アレイ検出器用の量子効率向上デバイス
【課題】増倍型アレイ検出器内の光電陰極の量子効率を増大させるシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】装置であって、アレイ検出器と、該アレイ検出器が使用される場合に、該アレイ検出器上に入射する光線の経路内にあるように配置される量子効率(QE)向上デバイスとを備えている、装置。量子効率向上デバイスは、ICCDの前に配置され、光電陰極上に入射する入射光線の入射角の増大を可能にするかまたは容易にするように構成されている。ICCD自体は、増大された入射角を達成するために傾けられ得、そのような傾きは好ましくは、ICCDのピクセルの列が延びる方向だけにあり、それによって、ICCDへの入射光の入射面が波長分散の方向と直角をなす。量子効率向上デバイスは、再結像光学素子と、光学傾き補償器と、光カプラとを含み得る。
【解決手段】装置であって、アレイ検出器と、該アレイ検出器が使用される場合に、該アレイ検出器上に入射する光線の経路内にあるように配置される量子効率(QE)向上デバイスとを備えている、装置。量子効率向上デバイスは、ICCDの前に配置され、光電陰極上に入射する入射光線の入射角の増大を可能にするかまたは容易にするように構成されている。ICCD自体は、増大された入射角を達成するために傾けられ得、そのような傾きは好ましくは、ICCDのピクセルの列が延びる方向だけにあり、それによって、ICCDへの入射光の入射面が波長分散の方向と直角をなす。量子効率向上デバイスは、再結像光学素子と、光学傾き補償器と、光カプラとを含み得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年9月16日に出願された米国仮出願第61/242,933号の利益を主張するものであり、その仮出願の全体は参考として本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明の実施形態は、電荷結合デバイスなどの増倍型アレイ検出器および非増倍型アレイ検出器に関し、より具体的には、本発明の実施形態は、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)およびカメラを含む、増倍型アレイ検出器内の光電陰極の量子効率を増大させることに関する。
【背景技術】
【0003】
化学的または生物学的因子への曝露の危険は深刻であり得る。例えば、事故による意図されない放出の結果、または意図的な送達の結果のいずれであっても、(1)放出された因子のタイプ、および(2)汚染の正確な領域の迅速かつ精度の高い識別を行うことが望ましい。そのような危険な物質の早期かつ精度の高い検出は、起こり得る死傷者数の低減、および(伝播メカニズムの中でも、例えば、風、人、および動物の接触などによる)因子のさらなる拡散の制限における重要な要素であり得る。
【0004】
近年、非常に低い濃度においてさえも、未知の物質、汚染物質および因子を迅速に識別するためのセンサ技術を開発し、展開することにおける関心が増大している。これらの技術のいくつかは、汚染物質の物理的試料を引き出し、次いで因子を試験するための機械的サンプリングホイールシステムに基づいて、非常に扱いにくく時間を浪費するプロセスを利用するために、車両と関連する試験機器とを用いて表面に堆積された汚染を測定するように設計されている。
【0005】
そのようなアプローチの複雑さの観点において、より新しい、より安全かつさらに信頼性のある技術が出現してきた。1つのそのような技術は、一般に「スタンドオフ表面検出」と呼ばれ、関心のある物質または因子と実際に物理的接触を有することなく、物質の検出を可能にする技術のカテゴリを表している。これらの検出システムの目的は、化学的または生物学的脅威を検出し、識別し、位置を決定し、定量化し、警告し、報告して、それにより、(さらなる)汚染を回避するために、軍隊または市民の人員に十分な早期警告を与える能力を提供することである。
【0006】
スタンドオフ表面検出システムの一例は、ITT Corp.(White Plains,NY)によって開発された、Laser Interrogation of Surface Agents(LISA(登録商標))として公知の技術である。一実装において、LISA(登録商標)は、化学的および生物学的因子を識別するために利用され得る光学的性質であるラマン散乱(またはラマン効果、またはラマン分光法)として公知の技術を用いて、地表(または任意の表面)の化学的因子を探索する偵察車両(例えば、トラックまたは高機動多目的装輪車両(HMMWV))に取り付けられたレーザおよび関連する構成要素を用いる。LISA(登録商標)は、ラマンスペクトルを捕捉する増倍型電荷結合デバイス(ICCD)を含むいくつかの構成要素を利用する。LISA(登録商標)はまた、例えば、全地球測位衛星(GPS)システムからの入力を用いて、検出が行われているときに作られる化学的因子の等高線を有する位置検出マップを作り出すかまたは生成する能力を提供する。
【0007】
生物学的因子のスタンドオフ検出は、化学的因子の検出よりもかなり難しい。特に、生物学的因子を自然に生息する背景材料から弁別し、測定することはしばしば困難である。さらに、環境内の生物学的因子のリアルタイム検出および測定は、識別される可能性のある因子の数と、因子自体の複雑な性質と、環境内に絶えず存在する数え切れないほど多くの同様な微生物と、有害な反応を起こし得るごく少量の病原菌とのために、非常に困難であり得る。潜在的な生物学的因子はまた、良性の実体に偽装され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの障害および他の障害を考慮し、汚染物質またはより一般的に未知の物質のさらに精度の高い検出能力および識別能力を促進することにおいて、ラマン分光法などの洗練された分光分析または電子的画像化に依存し得るスタンドオフ検出システムおよび他のシステムにおける改善に対するニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(概要)
本発明の一実施形態において、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)用のアタッチメント、または量子効率(QE)向上デバイスが提供される。アタッチメントは、光学構成要素を備え、光学構成要素は、ICCD上に入射する光の光路内に配置される場合には、個々の光線が、ICCDの光電陰極と真空領域との間の交差において増大された光線または光線の全反射を結果としてもたらす増大された入射角でICCD内の光電陰極上に入射することを可能にする。
【0010】
QE向上デバイスは、再結像光学素子と、傾き補償器と、光カプラとを備え得る。
【0011】
入射角を増大させることは、光電陰極から脱出し、増幅され得る、生成される光電子の数を減少させることなく、光電陰極内の吸収する光路を増大させ、それによって、光電陰極の量子効率を増大させる。分析されるべき限定された量の光が存在する用途においては、光電陰極が入力光により反応するほど、ICCDはより高感度であり得、解析結果はより高精度であり得る。
【0012】
実際の用途において、アタッチメント(または量子効率向上デバイス)は、分光写真の装置内で用いられる。特定の実装において、分光写真器は、水平方向に分散される異なる波長の光を出力し、それによって、光子の数対波長が光スペクトルとしてICCDによって記録され得る。一実施形態において、ICCDは、ICCDのピクセルの列が延びる方向に沿って傾けられ、それによって、ICCDへの入射光の入射面が波長分散の方向と直角をなす。垂直の列における各々のピクセルからの信号は合計される。このように、入射光線がピクセルの同じ垂直の列に留まり、一体的にさらに分析されるので、解像度の損失は全く経験されない。
【0013】
一局面において、本発明の実施形態はまた、分光分析を実行する方法を可能にし、方法は、望遠鏡によって光を収集することと、望遠鏡によって収集された光を分光写真器に伝え、分光写真器の中で複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドを生成することと、複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドを増倍型電荷結合デバイス(ICCD)の光電陰極上に入射させることと、複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドがICCDの光電陰極上に向かい、それによって、光電陰極上に入射する光の入射角を修正していない光電陰極の量子効率に比べて光電陰極の量子効率を増大させる入射角を修正することとを含む。
【0014】
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、それらに付随する利点と共に、以下の詳細な説明を関連する図面と共に読み込むと、さらに完全に認識される。
【0015】
例えば、本発明は、以下を提供する。
(項目1)
装置であって、
アレイ検出器と、
該アレイ検出器が使用される場合に、該アレイ検出器上に入射する光線の経路内にあるように配置される量子効率(QE)向上デバイスと
を備えている、装置。
(項目2)
上記アレイ検出器は、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)である、上記項目に記載の装置。
(項目3)
上記アレイ検出器は、該アレイ検出器の前面または窓に取り付けられた光電陰極を備えている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目4)
上記QE向上デバイスは、光学傾き補償器を備えている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目5)
上記QE向上デバイスは、光カプラを備えている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目6)
上記光学傾き補償器は、プリズムを備えている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目7)
上記光学傾き補償器は、フレネルプリズムアレイを備えている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目8)
再結像光学素子をさらに備えている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目9)
分光写真器をさらに備えている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目10)
上記アレイ検出器は、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)であり、該ICCDは、該ICCDのピクセルの列が延びる方向に沿って傾けられ、それによって、該ICCDへの入射光の入射面は、波長分散の方向と直角である、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目11)
