説明

ウェハの金属材料埋込装置及びウェハの金属材料埋込方法

【課題】 容易に貫通穴を埋めることができ、環境負荷を小さくする。
【解決手段】 テーパ状の貫通穴を有するウェハの貫通穴の開口の径が小さい側の主面を把持し、貫通穴の開口の径が大きい側から、貫通穴に球状の金属材料を埋め込むウェハの金属材料埋込装置であって、ウェハの表面を吸引把持する第一の吸引部と、ウェハの貫通穴から金属材料を吸引する第二の吸引部とを有する把持本体部と、第一の吸引部と第二の吸引部とに配管を介して接続される吸引手段と、配管を流れる流体の流量と圧力とを検出する検出手段と、金属材料が吸引されて貫通穴を塞ぐことで変化した流量と圧力の値が所定の値となっているか否かを判定する判定手段と、判定手段によって値が所定の値であると判定された場合に把持本体部で吸引している前記ウェハからはみ出て入る金属材料を所定の加圧平面に押し当てる加圧手段と、を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通穴を金属材料で埋めるウェハの金属材料埋込装置及びウェハの金属材料埋込方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器には電子部品を搭載した電子基板が用いられている。この電子基板には、金属膜からなる導通パターンが形成されており、この導通パターンに半田等でコンデンサ等のチップ部品を接合することで電子基板に電子部品を搭載している。
また、電子部品は、チップ部品の他に、凹部を有する容器に各種素子を搭載して凹部を封止した構造の電子部品が含まれる。この電子部品に用いられる容器体は、ウェハの状態で複数個設けられており、ウェハの状態で容器体となる部分に設けられた各凹部にそれぞれ各種素子が搭載される。
【0003】
ここで、ウェハに設けられる導通パターンは、例えば、外部と電気的・機械的接続をするための外部端子と、水晶振動素子などの素子と導通を取るための搭載パッド及び引き回しパターンとがある。外部端子は、ウェハの一方の主面に設けられる搭載パッド等とは反対側のウェハの主面に設けられるため、貫通穴を介して導通するように構成される(例えば、特許文献1参照)。
このようなウェハの両主面にそれぞれ設けられた導通パターンを電気的に接続するために、電解めっき又は無電解めっきを行って貫通穴を埋めていた。
【0004】
【特許文献1】特開2005−347329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、貫通穴の内部の全てを電解めっきや無電解めっきで埋める場合、貫通穴が埋まるまでに多くの時間を要するため、生産性が悪くなる問題がある。
また、貫通穴を電解めっきや無電解めっきで埋める場合、金属材料が貫通穴内から流れ出てしまうことがあるため、これを防ぐために貫通穴の一方の開口を塞ぐことがある。この場合、貫通穴の一方の開口を塞ぐ工程が余計に増えてしまい、作業が煩雑になるという問題がある。
また、電解めっきや無電解めっきは、薬品を多く使用するため、環境負荷が大きくなるという問題も有る。
【0006】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、容易に貫通穴を埋めることができ、環境負荷が小さくなるウェハの金属材料埋込装置及びウェハの金属材料埋込方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、テーパのついた貫通穴が設けられたウェハの前記貫通穴の開口の径が小さい側の主面を把持し、前記貫通穴の開口の径が大きい側から、前記貫通穴に球状の金属材料を埋め込むウェハの金属材料埋込装置であって、ウェハの表面を吸引把持するための第一の吸引部と、前記ウェハの貫通穴と対向する位置に形成された凹部内に設けられ前記貫通穴から前記金属材料を吸引するための第二の吸引部とを有する把持本体部と、前記第一の吸引部と前記第二の吸引部とに配管を介して接続される吸引手段と、前記配管を流れる流体の流量と圧力とを検出する検出手段と、前記金属材料が吸引されて前記貫通穴を塞ぐことで変化した前記流量と前記圧力の値が所定の値となっているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記値が所定の値であると判定された場合に前記把持本体部で吸引している前記ウェハからはみ出て入る前記金属材料を所定の加圧平面に押し当てる加圧手段