説明

アルコール検知器

【課題】アルコール検知に際して、時間的な拘束を受けることによる煩わしさを軽減することが可能なアルコール検知器を提供すること。
【解決手段】呼気吹き込み口4から吹き込まれた呼気は、一旦呼気室8内に閉じ込められるとともに、その一方で吸気口6から導入された空気は、空気室9内に閉じ込められる。そして、空気室9内に閉じ込められた空気に含まれるアルコールがアルコールセンサ31により検出される。その後、呼気室8内の呼気及び空気室9内の空気は、呼気室8と空気室9とを含む閉領域内から流出しないように配慮されつつ、該閉領域内で互いに混じり合って混合気となる。そして、このように前記閉領域内に閉じ込められた混合気に含まれるアルコールが前記アルコールセンサ31により検出される。そして、アルコールセンサ31による都合2回のアルコール検出の結果を解析することで、アルコール被験者が飲酒状態にあるか否かが特定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気中のアルコールを検出するアルコール検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲酒運転を防止するためのシステムとして、アルコール被験者が飲酒状態にあることを示唆する所定の値を超えるアルコールがアルコール検知器で検出されたとき、車両の運転を禁止するものが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
そして、こうしたシステムにおいて、アルコール検知器によるアルコール検知を行う場合、アルコール検知スイッチが操作されたことをトリガとして、まずアルコールセンサが加熱される。そして、これが完了すると、呼気吹き込み口から呼気が吹き込まれる前に、空気雰囲気中でのアルコールセンサによるアルコール検知が行われるとともに、そのセンサ出力が基準値として取得される。そして、これが完了すると、アルコール検知を促すメッセージが報知されるとともに、アルコール被験者がそのメッセージに従って、呼気吹き込み口から呼気を吹き込むと、呼気中のアルコールがアルコールセンサにより検出され、そのセンサ出力が測定値として取得される。
【0004】
そして、前記基準値が解析されることで空気中のアルコール値が特定されるとともに、前記測定値が解析されることで呼気中のアルコール値が特定され、呼気中のアルコール値から空気中のアルコール値を減じたときの差分が閾値を超えるとき、アルコール被験者が飲酒状態にあるとの判定が下されて車両の運転が禁止されるようになっている。
【特許文献1】特開昭63−53120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のアルコール検知器によるアルコール検知を行う場合、アルコール被験者がアルコール検知スイッチを操作してからアルコール検知を促すメッセージが報知されるまで待ち時間が発生する。また、こうしたメッセージが報知されてから所定の時間が経過するまでの期間内に呼気の吹き込みを開始する必要があったり、或いは呼気の吹き込み動作を所定の時間以上続ける必要があったりと、アルコール被験者は、様々な時間的な拘束を受ける。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、アルコール検知に際して、時間的な拘束を受けることによる煩わしさを軽減することが可能なアルコール検知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、呼気吹き込み口から吹き込まれた呼気に含まれるアルコールをアルコールセンサで検出するアルコール検知器において、前記呼気吹き込み口から吹き込まれた呼気が流入する呼気室と、前記呼気室に流入された呼気を該呼気室内に閉じ込める呼気流出防止用シャッタと、吸気口から導入された空気が流入する空気室と、前記空気室に流入された空気を該空気室内に閉じ込める空気流出防止用シャッタと、前記呼気室内に閉じ込められた呼気の前記空気室内への流入を許容するとともに、前記空気室内へ流入された呼気と前記空気室内に閉じ込められた空気との混合気を該呼気室と該空気室とを含む閉領域内に閉じ込める混合気流出防止用シャッタとを備え、前記空気室内に閉じ込められた空気に含まれるアルコールを前記アルコールセンサにより検出するとともに、前記閉領域内に閉じ込められた混合気に含まれるアルコールを前記アルコールセンサにより検出することをその要旨としている。
【0008】
