説明

アリールインデノピリジンおよびアリールインデノピリミジンならびにアデノシンA2a受容体アンタゴニストとしてのそれらの使用

【化1】


本発明は、R、R、R、RおよびXが先に定義されたとおりである式(I)、(II)の新規のアリールインデノピリジンおよびアリールインデノピリミジン、ならびにアデノシンA2a受容体に拮抗することによって軽減される障害を処置するために有用である同化合物を含んでなる製薬学的組成物を提供する。また本発明は、本化合物および製薬学的組成物を使用する治療および予防方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願に対するクロス・レファレンス】
【0001】
本出願は、2002年9月27日出願の同時係属出願第10/259,139号の一部係属出願であり、これは2002年4月16日出願の同時係属出願第10/123,389号の一部係属出願であり、これら両者は引用によって本明細書に組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、新規のアリールインデノピリジンおよびアリールインデノピリミジンならびにそれらの治療および予防用途に関する。これらの化合物を用いて処置および/または予防される障害は、アデノシンA2a受容体を中和(antagonizing)することによって軽減される神経変性および運動障害を含む。
【背景技術】
【0003】
アデノシンA2a受容体
アデノシンは体内のすべての代謝活性のある細胞によって生産されるプリンヌクレオチドである。アデノシンは、Gタンパク質共役受容体スーパーファミリーに属する細胞表面受容体の4種のサブタイプ(A1、A2a、A2bおよびA3)を介してその影響を発揮する(非特許文献1)。A1およびA3は、抑制性Gタンパク質に共役するが、一方A2aおよびA2bは促進性Gタンパク質に共役する。A2a受容体は、主に、脳において、両ニューロンおよびグリア細胞(線条体および側座核において最高レベル、嗅結節、視床下部および海馬などの領域において中等ないし高レベル)において見いだされる(非特許文献2)。
【0004】
末梢組織では、A2a受容体は血小板、好中球、血管平滑筋および内皮において見いだされる(非特許文献3)。線条体は、特に黒質に始まるドーパミン作動性ニューロンからのその神経支配をとおして、運動活性の調整のための主たる脳領域である。線条体はパーキンソン病(PD)をもつ患者におけるドーパミン作動性ニューロン変性の主要標的である。線条体内で、A2a受容体はドーパミンD2受容体と共存しており、このことは脳におけるアデノシンおよびドーパミンシグナル伝達の統合のための重要部位を示唆している(非特許文献4)。
【0005】
神経化学的研究は、A2a受容体の活性化はそれらの受容体へのD2アゴニストの結合親和力を低下させることを示した。このD2RおよびA2aR受容体−受容体相互作用はラットの線条体膜調製物(非特許文献5)ならびにA2aRおよびD2RcDNAによるトランスフェクション後の繊維芽細胞系(非特許文献6)において例証された。イン・ビボでは、A2aアンタゴニストを用いるA2a受容体の薬物学的封鎖が、マウス、ラットおよびサルを含む種々の種におけるドーパミン作動性神経毒MPTP(1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン)−誘導のPDにおいて有益な効果をもたらす(非特許文献7)。さらにまた、A2a機能の遺伝的封鎖を有するA2aノックアウトマウスは、それらが神経毒MPTPに曝露された場合、運動損傷と神経化学的変化に対して比較的に鈍感になることが分かった(非特許文献8)。
【0006】
ヒトでは、アデノシン受容体アンタゴニスト・テオフィリン(theophylline)はPD患者に有益な効果を生じることが分かった(非特許文献9)。首尾一貫して、近年の疫学的研究は、高いカフェイン消費が人々のPD発生を抑えているようであることを示した(非特許文献10)。総括すれば、A2a受容体ブロッカーは新しい種類の抗パーキンソン症薬を提供するかもしれない(非特許文献11)。
【非特許文献1】Stiles,G.L.Journal of Biological Chemistry,1992,267,6451
【非特許文献2】Rosin,D.L.;Robeva,A.;Woodard,R.L.;Guyenet,P.G.;Linden,J.Journal of Comparative Neurology,1998,401,163
【非特許文献3】Gessi,S.;Varani,K.;Merighi,S.;Ongini,E.;Borea,P.A.Britissh Journal of Pharmacology,2000,129,2
【非特許文献4】Fink,J.S.;Weaver,D.R.;Rivkees,S.A.;Peterfreund,R.A.;Pollach,A.E.;Adler,E.M.;Reppert,S.M.;Brain。Research Molecular Brain Research、1992,14,186
【非特許文献5】Ferres,S;von Euler,G.;Johansson,B;Fredholm,B.B.;Fuxe,K.Proceeding of the National Academy of Sciences of the United States of America,1991,88,7238
【非特許文献6】Salim,H.;Ferres,S;Datal,A.;Peterfreund,R.A.;Fuxe,K.;Vincent,J.D.;Lledo,P.M.Journal of Neurochemistry,2000,74,432
【非特許文献7】Ikeda,K.;Kurokawa,M.;Aoyama,S.;Kuwana,Y.Journal of Neurochemistry,2002,80,262
【非特許文献8】Chen,J.F.;Xu,K.;Petzer,J.P.;Staal,R.;Xu,Y.H.;Beilstein,M.;Sonsalla,P.K.;Castagnoli,K.;Castagnoli,N.,Jr.;Schwartzchild,M.A.Journal of Neuroscience,2001,21,RC143
【非特許文献9】Mally,J.;Stone,T.W.Journal of Neurological Sciences,1995,132,129
【非特許文献10】Ascherio,A.;Zhang,S.M.;Hernan,M.A.;Kawachi,I.;Colditz,G.A.;Speizer,F.E.;Willett,W.C.Annals of Neurology,2001,50,56
【非特許文献11】Impagnatiello,F.;Bastia,E.;Ongini,E.;Monopoli,A.Emerging Therapeutic Targets,2000,4,636
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、下記式IまたはIIの構造を有する化合物またはその製薬学的に許容されうる塩を提供する。
【0008】
【化1】