上記ICCDは、上記分光写真器からの光が出力される軸と異なる軸に沿って配置されている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目12)
光を上記分光写真器に伝えるように配置された光ファイバの直線的配列をさらに備え、それによって、該分光写真器によって生成された光のバンドは、上記QE向上デバイスを介して上記ICCDに向けられる、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目13)
上記ICCDは、カメラの一部分である、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目14)
増倍型電荷結合デバイス(ICCD)用のアタッチメントであって、
光学構成要素を備え、該光学構成要素は、該ICCD上に入射する光の光路内に配置されている場合には、個々の光線を、増大された入射角において該ICCDの光電陰極上に入射させ、該増大された入射角は、該ICCDの該光電陰極内側の該個々の光線の光路の長さと、該光電陰極内側の増大された光線の総数との増大を結果としてもたらし、該光電陰極の増大された量子効率を結果としてもたらす、アタッチメント。
(項目15)
分光写真器の画像面を上記光電陰極の面と一致させる再結像光学素子をさらに備えている、上記項目に記載のアタッチメント。
(項目16)
光学傾き補償器および光カプラをさらに備えている、上記項目のいずれかに記載のアタッチメント。
(項目17)
上記光学傾き補償器は、フレネルプリズムアレイを備えている、上記項目のいずれかに記載のアタッチメント。
(項目18)
分光分析を実行する方法であって、
望遠鏡によって光を収集することと、
該望遠鏡によって収集された光を分光写真器に伝え、該分光写真器内で複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドを生成することと、
該複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドを増倍型電荷結合デバイス(ICCD)の光電陰極上に入射させることと、
該複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドが該ICCDの該光電陰極上に向かう入射角を制御して、それによって、該入射角を制御されていない該光電陰極の量子効率に比べて該光電陰極の量子効率を増大させることと
を包含する、方法。
(項目19)
上記ICCDが配置されている光軸と異なる光軸に沿って上記分光写真器を配置することをさらに包含する、上記項目に記載の方法。
(項目20)
上記ICCDのピクセルの列が延びる方向に沿って該ICCDを傾けることをさらに包含し、それによって、該ICCDへの入射光の入射面は、波長分散の方向と直角である、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目21)
上記複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドに基づく画像を用いて、ラマン分光法を行うことをさらに包含する、上記項目のいずれかに記載の方法。
【0016】
(摘要)
光電陰極を有する増倍型アレイ検出器(電荷結合デバイス(ICCD)など)において用いられる光電陰極の量子効率を増大させるシステムおよび方法が提供される。量子効率向上デバイスは、ICCDの前に配置され、光電陰極上に入射する入射光線の入射角の増大を可能にするかまたは容易にするように構成されている。ICCD自体は、増大された入射角を達成するために傾けられ得、そのような傾きは好ましくは、ICCDのピクセルの列が延びる方向だけにあり、それによって、ICCDへの入射光の入射面が波長分散の方向と直角をなす。量子効率向上デバイスは、再結像光学素子と、光学傾き補償器と、光カプラとを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従った、ラマン分光法システムおよび量子効率向上デバイスの図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態と共に用いられ得るそれぞれの光ファイバに対応する光のバンドを、分光写真器内の回折格子がどのように生成するかを示している。
【図3A】図3Aは、光電陰極−ICCD真空境界において全反射が起こらない例を示している。
【図3B】図3Bは、増倍型アレイ面上の反射防止被覆に加えて、光電陰極−ICCD真空境界において全反射が起こる例を示している。
【図4】図4は、本発明の実施形態と共に再結像光学素子の使用を示している。
【図5】図5は、本発明の実施形態に従った、再結像光学素子、光学傾き補償器、および光カプラの使用を示している。
【図6】図6は、本発明の実施形態に従った、組み合わされた傾き補償器および光カプラを示している。
【図7】図7は、傾き補償器および光カプラが互いに分離されている一実施形態を示している。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に従った、勾配屈折率光学素子の使用を示している。
【図9】図9は本発明の実施形態に従った、円柱レンズの使用を示している。
【図10A】図10Aおよび図10Bは、本発明に従った、代替案の実施形態を示している。
【図10B】図10Aおよび図10Bは、本発明に従った、代替案の実施形態を示している。
【図11】図11は、本発明の一実施形態に従った、光学傾き補償器の一部分としてフレネルプリズムアレイの使用を示している。
【図12】図12は、屈折率がビーム入射角によってどのように変化するかを示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明は、ラマン分光法と共に用いられ得る増倍型電荷結合デバイス(ICCD)の文脈において提供される。しかしながら、当業者は、増倍器が光電陰極を有する場合には、本発明の実施形態が、増倍管(マルチチャンネルプレート(MCP)としばしば呼ばれる)を用いるCMOS検出器およびCCD検出器を含む任意のアレイ検出器に適用され得ることを認識するであろう。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に従った、ラマン分光法システムの図である。望遠鏡120は、試料110がレーザ105によって照射された結果として生成されるスペクトルを収集する。レーザ105は、望遠鏡120と共線的に配置されるか、または図1に示されているように軸外しであり得る。望遠鏡によって集められたスペクトルまたは光は、望遠鏡120によって作り出された光のスポットに合わせるために、図2の左手側に示されるような円形の様態で配置されたファイバ束130上に集光される。ファイバ束の個々のファイバは、分光写真器140に連絡しており、分光写真器140は、受け取った光を波長に応じて分散させる。結果としてもたらされる分散光は、分散光の「ピクチャ」または画像を捕捉する増倍型電荷結合デバイス(ICCD)150(例えば、カメラ)に送られる。一実施形態において、ピクチャまたは画像は、後の解析、およびライブラリ内に保存されている既知のスペクトルとのパターンマッチングのためにコンピュータシステム160内に保存される。
【0020】
図1に示されているように、ICCD150は、入射光に垂直な軸に対して傾けられ、それによって、光がICCD150の光電陰極155に達する入射角を増大させ得る。また、本発明の一実施形態に従った、量子効率(QE)向上デバイス300は、分光写真器140とICCD150との間に配置されている。QE向上デバイス300の詳細と、ICCD150を傾ける理由またはICCD150上に入射する光線を傾ける理由とが以下において提供される。
【0021】
図2は、分光写真器140内の回折格子210が、本発明の実施形態と共に用いられ得るファイバ束130からそれぞれの光ファイバに対応する光のバンドをどのように生成するかを示している。より具体的には、ファイバ束130からのファイバは、個々のファイバの直線アレイを作るように垂直方向に「扇形に広げられる」。この直線アレイからの光は、次いで回折格子210を通過させられる。その結果として、各々のファイバからの光は、空間的に分散され、水平方向に配置されたスペクトル220に変換される。結果としてもたらされるスペクトルの各々がICCD150に提供される。分光写真器内に用いられる他の光学素子は、明快にするために示されていない。
【0022】
より具体的には、異なる波長の光が水平方向に空間的に分散され、それによって、光子の数対波長が光スペクトルとしてICCD150上に記録され得る。信号を最大化するために、ICCDの応答は、ICCD内部の長方形のアレイ検出器の垂直方向において、単一の列のピクセルに沿ってしばしば完全に垂直にビンニングされる(FVB)(一般的なアレイは、256個のピクセルの水平方向の行と、1024個のピクセルの垂直の列とを有する)。換言すると、各々の扇形に広げられたファイバからの空間的に分散した光は、ピクセルの各々の垂直の組または(1つ以上の)列に沿って分析され得、ピクセルの各々の列が、光の異なる波長(または、光の比較的小さな帯域幅)に対応する。
【0023】
カメラおよびICCDデバイスなどの市販の増倍型アレイ検出器の重大な制限は、市販されている光電陰極(PC)の量子効率(QE)であり、その量子効率は、紫外(UV)スペクトル(特に、ラマン分光法に適切であるスペクトル)において、ほんの20%〜30%であり得る。より具体的には、光電陰極は、増倍管(例えば、図1および図3Aを参照されたい)の前面またはガラス窓の内側の上に堆積される。光は、外側の空気からガラスに入り込み、次いで光電陰極の中に入り込む。量子効率は、光電陰極によって測定可能な光電子に変換される入射光子の割合である。標準的用途において、小さい入射角における光電陰極内の光路の長さは短く、光の大部分が、光電陰極の他方の側を出て行き、無駄になる(図3A)。
【0024】
この低いQEの主な理由は、PC155の厚さが、可能な限り多くの光子を吸収するために十分に大きい(または厚い)が、生成された光電子が脱出すること(そして、ICCD内のマイクロチャンネルプレートによって増幅されること)を可能にするために十分に小さく(または、薄く)なければならないからである。製造業者は、これらの2つの効果をバランスさせることによって、最大のQEを得るようにPCの厚さを選択する。同様な折衷の設計考察が、他の撮像アレイ検出器および増倍型アレイ検出器と共に行われる。
【0025】
ChybaおよびMandel(JOSA B 5,1305−1311(1988))は、真空フォトダイオード用PCのQEは、補助光学素子(または反射防止被覆)が、光を管内側のPC−真空界面において全反射を引き起こすために十分に大きい角度(ガラス材料およびPC材料に依存して約60度)でPCに導くために用いられる場合に、4倍ほどの大きさで増大させられ得ることを明らかにした。横方向電界(TE)偏光に対しては、向上がかなり小さい角度で起こるが、横方向磁界(TM)偏光に対しては、生成される信号は、内部の入射角がブルースター角に近づくにつれてPC内の反射波が低減されることにより減少するが、ブルースター角を超えると再び増大する。この定性的な挙動は、本明細書で考慮されるICCD内のPCに対して有効であるが、一方で、関係する材料の光学的定数は、例えば、分光写真用途に対する全体の構成要素の配置のように、UV用途に対して異なる。従って、上記の研究が本明細書中に記載されている特定の分光写真用途にうまく適用され得ることは、決して予測可能ではなく、または予期されていない。
