説明

ウイルス感染の治療における上皮成長因子阻害剤の使用

本発明は個体におけるウイルス感染の治療方法を提供する。この方法は基本的には、個体に効果量の上皮成長因子受容体(EGF−R)阻害剤を投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は2008年12月19日に出願された米国特許仮出願第61/139,363号の優先権を主張し、その出願の全文は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ウイルス感染は相当な不快感、疾患及び死を引き起こす。ウイルス感染は、肺及び胃腸管などのヒトの様々な器官及びシステムを標的とする。麻疹、ムンプス、及び水痘などの特定のウイルスは感染性が高く、かつ、急性の不快感を引き起こす。ウイルス感染のいくつかは死を引き起こす。例えば、記録された世界の歴史において最大の壊滅的流行として引用される1918年の世界的流行の原因は、インフルエンザウイルスである。インフルエンザは世界中で毎年数百万もの感染を引き起こし、米国においては一年あたり最大20,000人の死亡の原因となる。加えて、コロナウイルスによって引き起こされた最近の新型インフルエンザ及び重症急性呼吸器症候群(SARS)の世界的な流行も死亡を引き起こした。1、2及び3型ヒトパラインフルエンザウイルス(PIV)、並びにA及びB型呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は乳児及び幼児における重篤な呼吸器感染の原因となる主要なウイルス性の病原菌である。米国のみにおいても約1600万人の1歳未満の乳児が毎年臨床的に有意にRSVに感染し、さらに1400万人の乳児がPIV−3に感染するだろうと予測されている。米国においては、RSV及びPIV−3感染によって引き起こされる重篤な呼吸器疾患からの合併症により、毎年、約4000人の1歳未満の乳児が死亡する。ウイルス感染は急性呼吸促迫症候群(ARDS)及び急性肺損傷を引き起こし、並びに喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性繊維症、及び気管支拡張症などの慢性疾患の増悪を引き起こす。例えば、ライノウイルスは喘息の増悪の最も一般的な原因である。ウイルス感染は慢性疾患をもまた引き起こす。例えば、ヒトパピローマウイルス感染は子宮頸癌を引き起こす場合があり、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因である。
【0003】
当該技術分野においてはウイルス感染の治療方法が必要とされる。
【0004】
(先行文献)
国際公開第2005/048928号;国際公開第2006/083458号;Liu et al.(2008)J.Biol.Chem.283:9977−9985;Tyner et al.J.Clin.Invest.(2006)116(2):309;Monick et al.J.Biol.Chem.,(2005)280:2147;Zhu et al.(2009)Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.40:610;米国特許出願公開第2007/0134763号。
【発明の概要】
【0005】
本開示は個体におけるウイルス感染の治療方法を提供する。この方法は基本的には、個体に効果量の上皮成長因子受容体阻害剤を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1Aは、気道上皮細胞でのライノウイルス16感染における、選択的上皮成長因子受容体(EGF−R)阻害剤AG1478の効果を示す図である。図1Bは、気道上皮細胞でのライノウイルス16感染における、選択的上皮成長因子受容体(EGF−R)に特異的な中和抗体の効果を示す図である。
【図2】図2は、ヒーラ細胞でのライノウイルス16感染における選択的EGF−R阻害剤、AG1478の効果についてのフローサイトメトリーのデータを示す図である。
【図3】図3は、気道上皮細胞でのインフルエンザウイルス感染における選択的EGF−R阻害剤、AG1478の効果を示す図である。
【図4】図4Aは、上皮細胞での呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染における1μMの選択的EGF−R阻害剤AG1478の効果を示す図である。図4Bは、上皮細胞での呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染における10μMの選択的EGF−R阻害剤AG1478の効果を示す図である。
【図5】図5は、上皮細胞でのRSV感染におけるEGF−R選択的阻害剤ゲフィチニブの効果を示す図である。
【図6】図6は、EGF−Rのアミノ酸配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
定義
「上皮成長因子受容体」又は「EGF−R」は、上皮成長因子(EGF)タンパク質又はその一部分に結合することができる、タンパク質又はその一部分を意味する。例としては、ヒト上皮成長因子受容体(Ullrich et al.(1984) Nature 309:418−425を参照;Genbankアクセッション番号NM_005228)が挙げられる。EGFのEGF−Rへの結合がEGF−Rを活性化する(例えばEGF−Rの自己リン酸化及び細胞内シグナル伝達の活性化を生じる)。EGFに加えて、EGF−Rに結合する可能性があり、かつ、EGF−Rを活性化するその他のリガンドも当業者は理解するだろう。それらリガンドの例としては、形質転換成長因子−α(TGF−α)、ベタセルリン、アンフィレグリン、ヘパリン結合EGF(HB−EGF)及びニューレグリン(ヘレグリンとしても知られる)(Strawn and Shawver(1998)Exp.−Opin.Invest.Drugs 7(4)553−573、及び「The Protein kinase Facts Book:Protein Tyrosine Kinases」(1995)Hardie,etal.(eds.)、Academic Press、NY,NY)が挙げられるが、これらには限定されない。EGF−Rのアミノ酸配列の限定しない例を図5に図示した(GenBank NP_005219;配列番号5)。
【0008】
本明細書で使用されるとき、「治療」、「治療する」、「処理」などは通常、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを意味する。その効果は、完全に若しくは部分的に疾患若しくはその症状を予防するという観点から予防的であってもよく、及び/又は、疾患及び/又は疾患に起因する副作用を部分的に若しくは完全に安定化させる若しくは治癒するという観点から治療的であってもよい。本明細書で使用されるとき、「治療」は哺乳類、特にヒト、におけるいずれの治療をも包含し、及び(a)疾患又は症状の素因があるが、まだその疾患又は症状を有するとは診断されていない対象を、その疾患又は症状の発生から予防すること;(b)その病徴を阻害する、つまりその発生を停止させること;(c)その病徴を軽減する、つまりその疾患又は症状の退行を起こすこと;(d)個体において、ある細胞から別の細胞へのウイルスの拡散を制限すること、例えば、個体において、感染した上皮細胞から別の、感染してない上皮細胞へのウイルスの拡散を制限すること;(e)個体におけるウイルスの複製を制限すること;(f)個体においてウイルスの細胞への侵入を制限すること;及び(g)個体、又は標的組織、若しくは個体における標的生物学的試料におけるウイルスの数を低下させることを含む。
【0009】
「対象」、「個体」、「宿主」及び「患者」という用語は、本明細書においては互換的に、ネズミ(ラット、マウス)、ネコ、非ヒト霊長類(例えばサル)、ヒト、イヌ、有蹄動物などを含む哺乳類を意味するが、哺乳類はこれらには限定されない。いくつかの実施形態においては、「個体」はヒトであり、かつ、「患者」をも意味する可能性がある。
【0010】
「治療上効果量」又は「有効量」は、疾患の治療のために哺乳類又はその他の対象に投与した場合に、それら疾患の治療に効果を及ぼすのに十分な化合物の量を意味する。「治療上効果量」は化合物、疾患、並びにその重症度、治療される対象の年齢、及び体重などにより、多様になるだろう。
【0011】
本明細書で使用されるとき、「単位剤形」という用語は、ヒト及び動物対象への単一容量に好適であり、かつ、それぞれの単位が、計画された対象方法における使用のために、薬剤的に許容可能な希釈剤、担体又は媒体と共に所望の効果を生じるのに十分な量である、所定の量の化合物を含有する物理的に個別の単位を意味する。対象方法における使用のための活性薬剤の詳細は、特定の化合物及び達成される効果、並びにそれぞれの化合物と関連した宿主における薬力学に依存する。
【0012】
本明細書で使用されるとき、「投薬イベント」という用語は、それを必要する患者に抗ウイルス薬を投与することを意味し、そのイベントは薬剤調剤装置からの1つ以上の抗ウイルス薬の放出を包含してもよい。従って、本明細書で使用されるとき、「投薬イベント」という語は、持続性送達装置の導入(例えばポンプやその他の注入可能な制御放出システム);及び単回の皮下注射とその後の持続性送達システムの導入を含むが、これらには限定されない。
【0013】
「薬剤的に許容可能な賦形剤」、「薬剤的に許容可能な希釈剤」、「薬剤的に許容可能な担体」、及び「薬剤的に許容可能なアジュバント」は一般的に、安全、非毒性、及び生物学的に又は別の観点からも有害ではない、医薬組成物の調製に有効な賦形剤、希釈剤、担体、及びアジュバントを意味し、かつ、獣医学的使用並びにヒトへの薬剤的使用において許容できる賦形剤、希釈剤、担体、及びアジュバントを含む。本明細書及び請求項で使用されるとき、「薬剤的に許容可能な賦形剤、希釈剤、担体及びアジュバント」は、1つ以上のそれら賦形剤、希釈剤、担体、及びアジュバントを含む。
【0014】
本明細書で使用されるとき、「医薬組成物」は、哺乳類、特にヒト、などの対象に投与するために好適な組成物を包含する。通常、「医薬組成物」は無菌であり、かつ、対象における望ましくない反応を引き出す可能性がある汚染物質を通常は含まない(例えば、医薬組成物中の化合物は医薬品等級である)。経口、口腔、直腸、非経口、腹腔内、皮内、気管内などを含む数多くの異なる投与経路を介してそれらを必要とする対象又は患者に投与するために、医薬組成物を設計することができる。いくつかの実施形態においては、組成物は経口投与経路による投与に好適である。いくつかの実施形態においては、組成物は吸入投与経路による投与に好適である。いくつかの実施形態においては、組成物は、例えば浸透促進剤を用いた経皮経路による投与に好適である。その他の実施形態においては、医薬組成物は経皮投与以外の経路による投与に好適である。
【0015】
本明細書で使用されるとき、化合物の「薬剤的に許容可能な誘導体」は、塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和物、水和物又はそのプロドラッグを含む。それら誘導体は、誘導体化などの既知の方法を用いて、当業者により容易に準備され得る。生産された化合物は、実質的な毒性効果を含まずに動物又はヒトに投与される可能性があり、また薬剤的に活性な化合物又はプロドラッグのいずれかである。
【0016】
化合物の「薬剤的に許容可能な塩」は、薬剤的に許容可能で、かつ、親化合物の所望の薬理学的活性を有する塩を意味する。それら塩には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、などの無機酸と共に形成された、若しくは、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1、2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、グルコヘプトン酸、4、4’−メチレンビス−(3−ヒドロキシ−2−エン−1−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸と共に形成された、酸付加塩;又は、(2)親化合物中に酸性プロトンが存在する、若しくは、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン若しくはアルミニウムイオンなどの金属イオンによって置換されている場合に形成される塩、若しくはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン、などの有機塩基と配位結合する塩、が含まれる。
【0017】
「生物学的試料」は個体から得られた様々な型の試料を包含する。本定義は、血液、血清、血漿及びその他の生物由来の液体試料;生検標本又は組織培養若しくは組織培養由来の細胞などの固体組織試料を包含する。本定義は、それらを得た後に、薬剤を用いた処理;洗浄;又は、上皮細胞などの特定の細胞集団の濃縮などの任意の方法によって処理された試料をもまた含む。「生物学的試料」という用語は臨床試料を包含し、培養における細胞、細胞上清、器官、組織試料、肺生検試料、肺上皮細胞、消化管上皮細胞、胃腸管組織試料、気管支肺胞洗浄(BAL)液体試料、鼻洗浄液体試料、血液、血漿、血清、脳脊髄液、糞便試料などをもまた含む。
【0018】
本発明をさらに記載する前に、本発明は記載された特定の実施形態に限定されるものではなく、当然、多様になり得ることを理解されたい。本明細書において使用される用語は特定の実施形態のみを記載する目的において使用され、本発明を限定することを目的とはせず、本発明の範囲は添付の請求項によってのみ限定されることもまた理解されたい。
【0019】
範囲のある値が提供される場合には、その範囲内にある各値、内容から明らかでない限り下限の単位の小数点第一位まで、その範囲の上限と下限との間、及び任意のその他の述べられた又は述べられた範囲内にある値が本発明に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限及び下限はそれぞれ独立してより小さい範囲に含まれてもよく、及び、これらもまた本発明の範囲に含まれ、述べられた範囲において除外される任意の特定の限度の影響を受ける。述べられた範囲に1つ又は両方の限度が含まれる場合には、それら含まれる限度のいずれか又は両方を除外した範囲もまた本発明に含まれる。
【0020】
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術的及び科学的な用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記載されたいずれの方法及び材料と類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は試験において用いることもまた可能であるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。本明細書に記載された全ての文献は、引用された文献に関連した方法及び/又は材料を開示及び記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
本明細書及び添付の請求項で使用されるとき、内容から明らかでない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示対象をも含むことに留意されたい。従って、例えば、「a ウイルス」という語は複数のそれらウイルスを含み、及び「the EGF−R阻害剤」という語は1つ以上のEGF−R阻害剤及び当業者において既知のその等価物などを含む。いずれの任意の要素を除外するために請求項を作成してもよいことにさらに留意されたい。そのため本文言は、請求項の要素の記述、又は「否定的な」制限の使用に関連した「唯一」、「のみ」などの除外的な用語の使用のために先の記載を執行することを目的とする。
【0022】
本明細書において論じられる文献としては本出願の出願日より前に開示されたものだけが提供される。本明細書中の全ては、先行技術の効力により本発明がそれら文献に先行する権利がないことを了承したとは解釈されない。さらに、文献が提供された日付が実際に出版された日付とは異なる可能性があることを、それぞれ独立して確認する必要がある可能性がある。
【0023】
本開示は個体におけるウイルス感染の治療方法;及び、ウイルス感染によって引き起こされる慢性肺疾患の急性増悪の治療方法を提供する。この方法は基本的には、個体に効果量の上皮成長因子受容体(EGF−R)阻害剤を投与することを含む。
【0024】
今日のウイルス感染治療は、しばしば、根底をなす感染よりも症状を治療する。本開示は、効果量のEGF−R阻害剤(本明細書では「EGF−Rアンタゴニスト」ともまた表される)を投与することを含むウイルス感染そのものの治療に関する。理論に拘束されることなく、EGF−R阻害剤は、例えば、ウイルスの上皮細胞などの細胞への内部移行を遮断又は阻害し、個体におけるウイルスによる細胞の感染を阻害し、及び/又はウイルスの複製を阻害することにより、ウイルス受容体に依存しない方法でウイルス感染を治療することができる。ウイルス感染を治療する対象方法はウイルス感染の病徴を減少することができるが、対象方法は単に症状を治療することはせず、その代り、例えばウイルスの細胞への内部移行を減少し、それによって、例えば感染細胞から非感染細胞へのウイルスの拡散、ウイルス複製、細胞内でのウイルスの増殖を減少することによって直接的にウイルス感染を治療する。
【0025】
ウイルス感染の治療方法
本開示は個体におけるウイルス感染の治療方法を提供する。この方法は基本的には、それらを必要とする個体に効果量の上皮成長因子受容体(EGF−R)阻害剤を投与することを含む。本開示はさらに、ウイルスによって引き起こされる慢性肺疾患の急性増悪の治療方法を提供し、この方法は基本的にはそれらを必要とする個体(例えば慢性肺疾患を有する個体)に効果量のEGF−R阻害剤を投与することを含む。
【0026】
ウイルス感染を有する個体に効果量のEGF−R阻害剤を投与することは結果として、1)ウイルス量の減少;2)標的生物学的試料におけるウイルス量の減少;3)個体におけるある上皮細胞から別の細胞へのウイルスの拡散の減少;4)上皮細胞へのウイルスの侵入の減少(例えば、ウイルスの内部移行の減少);5)セロコンバージョン時間(個体の血清中にウイルスが検出できなくなる)の減少;6)治療に対する持続したウイルス反応率の上昇;7)臨床転帰における罹患率又は死亡率の減少;及び8)疾患反応の指標における改善(例えば熱などのウイルス感染の1つ以上症状の減少)、の1つ以上を生じる。
【0027】
いくつかの実施形態においては、「効果量」のEGF−R阻害剤とは、ウイルス感染を有する個体に1以上の用量を投与した場合に、個体における、例えば個体の標的生物学的試料におけるウイルスのゲノムコピー数を減少させるのに効果的な量である。例えばいくつかの実施形態においては、「効果量」のEGF−R阻害剤は、ウイルス感染を有する個体に1以上の用量を投与した場合に、阻害剤を用いた治療を受けていない個体におけるゲノムコピー数と比較して、個体におけるウイルスのゲノムコピー数を少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は90%を超えて、減少するのに効果的な量である。
【0028】
例えば、いくつかの実施形態においては、「効果量」のEGF−R阻害剤は、ウイルス感染を有する個体に1以上の用量を投与した場合に、阻害剤を用いた治療を受けていない生物学的試料におけるゲノムコピー数と比較して、患者から得られた生物学的試料中に存在するウイルスのゲノムコピー数を少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は90%を超えて、減少させるのに効果的な量である。生物学的試料には、(例えばウイルスが呼吸器系ウイルスの場合には)例えばBAL液、肺由来の上皮細胞、肺生検組織、などの肺試料;(例えばウイルスが呼吸器系ウイルスの場合には)鼻のスワブ、鼻洗浄試料、鼻腔由来の細胞などの鼻の試料;(例えばウイルスが呼吸器系ウイルスの場合には)経口スワブ、経口洗浄試料、及び、例えばブラシ又は生検などによって口腔から得られた細胞(例えば上皮細胞)などの中咽頭試料;(例えばウイルスが胃腸管系ウイルスの場合には)便試料(例えば糞便)、胃腸管由来の生検組織、胃腸管由来の細胞などの胃腸管試料;(例えばウイルスが粘膜組織に感染する場合には)膣試料(例えば膣由来の細胞)、胃腸管試料、より下方の胃腸管試料、肺試料、中咽頭試料などを含む粘膜組織試料、が含まれる。
【0029】
例えば、いくつかの実施形態においては、「効果量」のEGF−R阻害剤は、ウイルス感染を有する個体に1以上の用量を投与した場合に、阻害剤を用いた治療を受けていない個体における粘膜組織中のゲノムコピー数と比較して、個体の粘膜組織(例えば胃腸管組織;肺組織)におけるウイルスのゲノムコピー数を少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は90%を超えて減少させるのに効果的な量である。
【0030】
別の例として、いくつかの実施形態においては、「効果量」のEGF−R阻害剤は、呼吸器系ウイルス感染を有する個体に1回分以上の用量を投与した場合に、阻害剤を用いた治療を受けていない個体における肺生物学的試料又は鼻の生物学的試料中のゲノムコピー数と比較して、個体における肺生物学的試料又は鼻の生物学的試料中の呼吸器系ウイルスのゲノムコピー数を少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は90%以上減少させるのに効果的な量である。
【0031】
別の例として、いくつかの実施形態においては、「効果量」のEGF−R阻害剤は、胃腸管ウイルス感染を有する個体に1回分以上の用量を投与した場合に、阻害剤を用いた治療を受けていない個体における胃腸管生物学的試料中のゲノムコピー数と比較して、個体における胃腸管生物学的試料中の胃腸管ウイルスのゲノムコピー数を少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は90%を超えて、減少させるのに効果的な量である。
【0032】
いくつかの実施形態においては、「効果量」のEGF−R阻害剤は、ウイルス感染を有する個体に1回分以上の用量を投与した場合に、個体におけるウイルスのゲノムコピー数を約1000ゲノムコピー/mL血清から約5000ゲノムコピー/mL血清まで、約500ゲノムコピー/mL血清から約1000ゲノムコピー/mL血清まで、約100ゲノムコピー/mL血清から約500ゲノムコピー/mL血清まで、又は100ゲノムコピー/mL血清未満に減少させるのに効果的な量である。いくつかの実施形態においては、「効果量」のEGF−R阻害剤は、ウイルス感染を有する個体に1以上の用量を投与した場合に、個体の血清中のウイルス価を1.5−log、2−log、2.5−log、3−log、3.5−log、4−log、4.5−log、又は5−logに達するまで減少させるのに効果的な量である。
【0033】
いくつかの実施形態においては、効果量のEGF−R阻害剤はウイルスに感染した個体において、感染した上皮細胞から感染していない上皮細胞へのウイルスの拡散を減少又は阻害する量である。例えば、いくつかの実施形態においては、効果量のEGF−R阻害剤は、ウイルスに感染した個体における感染した上皮細胞から感染していない上皮細胞へのウイルスの拡散を、阻害剤を用いた治療を受けていないウイルスの拡散と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は90%を超えて、減少又は阻害する量である。例えば、いくつかの実施形態においては、効果量のEGF−R阻害剤は、個体における感染していない上皮細胞が、個体中に存在するウイルスによって感染することを予防する量である。
【0034】
いくつかの実施形態においては、効果量のEGF−R阻害剤は、ウイルスに感染した個体におけるウイルス複製を減少させる量である。例えば、いくつかの実施形態においては、効果量のEGF−R阻害剤は、ウイルスに感染した個体におけるウイルス複製を、阻害剤を用いた治療を受けていない場合の複製量と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は90%を超えて、減少させる量である。ウイルス複製における効果は、個体から得られた生物学的試料中のウイルス量を測定することによって決定することができる。
【0035】
いくつかの実施形態においては、効果量のEGF−R阻害剤はウイルスに感染した個体において経験される疾患の重症度(例えば病徴)を低減させる量である。例えば、いくつかの実施形態においては、効果量のEGF−R阻害剤は、ウイルスに感染した個体においてウイルスによって引き起こされる疾患の重症度を減少させるのに効果的な量であり、例えば、ウイルス感染の有害症状の重症度を、阻害剤を用いた治療を受けていない個体において経験されるその疾患(例えば有害病徴)の重症度と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は90%を超えて、減少させるのに効果的な量である。有害病徴は例えば、発熱、咳、呼吸困難、嘔吐、下痢、筋肉痛、肺液過剰、頭痛などを含む。
【0036】
いくつかの実施形態においては、効果量のEGF−R阻害剤は、ウイルスに暴露されたが、まだウイルスによる感染の症状を呈していない人が、今後ウイルスによる感染によって生じる病徴を発生するリスクを低減させる量である。
【0037】
いくつかの実施形態においては、効果量のEGF−R阻害剤は、EGF−R阻害剤を用いた治療を受けていない場合のウイルスクリアランス時間と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又はそれ以上、ウイルスクリアランス時間を減少させる量である。
【0038】
いくつかの実施形態においては、効果量のEGF−R阻害剤は、EGF−R阻害剤を用いた治療を受けていない場合の罹患率又は死亡率と比較して、ウイルス感染が原因の罹患率又は死亡率を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又はそれ以上、低下させる量である。
【0039】
対象治療方法がウイルス量の減少、ウイルスクリアランス時間の減少、ウイルス感染が原因の罹患率又は死亡率の低下に効果的かどうかは、当業者により容易に決定される。ウイルス量は、血清又はその他の標的生物学的試料中のウイルス価又はウイルスレベルを測定することによって容易に測定される。血清又はその他の標的生物学的試料中のウイルス数は、例えば、試験されるウイルスに特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いた定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)試験、ウイルスプラーク法、50%組織培養感染量(TCID50)試験、などを含む既知の試験を用いて決定することができる。罹患率が低下したかどうかは、ウイルス感染に関連した、例えば発熱、呼吸器系症状(例えば咳、呼吸が楽か又は困難かなど)、胃腸管系症状などの任意の症状を測定することによって決定することができる。TCID50は50%組織培養感染量であり、例えば接種した細胞培養の50%において病理学的変化を生じ得る病原因子の量であり、TCID50/mlと表すことができる(例えば、Reed and Muench(1938)Am. J. Hyg. 27:493を参照のこと)。
【0040】
いくつかの実施形態においては、本開示は、ウイルスに感染していない個体においてウイルス量を減少させ、及び/又はウイルスクリアランス時間を減少させ、及び/又は罹患率又は死亡率を低下させる方法を提供する。これらいくつかの実施形態においては、この方法は、ウイルスに暴露された48時間以内に効果量のEGF−R阻害剤を投与することを含む。その他の実施形態においては、この方法は、ウイルスに暴露された48時間よりも後に、例えば72時間から約35日、例えば暴露後72時間、4日、5日、6日、又は7日、又はウイルスに暴露後約7日〜約10日、約10日〜約14日、約14日〜約17日、約17日〜約21日、約21日〜約25日、約25日〜約30日、又は約30日〜約35日後に、EGF−R阻害剤を投与することを含む。
【0041】
治療計画は、それらを必要とする個体に治療上効果量のEGF−R阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施形態においては、EGF−R阻害剤は複数回投与される。EGF−R阻害剤の投与頻度は、例えば、症状の重症度などの様々な任意の要因によって多様であり得る。例えば、いくつかの実施形態においては、EGF−R阻害剤は、1ヶ月に1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に3回、隔週(qow)、1週間に1回(qw)、1週間に2回(biw)、1週間に3回(tiw)、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、隔日(qod)、毎日(qd)、1日に2回(qid)、又は1日に3回(tid)投与される。
【0042】
EGF−R阻害剤投与の持続期間、例えばEGF−R阻害剤が投与されている期間は、例えば症状の重症度、患者の反応などのいずれかの要因によって多様であり得る。例えば、EGF−R阻害剤を、約1日〜約2日間、約2日間〜約4日間、約4日間〜約1週間、約2週間〜約4週間、約1ヶ月間〜約2ヶ月間、約2ヶ月間〜約4ヶ月間、又は4ヶ月間よりも長い範囲の期間にわたって投与することができる。
【0043】
EGF−R阻害剤
対象方法において使用するために好適なEGF−R阻害剤には、EGF−Rの活性化を直接又は間接的に阻害することができる任意の薬剤が含まれる。EGF−Rはリガンド依存的、及びリガンド非依存的な機構を介して活性化される場合があり、それぞれ、トランスリン酸化又は自己リン酸化を生じる。目的のEGF−Rアンタゴニストはこれら機構のいずれか又は両方を阻害することができる。その他の実施形態においては、好適なEGF−RアンタゴニストはEGF−Rの活性化を低下させる。
【0044】
好適なEGF−R阻害剤には、小分子EGF−Rアンタゴニスト;EGF−Rに特異的に結合し、かつ、例えばリガンドのEGF−Rへの結合を遮断することによってEGF−Rの活性化を低下させる抗体;EGF−Rアゴニストに特異的に結合し、かつ、EGF−RアゴニストのEGF−Rへの結合を遮断する抗体;及び、EGF−Rの生産を特異的に減少させる抑制性核酸が含まれる。
【0045】
小分子阻害剤
小分子EGF−R阻害剤には、例えば約25kDa未満の化合物、例えば約50ダルトン〜約25kDa、例えば約50ダルトン〜約100ダルトン、約100ダルトン〜約500ダルトン、約500ダルトン〜約1キロダルトン(kDa)、約1kDa〜約5kDa、約5kDa〜約10kDa、又は約10kDa〜約25kDaの化合物が含まれる。小分子阻害剤は、約50ダルトン〜約3000ダルトン、例えば約50ダルトン〜約75ダルトン、約75ダルトン〜約100ダルトン、約100ダルトン〜約250ダルトン、約250ダルトン〜約500ダルトン、約500ダルトン〜約750ダルトン、約750ダルトン〜約1000ダルトン、約1000ダルトン〜約1250ダルトン、約1250ダルトン〜約1500ダルトン、約1500ダルトン〜約2000ダルトン、約2000ダルトン〜約2500ダルトン、又は約2500ダルトン〜約3000ダルトンの範囲の分子量を有する可能性がある。いくつかの実施形態においては、小分子EGF−R阻害剤はペプチドではない。
【0046】
EGF−Rアンタゴニストである小分子チロシンキナーゼ阻害剤は、約1pM〜約1mM、例えば約1pM〜約10pM、約10pM〜約25pM、約25pM〜約50pM、約50pM〜約100pM、約100pM〜約250pM、約250pM〜約500pM、約500pM〜約750pM、約750pM〜約1nM、約1nM〜約10nM、約10nM〜約15nM、約15nM〜約25nM、約25nM〜約50nM、約50nM〜約75nM、約75nM〜約100nM、約100nM〜約150nM、約150nM〜約200nM、約200nM〜約250nM、約250nM〜約300nM、約300nM〜約350nM、約350nM〜約400nM、約400nM〜約450nM、約450nM〜約500nM、約500nM〜約750nM、約750nM〜約1μM、約1μM〜約10μM、約10μM〜約25μM、約25μM〜約50μM、約50μM〜約75μM、約75μM〜約100μM、約100μM〜約250μM、約250μM〜約500μM、又は約500μM〜約1mMのIC50(半数阻害濃度)を有する可能性がある。いくつかの実施形態においては、好適なEGF−Rアンタゴニストは、約1pM〜約1nMのIC50を有するチロシンキナーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態においては、好適なEGF−Rアンタゴニストは、約1nM〜約1μMのIC50を有するチロシンキナーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態においては、好適なEGF−Rアンタゴニストは、約1μM〜約500μMのIC50を有するチロシンキナーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態においては、好適なEGF−Rアンタゴニストは、約500μM〜約1mMのIC50を有するチロシンキナーゼ阻害剤である。
【0047】
いくつかの実施形態においては、好適な小分子EGF−R阻害剤は、EGF−R選択的なチロシンキナーゼ阻害剤である。「EGF−R選択的なチロシンキナーゼ阻害剤」という文脈における「選択的」という用語は、当業者によってよく理解される。例えば、EGF−R選択的なチロシンキナーゼ阻害剤は、チロシンキナーゼ活性を有する別の細胞表面受容体より強くEGF−Rを阻害する。例えばEGF−R選択的なチロシンキナーゼ阻害剤は、仮にこのようなことがあった場合、チロシンキナーゼ活性(EGF−R以外の)を有する表面受容体のチロシンキナーゼ活性を、EGF−Rのチロシンキナーゼ活性を少なくとも50%阻害する濃度において、約20%未満、約15%未満、約10%未満、又は約5%未満しか阻害しない。受容体チロシンキナーゼ(EGF−R以外の)には、例えば、ErbB−2、ErbB−3、ErbB−4;インスリン受容体チロシンキナーゼ(RTK)ファミリーのメンバー;血小板由来成長因子(PDGF)RTKファミリーのメンバー;線維芽細胞成長因子RTKファミリーのメンバー;血管内皮成長因子RTKファミリーのメンバー;TrkA、TrkB、又はTrkC RTK;などが含まれる。
【0048】
いくつかの実施形態においては、EGF−R選択的なチロシンキナーゼ阻害剤は非受容体チロシンキナーゼより強くEGF−Rを阻害する。この場合、非受容体チロシンキナーゼには、例えば、Bリンパ性チロシンキナーゼ(BLK)、乳房腫瘍キナーゼ/プロテインチロシンキナーゼ6(BrK/PTK6)、ガードナー−ラシードネコ肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(FGR)、Srcに関連したFyn癌遺伝子、FGR、Yes(Fyn)、造血細胞キナーゼ(HCK)、LcK、v−Yes−1、ヤマグチ肉腫ウイルス関連癌遺伝子ホモログ(Lyn)、Src、Src関連キナーゼ欠損C末端制御チロシン及びN末端ミリストイル化部位(SRMS)、Yes、並びにYes関連キナーゼ(YRK)などを含むSRCファミリーチロシンキナーゼ(TK)のメンバー;JAKファミリーTKのメンバー(例えばJaK1、JaK2、TyK2など);ABLファミリーTKのメンバー;FAKファミリーTKのメンバー(例えばFAK、PYK2/CAKβ、など);FPSファミリーTKのメンバー;CSKファミリーTKのメンバー;SYKファミリーTKのメンバー;並びにBTKファミリーTKのメンバー、が含まれる。いくつかの実施形態においては、EGF−R選択的なチロシンキナーゼ阻害剤は、仮にこのようなことがあった場合、非受容体TKを、EGF−Rのチロシンキナーゼ活性を少なくとも50%阻害する濃度において、約20%未満、約15%未満、約10%未満、又は約5%未満、阻害する。
【0049】
いくつかの実施形態においては、好適なEGF−Rチロシンキナーゼ阻害剤は、EGF−Rチロシンキナーゼに加えて1つ、2つ、3つ、又は4つの受容体チロシンキナーゼの活性を阻害する。いくつかの実施形態においては、好適なEGF−Rチロシンキナーゼ阻害剤は、EGF−Rチロシンキナーゼに加えて1つ又は2つの非受容体チロシンキナーゼの活性を阻害する。
【0050】
好適なEGF−R阻害剤には、国際公開第99/09016号(American Cyanamid);国際公開第98/43960号(American Cyanamid);国際公開第97/38983号(Warner Lambert);国際公開第99/06378号(Warner Lambert);国際公開第99/06396号(Warner Lambert);国際公開第96/30347号(Pfizer、Inc.);国際公開第96/33978号(Zeneca);国際公開第96/33977号(Zeneca);及び国際公開第96/33980号;米国特許第5,616,582号、同第5,457,105号、同第5,475,001号、同第5,654,307号、同第5,679,683号、同第6,084,095号、同第6,265,410号、同第6,455,534号、同第6,521,620号、同第6,596,726号、同第6,713,484号、同第5,770,599号、同第6,140,332号、同第5,866,572号、同第6,399,602号、同第6,344,459号、同第6,602,863号、同第6,391,874号、同第6,344,455号、同第5,760,041号、同第6,002,008号、同第5,747,498号、国際公開第98/14451号、国際公開第98/50038号、国際公開第99/09016号、及び国際公開第99/24037号、において記載されたEGF−R阻害剤が含まれる。
【0051】
好適なEGF−R阻害剤には、キナゾリン及びキナゾリン誘導体が含まれる。キナゾリンの例としては、PD153035、4−(3−クロロアニリノ)キナゾリン、及びCP−358,774が挙げられる。当該技術分野においては、数多くのキナゾリンEGF−R阻害剤の構造が知られている。例えば、PD153035ついて記載した、Fry et al.(1994)Science 265:1093;及びCP−358,774について記載した、Moyer et al.(1997)Cancer Res.57:4838を参照のこと。PD153035は、4−[(3−ブロモフェニル)アミノ]−6,7−ジメトキシキナゾリンである。
【0052】
好適なEGF−R阻害剤には、キナゾリン誘導体が含まれる。キナゾリン誘導体の例としては、ZD1839(ゲフィチニブ;イレッサ;N−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリン−4−イルプロポキシ)キナゾリン−4−アミン)が挙げられる。EGF−R阻害剤である様々なキナゾリン誘導体の構造が知られている。ZD1839は当該技術分野において周知である。例えば、ZD1839の構造については、米国特許第5,770,599号、及びStrawn and Shawver(April 1998)Exp.Opinion Invest.Drugs 7:553を参照のこと。好適なキナゾリン誘導体の別の例としては、4−アニリノキナゾリン誘導体である、Tarceva(商標)(OSI−774;CP−358774又はエルロチニブとも呼ばれる)がある。CP−358774は、([6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリン−4−イル]−(3−エチニルフェニル)アミンである。これら化合物の塩、例えば塩酸塩(例えばエルロチニブHCl)、及びその他の塩形態(例えばメシル酸エルロチニブ)もまた使用に適している。例えば、CP−358774の構造については、Morin(2000)Oncogene 19:6574を参照のこと。ZD6474もまた使用に適している。バンテタニブ(ZACTIMA(商標);ZD6474)は、二重のVEGFR2及びEGF−Rチロシンキナーゼ阻害剤である。ZD6474は、4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(l−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリンである。
【0053】
好適なEGF−R阻害剤には、置換ジアミノフタルイミドが含まれる。置換ジアミノフタルイミドの例としては、4,5−ビス(4−フルオロアニリノ)フタルアミドが挙げられる。例えば、Buchdunger et al.(1995)Clin.Cancer Res.1:813を参照のこと。
【0054】
好適なEGF−R阻害剤には、チロホスチンが含まれる。例えば、Levitzki and Gazit(1995)Science 267:1782;及びBen−Bassat(1997)Cancer Res.57:3741を参照のこと。いくつかの実施形態においては、チロホスチンはAG1478(4−(3−クロロフェニルアミノ)−6,7−ジメトキシキナゾリン)である。チロホスチンの例としては、AG1571(SU5271;Sugen)があり、AG1571の構造は、例えば、Huang et al.(2003)J.Pharmacol.Exp.Ther.304:753に見られる。
【0055】
好適なEGF−R阻害剤には、7H−ピロロ[2,3]クラスのピリミジンを含むピロロピリミジンが含まれる。ピロロピリミジンの例としては、例えば、4−(フェニルアミノ)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン、CGP59326、CGP60261、及びCGP62706が挙げられる。例えば、Traxler et al.(1996)J.Med.Chem. 39:2285を参照のこと。CGP59326、CGP60261、及びCGP62706の構造については、例えば、Traxler et al.(1997)J.Pharm.Belg.52:88を参照のこと。別の好適なピロロピリミジンには、(R)−4−[4−[(1−フェニルエチル)アミノ]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−6−イル]−フェノールである、PKI−166(CGP75166)がある。CGP75166の記載については、例えば、Hoekstra et al.(2005)Clin.Cancer Res.11:6908を参照のこと。別の好適なピロロピリミジンEGF−Rチロシンキナーゼ阻害剤には(R)−6−(4−ヒドロキシフェニル)−4−[(1−フェニルエチル)アミノ]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン)がある。AEE788もまた使用に適している。AEE788はEGF−R、HER2、及びVEGF−R2チロシンキナーゼのリン酸化を阻害する。AEE788は7H−ピロロ[2,3]クラスのピリミジンのメンバーである。AEE788は、[6−[4−[(4−エチルピペラジン−1−イル)メチル]フェニル]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル]−((R)−1−フェニルエチル)アミンである。
【0056】
好適なEGF−R阻害剤は、例えば、キナゾリン、ピリドピリミジン、ピリミドピリミジン、ピロロピリミジン、ピラゾロピリミジン、ジアミノフタルイミド、複素二環化合物、及びチロホスチンを含む、任意の様々な化学的分類であり得る。従って、いくつかの実施形態においては、EGF−R阻害剤は、キナゾリン、ピリドピリミジン、ピリミドピリミジン、ピロロピリミジン、ピラゾロピリミジン、ジアミノフタルイミド、複素二環化合物、及びチロホスチンから選択される。
【0057】
好適なEGF−R阻害剤には、国際公開第2008/05584号、国際公開第2008/095847号、米国特許公開第2007/0185081号、及び米国特許出願公開第2007/0185091号などにおいて記載された複素二環化合物が含まれる。
【0058】
例えば、一般式、式Iの化合物がある。
【化1】

