ウイルスペプチドおよびフラビウイルス科のウイルスに対してウイルス感染を阻害するためのその使用
本願は、フラビウイルス科由来のウイルスの感染を阻害するペプチド、ウイルス感染を阻害するためにこれらのペプチドを使用する方法、ならびに薬学的組成物および薬学的組合せ、ならびにこれらのペプチドを含む製品に関する。本発明の1つの実施形態により、長さが14個〜50個のD−アミノ酸またはL−アミノ酸の単離されたペプチドが提供され、該ペプチドは、両親媒性のα−へリックス構造を有し、そして該ペプチドは、フラビウイルス科のウイルスに対する抗ウイルス活性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府による財政支援)
本明細書中に記載された本発明は、認可番号CA108304の下でNational Institutes of Healthによって与えられた米国政府の支援によって行われた。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ウイルス疾患は、処置することが非常に困難であり得る。なぜならば、ウイルスは、哺乳動物細胞に進入し、ここで、ウイルスは、ウイルスタンパク質の転写および翻訳、ならびにウイルスゲノムの複製を含むその機能の多くを行うからである。したがって、ウイルスは、ウイルス感染が進行するに従い、宿主の免疫系からだけではなく、宿主に対して投与された薬剤からも防御される。
【0003】
したがって、有効な抗ウイルス因子は、現在、わずかしかなく、そしてそれらのほとんどは、ウイルスの小さなサブセットに対してのみ有効である。例えば、研究者は、20世紀末に最初の抗ウイルス薬を開発し、そしてその薬物(アシクロビル)は、単純ヘルペスウイルス感染を処置するために、U.S.Food and Drug Administrationによって承認された。現在まで、いくつかの他の抗ウイルス薬剤のみが、ウイルス感染を予防および/または処置するために利用可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、ウイルス感染を処置および予防するための薬剤が、必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、フラビウイルス科のウイルスの感染を阻害するペプチドに関する。驚くべきことに、本発明のペプチドの多くは、溶液中に遊離しているウイルスに対して作用し得、そしてそのウイルスが哺乳動物細胞に感染する機会を有する前に、そのウイルスを阻害し得る。本発明の1つの局面は、C型肝炎ウイルス(Hepatitis C)ポリタンパク質に由来するペプチド(例えば、配列番号4〜61に示される配列を有するペプチド)がフラビウイルス科の他のウイルスからの感染を阻害し得るという発見に関する。
【0006】
1つの実施形態において、本発明は、長さが14個〜50個のD−アミノ酸またはL−アミノ酸の単離されたペプチドを提供し、そのペプチドは、両親媒性のα−へリックス構造およびフラビウイルス科のウイルスに対する抗ウイルス活性を有する。
【0007】
1つの実施形態において、上記ペプチドは、式I〜式V:
【0008】
【化5】
のうちのいずれか1つを含む配列を有し、Xaa1、Xaa4、Xaa5、Xaa8、Xaa11、Xaa12、Xaa15、Xaa16およびXaa18は、個別に各々、極性アミノ酸であり、そしてXaa2、Xaa3、Xaa6、Xaa7、Xaa9、Xaa10、Xaa13、Xaa14、およびXaa17は、個別に各々、非極性アミノ酸である。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、14アミノ酸のペプチド(N末端(terminyl)ペプチド)を式I〜式VのうちのいずれかのペプチドのN末端に結合することによって形成された、融合ペプチドを提供する。上記14アミノ酸のN末端ペプチドは、構造:
【0010】
【化6】
を有し、各Rxは、個別に、極性アミノ酸であり、そして各Ryは、個別に、非極性アミノ酸である。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、12アミノ酸のペプチド(C末端ペプチド)を式VのペプチドのC末端に結合することによって形成された、融合ペプチドを提供する。得られた融合ペプチドは、式VI:
【0012】
【化7】
の構造を有し、
Xaa1、Xaa4、Xaa5、Xaa8、Xaa11、Xaa12、Xaa15、Xaa16、Xaa18、Xaa19、Xaa22、Xaa23、Xaa26、Xaa29、およびXaa30は、個別に各々、極性アミノ酸であり、そして、
Xaa2、Xaa3、Xaa6、Xaa7、Xaa9、Xaa10、Xaa13、Xaa14、Xaa17、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、Xaa27、およびXaa28は、個別に各々、非極性アミノ酸である。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明は、式VIのペプチドのN末端にペプチド結合によって結合された配列番号117の14アミノ酸のN末端ペプチドに対応する配列を有する融合ペプチドを提供する。
【0014】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、上に記載されたペプチドのうちのいずれかの少なくとも14個の隣接したアミノ酸を含むペプチドである。
【0015】
いくつかの実施形態において、非極性アミノ酸は、(1)アラニン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、およびトリプトファン、または(2)バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンおよびトリプトファンからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、極性アミノ酸は、(1)アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ホモシステイン、リジン、ヒドロキシリジン、オルニチン、セリンおよびトレオニン;または(2)アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システインおよびリジンからなる群より選択される。
【0016】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、アルギニン、システイン、グルタメート、セリン、バリン、2個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシンおよび3個のトリプトファン残基からなるアミノ酸組成を有する。例えば、上記ペプチドは、配列番号92または配列番号102のアミノ酸配列を有する。
【0017】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、2個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシンおよび3個のトリプトファン残基からなるアミノ酸組成を有する。例えば、上記ペプチドは、配列番号93または配列番号101のアミノ酸配列を有する。
【0018】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、3個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシンおよび3個のトリプトファン残基からなるアミノ酸組成を有する。例えば、上記ペプチドは、配列番号94または配列番号100のアミノ酸配列を有する。
【0019】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、3個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシン、3個のトリプトファンおよびフェニルアラニン(phenylalamine)の残基からなるアミノ酸組成を有する。例えば、上記ペプチドは、配列番号95または配列番号99のアミノ酸配列を有する。
【0020】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、3個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシン、3個のトリプトファン、フェニルアラニン(phenylalamine)およびリジンの残基からなるアミノ酸組成を有する。例えば、上記ペプチドは、配列番号43および配列番号96〜98のアミノ酸配列を有する。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、配列番号43および配列番号91〜102からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、長さが14個〜50個のD−アミノ酸またはL−アミノ酸であり、そのペプチドは、配列番号43および配列番号91〜102からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、そしてペプチドは、両親媒性のα−へリックス構造を有する。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、配列番号4〜86のうちのいずれかのアミノ酸配列を有するペプチドを提供する。例えば、上記ペプチドは、配列番号6、配列番号8、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号27、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号37、配列番号44、配列番号47、配列番号48および配列番号53のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチドは、D−アミノ酸を含む。他の実施形態において、本発明のペプチドは、L−アミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、ダンシル部分を含む。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、約500nM以下のEC50を有するか、または約400nM以下のEC50を有するか、または約300nMのEC50を有する。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、C型肝炎ウイルスまたは西ナイルウイルスもしくはデング熱ウイルスなどのフラビウイルス属に対して活性である。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、上で考察された本発明のペプチドのうちのいずれかを含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、殺菌剤または膣用クリームである。
【0025】
別の実施形態において、本発明は、上で考察された本発明のペプチドのうちのいずれかと、抗ウイルス因子(例えば、α−インターフェロン、ペグ化インターフェロン、リバビリン、アマンタジン、リマンタジン、プレコナリル(pleconaril)、アシクロビル、ジドブジン、ラミブジン、またはその組合せ)とを含む薬学的組合せを提供する。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、哺乳動物細胞においてウイルス感染を予防するための方法を提供し、その方法は、その細胞と、上で考察された本発明のペプチド、ならびに、そのようなペプチドの1つ以上を含む薬学的組成物または薬学的組合せのいずれか1つ以上とを接触させる工程を含む。いくつかの実施形態において、上記哺乳動物細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態において、上記ウイルスは、C型肝炎ウイルスまたは西ナイルウイルスもしくはデング熱ウイルスなどのフラビウイルス属である。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、哺乳類においてウイルス感染を予防するための方法を提供し、その方法は、その哺乳類に、有効量の上で考察されたペプチドおよび薬学的組成物または薬学的組合せのいずれかを投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記哺乳類は、ヒトである。いくつかの実施形態において、上記ウイルスは、西ナイルウイルスもしくはデング熱ウイルスなどのフラビウイルス属またはC型肝炎ウイルスである。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、体液を回収するための容器と、上で考察される本発明のペプチドの任意の1種以上とを備える製品を提供する。いくつかの実施形態において、上記容器は、回収用バッグ(collection bag)、チューブ、キャピラリーチューブ(capillary tube)またはシリンジである。いくつかの実施形態において、上記容器は、空にされている。いくつかの実施形態において、上記製品はまた、生物学的安定剤(例えば、抗凝固剤、保存剤、プロテアーゼインヒビター、またはその任意の組合せ)を含む。いくつかの実施形態において、上記抗凝固剤は、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸、ヘパリン、シュウ酸塩、フッ化物またはその任意の組合せである。いくつかの実施形態において、上記保存剤は、ホウ酸、ギ酸ナトリウムおよびホウ酸ナトリウムである。いくつかの実施形態において、上記プロテアーゼインヒビターは、ジペプチジルペプチダーゼIVである。いくつかの実施形態において、上記ペプチドおよび/または安定剤は、凍結乾燥される。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、上記容器上に結合または吸着されて、そのペプチドは、その容器中におかれた材料が取り出された後にその容器中に保持される。上記容器上に結合または吸着される場合、上記ペプチドは、依然としてウイルス感染を阻害し得る。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、哺乳類の身体由来のサンプルと、上で考察されたペプチドのいずれか1つ以上とを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、生物学的安定剤をさらに含み、その生物学的安定剤は、いくつかの実施形態において、抗凝固剤、保存剤、プロテアーゼインヒビター、またはその任意の組合せである。いくつかの実施形態において、上記抗凝固剤は、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸、ヘパリン、シュウ酸塩、フッ化物またはその任意の組合せである。いくつかの実施形態において、上記保存剤は、ホウ酸、ギ酸ナトリウムおよびホウ酸ナトリウムである。いくつかの実施形態において、上記プロテアーゼインヒビターは、ジペプチジルペプチダーゼIVである。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、血液製剤(例えば、血漿、血小板、白血球または幹細胞であるが、これらに限定されない)である。
【0030】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ウイルス感染を阻害するペプチドに関する。本発明は、HCVポリタンパク質に由来する特定のペプチド(例えば、配列番号4〜61に示される配列を有するペプチド)がフラビウイルス科のウイルスによる哺乳動物細胞の感染を阻害し得るという発見を含む。本発明はまた、HCV感染を阻害することにおいて非常に有効であるHCVポリタンパク質(配列番号1)由来の13種のペプチドの発見を含む。さらに、本発明は、NS5Aの膜アンカードメイン(NS5A−1975)に由来する「ペプチド1」(配列番号43)がHCVならびにデング熱ウイルスおよび西ナイルウイルスなどのフラビウイルス属に対して特に強力であったという発見を含む。例えば、単一用量のペプチド1は、細胞傷害の形跡を伴わずに289nMのEC50でHCV感染を完全にブロックした。さらに、20μMのペプチド1は、デング熱ウイルス感染を完全に阻害した。
【0032】
したがって、本発明は、フラビウイルス科の1種以上のウイルスによる感染を阻害することにおいて有効であるペプチドを提供する。本発明のペプチドは、例えば、配列番号4〜61に示される配列を有するペプチド、配列番号91〜102に示される配列を有するペプチド、およびα−へリックス構造を形成でき、そして哺乳動物細胞においてウイルス感染を阻害し得る約8アミノ酸〜約50アミノ酸のペプチドを含む。本発明は、抗ウイルスペプチドまたは抗ウイルスペプチドの組合せ、そのような抗ウイルスペプチドを含む種々の組成物および組合せ、ならびにそのようなペプチドを利用して哺乳動物細胞においてウイルス感染を阻害するための方法を提供する。本発明はまた、そのような抗ウイルスペプチドを含む製品を提供する。
【0033】
(C型肝炎ウイルス)
C型肝炎ウイルス(HCV)は、急性肝炎および慢性肝炎および肝細胞癌を引き起こす非細胞障害性の+鎖RNAウイルスである。Hoofnagle,J.H.(2002)Hepatology 36,S21−29。肝細胞は、一次標的細胞であるが、種々のリンパ系集団(特に、B細胞および樹状細胞)もまた、より低いレベルにて感染され得る。Kantoら(1999)J.Immunol.162,5584−5591;Auffermann−Gretzingerら(2001)Blood 97,3171−3176;Hiasaら(1998)Biochem.Biophys.Res.Commun.249,90−95。HCV感染の顕著な特徴は、急性感染の少なくとも70%が持続性へと進行し、慢性化するその傾向である(Hoofnagle,J.H.(2002)Hepatology 36,S21−29)。HCVの慢性化は、しばしば、重要な肝疾患(慢性活動性肝炎、肝硬変および肝細胞癌を含む)に関連する(Alter,H.J.&Seeff,L.B.(2000)Semin.Liver Dis.20,17−35)。したがって、1億7000万人を上回る現在の感染者を有するHCV(同著者)は、拡大する公衆衛生上の懸案事項を代表する。
【0034】
一本鎖HCV RNAゲノムは、約9500ヌクレオチド長であり、そして大きいポリタンパク質をコードする単一のオープンリーディングフレーム(ORF)を有する。上記ポリタンパク質は、約3010アミノ酸〜3033アミノ酸を有する(Q.−L.Choo,らProc.Natl.Acad.Sci.USA 88,2451−2455(1991);N.Katoら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,9524−9528(1990);A.Takamizawaら,J.Virol.65,1105−1113(1991))。
【0035】
HCVの異なる単離株(isolate)についての核酸配列およびアミノ酸配列は、当該分野において、例えば、NCBIデータベース中に見出され得る。ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。HCVポリタンパク質配列の例は、NCBIデータベース中にアクセッション番号NP 671491(gi:22129793)として見出され得る。NP 671491(配列番号1)のアミノ酸配列は、以下の通りである。
【0036】
【化8−1】
【0037】
【化8−2】
NCBIデータベースにおいて見出され得るHCVポリタンパク質アミノ酸配列の別の例は、アクセッション番号BAB32872(gi:13122262)である。ncbi.nlm.nih.gov;KatoらJ.Med.Virol.64:334−339(2001)を参照のこと。このHCVは、劇症肝炎患者から分離され、そしてそのアミノ酸配列(配列番号2)は、以下の通りである。
【0038】
【化9−1】
【0039】
【化9−2】
HCVポリタンパク質アミノ酸配列の別の例は、NCBIデータベース中にアクセッション番号Q9WMX2(gi:68565847)として見出され得る。ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。この配列は、HCVのCon1単離株から得られた。そのアミノ酸配列(配列番号3)は、以下のものである。
【0040】
【化10−1】
【0041】
【化10−2】
【0042】
【化10−3】
HCVポリタンパク質配列のさらなる例が、入手可能である。例えば、C型肝炎ウイルスの台湾単離株は、NCBIデータベースにおいてアクセッション番号P29846(gi:266821)にて入手可能である。ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。
【0043】
感染された細胞において、上記HCVポリタンパク質は、細胞プロテアーゼおよびウイルスプロテアーゼにより複数の部位において切断されて、構造タンパク質および非構造(NS)タンパク質を産生する。成熟非構造タンパク質(NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、およびNS5B)の産生は、2つのウイルスプロテアーゼによって影響を受ける。依然としてあまり特徴付けられていない第1のウイルスプロテアーゼは、NS2−NS3連結にて切断する;第2のウイルスプロテアーゼは、NS3のN末端領域内に含まれるセリンプロテアーゼ(以下、NS3プロテアーゼと称される)であり、そしてその第2のウイルスプロテアーゼは、NS3−NS4A切断部位においてシスで、そして残りのNS4A−NS4B部位、NS4B−NS5A部位、NS5A−NS5B部位についてトランスでの両方で、NS3の下流におけるその後の切断の全てを媒介する。NS4Aタンパク質は、複数の機能(NS3プロテアーゼのための補因子として作用し、そしておそらくNS3および他のウイルスレプリカーゼ成分の膜限局化を補助する)を果たすようである。NS3プロテアーゼとNS4Aとの複合体形成は、全ての部位においてタンパク質分解効率を向上させるプロセシング事象に必要であると考えられる。NS3タンパク質はまた、ヌクレオシドトリホスファターゼ活性およびRNAヘリカーゼ活性を示す。NS5Bは、HCVの複製に関与するRNA依存性RNAポリメラーゼである。
【0044】
HCV非構造(NS)タンパク質は、ウイルス複製に必須の触媒機構を提供すると推定される。NS3の最初の181アミノ酸(ウイルスポリタンパク質の1027位〜1207位)は、HCVポリタンパク質の4つ全ての下流部位をプロセシングするNS3のセリンプロテアーゼドメインを含むことが示されている(C.Linら,J.Virol.68,8147−8157(1994))。
【0045】
HCVは、3個の構造タンパク質(N末端ヌクレオカプシドタンパク質(「コア(core)」と称される)および2個のエンベロープ糖タンパク質「E1」(Eとしても公知である)および「E2」(E2/NS1としても公知である))を有する。HCVタンパク質(E1およびE2を含む)の考察については、Houghtonら(1991)Hepatology 14:381−388を参照のこと。E1タンパク質は、32〜35kDaの化学種(species)として検出され、そして約18Kdaの単一のエンドH−感受性バンドに変換される。対照的に、E2は、免疫沈降の際に複数の化学種の産生と一致する複合体パターンを示す(Grakouiら(1993)J.Virol.67:1385−1395;Tomeiら(1993)J.Virol.67:4017−4026)。HCVエンベロープ糖タンパク質E1およびE2は、共同免疫沈降し得る安定な複合体を形成する(Grakouiら(1993)J.Virol.67:1385−1395;Lanfordら(1993)Virology 197:225−235;Ralstonら(1993)J.Virol.67:6753−6761)。
【0046】
(抗ウイルスペプチド)
1つの実施形態において、本発明は、抗ウイルスペプチドを提供する。抗ウイルスペプチドは、フラビウイルス科のウイルスの感染を予防し得るか、または減少させ得るペプチド(本明細書中で、本発明のペプチドインヒビターまたはペプチド)である。フラビウイルス科のウイルスの例としては、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス、デング熱を引き起こすウイルスおよびC型肝炎ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
フラビウイルス科は、球状のエンベロープウイルスであり、それらは、正の極性の直鎖一本鎖RNAゲノムを有する。フラビウイルス科は、フラビウイルス属、ヘパシウイルス属およびペスチウイルス属を含む。本発明は、フラビウイルス科感染(フラビウイルス属、ヘパシウイルス属およびペスチウイルス属のいずれかに由来する任意のウイルス、ならびにフラビウイルス科の割り当てられていない属のウイルスによって引き起こされる感染を含む)の処置を企図する。例えば、本発明のペプチドは、フラビウイルス属のうちの以下のウイルスによって引き起こされる感染を処置するために使用され得る:ダニ媒介脳炎ウイルス、中央ヨーロッパ型脳炎ウイルス、極東型脳炎(Far Eastern encephalitis)ウイルス、リオブラボー(Rio Bravo)ウイルス、日本脳炎ウイルス、クンジン(Kunjin)ウイルス、マリーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、西ナイル脳炎ウイルス、チュレンリー(Tyulenly)ウイルス、タヤ(Ntaya)ウイルス、ウガンダS(Uganda S)ウイルス、1型デング熱ウイルス、2型デング熱ウイルス、3型デング熱ウイルス、4型デング熱ウイルス、モドック(Modoc)ウイルス、および黄熱病ウイルス。さらに、本発明のペプチドは、ペスチウイルス属のうちの以下のウイルスによって引き起こされる感染を処置するために使用され得る:牛ウイルス性下痢ウイルス1型、牛ウイルス性下痢ウイルス2型、豚コレラ(Hog cholera)(豚コレラ(classical swine fever)ウイルス)、およびボーダー病ウイルス。さらに、本発明のペプチドは、ヘパシウイルス属に分類されるC型肝炎ウイルスによって引き起こされる感染を処置するために使用され得る。その感染もまた本発明のペプチドによって処置され得るフラビウイルス科の割り当てられていない属のウイルスは、以下を含む:GBウイルス−A、GBウイルス−BおよびGBウイルス−C。
【0048】
ペプチドがフラビウイルス科の1種以上のメンバーに対して有する抗ウイルス活性のレベル、およびそのようなペプチドについての適切な投薬量を決定するために、当該分野において公知である方法(本明細書中に記載される方法が挙げられるが、これに限定されない)が、使用され得る。本発明のペプチドの存在下または非存在下におけるウイルス感染は、例えば、本明細書中に記載されるようなウイルスタンパク質に対する抗体を使用したイムノアッセイにより、細胞内のウイルスRNAレベルまたはウイルス病巣の数を決定する事によって評価され得る。ペプチドの抗ウイルス活性はまた、本明細書中に例示されるようなリポソーム放出アッセイを使用して決定され得る。ペプチドは、任意の量(例えば、2倍または2倍よりも大きい)でウイルス感染を阻害し得るか、または減少させ得る場合、抗ウイルス活性を有する。例えば、本発明のペプチドは、2〜5倍、5〜10倍、または10倍よりも大きくHCV感染を阻害し得るか、または減少させ得る。本明細書中で以下に示される通り、表3に示されるペプチドの多く(例えば、配列番号6、8、12、13、14、24、27、30、32、43、44、47、48および53によるペプチドが挙げられる)は、10倍よりも大きくHCV感染を阻害し得る。表3に示される他のペプチド(配列番号21、23、28および37によるペプチドが挙げられる)は、HCV感染を5倍〜10倍阻害し得る。上記ペプチドの残りは、HCV感染を少なくとも2倍阻害し、そしてその残りのペプチドのうちのいくつかは、HCV感染を最大で約5倍まで阻害する。これらのペプチドは、ナノモルレベルおよび低いマイクロモルレベルの濃度でウイルス感染のそのような阻害を示す。
【0049】
本発明のペプチドは、α−アミノ基とα−カルボキシル基との間のアミド結合によって連結されたα−アミノ酸のポリマーである。したがって、本明細書中で使用される場合、用語「アミノ酸」とは、α−アミノ酸をいう。本発明のペプチド中に含まれるアミノ酸は、L−アミノ酸またはD−アミノ酸であり得る。さらに、本発明のペプチドにおいて使用されるアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸であり得る。したがって、本発明のペプチドは、遺伝的にコードされたアミノ酸、天然に存在する遺伝的にコードされていないアミノ酸、または合成アミノ酸から作製され得る。20種の遺伝的にコードされたL−アミノ酸およびコードされていないアミノ酸のいくつかの例に対して本明細書中で使用されるアミノ酸表記は、表1に提供される。
【0050】
【表1−1】
【0051】
【表1−2】
本発明のペプチドは、少なくとも8アミノ酸残基〜約50アミノ酸残基、通常は約14アミノ酸〜40アミノ酸、さらに通常は約35よりも少ないアミノ酸長または約25よりも少ないアミノ酸長を含む。本発明のペプチドは、より大きいペプチドの実質的に全ての活性を依然として維持しつつ、可能な限り小さい。したがって、本発明のペプチドは、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、11アミノ酸長、12アミノ酸長または13アミノ酸長であり得る。さらに、当業者によって選択されるペプチドの長さは、そのペプチドの安定性および/または配列に関連し得る。したがって、例えば、ペプチド1(配列番号43)が、それが約18アミノ酸である場合に最適な抗ウイルス活性を示す一方で、そのC末端からの切断は、5個程度のアミノ酸が削除されるまでペプチド1の抗ウイルス活性を排除しない。それにもかかわらず、配列番号43と異なる配列を有するペプチドは、それらが18アミノ酸よりも長いか、または13アミノ酸よりも短い場合、至適な活性を示し得る。これは、上記ペプチドの二次構造を安定化または改変する配列の違いに起因し得る。さらに、上記ペプチドは、そのペプチドの安定性および活性を増強する因子によって誘導体化され得る。例えば、ペプチドは、そのペプチドの活性および/またはコンフォメーション安定性を改良するために、ダンシル部分の結合によって、または天然に存在しないアミノ酸の組み込みによって改変され得る。非天然アミノ酸およびダンシル部分の使用はまた、プロテアーゼによる切断に対する耐性を提供し得る。2つ以上のペプチドを連結して1つのペプチド構造にすることもまた、特定の場合において望まれ得る。
【0052】
本発明はまた、本発明の抗ウイルスペプチドのペプチド模倣体(peptidomimetic)に関する。ペプチド模倣体は、ペプチド結合を有するペプチドと構造的に同様であるが、当該分野において公知である方法により結合(例えば、−−CH2NH−−、−−CH2S−−、−−CH2−−CH2−−、−−CH=CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH2−−、−−CH(OH)CH2−−、および−−CH2SO−−)によって必要に応じて置換された1つ以上のペプチド結合を有する。したがって、ペプチド模倣体は、鋳型ペプチドの特性と類似する特性を有するペプチドアナログ(例えば、製薬産業において非ペプチド薬物として一般に使用されるもの)である(Fauchere,J.,Adv.Drug Res.,15:29(1986)およびEvansら,J.Med.Chem.,30:1229(1987))。天然ペプチドの実施形態を上回るペプチド模倣体の利点としては、より経済的な生産、より大きい安定性、変化した特異性および増強した薬理学的特性(例えば、半減期、吸収、効力および効能)が挙げられ得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチドのアミノ酸残基は、溶液中で両親媒性のα−へリックス構造を形成し得る。
【0054】
用語「α−へリックス」とは、右回りコイルのコンフォメーションをいう。ポリペプチドにおいて、上記α−へリックス構造は、1個のアミノ酸の骨格N−H基と4残基前のアミノ酸の骨格C=O基との間の水素結合から生じる。α−へリックスは、1回転あたり3.6アミノ酸残基を有する。特定のアミノ酸残基(例えば、アラニン、システイン、ロイシン、メチオニン、グルタメート、グルタミン、ヒスチジンおよびリジン)は、ポリペプチド中のα−へリックス構造の形成に寄与する傾向にある。
【0055】
しかし、α−へリックスの形成はまた、ペプチドが存在する溶液、pHおよび温度に依存する。そうして、本発明に従って、本発明のペプチドは、水溶液中でα−へリックスである。上記水溶液は、例えば、生理学的pH、および/または生理学的な塩を有し得る。一般に、本発明のペプチドの両親媒性のα−へリックス構造は、中等度の温度(例えば、約4℃〜約50℃またはほぼ室温〜ほぼ体温)にて検出される。したがって、例えば、ペプチドのα−へリックス構造は、生理学的温度および生理学的pH値の下で検出される。
【0056】
α−へリックス構造は、当該分野において公知である方法(円偏光二色性分光学(CD)、核磁気共鳴(NMR)、結晶構造決定および旋光分散(ORD)が挙げられるが、これらに限定されない)を使用して検出され得る。
【0057】
本明細書中で使用される場合、語「両親媒性の」は、α−ぺリックスペプチドが親水性(または極性)面および疎水性(または非極性)面を有することを意味し、ここでそのような「面(face)」とは、そのペプチドの長手方向表面をいう。へリックス車輪図(helical wheel)は、α−へリックスペプチドがその長手方向軸で見下ろされる場合に明らかであり(例えば、図14Aに示される)、この長手方向軸を囲むへリックス車輪図の1つの側は、親水性(または極性)残基からなり、そしてへリックス車輪図の他方の側は、疎水性(または非極性)残基からなる。したがって、本発明のペプチドが、親水性表面にある場合、そのペプチドの親水性面は、その親水性表面と接触する傾向にある。他方で、疎水性表面と向かい合っている場合、本発明のペプチドの疎水性面は、その疎水性表面と接触する傾向にある。
【0058】
両親媒性のα−へリックスペプチドにおいて、そのα−へリックスの上記親水性面および上記疎水性面は、したがって、存在するアミノ酸の性質に基づいて同定され得る。α−へリックスの上記親水性面は、上記疎水性面上に存在する数よりも大きい数の親水性アミノ酸、荷電したアミノ酸および/または極性アミノ酸からなる。両親媒性のα−へリックスの上記疎水性面は、脂質二重層への挿入を容易にする疎水性アミノ酸および/または非極性アミノ酸からなる。上記疎水性面は、膜への挿入を可能にする十分な数の非極性アミノ酸が存在する限り、1個以上の親水性アミノ酸または極性アミノ酸を有し得る。一般に、上記α−へリックスの親水性面上のアミノ酸残基の大部分は、荷電したアミノ酸、またはそうでなければ極性アミノ酸であるが、そのα−へリックスの疎水性面上のアミノ酸残基の大部分は、非極性アミノ酸である。したがって、多くの実施形態において、上記α−へリックスの親水性面は、荷電したアミノ酸またはそうでなければ極性アミノ酸からなるが、そのα−へリックスの疎水性面は、非極性アミノ酸残基からなる。例えば、図14Aに示されるペプチド1(配列番号43)のへリックス車輪図を参照のこと。
【0059】
任意の所与のペプチド配列が膜への挿入を可能にするために十分な数の非極性アミノ酸を有するか否かは、当該分野において周知である方法(本明細書中で実施例に記載されるリポソーム色素放出を含む方法が挙げられるが、これに限定されない)を使用して決定され得る。さらに、ペプチドが両親媒性のα−へリックス構造を有するか否かは、http://cti.itc.virginia.edu/〜cmg/Demo/wheel/wheelApp.html(最後に2006年8月15に訪れた)およびhttp://www.bioinf.man.ac.uk/〜gibson/HelixDraw/helixdraw.html(最後に2006年8月15に訪れた)のようなインターネット上で利用可能なソフトウェアを使用して決定され得る。配列番号43のペプチドの両親媒性のα−へリックス構造を例示する概略図は、図14Aに示される。
【0060】
本発明のペプチドの例は、表3において見出され得る。表3に示されるペプチドと比較して、本発明の他のペプチドは、保存的アミノ酸置換を有するペプチドを含む。本発明のペプチドはまた、表3に示されるペプチドに似たアミノ酸組成を有するペプチドを含む。これらは、表9に示される配列番号96、配列番号97および配列番号98の配列を有するペプチドを含む。これらの配列は、配列番号43のリバース(reverse)改変体に対応するか、またはそれらの配列は、配列番号43の「スクランブルされた(scrambled)」改変体を構成する。ペプチド(例えば、配列番号43)のレトロ(retro)改変体またはリバース改変体は、元のペプチド(配列番号43)のアミノ酸組成に似たアミノ酸組成を有するが、その改変体のアミノ酸配列は、元のペプチドのアミノ酸配列と逆のものである。ペプチド(例えば、配列番号43)のスクランブルされた改変体もまた、元のペプチド(配列番号43)に似たアミノ酸組成を有するが、それらのアミノ酸の順序は、疎水性残基および親水性残基の相対的位置を変えることなくスクランブルまたは混合される。したがって、配列番号43の「疎水性のスクランブルされた」改変体であるペプチドは、配列番号43のアミノ酸組成と同じアミノ酸組成を有する。しかし、疎水性アミノ酸残基の順序は、その改変体ペプチドの両親媒性が元のペプチドの両親媒性に似るように、その配列内の疎水性残基および親水性残基の相対的位置を変えることなく変えられる。同様に、配列番号43の「親水性スクランブルされた」改変体は、配列番号43のアミノ酸組成と同じアミノ酸組成を有するが、親水性アミノ酸残基の順序は、その改変体ペプチドの両親媒性が元のペプチドの両親媒性に似るように、その配列内の疎水性残基および親水性残基の相対的位置を変えることなく変えられる。一般に、親水性(極性)アミノ酸に関して、用語「スクランブリング(scrambling)」または「スクランブルされた」は、各々の親水性(極性)アミノ酸の位置が不変に保持される一方で、任意の他の親水性(極性)アミノ酸がその位置に配置され得ることを示すために使用される。同様に、疎水性(非極性)アミノ酸に関して、用語「スクランブリング」または「スクランブルされた」は、各々の疎水性(非極性)アミノ酸の位置が不変に保持される一方で、任意の疎水性(非極性)アミノ酸がその位置に配置され得ることを示すために使用される。
【0061】
したがって、本発明のペプチドは、表3に示される配列と同一であるアミノ酸配列、およびそのような配列の改変体を有する。そのような改変体は、1個以上のアミノ酸の切断、保存的置換、親水性アミノ酸のみのスクランブリング、配列内の疎水性残基のみのスクランブリング、親水性アミノ酸および疎水性アミノ酸の両方のスクランブリング、天然に存在しないアミノ酸による天然に存在するアミノ酸の置換または他の改変(例えば、ダンシル化)から生じ得る。そのような改変体ペプチドは、次の節においてさらに記載される。
【0062】
(ペプチドホモログおよびペプチド改変体)
本発明は、多くのペプチドホモログおよびペプチド改変体を包含する。
【0063】
ペプチドホモログは、配列番号1を有するH77単離株以外のHCV単離株由来のペプチジル配列である。したがって、本発明のペプチドは、配列番号4〜61のいずれかのアミノ酸配列を有するペプチドのホモログであり得る。したがって、例えば、本発明の1つのペプチドホモログは、配列番号6のペプチドのホモログである配列番号62を有する。
【0064】
【化11】
配列番号62のペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0065】
本発明の別のペプチドインヒビターホモログは、配列番号8のペプチドのホモログである配列番号63または配列番号64を有する。
【0066】
【化12】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0067】
本発明の別のペプチドインヒビターホモログは、配列番号12のペプチドのホモログである配列番号65または配列番号66を有する。
【0068】
【化13】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0069】
本発明の別のペプチドインヒビターホモログは、配列番号13のペプチドのホモログである配列番号67または配列番号68を有する。
【0070】
【化14】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0071】
本発明の別のペプチドインヒビターホモログは、配列番号14のペプチドのホモログである配列番号69または配列番号70を有する。
【0072】
【化15】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0073】
本発明の別のペプチドインヒビターホモログは、配列番号24のペプチドのホモログである配列番号71または配列番号72を有する。
【0074】
【化16】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0075】
本発明の別のペプチドインヒビターホモログは、配列番号27のペプチドのホモログである配列番号73または配列番号74を有する。
【0076】
【化17】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0077】
本発明の別のペプチドインヒビターホモログは、配列番号30のペプチドのホモログである配列番号75または配列番号76を有する。
【0078】
【化18】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0079】
別の実施形態において、ペプチドインヒビターホモログは、配列番号32のペプチドのホモログである配列番号77または配列番号78を有する。
【0080】
【化19】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0081】
別の実施形態において、ペプチドインヒビターホモログは、配列番号43のペプチドのホモログである配列番号79または配列番号80を有する。
【0082】
【化20】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0083】
別の実施形態において、ペプチドインヒビターホモログは、配列番号44のペプチドのホモログである配列番号81または配列番号82を有する。
【0084】
【化21】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0085】
別の実施形態において、ペプチドインヒビターホモログは、配列番号47のペプチドのホモログである配列番号83または配列番号84を有する。
【0086】
【化22】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0087】
別の実施形態において、ペプチドインヒビターホモログは、配列番号53のペプチドのホモログである配列番号85または配列番号86を有する。
【0088】
【化23】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0089】
ペプチド改変体は、HCV単離株のポリタンパク質配列中のセグメントと同一ではないアミノ酸配列を有する任意のペプチドである。したがって、本発明のペプチドは、保存的アミノ酸置換から生じる改変体配列を有し得る。互いに置換可能であるアミノ酸は、一般に、類似のクラス内またはサブクラス内に存在する。当業者に公知である通り、アミノ酸は、アミノ酸側鎖の化学的特定および物理的特性に主に依存する異なるクラスに分類され得る。例えば、いくつかのアミノ酸は、一般に、親水性アミノ酸または極性アミノ酸であると見なされ、そして他のアミノ酸は、疎水性アミノ酸または非極性アミノ酸であると見なされる。極性アミノ酸は、酸性側鎖、塩基性側鎖または親水性側鎖を有するアミノ酸を含み、そして非極性アミノ酸は、芳香族側鎖または疎水性側鎖を有するアミノ酸を含む。非極性アミノ酸は、さらに細分されて、とりわけ、脂肪族アミノ酸を含み得る。本明細書中で使用されるようなアミノ酸のクラスの定義は、以下の通りである。
【0090】
「非極性アミノ酸」とは、生理学的pHにおいて荷電されておらず、極性ではなく、かつ一般に、水溶液によって退けられる側鎖を有するアミノ酸をいう。遺伝的にコードされた疎水性アミノ酸の例としては、Ala、Ile、Leu、Met、Trp、TyrおよびValが挙げられる。遺伝的にコードされていない非極性アミノ酸の例としては、t−BuA、ChaおよびNleが挙げられる。
【0091】
「芳香族アミノ酸」とは、共役δ−電子系(芳香族基)を有する少なくとも1個の環を含む側鎖を有する非極性アミノ酸をいう。芳香族基は、置換基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基、スルホニル基、ニトロ基およびアミノ基、ならびにその他の基)によってさらに置換され得る。遺伝的にコードされた芳香族アミノ酸の例としては、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンが挙げられる。一般的に存在する遺伝的にコードされていない芳香族アミノ酸としては、フェニルグリシン、2−ナフチルアラニン、
【0092】
【化23−2】
1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、4−クロロフェニルアラニン、2−フルオロフェニルアラニン、3−フルオロフェニルアラニンおよび4−フルオロフェニルアラニンが挙げられる。
【0093】
「脂肪族アミノ酸」とは、飽和直鎖状または不飽和直鎖状、分枝状または環状の炭化水素側鎖を有する非極性アミノ酸をいう。遺伝的にコードされた脂肪族アミノ酸の例としては、Ala、Leu、ValおよびIleが挙げられる。コードされていない脂肪族アミノ酸の例としては、Nleが挙げられる。
【0094】
「極性アミノ酸」とは、生理学的pHにおいて荷電されているかまたは荷電されておらず、かつ2個の原子によって共通して共有された電子対がそれらの原子のうちの一方とより近くに保持される結合を有する側鎖を有する親水性アミノ酸をいう。極性アミノ酸は、一般に、親水性であり、親水性は、それらが水溶液によって誘引される側鎖を有するアミノ酸を有することを意味する。遺伝的にコードされた極性アミノ酸の例としては、アスパラギン、システイン、グルタミン、リジンおよびセリンが挙げられる。遺伝的にコードされていない極性アミノ酸の例としては、シトルリン、ホモシステイン、N−アセチルリジンおよびメチオニンスルホキシドが挙げられる。
【0095】
「酸性アミノ酸」とは、7未満の側鎖pK値を有する親水性アミノ酸をいう。酸性アミノ酸は、代表的に、水素イオンの喪失に起因して、生理学的pHにおいて負に荷電した側鎖を有する。遺伝的にコードされた酸性アミノ酸の例としては、アスパラギン酸(アスパルテート)およびグルタミン酸(グルタメート)が挙げられる。
【0096】
「塩基性アミノ酸」とは、7より大きい側鎖pK値を有する親水性アミノ酸をいう。塩基性アミノ酸は、代表的に、ヒドロニウムイオンとの結合に起因して生理学的pHにおいて正に荷電した側鎖を有する。遺伝的にコードされた塩基性アミノ酸の例としては、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが挙げられる。遺伝的にコードされていない塩基性アミノ酸の例としては、アミノ酸のオルニチン、2,3−ジアミノプロピオン酸、2,4−ジアミノ酪酸およびホモアルギニンが挙げられる。
【0097】
「イオン化可能なアミノ酸」とは、生理学的pHにおいて荷電され得るアミノ酸をいう。そのようなイオン化可能なアミノ酸としては、酸性アミノ酸および塩基性アミノ酸(例えば、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−アルギニン、D−リジン、D−ヒドロキシリジン、D−オルニチン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−アルギニン、L−リジン、L−ヒドロキシリジンまたはL−オルニチン)が挙げられる。
【0098】
当業者によって認識される通り、上記の分類は、絶対的ではない。数種のアミノ酸は、1より多くの特徴的な特性を示し、したがって1より多くのカテゴリーに含まれ得る。例えば、チロシンは、非極性の芳香環および極性のヒドロキシル基の両方を有する。したがって、チロシンは、非極性、芳香族性および極性のように記載され得る数種の特徴を有する。しかし、その非極性の環が、優勢であるので、チロシンは、一般に、疎水性であると見なされる。同様に、ジスルフィド結合を形成し得ることに加えて、システインはまた、非極性の性質を有する。したがって、疎水性アミノ酸すなわち非極性アミノ酸として厳密に分類されていないが、多くの場合において、システインは、疎水性すなわち非極性をペプチドに与えるために使用され得る。
【0099】
上に記載された遺伝的にコードされたアミノ酸および遺伝的にコードされていないアミノ酸の分類は、下で表2において要約される。表2は、例示のみを目的とし、そして本明細書中に記載されるペプチドおよびペプチドアナログを構成し得るアミノ酸残基の網羅的な一覧であることを意味しないことが、理解されるべきである。本明細書中に記載されるペプチドを作製するために有用である他のアミノ酸残基は、例えば、Fasman,1989,CRC Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology,CRC Press,Inc.およびその中に列挙された参考文献において見出され得る。アミノ酸残基の別の供給源は、RSP Amion Acids Analogues,Inc.のウェブサイト(www.amino−acids.com)によって提供される。本明細書中で具体的に言及されていないアミノ酸は、具体的に同定されたアミノ酸と比較して、公知の挙動ならびに/またはそれらの特徴的な化学的特性および/もしくは物理的特性に基づいて上に記載されたカテゴリーへと便宜的に分類され得る。
【0100】
【表2−1】
【0101】
【表2−2】
いくつかの実施形態において、本発明によって企図される親水性アミノ酸または極性アミノ酸としては、例えば、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ホモシステイン、リジン、ヒドロキシリジン、オルニチン、セリン、トレオニン、および構造的に関連したアミノ酸が挙げられる。1つの実施形態において、上記極性アミノ酸は、イオン化可能なアミノ酸(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、リジン、またはオルニチン)である。
【0102】
利用され得る疎水性アミノ酸残基または非極性アミノ酸残基の例としては、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンなどが挙げられる。
【0103】
さらに、ペプチドのアミノ酸配列は、ペプチド中の少なくとも1個のアミノ酸残基の別のアミノ酸残基への置換(L形態よりもむしろD形態を利用する置換が挙げられる)を含むペプチド改変体をもたらすために改変され得る。
【0104】
上記ペプチドの残基の1個以上は、上記ペプチドの生物学的活性を変化させるか、増強するか、または保存するために別のものに交換され得る。そのような改変体は、例えば、対応する非改変体ペプチドの生物学的活性の少なくとも約10%を有し得る。保存的アミノ酸置換(すなわち、上に記載されるような類似の化学的特性および物理的特性を有するアミノ酸の置換)が、しばしば利用される。
【0105】
したがって、例えば、保存的アミノ酸置換は、アスパラギン酸をグルタミン酸と交換すること;リジンをアルギニンまたはヒスチジンと交換すること;非極性アミノ酸(アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン)を別の非極性アミノ酸と交換すること;および極性アミノ酸(アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、セリン、トレオニンなど)を別の極性アミノ酸に交換することを含む。置換が導入される場合、上記改変体は、その生物学的活性のレベルを確認または決定するために試験され得る。
【0106】
例えば、いくつかの実施形態において、本発明のペプチドは、式I〜式V
【0107】
【化24】
のいずれか1つを含む配列を有し得、
Xaa1、Xaa4、Xaa5、Xaa8、Xaa11、Xaa12、Xaa15、Xaa16およびXaa18は、極性アミノ酸であり;そしてXaa2、Xaa3、Xaa6、Xaa7、Xaa9、Xaa10、Xaa13、Xaa14、およびXaa17は、非極性アミノ酸である。
【0108】
他の実施形態において、本発明のペプチドは、N末端またはC末端のどちらかにさらなるペプチジル配列を有し得る。したがって、例えば、本発明は、14アミノ酸のペプチド(N末端ペプチド)を式I〜式VのいずれかのペプチドのN末端に結合させることによって融合ペプチドを提供する。その14アミノ酸のN末端ペプチドは、構造:
【0109】
【化25】
を有し、各Rxは、個別に、極性アミノ酸であり、そして各Ryは、個別に、非極性アミノ酸である。
【0110】
本発明はまた、12アミノ酸のペプチド(C末端ペプチド)を式VのペプチドのC末端に結合させることによって形成された融合ペプチドを提供する。得られた融合ペプチドは、式VIの構造:
【0111】
【化26】
を有し、
Xaa1、Xaa4、Xaa5、Xaa8、Xaa11、Xaa12、Xaa15、Xaa16、Xaa18、Xaa19、Xaa22、Xaa23、Xaa26、Xaa29、およびXaa30は、個別に各々、極性アミノ酸であり;そして
Xaa2、Xaa3、Xaa6、Xaa7、Xaa9、Xaa10、Xaa13、Xaa14、Xaa17、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、Xaa27、およびXaa28は、個別に各々、非極性アミノ酸である。
【0112】
本発明はまた、式VIのペプチドのN末端にペプチド結合によって結合された配列番号117の14アミノ酸のN末端ペプチドに対応する配列を有する融合ペプチドを提供する。
【0113】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、上に記載されたペプチドのうちのいずれかの少なくとも14個の隣接したアミノ酸を含むペプチドである。
【0114】
ペプチド改変体はまた、溶液中のそのペプチドの両親媒性のα−ヘリックス二次構造が維持される限り、配列内の親水性残基および/または疎水性残基の「スクランブリング」から生じ得る。
【0115】
(本発明のペプチドを作製する方法)
