説明

エッチング方法および電子デバイス

【課題】エッチング加工される被加工層の全面を、均一にエッチングすることが可能なエッチング方法を提供する。
【解決手段】本発明のエッチング方法は、水晶基板(基板)2に形成されたAu膜(被加工層)5を所定の形状に加工するための方法であって、Au膜5は、所定の形状である複数のSAWパターン3にエッチング加工され、このエッチング加工時において、水晶基板2をエッチング液21に浸漬した状態では、水晶基板2のAu膜5の側が下方へ向いて配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング方法、およびこのエッチング方法で加工した電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン半導体ウエハをエッチング加工する場合、エッチング液中で鉛直方向に保持していたが、シリコン半導体ウエハの各部分における加工速度は、シリコン半導体ウエハが大型化するに伴い、不均一になる傾向が顕著となっていた。これは、エッチング液中に浸漬したシリコン半導体ウエハの上部分と下部分とにおいて、エッチング加工により溶解された溶解部分の浮遊濃度差、エッチング加工の進行によるエッチング液の温度差および濃度差、等がシリコン半導体ウエハの各部分で異なってくることによる、と考えられる。そこで、複数のシリコン半導体ウエハをキャリアに収容し、エッチング液中において、隣り合うシリコン半導体ウエハを互いに反対方向に回転させる、エッチング方法が開示されている。この方法によれば、シリコン半導体ウエハのエッチング面近傍では、エッチング液が絶えず循環される状態となり、該エッチング面における加工速度の不均一さを軽減することが可能となった(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−186214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、エッチング方法に対し、極小幅で緻密な配線等の細密パターンを加工するために、該エッチング面の全面において、より均一なエッチング加工を施すことが求められている。しかし、従来の技術では、回転する該エッチング面の全面に均一なエッチング加工がなされるように、該エッチング面近傍へエッチング液を循環させるような制御は困難である、という課題があった。さらに、シリコン半導体ウエハを回転させる構成のため、該エッチング面の回転可能に保持される部分には、配線等の細密パターンを形成できない、という課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係るエッチング方法は、基板に形成された被加工層を所定の形状に加工するための方法であって、前記基板をエッチング液に浸漬した状態では、前記基板の前記被加工層の側が下方へ向いて配置されていることを特徴とする。
【0007】
このエッチング方法によれば、基板をエッチング液へ浸漬して、被加工層をエッチング加工する場合、基板は、被加工層の形成されている側が下向きとなるように配置されている。このように配置された被加工層は、エッチング液によって溶解されると、溶解部分が被加工層から離反してエッチング液の下方へ沈んでいく。これにより、被加工層に対してのエッチング加工が進行しても、溶解された被加工層が基板に沿って流動したり、基板の被加工層側へ堆積したりするようなこと等がない。また、複数の基板が浸漬された場合でも、溶解された被加工層は、エッチング液の下方へ沈んでいき、下方に保持された基板の被加工層と反対側面に沿って流動または堆積することはあっても、被加工層側へ流動または堆積することはない。一方、被加工層の溶解部分が被加工層側へ流動または堆積等すれば、被加工層の各部におけるエッチング液の組成や濃度等が変化し、被加工層が均一にエッチング加工されなくなる。これに対して、このエッチング方法は、被加工層の表面において、被加工層の溶解部分がエッチング液の加工作用を妨げるような現象をほぼ回避でき、被加工層を均一にエッチング加工することが可能である。なお、ここでいう基板とは、エッチング加工される被加工層が形成されるものを総称して指している。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係るエッチング方法において、前記基板を前記エッチング液中で保持するための保持部は、前記被加工層の下方へ向いた面以外の部位を保持していることが好ましい。
【0009】
