説明

インバータ装置及びそのインバータ装置を備える電動工具

【課題】 インバータ装置を提供する。
【解決手段】 インバータ装置2は、電池パック4又はシガーソケット1からの直流電力を交流電力に変換し昇圧する昇圧回路部23と、昇圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として出力する整流平滑回路部24と、整流平滑回路部24から出力された直流電力を交流電力に変換するスイッチング回路26と、シガーソケット1から直流電流を供給されている場合には、電池パック4から直流電源を供給されている場合よりも昇圧率を小さくするよう昇圧回路部23を制御するマイコン29と、を備えたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置及びそのインバータ装置を備える電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AC電源からACモータに直接供給された交流電力により駆動される電動工具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−219428
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、電池パックからの直流電力により駆動される電動工具も知られている。このような電動工具においては、電池パックの替わりに、例えば、自動車のシガーソケット等から直流電力の供給を受けることも考えられる。しかしながら、シガーソケットの最大出力は電池パックよりも低いため、電池パックの場合と同様の最大出力を出力しようとすると、シガーソケット内のヒューズが切れてしまう虞がある。
【0005】
本発明は、異なる定格出力を有する電源を適切に使用可能なインバータ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインバータ装置は、第1定格出力を有する第1電源又は第1定格出力より小さい第2定格出力を有する第2電源からの直流電力を交流電力に変換し昇圧する昇圧回路部と、前記昇圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として出力する整流平滑回路部と、前記整流平滑回路部から出力された直流電力を交流電力に変換するインバータ回路部と、前記第2電源から直流電流を供給されている場合には、前記第1電源から直流電源を供給されている場合よりも昇圧率を小さくするよう前記昇圧回路部を制御する制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
このような構成によれば、第2電源から直流電流を供給されている場合には、第1電源から直流電源を供給されている場合よりも小さな最大出力で出力するので、第1電源よりも定格出力の小さい第2電源内のヒューズが切れてしまうようなことを防止することができる。
【0008】
また、電源供給を前記第1電源又は前記第2電源の一方側に切り替えるリレー回路部を備え、該リレー回路部は、常時、前記第1電源及び前記第2電源の一方側に接続され、前記制御部は、前記第1電源及び前記2電源の他方側が接続された際に前記リレー回路部を他方側に切り替えることが好ましい。
【0009】
また、前記リレー回路は、前記第1電源側に常時接続され、前記制御部は、前記第2電源のみが接続された際に、前記リレー回路を前記第2電源側に切り替えることが好ましい。
【0010】
また、前記制御部は、前記第1電源及び前記第2電源の両方が接続された際に、前記リレー回路を前記第1電源側に切り替えることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、常時どちらか一方の電源に接続されているため、簡単な制御で電源を選択することができる。特に、定格出力が大きい第1電源を優先することにより、大きな出力を得ることができる。
【0012】
また、前記第1電源の電圧を検出する第1電源電圧検出部と、前記第2電源の電圧を検出する第2電源電圧検出部と、を備え、前記制御部は、前記第1電源電圧検出部、前記第2電源電圧検出部によって前記電源の接続を判別することが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、各電源の電圧を検出する検出部を兼用することにより、余計な部品を設けることなく確実に電源接続を検出することができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記第1電源からの直流電力が第1過放電電圧より小さい場合に前記インバータ回路からの出力を停止させ、前記第2電源からの直流電力が前記第1過放電電圧とは異なる第2過放電電圧より小さい場合に前記インバータ回路からの出力を停止させることを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、第1電源及び第2電源の過放電は、それぞれに適した過放電電圧で判断されるので、電源の種類に応じた適切な保護を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のインバータ装置によれば、異なる定格出力を有する電源を適切に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態によるインバータ装置の回路図。
