アンテナ装置,方位検出装置
【課題】二次元的にビーム方向を変化させることが可能であり且つ小型のアンテナ装置及び方位検出装置を提供する。
【解決手段】送信側は第1走査方向に沿って配列された複数の単位アンテナAUからなる送信アンテナ部10に対してロトマンレンズ41を介して給電を行うことにより、第1走査方向に沿った一次元的な走査を行い、受信側は第2走査方向に沿って配列された複数の単位アンテナAUからなる受信アンテナ部20から、単位アンテナAU毎に得られる受信信号(ビート信号)に基づいて、第2走査方向に沿った一次元的な方位検出を行い、これを組み合わせることで二次元的な方位検出を行う。但し、受信ビームの縦幅(第1走査方向に沿った角度範囲)を、送信ビームの走査範囲より広く、送信ビームの横幅(第2走査方向に沿った角度範囲)を、受信ビームの走査範囲より広く設定する。
【解決手段】送信側は第1走査方向に沿って配列された複数の単位アンテナAUからなる送信アンテナ部10に対してロトマンレンズ41を介して給電を行うことにより、第1走査方向に沿った一次元的な走査を行い、受信側は第2走査方向に沿って配列された複数の単位アンテナAUからなる受信アンテナ部20から、単位アンテナAU毎に得られる受信信号(ビート信号)に基づいて、第2走査方向に沿った一次元的な方位検出を行い、これを組み合わせることで二次元的な方位検出を行う。但し、受信ビームの縦幅(第1走査方向に沿った角度範囲)を、送信ビームの走査範囲より広く、送信ビームの横幅(第2走査方向に沿った角度範囲)を、受信ビームの走査範囲より広く設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元走査が可能なアンテナ装置、及び2次元的な方位検出が可能な方位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水平方向走査用のロトマンレンズ(水平レンズ)と、垂直方向走査用のロトマンレンズとを組み合わせて二次元走査を実現するアンテナ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2002−523951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この従来のアンテナ装置では、水平方向走査用のロトマンレンズを、垂直方向のビームスキャン時に実現すべきビーム方向の数だけ用意すると共に、垂直方向走査用のロトマンレンズを、水平方向のビームスキャン時に実現すべきビーム方向の数だけ用意する必要がある。
【0004】
つまり、従来のアンテナ装置では、多くのロトマンレンズを用いて構成する必要があるため装置構成が大型化し、しかも、検出可能な方位分解能を向上させるためにビーム方向の数を増加させると、単にロトマンレンズの数が増大するだけでなく、個々のロトマンレンズの規模も大型化するため、方位分解能を向上させるほど、装置規模が急激に大型化してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するために、二次元的にビーム方向を変化させることが可能であり且つ小型のアンテナ装置及び方位検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた発明である請求項1に記載のアンテナ装置では、送信手段が、予め設定された第1走査方向に沿って指向方向の異なる複数の送信ビームによって探査波を送信し、受信手段が、第1走査方向と交差するように設定された第2走査方向に沿って指向方向の異なる複数の受信ビームによって、探査波を反射した物体からの反射波を受信する。
【0007】
このように本発明のアンテナ装置では、送信手段及び受信手段のいずれもが一次元的な走査を行うように構成されているため、簡易な構成であるにも関わらず二次元走査を実現することができる。
【0008】
なお、送信手段は、請求項2に記載のように、送信ビームにおける第2走査方向のビーム幅が、受信手段における第2走査方向の方位検出範囲の全体を含む広さとなるように設定されていることが望ましい。同様に、受信手段は、請求項3に記載のように、受信ビームにおける第1走査方向のビーム幅が、送信手段における第1走査方向の方位検出範囲の全体を含む広さとなるように設定されていることが望ましい。
【0009】
このように構成された本発明のアンテナ装置によれば、送信ビームと受信ビームとを組み合わせてなるチャンネル間で生じる受信信号の利得差を小さく抑えることができる。
【0010】
また、請求項4に記載のように、複数の送信ビーム間の利得差、及び複数の受信ビーム間の利得差を補償する第1補償手段を備えていることが望ましい。
【0011】
即ち、図10(a)に示すように、送信ビーム間の利得差、又は受信ビーム間の利得差(指向性を表すビーム形状の差)がある場合には、図10(b)に示すように、ビーム間で利得が同じとなるように補正する。これにより、例えば、図11に示すように、隣接するビーム間で大きな利得差がある場合、物標の存在方向に対して指向方向が一致する利得の小さなビームより、物標の存在方向に対して指向方向がずれた利得の大きなビームの方が、受信電力が大きくなり、誤った方位が検出されてしまう可能性があるが、このような事態を回避することができる。
【0012】
更には、請求項5に記載のように、送信ビームの利得が第2走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であること、又は受信ビームの利得が前記第1走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であることに基づき、送信ビームと受信ビームとを組合せたチャンネル間で生じる受信信号の利得差を補償する第2補償手段を備えていることが望ましい。
【0013】
このように構成された本発明のアンテナ装置によれば、受信信号に対して実行する信号処理の精度(例えば、方位検出精度)を向上させることができる。
【0014】
また、送信手段及び受信手段は、例えば、請求項6に記載のように、少なくとも一方がビームの指向方向を機械的に変化させるように構成されていてもよいし、請求項7に記載のように、少なくとも一方がロトマンレンズ又はレンズアンテナによってビーム形成を行うように構成されていてもよい。
【0015】
また、本発明のアンテナ装置は、請求項8に記載のように、第1測定手段が、受信手段の受信ビームを順次切り替えて、送信手段及び受信手段に探査波を送受信させることで、受信ビーム毎に受信手段での受信レベルを測定し、第1設定手段が、第1測定手段での測定結果に基づき、受信レベルが最大となる受信ビームにて探査波を受信するように受信手段を設定するように構成されていてもよい。
【0016】
このように構成された本発明のアンテナ装置によれば、第1走査方向に沿った1次元的な走査を行うように使用する場合に、第2走査方向については最も大きな受信レベルを得ることが可能な向きに受信ビームの向きを固定すること、即ち、第2走査方向に沿ったビームの軸調整を行うことができる。
【0017】
また、本発明のアンテナ装置は、請求項9に記載のように、第2測定手段が、送信手段の送信ビームを順次切り替えて、送信手段及び受信手段に探査波を送受信することで、送信ビーム毎に受信手段での受信レベルを測定し、第2設定手段が、第2測定手段での測定結果に基づき、受信レベルが最大となる送信ビームにて探査波を送信するように送信手段を設定するように構成されていてもよい。
【0018】
このように構成された本発明のアンテナ装置によれば、第2走査方向に沿った1次元的な走査を行うように使用する場合に、第1走査方向については最も大きな受信レベルを得ることが可能な向きに送信ビームの向きを固定すること、即ち、第1走査方向に沿ったビームの軸調整を行うことができる。
【0019】
次に、請求項10に記載の方位検出装置では、送信手段が、予め設定された第1走査方向に沿って指向方向の異なる複数の送信ビームによって探査波を送信し、受信手段が、探査波を反射した物体からの反射波を受信する。そして、方位検出手段が、受信手段からの受信信号に基づき、反射波の到来方向について、第1走査方向に交差する第2走査方向に沿った方位角度を求める。
【0020】
本発明の方位検出装置では、送信側(送信手段)では第1走査方向に沿って一次元的な走査を行うと共に、受信側(受信手段及び方位検出手段)では第2走査方向に沿って一次元的な方位検出を行い、これを組み合わせることで二次元的な方位検出を可能にしているため、一方の側だけで二次元的な走査を実現する従来装置と比較して、装置構成を簡易なものとすることができる。
【0021】
なお、本発明の方位検出装置は、送信ビームを固定して、第2走査方向に沿って一次元的な方位検出を行うものとして使用してもよく、この場合、第1走査方向を調整方向として、送信ビームの向きの調整を行うようにすればよい。
【0022】
また、この場合、請求項11に記載のように、複数の送信ビーム間の利得差を補償する第1補償手段を備えていることが望ましい。
【0023】
次に、受信手段は、請求項12に記載のように、第1走査方向と交差するように設定された第2走査方向に沿って指向方向の異なる複数の受信ビームによって反射波を受信するように構成されていてもよい。
【0024】
このように構成された本発明の方位検出装置は、請求項1に記載のアンテナ装置を用いて構成されたものとなる。従って、上述の請求項2〜7に記載された構成を、本発明の方位検出装置に適用してもよいことは言うまでもない。
【0025】
例えば、請求項13に記載のように、複数の送信ビーム間の利得差、及び複数の受信ビーム間の利得差を補償する第1補償手段(請求項4と同様)を備えていてもよいし、請求項14に記載のように、送信ビームの利得が第2走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であること、又は受信ビームの利得が前記第1走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であることに基づき、送信ビームと受信ビームとを組合せたチャンネル間で生じる受信信号の利得差を補償する第2補償手段(請求項5と同様)を備えていてもよい。
