説明

エッチング方法、これに用いられるシリコンエッチング液、及び半導体基板製品の製造方法

【課題】多結晶シリコン及び/又はアモルファスシリコンについて、シリコン等を的確かつ高速に除去し、一方で残される電極部材等を損傷させずに維持することができるシリコンエッチング液及びこれを用いたエッチング方法、これを用いた半導体基板製品を提供する。
【解決手段】アニオン性基を有する炭素数3以上の化合物と硝酸とフッ化水素酸とを水性媒体中に含有するシリコンエッチング液を準備し、該シリコンエッチング液を多結晶シリコン及び/又はアモルファスシリコンからなるシリコン膜に適用して、キャパシタとなる凹凸形状を形成するエッチング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング方法、これに用いられるシリコンエッチング液、及び半導体基板製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DRAMのキャパシタ構造としてコンケーブ型が採用されてきた。この構造では、シリンダ孔内に下部電極膜を形成し、その内側面のみを電極として機能させる。これによれば、確かにキャパシタの占める面積を小さくすることができるが、シリンダ孔の径も必然的に縮小する。一方でDRAMのデバイス動作に必要な容量は確保しなければならない。この両者を満たすため、シリンダ孔の深さは益々深くなり、その微細加工技術面での対応が難しくなってきている。かかる状況に対応して、シリンダ構造の下部電極の内側のみならず外側も使用し、キャパシタのアスペクト比を低減することができるクラウン型キャパシタも提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記のようにキャパシタ構造のアスペクト比を抑える努力はされているものの、微細なシリンダ構造やその孔を精度良く加工して形成することは、それ自体容易ではない。通常、この加工はウエットエッチングによって行われている。すなわち、エッチング液により、ナノメートル〜サブマイクロメートルサイズで深さのあるシリンダ壁をもつ筒状構造を半導体基板に残すよう、その内外の部材を除去しなければならない。特にシリンダ孔内の除去は、包囲された空間から材料をえぐり取るように除去しなければならず、ウエットエッチングにより行う加工として困難を伴う。その加工性を重視してエッチング力の高い溶液を適用することも考えられるが、その作用により電極やその他の部位を腐食させてしまう懸念がある。
【0004】
シリコンに対して高いエッチング性を示す処理液として硝酸とフッ酸とを組み合わせたものがある。ただし、これだけではシリコンに対する反応性が高すぎ、発泡による不具合などがあり、バッファとなる酢酸や水などを相当量添加して、単結晶シリコンの反応性が調整されている(特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−199136号公報
【特許文献2】特開2006−206374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような近時採用されているキャパシタ構造を始め、シリコン等の良好な除去を可能とするエッチング液については、いまだ十分な研究開発が進められていない。特に本発明者らは、シリコン等を的確かつ高速で除去し、一方で残される電極部材等には損傷を与えない選択的なエッチングをすることが、素子としたときの製造品質の向上等の観点から重要であると考えた。そして、特に近年その使用が拡大されつつある多結晶シリコン及び/又はアモルファスシリコンのエッチング性について研究を行った。
そこで、本発明は、多結晶シリコン及び/又はアモルファスシリコンについて、シリコン等を的確かつ高速に除去し、一方で残される電極部材等を損傷させずに維持することができるシリコンエッチング液及びこれを用いたエッチング方法、これを用いた半導体基板製品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は以下の手段により解決された。
(1)アニオン性基を有する炭素数3以上の化合物と硝酸とフッ化水素酸とを水性媒体中に含有するシリコンエッチング液を準備し、該シリコンエッチング液を多結晶シリコン及び/又はアモルファスシリコンからなるシリコン膜に適用して、キャパシタとなる凹凸形状を形成するエッチング方法。
(2)前記アニオン性基を有する炭素数3以上の化合物が、アミノ酸化合物またはアニオン界面活性剤である(1)に記載のエッチング方法。
(3)前記アニオン性基を有する炭素数3以上の化合物の液全量中の濃度を20質量%以下とする(1)または(2)に記載のエッチング方法。
(4)前記アニオン性基を有する炭素数3以上の化合物が、塩基性アミノ酸化合物または炭素数10以上のアニオン界面活性剤である(1)〜(3)のいずれか1項に記載のエッチング方法。
(5)前記シリコンエッチング液中の前記硝酸の濃度が30質量%超である(1)〜(4)のいずれか1項に記載のエッチング方法。
(6)前記シリコンエッチング液中の前記フッ化水素酸の濃度が6質量%以下である(1)〜(5)のいずれか1項に記載のエッチング方法。
(7)前記凹凸形状部が前記シリコンエッチング液により除去されてなるシリンダ孔を有してなる(1)〜(6)のいずれか1項に記載のエッチング方法。
(8)前記キャパシタ構造を構成する凹凸形状部が、前記エッチング液の適用によるエッチングによっても除去されないTi化合物、Hf化合物、SiNおよびWから選ばれる少なくとも1種を含んでなる(1)〜(7)のいずれか1項に記載のエッチング方法。
(9)前記キャパシタ構造を構成する凹凸形状部が、前記エッチング液の適用によるエッチングによっても除去されないTiNである(8)に記載のエッチング方法。
(10)前記シリンダ孔がアスペクト比15以上である(1)〜(9)のいずれか1項に記載のエッチング方法。
(11)前記アニオン界面活性剤が、炭素数10以上のカルボン酸化合物、炭素数10以上のスルホン酸化合物、及び炭素数10以上のホスホン酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である(2)〜(10)のいずれか1項に記載のエッチング方法。
