説明

ウロテンシンIIとソマトスタチン5受容体に対するリガンドの活性基に対する組み合わせ足場アプローチ

本発明により、4つの相違点を有している新規の化合物のライブラリーに対する組み合わせアプローチが提供される。これらの化合物は、受容体へのディファレンシャルな結合により、ウロテンシンIIおよびソマトスタチン5受容体のマッピングを提供する。本発明はさらに、疾患の処置方法に関し、ここでは、ウロテンシンII受容体の調節により、上記疾患、たとえば、CNS機能に関する疾患および心臓血管疾患において生理学的に有用な応答を生じる。本発明はさらに、ウロテンシンII受容体を調節するように適応させられた、これらの疾患の処置のためのこれらの因子を含む薬学的組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明により、4つの相違点を有している新規の化合物のライブラリーに対する組み合わせアプローチ(a combinatorial approach)が提供される。これらの化合物は、受容体へのディファレンシャルな結合(differential binding)により、ウロテンシンIIおよびソマトスタチン5受容体のマッピングを提供する。本発明はさらに、疾患の処置方法に関し、ここでは、ウロテンシンII受容体の調節により、上記疾患、たとえば、CNS機能に関係する疾患および心臓血管疾患において生理学的に有用な応答が生じる。本発明はさらに、ウロテンシンII受容体を調節するように適応させられた、これらの疾患の処置のためのこれらの因子を含む薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤のような化学物質の設計が、先入観にとらわれないスクリーニングにとっては多大な課題となる。非ペプチド性の足場(scaffold)上のアミノ酸側鎖によって提示される相違の検討が、広い範囲の標的に対するリガンドの設計のための有用な方法であることが証明されている。最近、リガンドをベースとする薬剤の設計技術が、ソマトスタチン(SST)およびウロテンシンII(UII)受容体での新規の非ペプチド性のリガンドの同定に利用されている。
【0003】
種々の疾患状態は、ウロテンシンIIおよびその受容体に関係していると推測されている。しかし、その上、ウロテンシンIIペプチドは、疾患状態に直接関係している。さらにその上、疾患状態は、ウロテンシンII受容体またはウロテンシンIIペプチドの機能の変化に直接関係している。
【0004】
ヒトのウロテンシンIIは、霊長類の気道平滑筋の強力な痙攣原物質として報告されており、肺血管組織でのその収縮を起こすプロフィールは、その効力に領域差が存在し、肺動脈に対しては強い収縮活性があるが、動脈から離れた組織においては効果がないことが示されている(非特許文献1)。
【0005】
ヒトのウロテンシンII(UII)は、ラットの小動脈においては、内皮依存性血管拡張薬として報告されている(非特許文献2)。ヒトのウロテンシンIIペプチドは、ラットおよび霊長類の動脈の血管収縮薬として作用し、心拍数の大幅な減少を伴う、霊長類の血液循環における抹消血管抵抗性の大幅な増大を誘導した(非特許文献3)。麻酔したラットにおいては、ウロテンシンIIペプチドは、血圧の低下を誘導した(非特許文献4、非特許文献5)。これらの結果は、ウロテンシンIIとその受容体の調節により、心臓血管機能、特に、心拍数、心拍出量、抹消血管抵抗性、および動脈圧を変化させることができることを示唆している。
【0006】
同時に、Hacksellと共同研究者によって、機能分析技術R−SATを使用したスクリーニングにより発見された、最初の非ペプチド性UII受容体アゴニストが公表された(非特許文献6)。
【0007】
注目すべきは、発見されたアゴニストが、生物学的活性に必要な最小UIIペプチドモチーフであるTyr−D−Trp−LysおよびTrp−Lys−Tyrに、それぞれ似ている点である。ペプチド模倣薬の設計に加えて、3個のアミノ酸側鎖またはそれらの類似体の空間的配置もまた、α−ヘリックスを模倣するタンパク質模倣物の設計において成功している。全体としては、これらの例は、3個のアミノ酸側鎖の微妙な三次元配置の重要性を意味している。活性基成分の同じ3つ組によって種々の受容体を活性化する、ソマトスタチン(SST)およびUIIリガンドの場合には、これは特に顕著である。
【0008】
組み合わせ足場アプローチ(a combinatorial scaffold approaches)は、主に、コア構造、たとえば、ジクロロ複素環の装飾(the decoration)、またはビルディングブロックを生じる相違の付加(the addition of the diversity generating building blocks)の間の骨格の形成、すなわち、相違によって方向付けられた合成(diversity-oriented synthesis)に基づいている。
【0009】
本明細書中に記載される研究により、3つの必要な活性基成分を最初に作成する際に、組み合わせ足場(a combinatorial scaffolding)を組立て、その後、4つの相違点として中心となるコア単位を構築する、概念上異なる方法論が提供される。この4つの相違点は、主に、活性基成分の様々な空間的配置である。記載される方法論には、α,β−エノンの使用が含まれており、これは、薬剤のような複素環ライブラリーの作成のための分岐点として以前から使用されており、したがって、コア構造の構築のための土台を定めるための有用な中間体とみなされている(非特許文献7)。しかし、難点は、α,β−エノンについて公開されている合成手順のほとんどによっては、わずか2つしか相違点のない生成物しか得られないことである。たとえば、α,β−エノンは、N−フェニルピラゾリンライブラリーの調製のために使用されている(非特許文献8)。
【0010】
最近、実用的であり効果的な多成分反応が開示され、ここでは、3つの相違点が組み込まれている置換されたピロリジンおよびα,β−エノンを合成することができている(非特許文献9、非特許文献10)。有利な点は、これにより、3つの相違点を有しているα,β−エノンを、4つ目の相違点を組み込むためのビルディングブロックとして使用することができることである。
【非特許文献1】Br.J.Pharmacol.,131(1);10−12
【非特許文献2】Br.J.Pharmacol.;130(8):1865−1870
【非特許文献3】Nature,401;282−286
【非特許文献4】General and Comparative Endocrinology 64;435−439
【非特許文献5】Neuroendocrinol.Lett.14(5);357−363
【非特許文献6】Croston G et al, J Med Chem 2002,45,4950
【非特許文献7】Marzinzik and Felder,J Org.Chem,1998,63,723−727
【非特許文献8】Powers et al,Tetrahedron 54,4085−4096,1998
【非特許文献9】Bertozzi et al,Organic letters vol 4,3147−3150,2002
【非特許文献10】Bertozzi et al,Organic letters vol 4,4333−4336,2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
α,β−エノンは、一定の範囲の複素環の作成のために広く使用されているが、ごくわずかな報告されている例だけにα−置換基が組み込まれており、本発明者らが知る限りでは、塩基性アミンのようなさらなるヘテロ原子機能を有しているものは存在していない。5個の新規の薬剤のようなコア構造(一般式IからVの化合物)の合成が、ソマトスタチン(SST)およびウロテンシンII(UII)受容体に対してアゴニスト活性を有している化合物を提供するためのビルディングブロックとしての、α−置換型−α,β−エノンの使用を説明するために選択された。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書中に記載される研究により、一般式VI(3つの相違点を有している化合物)のα−置換型−α,β−エノンのような内因性ではない非ペプチド性有機化合物、およびジヒドロピリミジノン、ピラゾリン、またはベンゾチアゼピンのさらなるコアを含む化合物のような上記のα−置換型−α,β−エノンから誘導することができる多数の化合物のクラスが、ヒトのウロテンシンII受容体に対してアンタゴニスト活性を有していることを示すデータが提供される。
【0013】
特筆すべきは、ウロテンシンII受容体を介して生物学的応答を生じる化合物のクラスには、4つの相違点が含まれ、ジヒドロピリミジノン、シクロプロピルケトン、ピラゾリン、ピリミジン、またはベンゾチアゼピンからなるコアを有することである。
【0014】
したがって、本発明は、第1の態様において、一般式IからVの新規の化合物、またはそれらの塩に関する:
【化1】