【0059】
式中、Rは国際公開第2008/055854号に記載された通りであり、かつ、式Iの化合物は使用に適している。例えば、国際公開第2008/055854号に記載された通り、式IのRはシス−4−アミノ−シクロヘキシル、トランス−4−アミノ−シクロヘキシル、シス−4−メチルアミノ−シクロヘキシル、トランス−4−メチルアミノ−シクロヘキシル、シス−4−(メトキシカルボニルアミノ)−シクロヘキシル、トランス−4(メトキシカルボニルアミノ)−シクロヘキシル、シス−4−(N−メトキシカルボニル−N−メチルアミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(N−メトキシカルボニル−N−メチル−アミノ)−シクロヘキシル、シス−4−(エチルオキシカルボニルアミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(エチルオキシカルボニルアミノ)−シクロヘキシル、シス−4−(N−エチルオキシカルボニル−N−メチル−アミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(N−エチルオキシカルボニル−N−メチルアミノ)−シクロヘキシル、シス−4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−シクロヘキシル、シス−4−(tert−ブトキシカルボニル−N−メチルアミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(tert−ブトキシカルボニル−N−メチルアミノ)−シクロヘキシル、シス−4−(アセチルアミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(アセチルアミノ)−シクロヘキシル、シス−4−(N−アセチル−N−メチル−アミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(N−アセチル−N−メチル−アミノ)−シクロヘキシル、シス−4−(メトキシアセチル−アミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(メトキシアセチル−アミノ)−シクロヘキシル、シス−4−(N−メトキシアセチル−N−メチル−アミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(N−メトキシアセチル−N−メチル−アミノ)−シクロヘキシル、シス−4−(ジメチルアミノカルボニル−アミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(ジメチルアミノカルボニルアミノ)−シクロヘキシル、シス−4−(N−ジメチルアミノカルボニル−N−メチル−アミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(N−ジメチルアミノカルボニル−N−メチル−アミノ−シクロヘキシル、シス−4−(モルホリノカルボニル−アミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(モルホリノカルボニル−アミノ)−シクロヘキシル、シス−4−(N−モルホリノカルボニル−N−メチル−アミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(N−モルホリノカルボニル−N−メチル−アミノ−シクロヘキシル、シス−4−(ピペラジン−1−イルカルボニルアミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(ピペラジン−1−イルカルボニルアミノ)−シクロヘキシル、シス−4−(N−ピペラジン−1−イルカルボニル−N−メチルアミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(N−ピペラジン−1−イルカルボニル−N−メチルアミノ)−シクロヘキシル、シス−4−[(4−メチルピペラジン−1−イルカルボニル)−アミノ]−シクロヘキシル、トランス−4−[(4−メチルピペラジン−1−イルカルボニル)−アミノ]−シクロヘキシル、シス−4[N−(4−メチルピペラジン−1−イルカルボニル)−N−メチル−アミノ]−シクロヘキシル、トランス−4−[N−(4−メチルピペラジン−1−イルカルボニル)−N−メチル−アミノ]−シクロヘキシル、シス−(メタンスルホニルアミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(メタンスルホニルアミノ)−シクロヘキシル、シス−4−(N−メタンスルホニル−N−メチル−アミノ)−シクロヘキシル、トランス−4−(N−メタンスルホニル−N−メチル−アミノ)−シクロヘキシル、シス−4−フタルイミド−シクロヘキシル、及びトランス−4−フタルイミド−シクロヘキシルである可能性がある。例えば、いくつかの実施形態においては、好適なEGF−Rアンタゴニストは、下記の式の化合物である。
【化2】

【0060】
別の例として、一般式、式IIの化合物がある。
【化3】

【0061】
式中、Rは国際公開第2008/055854号に記載された通りであり、かつ、式IIの化合物は使用に適している。例えば、国際公開第2008/055854号に記載された通り、式IIのRは、上記式IのRについて記載された通りであり得る。
【0062】
別の例として、一般式、式IIIの化合物がある。
【化4】

【0063】
式中、Z及びRは国際公開第2008/055854号に記載された通りであり、かつ、式IIIの化合物は使用に適している。例えば、国際公開第2008/055854号に記載された通り、式IIIのRは、上記式IのRについて記載された通りであり得る。
【0064】
別の例として、一般式、式IVの化合物がある。
【化5】

【0065】
式中、R’は国際公開第2008/055854号に記載された通りであり、かつ式IVの化合物は使用に適している。例えば、国際公開第2008/055854号に記載された通り、式IVのR’は、シス−4−アミノ−シクロヘキサ−1−イル、トランス−4−アミノ−シクロヘキサ−1−イル、シス−4−(メチルアミノ)−シクロヘキサ−1−イル又はトランス−4−(メチルアミノ)−シクロヘキサ−1−イルであり得る。
【0066】
別の例として、一般式、式Vの化合物がある。
【化6】

【0067】
式中、R’’は国際公開第2008/055854号に記載された通りであり、かつ、式Vの化合物は使用に適している。例えば、国際公開第2008/055854号に記載された通り、式VのR’’は、シス−4−アミノ−シクロヘキサ−1−イル又はトランス−4−アミノ−シクロヘキサ−1−イルであり得る。
【0068】
別の例として、一般式、式VIの化合物がある。
【化7】

