説明

ウエーハの加工条件設定方法

【課題】ストリートに沿って所定位置に2条のレーザー加工溝を形成するウエーハの加工条件設定方法を提供する。
【解決手段】ストリートに沿って2条のレーザー加工溝95を形成するための加工条件を設定する方法であって、ストリートを撮像しストリートの中心L1を検出するストリート検出工程と、検出されたストリートの中心L1の両側に形成すべき2条のレーザー加工溝95の中心間隔を設定する中心間隔設定工程と、加工溝形成工程と、ストリートを撮像手段6によって撮像しストリートに形成された2条のレーザー加工溝95の内側間隔βを計測する内側間隔測定工程と、中心間隔設定工程で設定された2条のレーザー加工溝95の中心間隔をαとし内側間隔測定工程で測定された2条のレーザー加工溝の内側間隔をβとした場合、2条のレーザー加工溝の外側間隔γをγ=2α−βで求める外側間隔演算工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等のウエーハの表面に形成されたストリートに沿って2条のレーザー加工溝を形成する加工条件を設定するためのウエーハの加工条件設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には周知の如く、半導体デバイス製造工程においては、シリコン等の半導体基板の表面に絶縁膜と機能膜が積層された積層体によって複数のIC、LSI等のデバイスをマトリックス状に形成した半導体ウエーハが形成される。このように形成された半導体ウエーハは上記デバイスがストリートと呼ばれる分割予定ラインによって区画されており、このストリートに沿って分割することによって個々のデバイスを製造している。
【0003】
このような半導体ウエーハのストリートに沿った分割は、通常、ダイサーと称されている切削装置によって行われている。この切削装置は、被加工物である半導体ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された半導体ウエーハを切削するための切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる移動手段とを具備している。切削手段は、高速回転せしめられる回転スピンドルと該スピンドルに装着された切削ブレードを含んでいる。切削ブレードは円盤状の基台と該基台の側面外周部に装着された環状の切れ刃からなっており、切れ刃は例えば粒径3μm程度のダイヤモンド砥粒を電鋳によって固定して形成されている。
【0004】
近時においては、IC、LSI等のデバイスの処理能力を向上するために、シリコン等の半導体基板の表面にSiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)と回路を形成する機能膜が積層された積層体によってデバイスを形成せしめた形態の半導体ウエーハが実用化されている。
【0005】
上述したLow−k膜はウエーハの素材と異なるため、切削ブレードによって同時に切削することが困難である。即ち、Low−k膜は雲母のように非常に脆いことから、切削ブレードによりストリートに沿って切削すると、Low−k膜が剥離し、この剥離が回路にまで達しデバイスに致命的な損傷を与えるという問題がある。
【0006】
上記問題を解消するために、半導体ウエーハに形成されたストリートに沿って2条のレーザー加工溝を形成して積層体を分断し、この2条のレーザー加工溝の外側間に切削ブレードを位置付けて切削ブレードと半導体ウエーハを相対移動することにより、半導体ウエーハをストリートに沿って切断するウエーハの分割方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2005−64231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、幅が数十μmのストリートに沿って2条のレーザー加工溝を正確に形成するには、加工条件を精密に設定する必要がある。2条のレーザー加工溝がストリートの所定位置に正確に形成されているか否かは、2条のレーザー加工溝が形成されたストリートを撮像素子(CCD)によって構成された撮像手段によって撮像して確認している。しかるに、半導体基板の表面に形成された個々のデバイスにポリイミド樹脂等が被覆されたウエーハにおいては、ストリートとの間にかなりの段差が生じるため、ストリートを撮像するとストリートにデバイスの影をつくる。この影がストリートに形成された2条のレーザー加工溝の輪郭と重なり、2条のレーザー加工溝の外側を認識することができない。この結果、レーザー加工溝の幅の設定等の加工条件の設定が困難となる。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、ストリートに沿って所定位置に2条のレーザー加工溝を形成する加工条件を設定することができるウエーハの加工条件設定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを加工送り方向に相対的に移動する加工送り手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを加工送り方向と直交する割り出し送り方向に相対的に移動する割り出し送り手段と、該チャックテーブルに保持されたウエーハを撮像する撮像手段とを具備するレーザー加工装置を用い、表面に格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハのストリートに沿って2条のレーザー加工溝を形成するための加工条件を設定するウエーハの加工条件設定方法であって、
該チャックテーブルに保持されたウエーハに形成されたストリートを該撮像手段によって撮像し、ストリートの中心を検出するストリート検出工程と、
該ストリート検出工程によって検出されたストリートの中心の両側に形成すべき2条のレーザー加工溝の中心間隔を設定する中心間隔設定工程と、
該レーザー光線照射手段と該加工送り手段および該割り出し送り手段を作動しストリートの中心の両側に該中心間隔設定工程によって設定された中心間隔で2条のレーザー加工溝を形成する加工溝形成工程と、
該加工溝形成工程が実施されストリートを該撮像手段によって撮像し、ストリートに形成された2条のレーザー加工溝の内側間隔を計測する内側間隔測定工程と、