【0009】
上式中、
(a)R
(i)−COR[式中、RはH、場合によっては置換されるC1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、場合によっては置換されるアリールおよび場合によっては置換されるアリールアルキルであり;ここで、アルキル、アリールおよびアリールアルキル基における置換基は、C1−8アルコキシ、フェニルアセチルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、p−トシルオキシ、メシルオキシ、アミノ、シアノ、カルボアルコキシ、またはNR(式中、RおよびRは水素、C1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、C3−7シクロアルキル、ベンジル、アリールまたはヘテロアリールからなる群から独立して選ばれるか、あるいはNRは一緒になって複素環またはヘテロアリールを形成する)から選ばれる];
(ii)COOR[式中、Rは先に定義されたとおりである];
(iii)シアノ;
(iv)−CONR10[式中、RおよびR10はH、C1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、C3−7シクロアルキル、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アルキルカルボニル、カルボキシル、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから独立して選ばれ;ここでアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルカルボニル、カルボキシル、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリル基は、カルボキシル、アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヒドロキザム酸、スルホンアミド、スルホニル、ヒドロキシ、チオール、アミノ、アルコキシまたはアリールアルキルによって置換されていてもよく、あるいはRおよびR10はそれらが結合されている窒素と一緒になって複素環またはヘテロアリール基を形成する];
(v)場合によっては置換されるC1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル[ここで、アルキル基における置換基は、C1−8アルコキシ、フェニルアセチルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、p−トシルオキシ、メシルオキシ、アミノ、シアノ、カルボアルコキシ、カルボキシル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、スルホニル、チオール、アルキルチオ、またはNR(式中、RおよびRは先に定義されたとおりである)から選ばれる]からなる群から選ばれ;
(b)Rは、場合によっては置換されるアルキル、場合によっては置換されるアリール、場合によっては置換されるヘテロアリール、場合によっては置換されるヘテロシクリルおよび場合によっては置換されるC3−7シクロアルキル、C1−8アルコキシ、アリールオキシ、C1−8アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アリールチオ、C1−8アルキルチオ、あるいは−NR2425[式中、R24およびR25は、H、C1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、アリールアルキル、C3−7シクロアルキル、カルボキシアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから独立して選ばれるか、あるいはR24およびR25は窒素と一緒になってヘテロアリールまたはヘテロシクリル基を形成する]
からなる群から選ばれ;
(c)R
水素、ハロ、C1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、アリールアルキル、C3−7シクロアルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、C1−4カルボアルコキシ、トリフルオロメチル、C1−8アルキルスルホニル、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、トリフルオロメトキシ、C1−8カルボキシレート、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリル、−NR1112[式中、R11およびR12は、H、C1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、アリールアルキル、C3−7シクロアルキル、カルボキシアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから独立して選ばれるか、あるいはR10およびR11は窒素と一緒になってヘテロアリールまたはヘテロシクリル基を形成する]、
−NR13COR14[式中、R13は水素またはアルキルから選ばれ、そしてR14は水素、アルキル、置換アルキル、C1−3アルコキシ、カルボキシアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、R1516N(CH−またはR1516NCO(CH−(式中、R15およびR16はH、OH、アルキルおよびアルコキシから独立して選ばれ。そしてpは1〜6からの整数である)から選ばれ、ここで、アルキル基は、カルボキシル、アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヒドロキザム酸、スルホンアミド、スルホニル、ヒドロキシ、チオール、アルコキシまたはアリールアルキルによって置換されていてもよく、あるいはR13およびR14はカルボニルと一緒になってヘテロシクリル基を含有するカルボニルを形成する]
からなる群から独立して選ばれる1〜4個の基であり;
(d)Rは、水素、C1−6直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、ベンジル(ここで、アルキルおよびベンジル基は、C3−7シクロアルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、C1−4カルボアルコキシ、トリフルオロメチル、C1−8アルキルスルホニル、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、トリフルオロメトキシ、C1−8カルボキシレート、アミノ、NR1718、アリールおよびヘテロアリールから選ばれる1個以上の基により場合によっては置換されている)、−OR17および−NR1718[式中、R17およびN18は、水素および場合によっては置換されるC1−6アルキルまたはアリールから独立して選ばれる]
からなる群から選ばれ;
(e)Xは、C=S、C=O;CH、CHOH、CHOR19またはCHNR2021[式中、R19、R20およびR21は場合によっては置換されるC1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル(ここで、アルキル基における置換基は、C1−8アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、シアノから選ばれる)から選ばれる]、またはNR2223[式中、R22およびR23は、水素、C1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、C3−7シクロアルキル、ベンジル、アリール、ヘテロアリールからなる群から独立して選ばれるか、あるいはNR2223は一緒になって複素環またはヘテロアリールを形成する]
から選ばれ;
ただし、ここでRがシアノである式IIの化合物の場合。Rはフェニルではない。
【0010】
本発明はまた、本化合物および製薬学的に許容されうる担体を含んでなる製薬学的組成物を提供する。
【0011】
さらに本発明は、本製薬学的組成物の治療的に有効な用量を被験者に投与することを含む、アデノシンA2a受容体に拮抗することによって軽減される症状を有する被験者を処置する方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、被験者においてアデノシンA2a受容体に拮抗することによって軽減される障害を惹起することが予期される事象にいずれか先行または継続して、請求項1の化合物の予防的に有効な用量を被験者に投与することを含んでなる、被験者においてアデ
ノシンA2a受容体に拮抗することによって軽減される障害を予防する方法を提供する。
【0013】
式Iの化合物はアデノシンA2a受容体の強力な低分子アンタゴニストであり、これはアデノシンA2a、A1およびA3受容体の拮抗作用についての潜在力を例証した。
【0014】
の好適な態様は、Rが場合によっては置換されるC1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキルであるCOORである。好ましくは、アルキル鎖はジアルキルアミノ基によって置換される。
【0015】
の好適な態様は場合によっては置換されるヘテロアリールおよび場合によっては置換されるアリールである。好ましくは、Rは場合によっては置換されるフランである。
【0016】
の好適な置換基は水素、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、トリフルオロメチル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル鎖およびアミノアルキル鎖を含む。
【0017】
の好適な置換基はNHおよびアルキルアミノを含む。
【0018】
好適な実施態様では、化合物は以下の表1および2に示される化合物の群から選ばれる。
より好ましくは、化合物は次に示す化合物から選ばれる:
請求項1の化合物、Rがアミノである式I。
【0019】
【化2】

【0020】
2−アミノ−4−フラン−2−イル−インデノ[1,2−d]ピリミジン−5−オン
【0021】
【化3】

【0022】
2−アミノ−4−フェニル−インデノ[1,2−d]ピリミジン−5−オン
【0023】
【化4】

【0024】
2−アミノ−4−チオフェン−2−イル−インデノ[1,2−d]ピリミジン−5−オン
【0025】
【化5】

【0026】
2−アミノ−4−(5−メチル−フラン−2−イル)−インデノ[1,2−d]ピリミジン−5−オン
【0027】
【化6】

【0028】
2,6−ジアミノ−4−フラン−2−イル−インデノ[1,2−d]ピリミジン−5−
オン
【0029】
【化7】

【0030】
9H−インデノ[2,1−c]ピリジン−4−カルボニトリル,3−アミノ−1−フラン−2−イル−9−オキソ−
【0031】
【化8】

【0032】
9H−インデノ[2,1−c]ピリジン−4−カルボン酸,3−アミノ−1−フラン−2−イル−9−オキソ−,2−ジメチルアミノ−エチルエステル
【0033】
【化9】

【0034】
9H−インデノ[2,1−c]ピリジン−4−カルボン酸,3−アミノ−1−フェニル−9−オキソ−,2−ジメチルアミノ−エチルエステル
【0035】
【化10】

【0036】
9H−インデノ[2,1−c]ピリジン−4−カルボン酸,3−アミノ−1−フラン−2−イル−9−オキソ−,(2−ジメチルアミノ−1−メチル−エチル)−アミド
【0037】
【化11】

【0038】
9H−インデノ[2,1−c]ピリジン−4−カルボン酸,3−アミノ−1−フラン−2−イル−9−オキソ−,(2−ジメチルアミノ−エチル)−メチル−アミド
【0039】
【化12】