本発明の文脈(context)において、「単離された」ペプチドは、そのネイティブな環境から分離して存在するペプチドであり、したがって天然の産物ではない。単離されたペプチドは、精製された形態で存在し得るか、あるいは、例えば、細胞または他の活性成分または不活性成分を含み得る溶媒などのネイティブではない環境中に存在し得る。1つの実施形態において、「単離された」ペプチドは、そのペプチドが本来由来するタンパク質中でそのペプチドに天然に隣接(flank)する配列(すなわち、ペプチドのN末端およびC末端に位置する配列)のうち少なくともいくつかを含まない。「精製された」ペプチドは、組換え技術によって産生される場合に他の細胞物質または培養培地を実質的に含まないか、あるいは化学的に合成される場合に化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。したがって、精製されたペプチド調製物は、ペプチドの少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%または少なくとも90重量%である。純度は、当該分野において公知である方法(クロマトグラフィーを利用する方法またはポリアクリルアミドゲル電気泳動を利用する方法が挙げられるが、これらに限定されない)を使用して決定され得る。
【0116】
本発明のペプチドまたはその改変体は、例えば、固相ペプチド合成法または酵素触媒によるペプチド合成によってか、あるいは組換えDNA技術の補助によって、インビトロで合成され得る。固相ペプチド合成法は、以下のような参考文献に記載された、確立され、かつ広範に使用される方法である。:Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,W.H.Freeman Co.,San Francisco(1969);Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85 2149(1963);Meienhofer,「Hormonal Proteins and Peptides」,編;C.H.Li,第2巻(Academic Press,1973),pp.48−267;ならびにBavaayおよびMerrifield,「The Peptides」,編,E.GrossおよびF.Meienhofer,第2巻(Academic Press,1980)pp.3−285。これらのペプチドは、免疫親和性カラムまたはイオン交換カラムにおける分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたはアニオン交換樹脂(例えば、DEAE)におけるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング(chromatofocusing);SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えば、Sephadex G−75を使用したゲル濾過;リガンド親和性クロマトグラフィー;または非極性溶媒もしくは非極性/極性溶媒混合物からの結晶化もしくは沈殿によって、さらに精製され得る。結晶化または沈殿による精製が、好ましい。
【0117】
本発明のペプチドは、それらが抗ウイルス活性を保持する限り、環状ペプチドであり得る。そのような環状ペプチドは、代表的に、アミノ末端を末端カルボキシレートに共有結合することによって直鎖状ペプチドから産生される。末端のみが連結されることを確実にするために、アミノ側鎖およびカルボン酸側鎖が、市販の保護基によって保護され得る。いくつかの実施形態において、当業者は、アミノ末端またはカルボン酸末端のうちの一方、あるいは別のアミノ酸側鎖にペプチド側鎖を環化することを選択し得る。この場合において、保護基は再び、所望されるように環化反応を誘導するために使用され得る。
【0118】
ペプチドの環化は、利用可能な前駆体を使用して行われ得る。例えば、環化は、1〜5mMのペプチド濃度にて、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP,Novabiochem)(粗ペプチドに対して5当量)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA,Fisher)(40当量)との混合物を使用して、ジメチルホルムアミド中で行われ得る。DIEAの量は、見かけのpH9〜10を達成するために調整される。その反応が実施された後、任意の便利な手段(例えば、MALDI−MSおよび/またはHPLC)が実施され得る。
【0119】
上記ペプチドまたはペプチド改変体のアミノ基のN−アシル誘導体は、N−アシル保護アミノ酸を最終的な縮合に利用することによってか、あるいは保護されたペプチドまたは保護されていないペプチドをアシル化することによって調製され得る。O−アシル誘導体は、例えば、遊離ヒドロキシペプチドまたはペプチド樹脂のアシル化によって調製され得る。どちらかのアシル化が、標準的なアシル化試薬(例えば、アシルハライド、無水物、アシルイミダゾールなど)を使用して実施され得る。所望される場合、N−アシル化およびO−アシル化の両方が、一緒に実施され得る。
【0120】
本発明のペプチドまたはペプチド改変体のカルボキシル基の塩は、上記ペプチドと、1当量以上の所望の塩基(例えば、金属水酸化物塩基(例えば、水酸化ナトリウム);炭酸金属塩基または炭酸水素金属塩基(例えば、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウム);あるいはアミン塩基(例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなど))とを接触させることによって、通常の様式で調製され得る。
【0121】
上記ペプチドまたは改変体ペプチドの酸付加塩、あるいは上記ペプチドまたは改変体ペプチドのアミノ残基の酸付加塩は、そのペプチドまたはアミンと、1当量以上の所望の無機酸または有機酸(例えば、塩酸)とを接触させることによって調製され得る。上記ペプチドのカルボキシル基のエステルはまた、当該分野において公知である任意の通常の方法によって調製され得る。
【0122】
(使用方法)
本発明のペプチドは、フラビウイルス科のウイルスによる感染を予防するか、処置するか、またはそうでなければ改善するために使用され得、そのウイルスとしては、上に記載されるように、フラビウイルス属のウイルス、ペスチウイルス属のウイルス、およびヘパシウイルス属のウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。フラビウイルス属のメンバーは、ダニ媒介脳炎、中央ヨーロッパ型脳炎、極東型脳炎、リオブラボー、日本脳炎、クンジン、マリーバレー脳炎、セントルイス脳炎、西ナイル脳炎、チュレンリー、タヤ、ウガンダS、1型デング熱、2型デング熱、3型デング熱、4型デング熱、モドック、および黄熱病を引き起こすウイルスを含む。ペスチウイルス属のメンバーは、牛ウイルス性下痢ウイルス1型、牛ウイルス性下痢ウイルス2型、豚コレラ(Hog cholera)(豚コレラ(classical swine fever)ウイルス)、およびボーダー病ウイルスを含む。ヘパシウイルス属は、C型肝炎ウイルスを含む。フラビウイルス科のさらなるメンバーは、割り当てられていないGBウイルス−A、GBウイルス−B、およびGBウイルス−Cを含む。フラビウイルス科のメンバーのウイルスは、種々の疾患を引き起こすことが公知であり、その疾患としては、例えば、デング熱、C型肝炎感染、日本脳炎、キャサヌール森林病、マリーバレー脳炎、セントルイス脳炎、ダニ媒介脳炎、西ナイル脳炎および黄熱病が挙げられる。
【0123】
本発明のペプチドは、フラビウイルス科のメンバーのウイルスによる感染およびその関連する疾患状態を予防するか、処置するか、またはそうでなければ改善するために使用され得る。したがって、本発明の種々の適用の例としては、デング熱、デング出血熱、デングショック症候群、日本脳炎、キャサヌール森林病、マリーバレー脳炎、セントルイス脳炎、ダニ媒介髄膜脳炎、慢性C型肝炎感染を有する患者に対する治療薬としての用途、肝臓移植の間の移植片感染を予防するための用途、性行為感染を予防するための用途、輸血において使用される血液および血液製剤の安全性を上昇させるための用途、ならびに臨床検査室サンプルの安全性の上昇についての用途が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
1つの実施形態において、本発明は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)のウイルス感染を予防するか、またはそうでなければ改善するための方法、あるいは哺乳類(例えば、ヒト)のフラビウイルス科のウイルスによる急性感染または慢性感染を予防するか、処置するか、またはそうでなければ改善するための方法を提供する。
【0125】
本明細書中で使用される場合、「予防すること(preventing)」は、フラビウイルス科のメンバーに曝され得るか、または曝された哺乳類(例えば、ヒト)に対する本発明のペプチドの投与を含むことを意図される。フラビウイルス科のウイルスに曝され得る哺乳類としては、これらのウイルスが優勢または一般的である地域(例えば、熱帯地方、東南アジアおよび極東アジア、南アジア、オーストラリアおよびパプアニューギニア、米国、ロシア、アフリカならびに中央アメリカおよび南アメリカ諸国)に存在する哺乳類が挙げられるが、これらに限定されない。フラビウイルス科のウイルスに曝され得る哺乳類としてはまた、シカダニまたは森林ダニ(forest tick)あるいは蚊によって噛まれたもの;提供された身体組織または体液(例えば、レシピエントの血液または1種以上のその成分(例えば、血漿、血小板、または幹細胞))のレシピエント;ならびに身体組織または体液を取り扱う医療従事者、臨床従事者または歯科従事者が挙げられる。フラビウイルス科のウイルスに曝された哺乳類としては、HCVまたは任意の他のフラビウイルス科のウイルスに感染した者の身体組織または体液(例えば、血液)と接触した哺乳類、あるいはそうでなければそれらのウイルスと接触した哺乳類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
フラビウイルス科のウイルス感染の処置、またはそれを処置することは、ウイルス量の減少、またはその感染に代表的に関連する少なくとも1つの症状の緩和もしくは減少を含むことを意図される。上記処置はまた、1つより多くの症状の緩和もしくは減少を含む。理想的には、上記処置による治癒は、例えば、実質的に、ウイルス感染を阻害し、そして/またはその感染に関連する症状を排除する。
【0127】
ウイルスの曝露または感染の症状または症状発現は、特定の感染に特異的であり、そしてこれらは、当該分野において公知である。デング熱およびデング出血熱は、例えば、4種のフラビウイルス属血清型のうちの1つによって引き起こされる。これらの状態の症状としては、熱、激しい頭痛、関節痛および筋肉痛の突然の発症および発疹、ならびに高熱、血小板減少および血液濃縮が挙げられる。デング熱およびデング出血熱の臨床適応としてはまた、高熱、血小板減少および白血球減少を伴う点状出血性皮疹、ならびに出血傾向が挙げられる。日本脳炎の症状としては、熱、頭痛、頸部硬直(neck rigidity)、悪液質、不全片麻痺、痙攣および上昇した体温が挙げられる。日本脳炎は、血清および脳脊髄液における抗体の検出によって診断され得る。キャサヌール森林病の症状としては、高熱、頭痛、鼻腔および咽喉からの出血、および嘔吐が挙げられる。セントルイス脳炎の症状としては、熱、頭痛、頸部硬直(neck stiffness)、昏迷、失見当、昏睡、振せん、時折の痙攣および痙性麻痺が挙げられる。マリーバレー脳炎の症状としては、熱、発作、悪心および小児における下痢、ならびに頭痛、嗜眠および成人における錯乱が挙げられる。西ナイルウイルス感染の症状としては、インフルエンザ様症状、倦怠感、熱、食欲不振、悪心、嘔吐、眼の痛み、頭痛、筋痛、発疹およびリンパ節症、ならびに脳炎(脳の炎症)および髄膜炎(脳および脊髄の内膜(lining)の炎症)、髄膜症、一過性の失明、発作および昏睡が挙げられる。西ナイル感染は、血液または脳脊髄液において抗体を検出するために、ELISAを使用して診断され得る。黄熱病の症状としては、熱、筋肉の痛み、頭痛、背痛、紅色舌、顔面紅潮、眼の充血、胃腸管からの出血、血性嘔吐物、黄疸、肝不全、タンパク尿を伴う腎不全、低血圧、脱水、せん妄、発作および昏睡が挙げられる。C型肝炎の症状としては、肝臓の炎症、食欲の減少、疲労、腹痛、黄疸、インフルエンザ様症状、掻痒、筋肉痛、関節痛、間欠的な軽度の発熱、睡眠障害、悪心、消化不良、認知変化、抑うつ性頭痛および気分変化が挙げられるが、これらに限定されない。HCV感染はまた、ウイルスに対する抗体を検出すること、生検によって肝臓の炎症を検出すること、肝硬変、門脈圧亢進、甲状腺炎、クリオグロブリン血症および糸球体腎炎によって診断され得る。さらに、HCV感染が、診断され得る。さらに、HCVへの曝露または感染の診断あるいはHCVへの曝露の危険性があるものの同定は、慣用的な血液検査の間の病歴、異常な肝臓酵素または肝機能検査に基づき得る。一般に、フラビウイルス科のメンバーによる感染は、ウイルス抗原または抗ウイルス抗体を検出するためのELISA、ウイルス抗原を検出するための免疫蛍光、ウイルスの核酸を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などを使用して検出され得る。
【0128】
急性ウイルス感染または慢性ウイルス感染を予防するか、処置するか、またはそうでなければ改善する方法は、細胞と、有効量の本発明のペプチドとを接触させる工程または哺乳類(例えば、ヒト)に治療有効量の本発明のペプチドを投与する工程を包含する。
【0129】
本発明のペプチドは、種々の様式で投与され得る。投与経路としては、経口経路、非経口経路(皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路および腹腔内経路を含む)、直腸経路、膣経路、皮膚経路、経皮経路(局所)、経粘膜経路、胸内経路、肺内経路および鼻腔内(呼吸性)経路が挙げられるが、これらに限定されない。投与の手段は、ポンプを使用した注射または任意の他の適切な機構によるものであり得る。
【0130】
本発明のペプチドは、例えば、レシピエントの生理的状態、投与の目的が治療的であるのかもしくは予防的であるのか、および熟練した実施者に公知である他の因子に依存して、単一用量、複数用量、持続様式または間欠様式で投与され得る。本発明のペプチドの投与は、予め選択された期間にわたって本質的に持続的であっても、一連の間隔を空けた用量であってもよい。局所投与および全身投与の両方が、企図される。
【0131】
哺乳類に対して投与される投薬量は、ウイルス感染を減少させるためもしくは予防するためか、またはそのウイルス感染に関連した少なくとも1つの症状を処置するために適切な任意の量であり得る。適切な投薬量を決定するいくつかの因子は、当業者に周知であり、そして慣用的な実験によって取り組まれ得る。例えば、物理化学的特性、毒物学的特性および薬物動態学的特性の決定は、標準的な化学的アッセイおよび生物学的アッセイを使用し、そして化学分野、薬理学分野および毒物学分野において公知である数学的モデリング技術の使用を介して行われ得る。治療的有効性および投薬レジメンは、そのような技術の結果ならびに適切な薬物動態学的モデルおよび/または薬力学的モデルの使用によって推定され得る。他の因子は、年齢、身体的状態、サイズ、体重、処置されるべき状態、状態の重篤度および任意の併用療法を含む個々の患者パラメータに依存する。上記投薬量はまた、選択されるペプチドおよび予防または処置が達成されるか否か、ならびにそのペプチドが化学的に改変されるか否かに依存する。そのような因子は、ウイルス感染モデル(例えば、本明細書中に記載されるHCV細胞培養/JFH−1感染モデル、または当該分野において利用可能である他の動物モデルもしくは検査システム)を使用して臨床医によって容易に決定され得る。
【0132】
患者に対して投与される正確な量は、主治医の責務である。しかし、所望の効果を達成するために、本発明のペプチド、その改変体またはその組合せは、例えば、体重1kgあたり少なくとも約0.01mgから約500〜750mgまで、体重1kgあたり少なくとも約0.01mgから約300〜500mgまで、体重1kgあたり少なくとも約0.1mgから約100〜300mgまで、または体重1kgあたり少なくとも約1mgから約50〜100mgまでの単一投薬量または分割投薬量として投与され得るが、しかし、他の投薬量は、有益な結果を提供し得る。
【0133】
単位用量中に含まれる所与のペプチドの絶対的な重量は、広範に変動し得る。例えば、約0.01〜約2gまたは約0.1〜約500mgの、特定の細胞型に特異的な本発明の少なくとも1種のペプチド、または複数種のペプチドが、投与され得る。あるいは、上記単位投薬量は、約0.01gから約50gまでか、約0.01gから約35gまでか、約0.1gから約25gまでか、約0.5gから約12gまでか、約0.5gから約8gまでか、約0.5gから約4gまでか、または約0.5gから約2gまで変動し得る。
【0134】
本発明のペプチドの日用量も、同様に、変動し得る。そのような日用量は、例えば、約0.1g/日〜約50g/日、約0.1g/日〜約25g/日、約0.1g/日〜約12g/日、約0.5g/日〜約8g/日、約0.5g/日〜約4g/日、および約0.5g/日〜約2g/日の範囲であり得る。
【0135】
本発明のペプチドは、単独か、または第2の薬剤と組み合わせて使用され得る。上記第2の薬剤は、例えば、インターフェロンベースの治療剤または別の型の抗ウイルス性薬剤(例えば、リバビリン)などの公知の抗ウイルス因子であり得る。上記第2の薬剤は、抗癌因子、抗菌因子、または抗ウイルス因子であり得る。上記抗ウイルス因子は、最初の接着および進入から放出までのウイルスの生活環における任意の工程において作用し得る。したがって、上記添加された抗ウイルス因子は、接着、融合、進入、輸送、翻訳、ウイルスポリタンパク質のプロセシング、ウイルスゲノムの複製、ウイルス粒子の構築、放出または出芽を妨害し得る。つまり、上記抗ウイルス因子は、接着のインヒビター、進入のインヒビター、融合のインヒビター、輸送のインヒビター、複製のインヒビター、翻訳のインヒビター、タンパク質プロセシングのインヒビター、放出のインヒビター、本質的に、任意のウイルス機能のインヒビターであり得る。上記第2の薬剤の有効量は、その第2の薬剤の製造業者の推奨、担当医の判断に従い、そしてPHYSICIAN’S DESK REFERENCEに示されるような量および投薬についてのプロトコルおよび管理上の因子によって導かれる。
【0136】
処置の方法の有効性は、患者を上で考察されるようなウイルス感染の徴候または症状についてモニタリングすること、ならびに当該分野において公知である方法(ポリメラーゼ連鎖反応および転写媒介性の増幅が挙げられるが、これらに限定されない)を使用して血液中にあるウイルスの存在および/または量(例えば、ウイルス量)を決定することによって評価され得る。
【0137】
(薬学的組成物)
1つの実施形態において、本発明は、本発明のペプチドを含む薬学的組成物を提供する。そのような薬学的組成物を調製するために、本発明のペプチドは、合成されるか、または他の方法で得られ(必要な場合または所望される場合に精製され)、次いで凍結乾燥され、そして安定化される。その後、上記ペプチドは、適切な濃度に調整され得、次いで他の薬剤または薬学的に受容可能なキャリアと合わせられ得る。「薬学的に受容可能な」によって、処方物の他の成分と適合性であり、かつそのレシピエントに有害ではないキャリア、希釈剤、賦形剤、および/または塩が、意味される。
【0138】
本発明の治療用ペプチドを含む薬学的処方物は、周知であり、かつ容易に利用可能な成分を使用して当該分野において公知である手順によって調製され得る。例えば、上記ペプチドは、一般的な賦形剤、希釈剤、またはキャリアと一緒に処方され得、そして錠剤、カプセル剤、溶液、懸濁剤、散剤、エーロゾルなどへと成形され得る。そのような処方物に適した賦形剤、希釈剤、およびキャリアの例としては、緩衝剤、およびフィラー(filler)および増量剤(extender)(例えば、デンプン、セルロース、糖類、マンニトール、およびケイ酸誘導体)が挙げられる。結合剤(例えば、カルボキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギネート、ゼラチン、およびポリビニル−ピロリドン)もまた、含まれ得る。
【0139】
湿潤剤(例えば、グリセロール)、崩壊剤(例えば、炭酸カルシウムおよび炭酸水素ナトリウム)が、含まれ得る。溶解を遅延させるための薬剤(例えば、パラフィン)もまた、含まれ得る。吸収促進剤(例えば、第四級アンモニウム化合物)もまた、含まれ得る。表面活性剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール)が、含まれ得る。吸着性キャリア(例えば、カオリンおよびベントナイト)が、添加され得る。滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに固体ポリエチルグリコール)もまた、含まれ得る。保存剤もまた、添加され得る。本発明の組成物はまた、増粘剤(例えば、セルロースおよび/またはセルロース誘導体)を含み得る。それらの組成物はまた、ゴム(例えば、キサンタンゴム、グアーガムまたはカルボガム(carbo gum)あるいはアラビアゴム)、あるいはポリエチレングリコール、ベントン(bentone)およびモンモリロナイトなどを含み得る。
【0140】
経口投与に関して、ペプチドは、粉末、顆粒処方物、溶液、懸濁物、エマルションとして存在し得るか、あるいはそのペプチドは、チューインガムからの活性成分の摂取のために、天然または合成のポリマーまたは樹脂中に存在し得る。上記活性ペプチドはまた、ボーラス、舐剤またはパスタとして提供され得る。上記処方物は、適切な場合、別個の単位投薬形態において便利に提供され得、そしてその処方物は、製薬分野で周知である任意の方法(治療因子と液体キャリア、固体マトリックス、半固体キャリア、微細に分割されたキャリアまたはそれらの組合せとを混合し、次いで、必要な場合に、その生成物を所望の送達系へと導入または成形する工程を包含する)によって調製され得る。そのような処方物中の全活性成分は、その処方物の0.1〜99.9重量%を構成する。
【0141】
本発明のペプチドを含む錠剤またはカプレットは、緩衝剤(例えば、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムおよび炭酸マグネシウム)を含み得る。カプレットおよび錠剤はまた、不活性成分(例えば、セルロース、予めゼラチン様にされたデンプン、二酸化ケイ素、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、微結晶性セルロース、デンプン、タルク、二酸化チタン、安息香酸、クエン酸、トウモロコシデンプン、鉱油、ポリプロピレングリコール、リン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛など)を含み得る。本発明の少なくとも1種のペプチドを含むハードゼラチンカプセルまたはソフトゼラチンカプセルは、不活性成分(例えば、ゼラチン、微結晶性セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、タルク、および二酸化チタンなど)、および液体ビヒクル(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)および植物性油)を含み得る。さらに、本発明の1種以上のペプチドを含む腸溶性カプレットまたは腸溶性錠剤は、胃における崩壊に抵抗し、そして十二指腸のより中性〜アルカリ性の環境で溶解するように設計される。
【0142】
本発明の経口的に投与される治療用ペプチドはまた、徐放のために処方され得る。この場合において、本発明のペプチドは、コーティングされ得るか、マイクロカプセル化(WO 94/07529、および米国特許第4,962,091号を参照のこと)され得るか、またはそうでなければ持続送達デバイス内におかれ得る。徐放性処方物は、例えば、腸管または気道の特定の部分において、おそらく、ある期間にわたって上記活性ペプチドを放出するように設計され得る。コーティング、外皮(envelope)、および保護マトリックスは、例えば、ポリマー物質(例えば、ポリラクチド−グリコレート)、リポソーム、マイクロエマルション、マイクロ粒子、ナノ粒子、またはワックスから作製され得る。これらのコーティング、外皮、および保護マトリックスは、留置デバイス(例えば、ステント、カテーテル、腹膜透析チュービング(peritoneal dialysis tubing)、排出デバイス(draining device)など)をコーティングするために有用である。
【0143】
本発明の治療用ペプチドはまた、便利な経口投与のためのエリキシル剤または溶液として処方され得るか、あるいは例えば、筋肉内経路、皮下経路、腹腔内経路または静脈内経路による非経口投与のための適切な溶液として処方され得る。本発明の治療用ペプチドの薬学的処方物はまた、水溶液もしくは無水溶液または分散物の形態、あるいはエマルションもしくは懸濁物または軟膏の形態をとり得る。
【0144】
したがって、治療用ペプチドは、非経口投与(例えば、注射(例えば、ボーラス注射または持続注入)のために処方され得、そしてその治療用ペプチドは、アンプル、予め充填されたシリンジ、小容量注入コンテナにおいて単位用量形態で提供されても、複数用量コンテナで提供されてもよい。上に記載される通り、保存剤は、上記投薬形態の貯蔵寿命の維持を補助するために添加され得る。上記活性ペプチドおよび他の成分は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクル中で懸濁物、溶液またはエマルションを形成し得、そして処方化剤(formulatory agent)(例えば、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤)を含み得る。あるいは、上記活性ペプチドおよび他の成分は、使用前の適切なビヒクル(例えば、無菌の、発熱物質を含まない水)による再構成のために、無菌固体の無菌性の単離によってか、または溶液からの凍結乾燥によって得られた粉末形態であり得る。
【0145】
これらの処方物は、当該分野において周知である薬学的に受容可能なキャリア、ビヒクルおよび佐剤を含み得る。例えば、水に加えて、溶媒(例えば、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコール、グリコールエステル(例えば、名称「Dowanol」で販売されている製品、ポリグリコールおよびポリエチレングリコール)、短鎖の酸のC1−C4アルキルエステル、乳酸エチルまたは乳酸イソプロピル、脂肪酸トリグリセリド(例えば、名称「Miglyol」で市販されている製品、ミリスチン酸イソプロピル、動物性油、鉱油および植物性油)およびポリシロキサン)から選択され、生理学的観点から受容可能である1種以上の有機溶媒を使用して溶液を調製することが、可能である。
【0146】
必要な場合、抗酸化剤、界面活性剤、他の保存剤、フィルム形成剤,角質溶解剤またはコメド溶解剤(comedolytic agent)、香料、香味料および着色剤から選択される佐剤を添加することが、可能である。抗酸化剤(例えば、t−ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびα−トコフェロールおよびその誘導体)が、添加され得る。
【0147】
いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、局所的に投与されるか、または粘膜表面(例えば、膣、直腸、眼、鼻など)に投与される殺菌剤として処方される。局所投与に関して、治療剤は、標的領域に対する直接適用について当該分野において公知である通りに処方され得る。主に局所適用のために調整された形態は、例えば、クリーム、ミルク、ゲル、分散物またはマイクロエマルション、程度の差はあるが増粘されたローション、含浸パッド、軟膏またはスティック(stick)、エーロゾル処方物(例えば、スプレーまたはフォーム)、せっけん、洗浄剤、ローションまたはせっけんのケークの形態をとる。したがって、1つの実施形態において、本発明のペプチドは、局所的に適用される膣用クリームまたは殺菌剤として処方され得る。この目的のための他の従来の形態としては、創傷用包帯、コーティングされたバンデージまたは他のポリマー被覆剤、軟膏、クリーム、ローション、パスタ、ゼリー、スプレー、およびエーロゾルが挙げられる。したがって、本発明の治療用ペプチドは、皮膚投与のためのパッチまたはバンデージによって送達され得る。あるいは、上記ペプチドは、粘着性ポリマー(例えば、ポリアクリレートまたはアクリレート/酢酸ビニルコポリマー)の部分であるように処方され得る。長期適用について、微小孔性および/または通気性の裏地(backing)積層体を使用する(したがって、皮膚の水和または浸軟が、最小化され得る)ことが、望まれ得る。裏地層は、所望の保護機能および支持機能を提供する任意の適切な厚さであり得る。適切な厚さは、一般に、約10ミクロン〜約200ミクロンである。
【0148】
軟膏およびクリームは、例えば、水性基剤または油性基剤を用い、適切な増粘剤および/またはゲル化剤を添加することによって処方され得る。ローションは、水性基剤または油性基剤を用いて処方され得、そしてそのローションはまた、一般に、1種以上の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、または着色剤を含む。活性ペプチドはまた、例えば、米国特許第4,140,122号;同第4,383,529号;または同第4,051,842号において公開される通り、イオン導入を介して導入され得る。局所処方物に存在する本発明の治療剤の重量%は、種々の因子に依存するが、一般に、その処方物の全重量の0.01%〜95%であり、そしてその重量%は、代表的に0.1〜85重量%である。
【0149】
点滴剤(例えば、点眼薬または点鼻薬)は、1種以上の治療用ペプチドを用いて、1種以上の分散剤、可溶化剤または懸濁化剤をまた含む水性基剤または非水性基剤において処方され得る。液体スプレーは、加圧されたパックから便利に送達される。点滴剤は、単純な点眼キャップ付きの瓶または液体内容物を滴下で送達するために適合されたプラスチック瓶、特別に形成されたクロージャー(closure)を介して送達され得る。
【0150】
治療用ペプチドは、口腔または咽喉における局所投与のためにさらに処方され得る。例えば、上記活性成分は、風味付けした基剤(通常は、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント)をさらに含むロゼンジ;不活性な基剤(ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア)中の組成物を含む香錠;および適切な液体キャリア中の本発明の組成物を含む含そう剤として処方され得る。
【0151】
本発明の薬学的処方物は、必要に応じた成分として、当該分野で利用可能である型の、薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、可溶化剤または乳化剤、および塩を含み得る。そのような物質の例としては、通常の生理食塩溶液(例えば、生理学的に緩衝化された生理食塩溶液)および水が挙げられる。本発明の薬学的処方物において有用であるキャリアおよび/または希釈剤の特定の非限定的な例としては、水および生理学的に受容可能な緩衝化された生理食塩溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩溶液(pH7.0〜8.0)が挙げられる。
【0152】
本発明のペプチドはまた、気道に投与され得る。したがって、本発明はまた、エーロゾルの薬学的処方物および本発明の方法において使用するための投薬形態を提供する。一般に、このような投薬形態は、ウイルス感染の臨床症状を処置または予防するために有効な量の少なくとも1つの本発明の薬剤を含む。本発明の方法に従って処置された感染の1つ以上の症状の任意の統計的に有意な減衰は、本発明の範囲内のそのような感染の処置であると見なされる。
【0153】
あるいは、吸入またはガス注入による投与のために、上記組成物は、乾燥粉末(例えば、治療剤と適切な粉末基剤(例えば、乳糖またはデンプン)との粉末混合物)の形態をとり得る。上記粉末組成物は、例えば、粉末が吸入器、注入器、または定量吸入器(例えば、Newman,S.P.、Aerosols and the Lung、Clarke,S.W.およびDavia,D.編、pp.197−224、Butterworths、London、England、1984に開示される加圧式定量吸入器(MDI)および乾燥粉末吸入器を参照のこと)の補助によって投与され得る、カプセルまたはカートリッジ、すなわち、例えば、ゼラチンまたはブリスターパックにおいて、単位投薬形態で提供され得る。
【0154】
本発明の治療用ペプチドはまた、エーロゾルまたは吸入形態で投与される場合、水溶液で投与され得る。したがって、他のエーロゾル薬学的処方物は、例えば、約0.1mg/mLと約100mg/mLとの間の、処置される適応または疾患に特異的な1種以上の本発明のペプチドを含む、生理学的に受容可能な緩衝化された生理食塩溶液を含み得る。液体に溶解または懸濁されていない微細に分割された固体ペプチドまたは核酸粒子の形態における乾燥エーロゾルもまた、本発明の実施において有用である。本発明のペプチドは、撒布剤(dusting powder)として処方され得、そしてそれは、約1μmと5μmとの間(あるいは、2μmと3μmとの間)の平均粒径を有する微細に分割された粒子を含み得る。微細に分割された粒子は、当該分野において周知である技術を使用して粉末化およびスクリーン濾過(screen filtration)によって調製され得る。上記粒子は、粉末の形態にあり得る所定の量の微細に分割された材料を吸入することによって投与され得る。必要有効量が複数の投薬単位の投与によって達成され得るので、各投薬形態の個々のエーロゾル用量に含まれる活性成分の単位含量が、それ自体、特定の感染、適用または疾患を処置するための有効量を構成する必要はないことが、認識される。さらに、上記有効量は、個別か、または一連の投与においてのいずれかで、上記投薬形態中の用量未満を使用して達成され得る。
【0155】
吸入による上気道(鼻)または下気道への投与に関して、本発明の治療用ペプチドは、噴霧器もしくは加圧されたパックまたはエーロゾルスプレーを送達する他の都合のよい手段から便利に送達される。加圧されたパックは、適切な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切な気体)を含み得る。加圧されたエーロゾルの場合において、投薬単位は、定量を送達するための弁を提供することによって決定され得る。噴霧器としては、米国特許第4,624,251号;同第3,703,173号;同第3,561,444号;および同第4,635,627号において記載される噴霧器が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に開示される型のエーロゾル送達系は、Fisons Corporation(Bedford,Mass.)、Schering Corp.(Kenilworth,NJ)およびAmerican Pharmoseal Co.,(Valencia,CA)を含む多数の商業的供給源から入手可能である。鼻腔内投与に関して、治療剤はまた、点鼻薬、液体スプレー(例えば、プラスチック瓶のアトマイザーまたは定量吸入器)によって投与され得る。代表的なアトマイザーは、Mistometer(Wintrop)およびMedihaler(Riker)である。
【0156】
本発明の治療用ペプチドはまた、記載された状態またはいくつかの他の状態のいずれかに対して、1種以上の公知の治療剤(例えば、鎮痛剤);抗ウイルス因子(例えば、抗HBV因子、抗HCV因子(HCVインヒビター、HCVプロテアーゼインヒビター)または抗ヘルペス因子);抗菌剤;抗癌剤;抗炎症剤;抗ヒスタミン剤;気管支拡張剤およびそれらの適切な組合せと組み合わせて使用され得る。
【0157】
(種々の組成物および製品)
1つの実施形態において、本発明は、微生物感染を制御するために本発明のペプチドを含む薬学的組成物を含む製品を提供する。そのような製品は、有用なデバイス(例えば、膣内リング、コンドーム、バンデージまたは同様のデバイス)であり得る。上記デバイスは、ウイルス感染を制御するために治療有効量の薬学的組成物を保持する。上記デバイスは、感染の制御のために上記薬学的組成物を使用するための説明書と一緒にキットに梱包され得る。上記薬学的組成物は、ウイルス感染が制御されるように、少なくとも1種の本発明のペプチドを治療有効量で含む。
【0158】
製品はまた、本発明のペプチドを含む生物学的サンプルの回収、処理または保存のために使用され得る容器または濾過ユニットであり得る。容器は、空にされてもよい。容器としては、キャピラリーチューブ、真空採血管(vacutainer)、血液または他の体液のための回収用バッグ、カニューレ、カテーテルが挙げられるが、これらに限定されない。濾過ユニットは、別のデバイス(例えば、生物学的流体の回収のためのカテーテル)の部分であり得る。さらに、本発明のペプチドはまた、上記製品(例えば、容器または濾過ユニット)に吸着されても、共有結合されてもよい。したがって、上記製品中の材料が、そこからデカントされるか、またはその製品を通過する場合、その材料は、上記ペプチドの実質的な量を保持しない。しかし、上記製品に対する上記ペプチドの吸着または共有結合は、ウイルスを殺すか、またはウイルスの伝播を予防し、それによってウイルス感染を制御することを補助する。したがって、例えば、本発明のペプチドは、回収された生物学的サンプル中に存在し得るウイルス粒子を除去または不活化するために、生物学的回収用のカテーテルおよびバイアルに組み込まれた濾過ユニット中にあり得るか、あるいは回収容器に添加され得、したがって上記疾患の伝播を予防する。
【0159】
本発明はまた、本発明のペプチドと1種以上の臨床的に有用な薬剤(例えば、生物学的安定剤)とを含む組成物を提供する。生物学的安定剤としては、抗凝固剤、保存剤およびプロテアーゼインヒビターが挙げられるが、これらに限定されない。抗凝固剤としては、シュウ酸塩、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸塩およびヘパリンが挙げられるが、これらに限定されない。保存剤としては、ホウ酸、ギ酸ナトリウムおよびホウ酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。プロテアーゼインヒビターとしては、ジペプチジルペプチダーゼIVのインヒビターが挙げられる。本発明のペプチドと生物学的安定剤とを含む組成物は、回収容器(例えば、キャピラリーチューブ、真空採血管、血液または他の体液のための回収用バッグ、カニューレ、カテーテルあるいは生物学的サンプルの回収、処理または保存のために使用される任意の他のコンテナまたは容器)中に含まれ得る。
【0160】
本発明はまた、本発明のペプチドと生物学的サンプル(例えば、血液、精液あるいは実験室において分析されるか、またはレシピエントの哺乳類に導入される他の体液)とを含む組成物を提供する。例えば、本発明のペプチドは、実験室処理および/または輸血の前に血液と混合され得る。
【0161】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、生物学的組織(移植組織を含む)を保存および移植するために使用される生理学的媒体中に含まれ得る。したがって、例えば、肝臓、心臓、腎臓および他の組織は、移植片のレシピエントへのウイルス伝播を阻害するために、本発明のペプチドを含む媒体に浸漬され得る。
【0162】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに示される。
【実施例】
【0163】
(実施例1:材料および方法)
HCV構築物および転写。使用したHCVコンセンサスクローンは、劇症肝炎を有する日本人患者に由来し、そしてJFH−1と表示された(Katoら(2001)J.Med.Virol.64,334−339)。このHCV cDNAを、T7プロモーターの後にクローニングして、プラスミドpJFH−1、および複製欠損NS5Bネガティブコントロール構築物pJFH−1/GNDを作製した(Katoら(2003)Gastroenterology 125,1808−1817)。ゲノムJFH−1およびJFH−1/GND RNAを産生するために、pJFH−1プラスミドおよびpJFH−1/GNDプラスミドを、XbaI消化によってHCV cDNAの3’末端にて直線化した。次いで直線化したDNAを、精製し、そしてインビトロ転写(MEGAscript;Ambion,Austin,TX)のための鋳型として使用した。JFH−1鎖特異的RNAプローブを産生するために、本発明者らは、JFH−1 NS5Bコード領域の1kbフラグメントをpBSKII+ベクター中にクローニングして、JFH−1ネガティブ鎖プローブおよびJFH−1ポジティブ鎖プローブのT7駆動性およびSP6駆動性の転写をそれぞれ可能にした。
【0164】
細胞培養。肝性のHuh−7細胞およびHuh−7.5.1細胞、ならびに非肝性のHEK293細胞およびHeLa細胞を、10%ウシ胎仔血清(Invitrogen)、10mMのHepes、100ユニット/mLのペニシリン、100mg/mLのストレプトマイシンおよび2mMのL−グルタミン(Invitrogen,Carlsbad,CA)を補充したD−MEM(Invitrogen,Carlsbad,California)において5% CO2にて維持した。これらの研究において使用した非肝性のHEK293細胞は、Grahamら(1977)J.Gen.Virol.36,59−74に記載される。使用したHeLa細胞は、Geyら(1952) Cancer Res.12,264−265に記載される。ヒト前骨髄芽球性のHL−60細胞および単芽球様U−937細胞を、American Type Culture Collestion(ATCC)から購入し、そして推奨される通りに培養した。ヒト肝細胞癌細胞株HepG2を、ATCCから入手し、そしてHepG2は、Knowlesら(1980)Science 209,497−499に記載される。エプスタイン−バーウイルス形質転換B細胞を、上に記載した同じ補充を伴うRPMI培地(Invitrogen)において維持した。
【0165】
Huh−7.5.1と表示した細胞は、Huh−7.5 GFP−HCVレプリコン細胞株I/5A−GFP−6(Moradpour(2004)J.Virol.78,7400−7409)に由来した。I/5A−GFP−6細胞由来のHCV−GFPレプリコンを取り除いてHCVネガティブHuh−7.5.1細胞株を作製するために、I/5A−GFP−6レプリコン細胞を、I/5A−GFP−6レプリコンを根絶するために、100IU/mlのヒトインターフェロンγ(IFNγ)の存在下で3週間にわたって培養した。ネオマイシン耐性遺伝子を有するHCVレプリコンのクリアランスを、G418感受性およびHCV特異的逆転写の定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT−QPCR)分析によって確認した。
【0166】
HCV RNAトランスフェクション。2つの異なる方法を使用して、インビトロ転写されたJFH−1 RNAをHuh−7細胞およびHuh−7.5.1細胞にトランスフェクトした。1つの方法は、Kriegerら(2001)J.Virol.75,4614−4624に記載されたエレクトロポレーションプロトコルの改変であった。簡単にいうと、トリプシン化細胞を、無血清Opti−MEM(Invitrogen)によって2回洗浄し、次いで1mlあたり1×107個の細胞の細胞密度にて同じ媒体中に再懸濁した。10マイクログラムのJFH−1 RNAを、4−mmキュベットにおいて0.4mlの上記細胞と混合し、そしてBio−Rad Gene Pulserシステム(BioRad,Hercules,CA)を、0.27kV、100ohm、および960μFにて単一のパルスを送達するために使用し、その細胞を、T162 Costarフラスコ(Corning)にプレートした。第2の方法は、リポソーム媒介性トランスフェクションを含み、そのリポソーム媒介性トランスフェクションを、リポフェクタミン(Lipofectamin)2000(Invitrogen)を用い、20% FCSの存在下で104個の細胞の懸濁物において5μgのJFH−1 RNAを使用して1:2のRNA:リポフェクタミン比にて行った。次いで細胞を、20% FCSを含む完全DMEMにプレートし、一晩にわたってインキュベーションした。両方の場合において、トランスフェクト細胞を、完全DMEMに移し、そして示された期間にわたって培養した。細胞を、3〜5日毎に継代した。これらの細胞および対応する上清におけるHCVの存在を、1μgの全細胞RNAあたりのHCV RNAコピーの数を定量すること、および選択した時点における上清のHCV感染価を決定することによって決定した。
【0167】
RNA分析。全細胞RNAを、標準的なプロトコルを使用したグアニジンチオシアネート(GTC)法によって単離した。Chomczynskiら(1987)Anal.Biochem.162,156−159。細胞上清由来のRNAse耐性RNAを、改変したGTC抽出プロトコルによって単離した。5マイクログラムのRNAを、HCV RNAを32P−UTP標識した鎖特異的プローブ(Maxiscript;Ambion)によって検出したことを除いて、Guidotti(1995)によって先に記載された通りにノーザンブロット分析に供した。あるいは、1マイクログラムのRNAを、DNAse処理(DNA非含有試薬;Ambion)し、そして定量的RT−PCRに供した。定量的RT−PCR分析を、Kapadiaら(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.102,2561−2566;Kapadiaら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,2014−2018に記載される通りに行った。DNAse処理したRNAを、製造業者の説明書(Applied Biosystems)に従ってTaqMan逆転写試薬を使用したcDNA合成、その後のBioRad iCylerを使用したリアルタイム定量的PCRのために使用した。HCV転写レベルおよびGAPDH転写レベルを、HCV JFH−1 cDNAまたはヒトGAPDH遺伝子を含むプラスミドの系列希釈から構成された検量線に対して決定した。
【0168】
ヒトGAPDH(Genbankアクセッション番号nMX002046)を検出するために使用したPCRプライマー配列は、5’−GAAGGTGAAGGTCGGAGTC−3’(センス、配列番号87)および5’−GAAGATGGTGATGGGATTTC−3’(アンチセンス、配列番号88)であった。JFH−1を検出するために使用したPCRプライマーは、5’−TCTGCGGAACCGGTGAGTA−3’(センス、配列番号89)および5’−TCAGGCAGTACCACAAGGC−3’(アンチセンス、配列番号90)であった。
【0169】
間接蛍光抗体法。細胞内染色を、Kapadiaら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,2014−2018に記載される通りに行った。細胞を、10分間にわたって室温(rt)にて4%パラホルムアルデヒド(pH7.2)において固定し、そして1時間にわたって室温にて、PBS(pH7.2)中の0.3% Triton X−100、3%ウシ血清アルブミン(BSA)および10% FCSを含むブロッキング緩衝液において透過させた。ポリクローナル抗NS5Aウサギ抗体MS5を、0.3% Triton X−100、3% BSAを含む緩衝液において1:1000の希釈にて使用した。次いで細胞を、1:1000希釈のAlexa555結合体化ヤギ抗ウサギIgG(Molecular Probes,Eugene,OR)と一緒に1時間にわたって室温にてインキュベートした。細胞核を、Hoechst染色を使用して可視化した。
【0170】
感染性HCV上清の力価。トランスフェクト細胞上清および/または感染細胞上清の感染性ウイルス力価を、エンドポイント限界希釈(end point limit dilution)分析によって決定した。簡単にいうと、細胞上清を、完全DMEMにおいて連続的に10倍に希釈し、そして96ウェルプレート(Corning)において1ウェルあたり104個のナイーブHuh−7.5.1細胞を感染させるために使用した。接種材料を、細胞と一緒に1時間にわたって37℃にてインキュベートし、次いで新鮮な完全DMEMを補充した。HCV感染のレベルを、HCV NS5Aまたは糖タンパク質E2(赤色)に対する免疫蛍光染色によって、感染後3日目に決定した。細胞核を、Hoechst色素(青色)によって染色した。ウイルス力価を、最も高い希釈率において検出したNS5Aポジティブ病巣の平均数によって決定した、1mLの上清あたりのフォーカス形成単位(focus forming unit)(ffu/mL)として示した。
【0171】
HCVウイルスストックの増幅。ウイルスストックを産生するために、感染性上清を、完全DMEMにおいて希釈し、そしてナイーブな10〜15%コンフルエント(confluent)なHuh−7.5.1細胞をT75フラスコ(Corning)中で0.01のMOIにて接種するために使用した。感染細胞を、トリプシン処理し、そして感染後(p.i.)4〜5日目においてコンフルエンス(confluence)の前に再度プレートした。次いで、感染細胞由来の上清を、感染後8〜9日目に回収し、そしてアリコートを、−80℃にて保存した。ウイルスストックの力価を、上に記載したように決定した。
【0172】
HCVの濃縮および精製。スクロース密度勾配超遠心分離分析を、Hellerら(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.102,2579−2583に記載される通りに行った。2つの偽(mock)の感染T162cm2フラスコまたは2つのHCV感染T162cm2フラスコ由来のプールした上清を、細胞破片を除去するために4,000rpmにて5分間遠心分離し、次いで、L8−80M超遠心分離器(Beckman Instruments,Palo Alto,CA)においてSW28ローターを使用して28,000rpmにて4時間にわたって、20%スクロースのクッションによってペレットにした。そのペレットを、プロテアーゼインヒビター(Roche Applied Science,Indianapolis,IN)を含む1mlのTNE緩衝液(50mMのTris・HCl(pH8)、100mMのNaCl,1mMのEDTA)に再懸濁し、20%〜60%のスクロース勾配(12.5mLの総容量)上にのせ、そしてSW41Tiローター(Beckman Instruments)において120,000×gで16時間にわたって4℃にて遠心分離した。1.3mLの画分を、その勾配の上部から回収した。その画分を、HCV RNAを検出するために定量的RT−PCRによって分析した。各画分の感染価を決定するために、各画分のアリコートを、DMEM媒体において、1:10、1:100、1:1000および1:10000に希釈し、そして上に記載されるようにHuh7.5.1細胞において力価決定した。全ての分析物について、偽の感染Huh−7.5.1細胞上清を、並行して分析した。
【0173】
ウェスタンブロット分析。ウェスタンブロット分析による細胞内HCVタンパク質の検出を、Kapadia,S.B.,Brideau−Andersen,A.&Chisari,F.V.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.に記載される通りに行った。HCVコア(C7−50)に対する抗体を、Affinity Bioreagents(Golden,CO)から得た。Anti−NS3ウサギ抗体(MS15)は、Dr.Michael Houghton(Chiron Corporation,Emeryville,CA)からの贈答品であった。
【0174】
CD81特異的抗体およびE2特異的抗体による感染の遮断。組換えヒトモノクローナル抗E2抗体は、ファージディスプレイによって組換えHCV遺伝子型1a E2タンパク質(GenBankアクセッション番号M62321)に対してスクリーニングしたcDNA発現ライブラリー(HCV患者の単核細胞から調製した)に由来した。その抗体を、連続的に希釈し、そして250マイクロリットルの容量で、1時間にわたって37℃にて15,000ffuのJFH−1ウイルスと一緒にプレインキュベートした。そのウイルス抗体混合物を、24ウェルプレート(Corning)において3時間にわたって37℃にて45,000個のHuh−7.5.1細胞に感染させるために使用した。
【0175】
1mg/mLの濃度におけるマウスモノクローナル抗ヒトCD81抗体5A6(Levyら(1998)Annu.Rev.Immunol.16,89−109)を、連続的に希釈(1:2000,1:200,1:20)し、そして50μLの容量で、96ウェルプレートに接種(seed)した104個のHuh−7.5.1細胞と一緒に1時間にわたって37℃にてプレインキュベートした。次いで、細胞に、0.3のmoiにおいて3時間にわたって37℃にて、感染性JFH−1上清を接種(inoculate)した。抗体の存在下における感染の効率を、定量的RT−PCRおよび免疫蛍光によって感染後3日間モニタリングした。
【0176】
インターフェロン処理。サブコンフルエント(subconfluent)なHuh−7.5.1細胞を、0.3のmoiにおけるJFH−1ウイルスによる接種の前に、5IU/mL、50IU/mLおよび500IU/mLのヒトIFNα−2aまたはヒトIFNγ(PBL Biomedical Lab,Piscataway,NJ)によって6時間処理した。その接種材料を、37℃におけるインキュベーションの3時間後に除去し、そして示された用量のIFNを補充した新鮮なDMEMを、その細胞に添加した。感染の効率を、定量的RT−PCRによって72時間後にモニタリングした。
【0177】
(実施例2:HCV RNAによってトランスフェクトされた肝細胞癌培養細胞における感染性HCV粒子の産生)
この実施例は、HCVネガティブHuh−7.5由来細胞株(本明細書中でHuh−7.5.1と称される)が、HCV RNAによってトランスフェクトされるか、またはHCV RNAトランスフェクト細胞由来の上清と一緒に培養される場合に、感染性HCV粒子が、効率的に産生されることを示す。
【0178】
上に記載したように、Huh−7.5.1細胞を、I/5A−GFP−6細胞からHCV−GFPレプリコンを取り除くことによってHuh−7.5 GFP−HCVレプリコン細胞株I/5A−GFP−6(Moradpour(2004)J.Virol.78,7400−7409)から得た。これを行うために、I/5A−GFP−6レプリコン細胞を、100IU/mLのヒトインターフェロンγ(IFNγ)の存在下で3週間培養した。これは、その細胞からI/5A−GFP−6レプリコンを根絶し、それによってHuh−7.5.1細胞を産生した。HCVレプリコンのクリアランスを、G418感受性(そのHCVレプリコンは、ネオマイシン耐性遺伝子を含んでいた)およびHCV特異的な定量的RT−PCR分析によって確認した。
【0179】
HCV RNAによってトランスフェクトしたHuh−7.5.1肝細胞癌細胞による感染性HCV粒子の産生。第1のセットの実験において、10μgのインビトロ転写されたゲノムJFH−1 RNAを、エレクトロポレーションによってHuh−7.5.1細胞に送達した。次いでトランスフェクト細胞を、実験全体を通してサブコンフルエントな培養物を維持するために、必要な場合(通常は、約3〜4日毎)に継代した。選択した間隔にて、全RNAを、トランスフェクトHuh−7.5.1細胞から単離し、そしてHCV RNAのレベルを、HCV特異的な定量的RT−PCRによって決定した。NS5Aタンパク質発現をまた、免疫蛍光によってモニタリングし、そして感染性ウイルスの放出を、トランスフェクト細胞上清の力価決定によって決定した。