同構成によると、呼気吹き込み口から吹き込まれた呼気は、一旦呼気室内に閉じ込められるとともに、その一方で吸気口から導入された空気は、空気室内に閉じ込められる。そして、空気室内に閉じ込められた空気に含まれるアルコールがアルコールセンサにより検出される。その後、呼気室内の呼気及び空気室内の空気は、呼気室と空気室とを含む閉領域内から流出しないように配慮されつつ、該閉領域内で互いに混じり合って混合気となる。そして、このように前記閉領域内に閉じ込められた混合気に含まれるアルコールが前記アルコールセンサにより検出される。そして、アルコールセンサによる都合2回のアルコール検出の結果を解析することで、アルコール被験者が飲酒状態にあるか否かを特定することが可能となる。
【0009】
このように、呼気が一旦呼気室内に閉じ込められてしまえば、もはやその後、アルコール被験者は呼気を吹き込む必要がない。従って、アルコール検知に際して、時間的な拘束を受けることによる煩わしさを軽減することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアルコール検知器において、前記閉領域内に閉じ込められた混合気を該閉領域内で循環させる混合気循環手段を備えていることをその要旨としている。
【0011】
同構成によると、閉領域内で混合気が循環されるので、該閉領域内のアルコール濃度が均一となる。従って、アルコールセンサによるアルコール検出の検出精度を向上できる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のアルコール検知器において、前記アルコールセンサは、前記空気室に1つのみ設けられることをその要旨としている。
【0012】
同構成によると、呼気室に第1のアルコールセンサを設けるとともに、空気室に第2のアルコールセンサを設け、合計2つのアルコールセンサを有するアルコール検知器と比較して、部品点数が削減されるため、アルコール検知器の小型軽量化に貢献できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載のアルコール検知器において、前記呼気流出防止用シャッタと前記空気流出防止用シャッタとをいずれもオープンにした状態で、前記混合気循環手段を動作させることで、前記混合気を当該アルコール検知器の外部へ排出し、次回のアルコール検知に備えることをその要旨としている。
【0014】
同構成によると、当該アルコール検知器によるアルコール検知が完了すると、次回のアルコール検知に備えて、混合気が当該アルコール検知器の外部へ排出される。このため、次回のアルコール検知が行われるに際して、前回のアルコール検知で用いられた混合気が影響することが防止される。このことは、当該アルコール検知器を衛生的に保つ意味でも有用である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
本発明によれば、アルコール検知に際して、時間的な拘束を受けることによる煩わしさを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。
図1に示されるアルコール検知器1は、飲酒運転を防止するためのシステムに供されるとともに、こうした飲酒運転防止システムは、車両ユーザが所持する電子キーと、車両側に設けられるセキュリティ装置との間でキー認証に関する双方向通信が行われる、いわゆる電子キーシステムが適用された車両に適用される。
【0017】
そして、これら2つのシステムが適用された車両では、前記キー認証を通じて、車両に適合する正規の電子キーが利用された旨がセキュリティ装置で肯定判断され、且つ当該アルコール検知器1によるアルコール検知が行われた結果、アルコール被験者が飲酒状態にないとの判定が下されたことを条件として、車両の運転が許容されるようになっている。
【0018】
アルコール検知器1は、車内に設置されるとともに、その検知器本体2の端面からは、ノズル3が突設されている。そして、ノズル3の先端には、アルコール被験者が自分の口から検知器本体2の内部へ呼気を吹き込むための呼気吹き込み口4が設けられるとともに、その呼気吹き込み口4を始端としてノズル3の内部には、呼気流路5が設けられている。また、検知器本体2の側面には、検知器本体2の外部から内部へ空気を導入するための吸気口6が設けられるとともに、その吸気口6を始端として検知器本体2の内部には、空気流路7が設けられている。
【0019】