この方法によれば、保持部は、被加工層におけるエッチング加工される面である下方へ向いた面を保持していない。つまり、保持部は、基板と、下方へ向いた面を除いた被加工層の部位と、のいずれかまたは両方を保持する構成である。これにより、被加工層は、下方へ向いた面の全面が確実にエッチング加工される。即ち、被加工層の下方へ向いた面は、保持部と接する等してエッチング加工されにくいような部分がなく、例えば、配線等の細密パターンを被加工層の全面へ確実に形成することが可能である。
【0010】
[適用例3]上記適用例に係るエッチング方法において、前記保持部は前記エッチング液中で前記基板を静止した状態に保持することが好ましい。
【0011】
この方法によれば、被加工層のエッチング加工による溶解部分は、被加工層から離反すると、重力により自然落下するようにしてエッチング液の下方へ沈んでいき、被加工層の近傍に留まらない。従って、被加工層の近傍のエッチング液は、溶解部分による濃度変化等の影響を受けにくくなるため、被加工層のほぼ均一なエッチング加工が行える状態を維持することが可能である。一方、エッチング液が流動していては、溶解部分が被加工層の近傍に濃淡を有して存することになり、被加工層の均一なエッチング加工が妨げられることがある。このエッチング方法のようにエッチング液を静止させれば、被加工層をより均一にエッチング加工することが可能である。
【0012】
[適用例4]上記適用例に係るエッチング方法において、前記被加工層は金属膜であることが好ましい。
【0013】
この方法によれば、金属膜は、金属膜以外の膜に比べて、比重が大きい傾向があるため、被加工層のエッチング加工による溶解部分は、エッチング液の下方へ速く沈んでいき、被加工層近傍に長く留まることがない。これにより、基板の被加工層は、溶解部分の影響がより排除でき、より均一なエッチング加工が行える状態を維持することが可能である。
【0014】
[適用例5]上記適用例に係るエッチング方法において、前記金属膜はAuまたはAu合金であることが好ましい。
【0015】
この方法によれば、金属膜であるAuまたはAu合金は、金属の中で比重が大きい部類に属しており、そのため、エッチング加工後、被加工層から離反してエッチング液の下方へ、ほぼ最速で、沈んでいくことが可能である。これにより、基板の被加工層は、溶解部分の影響をほぼ排除して、均一なエッチング加工を行うことが可能である。
【0016】
[適用例6]本適用例に係る電子デバイスは、上記適用例に記載のエッチング方法によって形成された基板を有することを特徴とする。
【0017】
この電子デバイスによれば、細密なパターンの形成等が可能なエッチング方法により加工された基板を有しており、高密度の実装等が可能となる。これにより、液晶表示装置等の表示装置類、圧電体デバイス、半導体装置等の電子デバイスのより高密度実装や小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)SAWパターンが形成されたウエハを示す平面図、(b)SAW共振片を示す平面図。
【図2】ウエハのエッチング加工状態を示す断面図。
【図3】ウエハを保持するためのキャリアを示す斜視図。
【図4】(a)キャリアに保持されたウエハを示す平面図、(b)キャリアに保持されたウエハを示す断面図。
【図5】液晶表示装置の構成を示す断面図。
【図6】樹脂コアバンプの構成を示す断面図。
【図7】(a)回路基板が形成されたウエハを示す平面図、(b)回路基板に形成された樹脂コアバンプを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明のエッチング方法および電子デバイスの具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。まず、基板である水晶基板にSAW(Surface Acoustic Wave、弾性表面波)パターンが形成されたウエハを例にして、SAWパターンを形成するためのエッチング方法について説明する。なお、図面では、細部が分かりやすいように、部分的に実物とは異なった縮尺で描いてある。
(実施形態1)
【0020】
図1(a)は、SAWパターンが形成されたウエハを示す平面図であり、図1(b)は、SAW共振片を示す平面図である。図1(a)に示すように、ウエハ1は、圧電体である水晶からなる水晶基板(基板)2と、水晶基板2の主面となる表面2aに形成された複数のSAWパターン3と、を有している。それぞれのSAWパターン3は、水晶基板2が切断予定線4に沿って切断されて、図1(b)に示すようなSAWパターン3を有するSAW共振片10として、個別に取り出される。図1(a)は、40個のSAWパターン3が形成されたウエハ1の場合が示されている。