【0069】
式中、R、R、及びRは、国際公開第2008/095847号に記載された通りであり、かつ、式VIの化合物は使用に適している。
【0070】
例えば、式VIの化合物は、国際公開第2008/055854号に記載された通りであり、式中、
【0071】
は、フェニル、1−フェニルエチル又はインダン−4−イル基であってよく、ここで、いずれの場合もフェニル核はR〜Rの基によって置換され、
ここでR及びRは同じであっても異なっていてもよく、それぞれは、水素、フッ素、塩素、臭素、若しくはヨウ素原子、C1−4−アルキル、ヒドロキシ、C1−4−アルコキシ−、C2−3−アルケニル、C2−3−アルキニル、アリール、アリールオキシ、アリールメチル、アリールメトキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールメチル、ヘテロアリールメトキシ、1つ〜3つのフッ素原子によって置換されたメチル若しくはメトキシ、シアノ、ニトロ、又はアミノから選択され、かつ
は、水素、フッ素、塩素、若しくは臭素原子、又はメチル若しくはトリフルオロメチルであり;かつ
は、いずれの場合もRによってモノ−、ジ−、トリ−置換されていてもよいアゼチジン−1−イル、ピロリジン−1−イル、ピペリジン−1−イル、ホモピペリジン1−イル、モルホリン−4−イル、ホモモルホリン−4−イル、ピペラジン−1−イル、4−(C1−4−アルキルカルボニル)−ピペラジン−1−イル、4−(C1−4−アルキル−スルホニル)−ピペラジン−1−イル、ホモピペラジン−1−イル、4−(C1−4−アルキル−カルボニル)−ホモピペラジン−1−イル又は4−(C1−4−アルキル−スルホニル)−ホモピペラジン−1−イルであってよく;ここで、
置換基は同一であっても異なってもよく、かつ、ここで、Rはフッ素、塩素、臭素若しくはヨウ素原子、C1−4−アルキル、C2−4−アルケニル若しくはC2−4−アルキニル基、1つ〜3つのフッ素原子で置換されたメチル基若しくはメトキシ基、アミノ、C1−4−アルキルアミノ、ジ−(C1−4−アルキル)アミノ、C1−4−アルキル−カルボニルアミノ、N−(C1−4−アルキル)−C1−4−アルキル−カルボニルアミノ、C1−4,−アルキル−スルホニルアミノ若しくはN−(C1−4−アルキル)−C1−4−アルキル−スルホニルアミノ基、アミノ−C1−4−アルキル、C1−4−アルキルアミノ−C1−4−アルキル、ジ−(C1−4−アルキル)アミノ−C1−4−アルキル、C1−4−アルキル−カルボニルアミノ−C1−4−アルキル、N−(C1−4−アルキル)−C1−4−アルキル−カルボニルアミノ−C1−4−アルキル−、C1−4−アルキル−スルホニルアミノ−C1−4−アルキル若しくはN−(C1−4−アルキル)−C1−4−アルキル−スルホニルアミノ−C1−4−アルキル基、ヒドロキシ、C1−4−アルキルオキシ若しくはC1−4−アルキル−カルボニルオキシ基、ヒドロキシ−C1−4−アルキル、C1−4−アルキルオキシ−C1−4−アルキル若しくはC1−4−アルキル−カルボニルオキシ−C1−4−アルキル基、C1−4−アルキル−カルボニル、シアノ、C1−4−アルキル−オキシカルボニル、カルボキシ、アミノカルボニル、C1−4−アルキル−アミノカルボニル、ジ−(C1−4−アルキル)アミノ−カルボニル、ピロリジン−1−イルカルボニル、ピペリジン−1−イルカルボニル、ピペラジン−1−イルカルボニル、4−C1−4−アルキル−ピペラジン−1−イルカルボニル若しくはモルホリン−4−イル−カルボニル基、C1−4−アルキルカルボニル−C1−4−アルキル、シアノ−C1−4−アルキル、C1−4−アルキルオキシカルボニル−C1−4−アルキル、アミノカルボニル−C1−4−アルキル、C1−4−アルキルアミノカルボニル−C1−4−アルキル、ジ−(C1−4−アルキル)アミノカルボニル−C1−4−アルキル、ピロリジン−1−イルカルボニル−C1−4−アルキル−、ピペリジン−1−イル−カルボニル−C1−4−アルキル、ピペラジン−1−イル−カルボニル−C1−4−アルキル、4−C1−4−アルキル−ピペラジン−1−イル−カルボニル−C1−4−アルキル若しくはモルホリン−4−イル−カルボニル−C1−4−アルキル基、C1−4−アルキルスルファニル、C1−4−アルキルスルフィニル、C1−4−アルキルスルホニル、アミノスルホニル、C1−4−アルキル−アミノスルホニル若しくはジ−(C1−4−アルキル)アミノ−スルホニル基、C1−4−アルキルスルファニル−C1−4−アルキル、C1−4−アルキルスルフィニル−C1−4−アルキル、C1−4−アルキルスルホニル−C1−4−アルキル、アミノスルホニル−C1−4−アルキル、C1−4−アルキル−アミノスルホニル−C1−4−アルキル若しくはジ−(C1−4−アルキル)アミノ−スルホニル−C1−4−アルキル基であり、;かつ、この場合、Rに含まれる上述したヘテロ環はオキソ基によってさらに置換されていてもよく、
は水素原子、フッ素、塩素、臭素若しくはヨウ素原子;又はR基によって置換されたC1−4−アルキル基若しくはC1−4−アルキル基であってよく、
ここでRは、ヒドロキシ、C1−3−アルキルオキシ、C3−6−シクロアルキルオキシ、a−、C1−3−アルキルアミノ、ジ−(C1−3−アルキル)アミノ、ビス−(2−メトキシエチル)−アミノ、ピロリジン−1−イル、ピペリジン−1−イル、ホモピペリジン1−イル、モルホリン−4−イル、ホモモルホリン−4−イル、2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−イル、3−オキサ−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル、8−オキサ−3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル、ピペラジン−1−イル−、4−C1−3−アルキル−ピペラジン−1−イル、ホモピペラジン−1−イル若しくはC1−3−アルキル−ホモピペラジン−1−イル基若しくはホルミルアミノ、C1−4−アルキルカルボニルアミノ、C1−3−アルキルオキシ−C1−3−アルキルカルボニルアミノ、C1−4−アルキルオキシカルボニルアミノ、アミノカルボニルアミノ、C1−3−アルキルアミノカルボニルアミノ、ジ−(C1−3−アルキル)アミノカルボニルアミノ、ピロリジン−1−イルカルボニルアミノ、ピペリジン−1−イルカルボニルアミノ、ピペラジン−1−イルカルボニルアミノ、4−C1−3−アルキル−ピペラジン−1−イルカルボニルアミノ、モルホリン−4−イルカルボニルアミノ若しくはC1−4−アルキルスルホニルアミノ基であり;
ヒドロキシ、C1−4−アルキルオキシ、1つ〜3つのフッ素原子で置換されたメトキシ若しくはエチルオキシ基、上段で定義されたような基Rで置換されたC2−4−アルキルオキシ基、C3−7−シクロアルキルオキシ若しくはC3−7−シクロアルキル−C1−4−アルキルオキシ基、テトラヒドロフラン−3−イルオキシ、テトラヒドロピラン−3−イルオキシ若しくはテトラヒドロピラン−4−イルオキシ基、テトラヒドロフラニル−C1−4−アルキルオキシ若しくはテトラヒドロピラニル−C1−4−アルキルオキシ基であり;
一位の位置がR基によって置換されたピロリジニル、ピペリジニル若しくはホモピペリジニル基によって置換された、C1−4−アルコキシ基であり、ここで
は水素原子若しくはC1−3−アルキル基であり;
又は上段で定義されたような基Rによって4位が置換されたモルホリニル基によって置換されたC1−4−アルコキシ基であり、かつ、ここで、基Rの定義における上述のピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル及びモルホリニル基はそれぞれ1つ若しくは2つのC1−3−アルキル基によって置換されていてもよく、かつ、この場合、それぞれの例においては、前述の基の定義における上述のアリール基は、Rによる1基若しくは2基置換のフェニル基を意味し、
ここで、置換基は同一であっても異なっていてもよく、かつRは水素原子、フッ素、塩素、臭素若しくはヨウ素原子、若しくはC1−3−アルキル、ヒドロキシ、C1−3−アルキルオキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ若しくはシアノ基であり;かつ
ここで、前述の基の定義における上述のヘテロアリール基はピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル又はピラジニル基を意味し、この場合、上記のヘテロアリール基は基Rによる1基若しくは2基置換であり、ここで、置換基は同じであっても異なっていてもよく、及びRは上段で定義された通りであり;並びに
別段の指定のない限り、上記のアルキル基は直鎖であっても分岐であってもよい。
【0072】
例えば、式VIIの化合物がある。
【化8】

【0073】
式中、R及びRは国際公開第2008/095847号で記載された通りであり、かつ、式VIIの化合物は使用に適している。例えば、国際公開第2008/095847号で記載された通り、式VIIのR及びRは上述の式VIにおいて記載されたR及びRと同様であり得る。
【0074】
別の例として、式VIIIの化合物がある。
【化9】

【0075】
式中、R、R、及びZは国際公開第2008/095847号で記載された通りであり、かつ、式VIIIの化合物は使用に適している。例えば、国際公開第2008/095847号で記載された通り、式VIIIのR及びRは、上述の式VIにおいて記載されたR及びRと同様であってよく、かつZは例えば塩素若しくは臭素原子などのハロゲン原子、又はメタンスルホニルオキシ若しくはp−トルエンスルホニルオキシ基などのスルホニルオキシ基などの離脱基である。
【0076】
別の例として、式IXの化合物がある。
【化10】

【0077】
式中、R及びRは国際公開第2008/095847号で記載された通りであり、かつ、式IXの化合物は使用に適している。例えば、国際公開第2008/095847号で記載された通り、式IXのR及びRは上述の式VIにおいて記載されたR及びRと同様であり得る。
【0078】
別の例として、式Xの化合物がある。
【化11】

【0079】
式中、R及びRは国際公開第2008/095847号で記載された通りであり、かつ、式Xの化合物は使用に適している。例えば、国際公開第2008/095847号で記載された通り、式XのR及びRは上述の式VIにおいて記載されたR及びRと同様であり得る。
【0080】
別の例として、式XIの化合物がある。
【化12】

【0081】
式中、R、R、及びZは国際公開第2008/095847号で記載された通りであり、かつ、式XIの化合物は使用に適している。例えば、国際公開第2008/095847号で記載された通り、式XIのR及びRは上述の式VIにおいて記載されたR及びRと同様であってよく、並びにZはハロゲン原子である。
【0082】
別の例として、式XIIの化合物がある。
【化13】

【0083】
式中、R及びRは国際公開第2008/095847号で記載された通りであり、かつ、式XIIの化合物は使用に適している。例えば、国際公開第2008/095847号で記載された通り、式XIIのR及びRは上述の式VIにおいて記載されたR及びRと同様であり得る。
【0084】
別の例として、式XIIIの化合物がある。
【化14】

【0085】
式中、R、R、及びZは国際公開第2008/095847号で記載された通りであり、かつ、式XIIIの化合物は使用に適している。例えば、国際公開第2008/095847号で記載された通り、式XIIIのR及びRは上述の式VIにおいて記載されたR及びRと同様であってよく、及びZは、例えば塩素若しくは臭素原子などのハロゲン原子、若しくはメタンスルホニルオキシ若しくはp−トルエンスルホニルオキシ基などのスルホニルオキシ基などの離脱基である。
【0086】
別の例として、式XIVの化合物がある。
【化15】

【0087】
式中、R、Rb’、及びRは国際公開第2008/095847号で記載された通りであり、かつ、式XIVの化合物は使用に適している。例えば、国際公開第2008/095847号で記載された通り、式XIVのR及びRは上述の式VIにおいて記載されたR及びRと同様であってよく、かつRb’は、例えば、任意に置換されたベンジルオキシ基、シリルオキシ、アセチルオキシ、ベンジルオキシ、メトキシ、エトキシ、tert−ブトキシ又はチリルオキシ基などのヒドロキシル基に変換可能な1つ以上の基を含む。
【0088】
別の例として、式XVの化合物がある。
【化16】