式中、R1およびR3は、水素、状況に応じて置換されたカルボニル(R)、O(R)、S(R)、N(R)(R’’)、SO(R)、SO2(R)、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より別々に選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;
R2およびR4〜R6は、水素、状況に応じて置換されたO(R)、S(R)、N(R)(R’’)、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より別々に選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;
R7は存在しないか、または水素、状況に応じて置換されたO(R)、S(R)、N(R)(R’’)、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;
R8は、水素、状況に応じて置換されたO(R)、S(R)、N(R)(R’’)、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;
RおよびR’’は、水素、状況に応じて置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より別々に選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;
R9およびR10は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;そして
R11は、存在しないか、または状況に応じて置換されたO(R)、S(R)、N(R)(R’’)、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい。
【0015】
記載されたように、上記の化合物は、4つの相違点を伴って提供され、UIIおよびSST5受容体を活性化する。本明細書中に記載される研究により、さらに、4つの相違点を有しているこのような化合物への到達のための、安価な容易に入手できる出発材料を使用する、1段階または2段階の合成手順が提供される。
【0016】
したがって、さらなる態様においては、本発明は、式VIの化合物を使用する段階を含む、本明細書中で定義される一般式IからVの化合物の調製のための方法に関する:
【化2】

式中、R1〜R7、R、およびR''は、上記に定義されたとおりである。
【0017】
式IからVの化合物がヒトのウロテンシンII受容体およびソマトスタチン5受容体に対するアゴニストであると考えられるので、本発明のさらなる態様は、本明細書中で定義される一般式IからVの化合物の1つ以上を使用する段階を含む、ウロテンシンII受容体および/またはソマトスタチン5受容体に結合させるための方法に関する。
【0018】
さらに、種々の疾患状態がウロテンシンIIとその受容体に関係していると推測されることを考えると、本発明のさらなる態様は、ウロテンシンII受容体の活性化または調節により疾患または障害において生理学的に有用な応答が生じる疾患および障害を処置する方法に関し、これには、本明細書中で定義される式IからVの化合物(単数または複数)の1つ以上の有効量を、ヒトのような哺乳動物に投与する段階が含まれる。この範囲内で、本発明のなおさらなる態様は、ウロテンシンII受容体の活性化または調節により疾患または障害において生理学的に有用な応答が生じる疾患および障害を処置するための医薬品のような、ヒトを含む哺乳動物用の医薬品としての使用のための、本明細書中で定義される一般式IからVの化合物に関する。
【0019】
したがって、さらなる態様において、本発明は、哺乳動物の血管組織を収縮させるかまたは拡張させる段階を含む、哺乳動物において血圧を変化させる方法に関する。上記収縮または拡張は、ウロテンシン受容体による情報伝達の活性化により行われ、上記活性化は、有効量の、本明細書中で定義される一般式IからVの化合物(単数または複数)の1つ以上の投与によって行われる。さらに、ウロテンシン受容体を活性化させる段階を含む、哺乳動物において心拍数を変化させる方法が期待され、上記活性化は、有効量の、本明細書中で定義される式IからVの化合物(単数または複数)の1つ以上の投与によって行われる。最後に、有効量の、本明細書中で定義される式IからVの化合物(単数または複数)の1つ以上を上記哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物の自発運動を変化させる方法が、本発明の1つの態様である。
【0020】
本発明のさらなる態様は、本明細書中で定義される一般式IからVの化合物(単数または複数)の1つ以上を、薬学的に許容される賦形剤および担体とともに含む、薬学的組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
記載されたように、第1の態様においては、本発明は、同じ中間生成物から誘導することができる、一般式IからVの化合物またはそれらの塩(上記の一般式IからVを参照のこと)に関する。
【0022】
本発明によると、R1およびR3は、水素、状況に応じて置換されたカルボニル(R)、O(R)、S(R)、N(R)(R’’)、SO(R)、SO2(R)、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より別々に選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;
R2およびR4〜R6は、水素、状況に応じて置換されたO(R)、S(R)、N(R)(R’’)、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より別々に選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;
R7は存在しないか、または水素、状況に応じて置換されたO(R)、S(R)、N(R)(R’’)、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;
R8は、水素、状況に応じて置換されたO(R)、S(R)、N(R)(R’’)、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;
RおよびR’’は、水素、状況に応じて置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より別々に選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;
R9およびR10は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;そして
R11は、存在しないか、または状況に応じて置換されたO(R)、S(R)、N(R)(R’’)、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい。
【0023】
本開示の目的については、以下の定義が、それらの状況において、技術用語を定義するために使用されるべきであり、また、それらの状況下では、その保護が特許請求の範囲において想定されるものの範囲を定義するために使用されるべきである。
【0024】
用語「アゴニスト」は、受容体と接触すると受容体の活性を増大させる化合物として定義される。
【0025】
用語「アルキル」は、直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素鎖であるC1〜6アルキルを意味するように意図され、ここでは、最も長い鎖は1個から6個までの炭素原子を有し、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、およびヘキシルを意味するように意図される。
【0026】
用語「アルケニル」は、2個から8個までの炭素原子を有しており、1つ以上の二重結合を含む、直鎖または分岐鎖の炭化水素基であるC2〜8アルケニルを意味するように意図される。C2〜8アルケニル基の代表的な例としては、アリル、ホモアリル、ビニル、クロチル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、およびオクテニルがあげられる。1つ以上の二重結合を有しているC2〜8アルケニル基の代表的な例としては、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、ヘプタジエニル、ヘプタトリエニル、およびオクタトリエニル基、さらにはこれらの分岐した形態があげられる。不飽和(二重結合)の位置は、炭素鎖のどの位置であってもよい。
【0027】
本発明の状況においては、用語「アルキニル」は、2個から8個までの炭素原子を含み、1つ以上の三重結合を含む、直鎖または分岐鎖の炭化水素基であるC2〜8アルキニルを意味するように意図される。C2〜8アルキニル基の代表的な例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、およびオクチニル基、さらにはこれらの分岐した形態があげられる。不飽和(三重結合)の位置は、炭素鎖のどの位置であってもよい。「C2〜8アルキニル」は、当業者に公知のジ−インまたはエン−ジインであるように、1つ以上の結合が不飽和である場合もある。
【0028】
用語「シクロアルキル」は、炭素原子のみを含む、3−、4−、5−、6−、7−、および8員環、すなわち、C3〜8シクロアルキルを含むように意図され、一方、用語「ヘテロシクリル」は、炭素原子が1個から3個までのヘテロ原子とともに環を構成する、3−、4−、5−、6−、7−、および8員環を意味するように意図される。このようなヘテロシクリル基のヘテロ原子は、酸素、イオウ、および窒素から別々に選択される。
【0029】
用語「ヘテロシクリル」基にはさらに、1つ以上のカルボニルまたはチオカルボニル官能基が含まれる場合があり、その結果、この定義には、オキソ−システムおよびチオ−システム、たとえば、ラクタム、ラクトン、環状イミド、環状チオイミド、環状のカルバミン酸塩などが含まれる。
【0030】
C3〜8シクロアルキルおよびヘテロシクリル環には、状況に応じて、1つ以上の不飽和結合が含まれる場合があるが、これは、芳香族π電子システムが生じない様式で配置される。
【0031】
ヘテロシクリル環はまた、状況に応じて、アリール環に融合されている場合もあり、その結果、この定義には、二環構造が含まれる。好ましいこのような融合されたヘテロシクリル基は、状況に応じて置換されたベンゼン環と単結合を共有する。ベンゾ縮合ヘテロシクリル基の例としては、ベンズイミダゾリジノン、テトラヒドロキノリン、およびメチレンジオキシベンゼン環構造があげられるが、これらに限定されない。
【0032】
好ましい「C3〜8シクロアルキル」の代表的な例は、炭素環、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、シクロへプタン、シクロヘプテン、1,2−シクロヘプタジエン、1,3−シクロヘプタジエン、1,4−シクロヘプタジエン、および1,3,5−シクロヘプタトリエンである。
【0033】