と、を備えて構成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記吸引手段が、前記第一の吸引部と前記第二の吸引部とに連通する流路を有するアダプター部に接続した配管と接続され、前記アダプター部が、把持本体部に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記把持本体部が、前記ウェハの主面と平行な方向に超音波振動を与える第一の超音波振動付与手段と、前記ウェハの主面の法線と平行な方向に超音波振動を与える第二の超音波振動付与手段と、を備えて構成されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、板状のウェハに設けられたテーパのついた貫通穴に球状の金属材料を埋め込むウェハの金属材料埋込方法であって、前記ウェハに設けられた前記貫通穴の径の小さい方と対向するように、ウェハの表面を吸引して把持し前記貫通穴の前記開口から吸引を行うウェハ把持工程と、前記金属材料を吸引する金属材料吸引工程と、前記金属材料が吸引されて前記貫通穴を塞ぐことで変化した前記流量と前記圧力の値が所定の値となっているか否かの判定を行う判定工程と、前記判定工程によって前記値が所定の値であると判定された場合に前記ウェハからはみ出ている前記金属材料を加圧して前記貫通穴を埋める金属材料加圧工程と、を備えて構成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記金属材料加圧工程において、前記ウェハの主面と平行な方向に超音波振動が与えられ、かつ、前記ウェハの主面の法線と平行な方向に超音波振動が与えられながら加圧が行われても良い。
【発明の効果】
【0012】
このようなウェハの金属材料埋込装置によれば、ウェハに設けられた貫通穴に金属材料の一部がウェハよりはみ出るように前記金属材料が吸引されており、検出手段および判定手段により貫通穴が塞がれたと判定された場合に、金属材料を加圧して貫通穴内部に圧入することができる。したがって、従来よりも容易に貫通穴に金属材料を埋めることができる。
また、配管がアダプター部と接続されており、このアダプター部が第一の吸引部と第二の吸引部とに接続されているので、吸引手段により吸引が行われると、第一の吸引部と第二の吸引部とから吸引することができる。
また、超音波振動を用いることで、金属材料を貫通穴に埋めやすくすることができる。
【0013】
また、このようなウェハの金属材料埋込方法によれば、ウェハ把持工程で把持しているウェハに対して、金属材料吸引工程により、前記ウェハに設けられた貫通孔に容易に金属材料を入れることができる。また、判定工程と金属材料加圧工程とにより、貫通穴の塞がり状況を把握して金属材料を貫通穴へ圧入するので、金属材料を圧入する作業を容易にすることができる。
また、金属材料加圧工程で超音波振動が付与されるので、金属材料を貫通穴にさらに埋めやすくすることができる。
したがって、薬品を使わずにウェハに設けられた貫通穴を容易に埋めることができるため、環境負荷を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各構成要素について、状態をわかりやすくするために、誇張して図示している。また、各図面において、紙面に対して奥側を「上」、手前側を「下」とする。
【0015】
(第一の実施形態)
図1〜図7に示すように、本発明の実施形態に係るウェハの金属材料埋込装置100は、ウェハ10に設けられた貫通穴11を球状の金属材料20で埋める装置である。
【0016】
まず、本発明の実施形態に係るウェハの金属材料埋込装置100に用いられるウェハ10と金属材料20について説明する。
【0017】
(ウェハ)
図2に示すウェハ10は、ガラス、ガラスセラミック、結晶化ガラス、シリコン(Si)、焼成が完了したセラミックスのいずれかからなり、複数の貫通穴11が設けられている。
なお、このウェハ10は、個片化された部品単位の板状部材であっても良いし、これら板状部材を複数まとめた集合基板であっても良い。なお、説明を判り易くするために、ウェハ10を水晶からなる集合基板として説明する。
【0018】
図2(b)に示す貫通穴11は、例えば、従来周知のフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術により形成される。なお、貫通穴11は、サンドブラスト技術で形成しても良い(図2(a)参照)。説明をわかり易くするために、貫通穴11がサンドブラスト技術で形成された場合について説明する。
