説明

ウレタン基材を含む積層成形品における端末処理方法

【課題】ウレタン基材を含む積層成形品における端末処理方法において、端材を発生させることなく、工程数を短縮化することで加工コストを低減させる。
【解決手段】成形天井10は、半硬質ウレタン21の両面にガラス繊維マット22を積層したウレタン基材20の表面に表皮30、裏面に裏面不織布31を積層一体化して構成されており、サンルーフ用開口11周縁部の巻き込み条片40の端末処理方法としては、半硬質ウレタン21の溶融温度(200〜300℃)に着目し、裏面不織布31の融点とラップする最適温度域(ポリエステル繊維不織布の場合260〜300℃)の熱風を巻き込み条片40の裏面に吹き付け、半硬質ウレタン21を軟化させるとともに、裏面不織布31を溶融させ、その後、巻き込みユニット80における巻き込み駒81の動作により巻き込み条片40の巻き込み処理を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の成形天井等に好適なウレタン基材を含む積層成形品における端末処理方法に係り、特に、端材の発生をなくし、かつ作業効率を高めたウレタン基材を含む積層成形品における端末処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図13は、車両のルーフパネルの室内面側に装着される成形天井1を示す正面図であり、図14は、成形天井1の構成を示す断面図である。図面において、成形天井1は、図示しないルーフパネルの室内面側を覆う寸法並びに形状に設定されており、中央よりややフロント側にサンルーフ用開口1aが開設されているとともに、図示しないサンバイザやアシストグリップを収納できるように、サンバイザ収納凹部1b、アシストグリップ収納凹部1cがそれぞれ形成されている。
【0003】
ところで、近時、成形天井1の素材として、軽量で剛性が高く、しかも、耐熱性に優れたウレタン基材2を使用することが注目されている。上記ウレタン基材2としては、図14に示すように、半硬質ウレタン2aの両面にガラス繊維マット2bが積層一体化された構成であり、このウレタン基材2の表面にクロスや熱可塑性樹脂シート等の単一シート、あるいはこれらの単一シートの裏面にクッション層を裏打ちした積層シート材料等からなる表皮3が貼付され、ウレタン基材2の裏面には、ポリエステル繊維不織布等の裏面不織布4が裏打ちされた積層構造体が一般的に使用されている。
【0004】
上記成形天井1を成形するには、図示はしないがホットプレス成形金型内にウレタン基材2並びに表皮3、裏面不織布4をそれぞれセットし、ホットプレス成形することで、なだらかなR形状をもつように成形天井1が所要形状に成形される。そして、成形後に製品周縁に沿うトリムカット処理やサンルーフ用開口1aのカット処理がレーザーカット加工により施される。更に、サンルーフ用開口1aについては、開口周縁部に設けた巻き込みシロ5をウレタン基材2側に巻き込み処理することで端末処理が行なわれている。
【0005】
以下、図15乃至図18に基づいて、巻き込みシロ5の端末処理工程を簡単に説明する。まず、図15に示すように、巻き込みシロ5の根元部分に沿うライン上にウレタン基材2に対してカット用回転盤6を当てていき、図16に示すように、ウレタン基材2の端材2cをカット除去して、表皮3のみから構成される巻き込みシロ5を形成する。
【0006】
その後、図17に示すように、巻き込みシロ5の折り返し部位にあたるウレタン基材2に対してスプレーガン7を使用して、ホットメルト8を塗布する。次いで、図18に示すように、矢印方向に端末処理用治具9を操作することで巻き込みシロ5を折り返し、ホットメルト8を介して巻き込みシロ5をウレタン基材2の裏面側に接着固定する。
【0007】
尚、ウレタン基材2を使用した成形天井1の積層構造については、特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−53758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来では、ウレタン基材2を使用した成形天井1は、ウレタン基材2自体が熱硬化性樹脂材料であるため、ホットプレス成形により所要形状に成形している。更に、成形天井1の製品周縁、あるいはサンルーフ用開口1a周縁に沿う巻き込み処理については、熱可塑性樹脂基材のように、表皮と一体に加熱軟化処理することができないため、従来では、巻き込みシロ5については、ウレタン基材2の端材2cをカット用回転盤6によりカット除去して、表皮3のみからなる巻き込みシロ5を形成し、次いで、ホットメルト8をウレタン基材2の裏面に塗布した後、端末処理用治具9を可動操作して、上記巻き込みシロ5の巻き込み処理を行なっている。従って、加工工数が多く、コストアップを招来する大きな要因となっている。更に、ウレタン基材2の端材2cが発生するため、材料の無駄が多く、また、この端材2cの回収作業が煩わしく、このことも加工コストを引き上げる要因となっている。
