説明

インバータ制御回路及び高周波誘電加熱装置

【課題】パワーダウン制御後のマグネトロンの出力上昇に伴うモーディング現象等の不具合の発生を防止し、高電圧誘電加熱装置の信頼性を更に向上させる。
【解決手段】パワーダウン制御後、再びサーミスタT1の温度が下降すると点PCの電位Vpcも上昇し、コンパレータC3の他の入力電位Vc3よりも高くなると、コンパレータC3の出力が“0”となりスイッチS2がオフ状態となる。抵抗R7によるPD2がオフとなるので、コンパレータC1の正端子A、負端子Bへの入力電圧は3Vに戻る。さらにサーミスタT1の温度が下降すると、点PCの電位Vpcも上昇し、コンパレータC2の出力が“0”となる。スイッチS4、ORゲート回路を介して、スイッチS5がオフ状態となり、点SSの電位が上昇し、コンパレータC4の出力は“1”となり、NANDゲート回路の出力は“0”となり、可動接点K1が第2の固定端子b側に切り替えられ、通常制御に戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジなどのようにマグネトロンを用いた高周波誘電加熱に関するもので、特にインバータに用いられている半導体スイッチング素子の過熱保護及びマグネトロンへの過電圧防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子レンジなどのようにマグネトロンを用いた高周波誘電加熱装置においては、マグネトロンに供給する電力の調節をインバータ制御回路の出力パルス幅によって行っている。出力電圧を高くする場合、インバータ制御回路の出力パルス幅を広くすることにより、マグネトロンに供給する電力は大きくなる構成となっていた。この構成によってマグネトロンの加熱出力を連続的に変化させることが可能となっている。
【0003】
図6は従来の高周波誘電加熱装置において使用されている、マグネトロンを含むその駆動制御回路図を示す。図6において、商用電源11からの交流は整流回路13によって直流に整流され、整流回路13の出力側のチョークコイル14と平滑コンデンサ15で平滑され、インバータ16の入力側に与えられる。直流はインバータ16の中の半導体スイッチング素子IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)のオン・オフにより所望の高周波(20〜40kHz)に変換される。インバータ16は、直流を高速でスイッチングするIGBT16aとコンデンサ16bを含み、インバータ16を制御するインバータ制御回路161によって駆動され、昇圧トランス18の1次側を流れる電流が高速でオン/オフにスイッチングされる。
【0004】
昇圧トランス18では1次巻線181にインバータ16の出力である高周波電圧が加えられ、2次巻線182に巻線比に応じた高圧電圧が得られる。また、昇圧トランス18の2次側に巻回数の少ない巻線183が設けられマグネトロン12のフィラメント(ヒータ;カソード)121の加熱用に用いられている。昇圧トランス18の2次巻線182はその出力を整流する倍電圧全波整流回路20を備えている。倍電圧全波整流回路20は高圧コンデンサ201、202及び2個の高圧ダイオード203,204により構成される。
【0005】
IGBT16aの温度を検出するサーミスタ9は、直接IGBT16aの脚部又は脚部近傍に取り付けられている。また、この脚部はエミッタ脚であり、放熱フィン側ではなくてプリント基板6(図7)の裏の半田面においてサーミスタを構成するチップ(チップサーミスタ)を半田付けしている。このサーミスタによる温度情報はインバータ制御回路161に入力され、インバータ16の制御に用いられている。
【0006】
図7は、プリント基板6上に放熱フィン7、IGBT8(16a)、サーミスタ9が取り付けられた状態を示す。高熱を発するIGBT8の放熱部は放熱フィン7に固定されて、その3本の脚がプリント基板のスルーホールに挿入され、反対側(裏側、半田側)において半田づけされている。サーミスタ9にはチップサーミスタを使用し、放熱フィン側ではなく、プリント基板6の裏の半田面のIGBT16aの脚に直接半田付けされている。
【0007】
このような構成下、インバータ電源のスイッチングをつかさどるIGBTの熱破壊を防ぐ方法であり、IGBTの熱破壊前に停止あるいはパワーダウンを行い温度上昇を防ぐ、いわゆるパワーダウン制御が行なわれている。その概略は以下のようである。
【0008】
(1)IGBT温度が検知温度になると、突然パワーを切るのではなく、パワーをまず第1の所定値(例えば半分程度)に下げる。その後、IGBT温度が下がって検知温度以下になると再度所定のパワーに戻し、IGBT温度が上昇して再び検知温度になるとまたパワーダウンを行うといった動作を繰り返して検知温度をキープする。
(2)マイコン側からは常に一定の制御幅信号を与えておいて、インバータ側でIGBTの温度をサーミスタが検知して検出値をインバータ制御回路に送り、IGBTの温度を下げるようにインバータ制御が行なわれる。
(3)抵抗分割回路の一方にサーミスタを挿入しておいて、サーミスタが過熱温度を検知したときの分圧比を基に漸減制御する。
(4)漸減制御において、ある時点までいったら目標値を大きく下げる制御をし、これを繰り返していく制御をする。この繰り返し制御の1サイクルは短くて1〜2秒程度である。このような制御は前述のように、チップサーミスタをIGBTの端子裏側に設けたことにより、熱時定数を小さくすることにより可能となる。
【0009】
したがって、何らかの原因で異物がファンにはさまりファンが急に回らなくなったときであっても、いきなり調理を中止させていたが、この構成ではファンが故障してもIGBTは簡単に熱破壊するものでない点に着目してそのまま調理を続行させる。そして、IGBTの温度が上昇してゆきIGBTの熱破壊に至る温度の前に至って始めてパワーを半分程度ダウンしてさらに加熱を継続させる。このような制御において、普通に調理をしている場合に、調理者は少し温まりが遅いと感ずる程度で、故障といった不安を与えないで調理を続けさせることができ、心理的に不安を与えることを避けることができる。
【0010】
これはファンロック時においても同じであり、電源を切断せずに、IGBTが熱破壊しない程度の最低出力にて加熱動作を継続させるようにすることができる。
【0011】
図8は上述したパワーダウン制御方式を説明する図であり、(a)は回路図、(b)コンパレータの動作線図である。
【0012】