該中心間隔設定工程で設定された2条のレーザー加工溝の中心間隔をαとし該内側間隔測定工程で測定された2条のレーザー加工溝の内側間隔をβとした場合、2条のレーザー加工溝の外側間隔γをγ=2α−βで求める外側間隔演算工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工条件設定方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるウエーハの加工条件設定方法においては、ウエーハに形成されたデバイスとストリートとの間にかなりの段差があり、ストリートを撮像するとストリートにデバイスの影が形成される場合でも、ストリートに形成された2条のレーザー加工溝の外側間隔を正確に求めることができる。従って、2条のレーザー加工溝の中心間隔が設定されている場合には、照射するレーザー光線の集光スポット径、出力や加工送り速度等の加工条件を調整することにより、ウエーハに形成されたストリートの所定の領域に2条のレーザー加工溝を形成することができる適正な加工条件を設定することができる。また、照射するレーザー光線の集光スポット径、出力や加工送り速度が設定されている場合には、2条のレーザー加工溝の中心間隔を調整することにより、ウエーハに形成されたストリートの所定の領域に2条のレーザー加工溝を形成することができる適正な加工条件を設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明によるウエーハの加工条件設定方法について添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0012】
図1には、本発明によるウエーハの加工条件設定方法を実施するためのレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置1は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記矢印Xで示す方向と直角な矢印Yで示す割り出し送り方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線ユニット支持機構4に矢印Zで示す方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0013】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上に矢印Xで示す加工送り方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上に矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上に矢印Yで示す割り出し送り方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0014】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面に矢印Yで示す割り出し送り方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめられる。
【0015】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル36の加工送り量を検出するための加工送り量検出手段374を備えている。加工送り量検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。この送り量検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示に実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出する。なお、上記加工送り手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。
【0016】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、矢印Yで示す割り出し送り方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられる。
【0017】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の滑動ブロック33の割り出し加工送り量を検出するための割り出し送り量検出手段384を備えている。割り出し送り量検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。この送り量検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示に実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出する。なお、上記第1の割り出し送り手段38の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。
【0018】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す割り出し送り方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面に矢印Zで示す方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ねじロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられる。
【0019】
図示の実施形態のおけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、矢印Zで示す方向に移動可能に支持される。
【0020】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿って矢印Zで示す方向(Z軸方向)に移動させるための移動手段53を具備している。移動手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザビーム照射手段52を案内レール423、423に沿って矢印Zで示す方向(Z軸方向)に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりレーザー光線照射手段52を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザー光線照射手段52を下方に移動するようになっている。
【0021】