尚、ノズル3は、アルコール被験者によって直接口付けられるものであるとともに、そのため、くわえ心地を考慮した適度な外径を有する円筒状をなしている。ここに、ノズル3は、アルコール被験者によって直接口付けられるものであるから、検知器本体2に対して着脱自在に設けることで、他人用のものから自分専用のものに付け替えできるようにし、これにより衛生面を配慮したものであってもよい。ちなみに、アルコール検知器1は、車内に設置されるものに限らず、車両ユーザ本人やその者から許可を受けた運転予定者によって前記電子キーと併せて所持されるものであってもよい。
【0020】
図2に示すように、検知器本体2の内部には、前記呼気流路5と連通するようにして呼気室8が設けられるとともに、前記空気流路7と連通するようにして空気室9が設けられている。
【0021】
呼気室8の上流側には、第1のシャッタ11が設けられるとともに、呼気室8の下流側には、第2のシャッタ12が設けられている。一方、空気室9の上流側には、第3のシャッタ13が設けられるとともに、空気室9の下流側には、第4のシャッタ14が設けられている。また、呼気室8と空気室9との間には、第5のシャッタ15及び第6のシャッタ16が設けられている。
【0022】
そして、呼気室8には、第1のプロペラ21が設けられるとともに、空気室9には、第2のプロペラ22が設けられている。また、空気室9には、アルコールを検出するためのアルコールセンサ31が設けられている。
【0023】
図3に示すように、前記第1のシャッタ11は、ドライバ11aを介してマイコン40に電気的に接続されるとともに、前記第2のシャッタ12(前記第3のシャッタ13〜前記第6のシャッタ16)は、ドライバ12a(ドライバ13a〜16a)を介してマイコン40に電気的に接続されている。また、前記第1のプロペラ21は、モータドライバ21a及びA/D変換器21bを介してマイコン40に電気的に接続されるとともに、前記第2のプロペラ22は、モータドライバ22aを介してマイコン40に電気的に接続されている。さらに、前記アルコールセンサ31は、センサドライバ31a及びヒータドライバ31bを介してマイコン40に電気的に接続されている。
【0024】
次に、アルコール検知器1により呼気中のアルコールを検出する場合の動作について説明する。尚、初期状態では、第1のシャッタ11〜第4のシャッタ14がオープン状態にあるとともに、第5のシャッタ15〜第6のシャッタ16がクローズ状態にあり、また、第1のプロペラ21〜第2のプロペラ22が回転停止状態にあり、さらに、マイコン40がスリープ状態にあるものとする。
【0025】
さて、こうした初期状態でアルコール被験者が呼気吹き込み口4から呼気を吹き込むと、図4に示すように、呼気が呼気流路5から呼気室8に流入するとともに、呼気の風圧により第1のプロペラ21が正回転する。そして、呼気は、呼気室8を通過した後、第2のシャッタ12の先に設けられた図示しない排気口から検知器本体2の外部へ排出される。
【0026】
そして、第1のプロペラ21が回転することにより、同第1のプロペラ21が発電機の役目を果たすとともに、このとき、第1のプロペラ21による発電が行われていることを示唆する信号(発電状態信号)がA/D変換器21bからマイコン40へ入力され、これによりマイコン40がウェイクアップする。
【0027】
すると、マイコン40は、モータドライバ22aを介して第2のプロペラ22を正回転させるとともに、これにより吸気口6から空気が導入され、その空気が空気流路7から空気室9に流入する。そして、空気は、空気室9を通過した後、第4のシャッタ14の先に設けられた図示しない排気口から検知器本体2の外部へ排出される。
【0028】
従って、図4に示された状態にあるとき、呼気室8は呼気で充満されるとともに、空気室9は空気で充満されることになる。
そして、マイコン40は、所定の時間に亘って連続してA/D変換器21bから発電状態信号が入力されたとき、アルコール被験者による呼気の吹き込みが適切に行われたとの判定を下す。そして、マイコン40は、このような判定を下したとき、図5に示すように、ドライバ11a〜14aを介して第1のシャッタ11〜第4のシャッタ14をクローズ状態にするとともに、モータドライバ21a〜22aを介して第1のプロペラ21〜第2のプロペラ22の回転を停止させる。また、マイコン40は、このとき、呼気の吹き込みを止めてもよい旨のメッセージを図示しない報知手段を通じてアルコール被験者に対して報知する。
【0029】
従って、図5に示された状態にあるとき、呼気は呼気室8内に閉じ込められるとともに、空気は空気室9内に閉じ込められることになる。