【0089】
式中、R、Rb’’、及びRは国際公開第2008/095847号で記載された通りであり、かつ、式XVの化合物は使用に適している。例えば、国際公開第2008/095847号で記載された通り、式XVのR及びRは上述の式VIにおいて記載されたR及びRと同様であってよく、かつRb’’は保護された窒素原子を含む。アミノ、アルキルアミノ又はイミノ基のための標準的な保護基には、例えば、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ベンジルメトキシベンジル又は2、4−ジメトキシベンジル基が含まれ、加えてアミノ基に対してはフタリル基を用いても良い。
【0090】
好適な化合物の例には、例えば、4−[(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)アミノ]−6−[シス−4−(モルホリン−4−イル)−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン;4−[(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)アミノ]−6−[トランス−4−(モルホリン−4−イル)−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン;4−[(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)アミノ]−6−[(R)−シス−4−(3−ヒドロキシ−ピロリジン−1−イル)−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン;4−[(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)アミノ]−6−[(R)−トランス−4−(3−ヒドロキシ−ピロリジン−1−イル)−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン;4−[(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)アミノ]−6−[(S)−シス−4−(3−ヒドロキシ−ピロリジン−1−イル)−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン;4−[(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)アミノ]−6−[(S)−トランス−4−(3−ヒドロキシ−ピロリジン−1−イル)−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン;4−[(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)アミノ]−6−[シス−4−(3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン;4−[(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)アミノ]−6−[トランス−4−(3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン;4−[(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)アミノ]−6−{(S)−シス−4−[2−(N、N−ジメチルアミノカルボニル)−ピロリジン−1−イル]−シクロヘキシルオキシ−メトキシ−キナゾリン;4−[(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)アミノ]−6−{(S)−トランス−4−[2−(N、N−ジメチルアミノカルボニル)−ピロリジン−1−イル]−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン;4−[(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)アミノ]−6−{(S)−シス−4−[2−(アミノカルボニル)−ピロリジン−1−イル]−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン;4−[(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)アミノ]−6−{(S)−トランス−4−[2−(アミノカルボニル)−ピロリジン−1−イル]−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン;4−[(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)アミノ]−6−[トランス−4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン;4−[(2−フルオロ−3−メチル−フェニル)アミノ]−6−[トランス−4−(3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン;4−[(2−フルオロ−5−メチル−フェニル)アミノ]−6−[トランス−4−(3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン;4−[(2,4−ジフルオロ−3−メチル−フェニル)アミノ]−6−[トランス−4−(3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン;及び4−[(3−クロロ−2−メチル−フェニル)アミノ]−6−[トランス−4−(3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−シクロヘキシルオキシ]−7−メトキシ−キナゾリン、が挙げられる。
【0091】
別の好適なEGF−R阻害剤はEKB−569である。EKB−569はEGF−Rチロシンキナーゼ活性を不可逆的に阻害する3−シアノキノリンである。EKB−569の記載については例えば、Erlichman et al.(2006)J.Clin.Oncol.24:2252を参照のこと。EKB−569は、(N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリニル]−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテンアミド)である。
【0092】
別の好適な小分子EGFR阻害剤はPD 183805(CI 1033;2−プロペンアミド、N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[3−(4−モルホリニル)プロポキシ]−6−キナゾリニル]−、二塩酸;Pfizer Inc.)である。CI−1033は経口で用いることが可能な4−アニリノキナゾロン不可逆的チロシンキナーゼ阻害剤である。
【0093】
さらなる好適な小分子EGFR阻害剤には、ZM105180((6−アミノ−4−(3−メチルフェニル−アミノ)−キナゾリン;Zeneca);BIBX−1382(N−8−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−N−2−(1−メチルピペリジン−4−イル)−ピリミド[5,−4−d]ピリミジン−2、8−ジアミン;Boehringer Ingelheim);CL−387785(N−[4−[(3−ブロモフェニル)アミノ]−6−キナゾリニル−2−ブチンアミド);BIBU1361[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−[6−(4−ジエチルアミノメチルピペリジン−1−イル)−ピリミド[5,4−d]ピリミジン−4−イル]−アミン];又は上述のいずれかの化合物の塩、が含まれるが、これらには限定されない。例えば、BIBX−1382二塩酸塩は使用に適している。BIBX−1382の記載については、例えばDittrich et al.(2002)J.Pharmacol.Exp.Ther.311:502を参照のこと。CL−387785の記載については、例えばDiscafani et al.(1999)Biochem.Pharmacol.57:917を参照のこと。BIBU1361の議論については、例えばSolca et al.(2004)J.Pharmacol.Expt’l Ther.311:502を参照のこと。
【0094】
さらなる好適な小分子EGFR阻害剤には、6−フラニルキナゾリンが含まれる。それら阻害剤の例としては、ErbB−2及びEGFRの両方に対する可逆的なチロシンキナーゼ阻害剤であるGW572016(Tykerb(商標);Lapatinib)が挙げられる。GW572016は、6−フラニルキナゾリンである。GW572016は、N−[3−クロロ−4−[(3−フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]−6−[5−[(2−メチルスルホニルエチルアミノ)メチル]フラン−2−イル]キナゾリン−4−アミンである。
【0095】
好適なEGF−Rチロシンキナーゼ阻害剤にはまた、例えば、EGF−Rキナーゼに対する活性を有する多重キナーゼ阻害剤、すなわちEGF−Rキナーゼと1つ以上のさらなるキナーゼを阻害する阻害剤も含まれる。それら化合物の例としては、EGF−RとHER2の阻害剤CI−1033(以前は、PD183805として知られていた;Pfizer);EGF−RとHER2の阻害剤GW−2016(GW−572016又はラパチニブトシル酸塩としても知られる);EGF−RとJAK2/3の阻害剤AG490(チロホスチン);EGF−RとHER2の阻害剤ARRY−334543(4−ジメチルアミノ−but−2−エン酸;Array BioPharma);BIBW−2992、不可逆的二重EGF−R/HER2キナーゼ阻害剤(4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−6−{[4−(N,N−ジメチルアミノ)−1−オキソ−2−ブテン−1−イル]アミノ}−7−((S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)−キナゾリン;Boehringer Ingelheim Corp.);EGF−RとHER2の阻害剤EKB−569(Wyeth);VEGF−R2とEGFRの阻害剤ZD6474(ZACTIMA(商標);AstraZeneca Pharmaceuticals)、及びEGF−RとHER2の阻害剤BMS−599626(Bristol−Myers Squibb;BMX−599626の構造については、例えばWong et al.(2006)Clin.Cancer Res.12:6186を参照のこと)が挙げられる。
【0096】
上述したいずれかのEGF−Rアンタゴニストの薬剤的に許容可能な塩もまた使用に適している。上述したいずれかのEGF−Rアンタゴニストのプロドラッグもまた使用に適している。上述したいずれかのEGF−Rアンタゴニストの類似物及び誘導体もまた使用に適している。
【0097】
特定の実施形態においては、1つ以上の上述のEGF−Rアンタゴニストが特異的に除外される。特定の実施形態においては、1つ以上の上述したクラスのEGF−Rアンタゴニストが特異的に除外される。
【0098】
抗体アンタゴニスト
好適なEGF−Rアンタゴニストには、EGF−Rに特異的に結合し、かつ、EGF−Rの活性を阻害する、例えばシグナル伝達活性を阻害する、EGF−RリガンドのEGF−Rへの結合を阻害するなどの抗体が含まれる。
【0099】
好適な抗体EGF−Rアンタゴニストには、モノクローナル抗体(中和抗体、キメラ、及びヒト化抗体を含む)、多重特異性を有する抗体組成物、単鎖抗体、免疫抱合体及び抗体断片が含まれる。抗−EGF−R抗体は、例えば、IgGサブタイプ(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2)を含むIgG;IgM;IgA;などいずれのアイソタイプである可能性がある。
【0100】
好適な抗体EGF−Rアンタゴニストには、例えば、インタクト抗体の抗原結合又は可変領域を含む、インタクト抗体の一部分である抗体断片が含まれる。抗体断片の例としては、完全長未満の抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;二重特異性抗体;直線上抗体;単鎖抗体分子;単鎖抗体、シングルドメイン抗体分子、抗体断片を含む融合タンパク質、抗体断片を含む組み換えタンパク質、及び抗体断片から形成された多特異性抗体が挙げられる。
【0101】
非ヒト(例えばネズミ)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab)又は抗体のその他の抗原結合サブ配列など)である。一般的に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体の相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性及び結合能を有するマウス、ラット、又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は相当する非ヒトFR残基によって置き換えられる。さらに、レシピエント抗体又は導入されたCDR若しくはFR配列のいずれにも含まれない残基をヒト化抗体が含んでいてもよい。これらの変更は、抗体性能をさらに高め、最適にするために行われる。一般的にヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質的な全てが非ヒト免疫グロブリンのそれらに相当し、及びFR残基の全て又は実質的な全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のそれらである可変領域の全てのうちの少なくとも1つ、又は全てのうちの少なくとも2つを実質的に含んでいてもよい。ヒト化抗体は好ましくは、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域をもまた含んでいてもよい。
【0102】
「脱免疫化」抗体は、示された種に対して非免疫原性の、又は免疫原性が低い免疫グロブリンである。脱免疫化は、抗体に対する構造変化を介して達成することができる。当業者に知られるいずれの脱免疫化技術をも使用することができる。例えば国際公開第00/34317号に、抗体の脱免疫化に用いられる1つの好適な技術が記載されている。
【0103】
「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における相当する配列に対して、同一又は類似し、鎖の残りの部分が別の種由来の抗体又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における相当する配列に同一又は類似した、所望の生物活性を示す免疫グロブリン、並びにそれら抗体の断片である(例えば、米国特許第4,816,567号及びMorrison et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851−6855(1984)を参照のこと)。
【0104】
抗体を用いたEGFRキナーゼ阻害剤には、その天然のリガンドによってEGFR活性化を部分的に又は完全に遮断するいずれの抗EGFR抗体又は抗体断片も含まれる。抗体を用いたEGF−R阻害剤の限定されない例としては、Modjtahedi,H.,et al.,1993,Br.J.Cancer 67:247−253;Teramoto,T.,et al.,1996,Cancer 77:639−645;Goldstein et al.,1995,Clin.Cancer Res.1:1311−1318;Huang,S.M.,et al.,1999,Cancer Res.15:59(8):1935−40;及びYang,X.,et al.,1999,Cancer Res.59:1236−1243;並びに米国特許第5,891,996号に記載された阻害剤が挙げられる。例えば、EGFRキナーゼ阻害剤は、モノクローナル抗体Mab E7.6.3(Yang,X.D.et al.(1999)Cancer Res.59:1236−43)、若しくはMab C225(ATCC アクセッション番号HB−8508;例えばPetit et al.(1997)Am.J.Pathol.151:1523を参照;及びKawamoto et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:1337)、又は結合特異性を有する抗体若しくは抗体断片である可能性がある。好適なモノクローナル抗体EGFRキナーゼ阻害剤には、IMC−C225(セツキシマブ又はERBITUX(商標)としても知られる;Imclone Systems;例えば国際公開第96/40210号を参照)、ABX−EGF(Abgenix)、EMD 72000(Merck KgaA、Darmstadt)、RH3(York Medical Bioscience Inc.)、及びMDX−447(Medarex/Merck KgaA)、並びにEMD559900(MAb 425としても知られる;例えばSchnurch et al.(1994)Eur.J.Cancer 30A:491を参照)が含まれるが、これらには限定されない。
【0105】
特定の実施形態においては、EGF−R抗体アンタゴニストが特異的に除外される。特定の実施形態においては、1つ以上の特異的EGF−R抗体アンタゴニストが特異的に除外される。
【0106】
抑制性核酸
対象方法における使用のためのEGFRキナーゼ阻害剤はまた、アンチセンスオリゴヌクレオチド構築物を用いた阻害剤である可能性がある。アンチセンスRNA分子及びアンチセンスDNA分子を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは、EGFR mRNAに結合してタンパク質翻訳を阻害すること又はmRNAの分解を上昇させることによってEGFR mRNAの翻訳の遮断に直接作用し、そのため、EGFRキナーゼタンパク質のレベルが減少し、細胞中での活性が低下する。例えば、少なくとも約15塩基で、かつ、EGFRをコードするmRNA転写配列の特異領域に相補のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、例えば標準的なリン酸ジエステル技術によって合成し、かつ、例えば静脈注射又は点滴によって投与することができる。既知の配列を有する遺伝子の遺伝子発現を特異的に阻害する、アンチセンス技術を使用した方法は当業者において周知である(例えば、米国特許第6,566,135号;第6,566,131号;第6,365,354号;第6,410,323号;第6,107,091号;第6,046,321号;及び第5,981,732号を参照のこと)。
【0107】
低分子抑制性RNA(siRNA)もまた、対象方法での使用においてEGFRキナーゼ阻害剤として作用する可能性がある。腫瘍、対象又は細胞を低分子二本鎖RNA(dsRNA)、又は低分子二本鎖RNAの生産を誘導するベクター若しくは構築物と接触させ、EGFRの発現を特異的に阻害することにより、EGFR遺伝子発現を減少させることができる(例えば、RNA干渉又はRNAi)。既知の配列を有する遺伝子のための適したdsRNA又はdsRNAをコードしているベクターの選択方法は当該技術分野において周知である(例えば、Tuschi,T.,et al.(1999)Genes Dev.13(24):3191−3197;Elbashir,S.M.et al.(2001)Nature 411:494−498;Hannon,G.J.(2002)Nature 418:244−251;McManus,M.T.and Sharp,P.A.(2002)Nature Reviews Genetics 3:737−747;Bremmelkamp,T.R.et al.(2002)Science 296:550−553;米国特許第6,573,099号及び第6,506,559号;並びに国際公開第01/36646号、国際公開第99/32619号、及び国際公開第01/68836号を参照のこと)。
【0108】
いくつかの実施形態においては、対象方法での使用において好適なEGF−R阻害剤は抑制性(又は「干渉」)核酸である。干渉核酸(RNAi)には、細胞、例えば神経細胞、におけるEGF−Rポリペプチドのレベルを減少させる核酸が含まれる。干渉核酸には、例えば低分子干渉核酸(siNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、及び低分子ヘアピン型RNA(shRNA)分子が含まれる。
【0109】
本明細書で使用されるとき、「低分子干渉核酸」、「siNA」、「低分子干渉RNA」、「siRNA」、「低分子干渉核酸分子」、「低分子干渉オリゴヌクレオチド分子」、又は「化学的に修飾された低分子干渉核酸分子」という用語は、例えば、配列特異的な方法におけるRNA干渉「RNAi」又は遺伝子抑制を介して遺伝子発現を阻害又はダウンレギュレートすることができる任意の核酸分子を意味する。標的遺伝子が示されている場合、RNAi分子の設計は当該技術分野においては日常的な作業である。(参照により本明細書に組み込まれる)米国特許第2005/0282188号、及びこの特許において引用された文献もまた参照のこと。例えば、Pushparaj et al.Clin Exp Pharmacol Physiol.2006 May−Jun;33(5−6):504−10;Lutzelberger et al.Handb Exp Pharmacol.2006;(173):243−59;Aronin et al.Gene Ther.2006 Mar;13(6):509−16;Xie et al.Drug Discov Today.2006 Jan;11(1−2):67−73;Grunweller et al.Curr Med Chem.2005;12(26):3143−61;及び、Pekaraik et al.Brain Res Bull.2005 Dec 15;68(1−2):115−20.Epub 2005 Sep 9を参照のこと。
【0110】
所望の標的に対するsiRNAを設計及び生産する方法、例えば高められた安定性、生体内利用率、及び治療用物質としての使用を促進するその他の特性を提供するための変更(例えば化学的修飾)を有するsiRNAの生産方法、は当該技術分野において周知であり、及び、EGF−Rをコードしている核酸に対するそれらの応用を当業者は容易に理解できるだろう。加えて、対象に対するsiRNAの処方及び送達方法もまた当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第2005/0282188号;米国特許第2005/0239731号;米国特許第2005/0234232号;米国特許第2005/0176018号;米国特許第2005/0059817号;米国特許第2005/0020525号;米国特許第2004/0192626号;米国特許第2003/0073640号;米国特許第2002/0150936号;米国特許第2002/0142980号;及び米国特許第2002/0120129号を参照のこと、及びこれらそれぞれの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
siRNAの設計を促進する公的に使用可能なツールもまた当該技術分野においては使用可能である。例えば、DEQOR:Design and Quality Control of RNAi(cluster−1.mpi−cbg.de/Deqor/deqor.htmlにおいてインターネット上で使用可能)を参照。Henschel et al.Nucleic Acids Res.2004 Jul 1;32(Web Server issue):W113−20もまた参照のこと。DEQORは、siRNA設計用の最先端のパラメーターに基づく採点システムを用いた、siRNAの抑制性能力を評価するためのウェブで使用できるプログラムである。さらにDEQORは、(i)塩基対組成物に基づく、遺伝子内における高い抑制能を示す領域の予測、及び(ii)化学的に合成するための、高い抑制能を有するsiRNAの予測を補助することができる。加えて、入力したクエリーから生じたそれぞれのsiRNAの潜在的なクロスサイレンシング活性は、選択した生物のトランスクリプトーム又はゲノムに対するBLAST検索を行うことにより評価される。DEQORはさらに、mRNA断片が細胞におけるその他の遺伝子に対して交差反応する可能性を予測することもでき、研究者がsiRNA又は化学的に設計したsiRNAの特異性を試験するための実験を設計することを手助けする。
【0112】
siNA分子は任意の様々な形態であり得る。例えばsiNAは、標的核酸配列又はその一部分に相当するヌクレオチド配列を有する、自己相補的なセンス領域、及び、標的核酸分子又はその一部分のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含む自己相補的なアンチセンス領域を含む、二本鎖ポリヌクレオチド分子となる可能性がある。siNAはまた、一方がセンス鎖であり、もう一方がアンチセンス鎖であり、かつ、アンチセンス及びセンス鎖が自己相補的な、2つの別々のオリゴヌクレオチドから構築することもできる。この実施形態においては、それぞれの鎖は一般的に、もう一方のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含み;例えばこの場合、アンチセンス鎖及びセンス鎖は二重鎖構造、又は、約15塩基対〜約30塩基対、例えば約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30塩基対の二本鎖構造を形成し;アンチセンス鎖は標的核酸分子又はその一部分のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含み、及びセンス鎖は標的核酸配列又はその一部分に相当するヌクレオチド配列を含む(例えばsiNA分子の約15ヌクレオチド〜約25以上のヌクレオチドは標的核酸又はその一部分と相補である)。
【0113】
また、siNAを単一のオリゴヌクレオチドから構築することもでき、この場合、siNAの自己相補的なセンス及びアンチセンス領域は、核酸を用いた又は非核酸を用いたリンカーによって結合される。siNAは、二重鎖、非対称二重鎖、ヘアピン型又は非対称ヘアピン型二次構造を有し、標的核酸配列又はその一部分に相当するヌクレオチド配列を有する自己相補的なセンス領域及び、別々の標的核酸分子又はその一部分のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列含む自己相補的なアンチセンス領域を有するポリヌクレオチドとなる可能性がある。
【0114】
siNAは、2つ以上のループ構造、並びに標的核酸配列又はその一部分に相当するヌクレオチド配列を有する自己相補的なセンス領域及び標的核酸分子又はその一部分のヌクレオチド配列と相補するヌクレオチド配列を含む自己相補的なアンチセンス領域を含むステムを有する、環状一本鎖ポリヌクレオチドとなる可能性があり、この環状ポリヌクレオチドはRNAiを仲介することが可能な活性型siNA分子を生成するためにインビボ又はインビトロのいずれかにおいて処理される場合がある。siNAはまた、標的核酸分子又はその一部分のヌクレオチド配列と相補するヌクレオチド配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド(例えば、この場合、これらsiNA分子は標的核酸配列又はその一部分に相当するヌクレオチド配列のsiNA分子の中に存在しなくてもよい)を含む可能性もあり、この一本鎖ポリヌクレオチドはさらに、5’−リン酸(例えばMartinez et al.,2002,Cell.,110,563−574、及びSchwarz et al.,2002,Molecular Cell,10,537−568を参照のこと)、又は5’,3’−二リン酸などの末端リン酸基をさらに含む場合がある。
【0115】
特定の実施形態においては、siNA分子は、当該技術分野において周知のようにヌクレオチド若しくは非ヌクレオチドリンカー分子によって共有結合している、又はイオン相互作用、水素結合、ファン・デル・ワールス相互作用、疎水性相互作用、及び/又はスタッキング相互作用によって交互に非共有結合している別々のセンス及びアンチセンス配列又は領域を含む。特定の実施形態においては、siNA分子は標的遺伝子のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。別の実施形態においては、siNA分子は、標的遺伝子の発現の阻害を引き起こす方法で標的遺伝子のヌクレオチド配列と相互作用する。
【0116】
本明細書で使用されるとき、siNA分子はRNAのみを含むそれら分子に限定される必要はなく、さらに化学的に修飾されたヌクレオチド及び非ヌクレオチドを包含する。特定の実施形態においては、本発明の低分子干渉核酸分子は、ヌクレオチドを含む2’−ヒドロキシ(2’−OH)を欠損している。siNAsは、RNAiなどを仲介するために2’−ヒドロキシ基を有するヌクレオチドが存在することを特別必要とはせず、本発明のsiNA分子は任意にいずれのリボヌクレオチド(例えば2’−OH基を有するヌクレオチド)をも含まない。しかしながら、RNAiを支持するためにsiNA分子の中にリボヌクレオチドが存在することを必要としないこれらのsiNA分子は、2’−OH基を有する付加リンカー若しくはリンカー又はその他の付加した若しくは関連した基、部分、若しくは1つ以上のヌクレオチドを含む鎖を有する場合がある。任意に、siNA分子は、ヌクレオチドの約5、10、20、30、40、又は50%の位置にリボヌクレオチドを含む場合がある。本発明の修飾した低分子干渉核酸分子はまた、低分子干渉修飾オリゴヌクレオチド「siMON」を意味する場合がある。
【0117】
本明細書で使用されるとき、siNAという用語は、配列特異的RNAiを仲介することが可能な核酸分子を記載するために使用されるその他の用語、例えば低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、低分子干渉オリゴヌクレオチド、低分子干渉核酸、低分子干渉修飾オリゴヌクレオチド、化学的に修飾されたsiRNA、転写後遺伝子抑制RNA(ptgsRNA)、などと等価である。加えて、本明細書で使用されるとき、RNAiという用語は配列特異的RNA干渉を記載するために使用されるその他の用語、例えば転写後遺伝子抑制、翻訳阻害、又はエピジェネティクスと等価である。例えば、本発明のsiNA分子は、転写後レベル及び/又は転写前レベルにおいて、標的遺伝子を後成的に抑制するために用いることができる。限定されない例においては、本発明のsiNA分子による遺伝子発現の後成的制御は、siNAが介するクロマチン構造又は遺伝子発現を変化するメチル化パターンの変更から生じる場合がある(例えば、Verdel et al.,2004,Science,303,672−676;Pal−Bhadra et al.,2004,Science,303,669−672;Allshire,2002,Science,297,1818−1819;Volpe et al.,2002,Science,297,1833−1837;Jenuwein,2002,Science,297,2215−2218;及びHall et al.,2002,Science, 297,2232−2237を参照のこと)。
【0118】
本明細書において検討されたsiNA分子は二重鎖を形成するオリゴヌクレオチド(DFO)を含む場合がある(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第05/019453号;及び米国特許第2005/0233329号を参照のこと)。本明細書において検討されたsiNA分子はまた、多機能性siNAを含む(例えば、国際公開第05/019453号及び米国特許第2004/0249178号を参照のこと)。多機能性siNAは、配列ターゲティング、例えばSkp2の2つの領域、を含む場合がある。
【0119】
本明細書で検討されたsiNA分子は、非対称ヘアピン又は非対称二重鎖を含む場合がある。本明細書で使用されるとき、「非対称ヘアピン」は、アンチセンス領域、ヌクレオチド又は非ヌクレオチドを含む可能性があるループ部分、及びセンス領域がアンチセンス領域を含む塩基対に対して十分に相補的なヌクレオチドを有し、ループを有する二重鎖を形成する範囲内で、アンチセンス領域よりも少ないヌクレオチドを含むセンス領域を含む、直線状siNA分子を意味する。例えば、非対称ヘアピン型siNA分子は、細胞内又はインビトロ系においてRNAiを仲介するのに十分な長さ(例えば約15〜約30、又は約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、若しくは30ヌクレオチド)のアンチセンス領域、及び約4〜約12(例えば約4、5、6、7、8、9、10、11、又は12)ヌクレオチドのループ領域、及びアンチセンス領域に相補的な約3〜約25(例えば約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25)ヌクレオチドのセンス領域を含む場合がある。非対称ヘアピン型siNA分子はまた、化学的に修飾される場合がある5’−末端リン酸基を含む場合がある。非対称ヘアピン型siNAの分子ループ部分は、本明細書で記載されたようなヌクレオチド、非ヌクレオチド、リンカー分子、又は共役分子を含む場合がある。