この貫通穴11は、貫通穴11の形成を始めた一方の開口の直径が、貫通穴11の形成を終えた他方の開口の直径よりも大きくなっている。言い換えれば、この貫通穴11は、一方の主面側から他方の主面側に向かうにつれて拡径するように、つまり、テーパがつけられて形成されている。
また、貫通穴11の開口の広い側の半径R1は、ウェハ10の厚さをTとしたとき、R1<Tの関係となっているのが好ましい。
このウェハ10は、図2(c)に示すように、形成された貫通穴11を有するウェハ10に下地金属膜Cが蒸着により形成されている。このとき、蒸着により、貫通穴11の内部にも下地金属膜Cが設けられる。
なお、下地金属膜Cには、Cr、Ni、ニクロム、Cu、Au、Ag、Tiなどを用いることができる。
【0019】
(金属材料)
図2(d)に示す金属材料20は、例えば、Au(金)からなる。この金属材料20は、球状に形成されており、貫通穴11に入れられたときに、金属材料20の中心位置がウェハ10の厚みの範囲に位置する大きさで形成されている。つまり、金属材料20の中心位置は、ウェハ10の内部に位置していることとなる。
例えば、貫通穴11の広い開口側の半径R1をAとし、狭い側の開口の半径R2がA/2とした場合、金属材料20の半径R3をA×3/4とすれば、金属材料20の中心位置がウェハ10の内部に位置することとなる。
【0020】
なお、金属材料20は、後述する圧入の前であって貫通穴11に入れられたとき、必ず、一部がウェハ10からはみ出る大きさになっている。
このような大きさで金属材料20を形成するのは、金属材料20の中心位置がウェハ10の厚み内に入っていない場合、金属材料20の容積が貫通穴11の容積より大きくなり、圧入したあと、貫通穴11からはみ出し、ウェハ10を破損させる恐れがある。また、金属材料20の中心位置がウェハ10の厚み内にあったとしてもウェハ10からはみ出る部分がなければ、圧入ができなくなり、金属材料20を変形させて貫通穴11を埋めることができなくなる。
したがって、金属材料20は、前記のとおり、一部がウェハ10からはみ出る大きさであって、中心位置がウェハ10の厚み内にあるように形成するのが良い。
これにより、球状の金属材料が、貫通穴に入れられたときに、金属材料の中心位置がウェハの厚みの範囲にあることにより、貫通穴の側面に確実に密着するので、気密不良をなくすことができる。
【0021】
(ウェハの金属材料埋込装置)
図1に示す本発明の実施形態に係るウェハの金属材料埋込装置100は、把持本体部110、吸引手段120、検出手段130、判定手段140、加圧手段150、アダプター部AD、配管Kとから主に構成されている。
【0022】
図1及び図3に示すように、把持本体部110は、例えば、所定の厚さを有しウェハ10の平面形状と同一の形状となり、第一の吸引部111と第二の吸引部112とを有している。
第一の吸引部111は、ウェハ10の表面を吸引把持する役割を果たす。
例えば、この第一の吸引部111は、ウェハ10と接触する部分であり、ウェハ10の後述する凹部113が設けられていない部分に第一の貫通孔H1が設けられている。
この第一の貫通孔H1に後述する吸引手段120をアダプター部ADと配管Kとを介して接続し吸引することで、第一の吸引部111は、ウェハ10を吸引把持することができる。
【0023】
ここで、第一の吸引部111は、ウェハ10に設けられたテーパのついた貫通穴11の開口の径が小さい側のウェハ10の主面を吸引把持する。
なお、吸引把持及び把持とは、吸引することにより、ウェハ10が第一の吸引部111に密着して離れない状態をいう。
第二の吸引部112は、ウェハ10の貫通穴11と対向する位置に形成された凹部113内に設けられており、ウェハ10の貫通穴11から金属材料20を吸引する役割を果たす。
【0024】
例えば、第二の貫通孔H2は、凹部113の内部における把持本体部110の厚さ部分の長さで設けられている。
第二の吸引部112は、この第二の貫通孔H2に後述する吸引手段120を接続して吸引することで、ウェハ10が第一の吸引部111で吸引把持された状態で、ウェハ10の貫通穴11から金属材料20を吸引することができる(図4参照)。
【0025】
