成される。
【0091】
本発明に従って転移されるべき単糖部分の供給源は、それが非置換単糖部分を含有する限り、特に重要ではない。本発明の化合物が化学合成により調製される場合、単糖部分の供給源は、上で説明され例示されるとおり、遊離単糖であり得る。しかしながら、本発明の化合物が酵素合成により調製される場合は、単糖部分は、供給源分子の残部にグリコシド結合により結合しており、このグリコシド結合が、転移の過程の中で酵素により加水分解される。
【0092】
特に、本発明の化合物が酵素合成により調製される場合は、単糖の供給源が、グリコシド結合により一緒に連結された1個より多くの単糖部分を含む高次の糖(すなわち、二糖、オリゴ糖または多糖)であり、その高次の糖中の1個以上のグリコシド結合を酵素が作用して加水分解し、単糖を受容体分子に転移させることが好ましい。本実施形態において、高次の糖を構成する単糖部分は、同じであっても異なっていてもよく、各々独立して、D型配置またはL型配置を有し得る。
【0093】
1つの実施形態において、高次の糖を構成する単糖部分は、各々独立して、アルドース部分またはケトース部分であり得、同じ数の炭素原子を有していても異なる数の炭素原子を有していてもよい。好適には、各単糖部分は、3個〜8個、好ましくは4個〜6個、より好ましくは5個〜6個の炭素原子を有し得る。
【0094】
1つの実施形態において、高次の糖を構成する単糖部分は、ヘキソース部分であり、その例としては、グルコース、ガラクトース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドースおよびタロースなどのアルドヘキソース、ならびにフルクトースおよびソルボースなどのケトヘキソースが挙げられる。好ましくは、そのような高次の糖のヘキソース部分は、1個以上のグルコース部分を含む。1つの特に好ましい実施形態において、そのような高次の糖のヘキソース部分の全てが、グルコース部分である。
【0095】
別の実施形態において、高次の糖を構成する単糖部分は、リボース、アラビノース、キシロースまたはリキソースなどのペントース部分である。好ましくは、そのような高次の糖のペントース部分は、アラビノースもしくはキシロース部分である。
【0096】
高次の糖を構成する単糖部分は、グリコシド結合により一緒に連結されている。単糖部分がヘキソース部分である場合、グリコシド結合は、1−α,1’−αグリコシド結合、1,2’−グリコシド結合(これは、1−α−2’もしくは1’−β−2’グリコシド結合であり得る)、1,3’−グリコシド結合(これは、1−α−3’もしくは1−β−3’−グリコシド結合であり得る)、1,4’−グリコシド結合(これは、1−α−4’もしくは1−β−4’−グリコシド結合であり得る)、1,6’−グリコシド結合(これは、1−α−6’もしくは1−β−6’−グリコシド結合であり得る)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0097】
1つの実施形態において、高次の糖は、2個の単糖単位を含む(すなわち、二糖である)。好適な二糖の例としては、マルトース、イソマルトース、イソマルツロース、ラクトース、スクロース、セロビオース、ニゲロース、コージビオース、トレハロースおよびトレハルロースが挙げられる。
【0098】
別の実施形態において、高次の糖は、鎖中に3個〜10個の単糖単位を含み(すなわち、オリゴ糖であり)、これは、分岐であっても非分岐であってもよい。好ましくは、オリゴ糖は、3個〜8個、より好ましくは3個〜6個の単糖単位を含む。好適なオリゴ糖の例としては、マルトデキストリン、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、メレジトース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース、セロヘキサオースおよびセロヘプタオースが挙げられる。
【0099】
別の実施形態において、高次の糖は、グリコシド結合により一緒に連結された少なくとも10個の単糖単位を含む、多糖である。典型的に、そのような多糖は、少なくとも40個、例えば、少なくとも100個(例えば、少なくとも200個(少なくとも500個、例えば、少なくとも1000個(例えば、少なくとも5000個、例えば、10000個、例えば、少なくとも50000個、例えば、100000個)を含む))の単糖単位を含む。
【0100】
一部の実施形態において、多糖は、10個〜500000個の単糖単位を含む。他の実施形態において、多糖は、100個〜1000個の単糖単位を含む。他の実施形態において、多糖は、1000個〜10000個の単糖単位を含む。他の実施形態において、多糖は、10000個〜100000個の単糖単位を含む。一部の実施形態において、多糖は、40個〜3000個、好ましくは200個〜2500個の単糖単位を含む。
【0101】
そのような多糖の例としては、澱粉およびその誘導体(例えば、カチオン性もしくはアニオン性、酸化またはリン酸処理澱粉)、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロースまたはその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース)、アルギン酸またはその塩もしくは誘導体、ポリデキストロース、ペクチン、プルラン、カラゲナン、ローカストビーンガムおよびグアーならびにそれらの誘導体(例えば、カチオン性もしくはアニオン性グアー)が挙げられる。
【0102】
1つの実施形態において、多糖は、澱粉を含む。澱粉は、グルコピラノース単位がα結合により結合しているグルコースポリマーである。これは、アミロースおよびアミロペクチンの混合物からなる。アミロースは、1,4’−α−グリコシド結合により一緒に結合された数百個のグルコース分子の直鎖からなる。これに対し、アミロペクチンは、数千個のグルコース単位でできた枝分れした分子であり、その主鎖は、1,4’−α−グリコシド結合を含むが、およそ25個のグルコース単位ごとに1,6’−α−グリコシド分岐を有する。
【0103】
1つの実施形態において、多糖は、グリコーゲンを含む。グリコーゲンは、動物において見出される、グルコース残基の分岐鎖からなる多糖である。
【0104】
1つの実施形態において、多糖は、セルロースを含む。セルロースは、1,4’−β−グリコシド結合により一緒に結合された数千個のグルコース単位から形成されるポリマーである。
【0105】
単糖部分の好ましい供給源としては、スクロースおよびマルトースが挙げられる。
【0106】
酵素合成
1つの態様において、本発明の化合物は、トランスグリコシダーゼ酵素を使用して調製され得、この酵素は、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源中のグリコシド結合の加水分解およびこの部分のモノグリセリド受容体分子への転移を触媒するものである。
【0107】
したがって、1つの実施形態において、本発明の化合物を調製する方法であって、モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールを、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源およびトランスグリコシダーゼ酵素により処理する工程を含む方法が提供される。
【0108】
本明細書において、用語「トランスグリコシダーゼ酵素」は、単糖部分(その最も広い態様または好ましい態様において、上で定義され例示されるとおりであり、特に非置換単糖部分および/またはアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分であるがこれに限定されない)を、1つの分子から別の分子に転移させることが可能な任意の酵素を対象として含むことが意図される。用語「トランスグルコシダーゼ」は、単糖部分がグルコース部分である場合に使用される。
【0109】
1つの実施形態において、トランスグリコシダーゼ酵素は、アミノグリコシルトランスフェラーゼ酵素である。本明細書において、用語「アミノグリコシルトランスフェラーゼ酵素」とは、好適なアミノもしくはN−アシルアミノ単糖供給源(上で定義され例示されるとおり)から受容体分子、好ましくはモノグリセリド(上で定義され例示されるとおり)への、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分(上で定義され例示されるとおり)の転移を触媒することが可能な酵素を意味する。
【0110】
好適には、この酵素のトランスグリコシダーゼ活性は、酵素の全活性の少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも5%を構成し得る。この酵素の残りの活性は、例えば、受容体基質が水である加水分解活性を実質的に含み得る。
【0111】
本発明において、酵素のトランスグリコシダーゼ活性(特にアミノグリコシルトランスフェラーゼ活性)百分率は、遊離単糖(具体的には、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖)のモル割合と、単糖(具体的には、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖)がモノグリセリドに結合している本発明の化合物の割合とを、反応の完了後に測定することによって計算され得る。遊離単糖(具体的には、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖)は、供給源分子の酵素加水分解の結果として生じるのに対して、本発明の化合物は、供給源分子からモノグリセリドへの単糖(具体的には、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖)の酵素転移の結果として生じる。
【0112】
典型的なトランスグリコシダーゼ酵素触媒反応は、以下の反応スキーム1に従う。
【0113】
【化4】
【0114】
スキーム1において、R’は、上で定義され例示されるとおりのアシル基のヒドロカルビル部分である。
【0115】
好適には、トランスグリコシダーゼ酵素は、酵素分類(Enzyme Classification:E.C.)3.2.1.21またはE.C3.2.1.74に分類される。
【0116】
1つの実施形態において、トランスグリコシダーゼ酵素は、β−グルコシダーゼ酵素である。β−グルコシダーゼは、2つのグルコース部分(例えば、二糖セロビオース)を結合しているβ1−>4結合に作用する、グルコシダーゼ酵素である。これは、グルコースの放出を伴う、β−D−グルコシド中の末端非還元性残基の加水分解を触媒する。
【0117】
驚くべきことに、本発明によれば、本発明において使用されるβ−グルコシダーゼ酵素がトランスグリコシダーゼ活性(上記のとおり)、特にアミノグリコシルトランスフェラーゼ活性をも示すことが見出された。これは、β−グルコシダーゼ酵素の主要活性が加水分解活性であるので、予想されなかったことであろう。
【0118】
典型的に、β−グルコシダーゼ酵素のトランスグリコシダーゼ活性は、酵素の全活性の少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも5%である。
【0119】
アミノ酸配列
本明細書に定義されるとおりの、脂質にアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分を転移させることが可能なトランスグリコシダーゼ酵素のアミノ酸配列、特に、以下に定義される配列番号1のアミノ酸配列を有する、またはそれと少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)の配列同一性を有するトランスグリコシダーゼ酵素が、本発明において使用され得る。
【0120】
本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸配列」は、用語「ポリペプチド」および/または用語「タンパク質」と同義である。用語「アミノ酸配列」は、場合によっては用語「ペプチド」と同義である。用語「アミノ酸配列」は、場合によっては用語「酵素」と同義である。
【0121】
アミノ酸配列は、好適な供給源から調製/単離され得るか、またはアミノ酸配列は、合成により作製され得るか、またはアミノ酸配列は、組換えDNA技術の使用により調製され得る。
【0122】
本発明において使用されるタンパク質は、他のタンパク質、特に他の酵素(例えば、アミラーゼ、プロテアーゼまたはリパーゼ)と共に使用され得る。したがって、本発明はまた、酵素の組み合わせを含む組成物をも使用し得、この組み合わせは、本発明において使用されるトランスグリコシラーゼ酵素と、例えば本明細書に記載されるような別のトランスグリコシダーゼ酵素であり得る、別の酵素とを含む。本態様は、後の節で述べられる。
【0123】
配列同一性/配列相同性/変異体/相同体/誘導体