図示のレーザー光線照射手段52は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング521を含んでいる。また、レーザー光線照射手段52は、図2に示すようにケーシング521内に配設されたパルスレーザー光線発振手段522および伝送光学系523と、ケーシング521の先端に配設されパルスレーザー光線発振手段522によって発振されたパルスレーザー光線を上記チャックテーブル36に保持された被加工物に照射する集光器524を具備している。上記パルスレーザー光線発振手段522は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器522aと、これに付設された繰り返し周波数設定手段522bとから構成されている。この繰り返し周波数設定手段522bは、後述する制御手段によって制御される。上記伝送光学系523は、ビームスプリッタの如き適宜の光学要素を含んでいる。
【0022】
図1に戻って説明を続けると、上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の先端部には、レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段6が配設されている。この撮像手段6は、撮像素子(CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を制御手段8に送る。
【0023】
制御手段8はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)81と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)82と、後述する被加工物の設計値のデータや演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)83と、カウンター84と、入力インターフェース85および出力インターフェース86とを備えている。制御手段8の入力インターフェース85には、上記加工送り量検出手段374、割り出し送り量検出手段384および撮像手段6等からの検出信号が入力される。そして、制御手段8の出力インターフェース86からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、レーザー光線照射手段52および表示手段80等に制御信号を出力する。なお、上記ランダムアクセスメモリ(RAM)83は、後述する検出値のデータや加工条件のデータを記憶する記憶領域を備えている。
【0024】
次に、上述したレーザー加工装置1によって加工されるウエーハについて、図3および図4を参照して説明する。図3および図4に示す半導体ウエーハ9は、シリコン等の半導体基板90の表面に絶縁膜と回路を形成する機能膜が積層された積層体91によって複数のIC、LSI等のデバイス92がマトリックス状に形成されている。そして、各デバイス92は、格子状に形成されたストリート93によって区画されている。なお、図示の実施形態においては、積層体91を形成する絶縁膜は、SiO膜または、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)からなっている。また、上記個々のデバイス92の表面にはポリイミド樹脂等の樹脂被膜94が被覆されている。
【0025】
上述した半導体ウエーハ9を上記レーザー加工装置1によって加工するには、半導体ウエーハ9を図に示すように環状のフレーム11に装着された保護テープ12に貼着する。このとき、半導体ウエーハ9は、表面9aを上にして裏面側を保護テープ12に貼着する。
【0026】
次に、上述した半導体ウエーハ9のストリート93に沿って後述する切削ブレードの厚さより大きい外側間隔で2条のレーザー加工溝を形成する加工条件を設定するための加工条件設定方法について説明する。
先ず、図5に示すように環状のフレーム11に保護テープ12を介して支持された半導体ウエーハ9を、図1に示すレーザー加工装置1のチャックテーブル36上に保護テープ12側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより半導体ウエーハ9は、保護テープ12を介してチャックテーブル36上に吸引保持される。また、環状のフレーム11は、クランプ362によって固定される。
【0027】
上述したように半導体ウエーハ9を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37の作動により撮像手段6の直下に位置付けられる。チャックテーブル36が撮像手段6の直下に位置付けられると、撮像手段6および制御手段8によって半導体ウエーハ9のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段6および制御手段8は、半導体ウエーハ9の所定方向に形成されているストリート93と、ストリート93に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52の集光器524との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ9に形成されている上記所定方向に対して直角に延びるストリート93に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。なお、上述したアライメントは、ストリート93に特徴点がないため、従来と同様にデバイス92の特徴点をキーパターンとしてストリート93との位置関係を予め制御手段のメモリに記憶させておき、パターンマッチング法によってストリート93を間接的に検出している。
【0028】
以上のようにしてチャックテーブル36上に保持された半導体ウエーハ9に形成されているストリート93を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、ストリート93を撮像手段6によって撮像し、ストリート93の中心を検出するストリート検出工程を実施する。即ち、図6の(a)に示すようにチャックテーブル36を撮像手段6の直下に位置付け、撮像手段6によってチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ9に形成されている所定のストリート93を撮像する。この撮像した画像情報は制御手段8に送られ、図6の(b)に示すように表示手段80に表示される。図6の(b)に示すようにストリート93は実際には幅Bを有しているが、デバイス92との間に段差があるため、ストリート93の両側には影部A1,A1が形成される。このようにストリート93の全幅は確認できないが、影になっていない領域A2に基づいてストリート93の中心L1を検出する。即ち、ストリート93の両側に形成される影部A1,A1は同一であるので、影になっていない領域A2の幅の中心がストリート93の中心L1とみなすことができる。
【0029】