【0180】
トランスフェクション後2日目に、おそらく、投入(input)RNAと細胞内のHCV複製によって産生されたRNAとの組合せを反映する、1μgの細胞RNAあたり1.3×107コピーのHCV RNAを検出した(図1A)。次いで、HCV RNAレベルは、減少し、トランスフェクション後8日目に1μgの細胞RNAあたり1.6×106コピーの最小レベルに到達した(図1A)。しかし、重要なことに、細胞内HCV RNAレベルは、その後、増加し始め、トランスフェクション後14日目に、1μgの全RNAあたり107コピーより多い最大レベルに到達し、そしてこれらのレベルは、この実験を26日目に終了するまで維持された(図1A)。これらの結果は、HCVが、トランスフェクトHuh−7.5.1細胞中で活発に複製していることを示した。この仮説は、トランスフェクション後における複製能力のないJFH−1 RNAゲノムの迅速な消失によって支持される(図1B)。
【0181】
興味深いことに、NS5Aに対する免疫蛍光染色は、トランスフェクト細胞培養物におけるNS5Aポジティブ細胞の%が、5日目における2%(図2A)から24日目におけるほぼ100%(図2B)まで増加したことを示した。これらの結果は、HCV RNAの増幅と一致し、そしてこれらの結果は、さらにHCVトランスフェクト細胞が選択的増殖の利点を獲得したこと、またはHCVがその培養物内のトランスフェクトされていない細胞に拡散したことのいずれかを支持した。
【0182】
JFH−1トランスフェクトHuh−7.5.1細胞が感染性ウイルスを放出していたか否かを決定するために、ナイーブHuh−7.5.1細胞に、上記トランスフェクション実験の間の異なる時点において回収した上清を接種した。接種後3日目の免疫蛍光染色は、培養物中のNS5Aポジティブ細胞(図2C)を示しただけでなく、その上清を連続的に希釈した場合に、その感染がNS5Aポジティブ細胞の分離した病巣をもたらした(図2D)ことも示した。したがって、トランスフェクション後の異なる時点で回収した上清における1mlあたりのフォーカス形成単位(ffu/mL)を、決定できた。この型の上清力価決定を、図1Aに記載したトランスフェクション実験に対して行い、そしてその上清力価決定は、垂直のバーによって示される。感染性ウイルスは、トランスフェクション後3日目の培養培地において検出され(80ffu/mL)、次いでその感染性ウイルスは、細胞内JFH−1 RNAの増幅を伴って増加し、トランスフェクション後21日目に最大の4.6×104ffu/mLに到達した。
【0183】
まとめると、これらの結果は、ゲノムJFH−1 RNAによってトランスフェクトされたHuh−7.5.1細胞が、HCV複製を支援し得るだけでなく、感染性HCV粒子を産生し得ることを示す。特に、同様の結果を、JFH−1 RNAを代替的なトランスフェクション方法(すなわち、リポソーム;図1C)によってHuh−7.5.1細胞に送達した場合に得た。
【0184】
トランスフェクションによるHCVウイルスの増殖。さらなる実験を、JFH−1トランスフェクト細胞上清に感染した細胞がナイーブHuh−7.5.1細胞に連続的に継代され得る子孫ウイルスを産生するか否かを決定するために行った。ナイーブHuh−7.5.1細胞を、2つの独立したトランスフェクション実験から回収した感染性上清によって低い感染多重度(MOI=0.01)にて感染させ、そして感染性ウイルス生成物を、選択した時点において感染細胞上清を力価決定することによってモニタリングした。接種後の第1日目において、感染性粒子を、いずれかのトランスフェクション細胞接種物(inoculate)に感染した細胞の上清において検出できなかった(図3A)。しかし、感染性粒子は、その上清において指数関数的に蓄積し、その後、両方の感染後7日目に少なくとも104ffu/mLの最大力価に到達した(図3A)。したがって、2つの別個の実験における感染後7日以内に、HCVは、ナイーブHuh−7.5.1細胞において100倍を超えて増幅された。同様の動態が、2つの別個のトランスフェクション実験において観察された。
【0185】
感染によって産生された子孫ウイルスがさらに継代され得るか否かを決定するために、ナイーブHuh−7.5.1細胞に、リポフェクション実験のうちの1つから回収したウイルスを感染させた(このリポフェクション実験からのデータを、図3Aに示す)。図3Bに示した通り、この二次感染は、一次感染について見られた動態(図3A)と同様の動態で進行し、再び7日目に最大レベルに到達した。この二次感染の経過は、感染の時間経過にわたって漸増する数のNS5Aポジティブ細胞によって反映され、ほぼ全ての細胞が、7日目においてNS5Aについてポジティブであった(図3C)。これらの結果は、JFH−1ウイルスがJFH−1 RNAのトランスフェクションによって産生され得、そして産生されたビリオンが感染性の検出可能な損失を伴わずにHuh−7.5.1細胞において継代され得ることを示す。さらに、JFH−1ビリオンは、導入後の比較的短い期間において高い割合の細胞に感染する。
【0186】
さらなる実験をまた行い、ここでHCV RNAおよびタンパク質の細胞内レベルをモニタリングした(図3E〜図3F)。この分析は、細胞培養上清における感染性ウイルスの出現が投入HCV RNAの増幅およびその後の翻訳と直接相関することを確認した。同様の結果を、Huh−7細胞に関して得た(図3G)。
【0187】
要約すると、トランスフェクションによって細胞上清において産生されたウイルスは、ナイーブHuh−7細胞またはナイーブHuh−7.5.1細胞へと連続的に継代され得る。感染性上清は、ナイーブHuh−7細胞またはナイーブHuh−7.5.1細胞に、低い多重度(MOI=0.01)で感染し得る。上記ウイルスは、上記ナイーブ細胞において伝播し得、そして一次感染と同様の動態で子孫ウイルスを産生し得る。さらに、感染によって産生された子孫ウイルスは、感染性の検出可能な損失を伴わずにナイーブ細胞へとさらに継代され得る。したがって、インビトロ感染系の重要な特性は、トランスフェクションによって上記細胞上清において産生されるウイルスは、ナイーブHuh−7細胞またはナイーブHuh−7.5.1細胞へと連続的に継代され得る。
【0188】
HCV感染は、抗E2抗体によって阻害される。HCV表面糖タンパク質(E1/E2)シュードタイプウイルス(pseudotyped virus)は、Bartoschら(2003)J.Exp.Med.197,633−642;Hsuら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,7271−7276に記載される。これらのHCV表面糖タンパク質(E1/E2)シュードタイプウイルスを使用した先の研究は、E1および/またはE2がウイルス吸着に必要とされる細胞レセプターとの相互作用を媒介することを示唆した。そのような相互作用がインビトロでのHCV感染に必要とされるか否かを検証するために、中和実験が、抗E2抗体を使用して行われ、この実験において、上記JFH−1ウイルスを、感染前に3時間にわたって37℃にて、HCV E2に特異的な組換えヒトモノクローナル抗体の系列希釈物またはアイソタイプのネガティブコントロール抗体の系列希釈物と一緒にプレインキュベートした。
【0189】
100μg/mLの抗E2抗体の存在下でJFH−1ウイルス(moi=0.3)に感染したHuh−7.5.1細胞は、同量のアイソタイプのコントロール抗体の存在下で感染した細胞と比較して5倍低い細胞内HCV RNAレベルを有することが見出された(図4A)。抗E2抗体によるHCV感染の阻害は、免疫蛍光によって決定されるようなNS5Aポジティブ細胞における減少によってさらに反映された(データを示さない)。抗E2抗体の力価決定は、10μg/mLの抗体が感染後3日目における細胞内HCV RNAの50%の減少に必要とされたことを示した(図4A)。これらの結果は、この系におけるインビトロHCV感染がウイルスエンベロープE2タンパク質によって部分的に媒介されるという結論と一致する。
【0190】
HCV感染は、抗CD81抗体によって阻害される。HCV E1/1E2を発現するシュードタイプウイルスを使用した先の研究はまた、HCV E2とCD81との間の相互作用がウイルスの進入に重要であることを示唆している(Zhangら(2004)J.Virol.78,1448−1455)。CD81がこのHCV感染系において必要とされるか否かを決定するために、抗CD81抗体で前処理したナイーブHuh−7.5.1に、JFH−1ウイルスを0.3のmoiにて感染させ、そして感染後3日目に分析した。細胞内HCV RNAレベルは、用量依存的様式で減少した。特に、コントロール抗体で処理した細胞と比較して、HCV RNAの50倍の減少が、50μg/mLの抗CD81抗体を使用した場合に観察された(図4B)。
【0191】
感染性HCV JFH−1粒子の生理学的特性。分泌性の感染性HCVビリオンの密度を試験するために、非感染Huh7.5.1細胞およびHCV感染Huh7.5.1細胞から回収した上清を、スクロース勾配遠心分離に供した。勾配画分を、遠心分離後に回収し、そしてHCV RNAの存在および感染性について分析した(図5)。最大の感染価(1.25×104ffu/mL)は、画分5に存在し、そしてHCV RNAのピークと一致した。ピーク感染性画分の約1.105g/mLの見かけの密度は、患者の血清から単離したHCVビリオンについて先に報告されたこと(Hijikataら(1993)J.Virol.67,1953−1958;Trestardら(1998)Arch.Virol.143,2241−2245)と一致した。これらのデータは、組換えJFH−1ウイルスの密度がヒトから単離されたHCVの密度と同様であることを示す。
【0192】
(JFH−1 HCVのインビトロでの向性)
JFH−1ウイルスによる感染がHuh−7.5.1細胞に限定されるか否かを決定するために、肝細胞株(Huh−7およびHepG2)のパネルおよび非肝細胞株(HeLa細胞、HEK293形質転換B細胞、HL−60形質転換B細胞、U−937形質転換B細胞およびEBV−形質転換B細胞)のパネルに感染させる試行を、行った。感染後3日目におけるウイルスNS5Aタンパク質に対する免疫蛍光染色によって決定された通り、Huh−7.5.1細胞のほかに、Huh−7細胞のみが、HCV感染に対して許容性であった(データを示さない)。
【0193】
Huh−7.5.1細胞とHuh−7細胞との間の感染効率において量的な差が存在したか否かを決定するために、両方の細胞株を、並行して感染させた。図6に示されるように、感染したHuh−7細胞の上清への感染粒子の放出は、Huh−7.5.1細胞による粒子産生と比較して遅延されたようであった。それにもかかわらず、Huh−7細胞は、8日目および10日目に同様の量の感染性粒子を産生した。細胞内のHCV RNAの増幅における同様の遅延した動態がまた、Huh−7細胞において観察された(図7)。これらの結果は、Huh−7細胞がHuh−7.5.1細胞と同様の量の子孫ウイルスを産生し得るが、遅延した動態を伴うことを示す。
【0194】
本明細書中に報告した結果は、JFH−1トランスフェクトHuh−7.5.1細胞またはJFH−1感染Huh−7.5.1細胞が、JFH−1コンセンサスcDNAクローンからの感染性ウイルスのレスキュー(rescue)を可能にするHCV感染についての単純であるが頑強な細胞培養系を構成することを示す。したがって、本明細書中に示されるように、JFH−1 RNAのHuh−7由来細胞へのトランスフェクションは、生存可能なJFHウイルスの回復を可能にし、このJFHウイルスは、次いで連続的に継代され得、そして感染ベースの実験のために使用され得る。印象的であることは、上記ウイルスの系列希釈物による感染は、産生されるHCVを定量的に力価決定することを可能にする感染細胞病巣の形成をもたらしたことであった。
【0195】
したがって、感染後24時間以内における上清からの投入ウイルスの消失は、ウイルス粒子がこの時間枠内に細胞に進入し得たことを示す。感染性ウイルス力価がこれらの検出されていないレベルから104ffu/mL〜105ffu/mLまで上昇した場合、NS5Aポジティブ細胞の数もまた、増加し、このことは、上記ウイルスが新規の細胞に拡散していたことを示す(図3C)。重要なことには、ナイーブHuh−7.5.1細胞に継代される場合、トランスフェクト細胞および感染細胞の両方によって産生されたウイルスは、約22時間のHCV倍加時間を有する同じ感染動態を示した。この倍加時間は、感染した患者(Buhkら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:14416−21)およびチンパンジー(Neumannら(1998)Science 282:103−107)において先に報告された6時間〜8時間よりも長いが、技術的要因および生物学的要因が、この矛盾の原因であり得る。例えば、より早期の推定値は、感染した個体の血清において検出されたHCVゲノム等価物の数に基づいており、現在の研究において観察されるような感染価に基づいていなかった。
【0196】
ウイルス表面糖タンパク質E2に対する抗体がJFH−1ウイルスの感染性を減少させたという事実は、ウイルスの吸着および進入のプロセスがこの系において研究され得ることを示唆する。この主張と一致して、Huh−7由来細胞のHCV感染は、CD81(広範に特徴付けられた推定上のHCVレセプター)に対する抗体によって阻害された(図4)。
【0197】
したがって、JFH−1ウイルスの向性は、ほぼHuh−7由来細胞株に限定されるようである。先の研究は、HepG2細胞、HeLa細胞およびHEK293細胞がサブゲノムJFH−1レプリコンの支援を補助することを示している。Blightら(2000)Science 290,1972−1975;Katoら(2001)J.Med.Virol.64,334−339;Dateら(2004)J.Biol.Chem.279,22371−22376を参照のこと。しかし、HepG2細胞、HeLa細胞およびHEK293細胞は、上に記載したようにJFH−1ビリオンに感染されなかった。対照的に、HCVに適合していないHuh−7細胞は、JFH−1ウイルスに感染し易いことが見出された(図6)。Huh−7細胞におけるウイルス増幅は、若干ゆっくりであったが、Huh−7細胞は、最終的に、Huh−7.5.1細胞において達成されたウイルス力価に匹敵するウイルス力価をもたらした。
【0198】
Huh7.5細胞は、RIG−Iにおける不活性化変異を含み(Neumannら(1998)Science 282,103−107)、RIG−Iは、細胞の二本鎖RNA感知機構の重要な成分である(Tanakaら(2005)Intervirology 48,120−123)。HCV感染はウイルスの複製および/または拡散を一過性に遅らせるHuh−7細胞における二本鎖RNA抗ウイルス防御経路を誘導し得ることが、明らかである。HCVがHuh−7細胞に存在する制限を最終的に克服し、そしてHuh−7.5.1細胞によってもたらされるものと同様の力価に到達するという事実は、1つ以上のウイルスがコードする機能(例えば、NS3、NS5A)の発現が細胞内の抗ウイルス防御を遮断し得るか、または無効にし得ることをさらに示唆する。しかし、HCV感染は、外因性に添加されたインターフェロンの効果に対して感受性のままであった;IFNαおよびIFNγの両方は、Huh−7.5.1細胞のJFH−1ウイルス感染を予防した(図8)。興味深いことに、これらのインビトロでの観察は、臨床的に見られる観察(この観察において、インターフェロン療法は、上記ウイルスウイルスをIFN(そのウイルスが誘導する)の存在下において存続させるためにそのウイルスが進化した機構にかかわらず、幾人かの患者においてウイルス力価を減少させ得る)と似ているようである。
【0199】
したがって、HCV感染の頑強な細胞培養モデルを、確立し、このモデルにおいて、感染性HCVが、産生され得、そしてナイーブ細胞に連続的に継代され得る。
【0200】
(実施例3:HCVペプチドは、C型肝炎ウイルスを阻害する)
上で記載される通り、Huh−7細胞およびHuh−7.5.1細胞に、HCV遺伝子型2a JFH−1クローンによって産生されたウイルスをインビトロで感染させ得る。この実施例は、配列番号6を有するHCVペプチド、配列番号8を有するHCVペプチド、配列番号12を有するHCVペプチド、配列番号13を有するHCVペプチド、配列番号14を有するHCVペプチド、配列番号24を有するHCVペプチド、配列番号27を有するHCVペプチド、配列番号30を有するHCVペプチド、配列番号32を有するHCVペプチド、配列番号43を有するHCVペプチド、配列番号44を有するHCVペプチド、配列番号47を有するHCVペプチド、配列番号48を有するHCVペプチドおよび配列番号53を有するHCVペプチドが、上に記載されたHCV感染のこの細胞培養モデルを使用して測定されるように、HCV感染を強力に阻害することを示した。他のペプチドは、HCV感染の良好な阻害を示した。有効なインヒビターであるこれらのHCV由来合成ペプチドは、HCVポリタンパク質の構造領域および非構造領域の両方に由来する。
【0201】
遺伝子型1a(H77)(配列番号1)の完全なHCVポリタンパク質を網羅する441個の重複するペプチドのペプチドライブラリーを、試験した。上記ペプチドは、約18アミノ酸長であり、11個の重複するアミノ酸を有した。上記ペプチドライブラリーは、NIH AIDS Research and Reference Reagent Program(カタログ番号7620、ロット番号1)によって提供された。
【0202】
HCV感染に対する抗ウイルス活性を示すペプチドを同定するために、上記ペプチドライブラリーを、HCV病巣減少アッセイ(focus reduction assay)によってスクリーニングした。上記ペプチドを、最終濃度10mg/mLで100%のDMSOにおいて再構成し、そして−20℃で保存した。ペプチドストック溶液を、50フォーカス形成単位(ffu)のHCVを含む完全DMEM増殖培地において約20μMの最終濃度まで1:200で希釈した。上記ウイルス−ペプチド混合物を、96ウェルプレート中の1ウェルあたり8000個の細胞の密度にてHuh−7.5.1細胞に移した、37℃にて4時間時間にわたる吸着の後、その接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、その細胞に、120μLの新鮮な増殖培地を積層し、そしてそれを、37℃にてインキュベートした。3日間の培養後、その細胞を、パラホルムアルデヒドによって固定し、そしてHCV非構造タンパク質NS5Aに対する抗体によって免疫染色した。HCV病巣の数を、蛍光顕微鏡検査において数え、そしてその結果を、ペプチド処理を伴わないが、溶媒である0.5%のDMSOを含む偽(mock)の百分率(%)として示す。
【0203】
これらのアッセイの結果を、図9および以下の表に示す。
【0204】
【表3−1】
【0205】
【表3−2】
441個のペプチドのうち、382個は、HCV感染に対する効果を有さなかったか、またはHCV感染を20%未満で遮断した(表3に示さない)。41個のペプチドが、わずかにHCV感染を約2倍〜5倍阻害した。4個のペプチドが、HCV感染を5倍〜10倍阻害した。14個のペプチドが、10倍より大きくHCV感染を阻害した。特に、HCV感染は、配列番号6、8、12、13、14、24、27、30、32、43、44、47、48および53のペプチドによって顕著に阻害された(90〜100%)。Huh−7.5.1細胞をこれらのペプチドと一緒にインキュベートした場合、毒性の形跡は検出されなかった。これらの結果は、ウイルスの生活環における1つ以上の工程を改変または阻害し得るペプチドインヒビターを同定する。さらに、本発明に従って、これらのペプチドは、抗ウイルス組成物およびHCV感染を阻害するための方法において使用され得る。感染を90%よりも大きく阻害したペプチドを、さらなる分析のために選択した。
【0206】
HCV感染に対する選択したペプチドの阻害効果を正確に定量するために、細胞内HCV RNAを、ペプチド処理を行った場合およびペプチド処理を行わなかった場合において、感染後にリアルタイムRT−QPCRによって測定した。ペプチドストック溶液を、1:100に希釈し、そして等量のウイルス上清と混合(トランスフェクション後18日目のウイルス調製から伝播した)して、約20μMの最終濃度にした。次いで、ペプチドまたは0.5%のDMSO溶媒コントロールを伴うウイルスを、Huh−7.5.1細胞に0.1の感染多重度(MOI)にて感染させるために使用した。37℃にて4時間にわたる吸着の後、接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、その細胞に、120μLの新鮮な増殖培地を積層し、そしてそれを、37℃にてインキュベートした。示された時点において、全細胞RNAを、グアニジンチオシアネート法によって単離した。HCV RNA転写物レベルを、プライマー5’−TCTGCGGAACCGGTGAGTA−3’(センス、配列番号89)および5’−TCAGGCAGTACCACAAGGC−3’(アンチセンス、配列番号90)を用いてリアルタイムRT−QPCRによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。結果を、以下の表に要約する。
【0207】
【表4−1】
【0208】
【表4−2】
感染性の階層に基づいて、ほとんどの活性ペプチドに、上の表に示される通り、感染性の階層におけるそれらの位置を反映するように数値表示(numerical designator)を再び割り当てた。
【0209】
(実施例4:N末端切断ペプチド1およびC末端切断ペプチド1の分析)
ペプチド#1(配列番号43)の抗ウイルス活性を規定するために、ペプチド1の一連のN末端切断物およびC末端切断物の抗ウイルス活性を、病巣減少アッセイを使用し、そして記載したように細胞内HCV RNAの減少を測定することによって分析した。
【0210】
高度に精製したペプチド(95%を超える純度)を、これらの研究のために使用した。全てのペプチドを、A&A Labs,LLC(San Diego,CA)によって予め標識されたワング(wang)樹脂においてフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)化学を使用して合成した。上記ペプチドを、Symphonyマルチプルペプチド合成機(multiple peptide synthesizer)(Protein Technologies Inc,Tucson,AZ)において合成した。次いで、粗ペプチドを、精製し、そして逆相Gilson HPLCシステム(Gilson,Inc.Middleton,WI)によって分析した。使用したカラムは、20mmのビーズ径および250mmの長さを有するC18カラム(Grace Vydac,Hesperia,California)であった。溶媒系は、30分間にわたって5%〜70%の直線勾配を有するH2Oおよびアセトニトリル溶媒系であった。質量スペクトル分析を、PE Sciex API−100質量分析計によって行った。これは、合成されたペプチドの分子量を確認した。ペプチド濃度を、発色団残基(トリプトファンまたはチロシン)の消衰係数を使用して決定した(トリプトファン=5560AU/ミリモル/mLおよびチロシン1200=AU/ミリモル/mL)。計算を、式:1mLあたりのペプチドのmg=(A280×DF×MW)/eを使用して行い、ここでA280は、1−cmセルでの280nMにおける溶液の実際の吸光度であり、DFは、希釈率(dilution factor)であり、MWは、ペプチドの分子量であり、そしてeは、280nMにおける各発色団のモル吸光係数であった。
【0211】
以下の表に要約した結果は、1〜4アミノ酸残基のC末端切断を有するペプチドが抗ウイルス活性を保持したことを示す。N末端からのわずか2アミノ酸の除去は、抗ウイルス活性を破壊した。
【0212】
【表5】
(実施例5:ペプチド1の抗HCV活性)
ペプチド#1の抗ウイルス効果の持続期間を調べるために、Huh−7.5.1細胞に、18μMにおける単一用量のペプチド#1と一緒に、HCVをMOI=0.1にて感染させた。37℃にて4時間後、そのウイルス−ペプチド接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、その細胞に、120μLの新鮮な増殖培地を積層し、そしてそれを、37℃にてインキュベートした。細胞を、コンフルエンシー(confluency)に到達した時に、6の比で分割し、そして11日間にわたって維持した。示された時点において、全細胞RNAを、グアニジンチオシアネート法によって単離した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイムRT−QPCRによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。その結果(図10A)は、ペプチド1がHCV感染を持続的に予防することを示す。
【0213】
ペプチド#1が進行中の感染を廃絶し得るか否かを決定するために、Huh−7細胞に、最初にHCVをMOI=0.1にて感染させた。37℃にて4時間にわたる吸着の後、そのウイルス接種材料を、除去した。次いでその細胞を、増殖培地によって2回洗浄し、そしてその細胞に、18μMにおけるペプチド#1またはコントロールとしての0.5% DMSOのいずれかを含む120μLの新鮮な培地を積層し、そしてそのペプチドを、その後、培養培地中で維持した。その細胞を、37℃にてコンフルエンシーまでインキュベートし、その時点でそれらを、1:4の比で分割した。分割の際、細胞懸濁物の一部分を、RNA分析に供した。全細胞RNAを、グアニジンチオシアネート法によって単離した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイムRT−QPCRによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。並行して、細胞を、HCV E2タンパク質に対する抗体によって免疫染色し、そしてHCV E2ポジティブ細胞の数を、蛍光顕微鏡下で数えた。その結果(図10B)は、感染の4時間後においてペプチド#1を添加すること、および培養培地においてペプチド#1を維持することが、ウイルス増幅の最初のラウンドに対して効果を有さなかったことを示す。なぜならば、ウイルス感染価および細胞内のウイルスRNAは、上記細胞を4日目に分割するまで、全ての群において同じであったからである。しかし、上記細胞を分割した各時点において培養物に上記ペプチドを添加することによって、さらなるウイルス増幅(四角)を、上清の感染価(三角)を迅速かつ顕著に減少させることにより予防した。
【0214】
ペプチド#1の半有効濃度(EC50)を決定するために、ペプチドストック溶液(DMSO中の3.6mM)を、DMSOにおいて連続的に2倍に希釈した。次いで、各希釈からのペプチドのアリコートを、完全増殖培地において1:100に希釈し、そして等量のウイルス上清と混合した。次いで、そのウイルス−ペプチド混合物を、Huh−7.5.1細胞に感染(MOI=0.1)させるために使用した。37℃にて4時間にわたる吸着の後、そのウイルス−ペプチド接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、その細胞に、120μLの新鮮な増殖培地を積層し、そしてそれを、37℃にて3日間インキュベートした。細胞を、溶解し、そしてRNA分析に供した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイムRT−QPCRによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。HCV感染の阻害を、ペプチド処理と溶媒コントロールとの間で細胞内HCV RNA転写物を比較することによって計算した。その結果(図10C〜図10D)は、ペプチド#1のEC50がこれらの条件下で約300nMであることを示す。
【0215】
(実施例6:ペプチド#1の抗ウイルス活性の機構の決定)
ペプチド#1の抗ウイルス活性の機構を規定するために、感染性接種材料の細胞における、ウイルスRNAの細胞による結合/接着/取り込みを予防するペプチド#1の能力を、調べた。Huh−7.5.1細胞を、96ウェルプレート中の1ウェルあたり8000個の細胞で接種した。16時間後、その細胞を、18μMの濃度のペプチドの存在下または非存在下において、HCVと一緒にMOI=0.1にてインキュベートした。37℃にて4時間にわたる吸着の後、そのウイルス−ペプチド接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、溶解し、そしてRNA分析に供した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT−QPCR)アッセイによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。阻害活性を、ウイルス−ペプチド接種材料に曝された細胞 対 ウイルス−DMSOコントロールに曝された細胞において、細胞が有するHCV RNAの量を比較することによって定量した。その結果(図11A)は、ペプチド1(およびペプチド1と重複するペプチド2)が、ウイルスの結合/接着/取り込みを有意に遮断する一方で、他のペプチドが、このレベルにて活性ではなかったことを示す。
【0216】
作用の機構をさらに規定するために、ペプチド#1を、接種材料の添加の時間に対して異なる時点において細胞に添加した。Huh−7.5.1細胞を、96ウェルプレート中の1ウェルあたり8000個の細胞で接種した。一晩の増殖後、その細胞単一層に、8000ffu/ウェルのHCVを感染させた。ペプチド#1を、以下の3つの異なる時間において18μMの最終濃度まで添加した:1)プレインキュベーション(すなわち、細胞との4時間のインキュベーション(次いで、ウイルス感染前の洗浄が行われる));2)同時インキュベーション(すなわち、ウイルスおよびペプチドが洗浄によって除去された後に4時間にわたってウイルスと同時に起こる);3)インキュベーション後(すなわち、ウイルスを4時間にわたって添加し、次いで細胞を、ウイルスを除去するために洗浄し、そしてペプチドを、添加し、そして実験の期間にわたって維持した)。感染の24時間後および72時間後において、細胞を、溶解し、そしてRNA分析に供した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイムRT−QPCRによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。その結果(図11B)は、上記ペプチドが、そのウイルスと一緒に添加した場合にもっとも有効であり、したがって最も可能性のある作用の機構としてウイルス中和を指向することを示す。
【0217】
ペプチド#1は、HCVビリオンに対して殺ウイルス性(virocidal)であり得るか、またはウイルスと細胞との間の相互作用を遮断し得る。上記機構をさらに解明するために、HCV殺ウイルスアッセイを、行った。簡単にいうと、ペプチド#1を、2×105ffu/mLのHCVを含む完全増殖培地において18μMの最終濃度まで希釈した。そのウイルス−ペプチド混合物を、37℃にて4時間インキュベートした。そのサンプルを、以下の通り、3つの異なるアッセイによって分析した。
【0218】
HCV感染性アッセイにおいて、上記サンプルを、増殖培地において、上記ペプチドがHCV感染に対する阻害効果を有さない濃度までさらに250倍に希釈した。残存する感染性を、その希釈したサンプルをHuh−7.5.1細胞上におくことによって決定し、そして細胞を、72時間後にHCV E2タンパク質に対する抗体によって染色した。その結果(図11C)は、ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションがウイルスの感染性を完全に廃絶することを示す。
【0219】
全HCV RNAアッセイにおいて、全RNAの10μLサンプルを、グアニジンチオシアネート法によって直接単離した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイムRT−QPCRによって測定し、そしてCPEの間にウイルス上清中に放出されたGAPDHのレベルに対して正規化した。結果(図11D)は、ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションが全ウイルスRNA成分を少なくとも3倍減少させることを示し、このことは、ウイルスの溶解を示唆する。
【0220】
スクロース密度勾配を、全HCV RNAおよびHCV感染性に対するペプチド1の抗ウイルス効果がHCV粒子のサブセットに限定されるか否かを調べるために使用した。この方法において、ペプチド処理サンプルおよびコントロールウイルスサンプル(250μL)を、スクロース密度勾配に対して分散(resolve)させ、そして画分を、感染性およびウイルスRNA含量について分析した。勾配を、TNE緩衝液(10mMのTris−HCl(pH8)、150mMのNaCl、2mMのEDTA)中の20%スクロース溶液、30%スクロース溶液、40%スクロース溶液、50%スクロース溶液および60%スクロース溶液の等容量(700μL)段階によって形成した。平衡を、120,000gで4℃にて16時間にわたる超遠心分離(SW41Tiローター、Beckman Instruments,Palo Alto,CA)によって達成した。250μLの15個の画分を、上部から回収し、そしてHCV RNAおよびウイルス感染価の両方について分析した。各画分の密度を、各サンプルにおける100μLアリコートの質量を測定することによって決定した。その結果(図11E)は、ウイルスとペプチドとのプレインキュベーションが全ての画分において感染性を完全に廃絶し、そして全ての画分のウイルスRNA含量を約4〜5倍減少させることを示し、このことは、ウイルスの溶解をさらに示唆する。
【0221】
(実施例7:ペプチド1のL形態とD形態との比較)
L−アミノ酸からなるペプチドは、タンパク質分解を受け易く、そのタンパク質分解は、ペプチドの半減期を短くし、したがってペプチドの生物学的活性を短くし得る。タンパク質分解の可能性を調べるため、そして特定のペプチド−ウイルスタンパク質相互作用が抗ウイルス活性を媒介するか否かを決定するために、ペプチド1を、全てD−アミノ酸を使用して合成し、95%を超える均一性まで精製し、そしてその抗ウイルス活性および血清安定性を、ペプチド#1のL型バージョンの同様に純粋な調製物と比較した。L型ペプチドおよびD型ペプチドの両方を、完全増殖培地(10%のFBS)において1:100に希釈し、そして等容量のウイルス上清と混合した。
【0222】
さらに、L型ペプチドおよびD型ペプチドの血清安定性を比較するために、上記希釈したペプチドを、ウイルス上清と混合する前に、37℃にて、1時間、2時間および4時間インキュベートした。次いで、そのウイルス−ペプチド混合物を、Huh−7.5.1細胞に感染させる(MOI=0.1)ために使用した。37℃にて4時間にわたる吸着の後、そのウイルス−ペプチド接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、その細胞に、120μLの新鮮な増殖培地を積層し、そしてそれを、37℃にて3日間インキュベートした。細胞を、溶解し、そしてRNA分析に供した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイムRT−QPCRによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。その結果(図12A)は、L−ペプチドの抗ウイルス活性の約95%が37℃における10%のFBSにおいて1時間以内に喪失したのに対して、D−ペプチドが同じ条件下で少なくとも4時間にわたって完全に安定であったことを示す。したがって、低い免疫原性および可能な経口バイオアベイラビリティーに加えて、D−アミノ酸からなるペプチドは、増強された血清安定性の潜在的な治療的利益を有する。
【0223】
ペプチド#1のL形態およびD形態の半有効濃度(EC50)を決定するために、ペプチドストック溶液(DMSO中の3.6mM)を、DMSOにおいて連続的に2倍に希釈した。次いで、各希釈物由来のペプチドのアリコートを、完全増殖培地において1:100に希釈し、そして等容量のウイルス上清と混合した。次いで、そのウイルス−ペプチド混合物を、Huh−7.5.1細胞に感染させる(MOI=0.1)ために使用した。37℃にて4時間にわたる吸着の後、そのウイルス−ペプチド接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、その細胞に、120μLの新鮮な増殖培地を積層し、そしてそれを、37℃にて3日間インキュベートした。細胞を、溶解し、そしてRNA分析に供した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイムRT−QPCRによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。HCV感染の阻害を、ペプチド処理と溶媒コントロールとの間で細胞内HCV RNA転写物を比較することによって計算した。その結果(図12B〜図12C)は、ペプチド1のL形態およびD形態のEC50値が実質的に同一であることを示す。
【0224】
(実施例8:ペプチドの毒性)
ペプチドの細胞傷害性を、ATCC MTTアッセイキット(カタログ番号30−1010K)において提供されるプロトコルに基づくMTT細胞傷害アッセイによって測定した。簡単にいうと、96ウェルプレート中の1ウェルあたり5000個〜10,000個の細胞を、接種した。一晩の増殖後、20μLの連続的に2倍に希釈したペプチドを加えた100μLの新鮮な媒体を、添加した。ペプチドを含まない媒体を、未処理のコントロールとして少なくとも3個のウェルに添加した。次いで、その細胞を、37℃、5% CO2にて72時間インキュベートした。このインキュベーションの後、1/10容量のMTT溶液(PBS中の5μg/mL)を、各ウェルに添加し、そしてその細胞を、インキュベーターに戻した。2時間後、その媒体を、除去し、150μLのDMSOを、紫色の沈殿物であるホルマザンを溶解するために添加し、そしてそのプレートを、150rpmにて10分間にわたって振盪した。670nMにおけるバックグランドを減算した570nmにおける吸光度は、細胞死の信頼できる基準である。個々のペプチドの細胞傷害性(LD50)を、50%の細胞死を引き起こしたペプチド濃度として定義した。その結果(図13A)は、ペプチド1のL形態およびD形態のLD50値が実質的に同一である(それぞれ、3.8μMおよび3.7μM、FBSを伴わない;ならびに26.7および36.8μM、FBSを伴う)ことを示す。
【0225】
新鮮なヒト血液(EDTAによって処理した)を、上清およびバフィーコートを除去するために1000gにて10分間遠心分離した。次いで、赤血球を、PBSにおいて2回洗浄し、そして16%のFBSを伴う場合および16%のFBSを伴わない場合において8%の最終濃度まで再懸濁した。ペプチドの2倍系列希釈物を、96ウェルマイクロタイタープレート中で60μLのPBSにおいて調製し、そしてFBSを伴う場合およびFBSを伴わない場合において、60μLの懸濁したヒト赤血球を、添加した。そのプレートを、37℃にて1時間インキュベートした。このインキュベーションの後、120μLのPBSを、各ウェルに添加し、そしてそのプレートを、1000gにて5分間遠心分離した。上清の100μLのアリコートを、新規の96ウェルマイクロタイタープレートに移した。ヘモグロビンの放出を、マイクロプレートELISAリーダーを使用し、414nMにおける吸光度を測定することによってモニタリングする。そのプレートにおいて、0%および100%の溶血を、それぞれ、PBSおよび0.1%のTriton X−100において決定する。%溶血を、式:[(ペプチド溶液におけるA414nm−PBSにおけるA414nm)/(0.1%のTriton X−100におけるA414nm−PBSにおけるA414nm)]×100に従って決定する。
【0226】
その結果(図13B)は、血清の存在下で試験した場合、ヒト赤血球に対するL−ペプチドおよびD−ペプチドのLC50値が、互いに同様であり、そしてインビトロでの肝細胞細胞株に対するそれらのLC50と同様であるであることを示す。重要なことに、両方の細胞型に対するLC50値は、一貫して各ペプチドについてのEC50値よりも50〜100倍高い。
【0227】
ペプチド1、ペプチド2およびペプチド3のインビボ細胞傷害性の予備的な測定(表4を参照のこと)の通り、3匹のマウスの群(BALB/cマウス、7週齢、約23g)に、200μLのPBS(注射前に3分間にわたって14,000rpmで回転させた)中の92μgのL型ペプチド1(約4mg/kg)をそれぞれ注射した。コントロール群において、3匹のマウスの各々に、5%のDMSOを含む200μLのPBSを与えた。そのマウスを、注射後の最初の3時間の間の急性毒性についてモニタリングした。結果を、以下の表に要約する。
【0228】
【表6】
外見、活動または行動における変化は、観察されなかった。次いで、そのマウスを、0日目、3日目、5日目、7日目および10日目において秤量した。ペプチドを注射したマウスは、コントロールと同じ速度で体重が増加した。
【0229】
(実施例9:ペプチド1の物理的特性は、その抗ウイルス活性と相関する)
ペプチド1(配列番号43)の二次構造を、cti.itc.virginia.edu/〜cmg/Demo/wheel/wheelApp.html(最後に2006年8月15日に訪れた)においてオンラインで利用可能であるへリックス車輪図アプレット(helical Wheel Applet)のツールを使用して分析した。得られたへリックス車輪図(図14A)は、ペプチド1が疎水性面および親水性面の両方を有する両親媒性であることを示す。
【0230】
ペプチド1の二次構造をまた、Avivモデル62DS CD分光計(Aviv Associates Inc.,Lakewood,N.J.)を使用し、円偏光二色性(CD)分光学を使用して分析した。ペプチドのCDスペクトルを、25℃にて1mm路程のセルを使用して測定した。1サンプルあたり3回の走査を、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)において190〜260nMの波長範囲にわたって行った。データを、60nM/分の走査速度によって0.1nM間隔にて回収し、そして平均モル楕円率[q]で得た。ペプチド濃度は、50μMであった。アンホトロピックなα−へリックスの非常に特徴的なスペクトルが、ペプチド1のL形態およびD形態について観察された(図14B)。さらに、ダンシル化は、ペプチド1のアンホトロピックなα−へリックス構造を増強する(図14C)。したがって、本発明のペプチドは、そこに共有結合されたダンシル部分を有し得る。
【0231】
ペプチド1の種々の切断誘導体(表7)の二次構造を、CD分光学を使用して分析した。結果は、ペプチド1のC末端からの2アミノ酸または4アミノ酸の削除がそのペプチドのα−へリックス構造を排除しなかったこと(図14D)を示す。対照的に、ペプチド1のN末端からの2アミノ酸の削除は、そのペプチドのα−へリックス構造を排除した(図14E)。
【0232】
ペプチド1のこれらの切断された改変体の抗HCV活性をまた、決定した。結果(表7)は、ペプチド1(L形態)の抗ウイルス活性がそのα−へリックス構造と相関することを示す。
【0233】
【表7】
(実施例10:リポソーム−色素放出アッセイ)
リポソーム(Large Unilamellar Vesicles,LUV)を、以下の通りに調製した。10POPC:11DPPC:1POPS:6Cholestrol(Avanti Polar Lipids,Inc.,Alabaster,AL)からなる比率における28mgの総脂質(12mM)を含む脂質混合物を、1mLのクロロホルム、1mLのエーテル、および2mLのスルホローダミンB(10mM Hepes中の100mM、pH7.2;SulfoB,Molecular Probes)に溶解した。その混合物を、Branson 2210水浴超音波処理器を使用して10分間にわたって4℃にて超音波処理した。有機溶媒を真空Buchi Rotavapor R−114を使用して除去した後、その脂質を、2mLのスルホローダミンBに再懸濁した。その混合物を、発泡が止まるまでエバポレート(vaporate)した。その脂質小胞を、Mini−Extruder(Avanti Polar Lipids,Inc.,Alabaster,AL)を使用して0.8μm、0.4μm、および0.2μmのポリカーボネート濾過膜の積み重ねを通して8回繰り返し押し出すことによってサイジングした。スルホローダミンBを搭載されたリポソームを、Sephadex G−25カラムにおいて封入されていないスルホローダミンBから分離した。
【0234】
色素放出アッセイを、Aminco−Bowman Series 2 Luminescence Spectrometer(Thermo Electron Corporation,Waltham,MA)において行った。10マイクロリットルのリポソームを、滅菌したキュベット中で室温にて978μLのHepes緩衝液で120μMの最終濃度まで希釈した。そのサンプルを、535nMの波長で励起させ、そして発光を、585nMにてモニタリングした。60秒間の平衡後、10μLのペプチドを、上記キュベットに添加し、そして膜破裂の動態を、スルホローダミンB蛍光の増加によってモニタリングした。ペプチドの添加によって放出されたスルホローダミンBの%を、以下の式:放出されたスルホローダミンBの%=100×(F−Fo)/(F100−Fo)を使用して計算し、ここでFは、上記ペプチドによって達成された蛍光強度であり、Foは、ペプチドの添加の際に得られた基礎的な蛍光強度、そしてF100は、25μLの10% Triton X−100の添加によって得られた100%のスルホローダミンB放出に対応する蛍光強度である(図15A)。
【0235】
表7中のペプチドを、このアッセイにおいて試験した。結果(図15B)は、ペプチド1の種々の誘導体の抗ウイルス活性がリポソーム色素放出を引き起こす能力と相関することを示す。したがって、ペプチド1の抗ウイルス活性は、以下の表に要約される通り、α−へリックス構造およびリポソーム色素放出と相関する。
【0236】
【表8】
(実施例11:抗ウイルス活性および一次構造)
ペプチド1の抗ウイルス活性がその一次アミノ酸配列に依存するか否かを決定するために、ペプチド1由来の4種の誘導体ペプチドを、95%を超える純度に合成した。アミノ酸の同じ組成を有する4種の誘導体は、(1)ペプチド1の配列を逆転したもの(レトロ−ペプチドとも称される);(2)スクランブルされた疎水性アミノ酸;(3)スクランブルされた親水性アミノ酸;および(4)アスパラギン酸残基(D)がプロリン残基(P)によって置換された誘導体を含んだ。上記ペプチドの抗ウイルス活性を、上に記載したように以下の3つのペプチド濃度においてHCV病巣減少アッセイによって調べた:18μM、6μMおよび2μM。
【0237】
以下の表に要約される結果は、ペプチド1の抗ウイルス活性が、α−へリックス構造と相関するが、一次アミノ酸配列と相関しないことを示す。
【0238】
【表9】
要約すると、合成HCVペプチドライブラリーをスクリーニングすることによって、効率的にHCV感染を阻害し得る13個のペプチドが、同定された。例えば、NS5A(NS5A−1975)の膜アンカードメインに由来するペプチド1は、単一用量のこのペプチドが、細胞傷害の形跡を伴わずに289nMのEC50によってHCV感染を完全に遮断したので、非常に強力である。抗ウイルス効果は、感染後少なくとも11日目に関して明白であった。ペプチドは、ウイルスと一緒に細胞に添加される場合、最も活性であった。ペプチドとウイルスとのプレインキュベーションは、ウイルスの接着および感染性を有意に減少させ、このことは、NS5A−1975の抗ウイルス活性が、そのウイルスと直接的に相互作用し、そしてそのウイルスを脱安定化することを示唆する。そのペプチドのD−アミノ酸形態は、完全に活性であり、そしてそのペプチドのD形態およびL形態は、溶液中の両親媒性のα−へリックス構造を示し、そして人工リポソームの透過を誘導する。重要なことに、一連のN末端切断NS5A−1975ペプチドおよびC末端切断NS5A−1975ペプチドの抗ウイルス活性は、それらの膜透過活性および両親媒性のα−へリックス構造と完全に相関する。対照的に、NS5A−1975は、水疱性口内炎ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスおよびボルナ病ウイルスを含む数種の他のエンベロープRNAウイルスに対する効果を有さなかった。したがって、ペプチド1は、ウイルスを細胞外で不活化することによってHCV感染を遮断する、強力なHCV由来の合成α−ヘリックスペプチドである。これらの結果は、NS5A−1975がHCV感染に対する新規の治療ストラテジーを示し得ることを示唆する。
【0239】
(実施例12:VSV感染に対するペプチドの効果)
ペプチド#1の抗ウイルス活性がHCVに対して特異的であるか否かを決定するために、同様の実験を、他のエンベロープウイルス(例えば、水疱性口内炎ウイルス(VSV))に対して行った。2つのアッセイを、VSVに対するペプチド#1の抗ウイルス活性を試験するために使用した。
【0240】
感染の遮断。ペプチド1がVSV感染を遮断するか否かを調べるために、18μMの最終濃度におけるペプチド1および1pfu/mL〜10,000pfu/mLのVSVを、Huh−7細胞に対して同時に添加した。並行して、ペプチドおよびHCV(10,000ffu/mL)を、コントロールとして細胞に添加した。37℃にて4時間にわたる吸着の後、そのウイルス−ペプチド接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、その細胞に、120μLの新鮮な増殖培地を積層し、そしてそれを、37℃にて3日間インキュベートした。VSV感染およびHCV感染を、それぞれ、ウイルスの細胞変性効果(CPE)、およびHCV E2タンパク質に対する抗体による免疫染色によって評価した。
【0241】
殺ウイルス(virocidal)活性。ペプチド1がVSVに対する殺ウイルス(virucidal)活性を有するか否かを決定するために、ペプチド1を、2×105pfu(ffu)/mLのVSVまたはHCVを含む完全増殖培地において18μMの最終濃度まで希釈した。次いで、そのウイルス−ペプチド混合物を、37℃にて4時間インキュベートした。次いで、VSVウイルス力価およびHCVウイルス力価を、系列希釈によって決定し、そして、それぞれ、ウイルスの細胞変性効果(CPE)、およびHCV E2タンパク質に対する抗体による免疫染色によって評価した。
【0242】
その結果(図8)は、ペプチド1が、VSV感染を遮断せず、そしてVSVに対する殺ウイルス活性を有さないことを示す。
【0243】
(実施例13:2型デング熱感染に対するペプチドの効果)
以下の実験を、ペプチドが2型デング熱感染を阻害することを決定するために行った。
【0244】
酵素結合イムノソルベント検定法。Vero細胞(80,000個の細胞/ウェル/ml)を、24ウェルプレートにおいて感染の24時間前に接種した。細胞を、漸増濃度のペプチド(またはコントロールとしてのDMSO)の存在下において2型デング熱(Vero細胞に由来する)に曝した。ウイルスおよびペプチドを、インキュベーション全体を通して除去した(細胞を、洗浄しなかった)。感染を、感染したVero細胞の上清中に放出された2型デング熱カプシドの量を測定するELISAを使用して、5日後に分析した。
【0245】
蛍光病巣アッセイ:Vero細胞を、96ウェルプレートにおいて感染前24時間にわたって接種した。細胞を、漸増濃度のペプチド(またはコントロールとしてのDMSO)の存在下において2型デング熱に曝した。ウイルスおよびペプチドを、感染の2時間後に洗い流した。上清を、感染後3日毎に回収し、そしてその上清を、蛍光病巣アッセイのために、新鮮なVero細胞に添加した。新規に感染したVero細胞を、3日後に4%ホルムアミドによって固定した。次いで、細胞を、デング熱Env抗体によって染色し、次いでAlexa−fluor色素に結合体化した二次抗体によって染色した。病巣を、蛍光顕微鏡を使用して数えた。
【0246】
結果を、以下の表および図17に要約する。
【0247】
【表10】
表10および図17に示す通り、デング熱感染は、本発明のペプチドによって用量依存的様式で阻害された。本質的に、デング熱ウイルス感染の100%の阻害は、20μMの濃度において観察された(図17)。
【0248】
細胞内FACSアッセイ:Vero細胞を、6ウェルプレートにおいて感染前24時間にわたって接種した。細胞を、漸増濃度のペプチド(またはコントロールとしてのDMSO)の存在下において2型デング熱に曝した。ウイルスおよびペプチドを、感染の2時間後に洗い流した。細胞を、感染後3日目に細胞内染色のために採取した。細胞を、適切なアイソタイプコントロール抗体、デング熱Env抗体、デング熱カプシド抗体またはチューブリン抗体によって染色した。細胞を、FACSによって分析した。
【0249】
20μMのペプチド濃度を使用した場合の結果を、表11に示す。1.25μM〜20μMについての結果を、図18に示すグラフにおいて要約する。
【0250】
【表11】
表11および図18に示す通り、本発明のペプチドは、デング熱ウイルス感染を用量依存的様式で阻害する。本質的に、デング熱ウイルス感染の100%の阻害は、20μMの濃度において観察された(図18)。
【0251】
蛍光病巣アッセイ。Vero細胞を、96ウェルプレートにおいて感染前24時間にわたって接種した。細胞を、漸増濃度のペプチド(またはコントロールとしてのDMSO)の存在下において2型デング熱に曝した。ウイルスおよびペプチドを、感染の2時間後に洗い流した。上清を、感染後3日毎に回収し、そして蛍光病巣アッセイのために、新鮮なVero細胞に添加した。新規に感染したVero細胞を、3日後に4%ホルムアミドによって固定した。次いで、細胞を、デング熱エンベロープタンパク質に対する抗体によって染色し、次いでAlexa−fluor色素に結合体化した二次抗体によって染色した。病巣を、蛍光顕微鏡を使用して数えた。
【0252】
図19に示される結果は、本発明のペプチドがデング熱ウイルス感染を強力に阻害することをさらに確認する。本質的に、デング熱ウイルス感染の100%の阻害は、20μMの濃度において観察された(図19)。
【0253】
(実施例14−ペプチド1は、西ナイルウイルス感染に対して強力な抗ウイルス活性を有する)
この研究において、西ナイルウイルス(WNV)(フラビウイルス属)に対するペプチド1の活性を、調べた。A549細胞に、102PFU/mL〜105PFU/mLのWNV(New York株)を、0.5% DMSOまたはペプチド1(0.5% DMSO中の最終濃度18μM)の存在下で感染させた。37℃におけるインキュベーションの3日後、その細胞を、固定し、そしてWNVタンパク質を検出するために免疫ペルオキシダーゼ染色に供した。結果(図20)は、DMSOによって処理した、105PFU/mLを伴う細胞単一層がほぼ完全に破壊され、そしてより低い力価のウェル中の細胞全てがWNVタンパク質を発現したことを示す。対照的に、ペプチド処理細胞における単一層は、インタクトであり、そしてWNVタンパク質は、ほとんど検出されないか、または全く検出されなかった。特に、WNVタンパク質の染色強度は、ウイルス接種材料の用量にかかわらず、感染していないネガティブコントロールウェルと同じであった。これらの結果は、ペプチド1(配列番号43)がWNV感染に対する強力な抗ウイルス活性を有することを示す。