「ヘテロシクリル」の限定的ではない代表的な例は、複素環、テトラヒドロチオピラン、4H−ピラン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、1,3−ジオキシン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキシン、1,4−ジオキサン、ピペラジン、1,3−オキサチアン、1,4−オキサチイン、1,4−オキサチアン、テトラヒドロ−1,4−チアジン、2H−1,2−オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、モルホリン、トリオキサン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、ピロリジオン、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、1,3−ジオキソール、1,3−ジオキソラン、1,3−ジチオール、1,3−ジチオラン、イソキサゾリン、イソキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、チアゾリン、チアゾリジン、および1,3−オキサチオランである。複素環への結合は、ヘテロ原子の位置である場合もあり、また、複素環の炭素原子を介する場合もあり、また、ベンゾ縮合誘導体については、ベンゼノイド環の炭素を介する場合もある。
【0034】
用語「アリール」は、炭素環式芳香族環または環システムを意味するように意図される。さらに、用語「アリール」には、縮合環システムが含まれ、ここでは、少なくとも2つのアリール環、または少なくとも1つのアリールと少なくとも1つのC3〜8シクロアルキルが、少なくとも1つの化学結合を共有する。「アリール」環の代表的な例としては、状況に応じて置換されたフェニル、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセニル、テトラリニル、フルオレニル、インデニル、およびインダニルがあげられる。好ましいアリール基はフェニルである。用語「アリール」は、環を形成する炭素原子の1つを介して結合されており、状況に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、アルキルアミド、アシル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキル、C1〜C6アミノアルキル、C1〜C6アルキルアミノ、アルキルスルフェニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルフォニル、スルファモイル、またはトリフルオロメチルから選択される1つ以上の置換基を有している、芳香族基、好ましくは、ベンゼノイド基に関する。記載されるように、好ましいアリール基はフェニルであり、そして最も適切なものは、置換されたフェニル基であり、これは、上記に列挙された置換基の同じものまたは異なるものを1つまたは2つ有する。好ましい置換パターンは、パラおよび/またはメタである。アリール基の代表的な例としては、フェニル、3−ハロフェニル、4−ハロフェニル、3−ヒドロキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、3−アミノフェニル、4−アミノフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、3−シアノフェニル、4−シアノフェニル、ジメチルフェニル、ナフチル、ヒドロキシナフチル、ヒドロキシメチルフェニル、トリフルオロメチルフェニル、およびアルコキシフェニルがあげられるが、これらに限定されない。
【0035】
用語「ヘテロアリール」は、芳香族環の中の1つ以上の炭素原子が、窒素、硫黄、リン、および酸素を含む群より選択される1つ以上のヘテロ原子で置換されている、複素環芳香族基を意味するように意図される。
【0036】
さらに、本発明の状況においては、用語「ヘテロアリール」には、少なくとも1つのアリール環と少なくとも1つのヘテロアリール環、少なくとも2つのヘテロアリール環、少なくとも1つのヘテロアリール環と少なくとも1つのヘテロシクリル環、または少なくとも1つのヘテロアリール環と少なくとも1つのC3〜8シクロアルキル環が、少なくとも1つの化学結合を共有する、縮合環システムが含まれる。
【0037】
用語「ヘテロアリール」は、1つのOまたはS原子、または4個までのN原子、あるいは、2個までのN原子とのOまたはS原子の組み合わせをさらに含む芳香族のC2〜6環基、さらには、それらの置換された誘導体、ならびにベンゾ縮合およびピリド縮合された誘導体(好ましくは、環を形成する炭素原子の1つを介して結合されたもの)を記載すると理解される。ヘテロアリール基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、アルキルアミド、アシル、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アミノアルキル、C1〜6アルキルアミノ、アルキルスルフェニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルフォニル、スルファモイル、またはトリフルオロメチルから選択される1つ以上の置換基を有する場合もある。好ましいヘテロアリール基は、0、1個、または2個の置換基を有している5員環および6員環の芳香族複素環システムであり、置換基は、上記のリストから選択される、互いに同じものであっても異なるものであってもよい。ヘテロアリール基の代表的な例としては、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピロール、ピリジン、インドール、オキサゾール、ベンゾキサゾール、ピラゾール、インダゾール、およびテトラゾールの未置換もの、ならびに1置換もしくは2置換の誘導体があげられるが、これらに限定されない。これらの全てが好ましく、さらには、フラザン、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、キノリン、イソキノリン、ピリダジン、ピリミジン、プリン、ピラジン、プテリジン、ピロール、フェノキサゾール、オキサゾール、イソキサゾール、オキサジアゾール、ベンゾピラゾール、インダゾール、キノリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、およびキノキサリンがあげられる。最も好ましい置換基は、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、O−C1〜C6アルキル、C1〜C6アルキル、ヒドロキシ−C1〜C6アルキル、およびアミノ−C1〜C6アルキルである。
【0038】
本明細書中で使用される場合は、用語「O−C1〜C6アルキル」は、C1〜C6アルキルオキシ、またはアルコキシ、たとえば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、およびヘキシルオキシを意味するように意図される。
【0039】
用語「ハロゲン」には、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が含まれる。
【0040】
用語「塩」は、アミンのような官能基の塩基の形態を、無機酸、たとえば、ハロゲン化水素酸(通常は、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、またはヨウ化水素酸)、硫酸、硝酸、リン酸など、あるいは有機酸、たとえば、酢酸、プロピオン酸、ヒドロ酢酸、2−ヒドロキシプロパン酸、2−オキソプロパン酸、エタンニ酸、プロパンニ酸、ブタンニ酸、(Z)−2−ブテンニ酸、(E)−ブテンニ酸、2−ヒドロキシブタンニ酸、2,3−ジヒドロキシブタンニ酸、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、2−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸、ならびに当業者に公知の他の酸のような適切な酸で処理することによって得ることができる、薬学的に許容される酸付加塩を意味するように意図される。
【0041】
用語「状況に応じて置換された」は、水素を置換する任意の置換基を意味するように意図され、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、アルキルアミド、C1〜C6アシル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルからなる群より選択される。さらに、用語「状況に応じて置換された」は、ヘテロ原子または炭素原子を介して結合させられたヘテロ原子を含む断片によって置換された水素原子を記述するように意味される。
【0042】
用語「置換されたフェニル」は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、アルキルアミド、C1〜C6アシル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキル、C1〜C6アミノアルキル、C1〜C6アルキルアミノ、アルキルスルフェニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルフォニル、スルファモイル、またはトリフルオロメチルからなる群より選択される置換基の同じものまたは異なるものを1つまたは2つ有しているフェニル基を意味するように意図される。好ましい置換パターンは、パラおよび/またはメタである。
【0043】
本発明の1つの実施形態においては、R1はフェニルまたは置換されたフェニルである。さらに興味深い実施形態の組み合わせとして、R2、R4、および/またはR5が水素であるものがあげられる。本発明の他の実施形態においては、R3およびR7は、アルキルおよびアルケニルからなる群より別々に選択される非環式炭素基、好ましくは、エチルを示す。
【0044】
本発明のなおさらなる実施形態は、R6が状況に応じて置換されたフェニル基であり、好ましくは、フェニル基がハロゲンで置換されている、たとえば、R6が4−クロロフェニルである、一般式IからVの化合物に関する。
【0045】
本発明の他の組み合わせた実施形態および個々の実施形態は、R8がメチルであり、R9がメチルであり、R10がフェニルであるかまたは状況に応じて置換されたフェニルであり、そして/あるいはR11が存在しない化合物に関する。
【0046】
さらに、いくつかの実施形態においては、本発明の化合物は、異性体混合物の形態である場合もあり、他の実施形態においては、本発明の化合物は、1つのジアステレオ異性体の形態である場合もある。
【0047】
記載されるように、開示される研究により、本明細書中で定義される一般式IからVの化合物の合成のための、安価な容易に入手できる出発材料および中間生成物を使用する、1段階または2段階の合成手順が提供される。有利な点は、本明細書中で定義される一般式IからVの化合物が、N−メチル尿素、ジメチルオキソスルホニウムメチライド、メチルヒドラジン、ベンズアミジン、および2−アミノチオフェノールのような周知の市販されている反応物質の、α−置換型−α,β−エノンへの添加によって得られる点である。本明細書中で使用されるα−置換型−α,β−エノンは、4−ハロ−ベンズアルデヒドおよびシクロプロピル−フェニル−ケトンをビルディングブロックとして含む簡単な3成分の合成、および金属ヨウ化物での処理によって得ることができる。
【0048】
一般式IからVの本発明の目的の化合物を得るための合成手順の代表的な例が、以下の反応図式に開示される:
【化3】