上述したストリート検出工程を実施することにより、ストリート93の中心L1を検出したならば、ストリートの中心の両側に形成すべき2条のレーザー加工溝の中心間隔を設定する中心間隔設定工程を実施する。即ち、図7に示すようにストリート93の中心L1を中心とした2条のレーザー加工溝の中心間隔αを設定する。従って、ストリート93の中心L1の一方の側に中心L1からα/2の位置に第1のレーザー光線照射位置Laが設定され、ストリート93の中心L1の他方の側に中心L1からα/2の位置に第2のレーザー光線照射位置Lbが設定される。これらストリート93の中心L1、に第1のレーザー光線照射位置Laおよび第2のレーザー光線照射位置Lbは、制御手段8のランダムアクセスメモリ(RAM)83に格納する。
【0030】
次に、上記中心間隔設定工程によって設定された中心間隔αで2条のレーザー加工溝を形成するレーザー加工溝形成工程を実施する。このレーザー加工溝形成工程いついて、図8および図9を参照して説明する。
半導体ウエーハ9を保持したチャックテーブル36をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52の集光器524が位置するレーザー光線照射領域に移動し、上記所定のストリート93に設定された第1のレーザー光線照射位置Laを集光器524の直下に位置付ける。このとき、図7の(a)で示すように半導体ウエーハ9は、ストリート93に設定された第1のレーザー光線照射位置Laの一端(図8の(a)において左端)が集光器524の直下に位置するように位置付けられる。次に、レーザー光線照射手段52の集光器524からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル36を図8の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、第1のレーザー光線照射位置Laの他端(図7の(a)において右端)が集光器524の直下位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル36の移動を停止する。このレーザー加工溝形成工程においては、パルスレーザー光線の集光点Pをストリート93の表面付近に合わせる。
【0031】
次に、チャックテーブル36を紙面に垂直な方向(割り出し送り方向)に上記中心間隔α(割り出し送り量)だけ移動し、図8の(b)に示すようにストリート93に設定された第2のレーザー光線照射位置Lbを集光器524の直下に位置付ける。そして、レーザー光線照射手段52の集光器524からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル36を図8の(b)において矢印X2で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめ、第2のレーザー光線照射位置Lbの他端(図8の(a)において左端)が集光器524の直下位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル36の移動を停止する。
【0032】
上述したレーザー加工溝形成工程を実施することにより、半導体ウエーハ9のストリート93には図9に示すように積層体91の厚さより深い第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95bからなる2条のレーザー加工溝が形成される。この第1のレーザー加工溝95aは第1のレーザー光線照射位置Laを中心として形成され、第2のレーザー加工溝95bは第2のレーザー光線照射位置Lbを中心として形成される。従って、第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95bの中心間隔はαである。
【0033】
なお、上記レーザー加工溝形成工程は、例えば以下の加工条件で行われる。
レーザー光線の光源 :YVO4レーザーまたはYAGレーザー
波長 :355nm
出力 :0.4W
繰り返し周波数 :100kHz
集光スポット径 :φ5μm
加工送り速度 :100mm/秒
中心間隔(α) : 20μm
【0034】
上述したレーザー加工溝形成工程を実施したならば、第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95bが形成されたストリート93を撮像手段6によって撮像し、ストリート93に形成された第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95bの内側間隔を計測する内側間隔測定工程を実施する。即ち、チャックテーブル36を撮像手段6の直下に位置付け、撮像手段6によってチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ9の上記第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95bが形成されているストリート93を撮像する。この撮像した画像情報は制御手段8に送られ、図10に示すように表示手段80に表示される。図10に示すようにストリート93に形成された第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95bは影として現れるが、ストリート93とデバイス92との間に段差があるため、ストリート93の両側には影部A1,A1が形成されるので、第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95bの外側を検出することができない。しかるに、第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95bの内側A3は明確に認識することができるので、第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95bの内側間隔βを測定する。
【0035】