【0010】
加えて、周縁部に沿っては可撓性をもつ巻き込みシロ5を巻き込み処理するだけであるため、製品周縁やサンルーフ用開口1aの周縁については剛性がそれほど強固でないため、波打ち変形等が生じ易く、外観性能を低下させるという問題点も同時に指摘されている。
【0011】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、成形天井等に好適なウレタン基材を含む積層成形品における端末処理方法であって、処理工数が少なく、しかも、端材の発生も抑え、省資源化が図れるとともに、周縁部分の剛性も強化でき、周縁部分の外観性能を高めることができるウレタン基材を含む積層成形品における端末処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明者等は、発泡ウレタン素材の中で、特に半硬質ウレタンが200〜300℃の間で溶融することに着目し、熱可塑性樹脂芯材に適用していた端末処理工法を援用することで本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、半硬質ウレタンの両面にガラス繊維マットを積層配置したウレタン基材の表面に表皮、裏面に裏面不織布を重ね合わせて熱圧成形して積層成形品を所要形状に成形した後、この積層成形品の製品周縁、あるいは開口周縁部に沿う巻き込み条片をウレタン基材の裏面側に巻き込み固着するウレタン基材を含む積層成形品における端末処理方法において、前記積層成形品を熱圧成形した後、端末処理装置にこの積層成形品を位置決めし、積層成形品の製品周縁、あるいは開口周縁部に沿って設けられた巻き込み条片の裏面側に対して、端末処理装置の熱風ノズルから半硬質ウレタンの溶融温度域である200〜300℃の範囲内であって、裏面不織布の融点を含む最適温度範囲内に設定した熱風を吹き付け、巻き込み条片における半硬質ウレタンを加熱軟化させ、裏面不織布を溶融させた後、巻き込み条片を巻き込みユニットの巻き込み駒の動作によりウレタン基材の裏面側に巻き込み固着することを特徴とする。
【0014】
ここで、積層成形品の構成としては、ウレタン基材を使用することが必須であり、特に、硬質ウレタン、半硬質ウレタン、軟質ウレタンのうち、融点の関係上、半硬質ウレタンを必須構成とする。そして、半硬質ウレタンの両面は、ガラス繊維マットを積層配置してウレタン基材を構成するとともに、このウレタン基材の表面側には、クロス、不織布、合成樹脂シート、あるいはこれらのシートの裏面にポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリプロピレンフォーム等のクッション層を裏打ちした積層シート材料から選択した表皮が貼付される。また、ウレタン基材の裏面には、裏面不織布(例えば、耐熱性等からポリエステル繊維不織布が最適である)を積層するのが好ましい。
【0015】
そして、半硬質ウレタンの両面にガラス繊維マットを積層配置してウレタン基材を構成し、このウレタン基材の表裏面にそれぞれ接着シートを介して表皮並びに裏面不織布を重ね合わせてホットプレス成形金型内にセットした後、型締めし、熱圧成形することで、所望形状の積層成形品を成形することができる。
【0016】
更に、上記積層成形品の用途としては、車両のルーフパネルの室内面側に装着される成形天井をはじめ、各種車体パネルの室内面側に装着される内装トリムに適用することができる。
【0017】
ところで、本発明方法は、ウレタン基材を含む積層成形品を成形した後、製品周縁、あるいは開口周縁部に沿って施される端末処理方法に特徴がある。更に、この端末処理方法に使用する端末処理装置としては、成形後の積層成形体を載置する受け台と、積層成形品の製品周縁、あるいは開口周縁部に設定された巻き込み条片を巻き込み処理する巻き込みユニットと、巻き込み条片を加熱軟化させる熱風ノズルとから構成されている。特に、熱風ノズルから供給される熱風温度は、半硬質ウレタンの溶融温度である200〜300℃の範囲内であって、しかも裏面不織布の融点を含む温度域に設定されていることが重要である。例えば、裏面不織布としてポリエステル繊維不織布を使用した場合、ポリエステル繊維不織布の融点が260〜400℃であるため、熱風ノズルから供給される熱風温度域は260〜300℃の範囲に設定される。