【0254】
(文献)
1.Hoofnagle,J.H.(2002)Hepatology 36,S21−29。
2.Kanto,T.,Hayashi,N.,Takehara,T.,Tatsumi,T.,Kuzushita,N.,Ito,A.,Sasaki,Y.,Kasahara,A.&Hori,M.(1999)J.Immunol.162,5584−5591。
3.Auffermann−Gretzinger,S.,Keeffe,E.B.&Levy,S.(2001)Blood 97,3171−3176。
4.Hiasa,Y.,Horiike,N.,Akbar,S.M.,Saito,I.,Miyamura,T.,Matsuura,Y.&Onji,M.(1998)Biochem.Biophys.Res.Commun.249,90−95。
5.Alter,H.J.&Seeff,L.B.(2000)Semin.Liver Dis.20,17−35。
6.Thimme,R.,Oldach,D.,Chang,K.M.,Steiger,C.,Ray,S.C.&Chisari,F.V.(2001)J.Exp.Med.194,1395−1406。
7.Takaki,A.,Wiese,M.,Maertens,G.,Depla,E.,Seifert,U.,Liebetrau,A.,Miller, J.L.,Manns,M.P.&Rehermann,B.(2000)Nat.Med.6,578−582。
8.Lechner,F.,Wong,D.K.,Dunbar,P.R.,Chapman,R.,Chung,R.T.,Dohrenwend,P.,Robbins,G.,Phillips,R.,Klenerman,P.&Walker,B.D.(2000)J.Exp.Med.191,1499−1512。
9.Logvinoff,C.,Major,M.E.,Oldach,D.,Heyward,S.,Talal,A.,Balfe,P.,Feinstone,S.M.,Alter,H.,Rice,C.M.&McKeating,J.A.(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101,10149−10154。
10.Shoukry,N.H.,Sidney,J.,Sette,A.&Walker,C.M.(2004)J.Immunol.172,483−492。
11.Thimme,R.,Bukh,J.,Spangenberg,H.C.,Wieland,S.,Pemberton,J.,Steiger,C.,Govindarajan,S.,Purcell,R.H.&Chisari,F.V.(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99,15661−15668。
12.Bukh,J.(2004)Hepatology 39,1469−1475。
13.Ikeda,M.,Yi,M.,Li,K.&Lemon,S.M.(2002)J.Virol.76,2997−3006。
14.Lohmann,V.,Korner,F.,Koch,J.,Herian,U.,Theilmann,L.&Bartenschlager,R.(1999)Science 285,110−113。
15.Gale,M.,Jr.(2003)Hepatology 37,975−978。
16.Katze,M.G.,He,Y.&Gale,M.,Jr.(2002)Nat Rev Immunol 2,675−687。
17.Dubuisson,J.&Rice,C.M.(1996)J.Virol.70,778−786。
18.Ye,J.,Wang,C.,Sumpter,R.,Jr.,Brown,M.S.,Goldstein,J.L.&Gale,M.,Jr.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,15865−15870。
19.Kapadia,S.B.&Chisari,F.V.(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.102,2561−2566。
20.Lohmann,V.,Korner,F.,Dobierzewska,A.&Bartenschlager,R.(2001)J.Virol.75,1437−1449。
21.Blight,K.J.,Kolykhalov,A.A.&Rice,C.M.(2000)Science 290,1972−1975。
22.Kato,T.,Date,T.,Miyamoto,M.,Furusaka,A.,Tokushige,K.,Mizokami,M.&Wakita,T.(2003)Gastroenterology 125,1808−1817。
23.Kato,T.,Furusaka,A.,Miyamoto,M.,Date,T.,Yasui,K.,Hiramoto,J.,Nagayama,K.,Tanaka,T.&Wakita,T.(2001)J.Med.Virol.64,334−339。
24.Date,T.,Kato,T.,Miyamoto,M.,Zhao,Z.,Yasui,K.,Mizokami,M.&Wakita,T.(2004)J.Biol.Chem.279,22371−22376。
25.Kato,T.,Date,T.,Miyamoto,M.,Zhao,Z.,Mizokami,M.&Wakita,T.(2005)J.Virol.79,592−596。
26.Wakita,T.,Kato,T.,Date,T.&Miyamoto,M.(2004)11th International Symposium on Hepatitis C&related Viruses,Heidelberg,Germany。
27.Wakita,T.,Pietschmann,T.,Kato,T.,Date,T.,Miyamoto,M.,Zhao,Z.,Murthy,K.,Habermann,A.,Krausslich,H.G.,Mizokami,M.,Bartenschlager,R.&Liang,T.J.(2005)Nat.Med.in press。
28.Graham,F.L.,Smiley,J.,Russell,W.C.&Nairn,R.(1977)J.Gen.Virol.36,59−74。
29.Gey,G.O.,Coffman,W.D.&Kubicek,M.T.(1952)Cancer Res.12,264−265。
30.Knowles,B.B.,Howe,C.C.&Aden,D.P.(1980)Science 209,497−499。
31.Moradpour,D.,Evans,M.J.,Gosert,R.,Yuan,Z.,Blum,H.E.,Goff,S.P.,Lindenbach,B.D.&Rice,C.M.(2004)J.Virol.78,7400−7409。
32.Krieger,N.,Lohmann,V.&Bartenschlager,R.(2001)J.Virol.75,4614−4624。
33.Chomczynski,P.&Sacchi,N.(1987)Anal.Biochem.162,156−159。
34.Kapadia,S.B.,Brideau−Andersen,A.&Chisari,F.V.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,2014−2018。
35.Heller,T.,Saito,S.,Auerbach,J.,Williams,T.,Moreen,T.R.,Jazwinski,A.,Cruz,B.,Jeurkar,N.,Sapp,R.,Luo,G.&Liang,T.J.(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.102,2579−2583。
36.Levy,S.,Todd,S.C.&Maecker,H.T.(1998)Annu.Rev.Immunol.16,89−109。
37.Blight,K.J.,McKeating,J.A.&Rice,C.M.(2002)J.Virol.76,13001−13014。
38.Bartosch,B.,Dubuisson,J.&Cosset,F.L.(2003)J.Exp.Med.197,633−642。
39.Hsu,M.,Zhang,J.,Flint,M.,Logvinoff,C.,Cheng−Mayer,C.,Rice,C.M.&McKeating,J.A.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,7271−7276。
40.Zhang,J.,Randall,G.,Higginbottom,A.,Monk,P.,Rice,C.M.&McKeating,J.A.(2004)J.Virol.78,1448−1455。
41.Hijikata,M.,Shimizu,Y.K.,Kato,H.,Iwamoto,A.,Shih,J.W.,Alter,H.J.,Purcell,R.H.&Yoshikura,H.(1993)J.Virol.67,1953−1958。
42.Trestard,A.,Bacq,Y.,Buzelay,L.,Dubois,F.,Barin,F.,Goudeau,A.&Roingeard,P.(1998)Arch.Virol.143,2241−2245。
43.Bartenschlager,R.,Kaul,A.&Sparacio,S.(2003)Antiviral Res.60,91−102。
44.Bukh,J.,Pietschmann,T.,Lohmann,V.,Krieger,N.,Faulk,K.,Engle,R.E.,Govindarajan,S.,Shapiro,M.,St Claire,M.&Bartenschlager,R.(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99,14416−14421。
45.Neumann,A.U.,Lam,N.P.,Dahari,H.,Gretch,D.R.,Wiley,T.E.,Layden,T.J.&Perelson,A.S.(1998)Science 282,103−107。
46.Tanaka,J.,Katayama,K.,Kumagai,J.,Komiya,Y.,Yugi,H.,Kishimoto,S.,Mizui,M.,Tomoguri,T.,Miyakawa,Y.&Yoshizawa,H.(2005)Intervirology 48,120−123。
47.Cormier,E.G.,Tsamis,F.,Kajumo,F.,Durso,R.J.,Gardner,J.P.&Dragic,T.(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101,7270−7274。
48.Sumpter,R.,Jr.,Loo,Y.M.,Foy,E.,Li,K.,Yoneyama,M.,Fujita,T.,Lemon,S.M.&Gale,M.,Jr.(2005)J.Virol.79,2689−2699。
49.Yoneyama,M.,Kikuchi,M.,Natsukawa,T.,Shinobu,N.,Imaizumi,T.,Miyagishi,M.,Taira,K.,Akira,S.&Fujita,T.(2004)Nat Immunol 5,730−737。
50.Mbow,M.L.&Sarisky,R.T.(2004)Trends Biotechnol.22,395−399。
【0255】
本明細書中で参照または言及された全ての特許および刊行物は、本発明が関連する分野の当業者のレベルを示し、そしてそれぞれのそのような参照された特許または刊行物は、あたかも、その全体が個別に参考として援用されているかまたはその全体が本明細書中に示されているかのように、本明細書によって参考として援用される。出願人は、任意のそのような列挙された特許または刊行物からの任意および全ての資料および情報を本明細書に物理的に組み込む権利を保有する。
【0256】
本明細書中に記載される特定の方法および組成物は、好ましい実施形態を代表し、例示であり、そして本発明の範囲に対する限定として意図されない。他の対象、局面、および実施形態は、本明細書の検討の際に当業者が想起し、そして特許請求の範囲によって規定されるような本発明の精神の範囲内に包含される。種々の置換および改変が本発明の範囲および精神から逸脱することなく本明細書中に開示された本発明に対してなされ得ることは、当業者にとって容易に明らかである。本明細書中に十分に例示として記載された本発明は、必須であるとして本明細書中に具体的に開示されない任意の要素または制限の非存在下において実施され得る。本明細書中に十分に記載された方法およびプロセスは、異なる順序の工程において実施され得、そしてその方法およびプロセスは、本明細書中に示される工程または特許請求の範囲における工程の順序に必ずしも制限されない。本明細書中添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうではないことを明確に示さない限り複数形を含む。したがって、例えば、「抗体(an antibody)」への言及は、複数のそのような抗体(例えば、抗体の溶液または一連の抗体調製物)などを含む。いかなる場合においても、本明細書中に具体的に開示される特定の実施例または実施形態あるいは方法に限定されると解釈されることはない。いかなる場合においても、あらゆる審査官あるいは特許商標局の当局者または職員によって行われたあらゆる陳述が出願人による応答書面において具体的に、かつ明確に留保または限定を伴わずに採用されない限り、本特許は、そのような陳述によって限定されると解釈される可能性はない。
【0257】
使用された用語および表現は、説明の用語として使用され、かつ限定の用語として使用されず、示され、そして記載された特徴の任意の等価物またはその部分を除外する意図は、そのような用語および表現の使用において存在せず、種々の改変は特許請求されるような本発明の範囲内であり得ることが、認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態によって具体的に開示されているが、本明細書中に開示された概念の必要応じた特徴、改変およびバリエーションが、当業者によって用いられ得ること、ならびにそのような改変およびバリエーションは、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲内であると見なされることが、理解されるべきである。
【0258】
本発明は、本明細書中に広範かつ一般的に記載されている。包括的な開示内に含まれるより狭義の種およびより包括的ではないグループ分けの各々はまた、本発明の部分を形成する。これは、削除される材料が本明細書中に具体的に記載されるか否かにかかわらず、類概念から任意の対象を除去する但し書きまたは消極的な限定を伴う本発明の一般的な説明を含む。
【0259】
他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内である。さらに、本発明の特徴および局面が、マーカッシュ群に関して記載される場合、当業者は、本発明もまた、それによってマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関して記載されることを認識する。
【図面の簡単な説明】
【0260】
【図1】図1Aは、感染性C型肝炎ビリオンがゲノムJFH−1 RNAによるトランスフェクション後に産生されることを示す。細胞内RNA増幅は、JFH−1 RNAの産生を検出するために使用された。10マイクログラムのインビトロで転写されたJFH−1 RNAは、4x106個のHuh−7.5.1細胞中にエレクトロポレーションされた。トランスフェクト細胞および上清は、トランスフェクション後の示された日に回収された。全細胞RNAは、JFH−1発現についてリアルタイム定量的RT−PCRによって分析され、そして1μgの全RNAあたりのゲノム等価物(線)として示された。上清の感染価は、ナイーブHuh−7.5.1細胞において決定され、そして1mLあたりのフォーカス形成単位(ffu)(バー)として示された。図1Bは、JFH−1 ウイルスゲノムがトランスフェクション後に活発に複製され、インビトロで転写された野生型(wt)JFH−1およびポリメラーゼ変異体(GND)JFH−1の完全長ゲノムRNAがHuh−7.5.1細胞中にエレクトロポレーションされたことをさらに確認する。細胞内HCV RNAは、その後の異なる時点にてモニタリングされた。示される通り、野生型ウイルスRNAは、1日目〜2日目において僅かに増加し、次いで4日目に10倍減少した。次いで細胞内HCV RNAレベルは、1μgの全細胞RNAあたり107コピーを上回って再度上昇し、そしてその実験の残りにわたって維持された。対照的に、ポリメラーゼ−欠損変異体JFH/GND RNAの細胞内レベルは、トランスフェクション後に迅速に数桁減少し、そして20日目に検出不可能になった。これらの結果は、野生型JFH−1 RNAがHuh−7.5.1細胞において活発に複製していたことを示す。図1Cは、ゲノムJFH−1 RNAのHuh−7.5.1細胞へのリポフェクタミントランスフェクション後における、HCV複製および感染性ウイルスの産生の動態を示す。Huh−7.5.1細胞は、JFHクローンRNAを用いて、リポフェクションによってトランスフェクトされ、そして細胞および上清は、それぞれ、その上清中の細胞内HCV RNAおよび感染価を分析するために定期的に回収された。グラフは、HCV RNAの蓄積を、その上清中の1μgの全RNAあたりのGE(線)およびウイルス力価(ffu/mL)(バー)として示す。
【図2】図2A〜図2Dは、ゲノムJFH−1 RNAによるトランスフェクション後の感染細胞の検出を示す。HCV感染は、HCV NS5Aタンパク質の細胞免疫蛍光によって検出された。図2Aは、トランスフェクション後5日目におけるNS5Aの発現を示す。図2Bは、トランスフェクション後24日目におけるNS5Aの発現を示す。図2Cは、JFH−1 RNAトランスフェクトHuh−7.5.1細胞から回収された希釈されていない上清への曝露後の、ナイーブ細胞におけるNS5Aの発現を示す。図2Dは、JFH−1 RNAトランスフェクトHuh−7.5.1細胞から回収された上清の1:10希釈物への曝露後の、ナイーブ細胞におけるNS5Aの発現を示す。NS5A−ポジティブ細胞は、オリジナルにおいて赤色として検出された(オリジナルのいくつかのコピーにおいてより明るく光るスポットとして見られる)。細胞核は、Hoescht色素によって染色された(オリジナルにおいて青色、コピーにおいてより暗いスポット)。
【図3A】図3A〜図3Dは、組織培養細胞におけるHCV感染動態および継代を示す。ナイーブHuh 7.5.1細胞は、培養上清を0.01のMOIにて接種された。接種された細胞由来の上清は、感染後の示された時点において回収され、そして感染性(ffu/mL)について評価された。データは、2回以上の実験の平均をエラーバーを伴って示す。図3Aは、JFH−1ゲノムRNAを用いたエレクトロポレーションによるHuh−7.5.1細胞のトランスフェクションの19日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(円の印)、またはリポフェクションの24日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(菱形の印)を示す。x軸は、上清の接種後の日数で時間を示す。図3Bは、図3A中の菱形の印で示された感染から5日目に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価を示す。図3C〜図3Dは、そのデータが図3Aに示される(菱形の印)感染から5日目に回収された上清を使用する場合、NS5A免疫染色が感染後5日目(図3C)および感染後7日目(図3D)にHuh−7.5.1細胞において増加することを示す。
【図3B】図3A〜図3Dは、組織培養細胞におけるHCV感染動態および継代を示す。ナイーブHuh 7.5.1細胞は、培養上清を0.01のMOIにて接種された。接種された細胞由来の上清は、感染後の示された時点において回収され、そして感染性(ffu/mL)について評価された。データは、2回以上の実験の平均をエラーバーを伴って示す。図3Aは、JFH−1ゲノムRNAを用いたエレクトロポレーションによるHuh−7.5.1細胞のトランスフェクションの19日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(円の印)、またはリポフェクションの24日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(菱形の印)を示す。x軸は、上清の接種後の日数で時間を示す。図3Bは、図3A中の菱形の印で示された感染から5日目に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価を示す。図3C〜図3Dは、そのデータが図3Aに示される(菱形の印)感染から5日目に回収された上清を使用する場合、NS5A免疫染色が感染後5日目(図3C)および感染後7日目(図3D)にHuh−7.5.1細胞において増加することを示す。
【図3C】図3A〜図3Dは、組織培養細胞におけるHCV感染動態および継代を示す。ナイーブHuh 7.5.1細胞は、培養上清を0.01のMOIにて接種された。接種された細胞由来の上清は、感染後の示された時点において回収され、そして感染性(ffu/mL)について評価された。データは、2回以上の実験の平均をエラーバーを伴って示す。図3Aは、JFH−1ゲノムRNAを用いたエレクトロポレーションによるHuh−7.5.1細胞のトランスフェクションの19日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(円の印)、またはリポフェクションの24日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(菱形の印)を示す。x軸は、上清の接種後の日数で時間を示す。図3Bは、図3A中の菱形の印で示された感染から5日目に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価を示す。図3C〜図3Dは、そのデータが図3Aに示される(菱形の印)感染から5日目に回収された上清を使用する場合、NS5A免疫染色が感染後5日目(図3C)および感染後7日目(図3D)にHuh−7.5.1細胞において増加することを示す。
【図3D】図3A〜図3Dは、組織培養細胞におけるHCV感染動態および継代を示す。ナイーブHuh 7.5.1細胞は、培養上清を0.01のMOIにて接種された。接種された細胞由来の上清は、感染後の示された時点において回収され、そして感染性(ffu/mL)について評価された。データは、2回以上の実験の平均をエラーバーを伴って示す。図3Aは、JFH−1ゲノムRNAを用いたエレクトロポレーションによるHuh−7.5.1細胞のトランスフェクションの19日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(円の印)、またはリポフェクションの24日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(菱形の印)を示す。x軸は、上清の接種後の日数で時間を示す。図3Bは、図3A中の菱形の印で示された感染から5日目に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価を示す。図3C〜図3Dは、そのデータが図3Aに示される(菱形の印)感染から5日目に回収された上清を使用する場合、NS5A免疫染色が感染後5日目(図3C)および感染後7日目(図3D)にHuh−7.5.1細胞において増加することを示す。
【図3E】図3E〜図3Fは、HCV感染の間におけるウイルスRNAおよびウイルスタンパク質の産生をさらに示す。Huh−7.5.1細胞は、0.01のMOIにて感染され、そして細胞抽出物は、RNA分析およびタンパク質分析のために、表示された時点において調製された。図3Eは、細胞内HCV RNAの量(線)および上清の感染価(バー)をグラフで示す。図3Fは、電気泳動で分離された細胞タンパク質のウェスタンブロットの画像である。示される通り、細胞内のHCVコアおよびNS3タンパク質は、感染が進行するにつれて蓄積した。
【図3F】図3E〜図3Fは、HCV感染の間におけるウイルスRNAおよびウイルスタンパク質の産生をさらに示す。Huh−7.5.1細胞は、0.01のMOIにて感染され、そして細胞抽出物は、RNA分析およびタンパク質分析のために、表示された時点において調製された。図3Eは、細胞内HCV RNAの量(線)および上清の感染価(バー)をグラフで示す。図3Fは、電気泳動で分離された細胞タンパク質のウェスタンブロットの画像である。示される通り、細胞内のHCVコアおよびNS3タンパク質は、感染が進行するにつれて蓄積した。
【図3G】図3Gは、細胞上清において産生されたHCVウイルスがナイーブHuh−7細胞によって連続的に継代され得ることを示すグラフである。
【図4】図4A〜図4Bは、HCV感染が抗E2抗体および抗CD81抗体によって阻害されることを示す。図4Aは、抗E2抗体の効果を示す。JFH−1ウイルスは、Huh−7.5.1.細胞を接種するために使用される前に、示された濃度の抗E2抗体または関係のないヒトIgG1抗体と一緒に37℃にて1時間プレインキュベートされた。全細胞RNAは、感染後3日目に定量的RT−PCRによって分析された。図4Bは、抗CD81抗体の効果を示す。Huh−7.5.1細胞は、JFH−1ウイルスによる0.3のMOIにおける接種前に、示された濃度の抗ヒトCD81抗体またはコントロールマウスIgG1抗体と一緒に37℃にて1時間プレインキュベートされた。全細胞RNAは、定量的RT−PCRによって感染後3日目に分析された。
【図5】図5は、感染性HCVのスクロース勾配沈降を示す。感染Huh−7.5.1細胞からの上清は、実施例1に記載されるように分画された。画分(1〜9)は、その勾配の上部から回収され、そしてHCV RNAについて定量的RT−PCRによって分析された(線)。各画分の感染性は、力価決定によって決定された(バー)。画分の密度は、g/mLとして示される。
【図6】図6は、Huh−7.5.1細胞およびHuh−7細胞におけるJFH−1 HCV感染の動態を示す。Huh−7.5.1において産生されたウイルスストックは、Huh−7.5.1細胞およびHuh−7細胞に0.01のMOIにて感染させるために希釈された。培養上清は、示された時間において回収され、そして力価決定された。Huh−7.5.1細胞(実線)およびHuh−7細胞(破線)における感染の力価は、ffu/mLとして示される。2つの独立した感染実験の平均値が、示される。
【図7】図7は、細胞内HCV RNAがHuh−7.5.1感染細胞およびHuh−7感染細胞において蓄積することを示す。全RNAは、図6に記載された感染Huh−7.5.1細胞および感染Huh−7細胞から単離された。感染Huh−7.5.1(実線)および感染Huh−7(破線)における細胞内HCV RNAの蓄積は、定量的RT−PCRによって決定された。その結果は、2つの独立した感染(n=2)の1μgの全RNAあたりの平均ゲノム等価物(GE)として示される。
【図8】図8は、インターフェロンによるHCV感染の阻害をグラフで示す。4万5千個のHuh−7.5.1細胞は、プレートされ、そして5IU/mL、50IU/mLおよび500IU/mLのヒトIFNα−2aおよびヒトIFNγによって6時間処理され、次いで同じ用量のIFNの存在下において、組換えJFH−1ウイルスを0.3のMOIにて接種された。そのウイルス接種材料は、4時間後に除去され、そしてその細胞は、インターフェロンと一緒に3日間わたってさらに培養された。その時点で、細胞が、回収され、RNAが、単離され、そして細胞内HCV RNAレベルを決定するために、リアルタイムRT−PCRによって分析された。バーは、コントロール感染において得られたレベルの%として表される細胞内HCV RNAレベルをを示す。その結果は、両方のインターフェロンがHCV感染を効率的に阻害することを示す。
【図9】図9は、HCVポリタンパク質遺伝子型1a(配列番号1を有するH77単離株)に関するペプチドの位置および対応する抗HCV活性を示す。試験された13個のペプチドは、感染性を90%以上阻害した。
【図10A】図10A〜図10Dは、配列SWLRDIWDWICEVLSDFK(配列番号43)を有するペプチド1は、それがHCVと一緒に細胞に添加された場合にHCV感染を持続的に予防し(図10A)、そして進行中のHCV感染を廃絶し(図10B)、300nMのEC50を有すること(図10Cおよび図10D)を、グラフで示す。
【図10B】図10A〜図10Dは、配列SWLRDIWDWICEVLSDFK(配列番号43)を有するペプチド1は、それがHCVと一緒に細胞に添加された場合にHCV感染を持続的に予防し(図10A)、そして進行中のHCV感染を廃絶し(図10B)、300nMのEC50を有すること(図10Cおよび図10D)を、グラフで示す。
【図10C】図10A〜図10Dは、配列SWLRDIWDWICEVLSDFK(配列番号43)を有するペプチド1は、それがHCVと一緒に細胞に添加された場合にHCV感染を持続的に予防し(図10A)、そして進行中のHCV感染を廃絶し(図10B)、300nMのEC50を有すること(図10Cおよび図10D)を、グラフで示す。
【図10D】図10A〜図10Dは、配列SWLRDIWDWICEVLSDFK(配列番号43)を有するペプチド1は、それがHCVと一緒に細胞に添加された場合にHCV感染を持続的に予防し(図10A)、そして進行中のHCV感染を廃絶し(図10B)、300nMのEC50を有すること(図10Cおよび図10D)を、グラフで示す。
【図11A】図11A〜図11Eは、種々の合成ペプチド(図11A)によるHuh−7.5.1細胞へのHCV接着の阻害を示す結果であり;ペプチドは、ウイルスを添加する前に細胞と一緒にプレインキュベートされる場合(「PRE」)または細胞がウイルスに曝された後に添加される場合(「POST」)よりも、そのペプチドがウイルスと一緒に標的細胞に添加される場合(「CO」)に最も有効であり(図11B);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、ウイルスの感染性を完全に廃絶し(図11C);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、合計のウイルスRNA含量を少なくとも3倍減少させ(ウイルスの溶解を示す)(図11D、ここで左のパネルは、HCV RNAを示し、そして右のパネルは、GAPDH RNAを示す);ウイルスとペプチドとのプレインキュベーションは、感染性を完全に廃絶し、そして全ての画分のウイルスRNA含量を約4〜5倍減少させる(E)。
【図11B】図11A〜図11Eは、種々の合成ペプチド(図11A)によるHuh−7.5.1細胞へのHCV接着の阻害を示す結果であり;ペプチドは、ウイルスを添加する前に細胞と一緒にプレインキュベートされる場合(「PRE」)または細胞がウイルスに曝された後に添加される場合(「POST」)よりも、そのペプチドがウイルスと一緒に標的細胞に添加される場合(「CO」)に最も有効であり(図11B);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、ウイルスの感染性を完全に廃絶し(図11C);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、合計のウイルスRNA含量を少なくとも3倍減少させ(ウイルスの溶解を示す)(図11D、ここで左のパネルは、HCV RNAを示し、そして右のパネルは、GAPDH RNAを示す);ウイルスとペプチドとのプレインキュベーションは、感染性を完全に廃絶し、そして全ての画分のウイルスRNA含量を約4〜5倍減少させる(E)。
【図11C】図11A〜図11Eは、種々の合成ペプチド(図11A)によるHuh−7.5.1細胞へのHCV接着の阻害を示す結果であり;ペプチドは、ウイルスを添加する前に細胞と一緒にプレインキュベートされる場合(「PRE」)または細胞がウイルスに曝された後に添加される場合(「POST」)よりも、そのペプチドがウイルスと一緒に標的細胞に添加される場合(「CO」)に最も有効であり(図11B);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、ウイルスの感染性を完全に廃絶し(図11C);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、合計のウイルスRNA含量を少なくとも3倍減少させ(ウイルスの溶解を示す)(図11D、ここで左のパネルは、HCV RNAを示し、そして右のパネルは、GAPDH RNAを示す);ウイルスとペプチドとのプレインキュベーションは、感染性を完全に廃絶し、そして全ての画分のウイルスRNA含量を約4〜5倍減少させる(E)。
【図11D】図11A〜図11Eは、種々の合成ペプチド(図11A)によるHuh−7.5.1細胞へのHCV接着の阻害を示す結果であり;ペプチドは、ウイルスを添加する前に細胞と一緒にプレインキュベートされる場合(「PRE」)または細胞がウイルスに曝された後に添加される場合(「POST」)よりも、そのペプチドがウイルスと一緒に標的細胞に添加される場合(「CO」)に最も有効であり(図11B);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、ウイルスの感染性を完全に廃絶し(図11C);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、合計のウイルスRNA含量を少なくとも3倍減少させ(ウイルスの溶解を示す)(図11D、ここで左のパネルは、HCV RNAを示し、そして右のパネルは、GAPDH RNAを示す);ウイルスとペプチドとのプレインキュベーションは、感染性を完全に廃絶し、そして全ての画分のウイルスRNA含量を約4〜5倍減少させる(E)。
【図11E】図11A〜図11Eは、種々の合成ペプチド(図11A)によるHuh−7.5.1細胞へのHCV接着の阻害を示す結果であり;ペプチドは、ウイルスを添加する前に細胞と一緒にプレインキュベートされる場合(「PRE」)または細胞がウイルスに曝された後に添加される場合(「POST」)よりも、そのペプチドがウイルスと一緒に標的細胞に添加される場合(「CO」)に最も有効であり(図11B);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、ウイルスの感染性を完全に廃絶し(図11C);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、合計のウイルスRNA含量を少なくとも3倍減少させ(ウイルスの溶解を示す)(図11D、ここで左のパネルは、HCV RNAを示し、そして右のパネルは、GAPDH RNAを示す);ウイルスとペプチドとのプレインキュベーションは、感染性を完全に廃絶し、そして全ての画分のウイルスRNA含量を約4〜5倍減少させる(E)。
【図12】図12A〜図12Cは、ペプチド1のD形態が、完全に活性であり、そして増強した血清安定性を示すこと(A)、ならびにペプチド1のL形態およびD形態のEC50が、非常に類似しており、両方とも1μMの範囲にある(それぞれ、BおよびC)ことを示す結果である。
【図13A】図13A〜図13Bは、Huh−7細胞、Huh−7.5.1細胞、HeLa細胞およびHepG2細胞に対するペプチド1のL形態およびD形態の毒性(LD50)(A);ならびにペプチド1のL形態およびD形態の溶血活性(B)を示す結果である。
【図13B】図13A〜図13Bは、Huh−7細胞、Huh−7.5.1細胞、HeLa細胞およびHepG2細胞に対するペプチド1のL形態およびD形態の毒性(LD50)(A);ならびにペプチド1のL形態およびD形態の溶血活性(B)を示す結果である。
【図14A】図14A〜図14Eは、ペプチド1(配列番号43)の両親媒性のα−ヘリックス性を示す。ペプチド1のヘリックス車輪図は、アミノ酸分布が親水性(すなわち極性)面および疎水性(すなわち非極性)面をもたらすことを示す(図14A)。円偏光二色性の結果は、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造(図14B)を示し、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造に対するダンシル化の効果(図14C)を示し、そしてC末端切断を有するペプチド1の改変体(図14D)およびN末端切断を有するペプチド1の改変体(図14E)のα−へリックス構造を示す。これらの切断されたペプチドの配列は、表7に提供される。
【図14B】図14A〜図14Eは、ペプチド1(配列番号43)の両親媒性のα−ヘリックス性を示す。ペプチド1のヘリックス車輪図は、アミノ酸分布が親水性(極性)面および疎水性(または非極性)面をもたらすことを示す(図14A)。円偏光二色性の結果は、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造(図14B)を示し、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造に対するダンシル化の効果(図14C)を示し、そしてC末端切断を有するペプチド1の改変体(図14D)およびN末端切断を有するペプチド1の改変体(図14E)のα−へリックス構造を示す。これらの切断されたペプチドの配列は、表7に提供される。
【図14C】図14A〜図14Eは、ペプチド1(配列番号43)の両親媒性のα−ヘリックス性を示す。ペプチド1のヘリックス車輪図は、アミノ酸分布が親水性(極性)面および疎水性(または非極性)面をもたらすことを示す(図14A)。円偏光二色性の結果は、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造(図14B)を示し、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造に対するダンシル化の効果(図14C)を示し、そしてC末端切断を有するペプチド1の改変体(図14D)およびN末端切断を有するペプチド1の改変体(図14E)のα−へリックス構造を示す。これらの切断されたペプチドの配列は、表7に提供される。
【図14D】図14A〜図14Eは、ペプチド1(配列番号43)の両親媒性のα−ヘリックス性を示す。ペプチド1のヘリックス車輪図は、アミノ酸分布が親水性(極性)面および疎水性(または非極性)面をもたらすことを示す(図14A)。円偏光二色性の結果は、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造(図14B)を示し、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造に対するダンシル化の効果(図14C)を示し、そしてC末端切断を有するペプチド1の改変体(図14D)およびN末端切断を有するペプチド1の改変体(図14E)のα−へリックス構造を示す。これらの切断されたペプチドの配列は、表7に提供される。
【図14E】図14A〜図14Eは、ペプチド1(配列番号43)の両親媒性のα−ヘリックス性を示す。ペプチド1のヘリックス車輪図は、アミノ酸分布が親水性(極性)面および疎水性(または非極性)面をもたらすことを示す(図14A)。円偏光二色性の結果は、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造(図14B)を示し、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造に対するダンシル化の効果(図14C)を示し、そしてC末端切断を有するペプチド1の改変体(図14D)およびN末端切断を有するペプチド1の改変体(図14E)のα−へリックス構造を示す。これらの切断されたペプチドの配列は、表7に提供される。
【図15A】図15A〜図15Bは、一般的なリポソーム放出アッセイ(A)およびペプチド1の種々の切断改変体について得られた結果(B)を示す。これらの切断されたペプチドの配列は、表7に提供される。
【図15B】図15A〜図15Bは、一般的なリポソーム放出アッセイ(A)およびペプチド1の種々の切断改変体について得られた結果(B)を示す。これらの切断されたペプチドの配列は、表7に提供される。
【図16】図16は、ペプチド1が水疱性口内炎ウイルス(VSV)感染を遮断しないことを示すグラフである。
【図17】図17は、ELISAによって検出されるように、配列SWLRDIWDWICEVLSDFK(配列番号43)を有するペプチド2022(ペプチド1)および配列SWLRDIWDWICEVL(配列番号92)を有するペプチド2013が、本質的に100%のデング熱ウイルス感染を阻害することを示すグラフである。配列LRDIWDWICEVLSDFK(配列番号107)を有するペプチド2017は、デング熱ウイルス感染を約84%阻害する僅かに小さい活性を有した。
【図18】図18は、デング熱ウイルス抗原について細胞内で染色された細胞のFACS分析によって検出された、ペプチド2022(ペプチド1)、ペプチド2013、およびペプチド2017によるデング熱ウイルス感染の用量依存的阻害を示すグラフである。示される通り、FACSによって検出されたように、20μMの濃度において、ほぼ100%のデング熱ウイルス感染が、ペプチド2022(ペプチド1)およびペプチド2013によって阻害された。20μMにおけるペプチド2017は、デング熱ウイルス感染を約80%阻害する僅かに小さい活性を有した。
【図19】図19は、免疫蛍光アッセイによって検出されたように、ペプチド2022(ペプチド1)が本質的に100%のデング熱ウイルス感染を阻害することを示すグラフである。ペプチド2017は、デング熱ウイルス感染を約90%阻害する僅かに小さい活性を有した。
【図20】図20は、西ナイルウイルス感染を阻害することにおけるペプチド1の有効性を示すデータである。
【技術分野】
【0001】
(政府による財政支援)
本明細書中に記載された本発明は、認可番号CA108304の下でNational Institutes of Healthによって与えられた米国政府の支援によって行われた。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ウイルス疾患は、処置することが非常に困難であり得る。なぜならば、ウイルスは、哺乳動物細胞に進入し、ここで、ウイルスは、ウイルスタンパク質の転写および翻訳、ならびにウイルスゲノムの複製を含むその機能の多くを行うからである。したがって、ウイルスは、ウイルス感染が進行するに従い、宿主の免疫系からだけではなく、宿主に対して投与された薬剤からも防御される。
【0003】
したがって、有効な抗ウイルス因子は、現在、わずかしかなく、そしてそれらのほとんどは、ウイルスの小さなサブセットに対してのみ有効である。例えば、研究者は、20世紀末に最初の抗ウイルス薬を開発し、そしてその薬物(アシクロビル)は、単純ヘルペスウイルス感染を処置するために、U.S.Food and Drug Administrationによって承認された。現在まで、いくつかの他の抗ウイルス薬剤のみが、ウイルス感染を予防および/または処置するために利用可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、ウイルス感染を処置および予防するための薬剤が、必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、フラビウイルス科のウイルスの感染を阻害するペプチドに関する。驚くべきことに、本発明のペプチドの多くは、溶液中に遊離しているウイルスに対して作用し得、そしてそのウイルスが哺乳動物細胞に感染する機会を有する前に、そのウイルスを阻害し得る。本発明の1つの局面は、C型肝炎ウイルス(Hepatitis C)ポリタンパク質に由来するペプチド(例えば、配列番号4〜61に示される配列を有するペプチド)がフラビウイルス科の他のウイルスからの感染を阻害し得るという発見に関する。
【0006】
1つの実施形態において、本発明は、長さが14個〜50個のD−アミノ酸またはL−アミノ酸の単離されたペプチドを提供し、そのペプチドは、両親媒性のα−へリックス構造およびフラビウイルス科のウイルスに対する抗ウイルス活性を有する。
【0007】
1つの実施形態において、上記ペプチドは、式I〜式V:
【0008】
【化5】
のうちのいずれか1つを含む配列を有し、Xaa1、Xaa4、Xaa5、Xaa8、Xaa11、Xaa12、Xaa15、Xaa16およびXaa18は、個別に各々、極性アミノ酸であり、そしてXaa2、Xaa3、Xaa6、Xaa7、Xaa9、Xaa10、Xaa13、Xaa14、およびXaa17は、個別に各々、非極性アミノ酸である。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、14アミノ酸のペプチド(N末端(terminyl)ペプチド)を式I〜式VのうちのいずれかのペプチドのN末端に結合することによって形成された、融合ペプチドを提供する。上記14アミノ酸のN末端ペプチドは、構造:
【0010】
【化6】
を有し、各Rxは、個別に、極性アミノ酸であり、そして各Ryは、個別に、非極性アミノ酸である。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、12アミノ酸のペプチド(C末端ペプチド)を式VのペプチドのC末端に結合することによって形成された、融合ペプチドを提供する。得られた融合ペプチドは、式VI:
【0012】
【化7】
の構造を有し、
Xaa1、Xaa4、Xaa5、Xaa8、Xaa11、Xaa12、Xaa15、Xaa16、Xaa18、Xaa19、Xaa22、Xaa23、Xaa26、Xaa29、およびXaa30は、個別に各々、極性アミノ酸であり、そして、
Xaa2、Xaa3、Xaa6、Xaa7、Xaa9、Xaa10、Xaa13、Xaa14、Xaa17、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、Xaa27、およびXaa28は、個別に各々、非極性アミノ酸である。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明は、式VIのペプチドのN末端にペプチド結合によって結合された配列番号117の14アミノ酸のN末端ペプチドに対応する配列を有する融合ペプチドを提供する。
【0014】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、上に記載されたペプチドのうちのいずれかの少なくとも14個の隣接したアミノ酸を含むペプチドである。
【0015】
いくつかの実施形態において、非極性アミノ酸は、(1)アラニン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、およびトリプトファン、または(2)バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンおよびトリプトファンからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、極性アミノ酸は、(1)アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ホモシステイン、リジン、ヒドロキシリジン、オルニチン、セリンおよびトレオニン;または(2)アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システインおよびリジンからなる群より選択される。
【0016】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、アルギニン、システイン、グルタメート、セリン、バリン、2個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシンおよび3個のトリプトファン残基からなるアミノ酸組成を有する。例えば、上記ペプチドは、配列番号92または配列番号102のアミノ酸配列を有する。
【0017】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、2個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシンおよび3個のトリプトファン残基からなるアミノ酸組成を有する。例えば、上記ペプチドは、配列番号93または配列番号101のアミノ酸配列を有する。
【0018】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、3個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシンおよび3個のトリプトファン残基からなるアミノ酸組成を有する。例えば、上記ペプチドは、配列番号94または配列番号100のアミノ酸配列を有する。
【0019】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、3個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシン、3個のトリプトファンおよびフェニルアラニン(phenylalamine)の残基からなるアミノ酸組成を有する。例えば、上記ペプチドは、配列番号95または配列番号99のアミノ酸配列を有する。
【0020】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、3個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシン、3個のトリプトファン、フェニルアラニン(phenylalamine)およびリジンの残基からなるアミノ酸組成を有する。例えば、上記ペプチドは、配列番号43および配列番号96〜98のアミノ酸配列を有する。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、配列番号43および配列番号91〜102からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、長さが14個〜50個のD−アミノ酸またはL−アミノ酸であり、そのペプチドは、配列番号43および配列番号91〜102からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、そしてペプチドは、両親媒性のα−へリックス構造を有する。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、配列番号4〜86のうちのいずれかのアミノ酸配列を有するペプチドを提供する。例えば、上記ペプチドは、配列番号6、配列番号8、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号27、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号37、配列番号44、配列番号47、配列番号48および配列番号53のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチドは、D−アミノ酸を含む。他の実施形態において、本発明のペプチドは、L−アミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、ダンシル部分を含む。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、約500nM以下のEC50を有するか、または約400nM以下のEC50を有するか、または約300nMのEC50を有する。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、C型肝炎ウイルスまたは西ナイルウイルスもしくはデング熱ウイルスなどのフラビウイルス属に対して活性である。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、上で考察された本発明のペプチドのうちのいずれかを含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、殺菌剤または膣用クリームである。
【0025】
別の実施形態において、本発明は、上で考察された本発明のペプチドのうちのいずれかと、抗ウイルス因子(例えば、α−インターフェロン、ペグ化インターフェロン、リバビリン、アマンタジン、リマンタジン、プレコナリル(pleconaril)、アシクロビル、ジドブジン、ラミブジン、またはその組合せ)とを含む薬学的組合せを提供する。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、哺乳動物細胞においてウイルス感染を予防するための方法を提供し、その方法は、その細胞と、上で考察された本発明のペプチド、ならびに、そのようなペプチドの1つ以上を含む薬学的組成物または薬学的組合せのいずれか1つ以上とを接触させる工程を含む。いくつかの実施形態において、上記哺乳動物細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態において、上記ウイルスは、C型肝炎ウイルスまたは西ナイルウイルスもしくはデング熱ウイルスなどのフラビウイルス属である。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、哺乳類においてウイルス感染を予防するための方法を提供し、その方法は、その哺乳類に、有効量の上で考察されたペプチドおよび薬学的組成物または薬学的組合せのいずれかを投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記哺乳類は、ヒトである。いくつかの実施形態において、上記ウイルスは、西ナイルウイルスもしくはデング熱ウイルスなどのフラビウイルス属またはC型肝炎ウイルスである。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、体液を回収するための容器と、上で考察される本発明のペプチドの任意の1種以上とを備える製品を提供する。いくつかの実施形態において、上記容器は、回収用バッグ(collection bag)、チューブ、キャピラリーチューブ(capillary tube)またはシリンジである。いくつかの実施形態において、上記容器は、空にされている。いくつかの実施形態において、上記製品はまた、生物学的安定剤(例えば、抗凝固剤、保存剤、プロテアーゼインヒビター、またはその任意の組合せ)を含む。いくつかの実施形態において、上記抗凝固剤は、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸、ヘパリン、シュウ酸塩、フッ化物またはその任意の組合せである。いくつかの実施形態において、上記保存剤は、ホウ酸、ギ酸ナトリウムおよびホウ酸ナトリウムである。いくつかの実施形態において、上記プロテアーゼインヒビターは、ジペプチジルペプチダーゼIVである。いくつかの実施形態において、上記ペプチドおよび/または安定剤は、凍結乾燥される。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、上記容器上に結合または吸着されて、そのペプチドは、その容器中におかれた材料が取り出された後にその容器中に保持される。上記容器上に結合または吸着される場合、上記ペプチドは、依然としてウイルス感染を阻害し得る。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、哺乳類の身体由来のサンプルと、上で考察されたペプチドのいずれか1つ以上とを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、生物学的安定剤をさらに含み、その生物学的安定剤は、いくつかの実施形態において、抗凝固剤、保存剤、プロテアーゼインヒビター、またはその任意の組合せである。いくつかの実施形態において、上記抗凝固剤は、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸、ヘパリン、シュウ酸塩、フッ化物またはその任意の組合せである。いくつかの実施形態において、上記保存剤は、ホウ酸、ギ酸ナトリウムおよびホウ酸ナトリウムである。いくつかの実施形態において、上記プロテアーゼインヒビターは、ジペプチジルペプチダーゼIVである。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、血液製剤(例えば、血漿、血小板、白血球または幹細胞であるが、これらに限定されない)である。
