説明

アルミニウム含有ターゲットの製造方法

【課題】改良された物理的構造を有するスパッタリング・ターゲット及びそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】アルミニウム及び少なくとも1種の他の金属粉末を混合して粉末ブレンドを形成すること、前記粉末ブレンドを大きな力の下で圧縮して、理論密度の少なくとも50%の充填密度を有する圧縮されたブランクを得ること、使用される条件下においてブランク中に平均25%より多い金属間相を形成すると思われる温度未満の温度においてブランクを加熱すること、ブランクを圧延してブランクの理論厚さの少なくとも95%を得ること、及びブランクを適当な基材に接合することを含む、スパッタリング・ターゲットを製造する方法が提供される。この方法から製造されたスパッタリング・ターゲットも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良された物理的構造を有するスパッタリング・ターゲット及びそれらの製造方法に関する。より詳しくは、本発明はアルミニウム及び1種又は複数の他の金属を含む高性能金属スパッタリング・ターゲットを低温製造方法を使用して製造する方法及び低減された金属間相を示す得られるターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング蒸着は、プラズマ又はイオンビーム照射を使用してターゲット材料から材料を浸食又は除去し、次いで材料を基材の表面に蒸着させることにより薄膜を蒸着させる技法である。これらの蒸着方法は物理的蒸着(PVD)法として知られており、半導体産業において集積回路及び他の電子部品の製造のために最も多く使用されている。これらの半導体用途においては、ターゲットは通常精密な規格を有する高密度で高純度の二元金属化合物である。その製造方法は最終ターゲットの構造、及び最終的には電子部品上に蒸着される薄膜の特性に大きく影響を及ぼす。
【0003】
2種以上の金属元素を有するスパッタリング・ターゲットは、最終ターゲット材料を形成する前に粉末金属を溶融する又は固めるために、ダイカスト又は粉末冶金のいずれか又は両方によって、高温において商業的に製造されている。いくつかの作製方法が当技術分野において教示されており、これらの方法は通常金属粉末を型に入れること及び粉末混合物をプレス装置中で高温下の制御された雰囲気中で圧縮することを含む。これらの金属ターゲット材料は、続いて商業的使用の前に銅板などの適当な裏打ち基材に接合される。本明細書に記載するターゲットという用語は、例えば金属化合物単独又は基材に接合された金属ターゲット材料の両方の金属ターゲット材料を記述するために使用される。
【0004】
米国特許第6042777号は、選択された金属粉末をプレス装置内部でブレンドすることに続いて粉末金属をプレス装置中の高温で加熱して粉末ブレンドを合成する間に、同時に圧力を加えることによって理論密度の90%よりも大きい最終密度を達成することによって金属間スパッタリング・ターゲットを作製する方法を対象としている。かかる高温は、通常選択された金属に応じて1000℃よりも高い。米国特許第6165413号は、粉末床を熱間プレスすることによって又は金属板を振動させることによって予備圧密することによって、続いて高温で熱間静水圧プレスすることによって調製される高密度スパッタリング・ターゲットを対象としている。ここでも、使用される温度は通常1000℃よりも高い。
【0005】
しかし、これらの高温法(すなわち1000℃を超える又はさらに1500℃における)によって製造されたターゲットは、ターゲットを脆くし、加工さもなくば機械加工を困難にする金属間構造又は金属間相を含有する。かかるターゲットは高いスパッタリングエネルギーの下では亀裂を生じる傾向もあり、これらのPVD法における有効性又は耐用寿命を低減する。最後に、金属間構造又は金属間相を含有しているターゲットは、蒸着した膜と基材の間のより大きい熱膨張率の差の故に蒸着膜層中により大きい応力を導入して裏打ちしている基材からの分離又は基材への接着の低下をもたらし得る。
【0006】
