説明

エペルア・ファルカータの抽出物および/またはその成分を含有する調製物

本発明は、植物エペルア・ファルカータ(Eperua falcata)の抽出物、その活性成分、アスチルビンまたはエンゲレチンを含有する美容、医薬または皮膚用調製物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、非治療的美容調製物、特に、選択された植物抽出物またはその活性成分の有効量を含有する新規調製物、これらの抽出物から得られる新規活性成分、および皮膚の美容処置における該抽出物または該活性成分の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚は、多くの神経線維を含有し、該神経線維は、皮膚の状態および環境の影響に関する情報を中枢神経系に連続的に供給する。これらの神経線維は、C型の無髄線維をも包含し、該無髄線維の細胞体は、脊柱の両側に位置する背根神経節に存在する。C線維は、疼痛に感受性であり、それらを囲む細胞に直接接触し、多くの伝達物質を放出することによって皮膚代謝に影響を与えている(Steinschneiderら、Cosm'ing 2001, 2001. pp.211-219)。種々の神経ペプチドが皮膚神経系に存在する。これらの神経ペプチドが見出される交換点(switching point)は、脈管叢のまわり、および真皮と表皮の境界面に集中している。一般に、それらは、皮膚神経原性炎症の発生に重要な役割を担っている細胞構造物、例えばマスト細胞またはケラチノサイトと強い相関関係にある。
【0003】
近年の生化学的研究の結果は、神経ペプチドが、皮膚神経原性炎症の媒介物質として極めて重要であることを示唆している。それらは、例えば、軸索の反射メカニズムに関与している上記C線維に見出すことができる。皮膚に存在する神経ペプチドは、炎症性刺激によって放出される。神経ペプチドの皮内注入は、急性炎症に対する多くの一般的な皮膚反応、例えば、血管拡張、血漿溢出、マスト細胞の活性化または白血球の浸潤を生じることができる[Gianettiら、Nouv.Dermatol. No.16, pp.22-23 (1997)]。さらに、皮膚の炎症領域は可溶性物質を放出し、該物質は、上記のC型神経線維を活性化し、次に、さらにCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)またはSP(サブスタンスP)のような神経ペプチドを流出させる[Uchiら、J.Dermatol.Sci. 24: 529-38 (2000);Huangら、Neuroscience, Vol.94, 3: 965-973 (1999)を参照]。他の神経ペプチドは、タキキニンのファミリーに属するサブスタンスKおよびP、およびニューロキニンに属するサブスタンスAおよびB、血管活性腸管ペプチド(VIP)、ペプチドヒスチジンメチオニン(PHM)、神経ペプチドY(NPY)、ペプチドYY(PYY)、ガラニン、ソマトスタチン(SO)、ニューロテンシン(NT)、ガストリン放出ペプチド(GRP)、ボンベシン、ブラジキニン(BK)、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)、セロトニン(ST)またはプロオピオメラノコルチン(POMC)である。
【0004】
種々の神経媒介物質が先行技術から既知である。例えば、欧州特許 EP0723774 B1(L'Oreal)は、美容調製物において非治療的に使用されるCGRP拮抗薬、即ちCGRP 8-37または抗-CGRP抗体を提案している。しかし、これらの物質は主に複合タンパク質であり、それらは入手および精製が困難であり、それらの高い特化により、わずかな神経ペプチドに対して有効であるにすぎない。
【0005】
本発明により、アスチルビンを、植物エペルア・ファルカータ(Eperua falcata)の水性抽出物の成分として同定した。
【0006】
アスチルビンは自体既知である。それは、例えば、下記に開示されている:米国特許出願公開 US2003 0165533 A1、US2003 0162728 A1、US2003 0152588 A1、US2003 0069168 A1、米国特許 US6583118 B1、US6531505 B2、US6444235 B1、米国特許出願公開 US2002 0040050 A1、US5650433 A1、欧州特許出願公開 EP01283048 A1、EP1260517 A1、EP0987024 A2、EP0742012 A2、EP0719554 A1およびEP0633022 A2。
【0007】
本発明により、エンゲレチンを、植物エペルア・ファルカータの水性抽出物の他の成分として同定した。
【0008】
エンゲレチンは自体既知である。それは、例えば、下記に開示されている:米国特許出願公開 US2003 0165533 A1、US2003 0162728 A1、US2003 0152588 A1、US2003 0069168 A1、米国特許 US6583118 B1、US65310505 B2、米国特許出願公開 US2002 0040050 A1、US5650433 A1、欧州特許出願公開 EP1260517 A1、EP0987024 A2、EP0742012 A2、EP0719554 A1、EP0633022 A2および日本特許出願公開 JP2002 173424 A。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
即ち、本発明が解決しようとする複雑な課題は、広範囲の神経ペプチド、特にCGRPおよびSPの放出を抑制する美容調製物の製造のための新規神経媒介物質を提供することであった。特に、この新規神経媒介物質の使用は、特に敏感な皮膚を保護するのに適しており、かつ、紫外線誘発ダメージ、例えば、血管拡張、紅斑、浮腫および他の刺激、ならびに反応性酸素化合物(ROS=反応性酸素種)の放出を相殺する美容調製物を与えるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、植物エペルア・ファルカータの抽出物またはその活性成分を、好ましくは0.001〜1重量%、特に0.05〜0.1重量%の量で含有する、美容、医薬および/または皮膚用調製物に関する。
【発明の効果】
【0011】
驚くべきことに、エペルア・ファルカータ抽出物は、上記の必要条件を極めてよく満たすことが見出された。それに存在する抽出物または相乗的活性成分混合物は、容易に得ることができる。それらは、CGRPおよびSPの自発放出、および塩化カリウムまたはカプサイシン誘発放出の両方を阻害する。従って、該物質は、皮膚の刺激、紅斑、炎症ならびにUV-AおよびUV-Bの有害作用に対して保護するのに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
エペルア・ファルカータ(Eperua falcata)
Eperua falcata(Aublet)は、10〜20mの高さに成長し、ガイアナ、ブラジル、スリナムおよびベネズエラの熱帯雨林に見られる熱帯雨林樹木である。植物学的に、それは、Caesalpiniaceae科に属し、wapa、bois sabre、bioudou、pangapanga、tabaca、walabaまたはassacuの名称でも知られている。異名は、Dimorpha falcata (J.B. Aublet) J.E. Smith、Panzera falcata (J.B. Aublet) C.L. Wildenowを包含する。エペルア・ファルカータは、赤褐色の極めて硬い木であり、濃褐色の特徴的な形をした果実を有する。その抽出物は、樹皮から得るのが好ましく、例えば歯痛用に天然薬として使用されており、多くの活性成分、特にポリフェノールを含有し、その一部を下記の表1に例示する。
【表1】

【0013】
抽出物は、自体既知の方法、例えば、植物またはその一部または樹皮、葉または果実の水抽出、アルコール抽出、または水/アルコール抽出によって調製することができる。適当な抽出法は、下記のようなあらゆる一般的抽出法である:離解、再離解、温浸、撹拌離解、渦抽出、超音波抽出、向流抽出、パーコレーション、再パーコレーション、エバコレーション(evacolation)(減圧抽出)、ジアコレーション(diacolation)、および連続還流下の固体/液体抽出。パーコレーションは、工業使用に有利である。新鮮な植物またはその一部が出発物質として適しているが、抽出前に機械的にサイズ減少しうる乾燥植物および/またはその一部が一般に使用される。当業者に既知のあらゆるサイズ減少法、例えば凍結粉砕を使用することができる。抽出工程に好ましい溶媒は、有機溶媒、水(好ましくは80℃より高い温度、特に95℃より高い温度の熱水)、または有機溶媒と水との混合物、特に、幾分高い含水量の低分子量アルコールである。メタノール、エタノール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、アセトン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチルアセテート、およびそれらの混合物および水含有混合物を使用する抽出が特に好ましい。抽出工程は、一般に、20〜100℃、好ましくは30〜90℃、特に60〜80℃で行なわれる。1つの好ましい態様において、抽出工程は、抽出物の成分の酸化を防止するために不活性ガス雰囲気中で行なわれる。抽出を40℃より高い温度で行なう場合、これは特に重要である。抽出時間は、出発物質、抽出法、抽出温度および溶媒/原材料比率などに依存して、当業者によって選択される。抽出工程の後、得られた粗抽出物を、精製、濃縮および/または脱色のような他の一般的な工程に任意に付してよい。必要であれば、このようにして調製した抽出物を、例えば、好ましくない個々の成分の選択除去に付してもよい。抽出工程は、任意の程度に行なってよいが、一般に枯渇するまで継続する。乾燥葉の抽出における一般的な歩留り(即ち、使用した原材料の量に基づく乾燥抽出物)は、3〜15重量%、特に6〜10重量%である。本発明は、抽出条件および最終抽出物の歩留りを所望用途に応じて選択しうるという観察を含む。活性物質含有量(即ち、固形分)0.5〜10重量%を一般に有するこれらの抽出物は、そのまま使用することができるが、乾燥、特に噴霧または凍結乾燥によって溶媒を完全に除去して、濃赤色固形物を得てもよい。上記の純粋活性物質を得るために、それらがより簡単なかつ低コストの方法によって合成できるのでなければ、抽出物を出発物質として使用してもよい。従って、抽出物中の活性物質含有量は、5〜100重量%、好ましくは50〜95重量%である。抽出物自体が、水含有調製物および/または有機溶媒に溶解した調製物として、および噴霧乾燥または凍結乾燥水不含固形物として存在することができる。これに関して適当な有機溶媒は、例えば、1〜6個の炭素原子を含有する脂肪族アルコール(例えばエタノール)、ケトン(例えばアセトン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、クロロホルムまたは塩化メチレン)、低級エステルまたはポリオール(例えば、グリセロールまたはグリコール)である。
【0014】
マイクロカプセル、リポソームおよびプロ-リポソーム
本発明の好ましい態様において、抽出物は、マイクロカプセル、リポソームまたはプロ-リポソームの形態で存在することができる。
【0015】