本発明はまた、本明細書で定義される1つもしくは複数のアミノ酸配列と、または本明細書で定義される特定の特性を有するポリペプチドと、ある程度の配列同一性または配列相同性を有するポリペプチドの使用を包含する。本発明は、特に、以下に定義される配列番号1とある程度の配列同一性を有するペプチドまたはその相同体を包含する。本明細書において、用語「相同体」とは、対象アミノ酸配列または対象ヌクレオチド配列と配列同一性を有する実体を意味する。本明細書において、用語「相同性」は、「配列同一性」と同等として扱われ得る。
【0124】
相同なアミノ酸配列および/またはヌクレオチド配列は、トランスグリコシダーゼ酵素の機能的活性を保持しかつ/またはトランスグリコシダーゼ酵素の活性を増強するポリペプチドを、提供および/またはコードするはずである。
【0125】
本文脈において、相同配列は、対象配列と、少なくとも60%、例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であり得るアミノ酸配列を含むものと解釈される。典型的に、相同体は、対象アミノ酸配列と同一の活性部位などを含む。相同性は、類似性(すなわち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)の観点からも考えられ得るが、本発明の文脈においては、配列同一性の観点から相同性を表すことが好ましい。
【0126】
配列同一性比較は、目で、またはより一般的には、容易に入手可能な配列比較プログラムの助けを借りて行われ得る。こうした市販のコンピュータプログラムは、複雑な比較アルゴリズムを使用して、2つ以上の配列の間の1つもしくは複数の差異に繋がり得た進化的事象を最もよく反映するその2つ以上の配列をアラインメントする。したがって、これらのアルゴリズムは、同一または類似のアミノ酸のアラインメントに対して加点(rewarding)し、ギャップの挿入、ギャップ伸長および非類似アミノ酸のアラインメントに対して減点(penalising)する評点システムを用いて動作する。比較アルゴリズムの評点システムは、以下を含む:
i)1つのギャップが挿入される毎のペナルティスコアの割り当て(ギャップペナルティスコア)、
ii)既存のギャップが追加位置により伸長される毎のペナルティスコアの割り当て(伸長ペナルティスコア)、
iii)同一アミノ酸のアラインメントに対する高スコアの割り当て、および
iv)非同一アミノ酸のアラインメントに対する様々なスコアの割り当て。
【0127】
多くのアラインメントプログラムは、ギャップペナルティの修正を可能にする。しかしながら、そのような配列比較用ソフトウェアを使用する場合、デフォルト値を使用することが好ましい。
【0128】
非同一アミノ酸のアラインメントに付与されるスコアは、置換マトリックスとも呼ばれる評点マトリックスに従って割り当てられる。そのような置換マトリックスにおいて与えられるスコアは、あるアミノ酸が進化の中で別のアミノ酸に置換される可能性が様々であり、置換されるべきアミノ酸の物理的/化学的性質に依存するという事実を反映している。例えば、極性アミノ酸が別の極性アミノ酸に置換される可能性は、疎水性アミノ酸に置換されるのに比べて高い。したがって、評点マトリックスは、同一のアミノ酸には最も高いスコアを割り当て、非同一であるが類似したアミノ酸にはそれより低いスコアを割り当て、そして非同一非類似のアミノ酸にはそれよりさらに低いスコアを割り当てるであろう。最もよく使用されている評点マトリックスは、PAMマトリックス(Dayhoff et al.(1978)、Jones et al.(1992))、BLOSUMマトリックス(HenikoffおよびHenikoff(1992))およびGonnetマトリックス(Gonnet et al.(1992))である。
【0129】
そのようなアラインメントを実施するのに好適なコンピュータプログラムとしては、Vector NTI(Invitrogen Corp.)ならびにClustalV、ClustalWおよびClustalW2プログラム(Higgins DG & Sharp PM(1988)、Higgins et al.(1992)、Thompson et al.(1994)、Larkin et al.(2007)が挙げられるが、これらに限定されない。種々のアラインメントツールの品揃えが、www.expasy.org.のExPASy Proteomicsサーバーから利用可能である。配列アラインメントを実行し得るソフトウェアの別の例は、現在http://www.ncbi.nlm.nih.gov/で見出され得るNational Center for Biotechnology Informationのウェブページから入手可能であり、Altschul et al.J.Mol.Biol.(1990)215;403−410に最初に記載された、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)である。配列アラインメントを実行し得るソフトウェアのさらなる例は、Tatusova and Madden,FEMS Microbiol.Lett.(1999)174,247−250に最初に記載された、BLAST2である。
【0130】
ソフトウェアがアラインメントを生成すると、%類似性および%配列同一性を計算することができる。このソフトウェアは、典型的に、配列比較の一部としてこれを行い、数値結果を生成する。
【0131】
1つの実施形態において、配列アラインメントを実施するためにはClustalWソフトウェアを使用することが好ましい。好ましくは、ClustalWでのアラインメントは、以下のペアワイズアラインメントのためのパラメータを用いて実施される。
【0132】
【表1】
【0133】
ClustalW2は、例えば、EMBL−EBIウェブページwww.ebi.ac.ukのtools−sequence analysis−ClustalW2の項目下で、European Bioinformatics Instituteにより、インターネット上で提供されている。現在のClustalW2ツールの正確なアドレスは、www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2である。
【0134】
したがって、本発明はまた、本明細書において定義されるとおりのタンパク質の任意のアミノ酸配列の変異体、相同体および誘導体、特に下記に定義される配列番号1の変異体、相同体および誘導体の使用をも包含する。
【0135】
配列(特に、配列番号1)はまた、サイレントな変化を生じ、機能的に等価な物質をもたらす、アミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有し得る。意図的なアミノ酸置換は、その物質の二次的結合活性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性における類似性に基づいてなされ得る。例えば、負に荷電したアミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ;正に荷電したアミノ酸としては、リジンおよびアルギニンが挙げられ;そして類似の親水性値を有する非荷電の極性先端基をもつアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンが挙げられる。
【0136】
本発明はまた、行われ得る保存的置換(置換および置き換えは共に、本明細書において、既存のアミノ酸残基と代替残基との相互交換を意味するのに使用される)、すなわち、類似のものと類似のものとの置換(例えば、塩基性のものと塩基性のものとの置換、酸性のものと酸性のものとの置換、極性のものと極性のものとの置換など)をも包含する。非保存的置換(すなわち、あるクラスの残基から別のクラスの残基への置換、あるいは非天然アミノ酸(例えば、オルニチン(以下、Zと称する)、ジアミノ酪酸オルニチン(以下、Bと称する)、ノルロイシンオルニチン(以下、Oと称する)、ピリイルアラニン、チエニルアラニン、ナフチルアラニンおよびフェニルグリシン)を含めることを伴う置換)もまた行われ得る。
【0137】
なされ得る保存的置換は、例えば、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジンおよびヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸およびアスパラギン酸)、脂肪族アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)、極性アミノ酸(グルタミン、アスパラギン、セリン、スレオニン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン)、ヒドロキシルアミノ酸(セリン、スレオニン)、大型アミノ酸(フェニルアラニンおよびトリプトファン)および小型アミノ酸(グリシン、アラニン)の群内である。
【0138】
置換はまた、非天然アミノ酸(α*およびα二置換*アミノ酸、N−アルキルアミノ酸*、乳酸*、天然アミノ酸のハロゲン化物誘導体(例えば、トリフルオロチロシン*、p−Cl−フェニルアラニン*、p−Br−フェニルアラニン*、p−I−フェニルアラニン*)、L−アリル−グリシン*、β−アラニン*、L−α−アミノ酪酸*、L−γ−アミノ酪酸*、L−α−アミノイソ酪酸*、L−ε−アミノカプロン酸#、7−アミノヘプタン酸*、L−メチオニンスルホン#*、L−ノルロイシン*、L−ノルバリン*、p−ニトロ−L−フェニルアラニン*、L−ヒドロキシプロリン#、L−チオプロリン*、フェニルアラニン(Phe)のメチル誘導体(例えば、4−メチル−Phe*、ペンタメチル−Phe*)、L−Phe(4−アミノ)#、L−Tyr(メチル)*、L−Phe(4−イソプロピル)*、L−Tic(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボキシル酸)*、L−ジアミノプロピオン酸#およびL−Phe(4−ベンジル)*を含む)によってもなされ得る。上記の(相同的または非保存的置換に関する)説明では、記号*は誘導体の疎水性を示すのに利用されているのに対して、#は誘導体の親水性を示すのに利用されており、#*は両親媒性を示している。
【0139】
変異体アミノ酸配列は、配列の任意の2つのアミノ酸残基の間に挿入され得る好適なスペーサー基(アミノ酸スペーサー(例えば、グリシンもしくはβ−アラニン残基)の他に、アルキル基(例えば、メチル、エチルもしくはプロピル基)を含む)を含み得る。変異のさらなる形態は、ペプトイド形態の1個以上のアミノ酸残基の存在を含んでおり、当業者には十分に理解されるであろう。疑義を避けるために述べると、「ペプトイド形態」は、α−炭素置換基がα−炭素ではなく残基の窒素原子上にある変異体アミノ酸残基をいうのに使用される。ペプトイド形態のペプチドを調製するための方法は、当該技術分野において、例えば、Simon RJ et al.(1992),Horwell DC.(1995)において知られている。
【0140】
精製
1つの態様において、本発明において使用される配列は、好ましくは、精製された形態である。用語「精製(された)」とは、所与の成分が高いレベルで存在することを意味する。この成分は、望ましくは、組成物中に存在する主活性成分である。
【0141】
量/濃度
本発明のグリコシル化方法において必要とされるトランスグリコシダーゼの量は、特に限定されない。
【0142】
1つの実施形態において、本発明の酵素転移方法は、有効量のトランスグリコシダーゼ酵素を必要とする。本明細書において、用語「有効量」とは、測定可能な量のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分をモノグリセリド分子に転移させることが可能なトランスグリコシダーゼ酵素の量を意味する。
【0143】
脂質受容体分子に転移されたアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の量は、液体クロマトグラフィ−質量分析(LC−MS)を使用して測定され得る。
【0144】
例えば、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖供給源の量の減少または反応混合物中の生成物の量の増加が、反応の間の異なる時点で測定され得る。
【0145】
トランスグリコシダーゼ酵素は、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分をモノグリセリドへと転移させるという上記の必要とされる機能をそれが果たすことを可能にする、任意の濃度で存在し得る。
【0146】
1つの実施形態において、トランスグリコシダーゼは、モノグリセリド受容体1グラム当たり1〜1000単位のトランスグリコシダーゼ活性(U)、好ましくは2〜400U、最も好ましくは5〜200Uの濃度で存在する。
【0147】
1つの実施形態において、トランスグリコシダーゼは、モノグリセリド受容体1グラム当たり0.00033〜0.33g、好ましくは0.00067〜0.13g、最も好ましくは0.0017〜0.067gの濃度で存在する。
【0148】
トランスグリコシダーゼ酵素がβ−グルコシダーゼ酵素である場合、トランスグリコシダーゼ活性は、そのβ−グルコシダーゼ活性を参照して測定され得る。β−グルコシダーゼ活性の1単位は、アッセイ条件(pH4.8および50℃)下で、毎分1μmolのp−ニトロフェノールをp−ニトロフェニルβ−D−グルコピラノシドから生成する酵素量として定義される。次いで、必要とされるトランスグリコシダーゼ活性が、上で言及されたトランスグリコシダーゼ活性および加水分解活性の割合に基づき(全活性に対する%として)計算され得る。