【0018】
従って、受け台に積層成形品をセットした後、積層成形品の製品周縁、あるいは開口周縁部に設けられた巻き込み条片の裏面側に対して熱風ノズルから最適温度(裏面不織布がポリエステル繊維不織布の場合は260〜300℃)の熱風を吹き付けることで、巻き込み条片における半硬質ウレタンを軟化させ、かつ裏面不織布を溶融させることができ、巻き込みユニットにおける巻き込み駒の動作により、巻き込み条片をウレタン基材の裏面に巻き込み、溶融状の裏面不織布を介して巻き込み条片をウレタン基材側に接着させることができる。
【0019】
以上の構成から明らかなように、本発明に係るウレタン基材を含む積層成形品における端末処理方法は、積層成形品の製品周縁、あるいは開口周縁部に設定されている巻き込み条片の裏面側に対して熱風ノズルから最適温度の熱風を吹き付け、裏面不織布を溶融させるとともに、半硬質ウレタンを加熱軟化させた後、ウレタン基材の裏面に巻き込み接着するというものであるから、従来のウレタン基材を使用した端末処理方法のように、ウレタン基材をカット除去して、表皮のみの巻き込みシロを作成した後、ホットメルトを塗布し、ハンド作業で巻き込みシロを巻き込み処理するという面倒な作業工程を廃止でき、工程数も大幅に短縮することができる。
【0020】
また、本発明方法によれば、端材が発生することがなく、端材の回収作業も不要とでき、資源の有効利用が図れるとともに、ウレタン基材からなる巻き込み条片を巻き込み処理することで周縁部の剛性を強化でき、波打ち変形等を有効に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明した通り、本発明に係るウレタン基材を含む積層成形品における端末処理方法は、成形後の積層成形品の製品周縁、あるいは開口周縁部に設けた巻き込み条片の裏面側に熱風ノズルから半硬質ウレタンを軟化させる最適温度の熱風を吹き付け、半硬質ウレタンを軟化させる一方、裏面不織布を溶融させた後、巻き込みユニットの動作によりウレタン基材の裏面側に巻き込み条片を巻き込み処理するというものであるから、端末処理工数を短縮化でき、加工コストを低減させることができるという効果を有する。
【0022】
また、端材が生じることがなく、端材の回収作業を廃止できるとともに、資源の有効利用を図ることができる一方、製品周縁、あるいは開口周縁部に沿って巻き込み条片を巻き込み処理することで、剛性が大幅に強化され、製品周縁、あるいは開口周縁部に波打ち変形等が生じる恐れがなく、外観意匠性を良好に維持できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明方法を適用して製作された成形天井を室内側から見た正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図であり、成形天井の構成を示す断面図である。
【図3】図1に示す成形天井をパネル側から見た正面図である。
【図4】図1に示す成形天井の成形方法におけるホットプレス成形金型内への材料のセット工程を示す説明図である。
【図5】図1に示す成形天井の成形方法におけるホットプレス成形工程を示す説明図である。
【図6】図1に示す成形天井の成形後におけるカット処理を示す説明図である。
【図7】本発明方法に使用する端末処理装置の構成を示す説明図である。
【図8】本発明方法に使用する熱風ノズルから供給する熱風の温度範囲を示す説明図である。
【図9】本発明に係る端末処理方法における熱風ノズルによる巻き込み条片の加熱軟化工程を示す説明図である。
【図10】図9に示す加熱軟化工程での半硬質ウレタンの軟化状態及び裏面不織布の溶融状態を示す説明図である。
【図11】本発明に係る端末処理方法における巻き込み条片の処理工程を示す説明図である。
【図12】本発明に係る端末処理方法における巻き込み条片の処理工程を示す説明図である。
【図13】従来の成形天井を室内側から見た正面図である。
【図14】図13中XIV −XIV 線断面図であり、従来の成形天井の構成を示す断面図である。
【図15】従来の成形天井の端末処理方法におけるウレタン基材の切断工程を示す説明図である。
【図16】従来の成形天井の端末処理方法におけるウレタン基材の端材を除去して巻き込みシロを形成する工程を示す説明図である。
【図17】従来の成形天井の端末処理方法におけるホットメルトの塗布工程を示す説明図である。
【図18】従来の成形天井の端末処理方法における巻き込みシロの巻き込み処理工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るウレタン基材を含む積層成形品における端末処理方法の好適な実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例】