(12)前記塩基性アミノ酸化合物が、アルギニンまたはヒスチジンである(3)〜(10)のいずれか1項に記載のエッチング方法。
(13)多結晶シリコン膜及び/又はアモルファスシリコン膜からなるシリコン膜を有する半導体基板を準備する工程、及び
前記半導体基板に特定のエッチング液を適用し、前記シリコン膜の少なくとも一部をエッチングする工程を含む半導体基板製品の製造方法であって、
前記特定のエッチング液として、前記アニオン性基を有する炭素数3以上の化合物と硝酸とフッ化水素酸とを水性媒体中に含有するシリコンエッチング液を使用する半導体基板製品の製造方法。
(14)前記半導体基板を準備する工程において、前記シリコン膜を含む多層膜構造を形成し、かつ前記半導体基板に凹凸を形成しておき、その後、
前記凹凸表面の少なくとも上面と凹部壁面とに導電膜を形成する工程と、
前記導電膜上に埋設膜を付与して前記凹部を該埋設膜で充填する工程と、
前記上面に付与された導電膜部分および前記埋設膜の一部を除去して、前記半導体基板のシリコン膜を露出させる工程とを有し、次いで、
前記シリコン膜のエッチング工程において、前記半導体基板に前記エッチング液を付与して、前記凹部壁面の導電膜は残しつつ、前記露出したシリコン膜と前記埋設膜とを除去する(13)に記載の半導体基板製品の製造方法。
(15)前記導電膜がTi化合物、Hf化合物、SiNおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1種である(13)又は(14)に記載の半導体基板製品の製造方法。
(16)半導体基板として実質的に平らな面をもつものを準備し、該半導体基板の表面に前記エッチング液を適用し、前記シリコン膜と前記埋設膜とを除去して、その除去された部分を凹部とし、基板内に残された前記導電膜を含む凸部をキャパシタの電極とする(13)〜(15)のいずれか1項に記載の半導体基板製品の製造方法。
(17)多結晶シリコン膜及び/又はアモルファスシリコン膜を除去するシリコンエッチング液であって、前記アニオン性基を有する炭素数3以上の化合物と、硝酸と、フッ化水素酸とを、水性媒体中に含有するシリコンエッチング液。
(18)前記硝酸の濃度が30質量%超である(17)に記載のシリコンエッチング液。
(19)前記アニオン性基を有する炭素数3以上の化合物が20質量%以下とする(17)又は(18)に記載のシリコンエッチング液。
(20)(13)〜(16)のいずれか1項に記載の半導体基板製品の製造方法により得られた半導体基板製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多結晶シリコン及び/又はアモルファスシリコンの構成材料を的確かつ高速で除去することができる。さらに、必要により、シリンダ構造をもつ電極で構成されたキャパシタ構造にも対応することができ、電極部材等の損傷を抑制しつつ、多結晶シリコン膜及び/又はアモルファスシリコン膜を選択的に除去することができるという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に適用されるキャパシタ構造の作製工程例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に適用されるキャパシタ構造の作製工程例を模式的に示す断面図である(図1のつづき)。
【図3】本発明に適用されるキャパシタ構造の作製工程例を模式的に示す断面図である(図2のつづき)。
【図4】本発明に適用されるキャパシタ構造の作製工程例を模式的に示す断面図である(図3のつづき)。
【図5】本発明に適用されるキャパシタ構造の別の例を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明に適用されるキャパシタ構造の作製工程例を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明に適用されるキャパシタ構造の平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[キャパシタ構造の形成]
まず、本発明に係るエッチング液について説明する前に、本発明において好適に採用することができるキャパシタ構造の製造例について添付の図面に基づき説明する。なお、下記詳細な説明ではキャパシタ構造の形成について主に説明するが、本発明がこれに限定して解釈されるものではない。
【0011】
(工程a)
本実施形態の製造例においては、シリコンウエハ3の上に第1の成形膜1と第2の成形膜2が形成されている。第1の成形膜1はシリンダ孔の開孔時のエッチングストッパー膜であり、第2の成形膜2と異方性ドライエッチングプロセスでエッチングレート比を有する膜である。第1の成形膜1としては、例えばLP−CVD(Low-pressure Chemical Vapor Deposition)プロセスで形成した窒化膜等が挙げられる。一方、第2の成形膜2には多結晶シリコンもしくはアモルファスシリコンの膜が挙げられる。さらに図示していないが保護膜を設けてもよい。
なお、シリコンウエハ3は大幅に簡略化して単層のものとして示しているが、通常はここに所定の回路構造が形成されている。たとえば、分離絶縁膜、ゲート酸化膜、ゲート電極、拡散層領域、ポリシリコンプラグ、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、ビット線、金属プラグ、窒化膜、プラズマ酸化膜、BPSG膜などを用いたものが挙げられる(例えば前記特許文献1参照)。また、図1〜6においては、特にハッチングを付して示していないが、各部材の断面を示している。
【0012】
(工程b)
次に、フォトリソグラフィー工程を用いてフォトレジスト4をパターンニングした後、異方性ドライエッチングにて開孔する(凹部Ka)。このときのフォトレジスト4及びドライエッチングの手法については、この種の製品に適用される通常の物あるいは方法を適用すればよい。
【0013】
(工程c)、(工程d)
さらに、開孔後に凹部Kaの壁面Waと成形膜(シリコン膜)2の上面Wbに沿って、TiNからなる導電膜5及び導電膜5を保護するための埋設膜6(例えば多結晶シリコンもしくはアモルファスシリコンの膜)を順次成膜する。このとき中間的に(導電膜5形成後に)形成される凹部をKbとして示している。
【0014】
(工程e)