【0030】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ウイルス感染を阻害するペプチドに関する。本発明は、HCVポリタンパク質に由来する特定のペプチド(例えば、配列番号4〜61に示される配列を有するペプチド)がフラビウイルス科のウイルスによる哺乳動物細胞の感染を阻害し得るという発見を含む。本発明はまた、HCV感染を阻害することにおいて非常に有効であるHCVポリタンパク質(配列番号1)由来の13種のペプチドの発見を含む。さらに、本発明は、NS5Aの膜アンカードメイン(NS5A−1975)に由来する「ペプチド1」(配列番号43)がHCVならびにデング熱ウイルスおよび西ナイルウイルスなどのフラビウイルス属に対して特に強力であったという発見を含む。例えば、単一用量のペプチド1は、細胞傷害の形跡を伴わずに289nMのEC50でHCV感染を完全にブロックした。さらに、20μMのペプチド1は、デング熱ウイルス感染を完全に阻害した。
【0032】
したがって、本発明は、フラビウイルス科の1種以上のウイルスによる感染を阻害することにおいて有効であるペプチドを提供する。本発明のペプチドは、例えば、配列番号4〜61に示される配列を有するペプチド、配列番号91〜102に示される配列を有するペプチド、およびα−へリックス構造を形成でき、そして哺乳動物細胞においてウイルス感染を阻害し得る約8アミノ酸〜約50アミノ酸のペプチドを含む。本発明は、抗ウイルスペプチドまたは抗ウイルスペプチドの組合せ、そのような抗ウイルスペプチドを含む種々の組成物および組合せ、ならびにそのようなペプチドを利用して哺乳動物細胞においてウイルス感染を阻害するための方法を提供する。本発明はまた、そのような抗ウイルスペプチドを含む製品を提供する。
【0033】
(C型肝炎ウイルス)
C型肝炎ウイルス(HCV)は、急性肝炎および慢性肝炎および肝細胞癌を引き起こす非細胞障害性の+鎖RNAウイルスである。Hoofnagle,J.H.(2002)Hepatology 36,S21−29。肝細胞は、一次標的細胞であるが、種々のリンパ系集団(特に、B細胞および樹状細胞)もまた、より低いレベルにて感染され得る。Kantoら(1999)J.Immunol.162,5584−5591;Auffermann−Gretzingerら(2001)Blood 97,3171−3176;Hiasaら(1998)Biochem.Biophys.Res.Commun.249,90−95。HCV感染の顕著な特徴は、急性感染の少なくとも70%が持続性へと進行し、慢性化するその傾向である(Hoofnagle,J.H.(2002)Hepatology 36,S21−29)。HCVの慢性化は、しばしば、重要な肝疾患(慢性活動性肝炎、肝硬変および肝細胞癌を含む)に関連する(Alter,H.J.&Seeff,L.B.(2000)Semin.Liver Dis.20,17−35)。したがって、1億7000万人を上回る現在の感染者を有するHCV(同著者)は、拡大する公衆衛生上の懸案事項を代表する。
【0034】
一本鎖HCV RNAゲノムは、約9500ヌクレオチド長であり、そして大きいポリタンパク質をコードする単一のオープンリーディングフレーム(ORF)を有する。上記ポリタンパク質は、約3010アミノ酸〜3033アミノ酸を有する(Q.−L.Choo,らProc.Natl.Acad.Sci.USA 88,2451−2455(1991);N.Katoら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,9524−9528(1990);A.Takamizawaら,J.Virol.65,1105−1113(1991))。
【0035】
HCVの異なる単離株(isolate)についての核酸配列およびアミノ酸配列は、当該分野において、例えば、NCBIデータベース中に見出され得る。ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。HCVポリタンパク質配列の例は、NCBIデータベース中にアクセッション番号NP 671491(gi:22129793)として見出され得る。NP 671491(配列番号1)のアミノ酸配列は、以下の通りである。
【0036】
【化8−1】
【0037】
【化8−2】
NCBIデータベースにおいて見出され得るHCVポリタンパク質アミノ酸配列の別の例は、アクセッション番号BAB32872(gi:13122262)である。ncbi.nlm.nih.gov;KatoらJ.Med.Virol.64:334−339(2001)を参照のこと。このHCVは、劇症肝炎患者から分離され、そしてそのアミノ酸配列(配列番号2)は、以下の通りである。
【0038】
【化9−1】
【0039】
【化9−2】
HCVポリタンパク質アミノ酸配列の別の例は、NCBIデータベース中にアクセッション番号Q9WMX2(gi:68565847)として見出され得る。ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。この配列は、HCVのCon1単離株から得られた。そのアミノ酸配列(配列番号3)は、以下のものである。
【0040】
【化10−1】
【0041】
【化10−2】
【0042】
【化10−3】
HCVポリタンパク質配列のさらなる例が、入手可能である。例えば、C型肝炎ウイルスの台湾単離株は、NCBIデータベースにおいてアクセッション番号P29846(gi:266821)にて入手可能である。ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。
【0043】
感染された細胞において、上記HCVポリタンパク質は、細胞プロテアーゼおよびウイルスプロテアーゼにより複数の部位において切断されて、構造タンパク質および非構造(NS)タンパク質を産生する。成熟非構造タンパク質(NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、およびNS5B)の産生は、2つのウイルスプロテアーゼによって影響を受ける。依然としてあまり特徴付けられていない第1のウイルスプロテアーゼは、NS2−NS3連結にて切断する;第2のウイルスプロテアーゼは、NS3のN末端領域内に含まれるセリンプロテアーゼ(以下、NS3プロテアーゼと称される)であり、そしてその第2のウイルスプロテアーゼは、NS3−NS4A切断部位においてシスで、そして残りのNS4A−NS4B部位、NS4B−NS5A部位、NS5A−NS5B部位についてトランスでの両方で、NS3の下流におけるその後の切断の全てを媒介する。NS4Aタンパク質は、複数の機能(NS3プロテアーゼのための補因子として作用し、そしておそらくNS3および他のウイルスレプリカーゼ成分の膜限局化を補助する)を果たすようである。NS3プロテアーゼとNS4Aとの複合体形成は、全ての部位においてタンパク質分解効率を向上させるプロセシング事象に必要であると考えられる。NS3タンパク質はまた、ヌクレオシドトリホスファターゼ活性およびRNAヘリカーゼ活性を示す。NS5Bは、HCVの複製に関与するRNA依存性RNAポリメラーゼである。
【0044】
HCV非構造(NS)タンパク質は、ウイルス複製に必須の触媒機構を提供すると推定される。NS3の最初の181アミノ酸(ウイルスポリタンパク質の1027位〜1207位)は、HCVポリタンパク質の4つ全ての下流部位をプロセシングするNS3のセリンプロテアーゼドメインを含むことが示されている(C.Linら,J.Virol.68,8147−8157(1994))。
【0045】
HCVは、3個の構造タンパク質(N末端ヌクレオカプシドタンパク質(「コア(core)」と称される)および2個のエンベロープ糖タンパク質「E1」(Eとしても公知である)および「E2」(E2/NS1としても公知である))を有する。HCVタンパク質(E1およびE2を含む)の考察については、Houghtonら(1991)Hepatology 14:381−388を参照のこと。E1タンパク質は、32〜35kDaの化学種(species)として検出され、そして約18Kdaの単一のエンドH−感受性バンドに変換される。対照的に、E2は、免疫沈降の際に複数の化学種の産生と一致する複合体パターンを示す(Grakouiら(1993)J.Virol.67:1385−1395;Tomeiら(1993)J.Virol.67:4017−4026)。HCVエンベロープ糖タンパク質E1およびE2は、共同免疫沈降し得る安定な複合体を形成する(Grakouiら(1993)J.Virol.67:1385−1395;Lanfordら(1993)Virology 197:225−235;Ralstonら(1993)J.Virol.67:6753−6761)。
【0046】
(抗ウイルスペプチド)
1つの実施形態において、本発明は、抗ウイルスペプチドを提供する。抗ウイルスペプチドは、フラビウイルス科のウイルスの感染を予防し得るか、または減少させ得るペプチド(本明細書中で、本発明のペプチドインヒビターまたはペプチド)である。フラビウイルス科のウイルスの例としては、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス、デング熱を引き起こすウイルスおよびC型肝炎ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
フラビウイルス科は、球状のエンベロープウイルスであり、それらは、正の極性の直鎖一本鎖RNAゲノムを有する。フラビウイルス科は、フラビウイルス属、ヘパシウイルス属およびペスチウイルス属を含む。本発明は、フラビウイルス科感染(フラビウイルス属、ヘパシウイルス属およびペスチウイルス属のいずれかに由来する任意のウイルス、ならびにフラビウイルス科の割り当てられていない属のウイルスによって引き起こされる感染を含む)の処置を企図する。例えば、本発明のペプチドは、フラビウイルス属のうちの以下のウイルスによって引き起こされる感染を処置するために使用され得る:ダニ媒介脳炎ウイルス、中央ヨーロッパ型脳炎ウイルス、極東型脳炎(Far Eastern encephalitis)ウイルス、リオブラボー(Rio Bravo)ウイルス、日本脳炎ウイルス、クンジン(Kunjin)ウイルス、マリーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、西ナイル脳炎ウイルス、チュレンリー(Tyulenly)ウイルス、タヤ(Ntaya)ウイルス、ウガンダS(Uganda S)ウイルス、1型デング熱ウイルス、2型デング熱ウイルス、3型デング熱ウイルス、4型デング熱ウイルス、モドック(Modoc)ウイルス、および黄熱病ウイルス。さらに、本発明のペプチドは、ペスチウイルス属のうちの以下のウイルスによって引き起こされる感染を処置するために使用され得る:牛ウイルス性下痢ウイルス1型、牛ウイルス性下痢ウイルス2型、豚コレラ(Hog cholera)(豚コレラ(classical swine fever)ウイルス)、およびボーダー病ウイルス。さらに、本発明のペプチドは、ヘパシウイルス属に分類されるC型肝炎ウイルスによって引き起こされる感染を処置するために使用され得る。その感染もまた本発明のペプチドによって処置され得るフラビウイルス科の割り当てられていない属のウイルスは、以下を含む:GBウイルス−A、GBウイルス−BおよびGBウイルス−C。
【0048】
ペプチドがフラビウイルス科の1種以上のメンバーに対して有する抗ウイルス活性のレベル、およびそのようなペプチドについての適切な投薬量を決定するために、当該分野において公知である方法(本明細書中に記載される方法が挙げられるが、これに限定されない)が、使用され得る。本発明のペプチドの存在下または非存在下におけるウイルス感染は、例えば、本明細書中に記載されるようなウイルスタンパク質に対する抗体を使用したイムノアッセイにより、細胞内のウイルスRNAレベルまたはウイルス病巣の数を決定する事によって評価され得る。ペプチドの抗ウイルス活性はまた、本明細書中に例示されるようなリポソーム放出アッセイを使用して決定され得る。ペプチドは、任意の量(例えば、2倍または2倍よりも大きい)でウイルス感染を阻害し得るか、または減少させ得る場合、抗ウイルス活性を有する。例えば、本発明のペプチドは、2〜5倍、5〜10倍、または10倍よりも大きくHCV感染を阻害し得るか、または減少させ得る。本明細書中で以下に示される通り、表3に示されるペプチドの多く(例えば、配列番号6、8、12、13、14、24、27、30、32、43、44、47、48および53によるペプチドが挙げられる)は、10倍よりも大きくHCV感染を阻害し得る。表3に示される他のペプチド(配列番号21、23、28および37によるペプチドが挙げられる)は、HCV感染を5倍〜10倍阻害し得る。上記ペプチドの残りは、HCV感染を少なくとも2倍阻害し、そしてその残りのペプチドのうちのいくつかは、HCV感染を最大で約5倍まで阻害する。これらのペプチドは、ナノモルレベルおよび低いマイクロモルレベルの濃度でウイルス感染のそのような阻害を示す。
【0049】
本発明のペプチドは、α−アミノ基とα−カルボキシル基との間のアミド結合によって連結されたα−アミノ酸のポリマーである。したがって、本明細書中で使用される場合、用語「アミノ酸」とは、α−アミノ酸をいう。本発明のペプチド中に含まれるアミノ酸は、L−アミノ酸またはD−アミノ酸であり得る。さらに、本発明のペプチドにおいて使用されるアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸であり得る。したがって、本発明のペプチドは、遺伝的にコードされたアミノ酸、天然に存在する遺伝的にコードされていないアミノ酸、または合成アミノ酸から作製され得る。20種の遺伝的にコードされたL−アミノ酸およびコードされていないアミノ酸のいくつかの例に対して本明細書中で使用されるアミノ酸表記は、表1に提供される。
【0050】
【表1−1】
【0051】
【表1−2】
本発明のペプチドは、少なくとも8アミノ酸残基〜約50アミノ酸残基、通常は約14アミノ酸〜40アミノ酸、さらに通常は約35よりも少ないアミノ酸長または約25よりも少ないアミノ酸長を含む。本発明のペプチドは、より大きいペプチドの実質的に全ての活性を依然として維持しつつ、可能な限り小さい。したがって、本発明のペプチドは、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、11アミノ酸長、12アミノ酸長または13アミノ酸長であり得る。さらに、当業者によって選択されるペプチドの長さは、そのペプチドの安定性および/または配列に関連し得る。したがって、例えば、ペプチド1(配列番号43)が、それが約18アミノ酸である場合に最適な抗ウイルス活性を示す一方で、そのC末端からの切断は、5個程度のアミノ酸が削除されるまでペプチド1の抗ウイルス活性を排除しない。それにもかかわらず、配列番号43と異なる配列を有するペプチドは、それらが18アミノ酸よりも長いか、または13アミノ酸よりも短い場合、至適な活性を示し得る。これは、上記ペプチドの二次構造を安定化または改変する配列の違いに起因し得る。さらに、上記ペプチドは、そのペプチドの安定性および活性を増強する因子によって誘導体化され得る。例えば、ペプチドは、そのペプチドの活性および/またはコンフォメーション安定性を改良するために、ダンシル部分の結合によって、または天然に存在しないアミノ酸の組み込みによって改変され得る。非天然アミノ酸およびダンシル部分の使用はまた、プロテアーゼによる切断に対する耐性を提供し得る。2つ以上のペプチドを連結して1つのペプチド構造にすることもまた、特定の場合において望まれ得る。
【0052】
本発明はまた、本発明の抗ウイルスペプチドのペプチド模倣体(peptidomimetic)に関する。ペプチド模倣体は、ペプチド結合を有するペプチドと構造的に同様であるが、当該分野において公知である方法により結合(例えば、−−CH2NH−−、−−CH2S−−、−−CH2−−CH2−−、−−CH=CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH2−−、−−CH(OH)CH2−−、および−−CH2SO−−)によって必要に応じて置換された1つ以上のペプチド結合を有する。したがって、ペプチド模倣体は、鋳型ペプチドの特性と類似する特性を有するペプチドアナログ(例えば、製薬産業において非ペプチド薬物として一般に使用されるもの)である(Fauchere,J.,Adv.Drug Res.,15:29(1986)およびEvansら,J.Med.Chem.,30:1229(1987))。天然ペプチドの実施形態を上回るペプチド模倣体の利点としては、より経済的な生産、より大きい安定性、変化した特異性および増強した薬理学的特性(例えば、半減期、吸収、効力および効能)が挙げられ得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチドのアミノ酸残基は、溶液中で両親媒性のα−へリックス構造を形成し得る。
【0054】
用語「α−へリックス」とは、右回りコイルのコンフォメーションをいう。ポリペプチドにおいて、上記α−へリックス構造は、1個のアミノ酸の骨格N−H基と4残基前のアミノ酸の骨格C=O基との間の水素結合から生じる。α−へリックスは、1回転あたり3.6アミノ酸残基を有する。特定のアミノ酸残基(例えば、アラニン、システイン、ロイシン、メチオニン、グルタメート、グルタミン、ヒスチジンおよびリジン)は、ポリペプチド中のα−へリックス構造の形成に寄与する傾向にある。
【0055】
しかし、α−へリックスの形成はまた、ペプチドが存在する溶液、pHおよび温度に依存する。そうして、本発明に従って、本発明のペプチドは、水溶液中でα−へリックスである。上記水溶液は、例えば、生理学的pH、および/または生理学的な塩を有し得る。一般に、本発明のペプチドの両親媒性のα−へリックス構造は、中等度の温度(例えば、約4℃〜約50℃またはほぼ室温〜ほぼ体温)にて検出される。したがって、例えば、ペプチドのα−へリックス構造は、生理学的温度および生理学的pH値の下で検出される。
【0056】
α−へリックス構造は、当該分野において公知である方法(円偏光二色性分光学(CD)、核磁気共鳴(NMR)、結晶構造決定および旋光分散(ORD)が挙げられるが、これらに限定されない)を使用して検出され得る。
【0057】
本明細書中で使用される場合、語「両親媒性の」は、α−ぺリックスペプチドが親水性(または極性)面および疎水性(または非極性)面を有することを意味し、ここでそのような「面(face)」とは、そのペプチドの長手方向表面をいう。へリックス車輪図(helical wheel)は、α−へリックスペプチドがその長手方向軸で見下ろされる場合に明らかであり(例えば、図14Aに示される)、この長手方向軸を囲むへリックス車輪図の1つの側は、親水性(または極性)残基からなり、そしてへリックス車輪図の他方の側は、疎水性(または非極性)残基からなる。したがって、本発明のペプチドが、親水性表面にある場合、そのペプチドの親水性面は、その親水性表面と接触する傾向にある。他方で、疎水性表面と向かい合っている場合、本発明のペプチドの疎水性面は、その疎水性表面と接触する傾向にある。
【0058】
両親媒性のα−へリックスペプチドにおいて、そのα−へリックスの上記親水性面および上記疎水性面は、したがって、存在するアミノ酸の性質に基づいて同定され得る。α−へリックスの上記親水性面は、上記疎水性面上に存在する数よりも大きい数の親水性アミノ酸、荷電したアミノ酸および/または極性アミノ酸からなる。両親媒性のα−へリックスの上記疎水性面は、脂質二重層への挿入を容易にする疎水性アミノ酸および/または非極性アミノ酸からなる。上記疎水性面は、膜への挿入を可能にする十分な数の非極性アミノ酸が存在する限り、1個以上の親水性アミノ酸または極性アミノ酸を有し得る。一般に、上記α−へリックスの親水性面上のアミノ酸残基の大部分は、荷電したアミノ酸、またはそうでなければ極性アミノ酸であるが、そのα−へリックスの疎水性面上のアミノ酸残基の大部分は、非極性アミノ酸である。したがって、多くの実施形態において、上記α−へリックスの親水性面は、荷電したアミノ酸またはそうでなければ極性アミノ酸からなるが、そのα−へリックスの疎水性面は、非極性アミノ酸残基からなる。例えば、図14Aに示されるペプチド1(配列番号43)のへリックス車輪図を参照のこと。
【0059】
任意の所与のペプチド配列が膜への挿入を可能にするために十分な数の非極性アミノ酸を有するか否かは、当該分野において周知である方法(本明細書中で実施例に記載されるリポソーム色素放出を含む方法が挙げられるが、これに限定されない)を使用して決定され得る。さらに、ペプチドが両親媒性のα−へリックス構造を有するか否かは、http://cti.itc.virginia.edu/〜cmg/Demo/wheel/wheelApp.html(最後に2006年8月15に訪れた)およびhttp://www.bioinf.man.ac.uk/〜gibson/HelixDraw/helixdraw.html(最後に2006年8月15に訪れた)のようなインターネット上で利用可能なソフトウェアを使用して決定され得る。配列番号43のペプチドの両親媒性のα−へリックス構造を例示する概略図は、図14Aに示される。
【0060】
本発明のペプチドの例は、表3において見出され得る。表3に示されるペプチドと比較して、本発明の他のペプチドは、保存的アミノ酸置換を有するペプチドを含む。本発明のペプチドはまた、表3に示されるペプチドに似たアミノ酸組成を有するペプチドを含む。これらは、表9に示される配列番号96、配列番号97および配列番号98の配列を有するペプチドを含む。これらの配列は、配列番号43のリバース(reverse)改変体に対応するか、またはそれらの配列は、配列番号43の「スクランブルされた(scrambled)」改変体を構成する。ペプチド(例えば、配列番号43)のレトロ(retro)改変体またはリバース改変体は、元のペプチド(配列番号43)のアミノ酸組成に似たアミノ酸組成を有するが、その改変体のアミノ酸配列は、元のペプチドのアミノ酸配列と逆のものである。ペプチド(例えば、配列番号43)のスクランブルされた改変体もまた、元のペプチド(配列番号43)に似たアミノ酸組成を有するが、それらのアミノ酸の順序は、疎水性残基および親水性残基の相対的位置を変えることなくスクランブルまたは混合される。したがって、配列番号43の「疎水性のスクランブルされた」改変体であるペプチドは、配列番号43のアミノ酸組成と同じアミノ酸組成を有する。しかし、疎水性アミノ酸残基の順序は、その改変体ペプチドの両親媒性が元のペプチドの両親媒性に似るように、その配列内の疎水性残基および親水性残基の相対的位置を変えることなく変えられる。同様に、配列番号43の「親水性スクランブルされた」改変体は、配列番号43のアミノ酸組成と同じアミノ酸組成を有するが、親水性アミノ酸残基の順序は、その改変体ペプチドの両親媒性が元のペプチドの両親媒性に似るように、その配列内の疎水性残基および親水性残基の相対的位置を変えることなく変えられる。一般に、親水性(極性)アミノ酸に関して、用語「スクランブリング(scrambling)」または「スクランブルされた」は、各々の親水性(極性)アミノ酸の位置が不変に保持される一方で、任意の他の親水性(極性)アミノ酸がその位置に配置され得ることを示すために使用される。同様に、疎水性(非極性)アミノ酸に関して、用語「スクランブリング」または「スクランブルされた」は、各々の疎水性(非極性)アミノ酸の位置が不変に保持される一方で、任意の疎水性(非極性)アミノ酸がその位置に配置され得ることを示すために使用される。
【0061】
したがって、本発明のペプチドは、表3に示される配列と同一であるアミノ酸配列、およびそのような配列の改変体を有する。そのような改変体は、1個以上のアミノ酸の切断、保存的置換、親水性アミノ酸のみのスクランブリング、配列内の疎水性残基のみのスクランブリング、親水性アミノ酸および疎水性アミノ酸の両方のスクランブリング、天然に存在しないアミノ酸による天然に存在するアミノ酸の置換または他の改変(例えば、ダンシル化)から生じ得る。そのような改変体ペプチドは、次の節においてさらに記載される。
【0062】
(ペプチドホモログおよびペプチド改変体)
本発明は、多くのペプチドホモログおよびペプチド改変体を包含する。
【0063】
ペプチドホモログは、配列番号1を有するH77単離株以外のHCV単離株由来のペプチジル配列である。したがって、本発明のペプチドは、配列番号4〜61のいずれかのアミノ酸配列を有するペプチドのホモログであり得る。したがって、例えば、本発明の1つのペプチドホモログは、配列番号6のペプチドのホモログである配列番号62を有する。
【0064】
【化11】
配列番号62のペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0065】
本発明の別のペプチドインヒビターホモログは、配列番号8のペプチドのホモログである配列番号63または配列番号64を有する。
【0066】
【化12】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0067】
本発明の別のペプチドインヒビターホモログは、配列番号12のペプチドのホモログである配列番号65または配列番号66を有する。
【0068】
【化13】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0069】
本発明の別のペプチドインヒビターホモログは、配列番号13のペプチドのホモログである配列番号67または配列番号68を有する。
【0070】
【化14】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0071】
本発明の別のペプチドインヒビターホモログは、配列番号14のペプチドのホモログである配列番号69または配列番号70を有する。
【0072】
【化15】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0073】
本発明の別のペプチドインヒビターホモログは、配列番号24のペプチドのホモログである配列番号71または配列番号72を有する。
【0074】
【化16】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0075】
本発明の別のペプチドインヒビターホモログは、配列番号27のペプチドのホモログである配列番号73または配列番号74を有する。
【0076】
【化17】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0077】
本発明の別のペプチドインヒビターホモログは、配列番号30のペプチドのホモログである配列番号75または配列番号76を有する。
【0078】
【化18】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0079】
別の実施形態において、ペプチドインヒビターホモログは、配列番号32のペプチドのホモログである配列番号77または配列番号78を有する。
【0080】
【化19】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0081】
別の実施形態において、ペプチドインヒビターホモログは、配列番号43のペプチドのホモログである配列番号79または配列番号80を有する。
【0082】
【化20】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0083】
別の実施形態において、ペプチドインヒビターホモログは、配列番号44のペプチドのホモログである配列番号81または配列番号82を有する。
【0084】
【化21】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0085】
別の実施形態において、ペプチドインヒビターホモログは、配列番号47のペプチドのホモログである配列番号83または配列番号84を有する。
【0086】
【化22】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0087】
別の実施形態において、ペプチドインヒビターホモログは、配列番号53のペプチドのホモログである配列番号85または配列番号86を有する。
【0088】
【化23】
これらのペプチドインヒビターの配列は、配列番号2および配列番号3のHCVポリタンパク質配列において見出される。
【0089】
ペプチド改変体は、HCV単離株のポリタンパク質配列中のセグメントと同一ではないアミノ酸配列を有する任意のペプチドである。したがって、本発明のペプチドは、保存的アミノ酸置換から生じる改変体配列を有し得る。互いに置換可能であるアミノ酸は、一般に、類似のクラス内またはサブクラス内に存在する。当業者に公知である通り、アミノ酸は、アミノ酸側鎖の化学的特定および物理的特性に主に依存する異なるクラスに分類され得る。例えば、いくつかのアミノ酸は、一般に、親水性アミノ酸または極性アミノ酸であると見なされ、そして他のアミノ酸は、疎水性アミノ酸または非極性アミノ酸であると見なされる。極性アミノ酸は、酸性側鎖、塩基性側鎖または親水性側鎖を有するアミノ酸を含み、そして非極性アミノ酸は、芳香族側鎖または疎水性側鎖を有するアミノ酸を含む。非極性アミノ酸は、さらに細分されて、とりわけ、脂肪族アミノ酸を含み得る。本明細書中で使用されるようなアミノ酸のクラスの定義は、以下の通りである。
【0090】
「非極性アミノ酸」とは、生理学的pHにおいて荷電されておらず、極性ではなく、かつ一般に、水溶液によって退けられる側鎖を有するアミノ酸をいう。遺伝的にコードされた疎水性アミノ酸の例としては、Ala、Ile、Leu、Met、Trp、TyrおよびValが挙げられる。遺伝的にコードされていない非極性アミノ酸の例としては、t−BuA、ChaおよびNleが挙げられる。
【0091】
「芳香族アミノ酸」とは、共役δ−電子系(芳香族基)を有する少なくとも1個の環を含む側鎖を有する非極性アミノ酸をいう。芳香族基は、置換基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基、スルホニル基、ニトロ基およびアミノ基、ならびにその他の基)によってさらに置換され得る。遺伝的にコードされた芳香族アミノ酸の例としては、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンが挙げられる。一般的に存在する遺伝的にコードされていない芳香族アミノ酸としては、フェニルグリシン、2−ナフチルアラニン、
【0092】
【化23−2】
1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、4−クロロフェニルアラニン、2−フルオロフェニルアラニン、3−フルオロフェニルアラニンおよび4−フルオロフェニルアラニンが挙げられる。
【0093】
「脂肪族アミノ酸」とは、飽和直鎖状または不飽和直鎖状、分枝状または環状の炭化水素側鎖を有する非極性アミノ酸をいう。遺伝的にコードされた脂肪族アミノ酸の例としては、Ala、Leu、ValおよびIleが挙げられる。コードされていない脂肪族アミノ酸の例としては、Nleが挙げられる。
【0094】
「極性アミノ酸」とは、生理学的pHにおいて荷電されているかまたは荷電されておらず、かつ2個の原子によって共通して共有された電子対がそれらの原子のうちの一方とより近くに保持される結合を有する側鎖を有する親水性アミノ酸をいう。極性アミノ酸は、一般に、親水性であり、親水性は、それらが水溶液によって誘引される側鎖を有するアミノ酸を有することを意味する。遺伝的にコードされた極性アミノ酸の例としては、アスパラギン、システイン、グルタミン、リジンおよびセリンが挙げられる。遺伝的にコードされていない極性アミノ酸の例としては、シトルリン、ホモシステイン、N−アセチルリジンおよびメチオニンスルホキシドが挙げられる。
【0095】
「酸性アミノ酸」とは、7未満の側鎖pK値を有する親水性アミノ酸をいう。酸性アミノ酸は、代表的に、水素イオンの喪失に起因して、生理学的pHにおいて負に荷電した側鎖を有する。遺伝的にコードされた酸性アミノ酸の例としては、アスパラギン酸(アスパルテート)およびグルタミン酸(グルタメート)が挙げられる。
【0096】
「塩基性アミノ酸」とは、7より大きい側鎖pK値を有する親水性アミノ酸をいう。塩基性アミノ酸は、代表的に、ヒドロニウムイオンとの結合に起因して生理学的pHにおいて正に荷電した側鎖を有する。遺伝的にコードされた塩基性アミノ酸の例としては、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが挙げられる。遺伝的にコードされていない塩基性アミノ酸の例としては、アミノ酸のオルニチン、2,3−ジアミノプロピオン酸、2,4−ジアミノ酪酸およびホモアルギニンが挙げられる。
【0097】
「イオン化可能なアミノ酸」とは、生理学的pHにおいて荷電され得るアミノ酸をいう。そのようなイオン化可能なアミノ酸としては、酸性アミノ酸および塩基性アミノ酸(例えば、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−アルギニン、D−リジン、D−ヒドロキシリジン、D−オルニチン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−アルギニン、L−リジン、L−ヒドロキシリジンまたはL−オルニチン)が挙げられる。
【0098】
当業者によって認識される通り、上記の分類は、絶対的ではない。数種のアミノ酸は、1より多くの特徴的な特性を示し、したがって1より多くのカテゴリーに含まれ得る。例えば、チロシンは、非極性の芳香環および極性のヒドロキシル基の両方を有する。したがって、チロシンは、非極性、芳香族性および極性のように記載され得る数種の特徴を有する。しかし、その非極性の環が、優勢であるので、チロシンは、一般に、疎水性であると見なされる。同様に、ジスルフィド結合を形成し得ることに加えて、システインはまた、非極性の性質を有する。したがって、疎水性アミノ酸すなわち非極性アミノ酸として厳密に分類されていないが、多くの場合において、システインは、疎水性すなわち非極性をペプチドに与えるために使用され得る。
【0099】
上に記載された遺伝的にコードされたアミノ酸および遺伝的にコードされていないアミノ酸の分類は、下で表2において要約される。表2は、例示のみを目的とし、そして本明細書中に記載されるペプチドおよびペプチドアナログを構成し得るアミノ酸残基の網羅的な一覧であることを意味しないことが、理解されるべきである。本明細書中に記載されるペプチドを作製するために有用である他のアミノ酸残基は、例えば、Fasman,1989,CRC Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology,CRC Press,Inc.およびその中に列挙された参考文献において見出され得る。アミノ酸残基の別の供給源は、RSP Amion Acids Analogues,Inc.のウェブサイト(www.amino−acids.com)によって提供される。本明細書中で具体的に言及されていないアミノ酸は、具体的に同定されたアミノ酸と比較して、公知の挙動ならびに/またはそれらの特徴的な化学的特性および/もしくは物理的特性に基づいて上に記載されたカテゴリーへと便宜的に分類され得る。
【0100】
【表2−1】
【0101】
【表2−2】
いくつかの実施形態において、本発明によって企図される親水性アミノ酸または極性アミノ酸としては、例えば、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ホモシステイン、リジン、ヒドロキシリジン、オルニチン、セリン、トレオニン、および構造的に関連したアミノ酸が挙げられる。1つの実施形態において、上記極性アミノ酸は、イオン化可能なアミノ酸(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、リジン、またはオルニチン)である。
【0102】
利用され得る疎水性アミノ酸残基または非極性アミノ酸残基の例としては、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンなどが挙げられる。
【0103】
さらに、ペプチドのアミノ酸配列は、ペプチド中の少なくとも1個のアミノ酸残基の別のアミノ酸残基への置換(L形態よりもむしろD形態を利用する置換が挙げられる)を含むペプチド改変体をもたらすために改変され得る。
【0104】
上記ペプチドの残基の1個以上は、上記ペプチドの生物学的活性を変化させるか、増強するか、または保存するために別のものに交換され得る。そのような改変体は、例えば、対応する非改変体ペプチドの生物学的活性の少なくとも約10%を有し得る。保存的アミノ酸置換(すなわち、上に記載されるような類似の化学的特性および物理的特性を有するアミノ酸の置換)が、しばしば利用される。
【0105】
したがって、例えば、保存的アミノ酸置換は、アスパラギン酸をグルタミン酸と交換すること;リジンをアルギニンまたはヒスチジンと交換すること;非極性アミノ酸(アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン)を別の非極性アミノ酸と交換すること;および極性アミノ酸(アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、セリン、トレオニンなど)を別の極性アミノ酸に交換することを含む。置換が導入される場合、上記改変体は、その生物学的活性のレベルを確認または決定するために試験され得る。
【0106】
例えば、いくつかの実施形態において、本発明のペプチドは、式I〜式V
【0107】
【化24】
のいずれか1つを含む配列を有し得、
Xaa1、Xaa4、Xaa5、Xaa8、Xaa11、Xaa12、Xaa15、Xaa16およびXaa18は、極性アミノ酸であり;そしてXaa2、Xaa3、Xaa6、Xaa7、Xaa9、Xaa10、Xaa13、Xaa14、およびXaa17は、非極性アミノ酸である。
【0108】
他の実施形態において、本発明のペプチドは、N末端またはC末端のどちらかにさらなるペプチジル配列を有し得る。したがって、例えば、本発明は、14アミノ酸のペプチド(N末端ペプチド)を式I〜式VのいずれかのペプチドのN末端に結合させることによって融合ペプチドを提供する。その14アミノ酸のN末端ペプチドは、構造:
【0109】
【化25】
を有し、各Rxは、個別に、極性アミノ酸であり、そして各Ryは、個別に、非極性アミノ酸である。
【0110】
本発明はまた、12アミノ酸のペプチド(C末端ペプチド)を式VのペプチドのC末端に結合させることによって形成された融合ペプチドを提供する。得られた融合ペプチドは、式VIの構造:
【0111】
【化26】
を有し、
Xaa1、Xaa4、Xaa5、Xaa8、Xaa11、Xaa12、Xaa15、Xaa16、Xaa18、Xaa19、Xaa22、Xaa23、Xaa26、Xaa29、およびXaa30は、個別に各々、極性アミノ酸であり;そして
Xaa2、Xaa3、Xaa6、Xaa7、Xaa9、Xaa10、Xaa13、Xaa14、Xaa17、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、Xaa27、およびXaa28は、個別に各々、非極性アミノ酸である。
【0112】
本発明はまた、式VIのペプチドのN末端にペプチド結合によって結合された配列番号117の14アミノ酸のN末端ペプチドに対応する配列を有する融合ペプチドを提供する。
【0113】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、上に記載されたペプチドのうちのいずれかの少なくとも14個の隣接したアミノ酸を含むペプチドである。
【0114】
ペプチド改変体はまた、溶液中のそのペプチドの両親媒性のα−ヘリックス二次構造が維持される限り、配列内の親水性残基および/または疎水性残基の「スクランブリング」から生じ得る。
【0115】
(本発明のペプチドを作製する方法)
本発明の文脈(context)において、「単離された」ペプチドは、そのネイティブな環境から分離して存在するペプチドであり、したがって天然の産物ではない。単離されたペプチドは、精製された形態で存在し得るか、あるいは、例えば、細胞または他の活性成分または不活性成分を含み得る溶媒などのネイティブではない環境中に存在し得る。1つの実施形態において、「単離された」ペプチドは、そのペプチドが本来由来するタンパク質中でそのペプチドに天然に隣接(flank)する配列(すなわち、ペプチドのN末端およびC末端に位置する配列)のうち少なくともいくつかを含まない。「精製された」ペプチドは、組換え技術によって産生される場合に他の細胞物質または培養培地を実質的に含まないか、あるいは化学的に合成される場合に化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。したがって、精製されたペプチド調製物は、ペプチドの少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%または少なくとも90重量%である。純度は、当該分野において公知である方法(クロマトグラフィーを利用する方法またはポリアクリルアミドゲル電気泳動を利用する方法が挙げられるが、これらに限定されない)を使用して決定され得る。
【0116】
本発明のペプチドまたはその改変体は、例えば、固相ペプチド合成法または酵素触媒によるペプチド合成によってか、あるいは組換えDNA技術の補助によって、インビトロで合成され得る。固相ペプチド合成法は、以下のような参考文献に記載された、確立され、かつ広範に使用される方法である。:Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,W.H.Freeman Co.,San Francisco(1969);Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85 2149(1963);Meienhofer,「Hormonal Proteins and Peptides」,編;C.H.Li,第2巻(Academic Press,1973),pp.48−267;ならびにBavaayおよびMerrifield,「The Peptides」,編,E.GrossおよびF.Meienhofer,第2巻(Academic Press,1980)pp.3−285。これらのペプチドは、免疫親和性カラムまたはイオン交換カラムにおける分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたはアニオン交換樹脂(例えば、DEAE)におけるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング(chromatofocusing);SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えば、Sephadex G−75を使用したゲル濾過;リガンド親和性クロマトグラフィー;または非極性溶媒もしくは非極性/極性溶媒混合物からの結晶化もしくは沈殿によって、さらに精製され得る。結晶化または沈殿による精製が、好ましい。
【0117】
本発明のペプチドは、それらが抗ウイルス活性を保持する限り、環状ペプチドであり得る。そのような環状ペプチドは、代表的に、アミノ末端を末端カルボキシレートに共有結合することによって直鎖状ペプチドから産生される。末端のみが連結されることを確実にするために、アミノ側鎖およびカルボン酸側鎖が、市販の保護基によって保護され得る。いくつかの実施形態において、当業者は、アミノ末端またはカルボン酸末端のうちの一方、あるいは別のアミノ酸側鎖にペプチド側鎖を環化することを選択し得る。この場合において、保護基は再び、所望されるように環化反応を誘導するために使用され得る。
【0118】
ペプチドの環化は、利用可能な前駆体を使用して行われ得る。例えば、環化は、1〜5mMのペプチド濃度にて、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP,Novabiochem)(粗ペプチドに対して5当量)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA,Fisher)(40当量)との混合物を使用して、ジメチルホルムアミド中で行われ得る。DIEAの量は、見かけのpH9〜10を達成するために調整される。その反応が実施された後、任意の便利な手段(例えば、MALDI−MSおよび/またはHPLC)が実施され得る。
【0119】
上記ペプチドまたはペプチド改変体のアミノ基のN−アシル誘導体は、N−アシル保護アミノ酸を最終的な縮合に利用することによってか、あるいは保護されたペプチドまたは保護されていないペプチドをアシル化することによって調製され得る。O−アシル誘導体は、例えば、遊離ヒドロキシペプチドまたはペプチド樹脂のアシル化によって調製され得る。どちらかのアシル化が、標準的なアシル化試薬(例えば、アシルハライド、無水物、アシルイミダゾールなど)を使用して実施され得る。所望される場合、N−アシル化およびO−アシル化の両方が、一緒に実施され得る。
【0120】
本発明のペプチドまたはペプチド改変体のカルボキシル基の塩は、上記ペプチドと、1当量以上の所望の塩基(例えば、金属水酸化物塩基(例えば、水酸化ナトリウム);炭酸金属塩基または炭酸水素金属塩基(例えば、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウム);あるいはアミン塩基(例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなど))とを接触させることによって、通常の様式で調製され得る。
【0121】
上記ペプチドまたは改変体ペプチドの酸付加塩、あるいは上記ペプチドまたは改変体ペプチドのアミノ残基の酸付加塩は、そのペプチドまたはアミンと、1当量以上の所望の無機酸または有機酸(例えば、塩酸)とを接触させることによって調製され得る。上記ペプチドのカルボキシル基のエステルはまた、当該分野において公知である任意の通常の方法によって調製され得る。
【0122】
(使用方法)
本発明のペプチドは、フラビウイルス科のウイルスによる感染を予防するか、処置するか、またはそうでなければ改善するために使用され得、そのウイルスとしては、上に記載されるように、フラビウイルス属のウイルス、ペスチウイルス属のウイルス、およびヘパシウイルス属のウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。フラビウイルス属のメンバーは、ダニ媒介脳炎、中央ヨーロッパ型脳炎、極東型脳炎、リオブラボー、日本脳炎、クンジン、マリーバレー脳炎、セントルイス脳炎、西ナイル脳炎、チュレンリー、タヤ、ウガンダS、1型デング熱、2型デング熱、3型デング熱、4型デング熱、モドック、および黄熱病を引き起こすウイルスを含む。ペスチウイルス属のメンバーは、牛ウイルス性下痢ウイルス1型、牛ウイルス性下痢ウイルス2型、豚コレラ(Hog cholera)(豚コレラ(classical swine fever)ウイルス)、およびボーダー病ウイルスを含む。ヘパシウイルス属は、C型肝炎ウイルスを含む。フラビウイルス科のさらなるメンバーは、割り当てられていないGBウイルス−A、GBウイルス−B、およびGBウイルス−Cを含む。フラビウイルス科のメンバーのウイルスは、種々の疾患を引き起こすことが公知であり、その疾患としては、例えば、デング熱、C型肝炎感染、日本脳炎、キャサヌール森林病、マリーバレー脳炎、セントルイス脳炎、ダニ媒介脳炎、西ナイル脳炎および黄熱病が挙げられる。
【0123】
本発明のペプチドは、フラビウイルス科のメンバーのウイルスによる感染およびその関連する疾患状態を予防するか、処置するか、またはそうでなければ改善するために使用され得る。したがって、本発明の種々の適用の例としては、デング熱、デング出血熱、デングショック症候群、日本脳炎、キャサヌール森林病、マリーバレー脳炎、セントルイス脳炎、ダニ媒介髄膜脳炎、慢性C型肝炎感染を有する患者に対する治療薬としての用途、肝臓移植の間の移植片感染を予防するための用途、性行為感染を予防するための用途、輸血において使用される血液および血液製剤の安全性を上昇させるための用途、ならびに臨床検査室サンプルの安全性の上昇についての用途が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
1つの実施形態において、本発明は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)のウイルス感染を予防するか、またはそうでなければ改善するための方法、あるいは哺乳類(例えば、ヒト)のフラビウイルス科のウイルスによる急性感染または慢性感染を予防するか、処置するか、またはそうでなければ改善するための方法を提供する。
【0125】
本明細書中で使用される場合、「予防すること(preventing)」は、フラビウイルス科のメンバーに曝され得るか、または曝された哺乳類(例えば、ヒト)に対する本発明のペプチドの投与を含むことを意図される。フラビウイルス科のウイルスに曝され得る哺乳類としては、これらのウイルスが優勢または一般的である地域(例えば、熱帯地方、東南アジアおよび極東アジア、南アジア、オーストラリアおよびパプアニューギニア、米国、ロシア、アフリカならびに中央アメリカおよび南アメリカ諸国)に存在する哺乳類が挙げられるが、これらに限定されない。フラビウイルス科のウイルスに曝され得る哺乳類としてはまた、シカダニまたは森林ダニ(forest tick)あるいは蚊によって噛まれたもの;提供された身体組織または体液(例えば、レシピエントの血液または1種以上のその成分(例えば、血漿、血小板、または幹細胞))のレシピエント;ならびに身体組織または体液を取り扱う医療従事者、臨床従事者または歯科従事者が挙げられる。フラビウイルス科のウイルスに曝された哺乳類としては、HCVまたは任意の他のフラビウイルス科のウイルスに感染した者の身体組織または体液(例えば、血液)と接触した哺乳類、あるいはそうでなければそれらのウイルスと接触した哺乳類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
フラビウイルス科のウイルス感染の処置、またはそれを処置することは、ウイルス量の減少、またはその感染に代表的に関連する少なくとも1つの症状の緩和もしくは減少を含むことを意図される。上記処置はまた、1つより多くの症状の緩和もしくは減少を含む。理想的には、上記処置による治癒は、例えば、実質的に、ウイルス感染を阻害し、そして/またはその感染に関連する症状を排除する。
【0127】
ウイルスの曝露または感染の症状または症状発現は、特定の感染に特異的であり、そしてこれらは、当該分野において公知である。デング熱およびデング出血熱は、例えば、4種のフラビウイルス属血清型のうちの1つによって引き起こされる。これらの状態の症状としては、熱、激しい頭痛、関節痛および筋肉痛の突然の発症および発疹、ならびに高熱、血小板減少および血液濃縮が挙げられる。デング熱およびデング出血熱の臨床適応としてはまた、高熱、血小板減少および白血球減少を伴う点状出血性皮疹、ならびに出血傾向が挙げられる。日本脳炎の症状としては、熱、頭痛、頸部硬直(neck rigidity)、悪液質、不全片麻痺、痙攣および上昇した体温が挙げられる。日本脳炎は、血清および脳脊髄液における抗体の検出によって診断され得る。キャサヌール森林病の症状としては、高熱、頭痛、鼻腔および咽喉からの出血、および嘔吐が挙げられる。セントルイス脳炎の症状としては、熱、頭痛、頸部硬直(neck stiffness)、昏迷、失見当、昏睡、振せん、時折の痙攣および痙性麻痺が挙げられる。マリーバレー脳炎の症状としては、熱、発作、悪心および小児における下痢、ならびに頭痛、嗜眠および成人における錯乱が挙げられる。西ナイルウイルス感染の症状としては、インフルエンザ様症状、倦怠感、熱、食欲不振、悪心、嘔吐、眼の痛み、頭痛、筋痛、発疹およびリンパ節症、ならびに脳炎(脳の炎症)および髄膜炎(脳および脊髄の内膜(lining)の炎症)、髄膜症、一過性の失明、発作および昏睡が挙げられる。西ナイル感染は、血液または脳脊髄液において抗体を検出するために、ELISAを使用して診断され得る。黄熱病の症状としては、熱、筋肉の痛み、頭痛、背痛、紅色舌、顔面紅潮、眼の充血、胃腸管からの出血、血性嘔吐物、黄疸、肝不全、タンパク尿を伴う腎不全、低血圧、脱水、せん妄、発作および昏睡が挙げられる。C型肝炎の症状としては、肝臓の炎症、食欲の減少、疲労、腹痛、黄疸、インフルエンザ様症状、掻痒、筋肉痛、関節痛、間欠的な軽度の発熱、睡眠障害、悪心、消化不良、認知変化、抑うつ性頭痛および気分変化が挙げられるが、これらに限定されない。HCV感染はまた、ウイルスに対する抗体を検出すること、生検によって肝臓の炎症を検出すること、肝硬変、門脈圧亢進、甲状腺炎、クリオグロブリン血症および糸球体腎炎によって診断され得る。さらに、HCV感染が、診断され得る。さらに、HCVへの曝露または感染の診断あるいはHCVへの曝露の危険性があるものの同定は、慣用的な血液検査の間の病歴、異常な肝臓酵素または肝機能検査に基づき得る。一般に、フラビウイルス科のメンバーによる感染は、ウイルス抗原または抗ウイルス抗体を検出するためのELISA、ウイルス抗原を検出するための免疫蛍光、ウイルスの核酸を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などを使用して検出され得る。
【0128】
急性ウイルス感染または慢性ウイルス感染を予防するか、処置するか、またはそうでなければ改善する方法は、細胞と、有効量の本発明のペプチドとを接触させる工程または哺乳類(例えば、ヒト)に治療有効量の本発明のペプチドを投与する工程を包含する。
【0129】
本発明のペプチドは、種々の様式で投与され得る。投与経路としては、経口経路、非経口経路(皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路および腹腔内経路を含む)、直腸経路、膣経路、皮膚経路、経皮経路(局所)、経粘膜経路、胸内経路、肺内経路および鼻腔内(呼吸性)経路が挙げられるが、これらに限定されない。投与の手段は、ポンプを使用した注射または任意の他の適切な機構によるものであり得る。
【0130】
本発明のペプチドは、例えば、レシピエントの生理的状態、投与の目的が治療的であるのかもしくは予防的であるのか、および熟練した実施者に公知である他の因子に依存して、単一用量、複数用量、持続様式または間欠様式で投与され得る。本発明のペプチドの投与は、予め選択された期間にわたって本質的に持続的であっても、一連の間隔を空けた用量であってもよい。局所投与および全身投与の両方が、企図される。
【0131】