【0040】
9H−インデノ[2,1−c]ピリジン−4−カルボン酸,3−アミノ−1−フラン−2−イル−9−オキソ−,1−メチル−ピロリジン−2−イルメチルエステル
【0041】
本化合物は遊離塩基として単離され、そして使用されてもよい。それらはまた製薬学的に許容されうる塩として単離され、そして使用されてもよい。
【0042】
そのような塩の例は、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、塩化水素酸、過塩素酸、硫酸、マレイン酸、フマール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ヒドロエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、シュウ酸、パモ酸、2−ナフタレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸およびサッカリン酸との塩を含む。
【0043】
また本発明は、本化合物および製薬学的に許容されうる担体を含んでなる製薬学的組成物を提供する。
【0044】
製薬学的に許容されうる担体は当業者には周知であり、限定されるものではないが、約0.01〜約0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸バッファーまたは0.8%生理食塩水を含む。そのような製薬学的に許容されうる担体は水性または非水性溶液、懸濁液および乳濁液であってもよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、および注射可能な有機酸エステル、例えばオレイン酸エチルである、水性担体は、生理食塩水およびバッファー媒質を含む、水、エタノール、アルコール性/水性溶液、グリセロール、乳濁液または懸濁液を含む。経口担体はエリキシル剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤などであってもよい。典型的な固形担体は不活性物質、例えば、乳糖、澱粉、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、マンニトールなどである。非経口担体は塩化ナトリウム溶液、リンゲル液デキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液および不揮発油を含む。静脈内担体は液体および栄養補充物、電解質補充物、例えばリンゲル液デキストロースに基づくもの、等々を含む。例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性気体などのような補充物および他の添加物がまた存在してもよい。すべての担体は、必要に応じて崩壊剤、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤などとともに当該技術分野において既知の慣用の技術を使用して混合されてもよい。
本発明はさらに、本製薬学的組成物の治療的に有効な用量を被験者に投与することを含む、アデノシンA2a受容体に拮抗することによって軽減される症状を有する被験者を処置する方法を提供する。
【0045】
1つの実施態様では、障害は神経変性または運動障害である。本製薬学的組成物によって処置できる障害の例は、限定されるものではないが、パーキンソン病、ハンチントン病、多系統萎縮症、皮質基底(corticobasal)変性、アルツハイマー病および老人性痴呆を含む。
【0046】
1つの好適な態様では、障害はパーキンソン病である。
【0047】
本明細書で使用されるように、用語「被験者」は、限定されるものではないが、アデノシンA2a受容体に拮抗することによって軽減される障害を有するすべての動物または人為的に改変された動物を含む。好適な態様では、被験者はヒトである。
【0048】
本製薬学的組成物の投与は、当業者には既知の種々の方法のいずれを用いても実施または遂行することができる。本化合物は、例えば、静脈内、筋肉内、経口的および皮下に投与することができる。好適な態様では、本製薬学的組成物は経口的に投与される。さらに、投与は適当な期間にわたって複数の用量を被験者に与えることを含んでもよい。そのような投与管理法は日常的方法にしたがって決定できる。
【0049】
本明細書で使用されるように、製薬学的組成物の「治療的に有効な用量」は、障害の進
行を停止、逆転または低下させるのに十分な量である。製薬学的組成物の「予防的に有効な用量」は、障害を防ぐ、すなわち、障害の開始を除去、緩和および/または遅延させるのに十分な量である。本製薬学的組成物に関して治療的および予防的に有効な用量を決定する方法は当該技術分野において周知である。ヒトに対して製薬学的組成物を投与するための有効な用量は、例えば、動物研究の結果から数学的に決定することができる。
【0050】
1つの実施態様では、治療的および/または予防的に有効な用量は、本製薬学的組成物の約0.001mg/体重kg〜約200mg/体重kgを送達するのに十分な用量である。その他の実施態様では、治療的および/または予防的に有効な用量は、約0.05mg/体重kg〜約50mg/体重kgを送達するのに十分な用量である。より具体的には、1つの実施態様では、経口用量は1日当たり約0.05mg/kg〜約100mg/kgの範囲である。その他の実施態様では、経口用量は1日当たり約0.05mg/kg〜約50mg/kgの範囲であり、さらなる実施態様では、1日当たり約0.05mg/kg〜約20mg/kgの範囲である。なおその他の実施態様では、注入用量は、約数分〜約数日の範囲の期間にわたって、製薬学的担体と混合されたインヒビターの1日当たり約1.0μg/kg/min〜約10mg/kg/minの範囲である。さらなる実施態様では、局所投与の場合、本化合物は約0.001〜約0.1の薬物/担体比において製薬学的担体と組み合わされてもよい。
【0051】
定義および命名法
別に指示されない限り、この開示を通して使用される標準的命名法の下では、指定される側鎖の末端部分が最初に記述され、そして結合点に向かって隣接する官能基が続いて記述される。
【0052】
本明細書で使用されるように、次の化学用語は、次の節において記述されるような意味を有する:化学置換基に関する場合、「独立して」は、1個以上の置換基が存在する場合、置換基が同じであっても異なっていてもよいことを意味する。
【0053】
「アルキル」は直鎖、環式および分枝鎖状アルキルを意味する。別に記述しなければ、アルキル基は1〜20個の炭素原子を含有する。別に記述しなければ、アルキル基は、ハロゲン、OH,CN,メルカプト、ニトロ、アミノ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルキルチオ、C−C−アルキル−アミノ、ジ(C−C−アルキル)アミノ、(モノ−、ジ−、トリ−およびペル−)ハロ−アルキル、ホルミル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、C−C−アルキル−CO−O−、C−C−アルキル−CO−NH−、カルボキサミド、ヒドロキサム酸、スルホンアミド、スルホニル、チオール、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールのような1個以上の基により場合によっては置換されていてもよい。
【0054】
「アルコキシ」は−O−アルキルを意味し、そして別に記述しなければ、それは1〜8個の炭素原子を有する。
【0055】
用語「ビオイソステレ(bioisostere)」は、「広く類似の生物学的性質を生じる化学的および物理的性質を有する基または分子」として定義される。(Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery,M.E.Wolff,ed.Fifth Edition,Vol.1,1995,Pg.785).
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味し;「PH」または「Ph」はフェニルを意味し;「Ac」はアシルを意味し;「Bn」はベンジルを意味する。
【0056】
本明細書で使用される用語「アシル」は、単独でも置換基の一部として使用されても、
ヒドロキシル基の除去によって有機酸から誘導される2〜6個の炭素原子(分枝鎖もしくは直鎖)をもつ有機基を意味する。本明細書で使用される用語「Ac」は、単独でも置換基の一部として使用されても、アセチルを意味する。
【0057】
「アリール」もしくは「Ar」は、単独でも置換基の一部として使用されても、限定されるものではないが、フェニル、1−もしくは2−ナフチルなどを含む、炭素環式芳香族基である。炭素環式芳香族基は、ハロゲン、OH,CN,メルカプト、ニトロ、アミノ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルキルチオ、C−C−アルキル−アミノ、ジ(C−C−アルキル)アミノ、(モノ−、ジ−、トリ−およびペル−)ハロ−アルキル、ホルミル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、C−C−アルキル−CO−O−、C−C−アルキル−CO−NH−、またはカルボキサミドにより、そこの水素原子1〜5個の独立の置換によって置換されていてもよい。実例のアリール基は、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、ベンジル、ベンゾイルオキシフェニル、カルボエトキシフェニル、アセチルフェニル、エトキシフェニル、フェノキシフェニル、ヒドロキシフェニル、カルボキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、メトキシエチルフェニル、アセトアミドフェニル、トリル、キシリル、ジメチルカルバミルフェニルなどを含む。「Ph」もしくは「PH」はフェニルを指す。
【0058】
単独でも置換基の一部として使用されても、「ヘテロアリール」は、1個の環原子がS,OおよびNから選ばれる5〜10個の環原子をもつ環式の完全に不飽和な基を指し;0〜2個の環原子はS,OおよびNから独立して選ばれるさらなるヘテロ原子であり;そして残りの環原子は炭素である。この基は、環原子のいずれかを介して分子の残りの部分に結合されていてもよい。代表的なヘテロアリール基は、例えば、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、オキサジアゾリル、チエニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、イソチアゾリル、2−オキシアゼピニル、アゼピニル、N−オキソ−ピリジル、1−ジオキソチエニル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル−N−オキシド、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラニル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾジアジニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオピラニル、インダゾリル、インドリジニル、ベンゾフリル、クロモニル、クマリニル、シノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジニル、フロピリジニル(例えばフロ[2,3−c]ピリジニル、フロ[3,2−b]ピリジニルもしくはフロ[2,3−b]ピリジニル)、イミダゾピリジニル(例えばイミダゾ[4,5−b]ピリジニルもしくはイミダゾ[4,5−c]ピリジニル)、ナフチリジニル、フタラジニル、プリニル、ピリドピリジル、キナゾリニル、チエノフリル、チエノピリジル、チエノチエニルおよびフリルを含む。ヘテロアリール基は、ハロゲン、OH,CN,メルカプト、ニトロ、アミノ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルキルチオ、C−C−アルキル−アミノ、ジ(C−C−アルキル)アミノ、(モノ−、ジ−、トリ−およびペル−)ハロ−アルキル、ホルミル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、C−C−アルキル−CO−O−、C−C−アルキル−CO−NH−もしくはカルボキサミドにより、そこの1〜5個の水素原子の独立の置換によって置換されていてもよい。ヘテロアリールはモノ−オキソにより置換されて、例えば4−オキソ−1H−キノリンを生成してもよい。
【0059】
用語「複素環(heterocycle)」、「複素環式(heterocyclic)」および「ヘテロシクロ」は、例えば、少なくとも1個の炭素原子を含有する環中に少なくとも1個のヘテロ原子を有する、4〜7員の単環式、7〜11員の二環式、または10〜15員の三環式環系である、場合によっては置換されている、完全に飽和または部分的に飽和の環式基を指す。ヘテロ原子を含有する複素環式基の各環は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1,2もしくは3個のヘテロ原子を有してもよく、この場合、窒素および硫黄ヘテロ原子はまた場合によっては酸化されていてもよい。窒素原子は場合によっては第4級化されてもよい。複素環式基は、いずれのヘテロ原子もしくは炭素原子に結合されていてもよい。
【0060】
代表的な単環式複素環式基は、ピロリジニル;オキセタニル;ピラゾリニル;イミダゾリニル;イミダゾリジニル;オキサゾリル;オキサゾリジニル;イソオキサゾリニル;チアゾリジニル;イソチアゾリジニル;テトラヒドロフリル;ピペリジニル;ピペラジニル;2−オキソピペラジニル;2−オキソピペリジニル;2−オキソピロリジニル;4−ピペリドニル;テトラヒドロピラニル;テトラヒドロチオピラニル;テトラヒドロチオピラニルスルホン;モルホリニル;チオモルホリニル;チオモルホリニルスルホキシド;チオモルホリニルスルホン;1,3−ジオキソラン;ジオキサニル;チエンタニル;チイラニルなどを含む。代表的な二環式複素環式基は、キヌクリジニル;テトラヒドロイソキノリニル;ジヒドロイソインドリル;ジヒドロキナゾリニル(例えば3,4−ジヒドロ−4−オキソ−キナゾリニル);ジヒドロベンゾフリル;ジヒドロベンゾチエニル;ジヒドロベンゾチオピラニル;ジヒドロベンゾチオピラニルスルホン;ジヒドロベンゾピラニル;インドリニル;イソクロマニル;イソインドリニル;ピペロニル;テトラヒドロキノリニルなどを含む。
【0061】
置換アリール、置換ヘテロアリールおよび置換複素環は、また第2の置換アリール、第2の置換ヘテロアリールもしくは第2の渡韓複素環により置換されて、例えば4−ピラゾル−1−イル−フェニルもしくは4−ピリジン−2−イル−フェニルを生成してもよい。
【0062】
指示される炭素原子の数(例えば、C1−8)は、独立して、アルキルもしくはシクロアルキル部分における炭素原子数、またはアルキルがその前置語根(prefix root)として現れるより大きい置換基のアルキル部分を指すであろう。
【0063】
別に特定されない限り、分子中の特定の場所におけるいかなる置換基または可変物の定義も、その分子における他の場所での定義とは独立していることが意図される。本発明の化合物における置換基および置換パターンは、化学的に安定であり、そして当該技術分野において既知の技術ならびに本明細書に記述される方法によって容易に合成できる化合物を提供するために、当業者によって選択することができる。
【0064】
本発明による化合物が少なくとも1つの立体形成(stereogenic)中心を有している場合、それらはそれに応じて鏡像異性体として存在してもよい。化合物が2つ以上の立体形成中心を保持している場合、それらはそれに応じてジアステレオマーとして存在してもよい。さらにまた、本化合物の結晶型のあるものは多形として存在してもよく、そしてそれ自体本発明に包含されることを意図する。さらに、若干の化合物は水と溶媒和物(すなわち水和物)または通常の有機溶媒と溶媒和物を形成してもよく、そしてそのような溶媒和物は本発明の範囲内に包含されることをまた意図する。
【0065】
本発明の化合物のあるものは、トランスおよびシス異性体を有してもよい。さらに、本発明による化合物の製造のための方法が、立体異性体の混合物を生じる場合、これらの異性体は、慣用技術、例えば調製用クロマトグラフィーによって分離されてもよい。本化合物は、単一の立体異性体として、または若干の可能な立体異性体の混合物のようなラセミ型において調製されてもよい。非ラセミ型は合成または分割いずれによっても得ることができる。化合物は、例えば、標準技術、例えば塩形成によるジアステレオマー対の形成によってそれらの構成成分鏡像異性体に分割されてもよい。また、化合物は、キラル補助剤への共有結合と、それに続くクロマトグラフィー分離および/または結晶学的分離、そしてキラル補助剤の除去によって分割されてもよい。あるいはまた、化合物はキラルクロマ
トグラフィーを用いて分割されてもよい。
【0066】
本発明は以下に示す実験の詳細を参照して、より良子に理解できるが、これらがこれ以降に示される請求項においてより完全に記述されるように、単に本発明の具体的な説明であることを当業者は容易に評価できる。さらに、本明細書を通して種々の出版物が引用される。これらの出版物の開示は、本発明が属する当該技術分野の状態をより完全に記述するために本明細書中に引用によって組み入れられている。
【課題を解決するための手段】
【0067】
実験の詳細
1.一般的合成スキーム
本発明の代表的化合物は以下に記述され、そして次の一般的スキームにおいて具体的に説明される一般的合成方法にしたがって合成することができる。若干のスキームの生成物は1種以上の本化合物を生成するための中間体として使用できる。本発明の続く化合物を生成するために使用される中間体の選択は、十分当業者の能力内にある判断の問題である。
3a、R3b、R3cおよびR3dが独立していずれかのR基であり、かつR、R、RおよびRが前記のとおりである、スキーム1〜7に記述される手順は、本発明の化合物を製造するために使用することができる。
【0068】
置換ピリミジン1はスキーム1に示されるように製造することができる。インダノンもしくはインダンジオン2またはインデンエステル3は、アルデヒドと縮合されて置換ベンジリデン4を生成できる(Bullington,J.L.;Cameron,J.C.;Davis,J.E.;Dodd,J.H.;Harris,C.A.;Henry,J.R.;Pellegrino−Gensey,J.L.;Rupert,K.C.;Siekierka,J.J.Bioorg.Med.Chem.Lett.1998,8,2489;Petow,V.;Saper,J.;Sturgeon,B.J.Chem.Soc.1949,2134)。これは次にグアニジン炭酸塩と縮合されてインデノピリミジン1を生成する。
【0069】
【化13】

