インストルメントパネルの支持構造
【課題】インストルメントパネルの剛性を確保した上で、衝突時の乗員の膝部等への入力を低減させるインストルメントパネルの支持構造を提供する。
【解決手段】自動車の車室前部に配置されるインストルメントパネル1と、自動車の車体骨格に取り付けられ、インストルメントパネル1をこのインストルメントパネル1の側面部2aにおいて支持する支持部材4とを備え、インストルメントパネル1の側面部2aには、支持部材4の外縁に沿って脆弱部5を備えた。
【解決手段】自動車の車室前部に配置されるインストルメントパネル1と、自動車の車体骨格に取り付けられ、インストルメントパネル1をこのインストルメントパネル1の側面部2aにおいて支持する支持部材4とを備え、インストルメントパネル1の側面部2aには、支持部材4の外縁に沿って脆弱部5を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネルの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内の車両前方部分には、左右の車体側板間に延在して、車体の剛性を確保するデッキクロスメンバが設置されている。インストルメントパネルはこのデッキクロスメンバに支持されている。インストルメントパネルには、グローブボックス等の部品が取り付けられることから、部品の取り付け品質を確保するために充分な剛性を必要とする。このため、従来、インストルメントパネルには、さらに剛性を高める形状が検討されたり、補強等が行われてきた。このようなインストルメントパネルの支持構造の一例が下記特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−200931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来のインストルメントパネルの支持構造では、車両衝突時に、例えば、インストルメントパネルとデッキクロスメンバとの結合部付近の剛性が高い部分に、乗員の膝部等が衝突することにより、乗員の膝部への入力が大きくなる虞がある。このため、インストルメントパネルの剛性を低下させることが可能であるが、この場合、グローブボックス等の部品の取り付け品質を確保するために充分な剛性は確保しておく必要がある。つまり、インストルメントパネルの剛性も同時に確保しなければならない。
【0005】
以上のことから、本発明は、インストルメントパネルの剛性を確保した上で、衝突時の乗員の膝部等への入力を低減させるインストルメントパネルの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための第1の発明(請求項1に対応)に係るインストルメントパネルの支持構造は、
自動車の車室前部に配置されるインストルメントパネルと、
前記自動車の車体骨格に取り付けられ、前記インストルメントパネルを該インストルメントパネルの側面部において支持する支持部材と
を備え、
前記インストルメントパネルの前記側面部には、前記支持部材の外縁に沿って脆弱部を備える
ことを特徴とする。
【0007】
上記の課題を解決するための第2の発明(請求項2に対応)に係るインストルメントパネルの支持構造は、第1の発明に係るインストルメントパネルの支持構造において、前記脆弱部は、前記車室の助手席側の前記側面部に備えることを特徴とする。
【0008】
上記の課題を解決するための第3の発明(請求項3に対応)に係るインストルメントパネルの支持構造は、第1の発明又は第2の発明に係るインストルメントパネルの支持構造において、前記脆弱部は、前記支持部材の上方側及び下方側に回り込む形状とすることを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決するための第4の発明(請求項4に対応)に係るインストルメントパネルの支持構造は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかに係るインストルメントパネルの支持構造において、前記脆弱部は、スリットにより形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インストルメントパネルのグローブボックス等が取り付けられる部分の剛性を確保しつつ、衝突時の乗員の膝部等が衝突することによる入力に対しては脆弱部が形成された位置でインストルメントパネルが屈折することにより衝撃を吸収することができるため、乗員の膝部等への入力を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るインストルメントパネルの支持構造の一実施形態について、図1から図6を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造における要部の側面図、図2は本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造を車両側方より見た斜視図、図3は本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造におけるインストルメントパネルコアの斜視図、図4は図2においてA−Aで示す断面での断面図、図5は図3に示す断面における衝突時の変形の様子を示した断面図、図6は本発明の種々の実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造における要部の側面図である。なお、各図において、Frは車両前方、Inは車幅方向内側、Upは車両上方を示す。