「マイクロカプセル」は、少なくとも1つの連続膜で囲まれた少なくとも1つの固体または液体コアを含有する直径約0.0001〜約5mmの球状凝集体であるものと当業者に理解される。より正確には、それらは、皮膜形成ポリマーで被覆された微細分散液相または固相であり、その製造において、乳化およびコアセルベーションまたは界面重合後に封入される物質にポリマーを付着させる。他の方法において、溶融ワックスをマトリックス(「マイクロスポンジ」)に吸収させ、これを、微粒子として、皮膜形成ポリマーでさらに被覆することができる。顕微鏡的に小さいカプセル(ナノカプセルとしても既知)を、粉末と同様に乾燥させることができる。単一コアマイクロカプセルの他に、多コア凝集物(マイクロスフェアーとしても既知)も存在し、それは、連続膜材料中に分散した2個またはそれ以上のコアを含有する。さらに、単一コアまたは多コアマイクロカプセルを、付加的な第二膜、第三膜などによって取り囲んでもよい。膜は、天然、半合成または合成材料から構成することができる。天然膜材料の例は下記のものである:アラビアゴム、寒天、アガロース、マルトデキストリン、アルギン酸およびその塩、例えばアルギン酸ナトリウムまたはカルシウム、脂肪および脂肪酸、セチルアルコール、コラーゲン、キトサン、レシチン、ゼラチン、アルブミン、シェラック、多糖類、例えばデンプンまたはデキストラン、ポリペプチド、タンパク質水解物、スクロースおよびワックス。半合成膜材料は、特に、化学修飾セルロース、特にセルロースエステルおよびエーテル、例えば、セルロースアセテート、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース、およびデンプン誘導体、特にデンプンエーテルおよびエステルである。合成膜材料は、例えば、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンのようなポリマーである。
【0016】
既知のマイクロカプセルの例は、下記の市販製品である(括弧内は膜材料):Hallcrest Microcapsules(ゼラチン、アラビアゴム)、Coletica Thalaspheres(海洋コラーゲン)、Lipotec Millicapseln(アルギン酸、寒天)、Induchem Unispheres(ラクトース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、Unicerin C30(ラクトース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、Kobo Glycospheres(改質デンプン、脂肪酸エステル、リン脂質)、Softspheres(改質寒天)、Kuhs Probiol Nanospheres(リン脂質)、PrimaspheresおよびPrimasponges(キトサン、アルギン酸塩)およびPrimasys(リン脂質)。
【0017】
キトサンマイクロカプセルおよびその製造方法は、本願出願人による先の特許出願の対象である(国際特許出願公開WO01/01926、WO01/01927、WO01/01928、WO01/01929)。膜および活性成分を含有するマトリックスから成る平均直径0.0001〜5mm、好ましくは0.001〜0.5mm、特に0.005〜0.1mmを有するマイクロカプセルは、例えば下記のように得られる:
(a1)ゲル生成剤、キトサンおよび活性成分からマトリックスを調製し;
(a2)マトリックスを油相に任意に分散させ;
(a3)分散したマトリックスを陰イオンポリマーの水溶液で処理し、工程における油相を任意に除去する;または
(b1)ゲル生成剤、陰イオンポリマーおよび活性成分からマトリックスを調製し;
(b2)マトリックスを油相に任意に分散させ;
(b3)分散したマトリックスを、キトサン水溶液で処理し、工程における油相を任意に除去する;または
(c1)水性活性成分調製物を、乳化剤の存在下に油成分で処理して、o/w型エマルジョンを形成し;
(c2)このようにして得たエマルジョンを、陰イオンポリマー水溶液で処理し;
(c3)このようにして得たマトリックスを、キトサン水溶液に接触させ;
(c4)このようにして得た封入生成物を水性相から取り出す。
【0018】
ゲル生成剤
本発明の目的に好ましいゲル生成剤は、40℃より高い温度で水溶液中にゲルを形成することができる物質である。そのようなゲル生成剤の一般的な例は、複合多糖類およびタンパク質である。好ましい熱ゲル化複合多糖はアガロースであり、それは、紅藻から得られる寒天の形態で、30重量%までの非ゲル化アガロペクチンと共に存在することができる。アガロースの主成分は、交互β-1,3-およびβ-1,4-グリコシド結合を有するD-ガラクトースおよび3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースの直鎖多糖である。複合多糖類は、好ましくは、分子量110,000〜160,000を有し、無臭無味である。適当な代替物は、ペクチン、キサンタン(キサンタンガムを含む)およびそれらの混合物である。他の好ましい種類は、1重量%水溶液において、80℃より低い温度で溶融せず、40℃より高い温度で再び固化するゲルを形成する物質である。熱ゲル化タンパク質のグループの例は、種々のゼラチンである。
【0019】
キトサン
キトサンは、親水コロイドのグループに属する生体高分子である。化学的にそれらは、下記の理想化モノマー単位を含有する、種々の分子量の部分的に脱アセチルしたキチンである:
【化1】

【0020】
生物学的pH値において陰に荷電している大部分の親水コロイドとは対照的に、キトサンは、このような条件下で陽イオン性の生体高分子である。陽に荷電したキトサンは、反対に荷電した表面と相互作用することができ、従って、美容毛髪ケアおよび身体ケア製品および医薬調製物に使用される。キトサンは、キチン、好ましくは、安価な原材料として大量に入手できる甲殻類の殻残留物から生成される。Hackmannらによって最初に記載された方法において、通常は塩基の添加によってキチンを先ず除タンパク質し、無機酸の添加によって脱塩し、最後に、強塩基の添加によって脱アセチルする。分子量は広範囲に分布する。好ましいタイプは、平均分子量10,000〜500,000ダルトンまたは800,000〜1,200,000ダルトン、および/またはブルックフィールド粘度(グリコール酸中1重量%)5,000mPas未満、脱アセチル度80〜88%および灰分0.3重量%未満を有するキトサンである。水へのより高い溶解性のために、キトサンを、その塩の形態、好ましくはグリコール酸塩として一般に使用する。
【0021】
陰イオンポリマー
陰イオンポリマーの機能は、キトサンと共に膜を形成することである。好ましい陰イオンポリマーは、アルギン酸の塩である。アルギン酸は、下記の理想化したモノマー単位を有するカルボキシル含有多糖の混合物である:
【化2】

【0022】
アルギン酸またはアルギン酸塩の平均分子量は、150,000〜250,000である。アルギン酸の塩、およびその完全および部分中和生成物は、特に、アルカリ金属塩、好ましくはアルギン酸ナトリウム(「アルギン」)、およびアンモニウムおよびアルカリ土類金属塩であると理解される。混合アルギン酸塩、例えば、ナトリウム/マグネシウムまたはナトリウム/カリウムアルギン酸塩が特に好ましい。しかし、本発明の別の態様において、陰イオンキトサン誘導体、例えば、カルボキシル化生成物、特にスクシニル化生成物もこの目的に適している。また、平均分子量5,000〜50,000ダルトンのポリ(メタ)アクリレート、および種々のカルボキシメチルセルロースも使用することができる。陰イオンポリマーの代わりに、陰イオン界面活性剤または低分子量無機塩、例えばピロリン酸塩も、膜の形成に使用することができる。
【0023】
マイクロカプセルの製造方法
マイクロカプセルを製造するために、通常、ゲル生成剤、好ましくは寒天の1〜10重量%、好ましくは2〜5重量%水溶液を調製し、還流させながら加熱する。キトサン0.1〜2重量%、好ましくは0.25〜0.5重量%、および活性物質0.1〜25重量%、好ましくは0.25〜10重量%を含有する第二水溶液を、沸騰温度、好ましくは80〜100℃で添加する(この混合物をマトリックスと呼ぶ)。従って、マイクロカプセルへの活性物質の充填は、カプセルの重量に基づいて0.1〜25重量%であってよい。必要であれば、水不溶性成分、例えば無機顔料を、この段階で添加して、一般に水性または水性/アルコール分散系の形態において、粘度を調節することができる。さらに、活性物質を乳化または分散させるために、乳化剤および/または可溶化剤をマトリックスに添加することが有用な場合もある。ゲル生成剤、キトサンおよび活性物質からのマトリックスの調製後に、次のカプセル封入工程において小粒子を製造するために、マトリックスを強い剪断作用によって油相に任意に極微細分散させてよい。これに関して、マトリックスを40〜60℃の温度に加熱し、油相を10〜20℃に冷却することが特に好都合であることがわかった。実際のカプセル封入、即ち、マトリックス中のキトサンを陰イオンポリマーに接触させることによる膜の形成を、最後の必須の工程において行なう。この目的のために、油相に任意に分散させたマトリックスを、約1〜50重量%、好ましくは10〜15重量%の陰イオンポリマー水溶液で、40〜100℃、好ましくは50〜60℃の温度で洗浄し、必要であれば、それと同時にまたは後に油相を除去することが好ましい。得られた水性調製物は、1〜10重量%のマイクロカプセル含有量を一般に有する。ある場合には、ポリマーの溶液が、他の成分、例えば乳化剤または防腐剤を含有することが好都合である。濾過した後、好ましくは約1mmの平均直径を有するマイクロカプセルを得る。カプセルを篩にかけて、均質な粒度分布を確実にすることが好ましい。このようにして得たマイクロカプセルは、製造に関連した制限の範囲内で、どのような形も有しうるが、好ましくは実質的に球形である。または、陰イオンポリマーをマトリックスの形成に使用してもよく、キトサンを使用してカプセル封入を行なってもよい。
【0024】
本発明のマイクロカプセルの別の製造方法は、o/w型エマルジョンを先ず調製することを含んで成り、該エマルジョンは、油成分、水および活性成分に加えて、有効量の乳化剤を含有する。マトリックスを形成するために、適量の陰イオンポリマー水溶液を、勢いよく撹拌しながら、この調製物に添加する。膜は、キトサン溶液の添加によって形成される。全工程を、好ましくは穏やかな酸性pH3〜4で行なう。必要であれば、無機酸の添加によってpHを調節する。膜を形成した後、例えばトリエタノールアミンまたは他の塩基の添加によって、pHを5〜6に増加させる。これは粘度の増加を生じ、この粘度増加を、下記のような他の増粘剤の添加によって補助することができる:多糖類、特に、キサンタンガム、グアールガム、寒天、アルギン酸塩およびチロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース、脂肪酸の比較的高分子量のポリエチレングリコールモノおよびジエステル、ポリアクリレート、ポリアクリルアミドなど。最後に、例えば、デカンテーション、濾過または遠心分離によって、マイクロカプセルを水性相から分離する。
【0025】
リポソームおよびプロ-リポソーム
上記のマイクロカプセルの代わりに、プロ-リポソームを活性成分混合物用の担体として使用してもよい。説明のために、プロ-リポソームは水を含有せず、それを水環境に導入した際に、単に水を吸収して真のリポソームを形成するものであることを指摘する。本発明において、プロ-リポソームは、美容的または医薬的に許容される溶媒中で、活性成分をレシチンおよび/またはリン脂質で処理することによって得られる。この目的のために、通常は、活性成分を溶媒に導入し、30〜70℃の温度でレシチンまたはリン脂質と接触させるか、または水不含混合物をレシチンまたはリン脂質の溶液に撹拌しながら添加する。レシチンは、脂肪酸、グリセロール、リン酸およびコリンからエステル化によって形成されるグリセロリン脂質として当業者に既知である。従って、レシチンは、当業者によってホスファチジルコリン(PC)と称されることも多い。天然レシチンの例はケファリンであり、これは、ホスファチジン酸としても既知であり、1,2-ジアシル-sn-グリセロール-3-リン酸の誘導体である。これに対して、リン脂質は、リン酸とグリセロールとのモノおよび好ましくはジエステル(グリセロホスフェート)であると一般に理解され、これは一般に脂肪に分類される。スフィンゴシンおよびスフィンゴリピドも適している。
【0026】
ナノ粒子
本発明の他の好ましい態様において、抽出物は、平均粒径100〜300nm、好ましくは50〜200nm、特に100〜150nmの微細粒子固形物(「ナノ粒子」)として存在することができる。これらのナノ粒子は、通常は従来の噴霧乾燥に類似した蒸発法によって製造される。蒸発法において、出発物質を適当な有機溶媒(例えば、アルカン、植物油、エーテル、エステル、ケトン、アセタールなど)に先ず溶解させる。次に、得られた溶液を水または他の非溶媒に導入し(任意に、それに溶解した界面活性化合物の存在下)、それによって2つの不混和溶媒の均質化がナノ粒子の沈殿を生じ、有機溶媒を好ましくは蒸発させる。o/w型エマルジョンまたはo/w型ミクロエマルジョンを、水溶液の代わりに使用してもよい。蒸発法の代わりに、下記の方法を包含する他の既知の方法を使用してもよい。