図8(a)において、コンパレータCO1の2入力端子の1方の(A)端子にはIGBTのコレクタ電圧を分圧抵抗R3とR4で分圧した点P3の電位が入力され、他方の(C)端子には起動中には切り替えスイッチS1がa端子側にあって3Vが印加される。そしてマグネトロンが加熱して起動から定常状態(定常運転)になったら、切り替えスイッチS1がb端子側に切り替わってVcc電圧を分圧抵抗R1とサーミスタT1(図6、7では参照番号9)で分圧したPc点の電位が入力される。
【0013】
サーミスタT1は温度上昇と共に抵抗値が減少していく特性を有するため、図8(b)の(C)のようにサーミスタの検出温度が所定値を検出したらその点からコレクタ電圧が漸減するようになる。起動中はコンパレータCO1のON/OFF情報を基にインバータ制御回路161はP3電位が3Vと略一致するようにIGBTのON/OFFデューティーを制御するので、IGBTのコレクタ電圧は定常時よりも低くなり、定常状態になると、コンパレータCO1の(C)端子には、起動時の3Vに比べて十分高いPc電位が入力される。従って、インバータ制御回路161は前記P3電位(A)がPc電位(C)に略一致するようにIGBTのON/OFF制御のONデューティーを高め、IGBTのコレクタ電圧も高くなる。ただし、図示していないがインバータ制御回路161が併せ持つ、他の入力信号を基に制御する電力制御機能により前記ONデューティーの上昇に制限が加わるので、図8に示されるようにPc電位(C)が常にP3電位(A)より高くなりコンパレータCO1の出力は常時オン状態が維持される。ところが冷却不足などにより、IGBTが加熱されるに伴ってサーミスタT1の抵抗が減っていくので、やがてP3電位(A)と同じ電位になると、再びON/OFFを始め、インバータ制御回路161はPc電位(C)の低下に追随してP3電位(A)が低下するようにIGBTのON/OFF制御のONデューティーを下げるので、インバータの出力は減少していく。
【0014】
このように、パワーダウン制御では、インバータ部がマグネトロンが起動し、定常状態になった後サーミスタの抵抗値にインバータ部の出力電力を依存させるようにしているので、何らかの原因でファンが回らなくなっても電源遮断することをせずに、インバータ部を動作させ続け、IGBTの温度が上昇するに伴ってサーミスタの抵抗値が減少し、インバータの出力が減少していくので、使用者は加熱温度が少々低いと感ずる程度で調理を続行することができる。
【特許文献1】特開2004−327123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述のパワーダウン制御により、いきなり調理を停止することなく一定条件下で続行することが可能となり、使用者にとっては高電圧誘電加熱装置の使用性が向上することとなる。しかしながら、その後温度が下降し、通常の運転状態が可能となった際、インバータ制御回路が再びマグネトロンの出力をあげると、モーディング現象やオーバーシュートが発生し、インバータ制御が停止してしまうことがあった。パワーダウン制御下の低出力から、通常出力までマグネトロンの出力を上げると、フィラメントがオープン又はそれに準ずるような状態となり、いわゆるモーディング現象が発生し、過電圧が印加されてしまう場合があるからである。
【0016】
本発明は、上記に鑑み、高電圧誘電加熱装置の信頼性、使用性をより向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のインバータ制御回路は、直流を所定周波数の交流に変換するとともに、所定の制御対象の出力を変動させるための共振回路を有するインバータを制御するインバータ制御回路であって、前記インバータのスイッチング素子の温度を検出する温度検出部の出力値に応じて、前記インバータの出力を変動させる出力変動手段と、前記出力変動手段による前記インバータの出力減少制御の後、所定時間前記インバータの出力増加を抑える出力増加抑制手段と、を備える。
【0018】
本発明によれば、出力増加抑制手段がパワーダウン制御後の出力の急上昇を防止するので、高周波誘電加熱装置のようなインバータ制御回路が適用される装置への信頼性、使用性を向上させることが可能となる。
【0019】
前記出力増加抑制手段は、前記制御対象の起動から定常状態に移行する際の定常移行制御も行なうものであってよい。このような構成により、簡易に出力増加抑制制御を行うことができる。
【0020】
前記出力増加抑制手段は、前記出力変動手段による前記インバータの出力増加を抑えるために、所定時間電荷を蓄積する容量素子を含む。さらには前記インバータの出力減少制御時において、前記容量素子の時定数に依存せず、速やかに出力減少制御を発動させるものである。このような構成により、簡易にパワーダウン制御、出力増加抑制制御を行うことができる。
【0021】
また、前記出力変動手段は、前記出力増加抑制手段により所定時間前記インバータの出力増加を抑えた後、前記容量素子の電位に対応して前記インバータの出力を増加させる。このような構成により、簡易にパワーダウン制御、出力増加抑制制御を行うことができる。
【0022】
さらに本発明のインバータ制御回路は、直流を所定周波数の交流に変換するとともに、所定の制御対象の出力を変動させるための共振回路を有するインバータを、当該インバータのスイッチング素子の温度を検出する温度検出部の出力値に応じて制御するインバータ制御回路であって、前記温度検出部の出力値に応じて第1の状態信号を出力する温度状態出力部と、前記共振回路に発生する共振電圧を変動させる電圧変動部と、前記第1の状態信号が前記共振電圧を上昇させるものである場合、前記第1の状態信号の入力から所定時間経過後に、前記電圧変動部に前記共振電圧を上昇させる上昇信号を出力する出力増加遅延部と、を備える。
【0023】
本発明によれば、出力増加遅延部がパワーダウン制御後の出力の急上昇を防止するので、高周波誘電加熱装置のようなインバータ制御回路が適用される装置への信頼性、使用性を向上させることが可能となる。
【0024】
前記出力増加遅延部は、前記制御対象の起動から定常状態に移行する際、前記電圧変動部と接続され、前記共振電圧を制御する。このような構成により、簡易に出力増加遅延制御を行なうことができる。
【0025】
前記出力増加遅延部は、前記電圧変動部に前記上昇信号を出力するため、所定時間電荷を蓄積する容量素子を含む。さらには、前記インバータの出力減少制御時において、前記容量素子の時定数に依存せず、速やかに出力減少制御を発動させる。このような構成により、簡易にパワーダウン制御、出力増加遅延制御を行うことができる。