【0025】
図1乃至図12は本発明の一実施例を示すもので、図1は本発明方法の適用対象である成形天井を室内側から見た正面図、図2は同成形天井の構成を示す断面図、図3は同成形天井におけるサンルーフ用開口の周縁端末部を示す説明図、図4,図5は同成形天井の成形方法の概要を示す各説明図、図6は同成形天井のサンルーフ用開口を開設する工程を示す説明図、図7は本発明方法に使用する端末処理装置の概略構成を示す説明図、図8は端末処理装置における熱風ノズルの温度範囲域を示す説明図、図9乃至図12は本発明に係る端末処理方法の各工程を示す説明図である。
【0026】
図1,図2において、本発明方法を適用する成形天井の構成について説明する。成形天井10は、保形性並びにルーフパネルに対する取付剛性を備えるとともに、軽量で耐衝撃吸収性能にも優れたウレタン基材20の表面に手触り感並びに外観性能に優れた表皮30を貼付して構成されるとともに、ウレタン基材20の裏面には、擦れ音等の低級音を防止するために裏面不織布31が貼付された積層構造体から構成されている。
【0027】
更に、成形天井10は、ほぼ中央からフロント側にかけて広い占有面積をもつサンルーフ用開口11が略四角形状に開設されており、フロント縁部の左右側には、図示しないサンバイザを収納するサンバイザ収納凹部12が凹設されるとともに、助手席側乗員及び後席乗員用のアシストグリップを収納するアシストグリップ収納凹部13がそれぞれ設けられている。
【0028】
更に詳しくは、成形天井10におけるウレタン基材20としては、本実施例では、半硬質ウレタン21の両面に、ガラス繊維マット22を積層して構成されている。また、表皮30の素材としては、トリコット、ジャージ、モケット、ニット等のクロスシート、あるいは不織布シート、熱可塑性樹脂シートを使用することができる。また、所望ならば、上述した単一シートの裏面にクッション層を裏打ちした積層シート材料を使用することもできる。更に、裏面不織布31としては、耐熱性に優れ、コストも廉価なことから、ポリエステル繊維不織布が好ましい。尚、ウレタン基材20として、本発明で使用する半硬質ウレタン21を得るには、ポリオール成分とイソシアネート成分の組成比を100:150の割合でウレタン結合させれば良い。尚、ポリオール成分とイソシアネート成分の組成比を、例えば、ポリオール成分:イソシアネート成分の組成比を100:50にすれば軟質ウレタンが生成され、ポリオール成分:イソシアネート成分の組成比を100:200に設定すれば硬質ウレタンが生成される。
【0029】
そして、本発明では、ウレタン基材20として、半硬質ウレタン21を使用して、半硬質ウレタン21の溶融温度域が200〜300℃であることに着目して、端末処理を簡単かつ美麗に行なうことが特徴である。本発明の端末処理として、図2,図3に示すように、サンルーフ用開口11の周縁部に巻き込み条片40が設定されており、この巻き込み条片40がウレタン基材20の裏面側に巻き込み固着されている。尚、この巻き込み条片40は、ウレタン基材20、表皮30、裏面不織布31を積層一体化した構成であることから、剛性にも優れ、サンルーフ用開口11周縁の剛性が強化でき、長期使用によっても波打ち変形等が生じることがなく、シャープな形状を長期に亘り確保でき、外観性能を良好に維持することができる。
【0030】
本発明は、この実施例では成形天井10におけるサンルーフ用開口11周縁部における端末処理方法に適用したが、成形天井10の外周縁に適用することもできる。次いで、成形天井10の成形方法について参考までに図4,図5を基に説明する。まず、図4で素材のセット工程、図5でプレス工程、図6でトリムカット工程がそれぞれ示されている。図面において、ホットプレス成形用金型50は、プレス上型51とプレス下型52とから構成され、昇降シリンダ53によりプレス上型51が所定ストローク上下動可能に設けられている。そして、図4に示すように、プレス上下型51,52が型開き状態にある時、ウレタン基材20の素材である半硬質ウレタン21の両面にガラス繊維マット22を積層したものを配置し、その上下面にそれぞれ表皮30、裏面不織布31を積層配置する。尚、ウレタン基材20と表皮30との間並びにウレタン基材20と裏面不織布31との間にはそれぞれ接着性シート(図示せず)が介挿されている。
【0031】
そして、図5に示すように、昇降シリンダ53によりプレス上型51が所定ストローク下降して、プレス上下型51,52で素材が所要形状に熱圧成形され、ウレタン基材20の表裏面に表皮30、裏面不織布31が一体化される。