尚、本実施形態では、第1のシャッタ11、第2のシャッタ12、第5のシャッタ15、第6のシャッタ16により、呼気室8に流入された呼気を該呼気室8内に閉じ込める呼気流出防止用シャッタが構成されている。一方、第3のシャッタ13、第4のシャッタ14、第5のシャッタ15、第6のシャッタ16により、空気室9に流入された空気を該空気室9内に閉じ込める空気流出防止用シャッタが構成されている。
【0030】
その後、マイコン40は、ヒータドライバ31bを介してアルコールセンサ31の加熱を開始するとともに、やがて、その加熱が完了してアルコールセンサ31によるアルコール検出を適切に行える状態になると、センサドライバ31aから入力される信号を有効化する。そして、マイコン40は、その信号を解析することで、空気室9内に閉じ込められた空気中のアルコール濃度を特定するとともに、それを基準アルコール濃度として記憶する。
【0031】
その後、マイコン40は、図6に示すように、ドライバ15a〜16aを介して第5のシャッタ15〜第6のシャッタ16をオープン状態にするとともに、モータドライバ21aを介して第1のプロペラ21を正回転させ、モータドライバ22aを介して第2のプロペラ22を逆回転させる。すると、それまで呼気室8内に閉じ込められていた呼気が空気室9内へ流入するとともに、それまで空気室9内に閉じ込められていた空気が呼気室8内へ流入し、呼気室8と空気室9とを含む閉領域内で呼気と空気との混合気が循環される。
【0032】
尚、第1のシャッタ11〜第6のシャッタ16により、呼気室8内に閉じ込められた呼気の空気室9内への流入を許容するとともに、空気室9内へ流入された呼気と空気室9内に閉じ込められた空気との混合気を該呼気室8と該空気室9とを含む閉領域内に閉じ込める混合気流出防止用シャッタが構成されている。一方、第1のプロペラ21及び第2のプロペラ22により、呼気室8と空気室9とを含む閉領域内に閉じ込められた混合気を該閉領域内で循環させる混合気循環手段が構成されている。
【0033】
そして、マイコン40は、所定の時間に亘ってこのような混合気の循環を行った段階で、センサドライバ31aから入力される信号を有効化する。そして、マイコン40は、その信号を解析することで、前記閉領域内に閉じ込められた混合気中のアルコール濃度を特定するとともに、それを測定アルコール濃度として記憶する。
【0034】
そして、マイコン40は、前記測定アルコール濃度から前記基準アルコール濃度を減じたときの差分が閾値を超えないとき、アルコール被験者が飲酒状態にないとの判定を下す。そして、このような判定が下されたとき、車両の運転が許容されるために必要な条件の1つが満たされる。つまり、本実施形態では、アルコール被験者が飲酒状態にないとの判定が下され、且つ車両に適合する正規の電子キーが利用された旨が図示しないセキュリティ装置で肯定判断されたことを条件として、車両の運転が許容されるようになっている。
【0035】
一方、マイコン40は、前記測定アルコール濃度から前記基準アルコール濃度を減じたときの差分が閾値を超えるとき、アルコール被験者が飲酒状態にあるとの判定を下す。そして、このような判定が下されたとき、たとえ正規の電子キーが利用されようとも、車両の運転が禁止されるとともに、これにより飲酒運転が防止されるようになっている。
【0036】
まとめると、本実施形態のアルコール検知器1によると、呼気吹き込み口4から吹き込まれた呼気は、一旦呼気室8内に閉じ込められるとともに、その一方で吸気口6から導入された空気は、空気室9内に閉じ込められる。そして、空気室9内に閉じ込められた空気に含まれるアルコールがアルコールセンサ31により検出される。その後、呼気室8内の呼気及び空気室9内の空気は、呼気室8と空気室9とを含む閉領域内から流出しないように配慮されつつ、該閉領域内で互いに混じり合って混合気となる。そして、このように前記閉領域内に閉じ込められた混合気に含まれるアルコールが前記アルコールセンサ31により検出される。そして、アルコールセンサ31による都合2回のアルコール検出の結果を解析することで、アルコール被験者が飲酒状態にあるか否かが特定される。
【0037】
尚、アルコール検知器1によるアルコール検知が完了すると、マイコン40は、次回のアルコール検知に備えて、第1のシャッタ11〜第4のシャッタ14をオープン状態にするとともに、第5のシャッタ15〜第6のシャッタ16をクローズ状態にし、また、第1のプロペラ21〜第2のプロペラ22の回転を停止させた後、スリープ状態に戻る。
【0038】