【0027】
RESS法
RESS法においては、ナノ粒子を超臨界溶液の急速膨張(rapid expansion of supercritical solutions)によって製造する。この方法は、特に均質な粒径分布を生じる。この目的のために、抽出物を、超臨界または近臨界条件下に適当な溶媒に溶解させるのが好ましく、液体混合物を、ノズルから真空、ガスまたは液体中に膨張させ、溶媒を同時に蒸発させる。ナノ粒子が凝集するのを防止するために、出発物質を、適当な保護コロイドまたは乳化剤の存在下に溶解させ、そして/または、臨界溶液を、保護コロイドまたは乳化剤の水性および/またはアルコール溶液中または再溶解乳化剤および/または保護コロイドを含有していてよい美容油中に膨張させるのが好ましい。適当な保護コロイドの例は、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム、リサルビン酸、デンプンおよびポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコールおよびポリアクリレートである。
【0028】
GAS、PCAまたはPGSS法
他のナノ粒子製造方法は、いわゆるGAS法(ガス逆溶媒再結晶)(gas anti-solvent recrystallization)である。この方法は、溶解物質の結晶化のために、高圧縮ガスまたは臨界液体(例えば二酸化炭素)を非溶媒として使用する。圧縮ガス相を、出発物質の一次溶液に導入し、その中に吸収させ、それによって、液体容量の増加および溶解性の減少が生じ、微細粒子が沈殿する。
【0029】
PCA法(圧縮液体逆溶媒を使用する沈殿)も同様に適している。この方法において、出発物質の一次溶液を、超臨界液体に導入し、それによって極微細液体粒子の形成が生じ、その際に、拡散現象が起きて極微細粒子が沈殿する。
【0030】
PGSS法(ガス飽和溶液からの粒子)においては、加圧下のガス(例えば、二酸化炭素またはプロパン)の導入によって、出発物質を溶融させる。温度および圧力が、近-または超-臨界状態に達する。気相が固体中に溶解し、溶融温度、粘度および表面張力を減少させる。ノズルからの膨張の際に、冷却作用の結果として、極微細粒子が形成される。
【0031】
産業上の利用
本発明は、非治療的美容、医薬および/または皮膚用調製物、特に皮膚および毛髪処置調製物の製造のための、植物エペルア・ファルカータの抽出物またはその活性成分の使用にも関し、該調製物において、それらは好ましくは0.001〜5重量%、特に0.05〜1重量%の量で存在することができる。
【0032】
また本発明は、植物エペルア・ファルカータの抽出物またはその活性成分の下記における使用にも関する:
・神経ペプチドの阻害、またはストレスを受けた皮膚細胞または神経線維の炎症誘発性媒介物質の放出の減少(神経ペプチドまたは媒介物質は好ましくはCGRPまたはSPである);
・神経原性炎症の減少;
・敏感皮膚の処置;
・抗アクネ剤;および
・頭皮かゆみの減少。
【0033】
美容、医薬および/または皮膚用調製物
本発明の抽出物を、美容、医薬または皮膚用調製物の製造に使用することができる。これらの調製物は、例えば、毛髪シャンプー、毛髪ローション、発泡浴剤、シャワー浴剤、クリーム、ゲル、ローション、アルコール溶液および水性/アルコール溶液、エマルジョン、ワックス/油脂コンパウンド、スティック調製物、粉末または軟膏である。また、これらの調製物は、さらなる助剤および添加剤として、穏やかな界面活性剤、油成分、乳化剤、真珠色化ワックス、稠度因子、増粘剤、超脂肪化剤、安定剤、ポリマー、シリコーン化合物、油脂、ワックス、レシチン、リン脂質、UV保護因子、生物起源の薬剤、酸化防止剤、脱臭剤、発汗防止剤、ふけ防止剤、皮膜形成剤、膨潤剤、虫忌避剤、自己褐変剤、チロシン阻害剤(脱色素剤)、ヒドロトロープ剤、可溶化剤、防腐剤、芳香油、染料などを含有することもできる。
【0034】
界面活性剤
適当な界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性および/または両性または双性イオン性界面活性剤である。これらは、調製物中に、通常は約1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%の量で存在していてよい。
陰イオン性界面活性剤の代表例は、石鹸、アルキルベンゼンスルホネート、アルカンスルホネート、オレフィンスルホネート、アルキルエーテルスルホネート、グリセロールエーテルスルホネート、α-メチルエステルスルホネート、スルホ脂肪酸、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、グリセロールエーテルスルフェート、脂肪酸エーテルスルフェート、ヒドロキシ混合エーテルスルフェート、モノグリセリド(エーテル)スルフェート、脂肪酸アミド(エーテル)スルフェート、モノおよびジアルキルスルホスクシネート、モノおよびジアルキルスルホスクシナメート、スルホトリグリセリド、アミド石鹸、エーテルカルボン酸およびその塩、脂肪酸イセチオネート、脂肪酸サルコシネート、脂肪酸タウリド、N-アシルアミノ酸(例えば、アシルラクチレート、アシルタルトレート、アシルグルタメートおよびアシルアスパルテートなど)、アルキルオリゴグルコシドスルフェート、タンパク質脂肪酸縮合物(特に、コムギに基づく植物生成物)、および、アルキル(エーテル)ホスフェートである。陰イオン性界面活性剤がポリグリコールエーテル鎖を含有しているときには、これらは通常の同族体分布を有していてよいが、好ましくは狭範囲の同族体分布を有する。
【0035】
非イオン性界面活性剤の代表例は、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエーテル、脂肪酸アミドポリグリコールエーテル、脂肪アミンポリグリコールエーテル、アルコキシル化トリグリセリド、混合エーテルおよび混合ホルマール、任意に部分的に酸化したアルキル(アルケニル)オリゴグリコシドまたはグルクロン酸誘導体、脂肪酸-N-アルキルグルカミド、タンパク質加水分解物(特に、コムギに基づく植物生成物)、ポリオール脂肪酸エステル、糖エステル、ソルビタンエステル、ポリソルベートおよびアミンオキシドである。非イオン性界面活性剤がポリグリコールエーテル鎖を含有しているときには、これらは通常の同族体分布を有していてよいが、好ましくは狭範囲の同族体分布を有する。
陽イオン性界面活性剤の代表例は、第四アンモニウム化合物、例えばジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、およびエステルクォート(ester quat)、より具体的には第四級化した脂肪酸トリアルカノールアミンエステル塩である。
両性または双性イオン性界面活性剤の代表例は、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アミノプロピオネート、アミノグリシネート、イミダゾリニウムベタインおよびスルホベタインである。
これらの界面活性剤は全て既知化合物である。
【0036】
特に適する穏やかな(即ち、特に皮膚に適合する)界面活性剤の代表例は、脂肪アルコールポリグリコールエーテルスルフェート、モノグリセリドスルフェート、モノおよび/またはジアルキルスルホスクシネート、脂肪酸イセチオネート、脂肪酸サルコシネート、脂肪酸タウリド、脂肪酸グルタメート、α-オレフィンスルホネート、エーテルカルボン酸、アルキルオリゴグルコシド、脂肪酸グルカミド、アルキルアミドベタイン、アンホアセタールおよび/またはタンパク質脂肪酸縮合物(好ましくは、コムギタンパク質に基づく)である。
【0037】
油成分
適当な油成分は、例えば、6〜18個、好ましくは8〜10個の炭素原子を含む脂肪アルコールに基づくゲルベアルコール、直鎖C6-22脂肪酸と直鎖または分岐鎖C6-22脂肪アルコールとのエステル、または分岐鎖C6-13カルボン酸と直鎖または分岐鎖C6-22脂肪アルコールとのエステル、例えば、ミリスチルミリステート、ミリスチルパルミテート、ミリスチルステアレート、ミリスチルイソステアレート、ミリスチルオレエート、ミリスチルベヘネート、ミリスチルエルケート、セチルミリステート、セチルパルミテート、セチルステアレート、セチルイソステアレート、セチルオレエート、セチルベヘネート、セチルエルケート、ステアリルミリステート、ステアリルパルミテート、ステアリルステアレート、ステアリルイソステアレート、ステアリルオレエート、ステアリルベヘネート、ステアリルエルケート、イソステアリルミリステート、イソステアリルパルミテート、イソステアリルステアレート、イソステアリルイソステアレート、イソステアリルオレエート、イソステアリルベヘネート、イソステアリルエルケート、オレイルミリステート、オレイルパルミテート、オレイルステアレート、オレイルイソステアレート、オレイルオレエート、オレイルベヘネート、オレイルエルケート、ベヘニルミリステート、ベヘニルパルミテート、ベヘニルステアレート、ベヘニルイソステアレート、ベヘニルオレエート、ベヘニルベヘネート、ベヘニルエルケート、エルシルミリステート、エルシルパルミテート、エルシルステアレート、エルシルイソステアレート、エルシルオレエート、エルシルベヘネートおよびエルシルエルケートなどである。また適するのは、直鎖C6-22脂肪酸と分岐鎖アルコール(特に2-エチルヘキサノール)とのエステル、C18-38アルキルヒドロキシカルボン酸と直鎖または分岐鎖C6-22脂肪アルコールとのエステル(独国特許出願公開DE19756377A1を参照;特にジオクチルマレエート)、直鎖および/または分岐鎖脂肪酸と多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ダイマージオールまたはトリマートリオール)および/またはゲルベアルコールとのエステル、C6-10脂肪酸に基づくトリグリセリド、C6-18脂肪酸に基づく液体のモノ、ジおよびトリグリセリド混合物、C6-22脂肪アルコールおよび/またはゲルベアルコールと芳香族カルボン酸(特に安息香酸)とのエステル、C2-12ジカルボン酸と1〜22個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖アルコールまたは2〜10個の炭素原子および2〜6個のヒドロキシル基を含むポリオールとのエステル、植物油、分岐鎖の第一アルコール、置換シクロヘキサン、直鎖および分岐鎖のC6-22脂肪アルコールカーボネート(例えば、ジカプリリルカーボネート;Cetiol CC)、C6-18、好ましくはC8-10脂肪アルコールに基づくゲルベカーボネート、安息香酸と直鎖および/または分岐鎖C6-22アルコールとのエステル(例えば、Finsolv TN)、アルキル基あたりに6〜22個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の対称または非対称のジアルキルエーテル(例えば、ジカプリリルエーテル;Cetiol OE)、エポキシ化脂肪酸エステルのポリオールによる開環生成物、シリコーン油(シクロメチコーン、ケイ素メチコーンなど)および/または脂肪族またはナフテン系炭化水素(例えば、スクアラン、スクアレンまたはジアルキルシクロヘキサン)である。
【0038】
乳化剤
適当な乳化剤は、例えば、下記の群の少なくとも1つに由来する非イオン性界面活性剤である:
・直鎖C8-22脂肪アルコールへの、C12-22脂肪酸への、アルキル基に8〜15個の炭素原子を含むアルキルフェノールへの、および、アルキル基に8〜22個の炭素原子を含むアルキルアミンへの、エチレンオキシド2〜30モルおよび/またはプロピレンオキシド0〜5モルの付加生成物;
・アルキル(アルケニル)基に8〜22個の炭素原子を含むアルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシド、ならびに、そのエトキシル化類似体;
・ヒマシ油および/または水素化ヒマシ油へのエチレンオキシド1〜15モルの付加生成物;