図1及び図3に示すように、吸引手段120は、例えば、吸引ポンプ、真空ポンプ、真空発生器のいずれか1つが用いられ、第一の吸引部111と第二の吸引部112とにアダプター部ADと配管Kとを介して接続される。
この吸引手段120は、例えば、配管Kの一方の端部が取り付けられ、その配管Kの他方の端部にアダプター部ADが取り付けられ、このアダプター部ADが把持本体部110に取り付けられることで接続される。
【0026】
アダプター部ADは、例えば、所定の厚さを有し、把持本体部110の平面形状と同一の形状であって、一方の主面に把持本体部110の全ての第一の吸引部111を囲うように流路となる凹部が形成されている。また、アダプター部ADは、この凹部内であって厚さ方向に貫通した吸引用開口部が設けられている。
これにより、このアダプター部ADは、凹部側を把持本体部110側に向けて把持本体部110に接着剤やボルト等を用いて取り付けることで、把持本体部110の第一の吸引部111と第二の吸引部112とアダプター部ADと配管Kとが連通した状態となる。これにより、吸引手段120は、アダプター部ADと配管Kとを介して第一の吸引部111と第二の吸引部112とに接続することができる。
【0027】
なお、吸引手段120は、例えば、空気などの気体を吸引する。
また、吸引手段120は、吸引を停止する場合、後述する加圧手段150から出力される停止信号、例えば「0001」を入力することにより停止する。
吸引を開始する場合は、判定手段140から出力された吸引開始を意味する信号、例えば、「1000」を入力することで吸引を開始する。
【0028】
検出手段130は、配管Kを流れる流体の流量と圧力を検出する役割を果たす。
この検出手段130は、図1及び図3に示すように、把持本体部110に取り付けられたアダプター部ADと吸引手段120との間に設けられた配管Kに設けられている。検出手段130は、配管K内を流れる流体の流量を測定しつつ、この配管Kの内部の圧力を測定し、測定してデータ化した流量の値とデータ化した圧力の値とを判定手段140に出力する。
【0029】
判定手段140は、金属材料20が吸引されて貫通穴11を塞ぐ(図4参照)ことで変化したデータ化された流量と圧力との値が所定の値となっているか否かを判定する役割を果たす。
図1及び図4に示すように、この判定手段140は、検出手段130とケーブル等で電気的に接続しており、検出手段130から出力されるデータ化した流量の値とデータ化した圧力の値を入力し、所定の値と比較することで貫通穴11が金属材料20で塞がれたか否かを判定する。
【0030】
具体的には、貫通穴11が金属材料20で塞がれたときのデータ化された圧力の値と流量の値とを記憶しており、この値に対して、入力したデータ化された圧力の値と流量の値との値が同じか異なるかを判定する。なお、貫通穴11が金属材料20で塞がれていれば、流量の値は「0」であるため、この値をデータ化して記憶していることとなる。
また、圧力の場合は、吸引手段120の性能により作用可能な圧力の値をデータ化して記憶しているか、又は、実際に測定して得られた圧力の値をデータ化して記憶している。
ここで、貫通穴11が金属材料20で塞がれていると判定した場合は、例えば、「OK」を意味するデータ化された加圧許可信号、例えば、「0000」を加圧手段150に出力する。
【0031】
なお、判定手段140は、流量が「0」の値を示すデータと圧力が「0」の値を示すデータとが所定の時間を経過した後に異なる値を示すデータを入力した場合、吸引手段120を作動させて吸引を開始させることができる。
つまり、この状態は、把持本体部110にウェハ10が吸引把持されていないことを示す。つまり、後述するように、加圧手段150からの停止信号を入力した吸引手段120が吸引を停止している状態となっていることを示す。
このとき、例えば、吸引開始を意味するデータ化された信号、例えば、「1000」を吸引手段120に出力する。
【0032】
加圧手段150は、判定手段140によってデータ化された流量の値とデータ化された圧量の値とが所定の値であると判定された場合に把持本体部110で吸引しているウェハ10からはみ出て入る金属材料20を所定の加圧平面Dに押し当てる役割を果たす。
図5及び図6に示すように、この加圧手段150は、把持本体部110を加圧平面Dまで移動可能に支持しており(図5参照)、判定手段140からの加圧許可信号を入力することで、所定の圧力で把持本体部110を加圧平面Dに押し付けることができる(図6参照)。
【0033】