【図2】本発明の実施の形態による最大出力制御についてのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2を用いて、例えば、本発明の実施の形態によるインバータ装置2について説明する。
【0019】
図1は、インバータ装置2の回路図である。本実施の形態では、インバータ装置2は、芝刈り機3を駆動するものとするが、他の電動工具を駆動するものであってもよい。芝刈り機3のトリガスイッチ31が操作されると、インバータ装置2は、電池パック4又はシガーソケット1から供給された直流電力をインバータ装置2によって交流電力に変換し、芝刈り機3のACモータ32に供給するものとする。インバータ装置2、芝刈り機3、及び、電池パック4又はシガーソケット1は、それぞれ着脱可能であるが、以下では、それぞれが接続されているものとして説明する。
【0020】
インバータ装置2は、第1電池電圧検出部21aと、第2電池電圧検出部21bと、電源部22と、昇圧回路(昇圧回路部)23と、整流・平滑回路(整流平滑回路部)24と、昇圧電圧検出部25と、スイッチング回路(インバータ回路部)26と、電流検出抵抗27(27a、27b)と、電源スイッチ検出ダイオード10と、トリガ検出部11と、PWM信号出力部28と、制御部となるマイクロコンピュータ(マイコン)29と、を備えている。
【0021】
第1電池電圧検出部21aは、互いに直列接続された抵抗211a及び212aから構成されており、第1電源となる電池パック4からの電圧(電池電圧)を検出し、抵抗211aと212aとの接続点から第1分圧電圧をマイコン29に出力する。なお、図1に示す電池パック4は、3.6V/セルのリチウム電池セルが4本直列接続され、定格電圧14.4Vを出力する。
【0022】
第2電池電圧検出部21bは、互いに直列接続された抵抗211b及び212bから構成されており、第2電源となるシガーソケット1からの電圧(シガー電圧)を検出し、抵抗211bと212bとの接続点から第2分圧電圧をマイコン29に出力する。なお、図1に示すシガーソケット1は、電池パック4よりも小さな定格電圧12Vから14Vを出力する。
【0023】
電源部22は、電池パック4又はシガーソケット1とマイコン29との間に直列に接続された電源スイッチ221及び定電圧回路222を備えている。また、電池パック4と電源スイッチ221の間、及び、シガーソケット1と電源スイッチ221の間には、逆流防止用ダイオード223及び224がそれぞれ接続されている。
【0024】
定電圧回路222は、三端子レギュレータ222aと、発振防止用コンデンサ222b及び222cと、を備えており、ユーザにより電源スイッチ221がオンされると、電池パック4又はシガーソケット1からの電圧を所定の直流電圧(例えば、5V)に変換し、マイコン29に駆動電力として供給する。なお、電源スイッチ221がオフされると、マイコン29に駆動電力が供給されなくなるので、インバータ装置2全体がオフされることとなる。
【0025】
また、電源部22は、電池パック4とシガーソケット1のいずれかの電圧を昇圧回路23に出力するためのリレー回路225を備えている。リレー回路225は、スイッチ225aと、コイル225bと、スイッチング素子(FET)225cと、抵抗225d及び225eと、を備えている。
【0026】
スイッチ225aは、電池パック4及びシガーソケット1のいずれかと昇圧回路23とを接続可能に構成されており、初期状態では電池パック4及びシガーソケット1の一方、本実施の形態では電池パック4と接続されている。コイル225bは、スイッチ225aと対向しており、一端がマイコン29及び三端子レギュレータ222aの出力側に接続され、他端がスイッチング素子225cのドレインに接続されている。また、マイコン29は、スイッチング素子225cのゲートにも接続されている。
【0027】
第1電池電圧検出部21aからマイコン29に電池パック4の第1分圧電圧が入力された場合には、マイコン29は、インバータ装置2には電池パック4が接続されていると判断し、スイッチング素子225cのゲートに信号を出力しない。これにより、スイッチ225aは電池パック4と接続されたままとなり、電池パック4の電圧が昇圧回路23に出力されることとなる。
【0028】
