説明

エアバッグ装置

【課題】ホーンスイッチ機構を構成するエアバッグ装置において、より低コスト化を図る。
【解決手段】エアバッグ装置1は、エアバッグ4、インフレータ5、および複数のホーンスイッチ用接点突起13をリテーナ3に保持させて構成され、ステアリングホイールに対しスイッチング動作可能に取り付けて用いられる。運転者の押圧による傾動動作等によりホーンスイッチ用接点突起13,13がステアリングホイールの接点受け部に接触してホーンが吹鳴する。ホーンスイッチ用接点13,13は、所定の配置で互いに分離して設けられた複数の接点用部材6a〜cにそれぞれ設けられ、それら接点用部材6a〜cは、インフレータ5を介して互いに電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリングホイールに設けられるエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置の例として、ステアリングホイールから膨張展開したエアバッグによって運転者を拘束する、運転者用のエアバッグ装置がある。この運転者用のエアバッグ装置として、ホーンスイッチ用接点を備え、警笛用のホーンを鳴らすためのホーンスイッチ機構の一部を構成するものが既に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来技術のエアバッグ装置では、エアバッグとインフレータとがリテーナに保持されている。また、リテーナには、接点用部材(接点プレート)が取り付けられている。接点プレートは、バスバー状の構造を備えており、リテーナの裏面部(ステアリングホイールに対面する面部)に取り付けられている。そして、この接点プレートには、複数(例えば3個)のホーンスイッチ用接点が、所定の配置で設けられている。
【0004】
このとき、エアバッグ装置は、運転者の押圧操作により進退動や傾動等の所定の動作が可能となるように、ステアリングホイールに設けられている。エアバッグが上記所定の動作を行うと、ホーンスイッチ用接点が、ステアリングホイールに設けられている接点受け部に接触し、これによりホーンスイッチが閉成し、ホーンが吹鳴する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−50876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のようにホーンスイッチ機構を構成するエアバッグ装置では、運転者がどのような態様で上記押圧操作を行ったとしても、上記ホーンスイッチ用接点と上記接点受け部との接触が確実に実行されることが好ましい。上記従来技術では、上述のように、接点プレートを概略U字状の形状パターンで形成することで、その接点プレート上に配置されるホーンスイッチ用接点が、二等辺三角形の3つの頂点を構成している。この接点プレートは、通常、導電性の高い金属板から抜き加工などで作製されるが、上記のように概略U字状の形状パターンであることから材料歩留りがかなり悪くなり、製造コストの低減の面で改善の余地があった。
【0007】
本発明の目的は、ホーンスイッチ機構を構成するエアバッグ装置において、より低コスト化を図れる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願第1発明は、車両のステアリングホイールに設けられるエアバッグ装置であって、エアバッグと、前記エアバッグに膨張展開用ガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを保持するリテーナと、所定の配置で互いに分離して前記リテーナに設けられた複数の接点用部材と、所定の配置で前記複数の接点用部材にそれぞれ設けられ、前記ステアリングホイールに設けられた複数の接点受け部にそれぞれ接触することでホーンを吹鳴させる、複数のホーンスイッチ用接点と、を有し、前記複数の接点用部材は、前記リテーナに保持されている金属製部材を介し、互いに電気的に接続されていることを特徴とする。
【0009】
本願第1発明においては、1つのホーンスイッチ用接点ごとに接点用部材が用意される。この結果、各接点用部材の形状パターンを、シンプルで材料歩留り性の高い形状パターンとすることができる。また、各接点用部材のサイズを小さくすることができる。その結果、複数の接点用部材を、金属板から抜き加工などで作製する際の材料歩留りを大幅に改善することができるので、より低コスト化を図ることができる。
【0010】
そしてその際、リテーナ内に設けられる適宜な金属製部材の導電性を活用して各接点用部材を互いに電気的に接続することで、上記のように個別に分離して構成される複数の接点用部材を電気的に一体化することができる。これにより、各接点用部材ごとにワイヤハーネスを接続して電気的な一体化を図る場合に比べて、確実に低コスト化を図ることができる。
