説明

エポキシ含有ポリ(エステルアミド)および使用方法

本発明は、膜形成特性をもつ、脂肪族エポキシ含有PEAポリマー組成物を提供する。本発明のPEA組成物において用いられる脂肪族エポキシ二価酸は、無毒の脂肪性脂肪族エポキシ類似体を含む。第二のC保護したL-リシンベースのモノマーがポリマー中に導入され、さらなる鎖柔軟性を提供する可能性もある。本発明のPEAポリマー組成物は、体内投与されるかまたは埋め込み式医療機器の製造に用いられる場合に、生物活性剤の送達のために有用である。生分解性ヒドロゲルは、本発明のエポキシ含有PEAを用いて作製され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して薬物送達系、特に生分解性ポリマーの骨格内にα-アミノ酸およびエポキシ官能性を組み込んであるポリマー送達組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
例えば疎水性α-アミノ酸、脂肪族ジオールおよびジカルボン酸等の無毒の構成要素からなる、通常のAA-BB型生物類似性のポリ(エステルアミド)(PEA)は、それらの優れた血液および組織適合性(K. DeFifeら、Transcatheter Cardiovascular Therapeutics - TCT 2004 Conference. Poster presentation. Washington DC. 2004(非特許文献1))、ならびに生分解プロファイル(G. Tsitlanadzeら、J. Biomater. Sci. Polymer Edn. (2004). 15:1-24(非特許文献2))を理由に、生物医学的適用のための重要な材料であることが立証されている。PEAの制御された酵素分解速度および低い非特異的分解速度が、それらを薬物送達適用にとって関心のあるものにしている。
【0003】
PEAのこれらの特性は、例えばポリ酢酸(PLA)およびポリグリコール酸(PGA)等の、広く用いられる脂肪族ポリエステルよりも有利な点を提供する。PLAおよびPGAの高分子内の脂肪族エステル基は、速い加水分解速度を付与するが、ポリマー表面は、特性が細胞-生体材料相互作用の重要な指標である、乏しい接着および細胞成長を呈することが公知である(Cook, ADら、J. Biomed. Mater. Res., (1997). 35:513-523(非特許文献3))。
【0004】
PEAは、L-リシン部分由来の導入された側面のCOOH基により、種々の生物医学的適用への高い可能性を有する。遊離カルボキシラートは、薬物および生理活性物質に対する化学付加部位も表し、生理活性窒素酸化物誘導体様の4-アミノTEMPOの共有結合的付加のためにうまく用いられてきた(米国特許第6,503,538号(特許文献1))。しかしながら、これらの官能性PEAは、Nα-アシルアミノ酸の混合無水物が、デーキン・ウェスト(Dakin-West)反応を受ける(Iwakura Y.ら、J. Org. Chem., (1967) 32,440(非特許文献4))だけでなく、アズラクトンおよびラセミ混合物を形成する(Greenstein J.P.およびVinitz M., Chemistry of the amino acids. John Willey & Sons, Inc., New York- London, 1961(非特許文献5))傾向にあることが周知であるため、例えば、メタクリル酸無水物との相互作用による混合無水物を調製するためには適していない。
【0005】
従って、官能基を生分解性PEA骨格内に導入して、組織工学および他の適用のための、三次元の生分解性ハイブリッドネットワークの設計に有用な活性ポリマーを与えるための代替の革新的なアプローチが必要である。
【0006】
主鎖内に不飽和部分をもつ生分解性PEAであって、不飽和フマル酸および2-ブテン-1,4-ジオールが構成要素として組み込まれたPEAが、最近、Guoら(J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. (2005) 43:1463-1477(非特許文献6))によって報告された。
【0007】
反応性官能基を有するモノマーの従来の溶融重縮合は、高温で、官能基の架橋結合または熱分解をもたらす。従って、例えば、ポリマー骨格内にエポキシ基を含有する高分子量の直鎖状PEA等の、新しい官能基化されたPEA、およびこのような官能基化されたPEAの合成のためのより良好な方法についての必要性がある。当技術分野には、種々の医学的適用のために有用なポリマーを生産するための、このようなエポキシ含有PEAの新しい化学変換についての必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,503,538号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】K. DeFifeら、Transcatheter Cardiovascular Therapeutics - TCT 2004 Conference. Poster presentation. Washington DC. 2004
【非特許文献2】G. Tsitlanadzeら、J. Biomater. Sci. Polymer Edn. (2004). 15:1-24
【非特許文献3】Cook, ADら、J. Biomed. Mater. Res., (1997). 35:513-523
【非特許文献4】Iwakura Y.ら、J. Org. Chem., (1967) 32,440
【非特許文献5】Greenstein J.P.およびVinitz M., Chemistry of the amino acids. John Willey & Sons, Inc., New York- London, 1961
【非特許文献6】Guoら(J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. (2005) 43:1463-1477)
【発明の概要】
【0010】
本発明は、高分子骨格内にエポキシ部分をもつ、新しい分類の直鎖状官能性縮合系ポリ(エステルアミド)の発見に基づいている。
【0011】
本発明は、ビス-(α-アミノ酸)-α,ω-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩との、エポキシ含有ビス-求電子活性ジエステルの低温活性重縮合により形成される、ポリマー骨格内にエポキシ部分を含有する高い分子量の直鎖状PEAを提供する。このようなエポキシ含有PEAの化学変換も提供される。
【0012】
従って、一態様において、本発明は、以下のポリマーの少なくとも1つまたは混和物を含有する、生分解性ポリマー組成物を提供する。下記一般構造式 (I) で表される化学式を有する、ポリ(エステルアミド)(PEA)ポリマー:

式中、nは、約15〜約150の範囲であり;少なくとも1つの個々のn単位内のR1は、エポキシ-(C2-C12)アルキレンであり、一方その他のR1は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)ジケイ皮酸(dicinnamic acid)もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)ジケイ皮酸、下記式 (III) のα,ω-アルキレンジカルボキシラートで、または治療用二価酸の飽和もしくは不飽和の残基より独立して選択され;一方、下記式 (III) におけるR5およびR6は、(C2-C12)アルキレンまたは(C2-C12)アルケニレンより独立して選択され;個々のn単位内のR3は、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より独立して選択され;かつR4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、下記構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、飽和もしくは不飽和の治療用ジオールの残基、およびそれらの組み合わせからなる群より独立して選択される。

または、下記構造式 (IV) で表される化学式を有する、PEAポリマー:

式中、nは、約15〜約150の範囲であり、mは、約0.1〜0.9の範囲であり;pは、約0.9〜0.1の範囲であり;少なくとも1つの個々のnまたはmの単位内のR1は、エポキシ-(C2-C12)アルキレンであり、一方その他のR1は、(C2-C20)アルキレンおよび(C2-C20)アルケニレン、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)ジケイ皮酸、4'-(アルカンジオイルジオキシ)ジケイ皮酸、または上記構造式 (III) のα,ω-アルキレンジカルボキシラート、または治療用二価酸の飽和もしくは不飽和の残基より独立して選択され;一方、上記式 (III) におけるR5およびR6は、(C2-C12)アルキレンまたは(C2-C12)アルケニレンより独立して選択され;それぞれのR2は、独立して水素、(C1-C12)アルキル、(C6-C10)アリール、または保護基であり;個々のmモノマー内のR3は、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より独立して選択され;R4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、上記構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、および飽和もしくは不飽和の治療用ジオールの残基、ならびにそれらの組み合わせからなる群より独立して選択され;かつR7は、独立して(C2-C20)アルキルまたは(C2-C20)アルケニルである。
【0013】
別の態様において、本発明は、ポリマー中に分散した少なくとも1種の生物活性剤をともなう本発明のエポキシ含有PEA組成物を、身体内部部位に埋め込むことにより生物活性剤を対象に送達するための方法を提示する。組成物は、徐々に生分解する、例えば完全に生分解すると考えられる。例えば、該組成物で作製された粒子、または該組成物のコーティングを含有する医療機器において組成物が生分解する間、ポリマー中に分散した生物活性剤は、例えば、そこでの治癒の促進および疼痛の緩和のために、埋め込み部位の周辺組織に徐々に放出されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ハイブリッドメタクリロイルデキストラン(MaDX)および不飽和エポキシ含有PEA(PEA I.6)の含有量に基づいて得られた、ハイブリッドヒドロゲルの膨潤を示すグラフである。
【図2】a) α-キモトリプシン(4 mg/10 mL)およびb) リパーゼ(4 mg/10 mL)の作用下での、酵素溶液(0.2 Mリン酸緩衝液、pH=7.4、t=25℃)中の、エポキシ含有PEA t-ES-L-Phe-6である (I.1) のインビトロ生分解性(mg/cm2での重量減少)に関する時の経過を示すグラフである。