【0026】
また、請求項10又は請求項11に記載の方位検出装置では、請求項15に記載のように、受信手段は、第2走査方向に沿って配列された複数のアンテナ素子からなり、方位検出手段は、受信手段を構成する各アンテナ素子からの受信信号をサンプリングしてデジタルデータに対する信号処理によって方位検出を行うように構成されていてもよい。
【0027】
この場合、方位検出手段が実行する信号処理は、請求項16に記載のように、デジタルビームフォーミングであってもよいし、請求項17に記載のように、MUSIC(MUltipule Signal Classification )等のスーパーレゾリューション法を用いた処理であってもよい。
【0028】
また、請求項10乃至請求項17のいずれかに記載の方位検出装置では、送信手段は、例えば、請求項18に記載のように、送信ビームの指向方向を機械的に変化させるように構成されていてもよいし、請求項19に記載のように、ロトマンレンズ又はレンズアンテナによってビーム形成を行うように構成されていてもよい。
【0029】
また、本発明の方位検出装置は、請求項20に記載のように、第2測定手段が、送信手段の送信ビームを順次切り替えて、送信手段及び受信手段に探査波を送受信させることで、送信ビーム毎に受信手段での受信レベルを測定し、第2設定手段が、第2測定手段での測定結果に基づき、受信レベルが最大となる送信ビームにて探査波を送信するように送信手段を設定するように構成されていてもよい。
【0030】
このように構成された本発明の方位検出装置によれば、第2走査方向に沿った1次元的な走査(1次元的な方位検出)を行うように使用する場合に、第1走査方向については最も大きな受信レベルを得ることが可能な向きに送信ビームの向きを固定すること、即ち、第1走査方向に沿ったビームの軸調整を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の方位検出装置1の全体構成図である。
【0032】
<全体構成>
図1に示すように、方位検出装置1は、探査波を送信する送信アンテナ部10と、探査波を反射した物体からの反射波を受信する受信アンテナ部20と、ミリ波帯の高周波信号を発生させる発振器や発振器の出力を電力分配して送信信号S及びローカル信号Lを生成する電力分配器等からなる信号生成部30と、信号生成部30で生成された送信信号Sを利得調整信号Gによって指定された利得で増幅する可変増幅器35と、可変増幅器35で増幅された送信信号の送信アンテナ部10に対する給電方法を送信ビーム制御信号CSに従って制御することにより送信ビームの指向方向を変化させる送信側給電制御部40と、受信アンテナ部20からの受信信号に信号生成部30からのローカル信号Lを混合してビート信号を生成する受信回路部50と、可変増幅器35に対する利得調整信号G,送信側給電制御部40に対する送信ビーム制御信号CSを出力し、受信回路部50にて生成されたビート信号に基づいて、反射波の到来方向を求める信号処理部60とを備えている。
【0033】
<送信アンテナ部及び受信アンテナ部>
送信アンテナ部10及び受信アンテナ部20は、いずれも、一列かつ等間隔に配列された複数のアンテナ素子ASで構成された単位アンテナAUを用い、この単位アンテナAUをアンテナ素子ASの配列方向とは直交する方向に一列かつ等間隔に複数個配列することで構成されている。
【0034】
なお、送信アンテナ部10及び受信アンテナ部20において、各単位アンテナAUは個別に給電されると共に、同一の単位アンテナAUを構成する各アンテナ素子ASは、同一振幅,同一位相の信号が給電されるように構成されている。即ち、送信アンテナ部10及び受信アンテナ部20は、単位アンテナAUを1次元的に配列してなるアレーアンテナとして動作する。
【0035】
そして、送信アンテナ部10及び受信アンテナ部20は、同一平面に配置され、且つ、送信アンテナ部10を構成する単位アンテナAUの配列方向(以下、第1走査方向ともいう)と、受信アンテナ部20を構成する単位アンテナAUの配列方向(以下、第2走査方向ともいう)とが直交するように配置されている。
【0036】
また、第1走査方向を縦、第2走査方向を横として、送信アンテナ部10は縦長の矩形状に、受信アンテナ部20は横長の矩形状に形成されている。
【0037】
但し、受信アンテナ部20の縦サイズ(受信アンテナ部20を構成する単位アンテナAUの長手方向の長さ)は、受信アンテナ部20により形成される受信ビームの縦幅(角度範囲)が、送信アンテナ部10による第1走査方向の方位検出範囲(送信ビームの走査範囲)より広くなるように設定されている(図2参照)。
【0038】
同様に、送信アンテナ部10の横サイズ(送信アンテナ部10を構成する単位アンテナAUの長手方向の長さ)は、送信アンテナ部10により形成される送信ビームの横幅(角度範囲)が、受信アンテナ部20による第2走査方向の方位検出範囲(受信ビームの走査範囲)より広くなるように設定されている。
【0039】
<送信側給電制御部>
送信側給電制御部40は、送信アンテナ部10を構成する各単位アンテナAUに接続される複数のアンテナポート、及びそれぞれが異なった指向性に対応付けられた複数のビームポートを有するロトマンレンズ41と、信号処理部60からの送信ビーム制御信号CSに従って、給電を行う(送信信号を供給する)ビームポートを択一的に切り替える切替スイッチ43とからなる。
【0040】
なお、ロトマンレンズ41は、各アンテナポートから出力される送信信号が位相が、一定量ずつ異なるように送信信号を分配し且つ遅延させ、しかも、その一定量が選択するビームポート毎に異なるように構成された周知のものである。
【0041】
また、以下では、送信ビームについて、送信側給電制御部40を介して選択可能な第1走査方向に沿った方位角度を規定垂直方位角というものとする。
【0042】
<受信回路部>
受信回路部50は、受信アンテナ部20を構成する単位アンテナAU毎に設けられ、該単位アンテナAUからの受信信号を処理する複数(単位アンテナAUと同数)の個別受信回路により構成されている。
【0043】
なお、各個別受信回路は、ローカル信号Lと混合してビート信号を生成するミキサの他、ビート信号から不要な信号成分を除去するバンドパスフィルタ、受信信号又はビート信号を増幅する増幅器等からなる周知のものである。但し、図1は、ミキサ以外を省略して示したものである。
【0044】
<信号処理部>
信号処理部60は、CPU,ROM,RAMからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、更に、受信回路部50から供給されるビート信号をサンプリングするAD変換器を少なくとも備えている。
【0045】
なお、ROMには、CPUが実行する各種プログラムの他、可変増幅器35に対する利得調整信号Gの設定に用いる利得調整テーブルが記憶されている。
【0046】
この利得調整テーブルとは、送信ビームを切り替えることによって生じる利得の変化が補償されるように、送信ビームの規定垂直方位角と可変増幅器35での増幅率とを対応付けて記憶したものである。
【0047】
即ち、上述したように(図2参照)、受信ビームの縦方向のビーム範囲が、全ての送信ビームをカバーするように設定されているものの、受信ビームのビーム範囲内の利得が均一ではなく、どの送信ビームを用いるかによって利得が変化してしまうため、これを補償する必要があるのである。
【0048】
ここで、信号処理部60が実行する2次元走査処理を、図3に示すフローチャートに沿って説明する。但し、方位検出装置1は、第1走査方向が垂直方向と一致し、第2走査方向が水平方向と一致するように、車両等に取り付けて使用されるものとする。
【0049】
本処理が起動すると、まず、S110では、規定垂直方位角の一つを送信ビーム方位角の初期設定として、その初期設定に対応した送信ビーム制御信号CSを送信側給電制御部40に出力する。
【0050】
S120では、送信ビーム方位角の設定に対応した可変増幅器35の増幅率を、利得調整テーブルを用いて特定し、その特定した増幅率に対応する利得調整信号Gを可変増幅器35に出力する。
【0051】
S130では、信号生成部30を起動して、探査波の送信,探査波を反射した物体からの反射波の受信を行い、受信回路部50を介して供給されるビート信号をサンプリングすることによって、反射波の到来方向(第2走査方向に沿った水平方位)の検出に用いるデータを収集する。
【0052】
S140では、全ての規定垂直方位角について、上述の処理を行ったか否かを判断する。
【0053】
そして、S140にて、否定判断された場合は、S150に進み、規定垂直方位角の中で未処理のものを送信ビーム方位角に設定し、その設定に対応した送信ビーム制御信号CSを可変増幅器35に出力して、S120に戻る。
【0054】
一方、S140にて、肯定判断された場合は、必要な情報を全て収集したものとしてS160に進み、規定垂直方位角毎に取得された水平方位検出用データに対して、それぞれデジタルビームフォーミング(DBF)を施して、反射波の到来方向の水平方位角を求めることにより、DBFで求めた水平方位角と規定垂直方位角とで表される2次元方位データを生成して、本処理を終了する。
【0055】
<効果>
以上説明したように、方位検出装置1では、送信側は第1走査方向に沿って一次元的な走査を行うと共に、受信側は第2走査方向に沿って一次元的な方位検出を行い、これを組み合わせることで二次元的な方位検出を可能にしている。
【0056】
従って、方位検出装置1によれば、一方の側だけで二次元的な走査を実現する従来装置と比較して、装置構成を簡易なものとすることができる。
【0057】
また、方位検出装置1では、送信ビームについて選択される垂直方位角毎に、送信信号の増幅率を制御して、どの送信ビームを用いた場合でも一定の利得が得られるようにされている。従って、使用する送信ビームによらず安定した性能を得ることができる。
【0058】