哺乳類に対して投与される投薬量は、ウイルス感染を減少させるためもしくは予防するためか、またはそのウイルス感染に関連した少なくとも1つの症状を処置するために適切な任意の量であり得る。適切な投薬量を決定するいくつかの因子は、当業者に周知であり、そして慣用的な実験によって取り組まれ得る。例えば、物理化学的特性、毒物学的特性および薬物動態学的特性の決定は、標準的な化学的アッセイおよび生物学的アッセイを使用し、そして化学分野、薬理学分野および毒物学分野において公知である数学的モデリング技術の使用を介して行われ得る。治療的有効性および投薬レジメンは、そのような技術の結果ならびに適切な薬物動態学的モデルおよび/または薬力学的モデルの使用によって推定され得る。他の因子は、年齢、身体的状態、サイズ、体重、処置されるべき状態、状態の重篤度および任意の併用療法を含む個々の患者パラメータに依存する。上記投薬量はまた、選択されるペプチドおよび予防または処置が達成されるか否か、ならびにそのペプチドが化学的に改変されるか否かに依存する。そのような因子は、ウイルス感染モデル(例えば、本明細書中に記載されるHCV細胞培養/JFH−1感染モデル、または当該分野において利用可能である他の動物モデルもしくは検査システム)を使用して臨床医によって容易に決定され得る。
【0132】
患者に対して投与される正確な量は、主治医の責務である。しかし、所望の効果を達成するために、本発明のペプチド、その改変体またはその組合せは、例えば、体重1kgあたり少なくとも約0.01mgから約500〜750mgまで、体重1kgあたり少なくとも約0.01mgから約300〜500mgまで、体重1kgあたり少なくとも約0.1mgから約100〜300mgまで、または体重1kgあたり少なくとも約1mgから約50〜100mgまでの単一投薬量または分割投薬量として投与され得るが、しかし、他の投薬量は、有益な結果を提供し得る。
【0133】
単位用量中に含まれる所与のペプチドの絶対的な重量は、広範に変動し得る。例えば、約0.01〜約2gまたは約0.1〜約500mgの、特定の細胞型に特異的な本発明の少なくとも1種のペプチド、または複数種のペプチドが、投与され得る。あるいは、上記単位投薬量は、約0.01gから約50gまでか、約0.01gから約35gまでか、約0.1gから約25gまでか、約0.5gから約12gまでか、約0.5gから約8gまでか、約0.5gから約4gまでか、または約0.5gから約2gまで変動し得る。
【0134】
本発明のペプチドの日用量も、同様に、変動し得る。そのような日用量は、例えば、約0.1g/日〜約50g/日、約0.1g/日〜約25g/日、約0.1g/日〜約12g/日、約0.5g/日〜約8g/日、約0.5g/日〜約4g/日、および約0.5g/日〜約2g/日の範囲であり得る。
【0135】
本発明のペプチドは、単独か、または第2の薬剤と組み合わせて使用され得る。上記第2の薬剤は、例えば、インターフェロンベースの治療剤または別の型の抗ウイルス性薬剤(例えば、リバビリン)などの公知の抗ウイルス因子であり得る。上記第2の薬剤は、抗癌因子、抗菌因子、または抗ウイルス因子であり得る。上記抗ウイルス因子は、最初の接着および進入から放出までのウイルスの生活環における任意の工程において作用し得る。したがって、上記添加された抗ウイルス因子は、接着、融合、進入、輸送、翻訳、ウイルスポリタンパク質のプロセシング、ウイルスゲノムの複製、ウイルス粒子の構築、放出または出芽を妨害し得る。つまり、上記抗ウイルス因子は、接着のインヒビター、進入のインヒビター、融合のインヒビター、輸送のインヒビター、複製のインヒビター、翻訳のインヒビター、タンパク質プロセシングのインヒビター、放出のインヒビター、本質的に、任意のウイルス機能のインヒビターであり得る。上記第2の薬剤の有効量は、その第2の薬剤の製造業者の推奨、担当医の判断に従い、そしてPHYSICIAN’S DESK REFERENCEに示されるような量および投薬についてのプロトコルおよび管理上の因子によって導かれる。
【0136】
処置の方法の有効性は、患者を上で考察されるようなウイルス感染の徴候または症状についてモニタリングすること、ならびに当該分野において公知である方法(ポリメラーゼ連鎖反応および転写媒介性の増幅が挙げられるが、これらに限定されない)を使用して血液中にあるウイルスの存在および/または量(例えば、ウイルス量)を決定することによって評価され得る。
【0137】
(薬学的組成物)
1つの実施形態において、本発明は、本発明のペプチドを含む薬学的組成物を提供する。そのような薬学的組成物を調製するために、本発明のペプチドは、合成されるか、または他の方法で得られ(必要な場合または所望される場合に精製され)、次いで凍結乾燥され、そして安定化される。その後、上記ペプチドは、適切な濃度に調整され得、次いで他の薬剤または薬学的に受容可能なキャリアと合わせられ得る。「薬学的に受容可能な」によって、処方物の他の成分と適合性であり、かつそのレシピエントに有害ではないキャリア、希釈剤、賦形剤、および/または塩が、意味される。
【0138】
本発明の治療用ペプチドを含む薬学的処方物は、周知であり、かつ容易に利用可能な成分を使用して当該分野において公知である手順によって調製され得る。例えば、上記ペプチドは、一般的な賦形剤、希釈剤、またはキャリアと一緒に処方され得、そして錠剤、カプセル剤、溶液、懸濁剤、散剤、エーロゾルなどへと成形され得る。そのような処方物に適した賦形剤、希釈剤、およびキャリアの例としては、緩衝剤、およびフィラー(filler)および増量剤(extender)(例えば、デンプン、セルロース、糖類、マンニトール、およびケイ酸誘導体)が挙げられる。結合剤(例えば、カルボキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギネート、ゼラチン、およびポリビニル−ピロリドン)もまた、含まれ得る。
【0139】
湿潤剤(例えば、グリセロール)、崩壊剤(例えば、炭酸カルシウムおよび炭酸水素ナトリウム)が、含まれ得る。溶解を遅延させるための薬剤(例えば、パラフィン)もまた、含まれ得る。吸収促進剤(例えば、第四級アンモニウム化合物)もまた、含まれ得る。表面活性剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール)が、含まれ得る。吸着性キャリア(例えば、カオリンおよびベントナイト)が、添加され得る。滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに固体ポリエチルグリコール)もまた、含まれ得る。保存剤もまた、添加され得る。本発明の組成物はまた、増粘剤(例えば、セルロースおよび/またはセルロース誘導体)を含み得る。それらの組成物はまた、ゴム(例えば、キサンタンゴム、グアーガムまたはカルボガム(carbo gum)あるいはアラビアゴム)、あるいはポリエチレングリコール、ベントン(bentone)およびモンモリロナイトなどを含み得る。
【0140】
経口投与に関して、ペプチドは、粉末、顆粒処方物、溶液、懸濁物、エマルションとして存在し得るか、あるいはそのペプチドは、チューインガムからの活性成分の摂取のために、天然または合成のポリマーまたは樹脂中に存在し得る。上記活性ペプチドはまた、ボーラス、舐剤またはパスタとして提供され得る。上記処方物は、適切な場合、別個の単位投薬形態において便利に提供され得、そしてその処方物は、製薬分野で周知である任意の方法(治療因子と液体キャリア、固体マトリックス、半固体キャリア、微細に分割されたキャリアまたはそれらの組合せとを混合し、次いで、必要な場合に、その生成物を所望の送達系へと導入または成形する工程を包含する)によって調製され得る。そのような処方物中の全活性成分は、その処方物の0.1〜99.9重量%を構成する。
【0141】
本発明のペプチドを含む錠剤またはカプレットは、緩衝剤(例えば、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムおよび炭酸マグネシウム)を含み得る。カプレットおよび錠剤はまた、不活性成分(例えば、セルロース、予めゼラチン様にされたデンプン、二酸化ケイ素、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、微結晶性セルロース、デンプン、タルク、二酸化チタン、安息香酸、クエン酸、トウモロコシデンプン、鉱油、ポリプロピレングリコール、リン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛など)を含み得る。本発明の少なくとも1種のペプチドを含むハードゼラチンカプセルまたはソフトゼラチンカプセルは、不活性成分(例えば、ゼラチン、微結晶性セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、タルク、および二酸化チタンなど)、および液体ビヒクル(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)および植物性油)を含み得る。さらに、本発明の1種以上のペプチドを含む腸溶性カプレットまたは腸溶性錠剤は、胃における崩壊に抵抗し、そして十二指腸のより中性〜アルカリ性の環境で溶解するように設計される。
【0142】
本発明の経口的に投与される治療用ペプチドはまた、徐放のために処方され得る。この場合において、本発明のペプチドは、コーティングされ得るか、マイクロカプセル化(WO 94/07529、および米国特許第4,962,091号を参照のこと)され得るか、またはそうでなければ持続送達デバイス内におかれ得る。徐放性処方物は、例えば、腸管または気道の特定の部分において、おそらく、ある期間にわたって上記活性ペプチドを放出するように設計され得る。コーティング、外皮(envelope)、および保護マトリックスは、例えば、ポリマー物質(例えば、ポリラクチド−グリコレート)、リポソーム、マイクロエマルション、マイクロ粒子、ナノ粒子、またはワックスから作製され得る。これらのコーティング、外皮、および保護マトリックスは、留置デバイス(例えば、ステント、カテーテル、腹膜透析チュービング(peritoneal dialysis tubing)、排出デバイス(draining device)など)をコーティングするために有用である。
【0143】
本発明の治療用ペプチドはまた、便利な経口投与のためのエリキシル剤または溶液として処方され得るか、あるいは例えば、筋肉内経路、皮下経路、腹腔内経路または静脈内経路による非経口投与のための適切な溶液として処方され得る。本発明の治療用ペプチドの薬学的処方物はまた、水溶液もしくは無水溶液または分散物の形態、あるいはエマルションもしくは懸濁物または軟膏の形態をとり得る。
【0144】
したがって、治療用ペプチドは、非経口投与(例えば、注射(例えば、ボーラス注射または持続注入)のために処方され得、そしてその治療用ペプチドは、アンプル、予め充填されたシリンジ、小容量注入コンテナにおいて単位用量形態で提供されても、複数用量コンテナで提供されてもよい。上に記載される通り、保存剤は、上記投薬形態の貯蔵寿命の維持を補助するために添加され得る。上記活性ペプチドおよび他の成分は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクル中で懸濁物、溶液またはエマルションを形成し得、そして処方化剤(formulatory agent)(例えば、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤)を含み得る。あるいは、上記活性ペプチドおよび他の成分は、使用前の適切なビヒクル(例えば、無菌の、発熱物質を含まない水)による再構成のために、無菌固体の無菌性の単離によってか、または溶液からの凍結乾燥によって得られた粉末形態であり得る。
【0145】
これらの処方物は、当該分野において周知である薬学的に受容可能なキャリア、ビヒクルおよび佐剤を含み得る。例えば、水に加えて、溶媒(例えば、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコール、グリコールエステル(例えば、名称「Dowanol」で販売されている製品、ポリグリコールおよびポリエチレングリコール)、短鎖の酸のC1−C4アルキルエステル、乳酸エチルまたは乳酸イソプロピル、脂肪酸トリグリセリド(例えば、名称「Miglyol」で市販されている製品、ミリスチン酸イソプロピル、動物性油、鉱油および植物性油)およびポリシロキサン)から選択され、生理学的観点から受容可能である1種以上の有機溶媒を使用して溶液を調製することが、可能である。
【0146】
必要な場合、抗酸化剤、界面活性剤、他の保存剤、フィルム形成剤,角質溶解剤またはコメド溶解剤(comedolytic agent)、香料、香味料および着色剤から選択される佐剤を添加することが、可能である。抗酸化剤(例えば、t−ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびα−トコフェロールおよびその誘導体)が、添加され得る。
【0147】
いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、局所的に投与されるか、または粘膜表面(例えば、膣、直腸、眼、鼻など)に投与される殺菌剤として処方される。局所投与に関して、治療剤は、標的領域に対する直接適用について当該分野において公知である通りに処方され得る。主に局所適用のために調整された形態は、例えば、クリーム、ミルク、ゲル、分散物またはマイクロエマルション、程度の差はあるが増粘されたローション、含浸パッド、軟膏またはスティック(stick)、エーロゾル処方物(例えば、スプレーまたはフォーム)、せっけん、洗浄剤、ローションまたはせっけんのケークの形態をとる。したがって、1つの実施形態において、本発明のペプチドは、局所的に適用される膣用クリームまたは殺菌剤として処方され得る。この目的のための他の従来の形態としては、創傷用包帯、コーティングされたバンデージまたは他のポリマー被覆剤、軟膏、クリーム、ローション、パスタ、ゼリー、スプレー、およびエーロゾルが挙げられる。したがって、本発明の治療用ペプチドは、皮膚投与のためのパッチまたはバンデージによって送達され得る。あるいは、上記ペプチドは、粘着性ポリマー(例えば、ポリアクリレートまたはアクリレート/酢酸ビニルコポリマー)の部分であるように処方され得る。長期適用について、微小孔性および/または通気性の裏地(backing)積層体を使用する(したがって、皮膚の水和または浸軟が、最小化され得る)ことが、望まれ得る。裏地層は、所望の保護機能および支持機能を提供する任意の適切な厚さであり得る。適切な厚さは、一般に、約10ミクロン〜約200ミクロンである。
【0148】
軟膏およびクリームは、例えば、水性基剤または油性基剤を用い、適切な増粘剤および/またはゲル化剤を添加することによって処方され得る。ローションは、水性基剤または油性基剤を用いて処方され得、そしてそのローションはまた、一般に、1種以上の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、または着色剤を含む。活性ペプチドはまた、例えば、米国特許第4,140,122号;同第4,383,529号;または同第4,051,842号において公開される通り、イオン導入を介して導入され得る。局所処方物に存在する本発明の治療剤の重量%は、種々の因子に依存するが、一般に、その処方物の全重量の0.01%〜95%であり、そしてその重量%は、代表的に0.1〜85重量%である。
【0149】
点滴剤(例えば、点眼薬または点鼻薬)は、1種以上の治療用ペプチドを用いて、1種以上の分散剤、可溶化剤または懸濁化剤をまた含む水性基剤または非水性基剤において処方され得る。液体スプレーは、加圧されたパックから便利に送達される。点滴剤は、単純な点眼キャップ付きの瓶または液体内容物を滴下で送達するために適合されたプラスチック瓶、特別に形成されたクロージャー(closure)を介して送達され得る。
【0150】
治療用ペプチドは、口腔または咽喉における局所投与のためにさらに処方され得る。例えば、上記活性成分は、風味付けした基剤(通常は、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント)をさらに含むロゼンジ;不活性な基剤(ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア)中の組成物を含む香錠;および適切な液体キャリア中の本発明の組成物を含む含そう剤として処方され得る。
【0151】
本発明の薬学的処方物は、必要に応じた成分として、当該分野で利用可能である型の、薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、可溶化剤または乳化剤、および塩を含み得る。そのような物質の例としては、通常の生理食塩溶液(例えば、生理学的に緩衝化された生理食塩溶液)および水が挙げられる。本発明の薬学的処方物において有用であるキャリアおよび/または希釈剤の特定の非限定的な例としては、水および生理学的に受容可能な緩衝化された生理食塩溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩溶液(pH7.0〜8.0)が挙げられる。
【0152】
本発明のペプチドはまた、気道に投与され得る。したがって、本発明はまた、エーロゾルの薬学的処方物および本発明の方法において使用するための投薬形態を提供する。一般に、このような投薬形態は、ウイルス感染の臨床症状を処置または予防するために有効な量の少なくとも1つの本発明の薬剤を含む。本発明の方法に従って処置された感染の1つ以上の症状の任意の統計的に有意な減衰は、本発明の範囲内のそのような感染の処置であると見なされる。
【0153】
あるいは、吸入またはガス注入による投与のために、上記組成物は、乾燥粉末(例えば、治療剤と適切な粉末基剤(例えば、乳糖またはデンプン)との粉末混合物)の形態をとり得る。上記粉末組成物は、例えば、粉末が吸入器、注入器、または定量吸入器(例えば、Newman,S.P.、Aerosols and the Lung、Clarke,S.W.およびDavia,D.編、pp.197−224、Butterworths、London、England、1984に開示される加圧式定量吸入器(MDI)および乾燥粉末吸入器を参照のこと)の補助によって投与され得る、カプセルまたはカートリッジ、すなわち、例えば、ゼラチンまたはブリスターパックにおいて、単位投薬形態で提供され得る。
【0154】
本発明の治療用ペプチドはまた、エーロゾルまたは吸入形態で投与される場合、水溶液で投与され得る。したがって、他のエーロゾル薬学的処方物は、例えば、約0.1mg/mLと約100mg/mLとの間の、処置される適応または疾患に特異的な1種以上の本発明のペプチドを含む、生理学的に受容可能な緩衝化された生理食塩溶液を含み得る。液体に溶解または懸濁されていない微細に分割された固体ペプチドまたは核酸粒子の形態における乾燥エーロゾルもまた、本発明の実施において有用である。本発明のペプチドは、撒布剤(dusting powder)として処方され得、そしてそれは、約1μmと5μmとの間(あるいは、2μmと3μmとの間)の平均粒径を有する微細に分割された粒子を含み得る。微細に分割された粒子は、当該分野において周知である技術を使用して粉末化およびスクリーン濾過(screen filtration)によって調製され得る。上記粒子は、粉末の形態にあり得る所定の量の微細に分割された材料を吸入することによって投与され得る。必要有効量が複数の投薬単位の投与によって達成され得るので、各投薬形態の個々のエーロゾル用量に含まれる活性成分の単位含量が、それ自体、特定の感染、適用または疾患を処置するための有効量を構成する必要はないことが、認識される。さらに、上記有効量は、個別か、または一連の投与においてのいずれかで、上記投薬形態中の用量未満を使用して達成され得る。
【0155】
吸入による上気道(鼻)または下気道への投与に関して、本発明の治療用ペプチドは、噴霧器もしくは加圧されたパックまたはエーロゾルスプレーを送達する他の都合のよい手段から便利に送達される。加圧されたパックは、適切な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切な気体)を含み得る。加圧されたエーロゾルの場合において、投薬単位は、定量を送達するための弁を提供することによって決定され得る。噴霧器としては、米国特許第4,624,251号;同第3,703,173号;同第3,561,444号;および同第4,635,627号において記載される噴霧器が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に開示される型のエーロゾル送達系は、Fisons Corporation(Bedford,Mass.)、Schering Corp.(Kenilworth,NJ)およびAmerican Pharmoseal Co.,(Valencia,CA)を含む多数の商業的供給源から入手可能である。鼻腔内投与に関して、治療剤はまた、点鼻薬、液体スプレー(例えば、プラスチック瓶のアトマイザーまたは定量吸入器)によって投与され得る。代表的なアトマイザーは、Mistometer(Wintrop)およびMedihaler(Riker)である。
【0156】
本発明の治療用ペプチドはまた、記載された状態またはいくつかの他の状態のいずれかに対して、1種以上の公知の治療剤(例えば、鎮痛剤);抗ウイルス因子(例えば、抗HBV因子、抗HCV因子(HCVインヒビター、HCVプロテアーゼインヒビター)または抗ヘルペス因子);抗菌剤;抗癌剤;抗炎症剤;抗ヒスタミン剤;気管支拡張剤およびそれらの適切な組合せと組み合わせて使用され得る。
【0157】
(種々の組成物および製品)
1つの実施形態において、本発明は、微生物感染を制御するために本発明のペプチドを含む薬学的組成物を含む製品を提供する。そのような製品は、有用なデバイス(例えば、膣内リング、コンドーム、バンデージまたは同様のデバイス)であり得る。上記デバイスは、ウイルス感染を制御するために治療有効量の薬学的組成物を保持する。上記デバイスは、感染の制御のために上記薬学的組成物を使用するための説明書と一緒にキットに梱包され得る。上記薬学的組成物は、ウイルス感染が制御されるように、少なくとも1種の本発明のペプチドを治療有効量で含む。
【0158】
製品はまた、本発明のペプチドを含む生物学的サンプルの回収、処理または保存のために使用され得る容器または濾過ユニットであり得る。容器は、空にされてもよい。容器としては、キャピラリーチューブ、真空採血管(vacutainer)、血液または他の体液のための回収用バッグ、カニューレ、カテーテルが挙げられるが、これらに限定されない。濾過ユニットは、別のデバイス(例えば、生物学的流体の回収のためのカテーテル)の部分であり得る。さらに、本発明のペプチドはまた、上記製品(例えば、容器または濾過ユニット)に吸着されても、共有結合されてもよい。したがって、上記製品中の材料が、そこからデカントされるか、またはその製品を通過する場合、その材料は、上記ペプチドの実質的な量を保持しない。しかし、上記製品に対する上記ペプチドの吸着または共有結合は、ウイルスを殺すか、またはウイルスの伝播を予防し、それによってウイルス感染を制御することを補助する。したがって、例えば、本発明のペプチドは、回収された生物学的サンプル中に存在し得るウイルス粒子を除去または不活化するために、生物学的回収用のカテーテルおよびバイアルに組み込まれた濾過ユニット中にあり得るか、あるいは回収容器に添加され得、したがって上記疾患の伝播を予防する。
【0159】
本発明はまた、本発明のペプチドと1種以上の臨床的に有用な薬剤(例えば、生物学的安定剤)とを含む組成物を提供する。生物学的安定剤としては、抗凝固剤、保存剤およびプロテアーゼインヒビターが挙げられるが、これらに限定されない。抗凝固剤としては、シュウ酸塩、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸塩およびヘパリンが挙げられるが、これらに限定されない。保存剤としては、ホウ酸、ギ酸ナトリウムおよびホウ酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。プロテアーゼインヒビターとしては、ジペプチジルペプチダーゼIVのインヒビターが挙げられる。本発明のペプチドと生物学的安定剤とを含む組成物は、回収容器(例えば、キャピラリーチューブ、真空採血管、血液または他の体液のための回収用バッグ、カニューレ、カテーテルあるいは生物学的サンプルの回収、処理または保存のために使用される任意の他のコンテナまたは容器)中に含まれ得る。
【0160】
本発明はまた、本発明のペプチドと生物学的サンプル(例えば、血液、精液あるいは実験室において分析されるか、またはレシピエントの哺乳類に導入される他の体液)とを含む組成物を提供する。例えば、本発明のペプチドは、実験室処理および/または輸血の前に血液と混合され得る。
【0161】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、生物学的組織(移植組織を含む)を保存および移植するために使用される生理学的媒体中に含まれ得る。したがって、例えば、肝臓、心臓、腎臓および他の組織は、移植片のレシピエントへのウイルス伝播を阻害するために、本発明のペプチドを含む媒体に浸漬され得る。
【0162】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに示される。
【実施例】
【0163】
(実施例1:材料および方法)
HCV構築物および転写。使用したHCVコンセンサスクローンは、劇症肝炎を有する日本人患者に由来し、そしてJFH−1と表示された(Katoら(2001)J.Med.Virol.64,334−339)。このHCV cDNAを、T7プロモーターの後にクローニングして、プラスミドpJFH−1、および複製欠損NS5Bネガティブコントロール構築物pJFH−1/GNDを作製した(Katoら(2003)Gastroenterology 125,1808−1817)。ゲノムJFH−1およびJFH−1/GND RNAを産生するために、pJFH−1プラスミドおよびpJFH−1/GNDプラスミドを、XbaI消化によってHCV cDNAの3’末端にて直線化した。次いで直線化したDNAを、精製し、そしてインビトロ転写(MEGAscript;Ambion,Austin,TX)のための鋳型として使用した。JFH−1鎖特異的RNAプローブを産生するために、本発明者らは、JFH−1 NS5Bコード領域の1kbフラグメントをpBSKII+ベクター中にクローニングして、JFH−1ネガティブ鎖プローブおよびJFH−1ポジティブ鎖プローブのT7駆動性およびSP6駆動性の転写をそれぞれ可能にした。
【0164】
細胞培養。肝性のHuh−7細胞およびHuh−7.5.1細胞、ならびに非肝性のHEK293細胞およびHeLa細胞を、10%ウシ胎仔血清(Invitrogen)、10mMのHepes、100ユニット/mLのペニシリン、100mg/mLのストレプトマイシンおよび2mMのL−グルタミン(Invitrogen,Carlsbad,CA)を補充したD−MEM(Invitrogen,Carlsbad,California)において5% CO2にて維持した。これらの研究において使用した非肝性のHEK293細胞は、Grahamら(1977)J.Gen.Virol.36,59−74に記載される。使用したHeLa細胞は、Geyら(1952) Cancer Res.12,264−265に記載される。ヒト前骨髄芽球性のHL−60細胞および単芽球様U−937細胞を、American Type Culture Collestion(ATCC)から購入し、そして推奨される通りに培養した。ヒト肝細胞癌細胞株HepG2を、ATCCから入手し、そしてHepG2は、Knowlesら(1980)Science 209,497−499に記載される。エプスタイン−バーウイルス形質転換B細胞を、上に記載した同じ補充を伴うRPMI培地(Invitrogen)において維持した。
【0165】
Huh−7.5.1と表示した細胞は、Huh−7.5 GFP−HCVレプリコン細胞株I/5A−GFP−6(Moradpour(2004)J.Virol.78,7400−7409)に由来した。I/5A−GFP−6細胞由来のHCV−GFPレプリコンを取り除いてHCVネガティブHuh−7.5.1細胞株を作製するために、I/5A−GFP−6レプリコン細胞を、I/5A−GFP−6レプリコンを根絶するために、100IU/mlのヒトインターフェロンγ(IFNγ)の存在下で3週間にわたって培養した。ネオマイシン耐性遺伝子を有するHCVレプリコンのクリアランスを、G418感受性およびHCV特異的逆転写の定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT−QPCR)分析によって確認した。
【0166】
HCV RNAトランスフェクション。2つの異なる方法を使用して、インビトロ転写されたJFH−1 RNAをHuh−7細胞およびHuh−7.5.1細胞にトランスフェクトした。1つの方法は、Kriegerら(2001)J.Virol.75,4614−4624に記載されたエレクトロポレーションプロトコルの改変であった。簡単にいうと、トリプシン化細胞を、無血清Opti−MEM(Invitrogen)によって2回洗浄し、次いで1mlあたり1×107個の細胞の細胞密度にて同じ媒体中に再懸濁した。10マイクログラムのJFH−1 RNAを、4−mmキュベットにおいて0.4mlの上記細胞と混合し、そしてBio−Rad Gene Pulserシステム(BioRad,Hercules,CA)を、0.27kV、100ohm、および960μFにて単一のパルスを送達するために使用し、その細胞を、T162 Costarフラスコ(Corning)にプレートした。第2の方法は、リポソーム媒介性トランスフェクションを含み、そのリポソーム媒介性トランスフェクションを、リポフェクタミン(Lipofectamin)2000(Invitrogen)を用い、20% FCSの存在下で104個の細胞の懸濁物において5μgのJFH−1 RNAを使用して1:2のRNA:リポフェクタミン比にて行った。次いで細胞を、20% FCSを含む完全DMEMにプレートし、一晩にわたってインキュベーションした。両方の場合において、トランスフェクト細胞を、完全DMEMに移し、そして示された期間にわたって培養した。細胞を、3〜5日毎に継代した。これらの細胞および対応する上清におけるHCVの存在を、1μgの全細胞RNAあたりのHCV RNAコピーの数を定量すること、および選択した時点における上清のHCV感染価を決定することによって決定した。
【0167】
RNA分析。全細胞RNAを、標準的なプロトコルを使用したグアニジンチオシアネート(GTC)法によって単離した。Chomczynskiら(1987)Anal.Biochem.162,156−159。細胞上清由来のRNAse耐性RNAを、改変したGTC抽出プロトコルによって単離した。5マイクログラムのRNAを、HCV RNAを32P−UTP標識した鎖特異的プローブ(Maxiscript;Ambion)によって検出したことを除いて、Guidotti(1995)によって先に記載された通りにノーザンブロット分析に供した。あるいは、1マイクログラムのRNAを、DNAse処理(DNA非含有試薬;Ambion)し、そして定量的RT−PCRに供した。定量的RT−PCR分析を、Kapadiaら(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.102,2561−2566;Kapadiaら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,2014−2018に記載される通りに行った。DNAse処理したRNAを、製造業者の説明書(Applied Biosystems)に従ってTaqMan逆転写試薬を使用したcDNA合成、その後のBioRad iCylerを使用したリアルタイム定量的PCRのために使用した。HCV転写レベルおよびGAPDH転写レベルを、HCV JFH−1 cDNAまたはヒトGAPDH遺伝子を含むプラスミドの系列希釈から構成された検量線に対して決定した。
【0168】
ヒトGAPDH(Genbankアクセッション番号nMX002046)を検出するために使用したPCRプライマー配列は、5’−GAAGGTGAAGGTCGGAGTC−3’(センス、配列番号87)および5’−GAAGATGGTGATGGGATTTC−3’(アンチセンス、配列番号88)であった。JFH−1を検出するために使用したPCRプライマーは、5’−TCTGCGGAACCGGTGAGTA−3’(センス、配列番号89)および5’−TCAGGCAGTACCACAAGGC−3’(アンチセンス、配列番号90)であった。
【0169】
間接蛍光抗体法。細胞内染色を、Kapadiaら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,2014−2018に記載される通りに行った。細胞を、10分間にわたって室温(rt)にて4%パラホルムアルデヒド(pH7.2)において固定し、そして1時間にわたって室温にて、PBS(pH7.2)中の0.3% Triton X−100、3%ウシ血清アルブミン(BSA)および10% FCSを含むブロッキング緩衝液において透過させた。ポリクローナル抗NS5Aウサギ抗体MS5を、0.3% Triton X−100、3% BSAを含む緩衝液において1:1000の希釈にて使用した。次いで細胞を、1:1000希釈のAlexa555結合体化ヤギ抗ウサギIgG(Molecular Probes,Eugene,OR)と一緒に1時間にわたって室温にてインキュベートした。細胞核を、Hoechst染色を使用して可視化した。
【0170】
感染性HCV上清の力価。トランスフェクト細胞上清および/または感染細胞上清の感染性ウイルス力価を、エンドポイント限界希釈(end point limit dilution)分析によって決定した。簡単にいうと、細胞上清を、完全DMEMにおいて連続的に10倍に希釈し、そして96ウェルプレート(Corning)において1ウェルあたり104個のナイーブHuh−7.5.1細胞を感染させるために使用した。接種材料を、細胞と一緒に1時間にわたって37℃にてインキュベートし、次いで新鮮な完全DMEMを補充した。HCV感染のレベルを、HCV NS5Aまたは糖タンパク質E2(赤色)に対する免疫蛍光染色によって、感染後3日目に決定した。細胞核を、Hoechst色素(青色)によって染色した。ウイルス力価を、最も高い希釈率において検出したNS5Aポジティブ病巣の平均数によって決定した、1mLの上清あたりのフォーカス形成単位(focus forming unit)(ffu/mL)として示した。
【0171】
HCVウイルスストックの増幅。ウイルスストックを産生するために、感染性上清を、完全DMEMにおいて希釈し、そしてナイーブな10〜15%コンフルエント(confluent)なHuh−7.5.1細胞をT75フラスコ(Corning)中で0.01のMOIにて接種するために使用した。感染細胞を、トリプシン処理し、そして感染後(p.i.)4〜5日目においてコンフルエンス(confluence)の前に再度プレートした。次いで、感染細胞由来の上清を、感染後8〜9日目に回収し、そしてアリコートを、−80℃にて保存した。ウイルスストックの力価を、上に記載したように決定した。
【0172】
HCVの濃縮および精製。スクロース密度勾配超遠心分離分析を、Hellerら(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.102,2579−2583に記載される通りに行った。2つの偽(mock)の感染T162cm2フラスコまたは2つのHCV感染T162cm2フラスコ由来のプールした上清を、細胞破片を除去するために4,000rpmにて5分間遠心分離し、次いで、L8−80M超遠心分離器(Beckman Instruments,Palo Alto,CA)においてSW28ローターを使用して28,000rpmにて4時間にわたって、20%スクロースのクッションによってペレットにした。そのペレットを、プロテアーゼインヒビター(Roche Applied Science,Indianapolis,IN)を含む1mlのTNE緩衝液(50mMのTris・HCl(pH8)、100mMのNaCl,1mMのEDTA)に再懸濁し、20%〜60%のスクロース勾配(12.5mLの総容量)上にのせ、そしてSW41Tiローター(Beckman Instruments)において120,000×gで16時間にわたって4℃にて遠心分離した。1.3mLの画分を、その勾配の上部から回収した。その画分を、HCV RNAを検出するために定量的RT−PCRによって分析した。各画分の感染価を決定するために、各画分のアリコートを、DMEM媒体において、1:10、1:100、1:1000および1:10000に希釈し、そして上に記載されるようにHuh7.5.1細胞において力価決定した。全ての分析物について、偽の感染Huh−7.5.1細胞上清を、並行して分析した。
【0173】
ウェスタンブロット分析。ウェスタンブロット分析による細胞内HCVタンパク質の検出を、Kapadia,S.B.,Brideau−Andersen,A.&Chisari,F.V.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.に記載される通りに行った。HCVコア(C7−50)に対する抗体を、Affinity Bioreagents(Golden,CO)から得た。Anti−NS3ウサギ抗体(MS15)は、Dr.Michael Houghton(Chiron Corporation,Emeryville,CA)からの贈答品であった。
【0174】
CD81特異的抗体およびE2特異的抗体による感染の遮断。組換えヒトモノクローナル抗E2抗体は、ファージディスプレイによって組換えHCV遺伝子型1a E2タンパク質(GenBankアクセッション番号M62321)に対してスクリーニングしたcDNA発現ライブラリー(HCV患者の単核細胞から調製した)に由来した。その抗体を、連続的に希釈し、そして250マイクロリットルの容量で、1時間にわたって37℃にて15,000ffuのJFH−1ウイルスと一緒にプレインキュベートした。そのウイルス抗体混合物を、24ウェルプレート(Corning)において3時間にわたって37℃にて45,000個のHuh−7.5.1細胞に感染させるために使用した。
【0175】
1mg/mLの濃度におけるマウスモノクローナル抗ヒトCD81抗体5A6(Levyら(1998)Annu.Rev.Immunol.16,89−109)を、連続的に希釈(1:2000,1:200,1:20)し、そして50μLの容量で、96ウェルプレートに接種(seed)した104個のHuh−7.5.1細胞と一緒に1時間にわたって37℃にてプレインキュベートした。次いで、細胞に、0.3のmoiにおいて3時間にわたって37℃にて、感染性JFH−1上清を接種(inoculate)した。抗体の存在下における感染の効率を、定量的RT−PCRおよび免疫蛍光によって感染後3日間モニタリングした。
【0176】
インターフェロン処理。サブコンフルエント(subconfluent)なHuh−7.5.1細胞を、0.3のmoiにおけるJFH−1ウイルスによる接種の前に、5IU/mL、50IU/mLおよび500IU/mLのヒトIFNα−2aまたはヒトIFNγ(PBL Biomedical Lab,Piscataway,NJ)によって6時間処理した。その接種材料を、37℃におけるインキュベーションの3時間後に除去し、そして示された用量のIFNを補充した新鮮なDMEMを、その細胞に添加した。感染の効率を、定量的RT−PCRによって72時間後にモニタリングした。
【0177】
(実施例2:HCV RNAによってトランスフェクトされた肝細胞癌培養細胞における感染性HCV粒子の産生)
この実施例は、HCVネガティブHuh−7.5由来細胞株(本明細書中でHuh−7.5.1と称される)が、HCV RNAによってトランスフェクトされるか、またはHCV RNAトランスフェクト細胞由来の上清と一緒に培養される場合に、感染性HCV粒子が、効率的に産生されることを示す。
【0178】
上に記載したように、Huh−7.5.1細胞を、I/5A−GFP−6細胞からHCV−GFPレプリコンを取り除くことによってHuh−7.5 GFP−HCVレプリコン細胞株I/5A−GFP−6(Moradpour(2004)J.Virol.78,7400−7409)から得た。これを行うために、I/5A−GFP−6レプリコン細胞を、100IU/mLのヒトインターフェロンγ(IFNγ)の存在下で3週間培養した。これは、その細胞からI/5A−GFP−6レプリコンを根絶し、それによってHuh−7.5.1細胞を産生した。HCVレプリコンのクリアランスを、G418感受性(そのHCVレプリコンは、ネオマイシン耐性遺伝子を含んでいた)およびHCV特異的な定量的RT−PCR分析によって確認した。
【0179】
HCV RNAによってトランスフェクトしたHuh−7.5.1肝細胞癌細胞による感染性HCV粒子の産生。第1のセットの実験において、10μgのインビトロ転写されたゲノムJFH−1 RNAを、エレクトロポレーションによってHuh−7.5.1細胞に送達した。次いでトランスフェクト細胞を、実験全体を通してサブコンフルエントな培養物を維持するために、必要な場合(通常は、約3〜4日毎)に継代した。選択した間隔にて、全RNAを、トランスフェクトHuh−7.5.1細胞から単離し、そしてHCV RNAのレベルを、HCV特異的な定量的RT−PCRによって決定した。NS5Aタンパク質発現をまた、免疫蛍光によってモニタリングし、そして感染性ウイルスの放出を、トランスフェクト細胞上清の力価決定によって決定した。
【0180】
トランスフェクション後2日目に、おそらく、投入(input)RNAと細胞内のHCV複製によって産生されたRNAとの組合せを反映する、1μgの細胞RNAあたり1.3×107コピーのHCV RNAを検出した(図1A)。次いで、HCV RNAレベルは、減少し、トランスフェクション後8日目に1μgの細胞RNAあたり1.6×106コピーの最小レベルに到達した(図1A)。しかし、重要なことに、細胞内HCV RNAレベルは、その後、増加し始め、トランスフェクション後14日目に、1μgの全RNAあたり107コピーより多い最大レベルに到達し、そしてこれらのレベルは、この実験を26日目に終了するまで維持された(図1A)。これらの結果は、HCVが、トランスフェクトHuh−7.5.1細胞中で活発に複製していることを示した。この仮説は、トランスフェクション後における複製能力のないJFH−1 RNAゲノムの迅速な消失によって支持される(図1B)。
【0181】
興味深いことに、NS5Aに対する免疫蛍光染色は、トランスフェクト細胞培養物におけるNS5Aポジティブ細胞の%が、5日目における2%(図2A)から24日目におけるほぼ100%(図2B)まで増加したことを示した。これらの結果は、HCV RNAの増幅と一致し、そしてこれらの結果は、さらにHCVトランスフェクト細胞が選択的増殖の利点を獲得したこと、またはHCVがその培養物内のトランスフェクトされていない細胞に拡散したことのいずれかを支持した。
【0182】
JFH−1トランスフェクトHuh−7.5.1細胞が感染性ウイルスを放出していたか否かを決定するために、ナイーブHuh−7.5.1細胞に、上記トランスフェクション実験の間の異なる時点において回収した上清を接種した。接種後3日目の免疫蛍光染色は、培養物中のNS5Aポジティブ細胞(図2C)を示しただけでなく、その上清を連続的に希釈した場合に、その感染がNS5Aポジティブ細胞の分離した病巣をもたらした(図2D)ことも示した。したがって、トランスフェクション後の異なる時点で回収した上清における1mlあたりのフォーカス形成単位(ffu/mL)を、決定できた。この型の上清力価決定を、図1Aに記載したトランスフェクション実験に対して行い、そしてその上清力価決定は、垂直のバーによって示される。感染性ウイルスは、トランスフェクション後3日目の培養培地において検出され(80ffu/mL)、次いでその感染性ウイルスは、細胞内JFH−1 RNAの増幅を伴って増加し、トランスフェクション後21日目に最大の4.6×104ffu/mLに到達した。
【0183】
まとめると、これらの結果は、ゲノムJFH−1 RNAによってトランスフェクトされたHuh−7.5.1細胞が、HCV複製を支援し得るだけでなく、感染性HCV粒子を産生し得ることを示す。特に、同様の結果を、JFH−1 RNAを代替的なトランスフェクション方法(すなわち、リポソーム;図1C)によってHuh−7.5.1細胞に送達した場合に得た。
【0184】
トランスフェクションによるHCVウイルスの増殖。さらなる実験を、JFH−1トランスフェクト細胞上清に感染した細胞がナイーブHuh−7.5.1細胞に連続的に継代され得る子孫ウイルスを産生するか否かを決定するために行った。ナイーブHuh−7.5.1細胞を、2つの独立したトランスフェクション実験から回収した感染性上清によって低い感染多重度(MOI=0.01)にて感染させ、そして感染性ウイルス生成物を、選択した時点において感染細胞上清を力価決定することによってモニタリングした。接種後の第1日目において、感染性粒子を、いずれかのトランスフェクション細胞接種物(inoculate)に感染した細胞の上清において検出できなかった(図3A)。しかし、感染性粒子は、その上清において指数関数的に蓄積し、その後、両方の感染後7日目に少なくとも104ffu/mLの最大力価に到達した(図3A)。したがって、2つの別個の実験における感染後7日以内に、HCVは、ナイーブHuh−7.5.1細胞において100倍を超えて増幅された。同様の動態が、2つの別個のトランスフェクション実験において観察された。
【0185】
感染によって産生された子孫ウイルスがさらに継代され得るか否かを決定するために、ナイーブHuh−7.5.1細胞に、リポフェクション実験のうちの1つから回収したウイルスを感染させた(このリポフェクション実験からのデータを、図3Aに示す)。図3Bに示した通り、この二次感染は、一次感染について見られた動態(図3A)と同様の動態で進行し、再び7日目に最大レベルに到達した。この二次感染の経過は、感染の時間経過にわたって漸増する数のNS5Aポジティブ細胞によって反映され、ほぼ全ての細胞が、7日目においてNS5Aについてポジティブであった(図3C)。これらの結果は、JFH−1ウイルスがJFH−1 RNAのトランスフェクションによって産生され得、そして産生されたビリオンが感染性の検出可能な損失を伴わずにHuh−7.5.1細胞において継代され得ることを示す。さらに、JFH−1ビリオンは、導入後の比較的短い期間において高い割合の細胞に感染する。
【0186】
さらなる実験をまた行い、ここでHCV RNAおよびタンパク質の細胞内レベルをモニタリングした(図3E〜図3F)。この分析は、細胞培養上清における感染性ウイルスの出現が投入HCV RNAの増幅およびその後の翻訳と直接相関することを確認した。同様の結果を、Huh−7細胞に関して得た(図3G)。
【0187】
要約すると、トランスフェクションによって細胞上清において産生されたウイルスは、ナイーブHuh−7細胞またはナイーブHuh−7.5.1細胞へと連続的に継代され得る。感染性上清は、ナイーブHuh−7細胞またはナイーブHuh−7.5.1細胞に、低い多重度(MOI=0.01)で感染し得る。上記ウイルスは、上記ナイーブ細胞において伝播し得、そして一次感染と同様の動態で子孫ウイルスを産生し得る。さらに、感染によって産生された子孫ウイルスは、感染性の検出可能な損失を伴わずにナイーブ細胞へとさらに継代され得る。したがって、インビトロ感染系の重要な特性は、トランスフェクションによって上記細胞上清において産生されるウイルスは、ナイーブHuh−7細胞またはナイーブHuh−7.5.1細胞へと連続的に継代され得る。
【0188】
HCV感染は、抗E2抗体によって阻害される。HCV表面糖タンパク質(E1/E2)シュードタイプウイルス(pseudotyped virus)は、Bartoschら(2003)J.Exp.Med.197,633−642;Hsuら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,7271−7276に記載される。これらのHCV表面糖タンパク質(E1/E2)シュードタイプウイルスを使用した先の研究は、E1および/またはE2がウイルス吸着に必要とされる細胞レセプターとの相互作用を媒介することを示唆した。そのような相互作用がインビトロでのHCV感染に必要とされるか否かを検証するために、中和実験が、抗E2抗体を使用して行われ、この実験において、上記JFH−1ウイルスを、感染前に3時間にわたって37℃にて、HCV E2に特異的な組換えヒトモノクローナル抗体の系列希釈物またはアイソタイプのネガティブコントロール抗体の系列希釈物と一緒にプレインキュベートした。
【0189】
100μg/mLの抗E2抗体の存在下でJFH−1ウイルス(moi=0.3)に感染したHuh−7.5.1細胞は、同量のアイソタイプのコントロール抗体の存在下で感染した細胞と比較して5倍低い細胞内HCV RNAレベルを有することが見出された(図4A)。抗E2抗体によるHCV感染の阻害は、免疫蛍光によって決定されるようなNS5Aポジティブ細胞における減少によってさらに反映された(データを示さない)。抗E2抗体の力価決定は、10μg/mLの抗体が感染後3日目における細胞内HCV RNAの50%の減少に必要とされたことを示した(図4A)。これらの結果は、この系におけるインビトロHCV感染がウイルスエンベロープE2タンパク質によって部分的に媒介されるという結論と一致する。
【0190】
HCV感染は、抗CD81抗体によって阻害される。HCV E1/1E2を発現するシュードタイプウイルスを使用した先の研究はまた、HCV E2とCD81との間の相互作用がウイルスの進入に重要であることを示唆している(Zhangら(2004)J.Virol.78,1448−1455)。CD81がこのHCV感染系において必要とされるか否かを決定するために、抗CD81抗体で前処理したナイーブHuh−7.5.1に、JFH−1ウイルスを0.3のmoiにて感染させ、そして感染後3日目に分析した。細胞内HCV RNAレベルは、用量依存的様式で減少した。特に、コントロール抗体で処理した細胞と比較して、HCV RNAの50倍の減少が、50μg/mLの抗CD81抗体を使用した場合に観察された(図4B)。
【0191】
感染性HCV JFH−1粒子の生理学的特性。分泌性の感染性HCVビリオンの密度を試験するために、非感染Huh7.5.1細胞およびHCV感染Huh7.5.1細胞から回収した上清を、スクロース勾配遠心分離に供した。勾配画分を、遠心分離後に回収し、そしてHCV RNAの存在および感染性について分析した(図5)。最大の感染価(1.25×104ffu/mL)は、画分5に存在し、そしてHCV RNAのピークと一致した。ピーク感染性画分の約1.105g/mLの見かけの密度は、患者の血清から単離したHCVビリオンについて先に報告されたこと(Hijikataら(1993)J.Virol.67,1953−1958;Trestardら(1998)Arch.Virol.143,2241−2245)と一致した。これらのデータは、組換えJFH−1ウイルスの密度がヒトから単離されたHCVの密度と同様であることを示す。
【0192】
(JFH−1 HCVのインビトロでの向性)
JFH−1ウイルスによる感染がHuh−7.5.1細胞に限定されるか否かを決定するために、肝細胞株(Huh−7およびHepG2)のパネルおよび非肝細胞株(HeLa細胞、HEK293形質転換B細胞、HL−60形質転換B細胞、U−937形質転換B細胞およびEBV−形質転換B細胞)のパネルに感染させる試行を、行った。感染後3日目におけるウイルスNS5Aタンパク質に対する免疫蛍光染色によって決定された通り、Huh−7.5.1細胞のほかに、Huh−7細胞のみが、HCV感染に対して許容性であった(データを示さない)。
【0193】
Huh−7.5.1細胞とHuh−7細胞との間の感染効率において量的な差が存在したか否かを決定するために、両方の細胞株を、並行して感染させた。図6に示されるように、感染したHuh−7細胞の上清への感染粒子の放出は、Huh−7.5.1細胞による粒子産生と比較して遅延されたようであった。それにもかかわらず、Huh−7細胞は、8日目および10日目に同様の量の感染性粒子を産生した。細胞内のHCV RNAの増幅における同様の遅延した動態がまた、Huh−7細胞において観察された(図7)。これらの結果は、Huh−7細胞がHuh−7.5.1細胞と同様の量の子孫ウイルスを産生し得るが、遅延した動態を伴うことを示す。
【0194】
本明細書中に報告した結果は、JFH−1トランスフェクトHuh−7.5.1細胞またはJFH−1感染Huh−7.5.1細胞が、JFH−1コンセンサスcDNAクローンからの感染性ウイルスのレスキュー(rescue)を可能にするHCV感染についての単純であるが頑強な細胞培養系を構成することを示す。したがって、本明細書中に示されるように、JFH−1 RNAのHuh−7由来細胞へのトランスフェクションは、生存可能なJFHウイルスの回復を可能にし、このJFHウイルスは、次いで連続的に継代され得、そして感染ベースの実験のために使用され得る。印象的であることは、上記ウイルスの系列希釈物による感染は、産生されるHCVを定量的に力価決定することを可能にする感染細胞病巣の形成をもたらしたことであった。
【0195】
したがって、感染後24時間以内における上清からの投入ウイルスの消失は、ウイルス粒子がこの時間枠内に細胞に進入し得たことを示す。感染性ウイルス力価がこれらの検出されていないレベルから104ffu/mL〜105ffu/mLまで上昇した場合、NS5Aポジティブ細胞の数もまた、増加し、このことは、上記ウイルスが新規の細胞に拡散していたことを示す(図3C)。重要なことには、ナイーブHuh−7.5.1細胞に継代される場合、トランスフェクト細胞および感染細胞の両方によって産生されたウイルスは、約22時間のHCV倍加時間を有する同じ感染動態を示した。この倍加時間は、感染した患者(Buhkら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:14416−21)およびチンパンジー(Neumannら(1998)Science 282:103−107)において先に報告された6時間〜8時間よりも長いが、技術的要因および生物学的要因が、この矛盾の原因であり得る。例えば、より早期の推定値は、感染した個体の血清において検出されたHCVゲノム等価物の数に基づいており、現在の研究において観察されるような感染価に基づいていなかった。
【0196】
ウイルス表面糖タンパク質E2に対する抗体がJFH−1ウイルスの感染性を減少させたという事実は、ウイルスの吸着および進入のプロセスがこの系において研究され得ることを示唆する。この主張と一致して、Huh−7由来細胞のHCV感染は、CD81(広範に特徴付けられた推定上のHCVレセプター)に対する抗体によって阻害された(図4)。
【0197】
したがって、JFH−1ウイルスの向性は、ほぼHuh−7由来細胞株に限定されるようである。先の研究は、HepG2細胞、HeLa細胞およびHEK293細胞がサブゲノムJFH−1レプリコンの支援を補助することを示している。Blightら(2000)Science 290,1972−1975;Katoら(2001)J.Med.Virol.64,334−339;Dateら(2004)J.Biol.Chem.279,22371−22376を参照のこと。しかし、HepG2細胞、HeLa細胞およびHEK293細胞は、上に記載したようにJFH−1ビリオンに感染されなかった。対照的に、HCVに適合していないHuh−7細胞は、JFH−1ウイルスに感染し易いことが見出された(図6)。Huh−7細胞におけるウイルス増幅は、若干ゆっくりであったが、Huh−7細胞は、最終的に、Huh−7.5.1細胞において達成されたウイルス力価に匹敵するウイルス力価をもたらした。
【0198】