・ヒマシ油および/または水素化ヒマシ油へのエチレンオキシド15〜60モルの付加生成物;
・グリセロールおよび/またはソルビタンと、12〜22個の炭素原子を含む不飽和、直鎖または飽和、分岐鎖の脂肪酸および/または3〜18個の炭素原子を含むヒドロキシカルボン酸との部分エステル、ならびに、エチレンオキシド1〜30モルを含むその付加生成物;
・ポリグリセロール(平均の自己縮合度2〜8)、ポリエチレングリコール(分子量400〜5000)、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、糖アルコール(例えば、ソルビトール)、アルキルグルコシド(例えば、メチルグルコシド、ブチルグルコシド、ラウリルグルコシド)およびポリグルコシド(例えば、セルロース)と、12〜22個の炭素原子を含む飽和および/または不飽和の直鎖もしくは分岐鎖の脂肪酸および/または3〜18個の炭素原子を含むヒドロキシカルボン酸との部分エステル、ならびに、エチレンオキシド1〜30モルを含むその付加生成物;
・ペンタエリトリトール、脂肪酸、クエン酸および脂肪アルコールの混合エステルおよび/または6〜22個の炭素原子を含む脂肪酸、メチルグルコースおよびポリオール(好ましくは、グリセロールまたはポリグリセロール)の混合エステル;
・モノ、ジおよびトリアルキルホスフェートならびにモノ、ジおよび/またはトリ-PEG-アルキルホスフェートおよびその塩;
・羊毛ワックスアルコール;
・ポリシロキサン/ポリアルキル/ポリエーテルコポリマーおよび対応する誘導体;
・ブロックコポリマー、例えば、ポリエチレングリコール-30 ジポリヒドロキシステアレート;
・ポリマー乳化剤、例えば、GoodrichのPemulen型(TR-1、TR-2);
・ポリアルキレングリコール;および
・グリセロールカーボネート。
【0039】
エチレンオキシド付加生成物
脂肪アルコール、脂肪酸、アルキルフェノールへの、またはヒマシ油への、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの付加生成物は、既知の市販生成物である。これらは同族体混合物であり、その平均のアルコキシル化度は、付加反応を行う基質とエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの量比に対応する。グリセロールへのエチレンオキシドの付加生成物のC12/18脂肪酸モノエステルおよびジエステルは、化粧品配合物のための脂質層増強剤として知られている。
【0040】
アルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシド
アルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシド、その製造およびその使用は、従来技術から既知である。これらは、特に、グルコースまたはオリゴ糖と8〜18個の炭素原子を含む第一アルコールとを反応させることによって製造される。グリコシド単位に関する限り、モノグリコシド(環状糖単位がグリコシド結合によって脂肪アルコールに結合している)ならびにオリゴマーグリコシド(好ましくは約8までのオリゴマー化度を有する)の両方が適している。このオリゴマー化度は、統計学的平均値であり、上記のような工業用製品に一般的な同族体分布はこれに基づいている。
【0041】
部分グリセリド
適当な部分グリセリドの代表例は、ヒドロキシステアリン酸モノグリセリド、ヒドロキシステアリン酸ジグリセリド、イソステアリン酸モノグリセリド、イソステアリン酸ジグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、オレイン酸ジグリセリド、リシノール酸モノグリセリド、リシノール酸ジグリセリド、リノール酸モノグリセリド、リノール酸ジグリセリド、リノレン酸モノグリセリド、リノレン酸ジグリセリド、エルカ酸モノグリセリド、エルカ酸ジグリセリド、酒石酸モノグリセリド、酒石酸ジグリセリド、クエン酸モノグリセリド、クエン酸ジグリセリド、リンゴ酸モノグリセリド、リンゴ酸ジグリセリド、ならびに、これらの工業用混合物(これらは、製造方法に由来して少量のトリグリセリドを含んでいることもある)である。また、これらの部分グリセリドへのエチレンオキシド1〜30モル、好ましくは5〜10モルの付加生成物も適している。
【0042】
ソルビタンエステル
適当なソルビタンエステルは、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンセスキイソステアレート、ソルビタンジイソステアレート、ソルビタントリイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノエルケート、ソルビタンセスキエルケート、ソルビタンジエルケート、ソルビタントリエルケート、ソルビタンモノリシノレエート、ソルビタンセスキリシノレエート、ソルビタンジリシノレエート、ソルビタントリリシノレエート、ソルビタンモノヒドロキシステアレート、ソルビタンセスキヒドロキシステアレート、ソルビタンジヒドロキシステアレート、ソルビタントリヒドロキシステアレート、ソルビタンモノタルトレート、ソルビタンセスキタルトレート、ソルビタンジタルトレート、ソルビタントリタルトレート、ソルビタンモノシトレート、ソルビタンセスキシトレート、ソルビタンジシトレート、ソルビタントリシトレート、ソルビタンモノマレエート、ソルビタンセスキマレエート、ソルビタンジマレエート、ソルビタントリマレエートならびにこれらの工業用混合物である。また、これらのソルビタンエステルへのエチレンオキシド1〜30モル、好ましくは5〜10モルの付加生成物も適している。
【0043】
ポリグリセロールエステル
適当なポリグリセロールエステルの代表例は、ポリグリセリル-2 ジポリヒドロキシステアレート(Dehymuls PGPH)、ポリグリセリン-3 ジイソステアレート(Lameform TGI)、ポリグリセリル-4 イソステアレート(Isolan GI 34)、ポリグリセリル-3 オレエート、ジイソステアロイル ポリグリセリル-3 ジイソステアレート(Isolan PDI)、ポリグリセリル-3 メチルグルコース ジステアレート(Tego Care 450)、ポリグリセリル-3 蜜蝋(Cera Bellina)、ポリグリセリル-4 カプレート(Polyglycerol Caprate T2010/90)、ポリグリセリル-3 セチルエーテル(Chimexane NL)、ポリグリセリル-3 ジステアレート(Cremophor GS 32)、ポリグリセリル ポリリシノレエート(Admul WOL 1403)、ポリグリセリル ジメレート イソステアレートおよびこれらの混合物である。他の適当なポリオールエステルの例は、トリメチロールプロパンまたはペンタエリトリトールと、ラウリン酸、ヤシ油脂肪酸、獣脂脂肪酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸などとの、モノ、ジおよびトリエステルである(これらを、任意にエチレンオキシド1〜30モルと反応させてもよい)。
【0044】
陰イオン性乳化剤
通常の陰イオン性乳化剤は、12〜22個の炭素原子を含む脂肪族脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸またはベヘン酸)ならびに12〜22個の炭素原子を含むジカルボン酸(例えば、アゼライン酸またはセバシン酸)である。
【0045】
両性および陽イオン性乳化剤
他の適当な乳化剤は、双性イオン性界面活性剤である。双性イオン性界面活性剤は、分子中に少なくとも1つの第四アンモニウム基および少なくとも1つのカルボキシレート基および1つのスルホネート基を含む界面活性化合物である。特に適する双性イオン性界面活性剤は、いわゆるベタインであり、例えばN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばヤシ油アルキルジメチルアンモニウムグリシネート、N-アシルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばヤシ油アシルアミノプロピルジメチルアンモニウムグリシネート、および2-アルキル-3-カルボキシメチル-3-ヒドロキシエチルイミダゾリン(アルキル基またはアシル基に8〜18個の炭素原子を含む)、およびヤシ油アシルアミノエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルグリシネートである。コカミドプロピルベタイン(Cocamidopropyl Betaine)のCTFA名称のもとで既知である脂肪酸アミド誘導体が特に好ましい。
両性界面活性剤も適当な乳化剤である。両性界面活性剤は、分子中にC8/18アルキル基またはアシル基に加えて、少なくとも1つの遊離アミノ基および少なくとも1つの−COOH基または−SOH基を含有し、内部塩を形成することができる界面活性化合物である。適当な両性界面活性剤の例は、N-アルキルグリシン、N-アルキルプロピオン酸、N-アルキルアミノ酪酸、N-アルキルイミノジプロピオン酸、N-ヒドロキシエチル-N-アルキルアミドプロピルグリシン、N-アルキルタウリン、N-アルキルサルコシン、2-アルキルアミノプロピオン酸およびアルキルアミノ酢酸(アルキル基に約8〜18個の炭素原子を含む)である。特に好ましい両性界面活性剤は、N-ヤシ油アルキルアミノプロピオネート、ヤシ油アシルアミノエチルアミノプロピオネートおよびC12/18アシルサルコシンである。
最後に、陽イオン性界面活性剤も適当な乳化剤であり、エステルクォート(ester quat)型の乳化剤、好ましくはメチルで第四級化したジ脂肪酸トリエタノールアミンエステル塩が特に好ましい。
【0046】
油脂およびワックス
油脂の代表例は、グリセリド、即ち、高級脂肪酸の混合グリセロールエステルから本質的になる固体または液体の植物または動物産物である。
適当なワックスは、特に天然ワックス、例えばカンデリラワックス、カルナバワックス、木蝋、アフリカハネガヤワックス、コルクワックス、グアルマ(guaruma)ワックス、コメ胚油ワックス、サトウキビワックス、オウリキュリー(ouricury)ワックス、モンタンワックス、蜜蝋、セラックワックス、鯨蝋、ラノリン(羊毛ワックス)、尾羽脂、セレシン、オゾケライト(地蝋)、ペトロラタム、パラフィンワックス、微結晶ワックス;化学修飾したワックス(硬ワックス)、例えばモンタンエステルワックス、サゾール(sasol)ワックス、水素化ジョジョバワックス、ならびに、合成ワックス、例えばポリアルキレンワックスおよびポリエチレングリコールワックスである。
油脂に加えて、他の適当な添加剤は、油脂様の物質、例えばレシチンおよびリン脂質である。レシチンは、脂肪酸、グリセロール、リン酸およびコリンからエステル化によって生成するグリセロリン脂質であると当業者に知られている。従って、レシチンは、当業者によりホスファチジルコリン(PC)と称されることも多い。天然レシチンの例はケファリンである。これは、ホスファチジン酸としても知られ、1,2-ジアシル-sn-グリセロール-3-リン酸の誘導体である。対照的に、リン脂質は、リン酸とグリセロールとのモノエステル、好ましくはジエステル(グリセロホスフェート)であると通常は理解されており、これは、一般に油脂と分類されている。さらに、スフィンゴシンおよびスフィンゴ脂質も適している。
【0047】
真珠色化ワックス
適当な真珠色化ワックスは、例えば、アルキレングリコールエステル、特にエチレングリコールジステアレート;脂肪酸アルカノールアミド、特にヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド;部分グリセリド、特にステアリン酸モノグリセリド;多塩基性の任意にヒドロキシ置換されたカルボン酸と、6〜22個の炭素原子を含む脂肪アルコールとのエステル、特に酒石酸の長鎖エステル;合計して少なくとも24個の炭素原子を含む脂肪化合物、例えば、脂肪アルコール、脂肪ケトン、脂肪アルデヒド、脂肪エーテルおよび脂肪カーボネート、特にラウロンおよびジステアリルエーテル;脂肪酸、例えばステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸またはベヘン酸;12〜22個の炭素原子を含むオレフィンエポキシドの、12〜22個の炭素原子を含む脂肪アルコールおよび/または2〜15個の炭素原子および2〜10個のヒドロキシル基を含むポリオールによる開環生成物;およびこれらの混合物である。