<変形例>
本実施形態では、ロトマンレンズ41と切替スイッチ43とからなる送信側給電制御部40を用いて方位検出装置1を構成したが、図4に示す方位検出装置2のように、送信信号を送信アンテナ部10を構成する単位アンテナAUの数だけ等分に電力分配する分配器49と、信号処理部60からの送信ビーム制御信号CSに従って、分配器49から出力される分配された各送信信号の位相を変化させる移相器47とからなる送信側給電制御部45を用いて構成してもよい。
【0059】
また、図9に示す方位検出装置5のように、ロトマンレンズ41を省略した送信側給電制御部41を用いると共に、送信アンテナ部11を、各単位アンテナAUが誘電体レンズ(図示せず)を介して送信を行う、いわゆるレンズアンテナによって構成してもよい。
【0060】
また、本実施形態では、信号処理部60にてDBFを用いて水平方位角を求めているが、これに限るものではなく、MUSIC等のスーパーレゾリューション法を用いて、より高分解能な水平方位角を求めるように構成してもよい。
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。
【0061】
なお、本実施形態では、信号処理部60が実行する処理が異なるだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
【0062】
<信号処理部>
信号処理部60では、第1実施形態にて説明した2次元走査処理の代わりに、実行する1次元走査処理、方位検出装置1の組付状態に応じて、水平方位角検出範囲の中心方向や送信ビームの向きを調整するための調整処理等を実行する。
【0063】
<<1次元走査処理>>
まず、1次元走査処理の詳細を、図5に示すフローチャートに沿って説明する。
【0064】
本処理が起動すると、まず、S210では、送信ビーム方位角を、後述する調整処理にて記憶された調整値に設定するために、その調整値に対応した送信ビーム制御信号CSを送信側給電制御部40に出力する。
【0065】
S220では、送信ビーム方位角の設定(即ち調整値)に対応した可変増幅器35の増幅率を、利得調整テーブルを用いて特定し、その特定した増幅率に対応する利得調整信号Gを可変増幅器35に出力する。
【0066】
S230では、信号生成部30を起動して、探査波の送信,探査波を反射した物体からの反射波の受信を行い、受信回路部50を介して供給されるビート信号をサンプリングすることによって、水平方位検出用データを収集する。
【0067】
S240では、S230にて取得された水平方位検出用データに対してDBFを施し、反射波の到来方向を表す水平方位データを算出して、本処理を終了する。
【0068】
<<調整処理>>
次に、調整処理の詳細を、図6に示すフローチャートに沿って説明する。
【0069】
但し、本処理は、方位検出装置1の車両等への組付が行われた後、車両の正面に探査波を反射させる調整用物体を配置した状態で実行される。
【0070】
本処理が起動すると、まずS310では、規定垂直方位角の一つを送信ビーム方位角の初期設定として、その初期設定に対応した送信ビーム制御信号CSを送信側給電制御部40に出力する。
【0071】
S320では、信号生成部30を起動して、探査波の送信,探査波を反射した物体からの反射波の受信を行い、受信回路部50を介して供給されるビート信号をサンプリングすることによって、水平方位検出用データを収集し、続く、S330では、S320にて検出された水平方位検出用データに対して、送信ビーム間の指向性(利得)のばらつきを補償するための補正を行う。
【0072】
具体的には、例えば、予め設定された補正係数を水平方位検出用データに乗じることで補正する。なお、補正係数は、出荷時などに、予め測定された各送信ビームの利得に基づき、送信ビーム間の利得差が補償されるように求めたものを、ROMに記憶させる等して用意されたものを用いる。
【0073】
そして、S340では、全ての規定垂直方位角について、水平方位検出用データを収集したか否かを判断し、否定判断された場合は、S350に進み、規定垂直方位角の中で未処理のものを送信ビーム方位角として設定し、その設定に対応した送信ビーム制御信号CSを送信側給電制御部40に出力した後、S320に戻る。
【0074】
一方、S340にて肯定判断された場合は、S360に進み、水平方位検出用データの信号レベルが最も大きい規定垂直方位角(即ち、調整用物体が存在する垂直方位角)を、送信ビーム方位角調整値として特定する。
【0075】
S370では、S360にて特定された調整値を、不揮発性のメモリに記憶させて本処理を終了する。
【0076】
<効果>
以上説明したように、本実施形態では、方位検出装置1の取付面が垂直方向に対して傾斜している場合であっても、1次元走査処理に使用する送信ビーム方位角度(調整値)を、調整処理によって調整することができるため、方位検出装置1の特性を最大限に引き出すことができる。
【0077】
また、本実施形態では、水平方位検出データを用いた検出方位と実際の方位との誤差を、調整処理によって得られた補正量によって補正するようにされているため、水平方位を精度よく求めることができる。
【0078】
なお、本実施形態では、送信ビーム間の利得差を補償するための補正を、信号処理部60が実行する処理により、水平方位検出用データに予め用意された補正係数を乗じることで実現しているが、例えば、可変増幅器35の増幅率を調整することで実現してもよい。
【0079】
また、本実施形態では、垂直方向を調整軸として水平方向の走査を行うように構成されているが、逆に水平方向を調整軸として垂直方向の走査を行うように構成してもよい。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
【0080】
図7は、本実施形態の方位検出装置3の全体構成図である。
【0081】
なお、図7に示すように、方位検出装置3は、第1実施形態の方位検出装置1とは、受信回路部55の構成が異なっている点、受信アンテナ部20と受信回路部55との間に、受信側給電制御部70が設けられている点、及び、これに伴う信号処理部60での処理内容の一部が異なるだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
【0082】
<受信側給電制御部>
受信側給電制御部70は、受信アンテナ部20を構成する各単位アンテナAUに接続される複数のアンテナポート、及びそれぞれが異なった指向性(水平方位角度)に対応付けられた複数のビームポートを有するロトマンレンズ71と、信号処理部60からの受信ビーム制御信号CRに従って、給電を行う(受信信号の供給を受ける)ビームポートを択一的に切り替える切替スイッチ73とからなる。
【0083】
なお、ロトマンレンズ71は、送信側給電制御部40を構成するロトマンレンズ41と同様に、周知のものである。
【0084】
<受信回路部>
受信回路部55は、第1実施形態にて説明した受信回路部50を構成する個別受信回路と同様の構成を有する単一の個別受信回路によって構成されている。
【0085】
<信号処理部>
信号処理部60が実行する処理において、水平方位検出用データを収集する際(S130,S230,S320)には、受信ビーム制御信号CRによってビームポートを順次切り替えながらビート信号をサンプリングする。
【0086】
また、収集した水平方位検出用データから2次元方位データや水平方位データを生成する際(S160,S240,S360)には、ビームポート毎に得られたデータの信号強度の分布から、その信号強度がピークとなるビームポートを特定し、そのビームポートに対応付けられた水平方位角度を用いる。
【0087】
<効果>
以上説明したように方位検出装置3によれば、送信側、受信側に一つずつロトマンレンズを設けるだけの簡易な構成にも関わらず、2次元的な方位検出を実現することができる。
【0088】
<変形例>
なお、方位検出装置3において、受信側給電制御部70と受信回路部55との間、又は受信回路部55と信号処理部60との間に受信信号又はビート信号を増幅する可変増幅器を設けて、送信信号を増幅する可変増幅器35と同様に、受信ビーム方位角(即ち、使用するビームポート)が切り替わる毎に、利得調整を行うように構成してもよい。
【0089】
また、方位検出装置3において、送信側給電制御部40及び受信側給電制御部70のいずれか一方または両方を、第2実施形態における送信側給電制御部45と同様に、移相器と分配器とで構成したり、第1実施形態の変形例と同様にロトマンレンズを省略した構成として、そのロトマンレンズを省略した側の送信アンテナ部10又は受信アンテナ部20をレンズアンテナにて構成したりしてもよい。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。
【0090】
図8は、本実施形態の方位検出装置4の全体構成図である。
【0091】
上記実施形態とは、ビーム走査を、電気的な制御ではなく、機械的な制御によって行っている点が異なっている。
【0092】
具体的には、第3実施形態の方位検出装置3と比較して、給電制御部40,70が省略され、及び送信アンテナ部15及び受信アンテナ部25の構成が異なり、ビーム走査のための送信側走査機構80及び受信側走査機構90が新たに設けられている。
【0093】
以下、この相違点を中心に説明する。
【0094】
<送信アンテナ部及び受信アンテナ部>
送信アンテナ部15及び受信アンテナ部25は、アンテナ素子ASの配列は、上述の送信アンテナ部10及び受信アンテナ部20と同様である。但し、送信アンテナ部15及び受信アンテナ部25を構成する各アンテナ素子ASは、それぞれ同一振幅,同一位相の信号が給電されるように構成され、即ち、それぞれが単一のアンテナとして動作するように構成されている。
【0095】
また、送信アンテナ部15は第1走査方向に沿って揺動可能な可動板上に設置され、受信アンテナ部25は第2走査方向に沿って揺動可能な可動板上に設置される。
【0096】
<送信側走査機構及び受信側走査機構>