一方、第2電池電圧検出部21bからマイコン29にシガーソケット1の第2分圧電圧が入力された場合には、マイコン29は、インバータ装置2にはシガーソケット1が接続されていると判断し、スイッチング素子225cのゲートに信号を出力する。このゲート信号によりスイッチング素子225cがオンするとコイル部225bに電流が流れ、コイル部225bは励磁される。このコイル部225bの電磁力により、コイル部225bと対向するスイッチ225aは、シガーソケット1側に移動され、シガーソケット1と接続される。その結果、シガーソケット1の電圧が昇圧回路23に出力されることとなる。
【0029】
昇圧回路23は、トランス231と、第1のスイッチング素子となるFET232と、電流検出抵抗27aと、を備えている。トランス231の一次側は、電池パック4又はシガーソケット1とGNDとの間に直列に接続されており、また、トランス231の一次側とGNDとの間にはFET232が接続され、更にFET232のソースとGNDの間には電流検出抵抗27aが直列に接続配置されている。FET232のゲートはマイコン29に接続されており、FET232は、後述するマイコン29からの第1のPWM信号によりオン・オフされ、これにより、電池パック4又はシガーソケット1からトランス231の一次側に供給された直流電力は交流電力に変換される。
【0030】
トランス231の2次側には、整流・平滑回路24と、昇圧電圧検出部25と、スイッチング回路26と、電流検出抵抗27bと、が接続されている。
【0031】
整流・平滑回路24は、ダイオード241及び242と、コンデンサ243と、を備えており、これらにより、トランス231により昇圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として出力する。
【0032】
昇圧電圧検出部25は、互いに直列接続された抵抗251及び252から構成されており、整流・平滑回路24から出力された直流の昇圧電圧(コンデンサ243の電圧)を検出し、互いの抵抗の接続点から分圧電圧としてマイコン29に出力する。
【0033】
スイッチング回路26は、第2のスイッチング素子となる4つのFET261−264から構成されており、直列に接続されたFET261及び262と、直列に接続されたFET263及び264とが、整流・平滑回路24の出力端子に並列に接続されている。詳細には、FET261のドレインは、整流・平滑回路24の出力端子(プラス側)に接続され、FET261のソースは、FET262のドレインに接続されている。また、FET263のドレインは、整流・平滑回路24の出力端子(プラス側)に接続され、FET263のソースは、FET264のドレインに接続されている。
【0034】
更に、FET261のソース及びFET262のドレイン、FET263のソース及びFET264のドレインは、それぞれ、出力端子265、266に接続されており、出力端子265、266は、芝刈り機3のACモータ32に接続されている。FET261−264のゲートは、PWM信号出力部28に接続されており、FET261−264は、後述するPWM信号出力部28からの第2のPWM信号によりオン・オフされ、これにより、整流・平滑回路24から出力された直流電力は、交流電力に変換されて芝刈り機3(ACモータ32)に供給される。
【0035】
電流検出抵抗27aはFET232のソースとGNDとの間に直列に接続されており、電流検出抵抗27aの高電圧側の端子はマイコン29と接続されている。このような構成により、電流検出抵抗27aは、電池パック4又はシガーソケット1に流れる電流を検出し、電圧としてマイコン29に出力する。
【0036】
電流検出抵抗27bは、FET262のソース及びFET264のソースと、GNDとの間に直列に接続されており、電流検出抵抗27bの高電圧側の端子はマイコン29と接続されている。このような構成により、電流検出抵抗27bは、ACモータ32に流れる電流を検出し、電圧としてマイコン29に出力する。
【0037】
電源スイッチ検出ダイオード10は、アノードが電源スイッチ221の低圧側に接続され、カソードが芝刈り機3のACモータ32の出力端子265に接続されている。このような構成により、電源スイッチ221がオンされた場合には、ACモータ32に電池パック4又はシガーソケット1からの電圧が印加されることとなる。
【0038】
なお、電源スイッチ検出ダイオード10のカソードは、FET261のソースとも接続されているため、FET261がオンしている場合には、電池パック4又はシガーソケット1からの電圧ではなく、整流・平滑回路24から出力された昇圧された電力がACモータ32に印加されることとなる。
【0039】