即ち、本実施形態では、アルコール検知器1によるアルコール検知が完了すると、マイコン40は、次回のアルコール検知に備えて、第1のシャッタ11〜第4のシャッタ14をオープン状態にするとともに、第5のシャッタ15〜第6のシャッタ16をクローズ状態にする(ただし、第1のプロペラ21〜第2のプロペラ22は回転中)。そして、その後もしばらくの間は、図6に示される態様で第1のプロペラ21を正回転させるとともに、第2のプロペラ22を逆回転させたまま維持し、やがて、所定の時間が経過した段階で、第1のプロペラ21〜第2のプロペラ22の回転を停止させ、スリープ状態に戻る。
【0039】
さて、上記のように第1のプロペラ21〜第2のプロペラ22が回転されると、呼気室8側において呼気吹き込み口4から空気が導入されるとともに、空気室9側において第4のシャッタ14の先に設けられた図示しない排気口から空気が導入される。つまり、この場合、呼気吹き込み口4や第4のシャッタ14の先に設けられた図示しない排気口が吸気口として機能するとともに、検知器本体2の内部に新しい空気の流れが創り出される。
【0040】
そして、混合気が呼気室8側と空気室9側とにいわば二手に分かれて、呼気室8側において第2のシャッタ12の先に設けられた図示しない排気口から検知器本体2の外部へ混合気が排出されるとともに、空気室9側において吸気口6から検知器本体2の外部へ混合気が排出される。つまり、この場合、第2のシャッタ12の先に設けられた図示しない排気口や吸気口6が排気口として機能するとともに、検知器本体2の内部から混合気が排出される。
【0041】
そして、これがしばらくの間、つまり混合気が完全に排出されるに十分な期間に亘って行われることにより、検知器本体2の内部が乾燥させられるとともに、ひいては検知器本体2の内部が清潔(衛生的)に保たれる。つまり、検知器本体2の内部に直接的に吹き込まれる呼気は、一般的に多くの湿気を含んでおり、また、検知器本体2の内部に導入される空気についても、外部環境によっては多くの湿気を含んでいることがあり、検知器本体2の内部を乾燥させない場合には、検知器本体2の内部で結露が生じる虞があるが、本実施形態では、こうした結露が防止される。従って、本実施形態の構成によると、結露に起因する雑菌の増殖が抑制される等の効果を期待できる。
【0042】
尚、このようにして混合気が排出されることと同時に、混合気にならなかった呼気や空気、例えば、呼気流路5にわずかに残っている呼気等についても、検知器本体2の外部に排出されることから、上記のような効果が助長される。この理由は、第1のプロペラ21〜第2のプロペラ22が回転されることで、検知器本体2の内部の全体に新しい空気が行き渡り、これにより、混合気のみならず検知器本体2の内部の呼気や古い空気が確実に検知器本体2の外部へ排出されるからである。
【0043】
ちなみに、このように混合気を排出するときの第1のプロペラ21〜第2のプロペラ22の回転方向は、上記構成に限定されるものではない。即ち、第1のプロペラ21〜第2のプロペラ22をいずれも正回転させる構成、第1のプロペラ21〜第2のプロペラ22をいずれも逆回転させる構成、第1のプロペラ21を逆回転させるとともに第2のプロペラ22を正回転させる構成、のいずれを採用してもよい。
【0044】
ただし、本実施形態の構成の如く、アルコール検知器1によるアルコール検知完了直前の態様である図6に示される態様(第1のプロペラ21は正回転で第2のプロペラ22は逆回転)を継続するような構成を採用した場合、混合気を排出するに際して、わざわざ第1のプロペラ21〜第2のプロペラ22の回転方向を変えなくても済むので簡便である。
【0045】
以上、詳述したように本実施形態によれば、次のような作用、効果を得ることができる。
(1)呼気が一旦呼気室8内に閉じ込められてしまえば、もはやその後、アルコール被験者は呼気を吹き込む必要がない。従って、アルコール検知に際して、時間的な拘束を受けることによる煩わしさを軽減することができる。
【0046】
(2)呼気室8と空気室9とを含む閉領域内で混合気が循環されるので、該閉領域内のアルコール濃度が均一となる。従って、アルコールセンサ31によるアルコール検出の検出精度を向上できる。
【0047】
(3)アルコールセンサ31は、空気室9に1つのみ設けられている。このため、呼気室8に第1のアルコールセンサを設けるとともに、空気室9に第2のアルコールセンサを設け、合計2つのアルコールセンサを有するアルコール検知器と比較して、部品点数が削減されるため、アルコール検知器1の小型軽量化に貢献できる。
【0048】