【0026】
本明細書中に記載の実施形態においては、QE向上デバイス300は、光線が非常に大きい入射角で光電陰極に入り込むことを可能にするために、増倍管の前窓に接触するように提供される。QE向上デバイスの機能は、空気−ガラス界面に対して補償することである。空気−ガラスにおいては、屈折率における高い不整合が存在する。この大きな不整合は、空気からガラスに向かう高い反射係数をもたらす。本発明の実施形態の機能の1つは、空気−ガラス界面における不整合を防止することによって、この高い反射を回避することである。このことは、図3Bに示されているようなAR被覆310かまたはガラス窓に触れる固体光学素子を用いて遂行され得る(これらの固体光学素子の空気−ガラス表面はまた、一般に反射防止被覆されている)。
【0027】
大きい入射角の理由は2つの部分からなる。第一の理由は、入射角が増大するにつれて、光子の吸収によって生成される光電子の脱出経路の長さが全く増大することなく、PC155内の吸収経路の長さが増大する。このことは、増大されたQEをもたらす。
【0028】
第二の理由は、入射角が増大するにつれて、PC−真空界面において反射された光の量が、臨界角よりも大きい任意の入射角に対してすべての光が最後に反射されるまで(光学素子の法則に起因して)増大する。この角度を超えると、光電陰極に入り込むすべての光子が、PC−真空境界への吸収の機会と、PC−真空境界からの吸収の機会との両方を有する。このことは、QEを一層増大させる。全反射に対する臨界角は、PC155の材料に依存する。
【0029】
ICCDの光電陰極155の量子効率を増大させる本発明の実施形態に従って、ICCD150の焦点面は、傾けられ(または、実質的に光学的に傾けられ)、それによって、光がICCDに達する入射角を増大させ、それによって、PC155内の光の全反射の可能性を増大させる。再び例示すると、図3Aは、全反射が起こらないICCD150の光電陰極155上に入射する光を示している。このことは、PC155を通過する光線によって示される。一方、図3Bは、より大きい入射角でPC155に達する光線を示し、PC−ICCD真空境界における全反射を結果としてもたらす。そのような全反射が起こる場合には、増大された光電陰極効果が結果としてもたらされ、それによって、光電陰極155の量子効率の増大を引き起こす。
【0030】
しかしながら、分光写真用途または撮像用途の状況において、光電陰極に対する増大された入射角、従って、増大されたQEを達成するために、図1に示されたようにICCDを傾けることによる問題があり得る。当業者は、傾けること(または、実質的に傾けること)が、ICCD150の面を見る場合に、ICCDの垂直軸または水平軸に対してであり得ることを認識するであろう。
【0031】
第一に、PC155内側の大きい入射角は、1つの方向(入射光線および反射光線を含む入射面と呼ばれる平面であり、垂直面として取られる)に沿って「スミア化された」光を導き、その方向に沿って画像解像度の損失を引き起こし得る。この問題は、本発明の実施形態によって、(1)垂直のビン(スペクトルが垂直にビンニングされる用途に対しては適切であるが、真のピクセル単位のピクチャが必要である場合には、ビンニングは用いられ得ない)の方向に沿って存在する入射面を作ることによって対処される。換言すると、この傾ける技術は、必要とされる入射光の傾き角が垂直のビンまたはICCD150のピクセルの列の方向に沿っている場合には、この用途におけるICCDに対して利用され、それによって、入射光の入射面が波長分散の方向と直角をなすことができる。
【0032】
上記の問題はまた、(2)ほとんどのPCが、撮像要素(ピクセル)のサイズと比較して薄いことを認識することによって対処される。典型的な光電陰極は、非常に薄い(約0.01マイクロメートル〜約0.5マイクロメートル)が、検出器内のピクセルは、約2マイクロメートル〜100マイクロメートルであり、従って、入射角は、かなり大きいスミアが起こるためには非常に大きくならなければならない。従って、PCが十分に薄いかまたはピクセルサイズが十分に大きいか、あるいは分光写真器またはカメラの必要とされる解像度が単一ピクセルの解像度を必要としない場合においては、垂直のビンニングは全く必要ではない。
【0033】
第二に、適切な撮像のためには、カメラまたは分光写真器の焦点面は、光電陰極と共面でなければならない。このことは、より重大な問題である。光が大きい入射角で増倍器PCに入り込むことを可能にするために必要とされる結合光学素子と共に増倍型検出器を傾ける必要性は、このことを実際的でないように思わせる。この問題は、本発明の実施形態によって、焦点面を分光写真器の出力ポートから十分に遠く離れるように移動させるための、QE向上デバイス300内のオプションの再結像光学素子315の使用を可能にすることにより、(図4に示されているように)増倍型アレイ検出器の前における傾き補償および結合光学素子の配置を可能にすることによって対処される。より具体的には、図4は、そのPC155がF’に沿って並ばなければならない増倍型アレイ検出器の前に、再結像光学素子315が結合光学素子を配置する空間を与えることを示している。向上されない動作または標準的動作において、PCはFに沿って存在している。
【0034】
本発明の実施形態が実行し得る3つの機能が図5中に例示されている。オプションの再結像光学素子315が提供されることにより、焦点面をFからF’に再結像し得る。傾き補償光学素子320がQE向上デバイス300の一部分として提供されることにより、分光写真器の原初の焦点面が、傾けられた光電陰極155上に適切に再結像されることを確実にする。そして、光カプラ330が利用されることにより、量子効率を増大させるために必要とされる大きい入射角で光を増倍管の中に結合し得る。この機能性を達成する他の構成要素の配置が図6〜図9に示されている。これらの図では、PC155が傾けられ、所望の大きい入射角で光がPCに入り込むことを可能にするために提供される結合光学素子(または被覆)330が追加されている場合であっても、分光写真器140の原初の焦点面Fから再結像される焦点面F’まで2つの光線の各々が取る光路は同じである。
【0035】
ICCD150を傾けることは(TE波の場合の全反射に対する臨界角未満のときでさえも)、光電子が脱出するための経路を増大させることなく、PC155内の光に対する光(吸収)路の長さを増大させる。解像度の損失は全く起こらない。なぜならば、入射光および反射光の光線が常にピクセルの同じ垂直の列またはビンに留まり、その列における各々のピクセルからの信号が、一体的にビンニングされ続けるからである。
【0036】
図6において、分光写真器140の焦点面はF’に再結像される。(好ましくは入口面のAR被覆による)プリズム331は2つの機能を担い、2つの機能とは、(1)光線が大きい入射角でPCに入り込むことを可能にする光カプラと、(2)PC155の上部に達する光線に対して追加の光遅延を提供するように設計され、それによって、上の光線および下の光線に対するF’への光路が保たれ、それによって、画像面F’がPC155と共面であることを可能にする傾き補償器とである。(ガラスの幾何学的厚さTにおける光路は、空気の同じ幾何学的厚さTにおける光路よりも大きいので、上部の光線に対するガラス内の短い幾何学的経路は、底部の光線がPC155まで空気中に有するより長い幾何学的経路に対して補償される)。
【0037】
プリズムが光を曲げる量は、一般に波長に依存する。分光器の用途において、光の波長は、アレイ検出器を横切って変化する(この方向は、ページの平面と直角である)。このことを補償するために、プリズムの頂角は、増倍器の面を横切ってわずかに変化するように作られ得る。画像の収差がまた、くさびによって引き起こされ得るが、[BarthおよびOepts、1988]の設計によってまたは追加の光学素子の使用によって(少なくとも部分的に)補償され得る。
【0038】
図7において、分光写真器の焦点面FがF’に再結像される。(好ましくは入口面のAR被覆による)プリズム331は、傾き補償器として作用する。この場合に、増倍器の窓上のAR被覆は、光カプラとして作用する。コンピュータ光線追跡アプリケーションが、一般的材料で、小さなサイズに作られ、かつ小さな頂角を有するプリズムは、画像面と入射光線の方向との間にかなり大きい角度(23.5度)を作り出すことが可能であることを検証するために用いられた。可能性のある一実装においては、示されているように、PC155が画像面F’に位置合わせされる。
【0039】
図8において、分光写真器の焦点面FがF’に再結像される。画像面は、光カプラとして、かつ傾き補償器として役立つ勾配屈折率光学素子340によって回転させられる。勾配屈折率光学素子340は、増倍型アレイ検出器の先端をなす面に沿って直線的に増大する屈折率を有し、それによって、両方の光線のF’への光路は同一である。明快にするために、直角でない光学界面における屈折効果は示されていない。
【0040】
図9は、円柱レンズ350の使用を示している。分光写真器の焦点面FがF’に再結像される。円柱レンズ350は、光結合および部分的傾き補償の機能を果たす。レンズ350の焦点合わせ能力は、F’方向に沿って画像の倍率を低減する。このことが、傾けられた方向に沿って画像の大きさを圧縮することによって、傾き補償の必要性を低減するが、一方で、追加の傾き補償が依然として適切な焦点合わせに対して必要であり得る。
【0041】
従って、量子効率向上デバイス300は、いくつかの形態のうちの1つを取り得る。上記のように、(傾けられた)ICCD150およびQE向上デバイス300の全体の配置の目的は、垂直方向のすべての光線に対して焦点面までの光路長を同一に保つことによってスペクトル分解能を損なうことなく、PC155内の吸収光路を増大させることによって、光電陰極155のQEを向上させることである。光線は、焦点面までの異なる幾何学的経路長を有し得るが、適切な焦点に導かれる同一の光路長を有しなければならない。
【0042】
また別の実施形態において、図10Aは、代替案の実施形態を示しており、図1に示された構成要素の配置がわずかに変更されている。ここでは、補助鏡340が用いられて、分光写真器150の焦点面を、傾けられたPC155の面と一致させる態様において結像する。再結像光学素子および傾き補償光学素子(図示されていない)がまた必要であり得る。好適な実施形態において、ICCD150は、光に結合するためのその前面/窓の上にAR被覆を有する。この配置によって、ICCD150は、分光写真器140が配置されている軸510と異なる軸512に沿って配向される。そのような配置は、1つの方向においてより多くの空間を占有し得るが、単一の鏡540を適切な距離および傾き角に調整することは、よりかさばるICCDカメラ自体の距離/傾きを調整することよりも簡単であり得る。
【0043】