したがって、開示される発明は、第2の態様において、式VIの化合物を使用する段階を含む、一般式IからVの化合物の調製のための方法に関する:
【化4】

式中、R1〜R7、R、およびR’’は、本明細書中で定義されたとおりである。この方法にはさらに、一般式I、II、III、IV,およびVの化合物をそれぞれ得るために、N−メチル尿素、ジメチルオキソスルホニウムメチライド、メチルヒドラジン、ベンズアミジン、および2−アミノチオフェノールからなる群より選択される反応物質を使用することが含まれる。
【0049】
式VIの化合物が上記の反応図式によって示される簡単な合成手順によって得ることができると考えると、本発明のさらなる態様は、4−ハロ−ベンズアルデヒドとシクロプロピル−フェニル−ケトンを使用する段階を含む、一般式IからVの化合物の調製のための方法に関する。このような方法には、さらに、金属ヨウ化物の使用が含まれる場合があり、このような金属ヨウ化物は、Et2Al−Iまたはヨウ化マグネシウムからなる群より選択される。
【0050】
驚くべきことに、一般式IからVの化合物がヒトのウロテンシンII受容体に対するアゴニストであることが明らかになった。したがって、本発明のさらなる態様は、本明細書中で定義される一般式IからVの化合物の1つ以上を使用する段階を含む、ウロテンシンII受容体および/またはソマトスタチン5受容体に結合させるための方法に関する。
【0051】
さらに、種々の疾患状態がウロテンシンIIとその受容体に関係していると推測されていることを考えると、本発明のさらなる態様は、ウロテンシンII受容体の活性化または調節により上記の疾患または障害において生理学的に有用な応答が生じる、疾患および障害を処置する方法に関し、これには、有効量の、本明細書中で定義される一般式IからVの化合物(単数または複数)の1つ以上を、ヒトのような哺乳動物に投与する段階が含まれる。
【0052】
本明細書中で定義される一般式IからVの化合物に関して新しく同定された能力を考えると、ウロテンシンII受容体の活性化または調節により所定の障害において生理学的に有用な応答が生じる疾患および障害を処置するための医薬品の調製のために、本明細書中で定義される一般式IからVの化合物を使用することも、十分に本発明の範囲に含まれる。本発明の化合物は、多くの疾患において有用な生理学的作用を生じるタンパク質の活性または経路を調節するための医薬品の調製のために使用される場合もある。ウロテンシンII受容体の活性化または調節により疾患または障害において生理学的に有用な応答が生じる複数の疾患が存在する。あるいは、これらの疾患は、ウロテンシンIIの不安定さ、および/またはウロテンシンII受容体活性の変化に関係している場合もある。
【0053】
このような疾患は、少なくとも一部、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィー、小児脊髄性筋萎縮症、進行性脊髄性筋萎縮症、および進行性球麻痺のようなCNS機能に関係している疾患および障害;OPCA;ADHD;統合失調症;不眠症のような睡眠障害、およびシャイ・ドレーガー症候群のような自律神経機能障害に関係している場合がある。
【0054】
さらに、ウロテンシンII受容体の活性化または調節により生理学的に有用な応答が生じる疾患および障害は、高血圧;ショック状態、敗血症、大手術、および鬱血性心不全に関係する低血圧状態のような心臓血管疾患に関係している場合もある。
【0055】
上記のように、種々の疾患状態がウロテンシンII受容体の機能の変化、またはウロテンシンIIの不安定さのいずれかに関係していると示唆されている。たとえば、ウロテンシンIIと、その同種受容体を介する情報伝達の変化は、他の疾患状態の中でも、特に、高血圧および低血圧の両方に関係している。したがって、本発明のさらなる態様は、哺乳動物の血管組織を収縮させるかまたは拡張させる段階を含む、哺乳動物において血圧を変化させる方法に関する。上記収縮または拡張は、ウロテンシン受容体による情報伝達の活性化により行われ、上記活性化は、有効量の、本明細書中で定義される一般式IからVの1つ以上の化合物の投与によって行われる。同様に、本発明は、ウロテンシン受容体による情報伝達の調節を含む、哺乳動物において心拍数を変化させる方法に関する。上記調節は、有効量の、本明細書中で定義される一般式IからVの1つ以上の化合物の投与によって行われる。
【0056】
一般式IからVの化合物の驚くべき活性により、ウロテンシンII受容体の薬物標的としての役割の妥当性の確認のためにそれらを使用することが適切になる。同様に、本発明は、ウロテンシン受容体による情報伝達を活性化させる段階を含む、哺乳動物において細胞活性を高めるための方法に関する。ここでは、上記の活性の増大は、上記の受容体の活性を調節する物質の哺乳動物への投与によって行われ、上記物質は、受容体付近での上記物質の濃度を、その受容体による情報伝達を介する生物学的応答を生じるレベルにまで上昇させるために有効な量で投与される。上記物質は、一般式IからVの化合物である。
【0057】
さらに、上記で定義された一般式IからVの化合物によって誘導される生物学的応答により、ウロテンシンII受容体および/またはソマトスタチン受容体を用いたアンタゴニストアッセイにおいて、上記化合物をアゴニストとして使用することが可能になる。さらに、化合物の特性の結果として生じるこれらの生物学的応答により、薬物標的としてのウロテンシンII受容体の役割の妥当性の確認のために、一般式IからVの化合物を使用することが可能になる。
【0058】
本発明のさらなる態様は、本明細書中で定義される一般式IからVの化合物の1つ以上、および、たとえば、Remington's Pharmaceutical Sciencesに開示されている処方にしたがうような当業者に公知の様式で処方される薬学的に許容される賦形剤または担体を含む、薬学的組成物に関する。組成物は、経口投与のために、粘膜を介する投与のために、または中でも特に、受け入れられている方法にしたがう他の全身投与のために処方され得る。
【0059】
以下の実施例では、開示される本発明の方法、得られる化合物の使用が教示される。これらの実施例は単なる例示であって、本発明の範囲を限定するようには意図されない。以下に記載される処置方法は、当業者に周知である経験的な技術を使用して最適化することができる。さらには、当業者は、本発明の範囲全体を実行するために以下の実施例に記載される教示を使用することもできる。
【0060】
本発明は、以下の限定的ではない実施例にさらに詳細に開示される。
【0061】
〔実施例1〕
出発材料である式VIの化合物の合成。
【化5】