Huh7.5細胞は、RIG−Iにおける不活性化変異を含み(Neumannら(1998)Science 282,103−107)、RIG−Iは、細胞の二本鎖RNA感知機構の重要な成分である(Tanakaら(2005)Intervirology 48,120−123)。HCV感染はウイルスの複製および/または拡散を一過性に遅らせるHuh−7細胞における二本鎖RNA抗ウイルス防御経路を誘導し得ることが、明らかである。HCVがHuh−7細胞に存在する制限を最終的に克服し、そしてHuh−7.5.1細胞によってもたらされるものと同様の力価に到達するという事実は、1つ以上のウイルスがコードする機能(例えば、NS3、NS5A)の発現が細胞内の抗ウイルス防御を遮断し得るか、または無効にし得ることをさらに示唆する。しかし、HCV感染は、外因性に添加されたインターフェロンの効果に対して感受性のままであった;IFNαおよびIFNγの両方は、Huh−7.5.1細胞のJFH−1ウイルス感染を予防した(図8)。興味深いことに、これらのインビトロでの観察は、臨床的に見られる観察(この観察において、インターフェロン療法は、上記ウイルスウイルスをIFN(そのウイルスが誘導する)の存在下において存続させるためにそのウイルスが進化した機構にかかわらず、幾人かの患者においてウイルス力価を減少させ得る)と似ているようである。
【0199】
したがって、HCV感染の頑強な細胞培養モデルを、確立し、このモデルにおいて、感染性HCVが、産生され得、そしてナイーブ細胞に連続的に継代され得る。
【0200】
(実施例3:HCVペプチドは、C型肝炎ウイルスを阻害する)
上で記載される通り、Huh−7細胞およびHuh−7.5.1細胞に、HCV遺伝子型2a JFH−1クローンによって産生されたウイルスをインビトロで感染させ得る。この実施例は、配列番号6を有するHCVペプチド、配列番号8を有するHCVペプチド、配列番号12を有するHCVペプチド、配列番号13を有するHCVペプチド、配列番号14を有するHCVペプチド、配列番号24を有するHCVペプチド、配列番号27を有するHCVペプチド、配列番号30を有するHCVペプチド、配列番号32を有するHCVペプチド、配列番号43を有するHCVペプチド、配列番号44を有するHCVペプチド、配列番号47を有するHCVペプチド、配列番号48を有するHCVペプチドおよび配列番号53を有するHCVペプチドが、上に記載されたHCV感染のこの細胞培養モデルを使用して測定されるように、HCV感染を強力に阻害することを示した。他のペプチドは、HCV感染の良好な阻害を示した。有効なインヒビターであるこれらのHCV由来合成ペプチドは、HCVポリタンパク質の構造領域および非構造領域の両方に由来する。
【0201】
遺伝子型1a(H77)(配列番号1)の完全なHCVポリタンパク質を網羅する441個の重複するペプチドのペプチドライブラリーを、試験した。上記ペプチドは、約18アミノ酸長であり、11個の重複するアミノ酸を有した。上記ペプチドライブラリーは、NIH AIDS Research and Reference Reagent Program(カタログ番号7620、ロット番号1)によって提供された。
【0202】
HCV感染に対する抗ウイルス活性を示すペプチドを同定するために、上記ペプチドライブラリーを、HCV病巣減少アッセイ(focus reduction assay)によってスクリーニングした。上記ペプチドを、最終濃度10mg/mLで100%のDMSOにおいて再構成し、そして−20℃で保存した。ペプチドストック溶液を、50フォーカス形成単位(ffu)のHCVを含む完全DMEM増殖培地において約20μMの最終濃度まで1:200で希釈した。上記ウイルス−ペプチド混合物を、96ウェルプレート中の1ウェルあたり8000個の細胞の密度にてHuh−7.5.1細胞に移した、37℃にて4時間時間にわたる吸着の後、その接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、その細胞に、120μLの新鮮な増殖培地を積層し、そしてそれを、37℃にてインキュベートした。3日間の培養後、その細胞を、パラホルムアルデヒドによって固定し、そしてHCV非構造タンパク質NS5Aに対する抗体によって免疫染色した。HCV病巣の数を、蛍光顕微鏡検査において数え、そしてその結果を、ペプチド処理を伴わないが、溶媒である0.5%のDMSOを含む偽(mock)の百分率(%)として示す。
【0203】
これらのアッセイの結果を、図9および以下の表に示す。
【0204】
【表3−1】
【0205】
【表3−2】
441個のペプチドのうち、382個は、HCV感染に対する効果を有さなかったか、またはHCV感染を20%未満で遮断した(表3に示さない)。41個のペプチドが、わずかにHCV感染を約2倍〜5倍阻害した。4個のペプチドが、HCV感染を5倍〜10倍阻害した。14個のペプチドが、10倍より大きくHCV感染を阻害した。特に、HCV感染は、配列番号6、8、12、13、14、24、27、30、32、43、44、47、48および53のペプチドによって顕著に阻害された(90〜100%)。Huh−7.5.1細胞をこれらのペプチドと一緒にインキュベートした場合、毒性の形跡は検出されなかった。これらの結果は、ウイルスの生活環における1つ以上の工程を改変または阻害し得るペプチドインヒビターを同定する。さらに、本発明に従って、これらのペプチドは、抗ウイルス組成物およびHCV感染を阻害するための方法において使用され得る。感染を90%よりも大きく阻害したペプチドを、さらなる分析のために選択した。
【0206】
HCV感染に対する選択したペプチドの阻害効果を正確に定量するために、細胞内HCV RNAを、ペプチド処理を行った場合およびペプチド処理を行わなかった場合において、感染後にリアルタイムRT−QPCRによって測定した。ペプチドストック溶液を、1:100に希釈し、そして等量のウイルス上清と混合(トランスフェクション後18日目のウイルス調製から伝播した)して、約20μMの最終濃度にした。次いで、ペプチドまたは0.5%のDMSO溶媒コントロールを伴うウイルスを、Huh−7.5.1細胞に0.1の感染多重度(MOI)にて感染させるために使用した。37℃にて4時間にわたる吸着の後、接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、その細胞に、120μLの新鮮な増殖培地を積層し、そしてそれを、37℃にてインキュベートした。示された時点において、全細胞RNAを、グアニジンチオシアネート法によって単離した。HCV RNA転写物レベルを、プライマー5’−TCTGCGGAACCGGTGAGTA−3’(センス、配列番号89)および5’−TCAGGCAGTACCACAAGGC−3’(アンチセンス、配列番号90)を用いてリアルタイムRT−QPCRによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。結果を、以下の表に要約する。
【0207】
【表4−1】
【0208】
【表4−2】
感染性の階層に基づいて、ほとんどの活性ペプチドに、上の表に示される通り、感染性の階層におけるそれらの位置を反映するように数値表示(numerical designator)を再び割り当てた。
【0209】
(実施例4:N末端切断ペプチド1およびC末端切断ペプチド1の分析)
ペプチド#1(配列番号43)の抗ウイルス活性を規定するために、ペプチド1の一連のN末端切断物およびC末端切断物の抗ウイルス活性を、病巣減少アッセイを使用し、そして記載したように細胞内HCV RNAの減少を測定することによって分析した。
【0210】
高度に精製したペプチド(95%を超える純度)を、これらの研究のために使用した。全てのペプチドを、A&A Labs,LLC(San Diego,CA)によって予め標識されたワング(wang)樹脂においてフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)化学を使用して合成した。上記ペプチドを、Symphonyマルチプルペプチド合成機(multiple peptide synthesizer)(Protein Technologies Inc,Tucson,AZ)において合成した。次いで、粗ペプチドを、精製し、そして逆相Gilson HPLCシステム(Gilson,Inc.Middleton,WI)によって分析した。使用したカラムは、20mmのビーズ径および250mmの長さを有するC18カラム(Grace Vydac,Hesperia,California)であった。溶媒系は、30分間にわたって5%〜70%の直線勾配を有するH2Oおよびアセトニトリル溶媒系であった。質量スペクトル分析を、PE Sciex API−100質量分析計によって行った。これは、合成されたペプチドの分子量を確認した。ペプチド濃度を、発色団残基(トリプトファンまたはチロシン)の消衰係数を使用して決定した(トリプトファン=5560AU/ミリモル/mLおよびチロシン1200=AU/ミリモル/mL)。計算を、式:1mLあたりのペプチドのmg=(A280×DF×MW)/eを使用して行い、ここでA280は、1−cmセルでの280nMにおける溶液の実際の吸光度であり、DFは、希釈率(dilution factor)であり、MWは、ペプチドの分子量であり、そしてeは、280nMにおける各発色団のモル吸光係数であった。
【0211】
以下の表に要約した結果は、1〜4アミノ酸残基のC末端切断を有するペプチドが抗ウイルス活性を保持したことを示す。N末端からのわずか2アミノ酸の除去は、抗ウイルス活性を破壊した。
【0212】
【表5】
(実施例5:ペプチド1の抗HCV活性)
ペプチド#1の抗ウイルス効果の持続期間を調べるために、Huh−7.5.1細胞に、18μMにおける単一用量のペプチド#1と一緒に、HCVをMOI=0.1にて感染させた。37℃にて4時間後、そのウイルス−ペプチド接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、その細胞に、120μLの新鮮な増殖培地を積層し、そしてそれを、37℃にてインキュベートした。細胞を、コンフルエンシー(confluency)に到達した時に、6の比で分割し、そして11日間にわたって維持した。示された時点において、全細胞RNAを、グアニジンチオシアネート法によって単離した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイムRT−QPCRによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。その結果(図10A)は、ペプチド1がHCV感染を持続的に予防することを示す。
【0213】
ペプチド#1が進行中の感染を廃絶し得るか否かを決定するために、Huh−7細胞に、最初にHCVをMOI=0.1にて感染させた。37℃にて4時間にわたる吸着の後、そのウイルス接種材料を、除去した。次いでその細胞を、増殖培地によって2回洗浄し、そしてその細胞に、18μMにおけるペプチド#1またはコントロールとしての0.5% DMSOのいずれかを含む120μLの新鮮な培地を積層し、そしてそのペプチドを、その後、培養培地中で維持した。その細胞を、37℃にてコンフルエンシーまでインキュベートし、その時点でそれらを、1:4の比で分割した。分割の際、細胞懸濁物の一部分を、RNA分析に供した。全細胞RNAを、グアニジンチオシアネート法によって単離した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイムRT−QPCRによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。並行して、細胞を、HCV E2タンパク質に対する抗体によって免疫染色し、そしてHCV E2ポジティブ細胞の数を、蛍光顕微鏡下で数えた。その結果(図10B)は、感染の4時間後においてペプチド#1を添加すること、および培養培地においてペプチド#1を維持することが、ウイルス増幅の最初のラウンドに対して効果を有さなかったことを示す。なぜならば、ウイルス感染価および細胞内のウイルスRNAは、上記細胞を4日目に分割するまで、全ての群において同じであったからである。しかし、上記細胞を分割した各時点において培養物に上記ペプチドを添加することによって、さらなるウイルス増幅(四角)を、上清の感染価(三角)を迅速かつ顕著に減少させることにより予防した。
【0214】
ペプチド#1の半有効濃度(EC50)を決定するために、ペプチドストック溶液(DMSO中の3.6mM)を、DMSOにおいて連続的に2倍に希釈した。次いで、各希釈からのペプチドのアリコートを、完全増殖培地において1:100に希釈し、そして等量のウイルス上清と混合した。次いで、そのウイルス−ペプチド混合物を、Huh−7.5.1細胞に感染(MOI=0.1)させるために使用した。37℃にて4時間にわたる吸着の後、そのウイルス−ペプチド接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、その細胞に、120μLの新鮮な増殖培地を積層し、そしてそれを、37℃にて3日間インキュベートした。細胞を、溶解し、そしてRNA分析に供した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイムRT−QPCRによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。HCV感染の阻害を、ペプチド処理と溶媒コントロールとの間で細胞内HCV RNA転写物を比較することによって計算した。その結果(図10C〜図10D)は、ペプチド#1のEC50がこれらの条件下で約300nMであることを示す。
【0215】
(実施例6:ペプチド#1の抗ウイルス活性の機構の決定)
ペプチド#1の抗ウイルス活性の機構を規定するために、感染性接種材料の細胞における、ウイルスRNAの細胞による結合/接着/取り込みを予防するペプチド#1の能力を、調べた。Huh−7.5.1細胞を、96ウェルプレート中の1ウェルあたり8000個の細胞で接種した。16時間後、その細胞を、18μMの濃度のペプチドの存在下または非存在下において、HCVと一緒にMOI=0.1にてインキュベートした。37℃にて4時間にわたる吸着の後、そのウイルス−ペプチド接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、溶解し、そしてRNA分析に供した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT−QPCR)アッセイによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。阻害活性を、ウイルス−ペプチド接種材料に曝された細胞 対 ウイルス−DMSOコントロールに曝された細胞において、細胞が有するHCV RNAの量を比較することによって定量した。その結果(図11A)は、ペプチド1(およびペプチド1と重複するペプチド2)が、ウイルスの結合/接着/取り込みを有意に遮断する一方で、他のペプチドが、このレベルにて活性ではなかったことを示す。
【0216】
作用の機構をさらに規定するために、ペプチド#1を、接種材料の添加の時間に対して異なる時点において細胞に添加した。Huh−7.5.1細胞を、96ウェルプレート中の1ウェルあたり8000個の細胞で接種した。一晩の増殖後、その細胞単一層に、8000ffu/ウェルのHCVを感染させた。ペプチド#1を、以下の3つの異なる時間において18μMの最終濃度まで添加した:1)プレインキュベーション(すなわち、細胞との4時間のインキュベーション(次いで、ウイルス感染前の洗浄が行われる));2)同時インキュベーション(すなわち、ウイルスおよびペプチドが洗浄によって除去された後に4時間にわたってウイルスと同時に起こる);3)インキュベーション後(すなわち、ウイルスを4時間にわたって添加し、次いで細胞を、ウイルスを除去するために洗浄し、そしてペプチドを、添加し、そして実験の期間にわたって維持した)。感染の24時間後および72時間後において、細胞を、溶解し、そしてRNA分析に供した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイムRT−QPCRによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。その結果(図11B)は、上記ペプチドが、そのウイルスと一緒に添加した場合にもっとも有効であり、したがって最も可能性のある作用の機構としてウイルス中和を指向することを示す。
【0217】
ペプチド#1は、HCVビリオンに対して殺ウイルス性(virocidal)であり得るか、またはウイルスと細胞との間の相互作用を遮断し得る。上記機構をさらに解明するために、HCV殺ウイルスアッセイを、行った。簡単にいうと、ペプチド#1を、2×105ffu/mLのHCVを含む完全増殖培地において18μMの最終濃度まで希釈した。そのウイルス−ペプチド混合物を、37℃にて4時間インキュベートした。そのサンプルを、以下の通り、3つの異なるアッセイによって分析した。
【0218】
HCV感染性アッセイにおいて、上記サンプルを、増殖培地において、上記ペプチドがHCV感染に対する阻害効果を有さない濃度までさらに250倍に希釈した。残存する感染性を、その希釈したサンプルをHuh−7.5.1細胞上におくことによって決定し、そして細胞を、72時間後にHCV E2タンパク質に対する抗体によって染色した。その結果(図11C)は、ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションがウイルスの感染性を完全に廃絶することを示す。
【0219】
全HCV RNAアッセイにおいて、全RNAの10μLサンプルを、グアニジンチオシアネート法によって直接単離した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイムRT−QPCRによって測定し、そしてCPEの間にウイルス上清中に放出されたGAPDHのレベルに対して正規化した。結果(図11D)は、ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションが全ウイルスRNA成分を少なくとも3倍減少させることを示し、このことは、ウイルスの溶解を示唆する。
【0220】
スクロース密度勾配を、全HCV RNAおよびHCV感染性に対するペプチド1の抗ウイルス効果がHCV粒子のサブセットに限定されるか否かを調べるために使用した。この方法において、ペプチド処理サンプルおよびコントロールウイルスサンプル(250μL)を、スクロース密度勾配に対して分散(resolve)させ、そして画分を、感染性およびウイルスRNA含量について分析した。勾配を、TNE緩衝液(10mMのTris−HCl(pH8)、150mMのNaCl、2mMのEDTA)中の20%スクロース溶液、30%スクロース溶液、40%スクロース溶液、50%スクロース溶液および60%スクロース溶液の等容量(700μL)段階によって形成した。平衡を、120,000gで4℃にて16時間にわたる超遠心分離(SW41Tiローター、Beckman Instruments,Palo Alto,CA)によって達成した。250μLの15個の画分を、上部から回収し、そしてHCV RNAおよびウイルス感染価の両方について分析した。各画分の密度を、各サンプルにおける100μLアリコートの質量を測定することによって決定した。その結果(図11E)は、ウイルスとペプチドとのプレインキュベーションが全ての画分において感染性を完全に廃絶し、そして全ての画分のウイルスRNA含量を約4〜5倍減少させることを示し、このことは、ウイルスの溶解をさらに示唆する。
【0221】
(実施例7:ペプチド1のL形態とD形態との比較)
L−アミノ酸からなるペプチドは、タンパク質分解を受け易く、そのタンパク質分解は、ペプチドの半減期を短くし、したがってペプチドの生物学的活性を短くし得る。タンパク質分解の可能性を調べるため、そして特定のペプチド−ウイルスタンパク質相互作用が抗ウイルス活性を媒介するか否かを決定するために、ペプチド1を、全てD−アミノ酸を使用して合成し、95%を超える均一性まで精製し、そしてその抗ウイルス活性および血清安定性を、ペプチド#1のL型バージョンの同様に純粋な調製物と比較した。L型ペプチドおよびD型ペプチドの両方を、完全増殖培地(10%のFBS)において1:100に希釈し、そして等容量のウイルス上清と混合した。
【0222】
さらに、L型ペプチドおよびD型ペプチドの血清安定性を比較するために、上記希釈したペプチドを、ウイルス上清と混合する前に、37℃にて、1時間、2時間および4時間インキュベートした。次いで、そのウイルス−ペプチド混合物を、Huh−7.5.1細胞に感染させる(MOI=0.1)ために使用した。37℃にて4時間にわたる吸着の後、そのウイルス−ペプチド接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、その細胞に、120μLの新鮮な増殖培地を積層し、そしてそれを、37℃にて3日間インキュベートした。細胞を、溶解し、そしてRNA分析に供した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイムRT−QPCRによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。その結果(図12A)は、L−ペプチドの抗ウイルス活性の約95%が37℃における10%のFBSにおいて1時間以内に喪失したのに対して、D−ペプチドが同じ条件下で少なくとも4時間にわたって完全に安定であったことを示す。したがって、低い免疫原性および可能な経口バイオアベイラビリティーに加えて、D−アミノ酸からなるペプチドは、増強された血清安定性の潜在的な治療的利益を有する。
【0223】
ペプチド#1のL形態およびD形態の半有効濃度(EC50)を決定するために、ペプチドストック溶液(DMSO中の3.6mM)を、DMSOにおいて連続的に2倍に希釈した。次いで、各希釈物由来のペプチドのアリコートを、完全増殖培地において1:100に希釈し、そして等容量のウイルス上清と混合した。次いで、そのウイルス−ペプチド混合物を、Huh−7.5.1細胞に感染させる(MOI=0.1)ために使用した。37℃にて4時間にわたる吸着の後、そのウイルス−ペプチド接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、その細胞に、120μLの新鮮な増殖培地を積層し、そしてそれを、37℃にて3日間インキュベートした。細胞を、溶解し、そしてRNA分析に供した。HCV RNA転写物レベルを、リアルタイムRT−QPCRによって測定し、そして細胞GAPDHレベルに対して正規化した。HCV感染の阻害を、ペプチド処理と溶媒コントロールとの間で細胞内HCV RNA転写物を比較することによって計算した。その結果(図12B〜図12C)は、ペプチド1のL形態およびD形態のEC50値が実質的に同一であることを示す。
【0224】
(実施例8:ペプチドの毒性)
ペプチドの細胞傷害性を、ATCC MTTアッセイキット(カタログ番号30−1010K)において提供されるプロトコルに基づくMTT細胞傷害アッセイによって測定した。簡単にいうと、96ウェルプレート中の1ウェルあたり5000個〜10,000個の細胞を、接種した。一晩の増殖後、20μLの連続的に2倍に希釈したペプチドを加えた100μLの新鮮な媒体を、添加した。ペプチドを含まない媒体を、未処理のコントロールとして少なくとも3個のウェルに添加した。次いで、その細胞を、37℃、5% CO2にて72時間インキュベートした。このインキュベーションの後、1/10容量のMTT溶液(PBS中の5μg/mL)を、各ウェルに添加し、そしてその細胞を、インキュベーターに戻した。2時間後、その媒体を、除去し、150μLのDMSOを、紫色の沈殿物であるホルマザンを溶解するために添加し、そしてそのプレートを、150rpmにて10分間にわたって振盪した。670nMにおけるバックグランドを減算した570nmにおける吸光度は、細胞死の信頼できる基準である。個々のペプチドの細胞傷害性(LD50)を、50%の細胞死を引き起こしたペプチド濃度として定義した。その結果(図13A)は、ペプチド1のL形態およびD形態のLD50値が実質的に同一である(それぞれ、3.8μMおよび3.7μM、FBSを伴わない;ならびに26.7および36.8μM、FBSを伴う)ことを示す。
【0225】
新鮮なヒト血液(EDTAによって処理した)を、上清およびバフィーコートを除去するために1000gにて10分間遠心分離した。次いで、赤血球を、PBSにおいて2回洗浄し、そして16%のFBSを伴う場合および16%のFBSを伴わない場合において8%の最終濃度まで再懸濁した。ペプチドの2倍系列希釈物を、96ウェルマイクロタイタープレート中で60μLのPBSにおいて調製し、そしてFBSを伴う場合およびFBSを伴わない場合において、60μLの懸濁したヒト赤血球を、添加した。そのプレートを、37℃にて1時間インキュベートした。このインキュベーションの後、120μLのPBSを、各ウェルに添加し、そしてそのプレートを、1000gにて5分間遠心分離した。上清の100μLのアリコートを、新規の96ウェルマイクロタイタープレートに移した。ヘモグロビンの放出を、マイクロプレートELISAリーダーを使用し、414nMにおける吸光度を測定することによってモニタリングする。そのプレートにおいて、0%および100%の溶血を、それぞれ、PBSおよび0.1%のTriton X−100において決定する。%溶血を、式:[(ペプチド溶液におけるA414nm−PBSにおけるA414nm)/(0.1%のTriton X−100におけるA414nm−PBSにおけるA414nm)]×100に従って決定する。
【0226】
その結果(図13B)は、血清の存在下で試験した場合、ヒト赤血球に対するL−ペプチドおよびD−ペプチドのLC50値が、互いに同様であり、そしてインビトロでの肝細胞細胞株に対するそれらのLC50と同様であるであることを示す。重要なことに、両方の細胞型に対するLC50値は、一貫して各ペプチドについてのEC50値よりも50〜100倍高い。
【0227】
ペプチド1、ペプチド2およびペプチド3のインビボ細胞傷害性の予備的な測定(表4を参照のこと)の通り、3匹のマウスの群(BALB/cマウス、7週齢、約23g)に、200μLのPBS(注射前に3分間にわたって14,000rpmで回転させた)中の92μgのL型ペプチド1(約4mg/kg)をそれぞれ注射した。コントロール群において、3匹のマウスの各々に、5%のDMSOを含む200μLのPBSを与えた。そのマウスを、注射後の最初の3時間の間の急性毒性についてモニタリングした。結果を、以下の表に要約する。
【0228】
【表6】
外見、活動または行動における変化は、観察されなかった。次いで、そのマウスを、0日目、3日目、5日目、7日目および10日目において秤量した。ペプチドを注射したマウスは、コントロールと同じ速度で体重が増加した。
【0229】
(実施例9:ペプチド1の物理的特性は、その抗ウイルス活性と相関する)
ペプチド1(配列番号43)の二次構造を、cti.itc.virginia.edu/〜cmg/Demo/wheel/wheelApp.html(最後に2006年8月15日に訪れた)においてオンラインで利用可能であるへリックス車輪図アプレット(helical Wheel Applet)のツールを使用して分析した。得られたへリックス車輪図(図14A)は、ペプチド1が疎水性面および親水性面の両方を有する両親媒性であることを示す。
【0230】
ペプチド1の二次構造をまた、Avivモデル62DS CD分光計(Aviv Associates Inc.,Lakewood,N.J.)を使用し、円偏光二色性(CD)分光学を使用して分析した。ペプチドのCDスペクトルを、25℃にて1mm路程のセルを使用して測定した。1サンプルあたり3回の走査を、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)において190〜260nMの波長範囲にわたって行った。データを、60nM/分の走査速度によって0.1nM間隔にて回収し、そして平均モル楕円率[q]で得た。ペプチド濃度は、50μMであった。アンホトロピックなα−へリックスの非常に特徴的なスペクトルが、ペプチド1のL形態およびD形態について観察された(図14B)。さらに、ダンシル化は、ペプチド1のアンホトロピックなα−へリックス構造を増強する(図14C)。したがって、本発明のペプチドは、そこに共有結合されたダンシル部分を有し得る。
【0231】
ペプチド1の種々の切断誘導体(表7)の二次構造を、CD分光学を使用して分析した。結果は、ペプチド1のC末端からの2アミノ酸または4アミノ酸の削除がそのペプチドのα−へリックス構造を排除しなかったこと(図14D)を示す。対照的に、ペプチド1のN末端からの2アミノ酸の削除は、そのペプチドのα−へリックス構造を排除した(図14E)。
【0232】
ペプチド1のこれらの切断された改変体の抗HCV活性をまた、決定した。結果(表7)は、ペプチド1(L形態)の抗ウイルス活性がそのα−へリックス構造と相関することを示す。
【0233】
【表7】
(実施例10:リポソーム−色素放出アッセイ)
リポソーム(Large Unilamellar Vesicles,LUV)を、以下の通りに調製した。10POPC:11DPPC:1POPS:6Cholestrol(Avanti Polar Lipids,Inc.,Alabaster,AL)からなる比率における28mgの総脂質(12mM)を含む脂質混合物を、1mLのクロロホルム、1mLのエーテル、および2mLのスルホローダミンB(10mM Hepes中の100mM、pH7.2;SulfoB,Molecular Probes)に溶解した。その混合物を、Branson 2210水浴超音波処理器を使用して10分間にわたって4℃にて超音波処理した。有機溶媒を真空Buchi Rotavapor R−114を使用して除去した後、その脂質を、2mLのスルホローダミンBに再懸濁した。その混合物を、発泡が止まるまでエバポレート(vaporate)した。その脂質小胞を、Mini−Extruder(Avanti Polar Lipids,Inc.,Alabaster,AL)を使用して0.8μm、0.4μm、および0.2μmのポリカーボネート濾過膜の積み重ねを通して8回繰り返し押し出すことによってサイジングした。スルホローダミンBを搭載されたリポソームを、Sephadex G−25カラムにおいて封入されていないスルホローダミンBから分離した。
【0234】
色素放出アッセイを、Aminco−Bowman Series 2 Luminescence Spectrometer(Thermo Electron Corporation,Waltham,MA)において行った。10マイクロリットルのリポソームを、滅菌したキュベット中で室温にて978μLのHepes緩衝液で120μMの最終濃度まで希釈した。そのサンプルを、535nMの波長で励起させ、そして発光を、585nMにてモニタリングした。60秒間の平衡後、10μLのペプチドを、上記キュベットに添加し、そして膜破裂の動態を、スルホローダミンB蛍光の増加によってモニタリングした。ペプチドの添加によって放出されたスルホローダミンBの%を、以下の式:放出されたスルホローダミンBの%=100×(F−Fo)/(F100−Fo)を使用して計算し、ここでFは、上記ペプチドによって達成された蛍光強度であり、Foは、ペプチドの添加の際に得られた基礎的な蛍光強度、そしてF100は、25μLの10% Triton X−100の添加によって得られた100%のスルホローダミンB放出に対応する蛍光強度である(図15A)。
【0235】
表7中のペプチドを、このアッセイにおいて試験した。結果(図15B)は、ペプチド1の種々の誘導体の抗ウイルス活性がリポソーム色素放出を引き起こす能力と相関することを示す。したがって、ペプチド1の抗ウイルス活性は、以下の表に要約される通り、α−へリックス構造およびリポソーム色素放出と相関する。
【0236】
【表8】
(実施例11:抗ウイルス活性および一次構造)
ペプチド1の抗ウイルス活性がその一次アミノ酸配列に依存するか否かを決定するために、ペプチド1由来の4種の誘導体ペプチドを、95%を超える純度に合成した。アミノ酸の同じ組成を有する4種の誘導体は、(1)ペプチド1の配列を逆転したもの(レトロ−ペプチドとも称される);(2)スクランブルされた疎水性アミノ酸;(3)スクランブルされた親水性アミノ酸;および(4)アスパラギン酸残基(D)がプロリン残基(P)によって置換された誘導体を含んだ。上記ペプチドの抗ウイルス活性を、上に記載したように以下の3つのペプチド濃度においてHCV病巣減少アッセイによって調べた:18μM、6μMおよび2μM。
【0237】
以下の表に要約される結果は、ペプチド1の抗ウイルス活性が、α−へリックス構造と相関するが、一次アミノ酸配列と相関しないことを示す。
【0238】
【表9】
要約すると、合成HCVペプチドライブラリーをスクリーニングすることによって、効率的にHCV感染を阻害し得る13個のペプチドが、同定された。例えば、NS5A(NS5A−1975)の膜アンカードメインに由来するペプチド1は、単一用量のこのペプチドが、細胞傷害の形跡を伴わずに289nMのEC50によってHCV感染を完全に遮断したので、非常に強力である。抗ウイルス効果は、感染後少なくとも11日目に関して明白であった。ペプチドは、ウイルスと一緒に細胞に添加される場合、最も活性であった。ペプチドとウイルスとのプレインキュベーションは、ウイルスの接着および感染性を有意に減少させ、このことは、NS5A−1975の抗ウイルス活性が、そのウイルスと直接的に相互作用し、そしてそのウイルスを脱安定化することを示唆する。そのペプチドのD−アミノ酸形態は、完全に活性であり、そしてそのペプチドのD形態およびL形態は、溶液中の両親媒性のα−へリックス構造を示し、そして人工リポソームの透過を誘導する。重要なことに、一連のN末端切断NS5A−1975ペプチドおよびC末端切断NS5A−1975ペプチドの抗ウイルス活性は、それらの膜透過活性および両親媒性のα−へリックス構造と完全に相関する。対照的に、NS5A−1975は、水疱性口内炎ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスおよびボルナ病ウイルスを含む数種の他のエンベロープRNAウイルスに対する効果を有さなかった。したがって、ペプチド1は、ウイルスを細胞外で不活化することによってHCV感染を遮断する、強力なHCV由来の合成α−ヘリックスペプチドである。これらの結果は、NS5A−1975がHCV感染に対する新規の治療ストラテジーを示し得ることを示唆する。
【0239】
(実施例12:VSV感染に対するペプチドの効果)
ペプチド#1の抗ウイルス活性がHCVに対して特異的であるか否かを決定するために、同様の実験を、他のエンベロープウイルス(例えば、水疱性口内炎ウイルス(VSV))に対して行った。2つのアッセイを、VSVに対するペプチド#1の抗ウイルス活性を試験するために使用した。
【0240】
感染の遮断。ペプチド1がVSV感染を遮断するか否かを調べるために、18μMの最終濃度におけるペプチド1および1pfu/mL〜10,000pfu/mLのVSVを、Huh−7細胞に対して同時に添加した。並行して、ペプチドおよびHCV(10,000ffu/mL)を、コントロールとして細胞に添加した。37℃にて4時間にわたる吸着の後、そのウイルス−ペプチド接種材料を、除去した。その細胞を、2回洗浄し、その細胞に、120μLの新鮮な増殖培地を積層し、そしてそれを、37℃にて3日間インキュベートした。VSV感染およびHCV感染を、それぞれ、ウイルスの細胞変性効果(CPE)、およびHCV E2タンパク質に対する抗体による免疫染色によって評価した。
【0241】
殺ウイルス(virocidal)活性。ペプチド1がVSVに対する殺ウイルス(virucidal)活性を有するか否かを決定するために、ペプチド1を、2×105pfu(ffu)/mLのVSVまたはHCVを含む完全増殖培地において18μMの最終濃度まで希釈した。次いで、そのウイルス−ペプチド混合物を、37℃にて4時間インキュベートした。次いで、VSVウイルス力価およびHCVウイルス力価を、系列希釈によって決定し、そして、それぞれ、ウイルスの細胞変性効果(CPE)、およびHCV E2タンパク質に対する抗体による免疫染色によって評価した。
【0242】
その結果(図8)は、ペプチド1が、VSV感染を遮断せず、そしてVSVに対する殺ウイルス活性を有さないことを示す。
【0243】
(実施例13:2型デング熱感染に対するペプチドの効果)
以下の実験を、ペプチドが2型デング熱感染を阻害することを決定するために行った。
【0244】
酵素結合イムノソルベント検定法。Vero細胞(80,000個の細胞/ウェル/ml)を、24ウェルプレートにおいて感染の24時間前に接種した。細胞を、漸増濃度のペプチド(またはコントロールとしてのDMSO)の存在下において2型デング熱(Vero細胞に由来する)に曝した。ウイルスおよびペプチドを、インキュベーション全体を通して除去した(細胞を、洗浄しなかった)。感染を、感染したVero細胞の上清中に放出された2型デング熱カプシドの量を測定するELISAを使用して、5日後に分析した。
【0245】
蛍光病巣アッセイ:Vero細胞を、96ウェルプレートにおいて感染前24時間にわたって接種した。細胞を、漸増濃度のペプチド(またはコントロールとしてのDMSO)の存在下において2型デング熱に曝した。ウイルスおよびペプチドを、感染の2時間後に洗い流した。上清を、感染後3日毎に回収し、そしてその上清を、蛍光病巣アッセイのために、新鮮なVero細胞に添加した。新規に感染したVero細胞を、3日後に4%ホルムアミドによって固定した。次いで、細胞を、デング熱Env抗体によって染色し、次いでAlexa−fluor色素に結合体化した二次抗体によって染色した。病巣を、蛍光顕微鏡を使用して数えた。
【0246】
結果を、以下の表および図17に要約する。
【0247】
【表10】
表10および図17に示す通り、デング熱感染は、本発明のペプチドによって用量依存的様式で阻害された。本質的に、デング熱ウイルス感染の100%の阻害は、20μMの濃度において観察された(図17)。
【0248】
細胞内FACSアッセイ:Vero細胞を、6ウェルプレートにおいて感染前24時間にわたって接種した。細胞を、漸増濃度のペプチド(またはコントロールとしてのDMSO)の存在下において2型デング熱に曝した。ウイルスおよびペプチドを、感染の2時間後に洗い流した。細胞を、感染後3日目に細胞内染色のために採取した。細胞を、適切なアイソタイプコントロール抗体、デング熱Env抗体、デング熱カプシド抗体またはチューブリン抗体によって染色した。細胞を、FACSによって分析した。
【0249】
20μMのペプチド濃度を使用した場合の結果を、表11に示す。1.25μM〜20μMについての結果を、図18に示すグラフにおいて要約する。
【0250】
【表11】
表11および図18に示す通り、本発明のペプチドは、デング熱ウイルス感染を用量依存的様式で阻害する。本質的に、デング熱ウイルス感染の100%の阻害は、20μMの濃度において観察された(図18)。
【0251】
蛍光病巣アッセイ。Vero細胞を、96ウェルプレートにおいて感染前24時間にわたって接種した。細胞を、漸増濃度のペプチド(またはコントロールとしてのDMSO)の存在下において2型デング熱に曝した。ウイルスおよびペプチドを、感染の2時間後に洗い流した。上清を、感染後3日毎に回収し、そして蛍光病巣アッセイのために、新鮮なVero細胞に添加した。新規に感染したVero細胞を、3日後に4%ホルムアミドによって固定した。次いで、細胞を、デング熱エンベロープタンパク質に対する抗体によって染色し、次いでAlexa−fluor色素に結合体化した二次抗体によって染色した。病巣を、蛍光顕微鏡を使用して数えた。
【0252】
図19に示される結果は、本発明のペプチドがデング熱ウイルス感染を強力に阻害することをさらに確認する。本質的に、デング熱ウイルス感染の100%の阻害は、20μMの濃度において観察された(図19)。
【0253】
(実施例14−ペプチド1は、西ナイルウイルス感染に対して強力な抗ウイルス活性を有する)
この研究において、西ナイルウイルス(WNV)(フラビウイルス属)に対するペプチド1の活性を、調べた。A549細胞に、102PFU/mL〜105PFU/mLのWNV(New York株)を、0.5% DMSOまたはペプチド1(0.5% DMSO中の最終濃度18μM)の存在下で感染させた。37℃におけるインキュベーションの3日後、その細胞を、固定し、そしてWNVタンパク質を検出するために免疫ペルオキシダーゼ染色に供した。結果(図20)は、DMSOによって処理した、105PFU/mLを伴う細胞単一層がほぼ完全に破壊され、そしてより低い力価のウェル中の細胞全てがWNVタンパク質を発現したことを示す。対照的に、ペプチド処理細胞における単一層は、インタクトであり、そしてWNVタンパク質は、ほとんど検出されないか、または全く検出されなかった。特に、WNVタンパク質の染色強度は、ウイルス接種材料の用量にかかわらず、感染していないネガティブコントロールウェルと同じであった。これらの結果は、ペプチド1(配列番号43)がWNV感染に対する強力な抗ウイルス活性を有することを示す。
【0254】
(文献)
1.Hoofnagle,J.H.(2002)Hepatology 36,S21−29。
2.Kanto,T.,Hayashi,N.,Takehara,T.,Tatsumi,T.,Kuzushita,N.,Ito,A.,Sasaki,Y.,Kasahara,A.&Hori,M.(1999)J.Immunol.162,5584−5591。
3.Auffermann−Gretzinger,S.,Keeffe,E.B.&Levy,S.(2001)Blood 97,3171−3176。
4.Hiasa,Y.,Horiike,N.,Akbar,S.M.,Saito,I.,Miyamura,T.,Matsuura,Y.&Onji,M.(1998)Biochem.Biophys.Res.Commun.249,90−95。
5.Alter,H.J.&Seeff,L.B.(2000)Semin.Liver Dis.20,17−35。
6.Thimme,R.,Oldach,D.,Chang,K.M.,Steiger,C.,Ray,S.C.&Chisari,F.V.(2001)J.Exp.Med.194,1395−1406。
7.Takaki,A.,Wiese,M.,Maertens,G.,Depla,E.,Seifert,U.,Liebetrau,A.,Miller, J.L.,Manns,M.P.&Rehermann,B.(2000)Nat.Med.6,578−582。
8.Lechner,F.,Wong,D.K.,Dunbar,P.R.,Chapman,R.,Chung,R.T.,Dohrenwend,P.,Robbins,G.,Phillips,R.,Klenerman,P.&Walker,B.D.(2000)J.Exp.Med.191,1499−1512。
9.Logvinoff,C.,Major,M.E.,Oldach,D.,Heyward,S.,Talal,A.,Balfe,P.,Feinstone,S.M.,Alter,H.,Rice,C.M.&McKeating,J.A.(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101,10149−10154。
10.Shoukry,N.H.,Sidney,J.,Sette,A.&Walker,C.M.(2004)J.Immunol.172,483−492。
11.Thimme,R.,Bukh,J.,Spangenberg,H.C.,Wieland,S.,Pemberton,J.,Steiger,C.,Govindarajan,S.,Purcell,R.H.&Chisari,F.V.(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99,15661−15668。
12.Bukh,J.(2004)Hepatology 39,1469−1475。
13.Ikeda,M.,Yi,M.,Li,K.&Lemon,S.M.(2002)J.Virol.76,2997−3006。
14.Lohmann,V.,Korner,F.,Koch,J.,Herian,U.,Theilmann,L.&Bartenschlager,R.(1999)Science 285,110−113。
15.Gale,M.,Jr.(2003)Hepatology 37,975−978。
16.Katze,M.G.,He,Y.&Gale,M.,Jr.(2002)Nat Rev Immunol 2,675−687。
17.Dubuisson,J.&Rice,C.M.(1996)J.Virol.70,778−786。
18.Ye,J.,Wang,C.,Sumpter,R.,Jr.,Brown,M.S.,Goldstein,J.L.&Gale,M.,Jr.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,15865−15870。
19.Kapadia,S.B.&Chisari,F.V.(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.102,2561−2566。
20.Lohmann,V.,Korner,F.,Dobierzewska,A.&Bartenschlager,R.(2001)J.Virol.75,1437−1449。
21.Blight,K.J.,Kolykhalov,A.A.&Rice,C.M.(2000)Science 290,1972−1975。
22.Kato,T.,Date,T.,Miyamoto,M.,Furusaka,A.,Tokushige,K.,Mizokami,M.&Wakita,T.(2003)Gastroenterology 125,1808−1817。
23.Kato,T.,Furusaka,A.,Miyamoto,M.,Date,T.,Yasui,K.,Hiramoto,J.,Nagayama,K.,Tanaka,T.&Wakita,T.(2001)J.Med.Virol.64,334−339。
24.Date,T.,Kato,T.,Miyamoto,M.,Zhao,Z.,Yasui,K.,Mizokami,M.&Wakita,T.(2004)J.Biol.Chem.279,22371−22376。
25.Kato,T.,Date,T.,Miyamoto,M.,Zhao,Z.,Mizokami,M.&Wakita,T.(2005)J.Virol.79,592−596。
26.Wakita,T.,Kato,T.,Date,T.&Miyamoto,M.(2004)11th International Symposium on Hepatitis C&related Viruses,Heidelberg,Germany。
27.Wakita,T.,Pietschmann,T.,Kato,T.,Date,T.,Miyamoto,M.,Zhao,Z.,Murthy,K.,Habermann,A.,Krausslich,H.G.,Mizokami,M.,Bartenschlager,R.&Liang,T.J.(2005)Nat.Med.in press。
28.Graham,F.L.,Smiley,J.,Russell,W.C.&Nairn,R.(1977)J.Gen.Virol.36,59−74。
29.Gey,G.O.,Coffman,W.D.&Kubicek,M.T.(1952)Cancer Res.12,264−265。
30.Knowles,B.B.,Howe,C.C.&Aden,D.P.(1980)Science 209,497−499。
31.Moradpour,D.,Evans,M.J.,Gosert,R.,Yuan,Z.,Blum,H.E.,Goff,S.P.,Lindenbach,B.D.&Rice,C.M.(2004)J.Virol.78,7400−7409。
32.Krieger,N.,Lohmann,V.&Bartenschlager,R.(2001)J.Virol.75,4614−4624。
33.Chomczynski,P.&Sacchi,N.(1987)Anal.Biochem.162,156−159。
34.Kapadia,S.B.,Brideau−Andersen,A.&Chisari,F.V.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,2014−2018。
35.Heller,T.,Saito,S.,Auerbach,J.,Williams,T.,Moreen,T.R.,Jazwinski,A.,Cruz,B.,Jeurkar,N.,Sapp,R.,Luo,G.&Liang,T.J.(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.102,2579−2583。
36.Levy,S.,Todd,S.C.&Maecker,H.T.(1998)Annu.Rev.Immunol.16,89−109。
37.Blight,K.J.,McKeating,J.A.&Rice,C.M.(2002)J.Virol.76,13001−13014。
38.Bartosch,B.,Dubuisson,J.&Cosset,F.L.(2003)J.Exp.Med.197,633−642。
39.Hsu,M.,Zhang,J.,Flint,M.,Logvinoff,C.,Cheng−Mayer,C.,Rice,C.M.&McKeating,J.A.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,7271−7276。
40.Zhang,J.,Randall,G.,Higginbottom,A.,Monk,P.,Rice,C.M.&McKeating,J.A.(2004)J.Virol.78,1448−1455。
41.Hijikata,M.,Shimizu,Y.K.,Kato,H.,Iwamoto,A.,Shih,J.W.,Alter,H.J.,Purcell,R.H.&Yoshikura,H.(1993)J.Virol.67,1953−1958。
42.Trestard,A.,Bacq,Y.,Buzelay,L.,Dubois,F.,Barin,F.,Goudeau,A.&Roingeard,P.(1998)Arch.Virol.143,2241−2245。
43.Bartenschlager,R.,Kaul,A.&Sparacio,S.(2003)Antiviral Res.60,91−102。
44.Bukh,J.,Pietschmann,T.,Lohmann,V.,Krieger,N.,Faulk,K.,Engle,R.E.,Govindarajan,S.,Shapiro,M.,St Claire,M.&Bartenschlager,R.(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99,14416−14421。
45.Neumann,A.U.,Lam,N.P.,Dahari,H.,Gretch,D.R.,Wiley,T.E.,Layden,T.J.&Perelson,A.S.(1998)Science 282,103−107。
46.Tanaka,J.,Katayama,K.,Kumagai,J.,Komiya,Y.,Yugi,H.,Kishimoto,S.,Mizui,M.,Tomoguri,T.,Miyakawa,Y.&Yoshizawa,H.(2005)Intervirology 48,120−123。
47.Cormier,E.G.,Tsamis,F.,Kajumo,F.,Durso,R.J.,Gardner,J.P.&Dragic,T.(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101,7270−7274。
48.Sumpter,R.,Jr.,Loo,Y.M.,Foy,E.,Li,K.,Yoneyama,M.,Fujita,T.,Lemon,S.M.&Gale,M.,Jr.(2005)J.Virol.79,2689−2699。
49.Yoneyama,M.,Kikuchi,M.,Natsukawa,T.,Shinobu,N.,Imaizumi,T.,Miyagishi,M.,Taira,K.,Akira,S.&Fujita,T.(2004)Nat Immunol 5,730−737。
50.Mbow,M.L.&Sarisky,R.T.(2004)Trends Biotechnol.22,395−399。
【0255】
本明細書中で参照または言及された全ての特許および刊行物は、本発明が関連する分野の当業者のレベルを示し、そしてそれぞれのそのような参照された特許または刊行物は、あたかも、その全体が個別に参考として援用されているかまたはその全体が本明細書中に示されているかのように、本明細書によって参考として援用される。出願人は、任意のそのような列挙された特許または刊行物からの任意および全ての資料および情報を本明細書に物理的に組み込む権利を保有する。
【0256】
本明細書中に記載される特定の方法および組成物は、好ましい実施形態を代表し、例示であり、そして本発明の範囲に対する限定として意図されない。他の対象、局面、および実施形態は、本明細書の検討の際に当業者が想起し、そして特許請求の範囲によって規定されるような本発明の精神の範囲内に包含される。種々の置換および改変が本発明の範囲および精神から逸脱することなく本明細書中に開示された本発明に対してなされ得ることは、当業者にとって容易に明らかである。本明細書中に十分に例示として記載された本発明は、必須であるとして本明細書中に具体的に開示されない任意の要素または制限の非存在下において実施され得る。本明細書中に十分に記載された方法およびプロセスは、異なる順序の工程において実施され得、そしてその方法およびプロセスは、本明細書中に示される工程または特許請求の範囲における工程の順序に必ずしも制限されない。本明細書中添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうではないことを明確に示さない限り複数形を含む。したがって、例えば、「抗体(an antibody)」への言及は、複数のそのような抗体(例えば、抗体の溶液または一連の抗体調製物)などを含む。いかなる場合においても、本明細書中に具体的に開示される特定の実施例または実施形態あるいは方法に限定されると解釈されることはない。いかなる場合においても、あらゆる審査官あるいは特許商標局の当局者または職員によって行われたあらゆる陳述が出願人による応答書面において具体的に、かつ明確に留保または限定を伴わずに採用されない限り、本特許は、そのような陳述によって限定されると解釈される可能性はない。
【0257】
使用された用語および表現は、説明の用語として使用され、かつ限定の用語として使用されず、示され、そして記載された特徴の任意の等価物またはその部分を除外する意図は、そのような用語および表現の使用において存在せず、種々の改変は特許請求されるような本発明の範囲内であり得ることが、認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態によって具体的に開示されているが、本明細書中に開示された概念の必要応じた特徴、改変およびバリエーションが、当業者によって用いられ得ること、ならびにそのような改変およびバリエーションは、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲内であると見なされることが、理解されるべきである。
【0258】
本発明は、本明細書中に広範かつ一般的に記載されている。包括的な開示内に含まれるより狭義の種およびより包括的ではないグループ分けの各々はまた、本発明の部分を形成する。これは、削除される材料が本明細書中に具体的に記載されるか否かにかかわらず、類概念から任意の対象を除去する但し書きまたは消極的な限定を伴う本発明の一般的な説明を含む。