図10Bは、さらに別の実施形態を示している。ここでは、別個の鏡540の代わりに、反射機能は、固体光学素子550の後方反射ファセット545によって実行され、固体光学素子550は、屈折率がICCD150の前面と整合するように空間を満たし、大きい角度で光に結合するためのICCD150表面のAR被覆の必要性を取り除く。一方では、AR被覆が、固体光学素子550の前面において望ましくあり得る。再結像光学素子および傾き補償光学素子(図示されていない)がまた必要であり得る。
【0044】
図11Bは、本発明の一実施形態に従った、光学傾き補償器320の一部分としてフレネルプリズムアレイの使用を示している。より具体的には、上記のように光を曲げるための(図6に示されたプリズム331と同様な)従来のプリズムを用いるのではなく、本発明は、図11に示されているように光を曲げるためのフレネルプリズムアレイ352を代わりに利用し得る。フレネルプリズムアレイ352を用いる利益は、標準的プリズムと同じ量の曲がりをもたらし得ることであり、フレネルプリズムのファセットサイズが十分に小さくされており、かつ十分に薄いフレネルアレイである場合には、フレネルプリズムアレイによって導入される収差は、標準的プリズムによって導入される収差よりもかなり(一般には、100×の係数だけ)少なくあり得る。
【0045】
検出器150面における最適ビーム入射角を達成するためにフレネルプリズムアレイを用いることによって、同じ量の入射光に対して検出器によって送達される信号は、2×(またはより多く)の係数だけ増大し得、一方で、プリズムデバイスが全く用いられなかった場合に達成される画像品質と同じ画像品質が維持され得る。
【0046】
光線がプリズムによって曲げられる(または、偏向させられる)量は、プリズム基板の屈折率nと、プリズム角Aと、光線がプリズムに入射する最初の角度に依存する。レンズまたは望遠鏡などの画像形成デバイスは、特定の範囲の光線角度から作られる円錐形の画像形成光鉛筆を作り出す。一般に、光鉛筆がプリズムから出て来た後、円錐形の鉛筆内の光線の角度の拡がりは拡大される。このことは、検出器に到達する光線の角度の拡がりは、検出器の量子効率が最大化される角度の範囲をここで著しく超え得るという深刻な問題を作り出し得る。
【0047】
光線の角度の拡がりを最小化するために、プリズムが、「極小偏角」条件を満たすように入射光線に対して配向される必要があることは公知である。極小偏角は、プリズムを適切に傾けることによって常に達成され得る。しかしながら、一般に、極小偏角が確立される場合には、両方のプリズム面が入射光と検出器との両方に対して任意の角度に傾けられる。従って、この実施形態の別の局面は、フレネルプリズム基板の屈折率の適切な選択によって極小偏角条件が満たされ、一方で、図11に示されているように、フレネルプリズムの背面がまた検出器表面と平行にされ得ることである。
【0048】
数学的に、極小偏角のこの特別な場合は、フレネルプリズム基板の屈折率nが、
【0049】
【数1】
として計算されるときに達成される。ここで、Iは検出器150上への所望の入射角である。
【0050】
図12は、式1によって記述されるように、屈折率がビーム入射角によってどのように変化するかを示している。図12によると、屈折率nは、
【0051】
【数2】
の範囲に存在する。幸いにも、この範囲は、市販されている光学ガラスおよび透明プラスチックの幅広いファミリーによって極めてよく示される。従って、実際において、フレネルプリズムアレイ352の平坦な背面を有することは常に可能であるはずであり、一方で、検出器150に到達する光がすべて、最大の検出器QEを与える入射角から最小限の拡がりの内に到達する極小偏角条件に常に合致するはずである。
【0052】
より明快にするために、図11は、フレネルプリズムアレイ352の背面の平坦な面と検出器150との間の空間を示している。実際において、示された大きい空間を有することは望ましくなく、空間が可能な限り小さくされる場合には、最も高い画像品質が維持される。しばしば、空間は、フレネルアレイ背面を検出器150との接触状態に配置することによって、ゼロまで小さくされるべきである。
【0053】
従って、量子効率向上デバイスは、特に分光写真の用途に関連して用いられる場合にICCDの効率を増大し、それによって、分光写真システム全体の感度を増大させる。適切な角度(および、垂直のビンニングを維持するための適切な方向)にICCDを傾けることによって、分光写真器からの光は、より大きい入射角でICCDの光電陰極に達する。一般に、角度に依存して、増大した数の光線が、従ってICCDの光電陰極と排出領域との間の境界において全反射を経験する。この増大された全反射が光電陰極の量子効率を増大させる。
【0054】
一実施形態において、量子効率向上デバイスは、既存のICCD機器へのアドオンとして利用可能にされ得る。しかしながら、QE向上デバイスが適切に位置合わせされ、かつICCDの窓とQE向上デバイスとの間の汚れまたは汚染がなく取り付けられることを確実にするためには、ICCD製造業者に、QE向上デバイスをオプションとして含ませ、かつクリーンルームの環境内で2つのデバイス(ICCDおよびQE向上デバイス)を「密接に結合させる」かまたは一体化させることは望ましいことであり得る。
【0055】
可能性のある接続の代替案としては、QE向上デバイスが、ボルト締めされたり、ねじ留めされたり、さもなければICCDの面に固定され得る。もちろん、ARおよび屈折率整合用被覆、または用いられる接着材は、従来の態様において適用され得る。
【0056】
従って、本発明の実施形態は、PC内側の増大された角度を結果としてもたらす、ガラス−光電陰極境界における入射角の増大を可能にし、それによって、PC内側の光路長を増大させる。全反射に対する臨界角に近づくにつれて、より少ない光線が光電陰極の後ろを出て行き、より多くの光線が光電陰極の中に戻るように反射される。その結果として、光線の数がまた、この効果に起因して角度によって増大する。一旦、全反射に対する臨界角に達すると、それよりも大きい角度に対しては、すべての光線がPC−真空境界からPCの中に戻るように反射される。
【0057】
本明細書中に記載されたシステムおよび方法は、本明細書の精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態に組み入れられ得る。従って、上記の実施形態は、すべての点において例示と考えられ、限定を意味するものではない。
【符号の説明】
【0058】
105 レーザ
110 試料
120 望遠鏡
130 ファイバ束
140 分光写真器
150 増倍型電荷結合デバイス(ICCD)
155 光電陰極
160 コンピュータシステム
300 量子効率(QE)向上デバイス
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年9月16日に出願された米国仮出願第61/242,933号の利益を主張するものであり、その仮出願の全体は参考として本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明の実施形態は、電荷結合デバイスなどの増倍型アレイ検出器および非増倍型アレイ検出器に関し、より具体的には、本発明の実施形態は、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)およびカメラを含む、増倍型アレイ検出器内の光電陰極の量子効率を増大させることに関する。
【背景技術】
【0003】
化学的または生物学的因子への曝露の危険は深刻であり得る。例えば、事故による意図されない放出の結果、または意図的な送達の結果のいずれであっても、(1)放出された因子のタイプ、および(2)汚染の正確な領域の迅速かつ精度の高い識別を行うことが望ましい。そのような危険な物質の早期かつ精度の高い検出は、起こり得る死傷者数の低減、および(伝播メカニズムの中でも、例えば、風、人、および動物の接触などによる)因子のさらなる拡散の制限における重要な要素であり得る。
【0004】
近年、非常に低い濃度においてさえも、未知の物質、汚染物質および因子を迅速に識別するためのセンサ技術を開発し、展開することにおける関心が増大している。これらの技術のいくつかは、汚染物質の物理的試料を引き出し、次いで因子を試験するための機械的サンプリングホイールシステムに基づいて、非常に扱いにくく時間を浪費するプロセスを利用するために、車両と関連する試験機器とを用いて表面に堆積された汚染を測定するように設計されている。
【0005】
そのようなアプローチの複雑さの観点において、より新しい、より安全かつさらに信頼性のある技術が出現してきた。1つのそのような技術は、一般に「スタンドオフ表面検出」と呼ばれ、関心のある物質または因子と実際に物理的接触を有することなく、物質の検出を可能にする技術のカテゴリを表している。これらの検出システムの目的は、化学的または生物学的脅威を検出し、識別し、位置を決定し、定量化し、警告し、報告して、それにより、(さらなる)汚染を回避するために、軍隊または市民の人員に十分な早期警告を与える能力を提供することである。
【0006】
スタンドオフ表面検出システムの一例は、ITT Corp.(White Plains,NY)によって開発された、Laser Interrogation of Surface Agents(LISA(登録商標))として公知の技術である。一実装において、LISA(登録商標)は、化学的および生物学的因子を識別するために利用され得る光学的性質であるラマン散乱(またはラマン効果、またはラマン分光法)として公知の技術を用いて、地表(または任意の表面)の化学的因子を探索する偵察車両(例えば、トラックまたは高機動多目的装輪車両(HMMWV))に取り付けられたレーザおよび関連する構成要素を用いる。LISA(登録商標)は、ラマンスペクトルを捕捉する増倍型電荷結合デバイス(ICCD)を含むいくつかの構成要素を利用する。LISA(登録商標)はまた、例えば、全地球測位衛星(GPS)システムからの入力を用いて、検出が行われているときに作られる化学的因子の等高線を有する位置検出マップを作り出すかまたは生成する能力を提供する。
【0007】
生物学的因子のスタンドオフ検出は、化学的因子の検出よりもかなり難しい。特に、生物学的因子を自然に生息する背景材料から弁別し、測定することはしばしば困難である。さらに、環境内の生物学的因子のリアルタイム検出および測定は、識別される可能性のある因子の数と、因子自体の複雑な性質と、環境内に絶えず存在する数え切れないほど多くの同様な微生物と、有害な反応を起こし得るごく少量の病原菌とのために、非常に困難であり得る。潜在的な生物学的因子はまた、良性の実体に偽装され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの障害および他の障害を考慮し、汚染物質またはより一般的に未知の物質のさらに精度の高い検出能力および識別能力を促進することにおいて、ラマン分光法などの洗練された分光分析または電子的画像化に依存し得るスタンドオフ検出システムおよび他のシステムにおける改善に対するニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(概要)
本発明の一実施形態において、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)用のアタッチメント、または量子効率(QE)向上デバイスが提供される。アタッチメントは、光学構成要素を備え、光学構成要素は、ICCD上に入射する光の光路内に配置される場合には、個々の光線が、ICCDの光電陰極と真空領域との間の交差において増大された光線または光線の全反射を結果としてもたらす増大された入射角でICCD内の光電陰極上に入射することを可能にする。