【0062】
α−(アミノエチル)−α,β−エノン、たとえば、(E/Z)−2−(4−クロロ−ベンジリデン)−4−(2−ジエチルアミノ−エチル)−1−フェニル−ブタン−1−オンのEt2Al−Iによって促進される1ポット3成分合成(Et2Al−I−Promoted One−Pot Three−Component Synthesis)のための一般的手順。
【0063】
7mLのバイアル中で、室温で、4−クロロ−ベンズアルデヒド(140mg;1.0mmol;1.0eq.)、Et2Al−I(1.17mL;1.2mmol;1.2eq.)、およびシクロプロピル−フェニル−ケトン(146mg;138μL;1.0mmol;1.0eq.)を、ジエチルアミン(73mg;104μL;1.0mmol;1.0eq.)のCH3CN(4.0mL)溶液に順次添加した。得られた混合液を室温で一晩、激しく振とうさせ、その後、KOtBu(168mg、1.5mmol、1.5eq.)を添加した。2時間後、飽和Na2S2O3水溶液(2mL)を用いて反応を停止させ、混合液をEtOAc(5mL)で抽出した。有機相を飽和NaHCO3水溶液(2mL)および食塩水(2mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過して濃縮した。対応する粗反応生成物をフラッシュクロマトグラフィーによってシリカゲル上で精製して(CH2Cl2+MeOH 4%)、E/Z立体異性体の85:15混合物(204mg;60%の収率)を油状物として得た。
【0064】
E/Z立体異性体混合物についてのデータ:Rf:0.38(シリカゲル、CH2Cl2+MeOH 5%);1H NMR (400 MHz, CDCl3) d7.86-7.83 (m, 2H, Z); 7.81-7.77 (m, 2H, E); 7.58-7.53 (m, 1H, E); 7.49-7.43 (m, 3H); 7.40-7.34 (m, 4H, E); 7.31-7.29 (m, 2H, Z); 7.27-7.25 (m, 2H, Z); 7.06 (s, 1H, E); 7.05-7.02 (m, 2H, Z); 6.76 (s, 1H, Z); 2.96-2.89 (m, 2H); 2.74-2.68 (m, 6H); 2.63-2.50 (m, 8H); 1.01 (t, 6H, J=7.1 Hz, E); 0.97 (t, 6H, J=7.2 Hz, Z). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d200.0 (Z); 198.8 (E); 141.3; 141.1; 139.9; 138.5; 136.1; 134.6; 134.5; 134.2; 133.4; 132.2; 130.6; 130.0; 129.9; 129.6; 129.0; 128.6; 128.5; 128.4; 51.9 (Z); 51.2 (E); 46.8 (E); 46.5 (Z); 34.7 (2C, Z); 25.7 (2C, E); 11.7 (2C, E); 11.5 (2C, Z). HRMS (Ion Mode: FAB+) 計算値C21H24ClNO (M++1): 342.1624 測定値: 342.1629.
ジアステレオ選択性を、δ 7.06(異性体a)およびδ 6.76(異性体b)でのピークの積分によって決定した。
【0065】
〔実施例2〕
ジヒドロピリミジノンである6−(4−クロロ−フェニル)−5−(2−ジエチルアミノ−エチル)−1−メチル−4−フェニル−5,6−ジヒドロ−3H−ピリミジン−2−オン(一般式Iの化合物)を形成させるための、式VIの化合物のN−メチル尿素との反応。
【化6】

【0066】
N−メチル尿素の実施例1の式VIの化合物との、NaOEtの存在下での室温での反応は、無事進行し、これにより、上記に示したジヒドロピリミジノンが、単一の位置異性体として48%の収率で得られた。1H NMR実験は、NHとH6にそれぞれ対応する6.60ppmと4.48ppmに2つの一重項を示し、これにより以前に割り当てられた構造を確認した。実験条件は以下であった。
【0067】
20mLのバイアル中で、室温で、NaOEt(408mg;6.0mmol;6.0eq.)とN−メチル尿素(444mg;6.0mmol;6.0eq.)を、実施例1の式VIの化合物(341mg;1.0mmol;1.0eq.)のDMF溶液(10.0mL)に順次添加し、得られた混合液を室温で12時間、激しく振とうさせた。その後、数滴の水を用いて反応を停止させ、混合液を飽和NaHCO3水溶液(3mL)、食塩水(3mL)で洗浄し、EtOAc(10mL)で抽出した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過して濃縮した。対応する粗反応生成物をフラッシュクロマトグラフィーによってシリカゲル上で精製して(CH2Cl2+MeOH 4%から6%)、上記に示した置換されたピリミジン−2−オン(193mg;48%の収率)を油状物として得た。
【0068】
データ:Rf:0.41(シリカゲル、CH2Cl2+MeOH 5%);1H NMR (400 MHz, CDCl3) d7.41-7.24 (m, 9H); 6.60 (s, 1H, NH); 4.78 (s, 1H); 2.74 (s, 3H); 2.36 (ddd, 1H, J=15.8 Hz and 10.5 Hz and 5.2 Hz); 2.26 (q, 4H, J=7.2 Hz); 2.18 (ddd, 1H, J=15.5 Hz and 10.2 Hz and 5.5 Hz); 2.04 (ddd, 1H, J=15.9 Hz and 10.5 Hz and 5.3 Hz); 1.75 (ddd, 1H, J=15.4 Hz and 10.3 Hz and 5.2 Hz); 0.80 (t, 6H, J=7.3 Hz). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d153.2; 140.1; 134.8; 134.3; 132.5; 129.3; 129.1; 129.0; 128.9; 128.7; 107.8; 66.3; 51.3; 46.8; 32.8; 25.9; 11.7. HRMS (Ion Mode: FAB+) 計算値 C23H28ClN30 (M++1): 398.2000 測定値: 398.2004.
【0069】
〔実施例3〕
シクロプロピルケトンであるanti−1−ベンゾイル−2−(4−クロロ−フェニル)−1−(2−ジエチルアミノ−エチル)−シクロプロパン(一般式IIの化合物)を形成させるための、式VIの化合物のジメチルオキソスルフォニウムメチライドとの反応。
【化7】