送信側走査機構80は、送信アンテナ部15が設置された可動板の法線方向が送信ビーム制御信号CSに応じて予め設定された規定垂直方位角のいずれかに向くように、その可動板の向きを制御するモータ等によって構成されている。
【0097】
同様に、受信側走査機構90は、受信アンテナ部25が設置された可動板の法線方向が送信ビーム制御信号CSに応じて予め設定された規定水平方位角のいずれかに向くように、その可動板の向きを制御するモータ等によって構成されている。
【0098】
<効果>
このように構成された方位検出装置4によれば、送信側走査機構80及び受信側走査機構90は、いずれも一次元的な駆動が可能であればよいため、簡易な構成にも関わらず、2次元的な方位検出を実現することができる。
【0099】
<変形例>
方位検出装置4において、第3実施形態の変形例と同様に、受信アンテナ部25と受信回路部55との間、又は受信回路部55と信号処理部60との間に受信信号又はビート信号を増幅する可変増幅器を設けて、送信信号を増幅する可変増幅器35と同様に、受信ビーム方位角(即ち、使用するビームポート)が切り替わる毎に、利得調整を行うように構成されていてもよい。
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0100】
例えば、第1〜第3実施形態及びその変形例の方位検出装置1,2,3,5において、送信側或いは受信側のいずれか一方のみを、第4実施形態の走査機構を用いた構成に置き換えて構成してもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、送信側で垂直方向の走査を行い、受信側で水平方向の走査を行うように設置した場合について説明したが、逆に、送信側で水平方向の走査を行い受信側で垂直方向の走査を行うように設置してもよい。また、送信側,受信側の走査方向は、必ずしも水平方向や垂直方向と一致している必要はなく、任意の方向に向けて設置することが可能である。
【0102】
上記第2実施形態では、図1に示した方位検出装置1を、第2走査方向に沿った1次元的な走査(方位検出)を行うように使用する場合に、送信ビームのいずれかを選択することで第1走査方向に沿ったビームの軸調整を実現しているが、これと同様の手法を他の方位検出装置2〜5に適用してもよい。
【0103】
また、受信側がロトマンレンズやレンズアンテナや移相器によってビーム形成を行ったり、機械的に走査を行ったりするように構成された方位検出装置3,4では、第1走査方向に沿った1次元的な走査(方位検出)を行うように使用する場合に、受信ビームのいずれかを選択することで第2走査方向に沿ったビームの軸調整を実現するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】第1実施形態の方位検出装置の全体構成図。
【図2】送信ビーム及び受信ビームの設定を示す説明図。
【図3】信号処理部が実行する2次元走査処理の内容を示すフローチャート。
【図4】第1実施形態の変形例の全体構成図。
【図5】第2実施形態において信号処理部が実行する1次元走査処理の内容を示すフローチャート。
【図6】第2実施形態において信号処理部が実行する調整処理の内容を示すフローチャート。
【図7】第3実施形態の方位検出装置の全体構成図。
【図8】第4実施形態の方位検出装置の全体構成図。
【図9】第1実施形態の変形例の全体構成図。
【図10】ビーム毎に利得が異なる場合の補償方法を示すための説明図。
【図11】ビーム毎に利得が異なる場合に生じる問題を示すための説明図。
【符号の説明】
【0105】
1〜5…方位検出装置 10,11,15…送信アンテナ部 20,25…受信アンテナ部 30…信号生成部 35…可変増幅器 40,41,45…送信側給電制御部 41,71…ロトマンレンズ 43,73…切替スイッチ 47…移相器 49…分配器 50,55…受信回路部 60…信号処理部 70…受信側給電制御部 80…送信側走査機構 90…受信側走査機構 AS…アンテナ素子 AU…単位アンテナ
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元走査が可能なアンテナ装置、及び2次元的な方位検出が可能な方位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水平方向走査用のロトマンレンズ(水平レンズ)と、垂直方向走査用のロトマンレンズとを組み合わせて二次元走査を実現するアンテナ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2002−523951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この従来のアンテナ装置では、水平方向走査用のロトマンレンズを、垂直方向のビームスキャン時に実現すべきビーム方向の数だけ用意すると共に、垂直方向走査用のロトマンレンズを、水平方向のビームスキャン時に実現すべきビーム方向の数だけ用意する必要がある。
【0004】
つまり、従来のアンテナ装置では、多くのロトマンレンズを用いて構成する必要があるため装置構成が大型化し、しかも、検出可能な方位分解能を向上させるためにビーム方向の数を増加させると、単にロトマンレンズの数が増大するだけでなく、個々のロトマンレンズの規模も大型化するため、方位分解能を向上させるほど、装置規模が急激に大型化してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するために、二次元的にビーム方向を変化させることが可能であり且つ小型のアンテナ装置及び方位検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた発明である請求項1に記載のアンテナ装置では、送信手段が、予め設定された第1走査方向に沿って指向方向の異なる複数の送信ビームによって探査波を送信し、受信手段が、第1走査方向と交差するように設定された第2走査方向に沿って指向方向の異なる複数の受信ビームによって、探査波を反射した物体からの反射波を受信する。
【0007】
このように本発明のアンテナ装置では、送信手段及び受信手段のいずれもが一次元的な走査を行うように構成されているため、簡易な構成であるにも関わらず二次元走査を実現することができる。
【0008】
なお、送信手段は、請求項2に記載のように、送信ビームにおける第2走査方向のビーム幅が、受信手段における第2走査方向の方位検出範囲の全体を含む広さとなるように設定されていることが望ましい。同様に、受信手段は、請求項3に記載のように、受信ビームにおける第1走査方向のビーム幅が、送信手段における第1走査方向の方位検出範囲の全体を含む広さとなるように設定されていることが望ましい。
【0009】
このように構成された本発明のアンテナ装置によれば、送信ビームと受信ビームとを組み合わせてなるチャンネル間で生じる受信信号の利得差を小さく抑えることができる。
【0010】
また、請求項4に記載のように、複数の送信ビーム間の利得差、及び複数の受信ビーム間の利得差を補償する第1補償手段を備えていることが望ましい。
【0011】
即ち、図10(a)に示すように、送信ビーム間の利得差、又は受信ビーム間の利得差(指向性を表すビーム形状の差)がある場合には、図10(b)に示すように、ビーム間で利得が同じとなるように補正する。これにより、例えば、図11に示すように、隣接するビーム間で大きな利得差がある場合、物標の存在方向に対して指向方向が一致する利得の小さなビームより、物標の存在方向に対して指向方向がずれた利得の大きなビームの方が、受信電力が大きくなり、誤った方位が検出されてしまう可能性があるが、このような事態を回避することができる。
【0012】
更には、請求項5に記載のように、送信ビームの利得が第2走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であること、又は受信ビームの利得が前記第1走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であることに基づき、送信ビームと受信ビームとを組合せたチャンネル間で生じる受信信号の利得差を補償する第2補償手段を備えていることが望ましい。
【0013】
このように構成された本発明のアンテナ装置によれば、受信信号に対して実行する信号処理の精度(例えば、方位検出精度)を向上させることができる。
【0014】
また、送信手段及び受信手段は、例えば、請求項6に記載のように、少なくとも一方がビームの指向方向を機械的に変化させるように構成されていてもよいし、請求項7に記載のように、少なくとも一方がロトマンレンズ又はレンズアンテナによってビーム形成を行うように構成されていてもよい。
【0015】
また、本発明のアンテナ装置は、請求項8に記載のように、第1測定手段が、受信手段の受信ビームを順次切り替えて、送信手段及び受信手段に探査波を送受信させることで、受信ビーム毎に受信手段での受信レベルを測定し、第1設定手段が、第1測定手段での測定結果に基づき、受信レベルが最大となる受信ビームにて探査波を受信するように受信手段を設定するように構成されていてもよい。
【0016】
このように構成された本発明のアンテナ装置によれば、第1走査方向に沿った1次元的な走査を行うように使用する場合に、第2走査方向については最も大きな受信レベルを得ることが可能な向きに受信ビームの向きを固定すること、即ち、第2走査方向に沿ったビームの軸調整を行うことができる。
【0017】
また、本発明のアンテナ装置は、請求項9に記載のように、第2測定手段が、送信手段の送信ビームを順次切り替えて、送信手段及び受信手段に探査波を送受信することで、送信ビーム毎に受信手段での受信レベルを測定し、第2設定手段が、第2測定手段での測定結果に基づき、受信レベルが最大となる送信ビームにて探査波を送信するように送信手段を設定するように構成されていてもよい。
【0018】