【0149】
1つの実施形態において、トランスグリコシダーゼ酵素は、真菌由来のものであるか、または真菌由来のトランスグリコシダーゼ酵素と、少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有する。
【0150】
好ましくは、トランスグリコシダーゼ酵素は、トリコデルマ属種(Trichoderma species)に由来するか、またはトリコデルマ属種(Trichoderma species)由来のトランスグリコシダーゼ酵素と少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有する。
【0151】
特に好ましい実施形態において、トランスグリコシダーゼ酵素は、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)(配列番号1)であるか、それと少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有する。
【0152】
配列番号1の配列を有する酵素は、配列番号2の配列を有する成熟酵素のアミノ酸32〜744に相当し、最初の31個のアミノ酸は、シグナルペプチドを構成する。したがって、本明細書中での配列番号1への言及はまた、配列番号2のアミノ酸32〜744を有するペプチド、またはそれと少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するペプチドをも意味するとも解され得る。
【0153】
酵素組み合わせ
トランスグリコシダーゼ酵素(特に、アミノグリコシルトランスフェラーゼ酵素)は、1つ以上のさらなる活性剤と組み合わせて、本発明に従って使用され得る。そのような組合せは、組成物(特に、食料)中で一緒に使用される場合に、相乗作用を含む利点を提供し得る。
【0154】
特に、トランスグリコシダーゼ酵素(特に、アミノグリコシルトランスフェラーゼ酵素)は、活性剤として1種以上のさらなる酵素と組み合わせて、本発明に従って使用され得る。そのような組み合わせは、組成物(特に、食料)中で一緒に使用される場合に、相乗作用を含む利点を提供し得る。
【0155】
1つの実施形態において、そのさらなる酵素は、別のトランスグリコシダーゼ酵素(特に、さらなるアミノグリコシルトランスフェラーゼ酵素)であり、したがって、2つ(またはそれ以上)の異なるトランスグリコシダーゼ(特に、アミノグリコシルトランスフェラーゼ)酵素が、組み合わされて使用される。理論に拘束されることを望むものではないが、ある1つのアミノグリコシルトランスフェラーゼは、1個のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の、モノグリセリド受容体への転移を触媒し得、別のトランスグリコシダーゼ(例えば、アミノグリコシルトランスフェラーゼ)は、結果として生じるアミノもしくはN−アシルアミノグリコシルモノグリセリド上のアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分への転移を触媒し、それにより、そのモノグリセリド上のグルカン鎖を伸長し得ることが想定される。
【0156】
1つの実施形態において、さらなる酵素は、グリコシダーゼ(E.C.3.2.1)である。理論に拘束されることを望むものではないが、グリコシダーゼと本発明のトランスグリコシダーゼ酵素とを組み合わせることは、グリコシダーゼがより長鎖の高次の糖のグリコシド結合を加水分解してより短鎖の高次の糖(特に、二糖およびオリゴ糖)にすることが可能であり、次いで、その単糖部分が、モノグリセリドまたはグリコシルモノグリセリド受容体へと、そのようなより長鎖の高次の糖からよりも容易に転移され得るという点で、特に有利であり得ることが想定される。グリコシダーゼは、α−グリコシダーゼまたはβ−グリコシダーゼであり得る。特に、グリコシダーゼは、アミラーゼ(例えば、α−アミラーゼ(E.C.3.2.1.1)またはβ−アミラーゼ(E.C.3.2.1.2))を含み得る。そのようなアミラーゼ酵素は、澱粉をより短鎖のオリゴ糖(例えば、マルトース)へと加水分解することが可能であり、次いで、グルコース部分が、マルトースからモノグリセリドまたはグリコシルモノグリセリドへと、元の澱粉分子からよりも容易に転移され得る。
【0157】
1つの実施形態において、さらなる酵素は、ヘキソシルトランスフェラーゼ(E.C.2.4.1)である。理論に拘束されることを望むものではないが、ヘキソシルトランスフェラーゼと本発明のトランスグリコシダーゼ酵素とを組み合わせることは、ヘキソシルトランスフェラーゼが、本発明のトランスグリコシダーゼ酵素が概してそれに対して不活性である化合物から単糖部分(例えば、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分)を転移させて、本発明のトランスグリコシダーゼ酵素がそれに作用して単糖部分をモノグリセリドまたはグリコシルモノグリセリドへと転移させ得る他の化合物(例えば、単糖または高次の糖(特に、二糖およびオリゴ糖))を形成することが可能であるという点で、特に有利であり得ることが想定される。また、理論に拘束されることを望むものではないが、グリコシルトランスフェラーゼおよび他のヘキソシルトランスフェラーゼが、1個以上の単糖部分を、モノグリセリドもしくはグリコシルモノグリセリド上に既に存在するかまたは先に本発明のトランスグリコシダーゼによってモノグリセリドもしくはグリコシルモノグリセリドに転移された、1個もしくは複数個の単糖部分に転移させ、それにより、モノグリセリド上のグルカン鎖を伸長し得ることが想定される。
【0158】
別の実施形態において、さらなる酵素は、カルボン酸エステルヒドロラーゼ(E.C.3.1.1)である。理論に拘束されることを望むものではないが、カルボン酸エステルヒドロラーゼと本発明のトランスグリコシダーゼ酵素とを組み合わせることは、カルボン酸エステルヒドロラーゼが、トリグリセリド(これには単糖部分を受容するのに必要な自由OH基がない)を本発明における受容体分子として機能し得るモノグリセリドへと部分的に加水分解することが可能であるという点で、特に有利であり得ることが想定される。特に、カルボン酸エステルヒドロラーゼは、カルボキシルエステラーゼ(E.C.3.1.1.1)を含み得る。
【0159】
本発明におけるトランスグリコシダーゼとの組み合わせに好適な酵素のさらなるクラスの例としては、オキシダーゼ(E.C.1.1.3)およびO−アシルトランスフェラーゼ(特に、E.C.2.3.1.43に分類されるもの)が挙げられる。
【0160】
化学合成−一般
式(I)の化合物は、以下の一般スキーム2および3に従って作製され得る。
【0161】
【化5】
【0162】
スキーム2において、式(I’)の化合物は、単一のアミノ単糖部分のみをグリセロー
ル単位に結合させた式(I)の化合物である。
R’は、アシル基(上で定義され例示されるとおり)のヒドロカルビル部分であり;
P1は、アミノ保護基であり、その例は、上で参照されたGreene & Wuts(2006)に記載されており、とりわけ、1個〜6個の炭素原子を有するアシル基、特に、アセチルであり;
P2は、ヒドロキシ保護基であり、とりわけ、1個〜6個の炭素原子を有するアシル基、特に、アセチルであり;
P3は、ヒドロキシ保護基であり、その例は、上で参照されたGreene & Wuts(2006)に記載されており、とりわけ、ベンジルであり;
LG1は、脱離基であり、例えば、ハロゲン、1個〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、または1個〜6個の炭素原子を有するアシルオキシ基であり、とりわけ、ハロゲン、特に、塩素であり;そして
LG2は、脱離基であり、例えば、ハロゲン、1個〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、または1個〜6個の炭素原子を有するアシルオキシ基であり、とりわけ、ハロゲン、特に、塩素である。
【0163】
工程(a):脱離基へのアノマーヒドロキシル基の同時変換を伴う非アノマーヒドロキシル基の保護は、例えば“Best Synthetic Methods:Carbohydrates”Elsevier Science Ltd.2003,pp69−80に記載されるような、標準的な方法によって行われ得る。典型的に、試薬P2−LG1は、酸塩化物、とりわけ、塩化アセチルである。
【0164】
工程(b):式(III)の保護されたアミノ糖と式(IV)の保護されたグリセロールとのカップリングは、酸の存在下で行われ得、この酸は、ブレンステッド酸(例えば、強鉱酸)またはルイス酸(例えば、ZnCl2)であり得る。
【0165】
工程(c):式(VI)の保護された化合物を提供する式(V)の化合物のアシル化は、式R−C(=O)−LG2(例えば、酸塩化物または酸無水物)のアシル化剤を用いて達成され得る。
【0166】
工程(d)および(e):式(VI)の化合物の脱保護は、標準的な方法(例えば、上で参照されたGreene & Wuts(2006)に記載されている方法)を使用して行われ得る。P1がアシルである場合、脱保護は、基P2だけが除去されて式(I)のN−アシルアミノ化合物が得られるように行われ得る。P2がアシルである場合の典型的な脱保護剤は、ヒドラジンである。P3がベンジルである場合の典型的な脱保護剤は、金属触媒(例えば、パラジウム)の存在下で水素である。
【0167】
【化6】
【0168】
スキーム3において:
R’は、スキーム2で定義されたとおりであり;
R’’は、HまたはP3であり、ここでP3は、スキーム2で定義されたとおりであり;
P4は、ヒドロキシ基およびアミノ基の両方を保護することが可能な基であり、その例は、上で参照されたGreene & Wuts(2006)に記載されており、とりわけ、アセチルであり;そして
LG3は、脱離基であり、例えば、ハロゲンまたは1個〜6個の炭素原子を有するアシルオキシ基であり、特に、アセチルオキシである。
【0169】
工程(a):脱離基へのアノマーヒドロキシル基の同時変換を伴う式(VII)のアミノ糖の非アノマーヒドロキシル基およびアミノ基の保護は、例えば“Best Synthetic Methods:Carbohydrates”Elsevier Science Ltd.2003,pp69−80に記載されるような、標準的な方法によって行われ得る。典型的に、試薬P4−LG3は、酸無水物であり、とりわけ、無水酢酸である。
【0170】
工程(b):式(VIII)の保護されたアミノ糖と式(IX)の保護されたモノアシルグリセロールとのカップリングは、酸触媒(例えば、強鉱酸)の存在下で行われ得る。典型的な触媒は、シリカ上に担持されたH2SO4である。
【0171】
工程(c)および(d):式(X)の化合物の脱保護は、例えば上で参照されたGreene & Wuts(2006)に記載されるような、標準的な方法を使用して行われ得る。P4がアシルである場合の典型的な脱保護剤は、ヒドラジンである。P3がベンジルである場合の典型的な脱保護剤は、金属触媒(例えば、パラジウム)の存在下で水素である。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明の化合物は、多くの用途における、特に、乳化剤および/または界面活性剤として、ならびに抗菌剤としての、使用を見出す。
【0173】
特に、本発明の化合物は、家庭内ケアにおいて洗剤としての用途を見出す、生分解性の天然のカチオン性界面活性剤である。本発明の化合物はまた、様々な細菌(グラム陰性およびグラム陽性の両方)ならびにカビおよび酵母に対して抗菌特性を示す。本発明の化合物は、熱可塑性プラスチック(押出物およびフィルムを含む)において界面活性抗菌効果を有し、パーソナルケア製品(一般用(OTC)クリームを含む)における抗菌薬および乳化促進物質としての用途を見出す。
【0174】
食料
本発明の化合物は、食料もしくは飼料中に組み込まれ得る、かつ/または食料もしくは飼料の調製において使用され得る。用語「食料」とは、本明細書で使用される場合、ヒトおよび/または動物の消費に適した物質を意味する。用語「飼料」とは、本明細書で使用される場合、特に、動物の消費に適した物質をいう。
【0175】
好適には、用語「食料」とは、本明細書で使用される場合、消費のための準備が整った形態の食料を意味し得る。あるいは、またはさらには、他方において、用語食料は、本明細書で使用される場合、食料の調製において使用される1つ以上の食材を意味し得る。
【0176】
食料は、用途および/または利用形態および/または投与形態に依存して、溶液の形で、または固体として、存在し得る。
【0177】
食品(例えば、機能性食品)として、またはその調製において使用される場合、本発明の化合物は、1つ以上の、栄養学的に受容可能なキャリア、栄養学的に受容可能な希釈剤、栄養学的に受容可能な賦形剤、栄養学的に受容可能なアジュバント、栄養学的に活性な成分と共に使用され得る。