【0070】
過剰なジメチルオキソスルフォニウムメチライドの実施例1の式VIの化合物との反応により、主要な生成物として、シクロプロピルケトン4の形成が、70%の分離収量で得られた。NMRによっては、わずか1つだけのジアステレオ異性体しか示されず、相対立体化学は、NOE測定によってアンチ(anti)であると決定された。オキシラン副生成物が、LC/MSにより少量形成され、おそらくこれは、過剰なジメチルオキソスルフォニウムメチライドの使用が原因であった。化学量論上の量のジメチルオキソスルフォニウムメチライドを使用した場合には、式VIの化合物の転換が少ないことが観察された。実験条件は以下であった。
【0071】
20mLのバイアル中で、室温で、ヨウ化トリメチルスルフォオキソニウム(616mg、2.8mmol、2.8eq.)を、NaH(110mg、2.4mmol、2.4eq.;ミネラルオイル中で55〜60%)のDMSO溶液(3.0mL)に添加した。反応混合液をアルゴン気流下でフラッシュし、すぐにバイアルにキャップをした。1時間の振とう後、温度を60℃に上昇させ、バイアルをさらに1時間振とうさせた。その後、式VIの化合物(341mg;1.0mmol;1.0eq.)の化合物のDMSO溶液(2.0mL)を懸濁液に対して一滴ずつ添加し、混合液を60℃に維持した。3.5時間後、混合液を室温に冷却し、水(20mL)で反応を停止させ、EtOAc(3×25mL)で抽出した。回収した有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過して濃縮し、粗反応生成物(203mg)を得た。これを、分取HPLCによって精製して、上記に示した主要なジアステレオ異性体を、>95:5混合物(135mg;70%の収率)において油状物として得た。
【0072】
データ;1H NMR (400 MHz, CDCl3) d7.82-7.78 (m, 2H); 7.53-7.48 (m, 1H); 7.46-7.41 (m, 2H); 7.35-7.31 (m, 2H); 7.26-7.21 (m, 2H); 2.64 (dd, 1H, J=9.0 Hz and J=6.8 Hz); 2.32-2.24 (m, 1H); 2.21-2.12 (m, 5H); 1.92-1.86 (m, 1H); 1.85-1.78 (m, 1H); 1.51-1.42 (m, 1H) 1.32 (dd, 1H, J=6.8 Hz and J=5.1 Hz) 0.66 (t, 6H, J=7.1 Hz). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d202.0; 137.4; 135.7; 132.8; 132.1; 130.3; 128.8; 128.6; 128.5; 50.4; 46.7; 37.0; 29.6; 28.5; 15.9; 11.0. HRMS (Ion Mode: FAB+) 計算値C22H26ONCl (M++1): 356.1781. 測定値: 356.1794.
【0073】
(NOESYおよびNOE分光法による実施例3の化合物の立体化学的評価)
anti/syn立体化学を、NOESY実験によって純粋な主要な立体異性体4(下記の図を参照のこと)について決定した。H2に対してシスのプロトン(シスH3)を、NOESY実験によって決定した。この後、anti H3とのH2のNOE相関が観察できるようになった。さらに、NOE相関を、anti H3’→H4、anti H3’→H5、およびanti H3’→H7の間で観察した。
【化8】

【0074】
〔実施例4〕
ピラゾリンであるanti/syn−5−(4−クロロ−フェニル)−4−(2−ジエチルアミノ−エチル)−1−メチル−3−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(一般式IIIの化合物)を形成させるための、式VIの化合物のメチルヒドラジンとの反応。
【化9】

【0075】
ピラゾール足場(scaffold)を、実施例1の式VIの化合物のメチルヒドラジンとの、InCl3の存在下での縮合により調製した。この反応により、上記に示したピラゾリンが、72%の収率で、3:1のジアステレオ混合物として得られた。主要な異性体の立体化学を、H5とジエチルアミノ鎖中のプロトンとの間の強い相互作用、およびH4(3.56ppm)とH5(3.98ppm)との間に何のNOESY相関も存在しないことによって、アンチ(anti)立体構造を有すると確認した。さらに、主要ではないジアステレオ異性体は、H4(3.58ppm)とH5(4.17ppm)との間に強いNOESY相関を有しており、このことは、この化合物のsyn立体構造を明確に示している。さらに、ピラゾリンコアは、保存の間の空気による酸化に対して安定であった。実験条件は以下であった。
【0076】
20mLのバイアル中で、室温で、メチル−ヒドラジン(268μL;230mg;5.0mmol;5.0eq.)とInCl3(88mg;0.4mmol;0.4eq.)を、実施例1の式VIの化合物(341mg;1.0mmol;1.0eq.)の無水EtOH溶液(10.0mL)に添加した。得られた混合液を80℃で10時間、激しく振とうさせ、その後、飽和NaHCO3水溶液(3mL)を用いて反応を停止させ、EtOAc(15mL)で抽出し、食塩水(3mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過して濃縮した。対応する粗反応生成物を、フラッシュクロマトグラフィーによってシリカゲル上で精製して(CH2Cl2+MeOH 4%から6%)、85:15混合物であるジヒドロ−ピラゾールのanti/syn混合物(264mg;72%の収率)を油状物として得た。
【0077】
ジヒドロピラゾールのanti/syn混合物についてのデータ;Rf:0.31(シリカゲル、CH2Cl2+MeOH 5%);1H NMR (400 MHz, CDCl3) d7.75-7.69 (m, 2H, syn); 7.59-7.56 (m, 2H, anti); 7.37-7.24 (m, 14H); 4.17 (d, 1H, J=9.4 Hz, syn); 3.98 (d, 1H, J=10.2 Hz, anti); 3.59-3.50 (m, 2H); 2.79 (s, 3H, syn); 2.78 (s, 3H, anti); 2.49-2.31 (m, 6H, anti); 2.28-2.21 (m, 2H, syn); 2.18-2.09 (m, 2H, syn); 2.01-1.86 (m, 2H); 1.81-1.72 (m, 2H); 1.61-1.52 (m, 1H, syn); 1.38-1.29 (m, 1H, syn); 0.87 (t, 6H, J=7.2 Hz, anti); 0.77 (t, 6H, J=7.2 Hz, syn). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d155.4 (syn); 151.9 (anti); 139.8; 135.4; 133.8; 133.6; 133.1; 132.4; 129.8; 129.3; 129.1; 128.9; 128.8; 128.7; 128.5; 127.9; 126.6; 126.3; 77.5 (anti); 76.2 (syn); 54.1 (anti); 50.4 (syn); 50.1 (2C); 48.2 (syn); 46.9 (anti); 46.7 (syn); 41.6 (syn); 40.8 (anti); 28.5 (anti); 23.9 (syn); 11.7 (anti). HRMS (Ion Mode: FAB+) 計算値C22H28ClN3 (M++1): 370.2050 測定値: 369 2041.
【0078】
(NOESY分光法による立体化学的評価)
anti/syn立体化学を、NOESY実験によって、立体異性体a(主要なもの)および立体異性体b(少量のもの)の両方の3:1混合物について決定した(以下の図を参照のこと)。主要な異性体(anti)においては、強いNOESY相関が、H5→H6およびH5→H6’の間で観察され、さらに、H4→H5の間ではNOESY相関は観察されなかった。少量の異性体(syn)においては、H4→H5の間で強いNOESY相関が観察されたが、H5→H6およびH5→H6’の間ではNOESY相関は観察されなかった。
【化10】