【0010】
QE向上デバイスは、再結像光学素子と、傾き補償器と、光カプラとを備え得る。
【0011】
入射角を増大させることは、光電陰極から脱出し、増幅され得る、生成される光電子の数を減少させることなく、光電陰極内の吸収する光路を増大させ、それによって、光電陰極の量子効率を増大させる。分析されるべき限定された量の光が存在する用途においては、光電陰極が入力光により反応するほど、ICCDはより高感度であり得、解析結果はより高精度であり得る。
【0012】
実際の用途において、アタッチメント(または量子効率向上デバイス)は、分光写真の装置内で用いられる。特定の実装において、分光写真器は、水平方向に分散される異なる波長の光を出力し、それによって、光子の数対波長が光スペクトルとしてICCDによって記録され得る。一実施形態において、ICCDは、ICCDのピクセルの列が延びる方向に沿って傾けられ、それによって、ICCDへの入射光の入射面が波長分散の方向と直角をなす。垂直の列における各々のピクセルからの信号は合計される。このように、入射光線がピクセルの同じ垂直の列に留まり、一体的にさらに分析されるので、解像度の損失は全く経験されない。
【0013】
一局面において、本発明の実施形態はまた、分光分析を実行する方法を可能にし、方法は、望遠鏡によって光を収集することと、望遠鏡によって収集された光を分光写真器に伝え、分光写真器の中で複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドを生成することと、複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドを増倍型電荷結合デバイス(ICCD)の光電陰極上に入射させることと、複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドがICCDの光電陰極上に向かい、それによって、光電陰極上に入射する光の入射角を修正していない光電陰極の量子効率に比べて光電陰極の量子効率を増大させる入射角を修正することとを含む。
【0014】
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、それらに付随する利点と共に、以下の詳細な説明を関連する図面と共に読み込むと、さらに完全に認識される。
【0015】
例えば、本発明は、以下を提供する。
(項目1)
装置であって、
アレイ検出器と、
該アレイ検出器が使用される場合に、該アレイ検出器上に入射する光線の経路内にあるように配置される量子効率(QE)向上デバイスと
を備えている、装置。
(項目2)
上記アレイ検出器は、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)である、上記項目に記載の装置。
(項目3)
上記アレイ検出器は、該アレイ検出器の前面または窓に取り付けられた光電陰極を備えている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目4)
上記QE向上デバイスは、光学傾き補償器を備えている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目5)
上記QE向上デバイスは、光カプラを備えている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目6)
上記光学傾き補償器は、プリズムを備えている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目7)
上記光学傾き補償器は、フレネルプリズムアレイを備えている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目8)
再結像光学素子をさらに備えている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目9)
分光写真器をさらに備えている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目10)
上記アレイ検出器は、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)であり、該ICCDは、該ICCDのピクセルの列が延びる方向に沿って傾けられ、それによって、該ICCDへの入射光の入射面は、波長分散の方向と直角である、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目11)
上記ICCDは、上記分光写真器からの光が出力される軸と異なる軸に沿って配置されている、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目12)
光を上記分光写真器に伝えるように配置された光ファイバの直線的配列をさらに備え、それによって、該分光写真器によって生成された光のバンドは、上記QE向上デバイスを介して上記ICCDに向けられる、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目13)
上記ICCDは、カメラの一部分である、上記項目のいずれかに記載の装置。
(項目14)
増倍型電荷結合デバイス(ICCD)用のアタッチメントであって、
光学構成要素を備え、該光学構成要素は、該ICCD上に入射する光の光路内に配置されている場合には、個々の光線を、増大された入射角において該ICCDの光電陰極上に入射させ、該増大された入射角は、該ICCDの該光電陰極内側の該個々の光線の光路の長さと、該光電陰極内側の増大された光線の総数との増大を結果としてもたらし、該光電陰極の増大された量子効率を結果としてもたらす、アタッチメント。
(項目15)
分光写真器の画像面を上記光電陰極の面と一致させる再結像光学素子をさらに備えている、上記項目に記載のアタッチメント。
(項目16)
光学傾き補償器および光カプラをさらに備えている、上記項目のいずれかに記載のアタッチメント。
(項目17)
上記光学傾き補償器は、フレネルプリズムアレイを備えている、上記項目のいずれかに記載のアタッチメント。
(項目18)
分光分析を実行する方法であって、
望遠鏡によって光を収集することと、
該望遠鏡によって収集された光を分光写真器に伝え、該分光写真器内で複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドを生成することと、
該複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドを増倍型電荷結合デバイス(ICCD)の光電陰極上に入射させることと、
該複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドが該ICCDの該光電陰極上に向かう入射角を制御して、それによって、該入射角を制御されていない該光電陰極の量子効率に比べて該光電陰極の量子効率を増大させることと
を包含する、方法。
(項目19)
上記ICCDが配置されている光軸と異なる光軸に沿って上記分光写真器を配置することをさらに包含する、上記項目に記載の方法。
(項目20)
上記ICCDのピクセルの列が延びる方向に沿って該ICCDを傾けることをさらに包含し、それによって、該ICCDへの入射光の入射面は、波長分散の方向と直角である、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目21)
上記複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドに基づく画像を用いて、ラマン分光法を行うことをさらに包含する、上記項目のいずれかに記載の方法。
【0016】
(摘要)
光電陰極を有する増倍型アレイ検出器(電荷結合デバイス(ICCD)など)において用いられる光電陰極の量子効率を増大させるシステムおよび方法が提供される。量子効率向上デバイスは、ICCDの前に配置され、光電陰極上に入射する入射光線の入射角の増大を可能にするかまたは容易にするように構成されている。ICCD自体は、増大された入射角を達成するために傾けられ得、そのような傾きは好ましくは、ICCDのピクセルの列が延びる方向だけにあり、それによって、ICCDへの入射光の入射面が波長分散の方向と直角をなす。量子効率向上デバイスは、再結像光学素子と、光学傾き補償器と、光カプラとを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従った、ラマン分光法システムおよび量子効率向上デバイスの図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態と共に用いられ得るそれぞれの光ファイバに対応する光のバンドを、分光写真器内の回折格子がどのように生成するかを示している。
【図3A】図3Aは、光電陰極−ICCD真空境界において全反射が起こらない例を示している。
【図3B】図3Bは、増倍型アレイ面上の反射防止被覆に加えて、光電陰極−ICCD真空境界において全反射が起こる例を示している。
【図4】図4は、本発明の実施形態と共に再結像光学素子の使用を示している。
【図5】図5は、本発明の実施形態に従った、再結像光学素子、光学傾き補償器、および光カプラの使用を示している。
【図6】図6は、本発明の実施形態に従った、組み合わされた傾き補償器および光カプラを示している。
【図7】図7は、傾き補償器および光カプラが互いに分離されている一実施形態を示している。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に従った、勾配屈折率光学素子の使用を示している。
【図9】図9は本発明の実施形態に従った、円柱レンズの使用を示している。
【図10A】図10Aおよび図10Bは、本発明に従った、代替案の実施形態を示している。
【図10B】図10Aおよび図10Bは、本発明に従った、代替案の実施形態を示している。
【図11】図11は、本発明の一実施形態に従った、光学傾き補償器の一部分としてフレネルプリズムアレイの使用を示している。
【図12】図12は、屈折率がビーム入射角によってどのように変化するかを示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明は、ラマン分光法と共に用いられ得る増倍型電荷結合デバイス(ICCD)の文脈において提供される。しかしながら、当業者は、増倍器が光電陰極を有する場合には、本発明の実施形態が、増倍管(マルチチャンネルプレート(MCP)としばしば呼ばれる)を用いるCMOS検出器およびCCD検出器を含む任意のアレイ検出器に適用され得ることを認識するであろう。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に従った、ラマン分光法システムの図である。望遠鏡120は、試料110がレーザ105によって照射された結果として生成されるスペクトルを収集する。レーザ105は、望遠鏡120と共線的に配置されるか、または図1に示されているように軸外しであり得る。望遠鏡によって集められたスペクトルまたは光は、望遠鏡120によって作り出された光のスポットに合わせるために、図2の左手側に示されるような円形の様態で配置されたファイバ束130上に集光される。ファイバ束の個々のファイバは、分光写真器140に連絡しており、分光写真器140は、受け取った光を波長に応じて分散させる。結果としてもたらされる分散光は、分散光の「ピクチャ」または画像を捕捉する増倍型電荷結合デバイス(ICCD)150(例えば、カメラ)に送られる。一実施形態において、ピクチャまたは画像は、後の解析、およびライブラリ内に保存されている既知のスペクトルとのパターンマッチングのためにコンピュータシステム160内に保存される。