本発明は、低温作製法を使用してアルミニウムを含有するスパッタリング・ターゲットを製造する改良された方法を提供する。この低温法は金属間構造又は金属間相の形成を低減し、それによってターゲットが脆性及び亀裂発生という望ましくない物理的特徴を有し難くする。さらに、本方法は、製造コストがより安く、向上した寿命を有し、スパッタリング工程の業績の向上及び、最終的には、最後の蒸着膜層の性能の向上をもたらすので、ターゲットの製造者とPVDの末端使用者の双方に経済的利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は金属アルミニウム粉末及び少なくとも1種の他の金属粉末を混合して粉末ブレンドを形成すること、粉末ブレンドを大きな力の下で圧縮して理論密度の少なくとも50%の充填密度を有する圧縮されたブランクを得ること、使用される条件下において平均25%より大きい金属間相形成をブランク中に形成すると思われる温度未満の温度においてブランクを加熱すること、加熱されたブランクを圧延してブランクの理論密度の少なくとも95%を得ること、及びブランクを適当な基材に接合することを含むスパッタリング・ターゲットを製造する方法を提供する。また、本発明の方法によって作製されたスパッタリング・ターゲットも提供される。
【0008】
これらのスパッタリング・ターゲットはアルミニウム及び1種又は複数の金属を含有し、基材に接合している金属化合物材料を含み、その中の金属化合物材料は走査型電子顕微鏡(SEM)、X線回折(XRD)パターンを使用して調べて平均約25%未満の金属間相を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】金属の及び金属間のTiAl3ターゲットの微細構造の走査型電子顕微鏡画像及びXRDパターンによる相の確認を示すグラフである。
【図2】300℃〜500℃の範囲の様々な温度においてアニールされたTiAl3混合粉末のXRDパターン解析を示すグラフである。
【図3】350℃において及び400℃において圧延されたTiAl3の微細構造の比較を示すSEM画像である。
【図4】ダイアモンド圧子を使用したTiAl3の圧痕の形態の比較を示すSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、アルミニウム及び1種又は複数の元素から作製されるスパッタリング・ターゲットの、粉末冶金を使用し、それによって金属間相が低減され、最も好ましくは実質的に回避される製造方法を提供する。本発明によれば、金属粉末を混合して均一なブレンドを形成し、この粉末ブレンドを従来のダイプレス中に入れ、圧縮してターゲット・ブランクを形成し、次いでこのブランクを、使用する金属の融点未満の温度で加熱して、金属間相の形成を実質的に回避する。加熱後、このターゲット材料を適当な裏打ち基材に接合する。
【0011】
本発明において有用な金属粉末はアルミニウム及びスパッタリング・ターゲットとしての使用及びその後のPVDによる薄膜層の蒸着工程における使用に適当な任意の金属又は金属合金を含む。金属粉末ブレンドは、機械的応力下での金属の圧縮により金属化合物が作られるように組み合わせる。圧縮工程は周囲温度又はわずかに高い温度によって行うことができ、これは温間プレスとして知られている。
【0012】
本明細書において使用される、アルミニウムと共に使用し得る適当な粉末金属は、これらだけには限定されないが、元素の周期律表において確認される金属Ti、Ni、Cr、Cu、Co、Fe、W、Si、Mo、Ta、Ru及びこれらの組合せを含む。一般的なターゲットはこれらの金属の合金又は組合せ、例えばTi―Al、Ni−Al、Cr−Al、Cu−Al、Co−Al、Fe−Alなどを含む。これらの金属化合物は、複数の金属又は金属合金をも含むことができ、本発明は2元、3元、及び4元の金属系を含む。言い換えれば、2種以上の金属のブレンド又は組合せ又は金属合金を使用し得る。Ti、Ni、Coを含有しているアルミニウムの2元金属粉末ブレンド及びTiAlx及びNiAlxなどの金属化合物を形成するこれらの合金が好ましい。式TiAlxで表される2元系であり、式中のxは約0.33〜約3.0(モル比)の数を表し、例えばTiAl、TiAl3及びTi3Alなどが最も好ましい。
【0013】
本発明において使用される金属粉末は、約0.5μm〜約150μmにわたる平均粒子サイズを有するが、選択される金属又は金属合金の特性に応じてより大きい粒子サイズも本明細書において使用され得る。好ましいのは1〜100μmにわたる平均粒子サイズを有する粉末である。
【0014】
使用されるそれぞれの金属粉末の量は、最終の望まれる組成物に依存し、原子のパーセント(%)で約25%〜約75%で変化し得る。モル比は具体的な所望の化合物に基づいて、例えば最終のTiAl3構造を得るためには1モルのチタンと3モルのアルミニウム又は最終のTiAl構造を得るためには1モルのチタンと1モルのアルミニウムなどを選択し得る。