【0021】
ウエハ1を矩形に切断して取り出されたSAW共振片10は、図1(b)に示すように、その表面2aの中央に、1組の電極11aおよび11bによって交叉指電極(IDT:Inter Digital Transducer)11が構成されている。また、この交叉指電極11の長手方向の両側に格子状の反射器12aおよび12bがそれぞれ形成されている。そして、SAW共振片10の長手方向の縁に沿って、電極11aおよび11bにそれぞれ繋がった導通用のボンディングランド13aおよび13bが、形成されている。このボンディングランド13に、外部からワイヤーボンディングすることによって電気的な接続が得られるようになっている。
【0022】
これら電極11a,11b、反射器12a,12bおよびボンディングランド13a,13bは、SAWパターン3をなすものであって、導電性を確保するため、この場合、Au(金)を用いて形成されている。そして、電極11a,11b、反射器12a,12bは、等間隔で均一な極細線であることが要求されている。なお、交叉指電極11、反射器12およびボンディングランド13の形成には、アルミニウム、銅、またはAuを含めこれらの合金等を用いることも可能である。また、SAW共振片10の機能については、公知であり、ここでは説明を省略する。
【0023】
ウエハ1の作成は、まず、水晶基板2の表面2aにAu膜を形成し、このAu膜をエッチング加工してSAWパターン3を形成する方法が知られている。図2は、ウエハのエッチング加工状態を示す断面図であり、1枚の水晶基板2のエッチング方法を模式的に描いている。図2に示すように、水晶基板2の表面2aには、金属膜であるAu膜(被加工層)5がスパッタリング等で形成されている。このエッチング方法は、Au膜5をエッチング槽20のエッチング液21に浸漬して、SAWパターン3を形成することにおいて、有効な特徴を有している。その特徴は、水晶基板2が、Au膜5の形成されている側、即ち、Au膜5の膜面5aの部分を下方に向けた状態で、エッチング液21に浸漬されていることである。この場合、エッチング液21は、塩酸および硝酸を混合したいわゆる王水を使用している。緻密なSAWパターン3の形成には、ヨウ素およびヨウ化カリウムの混合液等を用いることも可能である。
【0024】
Au膜5の膜面5aには、SAWパターン3が形成される予定領域に、レジスト剤が塗布され、エッチング加工で除去されないようになっている。エッチング液21に浸漬された水晶基板2は、Au膜5の側が下方へ向いた面となるようにエッチング液21に浸漬され、膜面5aから順にエッチング加工される。エッチング加工が進行すると、レジスト剤が塗布されていない部分がエッチング液21によって溶解されて除去される。Au膜5から除去された溶解部分は、エッチング液21へ溶け出し、溶出Au22としてエッチング液21の下方へ沈降して行く。即ち、溶出Au22は、Au膜5の膜面5aの近傍に留まって淀むようなことがなく、エッチング液21における溶出Au22の濃度は、膜面5aの近傍がほぼ均一に薄く、膜面5aから離れた、エッチング槽20の下部が濃くなっている。
【0025】
これにより、Au膜5の膜面5a側では、溶出Au22によってエッチング液21の濃度が薄められてエッチング加工の進行速度が遅くなることや、部分的に不均一な溶解になってしまうこと等の現象を、排除することができる。つまり、SAWパターン3の交叉指電極11、反射器12およびボンディングランド13は、レジスト剤の塗布部以外が均一にエッチング加工されるため、それぞれの線形状が等間隔で且つ均一な極細線に形成される。このエッチング方法においては、被加工層としてアルミニウムや銅等に比べて、比重の大きいAu(金)等の金属を用いているため、溶出Au22等の溶解部分が、すばやく、エッチング液21の下方へ沈降して行くため、極細線等の形成にとってより好ましい。
【0026】
また、このエッチング方法と、従来のエッチング方法とを、SAWパターン3の線幅のバラツキについて比較してみた。サンプルのウエハ1の数は、それぞれ52枚として、標準偏差(σ)を求めてみると、本エッチング方法は、σ=0.45であった。そして、従来のエッチング方法は、σ=0.81であった。この結果から分かるように、本エッチング方法によれば、従来の方法に比べて、バラツキが少なく均一幅の極細線を有するSAWパターン3を形成することが可能である。この効果は、エッチング液21を静止させていることも影響している。例えば、エッチング液21が流動している場合、溶出Au22が膜面5aの近傍に濃淡を有して存することになり、Au膜5の均一なエッチング加工が妨げられることがある。本エッチング方法のようにエッチング液21を静止させれば、Au膜5をより均一にエッチング加工することができる。