【0032】
次いで、ホットプレス成形用金型50が型開きした後、半成形品を型外に取り出し、レーザーカット装置(図示せず)により、製品形状に沿うトリムカット処理を行なうとともに、サンルーフ用開口11についても、カット処理を行なう。そして、図6に示すように、サンルーフ用開口11の周縁について起立状に設定された巻き込み条片40を図6中矢印で示す方向に巻き込み処理して、サンルーフ用開口11周縁部の端末処理が実施されるが、この端末処理方法を実施するには、図7に示す端末処理装置60が使用される。
【0033】
図7において、端末処理装置60は、成形天井10をセットする受け台70と、サンルーフ用開口11周縁に設けられた巻き込み条片40を巻き込み処理する巻き込みユニット80と、巻き込み条片40を加熱軟化させる熱風ノズル90とから大略構成されている。また、好ましくは、熱風ノズル90からの熱風の影響が他の部位への悪影響を遮断するために、受け台70に遮熱板71を付設するのが良い。尚、遮熱板71は駆動シリンダ72により進退操作される。
【0034】
更に詳しくは、巻き込みユニット80については、実際にウレタン基材20の裏面に沿って巻き込み条片40を添わせる巻き込み駒81と、この巻き込み駒81を駆動させる進退動作用シリンダ82、並びに上下動作用シリンダ83とから構成されている。すなわち、進退動作用シリンダ82のピストンロッド82aに巻き込み駒81が支持されており、進退動作用シリンダ82の支持テーブル82bの下面に上下動作用シリンダ83のピストンロッド83aの先端が取り付けられている。
【0035】
従って、進退動作用シリンダ82の駆動により、巻き込み駒81は、前後方向(A矢印方向)にスライド動作するとともに、上下動作用シリンダ83の駆動により、上下方向(B矢印方向)に動作する。また、熱風ノズル90については、熱風の供給源であるブロワ及びヒーターを備えた熱風供給機構(図示せず)と接続しており、熱風ノズル90先端のノズル口90aから最適温度に調整された熱風が吹き付けられる。この熱風ノズル90のノズル口90aから吹きつけられる熱風温度の制御については、図8に示すように、半硬質ウレタン21の軟化温度が200〜300℃であり、かつ裏面不織布31を構成するポリエステル繊維不織布の溶融温度が260〜400℃であり、両者のラップする温度が260〜300℃であることに着目して、本実施例における熱風温度は260〜300℃に設定されることが必須条件となる。尚、裏面不織布31の素材にポリエステル繊維不織布以外の材質を使用すれば、200〜300℃の範囲内で熱風温度を260℃以下に制御することも可能である。但し、耐熱性、コスト等を考慮すれば、裏面不織布31としてポリエステル繊維不織布を使用して、熱風ノズル90からの熱風温度を260〜300℃に調整するのが実際的である。
【0036】
次いで、図9乃至図12に基づいて、成形天井10におけるサンルーフ用開口11周縁部の巻き込み条片40の端末処理方法について詳細に説明する。まず、図9に示すように、受け台70に成形天井10をセットした後、成形天井10におけるサンルーフ用開口11周縁に設けられた巻き込み条片40に対して熱風ノズル90を近接させてノズル口90aから260〜300℃の温度域に調整された熱風を吹き付ける。この時、遮熱板71により熱風ノズル90からの熱風の影響は、巻き込み条片40に集中してそれ以外の部位には悪影響を及ぼさないようになっている。
【0037】
従って、熱風ノズル90を通じて260〜300℃の温度域の熱風が吹き付けられることで、図10に示すように、ウレタン基材20の半硬質ウレタン21が軟化するとともに、裏面不織布31が溶融状態となる。この時、半硬質ウレタン21が軟化することにより、以下の巻き込み工程で半硬質ウレタン21の両面に積層したガラス繊維マット22には左右方向(図10中矢印方向)にズレが生じるため、ガラス繊維マット22に悪影響を及ぼすことがない。
【0038】
そして、巻き込み条片40が加熱処理されれば、熱風ノズル90は上方に退避し、図11に示すように、巻き込みユニット80における進退動作用シリンダ82が動作して、巻き込み駒81が前進することで、加熱軟化処理された巻き込み条片40は起立位置から所定角度倒れ込む。この時、遮熱板71により巻き込み条片40を支持するようにしても良い。
【0039】