【0026】
前記出力増加遅延部は、所定時間前記インバータの出力増加を抑えた後、前記容量素子の電位に対応して前記インバータの出力を増加させる。このような構成により、簡易にパワーダウン制御、出力増加遅延制御を行うことができる。
【0027】
また、前記温度状態出力部は、前記温度検出部の出力値に応じて第2の状態信号を前記電圧変動部に出力し、前記第1の状態信号と前記第2の状態信号は、互いに前記温度検出部の異なる温度状態を反映したものである。このような制御により、スイッチング素子の温度が更に上昇した場合であっても、インバータを適切に制御することができる。
【0028】
前記インバータ制御回路は、前記共振回路の共振電圧を制御するが、当該共振電圧が、インバータのスイッチング素子のコレクタ及びエミッタ間の電圧に等しいものもある。
【0029】
上記インバータ制御回路は、前記制御対象としてマグネトロンを有する高周波誘電加熱装置に使用することができる。
【0030】
更に本発明は、被加熱物をマイクロ波の照射によって加熱する高周波誘電加熱装置を提供し、当該装置は、直流をスイッチング素子を用いてスイッチング制御し、所定周波数の交流に変換するインバータと、前記スイッチング素子から放出される熱を放熱する放熱フィンと、前記スイッチング素子の温度を検出するサーミスタと、前記スイッチング素子及び前記サーミスタが取り付けられたプリント基板と、前記インバータの出力電圧を昇圧する昇圧トランスと、前記昇圧トランスの出力電圧を倍電圧整流する高圧整流部と、前記高圧整流部の出力をマイクロ波として放射するマグネトロンと、前記マグネトロンから放射されるマイクロ波が供給され、前記被加熱物を収納する加熱調理室と、前記マグネトロンが起動した後、前記インバータの出力電力を前記サーミスタの抵抗値に依存させるパワーダウン制御を前記スイッチング素子に施すと共に、パワーダウン制御の終了後、所定時間経過後にパワーを増加させる制御を前記スイッチング素子に施すインバータ制御回路と、を備える。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、高周波誘電加熱装置におけるパワーダウン制御の解除後、所定の時間出力制御を行いながら、出力を所定の値に戻すため、モーディング現象やオーバーシュート等のような問題発生を防止し、高周波誘電加熱装置への信頼性、使用性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下本発明の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0033】
図1は本発明の高周波誘電加熱装置に使用されるマグネトロン駆動制御の回路図を示す。マイクロ波を発生するマグネトロン12は、マイクロ波を発生し、電子レンジの如き高周波誘電加熱装置の筐体内に収納された食品の如き被加熱物を加熱するものである。そして、マグネトロン駆動制御回路100は、交流電源11から交流電力の供給を受けるインバータ主回路10と、サーミスタ9と、インバータ主回路10を制御するインバータ制御回路161とを備え、マグネトロン12を駆動制御し、マイクロ波の発生、停止、出力変化をさせる。
【0034】
インバータ主回路10は、交流電源11からの交流電力をマグネトロン12に供給するもので、ダイオードブリッジ型の整流回路13と、平滑回路30と、インバータ16と、昇圧トランス18と、共振回路36と、倍電圧全波整流回路20とを含む。
【0035】
商用電源11からの交流は整流回路13によって直流に整流され、整流回路13の出力側のチョークコイル14と平滑コンデンサ15(平滑回路30)で平滑され、インバータ16の入力側に与えられる。インバータ16は、直流を高速でスイッチングするIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)16aとコンデンサ16bを含み、IGBT16aのオン・オフにより所望の高周波(20〜40kHz)に変換される。インバータ16は、後述するインバータ制御回路161によって駆動され、昇圧トランス18の1次側を流れる電流が高速でオン/オフにスイッチングされる。
【0036】
昇圧トランス18では1次巻線181にインバータ16の出力である高周波電圧が加えられ、2次巻線182に巻線比に応じた高圧電圧が得られる。また、昇圧トランス18の2次側に巻回数の少ない巻線183が設けられマグネトロン12のフィラメント(ヒータ;カソード)121の加熱用に用いられている。昇圧トランス18の2次巻線182はその出力を整流する倍電圧全波整流回路20に接続され、高電圧がマグネトロン12のカソード121とアノード122間に印加され、マイクロ波を発生させる。倍電圧全波整流回路20は高圧コンデンサ201、202及び2個の高圧ダイオード203,204により構成される。
【0037】
尚、共振回路36は、コンデンサ16bと昇圧トランス18の1次巻線181との並列回路より構成され、1次巻線181をインバータ16の一部とみなすことにより、インバータ16の構成回路として把握できる。また、IGBT16aには整流用のダイオード16dが並列接続され、本実施形態ではIGBT16aとダイオード16dよりスイッチング素子が構成される。
【0038】
サーミスタ9はIGBT16aの温度を検出する温度検出部として機能するものであり、図8と同様の方法で、IGBT16aの脚部又は脚部近傍に取り付けられている。サーミスタ9には、温度の上昇に対して抵抗が減少するNTC(negative temperature coefficient)サーミスタ、温度の上昇に対して抵抗が増加するPTC(positive temperature coefficient)サーミスタ、所定の温度をこえると急激に抵抗が減少するCTR(critical temperature coefficient)サーミスタ等、種々のものが任意に利用可能である。本実施形態では、温度と抵抗値の関係が比例的に変化するNTCサーミスタを使用している。また、IGBT16aの温度を検出する温度検出部は、サーミスタには限られず種々のものを使用することができる。
【0039】
インバータ制御回路161は、インバータ16のIGBT16aを、PWM(Pulse Width Modulation)制御において設定されたデューティ比の下、高速でオン・オフスイッチングし、昇圧トランス18の1次側を流れる電流を高速でオン・オフするものである。