【0079】
〔実施例5〕
ピリミジンである4−(4−クロロ−フェニル)−5−(2−ジエチルアミノ−エチル)−2,6−ジフェニル−ピリミジン(一般式IVの化合物)を形成させるための、式VIの化合物のベンズアミジンとの反応。
【化11】

【0080】
実施例1の式VIの化合物のベンズアミジンでの、DMF中、100℃の空気中での処理により、上記に示したピリミジンが53%の収率で得られた。反応をアルゴン空気下で行った場合には、対応する芳香化されていないジヒドロピリミジンが得られた。これを酸化させるための、さらなる、空気中での100℃での反応混合物の激しい攪拌による試みは、成功しなかった。対応するベンズアミジンのHCl塩の使用によっては、ほとんど転換は生じず、式VIの化合物が回収された。実験条件は以下であった。
【0081】
20mLのバイアル中で、室温で、ベンズアミジン(720mg;6.0mmol;6.0eq.)を、実施例1の式VIの化合物(341mg;1.0mmol;1.0eq.)のDMF溶液(10.0mL)に添加した。得られた混合液を100℃で12時間、空気中で激しく振とうさせた。その後、数滴の水によって反応を停止させ、混合物を、飽和NaHCO3水溶液(3mL)、食塩水(3mL)で洗浄し、EtOAc(10mL)で抽出した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過して濃縮した。対応する粗反応生成物を、フラッシュクロマトグラフィーによってシリカゲル上で精製して(CH2Cl2+MeOH 3%)、上記に示した置換されたピリミジン(236mg;53%の収率)を固形物として得た。
【0082】
データ:M.p.=90.5〜92.3℃(非結晶);Rf:0.33(シリカゲル、CH2Cl2+MeOH 5%);1H NMR (400 MHz, CDCl3) d8.53-8.45 (m, 2H); 7.66-7.59 (m, 4H); 7.53-7.48 (m, 5H); 7.46-7.42 (m, 3H); 2.98-2.92 (m, 2H); 2.25-2.18 (m, 2H); 2.14 (q, 4H, J=7.2 Hz); 0.59 (t, 6H, J=7.3 Hz). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d168.2; 166.7; 161.7; 139.3; 138.1; 137.9; 137.7; 135.3; 130.6; 130.5; 129.2; 128.9; 128.8; 128.7; 128.6; 128.5; 51.5; 46.9; 25.2; 11.8. HRMS (Ion Mode: FAB+) 計算値 C28H28ClN3 (M++1): 442.2050 測定値: 442.2046.
【0083】
〔実施例6〕
ベンゾチアゼピンであるanti−2−(4−クロロ−フェニル)−3−(2−ジエチルアミノ−エチル)−4−フェニル−2,3-ジヒドロ−ベンゾ−[b]−[1,4]−チアゼピン(一般式Vの化合物)を形成させるための、式VIの化合物の2−アミノチオフェノールとの反応。
【化12】

【0084】
実施例1の式VIの化合物の2−アミノチオフェノールとの、トルエン中での化学量論上の量のp−トルエンスルホン酸の存在下での反応により、ベンゾチアゼピン足場(scaffold)が得られた。他の反応条件を試験したが、たとえば、AcOH/MeOH、またはEtOH/還流、PPh3/アセトン−水/rt、InCl3/EtOH/還流、またはEt3N/EtOH/還流は成功せず、非環式ミカエル付加物が生じたか、またはほとんど転換されないかのいずれかであった。この足場の合成において反応性がないことは、おそらく、3置換されたエノン中にさらなる立体的な込み合いがあることを反映している。LC/MS分析およびNMR実験は、1つのジアステレオ異性体の形成を示し、これは、NOESY測定によりアンチ(anti)であると決定された。詳細な実験条件は以下であった。
【0085】
20mLのバイアル中で、室温で、2−アミノチオフェノール(534μL:625mg;5.0mmol;5.0eq.)とp−トルエンスルホン酸一水和物(190mg;1.0mmol;1.0eq.)を、実施例1の式VIの化合物(341mg;1.0mmol;1.0eq.)のトルエン溶液(10.0mL)に対して、4Åの分子篩の存在下で添加した。得られた混合液を24時間還流させ、その後、飽和NaHCO3水溶液(3mL)で反応を停止させ、EtOAc(15mL)で抽出し、食塩水(3mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過して濃縮した。対応する粗反応生成物を、フラッシュクロマトグラフィーによってシリカゲル上で精製して(CH2Cl2+MeOH 1%から3%)、上記に示した置換されたジヒドロ−ベンゾチアゼピンの1つのジアステレオ異性体(201mg;45%の収率)を油状物として得た。
【0086】
データ:Rf:0.38(シリカゲル、CH2Cl2+MeOH 5%);1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 7.88-7.83 (m, 2H); 7.54-7.44 (m, 5H); 7.37-7.31 (m, 1H); 7.28-7.22 (m, 2H); 7.14-7.08 (m, 3H); 4.88 (d, 1H, J=11.5 Hz); 3.46-3.38 (m, 1H); 2.18-2.08 (m, 2H); 2.06-1.91 (m, 4H); 1.76-1.66 (m, 1H); 1.24-1.14 (m, 1H); 0.68 (t, 6H, J=7.2 Hz). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d 175.0; 152.1; 142.1; 139.3; 135.4; 133.7; 130.4; 130.0; 129.2; 128.7; 127.9; 127.8; 125.3; 124.7; 121.9; 65.4; 50.6; 47.6; 46.8; 28.3; 11.8. HRMS (Ion Mode: FAB+) 計算値C27H29CIN2S (M++1): 449.1818 測定値: 449.1819.
【0087】
(NOESY分光法による立体化学的評価)
anti/syn立体化学を、NOESY実験によって、純粋なジアステレオ異性体aについて決定した(以下の図を参照のこと)。強いNOESY相関が、H2→H4/H4’の間で観察され、さらに、H2→H3の間ではNOESY相関は観察されなかった。
【化13】

【0088】
〔実施例7〕
式IからVIの化合物を、米国特許第5,707,798号、同第5,912,132号、および同第5,955,281号に記載されている機能性哺乳動物細胞をベースとするアッセイであるR−SATにおいて、UIIおよびSST5受容体に対するアゴニストとして試験した。
【0089】
R−SATアッセイは、40〜50%のコンフルエントなるようにローラーボトルを処理した組織培養物中で増殖させたNIH3T3細胞を使用して行った。細胞を、SUPERFECT(QIAGEN)を製造業者によるプロトコールにしたがって使用して、プラスミドDNAで12〜16時間トランスフェクトした。R−SATを、10μg/ローラーボトルの受容体と、50μg/ローラーボトルのβ−ガラクトシダーゼプラスミドDNAを用いて、通常通り行った。使用した全ての受容体とG−タンパク質構築物は、PSI哺乳動物発現ベクター(PROMEGA)中に存在した。その後、トランスフェクトした細胞をトリプシン処理し、10%のDMSOを含むDMEM中で凍結させた。凍結させた細胞を、その後、融解させ、10,000〜40,000細胞/ウェルで、薬剤を含む96個のウェルの1/2の領域にプレートした。次いで、細胞を、5%の大気CO2を含む加湿空気中で5日間増殖させた。その後、培地をプレートから除去し、マーカー遺伝子の活性を、β−ガラクトシダーゼ基質であるONPGの添加(5%のNP−40を含むPBS中)によって測定した。生じた比色反応を、分光分析プレートリーダー(Titertek Inc.)で420nMで測定した。
【0090】
これらの実験において、出発材料である化合物I、III、およびVが、UII受容体に対してAC−7954と同様の効力を有している、部分的なアゴニストから完全なアゴニストであることを見出した。出発材料と化合物Vは、UIIとSST5受容体の両方に対して活性を示したが、化合物Iと化合物IIIは、選択的なUIIアゴニストであった。一般式I〜Vの化合物の代表的な例を合成し、UII受容体に対するアゴニスト活性を見出した。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物またはその塩:
【化1】