埋設膜6の成膜後はCMP(Chemical Mechanical Polishing)にてウエハ表面の埋設膜6及び導電膜5(図2,3)の一部を除去し、エッチバックラインEまで露出させる。ここで、第2の成形膜2及び埋設膜6をウエットエッチングにより除去する。本発明においてはこの工程が重要であり、後述する本発明に係るエッチング液が高い効果を発揮する。この工程を経て、シリンダ孔Kcを有するキャパシタの下部電極(シリンダ壁)50(図3)が形成される。シリンダ孔壁の深さhは特に限定されないが、この種のデバイスの通常の構造を考慮すると、500〜2000nmであることが実際的である。なお、本発明のエッチング液は上記のようにエッチバック等により平滑にされた面に適用することが好ましく、そこから埋設膜を除去して、トレンチ構造を形成することが好ましい。
【0015】
(工程f)
上記のようにして形成したキャパシタの下部電極50形成後に、容量絶縁膜9を形成し、次いでプレート電極(上部電極)(図示せず)の形成を順次行うことでキャパシタ構造10が形成できる。なお、本明細書においてキャパシタ構造とは、キャパシタそのものであっても、キャパシタの一部を構成する構造部であってもよく、図4に示した例では、下部電極50と容量絶縁膜9とから構成されるものとしてキャパシタ構造10を示している。なお、図示したものでは下部電極50とウエハ3とを成形膜1で隔てた構成として示しているが、必要により同図の断面もしくは別の位置で両者が電気的に接続された構成であるものとして解してよい。例えば、成形膜1の部分にプラグ構造やダマシン構造を形成して導通を確保する構造であったり、下部電極50を成形膜1を貫通する形で形成したものであったりしてもよい。また、容量絶縁膜は下部電極50のみではなく、その他の基板表面に形成されていてもよい。
【0016】
図5は上記実施形態のキャパシタ構造の変形例を示している。この例では下部電極(シリンダ構造)の底部81と主要部82とは別の材料で構成されている。例えば、底部81をSiで構成し、主要部82をTiNで構成する例が挙げられる。
【0017】
(工程a’)
図6は上記実施形態の製造例の変形例を示している。シリコンウエハ3の上に第1の成形膜1と第2の成形膜2と第3の成形膜21と第4の成形膜31とが順に形成されている。第1の成形膜1はシリンダ孔の開孔時のエッチングストッパー膜であり、第2の成形膜2は異方性ドライエッチングプロセスでエッチングレート比を有する膜である。第1の成形膜1としては、たとえばLP−CVDプロセスで形成した窒化膜等が挙げられる。第2の成形膜2と第3の成形膜21と第4の成形膜31は、異方性ドライエッチングでのエッチングレート比がなく、等方性エッチングにてエッチングレート比の得られる膜の組み合わせが好ましく、さらにキャパシタ形成時に第2の成形膜2と第3の成形膜21と第4の成形膜31を同じウエットエッチング液で一度に除去できる膜で形成することが好ましい。
等方性エッチングでのエッチングレート比は、第2の成形膜2と第4の成形膜31が同等のエッチングレートを有し、第3の成形膜21は第2の成形膜2と第4の成形膜31に比べて大きいエッチングレートを有する膜であることが好ましい。さらに第2の成形膜2と第4の成形膜31は同じ膜を適用しても異なる膜を適用してもよい。さらに図示していないが、保護膜を設けてもよい。なお、シリコンウエハ3は大幅に簡略化して単層のものとして示しているが、上述のとおり通常はここに所定の回路構造が形成されている。また、図6においては、特にハッチングを付して示していないが、各部材の断面を示しており、図7においては平面図を示している。
【0018】
(工程b’)
次に、フォトリソグラフィー工程を用いてフォトレジスト4をパターンニングした後、異方性ドライエッチングにて開孔する(凹部Ka)。このときのフォトレジスト4及びドライエッチングの手法については、この種の製品に適用される通常の物あるいは方法を適用すればよい。
開孔後に等方性エッチングを行い、第3の成形膜21の部分に凹部Vaを形成した後、電極保護膜7を成長させる。電極保護膜7はキャパシタ形成時の第2の成形膜2と第3の成形膜21と第4の成形膜31の除去に用いるエッチング液に対して十分なエッチングレート比を有する成形膜であることが好ましく、さらに凹部Kaの全体に均一に成膜でき、かつ凹部Kaの中腹部に形成した凹部7を完全に埋設できる膜であることが好ましい。たとえば、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いた窒化膜や五酸化タンタル(Ta)膜等が挙げられる。
電極保護膜7の成長後、等方性エッチングにより電極保護膜7を除去する。このとき、凹部Va内の電極保護膜7は除去されずに残る。
【0019】
(工程c’)
上記工程(c)〜(f)と同様にして、シリンダ孔Kcを有するキャパシタの下部電極(シリンダ壁)50が形成される。上記の製造例と同様にして、キャパシタの下部電極50形成後に、容量絶縁膜9を形成し、次いでプレート電極(上部電極)(図示せず)の形成を順次行うことでキャパシタ構造が形成できる。なお、本明細書においてキャパシタ構造とは、キャパシタそのものであっても、キャパシタの一部を構成する構造部であってもよい。
【0020】
[シリコンエッチング液]
次に、上記工程eにおいて説明したウエットエッチングに極めて効果的に用いることができる本願発明のシリコンエッチング液の好ましい実施形態について説明する。本実施形態のエッチング液においては、硝酸、フッ化水素酸、及び下記特定の表面保護剤を適用することにより、電極等の部材を傷めずに、上述のような凹凸形状のあるキャパシタ構造の形成に係る多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の除去を的確に行うことを可能にした。特に本発明によれば図3および図6で示されるようなアスペクト比が高く、深さのあるシリンダ孔Kcや、図6のKdのような複雑なエッチング形状でも多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の除去を的確に行うことができる。
【0021】
(硝酸)