【0040】
このような構成下、IGBT16aの熱破壊を防ぐ方法であり、IGBTの熱破壊前に停止あるいはパワーダウンを行い温度上昇を防ぐ、いわゆるパワーダウン制御がインバータ制御回路161によって行なわれている。その概略は以下のようである。
【0041】
(1)IGBT温度が検知温度になると、突然パワーを切るのではなく、パワーをまず第1の所定値(例えば半分程度)に下げる。その後、IGBT温度が下がって検知温度以下になると再度所定のパワーに戻し、IGBT温度が上昇して再び検知温度になるとまたパワーダウンを行うといった動作を繰り返して検知温度をキープする。
(2)マイコン側からは常に一定の制御幅信号を与えておいて、インバータ側でIGBTの温度をサーミスタが検知して検出値をインバータ制御回路に送り、IGBTの温度を下げるようにインバータ制御が行なわれる。
(3)抵抗分割回路の一方にサーミスタを挿入しておいて、サーミスタが過熱温度を検知したときの分圧比を基に漸減制御する。
(4)漸減制御において、ある時点までいったら目標値を大きく下げる制御をし、これを繰り返していく制御をする。この繰り返し制御の1サイクルは短くて1〜2秒程度である。このような制御は前述のように、チップサーミスタをIGBTの端子裏側に設けたことにより、熱時定数を小さくすることにより可能となる。
【0042】
したがって、何らかの原因で異物がファンにはさまりファンが急に回らなくなったときであっても、いきなり調理を中止させていたが、この構成ではファンが故障してもIGBTは簡単に熱破壊するものでない点に着目してそのまま調理を続行させる。そして、IGBTの温度が上昇してゆきIGBTの熱破壊に至る温度の前に至って始めてパワーを半分程度ダウンしてさらに加熱を継続させる。このような制御において、普通に調理をしている場合に、調理者は少し温まりが遅いと感ずる程度で、故障といった不安を与えないで調理を続けさせることができ、心理的に不安を与えることを避けることができる。
【0043】
これはファンロック時においても同じであり、電源を切断せずに、IGBTが熱破壊しない程度の最低出力にて加熱動作を継続させるようにすることができる。
【0044】
上述のパワーダウン制御により、いきなり調理を停止することなく一定条件下で続行することが可能となり、使用者にとっては高電圧誘電加熱装置の使用性が向上することとなる。しかしながら、その後温度が下降し、通常の運転状態が可能となった際、インバータ制御回路が再びマグネトロンの出力をあげると、モーディング現象が生じ、インバータ制御が停止してしまうことがあった。パワーダウン制御下の低出力から、通常出力までマグネトロンの出力を上げると、フィラメントがオープン又はそれに準ずるような状態となり、過電圧がフィラメント及びその周辺回路に印加されてしまう場合があるからである。
【0045】
図2は、本発明に係るインバータ制御回路の一実施形態の構成を示す図である。インバータ制御回路161は、サブ制御回路1と、サブ制御回路2と、サブ制御回路3と、サブ制御回路4と、サブ制御回路5とを含む。サブ制御回路1〜3は直接接続され、サブ制御回路2は、サブ制御回路4と接続され、サブ制御回路4とサブ制御回路5が接続されている。
【0046】
サブ制御回路1は、コンパレータ(比較器)C2,C3、分圧抵抗R8,R9,R10を含む。コンパレータC2,C3各々の正端子(+端子)には、Vcc電圧を分圧抵抗R8,R9,R10で分圧したP1,P2点の電位Vc2,Vc3が入力され(Vc2>Vc3)、負端子(−端子)には、Vcc電圧を分圧抵抗R1とサーミスタT1(図1では参照番号9)で分圧したPC点の電位Vpcが入力される。
【0047】
すなわち、サブ制御回路1は、サーミスタT1の出力値であるVpcに応じて、コンパレータC2からVpcとVc2との相対的な関係を示す第1の状態信号と、コンパレータC3からVpcとVc3との相対的な関係を示す第2の状態信号とを出力する温度状態出力部を構成する。そして、Vc2とVc3は異なるため、第1の状態信号と第2の状態信号は、互いにサーミスタT1の異なる温度状態を反映したものとなる。
【0048】
サブ制御回路2は、(切り替え)スイッチS1,スイッチS2,S3、分圧抵抗R3,R4,R5,R6、接地抵抗R7、コンパレータC1を含む。コンパレータC1の正端子Aには、分圧抵抗R3,R4間のP3点の電位Vp3が入力され、負端子Bには、スイッチS1からの電圧信号が入力される。切り替えスイッチS1は可動接点K1を含み、後述するサブ制御回路3のNANDゲート回路からの信号に応じて、第1の固定端子aと第2の固定端子bのいずれかに切り替えられる。この場合における電位Vp3はIGBT16aのコレクタ電圧を反映したものであり、サブ制御回路2は、後述するサブ制御回路4、サブ制御回路5と相まって、IGBT16aのコレクタ・エミッタ間電圧を変動させるものであるが、このコレクタ・エミッタ間電圧は、共振回路36に発生する共振電圧に等しい。従って、サブ制御回路2は、可動接点K1等の作用や、後述するサブ制御回路4、サブ制御回路5と協働して、共振回路36に発生する共振電圧を変動させる電圧変動部(出力変動手段)として機能する。
【0049】
第1の固定端子aには、Vcc電圧を分圧抵抗R5とR6で分圧したP5点の電位Vp5、ここでは3Vが入力される。さらには、P5には、スイッチS2がオン状態(閉状態)となったとき、接地抵抗R7が並列に接続され、分圧された電圧信号が入力される。スイッチS2のオン・オフ(開閉)は、サブ制御回路1のコンパレータC3に接続されたスイッチS3のオン時の電流信号によって制御される。スイッチS3は、マグネトロンの定常状態においては、オン状態(閉状態)となる。
【0050】
サブ制御回路3は、NANDゲート回路、コンパレータC4、電界コンデンサCO1、抵抗R11、スイッチS4,S5,S6、ORゲート回路、NOTゲート回路、電流源Pを含む。上述したようにNANDゲート回路の出力は、サブ制御回路2の切り替えスイッチS1の可動接点K1に入力される。一方NANDゲート回路の第1の入力端子aにはコンパレータC4の出力が入力され、第2の入力端子bには、コンパレータC2の出力を反転するNOTゲート回路の出力が入力される。コンパレータC4の負端子には3Vの基準電位が入力される。一方、コンパレータC4の正端子には、Vcc電圧に接続された電流源P及びスイッチS6と、電界コンデンサCO1の間のSS点の電圧信号が入力される。またSS点には、ORゲート回路からの出力によって開閉されるスイッチS5からの信号が抵抗R11を介して入力され、さらにSS点はスイッチS6を介して電流源Pに接続されている。ORゲート回路には三つの入力端子a,b,cを有し、第1の入力端子aには、サブ制御回路1のコンパレータC2の信号が入力するスイッチS4からの信号が入力される。第2の入力端子b、第3の入力端子c各々には「起動」、「停止」の信号が入力される。尚、スイッチS4,S6は、マグネトロンの定常状態においては、オン状態である。