【0178】
好ましい態様において、本発明は、本発明の化合物を含む食料(上で定義されるとおり)であって、以下:卵、卵ベースの製品(マヨネーズ、サラダドレッシング、ソース、アイスクリーム、卵粉、改質卵黄およびそれらから製造された製品が挙げられるが、これらに限定されない);焼いた品物(パン、ケーキ、甘い生地の製品、積層生地、液状バッター、マフィン、ドーナツ、ビスケット、クラッカーおよびクッキーを含む);菓子(チョコレート、キャンディー、キャラメル、ハルバ、ガム(無糖および砂糖入りガム、風船ガム、ソフト風船ガム、チューインガムを含む)およびプディングを含む);冷凍製品(シャーベットを含む)、好ましくは、冷凍乳製品(アイスクリームおよびアイスミルクを含む);乳製品(チーズ、バター、ミルク、コーヒークリーム、ホイップクリーム、カスタードクリーム、乳飲料およびヨーグルトを含む);ムース、植物性ホイップクリーム、肉製品(加工肉製品を含む);食用油脂、エアレーション(aerated)および非エアレーション(non−aerated)ホイップ製品、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、マーガリン、ショートニングおよびスプレッド(低脂肪および極低脂肪スプレッドを含む);ドレッシング、マヨネーズ、ディップ、クリームベースのソース、クリームベースのスープ、飲料、スパイスエマルジョンおよびソースのうちの1つ以上から選択される、食料を提供する。
【0179】
好適には、本発明に従う食料は、ケーキ、ペーストリー、菓子、チョコレート、ファッジなどを含む、「ファインフード(fine food)」であり得る。
【0180】
1つの態様において、本発明に従う食料は、生地製品または焼き製品、例えば、パン、揚げ製品、スナック、ケーキ、パイ、ブラウニー、クッキー、ヌードル、スナック品目、例えば、クラッカー、全粒粉クラッカー、プレッツェル、ポテトチップス、トルティーヤ、ナチョおよびパスタであり得る。
【0181】
さらなる態様において、本発明に従う食料は、植物由来食品(例えば、穀粉、プレミックス、油、脂肪、カカオバター、コーヒー用クリーム、サラダドレッシング、マーガリン、スプレッド、ピーナッツバター、ショートニング、アイスクリーム、料理用油)であり得る。
【0182】
別の態様において、本発明に従う食料は、乳製品(バター、ミルク、クリーム、チーズ(例えば、種々の形態(シュレッド、ブロック、スライスまたはすりおろしを含む)のナチュラル、プロセス、および模造チーズ)、クリームチーズ、アイスクリーム、フローズンデザート、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、バター脂肪、無水乳脂肪、他の乳製品を含む)であり得る。本発明に従う酵素は、乳製品における油脂安定度を改善し得る。
【0183】
別の態様において、本発明に従う食料は、動物由来成分を含有する食品(例えば、加工肉製品、料理用油、ショートニング)であり得る。
【0184】
さらなる態様において、本発明に従う食料は、飲料、果物、ミックスフルーツ、野菜、マリネードまたは果実酒であり得る。
【0185】
1つの態様において、本発明に従う食料は、植物由来油(すなわち、植物油)(例えば、オリーブ油、ヒマワリ油、ラッカセイ油またはナタネ油)である。
【0186】
本発明の化合物は、食料または飼料においてインサイチュで生成され得る。
【0187】
したがって、さらなる態様において、本発明は、食料または飼料組成物中での本発明の化合物のインサイチュ生成のための方法であって、当該組成物は、以下の成分:
(i)モノアシルグリセロール(上で定義され例示されるとおり)またはその活性化誘導体;
(ii)アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源(上で定義され例示されるとおり)またはその活性化誘導体;
(iii)必要であれば、非置換の単糖部分の供給源(上で定義され例示されるとおり)またはその活性化誘導体;および
(iv)必要であれば、適切な触媒または活性化剤
を含み、当該方法は、当該組成物に、その組成物中にまだ存在しない成分(i)および(ii)の任意のもの、ならびに必要であれば、その組成物中にまだ存在しない(iii)および/または(iv)を添加し、それらの成分が反応するのを可能にする工程を含む、方法を提供する。
【0188】
清浄化組成物および洗剤組成物
本発明の化合物は、清浄化組成物および/または洗剤組成物の一成分を構成し得る。概して、清浄化組成物および洗剤組成物は、当該技術分野において十分に記載されており、好適な清浄化組成物および洗剤組成物のさらなる説明については国際公開第96/34946号パンフレット;国際公開第97/07202号パンフレット;および国際公開第95/30011号パンフレットが参照される。
【0189】
本発明の化合物は、例えば、手洗いもしくは機械洗い洗濯用洗剤組成物(汚れた布帛の前処理に適した洗濯用添加剤組成物およびリンス添加布帛柔軟剤組成物を含む)として配合され得るか、または一般家庭用硬表面清浄化作業における使用のための洗剤組成物として配合され得るか、または食器の手洗いもしくは機械洗い作業用に配合され得る。
【0190】
1つの実施形態において、本発明の洗濯用組成物は、本発明の化合物を、1種以上の酵素(例えば、プロテアーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、非マルトース生成アミラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、ラッカーゼ、および/もしくはペルオキシダーゼ、ならびに/またはそれらの組み合わせ)と組み合わせて含み得る。概して、1種もしくは複数種の選択された酵素の特性(例えば、pH最適条件、他の酵素および非酵素成分との適合性など)は、選択された洗剤と適合すべきであり、かつその1種もしくは複数種の酵素は、有効量で存在すべきである。
【0191】
プロテアーゼ:好適なプロテアーゼとしては、動物、植物または微生物由来のものが挙げられる。化学的に修飾されたまたはタンパク質工学により産生された変異体もまた、好適である。プロテアーゼは、セリンプロテアーゼまたはメタロプロテアーゼ(例えば、アルカリ性微生物プロテアーゼまたはトリプシン様プロテアーゼ)であり得る。アルカリ性プロテアーゼの例は、スブチリシンであり、とりわけ、バキッルス属種(Bacillus sp.)に由来するもの(例えば、スブチリシンNovo、スブチリシンCarlsberg、スブチリシン309(例えば、米国特許第6,287,841号明細書参照)、スブチリシン147、およびスブチリシン168(例えば、国際公開第89/06279号パンフレット参照))である。トリプシン様プロテアーゼの例は、トリプシン(例えば、ブタまたはウシ由来のもの)、およびフサリウム(Fusarium)プロテアーゼ(例えば、国際公開第89/06270号パンフレットおよび国際公開第94/25583号パンフレット参照)である。また、有用なプロテアーゼの例としては、国際公開第92/19729号パンフレットおよび国際公開第98/20115号パンフレットに記載されている変異体が挙げられるが、これらに限定されない。好適な市販のプロテアーゼ酵素としては、Alcalase(登録商標)、Savinase(登録商標)、Liquanase(登録商標)、Ovozyme(登録商標)、Polarzyme(登録商標)、Esperase(登録商標)、Everlase(登録商標)、およびKannase(登録商標)(Novozymes、以前のNovo Nordisk A/S);Excellase(商標)、Maxatase(登録商標)、Maxacal(商標)、Maxapem(商標)、Properase(登録商標)、Properase L(登録商標)、Purafect(登録商標)、Purafect L(登録商標)、PuraFast(商標)、OxP(商標)、FN2(商標)、およびFN3(商標)(Genencor−Danisco A/Sの一部門)が挙げられる。
【0192】
リパーゼ:この酵素は、カルボン酸エステル結合を加水分解してカルボキシレートを放出することが可能なリパーゼ(EC3.1.1)であり得る。リパーゼの例としては、トリアシルグリセロールリパーゼ(EC3.1.1.3)、ガラクトリパーゼ(EC3.1.1.26)、ホスホリパーゼA1(EC3.1.1.32)、ホスホリパーゼA2(EC3.1.1.4)およびリポタンパク質リパーゼA2(EC3.1.1.34)が挙げられるが、これらに限定されない。好適なリパーゼとしては、細菌または真菌由来のものが挙げられる。化学的に修飾されたまたはタンパク質工学により産生された変異体が含まれる。有用なリパーゼの例としては、フミコラ属(Humicola)(同義語テルモミュケス(Thermomyces))、例えば、H.ラヌギノサ(H.lanuginosa)(T.ラヌギノスス(T.lanuginosus))(例えば、欧州特許第258068号明細書および欧州特許第305216号明細書参照)およびH.インソレンス(H.insolens)(例えば、国際公開第96/13580号パンフレット参照)由来のリパーゼ;プセウドモナス(Pseudomonas)リパーゼ(例えば、P.アルカリゲネス(P.alcaligenes)またはP.プセウドアルカリゲネス(P.pseudoalcaligenes)由来のもの;例えば、欧州特許第218 272号明細書参照)、P.ケパキア(P.cepacia)(例えば、欧州特許第331 376号明細書参照)、P.ストゥトゼリ(P.stutzeri)(例えば、英国特許第1,372,034号明細書参照)、P.フルオレスケンス(P.fluorescens)、プセウドモナス属種(Pseudomonas sp.)SD705株(例えば、国際公開第95/06720号パンフレットおよび国際公開第96/27002号パンフレット参照)、P.ウィスコンシネンシス(P.wisconsinensis)(例えば、国際公開第96/12012号パンフレット参照);バキッルス(Bacillus)リパーゼ(例えば、B.スブティリス(B.subtilis)由来のもの;例えば、Dartois et al.(1993)参照)、B.ステアロテルモピルス(B.stearothermophilus)(例えば、特公昭64−744992号公報参照)、またはB.プミルス(B.pumilus)(例えば、国際公開第91/16422号パンフレット参照)が挙げられるが、これらに限定されない。配合物中での使用のために企図されるさらなるリパーゼ変異体としては、例えば、国際公開第92/05249号パンフレット、国際公開第94/01541号パンフレット、国際公開第95/35381号パンフレット、国際公開第96/00292号パンフレット、国際公開第95/30744号パンフレット、国際公開第94/25578号パンフレット、国際公開第95/14783号パンフレット、国際公開第95/22615号パンフレット、国際公開第97/04079号パンフレット、国際公開第97/07202号パンフレット、欧州特許出願公開第407225号明細書、および欧州特許第260105号明細書に記載されているものが挙げられる。一部の市販のリパーゼ酵素としては、Lipex(登録商標)、Lipolase(登録商標)およびLipolase(登録商標)Ultra(Novozymes、以前のNovo Nordisk A/S)が挙げられる。
【0193】
ポリエステラーゼ:好適なポリエステラーゼとしては、国際公開第01/34899号パンフレット(Genencor)および国際公開第01/14629号パンフレット(Genencor)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されず、本明細書において述べた他の酵素との任意の組み合わせで含まれ得る。
【0194】
アミラーゼ:組成物は、α−アミラーゼ(EC3.2.1.1)、G4生成アミラーゼ(EC3.2.1.60)、β−アミラーゼ(EC3.2.1.2)およびγ−アミラーゼ(EC3.2.1.3)などのアミラーゼを含み得る。これらは、細菌または真菌由来のアミラーゼを含み得、化学的に修飾されたまたはタンパク質工学により産生された変異体が含まれる。市販のアミラーゼは、例えば、Duramyl(登録商標)、Termamyl(商標)、Fungamyl(登録商標)およびBAN(商標)(Novozymes、以前のNovo Nordisk A/S)、Rapidase(登録商標)、およびPurastar(登録商標)(Danisco USA,Inc.)、LIQUEZYME(商標)、NATALASE(商標)、SUPRAMYL(商標)、STAINZYME(商標)、FUNGAMYLおよびBAN(商標)(Novozymes A/S)、RAPIDASE(商標)、PURASTAR(商標)およびPURASTAROXAM(商標)(Danisco USA Inc.から)、GRINDAMYL(商標)PowerFresh、POWERFlex(商標)およびGRINDAMYL PowerSoft(Danisco A/Sから)であるが、これらに限定されない。
【0195】