硝酸の含有量は、本実施形態のエッチング液の全量に対して、30質量%超70質量%以下の範囲内で含有することが好ましく、50〜65質量%を含有することがより好ましい。上記下限値以上とすることで、多結晶シリコンやアモルファスシリコンに対して工業的な生産性を考慮して十分なエッチング速度を確保する点で好ましい。特に、本実施形態においては、上記下限値を境にエッチング性が飛躍的に向上するため、好ましい。このように比較的多量の硝酸を用いることは本実施形態における多結晶シリコンないしアモルファスシリコンのエッチングに特に適した事項であり、後記アルミニウム系金属のエッチングのように少量で適用するものとは特徴を異にする点である。
上記上限値以下とすることで、凹凸形状のキャパシタに対する防食効果を示し、多結晶シリコンやアモルファスシリコンをエッチングするといった、高いエッチング選択性を一層効果的に示す点で好ましい。
【0022】
(フッ化水素酸)
フッ化水素酸の含有量は、本実施形態のエッチング液の全量に対して、6質量%以下の範囲内で含有することが好ましく、0.5〜2.0質量%を含有することがより好ましい。上記上限以下とすることで、一層際立ったエッチング選択性を実現することができ、かつ安全に取り扱うことができるので好ましい。上記下限以上とすることで、凹凸形状のキャパシタに対する防食効果を示し、多結晶シリコンやアモルファスシリコンをエッチングするといった、高いエッチング選択性を一層効果的に示す点で好ましい。
【0023】
(表面保護剤)
本発明において、多結晶シリコン及び/又はアモルファスシリコンからなるシリコン膜に適用されるシリコンエッチング液は、電極部材等の表面保護剤としてアニオン性基を有する炭素数3以上の化合物(以下、単にアニオン性基含有化合物ということがある。)を含有する。本発明においてアニオン性基とは、特に限定されないが、典型的には、分子内の親水基の部分が水溶液中で解離してアニオンとなる、あるいはアニオン性を帯びる官能基を意味する。ここでアニオン性基を有する化合物は、水素原子を伴う酸として存在しても、それが解離したアニオンであっても、その塩であってもよい。アニオン性を帯びていれば、非解離性のものでもよく、酸エステルなども含まれる。本発明におけるアニオン性基を有する化合物は、アニオン界面活性剤またはアミノ酸化合物であることが好ましい。なお、アニオン性基を有するとは、少なくとも1つアニオン性基を有していればよく、複数のアニオン性基を含んでいてもよい意味である。
【0024】
(アニオン界面活性剤)
第一の形態としてのシリコンエッチング液は、電極部材等の表面保護剤としてアニオン界面活性剤を含有する。本発明においてアニオン界面活性剤とは、特に限定されないが、典型的には、親水基と親油基とを分子内に有し、親水基の部分が水溶液中で解離してアニオンとなる、あるいはアニオン性を帯びる化合物を意味する。ここでアニオン界面活性剤は、水素原子を伴う酸として存在しても、それが解離したアニオンであっても、その塩であってもよい。アニオン性を帯びていれば、非解離性のものでもよく、酸エステルなども含まれる。
【0025】
本実施形態におけるアニオン界面活性剤としては、炭素数3以上であり、炭素数5以上が好ましく、炭素数10以上のアニオン界面活性剤がより好ましい。上限は特にないが、炭素数20以下であることが実際的である。上記炭素数の下限値以上とすることで、効果的なエッチング選択性が得られる点で好ましい。
炭素数10以上のアニオン界面活性剤の具体例として、炭素数10以上のカルボン酸化合物、炭素数10以上のホスホン酸化合物、炭素数10以上のスルホン酸化合物が挙げられる。中でも、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、脂肪酸アミドスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルプロピオン酸、アルキルホスホン酸、脂肪酸およびそれらの塩が好ましい。
また、具体的には、エマールE−27C、ネオペレックスGS(以上、花王ケミカル製)、W004、W005、W017(以上、裕商(株)社製)等が挙げられる。これらのうち、炭素数10以上のスルホン酸化合物からなるアニオン界面活性剤が好ましく、なかでもアルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスホン酸がより好ましく、炭素数10〜16のアルキルスルホン酸もしくはアルキルスルホン酸塩がより特に好ましい。「塩」としてはアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、テトラメチルアンモニウム塩が挙げられる。
【0026】
本発明におけるアニオン界面活性剤は電極部材等の防食効果を示す。その詳細な理由は未解明の点を含むが、以下のものと推定される。
まず、多結晶シリコンやアモルファスシリコンは硝酸により酸化され、その酸化物をフッ化水素酸が溶解していく機構が考えられる。このとき、硝酸及びフッ化水素は、同様に相当程度のTiN等の電極部材を溶解していく(後記比較例c11参照)。これに対し、本発明では、前記アニオン界面活性剤がその親水基を介して電荷を帯びた電極部材表面に吸着することで、そこに保護膜が形成され、これにより硝酸やフッ化水素酸による溶解を防ぐ役割を果たしているものと推定される。また、アニオン界面活性剤をエッチング液に添加することで、エッチング液の粘度が好適化され、必要によりエッチングの面内均一性をさらに向上させる利点も期待される。なお、硝酸、フッ化水素酸、界面活性剤、酸化第二銅等を混合したエッチング液があるが(特公平5−30914号公報)、これはアルミニウム系金属のエッチングを行うものである。また、前述のように、硝酸及びフッ酸に酢酸を相当量含有させて用いた例はあるが(特開2006−206374号公報)、そこに開示された結果から、多結晶シリコンやアモルファスシリコンを効果的にエッチングし、しかもTiN等との選択的エッチングを達成できるかは予測しえない。
【0027】
アニオン界面活性剤の含有量は、本実施形態のエッチング液の全量に対して、20質量%以下で含有させることが好ましく、10質量%以下がより好ましく、0.001〜1.0質量%の範囲内で含有させることがさらに好ましく、0.001〜0.1質量%含有させることがさらに好ましく、0.005〜0.05質量%含有させることが特に好ましい。上記上限値以下とすることで、エッチング速度とエッチング選択性が一層良好となり、また発泡の抑制ができるため好ましい。上記下限値以上とすることは、部材の腐食抑制の観点で好ましい。