【0020】
図1に示されているように、ICCD150は、入射光に垂直な軸に対して傾けられ、それによって、光がICCD150の光電陰極155に達する入射角を増大させ得る。また、本発明の一実施形態に従った、量子効率(QE)向上デバイス300は、分光写真器140とICCD150との間に配置されている。QE向上デバイス300の詳細と、ICCD150を傾ける理由またはICCD150上に入射する光線を傾ける理由とが以下において提供される。
【0021】
図2は、分光写真器140内の回折格子210が、本発明の実施形態と共に用いられ得るファイバ束130からそれぞれの光ファイバに対応する光のバンドをどのように生成するかを示している。より具体的には、ファイバ束130からのファイバは、個々のファイバの直線アレイを作るように垂直方向に「扇形に広げられる」。この直線アレイからの光は、次いで回折格子210を通過させられる。その結果として、各々のファイバからの光は、空間的に分散され、水平方向に配置されたスペクトル220に変換される。結果としてもたらされるスペクトルの各々がICCD150に提供される。分光写真器内に用いられる他の光学素子は、明快にするために示されていない。
【0022】
より具体的には、異なる波長の光が水平方向に空間的に分散され、それによって、光子の数対波長が光スペクトルとしてICCD150上に記録され得る。信号を最大化するために、ICCDの応答は、ICCD内部の長方形のアレイ検出器の垂直方向において、単一の列のピクセルに沿ってしばしば完全に垂直にビンニングされる(FVB)(一般的なアレイは、256個のピクセルの水平方向の行と、1024個のピクセルの垂直の列とを有する)。換言すると、各々の扇形に広げられたファイバからの空間的に分散した光は、ピクセルの各々の垂直の組または(1つ以上の)列に沿って分析され得、ピクセルの各々の列が、光の異なる波長(または、光の比較的小さな帯域幅)に対応する。
【0023】
カメラおよびICCDデバイスなどの市販の増倍型アレイ検出器の重大な制限は、市販されている光電陰極(PC)の量子効率(QE)であり、その量子効率は、紫外(UV)スペクトル(特に、ラマン分光法に適切であるスペクトル)において、ほんの20%〜30%であり得る。より具体的には、光電陰極は、増倍管(例えば、図1および図3Aを参照されたい)の前面またはガラス窓の内側の上に堆積される。光は、外側の空気からガラスに入り込み、次いで光電陰極の中に入り込む。量子効率は、光電陰極によって測定可能な光電子に変換される入射光子の割合である。標準的用途において、小さい入射角における光電陰極内の光路の長さは短く、光の大部分が、光電陰極の他方の側を出て行き、無駄になる(図3A)。
【0024】
この低いQEの主な理由は、PC155の厚さが、可能な限り多くの光子を吸収するために十分に大きい(または厚い)が、生成された光電子が脱出すること(そして、ICCD内のマイクロチャンネルプレートによって増幅されること)を可能にするために十分に小さく(または、薄く)なければならないからである。製造業者は、これらの2つの効果をバランスさせることによって、最大のQEを得るようにPCの厚さを選択する。同様な折衷の設計考察が、他の撮像アレイ検出器および増倍型アレイ検出器と共に行われる。
【0025】
ChybaおよびMandel(JOSA B 5,1305−1311(1988))は、真空フォトダイオード用PCのQEは、補助光学素子(または反射防止被覆)が、光を管内側のPC−真空界面において全反射を引き起こすために十分に大きい角度(ガラス材料およびPC材料に依存して約60度)でPCに導くために用いられる場合に、4倍ほどの大きさで増大させられ得ることを明らかにした。横方向電界(TE)偏光に対しては、向上がかなり小さい角度で起こるが、横方向磁界(TM)偏光に対しては、生成される信号は、内部の入射角がブルースター角に近づくにつれてPC内の反射波が低減されることにより減少するが、ブルースター角を超えると再び増大する。この定性的な挙動は、本明細書で考慮されるICCD内のPCに対して有効であるが、一方で、関係する材料の光学的定数は、例えば、分光写真用途に対する全体の構成要素の配置のように、UV用途に対して異なる。従って、上記の研究が本明細書中に記載されている特定の分光写真用途にうまく適用され得ることは、決して予測可能ではなく、または予期されていない。
【0026】
本明細書中に記載の実施形態においては、QE向上デバイス300は、光線が非常に大きい入射角で光電陰極に入り込むことを可能にするために、増倍管の前窓に接触するように提供される。QE向上デバイスの機能は、空気−ガラス界面に対して補償することである。空気−ガラスにおいては、屈折率における高い不整合が存在する。この大きな不整合は、空気からガラスに向かう高い反射係数をもたらす。本発明の実施形態の機能の1つは、空気−ガラス界面における不整合を防止することによって、この高い反射を回避することである。このことは、図3Bに示されているようなAR被覆310かまたはガラス窓に触れる固体光学素子を用いて遂行され得る(これらの固体光学素子の空気−ガラス表面はまた、一般に反射防止被覆されている)。
【0027】
大きい入射角の理由は2つの部分からなる。第一の理由は、入射角が増大するにつれて、光子の吸収によって生成される光電子の脱出経路の長さが全く増大することなく、PC155内の吸収経路の長さが増大する。このことは、増大されたQEをもたらす。
【0028】
第二の理由は、入射角が増大するにつれて、PC−真空界面において反射された光の量が、臨界角よりも大きい任意の入射角に対してすべての光が最後に反射されるまで(光学素子の法則に起因して)増大する。この角度を超えると、光電陰極に入り込むすべての光子が、PC−真空境界への吸収の機会と、PC−真空境界からの吸収の機会との両方を有する。このことは、QEを一層増大させる。全反射に対する臨界角は、PC155の材料に依存する。
【0029】
ICCDの光電陰極155の量子効率を増大させる本発明の実施形態に従って、ICCD150の焦点面は、傾けられ(または、実質的に光学的に傾けられ)、それによって、光がICCDに達する入射角を増大させ、それによって、PC155内の光の全反射の可能性を増大させる。再び例示すると、図3Aは、全反射が起こらないICCD150の光電陰極155上に入射する光を示している。このことは、PC155を通過する光線によって示される。一方、図3Bは、より大きい入射角でPC155に達する光線を示し、PC−ICCD真空境界における全反射を結果としてもたらす。そのような全反射が起こる場合には、増大された光電陰極効果が結果としてもたらされ、それによって、光電陰極155の量子効率の増大を引き起こす。
【0030】
しかしながら、分光写真用途または撮像用途の状況において、光電陰極に対する増大された入射角、従って、増大されたQEを達成するために、図1に示されたようにICCDを傾けることによる問題があり得る。当業者は、傾けること(または、実質的に傾けること)が、ICCD150の面を見る場合に、ICCDの垂直軸または水平軸に対してであり得ることを認識するであろう。
【0031】
第一に、PC155内側の大きい入射角は、1つの方向(入射光線および反射光線を含む入射面と呼ばれる平面であり、垂直面として取られる)に沿って「スミア化された」光を導き、その方向に沿って画像解像度の損失を引き起こし得る。この問題は、本発明の実施形態によって、(1)垂直のビン(スペクトルが垂直にビンニングされる用途に対しては適切であるが、真のピクセル単位のピクチャが必要である場合には、ビンニングは用いられ得ない)の方向に沿って存在する入射面を作ることによって対処される。換言すると、この傾ける技術は、必要とされる入射光の傾き角が垂直のビンまたはICCD150のピクセルの列の方向に沿っている場合には、この用途におけるICCDに対して利用され、それによって、入射光の入射面が波長分散の方向と直角をなすことができる。
【0032】
上記の問題はまた、(2)ほとんどのPCが、撮像要素(ピクセル)のサイズと比較して薄いことを認識することによって対処される。典型的な光電陰極は、非常に薄い(約0.01マイクロメートル〜約0.5マイクロメートル)が、検出器内のピクセルは、約2マイクロメートル〜100マイクロメートルであり、従って、入射角は、かなり大きいスミアが起こるためには非常に大きくならなければならない。従って、PCが十分に薄いかまたはピクセルサイズが十分に大きいか、あるいは分光写真器またはカメラの必要とされる解像度が単一ピクセルの解像度を必要としない場合においては、垂直のビンニングは全く必要ではない。
【0033】
第二に、適切な撮像のためには、カメラまたは分光写真器の焦点面は、光電陰極と共面でなければならない。このことは、より重大な問題である。光が大きい入射角で増倍器PCに入り込むことを可能にするために必要とされる結合光学素子と共に増倍型検出器を傾ける必要性は、このことを実際的でないように思わせる。この問題は、本発明の実施形態によって、焦点面を分光写真器の出力ポートから十分に遠く離れるように移動させるための、QE向上デバイス300内のオプションの再結像光学素子315の使用を可能にすることにより、(図4に示されているように)増倍型アレイ検出器の前における傾き補償および結合光学素子の配置を可能にすることによって対処される。より具体的には、図4は、そのPC155がF’に沿って並ばなければならない増倍型アレイ検出器の前に、再結像光学素子315が結合光学素子を配置する空間を与えることを示している。向上されない動作または標準的動作において、PCはFに沿って存在している。
【0034】
本発明の実施形態が実行し得る3つの機能が図5中に例示されている。オプションの再結像光学素子315が提供されることにより、焦点面をFからF’に再結像し得る。傾き補償光学素子320がQE向上デバイス300の一部分として提供されることにより、分光写真器の原初の焦点面が、傾けられた光電陰極155上に適切に再結像されることを確実にする。そして、光カプラ330が利用されることにより、量子効率を増大させるために必要とされる大きい入射角で光を増倍管の中に結合し得る。この機能性を達成する他の構成要素の配置が図6〜図9に示されている。これらの図では、PC155が傾けられ、所望の大きい入射角で光がPCに入り込むことを可能にするために提供される結合光学素子(または被覆)330が追加されている場合であっても、分光写真器140の原初の焦点面Fから再結像される焦点面F’まで2つの光線の各々が取る光路は同じである。
【0035】