ペルオキシダーゼ/オキシダーゼ:組成物中での使用のために企図される好適なペルオキシダーゼ/オキシダーゼとしては、植物、細菌または真菌由来のものが挙げられる。化学的に修飾されたまたはタンパク質工学により産生された変異体が含まれる。有用なペルオキシダーゼの例としては、コプリヌス属(Coprinus)由来の(例えば、C.キネレウス(C.cinereus)およびその変異体(例えば、国際公開第93/24618号パンフレット、国際公開第95/10602号パンフレット、および国際公開第98/15257号パンフレットに記載されているもの)由来の)ペルオキシダーゼが挙げられる。市販のペルオキシダーゼとしては、GUARDZYME(登録商標)(Novozymes A/S)が挙げられる。
【0196】
セルラーゼ:好適なセルラーゼとしては、細菌または真菌由来のものが挙げられる。化学的に修飾されたまたはタンパク質工学により産生された変異体が含まれる。好適なセルラーゼとしては、バキッルス属(Bacillus)、プセウドモナス属(Pseudomonas)、フミコラ属(Humicola)、フサリウム属(Fusarium)、ティエラウィア属(Thielavia)、アクレモニウム属(Acremonium)由来のセルラーゼ(例えば、例えば米国特許第4,435,307号明細書;同第5,648,263号明細書;同第5,691,178号明細書;同第5,776,757号明細書;および国際公開第89/09259号パンフレットに開示されているフミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、ミュケリオプトラ・テルモピラ(Myceliophthora thermophila)およびフサリウム・オクシュスポルム(Fusarium oxysporum)から産生される真菌セルラーゼ)が挙げられる。使用のために企図される例示的なセルラーゼは、テキスタイルに対しカラーケア(color care)の利点を有するセルラーゼである。そのようなセルラーゼの例は、例えば、欧州特許第0495257号明細書;欧州特許第531372号明細書;国際公開第99/25846号パンフレット(Genencor International,Inc.)、国際公開第96/34108号パンフレット(Genencor International,Inc.)、国際公開第96/11262号パンフレット;国際公開第96/29397号パンフレット;および国際公開第98/08940号パンフレットに記載されているセルラーゼである。他の例は、セルラーゼ変異体(例えば、国際公開第94/07998号パンフレット;国際公開第98/12307号パンフレット;国際公開第95/24471号パンフレット;国際公開第99/01544号パンフレット;欧州特許第531 315号明細書;米国特許第5,457,046号明細書;同第5,686,593号明細書;および同第5,763,254号明細書に記載されているもの)である。市販のセルラーゼとしては、Celluzyme(登録商標)、Carezyme(登録商標)およびEndolase(登録商標)(Novozymes、以前のNovo Nordisk A/S);Clazinase(商標)およびPuradax(登録商標)HA(Genencor);ならびにKAC−500(B)(商標)(花王株式会社)が挙げられる。
【0197】
市販のマンナナーゼの例としては、MANNAWAY(商標)(Novozymes,Denmark)およびMannaStar(商標)(Genencor)が挙げられる。
【0198】
本発明の化合物は、1種以上の酵素を含有する別個の添加剤を添加することにより、またはこれらの酵素の全てを含む合わせた添加剤を添加することにより、洗剤組成物中に含まれ得る。本発明の化合物は、例えば粒質物、液体、スラリーなどとして、配合され得る。好ましい洗剤添加剤配合物は、粒質物、特に、非粉塵粒質物、液体、特に、安定化された液体、またはスラリーである。
【0199】
非粉塵粒質物は、例えば米国特許第4,106,991号明細書および同第4,661,452号明細書に開示されているように製造され得、任意選択で、当該技術分野において知られている方法によってコーティングされ得る。蝋質コーティング材の例は、1000〜20000の平均分子量を有するポリ(エチレンオキシド)製品(ポリエチレングリコール、PEG);16個〜50個のエチレンオキシド単位を有するエトキシル化ノニルフェノール;アルコールが12個〜20個の炭素原子を含有し、15個〜80個のエチレンオキシド単位が存在する、エトキシル化脂肪アルコール;脂肪アルコール;脂肪酸;ならびに脂肪酸のモノおよびジおよびトリグリセリドである。流動床技術による適用に適した皮膜形成コーティング材の例は、英国特許第1483591号明細書に示されている。液体酵素調製物は、例えば、ポリオール(例えば、プロピレングリコール)、糖もしくは糖アルコール、乳酸またはホウ酸を、確立された方法に従って添加することにより安定化され得る。保護された酵素は、欧州特許出願公開第A−238216号明細書に開示されている方法に従って調製され得る。
【0200】
本発明の洗剤組成物は、任意の好都合な形態(例えば、バー、タブレット、粉末、顆粒、ペーストまたは液体)であり得る。液体洗剤は、水性であり得、典型的に70%までの水および0〜30%の有機溶媒を含有するか、または非水性であり得る。
【0201】
洗剤組成物はまた、1つ以上のさらなる界面活性剤をも含み得、この界面活性剤は、非イオン性(半極性を含む)および/またはアニオン性および/またはカチオン性および/または双性イオン性であり得る。界面活性剤は、典型的に、0.1重量%〜60重量%のレベルで存在する。
【0202】
洗剤は、それに含まれる場合、アニオン性界面活性剤(例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩(脂肪アルコール硫酸塩)、アルコールエトキシ硫酸塩、第2級アルカンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル、アルキルもしくはアルケニルコハク酸またはセッケン)を、通常、約1%〜約40%含有する。
【0203】
洗剤は、それに含まれる場合、非イオン性界面活性剤(例えば、アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、ポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド、またはグルコサミンの他のN−アシルもしくはN−アルキル誘導体)を、通常、約0.2%〜約40%含有する。
【0204】
洗剤は、0〜65%の洗剤ビルダーまたは錯化剤(例えば、ゼオライト、ジホスフェート、トリホスフェート、ホスホネート、カーボネート、シトレート、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、アルキルもしくはアルケニルコハク酸、可溶性シリケートまたは層状シリケート(例えば、HoechstからのSKS−6)を含有し得る。
【0205】
洗剤は、1つ以上のポリマーを含み得る。例には、カルボキシメチルセルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピリジン−N−オキシド)、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリカルボキシレート(例えば、ポリアクリレート)、マレイン酸/アクリル酸コポリマーおよびラウリルメタクリレート/アクリル酸コポリマーがある。
【0206】
洗剤は、過酸形成漂白活性化剤(例えば、テトラアセチルエチレンジアミンまたはノナノイルオキシベンゼンスルホネート)と組み合され得る過酸化水素源(例えば、過ホウ酸塩または過炭酸塩)を含み得る漂白系を含有し得る。あるいは、漂白系は、例えば、アミド、イミドまたはスルホン型のペルオキシ酸を含み得る。
【0207】
本発明の洗剤組成物の1種もしくは複数種の酵素は、従来の安定化剤(例えば、ポリオール(例えば、プロピレングリコールまたはグリセロール)、糖もしくは糖アルコール、乳酸、ホウ酸、またはホウ酸誘導体(例えば、芳香族ホウ酸エステル)、またはフェニルボロン酸誘導体(例えば、4−ホルミルフェニルボロン酸))を使用して安定化され得、当該組成物は、例えば国際公開第92/19709号パンフレットおよび国際公開第92/19708号パンフレットに記載されているように配合され得る。
【0208】
洗剤はまた、他の従来の洗剤成分(例えば、粘土を含む柔軟仕上げ剤、気泡増強剤、泡抑制剤、錆止め剤、泥れ懸濁化剤、泥れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、蛍光増白剤、ヒドロトロープ、退色防止剤、または香料など)を含有し得る。
【0209】
洗剤組成物において、本発明の化合物は、洗浄液(wash liquor)1リットル当たり0.5〜25gの化合物、好ましくは洗浄液1リットル当たり0.75〜10gの化合物、特に洗浄液1リットル当たり1〜5gの化合物に相当する量で添加され得ることが、現在のところ企図される。
【0210】
洗濯用組成物におけるインサイチュでの使用
本発明の化合物は、洗濯用組成物においてインサイチュで生成され得る。
【0211】
したがって、さらなる態様において、本発明は、洗濯用組成物中での本発明の化合物のインサイチュ生成のための方法であって、当該組成物は、以下の成分:
(i)モノアシルグリセロール(上で定義され例示されるとおり)またはその活性化誘導体;
(ii)アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源(上で定義され例示されるとおり)またはその活性化誘導体;
(iii)必要であれば、非置換単糖部分の供給源(上で定義され例示されるとおり)またはその活性化誘導体;および
(iv)必要であれば、適切な触媒または活性化剤
を含み、当該方法は、当該組成物に、その組成物中にまだ存在しない成分(i)および(ii)の任意のもの、ならびに必要であれば、その組成物中にまだ存在しない(iii)および/または(iv)を添加し、それらの成分が反応するのを可能にする工程を含む、方法を提供する。
【0212】
上記の方法において、モノアシルグリセロールおよびアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源、またはその各々の活性化誘導体は、洗濯用組成物の初期成分として存在し得る。あるいは、初期に全くもしくは不十分にしかモノアシルグリセロールまたはアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源(またはその各々の活性化誘導体)が存在しない場合は、これらの成分は、組成物に添加され得る。
【0213】
非置換単糖部分の供給源(上で定義され例示されるとおり)またはその活性化誘導体は、第1の基が非置換単糖を含むオリゴ糖鎖である本発明の化合物をインサイチュで生成するために必要とされる。これは、洗濯用組成物の初期成分として存在し得る。あるいは、初期に全くもしくは不十分にしか非置換単糖源が存在しない場合は、この成分は、組成物に添加され得る。
【0214】
必要とされる場合、触媒(特に、酵素、とりわけ、トランスグリコシダーゼ酵素)が存在し得る。これは、洗濯用組成物の初期成分として存在し得る。あるいは、初期に全くもしくは不十分にしか触媒が存在しない場合は、この成分は、組成物に添加され得る。
【0215】
洗濯用組成物は、リパーゼ(E.C.3.1.1)をさらに含み得る。
【0216】
洗濯用組成物は、脂質(特に、トリグリセリドおよび/またはジグリセリドおよび/またはモノグリセリド)であり得る汚れをさらに含み得る。汚れは、表面(例えば、布帛)上にあり得る。したがって、本発明の洗濯用組成物は、表面(例えば、布帛)を含み得る。
【0217】
1つの実施形態において、洗濯用組成物は、本明細書において定義されるようなトランスグリコシダーゼ酵素と、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖供給源と、モノグリセリドを含む汚れとを含む。アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分がトランスグリコシダーゼ酵素によってモノグリセリドに転移され、本発明の化合物が生成される。
【0218】
1つの実施形態において、汚れはトリグリセリドを含み、洗濯用組成物はリパーゼをさらに含む。リパーゼによるトリグリセリドの加水分解は、モノグリセリドの供給源をもたらす。アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分がトランスグリコシダーゼ酵素によってモノグリセリドに転移されて、本発明の化合物が形成される。
【0219】
トリグリセリド、ジグリセリドまたはモノグリセリドを本発明の化合物に変換することは、脂質を含む汚れを布帛から除去するのを助け得る。
【実施例】
【0220】
実施例1:グリコシルトランスフェラーゼ反応のための基質としてのキトビオースのインビトロ調製
キトビオース基質は、低い程度のアシル化よび分子量を有する低分子量キトサンの試料から調製した。その手順は、Roncal et al.Carbohydrate Res.,342.2750−2756(2007)に記載されている。
【0221】