これらアニオン界面活性剤は、1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
なお、本明細書において「化合物」という語を末尾に付して呼ぶとき、あるいは特定の名称ないし化学式で示すときには、当該化合物そのものに加え、その塩、錯体、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、所定の形態で修飾された誘導体を含む意味である。また、本明細書において置換・無置換を明記していない置換基については、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換・無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Tが挙げられる。
(置換基T)
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルホンアミド基、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、シアノ基、又はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基又はハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基又はシアノ基が挙げられる。
【0029】
(アミノ酸化合物)
本実施形態の第二の形態としてのシリコンエッチング液は、特定表面保護剤としてアミノ酸化合物を含有する。アミノ酸の炭素数は3以上であるが、3〜12が好ましく、4〜9がより好ましい。上記炭素数の下限値以上とすることで、効果的なエッチング選択性が得られる点で好ましい。上限値は典型的にはアミノ酸の通常の炭素数により定まる。
アミノ酸化合物は一般的に使用されるアミノ酸化合物を用いることができる。具体的には、リシン、アルギニン、ヒスチジンアスパラギン酸、グルミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、アラニン、グリシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、システイン、プロリン、オルニチン、が挙げられる。特に塩基性アミノ酸化合物が好ましく、具体的には、リシン、アルギニン、ヒスチジンが挙げられる。この中でも、ヒスチジン、アルギニンが好ましく、ヒスチジンがより好ましい。
アミノ酸化合物の含有量は、本実施形態のエッチング液の全量に対して、20質量%以下で含有させることが好ましく、0.01〜20質量%の範囲内で含有させることがより好ましく、0.1〜10質量%含有させることがさらに好ましく、0.5〜5質量%含有させることが特に好ましい。上記上限値以下とすることで、シリコン溶解性を確保でき、エッチング速度とエッチング選択性が一層良好となるため好ましい。上記下限値以上とすることは、部材の腐食抑制の観点で好ましい。
これらアミノ酸化合物は1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0030】
本発明におけるアミノ酸化合物は電極部材の防食効果を示す。その詳細な理由は未解明の点を含み、以下のものと推定される。硝酸及びフッ化水素酸が多結晶シリコン及びアモルファスシリコンを溶解していく機構は前記アニオン界面活性剤の項で説明したものと同様である。このとき、何らかの吸着様式で(上記アニオン界面活性剤と同様でなくてもよい)、上記アミノ酸化合物が電極部材等の表面に付着し、電極表面に保護膜を形成していると推定される。また、アミノ酸化合物がエッチング液の粘度の好適化に資することもまた、上記アニオン界面活性剤と同様である。
【0031】
(水性媒体)
本発明のエッチング液は、水性媒体を媒体とする水系の液組成物であることが好ましい。水性媒体とは、水及び水に可溶な溶質を溶解した水溶液を言う。溶質としては、前記硝酸、フッ化水素酸、表面保護剤は含まれず、例えば、アルコールや無機化合物の塩が挙げられる。ただし、溶質を適用する場合でもその量は所望の効果を奏する範囲に抑えられていることが好ましい。また、上記水系の組成物とは、水性媒体が主たる媒体となっていることをいい、固形分以外の媒体の過半が水性媒体であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0032】
なお、本明細書において、特定の剤(成分)を組み合わせた液とは、当該剤を含有する液組成物を意味するほか、使用前にそれぞれの剤ないしそれを含有する液を混合して用いるキットとしての意味を包含するものである。また、半導体基板とは、ウエハのみではなくそこに回路構造が施された基板構造体全体を含む意味で用いる。半導体基板部材とは、上記で定義される半導体基板を構成する部材を指し1つの材料からなっていても複数の材料からなっていてもよい。なお、加工済みの半導体基板を半導体基板製品として区別して呼ぶことがあり、これに必要によりさらに加工を加えダイシングして取り出したチップ及びその加工製品を半導体素子という。
【0033】
なお、半導体基板の上下は特に定めなくてもよいが、本明細書において、図示したものに基づいて言えば、ウエハ3の側を下部(底部)の方向とし、導電膜5の側を上部(天部)の方向とする。
【0034】
(pH)
本発明のシリコンエッチング液は酸性であり、pH5以下に調整されていることが好ましい。この調整は上記硝酸およびフッ化水素酸の添加量を調整することで行うことができる。ただし、本発明の効果を損なわない限りにおいて、他のpH調整剤を用いて上記範囲のpHとしてもよい。シリコンエッチング液のpHは、さらに3以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。このpHが上記上限値以下であることで、十分なエッチング速度を得るとすることができる。上記pHに特に下限はないが、−2以上であることが実際的である。なお、本発明においてpHは特に断らない限り室温(25℃)においてHORIBA社製、F−51(商品名)で測定した値である。
【0035】
(その他の成分)
・有機溶剤の添加