【0027】
次に、本エッチング方法により多量のウエハ1を同時加工するための手段について、説明する。ここでは、水晶基板2にSAWパターン3形成前のAu膜5が形成されたものもウエハ1と称する。図3は、ウエハを保持するためのキャリアを示す斜視図である。また、図4(a)は、キャリアに保持されたウエハを示す平面図であり、図4(b)は、キャリアに保持されたウエハを示す断面図である。図4(b)は、図4(a)のA−A’断面を表している。これら図3および図4では、2枚のウエハ1のみを描いてある。
【0028】
図3および図4に示すように、ウエハ1を保持するためのキャリア30は、ウエハ1を保持する方向に沿って平行に配置された3本の直支柱31,32,33と、直支柱31,32,33のそれぞれを等間隔に連結している輪状の輪支柱35,36・・・と、直支柱31,32,33と輪支柱35,36・・・との交差部に設けられウエハ1を直支柱31,32,33に対して直角方向に3点で保持する保持部41,42,43と、保持部41,42,43に対しウエハ1を出し入れするためにキャリア30の一部を開閉するための回転部37と、を有している。
【0029】
また、ウエハ1を保持する3点のうちの1点である保持部41は、水晶基板2のAu膜5と反対側の面をガイドする上支板41aと、Au膜5の膜面5aとの接触を避け、Au膜5の最外周の角部(部位)を斜面で受けて保持する保持斜面部41bと、保持斜面部41bを支持する下支板41cと、を有している。同様に、保持部43は、上支部43aと、保持斜面部43bと、下支部43cと、を有し、ウエハ1の他の1点を保持する。保持部42も、詳細を図示していないが、同様な構成で残り1点を保持する。
【0030】
ウエハ1をキャリア30へ取り付ける手順は、まず、図4(a)に示すように、回転部37を操作して直支柱32の部分を開き、開いた開口から保持部41および43へウエハ1を挿入する。ウエハ1は、図4(b)に示すように、Au膜5の最外周の角部を保持斜面部41bおよび43bで受けとめられて保持されている。そして、他の保持部へも同様に他のウエハ1を挿入し、最後に回転部37を操作して直支柱32の部分を閉じる。これで、複数のウエハ1がキャリア30へ取り付けられ、エッチング加工へ移行することができる。なお、Au膜5の膜面5aには、既述したように、図示していないレジスト剤が塗布されており、保持斜面部41b,43bおよび保持部42の保持斜面部は、レジスト剤の角部を受ける場合もある。
【0031】
次に、本エッチング方法におけるエッチング加工は、図2に示すエッチング槽20の内部に満たされたエッチング液21へ、キャリア30を浸漬させて、Au膜5をエッチング加工する。この時、Au膜5の膜面5aが下方を向いた状態となるように、キャリア30をエッチング液21へ浸漬させる。Au膜5の膜面5aへのエッチング加工が進行すると、レジスト剤が塗布されていない部分がエッチング液21によって溶解されて除去され、溶出Au22がエッチング液21の下方へ沈降して行く。この場合、溶出Au22は、膜面5aから下方へ沈降して、下方に取り付けられたウエハ1のAu膜5と反対側の面に一旦留まるが、エッチング加工されている膜面5aの近傍に留まることはない。従って、各ウエハ1のAu膜5は、図2を参照して説明した1枚のウエハ1の場合とほぼ同様に、均一なエッチング加工がなされる。
【0032】
即ち、キャリア30に取り付けられた各ウエハ1は、バラツキが少なく均一幅の極細線を有する複数のSAWパターン3を有することができる。さらに、ウエハ1は、保持斜面部41b,43bおよび保持部42の保持斜面部によって、Au膜5の膜面5aとの接触を避け、Au膜5の最外周の角部を斜面で受けて保持されているため、膜面5aの全面を確実にエッチング加工できる。従って、図1に示す従来の保持部領域8のようなエッチング加工がなされにくく、SAWパターン3を形成できない領域を排除することができる。
【0033】
以下、実施形態1におけるエッチング方法の主要な効果を記する。
【0034】