【0048】
稠度因子および増粘剤
主に使用される稠度因子は、12〜22個、好ましくは16〜18個の炭素原子を含む脂肪アルコールまたはヒドロキシ脂肪アルコール、さらに部分グリセリド、脂肪酸またはヒドロキシ脂肪酸である。これらの物質と、アルキルオリゴグルコシドおよび/または脂肪酸N-メチルグルカミド(同じ鎖長)および/またはポリグリセロール ポリ-12-ヒドロキシステアレートとの組合せを使用するのが好ましい。
適当な増粘剤は、例えば、Aerosil型(親水性シリカ)、多糖、特にキサンタンゴム、グアール、寒天、アルギネートおよびチロース(tylose)、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルおよびヒドロキシプロピルセルロース、さらに比較的高分子量の脂肪酸ポリエチレングリコールモノエステルおよびジエステル、ポリアクリレート[例えば、CarbopolおよびPemulen型(Goodrich);Synthalen(Sigma);Keltrol型(Kelco);Sepigel型(Seppic);Salcare型(Allied Colloids)]、ポリアクリルアミド、ポリマー、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンである。
特に有効であることがわかっている他の稠度因子は、ベントナイト、例えばBentone Gel VS-5PC (Rheox)(これは、シクロペンタシロキサン、Disteardimonium Hectoriteおよびプロピレンカーボネートの混合物である)である。他の適当な稠度因子は、界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪酸グリセリド)、脂肪酸とポリオール(例えば、ペンタエリトリトールまたはトリメチロールプロパン)とのエステル、狭範囲の同族体分布を有する脂肪アルコールエトキシレートまたはアルキルオリゴグルコシド、ならびに、電解質(例えば、塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウム)である。
【0049】
超脂肪化剤
超脂肪化剤は、例えば、ラノリンおよびレシチン、さらにポリエトキシル化またはアシル化したラノリンおよびレシチン誘導体、ポリオール脂肪酸エステル、モノグリセリドおよび脂肪酸アルカノールアミドなどの物質から選択することができる。脂肪酸アルカノールアミドは、発泡安定剤としても働く。
安定剤
安定剤として、脂肪酸の金属塩、例えばステアリン酸またはリシノール酸のマグネシウム、アルミニウムおよび/または亜鉛塩を使用することができる。
【0050】
ポリマー
適当な陽イオン性ポリマーは、例えば、陽イオン性セルロース誘導体、例えば第四級化したヒドロキシエチルセルロース(AmercholからPolymer JR 400の名称で入手できる)、陽イオン性デンプン、ジアリルアンモニウム塩とアクリルアミドのコポリマー、第四級化したビニルピロリドン/ビニルイミダゾールポリマー、例えばLuviquat(BASF)、ポリグリコールとアミンの縮合生成物、第四級化したコラーゲンポリペプチド、例えばラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン(Lamequat L、Gruenau)、第四級化したコムギポリペプチド、ポリエチレンイミン、陽イオン性シリコーンポリマー、例えばアミドメチコーン、アジピン酸とジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンのコポリマー(Cartaretine、Sandoz)、アクリル酸とジメチルジアリルアンモニウムクロリドのコポリマー(Merquat 550、Chemviron)、ポリアミノポリアミド(例えば、仏国特許出願公開FR2252840Aに記載)およびその架橋した水溶性ポリマー、陽イオン性キチン誘導体、例えば第四級化したキトサン(任意に微結晶分散している)、ジハロアルキル(例えばジブロモブタン)とビス-ジアルキルアミン(例えばビス-ジメチルアミノ-1,3-プロパン)との縮合生成物、陽イオン性グアールゴム(例えば、CelaneseからのJaguar CBS、Jaguar C-17、Jaguar C-16)、第四級化したアンモニウム塩ポリマー(例えば、MiranolからのMirapol A-15、Mirapol AD-1、Mirapol AZ-1)である。
【0051】
適当な陰イオン性、双性イオン性、両性および非イオン性ポリマーは、例えば、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、ビニルピロリドン/アクリル酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル/マレイン酸ブチル/アクリル酸イソボルニルコポリマー、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーおよびそのエステル、未架橋のポリアクリル酸およびポリオール架橋したポリアクリル酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド/アクリレートコポリマー、オクチルアクリルアミド/メタクリル酸メチル/tert-ブチルアミノエチルメタクリレート/2-ヒドロキシプロピルメタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート/ビニルカプロラクタムターポリマーおよび任意に誘導体化したセルロースエーテルおよびシリコーンである。
【0052】
シリコーン化合物
適当なシリコーン化合物は、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環式シリコーン、ならびに、アミノ-、脂肪酸-、アルコール-、ポリエーテル-、エポキシ-、フッ素-、グリコシド-および/またはアルキル-修飾したシリコーン化合物である(これらは、室温で液体および樹脂様の両方であることができる)。他の適当なシリコーン化合物は、水素化シリケートおよび200〜300のジメチルシロキサン単位の平均鎖長を有するジメチコーンの混合物であるシメチコーンである。
【0053】
UV保護因子
本発明におけるUV保護因子とは、例えば、室温で液体または結晶性であり、かつ、紫外線および赤外線放射を吸収することができ、吸収したエネルギーをより長波長の放射(例えば熱)の形態で放出することができる有機物質(光フィルター)である。UV保護因子は、通常は0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜1重量%の量で存在することができる。UV-Bフィルターは、油溶性または水溶性であることができる。油溶性物質の例を下記に挙げる:
・3-ベンジリデンカンファーまたは3-ベンジリデンノルカンファーおよびその誘導体、例えば3-(4-メチルベンジリデン)カンファー;
・4-アミノ安息香酸誘導体、好ましくは4-(ジメチルアミノ)安息香酸2-エチルヘキシルエステル、4-(ジメチルアミノ)安息香酸2-オクチルエステルおよび4-(ジメチルアミノ)安息香酸アミルエステル;
・ケイ皮酸のエステル、好ましくは4-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルエステル、4-メトキシケイ皮酸プロピルエステル、4-メトキシケイ皮酸イソアミルエステル、2-シアノ-3,3-フェニルケイ皮酸2-エチルヘキシルエステル(Octocrylene);
・サリチル酸のエステル、好ましくはサリチル酸2-エチルヘキシルエステル、サリチル酸4-イソプロピルベンジルエステル、サリチル酸ホモメンチルエステル;
・ベンゾフェノンの誘導体、好ましくは2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン;
・ベンザルマロン酸のエステル、好ましくは4-メトキシベンザルマロン酸ジ-2-エチルヘキシルエステル;
・トリアジンの誘導体、例えば2,4,6-トリアニリノ-(p-カルボ-2'-エチル-1'-ヘキシルオキシ)-1,3,5-トリアジンおよびオクチルトリアゾンまたはジオクチルブタアミドトリアゾン(UVAsorb HEB);
・プロパン-1,3-ジオン、例えば1-(4-tert-ブチルフェニル)-3-(4'-メトキシフェニル)-プロパン-1,3-ジオン;
・ケトトリシクロ(5.2.1.0)デカン誘導体。
【0054】
適当な水溶性物質は、下記の通りである:
・2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸、ならびに、そのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アルカノールアンモニウムおよびグルクアンモニウム塩;
・ベンゾフェノンのスルホン酸誘導体、好ましくは2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸およびその塩;
・3-ベンジリデンカンファーのスルホン酸誘導体、例えば4-(2-オキソ-3-ボルニリデンメチル)-ベンゼンスルホン酸および2-メチル-5-(2-オキソ-3-ボルニリデン)スルホン酸およびその塩。
【0055】
通常のUV-Aフィルターは、特に、ベンゾイルメタンの誘導体、例えば1-(4'-tert-ブチルフェニル)-3-(4'-メトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオン、4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン(Parsol 1789)、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステル(Uvinul A Plus)、1-フェニル-3-(4'-イソプロピルフェニル)プロパン-1,3-ジオン、およびエナミン化合物などである。勿論、これらUV-AおよびUV-Bフィルターを、混合物の形態で使用することもできる。特に好ましい組合せは、ベンゾイルメタンの誘導体、例えば4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン(Parsol 1789)および2-シアノ-3,3-フェニルケイ皮酸2-エチルヘキシルエステル(Octocrylene)からなり、ケイ皮酸のエステル、好ましくは4-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルエステルおよび/または4-メトキシケイ皮酸プロピルエステルおよび/または4-メトキシケイ皮酸イソアミルエステルと組合せる。このような組合せを、水溶性フィルター(例えば、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸ならびにそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アルカノールアンモニウムおよびグルクアンモニウム塩)と組合せるのが有利である。
【0056】
上記した可溶性物質に加えて、不溶性の光遮断性顔料(即ち、微細に分散させた金属酸化物または塩)も、この目的に使用することができる。適当な金属酸化物の例は、特に、酸化亜鉛および二酸化チタン、さらに、鉄、ジルコニウム、ケイ素、マンガン、アルミニウムおよびセリウムの酸化物、ならびにこれらの混合物である。ケイ酸塩(タルカム)、硫酸バリウムおよびステアリン酸亜鉛を、塩として使用することができる。これらの酸化物および塩を、皮膚ケアおよび皮膚保護エマルジョンおよび美容化粧品のための顔料の形態で使用する。これら粒子は、100nm未満、好ましくは5〜50nm、より好ましくは15〜30nmの平均直径を有しているべきである。これらは球の形状であってよいが、楕円形の粒子または他の非球形の粒子を使用することもできる。また、顔料を、表面処理すること、即ち親水性化または疎水性化することもできる。その代表例は、被覆した二酸化チタン、例えば、Titandioxid T 805(Degussa)およびEusolex T2000(Merck)である。適当な疎水性被覆材料は、特にシリコーンであり、とりわけトリアルコキシオクチルシランまたはシメチコーンである。いわゆるミクロまたはナノ顔料を、日光保護製品において使用するのが好ましい。ミクロ化した酸化亜鉛を使用するのが好ましい。