【0015】
金属粉末は従来の混合装置例えばボールミル又はチューブラーブレンダーなどを使用して混合し、プレス装置に入れて、粉末ブレンドに圧縮力を加える。混合ステップは実質的に均一な混合物を達成するに足る時間、通常は約1〜約20時間行われる。一般的に利用可能なプレス装置はどれでも、粉末床に加えられる圧力が少なくとも平方インチ当たり0.5キロポンド(ksi)すなわち平方センチメートル当たり約35キログラムを及ぼすことができるならば使用され得る。金属粉末ブレンドをグラファイト・ダイモールド又は低炭素鋼ダイモールドなどのダイモールドに入れ、次いで周囲温度下で圧縮する。或いは、熱間静水圧プレス法を使用し得るが、この場合の温度は粉末合成及び金属間相の形成を開始させる温度、通常450℃より高くはしない。
【0016】
金属粉末ブレンドを圧縮ダイに装填した後、冷間又は温間プレス法を使用して圧縮する。例えば、これは室温で冷間静水圧プレスを使用して約15ksi〜約60ksiの間の圧力を加えることによって又は温間法で約200℃〜約450℃の温度において一軸プレスを使用して約0.5ksi〜約4ksiの圧力を加えることによって、両方とも従来知られているように圧縮される。温間プレスは好ましくは真空環境下で行われ、プレス機の真空は圧縮室を加熱する前に少なくとも0.0001Torrまで引く。一般に、圧力を、少なくとも1〜10時間、好ましくは約5時間ダイに加える。得られた圧縮されたターゲット・ブランクは、理論密度の50%より高く、好ましくは理論密度の約60%〜約99%の密度を有する。
【0017】
次いで、ターゲット・ブランクを低炭素鋼の固定器具又は適当な金属カプセルなどの気体放出管と溶接された密封容器に入れる。気体放出管を密封する前に容器中の真空を100Torr未満に引き、容器を使用する条件下に置いて、平均25%より多い金属間相をブランク中で形成すると思われる温度より低い温度、好ましくは450℃未満、より好ましくは200℃〜400℃の間、最も好ましくは300℃〜350℃の間で、ターゲット・ブランクの温度が確実に安定するのに十分な時間予熱する。予熱されたターゲット・ブランクは、次いでブランクの厚さを適当な量だけ低減してブランクの理論密度の少なくとも95%の密度、好ましくは97%を超える、最も好ましくは約99%の密度を得るために、圧延、鍛造、熱間静水圧プレス又は他の知られている技法などの従来の手段によって圧縮される。好ましくは、ブランクはまだ高温にある間に圧延する。したがって、得られるターゲット・ブランクは平均25%未満の金属間相を、好ましくは平均10%未満の金属間相を有する。ターゲット・ブランク中に生じる温度を利用することが最も好ましく、最終のターゲットは、使用条件下において実質的に金属間構造を含まない。
【0018】
理論密度の約95%〜約99%は、予熱したブランクを圧延又は鍛造して少なくとも50%の厚さの減少を得ることによって、200℃よりも高い温度、好ましくは300℃〜450℃の間の温度において達成し得る。約450℃より上ではAlTi材料について、ターゲット材料の平均25%超など顕著な金属間相が観察される。実質的に金属間相を含まないTi/Alターゲットのために最も好ましい温間プレス・ステップの温度は400℃未満である。
【0019】
本方法によって製造されるスパッタリング・ターゲットは、先行の熱間プレス法から製造されたスパッタリング・ターゲットと比較すると、結晶性配向中に顕著な量の金属間相を含有しない金属化合物である。熱間プレス法においては金属が合成される間の圧縮ステップの前に又は圧縮ステップの間のいずれかにおいて450℃よりも高い温度が通常使用される。金属間構造は、固溶体中のように2種以上の元素金属の連続的に可変な割合によってよりも、むしろ組織的な結晶パターン中の2種以上の元素金属の限定された割合で構成されている。これらの化合物は、1種の金属の少なくとも1種の他の金属中への拡散の結果であり、このとき第1の金属が相変化を示して金属間の相互拡散をもたらす。論じたように、得られる化合物はより脆く、結晶構造は個々の金属の結晶構造とは異なることが観察される。本明細書で使用する金属間相は、アルミニウム及び1種又は複数の金属元素を含有している固体構造又は相を意味することを意図し、その固体構造の結晶構造は個々の構成金属の結晶構造とは異なり、微細構造はSEMで調べると単一相を示す。図1は、SEM及びXRDパターンで調べて金属間TiAl及び金属TiAlの間で微細構造を比較している。サンプルは、冷間プレスし続いて300℃で温間圧延することにより作製した。金属間TiAlは正方結晶構造、TiAl、を示しており、金属TiAlはTiに対する六方最密結晶構造及びAlに対する面心立方結晶構造を示している。SEMはより均一な明るいグレー色のパターンによって示されるかなりの金属間相形成の存在を例示している。