【0012】
始めに、本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造の概要について説明する。なお、本実施形態においては、左ハンドル仕様の自動車を例にして説明する。図2に示すように、自動車10の車両前部の側面には、車体骨格であるフェンダパネル11がある。フェンダパネル11の車両後方側の上部からは、車体の天井を支えるフロントピラー12が延在している。
【0013】
また、フェンダパネル11の車両後方側の下部からは、車体下部における側部の骨格部材であるサイドシル13が延在している。これらフェンダパネル11、フロントピラー12及びサイドシル13等に囲まれる部分に、乗員が乗降するための開口部である乗降開口部14が形成されている。
【0014】
自動車10の車室前部には、インストルメントパネル1が設置されている。インストルメントパネル1は、インストルメントパネル1のコアを形成するインストルメントパネルコア2とインストルメントパネルコア2の表面に配設され、意匠面を形成する表皮材200により形成されている。
【0015】
図3に示すように、インストルメントパネルコア2は、複雑な立体形状をなすことにより高い剛性を有する部材である。なお、本実施形態では、インストルメントパネルコア2は、樹脂により成形してインストルメントパネル1のコアとしたが、これ以外にも板金部材等で形成することも可能である。また、本実施形態では、インストルメントパネルコア2をインストルメントパネル1の全体に亘って形成する構造としたが、骨格構造により部分的にコアを形成する構造とすることも可能である。
【0016】
インストルメントパネルコア2の助手席側下部の開口部15には、グローブボックス16(図2参照)が設置される。インストルメントパネルコア2の助手席側上部の開口部17には、助手席用エアバックモジュールが設置される。インストルメントパネルコア2の運転席側上部の開口部18には、コンビネーションメータが設置される。インストルメントパネルコアの中央部の開口部19には、カーナビゲーションシステムやオーディオシステム等が設置される。なお、インストルメントパネルコア2は上述した開口部17〜19以外にも開口部が設けられているがここでの説明は省略する。
【0017】
図2に示すように、インストルメントパネルコア2は、インストルメントパネルコア2の側面部2aに設けるインストルメントパネル取り付け部3において、車体骨格側から車両後方側に延在するインストルメントパネル取り付けブラケット4(支持部材)に結合されている。以下、本実施形態に係るインストルメントパネル取り付け部3の構造について詳細に説明する。
【0018】
図4に示すように、フェンダパネル11は、最も外側にフェンダパネルアウタ20を有し、フェンダパネルアウタ20の車幅方向内側にフロントピラーロアアウタ21を有し、フロントピラーロアアウタ21の車幅方向内側にフロントピラーロアインナ22を有する剛性の高い構造となっている。これらフェンダパネルアウタ20、フロントピラーロアアウタ21及びフロントピラーロアインナ22はフランジ部23において溶接やリベット止め等により結合されている。
【0019】
フロントピラーロアインナ22の車幅方向内側には、左右のフェンダパネル11間に延在し、車体前部の剛性を確保するパイプ状のフロントデッキクロスメンバ24を固定する箱状のフロントデッキクロスメンバブラケット25が配置されている。フロントピラーロアインナ22とフロントデッキクロスメンバブラケット25とは、溶接やボルト締め等により結合されている。また、フロントデッキクロスメンバ24端部とフロントデッキクロスメンバブラケット25とは、溶接やボルト締め等により結合されている。
【0020】
フロントデッキクロスメンバブラケット25の車両後方側の側面25aには、車両後方側に延在する略L字状のインストルメントパネル取り付けブラケット4が溶接により結合されている。インストルメントパネル取り付けブラケット4の車幅方向外側には、インストルメントパネルコア2のインストルメントパネル取り付け部3が位置している。
【0021】
インストルメントパネル取り付けブラケット4とインストルメントパネル取り付け部3とは面で接し、インストルメントパネル取り付けブラケット4とインストルメントパネル取り付け部3にそれぞれ設けられたボルト貫通孔4a,3aで、ボルト26及びナット27によりボルト締めして結合されている。
【0022】
また、インストルメントパネル取り付け部3には、ボルト貫通孔3aよりも車両後方側にスリット5(脆弱部)が形成されている。インストルメントパネルコア2の車両後方側には、インストルメントパネルの表皮材200が取り付けられ、嵌め合い、ボルト締め又はクリップ止め等により結合されている。
【0023】
図1に示すように、インストルメントパネル取り付け部3に形成されたスリット5は、インストルメントパネル取り付けブラケット4の外縁部に沿った円弧状の形状となっている。スリット5の上方の端部5aは、インストルメントパネル取り付けブラケット4の外縁部の上端部4bより上方側に位置し、スリット5の下方の端部5bは、インストルメントパネル取り付けブラケット4の外縁部の下端部4cよりも下方側に位置している。また、スリット5の上下の端部5a,5bは、ボルト貫通孔3a,4aよりも車両後方側に位置している。
【0024】