【0070】
あるいはまた、ピリミジン化合物はスキーム2に示されるように製造することができる。スルホン6がチオールエーテル5の酸化によって製造でき、そして所望のアミン7は芳香族アミンによるスルホンの処理によって得ることができる。
【0071】
【化14】

【0072】
縮合芳香族環に置換基をもつピリミジンはまた、次に示す手順(スキーム3)によって合成することができる。合成は臭化アリルによるフランのアルキル化で始まり2−アリルフランを生成する。2−アリルフランとジカルボン酸ジメチルアセチレンとのDiels−Alder反応、続く脱酸素化(Xing,Y.D.;Huang,N.Z.J.Org.Chem.1982,47,140)により、フタル酸エステル8が生成する。次いで、フタル酸エステルは酢酸エチルによるClaisen縮合を受けて、酸性処理後にスチリルインダンジオン9を得る(Buckle,D.R.;Morgan,N.J.;Ross,J.W.;Smith,H.;Spicer,B.A.J.Med.Chem.1973,16,1334)。インダンジオン9は次いでKFの存在下、二硫化炭素を用いてジメチルケテンジチオアセタール10に転化される。ジチオアセタール10に対するグリニャール試薬の添加と、続くグアニジンとの反応が、異性体混合物としてのピリミジン11を生成する。
【0073】
【化15】

【0074】
ジヒドロキシル化および酸化が芳香族アルデヒド13を生成し、これが還元的にアミノ化されてアミン14を生成する。他の異性体は類似の方式で処理できる。
【0075】
【化16】

【0076】
3−ジシアノビニルインダン−1−オン(15)(スキーム5)は公表された手順を用いて得られた(Bello,K.A.;Cheng,L.;Grifiths,J.J.Chem.Soc.,Perkin Trans.II 1987,815)。水酸化アンモニウムの存在下で3−ジシアノビニルインダン−1−オンとアルデヒドとの反応はジヒドロピリジン16を生成する(EL−Taweel,F.M.A.;Sofan,M.A.;E−Maati,T.M.A.;Elagamey,A.A.Boll.Chim.Farmac.2001,140,306)。これらの化合物は次に還流酢酸中三酸化クロームを用いて対応するピリジン17に酸化された。
【0077】
【化17】