トリガ検出部11は、ACモータ32の出力端子266とFET264のソース(すなわちGND)との間に直列に接続された抵抗111及び112から構成されており、トリガスイッチ31が操作された場合に、抵抗111と抵抗112による分圧電圧をトリガ検出信号としてマイコン29に出力する。すなわち、電源スイッチ221がオンされた状態、又は、インバータ装置2にシガーソケット1が接続されている状態でトリガスイッチ31が操作されると、電池パック4又はシガーソケット1の電圧は、バイパス回路(電源スイッチ検出ダイオード10、トリガスイッチ31、及び、ACモータ32)を介してトリガ検出部11に印加される。この印加された電圧を抵抗111及び112により分圧することでトリガ検出信号として検出し、マイコン29に出力する。なお、トリガ検出部11は、FET264と並列に接続されている。
【0040】
この際、電源スイッチ検出ダイオード10のアノードは、電源スイッチ221の低圧側に接続されているため、電源スイッチ221がオンされない限り電圧はACモータ32側に印加されず、インバータ装置2が駆動していない状態での電池パック4又はシガーソケット1の無駄な電力消費を抑えることができる。
【0041】
なお、本実施の形態では、バイパス回路をFET261のソース側に接続し、トリガ検出部11をFET264に並列に接続したが、バイパス回路をFET263のソース側、トリガ検出部11をFET262と並列に接続してもよい。
【0042】
マイコン29は、昇圧電圧検出部25によって検出された昇圧電圧に基づき、目標の実効電圧を有する交流電力がトランス231の2次側から出力されるための第1のPWM信号をFET232のゲートに出力し、FET232をオン・オフさせる。また、マイコン29は、設定された電力がACモータ32に供給されるための第2のPWM信号をPWM信号出力部28に出力する。PWM信号出力部28は、マイコン29から出力された第2のPWM信号をFET261−264のゲートに出力し、FET261−264をオン・オフさせる。詳細には、マイコン29は、FET261とFET264のセット(以降、第1のセット)とFET262とFET263のセット(以降、第2のセット)をデューティ100%で交互にオン・オフさせるための第2のPWM信号を出力する。
【0043】
ここで、上述したように、本実施の形態のマイコン29は、第1電池電圧検出部21aから電池パック4の第1分圧電圧が入力された場合には、スイッチング素子225cのゲートに信号を出力せず、第2電池電圧検出部21bからシガーソケット1の第2分圧電圧が入力された場合には、スイッチング素子225cのゲートに信号を出力する。これにより、第1分圧電圧が入力された場合には、電池パック4の電圧が昇圧回路23に出力され、第2分圧電圧が入力された場合には、シガーソケット1の電圧が昇圧回路23に出力されることとなる。
【0044】
同時に、マイコン29は、第2分圧電圧が入力された場合、すなわち、シガーソケット1がインバータ装置2に接続されている場合には、電流検出抵抗27aによって検出された電流値がシガーソケット用制限値(例えば、10A)を超えないような制御を行う。具体的には、電流検出抵抗27aによって検出された電流値がシガーソケット用制限値を超えた場合には、第1のPWM信号のデューティ(昇圧回路部23による昇圧率)を減少させる。なお、第2のPWM信号のデューティを減少させても良い。
【0045】
このような構成により、電池パック4よりも最大出力の低いシガーソケット1からの電力供給により芝刈り機3を駆動させるような場合でも、最大電流が制限されるので、シガーソケット1内のヒューズが切れてしまうようなことを防止することができる。なお、本実施の形態では、電流検出抵抗27aによって検出した電流値に基づいて第2のPWM信号のデューティを減少させるようにしたが、インバータ2にシガーソケット1が接続されたことを検出した時点で、第2のPWM信号のデューティを、電池パック4が接続された場合より減少させておいても良い。更に、第2のPWM信号のみではなく第1のPWM信号も減少させても良い。
【0046】
更に、マイコン29は、第1電池電圧検出部21aによって検出された電池パック4の第1分圧電圧、又は、第2電池電圧検出部21bによって検出されたシガーソケット1の第2分圧電圧に基づき、電池パック4又はシガーソケット1の過放電を判別する。具体的には、第1分圧電圧が電池パック用過放電電圧(例えば、11.5V)より小さい場合、及び、第2分圧電圧がシガーソケット用過放電電圧(例えば、10V)より小さい場合には、電池パック4又はシガーソケット1に過放電が生じていると判断し、FET232及び261−264をオフさせるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する。このような構成により、電池パック4及びシガーソケット1の寿命が短くなることを防止することができる。
【0047】
また、電池パック4は、その内部に保護ICやマイコンを備え、自ら過放電を検出して過放電信号をマイコン29に出力する機能を有しており、マイコン29は、信号端子LDから過放電信号を受信した場合にもFET232及び261−264をオフさせるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する。このような構成により、電池パック4の寿命が短くなることを防止することが可能となる。