【0051】
尚、本例ではマグネトロンの「起動」と「定常状態(定常運転)」は、マグネトロンへの入力電流、すなわち主としてインバータ主回路10の電流を検知し、当該電流が所定の閾値を越えたか否かで区別される。すなわち、インバータ主回路10の電流を変換した電圧値であるIinDCが所定の閾値を越えた場合、インバータ制御回路161は、マグネトロンの運転状態が「起動」から「定常状態」へ移行したと判断し、スイッチS3,S4,S6をオン状態に切り替える。マグネトロンの「起動」と「定常状態」を区別する方法としては、入力電流に限られたものではない。例えば、二次側のアノード電流を検出したりする方法もある。
【0052】
サブ制御回路4は、ドライバ回路162、コンパレータC6、ノコギリ波発生回路163、抵抗R12,R13,R14、スイッチS7、電界コンデンサCO2を含む。Vcc電圧に接続された抵抗R12と接地された電界コンデンサCO2の間の点P6の電位TonはIGBT16aのオン幅(オンデューティ)を決める電圧である。また、点P6には、抵抗R13,R14、コンパレータC6の正端子が並列接続されている。抵抗R13にはスイッチS7が直列接続されているが、スイッチS7は、サブ制御回路2のコンパレータC1の出力によりオン・オフ制御(開閉制御)がなされる。また、ノコギリ波発生回路163の出力がコンパレータC6の負端子に入力される。コンパレータC6の出力は、ドライバ回路162に入力される。ドライバ回路162はIGBT16aのベースに接続されており、コンパレータC6からの入力信号に従い、IGBT16aを駆動する。IGBT16aのコレクタはサブ制御回路2の抵抗R3,R4間のP3点に接続されている。
【0053】
サブ制御回路5は、スイッチS8、コンパレータC5、基準電位発生回路REFを含む。スイッチS8は、サブ制御回路4の抵抗R14に接続されている。コンパレータC5の正端子には、インバータ主回路10への入力電流を電圧に変換した電圧であるIinDCが入力され、負端子には、IinDCの基準電位であるREF電位が入力される。スイッチS8は、コンパレータC5の出力に従いオン・オフ制御(開閉制御)がなされる。
【0054】
図3は、インバータ制御回路161の動作を説明する動作線図である。横軸は時間を表わしており、ステップS1〜S9の9つの段階に分けられている。この中でステップS1がマグネトロン12の起動時のステップに相当し、ステップS2〜S9がマグネトロン12の定常状態時のステップに相当する。縦軸は、インバータ制御回路の各部分の動作状態を表しており、上から順に(a)SS点の電位、(b)コンパレータC1の正端子A及び負端子Bのへの入力電圧、(c)抵抗R6による電圧低下作用に基づくパワーダウン制御PD(Power Down)1のオン・オフ、(d)抵抗R7による電圧低下作用に基づくパワーダウン制御PD2のオン・オフ、(e)コンパレータC1の出力、(f)コンパレータC2の反転出力(C2出力の否定;C2の上線はC2の反転、すなわちNOTゲート回路の出力を意味する)、(g)コンパレータC3の出力、(h)コンパレータC4の出力、(i)NANDゲート回路の出力、(j)IinDCの電圧各々を示す。以下、図2及び図3を用いて、インバータ制御回路161の動作を説明する。
【0055】
(1)ステップS1(マグネトロン起動時)
まず、マグネトロン12が作動開始する起動時においては、IGBT16aの温度が低い故にサーミスタT1の温度も低いため、その抵抗は比較的高く(サーミスタT1は温度の上昇に対して抵抗が減少するNTCより構成)、従って電位Vpcは高い。そのため、電位Vpcと電位Vc3の比較を行なうコンパレータC3の出力は“0(Low)”となり、コンパレータC2の出力からNOTゲート回路を介して得られるC2の反転出力は“1(Hi)”となる(図3(f)及び(g)のS1)。このとき、スイッチS3,S4はオフの状態である。
【0056】
そして、スイッチS6、S5もオフの状態であるため、SS点の電位は低いままであり(図3(a)のS1)、負端子側の基準電位3Vとの比較により、コンパレータC4の出力は“0”となる(図3(h)のS1)。
【0057】
NANDゲート回路において、第1の入力端子aには“0”が入力され、第2の入力端子bには“1”が入力されるため、NANDゲート回路の出力は“1”となる(図3(i)のS1)。ここで、サブ制御回路2の切り替えスイッチS1の可動接点K1は、NANDゲート回路の出力が“1(Hi)”の場合、第1の固定端子a側に切り替えられ、NANDゲート回路の出力が“0(Low)”の場合、第2の固定端子b側に切り替えられるように構成されている。従って、切り替えスイッチS1の可動接点K1は、第1の固定端子a側に設定される。
【0058】
スイッチS3はオフの状態であり、コンパレータC1の負端子には分圧抵抗R5とR6で分圧した点P5の電位Vp5(3V)が入力されることとなる。一方、他方の正端子にはIGBT16aのコレクタ電圧を分圧抵抗R3とR4で分圧した点P3の電位Vp3が入力される。このVp3は、コレクタ電圧の分圧であり、インバータ16の共振回路36の共振電圧の作用によりVp5の3Vを越えたり、下回ったりすることを繰り返す。それ故、コンパレータC1の出力は、点P3の電位が3Vより小さいときはオフ、3Vより高くなればオンとなるオン・オフが繰り返されこととなり(図3(e)のS1)、この情報がサブ制御回路4を介してIGBT16aに入力される。P3電位が3Vと略一致するようにIGBT16aのオン・オフデューティが制御されるので、起動時のIGBT16aのコレクタ電圧は定常時よりも低くなる。
【0059】
(2)ステップS2〜S4(マグネトロンの起動から定常状態への移行)