以下の基質を使用した:キトサンI:PrimexからのChitoclear(商標)1979。
【0222】
【表2】
【0223】
まず、1000mLの脱塩水に4.10gの酢酸ナトリウムを溶解させ、1%酢酸水溶液でpH4.5に調製することにより、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)を調製した。
【0224】
キトサン溶液:5%の選択されたキトサンを、上記の50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)に溶解させた。
【0225】
5gのキトサンを95gの緩衝液に加え、丸底ガラスフラスコ中で80℃まで加熱した。キトサンは溶解して、僅かに粘性の淡赤茶色の液体になった。溶液を40℃まで冷却し、0.05グラムのペプシン(Sigma)を加え、30分間反応させ、続いて90℃まで加熱してペプシンを不活性化する。
【0226】
N,N’−ジアセチル−キトビオース溶液(キトサンII)の調製
次いで、上記のアセテート緩衝液(pH4.5)中の5%N,N’−ジアセチル−キトビオース溶液を、5グラムのN,N’−ジアセチル−キトビオース(Sigma)を150mLガラスビーカーに入れ、80mLの緩衝液pH4.5を加えることによって調製した。この溶液を、N,N’−ジアセチル−キトビオースが溶解する80℃まで加熱した。溶液を冷却し、周囲温度で保存した。
【0227】
実施例2:実施例1の炭水化物溶液を基質として使用したグリコシルトランスフェラーゼによるモノグリセリドのインビトログリコシル化
C10ベースのモノグリセリド(グリセロールモノデカノエート、CAS No.26402−22−2)を、緩衝液ベースのインビトロ系において、トランスグリコシダーゼ反応のための受容体基質として試験する。
【0228】
調製:
モノデカノエート溶液:アセテート緩衝液(pH6.0)中の20%モノデカノエート
80gの緩衝液pH6.0を150mLのガラスビーカーに入れ、40〜44℃まで加熱し、20gの融解したグリセロールモノデカノエート(Danisco A/S)を加えた。このモノデカノエートを、20秒間Ultra Turaxを使用して水に分散させた。10グラムのモノグリセリド分散体を12×20mLホイートンガラス器(wheaton glass)に入れ、表2に従って処理する。
【0229】
【表3】
【0230】
表2において、使用したトランスグリコシダーゼ酵素は、Accellerase BG(3500 U/mL)として市販されている、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)由来のβ−グルコシダーゼであった。3500Uのこの酵素を使用した。
【0231】
これらのガラス器を、磁気攪拌および温度制御を備えた加熱ブロックに入れ、45℃まで加熱した。各ガラス器に炭水化物溶液の最初の部分を加え、100UのAccellerase BG(ロット16011709444)酵素溶液の添加により反応を開始し、45℃にて攪拌しながらインキュベートした。18時間後および26時間後に炭水化物溶液のさらなる部分を反応ガラス器に加えて、確実に反応混合物中の平衡が糖脂質形成に有利に働くようにした。48時間後に反応ガラス器を90℃の水浴中で2分間加熱処理して、酵素を不活性化した。25℃まで冷却し、1.5mLの試料を各反応ガラス器から取り出した。この試料を凍結乾燥により乾固させた。2mgの各試料を、100μLのクロロホルム/メタノール/水/蟻酸(50/50/10/0.5)中に懸濁させた。200μLのH2Oを添加し、試料混合物を激しく振盪させ、2つの液相を遠心分離により分離した。ポジティブモードでのエレクトロスプレーイオン化質量分析とオンラインで連結された逆相高速液体クロマトグラフィ(HPLC/ESP−MS)を使用して、液体クロマトグラフィ−質量分析(LC−MS)により、上相(H2O/メタノール)を可能性のある標的生成物について分析した。カラムはC18カラムであり、勾配は水/アセトンに基づいた。酢酸ナトリウムを、ポジティブモードでの付加物形成のために加えた。以下に示される標的アミノグリコシルおよびN−アシルアミノグリコシルモノグリセリド(化合物1および2)の形成、ならびにモノガラクトシルモノグリセリド(参照化合物1)を、MS/MSスペクトル分析により確認した(図1〜4参照)。
【0232】
【化7】
化合物1:3−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−1−n−デカノイルグリセロール
MW:407.50グラム/モル
【0233】
【化8】
化合物2:3−O−(2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−1−n−デカノイルグリセロール
MW=449.54グラム/モル
【0234】
【化9】
参照化合物1:1−O−(D−ガラクトピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール
【0235】
【表4】
【0236】
実施例3および4:3−O−グルコサミニル−1−n−オクタデカノイルグリセロールの化学合成
実施例3:
化合物3を、以下のスキーム4に従って作製した。
【化10】
スキーム4において、「Bn」はベンジルである。
【0237】
中間体1:2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシルクロリド
この化合物は、例えば“Best Synthetic Methods:Carbohydrates”,Elsevier Science Ltd.2003,pp69−80に記載されているような、文献手順に従って、N−アセチル−D−グルコサミンから調製した。
【0238】
中間体2:1−O−(2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル)−2−O−ベンジル−グリセロール
中間体1の化合物(8g)を、磁気攪拌機、乾燥管付き冷却器および温度計を備えた500mLの三つ口丸底フラスコに計り入れた。この化合物をCH2Cl2(250mL)に溶解し、モレキュラーシーブ(4Å、2g)、2−O−ベンジル−グリセロール(4.8g)およびZnCl2(1.8g)を加えた。この溶液を一晩還流させ、室温まで冷却した。反応混合物を、NaHCO3(飽和水溶液、2×200mL)および水(200mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。生成物を、カラムクロマトグラフィにより精製した。中間体2の構造を、1H−NMR、13C−NMRおよびポジティブモードでの注入エレクトロスプレー−MSにより確認した(図8〜15参照)。
【0239】
中間体3:1−O−(2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル)−2−O−ベンジル−3−n−オクタデカノイルグリセロール
中間体2の化合物(0.5g)を、10mLの乾燥CHCl3に溶解させ、60mgのピリジンを加え、0℃まで冷却した。0.21gのn−オクタデカノイルクロリドを、10mLの乾燥CHCl3に溶解させ、温度を0℃で維持しながら1時間の間に反応物に滴下した。この反応を、室温にて24時間継続させる。3mLの水を反応混合物に加え、分離した。有機相を、NaHCO3(飽和水溶液、2×3mL)および水(3×2mL)で洗浄した。有機相を、MgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。
【0240】
中間体3の構造を、1H−NMR、13C−NMRおよびポジティブモードでの注入エレクトロスプレー−MSにより確認した(図16〜18参照)。
【0241】
中間体4:1−O−(2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル)−3−n−オクタデカノイルグリセロール
中間体3の化合物におけるベンジル保護基は、Eur.J.Org.Chem.,2006,4,978−985に記載されている標準的な手順に従う水素化により除去し得る。
【0242】
化合物3:1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル)−3−n−オクタデカノイルグリセロール
中間体4の糖部分上のアセチル保護基の除去は、J.Agric.Food Chem.2008,56,6691−6700に記載されている手順に従って、加ヒドラジン分解により達成され得ることが予想される。
【0243】
実施例4:
化合物3の代替的な合成を、以下のスキーム5に示す。
【化11】
スキーム5において、「Bn」はベンジルである。
【0244】
中間体5:2−アセトアミド−1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノース
この化合物は、例えば“Best Synthetic Methods:Carbohydrates”,Elsevier Science Ltd.2003,pp69−80に記載されているような、文献手順に従って、D−グルコサミン塩酸塩から調製した。
【0245】
中間体3:1−O−(2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル)−2−O−ベンジル−3−n−オクタデカノイルグリセロール
H2SO4−シリカを、濃H2SO4(1mL)を乾燥Et2O(50mL)中のシリカゲル(10g)のスラリーに加えることによって調製し、このスラリーを5分間振盪させた。溶媒を減圧下で蒸発させると、易流動性のH2SO4−シリカが結果として得られ、これを一晩110℃で乾燥させた。
【0246】
中間体5の化合物、2−ベンジル−1−n−オクタデカノイルグリセロールおよびH2SO4−シリカを、乾燥CHCl3に溶解させ、この反応混合物を、加熱して還流させた。およそ4時間後に、反応混合物を室温まで冷却し、Celite(登録商標)に通して濾過した。生成物を、カラムクロマトグラフィにより精製した。中間体3の構造を、1H−NMR、13C−NMRおよびポジティブモードでの注入エレクトロスプレー−MSにより確認した(図16〜18参照)。
【0247】
中間体4:1−O−(2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル)−3−n−オクタデカノイルグリセロール
および
化合物3:1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル)−3−n−オクタデカノイルグリセロール
脱保護は、実施例3について上で記載したようにして達成されることが予想される。
【0248】
上記の明細書において言及された全ての文献は、参照により本明細書に援用される。記載された本発明の方法およびシステムの、本発明の範囲および精神から逸脱することのない、種々の修正および変更が、当業者には明らかであろう。本発明を特定の好ましい実施形態に関して記載してきたが、特許請求の範囲に記載された発明が、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際は、記載された発明を実施するための形態の、化学、生化学およびバイオテクノロジーまたは関連分野における当業者にとっては明らかな種々の修正は、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【0249】
本発明の態様を、以下の番号付けされた項において定義する。
【0250】
1.O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2−アシルアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシルモノアシルグリセロール以外の、式(I):
【化12】
の化合物であって、式中:
R1、R2およびR3から選択される第1の基は、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個はアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分であるオリゴ糖鎖であり;
R1、R2およびR3から選択される第2の基は、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であり;そして
R1、R2およびR3から選択される第3の基は、水素である、
化合物。
【0251】
2.式中:
R1およびR3から選択される第1の基が、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個はアミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分であるオリゴ糖鎖であり;
R1およびR3から選択される第2の基が、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であり;そして
R2が、水素である、
第1項に記載の化合物。
【0252】
3.第1の基が、アミノ単糖部分もしくはアシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分である、第1項または第2項に記載の化合物。