例えば、加圧手段150は、回転軸CLに対して回転可能に構成されている回転支持部151と、この回転支持部から張り出したアーム部152と、このアーム部を上下方向に移動可能に支持し回転支持部151に設けられるアーム支持部153と、把持本体部110に取り付けられたアダプター部ADを固定するチャック部154とから構成されている。
【0034】
このように構成されることにより、ウェハ10を回転軸CLに対して軌道Lに沿うようにウェハ10を移動させることがでる。これによりウェハ10を加圧平面Dまで移動することができ、この加圧平面Dにウェハ10を押し付けることができる。
なお、入力する加圧許可信号や出力する吸引開始を意味するデータ化された信号は、図中アーム支持部153でなされるよう表現しているが、信号の入出力や、回転支持部151の回転、アーム支持部153の上下移動を行わせる制御部を別途も受けても良い。
【0035】
つまり、金属材料20は、貫通穴11の側面と接触している点を支持点とて、貫通穴11内に金属材料20を構成する金属材料が入り込んでくる。これにより、金属材料20は、貫通穴11の側面に設けられている下地金属膜Cと接合して側面と密着した気密性の高い密着状態となる。
【0036】
なお、加圧手段150は、所定の圧力で把持本体部110を加圧平面Dに押し付けた後、例えば、アンローダーなどの搬送手段やトレーT(図1及び図7参照)などの治具の上方まで移動し、吸引手段120を停止する停止信号、例えば、「0001」を吸引手段120に出力して、吸引手段120を停止させる(図6)。そして、吸引手段120が吸引を停止したことによって吸引把持の状態が解除されることで、ウェハ10を搬送手段やトレーT(図7参照)などに載置する。
このようにして貫通穴11が金属材料20で埋め込まれたウェハ10は、図10に示すように、その両主面に導通パターンPが形成されて、埋め込まれた金属材料20を電気的接続に用いた構造にすることができる。
【0037】
このように、本発明の実施形態に係るウェハの金属材料埋込装置100を構成したので、ウェハ10に設けられたテーパの付いた貫通穴11に入っている金属材料20を容易に圧入することができる。したがって、貫通穴11への金属材料の埋め込みが容易に行えることで、電解めっきや無電解めっきのように薬品を使う必要がなくなり、環境負荷を小さくすることができる。
【0038】
次に、本発明の実施形態に係るウェハの金属材料埋込方法について説明する。
本発明の実施形態に係るウェハの金属材料埋込方法は、ウェハ把持工程、金属材料吸引工程、判定工程、金属材料加圧工程を備えている。
【0039】
(ウェハ把持工程)
ウェハ把持工程は、貫通穴11の径の小さい方のウェハ10の主面と対向するように、ウェハ10の表面を吸引して把持し貫通穴11の開口から吸引を行う工程である(図3及び図4参照)。
例えば、ウェハの金属材料埋込装置100の把持本体部110でウェハ10を吸引把持する。このとき、貫通穴11からも吸引が行われている。
【0040】
(金属材料吸引工程)
金属材料吸引工程は、ウェハ把持工程でウェハ10を把持した状態で金属材料20を吸引する工程である(図4参照)。金属材料20は、吸引状態にある貫通穴11に吸い込まれて貫通穴11を塞ぐように貫通穴11に入り込む。このとき、金属材料20は、一部がウェハ10からはみ出た状態となっている。つまり、ウェハ10の貫通穴11は、テーパが付けられた形状となっている。そのため、金属材料20は、貫通穴11の側面に接触した状態で、貫通穴11内で止まるようになっている。
例えば、トレーT2(図4参照)などに複数の金属材料を載置させておき、このトレーT2に把持本体部110を移動させながら貫通穴11に吸引させて、貫通穴11に金属材料20を入り込ませる。
【0041】
(判定工程)
判定工程は、金属材料20が吸引されて貫通穴11を塞ぐことで変化した流量と圧力の値が所定の値となっているか否かの判定を行う工程である。
例えば、この判定工程では、ウェハの金属材料埋込装置100の検出手段130と判定手段140とで貫通穴11が塞がったかを判定する。
検出手段130で、配管K内を流れる流体の流量を測定しつつ、この配管Kの内部の圧力を測定し、測定したデータ化した流量の値とデータ化した圧力の値とを判定手段140に出力する。判定手段140がデータ化した流量の値とデータ化した圧力の値を入力し、所定の値と比較することで貫通穴11が金属材料20で塞がれたか否かを判定する。これにより、貫通穴11が金属材料20で塞がれたと判定した場合に、金属材料加圧工程を行う。