マグネトロンの運転状態が定常状態になると、スイッチS3,S4,S6がオン状態になる。すると、電流源PからスイッチS6を介して電界コンデンサCO1への電荷蓄積が開始し、かつSS点の電位が上昇し始め(図3(a)のS2)、SS点の電位が3Vを越えると、負端子側の基準電位3Vとの比較により、コンパレータC4の出力、NANDゲート回路の第1の入力端子aへの入力は“1”となる(図3(h)のS3)。一方、第2の入力端子bへの入力は“1”のままである。従って、NANDゲート回路の出力が“0”となり(図3(i)のS3)、切り替えスイッチS1の可動接点K1は、第2の固定端子b側に設定される。このとき、抵抗R6によるPD1はオフとなる(図3(c)のS3)。つまり、SS点の電位が3Vになるまでは、マグネトロンが定常状態になってもPD1が働いており、モーディングの発生を抑制する働きをしている。
【0060】
電流源Pの作用によりSS点の電位は上昇しつづけ(図3(a)のS3)、コンパレータC1の負端子B側への入力電圧は起動時の3Vに比べて高い電位が入力されることとなる。従って、P3電位がSS電位に略一致するようにIGBT16aのオン・オフ制御のオンデューティを高め、IGBT16aのコレクタ電圧も高くなり、その分圧であるP3、正端子Aへの入力電圧も上昇する(図3(b)のS3)。つまり、SS電位が上昇する傾きに依存して、オン・オフ制御のオンデューティを高めていく。すなわち、サブ制御回路3は、SS電位を上昇させ、マグネトロンの起動から定常状態に移行する際の定常移行制御を担う。
【0061】
そして、正端子A、負端子Bへの入力電圧が所定値以上、すなわちIGBT16aのオン・オフ制御のオンデューティが所定値以上となると、サブ制御回路5の電力制御機能が発動され、オンデューティの上昇に制限が加わる。すなわち、この制限が加わることにより、SS電位が常にP3電位より高くなるため、コンパレータC1の出力はオフにされ、サブ制御回路5によりオンデューティが制御される。この電力制御機能は、以下の様に行なわれる。入力電流を電圧に変換した電圧であるIinDCと、IinDCの基準電圧であるREF電位をコンパレータC5が比較し、IinDCがREF電位を越えるとコンパレータC5がスイッチS8をオンとする信号を発生し、オンデューティを制御することにより、電力制御機能は達成される(図3(j)のS4)。このように、SS電位がP3電位より高くなった場合、サブ制御回路5のみがオンデューティを制御することで、オンデューティの上昇に制限を加えることが可能となり、安全性を確保することができる。
【0062】
(3)ステップS5(マグネトロンのパワーダウン制御)
上述した安定運転の下、時間経過と共にIGBT16aは加熱され、その温度上昇と共にサーミスタT1の温度も上昇し、抵抗値は減少していく。そして、冷却性能が悪かったり、何らかの原因で異物がファンにはさまりファンが急に回らなくなったときなどは、その抵抗値はさらに減少し、点PCの電位Vpcが下降し始める。そして、電位Vpcが、コンパレータC2の他の入力電位であるVc2(例えば3.8V)よりも低くなると(Vpc<Vc2)、コンパレータC2の出力が“1”となる。
【0063】
コンパレータC2の出力が“1”となると、コンパレータC2の出力からNOTゲート回路を介して得られるC2の反転出力は“0”となる(図3(f)のS5)。従って、NANDゲート回路の二つの入力端子a,bへの入力は各々“1”、“0”となり、NANDゲート回路の出力は“1”となり(図3(i)のS5)、切り替えスイッチS1の可動接点は、第2の固定端子bから第1の固定端子a側へ移動する。
【0064】
このときコンパレータC1の正端子A、負端子Bへの入力電圧は、SS点の電位とは関係なく急激に3Vまで下げられ、3Vに維持される(図3(b)のS5)。そのため、パワーダウン制御(PD1)が働く。つまり、コンパレータC1の出力は、電位Vpcが、コンパレータC2の他の入力電位であるVc2よりも低くなる(Vpc<Vc2)と同時にオン・オフの繰り返しとなる(図3(e)のS5)。
【0065】
また、コンパレータC2の出力が“1”となると、スイッチS4、ORゲート回路の出力“1”を介してスイッチS5がオン状態となり、電界コンデンサCO1の電荷が抵抗R11を介してグラウンドに流され、点SSの電位が下がり始める(図3(a)のS5)。そして、点SSの電位が3Vを下回ると(図3(a)のS5の中間)、コンパレータC4の出力が“0”になる(図3(h)のS5)。ただこの時点でコンパレータC4の出力が“1”から“0”に変わっても、NANDゲート回路の出力は影響されない。このSS電位を下げることは、起動から定常状態に移行する際に使用していた、サブ制御回路3が担う定常移行制御をリセットすることである。
【0066】
(4)ステップS6(パワーダウン制御の続き)
さらにサーミスタT1の温度が上昇すると、その抵抗値は減少し、点PCの電位Vpcも低下し、コンパレータC3の他の入力電位であるVc3(例えば2.9V)よりも低くなると(Vpc<Vc3)、コンパレータC3の出力が“1”となる(図3(g)のS6)。そして、定常状態下、既にオンとなっているスイッチS3を介してS2がオン状態となり、さらに抵抗R7によるPD2がオンとなり(図3(d)のS6)、コンパレータC1の正端子A、負端子Bへの入力電圧は、3Vから更に低下することとなり、さらにパワーダウン制御(PD2)が働く(図3(b)のS6)。
【0067】
(5)ステップS7(パワーダウン制御解除)
パワーダウン制御PD2により、再びサーミスタT1の温度が下降するとその抵抗値は増加し、点PCの電位Vpcも上昇し、コンパレータC3の他の入力電位であるVc3よりも高くなると(Vpc>Vc3)、コンパレータC3の出力が“0”となる(図3(g)のS7)。これに連動してスイッチS2がオフ状態となり、抵抗R7によるPD2がオフとなるので(図3(d)のS7)、コンパレータC1の正端子A、負端子Bへの入力電圧は、再び3Vに戻る(図3(b)のS7)。
【0068】
(6)ステップS8(通常運転開始)
さらにサーミスタT1の温度が下降すると、その抵抗値は増加し、点PCの電位Vpcも上昇し始める。そして、電位Vpcが、コンパレータC2の他の入力電位であるVc2(例えば3.8V)よりも高くなると(Vpc>Vc2)、コンパレータC2の出力が“0”となる(図3(f)のS8のようにC2の反転出力は“1”となる)。すると、スイッチS4、ORゲート回路を介して、パワーダウン制御でオン状態であったスイッチS5がオフ状態となり、抵抗R11の分圧作用が働かなくなる。そして、電界コンデンサCO1への電荷蓄積と共に、点SSの電位が上昇を開始する(図3(a)のS8)。点SSの電位が3Vまで達していないため、切り替えスイッチS1の可動接点K1は固定接点a側にあり、スイッチS2もオフ状態のため、まだPD1制御が働いている(図3(c)のS8)。