本発明のシリコンエッチング液においては、さらに水溶性有機溶剤を添加してもよい。これにより、ウエハの面内における均一なエッチング性を更に向上しうる点で有効である。水溶性有機溶剤は、アルコール類(例えば、エチレングリコール、グリセリン、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、フルフリルアルコール、2−メチルー2,4-ペンタンジオール)、グリコール類(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピレングリコール)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル)が好ましい。添加量はエッチング液全量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。この量が上記下限値以上であることで、上記のエッチングの均一性の向上を効果的に実現することができる。一方、上記上限値以下であることで、多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜、その他金属膜に対しての濡れ性を確保するとすることができる。
【0036】
・界面活性剤の添加
本発明のシリコンエッチング液には、さらに別の界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び、両性界面活性剤を用いることができる。
【0037】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドからなるブロックポリマー系界面活性剤、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレントリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩系界面活性剤、またはアルキルピリジウム系界面活性剤が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ベタイン型界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤、イミダゾリン型界面活性剤、アミンオキサイド型界面活性剤が挙げられる。
【0038】
界面活性剤の含有量は、シリコンエッチング液の全質量に対して、好ましくは0.0001〜5質量%であり、より好ましくは0.001〜1質量%である。界面活性剤をシリコンエッチング液に添加することでシリコンエッチング液の粘度を調整し、エッチング対象物への濡れ性を改良することができるため好ましく、加えて基板や絶縁膜などに対する腐食性の両者がより優れるという点からも好ましい。このような界面活性剤は一般に商業的に入手可能である。これらの界面活性剤は、単独又は複数組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(被加工物)
本実施形態のエッチング液を適用することによりエッチングされる材料はどのようなものでもよいが、一般的なキャパシタの製造に用いられる基板材料として多結晶シリコン又はアモルファスシリコンが挙げられる。一方、キャパシタ構造の中核をなす電極材料は窒化チタン(TiN)が挙げられる。すなわち、本実施形態のエッチング液は、上記基板材料のエッチングレート(RSi)と電極材料のエッチングレート(RTi)との比率(RSi/RTi)が大きいことが好ましい。具体的な比率の値は材料の種類や構造にもよるので特に限定されないが、RSi/RTiが100以上であることが好ましく、200以上であることが好ましい。なお、本明細書においては、半導体基板をエッチングするようエッチング液を用いることを「適用」と称するが、その実施態様は特に限定されない。例えば、バッチ式のもので浸漬してエッチングしても、枚葉式のもので吐出によりエッチングしてもよい。
【0040】
加工されるキャパシタ構造の形状や寸法は特に限定されないが、上述したようなシリンダ構造を有するものとしていうと、そのシリンダ孔Kc(図3)のアスペクト比(h/d)が5以上である場合に特に本実施形態のエッチング液の高い効果が活かされ好ましい。同様の観点でアスペクト比が15以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。上限は特にないが、50以下であることが実際的である。シリンダ孔Kcの開口径dは特に限定されないが、本実施形態において効果が発揮され、近時のキャパシタ構造の微細化を考慮すると、20〜80nmであるものが好ましい。
下部電極間距離dは特に限定されていないが、近時のキャパシタ構造の微細化を考慮すると、20〜200nmであるものが好ましい。
本明細書におけるキャパシタの凹凸形状は、特に限定されないが、シリンダ(円柱状)孔、四角柱状、テーパー状、逆テーパー状といった孔形状であってもよい。
【0041】
さらに、上記の観点から、本発明においては、Ti化合物(例えば、TiN、Ti等)、Hf化合物(例えば、HfOx等)、SiN又はWからなる電極膜を少なくとも前記凹凸構造の壁面に残しつつ、前記多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜についてエッチングを行うことが好ましい。
また、前記多結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜を有する実質的に平らな面をもつ半導体基板を準備し、該半導体基板の表面に前記エッチング液を適用し、前記多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜及び埋設膜を除去して、その除去された部分を凹部とし、基板内に残された凸部をキャパシタとすることが好ましい。このとき、前記凹部の壁面にTiN等の電極膜が存在していることが好ましい。
本発明のエッチング方法はこれらの製造工程にのみ適用されるのではなく、特に制限なく種々のエッチングに用いることができる。
【0042】
(エッチング方式)