【0253】
4.第1の基が、アミノヘキソース部分もしくはアシル基が2個〜4個の炭素原子を有するN−アシルアミノヘキソース部分である、第3項に記載の化合物。
【0254】
5.アミノもしくはN−アシルアミノ基が、ヘキソース部分の2位に存在する、第4項に記載の化合物。
【0255】
6.第1の基が、グルコサミンまたはN−アセチルグルコサミンから選択される、第5項に記載の化合物。
【0256】
7.第2の基が、6個〜24個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基である、第1項〜第6項のいずれか一項に記載の化合物。
【0257】
8.第2の基が、8個〜18個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基である、第7項に記載の化合物。
【0258】
9.第2の基が、n−デカノイル、n−ドデカノイル、n−テトラデカノイル、n−ヘキサデカノイル、n−オクタデカノイル、シス−オクタデカ−9−エノイル(オレイル)、シス,シス−9,12−オクタデカジエノイル(リノレイル)またはシス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレニル)である、第8項に記載の化合物。
【0259】
10.1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール;1−O−(2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール;および1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−オクタデカノイルグリセロールから選択される、第1項に記載の化合物。
【0260】
11.モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体と、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源またはその活性化誘導体、および必要であれば、非置換の単糖部分の供給源またはその活性化誘導体とを、任意選択で適切な触媒または活性化剤の存在下で、接触させる工程を含む、第1項〜第10項のいずれか一項に記載の化合物を調製する方法。
【0261】
12.触媒または活性化剤が、トランスグリコシダーゼ酵素である、第11項に記載の方法。
【0262】
13.モノアシルグリセロールのアシル部分が、6個〜24個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基である、第11項または第12項に記載の方法。
【0263】
14.モノアシルグリセロールのアシル部分が、8個〜18個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基である、第13項に記載の方法。
【0264】
15.モノアシルグリセロールのアシル部分が、n−デカノイル、n−ドデカノイル、n−テトラデカノイル、n−ヘキサデカノイル、n−オクタデカノイル、シス−オクタデカ−9−エノイル(オレイル)、シス,シス−9,12−オクタデカジエノイル(リノレイル)またはシス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレニル)である、第14項に記載の方法。
【0265】
16.モノアシルグリセロールが、1−n−デカノイル−グリセロールまたは1−n−オクタデカノイル−グリセロールである、第15項に記載の方法。
【0266】
17.アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源が、キトサン、キトビオース、もしくはそれらのうちの任意のものの、アシル基が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシル誘導体、またはそれらのうちの任意のものの混合物から選択される、第11項〜第16項のいずれか一項に記載の方法。
【0267】
18.アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源が、キトサンもしくはキトビオース、またはそれらのうちのいずれかのN−アセチル誘導体から選択される、第17項に記載の方法。
【0268】
19.トランスグリコシダーゼ酵素が、酵素分類(E.C.)3.2.1.21または3.2.1.74に分類される、第11項〜第17項のうちのいずれか一項に記載の方法。
【0269】
20.トランスグリコシダーゼ酵素が、アミノグリコシルトランスフェラーゼ酵素である、第11項〜第17項のいずれか一項に記載の方法。
【0270】
21.トランスグリコシダーゼ酵素が、β−グルコシダーゼ酵素である、第11項〜第17項のいずれか一項に記載の方法。
【0271】
22.トランスグリコシダーゼ酵素が、真菌由来のものであるか、または真菌由来のトランスグリコシダーゼ酵素と少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有する、第11項〜第21項のいずれか一項に記載の方法。
【0272】
23.トランスグリコシダーゼ酵素が、トリコデルマ属種(Trichoderma species)に由来するか、またはトリコデルマ属種(Trichoderma species)由来のトランスグリコシダーゼ酵素と少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有する、第11項〜第21項のいずれか一項に記載の方法。
【0273】
24.トランスグリコシダーゼ酵素が、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)(配列番号1)であるか、またはそれと少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有する、第11項〜第21項のいずれか一項に記載の方法。
【0274】
25.組成物中での第1項〜第10項のいずれか一項に定義されるとおりの化合物のインサイチュ生成のための方法であって、当該組成物は、以下の成分:
(i)モノアシルグリセロールであってそのアシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体;
(ii)アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供給源またはその活性化誘導体;
(iii)必要であれば、非置換の単糖部分の供給源またはその活性化誘導体;および
(iv)必要であれば、適切な触媒または活性化剤
を含み、当該方法は、当該組成物に、その組成物中にまだ存在しない成分(i)および(ii)の任意のもの、ならびに必要であれば、その組成物中にまだ存在しない(iii)および/または(iv)を添加し、それらの成分が反応するのを可能にする工程を含む、方法。
【0275】
26.第1項〜第10項のいずれか一項に定義されるとおりの化合物、または請求項10〜24のいずれか一項に定義されるとおりの方法によって製造された化合物を含む、食料または飼料。
【0276】
27.1種以上の酵素をさらに含む、第26項に記載の食料または飼料。
【0277】
28.1種以上の酵素が、プロテアーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、非マルトース生成アミラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、ラッカーゼ、および/もしくはペルオキシダーゼ、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、第27項に記載の食料または飼料。
【0278】
29.第1項〜第10項のうちのいずれか一項に定義されるとおりの化合物、または第10項〜第24項のいずれか一項に定義されるとおりの方法によって製造された化合物を含む、洗剤組成物。
【0279】
30.1種以上の酵素をさらに含む、第27項に記載の洗剤組成物。
【0280】
31.1種以上の酵素が、プロテアーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、ラッカーゼ、および/もしくはペルオキシダーゼ、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、第28項に記載の洗剤組成物。
【0281】
32.第1項〜第10項のいずれか一項に記載の化合物の、乳化剤としての使用。
【0282】
33.化合物が、1種以上の酵素と組み合わせて使用される、第32項に記載の使用。
【0283】
34.1種以上の酵素が、プロテアーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、非マルトース生成アミラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、ラッカーゼ、および/もしくはペルオキシダーゼ、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、第33項に記載の使用。
【0284】
35.第1項〜第10項のいずれか一項に記載の化合物の、界面活性剤としての使用。
【0285】
36.化合物が、1種以上の酵素と組み合わせて使用される、第35項に記載の使用。
【0286】
37.1種以上の酵素が、プロテアーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、非マルトース生成アミラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、ラッカーゼ、および/もしくはペルオキシダーゼ、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、第36項に記載の使用。
【0287】
38.第1項〜第10項のうちのいずれか一項に記載の化合物の、抗菌剤としての使用。
【0288】
39.化合物が、1種以上の酵素と組み合わせて使用される、第38項に記載の使用。
【0289】
40.1種以上の酵素が、プロテアーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、非マルトース生成アミラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、ラッカーゼ、および/もしくはペルオキシダーゼ、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、第39項に記載の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中:
R1、R2およびR3から選択される第1の基は、アミノ単糖部分もしくはN−アシルアミノ基のアシル部分が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個は上で定義されるとおりのアミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分であるオリゴ糖鎖であり;
R1、R2およびR3から選択される第2の基は、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であり;そして
R1、R2およびR3から選択される第3の基は、水素である)
の化合物を製造する方法であって、アシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体と、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供与源またはその活性化誘導体、および必要であれば、非置換の単糖部分の供与源またはその活性化誘導体とを、任意選択的に適切な触媒または活性化剤の存在下で、接触させる工程を含む、上記方法。
【請求項2】
触媒または活性化剤が、トランスグリコシダーゼ酵素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供与源が、キトサン、キトビオース、もしくはそれらのうちの任意のものの、N−アシルアミノ基のアシル部分が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシル誘導体、またはそれらのうちの任意のものの混合物から選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
トランスグリコシダーゼ酵素が、酵素分類(E.C.)3.2.1.21または3.2.1.74に分類される、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
トランスグリコシダーゼ酵素が、β−グルコシダーゼ酵素である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