次に、本実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造の衝突時の状態について説明する。図5に示すように、車両の衝突時に乗員の膝部等が特に剛性の高いインストルメントパネル1側端部近傍に衝突して図5中に矢印Fで示すように入力が加わった場合、インストルメントパネル取り付けブラケット4側のフェンダパネル11、フロントデッキクロスメンバ24及びデッキクロスメンバブラケット25等は比較的剛性が高いので変形し難く、インストルメントパネルコア2が、スリット5が形成された位置から車幅方向内側にインストルメントパネルコア2の側面部2aにおいて屈折するようになっている。
【0025】
これにより、グローブボックス16(図2参照)が取り付けられる開口部15(図3参照)縁部の剛性を確保しつつ、衝突時の乗員の膝部等が衝突することによる入力に対してはスリット5が形成された位置でインストルメントパネルコア2が屈折することにより衝撃を吸収することができるため、乗員の膝部等への入力を低減させることができる。
【0026】
また、図1に示すように、スリット5の形状は、インストルメントパネル取り付けブラケット4の外縁部の上端4b及び下端4cに回り込むような円弧状としたことにより、スリット5が形成された位置でインストルメントパネルコア2の側面部2aが屈折するときに、図1中にΔsで示す分だけ曲げストロークを大きく取ることができるため、衝撃を吸収する性能をより高めることができる。さらに、スリット5の形状を円弧状としたことにより、あらゆる方向の入力に対応することが可能となるため、インストルメントパネルコア2を確実に屈折させることができる。
【0027】
なお、本実施形態ではスリット5の形状を円弧状としたが、これ以外の形状とすることも可能である。例えば、図6(a)に示すように、インストルメントパネル取り付け部3にインストルメントパネル取り付けブラケット4の縁部に沿って山括弧状のスリット5を形成しても良い。また、図6(b)に示すように、インストルメントパネル取り付け部3にインストルメントパネル取り付けブラケット4の縁部に沿って亀甲括弧状のスリット5を形成しても良い。また、図6(c)に示すように、インストルメントパネル取り付け部3にインストルメントパネル取り付けブラケット4の前縁部と上縁部に沿って上鉤状のスリット5を形成しても良い。また、図6(d)に示すように、インストルメントパネル取り付け部3にインストルメントパネル取り付けブラケット4の前縁部と下縁部に沿って下鉤状のスリット5を形成しても良い。
【0028】
また、本実施形態では本発明に係る脆弱部としてスリット5を設けたが、これ以外にもビードや肉薄部を設けることで脆弱部を形成することも可能である。また、本実施形態では、助手席側の特に剛性の高いグローブボックス16の取り付けられる開口部17の近傍における乗員の膝部への入力低減のため、助手席側にのみスリット5を設けたが、運転席側にもスリット5を設けることも可能である。また、本実施形態では、左ハンドル車について説明したが、右ハンドル車であっても本発明に係るインストルメントパネルの支持構造を適用することが可能である。また、本実施形態では、インストルメントパネル1は、インストルメントパネルコア2と表皮材200により形成されている構造について説明したが、インストルメントパネルコア2の表面を意匠面として、表皮材200を省いたインストルメントパネル1の側面に脆弱部を設けても、同様な効果が奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造における要部の側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造を車両側方より見た斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造におけるインストルメントパネルコアの斜視図である。
【図4】図2においてA−Aで示す断面での断面図である。
【図5】図3に示す断面における衝突時の変形の様子を示した断面図である。
【図6】本発明の種々の実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造における要部の側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 インストルメントパネル
2 インストルメントパネルコア
2a インストルメントパネルコア側面部(側面部)
3 インストルメントパネル取り付け部
4 インストルメントパネル取り付けブラケット(支持部材)
5 スリット(脆弱部)
200 インストルメントパネル表皮材
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネルの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内の車両前方部分には、左右の車体側板間に延在して、車体の剛性を確保するデッキクロスメンバが設置されている。インストルメントパネルはこのデッキクロスメンバに支持されている。インストルメントパネルには、グローブボックス等の部品が取り付けられることから、部品の取り付け品質を確保するために充分な剛性を必要とする。このため、従来、インストルメントパネルには、さらに剛性を高める形状が検討されたり、補強等が行われてきた。このようなインストルメントパネルの支持構造の一例が下記特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−200931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来のインストルメントパネルの支持構造では、車両衝突時に、例えば、インストルメントパネルとデッキクロスメンバとの結合部付近の剛性が高い部分に、乗員の膝部等が衝突することにより、乗員の膝部への入力が大きくなる虞がある。このため、インストルメントパネルの剛性を低下させることが可能であるが、この場合、グローブボックス等の部品の取り付け品質を確保するために充分な剛性は確保しておく必要がある。つまり、インストルメントパネルの剛性も同時に確保しなければならない。