【0057】
生物起源の薬剤および酸化防止剤
本発明における生物起源の薬剤とは、例えば、トコフェロール、トコフェロールアセテート、トコフェロールパルミテート、アスコルビン酸、(デオキシ)リボ核酸およびその断片化生成物、β-グルカン、レチノール、ビサボロール、アラントイン、ピタントリオール、パンテノール、AHA酸、アミノ酸、セラミド、偽セラミド、精油、植物抽出物(例えば、西洋スモモ抽出物、バンバラナッツ抽出物)ならびにビタミン複合体である。
【0058】
酸化防止剤は、UV線が皮膚に貫通したときに開始される光化学反応連鎖を遮断する。その代表例は、アミノ酸(例えば、グリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)およびその誘導体、イミダゾール(例えば、ウロカニン酸)およびその誘導体、ペプチド、例えばD,L-カルノシン、D-カルノシン、L-カルノシンおよびその誘導体(例えば、アンセリン)、カロチノイド、カロテン(例えば、α-カロテン、β-カロテン、リコペン)およびその誘導体、クロロゲニン酸およびその誘導体、リポン酸およびその誘導体(例えば、ジヒドロリポン酸)、オーロチオグルコース、プロピルチオウラシルおよび他のチオール(例えば、チオレドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミン、ならびに、そのグリコシル、N-アセチル、メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチル、およびラウリル、パルミトイル、オレイル、γ-リノレイル、コレステリルおよびグリセリルエステル)およびその塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、チオジプロピオン酸およびその誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシドおよび塩)、ならびに、スルホキシイミン化合物(例えば、ブチオニンスルホキシイミン、ホモシステインスルホキシイミン、ブチオニンスルホン、ペンタ-、ヘキサ-およびヘプタ-チオニンスルホキシイミン)[これらは、極めて少ない許容用量(例えば、pモル〜μモル/kg)で用いる]、さらに、(金属)キレート化剤(例えば、α-ヒドロキシ脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン)、α-ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸)、フミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリルビン、ビリベルジン、EDTA、EGTAおよびその誘導体、不飽和脂肪酸およびその誘導体(例えば、γ-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸)、葉酸およびその誘導体、ユビキノンおよびユビキノールおよびその誘導体、ビタミンCおよびその誘導体(例えば、アスコルビルパルミテート、Mgアスコルビルホスフェート、アスコルビルアセテート)、トコフェロールおよび誘導体(例えば、ビタミンEアセテート)、ビタミンAおよび誘導体(ビタミンAパルミテート)およびベンゾイン樹脂のコニフェリルベンゾエート、ルチン酸およびその誘導体、α-グリコシルルチン、フェルラ酸、フルフリリデングルシトール、カルノシン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ノルジヒドログアヤク樹脂酸、ノルジヒドログアイアレチン酸、トリヒドロキシブチロフェノン、尿酸およびその誘導体、マンノースおよびその誘導体、スーパーオキシド ジスムターゼ、亜鉛およびその誘導体(例えば、ZnO、ZnSO)、セレンおよびその誘導体(例えば、セレンメチオニン)、スチルベンおよびその誘導体(例えば、スチルベンオキシド、トランス-スチルベンオキシド)、ならびに、本発明の目的に適するこれら活性物質の誘導体(塩、エステル、エーテル、糖、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチドおよび脂質)である。
【0059】
脱臭剤および微生物抑制剤
化粧品用脱臭剤は、体臭を相殺するか、遮蔽するか、または除去する。体臭は、アポクリン発汗における皮膚細菌の作用によって生じ、これにより不快臭を有する分解生成物が生成することになる。従って、脱臭剤は、微生物抑制剤、酵素阻害剤、臭気吸収剤または臭気遮蔽剤として作用する活性成分を含有する。
【0060】
微生物抑制剤
基本的に、適当な微生物抑制剤は、グラム陽性細菌に対して作用するあらゆる物質であり、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸およびその塩およびエステル、N-(4-クロロフェニル)-N'-(3,4-ジクロロフェニル)尿素、2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール、2,2'-メチレン-ビス-(6-ブロモ-4-クロロフェノール)、3-メチル-4-(1-メチルエチル)フェノール、2-ベンジル-4-クロロフェノール、3-(4-クロロフェノキシ)プロパン-1,2-ジオール、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート、クロロヘキシジン、3,4,4'-トリクロロカルバニリド(TTC)、抗細菌芳香物質、チモール、タイム油、オイゲノール、チョウジ油、メントール、ミント油、ファルネソール、フェノキシエタノール、グリセロールモノカプレート、グリセロールモノカプリレート、グリセロールモノラウレート(GML)、ジグリセロールモノカプレート(DMC)、サリチル酸-N-アルキルアミド(例えば、サリチル酸n-オクチルアミドまたはサリチル酸n-デシルアミド)などである。
【0061】
酵素阻害剤
適当な酵素阻害剤は、例えばエステラーゼ阻害剤である。エステラーゼ阻害剤は、好ましくはクエン酸トリアルキル、例えばクエン酸トリメチル、クエン酸トリプロピル、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリブチル、および特に、クエン酸トリエチル(Hydagen CAT)である。エステラーゼ阻害剤は、酵素活性を阻害し、こうして臭気の生成を減少させる。他のエステラーゼ阻害剤は、ステロールスルフェートまたはホスフェート(例えば、ラノステロール、コレステロール、カンペステロール、スチグマステロールおよびシトステロールスルフェートまたはホスフェートなど)、ジカルボン酸およびそのエステル(例えば、グルタル酸、グルタル酸モノエチルエステル、グルタル酸ジエチルエステル、アジピン酸、アジピン酸モノエチルエステル、アジピン酸ジエチルエステル、マロン酸およびマロン酸ジエチルエステルなど)、ヒドロキシカルボン酸およびそのエステル(例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸または酒石酸ジエチルエステルなど)、ならびに亜鉛グリシネートである。
【0062】
臭気吸収剤
適当な臭気吸収剤は、臭気生成化合物を吸収することができ、その大部分を保持することができる物質である。これらは、個々の成分の分圧を低下させ、こうしてその拡散速度を低下させる。この点で重要な要件は、芳香物質が損なわれないまま保持されることである。臭気吸収剤は、細菌に対して活性ではない。これらは、例えば主成分として、ラブダナムもしくはエゴノキの抽出物またはある種のアビエチン酸誘導体などの「保留剤」として当業者に知られている特定のほぼ中性臭気の芳香物質またはリシノール酸の錯亜鉛塩を含有する。
【0063】
臭気遮蔽剤は、その臭気遮蔽機能に加えて、その特定の芳香を脱臭剤に与える芳香物質または芳香油である。適当な芳香油は、例えば、天然および合成の芳香物質の混合物である。天然の芳香物質には、花、茎および葉、果実、果皮、根、木、ハーブおよび草、針状葉および枝、樹脂およびバルサムの抽出物が含まれる。また、動物原料、例えばジャコウおよびビーバーを使用することもできる。通常の合成芳香化合物は、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルコールおよび炭化水素型の生成物である。エステル型の芳香化合物の例は、酢酸ベンジル、シクロヘキシル酢酸p-tert-ブチル、酢酸リナリル、酢酸フェニルエチル、安息香酸リナリル、ギ酸ベンジル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、プロピオン酸スチラリルおよびサリチル酸ベンジルである。エーテルには、例えばベンジルエチルエーテルが含まれ、アルデヒドには、例えば8〜18個の炭素原子を含む直鎖アルカナール、シトラール、シトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、リリアルおよびボルゲオナールが含まれる。適当なケトンの例は、イオノンおよびメチルセドリルケトンである。適当なアルコールは、アネトール、シトロネロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコールおよびテルピネオールである。炭化水素には、主にテルペンおよびバルサムが含まれる。しかし、異なる芳香化合物の混合物(これらは一緒になって快い芳香を生じる)を使用するのが好ましい。他の適当な芳香油は、比較的低揮発性の精油(これらのほとんどは芳香成分として使用される)である。その例は、セージ油、カミツレ油、チョウジ油、メリッサ油、ミント油、シナモン葉油、シナノキ花油、ビャクシン果実油、ベチベルソウ油、オリバヌム油、ガルバヌム油、ラブダナム油およびラベンジン油である。下記のものを、個々にまたは混合物の形態で使用するのが好ましい:即ち、ベルガモット油、ジヒドロミルセノール、リリアル、ライラール(lyral)、シトロネロール、フェニルエチルアルコール、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、ゲラニオール、ベンジルアセトン、シクラメンアルデヒド、リナロール、ボイサムブレン・フォルテ(Boisambrene Forte)、アムブロキサン(Ambroxan)、インドール、ヘジオン(hedione)、サンデリス(sandelice)、柑橘油、マンダリン油、オレンジ油、アリルアミルグリコレート、シクロベルタール(cyclovertal)、ラベンジン油、サルビア油、β-ダマスコーン、ゼラニウム油バーボン、サリチル酸シクロヘキシル、ベルトフィックス・ケウアー(Vertofix Coeur)、イソ-E-スーパー(Iso-E-Super)、フィクソリド(Fixolide)NP、エベルニル(evernyl)、イラルデイン(iraldein)ガンマ、フェニル酢酸、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、ローズオキシド、ロミラット(romillat)、イロチル(irotyl)およびフロラマット(floramat)。
【0064】
発汗防止剤
発汗防止剤は、エクリン汗腺の活性に影響を及ぼすことによって発汗を減少させ、こうして腋下の湿気および体臭を中和する。通常、水性または無水の発汗防止配合物は、下記の成分を含有する:
・収斂活性の成分;
・油成分;
・非イオン性乳化剤;
・共乳化剤;
・稠度因子;
・助剤(例えば、増粘剤または錯生成剤の形態にある);および/または
・非水性溶媒(例えば、エタノール、プロピレングリコールおよび/またはグリセロールなど)。
【0065】