【0011】
第2発明は、上記第1発明において、前記金属製部材は、前記インフレータであることを特徴とする。
【0012】
エアバッグ装置におけるリテーナは、合成樹脂製であるのが一般的であるが、リテーナ内に配置されるインフレータは金属製部材であるのが一般的である。そこで、本願第2発明では、インフレータを活用して、複数の接点用部材同士の電気的接続を図る。これにより、上記のように個別に分離して構成される複数の接点用部材を、用意かつ確実に電気的に一体化することができる。
【0013】
第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記接点用部材のいずれか1つ又は前記金属製部材にハーネス連結部が設けられており、前記接点用部材又は前記金属製部材は、前記ハーネス連結部を介し、ワイヤハーネスが接続されている
ことを特徴とする。
【0014】
これにより、ホーンスイッチ用接点を、ホーンに接続するワイヤハーネスに確実に接続し、ホーンを吹鳴させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ホーンスイッチ機構を構成するエアバッグ装置において、より低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態によるエアバッグ装置が取り付けられたステアリングホイールを前面側から見た状態を示す図である。
【図2】図1のエアバッグ装置を前面側から斜視した状態を示す図である。
【図3】エアバッグ装置を裏面側から見た状態を示す図である。
【図4】図3中のA−A線に沿う断面状態を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるエアバッグ装置を裏面側から見た状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜図3により、本発明の第1の実施形態によるステアリングホイール用のエアバッグ装置を説明する。図1は、エアバッグ装置1が取り付けられたステアリングホイール2を前面側から見た状態を示し、図2は、エアバッグ装置1を前面側から斜視した状態を示している。なお、以下適宜、図示のように、図2に示す左上方向を表面側、右下方向を裏面側、と定義して各部の説明を行う。また、図3は、上記エアバッグ装置1を裏面側から見た状態を示し、図4は、図3中のA−A線に沿う断面状態を示している。なお、図4では、エアバッグ装置1が取り付けられるステアリングホイール2の要部を、併せて模式的に示してある。
【0018】
図1〜図3において、エアバッグ装置1は、リテーナ3と、このリテーナ3に収納されたエアバッグ4と、エアバッグ4への膨張展開用のガスを発生させるインフレータ5と、複数の(この例では3つの)接点用部材6a〜6cと、を有している。
【0019】
リテーナ3は、合成樹脂製で、全体として概略台形状の横断面形状を有する短筒状に形成され、内部に収納空間7を有している。またリテーナ3は、その前面部に収納空間7の先端部を塞ぐようにしてリテーナカバー8が組み付けられ、一方、リテーナ3の裏面部つまり収納空間7の基端部には、保持孔9が径方向中心に設けられている。
【0020】
このようなリテーナ3によるエアバッグ4とインフレータ5の収納保持は以下のようにしてなされている。エアバッグ4は、インフレータ差込口を有しており、そのインフレータ差込口が収納空間7の基端部に向くようにした折り畳み状態で収納空間7に納められている。また、エアバッグ4は、後述のようにしてリテーナ3に保持させるインフレータ5の一部がインフレータ差込口に差し込まれた状態となるとともに、インフレータ差込口の周縁部を固定部材11で保持孔9の周縁部に圧締して固定される。このようにしてリテーナ3に収納保持されたエアバッグ4は、その作動時にリテーナカバー8が開裂することで膨張展開する。一方、インフレータ5は、フランジ部12を有しており、保持孔9に嵌合させた状態でフランジ部12を介して保持孔9の周縁部にボルト止めすることにより、リテーナ3に保持されている。なお、インフレータ5は、エアバッグ4とともにリテーナ3の上記表面側に取り付けられていてもよい。
【0021】