【0120】
本明細書で使用されるとき、「非対称二重鎖」は、アンチセンス領域を含む塩基対に対して十分に相補的なヌクレオチドを有し、二重鎖を形成する範囲内でアンチセンス領域よりも少ないヌクレオチドを含むセンス領域とアンチセンス領域を含む、2本の別々の鎖を有するsiNA分子を意味する。例えば、本発明の非対称二重鎖siNA分子は、細胞内又はインビトロ系においてRNAiを仲介するのに十分な長さ(例えば約15〜約30、又は約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、若しくは30ヌクレオチド)のアンチセンス領域及び、アンチセンス領域に相補的な約3〜約25(例えば約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25)ヌクレオチドのセンス領域を含む場合がある。
【0121】
siRNAの安定性及び/又は半減期は、血清リボヌクレアーゼによるそれらの分解を防ぐことができる修飾(塩基、糖及び/又はリン酸)を有し、siRNAの能力を高めることができる化学的に合成された核酸分子を通して改善することができる(例えば、参照によりこれら全てが本明細書に組み込まれ、本明細書に記載される核酸分子の塩基、リン酸及び/又は糖部分に対して行うことができる様々な化学的な修飾について記載している、Eckstein et al.,国際公開第92/07065号;Perrault et al.,1990 Nature 344,565;Pieken et al.,1991,Science 253,314;Usman and Cedergren,1992,Trends in Biochem.Sci.17,334;Usman et al.,国際公開第93/15187号;及びRossi et al.,国際公開第91/03162号;Sproat,米国特許第5,334,711号;Gold et al.,米国特許第6,300,074号;並びにBurgin et al.,上記;を参照のこと)。細胞におけるそれらの効果を促進する修飾、及びオリゴヌクレオチドを合成するための時間を短縮し、化学的必要条件を低減させるための核酸分子からの塩基の除去が望ましい。
【0122】
例えば、オリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ耐性の基、例えば2’−アミノ、2’−C−アリル、2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−O−アリル、2’−H、ヌクレオチド塩基修飾(総説、Usman and Cedergren,1992,TIBS.17,34;Usman et al.,1994,Nucleic Acids Symp.Ser.31,163;Burgin et al.,1996,Biochemistry,35,14090を参照)を用いた修飾により、安定性を増強させ及び/又は生物活性を増強させるために修飾される。核酸分子の糖修飾は当該技術分野において広く記載されている(参照によりそれらの全文が本明細書に組み込まれる、Eckstein et al.,国際公開第92/07065号;Perrault et al.Nature,1990,344,565−568;Pieken et al.Science,1991,253,314−317;Usman and Cedergren,Trends in Biochem.Sci.,1992,17,334−339;Usman et al.国際公開第93/15187号;Sproat,米国特許第5,334,711号及びBeigelman et al.,1995,J.Biol.Chem.,270,25702;Beigelman et al.,国際公開第97/26270号;Beigelman et al.,米国特許第5,716,824号;Usman et al.,米国特許第5,627,053号;Woolf et al.,国際公開98/13526第;Thompson et al.,1998年4月20日に出願された米国特許出願第60/082,404号;Karpeisky et al.,1998,Tetrahedron Lett.,39,1131;Eamshaw and Gait,1998,Biopolymers(Nucleic Acid Sciences),48,39−55;Verma and Eckstein,1998,Annu.Rev.Biochem.,67,99−134;及びBurlina et al.,1997,Bioorg.Med.Chem.,5,1999−2010を参照のこと)。これら教示の観点から、細胞内においてRNAiを促進するsiNAの能力が有意に阻害されない限り、siNA核酸分子を修飾するために本明細書に開示し、本明細書で記載したような類似の修飾も用いることができる。
【0123】
活性を維持する又は増強する化学的修飾を有する低分子干渉核酸(siNA)分子が本明細書において検討された。通常、それらの核酸は修飾されていない核酸よりもヌクレアーゼに対する高い耐性を有する。従ってインビトロ及び/又はインビボ活性が有意に低下することはない。外生的に送達される核酸分子としては通常、標的遺伝子産物のレベルの低下を促進するために、少なくとも標的RNAの転写及び/又は翻訳を引き起こし、コードされたmRNA及び/又はポリペプチドの産物の修飾を提供するのに十分な期間安定な核酸分子が選択される。
【0124】
RNA及びDNA分子の生産は合成することによって達成することができ、高いヌクレアーゼに対する安定性を提供するためのヌクレオチド修飾の導入を提供することができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Wincott et al., 1995, Nucleic Acids Res. 23, 2677;Caruthers et al., 1992, Methods in Enzymology 211, 3−19を参照のこと)。1つの実施形態においては、本発明の核酸分子は、二重鎖中の相補的なグアニンのワトソン・クリック及びフーグスティーン面両方に、水素結合する能力を付与する修飾されたシトシン類似物である、1つ以上(例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上)のG−クランプヌクレオチドを含み、核酸標的に対する増強された親和性及び特異性を提供することができる(例えば, Lin et al. 1998, J. Am. Chem. Soc., 120, 8531−8532を参照のこと)。別の例においては、核酸分子は、1つ以上(例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上)の、2’、4’−CメチレンビシクロヌクレオチドなどのLNA「ロックド核酸」ヌクレオチドを含む場合がある(例えばWengel et al.,国際公開第00/66604号及び国際公開第99/14226号を参照)。
【0125】
例えばsiNA分子の細胞内への送達を促進するために、siNA分子を抱合体及び/又は複合体として提供することができる。抱合体及び/又は複合体の例としては、siNA及び小分子、脂質、コレステロール、リン脂質、ヌクレオシド、抗体、毒素、マイナスに帯電したポリマー(例えばタンパク質、ペプチド、ホルモン、炭水化物、ポリエチレングリコール、又はポリアミン)から成るものが挙げられる。通常、記載された輸送体は、分解性のリンカーを含み若しくは含まずに、個別に又は多成分系の一部分としてのいずれかにおいて用いられるように設計される。これらの化合物は、血清の存在下又は非存在下における核酸分子の細胞内への送達及び/又は局在を改善することができる(例えば、米国特許第5,854,038号を参照)。本明細書に記載された分子の抱合体は、生分解性核酸リンカー分子などの生分解性のリンカーを介して、生物学的に活性な分子に結合される場合がある。
【0126】
特定の実施形態においては、EGF−R抑制性核酸アンタゴニストは特異的に除外される。
【0127】
併用療法
以下に詳細に記載されるように、いくつかの実施形態においては、対象方法はEGF−R阻害剤を単独療法として投与すること、例えばEGF−R阻害剤のみを投与すること、他のいずれの治療薬との併用投与をしないことを含む。その他の実施形態においては、対象治療法は、a)EGF−R阻害剤と、b)少なくとも1つのさらなる治療薬とを投与することを含む、併用療法であり、この場合EGF−R阻害剤と少なくとも1つのさらなる治療薬とを合計した量はウイルス感染の治療に有効な量である。好適なさらなる治療薬は下記に記載される。
【0128】
対象併用療法は、a)EGF−R阻害剤と少なくとも1つのさらなる治療薬とを同時に、同じ処方中又は別々の処方中で投与すること、b)EGF−R阻害剤の投与の約5分〜約4週間以内に少なくとも1つのさらなる治療薬を投与すること、例えばEGF−R阻害剤の投与の約5分〜約15分以内、約15分〜約30分以内、約30分〜約60分以内、約1時間〜約2時間以内、約2時間〜約4時間以内、約4時間〜約8時間以内、約8時間〜約12時間以内、約12時間〜約24時間以内、約24時間〜約2日以内、約2日〜約4日以内、約4日〜約7日以内、約1週間〜約2週間以内、又は約2週間〜約4週間以内に少なくとも1つのさらなる治療薬を投与すること、を含む場合がある。
【0129】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬はEGF−R阻害剤と共に併用処方される。その他の実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬とEGF−R阻害剤とは別々に処方される。
【0130】
いくつかの実施形態においては、EGF−R阻害剤が最初の期間に投与され、少なくとも1つのさらなる治療薬が第二の期間に投与され、この場合、最初の期間と第二の期間は重複している。例えば、いくつかの実施形態においては、EGF−R阻害剤が最初の期間に投与され、少なくとも1つのさらなる治療薬が第二の期間に投与され、この場合、第二の期間は最初の期間が終わる前に開始される。EGF−R阻害剤が最初の期間に投与され、少なくとも1つのさらなる治療薬が第二の期間に投与され、この場合、最初の期間は第二の期間が終わる前に開始される。EGF−R阻害剤は最初の期間に投与され、少なくとも1つのさらなる治療薬は第二の期間に投与され、この場合最初の期間は第二の期間が始まる前に開始され、かつ、第二の期間が終了した後に終了する。
【0131】
いくつかの実施形態においては、効果量のEGF−R阻害剤と少なくとも1つのさらなる治療薬とは相乗的な量である。本明細書で使用されるとき、EGF−R阻害剤とさらなる(例えば第二の)治療薬との「相乗的な併用」若しくは「相乗的な量」は、(i)単独療法と同じ用量を投与した場合のEGF−R阻害剤の治療上若しくは予防的有益性、と(ii)単独療法と同じ用量を投与した場合のさらなる治療薬の治療上若しくは予防的有益性とを単に付加的に組み合わせたことから予測若しくは推測できる治療における結果の漸増的な改善よりも、疾患の治療又は予防的処置においてより効果的な併用又は量である。
【0132】
ウイルス
対象方法を用いて治療できるウイルス感染には、ピコルナウイルスのメンバー;オルトミクソウイルスのメンバー;パラミクソウイルスのメンバー;コロナウイルスのメンバー;アデノウイルスのメンバー;レオウイルスのメンバー;カリシウイルスのメンバー;アストロウイルスのメンバー;ヘルペスウイルスのメンバー;レトロウイルスのメンバー;及びパピローマウイルスのメンバーを含むがこれらには限定されない、任意の様々なウイルスによる感染が含まれる。
【0133】
下記で議論されるように、特定のウイルスは感染した患者において呼吸器系障害を引き起こす。それらウイルスは、本明細書においては「呼吸器系ウイルス」と表され、例えばライノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、及び呼吸器系障害を引き起こし得ると下記に示されたその他のウイルスを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は呼吸器系ウイルス感染の治療を提供する。いくつかの実施形態においては、呼吸器系ウイルス感染を治療するための対象方法は単独療法であり、かつ、効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。その他の実施形態においては、呼吸器系ウイルス感染を治療するための対象方法は併用療法であり、かつ、併用して効果量の、i)EGF−R阻害剤と、ii)少なくとも1つのさらなる治療薬とを投与することを含む。好適なさらなる治療薬は以下で議論される。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬はインターフェロン(例えば、インターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、インターフェロン−ラムダ、インターフェロン−タウ、インターフェロン−オメガなど)である。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬はIFN−αである。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬はIFN−βである。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬はIFN−γである。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬はIFN−λである。
【0134】
いくつかの実施形態においては、呼吸器系ウイルス(例えばライノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなど)は、慢性肺疾患(例えば、喘息、COPD、嚢胞性繊維症、肺気腫、慢性気管支炎、間質性肺疾患、気管支炎;サルコイドーシス、特発性肺線維症、気管支拡張症、細気管支炎など)の増悪を引き起こす。従って、本開示は、単独療法において効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与すること、又は併用して効果量のEGF−Rアンタゴニストと少なくとも1つのさらなる治療薬とを投与することを含む、呼吸器系ウイルスによって引き起こされる慢性肺疾患の増悪の治療方法を提供する。
【0135】
下記で議論されるように、特定のウイルスは感染した患者において胃腸管系障害を引き起こす。それらウイルスは、本明細書においては、「胃腸管系ウイルス」と表され、例えば、エンテロウイルス、A型肝炎ウイルス、ロタウイルス、ノーウォークウイルス、アストロウイルス、又は感染した患者において胃腸管系障害を引き起こす、以下で議論されたその他のウイルスを含む。
【0136】
以下で議論されるいずれかの上述の実施形態においては、対象方法を用いて治療される患者は、年齢が約1ヶ月〜約6ヶ月、約6ヶ月〜約1才、又は約1才〜約5才のヒトである。以下で議論されるいずれかの上述の実施形態においては、対象方法を用いて治療される患者は、年齢が約5才〜約12才、約13才〜約18才、又は約18才〜約25才のヒトである。以下で議論されるいずれかの上述の実施形態においては、対象方法を用いて治療される患者は、年齢が約25才〜約50才、約50才〜約75才、又は75才より高齢のヒトである。以下で議論されるいずれかの上述の実施形態において、対象方法を用いて治療される患者は、免疫不全のヒトである。
【0137】
いくつかの実施形態においては、対象方法は胃腸管系ウイルス感染の治療を提供する。いくつかの実施形態においては、胃腸管系ウイルス感染を治療するための対象方法は単独療法であり、かつ、効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。その他の実施形態においては、胃腸管系ウイルス感染を治療するための対象方法は併用療法であり、かつ、併用して効果量のi)EGF−R阻害剤とii)少なくとも1つのさらなる治療薬とを投与することを含む。
【0138】
ピコルナウイルス
本開示は、ピコルナウイルスによる感染(「ピコルナウイルス感染」としても表される)、例えばピコルナウイルス科のメンバーによる感染、の治療方法を提供する。通常、ピコルナウイルス感染を治療するための対象方法は、上述の通りに効果量のEGF−R阻害剤を投与することを含む。ピコルナウイルス感染は、ピコルナウイルス科によって引き起こされる可能性がある。代表的なピコルナウイルス科のメンバーには、ヒトライノウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス及びエコーウイルスを含むエンテロウイルス、ヘパトウイルス、カルジオウイルス、アフトウイルス、A型肝炎、並びにこれらウイルスの1つ以上の血清型を含む、特定の種にまだ割り当てられていないその他のピコルナウイルスがある。
【0139】
いくつかの実施形態においては、ウイルス感染は、ライノウイルスによって引き起こされる。いくつかの実施形態においては、ライノウイルスは、細胞間接着分子−1(ICAM−1)に結合するウイルスである。ICAM−1に結合するライノウイルスは、ライノウイルスの「主要グループ」に属し、この主要グループには約91の血清型が含まれる。いくつかの実施形態においては、ライノウイルスは、低密度リポ蛋白(LDL)受容体(LDLR)ファミリーメンバーに結合するウイルスである。LDLRファミリーメンバーに結合するライノウイルスは、ライノウイルスの「小グループ」であり、この小グループには約10の血清型が含まれる。例えば、いくつかの実施形態においては、ウイルス感染は主要グループのヒトライノウイルス(HRV)、例えばHRV3、HRV14、HRV16など、によって引き起こされる。いくつかの実施形態においては、ウイルス感染は小グループのHRV、例えばHRV1A、HRV1B、HRV2などによって引き起こされる。例えば、Vlasak et al.(2003)J. Virol. 77:6923を参照のこと。加えて、ヒトライノウイルスは3つの群(A、B、C)に分類されている。いくつかの実施形態においては、ライノウイルスは、A、B、又はC群のメンバーである。本開示は、ライノウイルス感染、例えばA群のライノウイルス、B群のライノウイルス、又はC群のライノウイルスによって引き起こされるライノウイルス感染の治療方法を提供する。
【0140】
いくつかの実施形態においては、ウイルス感染はコクサッキーウイルスによって引き起こされる。A群コクサッキーウイルスには約23の血清型が含まれ、手足口病及びヘルパンギーナなどの疾患を引き起こす。例えば、コクサッキーウイルスA16は手足口病を引き起こす。コクサッキーウイルスA24は、急性出血性結膜炎を引き起こす。B群コクサッキーウイルスには約6の血清型が含まれ、心筋炎、胸膜炎、及び心膜炎などの疾患を引き起こす。A群及びB群両方のコクサッキーウイルスは無菌性髄膜炎を引き起こす場合がある。本開示は、コクサッキーウイルス感染の治療方法を提供する。
【0141】
いくつかの実施形態においては、ウイルス感染は、A型肝炎ウイルスによって引き起こされる。A型肝炎ウイルスは、胃腸炎及び下痢を引き起こす場合がある。
【0142】
いくつかの実施形態においては、対象方法はライノウイルス感染の治療を提供し、この方法はそれらを必要とする個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は腫瘍グループのライノウイルスによって引き起こされたライノウイルス感染の治療を提供し、この方法は、それらを必要とする個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は小グループのライノウイルスによって引き起こされたライノウイルス感染の治療を提供し、この方法は、それらを必要とする個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法はA群のライノウイルスメンバーによって引き起こされたライノウイルス感染に治療を提供し、この方法は、それらを必要とする個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は、B群のライノウイルスメンバーによって引き起こされたライノウイルス感染に治療を提供し、この方法は、それらを必要とする個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は、C群のライノウイルスメンバーによって引き起こされたライノウイルス感染に治療を提供し、この方法は、それらを必要とする個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。
【0143】
いくつかの実施形態においては、対象方法はコクサッキーウイルス感染の治療を提供し、この方法は、コクサッキーウイルス感染を有する個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法はコクサッキーウイルス感染によって引き起こされた手足口病の治療を提供し、この方法は、手足口病を有する個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法はコクサッキーウイルス感染によって引き起こされた心筋炎、胸膜炎、又は心膜炎の治療を提供し、この方法は、心筋炎、胸膜炎、又は心膜炎を有する個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法はコクサッキーウイルス感染によって引き起こされた髄膜炎の治療を提供し、この方法は髄膜炎を有する個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法はA型肝炎ウイルス感染の治療を提供し、この方法は、A型肝炎ウイルス感染を有する個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。
【0144】
上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約1ヶ月〜約6ヶ月、約6ヶ月〜約1才、約1才〜約5才、約5才〜約12才、約13才〜約18才、約18才〜約25才、約25才〜約50才、約50才〜約75才、又は75歳より高齢のヒトである。上記のいずれかの実施態様において、個体は免疫不全のヒトである。いくつかの実施形態においては、個体は、慢性肺疾患(例えば肺気腫、COPD、慢性気管支炎、喘息、嚢胞性繊維症、気管支拡張症、細気管支炎、又は間質性肺疾患)を有する。いくつかの実施形態においては、個体はライノウイルス感染に加えて、ライノウイルス又は細菌感染によって引き起こされる肺炎を有する。
【0145】
いくつかの実施形態においては、ライノウイルス感染を治療する対象方法は、EGF−Rアンタゴニストを単独療法として投与することを含み、例えばこの場合、EGF−Rアンタゴニストは個体に投与される唯一の治療薬である。いくつかの実施形態においては、ライノウイルス感染を治療する対象方法は、a)効果量のEGF−Rアンタゴニスト;とb)少なくとも1つのさらなる治療薬とを投与することを含む併用療法である。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬はインターフェロン(例えば、インターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、インターフェロン−ラムダ、インターフェロン−タウ、インターフェロン−オメガなど)である。
【0146】
オルトミクソウイルス
いくつかの実施形態においては、ウイルス感染はオルトミクソウイルスのメンバー、例えばインフルエンザウイルス、によって引き起こされる。対象方法は、インフルエンザウイルスの3つの型(A、B、及びC)のいずれによる感染の治療にも適している。対象方法は、インフルエンザAウイルスの様々なサブタイプ、例えば赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)変異体との任意の様々な組み合わせのインフルエンザウイルス、のいずれによる感染の治療にも適している。対象方法を用いて治療することができるインフルエンザAウイルスのサブタイプには、H1N1、H1N2、H3N2、及びH5N1サブタイプが含まれる。対象方法を用いて治療することができるトリインフルエンザAウイルス感染には、H5N1、H7N7、H9N2、H7N2、及びH7N3ウイルスを含む、サブタイプH5及びH7のいずれかのトリインフルエンザAウイルスによる感染が含まれる。対象方法は、インフルエンザAサブタイプ、インフルエンザBウイルスサブタイプ、又はインフルエンザCウイルスのいずれの株によって引き起こされた感染の治療にも適している。インフルエンザA H5、インフルエンザA H7、及びインフルエンザA H9のいずれのサブタイプによって引き起こされた感染も、対象方法を用いて治療することができる。
【0147】
インフルエンザウイルスは呼吸器系疾患を引き起こす。疾患が最大の時点では、10〜10感染単位/mlの最大量が検出される。例えば心又は肺の基礎疾患を有する個体において、インフルエンザウイルス感染は広く肺胞を併発する可能性がある。肺胞の併発はしばしば、肺出血及び浮腫液の蓄積を伴う間質性肺炎を生じる場合がある。この型の純粋な細菌性肺炎は、高い死亡率の重篤な疾患である。分泌物中のウイルス価は高く、かつ、ウイルスの排出は長期にわたる。多くの場合、インフルエンザウイルス感染と関連して、細菌は肺炎の原因となる。細菌感染はウイルス感染の前又は後に生じる可能性がある。インフルエンザウイルス感染と関連して肺炎を引き起こす可能性のある細菌の例としては、肺炎球菌、ブドウ球菌、及びグラム陰性細菌が挙げられる。
【0148】
いくつかの実施形態においては、インフルエンザウイルス感染を治療する対象方法は、インフルエンザウイルス感染を有する個体に効果量のEGF−R阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施形態においては、インフルエンザAウイルス感染を治療する対象方法は、インフルエンザAウイルス感染を有する個体に効果量のEGF−R阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施形態においては、インフルエンザBウイルス感染を治療する対象方法は、インフルエンザBウイルス感染を有する個体に効果量のEGF−R阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施形態においては、個体は、他の点では健康な個体である。いくつかの実施形態においては、個体は、年齢が約1ヶ月〜約6ヶ月、約6ヶ月〜約1才、約1才〜約5才、約5才〜約12才、約13才〜約18才、約18才〜約25才、約25才〜約50才、約50才〜約75才又は75才より高齢のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は免疫不全のヒトである。いくつかの実施形態においては、個体は慢性肺疾患(例えば肺気腫、慢性気管支炎、喘息、嚢胞性繊維症、気管支拡張症、又は間質性肺疾患)を有する。いくつかの実施形態においては、個体はインフルエンザウイルス感染に加えて、インフルエンザウイルス又は細菌感染によって引き起こされる肺炎を有する。
【0149】
いくつかの実施形態においては、インフルエンザウイルス感染を治療する対象方法は、EGF−Rアンタゴニストを単独療法として投与することを含み、例えばこの場合、患者に投与されるEGF−Rアンタゴニストは唯一の治療薬である。いくつかの実施形態においては、インフルエンザウイルス感染を治療する対象方法は、a)効果量のEGF−Rアンタゴニストと、b)少なくとも1つのさらなる治療薬とを投与することを含む併用療法である。
【0150】
いくつかの実施形態においては、例えばインフルエンザウイルスがインフルエンザA又はインフルエンザBである場合、少なくとも1つのさらなる治療薬はノイラミニダーゼ阻害剤である。好適なノイラミニダーゼ阻害剤には、例えばオセルタミビル(エチル(3R,4R,5S)−5−アミノ−4−アセトアミド−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキサ−1−エン−1−カルボン酸塩;Tamiflu(商標))、ザナミビル(2R,3R,4S)−4−[(ジアミノメチリデン)アミノ]−3−アセトアミド−2−[(1R,2R)−1,2,3−トリヒドロキシプロピル]−3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−6−カルボン酸;Relenza(商標))、及びペラミビル(1S,2S,3S,4R)−3−[(1S)−1−アセトアミド−2−エチル−ブチル]−4−(ジアミノメチリデンアミノ)−2−ヒドロキシ−シクロペンタン−1−カルボン酸)が含まれる。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬は例えば、ウイルスのイオンチャネル(M2タンパク質)を遮断するM2遮断薬である。抗ウイルス薬のアマンタジン及びリマンタジンはM2遮断薬であり、かつ、インフルエンザAウイルス感染を治療する対象方法で使用することができる。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬はインターフェロン(例えばインターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、インターフェロン−ラムダ、インターフェロン−タウ、インターフェロン−オメガなど)である。いくつかの実施形態においては、例えば個体がインフルエンザウイルス感染と細菌感染によって引き起こされた肺炎を有する場合、少なくとも1つのさらなる治療薬は肺炎を引き起こした細菌の成長を阻害する抗生物質である。
【0151】
パラミクソウイルス
その他の実施形態においては、ウイルス感染は、パラミクソウイルスのメンバー(例えば呼吸器合胞体ウイルス)、ヒトパラインフルエンザウイルス、ルブラウイルス(例えばムンプスウイルス)、麻疹ウイルス、及びヒトメタニューモウイルスによって引き起こされる。
【0152】
麻疹ウイルスは、前駆症状の発熱、結膜炎、鼻感冒、及び咳と、その後の、まず頭部に現れ、次第に体幹及び手足に広がる平らな斑の発疹の発症を特徴とする疾患を引き起こす。麻疹ウイルス感染の2つの重篤な合併症には、急性感染後脳炎及び亜急性硬化性全脳炎がある。
【0153】
いくつかの実施形態においては、ウイルス感染は、いずれかの既知の型、例えば1、2、3、4a、及び4b型のいずれか、のパラインフルエンザウイルスによって引き起こされる。パラインフルエンザウイルスは、ヒトの一般的な呼吸器系病原体である。パラインフルエンザウイルスは、6ヶ月〜5歳の年齢の乳幼児におけるクループ又は喉頭気管気管支炎の最も一般的な原因である。パラインフルエンザウイルスは、6ヶ月未満の乳児における細気管支炎及び/又は肺炎の原因となる場合もある。パラインフルエンザウイルスは又、成人におけるウイルス性肺炎の原因でもあり、慢性肺疾患(例えば喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、及び嚢胞性繊維症)の増悪も引き起こす可能性がある。
【0154】
いくつかの実施形態においては、ウイルス感染は、呼吸器合胞体ウイルスによって引き起こされる。呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は乳児における重要な病原体である。RSVは、しばしば中耳を含む、発熱性鼻炎及び/又は咽頭炎として現れる場合がある。RSVは子供における細気管支炎のもっとも一般的な原因であり、また成人においては肺炎を引き起こす。加えて、RSVは慢性肺疾患(例えば喘息、COPD、気管支拡張症、及び嚢胞性繊維症)の増悪の原因でもある。
【0155】
ヒトメタニューモウイルスは、いずれの既知の病原因子とも関連しない呼吸器感染の約10%を占める。ヒトメタニューモウイルスは中等度の呼吸器感染を引き起こすが、乳幼児、高齢の個体、免疫不全の個体は重篤な疾患及び入院のリスクがある。加えて、ヒトメタニューモウイルスは慢性肺疾患(例えば喘息、COPD、気管支拡張症、及び嚢胞性繊維症)の増悪の原因でもある。
【0156】
いくつかの実施形態においては、対象方法は、パラミクソウイルス科のメンバーによって感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は、呼吸器合胞体ウイルスに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は、麻疹ウイルスに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は、パラインフルエンザウイルス(例えば、1、2、3、4a、及び4b型のいずれかのウイルス)に感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は、ヒトメタニューモウイルスに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は、年齢が約1ヶ月〜約6ヶ月、約6ヶ月〜約1才、約1才〜約5才、約5才〜約12才、約13才〜約18才、約18才〜約25才、約25才〜約50才、約50才〜約75才、または75才より高齢のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は、免疫不全のヒトである。いくつかの実施形態においては、個体は、慢性肺疾患(例えば肺気腫、慢性気管支炎、喘息、嚢胞性繊維症、気管支拡張症、細気管支炎、COPD、又は間質性肺疾患)を有する。いくつかの実施形態においては、個体は、ウイルス感染(例えば、パラインフルエンザウイルス、RSV、又はヒトメタニューモウイルスによって引き起こされたウイルス感染)に加えて、ウイルス(例えばパラインフルエンザウイルス、RSV、又はヒトメタニューモウイルス)又は細菌感染によって引き起こされる肺炎を有する。