【0069】
(7)ステップS9(通常運転開始後の出力上昇)
点SSの電位が上昇し続け、3Vを越えると(図3(a)のS9)、コンパレータC4の出力は“1”となり(後述する上昇信号)、NANDゲート回路の出力は“0”となって、可動接点K1が、第2の固定端子b側に切り替えられる(図3(i)のS9)。そして、コンパレータC1の正端子A、負端子Bへの入力電圧はSS電位が上昇する傾きに依存しながら上昇を開始する(図3(b)のS9)。
【0070】
以上述べたように本発明では、コンパレータC1の負端子Bの前段に、NANDゲート回路、コンパレータC4、電界コンデンサCO1を含むサブ制御回路3を設けている。そして、コンパレータC4の負端子側のSS点での電位が3Vを越えた時点で、初めて(NANDゲート回路の出力が“0”となり)切り替えスイッチS1の可動接点K1が、第2の固定端子b側に移動し、コンパレータC1の正端子A、負端子Bへの入力電圧が上昇し始める。SS点の電位が上昇を開始してから3Vに達するまでの時間遅れ(図3のS8)は、電界コンデンサCO1の蓄電作用により実現される。すなわち、定常状態時サブ制御回路3は、コンパレータC2からの信号(第1の状態信号)を契機として、SS点での電位は上昇を開始し、それが3Vを越えるまでの所定時間(S8)経過後、コンパレータC1にIGBT16aへの入力電圧を上昇させる上昇信号を出力する出力増加遅延部(出力増加抑制手段)として機能する。また、この出力増加遅延部は起動から定常状態に移行する際の定常移行制御にも使用されており、この制御方式をリセットし、再度使用する構成にしているため、簡易に出力増加抑制制御を行うことができる。すなわち、SS電位をサーミスタによるパワーダウン時に一旦下げることにより、出力増加遅延部としてのサブ制御回路3は、起動から定常状態に移行する際の定常移行制御のみならず、出力増加抑制制御をも担う。上述の構成においては定常移行制御をリセットし、再度使用している構成としているが、もちろん定常移行制御と出力増加抑制制御を別々の制御回路を使用して行ってもよい。
【0071】
上述の構成により、図3(a),(b)のステップS8,S9に示したように、ステップS7のパワーダウン制御の解除後、コンパレータC1の正端子A、負端子Bへの入力電圧の上昇を所定時間遅らせることが可能となる。すなわち、本発明においては、マグネトロンの出力を所定の値に戻す際、所定の時間出力制御を行いながら、出力を所定の値に戻すため、モーディング現象やオーバーシュート等のような問題発生を防止し、高周波誘電加熱装置への信頼性、使用性を向上させることが可能となる。
【0072】
また、上述した時間遅れ(図3のS8)の長さは、電界コンデンサCO1の蓄電作用により実現されるため、電界コンデンサCO1の時定数を変更することにより、調整することができる。例えば図3の点線Lでは、SS変化の傾きが小さいが、これは電界コンデンサCO1の時定数がより大きいものであることを意味し、図3(b)で示したように、元の遅れ時間T1がT2に増大している。
【0073】
時定数は、例えば電界コンデンサCO1の静電容量に応じて変化するため、インバータ制御回路、高周波誘電加熱装置の用途に応じて適切な時間遅れを持つ電界コンデンサCO1を採用することができる。また、電界コンデンサの部分に静電容量が可変な可変コンデンサを採用することにより、時間遅れを場面に応じて変化させることが可能となる。
【0074】
図4は、マグネトロン駆動制御回路の他の実施形態の構成ブロック図を示す。図1の実施形態においては、スイッチング素子であるIGBT16aのコレクタ・エミッタ間の電圧(ここでは共振回路の共振電圧に等しい)を制御する方式にインバータ制御回路が適用されている。しかしながら、本発明のインバータ制御回路は、図4に示したような直列共振回路の共振電圧を制御するマグネトロン駆動制御回路にも適用可能である。
【0075】
本実施形態では、インバータ16内において、共振回路36の共振電圧を抑制するスナバコンデンサ16bが、直列接続されたコンデンサ16cと一次巻線181(共振回路36)に並列に新たに設けられている。また、IGBT16a1とIGBT16a2とダイオード16d1(16d2)の組み合せからなるスイッチング素子がインバータ16に設けられており、それぞれのゲートにドライバ回路(つまりドライバ回路が2つある)が入力される電源クランプ回路になっている。そして、本実施形態では、コンデンサ16cと昇圧トランス18の一次巻線181とで構成される共振回路36の共振電圧を制御することにしている。つまり、この共振回路36で発生する共振電圧の分圧を図2のVp3とし接続することにより、同様に共振電圧を制御する構成となる。
【0076】
図5は、マグネトロン駆動制御回路の更に他の実施形態の構成ブロック図を示す。本発明のインバータ制御回路は、図5に示したように、IGBT16aのコレクタ・エミッタ間の電圧の代わりに、インバータへの入力電流を、インバータ16、平滑回路30の前段に設けられたシャント抵抗40を用いて検出し、IGBT16aのデューティを制御するマグネトロン駆動制御回路にも適用可能である。また、シャント抵抗の代わりにCT(Current Transformer;変流器)などの電流検知手段を用いて、入力電流を検知してもよい。この入力電流を検知する場合は、インバータ制御回路161の前段に増幅回路(オペアンプ)164を設けることが必要となる。そして、この増幅回路の出力を図2のVp3の代わりに入力することにより、入力電流を制御する構成となる。
【0077】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、パワーダウン制御により高電圧誘電加熱装置の使用性が向上するのみならず、その後のマグネトロンの出力上昇に伴うモーディング現象等の不具合の発生を防止し、高電圧誘電加熱装置の信頼性を更に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る高周波誘電加熱装置用のマグネトロン駆動制御回路の構成ブロック図
【図2】本発明に係る高周波誘電加熱装置用のマグネトロン駆動制御に用いられるインバータ制御回路図
【図3】本発明に係るインバータ制御回路の動作を示す動作線図