トランスグリコシダーゼ酵素が、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)(配列番号1)であるか、またはそれと少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%、例えば少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
組成物において請求項1に定義されるとおりの式(I)の化合物のインサイチュ生成のための方法であって、該組成物は、以下の成分:
(i)モノアシルグリセロールのアシル部分が、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基である、該モノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体;
(ii)アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供与源またはその活性化誘導体;
(iii)必要であれば、非置換の単糖部分の供与源またはその活性化誘導体;および
(iv)必要であれば、適切な触媒または活性化剤
を含み、上記方法は、該組成物に、該組成物中にまだ存在しない成分(i)および(ii)の任意のもの、および必要であれば、該組成物中にまだ存在しない(iii)および/または(iv)を添加する工程、ならびに該成分を反応させる工程を含む、上記方法。
【請求項8】
O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2−アシルアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシルモノアシルグリセロール以外の、式(I’):
【化2】
の化合物であって、式中:
R1、R2およびR3から選択される第1の基は、アミノ基もしくはN−アシルアミノ基のアシル部分が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ基が、ヘキソース部分の2位にヒドロキシル基の代わりに存在するアミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個は上で定義されるとおりのアミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分であるオリゴ糖鎖であり;R1、R2およびR3から選択される第2の基は、3個〜40個の炭素原子を有するアルカノイル基または3個〜40個の炭素原子および1個〜5個の二重結合を有するアルケノイル基であり;そして
R1、R2およびR3から選択される第3の基は、水素である、
化合物。
【請求項9】
第1の基が、アミノヘキソース部分、またはN−アシルアミノ基のアシル部分が1〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノヘキソース部分である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
第1の基が、アミノヘキソース部分、またはN−アシルアミノ基のアシル部分が2個〜4個の炭素原子を有するN−アシルアミノヘキソース部分である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
第2の基が、8個〜18個の炭素原子を有するアルカノイル基または8個〜18個の炭素原子および1個〜3個の二重結合を有するアルケノイル基である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール;1−O−(2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール;および1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−オクタデカノイルグリセロールから選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか一項に定義されるとおりの化合物、または請求項1〜7のいずれか一項に定義されるとおりの方法によって製造された化合物を含み、任意選択的に、1つまたはそれ以上の酵素をさらに含有する、食料または飼料。
【請求項14】
請求項8〜12のいずれか一項に定義されるとおりの化合物、または請求項1〜7のいずれか一項に定義されるとおりの方法によって製造された化合物を含み、任意選択的に、1つまたはそれ以上の酵素をさらに含む、洗浄剤組成物。
【請求項15】
任意選択的に1つまたはそれ以上の酵素と組み合わせての、請求項8〜12のいずれか一項に記載の化合物の、乳化剤;界面活性剤;および/または殺菌剤としての使用。
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中:
R1、R2およびR3から選択される第1の基は、アミノ単糖部分もしくはN−アシルアミノ基のアシル部分が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ単糖部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個は上で定義されるとおりのアミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分であるオリゴ糖鎖であり;
R1、R2およびR3から選択される第2の基は、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であり;そして
R1、R2およびR3から選択される第3の基は、水素である)
の化合物を製造する方法であって、アシル部分が3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基であるモノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体と、アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供与源またはその活性化誘導体、および必要であれば、非置換の単糖部分の供与源またはその活性化誘導体とを、任意選択的に適切な触媒または活性化剤の存在下で、接触させる工程を含む、上記方法。
【請求項2】
触媒または活性化剤が、トランスグリコシダーゼ酵素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供与源が、キトサン、キトビオース、もしくはそれらのうちの任意のものの、N−アシルアミノ基のアシル部分が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシル誘導体、またはそれらのうちの任意のものの混合物から選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
トランスグリコシダーゼ酵素が、酵素分類(E.C.)3.2.1.21または3.2.1.74に分類される、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
トランスグリコシダーゼ酵素が、β−グルコシダーゼ酵素である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
トランスグリコシダーゼ酵素が、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)(配列番号1)であるか、またはそれと少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%、例えば少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
組成物において請求項1に定義されるとおりの式(I)の化合物のインサイチュ生成のための方法であって、該組成物は、以下の成分:
(i)モノアシルグリセロールのアシル部分が、3個〜40個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアシル基である、該モノアシルグリセロールまたはその活性化誘導体;
(ii)アミノもしくはN−アシルアミノ単糖部分の供与源またはその活性化誘導体;
(iii)必要であれば、非置換の単糖部分の供与源またはその活性化誘導体;および
(iv)必要であれば、適切な触媒または活性化剤
を含み、上記方法は、該組成物に、該組成物中にまだ存在しない成分(i)および(ii)の任意のもの、および必要であれば、該組成物中にまだ存在しない(iii)および/または(iv)を添加する工程、ならびに該成分を反応させる工程を含む、上記方法。
【請求項8】
O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2−アシルアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシルモノアシルグリセロール以外の、式(I’):
【化2】
の化合物であって、式中:
R1、R2およびR3から選択される第1の基は、アミノ基もしくはN−アシルアミノ基のアシル部分が1個〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノ基が、ヘキソース部分の2位にヒドロキシル基の代わりに存在するアミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分であるか、または2個〜4個の単糖部分を含みそのうちの少なくとも1個は上で定義されるとおりのアミノもしくはN−アシルアミノヘキソース部分であるオリゴ糖鎖であり;R1、R2およびR3から選択される第2の基は、3個〜40個の炭素原子を有するアルカノイル基または3個〜40個の炭素原子および1個〜5個の二重結合を有するアルケノイル基であり;そして
R1、R2およびR3から選択される第3の基は、水素である、
化合物。
【請求項9】
第1の基が、アミノヘキソース部分、またはN−アシルアミノ基のアシル部分が1〜6個の炭素原子を有するN−アシルアミノヘキソース部分である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
第1の基が、アミノヘキソース部分、またはN−アシルアミノ基のアシル部分が2個〜4個の炭素原子を有するN−アシルアミノヘキソース部分である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
第2の基が、8個〜18個の炭素原子を有するアルカノイル基または8個〜18個の炭素原子および1個〜3個の二重結合を有するアルケノイル基である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール;1−O−(2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−デカノイルグリセロール;および1−O−(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−3−n−オクタデカノイルグリセロールから選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか一項に定義されるとおりの化合物、または請求項1〜7のいずれか一項に定義されるとおりの方法によって製造された化合物を含み、任意選択的に、1つまたはそれ以上の酵素をさらに含有する、食料または飼料。
【請求項14】
請求項8〜12のいずれか一項に定義されるとおりの化合物、または請求項1〜7のいずれか一項に定義されるとおりの方法によって製造された化合物を含み、任意選択的に、1つまたはそれ以上の酵素をさらに含む、洗浄剤組成物。
【請求項15】
任意選択的に1つまたはそれ以上の酵素と組み合わせての、請求項8〜12のいずれか一項に記載の化合物の、乳化剤;界面活性剤;および/または殺菌剤としての使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2013−517762(P2013−517762A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549454(P2012−549454)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際出願番号】PCT/IB2011/050258
【国際公開番号】WO2011/089561
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(397060588)デュポン ニュートリション バイオサイエンシーズ エーピーエス (67)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際出願番号】PCT/IB2011/050258
【国際公開番号】WO2011/089561
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(397060588)デュポン ニュートリション バイオサイエンシーズ エーピーエス (67)
【Fターム(参考)】
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