接点用部材6a〜6cは、前述のホーンスイッチ機構のためのホーンスイッチ用接点部14をそれぞれ備えている。本実施形態では、3個の接点用部材6a〜6cにおいて、全体として二等辺三角形の各頂点配置(図3中の想像線TR参照)となるような3か所にホーンスイッチ用接点部14が設けられている。各ホーンスイッチ用接点部14は、溶着突起13により取り付けられており、ステアリングホイール2に接点受け部として設けられている固定接点(図示せず)に接触して導通することにより、図示しないホーンを吹鳴させることができる。各接点用部材6a〜6cは、上記ホーンスイッチ用接点部14とこれに交差する接続バー部15とからなり、平面視(図3の状態)で概略T字状の形状パターンとなるように形成されている。なお、接点用部材の数は3個には限られず、それ以上の個数であってもよい。例えば4個の接点用部材が設けられる場合、全体として四角形(正方形や台形等を含む)の各頂点配置となる4か所にホーンスイッチ用接点部がそれぞれ配置され、ステアリングホイール2の対応する位置に設けた4つの固定接点にそれぞれ接触する構成としてもよい。
【0022】
これら接点用部材6a〜6c(以下適宜、これらを総称して単に「接点用部材6」という)は、ホーンスイッチ用接点部14が外向きとなるようにして、リテーナ3の裏面部に固定的に取り付けられている。その取付けにおける配置は、上述したように、接点用部材6a〜6cそれぞれのホーンスイッチ用接点部14が、二等辺三角形各頂点配置となってインフレータ5の周囲に配列されている。この結果、各接点用部材6a〜6cは、互いに分離した配置となっている。
【0023】
ここで、上記のように互いに分離させて配置された接点用部材6a〜6cは、それぞれのホーンスイッチ用接点部14の接点機能に関する同等化を図るために電気的に一体化させる必要がある。そのために、リテーナ3に保持されている金属製部材を利用する。本実施形態では、特に上記金属製部材としてインフレータ5を利用しており、インフレータ5を介して各接点用部材6a〜6cが互いに電気的に接続される。
【0024】
具体的には、図4に示すように、接続バー部15の先端部をインフレータ5のフランジ部12と保持孔9の周縁部の間に挟持させる。これにより、接続バー部15がインフレータ5のフランジ部12に強固に接触し、電気的にインフレータ5に接続される。その際、リテーナ3の裏面部における凹凸構造に接続バー部15を対応させるために、接続バー部15に折曲げ構造を形成している。具体的には、鉤形に曲折する一段目折曲部15aと、これとは逆向きの鉤形に曲折する二段目折曲部15bと、からなる折曲げ構造が接続バー部15に形成されている。この折曲げ構造により、リテーナ3の裏面部における凹凸構造に、接続バー部15を対応させている。
【0025】
以上のようにしてインフレータ5を介して互いに電気的に接続させた各接点用部材6a〜6cは、その接点機能を発揮させるために電源線(ないし接地線)と接続させる必要がある。そのため、本実施形態では、インフレータ5にハーネス連結部16を設け、このハーネス連結部16を介してインフレータ5にワイヤハーネス(破線で略示)21が接続される。つまり各接点用部材6a〜6cのワイヤハーネス21への接続は、インフレータ5を介してなさせる。
【0026】
そして、上記構成のエアバッグ装置1は、リテーナ3の裏面部に設けられた取付け脚17及びコイルばね18を介し、ステアリングホイール2に取り付けられる。取付け脚17は、リテーナ3の裏面部から外側に向けて立設されており、ホーンスイッチ用接点部14の前述の二等辺三角形各頂点配置に対応した配置で3か所で設けられている。これら各取付け脚17は、エアバッグ装置1のステアリングホイール2への取付け時に、ステアリングホイール2に設けられている挿通孔(図示せず)に挿通されて係止される。これにより、エアバッグ装置1は、ステアリングホイール2に対する進退動や傾動等の動作を可能としつつ、ステアリングホイール2へ取り付けられる。
【0027】
このとき、コイルばね18は、取付け脚17を囲むようにして取付け脚17ごとに設けられている。そして、コイルばね18は、上述のよう進退道・傾動等の動作を可能とするエアバッグ装置1の取付け状態において、エアバッグ装置1がステアリングホイール2から離間する方向へ付勢する。つまり、コイルばね18の上記離間方向への付勢により、ホーンを鳴らすために運転者がエアバッグ装置1を押圧する時以外は、上記固定接点にホーンスイッチ用接点部14が接触するのが防止される。
【0028】
以上説明したように、本実施形態のエアバッグ装置1においては、1つのホーンスイッチ用接点部14ごとに接点用部材6が配置される。この結果、各接点用部材6の形状パターンを、シンプルで材料歩留り性の高い形状パターンとすることができる。また、各接点用部材6のサイズを小さくすることができる。その結果、複数の接点用部材6を、金属板から抜き加工などで作製する際の材料歩留りを改善することができる。特に、本実施形態では、接点用部材6がホーンスイッチ用接点部14と接続バー部15からなり、平面視で概略T字状となる形状パターンで形成されている。こうした形状パターンは、シンプルである。したがって、例えば前述の従来技術(特開2007-50876号公報)のようにインフレータの周囲を囲むように概略U字状形状の接点用部材を用いる場合に比べ、上記抜き加工などで接点用部材6を作製する際の材料歩留りを大幅に改善することができる。この結果、より低コスト化を図ることができる。