このように構成された本発明のアンテナ装置によれば、第2走査方向に沿った1次元的な走査を行うように使用する場合に、第1走査方向については最も大きな受信レベルを得ることが可能な向きに送信ビームの向きを固定すること、即ち、第1走査方向に沿ったビームの軸調整を行うことができる。
【0019】
次に、請求項10に記載の方位検出装置では、送信手段が、予め設定された第1走査方向に沿って指向方向の異なる複数の送信ビームによって探査波を送信し、受信手段が、探査波を反射した物体からの反射波を受信する。そして、方位検出手段が、受信手段からの受信信号に基づき、反射波の到来方向について、第1走査方向に交差する第2走査方向に沿った方位角度を求める。
【0020】
本発明の方位検出装置では、送信側(送信手段)では第1走査方向に沿って一次元的な走査を行うと共に、受信側(受信手段及び方位検出手段)では第2走査方向に沿って一次元的な方位検出を行い、これを組み合わせることで二次元的な方位検出を可能にしているため、一方の側だけで二次元的な走査を実現する従来装置と比較して、装置構成を簡易なものとすることができる。
【0021】
なお、本発明の方位検出装置は、送信ビームを固定して、第2走査方向に沿って一次元的な方位検出を行うものとして使用してもよく、この場合、第1走査方向を調整方向として、送信ビームの向きの調整を行うようにすればよい。
【0022】
また、この場合、請求項11に記載のように、複数の送信ビーム間の利得差を補償する第1補償手段を備えていることが望ましい。
【0023】
次に、受信手段は、請求項12に記載のように、第1走査方向と交差するように設定された第2走査方向に沿って指向方向の異なる複数の受信ビームによって反射波を受信するように構成されていてもよい。
【0024】
このように構成された本発明の方位検出装置は、請求項1に記載のアンテナ装置を用いて構成されたものとなる。従って、上述の請求項2〜7に記載された構成を、本発明の方位検出装置に適用してもよいことは言うまでもない。
【0025】
例えば、請求項13に記載のように、複数の送信ビーム間の利得差、及び複数の受信ビーム間の利得差を補償する第1補償手段(請求項4と同様)を備えていてもよいし、請求項14に記載のように、送信ビームの利得が第2走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であること、又は受信ビームの利得が前記第1走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であることに基づき、送信ビームと受信ビームとを組合せたチャンネル間で生じる受信信号の利得差を補償する第2補償手段(請求項5と同様)を備えていてもよい。
【0026】
また、請求項10又は請求項11に記載の方位検出装置では、請求項15に記載のように、受信手段は、第2走査方向に沿って配列された複数のアンテナ素子からなり、方位検出手段は、受信手段を構成する各アンテナ素子からの受信信号をサンプリングしてデジタルデータに対する信号処理によって方位検出を行うように構成されていてもよい。
【0027】
この場合、方位検出手段が実行する信号処理は、請求項16に記載のように、デジタルビームフォーミングであってもよいし、請求項17に記載のように、MUSIC(MUltipule Signal Classification )等のスーパーレゾリューション法を用いた処理であってもよい。
【0028】
また、請求項10乃至請求項17のいずれかに記載の方位検出装置では、送信手段は、例えば、請求項18に記載のように、送信ビームの指向方向を機械的に変化させるように構成されていてもよいし、請求項19に記載のように、ロトマンレンズ又はレンズアンテナによってビーム形成を行うように構成されていてもよい。
【0029】
また、本発明の方位検出装置は、請求項20に記載のように、第2測定手段が、送信手段の送信ビームを順次切り替えて、送信手段及び受信手段に探査波を送受信させることで、送信ビーム毎に受信手段での受信レベルを測定し、第2設定手段が、第2測定手段での測定結果に基づき、受信レベルが最大となる送信ビームにて探査波を送信するように送信手段を設定するように構成されていてもよい。
【0030】
このように構成された本発明の方位検出装置によれば、第2走査方向に沿った1次元的な走査(1次元的な方位検出)を行うように使用する場合に、第1走査方向については最も大きな受信レベルを得ることが可能な向きに送信ビームの向きを固定すること、即ち、第1走査方向に沿ったビームの軸調整を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の方位検出装置1の全体構成図である。
【0032】
<全体構成>
図1に示すように、方位検出装置1は、探査波を送信する送信アンテナ部10と、探査波を反射した物体からの反射波を受信する受信アンテナ部20と、ミリ波帯の高周波信号を発生させる発振器や発振器の出力を電力分配して送信信号S及びローカル信号Lを生成する電力分配器等からなる信号生成部30と、信号生成部30で生成された送信信号Sを利得調整信号Gによって指定された利得で増幅する可変増幅器35と、可変増幅器35で増幅された送信信号の送信アンテナ部10に対する給電方法を送信ビーム制御信号CSに従って制御することにより送信ビームの指向方向を変化させる送信側給電制御部40と、受信アンテナ部20からの受信信号に信号生成部30からのローカル信号Lを混合してビート信号を生成する受信回路部50と、可変増幅器35に対する利得調整信号G,送信側給電制御部40に対する送信ビーム制御信号CSを出力し、受信回路部50にて生成されたビート信号に基づいて、反射波の到来方向を求める信号処理部60とを備えている。
【0033】
<送信アンテナ部及び受信アンテナ部>
送信アンテナ部10及び受信アンテナ部20は、いずれも、一列かつ等間隔に配列された複数のアンテナ素子ASで構成された単位アンテナAUを用い、この単位アンテナAUをアンテナ素子ASの配列方向とは直交する方向に一列かつ等間隔に複数個配列することで構成されている。
【0034】
なお、送信アンテナ部10及び受信アンテナ部20において、各単位アンテナAUは個別に給電されると共に、同一の単位アンテナAUを構成する各アンテナ素子ASは、同一振幅,同一位相の信号が給電されるように構成されている。即ち、送信アンテナ部10及び受信アンテナ部20は、単位アンテナAUを1次元的に配列してなるアレーアンテナとして動作する。
【0035】
そして、送信アンテナ部10及び受信アンテナ部20は、同一平面に配置され、且つ、送信アンテナ部10を構成する単位アンテナAUの配列方向(以下、第1走査方向ともいう)と、受信アンテナ部20を構成する単位アンテナAUの配列方向(以下、第2走査方向ともいう)とが直交するように配置されている。
【0036】
また、第1走査方向を縦、第2走査方向を横として、送信アンテナ部10は縦長の矩形状に、受信アンテナ部20は横長の矩形状に形成されている。
【0037】
但し、受信アンテナ部20の縦サイズ(受信アンテナ部20を構成する単位アンテナAUの長手方向の長さ)は、受信アンテナ部20により形成される受信ビームの縦幅(角度範囲)が、送信アンテナ部10による第1走査方向の方位検出範囲(送信ビームの走査範囲)より広くなるように設定されている(図2参照)。
【0038】
同様に、送信アンテナ部10の横サイズ(送信アンテナ部10を構成する単位アンテナAUの長手方向の長さ)は、送信アンテナ部10により形成される送信ビームの横幅(角度範囲)が、受信アンテナ部20による第2走査方向の方位検出範囲(受信ビームの走査範囲)より広くなるように設定されている。
【0039】
<送信側給電制御部>
送信側給電制御部40は、送信アンテナ部10を構成する各単位アンテナAUに接続される複数のアンテナポート、及びそれぞれが異なった指向性に対応付けられた複数のビームポートを有するロトマンレンズ41と、信号処理部60からの送信ビーム制御信号CSに従って、給電を行う(送信信号を供給する)ビームポートを択一的に切り替える切替スイッチ43とからなる。
【0040】
なお、ロトマンレンズ41は、各アンテナポートから出力される送信信号が位相が、一定量ずつ異なるように送信信号を分配し且つ遅延させ、しかも、その一定量が選択するビームポート毎に異なるように構成された周知のものである。
【0041】
また、以下では、送信ビームについて、送信側給電制御部40を介して選択可能な第1走査方向に沿った方位角度を規定垂直方位角というものとする。
【0042】
<受信回路部>
受信回路部50は、受信アンテナ部20を構成する単位アンテナAU毎に設けられ、該単位アンテナAUからの受信信号を処理する複数(単位アンテナAUと同数)の個別受信回路により構成されている。
【0043】
なお、各個別受信回路は、ローカル信号Lと混合してビート信号を生成するミキサの他、ビート信号から不要な信号成分を除去するバンドパスフィルタ、受信信号又はビート信号を増幅する増幅器等からなる周知のものである。但し、図1は、ミキサ以外を省略して示したものである。
【0044】
<信号処理部>
信号処理部60は、CPU,ROM,RAMからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、更に、受信回路部50から供給されるビート信号をサンプリングするAD変換器を少なくとも備えている。
【0045】
なお、ROMには、CPUが実行する各種プログラムの他、可変増幅器35に対する利得調整信号Gの設定に用いる利得調整テーブルが記憶されている。
【0046】
この利得調整テーブルとは、送信ビームを切り替えることによって生じる利得の変化が補償されるように、送信ビームの規定垂直方位角と可変増幅器35での増幅率とを対応付けて記憶したものである。
【0047】
即ち、上述したように(図2参照)、受信ビームの縦方向のビーム範囲が、全ての送信ビームをカバーするように設定されているものの、受信ビームのビーム範囲内の利得が均一ではなく、どの送信ビームを用いるかによって利得が変化してしまうため、これを補償する必要があるのである。
【0048】