【0048】
次に、図2のフローチャートを用いて、本実施の形態におけるマイコン29による最大出力の制御について説明する。
【0049】
図2のフローチャートは、電池パック4又はシガーソケット1がインバータ装置2に装着されている状態で電源スイッチ221がオンされた時、又は、電源スイッチ221がオンされた状態で電池パック4又はシガーソケット1がインバータ装置2に装着された時にスタートする。なお、電源スイッチ221をオンすることによって、電池パック4又はシガーソケット1の電圧から定電圧回路222に電圧が供給されることでマイコン29の駆動電圧が生成されマイコン29が動作することになる。
【0050】
まず、マイコン29は、第1電池電圧検出部21aから第1分圧電圧が入力されているか否かを判断する(S201)。第1分圧電圧が入力されていた場合には(S201:YES)、インバータ装置2には少なくとも電池パック4が接続されているものと判断する(S202)。
【0051】
一方、第1分圧電圧が入力されていなかった場合には(S201:NO)、第2電池電圧検出部21bから第2分圧電圧が入力されているか否かを判断する(S203)。第2分圧電圧が入力されていた場合には(S203:YES)、インバータ装置2にはシガーソケット1のみが接続されているものと判断する(S204)。第2分圧電圧も入力されていなかった場合には(S203:NO)、エラーが生じていると判断し、動作を停止させる(S205)。S205において、マイコン29は駆動しているが電源が接続されていないと判断しているため、第1電池電圧検出部21a、第2電池電圧検出部21bのいずれか、或いは両方が故障していることが考えられる。なお、インバータ2に表示部を設けて、エラー表示するようにしても良いし、どちらの電源が接続されているかを表示するようにしても良い。
【0052】
続いて、トリガ検出部11からトリガ検出信号が入力されているか否かを判断する(S206)。トリガ検出信号が入力されていない場合には(S206:NO)、S201に戻り、もう一度、接続されている電源の判別を繰り返す。
【0053】
一方、トリガ検出信号が入力されている場合には(S206:YES)、第1のPWM信号をFET232に出力して昇圧回路23を動作させ(S207)、昇圧電圧検出部25によって検出された昇圧電圧に基づき、整流平滑回路部24のコンデンサ243の昇圧電圧(検出電圧)が目標出力実効値(例えば140V)より大きいか否かを判断する(S208)。検出電圧が目標出力実効値より大きい場合には(S208:YES)、デューティ比を減少させた第1のPWM信号をFET232のゲートに出力する(S209)。
【0054】
一方、検出電圧が目標出力実効値以下の場合には(S208:NO)、インバータ装置2にシガーソケット1のみが接続されているか否かを再び判断する(S210)。シガーソケット1のみが接続されている場合には(S210:YES)、電流検出抵抗27aによって検出された電流値がシガーソケット用制限値を超えているか否かを判断し(S211)、超えていた場合には(S211:YES)、デューティ比を減少させた第1のPWM信号をFET232のゲートに出力し(S209)、超えていなかった場合には(S211:NO)、デューティ比を増加させた第1のPWM信号をFET232のゲートに出力する(S212)。
【0055】
一方、S210で、インバータ装置2に接続されているのはシガーソケット1のみではないと判断した場合には(S210:NO)、そのまま、デューティ比を増加させた第1のPWM信号をFET232のゲートに出力する(S212)。すなわち、マイコン29は、電池パック4とシガーソケット1の両方が接続されていると判断した場合には電池パック4を優先して接続するようにリレー回路部225を制御する。
【0056】
続いて、マイコン29は、PWM信号出力部28を介してスイッチング回路26(FET261−264)をオン・オフさせるための第2のPWM信号を出力し、出力端子265、266に交流電圧を供給する(S213)。
【0057】
続いて、インバータ装置2にシガーソケット1のみが接続されているか否かを再び判断する(S214)。シガーソケット1のみが接続されていると判断した場合には(S214:YES)、第2電池電圧検出部21bから第2分圧電圧を取得し(S215)、第2分圧電圧がシガーソケット用過放電電圧より小さいか否かを判断する(S216)。
【0058】
シガーソケット用過放電電圧より小さい場合には(S216:YES)、自動車のバッテリが過放電状態にあると判断し、FET232及びFET261−264をオフさせるための第1のPWM信号又は第2のPWM信号を出力して昇圧回路部23及びスイッチング回路26の動作を停止させる(S217)。これにより、シガーソケット1からの電力の供給が停止される。