式中、R1およびR3は、水素、状況に応じて置換されたカルボニル(R)、O(R)、S(R)、N(R)(R'')、SO(R)、SO2(R)、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より別々に選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;
R2およびR4〜R6は、水素、状況に応じて置換されたO(R)、S(R)、N(R)(R'')、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より別々に選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;
R7は存在しないか、または水素、状況に応じて置換されたO(R)、S(R)、N(R)(R'')、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;
R8は、水素、状況に応じて置換されたO(R)、S(R)、N(R)(R'')、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい;そして
RおよびR''は、水素、状況に応じて置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より別々に選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい。
【請求項2】
式IIの化合物またはその塩:
【化2】

式中、R1〜R7、R、およびR''は、請求項1に定義されたとおりである。
【請求項3】
式IIIの化合物またはその塩:
【化3】

式中、R1〜R7、R、およびR''は、請求項1に定義されたとおりであり、R9は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択される。
【請求項4】
式IVの化合物またはその塩:
【化4】

式中、R1〜R7、R、およびR''は、請求項1に定義されたとおりであり、R10は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択される。
【請求項5】
式Vの化合物またはその塩:
【化5】

式中、R1〜R7、R、およびR’’は、請求項1に定義されたとおりであり、R11は、存在しないか、または状況に応じて置換されたO(R)、S(R)、N(R)(R’’)、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、これらの基は、分岐であっても未分岐であってもよく、また状況に応じて置換されていてもよい。
【請求項6】
R1がフェニルまたは置換されたフェニルである、請求項1から5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R2が水素である、請求項1から6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
R4およびR5が水素である、請求項1から7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R3およびR7が、C1〜C8アルキルおよびC1〜C8アルケニルからなる群より別々に選択される非環式炭素基である、請求項1から8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
R3およびR7がエチル基である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R6が状況に応じて置換されたフェニル基である、請求項1から10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
R6が4−クロロフェニルである、請求項1から11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
R8がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
R9がメチルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項15】
R10がフェニルまたは状況に応じて置換されたフェニルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項16】
R11が存在しない、請求項6に記載の化合物。
【請求項17】
異性体混合物の形態である、請求項2、3、および5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
1つのジアステレオ異性体の形態である、請求項2、3、および5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
式VIの化合物を使用する段階を含む、請求項1に定義された化合物I、請求項2に定義された化合物II、請求項3に定義された化合物III、請求項4に定義された化合物IV、および請求項5に定義された化合物Vからなる群より選択される化合物の調製のための方法:
【化6】

式中、R1〜R7、R、およびR’’は、請求項1に定義されたとおりである。
【請求項20】
N−メチル尿素、ジメチルオキソスルホニウムメチライド、メチルヒドラジン、ベンズアミジン、および2−アミノチオフェノールからなる群より選択される反応物質の使用をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
4−ハロ−ベンズアルデヒドおよびシクロプロピル−フェニル−ケトンを使用する段階を含む、請求項1に定義された化合物I、請求項2に定義された化合物II、請求項3に定義された化合物III、請求項4に定義された化合物IV、および請求項5に定義された化合物Vからなる群より選択される化合物の調製のための方法。
【請求項22】
金属ヨウ化物の使用をさらに含む。請求項21に記載の方法。
【請求項23】
金属ヨウ化物が、Et2AI−Iまたはヨウ化マグネシウムからなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
薬学的に許容される賦形剤および担体とともに、請求項1に定義された化合物I、請求項2に定義された化合物II、請求項3に定義された化合物III、請求項4に定義された化合物IV、および請求項5に定義された化合物Vからなる群より選択される化合物を含む、薬学的組成物。
【請求項25】
請求項1に定義された化合物I、請求項2に定義された化合物II、請求項3に定義された化合物III、請求項4に定義された化合物IV、および請求項5に定義された化合物Vからなる群より選択される化合物を使用する段階を含む、ウロテンシンII受容体に結合させるための方法。
【請求項26】
請求項1に定義された化合物I、請求項2に定義された化合物II、請求項3に定義された化合物III、請求項4に定義された化合物IV、および請求項5に定義された化合物Vからなる群より選択される化合物を使用する段階を含む。ソマトスタチン5受容体に結合させるための方法。
【請求項27】
疾患および障害を処置する方法であって、ウロテンシンII受容体の活性化または調節によって、前記疾患または障害において生理学的に有用な応答が生じ、有効量の、請求項1に定義された化合物I、請求項2に定義された化合物II、請求項3に定義された化合物III、請求項4に定義された化合物IV、および請求項5に定義された化合物Vからなる群より選択される化合物を投与する段階を含む、方法。
【請求項28】
前記疾患および障害が、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィー、小児脊髄性筋萎縮症、進行性脊髄性筋萎縮症、および進行性球麻痺のようなCNS機能に関係している疾患および障害;OPCA;ADHD;統合失調症;不眠症のような睡眠障害、およびシャイ・ドレーガー症候群のような自律神経機能障害である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記疾患および障害が、高血圧;ショック状態、敗血症、大手術、および鬱血性心不全に関係する低血圧状態のような心臓血管疾患である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
哺乳動物の血管組織を収縮させるかまたは拡張させる段階を含む、哺乳動物において血圧を変化させる方法であって、前記収縮または拡張が、ウロテンシン受容体による情報伝達の活性化により行われ、前記活性化が、有効量の、請求項1に定義された化合物I、請求項2に定義された化合物II、請求項3に定義された化合物III、請求項4に定義された化合物IV、および請求項5に定義された化合物Vからなる群より選択される化合物の投与によって行われる、方法。
【請求項31】
ウロテンシン受容体の活性化を含む、哺乳動物において心拍数を変化させる方法であって、前記活性化が、有効量の、請求項1に定義された化合物I、請求項2に定義された化合物II、請求項3に定義された化合物III、請求項4に定義された化合物IV、および請求項5に定義された化合物Vからなる群より選択される化合物の投与によって行われる、方法。
【請求項32】
有効量の、請求項1に定義された化合物I、請求項2に定義された化合物II、請求項3に定義された化合物III、請求項4に定義された化合物IV、および請求項5に定義された化合物Vからなる群より選択される化合物を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物の自発運動を変化させる方法。
【請求項33】
請求項1に定義された化合物I、請求項2に定義された化合物II、請求項3に定義された化合物III、請求項4に定義された化合物IV、および請求項5に定義された化合物Vからなる群より選択される、医薬品としての使用のための化合物。

【公表番号】特表2006−520328(P2006−520328A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503667(P2006−503667)
【出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/004765
【国際公開番号】WO2004/073642
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(502295674)アカディア ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (16)
【Fターム(参考)】