その後、図12に示すように、巻き込みユニット80における上下動作用シリンダ83の駆動、すなわち、上下動作用シリンダ83の収縮動作により、巻き込み駒81がウレタン基材20の裏面形状に沿ってスライド動作して、巻き込み条片40をウレタン基材20の裏面形状に沿って追随させ、溶融状の裏面不織布31の接着作用で巻き込み条片40を接着固定することで、巻き込み条片40の巻き込み処理が完了する。
【0040】
以上説明した通り、本発明に係る巻き込み条片40の端末処理方法は、巻き込み条片40の裏面側を熱風ノズル90から最適温度(260〜300℃)の熱風を吹き付け、半硬質ウレタン21を加熱軟化処理するとともに、裏面不織布31を溶融させた後、巻き込みユニット80における巻き込み駒81によりウレタン基材20の裏面に沿って巻き込み条片40を巻き込み処理するというものであるから、端末処理に要する工程数を大幅に短縮化できるとともに、周縁部分はウレタン基材20の二重構造となるため剛性が強化され、長期使用によっても波打ち変形等が生じることがなく、シャープな形状を保障でき、外観性能に優れ、かつ端材も発生することがなく、省資源化にも貢献することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の実施例では、成形天井10のサンルーフ用開口11周縁部に沿う巻き込み条片40の端末処理について適用したが、成形天井10の製品周縁部に適用することもできるとともに、成形天井10以外のウレタン基材20を使用した積層成形品全般に適用することができる。更に、端末処理装置60における巻き込みユニット80の構成として、実施例では、進退動作用シリンダ82、上下動作用シリンダ83により進退方向及び上下方向に巻き込み駒81を駆動させたが、巻き込みユニット80の駆動手段をシリンダ駆動以外の、例えば、送りカム機構に変更することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 成形天井
11 サンルーフ用開口
20 ウレタン基材
21 半硬質ウレタン
22 ガラス繊維マット
30 表皮
31 裏面不織布
40 巻き込み条片
50 ホットプレス成形用金型
51 プレス上型
52 プレス下型
53 昇降シリンダ
60 端末処理装置
70 受け台
71 遮熱板
72 駆動シリンダ
80 巻き込みユニット
81 巻き込み駒
82 進退動作用シリンダ
83 上下動作用シリンダ
90 熱風ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半硬質ウレタン(21)の両面にガラス繊維マット(22)を積層配置したウレタン基材(20)の表面に表皮(30)、裏面に裏面不織布(31)を重ね合わせて熱圧成形して積層成形品(10)を所要形状に成形した後、この積層成形品(10)の製品周縁、あるいは開口周縁部に沿う巻き込み条片(40)をウレタン基材(20)の裏面側に巻き込み固着するウレタン基材(20)を含む積層成形品(10)における端末処理方法において、
前記積層成形品(10)を熱圧成形した後、端末処理装置(60)にこの積層成形品(10)を位置決めし、積層成形品(10)の製品周縁、あるいは開口周縁部に沿って設けられた巻き込み条片(40)の裏面側に対して、端末処理装置(60)の熱風ノズル(90)から半硬質ウレタンの溶融温度域である200〜300℃の範囲内であって、裏面不織布(31)の融点を含む最適温度範囲内に設定した熱風を吹き付け、巻き込み条片(40)における半硬質ウレタン(21)を加熱軟化させ、裏面不織布(31)を溶融させた後、巻き込み条片(40)を巻き込みユニット(80)の巻き込み駒(81)の動作によりウレタン基材(20)の裏面側に巻き込み固着することを特徴とするウレタン基材を含む積層成形品における端末処理方法。
【請求項2】
前記裏面不織布(31)は、融点が260〜400℃の範囲内にあるポリエステル繊維不織布で構成され、熱風ノズル(90)から巻き込み条片(40)の裏面側に吹き付ける熱風温度を260〜300℃の範囲内に設定したことを特徴とする請求項1に記載のウレタン基材を含む積層成形品における端末処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−52563(P2013−52563A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191406(P2011−191406)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【出願人】(391013106)株式会社パーカーコーポレーション (27)
【出願人】(511214509)パーカー工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】