【0042】
(金属材料加圧工程)
金属材料加圧工程は、判定工程によって値が所定の値であると判定された場合にウェハ10からはみ出ている金属材料20を加圧して貫通穴11を埋める工程である(図5及び図6参照)。
ウェハ10を吸引把持した状態で貫通穴11に入り込んでいる金属材料20を加圧平面Dに押し付けて金属材料20を貫通穴11に圧入する。
【0043】
このように、本発明の実施形態に係るウェハの金属材料埋込方法を構成したので、容易に貫通穴11に金属材料20を埋め込むことができる。これにより、電解めっきや無電解めっきのように薬品を用いることがないので、環境負荷を小さくすることができる。
【0044】
(第二の実施形態)
図8は本発明の第二の実施形態に係るウェハの金属材料埋込装置における把持本体部とウェハとの位置関係を示す概念図である。図9は金属材料を加圧した状態の一例を示す概念図である。
図8及び図9に示すように、本発明の第二の実施形態に係るウェハの金属材料埋込装置200は、金属材料20を加圧する際に超音波振動を印加して、金属材料20を貫通穴11に圧入している点で第一の実施形態と異なる。
本発明の第二の実施形態に係るウェハの金属材料埋込装置200の構成要素である把持本体部110には、第一の超音波振動付与手段211と第二の超音波振動付与手段212が備えられている。
【0045】
第一の超音波振動付与手段211は、ウェハ10の主面と平行な方向に超音波振動を把持本体部110に与える役割を果たす。
なお、第一の超音波振動付与手段211は、図8及び図9にて、把持本体部110の側面に設けられているが、把持本体部110に取り付けられているアダプター部ADの上面に設けても良い。
第二の超音波振動付与手段212は、ウェハ10の主面に対する法線と平行な方向に超音波振動を把持本体部110に与える役割を果たす。
なお、第二の超音波振動付与手段212は、図8及び図9にて、把持本体部110の側面に設けられているが、把持本体部110に取り付けられているアダプター部ADの上面に設けても良い。
したがって、加圧手段150により金属材料20を加圧する際に、加圧と同時に超音波振動を印加する(金属材料加圧工程)ようになっている(図9参照)。
例えば、判定手段140が出力する加圧許可信号を第一の超音波振動付与手段211(図示せず)と第二の超音波振動付与手段212とに入力することで超音波振動を起こさせる。これにより、加圧手段150の加圧と同時に超音波振動を起こさせることができる。このように構成したことにより、金属材料20を貫通穴11に埋め込みやすくすることができる。
【0046】
また、把持本体部110と加圧平面Dとにそれぞれ加熱手段221、222を備えても良い。
加熱手段221、222は、常温から300℃までの範囲で設定が可能となっている。
加熱手段221は、金属材料20を圧入する前に予め把持本体部110を加熱している。同様に、加熱手段222は金属材料20を圧入する前に予め加圧平面Dを加熱している。なお、常温は、例えば20±15℃の範囲とする。これにより、金属材料20が超音波振動で振動しながら加圧されている状態で加熱されるため、ウェハ10の貫通穴11に圧入しやすくすることができる。
【0047】
なお、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、金属材料20の材質は、Auに限定されず、導通パターンと導通可能な金属材料を用いることができる。例えば、Cu、Al、金すず、金ゲルマニウム、はんだボールなどを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るウェハの金属材料埋込装置の一例を示す概念図である。
【図2】(a)はウェハに貫通穴を形成する前の状態の一例を示す概念図であり、(b)はウェハに貫通穴が設けられた状態の一例を示す概念図であり、(c)はウェハに下地金属膜を設けた一例を示す概念図であり、(d)は貫通穴に金属材料を入れた状態の一例を示す概念図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係るウェハの金属材料埋込装置における把持本体部とウェハとの位置関係を示す概念図である。
【図4】金属材料を吸引した状態の一例を示す概念図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係るウェハの金属材料埋込装置における把持本体部と加圧平面との位置関係を示す概念図である。