【0020】
対応するXRDパターンを調べて1モルのTiと3モルのAlを含有している金属粉末混合物が加熱後にTiAl3構造を形成するかどうかを調べた。圧縮ステップをシミュレートするために粉末ブレンドのサンプルを密封容器中で300℃、350℃、400℃、450℃、500℃の温度で4時間加熱した。それぞれのサンプルを取り出してXRDパターンを比較することによって調べた。図2は、周囲温度で冷間プレスされた、及び500℃までの確認された様々な温度においてプレスされたサンプルからのXRDパターンの変化を示している。約350℃まで加熱したサンプルについてはTi及びAl金属相だけが検出された。400℃ではTiAl(103)の小さなピーク強度が検出された。TiAl(103)のピーク強度のより大きな増加は450℃で加熱したサンプルについて観察された。XRDの結果は、金属間相が450℃〜500℃の間の温度においてターゲット材料の平均25%を超える大きな量で生成されることを示している。
【0021】
上記で説明した通り、ターゲット構造中の金属間構造又は相の存在は、かかる相がターゲットを脆くかつ機械加工、切断又は他の加工ステップの間に亀裂を生じやすくする傾向があるので、望ましくない。したがって、使用する温度を制御してターゲットの製造中に起こる金属間相形成の程度又は範囲を制限することが望ましい。ある程度の金属間相形成が本発明のターゲット中に存在し得るとしても、これをターゲット構造全体の平均約25%未満の量に制限することが好ましい。金属間相形成の程度はターゲット材料のXRDパターン及びSEM画像を調べることによって決定される。XRD測定によって導かれる金属間相形成パーセントは、500倍の拡大率で撮られたSEM画像によって観察された微細構造の考察によって確認される。図3は、それぞれ350℃及び400℃において圧延されたTiAl3の微細構造を、500倍の拡大率で撮影されたSEMとして示している。金属間構造のパーセンテージは、それぞれほぼ0%でありまた25%に近づきつつある。異なる相のパーセンテージは、顕微鏡写真に現れたそれぞれの相のパーセントを測定する画像解析装置を使用して計算された。したがって、本発明の方法によって製造されるターゲットはXRD解析で調べて平均約25%未満の、好ましくは平均10%未満の金属間相形成を有し、最も好ましくは実質的に金属間相を含まない。好ましくは、金属カプセル内の温かいターゲット・ブランクを加熱炉から取り出し、次いで圧延して、少なくとも50%の厚さの減少を得る。このステップでは、1回のパス当たりに10%〜20%の厚さの減少が一般的に適用される。圧延した片はそれぞれの圧延パスの後で最短で5分間、好ましくは10分間再加熱されて、カプセルが炉の設定温度まで確実に再加熱されるようにする。
【0022】
圧延したターゲット・ブランクの最終密度は理論密度の95%よりも高い。好ましい密度は使用される金属又は金属合金、金属の比率及び二元、三元又は多元の金属構造があるかどうかに依存する。Al及びTiを含有している二元構造については、密度は、好ましくは理論密度の少なくとも97%、最も好ましくは約99%である。
【0023】
普通は、最終ターゲット・ブランクは、銅、モリブデン、鉄又はこれらの組合せなどの選択された裏打ちすなわち基材に接合される前に機械加工される。機械加工は所望のサイズ及び形状を得るために旋盤又は他の従来の切断手段によって行われ得る。ターゲット・ブランクは従来の接着剤、はんだ又は他の接合技法を使用して基材に接合される。この目的のためには一般的なインジウム又はインジウム/錫はんだが使用され得る。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