ICCD150を傾けることは(TE波の場合の全反射に対する臨界角未満のときでさえも)、光電子が脱出するための経路を増大させることなく、PC155内の光に対する光(吸収)路の長さを増大させる。解像度の損失は全く起こらない。なぜならば、入射光および反射光の光線が常にピクセルの同じ垂直の列またはビンに留まり、その列における各々のピクセルからの信号が、一体的にビンニングされ続けるからである。
【0036】
図6において、分光写真器140の焦点面はF’に再結像される。(好ましくは入口面のAR被覆による)プリズム331は2つの機能を担い、2つの機能とは、(1)光線が大きい入射角でPCに入り込むことを可能にする光カプラと、(2)PC155の上部に達する光線に対して追加の光遅延を提供するように設計され、それによって、上の光線および下の光線に対するF’への光路が保たれ、それによって、画像面F’がPC155と共面であることを可能にする傾き補償器とである。(ガラスの幾何学的厚さTにおける光路は、空気の同じ幾何学的厚さTにおける光路よりも大きいので、上部の光線に対するガラス内の短い幾何学的経路は、底部の光線がPC155まで空気中に有するより長い幾何学的経路に対して補償される)。
【0037】
プリズムが光を曲げる量は、一般に波長に依存する。分光器の用途において、光の波長は、アレイ検出器を横切って変化する(この方向は、ページの平面と直角である)。このことを補償するために、プリズムの頂角は、増倍器の面を横切ってわずかに変化するように作られ得る。画像の収差がまた、くさびによって引き起こされ得るが、[BarthおよびOepts、1988]の設計によってまたは追加の光学素子の使用によって(少なくとも部分的に)補償され得る。
【0038】
図7において、分光写真器の焦点面FがF’に再結像される。(好ましくは入口面のAR被覆による)プリズム331は、傾き補償器として作用する。この場合に、増倍器の窓上のAR被覆は、光カプラとして作用する。コンピュータ光線追跡アプリケーションが、一般的材料で、小さなサイズに作られ、かつ小さな頂角を有するプリズムは、画像面と入射光線の方向との間にかなり大きい角度(23.5度)を作り出すことが可能であることを検証するために用いられた。可能性のある一実装においては、示されているように、PC155が画像面F’に位置合わせされる。
【0039】
図8において、分光写真器の焦点面FがF’に再結像される。画像面は、光カプラとして、かつ傾き補償器として役立つ勾配屈折率光学素子340によって回転させられる。勾配屈折率光学素子340は、増倍型アレイ検出器の先端をなす面に沿って直線的に増大する屈折率を有し、それによって、両方の光線のF’への光路は同一である。明快にするために、直角でない光学界面における屈折効果は示されていない。
【0040】
図9は、円柱レンズ350の使用を示している。分光写真器の焦点面FがF’に再結像される。円柱レンズ350は、光結合および部分的傾き補償の機能を果たす。レンズ350の焦点合わせ能力は、F’方向に沿って画像の倍率を低減する。このことが、傾けられた方向に沿って画像の大きさを圧縮することによって、傾き補償の必要性を低減するが、一方で、追加の傾き補償が依然として適切な焦点合わせに対して必要であり得る。
【0041】
従って、量子効率向上デバイス300は、いくつかの形態のうちの1つを取り得る。上記のように、(傾けられた)ICCD150およびQE向上デバイス300の全体の配置の目的は、垂直方向のすべての光線に対して焦点面までの光路長を同一に保つことによってスペクトル分解能を損なうことなく、PC155内の吸収光路を増大させることによって、光電陰極155のQEを向上させることである。光線は、焦点面までの異なる幾何学的経路長を有し得るが、適切な焦点に導かれる同一の光路長を有しなければならない。
【0042】
また別の実施形態において、図10Aは、代替案の実施形態を示しており、図1に示された構成要素の配置がわずかに変更されている。ここでは、補助鏡340が用いられて、分光写真器150の焦点面を、傾けられたPC155の面と一致させる態様において結像する。再結像光学素子および傾き補償光学素子(図示されていない)がまた必要であり得る。好適な実施形態において、ICCD150は、光に結合するためのその前面/窓の上にAR被覆を有する。この配置によって、ICCD150は、分光写真器140が配置されている軸510と異なる軸512に沿って配向される。そのような配置は、1つの方向においてより多くの空間を占有し得るが、単一の鏡540を適切な距離および傾き角に調整することは、よりかさばるICCDカメラ自体の距離/傾きを調整することよりも簡単であり得る。
【0043】
図10Bは、さらに別の実施形態を示している。ここでは、別個の鏡540の代わりに、反射機能は、固体光学素子550の後方反射ファセット545によって実行され、固体光学素子550は、屈折率がICCD150の前面と整合するように空間を満たし、大きい角度で光に結合するためのICCD150表面のAR被覆の必要性を取り除く。一方では、AR被覆が、固体光学素子550の前面において望ましくあり得る。再結像光学素子および傾き補償光学素子(図示されていない)がまた必要であり得る。
【0044】
図11Bは、本発明の一実施形態に従った、光学傾き補償器320の一部分としてフレネルプリズムアレイの使用を示している。より具体的には、上記のように光を曲げるための(図6に示されたプリズム331と同様な)従来のプリズムを用いるのではなく、本発明は、図11に示されているように光を曲げるためのフレネルプリズムアレイ352を代わりに利用し得る。フレネルプリズムアレイ352を用いる利益は、標準的プリズムと同じ量の曲がりをもたらし得ることであり、フレネルプリズムのファセットサイズが十分に小さくされており、かつ十分に薄いフレネルアレイである場合には、フレネルプリズムアレイによって導入される収差は、標準的プリズムによって導入される収差よりもかなり(一般には、100×の係数だけ)少なくあり得る。
【0045】
検出器150面における最適ビーム入射角を達成するためにフレネルプリズムアレイを用いることによって、同じ量の入射光に対して検出器によって送達される信号は、2×(またはより多く)の係数だけ増大し得、一方で、プリズムデバイスが全く用いられなかった場合に達成される画像品質と同じ画像品質が維持され得る。
【0046】
光線がプリズムによって曲げられる(または、偏向させられる)量は、プリズム基板の屈折率nと、プリズム角Aと、光線がプリズムに入射する最初の角度に依存する。レンズまたは望遠鏡などの画像形成デバイスは、特定の範囲の光線角度から作られる円錐形の画像形成光鉛筆を作り出す。一般に、光鉛筆がプリズムから出て来た後、円錐形の鉛筆内の光線の角度の拡がりは拡大される。このことは、検出器に到達する光線の角度の拡がりは、検出器の量子効率が最大化される角度の範囲をここで著しく超え得るという深刻な問題を作り出し得る。
【0047】
光線の角度の拡がりを最小化するために、プリズムが、「極小偏角」条件を満たすように入射光線に対して配向される必要があることは公知である。極小偏角は、プリズムを適切に傾けることによって常に達成され得る。しかしながら、一般に、極小偏角が確立される場合には、両方のプリズム面が入射光と検出器との両方に対して任意の角度に傾けられる。従って、この実施形態の別の局面は、フレネルプリズム基板の屈折率の適切な選択によって極小偏角条件が満たされ、一方で、図11に示されているように、フレネルプリズムの背面がまた検出器表面と平行にされ得ることである。
【0048】
数学的に、極小偏角のこの特別な場合は、フレネルプリズム基板の屈折率nが、
【0049】
【数1】
として計算されるときに達成される。ここで、Iは検出器150上への所望の入射角である。
【0050】
図12は、式1によって記述されるように、屈折率がビーム入射角によってどのように変化するかを示している。図12によると、屈折率nは、
【0051】
【数2】
の範囲に存在する。幸いにも、この範囲は、市販されている光学ガラスおよび透明プラスチックの幅広いファミリーによって極めてよく示される。従って、実際において、フレネルプリズムアレイ352の平坦な背面を有することは常に可能であるはずであり、一方で、検出器150に到達する光がすべて、最大の検出器QEを与える入射角から最小限の拡がりの内に到達する極小偏角条件に常に合致するはずである。
【0052】
より明快にするために、図11は、フレネルプリズムアレイ352の背面の平坦な面と検出器150との間の空間を示している。実際において、示された大きい空間を有することは望ましくなく、空間が可能な限り小さくされる場合には、最も高い画像品質が維持される。しばしば、空間は、フレネルアレイ背面を検出器150との接触状態に配置することによって、ゼロまで小さくされるべきである。
【0053】
従って、量子効率向上デバイスは、特に分光写真の用途に関連して用いられる場合にICCDの効率を増大し、それによって、分光写真システム全体の感度を増大させる。適切な角度(および、垂直のビンニングを維持するための適切な方向)にICCDを傾けることによって、分光写真器からの光は、より大きい入射角でICCDの光電陰極に達する。一般に、角度に依存して、増大した数の光線が、従ってICCDの光電陰極と排出領域との間の境界において全反射を経験する。この増大された全反射が光電陰極の量子効率を増大させる。
【0054】
一実施形態において、量子効率向上デバイスは、既存のICCD機器へのアドオンとして利用可能にされ得る。しかしながら、QE向上デバイスが適切に位置合わせされ、かつICCDの窓とQE向上デバイスとの間の汚れまたは汚染がなく取り付けられることを確実にするためには、ICCD製造業者に、QE向上デバイスをオプションとして含ませ、かつクリーンルームの環境内で2つのデバイス(ICCDおよびQE向上デバイス)を「密接に結合させる」かまたは一体化させることは望ましいことであり得る。
【0055】
可能性のある接続の代替案としては、QE向上デバイスが、ボルト締めされたり、ねじ留めされたり、さもなければICCDの面に固定され得る。もちろん、ARおよび屈折率整合用被覆、または用いられる接着材は、従来の態様において適用され得る。
【0056】
従って、本発明の実施形態は、PC内側の増大された角度を結果としてもたらす、ガラス−光電陰極境界における入射角の増大を可能にし、それによって、PC内側の光路長を増大させる。全反射に対する臨界角に近づくにつれて、より少ない光線が光電陰極の後ろを出て行き、より多くの光線が光電陰極の中に戻るように反射される。その結果として、光線の数がまた、この効果に起因して角度によって増大する。一旦、全反射に対する臨界角に達すると、それよりも大きい角度に対しては、すべての光線がPC−真空境界からPCの中に戻るように反射される。
【0057】
本明細書中に記載されたシステムおよび方法は、本明細書の精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態に組み入れられ得る。従って、上記の実施形態は、すべての点において例示と考えられ、限定を意味するものではない。
【符号の説明】
【0058】
105 レーザ
110 試料
120 望遠鏡
130 ファイバ束
140 分光写真器
150 増倍型電荷結合デバイス(ICCD)
155 光電陰極
160 コンピュータシステム