【0059】
第2分圧電圧がシガーソケット用過放電電圧以上である場合には(S216:NO)、トリガ検出部11からトリガ検出信号が入力されているか否かを再び判断する(S218)。トリガ検出信号が入力されていた場合には(S218:YES)、S207に戻り、上記動作を繰り返す。一方、トリガ検出信号が入力されていなかった場合には(S218:NO)、昇圧回路23及びスイッチング回路26の動作を停止させる(S219)。
【0060】
一方、S214で、電池パック4が接続されていると判断した場合には(S214:NO)、第1電池電圧検出部21aから第1分圧電圧を取得し(S220)、第1分圧電圧が電池パック用過放電電圧より小さいか否かを判断する(S221)。
【0061】
電池パック用過放電電圧より小さい場合には(S221:YES)、電池パック4が過放電状態にあると判断し、FET232及びFET261−264をオフさせるための第1のPWM信号又は第2のPWM信号を出力して昇圧回路部23及びスイッチング回路26の動作を停止させる(S217)。これにより、電池パック4からの電力の供給が停止される。
【0062】
電池パック用過放電電圧以上である場合には(S221:NO)、電池パック4から過放電信号が入力されているか否かを判断する(S222)。過放電信号が入力されていた場合には(S222:YES)、昇圧回路部23及びスイッチング回路26の動作を停止させる(S217)。
【0063】
一方、過放電信号が入力されていなかった場合には(S220:NO)、上記したS218及びS219の動作を行う。
【0064】
上記したように、本実施の形態によるインバータ装置2は、第2分圧電圧が入力された場合、すなわち、シガーソケット1がインバータ装置2に接続されている場合には、電流検出抵抗27aによって検出された電流値がシガーソケット用制限値を超えないような制御を行うので、電池パック4よりも最大出力の低いシガーソケット1からの電力供給により芝刈り機3を駆動させるような場合でも、最大電流が制限されるので、シガーソケット1内のヒューズが切れてしまうようなことを防止することができる。
【0065】
更に、電池パック4及びシガーソケット1の過放電は、それぞれ、電池パック用過放電電圧及びシガーソケット用過放電電圧に基づいて判断されるので、電源の種類に応じた適切な保護を行うことができる。
【0066】
尚、本発明のインバータ装置は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0067】
例えば、上記実施の形態では、第1のPWM信号を変化させることにより、インバータ2の最大出力を減少させたが、第2のPWM信号を変化させることにより行ってもよい。この場合(第2の実施の形態)について、図2を用いて説明する。
【0068】
S201〜S209は上記した実施の形態と同様に制御する。S208で検出電圧が目標値以下の場合(S208:NO)には、S212に進みFET232の第1のPWM信号のデューティ比を増加させる。その後、S201に進み、インバータ2に接続されている電源がシガーソケット1か否かを判断する。判断結果に応じてインバータ2の出力を制御するように第2のPWM信号のデューティを調整する。すなわち、シガーソケット1ではなく電池パック4の場合には(S210:NO)、S213に進みFET261−264の第2のPWM信号をデューティ比100%としてインバータ2の出力を100Vに制御する。一方、シガーソケット1の場合には(S210:YES)、第2のPWM信号をデューティ比100%より減少させて、インバータ2の出力を例えば80Vになるように制御する。その後、S214以降の制御を実行する。
【0069】
また、シガーソケット1が接続されている場合であってもS213でデューティ比100%の第2のPWM信号により出力(100V)し、その後、電流検出抵抗27bにより検出した電流に応じて第2のPWM信号のデューティ比を減少させるようにしても良い。
【0070】
また、上記した第1の実施の形態のS212の後に、第2の実施の形態のような、インバータ回路部26の制御を行っても良い。電源によってFET232の第1のPWM信号のデューティを変更すると共に、S213で電源に応じて出力を変更するようにしても良い。このような構成にすることにより、インバータ回路26のFET261−264、モータ32を大電流から保護することができる。
【0071】
すなわち、インバータ2に接続される電源に応じて、昇圧回路部23、インバータ回路部26の少なくとも一方のPWM信号のデューティを変更するようにすれば、最大出力が低いシガーソケット1を使用した場合であっても内蔵のヒューズが遮断することなく、安定した電源供給を行うことができる。
【0072】