【0005】
以上のことから、本発明は、インストルメントパネルの剛性を確保した上で、衝突時の乗員の膝部等への入力を低減させるインストルメントパネルの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための第1の発明(請求項1に対応)に係るインストルメントパネルの支持構造は、
自動車の車室前部に配置されるインストルメントパネルと、
前記自動車の車体骨格に取り付けられ、前記インストルメントパネルを該インストルメントパネルの側面部において支持する支持部材と
を備え、
前記インストルメントパネルの前記側面部には、前記支持部材の外縁に沿って脆弱部を備える
ことを特徴とする。
【0007】
上記の課題を解決するための第2の発明(請求項2に対応)に係るインストルメントパネルの支持構造は、第1の発明に係るインストルメントパネルの支持構造において、前記脆弱部は、前記車室の助手席側の前記側面部に備えることを特徴とする。
【0008】
上記の課題を解決するための第3の発明(請求項3に対応)に係るインストルメントパネルの支持構造は、第1の発明又は第2の発明に係るインストルメントパネルの支持構造において、前記脆弱部は、前記支持部材の上方側及び下方側に回り込む形状とすることを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決するための第4の発明(請求項4に対応)に係るインストルメントパネルの支持構造は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかに係るインストルメントパネルの支持構造において、前記脆弱部は、スリットにより形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インストルメントパネルのグローブボックス等が取り付けられる部分の剛性を確保しつつ、衝突時の乗員の膝部等が衝突することによる入力に対しては脆弱部が形成された位置でインストルメントパネルが屈折することにより衝撃を吸収することができるため、乗員の膝部等への入力を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るインストルメントパネルの支持構造の一実施形態について、図1から図6を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造における要部の側面図、図2は本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造を車両側方より見た斜視図、図3は本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造におけるインストルメントパネルコアの斜視図、図4は図2においてA−Aで示す断面での断面図、図5は図3に示す断面における衝突時の変形の様子を示した断面図、図6は本発明の種々の実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造における要部の側面図である。なお、各図において、Frは車両前方、Inは車幅方向内側、Upは車両上方を示す。
【0012】
始めに、本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造の概要について説明する。なお、本実施形態においては、左ハンドル仕様の自動車を例にして説明する。図2に示すように、自動車10の車両前部の側面には、車体骨格であるフェンダパネル11がある。フェンダパネル11の車両後方側の上部からは、車体の天井を支えるフロントピラー12が延在している。
【0013】
また、フェンダパネル11の車両後方側の下部からは、車体下部における側部の骨格部材であるサイドシル13が延在している。これらフェンダパネル11、フロントピラー12及びサイドシル13等に囲まれる部分に、乗員が乗降するための開口部である乗降開口部14が形成されている。
【0014】
自動車10の車室前部には、インストルメントパネル1が設置されている。インストルメントパネル1は、インストルメントパネル1のコアを形成するインストルメントパネルコア2とインストルメントパネルコア2の表面に配設され、意匠面を形成する表皮材200により形成されている。
【0015】
図3に示すように、インストルメントパネルコア2は、複雑な立体形状をなすことにより高い剛性を有する部材である。なお、本実施形態では、インストルメントパネルコア2は、樹脂により成形してインストルメントパネル1のコアとしたが、これ以外にも板金部材等で形成することも可能である。また、本実施形態では、インストルメントパネルコア2をインストルメントパネル1の全体に亘って形成する構造としたが、骨格構造により部分的にコアを形成する構造とすることも可能である。
【0016】