【0078】
ピリジン17のケトンは還元されてベンジルアルコール18を生成できる。あるいはまた、ニトリルが水酸化ナトリウムにより加水分解されてカルボン酸19を得ることができる(スキーム6)。
【0079】
【化18】

【0080】
次いで、酸が種々の方法を用いてカルボン酸エステル20またはアミド21に転化できる。一般に、エステル20は炭酸銀に続く塩化アルカリによる処理か、またはシアン化ジエチルホスホリル(DEPC)と適当なアルコールによるカップリングによって得ることができる(Okawa,T.;Toda,M.;Eguchi,S.;Kakehi,A.Synthesis。1998,1467)。アミド21はDEPCまたは1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCl)の存在下カルボン酸を適当なアミンとカップリングさせることによって得られる。またエステル20は、最初にカルボン酸19をジブロモアルカンと反応させ、続いて末端ブロミドをアミンにより置換させることによって得ることができる(スキーム7)。
【0081】
【化19】

【0082】
II.特定の化合物の合成
本発明を代表する特定の化合物は次の実施例にしたがって製造することができる。これらの反応において得られる収量を最適化する試みはなされなかった。しかしながら、次の記述に基づいて、当業者は、反応時間、温度、溶媒および/または試薬における日常的変化をとおして収量を増加する方法を知っているであろう。
【0083】
ある種の合成の生成物は1種以上の本化合物を製造するための中間体として使用されてもよい。それらの場合、本発明の化合物を製造するために使用される中間体の選択は、十分当業者の能力内にある判断の問題である。
【実施例1】
【0084】
ベンジリデン4の合成
(R=2−フリル、R3a=F、R3b,R3c,R3d=H)
エタノール75mlおよび濃塩化水素3ml中、3(3.0g,11.69mmol)および2−フラルデヒド(1.17g,12.17mmol)の混合液を16時間還流下で撹拌させた。次いで反応液を室温まで冷却し、得られる沈殿物を濾別し、エタノール、ジエチルエーテルで洗浄し、そして風乾して生成物1.27g(45%)を得た。
【実施例2】
【0085】
インデノピリミジン1の合成
(R=2−フリル、R3a=F、R3b,R3c,R3d=H)
4(0.5g,2.06mmol)、グアニジン炭酸塩(0.93g,5.16mmol)、およびメタノール中0.5Mナトリウムメトキシド20.6mlの混合液を16時間還流下で撹拌した。反応混合液を室温まで冷却し、そして水で希釈した。得られる沈殿物を回収し、水、エタノール、ジエチルエーテルで洗浄し、そして乾燥した。次いで粗物質をシリカゲルで精製して生成物0.024g(4%)を得た。MSm/z 282.0(M+H).
【実施例3】
【0086】
2−アミノ−4−メタンスルホニル−インデノ[1,2−d]ピリミジン−5−オンの合成
MeOH(150ml)中、5(Austin,M.;Groth,C.;Kristen,H.;Peseke,K.;Wiechmann,C.J.Prakt.Chem.1979,321,205)(1.97g,8.10mmol)の懸濁液にHO(100ml)中オキソン(14.94g,24.3mmol)の溶液を添加した。混合液を室温で一夜撹拌し、次いで冷HO(500ml)で希釈し、KCOで塩基性にして濾過した。生成物を水およびエーテルで洗浄してスルホン6の0.88g(40%)を得た。MSm/z 297.9(M+Na).
【実施例4】
【0087】
アミノピリミジン7の合成
(R=NHPh、R=H)
N−メチルピロリジノン(3.5ml)中スルホン6(0.20g,0.73mmol)およびアニリン(0.20g,2.19mmol)の混合液を90分間100℃に加熱した。室温まで冷却後、混合液をEtOAc(100ml)で希釈し、ブライン(2x75ml)および水(2x75ml)で洗浄し、そしてNaSOで乾燥した。濾過および真空濃縮後、残渣をヘキサン中0〜50%EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製して生成物7の0.0883g(42%)を得た。MSm/z 289.0(M+H).
【実施例5】
【0088】
フタル
酸エステル8の合成
n−BuLiの1.37Mヘキサン溶液(53.6ml,73.4mmol)をフラン(5.3ml,73.4mmol)の冷却、−78℃、THF溶液(100ml)に添加し、次いで反応液を0℃に加温した。0℃で1.25時間後に生の臭化アルキル(7.9ml,91.8mmol)を少量ずつ添加した。0℃で1時間後、飽和NHCl水溶液を添加し、そして相を分離した。水相をEtOAcで抽出し、合わせた有機相を水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮して、2−アリルフラン4.6g(58%)を得て、これをさらなる精製なしに使用した。
【0089】
粗アリルフラン(4.6g,42.6mmol)およびジカルボン酸ジメチルアセチレン(5.2ml,42.6mmol)を溶媒なしの密封チューブ中で90℃に加熱した。90℃で6時間後、この材料を冷却し、ヘキサン中25%EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製して黄色オイルとしてのオキサビシクル(oxabicycle)5.8g(54%)を得た。MSm/z 251(M+H).
テトラヒドロフラン(60ml)を0℃において生のTiCl(16.5ml,150.8mmol)に滴下した。LiAlHの1.0MTHF溶液(60.3ml,60.3mmol)を滴下すると、懸濁液の色彩は黄色から暗緑色または黒色の懸濁液に変化した。トリエチルアミン(2.9ml,20.9mmol)を添加し、混合液を75〜80℃で還流させた。45分後、溶液をrtまで冷却し、オキサビシクル(5.8g,23.2mmol)のTHF溶液(23ml)を暗色溶液に添加した。rtで2.5時間後、溶液を20%KCO水溶液(200ml)中に注入し、そして得られる懸濁液を濾過した。沈殿物をCHClで数回洗浄し、濾液層を分離した。水相をCHClで抽出し、合わせた有機相を水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮し、そしてヘキサン中25%EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製して黄色オイルとしてのフタル酸エステル8の3.5g(64%)を得た。MSm/z 235(M+H).
【実施例6】
【0090】
インダンジオン9の合成
鉱油中水素化ナトリウムの60%分散液(641mg,16.0mmol)をフタル酸エステル8(2.5g,10.7mmol)のEtOAc溶液(3.5ml)に添加し、得られるスラリーを還流した。1時間後、溶液が粘稠になり、そこでさらなるEtOAcの7.5mlを添加した。還流下で4時間後、懸濁液を室温まで冷却し、濾過して黄色固
形物を得た。この固形物を80℃におけるHCl溶液(25mlの水および5mlの濃HCl)に少量づつ添加した。懸濁液を80℃でさらに30分間加熱し、室温まで冷却し、そして濾過して、黄色固体としてのインダンジオン9の1.2g(60%)を得た。MSm/z 187(M+H).
【実施例7】
【0091】
ジメチルケテンジチオアセタール10の合成
固体フッ化カリウム(7.5g,129.1mmol)をDMF(10ml)中インダンジオン9(1.2g,6.5mmol)およびCS(0.47ml,7.8mmol)の0℃溶液に添加した。冷浴を除去し、そして30分後、生のインドメタン(1.00ml,16.3mmol)を添加した。室温で5時間後、懸濁液をEtOAcで希釈し、次いで、水およびブラインで洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濃縮し、そしてヘキサン中20%EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製して黄色固体としてのジメチルケテンジチオアセタール10の1.4g(75%)を得た。MSm/z 291(M+H).
【実施例8】
【0092】
ピリミジン11の合成
(R=Ph、R3a=CHCHCH、R3d=H)
THF中PhMgClの2.0M溶液(13ml,25.7mmol)をTHF200ml中ジメチルケテンジチオアセタール10(5.7g,19.8mmol)の−78℃溶液に添加した。−78℃で3時間後、飽和NHCl水溶液を添加し、そして層を分離した。水相をEtOAcで抽出し、合わせた有機抽出液を水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮し、そしてヘキサン中20%EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製して黄色固体としてのチオエノールエーテル4.9g(77%)を得た。MSm/z 321(M+H).
固体グアニジン塩酸塩(1.5g,15.3mmol)をDMF30ml中チオエノールエーテル(4.9g,15.3mmol)およびKCO(2.6g,19.1mmol)の溶液に添加し、溶液を80℃に加熱した。80℃で6時間後、溶液をEtOAcで希釈し、水およびブラインで洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、濃縮し、そしてヘキサン中40%EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製して黄色固体としてのピリミジンレジオ異性体11の4.6g(96%)を得た。MSm/z 314(M+H).
【実施例9】
【0093】
アルデヒド13の合成
(R=Ph)
固体MeSONH(277mg,2.9mmol)をAD−mix−α(4.0g)のt−BuOH:HO(1:1)溶液(30ml)に添加した。得られる黄色溶液をピリミジン(910mg,2.9mmol)のEtOAc溶液(15ml)に添加した。3日後、固体亜硫酸ナトリウム(4.4g,34.9mmol)を添加した。1.5時間撹拌後、不均質な溶液をEtOAcで希釈し、そして層を分離した。水相をEtOAcで抽出し、合わせた抽出液を水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮し、そして100%EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製して中間体ジオール12の710mg(70%)を得た。MSm/z 348(M+H).