(4)アルコールセンサ31の加熱が完了するまで待つことなく、好きなときに呼気を吹き込めばよい。従って、呼気を吹き込むまでの待ち時間を無くすることができる。
(5)呼気吹き込み口4から呼気が吹き込まれると、その風圧により第1のプロペラ21が回転するとともに、同第1のプロペラ21が発電機の役目を果たし、発電状態信号がマイコン40へ入力されることで、マイコン40がウェイクアップする。このため、マイコン40がウェイクアップされるまでの期間、つまりマイコン40がスリープ状態にある期間にあって、マイコン40により消費される電力を抑制することができる。
【0049】
(6)上記(4)〜(5)に関連して、呼気吹き込み口4から呼気が吹き込まれたことをトリガとして、アルコール検知器1によるアルコール検知が開始される。このため、アルコール検知を開始するために操作されるスイッチを割愛することが可能となる。従って、部品点数が削減されるため、アルコール検知器1の小型軽量化に貢献できる。
【0050】
(7)アルコール検知器1によるアルコール検知が完了すると、次回のアルコール検知に備えて、混合気がアルコール検知器1の外部へ排出される。このため、次回のアルコール検知が行われるに際して、前回のアルコール検知で用いられた混合気が影響することが防止される。このことは、アルコール検知器1を衛生的に保つ意味でも有用である。
【0051】
尚、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・アルコールセンサ31の加熱を開始するタイミングは、マイコン40がウェイクアップした直後であってもよい。このように構成すれば、呼気室8(空気室9)内に呼気(空気)が閉じ込められる間、それらと並行してアルコールセンサ31を加熱することができる。従って、アルコールセンサ31の加熱が完了するまでの時間を短縮することができ、ひいてはアルコール検知器1によるアルコール検知が完了するまでの時間を短縮することができる。
【0052】
・呼気室8の容積と空気室9の容積とは互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。いずれにせよ、それらの容積は予め分かっているので、それらを設計段階で用いて、アルコール被験者が飲酒状態にあるか否かを特定するときの閾値を設定すればよい。
【0053】
・アルコールセンサは、半導体式ガスセンサや熱線式ガスセンサのように加熱を要するものに限らず、電気化学式ガスセンサのようにヒータ加熱を必要としないものであってもよい。
【0054】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
〔1〕呼気吹き込み口から吹き込まれた呼気に含まれるアルコールをアルコールセンサで検出するアルコール検知器において、
前記呼気吹き込み口から吹き込まれた呼気が流入する呼気室と、
前記呼気室に流入された呼気を該呼気室を含む閉領域内に閉じ込める呼気流出防止用シャッタとを備え、
前記閉領域内に閉じ込められた呼気に含まれるアルコールを前記アルコールセンサにより検出することを特徴とするアルコール検知器。
【0055】
同構成によると、呼気吹き込み口から吹き込まれた呼気は、一旦呼気室を含む閉領域内に閉じ込められる。そして、このように前記閉領域内に閉じ込められた呼気に含まれるアルコールがアルコールセンサにより検出される。そして、アルコールセンサによるアルコール検出の結果を解析することで、アルコール被験者が飲酒状態にあるか否かを特定することが可能となる。
【0056】
このように、呼気が一旦呼気室を含む閉領域内に閉じ込められてしまえば、もはやその後、アルコール被験者は呼気を吹き込む必要がない。従って、アルコール検知に際して、時間的な拘束を受けることによる煩わしさを軽減することができる。
【0057】
尚、前記実施形態において第1のシャッタ11〜第6のシャッタ16は、呼気流出防止用シャッタに相当する。
〔2〕呼気吹き込み口から吹き込まれた呼気に含まれるアルコールをアルコールセンサで検出するアルコール検知器において、
前記呼気吹き込み口から吹き込まれた呼気が流入する呼気室と、
吸気口から導入された空気が流入する空気室と、
前記呼気室に流入された呼気と前記空気室に流入された空気との混合気を該呼気室と該空気室とを含む閉領域内に閉じ込める混合気流出防止用シャッタとを備え、
前記閉領域内に閉じ込められた混合気に含まれるアルコールを前記アルコールセンサにより検出することを特徴とするアルコール検知器。
【0058】