【0157】
いくつかの実施形態においては、パラミクソウイルス科のメンバーであるウイルスによるウイルス感染を治療する対象方法は、EGF−Rアンタゴニストを単独療法として投与することを含み、例えばこの場合、個体に投与されるEGF−Rアンタゴニストは唯一の治療薬である。いくつかの実施形態においては、パラミクソウイルス科のメンバーであるウイルスによるウイルス感染を治療する対象方法は、a)効果量のEGF−Rアンタゴニストと、b)少なくとも1つのさらなる治療薬とを投与することを含む、併用療法である。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬はインターフェロン(例えば、インターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、インターフェロン−ラムダ、インターフェロン−タウ、インターフェロン−オメガなど)である。
【0158】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬はリバビリン又はリバビリン誘導体である。リバビリン、1−β−D−リボフラノシル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド、は、メルクインデックス(Merck Index)、第11版、化合物番号8199に記載されている。その製造及び処方は、米国特許第4,211,771号に記載されている。リバビリンの誘導体(例えば米国特許第6,277,830号を参照)もまた使用に適している。リバビリンはカプセル若しくは錠剤の形態において経口で投与することができ、また、EGF−R阻害剤と同じ若しくは異なる投与形態において、又は同じ若しくは異なる投与経路において投与することができる。鼻噴霧による、経皮的、座剤による、徐放性用量形態による、などの、両方の薬物のその他の経路/形態が検討された。活性成分を破壊することなく正しい用量を送達する限りにおいて、いずれの投与形態も機能する。
【0159】
1日当たり約400mg〜約1200mg、約600mg〜約1000mg、又は約700〜約900mgの範囲の量のリバビリンを投与することができる。いくつかの実施形態においては、EGF−R阻害剤治療の全過程にわたってを通じて、リバビリンが投与される。その他の実施形態においては、リバビリンは最初の期間中においてのみ投与される。またさらに他の実施形態においては、リバビリンは第二の期間中においてのみ投与される。
【0160】
コロナウイルス
本開示はウイルス感染の治療方法を提供する。ウイルスがコロナウイルス科のメンバーである場合、この方法は、コロナウイルス科のウイルスに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む、コロナウイルスには、上気道感染、下気道感染、及び胃腸炎を引き起こす、例えば、ヒトコロナウイルス229E(HCoV−229E)、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV−OC43)などのコロナウイルス、及びSARS−CoV(重症急性呼吸器症候群(SARS)の病原因子)が含まれる。
【0161】
いくつかの実施形態においては、ウイルス感染の治療方法が提供される。ウイルスがコロナウイルスである場合、この方法は、コロナウイルス、例えばヒトに感染するコロナウイルス(HCoV)、に感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、ウイルス感染の治療方法が提供される。ウイルスが1群のコロナウイルスである場合、この方法は、1群のコロナウイルスに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、ウイルス感染の治療方法が提供される。ウイルスが2群のコロナウイルスである場合、この方法は、2群のコロナウイルスに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、ウイルス感染の治療方法が提供される。ウイルスが3群のコロナウイルスである場合、この方法は、3群のコロナウイルスに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、ウイルス感染の治療方法が提供される。ウイルスがHCoV−OC43である場合、この方法は、HCoV−OC43に感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、ウイルス感染の治療方法が提供される。ウイルスがHCoV−229Eである場合、この方法は、HCoV−229Eに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、ウイルス感染の治療方法が提供される。ウイルスがSARS−CoVである場合、この方法は、SARS−CoVに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。
【0162】
上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は、年齢が約1ヶ月〜約6ヶ月、約6ヶ月〜約1才、約1才〜約5才、約5才〜約12才、約13才〜約18才、約18才〜約25才、約25才〜約50才、約50才〜約75才、又は75歳より高齢のヒトである。いくつかの実施形態においては、個体は、慢性肺疾患(例えば肺気腫、慢性気管支炎、喘息、嚢胞性繊維症、気管支拡張症、COPD、又は間質性肺疾患)を有する。いくつかの実施形態においては、個体は、コロナウイルス感染に加えて、コロナウイルス又は細菌感染によって引き起こされる肺炎を有する。
【0163】
アデノウイルス
本開示は個体におけるウイルス感染の治療方法を提供する。ウイルスがアデノウイルス科のメンバーである場合、この方法は基本的には、個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。アデノウイルスのメンバーには、ヒトアデノウイルス(HAdV)−A、HAdV−B、HAdV−C、HAdV−D、HAdV−E、及びHAdV−Fが含まれる。
【0164】
HAdV−B及びHAdV−Cは呼吸器系疾患を引き起こす可能性がある。HAdV−B及びHAdV−Dは結膜炎を引き起こす可能性がある。HAdV−F血清型40及び41は胃腸炎を引き起こす可能性がある。アデノウイルスはまた、細気管支炎又は肺炎を引き起こす可能性がある。アデノウイルスはまた、ウイルス生髄膜炎又は脳炎を引き起こす可能性がある。
【0165】
いくつかの実施形態においては、対象方法はウイルス感染の治療を提供する。ウイルスがアデノウイルス科のメンバーである場合、この方法は基本的には、アデノウイルス科に感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は個体におけるアデノウイルス感染の治療を提供する。アデノウイルスがHAdV−A、HAdV−B、HAdV−C、HAdV−D、HAdV−E、及びHAdV−Fのうちの1つである場合、この方法は基本的には、個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は、HAdV感染(例えばHAdV−B又はHAdV−C)によって引き起こされた呼吸器系疾患の治療を提供し、この方法は基本的には、HAdV感染(例えばHAdV−B又はHAdV−C)によって引き起こされた呼吸器系疾患を有する個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は、HAdV感染(例えばHAdV−F血清型40又は41)によって引き起こされた胃腸炎の治療を提供し、この方法は基本的には、HAdV感染(例えばHAdV−F血清型40又は41)によって引き起こされた胃腸炎を有する個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法はHAdV感染によって引き起こされたウイルス性髄膜炎又は脳炎の治療を提供し、この方法は基本的には、HAdV感染によって引き起こされたウイルス性髄膜炎又は脳炎を有する個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。
【0166】
上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は、年齢が約1ヶ月〜約6ヶ月、約6ヶ月〜約1才、約1才〜約5才、約5才〜約12才、約13才〜約18才、約18才〜約25才、約25才〜約50才、約50才〜約75才、又は75才より高齢のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は免疫不全のヒトである.いくつかの実施形態においては、個体は慢性肺疾患(例えば肺気腫、慢性気管支炎、喘息、嚢胞性繊維症、気管支拡張症、COPD、又は間質性肺疾患)を有する。いくつかの実施形態においては、個体はアデノウイルス感染に加えて、アデノウイルス感染又は細菌感染によって引き起こされる肺炎を有する。
【0167】
レオウイルス
その他の実施形態においては、ウイルス感染はレオウイルスのメンバー、例えばロタウイルス、によって引き起こされる。いくつかの実施形態においては、ウイルス感染は、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、ロタウイルスD、ロタウイルスE、ロタウイルスF、及びロタウイルスGのうちの1つによって引き起こされる。いくつかの実施形態においては、ウイルス感染は、ロタウイルスAによって引き起こされる。ロタウイルスAはヒトにおけるロタウイルス感染の約90%を引き起こし、乳児及び幼児においては重篤な下痢を引き起こす可能性がある。ロタウイルス胃腸炎は、嘔吐、水様の下痢、及び軽度の発熱を特徴とする、中等度から重篤な疾患である。
【0168】
いくつかの実施形態においては、対象方法はレオウイルス科のメンバーによって引き起こされるウイルス感染の治療を提供し、この方法は基本的には、レオウイルス科のメンバーに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法はロタウイルスによって引き起こされるウイルス感染の治療を提供し、この方法は基本的には、ロタウイルスに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法はロタウイルスAによって引き起こされるウイルス感染の治療を提供し、この方法は基本的には、ロタウイルスAに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は、個体における下痢の治療を提供する。この下痢がロタウイルスA感染によって引き起こされた下痢である場合、この方法は基本的には、個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。
【0169】
上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約1ヶ月〜約6ヶ月、約6ヶ月〜約1才、又は年齢が約1才〜約5才のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約5才〜約12才、約13才〜約18才、又は年齢が約18才〜約25才のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約25才〜約50才、年齢が約50才〜約75才、又は75才より高齢のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は免疫不全のヒトである。
【0170】
カリシウイルス
いくつかの実施形態においては、ウイルス感染はカリシウイルス科のメンバーによって引き起こされる。カリシウイルス科のメンバーには、例えばノーウォークウイルスを含むカリシウイルス属が含まれる。ノーウォークウイルスは胃腸炎を引き起こす。
【0171】
いくつかの実施形態においては、対象方法はカリシウイルス科のメンバーによって引き起こされるウイルス感染の治療を提供し、この方法は基本的には、カリシウイルス科のメンバーに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は個体におけるノーウォークウイルス感染の治療を提供し、この方法は、個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法はノーウォークウイルス感染によって引き起こされる胃腸炎の治療を提供し、この方法はノーウォークウイルス感染から生じた胃腸炎を有する個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。
【0172】
上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約1ヶ月〜約6ヶ月、約6ヶ月〜約1才、又は年齢が約1才〜約5才のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約5才〜約12才、約13才〜約18才、又は年齢が約18才〜約25才のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約25才〜約50才、約50才〜約75才又は75才より高齢のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は免疫不全のヒトである。
【0173】
アストロウイルス
本開示はウイルス感染の治療方法を提供する。ウイルスがアストロウイルス科のメンバーである場合、この方法は、アストロウイルス科のメンバーよって引き起こされたウイルス感染を有する個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。アストロウイルス科には、ヒトアストロウイルスを含む、哺乳類に感染するメンバーであるママストロウイルス属;及びトリに感染するメンバーであるアバストロウイルス属が含まれる。ヒトアストロウイルスは子供及び成人における胃腸炎の原因である。主な症状は下痢、とその後の悪心、嘔吐、発熱、不快感及び腹痛である。
【0174】
いくつかの実施形態においては、対象方法はアストロウイルス科のメンバーによって引き起こされるウイルス感染の治療を提供し、この方法は基本的には、アストロウイルス科のメンバーによって引き起こされたウイルス感染を有する個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は個体におけるヒトアストロウイルス感染の治療を提供し、この方法は基本的には、個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法はヒトアストロウイルス感染によって引き起こされる胃腸炎の治療を提供し、この方法は基本的には、ヒトアストロウイルス感染よって引き起こされた胃腸炎を有する個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。
【0175】
上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約1ヶ月〜約6ヶ月、約6ヶ月〜約1才、又は年齢が約1才〜約5才のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約5才〜約12才、約13才〜約18才、又は年齢が約18才〜約25才のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約25才〜約50才、約50才〜約75才、又は75才より高齢のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は免疫不全のヒトである。
【0176】
レトロウイルス
その他の実施形態においては、ウイルス感染は、レトロウイルスのメンバー、例えばレンチウイルスなどのレトロウイルス、によって引き起こされる。「レトロウイルス」という用語は当該技術分野において周知であり、かつ、一本鎖、プラス鎖、例えばガンマレトロウイルス属(例えばネズミ乳癌ウイルス)などのエンベロープRNAウイルス;イプシロンレトロウイルス属;アルファレトロウイルス属(例えばトリ白血病ウイルス);ベータレトロウイルス属;デルタレトロウイルス属(例えばウシ白血病ウイルス);ヒトT−細胞白血病ウイルス(HTLV));レンチウイルス属;及びスプマウイルス属を含む。レンチウイルスはレトロウイルス科のウイルス属であり、かつ、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV−1);ヒト免疫不全ウイルス2(HIV−2);サル免疫不全ウイルス(SIV);及びネコ免疫不全ウイルス(FIV)を含む。
【0177】
いくつかの実施形態においては、対象方法はレトロウイルス科のメンバーによって引き起こされるウイルス感染の治療を提供し、この方法は基本的には、レトロウイルス科のメンバーによって引き起こされたウイルス感染を有する個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は患者におけるレトロウイルス感染の治療を提供し、この方法は基本的には、患者に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は個体におけるレンチウイルス感染の治療を提供し、この方法は基本的には、個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は個体におけるHIV−1感染の治療を提供し、この方法は基本的には、個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。
【0178】
レンチウイルス感染を治療する対象方法は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を有する個体;HIVに感染してはいないが、HIV感染に接触したリスクがある個体;及びHIV感染に対する治療を受けたが治療に反応しなかった、又は最初は治療に反応したがその後再発した個体のいずれか、の個体の治療に適している。これらの個体には、健康で完全な免疫系を有し、感染していない個体であるが、HIV感染を発症するリスクを有する個体(「リスクを有する」個体)が含まれるが、これらには限定されない。リスクを有する個体には、一般集団と比較してHIV感染を発症する可能性が高い個体が含まれるが、これらには限定されない。HIV感染を発症するリスクを有する個体には、HIVに感染した個体との性行為によるHIV感染のリスクを有する個体;静注薬物使用者;粘膜組織がHIV感染した血液、血液製剤、又はその他のHIVが混入した体液に暴露された可能性がある個体;及びHIVに感染した母親から生まれた子供が含まれるが、これらには限定されない。治療に適した個体には、HIV−1及び/又はHIV−2及び/又はHIV−3、若しくはその変異体のいずれかに感染した、又は感染を発症するリスクを有する個体が含まれる。治療に適した個体には、HIVに対する粘膜暴露を有するいずれの個体も含まれる。
【0179】
上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約1ヶ月〜約6ヶ月、約6ヶ月〜約1才、又は年齢が約1才〜約5才のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約5才〜約12才、約13才〜約18才、又は年齢が約18才〜約25才のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約25才〜約50才、約50才〜約75才、又は75才より高齢のヒトである。
【0180】
いくつかの実施形態においては、レトロウイルス科のメンバーによって引き起こされるウイルス感染を治療する対象方法は、効果量のEGF−Rアンタゴニストを単独療法として投与することを含む。その他の実施形態においては、レトロウイルス科のメンバーによって引き起こされるウイルス感染を治療する対象方法は併用療法であり、i)効果量のEGF−Rアンタゴニストと、ii)少なくとも1つのさらなる治療薬とを投与することを含む。
【0181】
少なくとも1つのさらなる治療薬は、レトロウイルス性の、例えばレンチウイルスの、感染を治療するための治療薬である可能性があり、又はレトロウイルス性の、例えばレンチウイルスの、感染に付随して生じ得る障害(例えば細菌感染、真菌感染など)を治療するための治療薬である可能性がある。治療薬には、例えばベータラクタム系抗生物質、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、グラミシジン、バシトラシン、スルホンアミド、ニトロフラゾン、ナリジクス酸、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、インドメタシン、スリンダク、アシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、組換え可溶性CD4(rsCD4)、抗受容体抗体(例えばライノウイルスに対する)、ネビラピン、シドホビル(Vistide(商標))、ホスホノギ酸三リン酸(ホスカルネット(商標))、ファムシクノビル、ペンシクロビル、バラシクロビル、核酸/複製阻害剤、インターフェロン、ジドブジン(AZT、Retrovir(商標))、ジダノシン(ジデオキシイノシン、ddI、Videx(商標))、スタブジン(d4T、Zerit(商標))、ザルシタビン(ジデオキシシトシン、ddC、Hivid(商標))、ネビラピン(Viramune(商標))、ラミブジン(Epivir(商標)、3TC)、プロテアーゼ阻害剤、サキナビル(Invirase(商標)、Fortovase(商標))、リトナビル(Norvir(商標))、ネルフィナビル(Viracept(商標))、エファビレンツ(Sustiva(商標))、アバカビル(Ziagen(商標))、アンプレナビル(Agenerase(商標))インジナビル(Crixivan(商標))、ガンシクロビル、AzDU、デラビルジン(Rescriptor(商標))、カレトラ、トリジビル、リファンピシン、クラリスロマイシン、エリトロポエチン、コロニー刺激因子(G−CSF及びGM−CSF)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド阻害剤、アドリアマイシン、フルオロウラシル、メトトレキサート、アスパラギナーゼ並びにその組み合わせ、が含まれる。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬はインターフェロン(例えばインターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、インターフェロン−ラムダ、インターフェロン−タウ、インターフェロン−オメガなど)である。
【0182】
ヘルペスウイルス
本開示は、ウイルスがヘルペスウイルス科のメンバーである場合のウイルス感染の治療方法を提供する。ヘルペスウイルス科には、アルファヘルペスウイルス亜科、ベータヘルペスウイルス亜科、及びガンマヘルペスウイルス亜科が含まれる。アルファヘルペスウイルス亜科には、シンプレックスウイルス属(例えばヘルペスシンプレックスウイルス−1(ヒトヘルペスウイルス−1又はHHV−1としても知られる);及びヘルペスシンプレックスウイルス−2(ヒトヘルペスウイルス−2又はHHV−2としても知られる));並びにバリセロウイルス属(例えば水痘帯状疱疹ウイルス(VSV);ヒトヘルペスウイルス−3又はHHV−3としても知られる)が含まれる。ベータヘルペスウイルス亜科には、サイトメガロウイルス属(CMV;ヒトヘルペスウイルス−5又はHHV−5としても知られる);及びロゼオロウイルス属(ヒトヘルペスウイルス−6又はHHV−6としても知られる)が含まれる。ガンマヘルペスウイルス亜科には、リンホクリプトウイルス属(エプスタイン‐バーウイルス(EBV);ヒトヘルペスウイルス−4又はHHV−4);及びラジノウイルス(カボジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV);ヒトヘルペスウイルス−8又はHHV−8)が含まれる。
【0183】
HSV−1及びHSV−2感染は、皮膚、口腔、又は生殖器領域におけるヘルペスによって特徴付けられる。初期感染の後、ウイルスは神経細胞に潜在し、患者のその後の人生において再発する場合がある。EBVは伝染性単核球症を引き起こし、咽頭癌、免疫芽球性リンパ腫、バーキットリンパ腫及び毛髪状白斑の病原因子だと考えられる。VZVは水痘及び帯状疱疹を引き起こす。子供においては水痘は通常致命的な疾患ではないが、この感染の再発である帯状疱疹は、麻痺、痙攣、最終的には死を引き起こす、進行した段階であり得る。また、免疫不全の患者においてはVZVの感染は重篤な合併症である。一般的に子供の発疹と関連するヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)は、後天性免疫不全症候群(AIDS)患者においても同定され、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した宿主におけるAIDSの病理の補因子である可能性がある。
【0184】
いくつかの実施形態においては、対象方法はウイルス感染に治療を提供する。ウイルスがヘルペスウイルス科のメンバーである場合、この方法は基本的には、ヘルペスウイルス科のメンバーに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は個体におけるHSV−1感染の治療を提供し、この方法は個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は個体におけるHSV−2感染の治療を提供し、この方法は個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は個体におけるVSV感染の治療を提供し、この方法は個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は個体におけるEBV感染の治療を提供し、この方法は個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は個体におけるHHV−8感染の治療を提供し、この方法は個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。
【0185】
上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約1ヶ月〜約6ヶ月、約6ヶ月〜約1才、又は年齢が約1才〜約5才のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約5才〜約12才、約13才〜約18才、又は年齢が約18才〜約25才のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約25才〜約50才、約50才〜約75才、又は75才より高齢のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は免疫不全である。
【0186】
いくつかの実施形態においては、ヘルペスウイルス科のメンバーによって引き起こされたウイルス感染を治療する対象方法は、効果量のEGF−Rアンタゴニストを単独療法として投与することを含む。その他の実施形態においては、ヘルペスウイルス科のメンバーによって引き起こされたウイルス感染を治療する対象方法は、i)効果量のEGF−Rアンタゴニストと、ii)少なくとも1つのさらなる治療薬とを投与することを含む併用療法である。
【0187】
例えばHSV−1感染又はHSV−2感染を治療するための好適なさらなる治療薬には、アシクロビル(Zovirax)、バルガンシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル(Valtrex)、ガンシクロビル(Cytovene)、シドフォビル(Vistide)、アンチセンスオリゴヌクレオチドホミビルセン(Vitravene)、ホスカルネット(Foscavir)、ペンシクロビル、イドクスウリジン、ビダラビン、及びトリフルリジンが含まれるが、これらには限定されない。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬はインターフェロン(例えばインターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、インターフェロン−ラムダ、インターフェロン−タウ、インターフェロン−オメガなど)である。
【0188】
アシクロビルは、HSV−1、HSV−2、VZV、又はEBV感染の治療のための対象併用療法において使用することができるプリンヌクレオシド類似体である。バラシクロビルはHSV−1、HSV−2、VZV、又はEBV感染の治療のための対象併用療法において用いることができる。シドフォビルはHSV−1、HSV−2、VZV、EBV、又はKSHV感染の治療のための対象併用療法において使用することができるヌクレオチド類似体である。ファムシクロビルはHSV−1、HSV−2、又はVZV感染の治療のための対象併用療法において使用することができるプロドラッグである。ホスカルネットはEBV、KSHV、HSV、又はVZV感染の治療のための対象併用療法において使用することができる無機ピロリン酸の有機類似体である。ガンシクロビルはいずれのヒトヘルペスウイルス(HHV)感染の治療のための対象併用療法において使用することができる2’−デオキシグアノシンのヌクレオシド類似体である。バルガンシクロビルはいずれのHHV感染の治療のための対象併用療法において使用することができる、経口で使用可能な形態のガンシクロビルである。イドクスウリジンはヘルペスシンプレックス角結膜炎の治療のための対象併用療法において局所的に使用することができる。ペンシクロビルは再発性口唇ヘルペス(例えばHSV−1又はHSV−2によって引き起こされる)を治療するための対象併用療法において局所的に適用することができるリン酸化グアノシン類似体である。トリフルリジンはHSV−1及びHSV−2によって引き起こされる初期角結膜炎及び再発性角膜炎又は潰瘍の治療のための対象併用療法において使用することができるチミン類似体である。ビダラビンはHSV−1又はHSV−2感染の治療のための対象併用療法において使用することができるアデニンアラビノシドである。
【0189】
上述のさらなる治療薬を投与するための好適な経路は当該技術分野において周知である。例えば、ガンシクロビルは経口処方として使用可能であり;シドフォビル及びホミビルセンはAIDS患者における網膜炎に対する局所適用として認可され;並びにホスカルネットは静注経路による使用のために処方される。
【0190】
パピローマウイルス
本開示はウイルス感染に治療方法を提供する。ウイルスがパピローマウイルス科のメンバーである場合、この方法は基本的には、パピローマウイルス科のメンバーに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。パピローマウイルス科のメンバーには、アルファパピローマウイルス属、ベータパピローマウイルス属、ガンマパピローマウイルス属、ミューパピローマウイルス属、及びニューパピローマウイルス属のメンバーであるヒトパピローマウイルスが含まれる。ヒトパピローマウイルス(HPV)には約130の血清型が含まれる。
【0191】
ヒト及び霊長類においては、アルファパピローマウイルス属のメンバーは主に、経口又は肛門性器部粘膜に感染する。ある種(例えばヒトパピローマウイルス2、ヒトパピローマウイルス10)もまた皮膚部位の病斑において見られる。特定の種(例えばヒトパピローマウイルス16、ヒトパピローマウイルス18)は、それらの悪性組織における通常の発現及びインビトロでの形質転換活性の観点から、高リスクウイルスだと考えられている。その他の種(例えばヒトパピローマウイルス53、ヒトパピローマウイルス26、ヒトパピローマウイルス34)は悪性又は良性の病斑を引き起こし、一方、低リスク種(ヒトパピローマウイルス61、ヒトパピローマウイルス7、ヒトパピローマウイルス6、ヒトパピローマウイルス54、ヒトパピローマウイルスcand90、ヒトパピローマウイルス71)は主に良性の病斑を引き起こす。
【0192】
ベータパピローマウイルス属のメンバーは主にヒトの皮膚に感染する。これらの感染は一般集団においても潜在的に存在しているが、免疫が抑制された状態において活性化される。ヒトパピローマウイルス5、ヒトパピローマウイルス9及びヒトパピローマウイルス49の種もまた、疣贅状表皮発育異常症(EV)の疾患と関連している。
【0193】