【図6】金属材料を加圧した状態の一例を示す概念図である。
【図7】貫通穴の埋め込みが完了した一例を示す概念図である。
【図8】本発明の第二の実施形態に係るウェハの金属材料埋込装置における把持本体部とウェハとの位置関係を示す概念図である。
【図9】金属材料を加圧した状態の一例を示す概念図である。
【図10】導通パターンをウェハに設けた状態の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0049】
10 ウェハ
11 貫通穴
20 金属材料
100、200 ウェハの金属材料埋込装置
110 把持本体部
111 第一の吸引部
112 第二の吸引部
113 凹部
120 吸引手段
130 検出手段
140 判定手段
150 加圧手段
211 第一の超音波振動付与手段
212 第二の超音波振動付与手段
AD アダプター部
C 下地金属膜
D 加圧平面
H1 第一の貫通孔
H2 第二の貫通孔
K 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーパのついた貫通穴が設けられたウェハの前記貫通穴の開口の径が小さい側の主面を把持し、前記貫通穴の開口の径が大きい側から、前記貫通穴に球状の金属材料を埋め込むウェハの金属材料埋込装置であって、
ウェハの表面を吸引把持するための第一の吸引部と、前記ウェハの貫通穴と対向する位置に形成された凹部内に設けられ前記貫通穴から前記金属材料を吸引するための第二の吸引部とを有する把持本体部と、
前記第一の吸引部と前記第二の吸引部とに配管を介して接続される吸引手段と、
前記配管を流れる流体の流量と圧力とを検出する検出手段と、
前記金属材料が吸引されて前記貫通穴を塞ぐことで変化した前記流量と前記圧力の値が所定の値となっているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記値が所定の値であると判定された場合に前記把持本体部で吸引している前記ウェハからはみ出て入る前記金属材料を所定の加圧平面に押し当てる加圧手段と、
を備えて構成されることを特徴とするウェハの金属材料埋込装置。
【請求項2】
前記吸引手段が、前記第一の吸引部と前記第二の吸引部とに連通する流路を有するアダプター部に接続した配管と接続され、
前記アダプター部が、把持本体部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のウェハの金属材料埋込装置。
【請求項3】
前記把持本体部が、
前記ウェハの主面と平行な方向に超音波振動を与える第一の超音波振動付与手段と、
前記ウェハの主面の法線と平行な方向に超音波振動を与える第二の超音波振動付与手段と、を備えて構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のウェハの金属材料埋込装置。
【請求項4】
板状のウェハに設けられたテーパのついた貫通穴に球状の金属材料を埋め込むウェハの金属材料埋込方法であって、
前記ウェハに設けられた前記貫通穴の径の小さい方と対向するように、ウェハの表面を吸引して把持し前記貫通穴の前記開口から吸引を行うウェハ把持工程と、
前記金属材料を吸引する金属材料吸引工程と、
前記金属材料が吸引されて前記貫通穴を塞ぐことで変化した前記流量と前記圧力の値が所定の値となっているか否かの判定を行う判定工程と、
前記判定工程によって前記値が所定の値であると判定された場合に前記ウェハからはみ出ている前記金属材料を加圧して前記貫通穴を埋める金属材料加圧工程と、
を備えて構成されることを特徴とするウェハの金属材料埋込方法。
【請求項5】
前記金属材料加圧工程において、
前記ウェハの主面と平行な方向に超音波振動が与えられ、かつ、前記ウェハの主面の法線と平行な方向に超音波振動が与えられながら加圧が行われることを特徴とする請求項4に記載のウェハの金属材料埋込方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−87248(P2010−87248A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254793(P2008−254793)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】