ここで、信号処理部60が実行する2次元走査処理を、図3に示すフローチャートに沿って説明する。但し、方位検出装置1は、第1走査方向が垂直方向と一致し、第2走査方向が水平方向と一致するように、車両等に取り付けて使用されるものとする。
【0049】
本処理が起動すると、まず、S110では、規定垂直方位角の一つを送信ビーム方位角の初期設定として、その初期設定に対応した送信ビーム制御信号CSを送信側給電制御部40に出力する。
【0050】
S120では、送信ビーム方位角の設定に対応した可変増幅器35の増幅率を、利得調整テーブルを用いて特定し、その特定した増幅率に対応する利得調整信号Gを可変増幅器35に出力する。
【0051】
S130では、信号生成部30を起動して、探査波の送信,探査波を反射した物体からの反射波の受信を行い、受信回路部50を介して供給されるビート信号をサンプリングすることによって、反射波の到来方向(第2走査方向に沿った水平方位)の検出に用いるデータを収集する。
【0052】
S140では、全ての規定垂直方位角について、上述の処理を行ったか否かを判断する。
【0053】
そして、S140にて、否定判断された場合は、S150に進み、規定垂直方位角の中で未処理のものを送信ビーム方位角に設定し、その設定に対応した送信ビーム制御信号CSを可変増幅器35に出力して、S120に戻る。
【0054】
一方、S140にて、肯定判断された場合は、必要な情報を全て収集したものとしてS160に進み、規定垂直方位角毎に取得された水平方位検出用データに対して、それぞれデジタルビームフォーミング(DBF)を施して、反射波の到来方向の水平方位角を求めることにより、DBFで求めた水平方位角と規定垂直方位角とで表される2次元方位データを生成して、本処理を終了する。
【0055】
<効果>
以上説明したように、方位検出装置1では、送信側は第1走査方向に沿って一次元的な走査を行うと共に、受信側は第2走査方向に沿って一次元的な方位検出を行い、これを組み合わせることで二次元的な方位検出を可能にしている。
【0056】
従って、方位検出装置1によれば、一方の側だけで二次元的な走査を実現する従来装置と比較して、装置構成を簡易なものとすることができる。
【0057】
また、方位検出装置1では、送信ビームについて選択される垂直方位角毎に、送信信号の増幅率を制御して、どの送信ビームを用いた場合でも一定の利得が得られるようにされている。従って、使用する送信ビームによらず安定した性能を得ることができる。
【0058】
<変形例>
本実施形態では、ロトマンレンズ41と切替スイッチ43とからなる送信側給電制御部40を用いて方位検出装置1を構成したが、図4に示す方位検出装置2のように、送信信号を送信アンテナ部10を構成する単位アンテナAUの数だけ等分に電力分配する分配器49と、信号処理部60からの送信ビーム制御信号CSに従って、分配器49から出力される分配された各送信信号の位相を変化させる移相器47とからなる送信側給電制御部45を用いて構成してもよい。
【0059】
また、図9に示す方位検出装置5のように、ロトマンレンズ41を省略した送信側給電制御部41を用いると共に、送信アンテナ部11を、各単位アンテナAUが誘電体レンズ(図示せず)を介して送信を行う、いわゆるレンズアンテナによって構成してもよい。
【0060】
また、本実施形態では、信号処理部60にてDBFを用いて水平方位角を求めているが、これに限るものではなく、MUSIC等のスーパーレゾリューション法を用いて、より高分解能な水平方位角を求めるように構成してもよい。
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。
【0061】
なお、本実施形態では、信号処理部60が実行する処理が異なるだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
【0062】
<信号処理部>
信号処理部60では、第1実施形態にて説明した2次元走査処理の代わりに、実行する1次元走査処理、方位検出装置1の組付状態に応じて、水平方位角検出範囲の中心方向や送信ビームの向きを調整するための調整処理等を実行する。
【0063】
<<1次元走査処理>>
まず、1次元走査処理の詳細を、図5に示すフローチャートに沿って説明する。
【0064】
本処理が起動すると、まず、S210では、送信ビーム方位角を、後述する調整処理にて記憶された調整値に設定するために、その調整値に対応した送信ビーム制御信号CSを送信側給電制御部40に出力する。
【0065】
S220では、送信ビーム方位角の設定(即ち調整値)に対応した可変増幅器35の増幅率を、利得調整テーブルを用いて特定し、その特定した増幅率に対応する利得調整信号Gを可変増幅器35に出力する。
【0066】
S230では、信号生成部30を起動して、探査波の送信,探査波を反射した物体からの反射波の受信を行い、受信回路部50を介して供給されるビート信号をサンプリングすることによって、水平方位検出用データを収集する。
【0067】
S240では、S230にて取得された水平方位検出用データに対してDBFを施し、反射波の到来方向を表す水平方位データを算出して、本処理を終了する。
【0068】
<<調整処理>>
次に、調整処理の詳細を、図6に示すフローチャートに沿って説明する。
【0069】
但し、本処理は、方位検出装置1の車両等への組付が行われた後、車両の正面に探査波を反射させる調整用物体を配置した状態で実行される。
【0070】
本処理が起動すると、まずS310では、規定垂直方位角の一つを送信ビーム方位角の初期設定として、その初期設定に対応した送信ビーム制御信号CSを送信側給電制御部40に出力する。
【0071】
S320では、信号生成部30を起動して、探査波の送信,探査波を反射した物体からの反射波の受信を行い、受信回路部50を介して供給されるビート信号をサンプリングすることによって、水平方位検出用データを収集し、続く、S330では、S320にて検出された水平方位検出用データに対して、送信ビーム間の指向性(利得)のばらつきを補償するための補正を行う。
【0072】
具体的には、例えば、予め設定された補正係数を水平方位検出用データに乗じることで補正する。なお、補正係数は、出荷時などに、予め測定された各送信ビームの利得に基づき、送信ビーム間の利得差が補償されるように求めたものを、ROMに記憶させる等して用意されたものを用いる。
【0073】
そして、S340では、全ての規定垂直方位角について、水平方位検出用データを収集したか否かを判断し、否定判断された場合は、S350に進み、規定垂直方位角の中で未処理のものを送信ビーム方位角として設定し、その設定に対応した送信ビーム制御信号CSを送信側給電制御部40に出力した後、S320に戻る。
【0074】
一方、S340にて肯定判断された場合は、S360に進み、水平方位検出用データの信号レベルが最も大きい規定垂直方位角(即ち、調整用物体が存在する垂直方位角)を、送信ビーム方位角調整値として特定する。
【0075】
S370では、S360にて特定された調整値を、不揮発性のメモリに記憶させて本処理を終了する。
【0076】
<効果>
以上説明したように、本実施形態では、方位検出装置1の取付面が垂直方向に対して傾斜している場合であっても、1次元走査処理に使用する送信ビーム方位角度(調整値)を、調整処理によって調整することができるため、方位検出装置1の特性を最大限に引き出すことができる。
【0077】
また、本実施形態では、水平方位検出データを用いた検出方位と実際の方位との誤差を、調整処理によって得られた補正量によって補正するようにされているため、水平方位を精度よく求めることができる。
【0078】
なお、本実施形態では、送信ビーム間の利得差を補償するための補正を、信号処理部60が実行する処理により、水平方位検出用データに予め用意された補正係数を乗じることで実現しているが、例えば、可変増幅器35の増幅率を調整することで実現してもよい。
【0079】
また、本実施形態では、垂直方向を調整軸として水平方向の走査を行うように構成されているが、逆に水平方向を調整軸として垂直方向の走査を行うように構成してもよい。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
【0080】
図7は、本実施形態の方位検出装置3の全体構成図である。
【0081】
なお、図7に示すように、方位検出装置3は、第1実施形態の方位検出装置1とは、受信回路部55の構成が異なっている点、受信アンテナ部20と受信回路部55との間に、受信側給電制御部70が設けられている点、及び、これに伴う信号処理部60での処理内容の一部が異なるだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
【0082】
<受信側給電制御部>
受信側給電制御部70は、受信アンテナ部20を構成する各単位アンテナAUに接続される複数のアンテナポート、及びそれぞれが異なった指向性(水平方位角度)に対応付けられた複数のビームポートを有するロトマンレンズ71と、信号処理部60からの受信ビーム制御信号CRに従って、給電を行う(受信信号の供給を受ける)ビームポートを択一的に切り替える切替スイッチ73とからなる。
【0083】
なお、ロトマンレンズ71は、送信側給電制御部40を構成するロトマンレンズ41と同様に、周知のものである。
【0084】
<受信回路部>
受信回路部55は、第1実施形態にて説明した受信回路部50を構成する個別受信回路と同様の構成を有する単一の個別受信回路によって構成されている。
【0085】
<信号処理部>
信号処理部60が実行する処理において、水平方位検出用データを収集する際(S130,S230,S320)には、受信ビーム制御信号CRによってビームポートを順次切り替えながらビート信号をサンプリングする。
【0086】
また、収集した水平方位検出用データから2次元方位データや水平方位データを生成する際(S160,S240,S360)には、ビームポート毎に得られたデータの信号強度の分布から、その信号強度がピークとなるビームポートを特定し、そのビームポートに対応付けられた水平方位角度を用いる。