同構成によると、呼気吹き込み口から吹き込まれた呼気及び吸気口から導入された空気は、呼気室と空気室とを含む閉領域内から流出しないように配慮されつつ、該閉領域内で互いに混じり合って混合気となる。そして、このように前記閉領域内に閉じ込められた混合気に含まれるアルコールがアルコールセンサにより検出される。そして、アルコールセンサによるアルコール検出の結果を解析することで、アルコール被験者が飲酒状態にあるか否かを特定することが可能となる。
【0059】
このように、呼気が一旦呼気室と空気室とを含む閉領域内に閉じ込められてしまえば、もはやその後、アルコール被験者は呼気を吹き込む必要がない。従って、アルコール検知に際して、時間的な拘束を受けることによる煩わしさを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】アルコール検知器の外観を示す斜視図。
【図2】アルコール検知器の内部構成を示す説明図。
【図3】アルコール検知器の電気的構成を示すブロック図。
【図4】呼気室が呼気で充満されるとともに、空気室が空気で充満されている様子を示す説明図。
【図5】呼気が呼気室内に閉じ込められるとともに、空気が空気室内に閉じ込められている様子を示す説明図。
【図6】呼気室と空気室とを含む閉領域内で呼気と空気との混合気が循環されている様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0061】
1…アルコール検知器、4…呼気吹き込み口、6…吸気口、8…呼気室、9…空気室、11…第1のシャッタ(呼気流出防止用シャッタ、混合気流出防止用シャッタ)、12…第2のシャッタ(呼気流出防止用シャッタ、混合気流出防止用シャッタ)、13…第3のシャッタ(空気流出防止用シャッタ、混合気流出防止用シャッタ)、14…第4のシャッタ(空気流出防止用シャッタ、混合気流出防止用シャッタ)、15…第5のシャッタ(呼気流出防止用シャッタ、空気流出防止用シャッタ、混合気流出防止用シャッタ)、16…第6のシャッタ(呼気流出防止用シャッタ、空気流出防止用シャッタ、混合気流出防止用シャッタ)、21…第1のプロペラ(混合気循環手段)、22…第2のプロペラ(混合気循環手段)、31…アルコールセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気吹き込み口から吹き込まれた呼気に含まれるアルコールをアルコールセンサで検出するアルコール検知器において、
前記呼気吹き込み口から吹き込まれた呼気が流入する呼気室と、
前記呼気室に流入された呼気を該呼気室内に閉じ込める呼気流出防止用シャッタと、
吸気口から導入された空気が流入する空気室と、
前記空気室に流入された空気を該空気室内に閉じ込める空気流出防止用シャッタと、
前記呼気室内に閉じ込められた呼気の前記空気室内への流入を許容するとともに、前記空気室内へ流入された呼気と前記空気室内に閉じ込められた空気との混合気を該呼気室と該空気室とを含む閉領域内に閉じ込める混合気流出防止用シャッタとを備え、
前記空気室内に閉じ込められた空気に含まれるアルコールを前記アルコールセンサにより検出するとともに、前記閉領域内に閉じ込められた混合気に含まれるアルコールを前記アルコールセンサにより検出することを特徴とするアルコール検知器。
【請求項2】
請求項1に記載のアルコール検知器において、
前記閉領域内に閉じ込められた混合気を該閉領域内で循環させる混合気循環手段を備えていることを特徴とするアルコール検知器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のアルコール検知器において、
前記アルコールセンサは、前記空気室に1つのみ設けられることを特徴とするアルコール検知器。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のアルコール検知器において、
前記呼気流出防止用シャッタと前記空気流出防止用シャッタとをいずれもオープンにした状態で、前記混合気循環手段を動作させることで、前記混合気を当該アルコール検知器の外部へ排出し、次回のアルコール検知に備えることを特徴とするアルコール検知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−52952(P2009−52952A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218265(P2007−218265)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】