固体HIO−2HO(933mg,4.1mmol)をTHF中ジオール12(710mg,2.1mmol)の0℃溶液に添加した。0℃で1.5時間後、溶液をEtOAcで希釈し、有機相を飽和NaHCO水溶液、水およびブラインで洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、濃縮して黄色固体としてのアルデヒド13の603m(98%)を得て、これをさらなる精製なしに使用した。MSm/z 302(M+H).
【実施例10】
【0094】
還元的アミノ化によるアミン14の合成
(R3a=N(−CHCHOCHCH−)
固体NaBH(OAc)(53mg,0.25mmol)をTHFの1ml中アルデヒド13(50mg,0.17mmol)、モルホリン(0.034ml,0.34mmol)およびAcOH(0.014ml,0.25mmol)溶液に添加した。3日後、溶液を濾過し、濃縮した。得られる物質をCHClに溶解し、そして飽和NaHCO水溶液およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮し、そしてCHCl中0〜10%MeOHで溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製して黄色固体としてのアミン14の38mg(60%)を得た。MSm/z 373(M+H).生成物を最少量のCHClに溶解し、そしてエーテル中1.0MHClと処理して塩酸塩を得た。
【実施例11】
【0095】
ジヒドロピリジン16を形成するための環化
(R=2−フリル、R=H)
エタノール200ml中3−ジシアノビニルインダン−1−オン(4.06g,20.9mmol)の溶解に、2−フラルデヒド(3.01g,31.4mmol)および濃NHOH25mlを添加した。溶液を2時間加熱還流し、一夜室温まで放冷した。混合液を真空濃縮してエタノールを除去した。残渣を濾過し、水で洗浄した。得られた赤紫色固体を乾燥して5.92g(89%)を得た。MSm/z 290(M+1).
【実施例12】
【0096】
ジヒドロピリジン16のピリジン17への酸化
(R=2−フリル、R=H、R=NH、R=CN、X=O)
酢酸(100ml)中ジヒドロピリジン16(5.92g,20.4mmol)の還流溶液に、水12ml中酸化クローム(VI)(2.05g,20.4mmol)溶液を添加した。還流下で10分後、反応液を沈殿が形成し始めるまで水で希釈した。混合液を室温まで冷却し、濾過した。残渣を水で洗浄して褐色固体4.64g(79%)を得た。
MSm/z 288(M+1).
【実施例13】
【0097】
ケトン17のアルコール18への還元
(R=2−フリル、R=H、R=NH、R=CN、X=H,OH)
THFの12ml中ケトン17(0.115g,0.40mmol)の0℃溶液に、THF中1.0MLiAlH溶液(0.40ml,0.40mmol)を添加した。反応液を1時間0℃で撹拌した。反応を酢酸エチル(1.5ml)、水(1.5ml)、10%NaOH水溶液(1.5ml)および飽和NHCl水溶液(3.0ml)の添加によって停止させた。混合液を酢酸エチル(3x35ml)で抽出し、ブラインで洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥した。残りの溶液を濃縮して黄色固体0.083g(72%)を得た。MSm/z 290(M+1).
【実施例14】
【0098】
ニトリル17のカルボン酸19への加水分解
(R=2−フリル、R=H、R=NH、R=COOH、X=O)
ニトリル17(0.695g,2.42mmol)およびエタノール(30ml)の混合液に35%水酸化ナトリウム水溶液5mlを添加した。得られる混合液を一夜加熱還流した。室温まで冷却後、溶液を水に注入し、そして1NHClで酸性にした。得られる沈殿を濾過によって分離し、水で洗浄して褐色固体0.623g(84%)を得た。
MSm/z 329(M+23).
【実施例15】
【0099】
炭酸銀によるカルボン酸エステル20の合成
(R=2−フリル、R=H、R=NH、R=COCHCHNMe、X=O)
DMF80ml中、カルボン酸19(5.0g,16.3mmol)、炭酸銀(5.8g,21.2mmol)およびヨウ化テトラブチルアンモニウム(1.5g,4.1mmol)の懸濁液を90℃に加熱した。1時間後、混合液を室温まで冷却し、そして2−(ジメチルアミノ)エチルクロリド塩酸塩(2.4g,16.3mmol)を添加し、混合液を100℃に加熱した。7時間後、反応液を熱い間に濾過し、濃縮し、そして0〜10%MeOH/CHClで溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製して黄色固体0.160g(3%)を得た。MSm/z 378(M+1).生成物を最少量のクロロメタンに溶解し、そしてエーテル中1.0MHClと処理して塩酸塩を得た。
【実施例16】
【0100】
DEPCによるカルボン酸エステル20の合成
(R=2−フリル、R=H、R=NH、R=COCHCH(−CHCHCH(Me)N−)、X=O)
DMF(30ml)中、カルボン酸19(0.40g,1.3mmol)および(S)−1−メチル−2−ピロリジンメタノール(0.50ml,3.9mmol)の混合液に、シアン化ジエチルホスホリルの0.20ml(1.3mmol)およびトリエチルアミン(0.20ml,1.3mmol)を添加した。反応液を1時間0℃で撹拌し、次いで一夜に約70℃まで加熱した。次いで反応液を室温まで冷却し、そして酢酸エチルで希釈した。有機混合液を飽和NaHCO水溶液、水およびブラインで洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶液を濃縮した。残渣をヘキサン中10〜100%酢酸エチルで溶出するカラムクロマトグラフィーによって、次いでジクロロメタン中2%MeOHで溶出する調製用TLCによって精製して黄色固体1.9mg(0.4%)を得た。
MSm/z 404(M+1).
【実施例17】
【0101】
DEPCによるカルボン酸アミド21の合成
(R=2−フリル、R=H、R=NH、R=COCHCH(−CHCHCH(Me)N−)、X=O)
DMF(20ml)中、カルボン酸19(0.25g,0.82mmol)およびN,N,N’−トリメチルエチレンジアミン(0.14ml,1.08mmol)の混合液に、シアン化ジエチルホスホリルの0.12ml(0.82mmol)およびトリエチルアミン(0.11ml,0.82mmol)を添加した。反応液を1時間0℃で撹拌し、次いで一夜に約60℃まで加熱した。次いで反応液を室温まで冷却し、そして酢酸エチルで希釈した。有機混合液を飽和NaHCO水溶液、水およびブラインで洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶液を濃縮した。残渣をジクロロメタン中0〜10%メタノールで溶出するカラムクロマトグラフィーによって、次いでジクロロメタン中1%MeOHで溶出する調製用TLCによって精製して黄色固体3.3mg(10%)を得た。MSm/z 391(M+1).生成物を最少量のジエチルエーテルに溶解し、そしてエーテル中1.0MHClで処理して塩酸塩を得た。
【実施例18】
【0102】
EDClによるカルボン酸アミド21の合成
(R=2−フリル、R=H、R=NH、R=CON(−CHCHNMeCHCH−)、X=O)
DMF(8ml)中、カルボン酸19(0.300g,0.979mmol)、N−メチルピペラジン(0.295ml,2.94mmol)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)ー3−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.563g,2.94mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(0.397g,2.94mmol)、トリエチルアミン(0.298g,2.94mmol)の混合液を一夜室温で撹拌した。次いで混合液を水で希釈し、そして酢酸エチルで数回抽出した。合わせた有機混合液をブラインで2回洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥した。溶液を濃縮し、次いでカラムクロマトグラフィーによって精製して固体0.092g(2%)を得た。MSm/z 389(M+1).生成物をエーテル中1.0MHClで処理して塩酸塩を得た。
【実施例19】
【0103】
ジブロモアルカンによるカルボン酸エステル20の合成
(R=Ph、R=H、R=NH、R=COCHCHCHNMe、X=O)
DMF(1.5ml)中カルボン酸19(0.100g,0.32mmol)溶液に、鉱油中60%NaH分散液(0.013g,0.32mmol)を添加した。室温で10分後、1,3−ジブロモプロパン(0.035ml,0.35mmol)を添加し、この溶液を室温で17時間撹拌した。濃縮後、残渣をヘキサン中40%酢酸エチルで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して黄色固体0.014g(9%)を得た。MSm/z 437(M+1).
密封チューブ中黄色固体(0.014mg,0.03mmol)の溶液に、ジメチルアミンの40%水溶液(0.5ml,3.0mmol)を添加した。チューブを濃縮前に2時間75℃に加熱した。残渣をジクロロメタン中0〜10%メタノールで溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製して黄色固体0.009g(70%)を得た。MSm/z 402(M+1).生成物を最少量のCHClに溶解し、そしてエーテル中1NHClで処理して塩酸塩を得た。
【0104】
前記および実施例1〜19において略記された一般的合成手順にしたがって、以下の表1の化合物が製造された。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【0109】
【表5】