本発明で用いられるエッチング装置としては、特に限定されないが、枚葉式やバッチ式を用いることができる。枚葉式はウエハを1枚ずつエッチング処理する方式である。枚葉式の実施形態の一つとしては、スピンコーターでウエハ表面全体にエッチング液を行き渡らせてエッチングする方法である。バッチ式は、数枚から数十枚のウエハを1度にエッチングする方法である。バッチ式の実施形態の一つとしては、エッチング液で満たされた槽の中に複数のウエハを浸漬させてエッチングする方法である。
エッチング液の液温、エッチング液のスプレー吐出量、スピンコーターのウエハの回転数は、エッチング対象となるウエハの選択によって、適した値に選択して用いられる。
【0043】
本実施形態においてエッチングを行う条件は特に限定されないが、スプレー式(枚葉式)のエッチングであってもバッチ式(浸漬式)のエッチングであってもよい。スプレー式のエッチングにおいては、半導体基板を所定の方向に搬送もしくは回転させ、その空間にエッチング液を噴射して前記半導体基板に前記エッチング液を接触させる。必要に応じて、スピンコーターを用いて半導体基板を回転させながらエッチング液を噴霧してもよい。他方、バッチ式のエッチングにおいては、エッチング液からなる液浴に半導体基板を浸漬させ、前記液浴内で半導体基板とエッチング液とを接触させる。これらのエッチング方式は素子の構造や材料等により適宜使い分けられればよい。
【0044】
エッチングを行う環境温度は、スプレー式の場合、噴射空間を15〜100℃とすることが好ましく、20〜80℃とすることがより好ましい。エッチング液の方は20〜80℃とすることが好ましく、30〜70℃とすることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、金属層に対する十分なエッチング速度を確保することができ好ましい。上記上限値以下とすることにより、エッチングの選択性を確保することができ好ましい。エッチング液の供給速度は特に限定されないが、0.05〜1L/minとすることが好ましく、0.1〜0.5L/minとすることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、エッチングの面内の均一性を確保することができ好ましい。上記上限値以下とすることにより、連続処理時に安定した選択性を確保でき好ましい。半導体基板を回転させるときには、その大きさ等にもよるが、上記と同様の観点から、50〜400rpmで回転させることが好ましい。
【0045】
バッチ式の場合、液浴を20〜80℃とすることが好ましく、30〜70℃とすることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、エッチング速度を確保することができ好ましい。上記上限値以下とすることにより、エッチングの選択性を確保することができ好ましい。半導体基板の浸漬時間は特に限定されないが、0.5〜30分とすることが好ましい、1〜10分とすることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、エッチングの面内の均一性を確保することができ好ましい。上記上限値以下とすることにより、連続処理時に安定した選択性を確保でき好ましい。
【0046】
一般にシリコン材料として、単結晶シリコン、多結晶シリコン(ポリシリコン)、及びアモルファスシリコン(非晶質シリコン)が挙げられる。本発明ではこのうち、多結晶シリコン又はアモルファスシリコンを用いる。
単結晶シリコンとは、結晶全体にわたって原子配列の向きがそろったシリコン結晶のことであるが、実際には原子レベルで観察すると、様々な欠陥が存在する。
多結晶シリコンとは、結晶方位の異なる多数の単結晶粒から構成されたブロック又は層状のシリコンのことである。Siのみからなるものでも、ホウ素やリン等がドーピングされたものでもよい。その他、所望の効果を奏する範囲で上記と同様様々な欠陥や不純物が存在するものであってもよい。その製造方法も特に限定されず、CVD法により形成されたもの等が挙げられる。
アモルファスシリコンとは、非晶質半導体のうち、構成元素がシリコンであるものをいう。具体的には、以下のような、長距離周期構造を持たない状態のシリコンのことである。原子配列がまったくの無秩序に結合したものではなく、局所的には何らかの配列秩序は維持されているものを含む。無秩序に結合しているため、シリコン原子は共有結合の結合相手を失って、結合に関与しない電子で占められた未結合手(ダングリングボンド)が存在している。この未結合手を水素で結合させた(水素化した)ものを水素化アモルファスシリコンといい、安定な固体形状を有する。本明細書では、単にアモルファスシリコンと表記するが、水素化していないアモルファスシリコンと水素化しているアモルファスシリコンのどちらの場合も指す。
【0047】
再度説明するが、本発明においては、多結晶シリコンないしアモルファスシリコンをエッチング対象とする。ここでその意味について述べておく。
まず、単結晶シリコンは、面選択性があり、特定の面におけるエッチング速度が速い。その一方、特定の面以外の面ではエッチング速度が非常に遅いか、又はエッチングされない。多結晶シリコンやアモルファスシリコンにおけるエッチング速度にはそのような面選択性はないが、一般に、単結晶シリコンのエッチング速度が速い特定面に比しエッチング速度が遅くなる傾向にある。本発明のシリコンエッチング液は、このように単結晶シリコンとは異なるエッチング機構による、多結晶シリコン膜やアモルファスシリコン膜であっても高速にエッチングすることができ、しかもTiN等との選択的なエッチングを達成することができる。
【実施例】
【0048】
<実施例1、比較例1>
以下の表1に示す成分及び下記処方に示した組成(質量%)で含有させてエッチング液を調液した。
【0049】
<エッチング試験>
試験ウエハ:単結晶<100>シリコン上に製膜された500nmの膜厚の多結晶シリコンもしくは500nmの膜厚のアモルファスシリコンのウエハを準備した。TiN基板は、SVM製 standard 200mm Test wafers 5000A SiO/3000A TiN +/−5% を準備した。これらに対して、枚葉式装置(SPS-Europe B.V.社製、POLOS(商品名)))にて下記の条件でエッチングを行い、評価試験を実施した。SEM(Scaning Electron Microscope)でウエハ断面を撮影し、残存膜厚を測りエッチング速度を求めた。
・薬液温度:30℃
・吐出量:1L/min.