20μmの平均粒子サイズを有するアルミニウム粉末1モル(162グラム)及び35μmの平均粒子サイズを有するチタン粉末1モル(287グラム)をボールミル缶を使用して3時間ブレンドして均一なブレンドを得た。ブレンドされた粉末を、次いで鋼製のダイモールドプレスに装填し、室温において100ksiの圧力を使用して1分間圧縮して4インチ(10.16cm)×4インチ(10.16cm)×0.54インチ(1.37cm)のブランクを成形した。圧縮されたブランクの密度は、重量/容積法によって理論密度の約87%に相当する3.18g/ccであると測定された。圧延中の酸化を避けるために、圧縮されたブランクを低炭素鋼管と溶接された低炭素鋼カプセル中に入れた。カプセルを1mTorrの真空に減圧した後、管をトーチによって密封した。次いでカプセルを加熱炉中において350℃で1時間加熱し、続いてロールミル上で圧延して約50%の厚さの減少を意味する5.4インチ(13.72cm)×5.4インチ(13.72cm)×0.27インチ(0.69cm)の圧延されたブランクを得た。最終のブランク密度はTiAlに対する97%の理論密度に相当する3.54g/ccであると測定された。このブランクをタングステン・バイトを有する機械式旋盤を使用して4インチ(10.16cm)×直径0.25インチ(0.64cm)に機械加工し、はんだ銃を使用してIn/SnはんだでCuの裏打ちプレートに接合してスパッタリング・ターゲットを形成した。
【0025】
(実施例2)
実施例1を、アルミニウム粉末259グラムをチタン粉末154グラムと混合したこと以外は上記の手順に従って繰返した。平均粒子サイズは上記の通りであった。圧縮されたブランクは4インチ(10.16cm)×4インチ(10.16cm)×0.52インチ(1.32cm)であり、理論密度の約95%に相当する3.02g/ccの密度を有していた。加熱されたブランクを再度圧延して50%の減少を達成し(5.4インチ(13.72cm)×5.4インチ(13.72)×0.27インチ(0.69cm))、上記の通り機械加工してCuの裏打ちに接合した。最終のブランクはTiAl3に対する100%の理論密度に相当する3.18g/ccの最終密度を有していた。
【0026】
(実施例3)
実施例2を、粉末ブレンドはゴムのカプセル中に充填し、圧力容器中において圧縮媒体として水を使用して20ksiの圧力を加えて冷間静水圧プレスによって圧縮した以外は上記の手順に従って繰返した。圧縮されたブランクは4.8インチ(12.19cm)×4.8インチ(12.19cm)×0.39インチ(0.99cm)であり、理論密度の約87%に相当する2.77g/ccの密度を有していた。この実施例においては、ブランクを熱間静水圧プレス中で20ksiを加えることによって350℃において3時間加熱し、4.7インチ(11.94cm)×4.7インチ(11.94cm)×0.37インチ(0.94cm)を達成し、TiAlに対する97%の理論密度に相当する3.08g/ccの最終密度を有していた。このブランクを上記の通りに機械加工してCuの裏打ちに接合した。
【0027】
それぞれのスパッタリング・ターゲットを、物理的蒸着手段中に入れてターゲット材料をスパッタリングし、ウエハーに蒸着させた。
【0028】
金属間ターゲットから蒸着された膜と比較して、本金属ターゲットから蒸着された膜はMTSナノインデンテーション測定によるより低い硬度及び弾性率を示した。図4は、ダイアモンド圧子を30kg及び60kgの圧力でそれぞれ金属TiAlターゲット及び金属間TiAlターゲットに対して適用することによ圧痕の形態を示す。金属TiAlターゲットについては圧痕の周囲に亀裂は無く、一方金属間TiAlターゲットの圧痕の周囲には数個の亀裂が発生した。圧入試験は、金属間相を含有しているターゲットはTiAlサンプルについては金属相を含有しているターゲットよりも脆いことを示している。本発明は、単に本発明の実現可能性を実証するために提供された本明細書中に提供されている実施例によって限定されないことは当業者には明白なはずである。ターゲット材料の選択、装置及び他の工程条件は本明細書から、本明細書において開示され説明された本発明の精神を逸脱することなく、決定され得る。本発明の範囲は、特許請求の範囲内に入る等価な実施形態、変更形態及び変形形態を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属アルミニウム粉末及び少なくとも1種の他の金属粉末を混合して粉末ブレンドを形成するステップと、
前記粉末ブレンドを有意の力で圧縮して、理論密度の少なくとも50%の充填密度を有する圧縮されたブランクを得るステップと、
前記圧縮されたブランクを、適用される条件下においては平均25%よりも多い金属間相を前記圧縮されたブランク中で形成すると思われる温度未満の温度において、加熱するステップと、