【0110】
【表6】

【0111】
III.生物学的アッセイおよび活性
アデノシンA2a受容体に対するリガンド結合アッセイ
アデノシンA2a受容体のリガンド結合アッセイは、ヒトA2aアデノシン受容体を含有するHEK293細胞の原形質膜(Perkin Elmer,RB−HA2a)および放射性リガンド[H]CGS21680(Perkin Elmer,NET1021)を使用して実施された。アッセイは、200μlの総容量の96穴ポリプロピレンプレートにおいて、20μlの1:20希釈された膜、[H]CGS21680を含有する130μlのアッセイバッファー(50mMTris・HCl,pH7.4、10mMMgCl、1mMEDTA)、アッセイバッファー中50μlの希釈された化合物(4x)または媒質対照を連続して添加することによって組み立てられた。非特異的な結合は80mMNECAによって決定された。反応は室温で2時間実施され、その後0.3%ポリエチレンイミンを含有する50mMTris・HCl,pH7.4中に予め浸された96穴GF/Cフィルタープレートを通して濾過された。次いで、プレートを冷50mMTris・HCl,pH7.4により5回洗浄し、乾燥し、そして底部を密閉した。ミクロシンチレーション液30μlが各ウェルに添加され、そして上部が密閉された。プレートはPackard Topcountにおいて[H]についてカウントされた。データはMicrosoft ExcelおよびGraphPad Prismプログラムにおいて解析された(Varani,K;Gessi,S.;Dalpiaz,A.;Borea,P.A.British Journal of Pharmacology,1996,117,1693)。
【0112】
アデノシンA2a受容体機能アッセイ
ヒト・アデノシンA2a受容体を過発現し、かつcAMP−誘導性β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子を含有するCHO−K1細胞が、96穴組織培養プレート中に40−50K/ウェルにおいて接種され、そして2日間培養された。アッセイ当日、細胞は200μlのアッセイ媒質(F−12栄養混合液/0.1%BSA)で1回洗浄された。アゴニストアッセイでは、続いてアゴニストA2a受容体アゴニストNECAが添加され、そして細胞は37℃、5%COにおいて5時間インキュベートされ、その後反応を停止した。アンタゴニストの場合は、細胞は室温で5分間アンタゴニストとともにインキュベートされ、続いて50nMNECAを添加された。次いで、細胞は37℃、5%COにおいて5時間インキュベートされ、その後細胞をPBSで2回洗浄することによって実験を停止した。50μlの1X溶解バッファー(Promega,5X保存溶液、使用前に1Xに希釈される必要がある)が各ウェルに添加され、そしてプレートは−20℃において凍結された。β−ガラクトシダーゼ酵素比色アッセイでは、プレートが室温で融解され、そして50μlの2Xアッセイバッファー(Promega)が各ウェルに添加された。37℃で1時間または適度なシグナルが現れるまで発色が進められた。次いで、反応は150μlの1M炭酸ナトリウムによって停止された。プレートはVmax Machine(Molecular Devices)において405nmでカウントされた。データはMicrosoft ExcelおよびGraphPad Prismプログラムにおいて解析された。(Chen,W.B.;Shields,T.S.;Cone,R.D.Analytical Biochemistry,1995,226,349;Stiles,G.Jounal of Biological Chemistry,1992,267,6451)
【0113】
C57bl/6マウスにおけるハロペリドール−誘導カタレプシーの研究
成熟オスC57bl/6マウス(9〜12週齢、ACEより)は齧歯類室において1ケージ当たり2頭が収容された。室温は64〜79度に、そして湿度は30〜70%および部屋の照明は12時間明/12時間暗の周期に維持された。研究当日、マウスは研究室に移された。マウスはハロペリドール(Sigma H1512,0.3%酒石酸中1.0mg/mlに作成され、次いで生理食塩水で0.2mg/mlに希釈された)または媒質を1.5mg/kg、7.5mg/kgにおいて皮下に注射された。次いで、マウスは水と食餌を摂取できる彼らのホームケージに入れられた。30分後、マウスは媒質(生理食塩水中0.3%Tween80)または10mg/kgにおける化合物、10ml/kg(生理食塩水中0.3%Tween80において作成され、均一な懸濁液を得るために音波処理された化合物、1mg/kg)を経口投与された。次いで、マウスは水と食餌を摂取できる彼らのホームケージに入れられた。経口投与後1時間に、カタレプシー試験が実施された。垂直の金属ワイヤー格子(1.0cm平方)が試験に使用された。マウスは格子上に置かれ、そして落ち着くまで数秒が与えられ、マウスが彼らの後ろ足を動かすまでの不動時間が記録された。マウスは格子から静かに除去され、そして格子上に戻され、彼らの不動時間が再びカウントされた。測定は3回繰り返された。3回の測定値の平均がデータ解析のために使用された。
【0114】
10mg/kgにおいて経口投与された場合、化合物70はハロペリドール誘導カタレプシーの87%の抑制を示し、化合物3は90%抑制を示した。
【0115】
【表7】

【0116】
【表8】

【0117】
【表9】

【0118】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IまたはIIの構造を有する化合物またはその製薬学的に許容されうる塩:
【化1】