発汗防止剤の適当な収斂性の活性成分は、特に、アルミニウム、ジルコニウムまたは亜鉛の塩である。この種の適当な抗ヒドロ(antihydrotic)剤は、例えば、アルミニウムクロリド、アルミニウムクロロヒドレート、アルミニウムジクロロヒドレート、アルミニウムセスキクロロヒドレート、および、これらと例えば1,2-プロピレングリコールとの複合化合物、アルミニウムヒドロキシアラントイネート、アルミニウムクロリドタルトレート、アルミニウムジルコニウムトリクロロヒドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロヒドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロヒドレート、および、これらと例えばアミノ酸(グリシンなど)との複合化合物である。さらに、発汗防止剤において普通に使用される油溶性および水溶性の助剤が、比較的少量で存在していてもよい。
【0066】
このような油溶性の助剤には、例えば、下記のものが含まれる:
・炎症抑制性、皮膚保護性または芳香性の精油;
・合成の皮膚保護剤;および/または
・油溶性の芳香油。
【0067】
通常の水溶性の添加剤は、例えば、防腐剤、水溶性芳香物質、pH調節剤、例えば緩衝混合物、水溶性増粘剤、例えば水溶性の天然または合成ポリマー、例えばキサンタンゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたは高分子量ポリエチレンオキシドである。
【0068】
皮膜形成剤
通常の皮膜形成剤は、例えば、キトサン、微結晶キトサン、第四級化キトサン、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸系列のポリマー、第四セルロース誘導体、コラーゲン、ヒアルロン酸およびその塩および同様の化合物である。
【0069】
ふけ防止剤
適当なふけ防止剤は、ピロクトン オラミン(Pirocton Olamin)[1-ヒドロキシ-4-メチル-6-(2,4,4-トリメチルペンチル)-2-(1H)-ピリジノン モノエタノールアミン塩]、Baypival(クリムバゾール;Climbazole)、Ketoconazol(4-アセチル-1-{4-[2-(2,4-ジクロロフェニル) r-2-(1H-イミダゾール-1-イルメチル)-1,3-ジオキシラン-c-4-イルメトキシフェニル}ピペラジン、ケトコナゾール、エルビオール、セレンジスルフィド、コロイド状イオウ、イオウポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート、イオウリシノールポリエトキシレート、イオウタールジスチレート、サリチル酸(または、ヘキサクロロフェンと組合せて)、ウンデシレン酸 モノエタノールアミド スルホスクシネートNa塩、Lamepon UD(タンパク質/ウンデシレン酸縮合物)、亜鉛ピリチオン、アルミニウムピリチオンおよびマグネシウムピリチオン/ジピリチオンマグネシウムスルフェートである。
【0070】
膨潤剤
水相のための適当な膨潤剤は、モンモリロナイト、粘土無機物、ペムレン(Pemulen)、およびアルキル修飾したカルボポール(Carbopol)型(Goodrich)である。他の適当なポリマーおよび膨潤剤は、R.Lochheadの概説[Cosm.Toil.、108、95 (1993)]中に見ることができる。
虫忌避剤
適当な虫忌避剤は、N,N-ジエチル-m-トルアミド、ペンタン-1,2-ジオールまたはブチルアセチルアミノプロピオン酸エチルである。
自己褐変剤および脱色素剤
適当な自己褐変剤は、ジヒドロキシアセトンである。適当なチロシン阻害剤(これは、メラニンの生成を妨げ、脱色素調製物において使用される)は、例えば、アルブチン、フェルラ酸、コウジ酸、クマル酸およびアスコルビン酸(ビタミンC)である。
【0071】
ヒドロトロープ剤
さらに、流れ挙動を改善するために、ヒドロトロープ剤、例えばエタノール、イソプロピルアルコールまたはポリオールを使用することができる。適当なポリオールは、好ましくは2〜15個の炭素原子および少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する。これらポリオールは、他の官能基、特にアミノ基を含有することができ、また、窒素で修飾することもできる。その代表例は、下記の通りである:
・グリセロール;
・アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、および、ポリエチレングリコール(100〜1000ダルトンの平均分子量を有する);
・1.5〜10の自己縮合度を有する工業用オリゴグリセロール混合物、例えば40〜50重量%のジグリセロール含量を有する工業用ジグリセロール混合物;
・メチロール化合物、例えば特にトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリトリトールおよびジペンタエリトリトール;
・低級アルキルグルコシド、特にアルキル基に1〜8個の炭素原子を含むもの、例えばメチルおよびブチルグルコシド;
・5〜12個の炭素原子を含む糖アルコール、例えばソルビトールまたはマンニトール;
・5〜12個の炭素原子を含む糖、例えばグルコースまたはスクロース;
・アミノ糖、例えばグルカミン;
・ジアルコールアミン、例えばジエタノールアミンまたは2-アミノプロパン-1,3-ジオール。
【0072】
防腐剤
適当な防腐剤は、例えば、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド溶液、パラベン、ペンタンジオールまたはソルビン酸およびSurfacineの名称のもとで知られている銀錯体およびKosmetikverordnung(化粧品指針)の付属書6のパートAおよびBに挙げられている他の群の化合物である。
【0073】
芳香油および芳香剤
適当な芳香油は、天然および合成の芳香物質の混合物である。天然の芳香物質には、花(ユリ、ラベンダー、バラ、ジャスミン、ネロリ、イランイラン)、茎および葉(ゼラニウム、パチョリ、プチグレイン)、果実(アニス、コエンドロ、ヒメウイキョウ、ビャクシン)、果皮(ベルガモット、レモン、オレンジ)、根(ニクズク、アンゼリカ、セロリ、カルダモン、コスタス、アイリス、カルムス)、木(マツ、ビャクダン、ユソウボク、シーダー材、シタン)、ハーブおよび草(タラゴン、レモングラス、セージ、タイム)、針状葉および枝(トウヒ、モミ、マツ、低マツ)、樹脂およびバルサム(ガルバヌム、エレミ、ベンゾイン、ミルラ、乳香、オポパナックス)の抽出物が含まれる。また、動物原料、例えばジャコウおよびビーバーを使用することもできる。通常の合成芳香化合物は、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルコールおよび炭化水素型の生成物である。エステル型の芳香化合物の例は、酢酸ベンジル、イソ酪酸フェノキシエチル、シクロヘキシル酢酸p-tert-ブチル、酢酸リナリル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸フェニルエチル、安息香酸リナリル、ギ酸ベンジル、エチルメチルフェニルグリシネート、プロピオン酸アリルシクロヘキシル、プロピオン酸スチラリルおよびサリチル酸ベンジルである。エーテルには、例えばベンジルエチルエーテルが含まれ、アルデヒドには、例えば8〜18個の炭素原子を含む直鎖アルカナール、シトラール、シトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、リリアルおよびボルゲオナールが含まれる。適当なケトンの例は、イオノン、α-イソメチルイオノンおよびメチルセドリルケトンである。適当なアルコールは、アネトール、シトロネロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコールおよびテルピネオールである。炭化水素には、主にテルペンおよびバルサムが含まれる。しかし、異なる芳香化合物の混合物(これらは一緒になって快い芳香を生じる)を使用するのが好ましい。他の適当な芳香油は、比較的低揮発性の精油(これらのほとんどは芳香成分として使用される)である。その例は、セージ油、カミツレ油、チョウジ油、メリッサ油、ミント油、シナモン葉油、シナノキ花油、ビャクシン果実油、ベチベルソウ油、オリバヌム油、ガルバヌム油、ラブダナム油およびラベンジン油である。下記のものを、個々にまたは混合物の形態で使用するのが好ましい:即ち、ベルガモット油、ジヒドロミルセノール、リリアル、ライラール(lyral)、シトロネロール、フェニルエチルアルコール、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、ゲラニオール、ベンジルアセトン、シクラメンアルデヒド、リナロール、ボイサムブレン・フォルテ(Boisambrene Forte)、アムブロキサン(Ambroxan)、インドール、ヘジオン(hedione)、サンデリス(sandelice)、柑橘油、マンダリン油、オレンジ油、アリルアミルグリコレート、シクロベルタール(cyclovertal)、ラベンジン油、サルビア油、β-ダマスコーン、ゼラニウム油バーボン、サリチル酸シクロヘキシル、ベルトフィックス・ケウアー(Vertofix Coeur)、イソ-E-スーパー(Iso-E-Super)、フィクソリド(Fixolide)NP、エベルニル(evernyl)、イラルデイン(iraldein)ガンマ、フェニル酢酸、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、ローズオキシド、ロミラット(romilat)、イロチル(irotyl)およびフロラマット(floramat)。
適当な芳香剤は、例えば、ペパーミント油、スペアミント油、アニス実油、ニホンアニス油、ヒメウイキョウ油、ユーカリ油、ウイキョウ油、柑橘油、ヒメコウジ油、チョウジ油、メントールなどである。
【0074】
染料
適当な染料は、例えば、刊行物「Kosmetische Faerbemittel」[Farbstoffkommission der Deutschen Forschungsgemeinschaft、Verlag Chemie、Weinheim、1984、p.81-106]に挙げられている、化粧品目的に認められかつ適している任意の物質である。その例には、コチニール・レッドA(C.I.16255)、パテント・ブルーV(C.I.42051)、インジゴチン(C.I.73015)、クロロフィリン(C.I.75810)、キノリン・イエロー(C.I.47005)、二酸化チタン(C.I.77891)、インダントレン・ブルーRS(C.I.69800)およびマッダーレーキ(C.I.58000)が含まれる。また、ルミノールが発光染料として存在していてもよい。通常、これらの染料は、混合物全体を基準に、0.001〜0.1重量%の濃度で使用される。
【0075】
助剤および添加剤の合計含有量(%)は、特定の調製物に基づいて、1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%であってよい。調製物は、通常の熱間法または常温法によって製造することができ、好ましくは転相温度法によって製造される。
【実施例】
【0076】
蒸留水(5.3kg)を反応器に導入し、粉砕エペルア・ファルカータ樹皮(600g)を添加した。次に、混合物を85℃に1時間加熱し、20℃に冷却し、15分間遠心して、不溶性成分を除去した。次に、デキストリン(300g)を添加し、溶液を45μmメッシュフィルターに通した。最後に、得られた溶液を噴霧乾燥して、抽出物10重量%およびデキストリン90重量%を含有する乾燥粉末を得た。収率は、使用した植物原料に基づいて約14重量%であった。
【0077】
細胞毒性および神経ペプチド阻害
本発明の抽出物の阻害作用を、37℃/5容量%二酸化炭素で2週間インキュベートしたニューロン培養物においてインビトロで試験した。培養培地を交換した後、上記のように調製したEperua抽出物による処理を行なった。次に、ニューロンを、ニューロンの細胞膜を脱分極する調製物(40mM塩化カリウム)の添加によって、または10μMカプサイシン(紅斑を形成することが知られている)の添加によって、37℃/5容量%二酸化炭素において20分間にわたり刺激した。
【0078】