【0087】
<効果>
以上説明したように方位検出装置3によれば、送信側、受信側に一つずつロトマンレンズを設けるだけの簡易な構成にも関わらず、2次元的な方位検出を実現することができる。
【0088】
<変形例>
なお、方位検出装置3において、受信側給電制御部70と受信回路部55との間、又は受信回路部55と信号処理部60との間に受信信号又はビート信号を増幅する可変増幅器を設けて、送信信号を増幅する可変増幅器35と同様に、受信ビーム方位角(即ち、使用するビームポート)が切り替わる毎に、利得調整を行うように構成してもよい。
【0089】
また、方位検出装置3において、送信側給電制御部40及び受信側給電制御部70のいずれか一方または両方を、第2実施形態における送信側給電制御部45と同様に、移相器と分配器とで構成したり、第1実施形態の変形例と同様にロトマンレンズを省略した構成として、そのロトマンレンズを省略した側の送信アンテナ部10又は受信アンテナ部20をレンズアンテナにて構成したりしてもよい。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。
【0090】
図8は、本実施形態の方位検出装置4の全体構成図である。
【0091】
上記実施形態とは、ビーム走査を、電気的な制御ではなく、機械的な制御によって行っている点が異なっている。
【0092】
具体的には、第3実施形態の方位検出装置3と比較して、給電制御部40,70が省略され、及び送信アンテナ部15及び受信アンテナ部25の構成が異なり、ビーム走査のための送信側走査機構80及び受信側走査機構90が新たに設けられている。
【0093】
以下、この相違点を中心に説明する。
【0094】
<送信アンテナ部及び受信アンテナ部>
送信アンテナ部15及び受信アンテナ部25は、アンテナ素子ASの配列は、上述の送信アンテナ部10及び受信アンテナ部20と同様である。但し、送信アンテナ部15及び受信アンテナ部25を構成する各アンテナ素子ASは、それぞれ同一振幅,同一位相の信号が給電されるように構成され、即ち、それぞれが単一のアンテナとして動作するように構成されている。
【0095】
また、送信アンテナ部15は第1走査方向に沿って揺動可能な可動板上に設置され、受信アンテナ部25は第2走査方向に沿って揺動可能な可動板上に設置される。
【0096】
<送信側走査機構及び受信側走査機構>
送信側走査機構80は、送信アンテナ部15が設置された可動板の法線方向が送信ビーム制御信号CSに応じて予め設定された規定垂直方位角のいずれかに向くように、その可動板の向きを制御するモータ等によって構成されている。
【0097】
同様に、受信側走査機構90は、受信アンテナ部25が設置された可動板の法線方向が送信ビーム制御信号CSに応じて予め設定された規定水平方位角のいずれかに向くように、その可動板の向きを制御するモータ等によって構成されている。
【0098】
<効果>
このように構成された方位検出装置4によれば、送信側走査機構80及び受信側走査機構90は、いずれも一次元的な駆動が可能であればよいため、簡易な構成にも関わらず、2次元的な方位検出を実現することができる。
【0099】
<変形例>
方位検出装置4において、第3実施形態の変形例と同様に、受信アンテナ部25と受信回路部55との間、又は受信回路部55と信号処理部60との間に受信信号又はビート信号を増幅する可変増幅器を設けて、送信信号を増幅する可変増幅器35と同様に、受信ビーム方位角(即ち、使用するビームポート)が切り替わる毎に、利得調整を行うように構成されていてもよい。
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0100】
例えば、第1〜第3実施形態及びその変形例の方位検出装置1,2,3,5において、送信側或いは受信側のいずれか一方のみを、第4実施形態の走査機構を用いた構成に置き換えて構成してもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、送信側で垂直方向の走査を行い、受信側で水平方向の走査を行うように設置した場合について説明したが、逆に、送信側で水平方向の走査を行い受信側で垂直方向の走査を行うように設置してもよい。また、送信側,受信側の走査方向は、必ずしも水平方向や垂直方向と一致している必要はなく、任意の方向に向けて設置することが可能である。
【0102】
上記第2実施形態では、図1に示した方位検出装置1を、第2走査方向に沿った1次元的な走査(方位検出)を行うように使用する場合に、送信ビームのいずれかを選択することで第1走査方向に沿ったビームの軸調整を実現しているが、これと同様の手法を他の方位検出装置2〜5に適用してもよい。
【0103】
また、受信側がロトマンレンズやレンズアンテナや移相器によってビーム形成を行ったり、機械的に走査を行ったりするように構成された方位検出装置3,4では、第1走査方向に沿った1次元的な走査(方位検出)を行うように使用する場合に、受信ビームのいずれかを選択することで第2走査方向に沿ったビームの軸調整を実現するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】第1実施形態の方位検出装置の全体構成図。
【図2】送信ビーム及び受信ビームの設定を示す説明図。
【図3】信号処理部が実行する2次元走査処理の内容を示すフローチャート。
【図4】第1実施形態の変形例の全体構成図。
【図5】第2実施形態において信号処理部が実行する1次元走査処理の内容を示すフローチャート。
【図6】第2実施形態において信号処理部が実行する調整処理の内容を示すフローチャート。
【図7】第3実施形態の方位検出装置の全体構成図。
【図8】第4実施形態の方位検出装置の全体構成図。
【図9】第1実施形態の変形例の全体構成図。
【図10】ビーム毎に利得が異なる場合の補償方法を示すための説明図。
【図11】ビーム毎に利得が異なる場合に生じる問題を示すための説明図。
【符号の説明】
【0105】
1〜5…方位検出装置 10,11,15…送信アンテナ部 20,25…受信アンテナ部 30…信号生成部 35…可変増幅器 40,41,45…送信側給電制御部 41,71…ロトマンレンズ 43,73…切替スイッチ 47…移相器 49…分配器 50,55…受信回路部 60…信号処理部 70…受信側給電制御部 80…送信側走査機構 90…受信側走査機構 AS…アンテナ素子 AU…単位アンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された第1走査方向に沿って指向方向の異なる複数の送信ビームによって探査波を送信する送信手段と、
前記第1走査方向と交差するように設定された第2走査方向に沿って指向方向の異なる複数の受信ビームによって前記探査波を反射した物体からの反射波を受信する受信手段と、
を備えることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記送信手段は、前記送信ビームにおける前記第2走査方向のビーム幅が、前記受信手段における前記第2走査方向の方位検出範囲の全体を含む広さとなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記受信手段は、前記受信ビームにおける前記第1走査方向のビーム幅が、前記送信手段における前記第1走査方向の方位検出範囲の全体を含む広さとなるように設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記複数の送信ビーム間の利得差、及び前記複数の受信ビーム間の利得差を補償する第1補償手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記送信ビームの利得が前記第2走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であること、又は前記受信ビームの利得が前記第1走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であることに基づき、前記送信ビームと受信ビームとを組合せたチャンネル間で生じる受信信号の利得差を補償する第2補償手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記送信手段及び前記受信手段のうち、少なくとも一方がビームの指向方向を機械的に変化させるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記送信手段及び前記受信手段のうち、少なくとも一方がロトマンレンズ又はレンズアンテナによってビーム形成を行うように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記受信手段の受信ビームを順次切り替えて、前記送信手段及び前記受信手段に前記探査波を送受信させることで、前記受信ビーム毎に前記受信手段での受信レベルを測定する第1測定手段と、
前記第1測定手段での測定結果に基づき、前記受信レベルが最大となる受信ビームにて前記探査波を受信するように前記受信手段を設定する第1設定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記送信手段の送信ビームを順次切り替えて、前記送信手段及び前記受信手段に前記探査波を送受信させることで、前記送信ビーム毎に前記受信手段での受信レベルを測定する第2測定手段と、
前記第2測定手段での測定結果に基づき、前記受信レベルが最大となる送信ビームにて前記探査波を送信するように前記送信手段を設定する第2設定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項10】
予め設定された第1走査方向に沿って指向方向の異なる複数の送信ビームによって探査波を送信する送信手段と、
前記探査波を反射した物体からの反射波を受信する受信手段と、
該受信手段からの受信信号に基づき、前記反射波の到来方向について、前記第1走査方向に交差する第2走査方向に沿った方位角度を求める方位検出手段と、