(1)本エッチング方法によれば、水晶基板2をエッチング液21へ浸漬して、被加工層であるAu膜5をエッチング加工する場合、水晶基板2は、Au膜5の形成されている側が下向きとなるように配置されている。このように配置されたAu膜5は、エッチング液21によって溶解されると、溶出Au22がAu膜5から離反してエッチング液21の下方へ沈んでいく。これにより、溶出Au22によりAu膜5の各部におけるエッチング液21の組成や濃度等が変化し、Au膜5が均一にエッチング加工されなくなるような現象をほぼ回避できる。そのため、水晶基板2へ高精度のSAWパターン3を形成したウエハ1を、確実に得ることができる。
【0035】
(2)本エッチング方法において、保持部41,42,43は、エッチング加工される面であるAu膜5の角部を斜面で保持している。これにより、Au膜5は、下方へ向いたAu膜5の膜面5aの全面が確実にエッチング加工でき、ウエハ1の全面がSAWパターン3の形成領域として活用できる。
(実施形態2)
【0036】
次に、本エッチング方法により形成された基板を備えた電子デバイスの一例として、液晶表示装置について説明する。
【0037】
図5は、液晶表示装置の構成を示す断面図である。図5において、液晶表示装置(電子デバイス)50は、TFT基板51と、TFT基板51に形成されている表示パネル52とを有し、表示パネル52は、TFT基板51およびTFT基板51と対をなす対向基板52aが封止材であるシール材52bによって貼り合わされている。液晶表示装置50は、シール材52bによる枠状領域の内側に、モザイク状をなしTFT基板51の表面に配置されている複数の画素電極52cと、各画素電極52cをスイッチング制御するTFT52dと、対向基板52aのTFT基板51側の面に画素電極52cに対向して配置されている平面状の対向電極52eと、画素電極52cおよび対向電極52eを覆うように形成されている配向膜52fと、シール材52bおよび配向膜52fによって区画された領域内に封入保持されている液晶52gと、を有している。
【0038】
そして、液晶表示装置50において、シール材52bによる枠状領域の外側には、外部のフレキシブル配線基板等を接続するための実装端子54と、実装端子54から延在する駆動配線53と、駆動配線53に樹脂コアバンプ70を介して接続されパッケージ化された表示体駆動回路60と、が設けられている。なお、表示パネル52においては、使用する液晶52gの種類に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略してある。また、表示パネル52をカラー表示用として構成する場合には、対向基板52aにおいて、各画素電極52cに対向する領域に、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルターをその保護膜とともに形成すればよい。
【0039】
ここで、図6は、樹脂コアバンプの構成を示す断面図である。液晶表示装置50は、図6に示すように、駆動配線53と表示体駆動回路60とが、表示体駆動回路60の有する樹脂コアバンプ70を介して、電気的に接続されている。表示体駆動回路60は、樹脂コアバンプ70が設けられる側に位置する回路基板61と、回路基板61に重ねて形成された回路配線62と、回路基板61および回路配線62を覆うように形成された保護膜63と、を有し、この保護膜63の表面の回路配線62と対向する位置に樹脂コアバンプ70が設けられている。そして、樹脂コアバンプ70は、保護膜63に形成された接続孔64を介して回路配線62に接続されている。
【0040】
また、樹脂コアバンプ70は、保護膜63の表面に突起した半球状をなして形成されたポリイミド樹脂の樹脂層71と、樹脂層71の半球状の頂部を覆い、回路配線62と対向してAu(金)で形成された導電層73と、樹脂層71に複数含有されたシリコン(Si)の粒子72と、によって構成されている。この樹脂コアバンプ70によって、表示体駆動回路60は、回路配線62、接続孔64、導電層73の順で、TFT基板51の駆動配線53へ電気的に接続されることになる。さらに、樹脂コアバンプ70の周辺には、接着剤28が塗布されていて、接着剤28は、樹脂層71の弾性によって、導電層73を駆動配線53の方向へ押し付けた状態のまま、表示体駆動回路60とTFT基板51とを強固に固定している。
【0041】