第一系列の試験において、使用した試験物質の細胞毒性を、Bonnekohの方法[Dermatol.Res. 22, p.325-329 (1990)を参照]を用いて放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の量によって評価した。次に、刺激の結果として放出された神経ペプチドの量を、ELISA法によって測定した。これらの結果を表2に示す。測定したLDHおよびCGRPの値は、標準(試験物質を添加せず)に基づいている。
【表2】

【0079】
結果の考察
・放出されたLDHの量から、本抽出物が、種々の濃度においてニューロンへの毒性作用を有さないことがわかる。
・放出されたCGRPの量から、KClまたはカプサイシンの添加が強い刺激を生じ、この刺激を本発明の抽出物の添加によって有意に減少させうることがわかる。
【0080】
表3は、多くの配合例を示す(は登録商標であることを表す)。
【表3】

【0081】
新規ポリフェノールの同定
前部で15種類の新規化合物(下記のA〜O)を、H1に従って(しかしデキストリンは添加せず)調製した水性Eperua抽出物から単離した。これらの新規化合物は、好ましくはフラバンおよびカルコン型のポリフェノールであり、HPCL(HP 1100, Photo Diode Array Detector, HP Software; Hewlett-Packard)によって単離した。水性メタノールを使用して分離を行い、濃度勾配を適用した。即ち、0〜35分はHO/MeOH=70:30であり、35〜37分は=20:80であり、次に、純粋メタノールに変えた。注入量は10μlであった。UV検出を、210、254および363nmで行なった。カラム[SymmetryShield RP-18 (250x4.6、Waters)]を25℃で操作した。LC/MS-MS分析を、下記の操作条件下に行なった(表4)。
【表4】

【0082】
下記の表5は、新規化合物を同定することができる保持時間、ベースイオンおよびUV吸収を示す。
【表5】

【0083】
図1〜5は、15種類の新規化合物A〜Oについての対応するクロマトグラムおよびスペクトルを示す。
表5における化合物DおよびHは、クロマトグラムにおいて最大のピークを示す。これら2種類の化合物(両方ともジヒドロフラボノールのクラスに属する)を、特に1HNMRおよび13CNMRを使用して同定した。
ジヒドロフラボノールは、3-ヒドロキシフラボノンまたはフラボノン-3-オールとも称される。生合成的に、これらはフラバノンのC-3における酸化によって生成する。ジヒドロフラボノールは、C-2およびC-3において2個のキラル中心を有する。大部分の天然ジヒドロフラボノールは、立体化学的に2R,R形で存在する。
【0084】
化合物Dはアスチルビンである。アスチルビンは、ケミカルアブストラクト登録番号29838-67-3を有する。アスチルビンの異名は、3,3',4',5,7-ペンタヒドロキシフラバノン、3-O-L-ラムノピランシド、ジヒドロクエルセチン、3-O-L-ラムノピラノシドである。アスチルビンの実験式は、C212211であり、その分子量は450,398g/モルである。アスチルビンは、Taxillus kaempferi、Vitis vinifera、Encryphia cordifolia、Astilbe、Quintinia、Litsea sppにおいて天然に存在する。
【0085】
化合物Hはエンゲレチンである。エンゲレチンは、ケミカルアブストラクト登録番号572-31-6を有する。エンゲレチンの異名は、3,4',5,7-テトラヒドロキシフラバノン、3-O-L-ラムノピラノシド、ジヒドロケンプフェロール-3-ラムノシドである。エンゲレチンの実験式は、C212210であり、その分子量は434,399g/モルである。エンゲレチンは、Engelhardtia、Eucalyptus、Eucryphia、Flindersia、Glycoxylon、Lyonia、Nothofagus、SmilaxおよびVitis sppにおいて天然に存在する。
【0086】
アスチルビンおよびエンゲレチンの特性:インビトロでの抗炎症作用:実施例A
ヒトケラチノサイトへのUV-B放射に対するアスチルビンおよびエンゲレチンの保護作用を下記に示す。
UV-B放射(波長280〜320nm)は、主に、細胞膜からアラキドン酸を放出する酵素(ホスホリパーゼA2またはPLA2)の活性化によって、皮膚の炎症を引き起こす[V.A.De Leo、D.Hanson、I.B.WeinsteinおよびL.C.Harber、「Ultraviolet radiation stimulates the release of arachidonic acid from mammalian cells in culture」、Photochemistry and Photobiology (1985)、Vol.41, No.1、p.51-56]。次に、他の酵素(いわゆるシクロオキシゲナーゼ)が、アラキドン酸を、活性成分に、いわゆるプロスタグランジン(略してPG)に変換する。このプロスタグランジンが細胞によって分泌される。特定のプロスタグランジン(PGE2)の、皮膚の特定受容体への結合は、日焼けと同様に、皮膚の赤化および浮腫を導く。
【0087】
培養ヒト細胞において、細胞膜におけるUV-B放射のこれら作用は、上清溶液への細胞質酵素の放出に関係している。この細胞質酵素は、乳酸デヒドロゲナーゼまたはLDHである[B.Bonnekoh、B.Farkas、J.GeiselおよびG.Mahrle、「Lactate dehydrogenase release as an indicator of dithranol-induced membrane injury in cultured human keratinocyte」、Dermatological Research (1990), Vol.282, p.325-331]。
【0088】
実験を下記のように行った。
ヒトケラチノサイトを、5容量%二酸化炭素を含む雰囲気中、37℃で3日間インキュベートした[ウシ胎児血清(FCS)を含有する標準栄養培地]。次に、栄養培地を、試験物質(アスチルビンまたはエンゲレチン)を含有する等張食塩水と交換した。ケラチノサイトをUV-B放射(50mJ/cm、DUKE GL40Eランプ)に暴露し、次に、5容量%二酸化炭素を含む雰囲気中、37℃で1日間インキュベートした。上清栄養培地を、ELISA法によって、LDH2およびPEG2について分光学的に分析した。
【0089】
結果を下記の表に示す(対照試験との比較%)。
【表6】


これらの結果は、対照試験と比較して、0.003%のアスチルビンがLDHおよびPGE2の量を減少させたことを示す。これは、抗炎症作用を表している。その作用はそれほど顕著でないが、エンゲレチンにも同じことが当てはまる。従って、これら2種類の物質アスチルビンおよびエンゲレチンは、植物エペルア・ファルカータの抽出物の特性に有意に寄与している。
【0090】
アスチルビンおよびエンゲレチンの特性:インビトロでの抗炎症作用:実施例B
皮膚炎症の過程で、白血球、例えば多形核白血球(PMN)が、ペプチド、例えばサイトカインおよび他の伝達物質、例えば、真皮中の活性化および壊死細胞から放出されるロイドトリエン(leudotriene)によって誘引および刺激される。これらの刺激されたPMNは、炎症誘発性サイトカイン、ロイコトリエンおよびプロテアーゼだけでなく、反応性酸素化合物(ROS)、例えばスーパーオキシドおよび次亜塩素酸塩陰イオンをも分泌する。これは、病原性細菌または真菌を破壊するためになされる。PMNのこの活性は、呼吸バーストとして知られており、炎症反応を強化し、放出されたROSおよびリソソーム酵素による組織損傷を引き起こす。
【0091】
試験手順の詳細は、Kappらの論文「The role of immunomodulating cytokines, activation of the oxidative metabolism in human polymorphonuclear neutrophilic granulocytes」[Journal of Investigative Dermatology、Vol.95、p.94S-99S、1990]中に見ることができる。
【0092】
実験を下記のように行なった。
ヒトPMNの懸濁液(100万細胞/ml)を試験物質に暴露した(5容量%COを含む雰囲気中、37℃で24時間インキュベート)。PMN細胞の数を測定した。PMNを、0.1mlザイモサン(酵母の細胞壁からの不溶性炭水化物)で活性化し、次に、5容量%COを含む雰囲気中、37℃で0.5時間インキュベートした。
【0093】
結果を下記の表に示す(対照試験との比較%)。ROSの量をルミノールにより測定し、発光を60秒間測定した。
【表7】


アスチルビンおよびエンゲレチンの両方が、炎症過程の抑制に極めて有効である。それらの有効性は、使用量と共に増加する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】粗抽出物のLC/UV-DADクロマトグラムである。
【図2】粗抽出物のUVスペクトルのチャートである。
【図3】粗抽出物のLC-MSスペクトルのチャートである。
【図4】粗抽出物のMSスペクトルのチャートである。
【図5】粗抽出物のMSスペクトルのチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物エペルア・ファルカータの抽出物またはその活性成分またはアスチルビンまたはエンゲレチンを含有する美容、医薬または皮膚用調製物であって、
該抽出物またはその活性成分またはアスチルビンまたはエンゲレチンが、該調製物中に、好ましくは0.001〜5重量%の量で存在し;
該抽出物またはその活性成分またはアスチルビンまたはエンゲレチンが、マイクロカプセル、リポソームまたはプロ-リポソームの形態で存在し;
該抽出物またはその活性成分またはアスチルビンまたはエンゲレチンが、100〜300nmの粒径を有する微細粒子固形物(「ナノ粒子」)として存在する調製物。
【請求項2】
非治療的美容、医薬および/または皮膚用調製物の製造のための、植物エペルア・ファルカータの抽出物またはその活性成分またはアスチルビンまたはエンゲレチンの使用。
【請求項3】
皮膚または毛髪処置調製物であることを特徴とする請求項2に記載の調製物。
【請求項4】
神経ペプチドを阻害するための、植物エペルア・ファルカータの抽出物またはその活性成分またはアスチルビンまたはエンゲレチンの使用。
【請求項5】
ストレスを受けた皮膚細胞または神経線維の炎症誘発性媒介物質の放出を減少させるための、植物エペルア・ファルカータの抽出物またはその活性成分またはアスチルビンまたはエンゲレチンの使用。
【請求項6】
神経ペプチドまたは媒介物質がCGRPまたはSPであることを特徴とする請求項4または5に記載の使用。
【請求項7】
神経原性炎症の減少のため、敏感皮膚の処置のため、抗アクネ剤のため、または頭皮かゆみの減少のための、植物エペルア・ファルカータの抽出物またはその活性成分またはアスチルビンまたはエンゲレチンの使用。
【請求項8】
植物エペルア・ファルカータの抽出物を含有するが、エペルア酸を含有しない請求項1に記載の調製物。
【請求項9】
調製物が植物エペルア・ファルカータの抽出物を含有し、該抽出物が水含有抽出物である請求項1または8に記載の調製物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−519166(P2006−519166A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568670(P2004−568670)
【出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014598
【国際公開番号】WO2004/075867
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(502021660)コグニス・フランス・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ (21)
【氏名又は名称原語表記】COGNIS FRANCE, S.A.S
【Fターム(参考)】