インストルメントパネルコア2の助手席側下部の開口部15には、グローブボックス16(図2参照)が設置される。インストルメントパネルコア2の助手席側上部の開口部17には、助手席用エアバックモジュールが設置される。インストルメントパネルコア2の運転席側上部の開口部18には、コンビネーションメータが設置される。インストルメントパネルコアの中央部の開口部19には、カーナビゲーションシステムやオーディオシステム等が設置される。なお、インストルメントパネルコア2は上述した開口部17〜19以外にも開口部が設けられているがここでの説明は省略する。
【0017】
図2に示すように、インストルメントパネルコア2は、インストルメントパネルコア2の側面部2aに設けるインストルメントパネル取り付け部3において、車体骨格側から車両後方側に延在するインストルメントパネル取り付けブラケット4(支持部材)に結合されている。以下、本実施形態に係るインストルメントパネル取り付け部3の構造について詳細に説明する。
【0018】
図4に示すように、フェンダパネル11は、最も外側にフェンダパネルアウタ20を有し、フェンダパネルアウタ20の車幅方向内側にフロントピラーロアアウタ21を有し、フロントピラーロアアウタ21の車幅方向内側にフロントピラーロアインナ22を有する剛性の高い構造となっている。これらフェンダパネルアウタ20、フロントピラーロアアウタ21及びフロントピラーロアインナ22はフランジ部23において溶接やリベット止め等により結合されている。
【0019】
フロントピラーロアインナ22の車幅方向内側には、左右のフェンダパネル11間に延在し、車体前部の剛性を確保するパイプ状のフロントデッキクロスメンバ24を固定する箱状のフロントデッキクロスメンバブラケット25が配置されている。フロントピラーロアインナ22とフロントデッキクロスメンバブラケット25とは、溶接やボルト締め等により結合されている。また、フロントデッキクロスメンバ24端部とフロントデッキクロスメンバブラケット25とは、溶接やボルト締め等により結合されている。
【0020】
フロントデッキクロスメンバブラケット25の車両後方側の側面25aには、車両後方側に延在する略L字状のインストルメントパネル取り付けブラケット4が溶接により結合されている。インストルメントパネル取り付けブラケット4の車幅方向外側には、インストルメントパネルコア2のインストルメントパネル取り付け部3が位置している。
【0021】
インストルメントパネル取り付けブラケット4とインストルメントパネル取り付け部3とは面で接し、インストルメントパネル取り付けブラケット4とインストルメントパネル取り付け部3にそれぞれ設けられたボルト貫通孔4a,3aで、ボルト26及びナット27によりボルト締めして結合されている。
【0022】
また、インストルメントパネル取り付け部3には、ボルト貫通孔3aよりも車両後方側にスリット5(脆弱部)が形成されている。インストルメントパネルコア2の車両後方側には、インストルメントパネルの表皮材200が取り付けられ、嵌め合い、ボルト締め又はクリップ止め等により結合されている。
【0023】
図1に示すように、インストルメントパネル取り付け部3に形成されたスリット5は、インストルメントパネル取り付けブラケット4の外縁部に沿った円弧状の形状となっている。スリット5の上方の端部5aは、インストルメントパネル取り付けブラケット4の外縁部の上端部4bより上方側に位置し、スリット5の下方の端部5bは、インストルメントパネル取り付けブラケット4の外縁部の下端部4cよりも下方側に位置している。また、スリット5の上下の端部5a,5bは、ボルト貫通孔3a,4aよりも車両後方側に位置している。
【0024】
次に、本実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造の衝突時の状態について説明する。図5に示すように、車両の衝突時に乗員の膝部等が特に剛性の高いインストルメントパネル1側端部近傍に衝突して図5中に矢印Fで示すように入力が加わった場合、インストルメントパネル取り付けブラケット4側のフェンダパネル11、フロントデッキクロスメンバ24及びデッキクロスメンバブラケット25等は比較的剛性が高いので変形し難く、インストルメントパネルコア2が、スリット5が形成された位置から車幅方向内側にインストルメントパネルコア2の側面部2aにおいて屈折するようになっている。
【0025】
これにより、グローブボックス16(図2参照)が取り付けられる開口部15(図3参照)縁部の剛性を確保しつつ、衝突時の乗員の膝部等が衝突することによる入力に対してはスリット5が形成された位置でインストルメントパネルコア2が屈折することにより衝撃を吸収することができるため、乗員の膝部等への入力を低減させることができる。
【0026】
また、図1に示すように、スリット5の形状は、インストルメントパネル取り付けブラケット4の外縁部の上端4b及び下端4cに回り込むような円弧状としたことにより、スリット5が形成された位置でインストルメントパネルコア2の側面部2aが屈折するときに、図1中にΔsで示す分だけ曲げストロークを大きく取ることができるため、衝撃を吸収する性能をより高めることができる。さらに、スリット5の形状を円弧状としたことにより、あらゆる方向の入力に対応することが可能となるため、インストルメントパネルコア2を確実に屈折させることができる。
【0027】