しかし、TFT基板51の駆動配線53は、アルミニウム(Al)等の金属であるため、その表面には、アルミニウム等の金属酸化膜53aが形成されている。この金属酸化膜53aは、駆動配線53のアルミニウム(Al)等より電気的な抵抗が大きい特性を有しているため、導電層73と駆動配線53とをそのまま接続すれば、その間の接続抵抗が、金属酸化膜53aのない場合に比べて、大きくなってしまう。そこで、液晶表示装置50は、樹脂コアバンプ70の樹脂層71がシリコン(Si)の硬い粒子72を含有し、粒子72は、導電層73との境界近傍や境界から導電層73の側へ突出した状態で存在している。樹脂コアバンプ70がTFT基板51へ押し付けられると、樹脂層71の弾性によって、導電層73が駆動配線53の方向へ押される。同時に、境界近傍の粒子72は、樹脂層71のような弾性がないため、樹脂層71に比べ局所的に大きな圧力で導電層73を駆動配線53の方向へ押すことになる。このため、粒子72は、導電層73を介して、あるいは導電層73を突き破って、駆動配線53の金属酸化膜53aへ作用し、金属酸化膜53aを破壊する。これにより、導電層73と駆動配線53とは、金属酸化膜53aを介さず、直に接続される。この樹脂コアバンプ70の平面形状は、後述する図7(b)に示されている。
【0042】
樹脂コアバンプ70の導電層73は、この場合、Au(金)で形成されていて、本エッチング方法によれば、既述したSAWパターン3と同様に、バラツキが少なく均一幅の極細線に形成できる。そして、図7(a)は、回路基板が形成されたウエハを示す平面図であり、図7(b)は、回路基板に形成された樹脂コアバンプを示す平面図である。ウエハ80は、シリコン基板(基板)81と、シリコン基板81の主面となる表面81aに形成され複数に分割されるべき回路基板61と、を有している。それぞれの回路基板61は、シリコン基板81が切断予定線82に沿って切断され分割されると、図7(b)に示すような複数の樹脂コアバンプ70を有して、個別に取り出される。図7(a)は、40個の回路基板61が形成されるウエハ80の場合が示されている。
【0043】
ウエハ80を矩形に切断して取り出された回路基板61は、駆動配線53(図5)と対向する位置に、この場合回路基板61の3辺に沿って、複数の樹脂コアバンプ70を有している。また、樹脂コアバンプ70は、図7(b)に示すように、回路配線62と対向する位置に、保護膜63を介して形成され、導電層73が回路配線62とほぼ重なって極細の細線状に延在している。なお、回路基板61は、矩形の3辺に沿って樹脂コアバンプ70が形成される構成だけなく、3辺以下または4辺に形成する場合もある。
【0044】
ここで、ウエハ80における導電層73の形成は、まず、シリコン基板81の表面81aに回路配線62および保護膜63を形成し、次いで導電層73となる金属膜であるAu膜(被加工層)5(図2)を保護膜63の全面に形成する。そして、このAu膜5をエッチング加工して導電層73を形成するために、導電層73となるべき部分へレジスト剤を塗布し、図3および図4に示すキャリア30へ、ウエハ1と同様にウエハ80を取り付ける。つまり、Au膜5の最外周の角部を保持斜面部41b,43bおよび保持部42の保持斜面部で受けとめて保持し、Au膜5の膜面5aには、保持斜面部41b,43bおよび保持部42の保持斜面部がかからない構成となっている。
【0045】
次に、図2に示すエッチング槽20の内部に満たされたエッチング液21へ、ウエハ80を取り付けたキャリア30を浸漬させて、Au膜5をエッチング加工する。この時、Au膜5の膜面5aが下方を向いた状態となるように、キャリア30をエッチング液21へ浸漬させる。Au膜5の膜面5aへのエッチング加工が進行すると、レジスト剤が塗布されていない部分がエッチング液21によって溶解されて除去され、溶出Au22がエッチング液21の下方へ沈降して行く。この場合、溶出Au22は、膜面5aから下方へ沈降して、下方に取り付けられた他のウエハ80のAu膜5と反対側の面に一旦留まるが、エッチング加工されている膜面5aの近傍に留まることはない。
【0046】
従って、各ウエハ80のAu膜5は、均一なエッチング加工がなされる。即ち、キャリア30に取り付けられた各ウエハ80は、バラツキが少なく均一幅で極細線状をなした複数の導電層73を有することができる。このエッチング方法においては、導電層73となる被加工層として、アルミニウムや銅等に比べて、比重の大きい金属のAu(金)を用いており、溶出Au22等の溶解部分が、すばやく、エッチング液21の下方へ沈降して行くため、溶出Au22等が導電層73を形成するためのエッチング加工を阻害しないという、好ましい効果が得られる。
【0047】