【図4】本発明に係る高周波誘電加熱装置用のマグネトロン駆動制御回路の他の実施形態の構成ブロック図
【図5】本発明に係る高周波誘電加熱装置用のマグネトロン駆動制御回路の更に他の実施形態の構成ブロック図
【図6】従来の高周波誘電加熱装置用のマグネトロン駆動制御回路の構成ブロック図
【図7】マグネトロン駆動制御回路の放熱フィン周辺の図
【図8】従来のパワーダウン制御方式を説明する図で、(a)は回路図、(b)コンパレータの動作線図
【符号の説明】
【0080】
7 放熱フィン
8 IGBT
9 サーミスタ
10 インバータ主回路
11 商用電源
12 マグネトロン
13 整流回路
16 インバータ
18 昇圧トランス
20 倍電圧全波整流回路
30 平滑回路
36 共振回路
100 マグネトロン駆動制御回路
161 インバータ制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流を所定周波数の交流に変換するとともに、所定の制御対象の出力を変動させるための共振回路を有するインバータを制御するインバータ制御回路であって、
前記インバータのスイッチング素子の温度を検出する温度検出部の出力値に応じて、前記インバータの出力を変動させる出力変動手段と、
前記出力変動手段による前記インバータの出力減少制御の後、所定時間前記インバータの出力増加を抑える出力増加抑制手段と、
を備えるインバータ制御回路。
【請求項2】
請求項1記載のインバータ制御回路であって、
前記出力増加抑制手段が、前記制御対象の起動から定常状態に移行する際の定常移行制御も行なうインバータ制御回路。
【請求項3】
請求項1又は2記載のインバータ制御回路であって、
前記出力増加抑制手段が、前記出力変動手段による前記インバータの出力増加を抑えるために、所定時間電荷を蓄積する容量素子を含むインバータ制御回路。
【請求項4】
請求項3記載のインバータ制御回路であって、
前記出力増加抑制手段は、前記インバータの出力減少制御時において、前記容量素子の時定数に依存せず、速やかに出力減少制御を発動させるインバータ制御回路。
【請求項5】
請求項3又は4記載のインバータ制御回路であって、
前記出力変動手段は、前記出力増加抑制手段により所定時間前記インバータの出力増加を抑えた後、前記容量素子の電位に対応して前記インバータの出力を増加させるインバータ制御回路。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載のインバータ制御回路であって、
前記インバータ制御回路は、前記共振回路の共振電圧を制御するインバータ制御回路。
【請求項7】
マイクロ波を発生する前記制御対象としてのマグネトロンと、
前記インバータと、
請求項1ないし6のいずれか1項記載のインバータ制御回路と、
を備える高周波誘電加熱装置。
【請求項8】
直流を所定周波数の交流に変換するとともに、所定の制御対象の出力を変動させるための共振回路を有するインバータを、当該インバータのスイッチング素子の温度を検出する温度検出部の出力値に応じて制御するインバータ制御回路であって、
前記温度検出部の出力値に応じて第1の状態信号を出力する温度状態出力部と、
前記共振回路に発生する共振電圧を変動させる電圧変動部と、
前記第1の状態信号が前記共振電圧を上昇させるものである場合、前記第1の状態信号の入力から所定時間経過後に、前記電圧変動部に前記共振電圧を上昇させる上昇信号を出力する出力増加遅延部と、
を備えるインバータ制御回路。
【請求項9】
請求項8記載のインバータ制御回路であって、
前記出力増加遅延部が、前記制御対象の起動から定常状態に移行する際、前記電圧変動部と接続され、前記共振電圧を制御するインバータ制御回路。
【請求項10】
請求項8又は9記載のインバータ制御回路であって、
前記出力増加遅延部が、前記電圧変動部に前記上昇信号を出力するため、所定時間電荷を蓄積する容量素子を含むインバータ制御回路。
【請求項11】
請求項10記載のインバータ制御回路であって、
前記出力増加遅延部は、前記インバータの出力減少制御時において、前記容量素子の時定数に依存せず、速やかに出力減少制御を発動させるインバータ制御回路。
【請求項12】
請求項10又は11記載のインバータ制御回路であって、
前記出力増加遅延部は、所定時間前記インバータの出力増加を抑えた後、前記容量素子の電位に対応して前記インバータの出力を増加させるインバータ制御回路。
【請求項13】
請求項8ないし12のいずれか1項記載のインバータ制御回路であって、
前記温度状態出力部は、前記温度検出部の出力値に応じて第2の状態信号を前記電圧変動部に出力し、前記第1の状態信号と前記第2の状態信号は、互いに前記温度検出部の異なる温度状態を反映したものであるインバータ制御回路。
【請求項14】
マイクロ波を発生する前記制御対象としてのマグネトロンと、
前記インバータと、
請求項8ないし13のいずれか1項記載のインバータ制御回路と、
を備える高周波誘電加熱装置。
【請求項15】
被加熱物をマイクロ波の照射によって加熱する高周波誘電加熱装置であって、
直流をスイッチング素子を用いてスイッチング制御し、所定周波数の交流に変換するインバータと、
前記スイッチング素子から放出される熱を放熱する放熱フィンと、
前記スイッチング素子の温度を検出するサーミスタと、
前記スイッチング素子及び前記サーミスタが取り付けられたプリント基板と、
前記インバータの出力電圧を昇圧する昇圧トランスと、
前記昇圧トランスの出力電圧を倍電圧整流する高圧整流部と、
前記高圧整流部の出力をマイクロ波として放射するマグネトロンと、
前記マグネトロンから放射されるマイクロ波が供給され、前記被加熱物を収納する加熱調理室と、
前記マグネトロンが起動した後、前記インバータの出力電力を前記サーミスタの抵抗値に依存させるパワーダウン制御を前記スイッチング素子に施すと共に、パワーダウン制御の終了後、所定時間経過後にパワーを増加させる制御を前記スイッチング素子に施すインバータ制御回路と、
を備える高周波誘電加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−336781(P2007−336781A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169052(P2006−169052)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】