300 量子効率(QE)向上デバイス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
アレイ検出器と、
該アレイ検出器が使用される場合に、該アレイ検出器上に入射する光線の経路内にあるように配置される量子効率(QE)向上デバイスと
を備えている、装置。
【請求項2】
前記アレイ検出器は、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記アレイ検出器は、該アレイ検出器の前面または窓に取り付けられた光電陰極を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記QE向上デバイスは、光学傾き補償器を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記QE向上デバイスは、光カプラを備えている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記光学傾き補償器は、プリズムを備えている、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記光学傾き補償器は、フレネルプリズムアレイを備えている、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
再結像光学素子をさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
分光写真器をさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記アレイ検出器は、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)であり、該ICCDは、該ICCDのピクセルの列が延びる方向に沿って傾けられ、それによって、該ICCDへの入射光の入射面は、波長分散の方向と直角である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ICCDは、前記分光写真器からの光が出力される軸と異なる軸に沿って配置されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
光を前記分光写真器に伝えるように配置された光ファイバの直線的配列をさらに備え、それによって、該分光写真器によって生成された光のバンドは、前記QE向上デバイスを介して前記ICCDに向けられる、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記ICCDは、カメラの一部分である、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
増倍型電荷結合デバイス(ICCD)用のアタッチメントであって、
光学構成要素を備え、該光学構成要素は、該ICCD上に入射する光の光路内に配置されている場合には、個々の光線を、増大された入射角において該ICCDの光電陰極上に入射させ、該増大された入射角は、該ICCDの該光電陰極内側の該個々の光線の光路の長さと、該光電陰極内側の増大された光線の総数との増大を結果としてもたらし、該光電陰極の増大された量子効率を結果としてもたらす、アタッチメント。
【請求項15】
分光写真器の画像面を前記光電陰極の面と一致させる再結像光学素子をさらに備えている、請求項14に記載のアタッチメント。
【請求項16】
光学傾き補償器および光カプラをさらに備えている、請求項14に記載のアタッチメント。
【請求項17】
前記光学傾き補償器は、フレネルプリズムアレイを備えている、請求項16に記載のアタッチメント。
【請求項18】
分光分析を実行する方法であって、
望遠鏡によって光を収集することと、
該望遠鏡によって収集された光を分光写真器に伝え、該分光写真器内で複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドを生成することと、
該複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドを増倍型電荷結合デバイス(ICCD)の光電陰極上に入射させることと、
該複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドが該ICCDの該光電陰極上に向かう入射角を制御して、それによって、該入射角を制御されていない該光電陰極の量子効率に比べて該光電陰極の量子効率を増大させることと
を包含する、方法。
【請求項19】
前記ICCDが配置されている光軸と異なる光軸に沿って前記分光写真器を配置することをさらに包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ICCDのピクセルの列が延びる方向に沿って該ICCDを傾けることをさらに包含し、それによって、該ICCDへの入射光の入射面は、波長分散の方向と直角である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドに基づく画像を用いて、ラマン分光法を行うことをさらに包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項1】
装置であって、
アレイ検出器と、
該アレイ検出器が使用される場合に、該アレイ検出器上に入射する光線の経路内にあるように配置される量子効率(QE)向上デバイスと
を備えている、装置。
【請求項2】
前記アレイ検出器は、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記アレイ検出器は、該アレイ検出器の前面または窓に取り付けられた光電陰極を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記QE向上デバイスは、光学傾き補償器を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記QE向上デバイスは、光カプラを備えている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記光学傾き補償器は、プリズムを備えている、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記光学傾き補償器は、フレネルプリズムアレイを備えている、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
再結像光学素子をさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
分光写真器をさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記アレイ検出器は、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)であり、該ICCDは、該ICCDのピクセルの列が延びる方向に沿って傾けられ、それによって、該ICCDへの入射光の入射面は、波長分散の方向と直角である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ICCDは、前記分光写真器からの光が出力される軸と異なる軸に沿って配置されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
光を前記分光写真器に伝えるように配置された光ファイバの直線的配列をさらに備え、それによって、該分光写真器によって生成された光のバンドは、前記QE向上デバイスを介して前記ICCDに向けられる、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記ICCDは、カメラの一部分である、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
増倍型電荷結合デバイス(ICCD)用のアタッチメントであって、
光学構成要素を備え、該光学構成要素は、該ICCD上に入射する光の光路内に配置されている場合には、個々の光線を、増大された入射角において該ICCDの光電陰極上に入射させ、該増大された入射角は、該ICCDの該光電陰極内側の該個々の光線の光路の長さと、該光電陰極内側の増大された光線の総数との増大を結果としてもたらし、該光電陰極の増大された量子効率を結果としてもたらす、アタッチメント。
【請求項15】
分光写真器の画像面を前記光電陰極の面と一致させる再結像光学素子をさらに備えている、請求項14に記載のアタッチメント。
【請求項16】
光学傾き補償器および光カプラをさらに備えている、請求項14に記載のアタッチメント。
【請求項17】
前記光学傾き補償器は、フレネルプリズムアレイを備えている、請求項16に記載のアタッチメント。
【請求項18】
分光分析を実行する方法であって、
望遠鏡によって光を収集することと、
該望遠鏡によって収集された光を分光写真器に伝え、該分光写真器内で複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドを生成することと、
該複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドを増倍型電荷結合デバイス(ICCD)の光電陰極上に入射させることと、
該複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドが該ICCDの該光電陰極上に向かう入射角を制御して、それによって、該入射角を制御されていない該光電陰極の量子効率に比べて該光電陰極の量子効率を増大させることと
を包含する、方法。
【請求項19】
前記ICCDが配置されている光軸と異なる光軸に沿って前記分光写真器を配置することをさらに包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ICCDのピクセルの列が延びる方向に沿って該ICCDを傾けることをさらに包含し、それによって、該ICCDへの入射光の入射面は、波長分散の方向と直角である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の空間的に分散された光の水平方向のバンドに基づく画像を用いて、ラマン分光法を行うことをさらに包含する、請求項18に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−64686(P2011−64686A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207360(P2010−207360)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(505194077)アイティーティー マニュファクチャリング エンタープライジーズ, インコーポレイテッド (114)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(505194077)アイティーティー マニュファクチャリング エンタープライジーズ, インコーポレイテッド (114)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]