なお、本エッチング方法における基板は、被加工層としてのAu膜5が形成されている水晶基板2やシリコン基板81だけでなく、エッチング加工により所定の形状に加工される被加工層が形成されたすべてのものを指している。
【0048】
以下、実施形態2におけるエッチング方法および電子デバイスの主要な効果を記する。
【0049】
(1)回路基板61に形成される樹脂コアバンプ70は、Au膜5へ導電層73を形成するエッチング加工時において、溶出Au22等がAu膜5近傍に留まらず下方へ沈降するため、エッチング加工が阻害されない。これにより、導電層73は、均一且つ微細にエッチング加工され、回路基板61により多くの樹脂コアバンプ70を形成することができる。
【0050】
(2)本エッチング方法は、表示体駆動回路60における回路基板61の極細線状をなす導電層73を、高精度に形成することができ、表示体駆動回路60の小型化が図れると共に、表示体駆動回路60を搭載した電子デバイスである液晶表示装置50の小型化にも貢献できる。
【0051】
また、エッチング方法および電子デバイスは、上記の各実施形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、各実施形態と同様な効果が得られる。
【0052】
(変形例1)ウエハ1,80は、キャリア30の保持斜面部41b,43bおよび保持部42の保持斜面部によって、Au膜5の角部を受ける構成であるが、この構成に限定されることなく、Au膜5の膜面5aに保持部41,42,43が接しない構成であれば、ウエハ1,80の外周側面を受ける構成や、ウエハ1,80のAu膜5と反対側の面を吸引して保持する構成等であっても良い。
【0053】
(変形例2)キャリア30の形状は、ウエハ1,80を保持できれば、直支柱が3本以外や保持部が3箇所以外であっても良く、輪支柱が円形以外の形状であっても良い。
【0054】
(変形例3)
電子デバイスとしては、高密度の樹脂コアバンプ70を備えた表示体駆動回路60を実装した液晶表示装置50のほかに、SAW共振片を有する共振子や水晶振動子等の圧電体デバイス、半導体装置等が挙げられる。
【符号の説明】
【0055】
1…ウエハ、2…基板としての水晶基板、2a…表面、5…被加工層および金属膜としてのAu膜、10…SAW共振片、20…エッチング槽、21…エッチング液、30…キャリア、41…保持部、41a…上支板、41b…保持斜面部、41c…下支板、42…保持部、43…保持部、50…電子デバイスとしての液晶表示装置、52…表示パネル、52g…液晶、60…表示体駆動回路、70…樹脂コアバンプ、73…導電層、80…ウエハ、81…基板としてのシリコン基板、81a…表面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された被加工層を所定の形状に加工するためのエッチング方法であって、
前記基板をエッチング液に浸漬した状態では、前記基板の前記被加工層の側が下方へ向いて配置されていることを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエッチング方法において、
前記基板を前記エッチング液中で保持するための保持部は、前記被加工層の下方へ向いた面以外の部位を保持していることを特徴とするエッチング方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエッチング方法において、
前記保持部は、前記エッチング液中で前記基板を静止した状態に保持することを特徴とするエッチング方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のエッチング方法において、
前記被加工層は、金属膜であることを特徴とするエッチング方法。
【請求項5】
請求項4に記載のエッチング方法において、
前記金属膜は、AuまたはAu合金であることを特徴とするエッチング方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のエッチング方法によって形成された基板を有することを特徴とする電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−114184(P2011−114184A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269674(P2009−269674)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】