また、上記実施の形態において、電源スイッチ221と直列に更なるFETを配置し、電池パック4が過放電を検出した場合には、当該FETのゲートに過放電信号をするような構成を採用してもよい。このような構成により、電池パック4の寿命が短くなることを防止することが可能となる。
【0073】
また、上記実施の形態では、インバータ装置2に接続される電池パック4を14.4Vとして説明したが、種類が異なる電池パック、例えばリチウム電池や、ニカド電池、或いはニッケル水素電池からなる電池パックの何れかを接続可能にしても良いし、電池電圧が異なる複数の電池パックを接続可能にしても良い。この場合、電池パックには電池電圧や種類を識別するために識別手段(例えば抵抗)を設け、マイコン29がこの抵抗からの情報により接続された電池パックを判別し、その電池パックに応じてFET232の間欠駆動タイミングを変更するように制御すれば、種々の電池パックを使用することができ作業性を向上することができる。
【0074】
また、図2のフローチャートでは、S207−S213で昇圧電圧の制御を行ったが、これらは、S206でトリガを検出された後であれば、フローチャート内のどの位置で行われてもよい。また、S214−S222で過放電の検出を行ったが、これらは、フローチャート内のどの位置で行われてもよく、また、並行して行われてもよい。
【0075】
また、バイパス回路を電源毎に設けても良いし、リレー回路を常時一方の電源に接続する構成ではなくマイコンからの信号によりどちらかの電源に接続するようにしても良い。
【符号の説明】
【0076】
1:しかーソケット、2:インバータ装置、3:芝刈り機、4:電池パック、23:昇圧回路部、24:整流平滑回路部、26:スイッチング回路、27:電流検出抵抗、29:マイコン、32:ACモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1定格出力を有する第1電源又は第1定格出力より小さい第2定格出力を有する第2電源からの直流電力を交流電力に変換し昇圧する昇圧回路部と、
前記昇圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として出力する整流平滑回路部と、
前記整流平滑回路部から出力された直流電力を交流電力に変換するインバータ回路部と、
前記第2電源から直流電流を供給されている場合には、前記第1電源から直流電源を供給されている場合よりも昇圧率を小さくするよう前記昇圧回路部を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
電源供給を前記第1電源又は前記第2電源の一方側に切り替えるリレー回路部を備え、
該リレー回路部は、常時、前記第1電源及び前記第2電源の一方側に接続され、
前記制御部は、前記第1電源及び前記2電源の他方側が接続された際に前記リレー回路部を他方側に切り替えることを特徴とする請求項1記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記リレー回路は、前記第1電源側に常時接続され、
前記制御部は、前記第2電源のみが接続された際に、前記リレー回路を前記第2電源側に切り替えることを特徴とする請求項2記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1電源及び前記第2電源の両方が接続された際に、前記リレー回路を前記第1電源側に切り替えることを特徴とする請求項2又は3に記載のインバータ装置。
【請求項5】
前記第1電源の電圧を検出する第1電源電圧検出部と、
前記第2電源の電圧を検出する第2電源電圧検出部と、を備え、
前記制御部は、前記第1電源電圧検出部、前記第2電源電圧検出部によって前記電源の接続を判別することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1電源からの直流電力が第1過放電電圧より小さい場合に前記インバータ回路からの出力を停止させ、前記第2電源からの直流電力が前記第1過放電電圧とは異なる第2過放電電圧より小さい場合に前記インバータ回路からの出力を停止させることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のインバータ装置。
【請求項7】
モータと、該モータへの電力供給を指示するトリガスイッチと、を備えると共に請求項1乃至6の何れか一項に記載のインバータ装置を備える電動工具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−95459(P2012−95459A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240805(P2010−240805)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】