なお、本実施形態ではスリット5の形状を円弧状としたが、これ以外の形状とすることも可能である。例えば、図6(a)に示すように、インストルメントパネル取り付け部3にインストルメントパネル取り付けブラケット4の縁部に沿って山括弧状のスリット5を形成しても良い。また、図6(b)に示すように、インストルメントパネル取り付け部3にインストルメントパネル取り付けブラケット4の縁部に沿って亀甲括弧状のスリット5を形成しても良い。また、図6(c)に示すように、インストルメントパネル取り付け部3にインストルメントパネル取り付けブラケット4の前縁部と上縁部に沿って上鉤状のスリット5を形成しても良い。また、図6(d)に示すように、インストルメントパネル取り付け部3にインストルメントパネル取り付けブラケット4の前縁部と下縁部に沿って下鉤状のスリット5を形成しても良い。
【0028】
また、本実施形態では本発明に係る脆弱部としてスリット5を設けたが、これ以外にもビードや肉薄部を設けることで脆弱部を形成することも可能である。また、本実施形態では、助手席側の特に剛性の高いグローブボックス16の取り付けられる開口部17の近傍における乗員の膝部への入力低減のため、助手席側にのみスリット5を設けたが、運転席側にもスリット5を設けることも可能である。また、本実施形態では、左ハンドル車について説明したが、右ハンドル車であっても本発明に係るインストルメントパネルの支持構造を適用することが可能である。また、本実施形態では、インストルメントパネル1は、インストルメントパネルコア2と表皮材200により形成されている構造について説明したが、インストルメントパネルコア2の表面を意匠面として、表皮材200を省いたインストルメントパネル1の側面に脆弱部を設けても、同様な効果が奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造における要部の側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造を車両側方より見た斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造におけるインストルメントパネルコアの斜視図である。
【図4】図2においてA−Aで示す断面での断面図である。
【図5】図3に示す断面における衝突時の変形の様子を示した断面図である。
【図6】本発明の種々の実施形態に係るインストルメントパネルの支持構造における要部の側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 インストルメントパネル
2 インストルメントパネルコア
2a インストルメントパネルコア側面部(側面部)
3 インストルメントパネル取り付け部
4 インストルメントパネル取り付けブラケット(支持部材)
5 スリット(脆弱部)
200 インストルメントパネル表皮材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車室前部に配置されるインストルメントパネルと、
前記自動車の車体骨格に取り付けられ、前記インストルメントパネルを該インストルメントパネルの側面部において支持する支持部材と
を備え、
前記インストルメントパネルの前記側面部には、前記支持部材の外縁に沿って脆弱部を備える
ことを特徴とするインストルメントパネルの支持構造。
【請求項2】
前記脆弱部は、前記車室の助手席側の前記側面部に備える
ことを特徴とする請求項1に記載のインストルメントパネルの支持構造。
【請求項3】
前記脆弱部は、前記支持部材の上方側及び下方側に回り込む形状とする
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインストルメントパネルの支持構造。
【請求項4】
前記脆弱部は、スリットにより形成する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインストルメントパネルの支持構造。
【請求項1】
自動車の車室前部に配置されるインストルメントパネルと、
前記自動車の車体骨格に取り付けられ、前記インストルメントパネルを該インストルメントパネルの側面部において支持する支持部材と
を備え、
前記インストルメントパネルの前記側面部には、前記支持部材の外縁に沿って脆弱部を備える
ことを特徴とするインストルメントパネルの支持構造。
【請求項2】
前記脆弱部は、前記車室の助手席側の前記側面部に備える
ことを特徴とする請求項1に記載のインストルメントパネルの支持構造。
【請求項3】
前記脆弱部は、前記支持部材の上方側及び下方側に回り込む形状とする
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインストルメントパネルの支持構造。
【請求項4】
前記脆弱部は、スリットにより形成する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインストルメントパネルの支持構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2008−132841(P2008−132841A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319573(P2006−319573)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
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