ガンマパピローマウイルス属のメンバー(例えばヒトパピローマウイルス4)はそれらの宿主において皮膚病斑を引き起こす。ミューパピローマウイルス(例えばヒトパピローマウイルス1;ヒトパピローマウイルス63)はそれらの宿主において皮膚病斑を引き起こす。ニューパピローマウイルス(例えばヒトパピローマウイルス41)は良性及び悪性の皮膚病斑をそれらの宿主において引き起こす。
【0194】
HPV16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、及び68型は性感染し、かつ、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)、外陰上皮内腫瘍(VIN)、陰茎上皮内腫瘍(PIN)、及び/又は肛門上皮内腫瘍(AIN)を引き起こす可能性があると考えられる。HPV−2及びHPV−7は一般的な皮膚のいぼを引き起こす可能性がある。HPV1、2、及び4型は足底のいぼを引き起こす場合がある。HPV6、11、42、43、44、55型は肛門性器部のいぼを引き起こす場合がある。HPV6、7、11、16、32型は口内乳頭腫を引き起こす場合がある。
【0195】
対象方法はウイルス感染の治療を提供する。ウイルスがパピローマウイルスのメンバーである場合、この方法は、それらを必要とする個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態においては、対象方法は、HPVに感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染の治療を提供する。いくつかの実施形態においては、対象方法は、HPV16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、又は68型に感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む、HPV感染の治療を提供する。いくつかの実施形態においては、対象方法は、HPV16型に感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む、HPV感染に治療を提供する。いくつかの実施形態においては、対象方法は、HPV1、2、又は4型に感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む、HPV感染に治療を提供する。いくつかの実施形態においては、対象方法は、HPV2又は7型に感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む、HPV感染の治療を提供する。いくつかの実施形態においては、対象方法は、HPV6、11、42、43、44、又は55型に感染した個体に効果量のEGF−Rアンタゴニストを投与することを含む、HPV感染に治療を提供する。
【0196】
上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約1ヶ月〜約6ヶ月、約6ヶ月〜約1才、又は年齢が約1才〜約5才のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約5才〜約12才、約13才〜約18才、又は年齢が約18才〜約25才のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は年齢が約25才〜約50才、約50才〜約75才、又は75才より高齢のヒトである。上記実施形態のうちのいずれか1つにおいては、個体は免疫不全である。
【0197】
いくつかの実施形態においては、パピローマウイルス科のメンバーによって引き起こされたウイルス感染を治療する対象方法は、効果量のEGF−Rアンタゴニストを単独療法として投与することを含む。その他の実施形態においては、パピローマウイルス科のメンバーによって引き起こされたウイルス感染を治療する対象方法は、i)効果量のEGF−Rアンタゴニストと、ii)少なくとも1つのさらなる治療薬とを投与することを含む併用療法である。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬はインターフェロン(例えばインターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、インターフェロン−ラムダ、インターフェロン−タウ、インターフェロン−オメガなど)である。
【0198】
インターフェロン
上記に示したように、いくつかの実施形態においては、本開示はi)効果量のEGF−Rアンタゴニストと、ii)少なくとも1つのさらなる治療薬とを投与することを含む併用療法である、ウイルス感染を治療するための併用療法の使用について検討する。上記に示したように、いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのさらなる治療薬はインターフェロンである。好適なインターフェロンには、例えばインターフェロン−アルファ(IFN−α)、インターフェロン−ベータ(IFN−β)、インターフェロン−ガンマ(IFN−γ)、インターフェロン−ラムダ(IFN−λ)、IFN−tau、IFN−ωなどが含まれる。
【0199】
IFN−α
既知のいずれのIFN−αも対象併用療法において使用可能である。「IFN−α」という用語は生物学的に活性なIFN−αを含み、この場合生物学的に活性なIFN−αは、天然に生じるIFN−α;合成IFN−α;誘導体化されたIFN−α(例えばペグIFN−α、グリコシル化IFN−αなど);グリコシル化IFN−α;ポリ(エチレングリコール)を含む誘導体化されたIFN−α(「ペグIFN−α」);及び天然に生じる又は合成IFN−αの類似体を含む。
【0200】
好適なアルファインターフェロンには、天然に生じるIFN−α(天然に生じるIFN−α2a、IFN−α2bを含むがこれらには限定されない);組換えインターフェロンアルファ−2b、Schering Corporation(ケニルワース、ニュージャージー)から入手可能なイントロン−Aインターフェロンなど;組換えインターフェロンアルファ−2a、Hoffmann−La Roche(ナトリー、ニュージャージー)から入手可能なRoferonインターフェロンなど;組換えインターフェロンアルファ−2C、Boehringer Ingelheim Pharmaceutical,Inc.(リッジフィールド、コネティカット)から入手可能なBerofor alpha2インターフェロンなど;Sumitomo(日本)から入手可能なSumiferon又はGlaxo−Wellcome Ltd.(ロンドン、英国)から入手可能なWellferonインターフェロンアルファ−n1(INS)などの、精製された天然アルファインターフェロンの配合物などのインターフェロンアルファ−n1;及びInterferon Sciencesによって作成され、Alferon(登録商標)の名称でPurdue Frederick Co.(ノーウォーク、コネティカット)から入手可能な天然アルファインターフェロンの混合物であるインターフェロンアルファ−n3が含まれるが、これらには限定されない。
【0201】
「IFN−α」という用語は、コンセンサスIFN−αをもまた包含する。コンセンサスIFN−α(「CIFN」、「IFN−con」及び「コンセンサスインターフェロン」とも呼ばれる)は米国特許第4,695,623号及び第4,897,471号において開示された、IFN−con、IFN−con及びIFN−conとして示されるアミノ酸配列;並びに天然に生じるインターフェロンアルファのコンセンサス配列の決定によって定義されたコンセンサスインターフェロン(例えばInfergen(登録商標)、Inter Mune,Inc.、ブリスベーン、カリフォルニア)を包含するが、これらには限定されない。IFN−conはInfergen(登録商標)アルファコン−1製剤中のコンセンサスインターフェロン治療薬である。本明細中においては、Infergen(登録商標)コンセンサスインターフェロン製剤はその商標(Infergen(登録商標))又はその一般名(インターフェロンアルファコン−1)によって表される。
【0202】
IFN−α及び異種ポリペプチドを含む融合ポリペプチドもまた対象併用療法での使用に適している。好適なIFN−α融合ポリペプチドには、Albuferon−alpha(商標)(ヒトアルブミンとIFN−αとの融合産物;Human Genome Sciences;例えばOsborn et al.(2002)J. Pharmacol. Exp. Therap. 303:540−548を参照のこと)が含まれるがこれらには限定されない。
【0203】
「IFN−α」という用語は、血清半減期などの特定の性質を変更するために誘導体化された(例えば化学的に修飾された)IFN−αの誘導体をもまた包含する。ペグIFN−α並びにその製造方法は米国特許第5,382,657号;第5,981,709号;及び第5,951,974号において議論された。ペグIFN−αは、PEGに結合したインターフェロンアルファ−2a(Roferon、Hoffman La−Roche、ナトリー、ニュージャージー)、インターフェロンアルファ−2b(Intron、Schering−Plough、マディソン、ニュージャージー)、インターフェロンアルファ−2c(Berofor Alpha、Boehringer Ingelheim、Ingelheim、ドイツ);及び、天然に生じたインターフェロンアルファのコンセンサス配列を決定することにより定義されたコンセンサスインターフェロン(Infergen(登録商標)、Inter Mune、Inc.、ブリスベーン、カリフォルニア)を含むがこれらには限定されない、PEGといずれかの上述したIFN−α分子との結合体を包含する。
【0204】
IFN−β
インターフェロン−ベータ(「IFN−β」)には、天然に生じるIFN−βポリペプチド;非天然のIFN−βポリペプチド;並びに天然に生じるIFN−β又は非天然のIFN−βの類似体及び変異体である、生物学的に活性なIFN−βポリペプチドが含まれる。
【0205】
任意の様々なベータインターフェロンを対象治療方法において使用することができる。好適なベータインターフェロンには天然に生じるIFN−β;IFN−β1a、例えばAvonex(登録商標)(Biogen,Inc.)、及びRebif(登録商標)(Serono,SA);IFN−β1b(Betaseron(登録商標);Berlex);などが含まれるがこれらには限定されない。IFN−β処方は、N末端のアミノ酸が、ホルミル基、アセチル基、マロニル基、などのアシル基によってアシル化されたN末端がブロックされた種を含んでいてもよい。コンセンサスIFN−βもまた使用に適している。
【0206】
IFN−γ
インターフェロン−ベータ(「IFN−γ」)と言う用語には、天然に生じるIFN−γポリペプチド;非天然のIFN−γポリペプチド;並びに天然に生じる又は非天然のIFN−γの類似体及び変異体である、生物学的に活性なIFN−γポリペプチドが含まれる。
【0207】
IFN−γ1b(Actimmune(登録商標);ヒトインターフェロン)は140アミノ酸の一本鎖ポリペプチドであり、かつ、対象併用療法における使用に適している。Actimmune(登録商標)はE.coli内で組み換え技術によって作出され、非グリコシル化される(Rinderknecht et al. 1984,J.Biol.Chem. 259:6790−6797)。米国特許第6,497,871号において議論されたような、組換えIFN−ガンマも使用に適している。さらなる好適なIFN−γ型は、例えば米国特許第5,690,925号;国際公開第01/36001号;及び国際公開第02/081507号において見られる。
【0208】
IFN−λ
「IFN−λ」という用語には、例えばIFN−λ1、IFN−λ2及びIFN−λ3が含まれる。IFN−λ1はIL−29としても知られ、IFN−λ2及びIFN−λ3はIL−28a/bとしても知られる。IFN−λ1、IFN−λ2及びIFN−λ3のアミノ酸配列は既知である。例えば、米国特許公開第2007/0134763号の配列番号5、6、及び7(それぞれIFN−λ1、IFN−λ2及びIFN−λ3)を参照のこと。IFN−λポリペプチドは米国特許公開第2007/0134763号の配列番号5、6、若しくは7のうちの1つと同じアミノ酸配列であってもよく、又は米国特許公開第2007/0134763号の配列番号5、6、若しくは7のうちの1つと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、若しくは少なくとも約98%同一なアミノ酸配列を有していても良く、この場合、IFN−λポリペプチドは生物学的に活性である。「IFN−λ」という用語には、天然に生じるIFN−λ、組換えIFN−λ、及び合成IFN−λが含まれる。「IFN−λ」という用語には修飾されたIFN−λ、例えばPEG修飾IFN−λなど、もまた含まれる。
【0209】
慢性肺疾患の急性増悪の治療
本開示はさらに、ウイルス感染によって誘導された慢性肺疾患の急性増悪の治療方法を提供し、この方法は基本的には、それらを必要とする個体(例えば慢性肺疾患を有する個体)に効果量のEGF−R阻害剤を投与することを含む。好適なEGF−R阻害剤は上述された通りである。
【0210】
いくつかの実施形態においては、慢性肺疾患の急性増悪は呼吸器系ウイルスによって引き起こされ、例えばこの場合には呼吸器系ウイルスはライノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、コロナウイルス、又はアデノウイルスである。
【0211】
慢性肺疾患には、例えば喘息、間質性肺疾患、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD;慢性気管支炎及び肺気腫を含む)、嚢胞性繊維症、放射線誘発肺線維症、サルコイドーシス、肺サルコイドーシス、気管支拡張症、細気管支炎、などが含まれる。個体がウイルス感染を有する場合、慢性肺疾患を有する個体は疾患の急性増悪を経験する場合がある。例えば、ライノウイルス16感染は喘息の急性増悪を引き起こす場合がある。
【0212】
いくつかの実施形態においては、効果量のEGF−R阻害剤とは、単独または1以上の用量での併用療法において投与した場合に、例えば喘鳴、咳、呼吸困難、胸部圧迫などを含む急性増悪に関連した1つ以上の症状を低減させる又は改善するのに効果的な量である。
【0213】
いくつかの実施形態においては、効果量のEGF−R阻害剤とは、単独または1以上の用量での併用療法において投与した場合に、ウイルス感染に誘発された慢性肺疾患の急性増悪を有する患者において肺機能を上昇されるのに効果的な量である。例えば、いくつかの実施形態においては、効果量のEGF−R阻害剤とは、単独または1以上の用量での併用療法において投与した場合に、EGF−R阻害剤を用いた治療を受けていない肺機能と比較して、1つ以上の肺機能を少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも50%、または50%以上、上昇させる量である。
【0214】
肺機能値は当該技術分野において周知である。以下は使用することができる肺機能値の例である。その他の肺機能値又はその組み合わせもまた本発明の範囲内である。この値には、FEV(努力呼気肺活量)、FVC(努力肺活量)、FEF(努力呼気流量)、Vmax(最大流量)、PEFR(最大呼気速度)、FRC(機能的残気量)、RV(残気量)、TLC(全肺気量)が含まれるがこれらには限定されない。
【0215】
好適なEGF−R阻害剤、用量、処方、及び投与経路は本明細書中に記載される。
【0216】
ウイルス感染によって誘発された慢性肺疾患の増悪を有する個体にEGF−R阻害剤を投与する場合、EGF−R阻害剤はそれのみで(例えば単独療法として)又は慢性肺疾患を治療するために用いられる1つ以上のさらなる活性薬剤との併用療法において投与することができる。好適なさらなる活性薬剤には、例えばインターフェロン(例えばインターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、インターフェロン−ラムダ、インターフェロン−タウ、インターフェロン−オメガ);コルチコステロイド;ベータ−2アゴニスト;抗ヒスタミン;など)が含まれる。
【0217】
例えば、喘息の治療において好適な活性薬剤には:アルブテロール、レバブテロール、ピルブテロール、アートフォルモテロール(artformoterol)、フォルモテロール、サルメテロール、サルブタモール、テルブタリン、ビトルテロール、フルチカゾン、ブテゾニドを含むbeta−2−アゴニストを含む気管支拡張薬及びイプラトロピウム、臭化イプラトロピウム、オキシトロピウム及びチオトロピウムを含む抗コリン作用薬;例えばグルココルチコイド(経口、全身性及び吸入グルココルチコイドを含む)、ベクロメタゾン、ブデゾニド、フルニソリド、フルチカゾン、モメタゾン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、シクレソニドを含むコルチコステロイド;モンテルカスト、ザフィルルカスト、プランルカスト及びジレウトンを含むロイコトリエン修飾薬;クロモリン、クロモグリク酸及びネドクロミルを含む肥満細胞安定剤;エピネフリン;エフェドリン;テオフィリン、アミノフィリンを含むメチルキサンチン;イプラトリピウムとアルブテロール、フルチカゾンとサルメテロール、ブデゾニドおよびフォルモテロール、を含む複合薬;ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、ロラタジン、セチリジン、及びヒドロコルチゾンを含む抗ヒスタミン;タクロリムス及びピメクロリムスを含む免疫系調節薬;シクロスポリン;アザチオプリン;ミコフェノール酸モフェチル;オマリズマブを含むIgE遮断薬;腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)阻害剤(例えばアダリムバブ;セルトリズマブペゴール;エタネルセプト;ゴリムマブ;インフリキシマブなど);並びにその組み合わせが挙げられる。
【0218】
別の例として、間質性肺疾患の治療において好適なさらなる活性薬剤には、コルチコステロイド薬;アザチオプリン及びシクロホスファミドなどの細胞毒性薬;アセチルシステインなどの抗酸化剤;並びにボセンタン及びピルフェニドンなどの抗線維化剤が挙げられる。
【0219】
別の例として、COPDの治療において好適なさらなる活性薬剤には、アルブテロール及びレバブテロールなどのベータ−2−アゴニスト;イプラトロピウムなどの抗コリン作用性気管支拡張薬;アルブテロール及びイプラトロピウムを含むコンビベント(combivent)などの複合薬;チオトロピウム、サルメテロール、フォルモテロール、及びアートフォルモテロール(arformoterol)などの持続作用性気管支拡張薬;プレドニゾンなどのコルチコステロイド薬;抗生物質、並びにグアイフェネシンなどの去痰薬が挙げられる。
【0220】
別の例として、嚢胞性繊維症の治療において好適なさらなる活性薬剤には、アルブテロール、テオフィリン、イプラトロピウムなどの気管支拡張薬;グアイフェネシン、DNアーゼ、高張食塩水、及びN−アセチルシステインなどの粘液溶解薬;トリアムシノロン、フルニソリド、フルチカゾン、ベクロメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、イブプロフェン、モンテルカスト、クロモリンなどの抗炎症薬;シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、コトリモキサゾール、トブラマイシン、セファレキシン、コリスチン、セフタジディム、カルバペネム(例えばメロペネム)、ピペラシリン、ジクロキサシリン、及びアジスロマイシンなどの抗生物質が挙げられる。
【0221】
別の例として、サルコイドーシスの治療において好適なさらなる活性薬剤には、トリアムシノロン、プレドニゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン及びコルチゾンなどのグルココルチコイド;インフリキシマブなどのモノクローナル抗体;アザチオプリンなどの免疫抑制剤;並びにクロロキンなどの抗アメーバ薬が挙げられる。
【0222】
別の例として、気管支拡張症の治療において好適なさらなる活性薬剤には、アジスロマイシン、アモキシシリン、トブラマイシン、テトラサイクリン、ゲンタマイシン、ドキシサイクリン、レボフロキサシン、アミカシン、セフタジディム、カルバペネム(例えばメロペネム)、ピペラシリン、スルファメトキサゾール−トリメトプリム及びトブラマイシンなどの抗生物質;アルブテロールなどの気管支拡張薬;ベクロメタゾン、フルチカゾンなどのコルチコステロイド;N−アセチルシステインなどの粘液溶解薬;並びにグアイフェネシンなどの去痰薬が挙げられる。
【0223】
処方、用量及び投与経路
活性薬剤(本明細書においては「薬」とも表される)は、1つ以上の薬剤的に許容可能な賦形剤と共に処方される。上述したように、「活性薬剤」は、例えばEGF−R阻害剤を含み、及びいくつかの実施形態においては、上述したようなさらなる治療薬をさらに含む。2つ以上の活性薬剤が投与される場合、この2つ以上の活性薬剤は個別に処方することができ、又は共に処方することができる。
【0224】
多様な薬剤的に許容可能な賦形剤が当該技術分野において周知であり、また本明細書において議論する必要はない。薬剤的に許容可能な賦形剤については様々な文献において、例えばA. Gennaro(2000)「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」20th edition,Lippincott,Williams,&Wilkins;Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(1999)H.C.Ansel et al.,eds.,7thed.,Lippincott,Williams,&Wilkins;及び、Handbook of Pharmaceutical Excipients(2000)A.H. Kibbe et al.,eds.,3rded.,Amer.Pharmaceutical Assoc.に広く記述されている。
【0225】
媒体、アジュバント、担体又は希釈剤などの薬剤的に許容可能な賦形剤は容易に入手可能である。さらに、pH調節剤及び緩衝剤、張性調整剤、安定剤、湿潤剤などの薬剤的に許容可能な補助物質も容易に入手可能である。
【0226】
対象方法においては、ウイルス価、ウイルス感染の症状などにおける所望の低減を生じることができる任意の便利な手段を用いて活性薬剤を宿主に投与してもよい。従って、治療用投与のための様々な処方中に活性薬剤を取り入れることができる。より具体的には、適切な薬剤的に許容可能な担体又は希釈剤と組み合わせることにより活性薬剤を医薬組成物中に処方することができ、及び錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、座剤、注射剤、吸入剤及びエアロゾルなどの固体、半固体、液体又はガス状の剤型の製剤中に活性薬剤を処方してもよい。
【0227】
薬剤用量形態においては、活性薬剤をそれらの薬剤的に許容可能な塩の形態で投与してもよく、又は活性薬剤を単独で若しくはその他の薬剤的に活性な化合物との適切な関連及び組み合わせにおいて投与してもよい。以下の方法及び賦形剤は単なる例であり、限定するものではない。
【0228】
経口製剤には、活性薬剤を単独で、又は、錠剤、粉末、顆粒若しくはカプセルを形成するための適切な添加剤、例えば、ラクトース、マンニトール、コーンスターチ又はジャガイモ澱粉などの標準的な添加剤と;結晶セルロース、セルロース誘導体、アカシアゴム、コーンスターチ又はゼラチンなどの結合剤と;コーンスターチ、ジャガイモ澱粉又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤と;タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤と共に;並びに必要に応じて、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存料並びに香味料と共にとの組み合わせにおいて使用することができる。
【0229】
活性薬剤を植物油又は類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸又はプロピレングリコールのエステルなどの水性又は非水性の溶媒中に、必要に応じて可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤及び保存料などの標準的な添加剤などと共に溶解、懸濁又は乳化することにより、活性薬剤を注入用の製剤中に処方することができる。
【0230】
吸入を介した投与のためのエアロゾル処方においても活性薬剤を用いることができる。ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧可能な推進剤中に活性薬剤を処方することができる。
【0231】
さらに、乳化塩基又は水溶性塩基などの様々な塩基と混合することにより、活性薬剤を座剤として成形することができる。活性薬剤を座剤を介して直腸から投与することができる。座剤は、ココアバター、カーボワックス及びポリエチレングリコールなどの、室温では固形であるが体温で溶解する媒体を含む場合がある。
【0232】
経口又は直腸投与用の単位剤形はシロップ、エリキシール及び懸濁液などとして提供される場合があり、この場合には、それぞれの容量単位、例えば小さじ一杯、大さじ一杯、錠剤又は座剤、は1つ以上の阻害剤を含む所定の量の組成物を含む。同様に、注入又は静注投与のための単位剤形は、滅菌水、生理食塩水又はその他の薬剤的に許容可能な担体中の溶液として、組成物中に活性薬剤を含んでいてもよい。
【0233】
本明細書で使用されるとき「単位剤形」という用語は、ヒト及び動物対象に対する単一用量として好適な物理的に個別の単位を意味し、それぞれの単位は、薬剤的に許容可能な希釈剤、担体又は媒体と共に所望の効果を生産するのに十分な量である、算出された所定の量の活性薬剤を含む。活性薬剤の仕様は、用いられる特定の化合物及び達成される効果、並びにそれぞれの化合物の宿主における薬力学に依存する。
【0234】
活性薬剤を注射剤としても投与することができる。典型的には、注射剤組成物は液体溶液又は懸濁液として調製され;注入に先行する液体媒体中に溶解又は懸濁するのに好適な固形形態としてもまた調製される。製剤はまた乳化される場合もあり、活性成分はリポソーム媒体中に被包される。いくつかの実施形態においては、水性溶媒(例えば食塩水など)又は非水性溶媒(植物油又はその他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸又はプロピレングリコールのエステル)中に、必要に応じて、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤及び保存料などの標準的な添加剤と共に、薬剤を溶解、懸濁又は乳化することにより、注入(例えば皮下、静脈内、筋内、皮内、経皮的、又はその他の注入経路)に適した製剤中に、活性薬剤は処方される。
【0235】
経口製剤用には、単独で、又は、錠剤、粉末、顆粒若しくはカプセルを成形するための適した添加剤、例えば、ラクトース、マンニトール、コーンスターチ若しくはジャガイモ澱粉などの標準的な添加剤と;結晶セルロース、セルロース誘導体、アカシアゴム、コーンスターチ若しくはゼラチンなどの結合剤と;コーンスターチ、ジャガイモ澱粉若しくはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤と;タルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤と;並びに必要に応じて、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存料、及び香味料との組み合わせにおいて、活性薬剤を処方することができる。いくつかの実施形態においては、経腸送達のための対象処方は腸溶性コーティング材料を含む場合がある。好適な腸溶性コーティング材料には、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸フタル酸ポリビニル(PVPA)、オイドラギット、及びシェラックが含まれる。
【0236】
好適な経口処方の限定しない一例として、米国特許第6,346,269号に記載されたように、活性薬剤を1つ以上の医薬賦形剤と共に処方し、腸溶性コーティングを用いてコーティングすることができる。例えば、活性薬剤をコーティングした核を形成するために、溶媒、活性薬剤、及び安定剤を含む溶液を薬剤的に許容可能な賦形剤を含む核にコーティングし;活性薬剤をコーティングした核にサブコーティング層を塗布し、その後腸溶性コーティング層を用いてコーティングした。核は通常、ラクトース、澱粉、マンニトール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、顔料、アルギン酸の塩、タルク、二酸化チタン、ステアリン酸、ステアリン酸塩、微結晶セルロース、グリセリン、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、プロパニルトリアセタート、リン酸水素カルシウム、リン酸三ナトリウム、硫酸カルシウム、シクロデキストリン、及びヒマシ油などの薬剤的に不活性な成分を含む。活性薬剤のための好適な溶媒には水性溶媒が含まれる。好適な安定剤には、アルカリ金属及びアルカリ土類金属、リン酸塩の塩基及び有機酸塩及び有機アミンが含まれる。サブコーティング層は、1つ以上の接着剤、可塑剤、及び抗粘着剤を含む。好適な抗粘着剤には、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ナトリウムステアリルフマラート、ベヘン酸グリセリル、カオリン及びエアロジルが含まれる。好適な接着剤には、ポリビニルプロリドン(PVP)、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸ビニル(VA)、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、キサンタンゴム、アルギン酸、アルギン酸の塩、Eudragit(商標)、メチルアクリル酸/メチルメタクリレートと酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP)とのコポリマーが含まれる。好適な可塑剤には、グリセリン、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、プロパニルトリアセタート及びヒマシ油が含まれる。好適な腸溶性コーティング材料には、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、フタル酸酢酸ポリビニル(PVPA)、Eudragit(商標)及びシェラックが含まれる。
【0237】
好適な賦形剤媒体は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、及びその組み合わせである。さらに必要に応じて、媒体は湿潤若しくは乳化剤又はpH緩衝剤などの少量の補助物質を含んでいてもよい。それら用量形態の実際の調製方法は、当業者には周知であり、又は明らかとなるであろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 17th edition, 1985を参照のこと。いずれの場合においても、投与される組成物又は処方は、治療される対象において所望の状態を達成するために十分な量の薬剤を含むだろう。
【0238】
媒体、アジュバント、担体又は希釈剤などの薬剤的に許容可能な賦形剤は、容易に入手可能である。さらに、pH調整及び緩衝剤、張性調整剤、安定剤、湿潤剤などの薬剤的に許容可能な補助物質も容易に入手可能である。
【0239】
用量
いくつかの実施形態においては、投与当たり約10μg〜約500mg、例えば投与当たり約10μg〜約20μg、約20μg〜約25μg、約25μg〜約50μg、約50μg〜約75μg、約75μg〜約100μg、約100μg〜約150μg、約150μg〜約200μg、約200μg〜約250μg、約250μg〜約300μg、約300μg〜約400μg、約400μg〜約500μg、約500μg〜約750μg、約750μg〜約1mg、約1mg〜約10mg、約10mg〜約25mg、約25mg〜約50mg、約50mg〜約100mg、約100mg〜約200mg、約200mg〜約300mg、約300mg〜約400mg、又は約400mg〜約500mgの量の活性薬剤が投与される。
【0240】
いくつかの実施形態においては、投与当たり約10mg/m〜投与当たり約150mg/m、例えば投与当たり約10mg/m〜投与当たり約15mg/m、投与当たり約15mg/m〜投与当たり約20mg/m、投与当たり約20mg/m〜投与当たり約25mg/m、投与当たり約25mg/m〜投与当たり約30mg/m、投与当たり約30mg/m〜投与当たり約35mg/m、投与当たり約35mg/m〜投与当たり約40mg/m、投与当たり約40mg/m〜投与当たり約50mg/m、投与当たり約50mg/m〜投与当たり約60mg/m、投与当たり約60mg/m〜投与当たり約70mg/m、投与当たり約70mg/m〜投与当たり約80mg/m、投与当たり約80mg/m〜投与当たり約90mg/m、投与当たり約90mg/m〜投与当たり約100mg/m、投与当たり約100mg/m〜投与当たり約110mg/m、投与当たり約110mg/m〜投与当たり約120mg/m、投与当たり約120mg/m〜投与当たり約130mg/m、投与当たり約130mg/m〜投与当たり約140mg/m、又は投与当たり約140mg/m〜投与当たり約150mg/mの量の活性薬剤が投与される。