上式中、
(a)R
(i)−COR[ここで、RはH、場合によっては置換されるC1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、場合によっては置換されるアリールおよび場合によっては置換されるアリールアルキルであり;かつ、上記アルキル、アリールおよびアリールアルキル基における置換基は、C1−8アルコキシ、フェニルアセチルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、p−トシルオキシ、メシルオキシ、アミノ、シアノ、カルボアルコキシ、またはNR(ここで、RおよびRは水素、C1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、C3−7シクロアルキル、ベンジル、アリールまたはヘテロアリールからなる群から独立して選ばれるか、あるいはNRは一緒になって複素環またはヘテロアリールを形成する)から選ばれる];
(ii)COOR[ここで、Rは先に定義されたとおりである];
(iii)シアノ;
(iv)−CONR10[ここで、RおよびR10はH、C1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、C3−7シクロアルキル、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アルキルカルボニル、カルボキシル、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから独立して選ばれ;かつ上記アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルカルボニル、カルボキシル、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリル基は、カルボキシル、アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヒドロキザム酸、スルホンアミド、スルホニル、ヒドロキシ、チオール、アミノ、アルコキシまたはアリールアルキルによって置換されていてもよく、あるいはRおよびR10はそれらが結合されている窒素と一緒になって複素環またはヘテロアリール基を形成する];
(v)場合によっては置換されるC1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル[ここで、アルキル基における置換基は、C1−8アルコキシ、フェニルアセチルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、p−トシルオキシ、メシルオキシ、アミノ、シアノ、カルボアルコキシ、カルボキシル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、スルホニル、チオール、アルキルチオ、またはNR(ここで、RおよびRは先に定義されたとおりである)から選ばれる]からなる群から選ばれ;
(b)Rは、場合によっては置換されるアルキル、場合によっては置換されるアリール、場合によっては置換されるヘテロアリール、場合によっては置換されるヘテロシクリルおよび場合によっては置換されるC3−7シクロアルキル、C1−8アルコキシ、アリールオキシ、C1−8アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アリールチオ、C1−8アルキルチオ、あるいは−NR2425[式中、R24およびR25は、H、C1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、アリールアルキル、C3−7シクロアルキル、カルボキシアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから独立して選ばれるか、あるいはR24およびR25は窒素と一緒になってヘテロアリールまたはヘテロシクリル
基を形成する]
からなる群から選ばれ;
(c)R
水素、ハロ、C1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、アリールアルキル、C3−7シクロアルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、C1−4カルボアルコキシ、トリフルオロメチル、C1−8アルキルスルホニル、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、トリフルオロメトキシ、C1−8カルボキシレート、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリル、−NR1112[式中、R11およびR12は、H、C1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、アリールアルキル、C3−7シクロアルキル、カルボキシアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから独立して選ばれるか、あるいはR10およびR11は窒素と一緒になってヘテロアリールまたはヘテロシクリル基を形成する]、
−NR13COR14[ここで、R13は水素またはアルキルから選ばれ、そしてR14は水素、アルキル、置換アルキル、C1−3アルコキシ、カルボキシアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、R1516N(CH−またはR1516NCO(CH−(ここで、R15およびR16はH、OH、アルキルおよびアルコキシから独立して選ばれ。そしてpは1〜6からの整数である)から選ばれ、ここで、アルキル基は、カルボキシル、アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヒドロキザム酸、スルホンアミド、スルホニル、ヒドロキシ、チオール、アルコキシまたはアリールアルキルによって置換されていてもよく、あるいはR13およびR14はカルボニルと一緒になってヘテロシクリル基を含有するカルボニルを形成する]
からなる群から独立して選ばれる1〜4個の基であり;
(d)Rは、水素、C1−6直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、ベンジル(ここで、アルキルおよびベンジル基は、C3−7シクロアルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、C1−4カルボアルコキシ、トリフルオロメチル、C1−8アルキルスルホニル、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、トリフルオロメトキシ、C1−8カルボキシレート、アミノ、NR1718、アリールおよびヘテロアリールから選ばれる1個以上の基により場合によっては置換されている)、−OR17および−NR1718[ここで、R17およびN18は、水素および場合によっては置換されるC1−6アルキルまたはアリールから独立して選ばれる]
からなる群から選ばれ;
(e)Xは、C=S、C=O;CH、CHOH、CHOR19またはCHNR2021[式中、R19、R20およびR21は場合によっては置換されるC1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル(ここで、アルキル基における置換基は、C1−8アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、シアノから選ばれる)から選ばれる]、またはNR2223[式中、R22およびR23は、水素、C1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキル、C3−7シクロアルキル、ベンジル、アリール、ヘテロアリールからなる群から独立して選ばれるか、あるいはNR2223は一緒になって複素環またはヘテロアリールを形成する]
から選ばれるが、
ただし、ここでRがシアノである式IIの化合物の場合、Rはフェニルではない。
【請求項2】
がアミノである、請求項1、式Iの化合物。
【請求項3】
がアリールまたはヘテロアリールである、請求項1、式Iの化合物。
【請求項4】
がアリールまたはヘテロアリールである、請求項1、式IIの化合物。
【請求項5】
がフリルまたは置換フリルである、請求項4の化合物。
【請求項6】
がCOOR[式中、Rは場合によっては置換されるC1−8直鎖もしくは分枝鎖状アルキルから選ばれる]である、請求項4の化合物。
【請求項7】
2−アミノ−4−フラン−2−イル−インデノ[1,2−d]ピリミジン−5−オンである、請求項1の化合物。
【請求項8】
2−アミノ−4−フェニル−インデノ[1,2−d]ピリミジン−5−オンである、請求項1の化合物。
【請求項9】
2−アミノ−4−チオフェン−2−イル−インデノ[1,2−d]ピリミジン−5−オンである、請求項1の化合物。
【請求項10】
2−アミノ−4−(5−メチル−フラン−2−イル)−インデノ[1,2−d]ピリミジン−5−オンである、請求項1の化合物。
【請求項11】
2,6−ジアミノ−4−フラン−2−イル−インデノ[1,2−d]ピリミジン−5−オンである、請求項1の化合物。
【請求項12】
9H−インデノ[2,1−c]ピリジン−4−カルボニトリル,3−アミノ−1−フラン−2−イル−9−オキソ−である、請求項1の化合物。
【請求項13】
9H−インデノ[2,1−c]ピリジン−4−カルボン酸,3−アミノ−1−フラン−2−イル−9−オキソ−,2−ジメチルアミノ−エチルエステルである、請求項1の化合物。
【請求項14】
9H−インデノ[2,1−c]ピリジン−4−カルボン酸,3−アミノ−1−フェニル−9−オキソ−,2−ジメチルアミノ−エチルエステルである、請求項1の化合物。
【請求項15】
9H−インデノ[2,1−c]ピリジン−4−カルボン酸,3−アミノ−1−フラン−2−イル−9−オキソ−,(2−ジメチルアミノ−1−メチル−エチル)−アミドである、請求項1の化合物。
【請求項16】
9H−インデノ[2,1−c]ピリジン−4−カルボン酸,3−アミノ−1−フラン−2−イル−9−オキソ−,(2−ジメチルアミノ−エチル)−メチル−アミドである、請求項1の化合物。
【請求項17】
9H−インデノ[2,1−c]ピリジン−4−カルボン酸,3−アミノ−1−フラン−2−イル−9−オキソ−,1−メチル−ピロリジン−2−イルメチルエステルである、請求項1の化合物。
【請求項18】
請求項1の化合物および製薬学的に許容されうる担体を含んでなる、製薬学的組成物。
【請求項19】
請求項1の化合物の治療的に有効な用量を被験者に投与することを含む、被験者における適当な細胞中のアデノシンA2a受容体に拮抗することによって軽減される障害を有する被験者を処置する方法。
【請求項20】
被験者における適当な細胞中のアデノシンA2a受容体を中和することによって軽減される障害を惹起することが予期される事象にいずれか先行または継続して、請求項1の化合物の予防的に有効な用量を被験者に投与することを含んでなる、被験者における適当な細胞中のアデノシンA2a受容体に拮抗することによって軽減される障害を予防する方法

【請求項21】
請求項18の製薬学的組成物の治療的または予防的に有効な用量を被験者に投与することを含んでなる、請求項19の方法。
【請求項22】
請求項18の製薬学的組成物の治療的または予防的に有効な用量を被験者に投与することを含んでなる、請求項20の方法。
【請求項23】
障害が神経変性障害または運動障害である、請求項19の方法。
【請求項24】
障害が、パーキンソン病、ハンチントン病、多系統萎縮症、皮質基底(corticobasal)変性、アルツハイマー病および老人性痴呆からなる群から選ばれる、請求項19の方法。
【請求項25】
障害が神経変性障害または運動障害である、請求項20の方法。
【請求項26】
障害が、パーキンソン病、ハンチントン病、多系統萎縮症、皮質基底変性、アルツハイマー病および老人性痴呆からなる群から選ばれる、請求項20の方法。

【公表番号】特表2007−521243(P2007−521243A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510193(P2005−510193)
【出願日】平成15年10月3日(2003.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/031471
【国際公開番号】WO2005/042500
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(598093026)オーソ−マクニール・フアーマシユーチカル・インコーポレーテツド (25)
【Fターム(参考)】