を備えることを特徴とする方位検出装置。
【請求項11】
前記複数の送信ビーム間の利得差を補償する第1補償手段を備えることを特徴とする請求項10に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記受信手段は、前記第1走査方向と交差するように設定された第2走査方向に沿って指向方向の異なる複数の受信ビームによって前記反射波を受信することを特徴とする請求項10に記載の方位検出装置。
【請求項13】
前記複数の送信ビーム間の利得差、及び前記複数の受信ビーム間の利得差を補償する第1補償手段を備えることを特徴とする請求項12に記載の方位検出装置。
【請求項14】
前記送信ビームの利得が前記第2走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であること、又は前記受信ビームの利得が前記第1走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であることに基づき、前記送信ビームと受信ビームとを組合せたチャンネル間で生じる受信信号の利得差を補償する第2補償手段を備えることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載のアンテナ装置。
【請求項15】
前記受信手段は、前記第2走査方向に沿って配列された複数のアンテナ素子からなり、
前記方位検出手段は、前記受信手段を構成する各アンテナ素子からの受信信号をサンプリングしてデジタルデータに対する信号処理によって方位検出を行うことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の方位検出装置。
【請求項16】
前記方位検出手段が実行する信号処理は、デジタルビームフォーミングであることを特徴とする請求項15に記載の方位検出装置。
【請求項17】
前記方位検出手段が実行する信号処理は、MUSIC(MUltipule Signal Classification )であることを特徴とする請求項16に記載の方位検出装置。
【請求項18】
前記送信手段は、前記送信ビームの指向方向を機械的に変化させるように構成されていることを特徴とする請求項10乃至請求項17のいずれかに記載の方位検出装置。
【請求項19】
前記送信手段は、ロトマンレンズ又はレンズアンテナによってビーム形成を行うように構成されていることを特徴とする請求項10乃至請求項17のいずれかに記載の方位検出装置。
【請求項20】
前記送信手段の送信ビームを順次切り替えて、前記送信手段及び前記受信手段に前記探査波を送受信させることで、前記送信ビーム毎に前記受信手段での受信レベルを測定する第2測定手段と、
前記第2測定手段での測定結果に基づき、前記受信レベルが最大となる送信ビームにて前記探査波を送信するように前記送信手段を設定する第2設定手段と、
を備えることを特徴とする請求項10乃至請求項19のいずれかに記載の方位検出装置。
【請求項1】
予め設定された第1走査方向に沿って指向方向の異なる複数の送信ビームによって探査波を送信する送信手段と、
前記第1走査方向と交差するように設定された第2走査方向に沿って指向方向の異なる複数の受信ビームによって前記探査波を反射した物体からの反射波を受信する受信手段と、
を備えることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記送信手段は、前記送信ビームにおける前記第2走査方向のビーム幅が、前記受信手段における前記第2走査方向の方位検出範囲の全体を含む広さとなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記受信手段は、前記受信ビームにおける前記第1走査方向のビーム幅が、前記送信手段における前記第1走査方向の方位検出範囲の全体を含む広さとなるように設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記複数の送信ビーム間の利得差、及び前記複数の受信ビーム間の利得差を補償する第1補償手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記送信ビームの利得が前記第2走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であること、又は前記受信ビームの利得が前記第1走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であることに基づき、前記送信ビームと受信ビームとを組合せたチャンネル間で生じる受信信号の利得差を補償する第2補償手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記送信手段及び前記受信手段のうち、少なくとも一方がビームの指向方向を機械的に変化させるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記送信手段及び前記受信手段のうち、少なくとも一方がロトマンレンズ又はレンズアンテナによってビーム形成を行うように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記受信手段の受信ビームを順次切り替えて、前記送信手段及び前記受信手段に前記探査波を送受信させることで、前記受信ビーム毎に前記受信手段での受信レベルを測定する第1測定手段と、
前記第1測定手段での測定結果に基づき、前記受信レベルが最大となる受信ビームにて前記探査波を受信するように前記受信手段を設定する第1設定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記送信手段の送信ビームを順次切り替えて、前記送信手段及び前記受信手段に前記探査波を送受信させることで、前記送信ビーム毎に前記受信手段での受信レベルを測定する第2測定手段と、
前記第2測定手段での測定結果に基づき、前記受信レベルが最大となる送信ビームにて前記探査波を送信するように前記送信手段を設定する第2設定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項10】
予め設定された第1走査方向に沿って指向方向の異なる複数の送信ビームによって探査波を送信する送信手段と、
前記探査波を反射した物体からの反射波を受信する受信手段と、
該受信手段からの受信信号に基づき、前記反射波の到来方向について、前記第1走査方向に交差する第2走査方向に沿った方位角度を求める方位検出手段と、
を備えることを特徴とする方位検出装置。
【請求項11】
前記複数の送信ビーム間の利得差を補償する第1補償手段を備えることを特徴とする請求項10に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記受信手段は、前記第1走査方向と交差するように設定された第2走査方向に沿って指向方向の異なる複数の受信ビームによって前記反射波を受信することを特徴とする請求項10に記載の方位検出装置。
【請求項13】
前記複数の送信ビーム間の利得差、及び前記複数の受信ビーム間の利得差を補償する第1補償手段を備えることを特徴とする請求項12に記載の方位検出装置。
【請求項14】
前記送信ビームの利得が前記第2走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であること、又は前記受信ビームの利得が前記第1走査方向に沿った方位検出範囲内で不均一であることに基づき、前記送信ビームと受信ビームとを組合せたチャンネル間で生じる受信信号の利得差を補償する第2補償手段を備えることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載のアンテナ装置。
【請求項15】
前記受信手段は、前記第2走査方向に沿って配列された複数のアンテナ素子からなり、
前記方位検出手段は、前記受信手段を構成する各アンテナ素子からの受信信号をサンプリングしてデジタルデータに対する信号処理によって方位検出を行うことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の方位検出装置。
【請求項16】
前記方位検出手段が実行する信号処理は、デジタルビームフォーミングであることを特徴とする請求項15に記載の方位検出装置。
【請求項17】
前記方位検出手段が実行する信号処理は、MUSIC(MUltipule Signal Classification )であることを特徴とする請求項16に記載の方位検出装置。
【請求項18】
前記送信手段は、前記送信ビームの指向方向を機械的に変化させるように構成されていることを特徴とする請求項10乃至請求項17のいずれかに記載の方位検出装置。
【請求項19】
前記送信手段は、ロトマンレンズ又はレンズアンテナによってビーム形成を行うように構成されていることを特徴とする請求項10乃至請求項17のいずれかに記載の方位検出装置。
【請求項20】
前記送信手段の送信ビームを順次切り替えて、前記送信手段及び前記受信手段に前記探査波を送受信させることで、前記送信ビーム毎に前記受信手段での受信レベルを測定する第2測定手段と、
前記第2測定手段での測定結果に基づき、前記受信レベルが最大となる送信ビームにて前記探査波を送信するように前記送信手段を設定する第2設定手段と、
を備えることを特徴とする請求項10乃至請求項19のいずれかに記載の方位検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−127641(P2010−127641A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299715(P2008−299715)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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