【0241】
いくつかの実施形態においては、1週間当たり約10mg/m〜1週間当たり約200mg/m、例えば1週間当たり約10mg/m〜1週間当たり約15mg/m、1週間当たり約15mg/m〜1週間当たり約20mg/m、1週間当たり約20mg/m〜1週間当たり約25mg/m、1週間当たり約25mg/m〜1週間当たり約30mg/m、1週間当たり約30mg/m〜1週間当たり約35mg/m、1週間当たり約35mg/m〜1週間当たり約40mg/m、1週間当たり約40mg/m〜1週間当たり約50mg/m、1週間当たり約50mg/m〜1週間当たり約60mg/m、1週間当たり約60mg/m〜1週間当たり約70mg/m、1週間当たり約70mg/m〜1週間当たり約80mg/m、1週間当たり約80mg/m〜1週間当たり約90mg/m、1週間当たり約90mg/m〜1週間当たり約100mg/m、1週間当たり約100mg/m〜1週間当たり約110mg/m、1週間当たり約110mg/m〜1週間当たり約120mg/m、1週間当たり約120mg/m〜1週間当たり約130mg/m、1週間当たり約130mg/m〜投与当たり約140mg/m、1週間当たり約140mg/m〜1週間当たり約150mg/m、1週間当たり約150mg/m〜1週間当たり約160mg/m、1週間当たり約160mg/m〜1週間当たり約170mg/m、1週間当たり約170mg/m〜1週間当たり約180mg/m、1週間当たり約180mg/m〜1週間当たり約190mg/m、又は1週間当たり約190mg/m〜1週間当たり約200mg/mの量の活性薬剤が投与される。
【0242】
特定の化合物の機能、症状の重症度、及び対象の副作用への感受性によって用量レベルが多様であり得ることを、当業者は容易に理解できるだろう。当業者により、様々な手段を用いて、示された化合物の好ましい用量は容易に決定することができる。
【0243】
いくつかの実施形態においては、複数回用量の活性薬剤が投与される。活性薬剤を投与する頻度は、様々な因子のいずれか、例えば症状の重症度など、によって多様であり得る。例えば、いくつかの実施形態においては、活性薬剤は、1ヶ月に1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に3回、隔週(qow)、1週間に1回(qw)、1週間に2回(biw)、1週間に3回(tiw)、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、隔日(qod)、毎日(qd)、1日に2回(qid)、又は1日に3回(tid)投与される。いくつかの実施形態においては、活性薬剤は継続して投与される。
【0244】
活性薬剤の投与の持続期間、例えば活性薬剤が投与される期間、は様々な因子のいずれか、例えば個体の反応など、によって多様であり得る。例えば、活性薬剤は、約1日〜約1週間、約2週間〜約4週間、約1ヶ月〜約2ヶ月、約2ヶ月〜約4ヶ月、約4ヶ月〜約6ヶ月、約6ヶ月〜約8ヶ月、約8ヶ月〜約1年間、約1年間〜約2年間、若しくは約2年間〜約4年間、又はそれ以上の範囲の期間に渡って投与される場合がある。いくつかの実施形態においては、活性薬剤は個体の一生涯に渡って投与される。
【0245】
いくつかの実施形態においては、活性薬剤の投与は不連続である。例えば活性薬剤は第一の期間、第一の投与頻度において投与され;活性薬剤の投与はある期間停止され;その後、活性薬剤は第二の期間、第二の投与頻度において投与される。活性薬剤の投与が停止される期間は様々な因子、例えば患者に反応、によって多様であってよく;及びその期間は通常約1週間〜約6ヶ月、例えば約1週間〜約2週間、約2週間〜約4週間、約1ヶ月〜約2ヶ月、約2ヶ月〜約4ヶ月、若しくは約4ヶ月〜約6ヶ月、またはそれより長期、の範囲になるだろう。第一の期間は第二の期間と同じであっても異なっていてもよく;及び第一の投与頻度は第二の投与頻度と同じであっても異なっていてもよい。
【0246】
投与経路
活性薬剤は、薬物送達のための、全身性及び限局性の投与経路を含む任意の使用可能な方法及び経路を用いて患者に投与される。
【0247】
標準的及び薬剤的に許容可能な投与経路には、吸入(例えば経鼻的)、筋内、気管内、皮下、皮内、経皮的、局所的(例えば皮膚へ、眼へ、など)、静脈、直腸、経口、経膣、眼の、眼内、及びその他の経腸並びに非経口の投与経路が含まれる。投与経路は必要に応じて組み合わせてもよく、又は薬剤及び/又は所望の効果によって調整してもよい。化合物は単一用量又は複数回用量において投与される場合がある。
【0248】
いくつかの実施形態においては、投与経路はウイルス感染の性質に依存するだろう。1例として、活性薬剤を気道に、例えば吸入投与経路、気管内投与、経鼻投与などを介して投与することにより、呼吸器系ウイルス感染(例えば呼吸器系疾患を引き起こすウイルスの感染)を治療することができる。別の例として、例えば経口投与、直腸投与又は静脈投与を介して活性薬剤を胃腸管に投与することにより、胃腸管系障害を引き起こすウイルスのウイルス感染を治療することができる。別の例として、局所的投与又は粘膜面への局所投与を介して活性薬剤を皮膚に投与することにより、皮膚障害(例えばいぼ、皮膚病変など)を引き起こすウイルス感染を治療することができる。別の例として、活性薬剤を感染した組織に、例えば経膣投与、直腸投与、肛門周辺投与、口腔粘膜感染を治療するための経口投与などによって活性薬剤を直接投与することにより、膣組織、生殖器組織、肛門などに感染するウイルス感染を治療することができる。
【0249】
いくつかの実施形態においては、EGFR阻害剤はウイルスが感染した粘膜面へ直接塗布された。例えば、いくつかの実施形態においては、呼吸器系ウイルス感染を直接治療するために、EGFR阻害剤を吸入経路を介して投与した。別の例として、いくつかの実施形態においては、性感染するウイルスであるHPV又はHIVに対して、EGFR阻害剤を局所的に、例えば粘膜組織に、適用した。別の例として、いくつかの実施形態においては、胃腸管系に感染するウイルスに対して、阻害剤を標的(胃腸管)上皮に供給するために経口投与が実施された。いくつかの実施形態においては、例えばウイルスの潜伏期間が長い場合(例えば強い症状が発症する前に感染が生じる場合)及び/又はウイルスが全身性疾患を引き起こす場合には、ウイルス感染を治療するために経口薬が投与される。
【0250】
全身性又は限局性経路を含む、標準的な薬の送達に適した任意の使用可能な標準的な方法及び経路を用いて活性薬剤を宿主に投与することができる。通常、本発明において検討された投与経路には経腸、非経口、又は吸入経路が含まれるが、これらに限定される必要はない。
【0251】
吸入投与以外の非経口の投与経路には、局所的、経皮的、皮下、筋内、眼窩内、嚢内、髄腔内、胸骨内、及び静脈経路、すなわち消化管を介した経路以外のいずれかの経路が含まれるが、これらに限定される必要はない。非経口投与は薬剤の全身性又は限局性送達を遂行するために実施される場合がある。全身性送達が望まれる場合、投与は典型的には、侵襲的又は全身的に吸収される医薬製剤の局所又は粘膜投与を含む。例えばウイルスが気道、肺などに感染するものである場合には、吸入送達経路もまた検討される。
【0252】
薬剤はまた、経腸投与により対象に送達される場合もある。経腸投与経路には経口及び直腸(例えば坐剤を用いた)送達が含まれるが、これらに限定される必要はない。
【0253】
皮膚又は粘膜を介した薬剤の投与方法には好適な医薬製剤の局所的適用、経皮的送達、注入、及び表皮投与が含まれるが、これらに限定される必要はない。
【0254】
治療に適した対象
対象治療方法を必要とする個体には、a)ウイルスに暴露されたが、また感染していない個体;b)ウイルスに感染したが、まだいずれの抗ウイルス薬を用いた治療をも受けていない個体(例えば、感染し、かつ、治療を受けていない個体);c)ウイルスに感染し、EGF−R阻害剤以外の抗ウイルス薬を用いた治療を受け、かつ、EGF−R阻害剤以外の抗ウイルス薬に反応しなかった個体;d)ウイルスに感染し、EGF−R阻害剤以外の抗ウイルス薬を用いた治療を受け、かつ、EGF−R阻害剤以外の抗ウイルス薬に対する耐性を示すようになった個体;並びに、e)ウイルスにまだ感染していないが、感染のリスクのある個体(例えば、感染した個体に暴露された可能性がある又は、暴露されたと推定されることによる;免疫不全の状態にあることによる;など)、例えば一般集団よりも感染するリスクが高い個体;及び感染した場合に合併症を発症する又は重篤な症状を経験するリスクが一般集団よりも高い個体、が含まれる。
【0255】
対象方法を用いた治療に適した個体には例えば、年齢が約1ヶ月〜約6ヶ月、約6ヶ月〜約1才、又は約1才〜約5才のヒトが含まれる。対象方法を用いた治療に適した個体には例えば、年齢が約5才〜約12才、約13才〜約18才、又は約18才〜約25才のヒトが含まれる。対象方法を用いた治療に適した個体には例えば、年齢が約25才〜約50才、約50才〜約75才、又は75才より高齢のヒトが含まれる。
【0256】
いくつかの実施形態においては、対象方法を用いた治療に適した個体は、まだウイルスに感染してはいないが、一般集団よりも感染するリスクが高い個体である。それらの個体には、例えばウイルスに感染した個体に暴露された可能性がある又はウイルスに感染した個体に暴露されたと推定される個体が含まれる。この場合、これらの個体には例えば、医療関係者、軍関係者、囚人、及び少なくとも1人のウイルスに感染した個体を含む集団において生活しているいずれかの個体が含まれる。
【0257】
感染した場合に合併症を発症する又は重篤な症状を経験するリスクが一般集団よりも高い個体には免疫不全の個体が含まれるが、これには限定されない。
【0258】
対象方法を用いた治療に適した個体には例えば、免疫不全のヒトが含まれる。免疫不全個体には、例えば正常よりも低いCD4T細胞数を有する、例えばヒト免疫不全ウイルスに感染した個体が含まれる。ヒトにおけるCD4T細胞数の正常範囲は、血液1mm当たり、約600〜約1500CD4Tリンパ球である。従って、いくつかの実施形態においては、免疫不全個体は血液1mm当たり約600CD4T細胞よりも低いCD4T細胞数を有する。
【0259】
免疫不全個体には癌化学療法剤による治療の結果としての免疫不全個体;及び放射線治療(例えば癌の治療のため)の結果としての免疫不全個体が含まれる。免疫不全個体には、例えば癌、真性糖尿病、リウマチ疾患(例えば全身性エリテマトーデスなど)、免疫グロブリン欠乏性疾患、などの慢性疾患による免疫不全個体が含まれる。免疫不全個体には、移植受容者(例えば肺移植受容者、腎臓移植受容者、骨髄移植受容者など)が含まれる。免疫不全個体には、例えばステロイド、化学療法剤、TNF−α阻害剤などの特定の薬物を摂取した結果としての免疫不全個体が含まれる。
【0260】
対象方法を用いた治療に適した個体には免疫抑制された個体、例えば、移植受容者などを含む、免疫抑制治療を受けている個体が含まれる。移植受容者には、例えば同種移植受容者などが含まれる。免疫抑制治療には、例えばFK506を用いた治療が含まれる。
【0261】
対象方法を用いた治療に適した個体には慢性肺疾患、例えば喘息、COPD、嚢胞性繊維症、肺気腫、慢性気管支炎、間質性肺疾患、気管支炎;サルコイドーシス、特発性肺線維症、気管支拡張症、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、及び急性肺損傷を有する、ウイルスに感染した個体が含まれる。対象方法を用いた治療に適した個体には、肺移植を受けた、ウイルスに感染した個体が含まれる。対象方法を用いた治療に適した個体には、肺併発を伴う慢性疾患を有する個体が含まれ、この場合、それらの疾患には、例えば全身性エリテマトーデス、シェーグレン疾患、関節リウマチ、及び結合組織疾患が含まれる。
【実施例】
【0262】
以下の例は、本発明をどのように作成し使用するかの完全な開示及び記述と共に当業者に提供するために記載され、かつ、発明者らが彼らの発明と見なす範囲を限定するものではなく、また以下の実施例が行われた実施例の全て若しくは行われた実施例のみを示すものではない。用いられた数(例えば量、温度など)に関しては正確性を確保するための努力がなされたが、いくつかの実施例は間違っており、主な原因は偏差である。別段の指定のない限り、部は重量部、分子量は重量平均分子量、温度は摂氏、及び圧はおよそ気圧である。標準的な略語、例えばbp,塩基対;kb,キロベース;pl,ピコリットル;s若しくはsec,秒;min,分;h若しくはhr,時間;aa,アミノ酸;kb,キロベース;bp,塩基対;nt,ヌクレオチド;i.m.,筋内(的に);i.p.,腹腔内(的に);s.c.,皮下(的に);PFU,プラーク形成単位;TCID50,50%組織培養感染量;などが用いられてもよい。
【0263】
実施例1:ライノウイルスにおけるEGF−R阻害剤の効果
ライノウイルス感染におけるEGF−R阻害剤の効果を試験した。第一に、ヒト気道上皮(NCI−H292アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション カタログ番号CRL−1848)細胞をライノウイルス16(感染多重度(MOI)が10の主要グループライノウイルス(RV))又はRV16と10μMの選択的EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(AG1478)とを用いて処理した。感染後6時間目に、これらNCI−H292細胞培養からの細胞溶解物を回収した。気道上皮細胞におけるライノウイルス感染を定量するために、ウイルス感染を測定するために一般に用いられる技術であるウイルスのプラークアッセイにより、細胞溶解物を解析した。次に標準的なプラークアッセイ用に、NCI−H292の細胞溶解物の連続希釈液をヒーラ細胞培養上に乗せた。アガロースを上から被せることにより、細胞培養を覆った。培養物を3日間インキュベートした。3日後、クリスタルバイオレットを用いて細胞培養を染色し、プラーク数を計測した。結果を図1Aに示す。この結果は、EGF−R阻害剤がライノウイルス感染を抑制することができることを示している。図1A;血清を含まない培地のみ(対照、第一のカラム)0 PFU/ml、ライノウイルスのみ(第二のカラム)1ミリリットル当たり、5.7プラーク形成単位(PFU)(PFU/ml)、及びライノウイルスと選択的EGFR阻害剤AG1478(10μM、第三のカラム);n=2。加えて、EGFRに対して中和抗体を添加することにより、ライノウイルス感染が減少した。
【0264】
ライノウイルス16(RV16)感染における、EGF−Rに特異的な抗体の効果もまた評価した。上述したプラークアッセイを用い、NCI−H92細胞をRV16のみで、又はRV16とEGFRに特異的な中和抗体(「EGFRAb」)と共に処理した。結果を図1Bに示す。図1B;血清を含まない培地のみ(対照、第一のカラム)0 PFU/ml、ライノウイルスのみ(第二のカラム)6.33 PFU/ml、及びライノウイルスと抗EGFRAb(4μg/ml、第三のカラム);n=1。
【0265】
図1A及び1Bはプラークアッセイによる、ライノウイルス感染のウイルスの定量を示す。NCI−H292細胞を、(A)選択的EGFR阻害剤AG1478(10μM)及び(B)EGFR中和Ab(4μg/ml)と共に、血清を含まない培地のみ(対照)又はライノウイルス(MOI=10)で24時間感染させた。細胞溶解物を24時間後に回収し、プラークアッセイによってライノウイルス感染を定量した[(A)n=2±SEM;(B)n=1]。
【0266】
ヒーラはライノウイルス感染を評価するために慣習的に用いられている上皮細胞株である。ヒーラ;アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)No.CCL−2。ここで、ヒーラ細胞培養を血清を含まない培地のみ(対照)、又はライノウイルス16(感染多重度(MOI)が10の主要グループRV)を加えた血清を含まない培地であって、選択的EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(AG1478)を含む若しくは含まない培地で処理した。6時間後、培養細胞を回収し、ライノウイルスに選択的に結合するモノクローナル抗体を用いて染色した。細胞をフローサイトメトリーにかけるために処理し、ヒーラ細胞中のライノウイルス感染を測定した。データは3回の独立した実験からの代表例であり、図2に示す。
【0267】
図2に示されたデータは、感染した細胞のパーセンテージとして表されている。対照(RVなし):1%;RV:62%;RV+AG1478(5μM):13%;及びRV+AG1478(10μM):9%。このデータは、EGF−R阻害剤が上皮細胞におけるライノウイルス感染を有意に減少させることを示す。血小板由来成長因子(PDGF)阻害剤(別のチロシンキナーゼ阻害剤)を用いた場合には、いずれの効果も見られなかった。
【0268】
実施例2:EGFR阻害はインフルエンザウイルス感染を抑制する
インフルエンザA/H1N1/PR8(MOI〜1)に感染させたヒト気道上皮(NCI−H292;アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションカタログ番号CRL−1848)細胞株を、8ウェルスライド上で24時間、選択的EGFR阻害剤、AG1478(10μM)を加えて、又はこれを加えずに処理した。24時間後に、インフルエンザA特異的モノクローナル抗体(MAb)(sc−52025、1:50希釈率;Santa Cruz Biotechnology)を用いて、培養細胞を固定し染色した。まず最初に、40xの倍率で画像を取得した。次に、ランダムに選択された8つの視野の画像を20xの倍率で取得し、染色された細胞の数を独立した実験において4回計測した。対照条件(血清を含まない培地のみ)においては、感染した細胞に対する染色は見られなかった。
【0269】
結果を図3に示す。選択的EGFRチロシンキナーゼ阻害剤、AG1478(10μM)を用いて処理したヒト気道上皮(NCI−H292)細胞株においては、24時間目にはインフルエンザA/H1N1/PR8感染が有意に減少したことが見いだされた。AG1478(10μM)を用いて処理したNCI−H292細胞においては、24時間目にインフルエンザA/PR8感染が有意に減少したことが見いだされた。[インフルエンザのみ、316±19細胞対インフルエンザ+AG1478、(10μM)94±49細胞;n=4;p<0.0001]。
【0270】
図3は、インフルエンザA/PR8(MOI〜1)のみ、又は選択的EGFRチロシンキナーゼ阻害剤AG1478(10μM)を添加したインフルエンザA/PR8(MOI〜1)で感染させた気道上皮細胞NCI−H292細胞を示す。24時間後に細胞を固定し、染色して、インフルエンザ陽性の染色された細胞数を計測した[インフルエンザAモノクローナルAb(sc−52025)、1:50希釈率;Santa Cruz Biotechnology;n=4;p<0.0001]。
【0271】
実施例3:EGFR阻害は呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染を抑制する
RSV感染における選択的EGFR阻害剤の効果を試験するために、選択的EGFRチロシンキナーゼ阻害剤AG1478を用いて、又はこれを用いずに処理した上皮ヒーラ細胞における、50%組織培養感染量(TCID50)/100μLによるウイルスの定量を用いた。データを図4A及び4Bに示す。このデータは、AG1478(1μM及び10μM)がRSVウイルス感染を有意に抑制したことを示す。図4A、RSVのみ102.5±1 TCID50対RSVとAG1478(10μM)0 TCID50;n=2。図4B、RSVのみ104.38±0.1 TCID50対RSVとAG1478(1μM)0 TCID50;n=2。
【0272】
図4A及び4Bは、選択的EGFR阻害剤、AG1478を用いて、又はこれを用いずに処理した上皮細胞培養における、50%組織培養感染量(TCID50)/100μLを用いたウイルスの定量を示す[(A)2日目のTCID50/100μL。AG1478(10μM)±SEM(n=2、独立した実験);(B)4日目のTCID50/100μL。AG1478(1μM)±SEM、(n=2、独立した実験)。
【0273】
RSV感染におけるゲフィチニブ(イレッサ;ZD1839;N−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリン−4−イルプロポキシ)キナゾリン−4−アミン)の効果を試験するために、類似の一連の実験を行った。ゲフィチニブ(1及び10μM)はRSVウイルス感染を抑制した。データを図5に示す(RSVのみ101.5 TCID50(第一のカラム)、RSVとゲフィチニブ(1μM)0 TCID50(第二のカラム)、及びRSVとゲフィチニブ(10μM)0 TCID50(第三のカラム);n=1)。
【0274】
図5は、選択的EGFR阻害剤ゲフィチニブを用いて、又はこれを用いずに処理した上皮細胞培養における2日目のウイルスの、50%組織培養感染量(TCID50)/100μLによる定量を示す。RSVのみ(第一のカラム)、RSVとゲフィチニブ(1μM、第二のカラム)、及びRSVとゲフィチニブ(10μM、第三のカラム);n=1。
【0275】
本発明は、その特定の実施形態に関して記載されてきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更が行われてもよく、及び等価物に置き換えられてもよいことが当業者には理解される。加えて、特定の状況、材料、問題の組成物、過程、過程の工程又は工程を、本発明の課題、精神及び範囲に適合させるために、多くの修正が行われてもよい。それら全ての修正は本明細書に添付の請求項の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体におけるウイルス感染を治療する方法であって、前記方法は、効果量の上皮成長因子受容体(EGF−R)アンタゴニストを個体に投与することを含み、前記ウィルス感染は、ピコルナウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、レオウイルス、カリシウイルス、アストロウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、又はパピローマウイルス科のウイルスによって引き起こされる、方法。
【請求項2】
前記個体がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記個体が免疫不全である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記個体が慢性肺疾患を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記慢性肺疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性繊維症、間質性肺疾患、気管支炎、サルコイドーシス、特発性肺線維症、気管支拡張症、急性呼吸促迫症候群、又は急性肺損傷である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記個体の年齢が約1ヶ月から約6ヶ月まで、又は約6ヶ月から約1才までである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記個体の年齢が約1才から約5才まで、または約5才から約12才までである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記個体の年齢が約13才から約19才までである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記個体の年齢が約20才から約30才までである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記個体の年齢が約30才から約50才までである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記個体の年齢が約50才から約75才までである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ウイルス感染がコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エンテロウイルス、又はA型肝炎ウイルスによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ウイルス感染がインフルエンザウイルスによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ウイルス感染がパラミクソウイルス、肺炎ウイルス、メタニューモウイルス、モビリウイルス、ルブラウイルス、又は呼吸器合胞体ウイルスによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ウイルス感染がHCoV−229E、HcoV−OC43(HCoV−OC43)、又はSARS−CoVによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ウイルス感染がヒトアデノウイルスによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ウイルス感染がロタウイルスによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ウイルス感染がノーウォークウイルスによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ウイルス感染がアストロウイルスによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ウイルス感染がレンチウイルスによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ウイルス感染がヘルペスシンプレックスウイルス−1、ヘルペスシンプレックスウイルス−2、水痘帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス−6、エプスタイン・バーウイルス、又はヒトヘルペスウイルス−8によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ウイルス感染がヒトパピローマウイルスによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記EGF−Rアンタゴニストが小分子阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記EGF−RアンタゴニストがEGF−Rチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記EGF−Rアンタゴニストが多重キナーゼ阻害剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記EGF−Rアンタゴニストがキナゾリン又はキナゾリン誘導体である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記EGF−Rアンタゴニストがジアミノフタルイミドである、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記EGF−Rアンタゴニストがチロホスチンである、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記EGF−Rアンタゴニストがピロロピリミジンである、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記EGF−Rアンタゴニストが複素二環化合物である、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記EGF−RアンタゴニストがEGF−Rに特異的な抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記EGF−Rアンタゴニストが細胞中で生産されるEGF−Rのレベルを低下させる抑制性核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記EGF−Rアンタゴニストを全身性経路を介して投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記EGF−Rアンタゴニストを静脈的に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記EGF−Rアンタゴニストを前記個体の呼吸器系に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記EGF−Rアンタゴニストを吸入を介して投与する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記EGF−Rアンタゴニストを経鼻的に投与する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記EGF−Rアンタゴニストを局所的に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記EGF−Rアンタゴニストを皮膚に投与する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記EGF−Rアンタゴニストを眼に投与する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記EGF−Rアンタゴニストを経膣的、直腸的、又は肛門周辺に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記EGF−Rアンタゴニストを経口投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記個体をウイルスに曝露させた後に前記EGF−Rアンタゴニストを投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記投与が前記個体におけるウイルス量を低下させるのに効果的である、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記投与が前記個体における少なくとも1つのウイルス感染症状を改善するのに効果的である、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記少なくとも1つの症状が発熱、下痢、咳、息切れ、又は嘔吐である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記個体に少なくとも1つのさらなる治療薬を投与する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
個体に効果量の上皮成長因子受容体(EGF−R)アンタゴニストを投与する工程を含む、前記個体における呼吸器系ウイルスによって引き起こされる慢性肺疾患の増悪を治療する方法。
【請求項49】
前記呼吸器系ウイルスがライノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、コロナウイルス、又はアデノウイルスである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記慢性肺疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性繊維症、間質性肺疾患、気管支炎、サルコイドーシス、特発性肺線維症、気管支拡張症、又は細気管支炎である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記個体に少なくとも1つのさらなる治療薬を投与する工程をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記少なくとも1つのさらなる治療薬がインターフェロンである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記インターフェロンがインターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、インターフェロン−ラムダ、インターフェロン−タウ、又はインターフェロン−オメガである、請求項52に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−512883(P2012−512883A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542404(P2011−542404)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/068277
【国際公開番号】WO2010/123527
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】