次に、上記中心間隔設定工程で設定された2条のレーザー加工溝(第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95b)の中心間隔αと内側間隔測定工程で測定された2条のレーザー加工溝(第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95b)の内側間隔βに基づいて2条のレーザー加工溝の外側間隔を求める外側間隔演算工程を実施する。即ち、第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95bは図11に示すようにそれぞれ第1のレーザー光線照射位置Laと第2のレーザー光線照射位置Lbを中心として左右対称に形成されるので、制御手段8は、第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95bの中心間隔αと内側間隔βに基づいて外側間隔γを、γ=2α−βで求めることができる。なお、第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95bの幅は照射するレーザー光線の集光スポット径、出力や加工送り速度等の加工条件によって変化するため、第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95bの内側間隔βおよび外側間隔γも加工条件によって変化する。
【0036】
以上のようにして求められた外側間隔γは、図12に示すように切削ブレード10の厚さCより広く、ストリート93の幅Bより狭い範囲で形成されている必要がある。即ち、外側間隔γが切削ブレード10の厚さCより狭いと第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95bを形成したことによる機能が達成されず、外側間隔γがストリート93の幅Bより広いとレーザー加工溝がデバイス92に達してデバイスの品質を低下させる虞れがある。従って、上記のようにして求めた第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95bの外側間隔γに基づいて、照射するレーザー光線の集光スポット径、出力や加工送り速度、或いは2条のレーザー加工溝(第1のレーザー加工溝95aと第2のレーザー加工溝95b)の中心間隔α等の加工条件を調整し、適正な加工条件を設定する。このようにして設定された加工条件は、制御手段8のランダムアクセスメモリ(RAM)83に格納する。そして、設定された加工条件に従って、上述したレーザー加工溝形成工程を実施することにより、半導体ウエーハ9のストリート93に沿って2条のレーザー加工溝を所定の領域に確実に形成することができる。2条のレーザー加工溝の外側間に切削ブレードを位置付けて、半導体ウエーハ9をストリート93に沿って切削する際に、切削ブレードの案内を良好にするために2条のレーザー加工溝に間にレーザー加工溝を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明によるウエーハの加工条件設定方法を実施するためのレーザー加工装置の斜視図
【図2】図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段の構成を簡略に示すブロック図。
【図3】本発明によるウエーハの加工条件設定方法に用いるウエーハとしての半導体ウエーハを示す斜視図。
【図4】図3に示す半導体ウエーハの断面拡大図。
【図5】図3に示す半導体ウエーハが環状のフレームに保護テープを介して支持された状態を示す斜視図。
【図6】本発明によるウエーハの加工条件設定方法におけるストリート検出工程の説明図。
【図7】本発明によるウエーハの加工条件設定方法における中心間隔設定工程の説明図。
【図8】本発明によるウエーハの加工条件設定方法におけるレーザー加工溝形成工程の説明図。
【図9】本発明によるウエーハの加工条件設定方法における内側間隔測定工程の説明図。
【図10】本発明によるウエーハの加工条件設定方法における外側間隔演算工程の説明図。
【図11】本発明によるウエーハの加工条件設定方法におけるレーザー加工溝形成工程が実施されたウエーハの断面拡大図。
【図12】本発明によるウエーハの加工条件設定方法におけるレーザー加工溝形成工程によって形成された2条のレーザー加工溝と切削ブレードとの関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0038】
1:レーザー加工装置
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
38:第1の割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
43:第2の割り出し送り手段
5:レーザー光線照射ユニット
52:レーザー光線照射手段
6:撮像手段
8:制御手段
9:半導体ウエーハ
90:半導体基板
91:積層体
92:デバイス
93:ストリート
94:樹脂被膜
95a:第1のレーザー加工溝
95b:第2のレーザー加工溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを加工送り方向に相対的に移動する加工送り手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを加工送り方向と直交する割り出し送り方向に相対的に移動する割り出し送り手段と、該チャックテーブルに保持されたウエーハを撮像する撮像手段とを具備するレーザー加工装置を用い、表面に格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハのストリートに沿って2条のレーザー加工溝を形成するための加工条件を設定するウエーハの加工条件設定方法であって、
該チャックテーブルに保持されたウエーハに形成されたストリートを該撮像手段によって撮像し、ストリートの中心を検出するストリート検出工程と、
該ストリート検出工程によって検出されたストリートの中心の両側に形成すべき2条のレーザー加工溝の中心間隔を設定する中心間隔設定工程と、
該レーザー光線照射手段と該加工送り手段および該割り出し送り手段を作動しストリートの中心の両側に該中心間隔設定工程によって設定された中心間隔で2条のレーザー加工溝を形成する加工溝形成工程と、
該加工溝形成工程が実施されストリートを該撮像手段によって撮像し、ストリートに形成された2条のレーザー加工溝の内側間隔を計測する内側間隔測定工程と、
該中心間隔設定工程で設定された2条のレーザー加工溝の中心間隔をαとし該内側間隔測定工程で測定された2条のレーザー加工溝の内側間隔をβとした場合、2条のレーザー加工溝の外側間隔γをγ=2α−βで求める外側間隔演算工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工条件設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−4822(P2008−4822A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174040(P2006−174040)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】