前記圧縮されたブランクを圧延して、前記ブランクの理論密度の少なくとも95%の密度を得るステップと、
前記ブランクを基材に接合するステップと
を含む、スパッタリング・ターゲットを製造する方法。
【請求項2】
粉末ブレンドが、約450℃未満の温度において圧縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉末ブレンドが、200℃〜400℃の間の温度において約0.5〜約4ksiの圧縮圧力で1〜10時間圧縮される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記圧縮されたブランクが、少なくとも50%の厚さの減少を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記他の金属粉末が、Ti、Ni、Cr、Cu、Co、Fe、W、Si、Mo、Ta、Ru及びこれらの組合せの群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ターゲットが、式TiAlxによって表される金属化合物であり、式中のxは約0.33〜約3.0の数である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
金属アルミニウム粉末及びTi、Ni、Cr、Cu、Co、Fe、W、Si、Mo、Ta、Ru及びこれらの組合せから成る群から選択される少なくとも1種の他の金属粉末を混合して粉末ブレンドを形成するステップと、
前記粉末ブレンドを有意の力で圧縮して、理論密度の少なくとも50%の充填密度を有する圧縮されたブランクを得るステップと、
前記圧縮されたブランクを、適用される条件下においては平均25%よりも多い金属間相を前記圧縮されたブランク中で形成すると思われる温度未満の温度において、加熱して加熱されたブランクを得るステップと、
前記加熱されたブランクを圧延して、前記ブランクの理論密度の少なくとも95%の密度を得るステップと、
前記ブランクを基材に接合するステップ
の方法によって製造されたスパッタリング・ターゲット。
【請求項8】
前記粉末ブレンドが、Ti、Ni、Co及びこれらの合金を含有しているAl二元金属粉末を含む、請求項7に記載のターゲット。
【請求項9】
前記粉末ブレンドが、200℃〜400℃の間の温度において約0.5〜約4ksiの圧縮圧力で1〜10時間圧縮される、請求項8に記載のターゲット。
【請求項10】
圧縮が、真空環境下で行われる、請求項9に記載のターゲット。
【請求項11】
実質的に金属間相を含まない、請求項7に記載のターゲット。
【請求項12】
アルミニウム及び1つ又は複数の金属を含有する金属化合物材料を含み、前記金属化合物材料が平均25%未満の金属間相及び理論密度の少なくとも95%の密度を示す、スパッタリング・ターゲット。
【請求項13】
前記金属化合物材料が、Al並びにTi、Ni、Cr、Cu、Co、Fe、W、Si、Mo、Ta、Ru及びこれらの組合せから選択される金属を含む、請求項12に記載のターゲット。
【請求項14】
前記金属化合物材料が、Ti、Ni、Co及びこれらの合金を含有しているAl二元金属化合物から成る、請求項13に記載のターゲット。
【請求項15】
ターゲットが、式TiAlxで表され、式中のxは約0.33〜約3.0の数である、請求項14に記載のターゲット。
【請求項16】
密度が、少なくとも理論密度の97%である、請求項15に記載のターゲット。
【請求項17】
前記充填密度が理論密度の約99%である、請求項16に記載のターゲット。
【請求項18】
前記金属化合物材料が、平均約10%未満の金属間相を有する、請求項12に記載のターゲット。
【請求項19】
前記金属化合物材料が、実質的に金属間相を含まない、請求項12に記載のターゲット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−150658(P2010−150658A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−278086(P2009−278086)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(392032409)プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】