【0029】
また、リテーナ3内に設けられるインフレータ5の導電性を活用して各接点用部材6を互いに電気的に接続することで、上記のように個別に分離して構成される複数の接点用部材6を電気的に一体化することができる。これにより、各接点用部材ごとにワイヤハーネスを接続して電気的な一体化を図る場合に比べて、確実に低コスト化を図ることができる。
【0030】
図5に、本発明の第2の実施形態によるエアバッグ装置1′の構成を示す。図5は、第1の実施形態における図3と同様、エアバッグ装置1′を裏面側から見た状態を示している。上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0031】
図5において、本実施形態のエアバッグ装置1′は、基本的には第1実施形態のエアバッグ装置1と同様であり、上記第1実施形態の接点用部材6a,6b,6cと同様に3つ設けられる接点用部材6a′,6b,6cのワイヤハーネスへの接続の仕方が、上記接点用部材6a,6b,6cと相違しているだけである。
【0032】
すなわち、接点用部材6a′は、そのホーンスイッチ用接点部14にハーネス連結部42が一体的に設けられており、このハーネス連結部42を介してワイヤハーネス21が接続される。つまり接点用部材6a′については、ハーネス連結部42によりワイヤハーネス21に直接的に接続し、接点用部材6b,6cについては、接点用部材6a′及びインフレータ5を介してワイヤハーネス21への接続がなされる。このような本実施形態のエアバッグ装置1′は、第1の実施形態のエアバッグ装置1に比べて部品点数が少なくて済むという利点がある。すなわち第1の実施形態のエアバッグ装置1で必要となるインフレータ5のハーネス連結部16が不要となり、それだけ部品点数が少なくて済む。
【0033】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、これは代表的な例に過ぎず、本発明はその趣旨を逸脱することのない範囲で様々な形態で実施することができる。例えば上記の形態はインフレータを各接点用部材の電気的な接続介在用の金属製部材としていたが、これに限られず、他に適切な金属製部材がリテーナに保持されていれば、それを利用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 エアバッグ装置
1′ エアバッグ装置
2 ステアリングホイール
3 リテーナ
4 エアバッグ
5 インフレータ(金属製部材)
6a〜c 接点用部材
14 ホーンスイッチ用接点部(ホーンスイッチ用接点)
16 ハーネス連結部
42 ハーネス連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングホイールに設けられるエアバッグ装置であって、
エアバッグと、
前記エアバッグに膨張展開用ガスを供給するインフレータと、
前記エアバッグ及び前記インフレータを保持するリテーナと、
所定の配置で互いに分離して前記リテーナに設けられた複数の接点用部材と、
所定の配置で前記複数の接点用部材にそれぞれ設けられ、前記ステアリングホイールに設けられた複数の接点受け部にそれぞれ接触することでホーンを吹鳴させる、複数のホーンスイッチ用接点と、
を有し、
前記複数の接点用部材は、
前記リテーナに保持されている金属製部材を介し、互いに電気的に接続されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1記載のエアバッグ装置において、
前記金属製部材は、前記インフレータである
ことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のエアバッグ装置において、
前記接点用部材のいずれか1つ又は前記金属製部材にハーネス連結部が設けられており、
前記接点用部材又は前記金属製部材は、前記ハーネス連結部を介し、ワイヤハーネスが接続されている
ことを特徴とするエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−95225(P2013−95225A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238423(P2011−238423)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】