・ウエハ回転数500rpm
【0050】
【表1】

【0051】
【表1A】

【0052】
上記の結果より、本発明のエッチング液によれば、多結晶シリコン及び/又はアモルファスシリコンの工業的に十分に速いエッチングが可能であり、しかも窒化チタンのエッチングは抑えるという、優れたエッチング選択性を示すことが分かる。なお、c13は特開2006−206347号公報に開示のエッチング液に相当する。
【0053】
(実施例2、比較例2)
次に、以下の表2に示す成分及び下記処方に示した組成(質量%)で含有させてエッチング液を調液した。得られたエッチング液を用い、実施例1同様のエッチング試験を実施した。この結果を下記表2に示した。
【0054】
【表2】

【0055】
上記の結果より、本発明のエッチング液によれば、そのアミノ酸化合物を用いた実施形態においても、多結晶シリコン及び/又はアモルファスシリコンの工業的に十分に速いエッチングが可能であり、しかも窒化チタンのエッチングは抑えるという優れたエッチング選択性を示すことが分かる。なお、比較例としては、表1のc11〜c13がそれに相当し、これらと対比することができる。
【0056】
上表のとおり、アニオン界面活性剤またはアミノ酸化合物を含まない比較例では、TiNの選択的なエッチングができなかった。本発明のシリコンエッチング液によれば、多結晶シリコンやアモルファスシリコンに対して高いエッチング速度を示し、一方、TiNに対してはダメージを与えないという高いエッチング選択性を示した。
【符号の説明】
【0057】
1 第1の成形膜
2 第2の成形膜
3 シリコンウエハ
4 フォトレジスト
5 導電膜
6 埋設膜
7 電極保護膜
9 容量絶縁膜
10 キャパシタ構造
21 第3の成形膜
31 第4の成形膜
50 下部電極(シリンダ壁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性基を有する炭素数3以上の化合物と硝酸とフッ化水素酸とを水性媒体中に含有するシリコンエッチング液を準備し、該シリコンエッチング液を多結晶シリコン及び/又はアモルファスシリコンからなるシリコン膜に適用して、キャパシタとなる凹凸形状を形成するエッチング方法。
【請求項2】
前記アニオン性基を有する炭素数3以上の化合物が、アミノ酸化合物またはアニオン界面活性剤である請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記アニオン性基を有する炭素数3以上の化合物の液全量中の濃度を20質量%以下とする請求項1または2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記アニオン性基を有する炭素数3以上の化合物が、塩基性アミノ酸化合物または炭素数10以上のアニオン界面活性剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記シリコンエッチング液中の前記硝酸の濃度が30質量%超である請求項1〜4のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記シリコンエッチング液中の前記フッ化水素酸の濃度が6質量%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記凹凸形状部が前記シリコンエッチング液により除去されてなるシリンダ孔を有してなる請求項1〜6のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記キャパシタ構造を構成する凹凸形状部が、前記エッチング液の適用によるエッチングによっても除去されないTi化合物、Hf化合物、SiNおよびWから選ばれる少なくとも1種を含んでなる請求項1〜7のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記キャパシタ構造を構成する凹凸形状部が、前記エッチング液の適用によるエッチングによっても除去されないTiNである請求項8に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記シリンダ孔がアスペクト比15以上である請求項1〜9のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記アニオン界面活性剤が、炭素数10以上のカルボン酸化合物、炭素数10以上のスルホン酸化合物、及び炭素数10以上のホスホン酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2〜10のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記塩基性アミノ酸化合物が、アルギニンまたはヒスチジンである請求項3〜10のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項13】
多結晶シリコン膜及び/又はアモルファスシリコン膜からなるシリコン膜を有する半導体基板を準備する工程、及び
前記半導体基板に特定のエッチング液を適用し、前記シリコン膜の少なくとも一部をエッチングする工程を含む半導体基板製品の製造方法であって、
前記特定のエッチング液として、前記アニオン性基を有する炭素数3以上の化合物と硝酸とフッ化水素酸とを水性媒体中に含有するシリコンエッチング液を使用する半導体基板製品の製造方法。
【請求項14】
前記半導体基板を準備する工程において、前記シリコン膜を含む多層膜構造を形成し、かつ前記半導体基板に凹凸を形成しておき、その後、
前記凹凸表面の少なくとも上面と凹部壁面とに導電膜を形成する工程と、
前記導電膜上に埋設膜を付与して前記凹部を該埋設膜で充填する工程と、
前記上面に付与された導電膜部分および前記埋設膜の一部を除去して、前記半導体基板のシリコン膜を露出させる工程とを有し、次いで、
前記シリコン膜のエッチング工程において、前記半導体基板に前記エッチング液を付与して、前記凹部壁面の導電膜は残しつつ、前記露出したシリコン膜と前記埋設膜とを除去する請求項13に記載の半導体基板製品の製造方法。
【請求項15】
前記導電膜がTi化合物、Hf化合物、SiNおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項13又は14に記載の半導体基板製品の製造方法。
【請求項16】
半導体基板として実質的に平らな面をもつものを準備し、該半導体基板の表面に前記エッチング液を適用し、前記シリコン膜と前記埋設膜とを除去して、その除去された部分を凹部とし、基板内に残された前記導電膜を含む凸部をキャパシタの電極とする請求項13〜15のいずれか1項に記載の半導体基板製品の製造方法。
【請求項17】
多結晶シリコン膜及び/又はアモルファスシリコン膜を除去するシリコンエッチング液であって、前記アニオン性基を有する炭素数3以上の化合物と、硝酸と、フッ化水素酸とを、水性媒体中に含有するシリコンエッチング液。
【請求項18】
前記硝酸の濃度が30質量%超である請求項17に記載のシリコンエッチング液。
【請求項19】
前記アニオン性基を有する炭素数3以上の化合物が20質量%以下とする請求項17又は18に記載のシリコンエッチング液。
【請求項20】
請求項13〜16のいずれか1項に記載の半導体基板製品の製造方法により得られた半導体基板製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−55087(P2013−55087A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190144(P2011−190144)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】