【0259】
他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内である。さらに、本発明の特徴および局面が、マーカッシュ群に関して記載される場合、当業者は、本発明もまた、それによってマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関して記載されることを認識する。
【図面の簡単な説明】
【0260】
【図1】図1Aは、感染性C型肝炎ビリオンがゲノムJFH−1 RNAによるトランスフェクション後に産生されることを示す。細胞内RNA増幅は、JFH−1 RNAの産生を検出するために使用された。10マイクログラムのインビトロで転写されたJFH−1 RNAは、4x106個のHuh−7.5.1細胞中にエレクトロポレーションされた。トランスフェクト細胞および上清は、トランスフェクション後の示された日に回収された。全細胞RNAは、JFH−1発現についてリアルタイム定量的RT−PCRによって分析され、そして1μgの全RNAあたりのゲノム等価物(線)として示された。上清の感染価は、ナイーブHuh−7.5.1細胞において決定され、そして1mLあたりのフォーカス形成単位(ffu)(バー)として示された。図1Bは、JFH−1 ウイルスゲノムがトランスフェクション後に活発に複製され、インビトロで転写された野生型(wt)JFH−1およびポリメラーゼ変異体(GND)JFH−1の完全長ゲノムRNAがHuh−7.5.1細胞中にエレクトロポレーションされたことをさらに確認する。細胞内HCV RNAは、その後の異なる時点にてモニタリングされた。示される通り、野生型ウイルスRNAは、1日目〜2日目において僅かに増加し、次いで4日目に10倍減少した。次いで細胞内HCV RNAレベルは、1μgの全細胞RNAあたり107コピーを上回って再度上昇し、そしてその実験の残りにわたって維持された。対照的に、ポリメラーゼ−欠損変異体JFH/GND RNAの細胞内レベルは、トランスフェクション後に迅速に数桁減少し、そして20日目に検出不可能になった。これらの結果は、野生型JFH−1 RNAがHuh−7.5.1細胞において活発に複製していたことを示す。図1Cは、ゲノムJFH−1 RNAのHuh−7.5.1細胞へのリポフェクタミントランスフェクション後における、HCV複製および感染性ウイルスの産生の動態を示す。Huh−7.5.1細胞は、JFHクローンRNAを用いて、リポフェクションによってトランスフェクトされ、そして細胞および上清は、それぞれ、その上清中の細胞内HCV RNAおよび感染価を分析するために定期的に回収された。グラフは、HCV RNAの蓄積を、その上清中の1μgの全RNAあたりのGE(線)およびウイルス力価(ffu/mL)(バー)として示す。
【図2】図2A〜図2Dは、ゲノムJFH−1 RNAによるトランスフェクション後の感染細胞の検出を示す。HCV感染は、HCV NS5Aタンパク質の細胞免疫蛍光によって検出された。図2Aは、トランスフェクション後5日目におけるNS5Aの発現を示す。図2Bは、トランスフェクション後24日目におけるNS5Aの発現を示す。図2Cは、JFH−1 RNAトランスフェクトHuh−7.5.1細胞から回収された希釈されていない上清への曝露後の、ナイーブ細胞におけるNS5Aの発現を示す。図2Dは、JFH−1 RNAトランスフェクトHuh−7.5.1細胞から回収された上清の1:10希釈物への曝露後の、ナイーブ細胞におけるNS5Aの発現を示す。NS5A−ポジティブ細胞は、オリジナルにおいて赤色として検出された(オリジナルのいくつかのコピーにおいてより明るく光るスポットとして見られる)。細胞核は、Hoescht色素によって染色された(オリジナルにおいて青色、コピーにおいてより暗いスポット)。
【図3A】図3A〜図3Dは、組織培養細胞におけるHCV感染動態および継代を示す。ナイーブHuh 7.5.1細胞は、培養上清を0.01のMOIにて接種された。接種された細胞由来の上清は、感染後の示された時点において回収され、そして感染性(ffu/mL)について評価された。データは、2回以上の実験の平均をエラーバーを伴って示す。図3Aは、JFH−1ゲノムRNAを用いたエレクトロポレーションによるHuh−7.5.1細胞のトランスフェクションの19日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(円の印)、またはリポフェクションの24日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(菱形の印)を示す。x軸は、上清の接種後の日数で時間を示す。図3Bは、図3A中の菱形の印で示された感染から5日目に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価を示す。図3C〜図3Dは、そのデータが図3Aに示される(菱形の印)感染から5日目に回収された上清を使用する場合、NS5A免疫染色が感染後5日目(図3C)および感染後7日目(図3D)にHuh−7.5.1細胞において増加することを示す。
【図3B】図3A〜図3Dは、組織培養細胞におけるHCV感染動態および継代を示す。ナイーブHuh 7.5.1細胞は、培養上清を0.01のMOIにて接種された。接種された細胞由来の上清は、感染後の示された時点において回収され、そして感染性(ffu/mL)について評価された。データは、2回以上の実験の平均をエラーバーを伴って示す。図3Aは、JFH−1ゲノムRNAを用いたエレクトロポレーションによるHuh−7.5.1細胞のトランスフェクションの19日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(円の印)、またはリポフェクションの24日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(菱形の印)を示す。x軸は、上清の接種後の日数で時間を示す。図3Bは、図3A中の菱形の印で示された感染から5日目に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価を示す。図3C〜図3Dは、そのデータが図3Aに示される(菱形の印)感染から5日目に回収された上清を使用する場合、NS5A免疫染色が感染後5日目(図3C)および感染後7日目(図3D)にHuh−7.5.1細胞において増加することを示す。
【図3C】図3A〜図3Dは、組織培養細胞におけるHCV感染動態および継代を示す。ナイーブHuh 7.5.1細胞は、培養上清を0.01のMOIにて接種された。接種された細胞由来の上清は、感染後の示された時点において回収され、そして感染性(ffu/mL)について評価された。データは、2回以上の実験の平均をエラーバーを伴って示す。図3Aは、JFH−1ゲノムRNAを用いたエレクトロポレーションによるHuh−7.5.1細胞のトランスフェクションの19日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(円の印)、またはリポフェクションの24日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(菱形の印)を示す。x軸は、上清の接種後の日数で時間を示す。図3Bは、図3A中の菱形の印で示された感染から5日目に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価を示す。図3C〜図3Dは、そのデータが図3Aに示される(菱形の印)感染から5日目に回収された上清を使用する場合、NS5A免疫染色が感染後5日目(図3C)および感染後7日目(図3D)にHuh−7.5.1細胞において増加することを示す。
【図3D】図3A〜図3Dは、組織培養細胞におけるHCV感染動態および継代を示す。ナイーブHuh 7.5.1細胞は、培養上清を0.01のMOIにて接種された。接種された細胞由来の上清は、感染後の示された時点において回収され、そして感染性(ffu/mL)について評価された。データは、2回以上の実験の平均をエラーバーを伴って示す。図3Aは、JFH−1ゲノムRNAを用いたエレクトロポレーションによるHuh−7.5.1細胞のトランスフェクションの19日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(円の印)、またはリポフェクションの24日後に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価(菱形の印)を示す。x軸は、上清の接種後の日数で時間を示す。図3Bは、図3A中の菱形の印で示された感染から5日目に回収された上清によって接種されたHuh−7.5.1細胞の感染価を示す。図3C〜図3Dは、そのデータが図3Aに示される(菱形の印)感染から5日目に回収された上清を使用する場合、NS5A免疫染色が感染後5日目(図3C)および感染後7日目(図3D)にHuh−7.5.1細胞において増加することを示す。
【図3E】図3E〜図3Fは、HCV感染の間におけるウイルスRNAおよびウイルスタンパク質の産生をさらに示す。Huh−7.5.1細胞は、0.01のMOIにて感染され、そして細胞抽出物は、RNA分析およびタンパク質分析のために、表示された時点において調製された。図3Eは、細胞内HCV RNAの量(線)および上清の感染価(バー)をグラフで示す。図3Fは、電気泳動で分離された細胞タンパク質のウェスタンブロットの画像である。示される通り、細胞内のHCVコアおよびNS3タンパク質は、感染が進行するにつれて蓄積した。
【図3F】図3E〜図3Fは、HCV感染の間におけるウイルスRNAおよびウイルスタンパク質の産生をさらに示す。Huh−7.5.1細胞は、0.01のMOIにて感染され、そして細胞抽出物は、RNA分析およびタンパク質分析のために、表示された時点において調製された。図3Eは、細胞内HCV RNAの量(線)および上清の感染価(バー)をグラフで示す。図3Fは、電気泳動で分離された細胞タンパク質のウェスタンブロットの画像である。示される通り、細胞内のHCVコアおよびNS3タンパク質は、感染が進行するにつれて蓄積した。
【図3G】図3Gは、細胞上清において産生されたHCVウイルスがナイーブHuh−7細胞によって連続的に継代され得ることを示すグラフである。
【図4】図4A〜図4Bは、HCV感染が抗E2抗体および抗CD81抗体によって阻害されることを示す。図4Aは、抗E2抗体の効果を示す。JFH−1ウイルスは、Huh−7.5.1.細胞を接種するために使用される前に、示された濃度の抗E2抗体または関係のないヒトIgG1抗体と一緒に37℃にて1時間プレインキュベートされた。全細胞RNAは、感染後3日目に定量的RT−PCRによって分析された。図4Bは、抗CD81抗体の効果を示す。Huh−7.5.1細胞は、JFH−1ウイルスによる0.3のMOIにおける接種前に、示された濃度の抗ヒトCD81抗体またはコントロールマウスIgG1抗体と一緒に37℃にて1時間プレインキュベートされた。全細胞RNAは、定量的RT−PCRによって感染後3日目に分析された。
【図5】図5は、感染性HCVのスクロース勾配沈降を示す。感染Huh−7.5.1細胞からの上清は、実施例1に記載されるように分画された。画分(1〜9)は、その勾配の上部から回収され、そしてHCV RNAについて定量的RT−PCRによって分析された(線)。各画分の感染性は、力価決定によって決定された(バー)。画分の密度は、g/mLとして示される。
【図6】図6は、Huh−7.5.1細胞およびHuh−7細胞におけるJFH−1 HCV感染の動態を示す。Huh−7.5.1において産生されたウイルスストックは、Huh−7.5.1細胞およびHuh−7細胞に0.01のMOIにて感染させるために希釈された。培養上清は、示された時間において回収され、そして力価決定された。Huh−7.5.1細胞(実線)およびHuh−7細胞(破線)における感染の力価は、ffu/mLとして示される。2つの独立した感染実験の平均値が、示される。
【図7】図7は、細胞内HCV RNAがHuh−7.5.1感染細胞およびHuh−7感染細胞において蓄積することを示す。全RNAは、図6に記載された感染Huh−7.5.1細胞および感染Huh−7細胞から単離された。感染Huh−7.5.1(実線)および感染Huh−7(破線)における細胞内HCV RNAの蓄積は、定量的RT−PCRによって決定された。その結果は、2つの独立した感染(n=2)の1μgの全RNAあたりの平均ゲノム等価物(GE)として示される。
【図8】図8は、インターフェロンによるHCV感染の阻害をグラフで示す。4万5千個のHuh−7.5.1細胞は、プレートされ、そして5IU/mL、50IU/mLおよび500IU/mLのヒトIFNα−2aおよびヒトIFNγによって6時間処理され、次いで同じ用量のIFNの存在下において、組換えJFH−1ウイルスを0.3のMOIにて接種された。そのウイルス接種材料は、4時間後に除去され、そしてその細胞は、インターフェロンと一緒に3日間わたってさらに培養された。その時点で、細胞が、回収され、RNAが、単離され、そして細胞内HCV RNAレベルを決定するために、リアルタイムRT−PCRによって分析された。バーは、コントロール感染において得られたレベルの%として表される細胞内HCV RNAレベルをを示す。その結果は、両方のインターフェロンがHCV感染を効率的に阻害することを示す。
【図9】図9は、HCVポリタンパク質遺伝子型1a(配列番号1を有するH77単離株)に関するペプチドの位置および対応する抗HCV活性を示す。試験された13個のペプチドは、感染性を90%以上阻害した。
【図10A】図10A〜図10Dは、配列SWLRDIWDWICEVLSDFK(配列番号43)を有するペプチド1は、それがHCVと一緒に細胞に添加された場合にHCV感染を持続的に予防し(図10A)、そして進行中のHCV感染を廃絶し(図10B)、300nMのEC50を有すること(図10Cおよび図10D)を、グラフで示す。
【図10B】図10A〜図10Dは、配列SWLRDIWDWICEVLSDFK(配列番号43)を有するペプチド1は、それがHCVと一緒に細胞に添加された場合にHCV感染を持続的に予防し(図10A)、そして進行中のHCV感染を廃絶し(図10B)、300nMのEC50を有すること(図10Cおよび図10D)を、グラフで示す。
【図10C】図10A〜図10Dは、配列SWLRDIWDWICEVLSDFK(配列番号43)を有するペプチド1は、それがHCVと一緒に細胞に添加された場合にHCV感染を持続的に予防し(図10A)、そして進行中のHCV感染を廃絶し(図10B)、300nMのEC50を有すること(図10Cおよび図10D)を、グラフで示す。
【図10D】図10A〜図10Dは、配列SWLRDIWDWICEVLSDFK(配列番号43)を有するペプチド1は、それがHCVと一緒に細胞に添加された場合にHCV感染を持続的に予防し(図10A)、そして進行中のHCV感染を廃絶し(図10B)、300nMのEC50を有すること(図10Cおよび図10D)を、グラフで示す。
【図11A】図11A〜図11Eは、種々の合成ペプチド(図11A)によるHuh−7.5.1細胞へのHCV接着の阻害を示す結果であり;ペプチドは、ウイルスを添加する前に細胞と一緒にプレインキュベートされる場合(「PRE」)または細胞がウイルスに曝された後に添加される場合(「POST」)よりも、そのペプチドがウイルスと一緒に標的細胞に添加される場合(「CO」)に最も有効であり(図11B);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、ウイルスの感染性を完全に廃絶し(図11C);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、合計のウイルスRNA含量を少なくとも3倍減少させ(ウイルスの溶解を示す)(図11D、ここで左のパネルは、HCV RNAを示し、そして右のパネルは、GAPDH RNAを示す);ウイルスとペプチドとのプレインキュベーションは、感染性を完全に廃絶し、そして全ての画分のウイルスRNA含量を約4〜5倍減少させる(E)。
【図11B】図11A〜図11Eは、種々の合成ペプチド(図11A)によるHuh−7.5.1細胞へのHCV接着の阻害を示す結果であり;ペプチドは、ウイルスを添加する前に細胞と一緒にプレインキュベートされる場合(「PRE」)または細胞がウイルスに曝された後に添加される場合(「POST」)よりも、そのペプチドがウイルスと一緒に標的細胞に添加される場合(「CO」)に最も有効であり(図11B);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、ウイルスの感染性を完全に廃絶し(図11C);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、合計のウイルスRNA含量を少なくとも3倍減少させ(ウイルスの溶解を示す)(図11D、ここで左のパネルは、HCV RNAを示し、そして右のパネルは、GAPDH RNAを示す);ウイルスとペプチドとのプレインキュベーションは、感染性を完全に廃絶し、そして全ての画分のウイルスRNA含量を約4〜5倍減少させる(E)。
【図11C】図11A〜図11Eは、種々の合成ペプチド(図11A)によるHuh−7.5.1細胞へのHCV接着の阻害を示す結果であり;ペプチドは、ウイルスを添加する前に細胞と一緒にプレインキュベートされる場合(「PRE」)または細胞がウイルスに曝された後に添加される場合(「POST」)よりも、そのペプチドがウイルスと一緒に標的細胞に添加される場合(「CO」)に最も有効であり(図11B);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、ウイルスの感染性を完全に廃絶し(図11C);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、合計のウイルスRNA含量を少なくとも3倍減少させ(ウイルスの溶解を示す)(図11D、ここで左のパネルは、HCV RNAを示し、そして右のパネルは、GAPDH RNAを示す);ウイルスとペプチドとのプレインキュベーションは、感染性を完全に廃絶し、そして全ての画分のウイルスRNA含量を約4〜5倍減少させる(E)。
【図11D】図11A〜図11Eは、種々の合成ペプチド(図11A)によるHuh−7.5.1細胞へのHCV接着の阻害を示す結果であり;ペプチドは、ウイルスを添加する前に細胞と一緒にプレインキュベートされる場合(「PRE」)または細胞がウイルスに曝された後に添加される場合(「POST」)よりも、そのペプチドがウイルスと一緒に標的細胞に添加される場合(「CO」)に最も有効であり(図11B);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、ウイルスの感染性を完全に廃絶し(図11C);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、合計のウイルスRNA含量を少なくとも3倍減少させ(ウイルスの溶解を示す)(図11D、ここで左のパネルは、HCV RNAを示し、そして右のパネルは、GAPDH RNAを示す);ウイルスとペプチドとのプレインキュベーションは、感染性を完全に廃絶し、そして全ての画分のウイルスRNA含量を約4〜5倍減少させる(E)。
【図11E】図11A〜図11Eは、種々の合成ペプチド(図11A)によるHuh−7.5.1細胞へのHCV接着の阻害を示す結果であり;ペプチドは、ウイルスを添加する前に細胞と一緒にプレインキュベートされる場合(「PRE」)または細胞がウイルスに曝された後に添加される場合(「POST」)よりも、そのペプチドがウイルスと一緒に標的細胞に添加される場合(「CO」)に最も有効であり(図11B);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、ウイルスの感染性を完全に廃絶し(図11C);ウイルスとペプチド1とのプレインキュベーションは、合計のウイルスRNA含量を少なくとも3倍減少させ(ウイルスの溶解を示す)(図11D、ここで左のパネルは、HCV RNAを示し、そして右のパネルは、GAPDH RNAを示す);ウイルスとペプチドとのプレインキュベーションは、感染性を完全に廃絶し、そして全ての画分のウイルスRNA含量を約4〜5倍減少させる(E)。
【図12】図12A〜図12Cは、ペプチド1のD形態が、完全に活性であり、そして増強した血清安定性を示すこと(A)、ならびにペプチド1のL形態およびD形態のEC50が、非常に類似しており、両方とも1μMの範囲にある(それぞれ、BおよびC)ことを示す結果である。
【図13A】図13A〜図13Bは、Huh−7細胞、Huh−7.5.1細胞、HeLa細胞およびHepG2細胞に対するペプチド1のL形態およびD形態の毒性(LD50)(A);ならびにペプチド1のL形態およびD形態の溶血活性(B)を示す結果である。
【図13B】図13A〜図13Bは、Huh−7細胞、Huh−7.5.1細胞、HeLa細胞およびHepG2細胞に対するペプチド1のL形態およびD形態の毒性(LD50)(A);ならびにペプチド1のL形態およびD形態の溶血活性(B)を示す結果である。
【図14A】図14A〜図14Eは、ペプチド1(配列番号43)の両親媒性のα−ヘリックス性を示す。ペプチド1のヘリックス車輪図は、アミノ酸分布が親水性(すなわち極性)面および疎水性(すなわち非極性)面をもたらすことを示す(図14A)。円偏光二色性の結果は、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造(図14B)を示し、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造に対するダンシル化の効果(図14C)を示し、そしてC末端切断を有するペプチド1の改変体(図14D)およびN末端切断を有するペプチド1の改変体(図14E)のα−へリックス構造を示す。これらの切断されたペプチドの配列は、表7に提供される。
【図14B】図14A〜図14Eは、ペプチド1(配列番号43)の両親媒性のα−ヘリックス性を示す。ペプチド1のヘリックス車輪図は、アミノ酸分布が親水性(極性)面および疎水性(または非極性)面をもたらすことを示す(図14A)。円偏光二色性の結果は、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造(図14B)を示し、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造に対するダンシル化の効果(図14C)を示し、そしてC末端切断を有するペプチド1の改変体(図14D)およびN末端切断を有するペプチド1の改変体(図14E)のα−へリックス構造を示す。これらの切断されたペプチドの配列は、表7に提供される。
【図14C】図14A〜図14Eは、ペプチド1(配列番号43)の両親媒性のα−ヘリックス性を示す。ペプチド1のヘリックス車輪図は、アミノ酸分布が親水性(極性)面および疎水性(または非極性)面をもたらすことを示す(図14A)。円偏光二色性の結果は、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造(図14B)を示し、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造に対するダンシル化の効果(図14C)を示し、そしてC末端切断を有するペプチド1の改変体(図14D)およびN末端切断を有するペプチド1の改変体(図14E)のα−へリックス構造を示す。これらの切断されたペプチドの配列は、表7に提供される。
【図14D】図14A〜図14Eは、ペプチド1(配列番号43)の両親媒性のα−ヘリックス性を示す。ペプチド1のヘリックス車輪図は、アミノ酸分布が親水性(極性)面および疎水性(または非極性)面をもたらすことを示す(図14A)。円偏光二色性の結果は、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造(図14B)を示し、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造に対するダンシル化の効果(図14C)を示し、そしてC末端切断を有するペプチド1の改変体(図14D)およびN末端切断を有するペプチド1の改変体(図14E)のα−へリックス構造を示す。これらの切断されたペプチドの配列は、表7に提供される。
【図14E】図14A〜図14Eは、ペプチド1(配列番号43)の両親媒性のα−ヘリックス性を示す。ペプチド1のヘリックス車輪図は、アミノ酸分布が親水性(極性)面および疎水性(または非極性)面をもたらすことを示す(図14A)。円偏光二色性の結果は、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造(図14B)を示し、ペプチド1のL−異性体およびD−異性体のα−へリックス構造に対するダンシル化の効果(図14C)を示し、そしてC末端切断を有するペプチド1の改変体(図14D)およびN末端切断を有するペプチド1の改変体(図14E)のα−へリックス構造を示す。これらの切断されたペプチドの配列は、表7に提供される。
【図15A】図15A〜図15Bは、一般的なリポソーム放出アッセイ(A)およびペプチド1の種々の切断改変体について得られた結果(B)を示す。これらの切断されたペプチドの配列は、表7に提供される。
【図15B】図15A〜図15Bは、一般的なリポソーム放出アッセイ(A)およびペプチド1の種々の切断改変体について得られた結果(B)を示す。これらの切断されたペプチドの配列は、表7に提供される。
【図16】図16は、ペプチド1が水疱性口内炎ウイルス(VSV)感染を遮断しないことを示すグラフである。
【図17】図17は、ELISAによって検出されるように、配列SWLRDIWDWICEVLSDFK(配列番号43)を有するペプチド2022(ペプチド1)および配列SWLRDIWDWICEVL(配列番号92)を有するペプチド2013が、本質的に100%のデング熱ウイルス感染を阻害することを示すグラフである。配列LRDIWDWICEVLSDFK(配列番号107)を有するペプチド2017は、デング熱ウイルス感染を約84%阻害する僅かに小さい活性を有した。
【図18】図18は、デング熱ウイルス抗原について細胞内で染色された細胞のFACS分析によって検出された、ペプチド2022(ペプチド1)、ペプチド2013、およびペプチド2017によるデング熱ウイルス感染の用量依存的阻害を示すグラフである。示される通り、FACSによって検出されたように、20μMの濃度において、ほぼ100%のデング熱ウイルス感染が、ペプチド2022(ペプチド1)およびペプチド2013によって阻害された。20μMにおけるペプチド2017は、デング熱ウイルス感染を約80%阻害する僅かに小さい活性を有した。
【図19】図19は、免疫蛍光アッセイによって検出されたように、ペプチド2022(ペプチド1)が本質的に100%のデング熱ウイルス感染を阻害することを示すグラフである。ペプチド2017は、デング熱ウイルス感染を約90%阻害する僅かに小さい活性を有した。
【図20】図20は、西ナイルウイルス感染を阻害することにおけるペプチド1の有効性を示すデータである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さが14個〜50個のD−アミノ酸またはL−アミノ酸の単離されたペプチドであって、該ペプチドは、両親媒性のα−へリックス構造を有し、そして該ペプチドは、フラビウイルス科のウイルスに対する抗ウイルス活性を有する、単離されたペプチド。
【請求項2】
式I〜式V:
【化1】
のうちのいずれか1つを含む配列を有し、
Xaa1、Xaa4、Xaa5、Xaa8、Xaa11、Xaa12、Xaa15、Xaa16およびXaa18は、個別に各々、極性アミノ酸であり、そして
Xaa2、Xaa3、Xaa6、Xaa7、Xaa9、Xaa10、Xaa13、Xaa14、およびXaa17は、個別に各々、非極性アミノ酸である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
式I〜式Vのうちのいずれか1つのペプチドのN末端にペプチド結合によって結合された14アミノ酸のペプチド配列をさらに含み、該14アミノ酸のペプチド配列は、構造:
【化2】
を有し、各Rxは、個別に、極性アミノ酸であり、そして各Ryは、個別に、非極性アミノ酸である、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
式Vのカルボキシ末端にペプチド結合によって結合された12アミノ酸の配列をさらに含み、得られたペプチドは、構造:
【化3】
を有し、そして
Xaa1、Xaa4、Xaa5、Xaa8、Xaa11、Xaa12、Xaa15、Xaa16、Xaa18、Xaa19、Xaa22、Xaa23、Xaa26、Xaa29、およびXaa30は、個別に各々、極性アミノ酸であり、
Xaa2、Xaa3、Xaa6、Xaa7、Xaa9、Xaa10、Xaa13、Xaa14、Xaa17、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、Xaa27、およびXaa28は、個別に各々、非極性アミノ酸である、請求項2に記載のペプチド。
【請求項5】
式VIのペプチドのN末端にペプチド結合によって結合された14アミノ酸のペプチド配列をさらに含み、該14アミノ酸のペプチド配列は、構造:
【化4】
を有し、各Rxは、個別に、極性アミノ酸であり、そして各Ryは、個別に、非極性アミノ酸である、請求項4に記載のペプチド。
【請求項6】
請求項3、4または5に記載のペプチドの少なくとも14個の隣接したアミノ酸を含む、ペプチド。
【請求項7】
前記非極性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、およびトリプトファンからなる群より選択される、請求項2〜6のいずれかに記載のペプチド。
【請求項8】
前記非極性アミノ酸は、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンおよびトリプトファンからなる群より選択される、請求項2〜6のいずれかに記載のペプチド。
【請求項9】
前記極性アミノ酸は、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ホモシステイン、リジン、ヒドロキシリジン、オルニチン、セリンおよびトレオニンからなる群より選択される、請求項2〜6のいずれかに記載のペプチド。
【請求項10】
前記極性アミノ酸は、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システインおよびリジンからなる群より選択される、請求項2〜6のいずれかに記載のペプチド。
【請求項11】
アルギニン、システイン、グルタメート、セリン、バリン、2個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシンおよび3個のトリプトファン残基からなるアミノ酸組成を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項12】
配列番号92または配列番号102のアミノ酸配列を有する、請求項11に記載のペプチド。
【請求項13】
アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、2個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシンおよび3個のトリプトファン残基からなるアミノ酸組成を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項14】
配列番号93または配列番号101のアミノ酸配列を有する、請求項13に記載のペプチド。
【請求項15】
アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、3個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシンおよび3個のトリプトファン残基からなるアミノ酸組成を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項16】
配列番号94または配列番号100のアミノ酸配列を有する、請求項15に記載のペプチド。
【請求項17】
アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、3個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシン、3個のトリプトファンおよびフェニルアラニンの残基からなるアミノ酸組成を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項18】
配列番号95または配列番号99のアミノ酸配列を有する、請求項17に記載のペプチド。
【請求項19】
アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、3個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシン、3個のトリプトファン、フェニルアラニンおよびリジンの残基からなるアミノ酸組成を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項20】
配列番号43および配列番号96〜配列番号98のアミノ酸配列を有する、請求項19に記載のペプチド。
【請求項21】
EC50が、約500nM以下である、請求項20に記載のペプチド。
【請求項22】
EC50が、約400nM以下である、請求項20に記載のペプチド。
【請求項23】
EC50が、約300nMである、請求項20に記載のペプチド。
【請求項24】
配列番号43および配列番号91〜配列番号102からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項25】
長さが14個〜50個のD−アミノ酸またはL−アミノ酸の単離されたペプチドであって、該ペプチドは、配列番号43および配列番号91〜配列番号102からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、そして該ペプチドは、両親媒性のα−へリックス構造を有する、単離されたペプチド。
【請求項26】
配列番号4〜配列番号86のうちのいずれかのアミノ酸配列を有する、単離されたペプチド。
【請求項27】
配列番号6、配列番号8、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号27、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号37、配列番号44、配列番号47、配列番号48および配列番号53のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有する、請求項26に記載のペプチド。
【請求項28】
配列番号6、配列番号8、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号24、配列番号27、配列番号30、配列番号32、配列番号44、配列番号48、および配列番号53のアミノ酸配列を有する、請求項27に記載のペプチド。
【請求項29】
前記アミノ酸の各々は、D−アミノ酸である、請求項1〜28のいずれかに記載のペプチド。
【請求項30】
前記アミノ酸の各々は、L−アミノ酸である、請求項1〜28のいずれかに記載のペプチド。
【請求項31】
ダンシル部分をさらに含む、請求項1〜28のいずれかに記載のペプチド。
【請求項32】
前記ウイルスは、フラビウイルス属である、請求項1〜31のいずれかに記載のペプチド。
【請求項33】
前記ウイルスは、C型肝炎ウイルス、西ナイルウイルスまたはデング熱ウイルスである、請求項1〜31のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれかに記載のペプチドを含む、薬学的組成物。
【請求項35】
前記組成物は、殺菌剤である、請求項34に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
前記組成物は、膣用クリームである、請求項34に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
請求項1〜33のいずれかに記載のペプチドと、抗ウイルス因子とを含む、薬学的組合せ。
【請求項38】
前記抗ウイルス因子は、α−インターフェロン、ペグ化インターフェロン、リバビリン、アマンタジン、リマンタジン、プレコナリル、アシクロビル、ジドブジン、ラミブジン、またはその組合せである、請求項37に記載の薬学的組合せ。
【請求項39】
哺乳動物細胞においてウイルス感染を予防するための方法であって、該細胞と、請求項1〜33のいずれかに記載のペプチドとを接触させる工程、または該細胞と、請求項34〜38のいずれかに記載の薬学的組成物もしくは薬学的組合せとを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項40】
前記哺乳動物細胞は、ヒト細胞である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ウイルスは、フラビウイルス属である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記ウイルスは、C型肝炎ウイルスである、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記ウイルスは、西ナイルウイルスまたはデング熱ウイルスである、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
哺乳類においてウイルス感染を予防するための方法であって、該哺乳類に、有効量の請求項1〜33のいずれかに記載のペプチドを投与する工程、または該哺乳類に、請求項34〜38のいずれかに記載の薬学的組成物もしくは薬学的組合せを投与する工程を包含する、方法。
【請求項45】
前記哺乳類は、ヒトである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ウイルスは、フラビウイルス属である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記ウイルスは、C型肝炎ウイルス、西ナイルウイルスまたはデング熱ウイルスである、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
体液を回収するための容器と、請求項1〜33のいずれかに記載のペプチドとを備える、製品。
【請求項49】
前記容器は、回収用バッグ、チューブ、キャピラリーチューブまたはシリンジである、請求項48に記載の製品。
【請求項50】
前記容器は、空にされている、請求項48に記載の製品。
【請求項51】
生物学的安定剤をさらに備える、請求項48に記載の製品。
【請求項52】
前記安定剤は、抗凝固剤、保存剤、プロテアーゼインヒビター、またはその任意の組合せである、請求項51に記載の製品。
【請求項53】
前記抗凝固剤は、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸、ヘパリン、シュウ酸塩、フッ化物またはその任意の組合せである、請求項52に記載の製品。
【請求項54】
前記保存剤は、ホウ酸、ギ酸ナトリウムおよびホウ酸ナトリウムである、請求項52に記載の製品。
【請求項55】
前記プロテアーゼインヒビターは、ジペプチジルペプチダーゼIVである、請求項52に記載の製品。
【請求項56】
前記ペプチドおよび/または安定剤は、凍結乾燥される、請求項51に記載の製品。
【請求項57】
哺乳類の身体由来のサンプルと、請求項1〜33のいずれかに記載のペプチドとを含む、組成物。
【請求項58】
生物学的安定剤をさらに含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記安定剤は、抗凝固剤、保存剤、プロテアーゼインヒビター、またはその任意の組合せである、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記抗凝固剤は、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸、ヘパリン、シュウ酸塩、フッ化物またはその任意の組合せである、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記保存剤は、ホウ酸、ギ酸ナトリウムおよびホウ酸ナトリウムである、請求項59に記載の組成物。
【請求項62】
前記プロテアーゼインヒビターは、ジペプチジルペプチダーゼIVである、請求項59に記載の組成物。
【請求項63】
前記サンプルは、血液製剤である、請求項57に記載の組成物。
【請求項64】
前記血液製剤は、血漿、血小板、白血球または幹細胞である、請求項63に記載の組成物。
【請求項1】
長さが14個〜50個のD−アミノ酸またはL−アミノ酸の単離されたペプチドであって、該ペプチドは、両親媒性のα−へリックス構造を有し、そして該ペプチドは、フラビウイルス科のウイルスに対する抗ウイルス活性を有する、単離されたペプチド。
【請求項2】
式I〜式V:
【化1】
のうちのいずれか1つを含む配列を有し、
Xaa1、Xaa4、Xaa5、Xaa8、Xaa11、Xaa12、Xaa15、Xaa16およびXaa18は、個別に各々、極性アミノ酸であり、そして
Xaa2、Xaa3、Xaa6、Xaa7、Xaa9、Xaa10、Xaa13、Xaa14、およびXaa17は、個別に各々、非極性アミノ酸である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
式I〜式Vのうちのいずれか1つのペプチドのN末端にペプチド結合によって結合された14アミノ酸のペプチド配列をさらに含み、該14アミノ酸のペプチド配列は、構造:
【化2】
を有し、各Rxは、個別に、極性アミノ酸であり、そして各Ryは、個別に、非極性アミノ酸である、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
式Vのカルボキシ末端にペプチド結合によって結合された12アミノ酸の配列をさらに含み、得られたペプチドは、構造:
【化3】
を有し、そして
Xaa1、Xaa4、Xaa5、Xaa8、Xaa11、Xaa12、Xaa15、Xaa16、Xaa18、Xaa19、Xaa22、Xaa23、Xaa26、Xaa29、およびXaa30は、個別に各々、極性アミノ酸であり、
Xaa2、Xaa3、Xaa6、Xaa7、Xaa9、Xaa10、Xaa13、Xaa14、Xaa17、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、Xaa27、およびXaa28は、個別に各々、非極性アミノ酸である、請求項2に記載のペプチド。
【請求項5】
式VIのペプチドのN末端にペプチド結合によって結合された14アミノ酸のペプチド配列をさらに含み、該14アミノ酸のペプチド配列は、構造:
【化4】
を有し、各Rxは、個別に、極性アミノ酸であり、そして各Ryは、個別に、非極性アミノ酸である、請求項4に記載のペプチド。
【請求項6】
請求項3、4または5に記載のペプチドの少なくとも14個の隣接したアミノ酸を含む、ペプチド。
【請求項7】
前記非極性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、およびトリプトファンからなる群より選択される、請求項2〜6のいずれかに記載のペプチド。
【請求項8】
前記非極性アミノ酸は、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンおよびトリプトファンからなる群より選択される、請求項2〜6のいずれかに記載のペプチド。
【請求項9】
前記極性アミノ酸は、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ホモシステイン、リジン、ヒドロキシリジン、オルニチン、セリンおよびトレオニンからなる群より選択される、請求項2〜6のいずれかに記載のペプチド。
【請求項10】
前記極性アミノ酸は、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システインおよびリジンからなる群より選択される、請求項2〜6のいずれかに記載のペプチド。
【請求項11】
アルギニン、システイン、グルタメート、セリン、バリン、2個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシンおよび3個のトリプトファン残基からなるアミノ酸組成を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項12】
配列番号92または配列番号102のアミノ酸配列を有する、請求項11に記載のペプチド。
【請求項13】
アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、2個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシンおよび3個のトリプトファン残基からなるアミノ酸組成を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項14】
配列番号93または配列番号101のアミノ酸配列を有する、請求項13に記載のペプチド。
【請求項15】
アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、3個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシンおよび3個のトリプトファン残基からなるアミノ酸組成を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項16】
配列番号94または配列番号100のアミノ酸配列を有する、請求項15に記載のペプチド。
【請求項17】
アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、3個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシン、3個のトリプトファンおよびフェニルアラニンの残基からなるアミノ酸組成を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項18】
配列番号95または配列番号99のアミノ酸配列を有する、請求項17に記載のペプチド。
【請求項19】
アルギニン、システイン、グルタメート、2個のセリン、バリン、3個のアスパルテート、2個のロイシン、2個のイソロイシン、3個のトリプトファン、フェニルアラニンおよびリジンの残基からなるアミノ酸組成を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項20】
配列番号43および配列番号96〜配列番号98のアミノ酸配列を有する、請求項19に記載のペプチド。
【請求項21】
EC50が、約500nM以下である、請求項20に記載のペプチド。
【請求項22】
EC50が、約400nM以下である、請求項20に記載のペプチド。
【請求項23】
EC50が、約300nMである、請求項20に記載のペプチド。
【請求項24】
配列番号43および配列番号91〜配列番号102からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項25】
長さが14個〜50個のD−アミノ酸またはL−アミノ酸の単離されたペプチドであって、該ペプチドは、配列番号43および配列番号91〜配列番号102からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、そして該ペプチドは、両親媒性のα−へリックス構造を有する、単離されたペプチド。
【請求項26】
配列番号4〜配列番号86のうちのいずれかのアミノ酸配列を有する、単離されたペプチド。
【請求項27】
配列番号6、配列番号8、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号27、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号37、配列番号44、配列番号47、配列番号48および配列番号53のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有する、請求項26に記載のペプチド。
【請求項28】
配列番号6、配列番号8、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号24、配列番号27、配列番号30、配列番号32、配列番号44、配列番号48、および配列番号53のアミノ酸配列を有する、請求項27に記載のペプチド。
【請求項29】
前記アミノ酸の各々は、D−アミノ酸である、請求項1〜28のいずれかに記載のペプチド。
【請求項30】
前記アミノ酸の各々は、L−アミノ酸である、請求項1〜28のいずれかに記載のペプチド。
【請求項31】
ダンシル部分をさらに含む、請求項1〜28のいずれかに記載のペプチド。
【請求項32】
前記ウイルスは、フラビウイルス属である、請求項1〜31のいずれかに記載のペプチド。
【請求項33】
前記ウイルスは、C型肝炎ウイルス、西ナイルウイルスまたはデング熱ウイルスである、請求項1〜31のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれかに記載のペプチドを含む、薬学的組成物。
【請求項35】
前記組成物は、殺菌剤である、請求項34に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
前記組成物は、膣用クリームである、請求項34に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
請求項1〜33のいずれかに記載のペプチドと、抗ウイルス因子とを含む、薬学的組合せ。
【請求項38】
前記抗ウイルス因子は、α−インターフェロン、ペグ化インターフェロン、リバビリン、アマンタジン、リマンタジン、プレコナリル、アシクロビル、ジドブジン、ラミブジン、またはその組合せである、請求項37に記載の薬学的組合せ。
【請求項39】
哺乳動物細胞においてウイルス感染を予防するための方法であって、該細胞と、請求項1〜33のいずれかに記載のペプチドとを接触させる工程、または該細胞と、請求項34〜38のいずれかに記載の薬学的組成物もしくは薬学的組合せとを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項40】
前記哺乳動物細胞は、ヒト細胞である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ウイルスは、フラビウイルス属である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記ウイルスは、C型肝炎ウイルスである、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記ウイルスは、西ナイルウイルスまたはデング熱ウイルスである、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
哺乳類においてウイルス感染を予防するための方法であって、該哺乳類に、有効量の請求項1〜33のいずれかに記載のペプチドを投与する工程、または該哺乳類に、請求項34〜38のいずれかに記載の薬学的組成物もしくは薬学的組合せを投与する工程を包含する、方法。
【請求項45】
前記哺乳類は、ヒトである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ウイルスは、フラビウイルス属である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記ウイルスは、C型肝炎ウイルス、西ナイルウイルスまたはデング熱ウイルスである、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
体液を回収するための容器と、請求項1〜33のいずれかに記載のペプチドとを備える、製品。
【請求項49】
前記容器は、回収用バッグ、チューブ、キャピラリーチューブまたはシリンジである、請求項48に記載の製品。
【請求項50】
前記容器は、空にされている、請求項48に記載の製品。
【請求項51】
生物学的安定剤をさらに備える、請求項48に記載の製品。
【請求項52】
前記安定剤は、抗凝固剤、保存剤、プロテアーゼインヒビター、またはその任意の組合せである、請求項51に記載の製品。
【請求項53】
前記抗凝固剤は、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸、ヘパリン、シュウ酸塩、フッ化物またはその任意の組合せである、請求項52に記載の製品。
【請求項54】
前記保存剤は、ホウ酸、ギ酸ナトリウムおよびホウ酸ナトリウムである、請求項52に記載の製品。
【請求項55】
前記プロテアーゼインヒビターは、ジペプチジルペプチダーゼIVである、請求項52に記載の製品。
【請求項56】
前記ペプチドおよび/または安定剤は、凍結乾燥される、請求項51に記載の製品。
【請求項57】
哺乳類の身体由来のサンプルと、請求項1〜33のいずれかに記載のペプチドとを含む、組成物。
【請求項58】
生物学的安定剤をさらに含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記安定剤は、抗凝固剤、保存剤、プロテアーゼインヒビター、またはその任意の組合せである、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記抗凝固剤は、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸、ヘパリン、シュウ酸塩、フッ化物またはその任意の組合せである、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記保存剤は、ホウ酸、ギ酸ナトリウムおよびホウ酸ナトリウムである、請求項59に記載の組成物。
【請求項62】
前記プロテアーゼインヒビターは、ジペプチジルペプチダーゼIVである、請求項59に記載の組成物。
【請求項63】
前記サンプルは、血液製剤である、請求項57に記載の組成物。
【請求項64】
前記血液製剤は、血漿、血小板、白血球または幹細胞である、請求項63に記載の組成物。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2009−510122(P2009−510122A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533748(P2008−533748)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/038420
【国際公開番号】WO2007/041487
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(501244222)ザ スクリプス リサーチ インスティテュート (33)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/038420
【国際公開番号】WO2007/041487
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(501244222)ザ スクリプス リサーチ インスティテュート (33)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]