【図3】a) α-キモトリプシン(4 mg/10 mL)およびb) リパーゼ(4 mg/10 mL)の作用下での、酵素溶液(0.2 Mリン酸緩衝液、pH=7.4、t=25℃)中の、エポキシ官能性を含有しないPEAである8-L-Phe-6のインビトロ生分解性(mg/cm2での重量減少)に関する時の経過を示すグラフである。
【図4】α-キモトリプシンが触媒する、エポキシ含有PEA t-ES-L-Phe-6 (I.1) のインビトロ生分解性に関する時の経過を示すグラフである:曲線0=PEAの開始試料、曲線1〜4=120℃でそれぞれ1時間、6時間、12時間および24時間加熱した、PEAの試料。
【図5】リパーゼが触媒する、エポキシ含有PEA t-ES-L-Phe-6 (I.2) のインビトロ生分解性に関する時の経過を示すグラフである:曲線0=PEAの開始試料、曲線1〜4=120℃でそれぞれ1時間、6時間、12時間および24時間加熱した、PEAの試料。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、ポリマー骨格内のエポキシ基を特徴とする、新しい分類の官能性ポリ(エステルアミド)(PEA)の発見に基づいている。本発明のエポキシ含有PEAにおけるエポキシ官能性が、脂肪族エポキシ二価酸(ビス-求電子モノマー)の形態で導入される。本発明のエポキシ含有PEAの合成は、エポキシ二価酸の活性エステルを、第三級アミンの存在下、溶液中でビス(α-アミノアシル)-α,ω-アルキレン-ジエステルと反応させる、活性重縮合法により実行される。
【0016】
本発明を例証するために、極性非プロトン性溶媒(DMF、DMAc)中、穏和な温度(≦60℃)で活性重縮合反応を実行した。得られる反応液は、非常に粘稠であったが、しかしながら、検討した事例のいずれにおいても、望ましくない分子間反応による、反応中でのゲルの形成は認められなかった。水中で反応混合物から沈殿析出させた後、新しいポリマー、すなわちかなり高い粘稠性をもつエポキシ含有PEA(表2.1)が得られ、ポリマーの良好な膜形成特性が認められた。この製法の顕著な特徴は、重縮合中のゲル形成がないことにあり、これは、反応条件下で、ポリマーの骨格内のエポキシ基と成長鎖の末端アミノ基との間の分子間反応が実質的に無いことを明示するものである。
【0017】
従って、一態様において、本発明は、以下のポリマーの少なくとも1つまたは混和物を含む、生分解性ポリマー組成物を提供する。下記一般構造式 (I) で表される化学式を有する、PEAポリマー:

式中、nは、約15〜約150の範囲であり;少なくとも1つの個々のn単位内のR1は、エポキシ-(C2-C12)アルキレンであり、一方その他のR1は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)ジケイ皮酸もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)ジケイ皮酸、下記式 (III) のα,ω-アルキレンジカルボキシラート、または治療用二価酸の飽和もしくは不飽和の残基より独立して選択され;一方、下記式 (III) におけるR5およびR6は、(C2-C12)アルキレンまたは(C2-C12)アルケニレンより独立して選択され;個々のn単位内のR3は、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より独立して選択され;かつR4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、下記構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、飽和もしくは不飽和の治療用ジオールの残基、およびそれらの組み合わせからなる群より独立して選択される。

または、下記構造式 (IV) で表される化学式を有する、PEAポリマー:

式中、nは、約15〜約150の範囲であり、mは、約0.1〜0.9の範囲であり;pは、約0.9〜0.1の範囲であり;少なくとも1つの個々のnまたはmの単位内のR1は、エポキシ-(C2-C12)アルキレンであり、一方その他のR1は、(C2-C20)アルキレンおよび(C2-C20)アルケニレン、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)ジケイ皮酸、4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)ジケイ皮酸、または上記構造式 (III) のα,ω-アルキレンジカルボキシラート、または治療用二価酸の飽和もしくは不飽和の残基より独立して選択され;一方、上記式 (III) におけるR5およびR6は、(C2-C12)アルキレンまたは(C2-C12)アルケニレンより独立して選択され;それぞれのR2は、独立して水素、(C1-C12)アルキル、(C6-C10)アリール、または保護基であり;個々のmモノマー内のR3は、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より独立して選択され;かつR4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、上記構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、および飽和もしくは不飽和の治療用ジオールの残基、ならびにそれらの組み合わせからなる群より独立して選択され;かつR7は、独立して(C2-C20)アルキルまたは(C2-C20)アルケニルである。例えば、R7は、(C3-C6)アルキルまたは(C3-C6)アルケニルであり得るが、好ましくは-(CH2)4-である。
【0018】
本発明のポリマーにおける使用のための典型的な保護基は、t-ブチル、または当技術分野において公知である他の保護基である。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメントは、「糖ジオール」とも称され、例えばD-グルシトール(イソソルビド(1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール))、D-マンニトール、またはL-イジトール等のデンプンより誘導される。
【0019】
構造式 (I) の本発明のエポキシ含有PEAポリマーにおける「n」モノマーは、同一であってもよく、その場合、ポリマーは本明細書で「ホモポリマー」といわれる。または、構造 (I) の本発明のエポキシ含有PEAポリマーにおける「n」モノマーは、異なってもよく、異なる組み合わせの構成要素(すなわち、ジオール、二価酸およびα-アミノ酸)を用いて製作され、この場合、ポリマーは本明細書で「コポリマー」といわれる。第二のモノマー「p」を含む、式 (IV) の本発明のエポキシ含有PEAポリマーにおいては、「m」モノマーも、同一であってもまたは異なってもよい。
【0020】
本明細書で用いられる、「治療用二価酸の残基」という用語は、二価酸の2つのカルボキシル基を除いた、本明細書で記載される治療特性(therapeutic property)をもつジカルボン酸の部分を意味する。本明細書で用いられる、「治療用ジオールの残基」という用語は、ジオールの2つのヒドロキシル基を除いた、本明細書で記載される治療特性をもつジオールの部分を意味する。その「残基」を含有する対応する二価酸またはジオールは、コポリマー組成物の合成において用いられる。治療用二価酸またはジオールの残基は、組成物において用いられるα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)アルカン含有ポリマーの特性に依存する制御様式で、ポリマー組成物から生分解により放出されて、対応する治療用ジオールまたは二価酸に、インビボで(または同様のpH、および水性媒体等の条件下で)再形成され、該特性は、本明細書、例えば実施例で記載されるような特性である。
【0021】
本明細書で用いられる、「α-アミノ酸含有」および「α-アミノ酸」という用語は、アミノ基、カルボキシル基および本明細書で定義されるR3基を含有する化学化合物を意味する。本明細書で用いられる、「生体α-アミノ酸含有」および「生体α-アミノ酸」という用語は、フェニルアラニン、ロイシン、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、またはそれらの混合物である、合成で用いられるα-アミノ酸を意味する。R3が-(CH2)3-である場合、α-アミノ酸はピロリジン-2-カルボン酸の類似体である。
【0022】
本明細書で用いられる、「生物活性剤」という用語は、ポリマー骨格内に組み込まれていないがアルキレン二価酸を含有するPEAポリマー中に分散した、本明細書で開示される生物活性剤を意味する。1種または複数種のこのような生物活性剤が、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物に、任意で含まれていてもよい。生物活性剤について言及する際に本明細書で用いられる、「分散した」という用語は、生物活性剤が本発明のポリマー組成物に分散して、本発明のポリマー組成物と混合された、本発明のポリマー組成物に溶解した、本発明のポリマー組成物と均質化された、および/または本発明のポリマー組成物に共有結合的に結合した、例えば、組成物のPEAポリマー内の官能基に、または本発明のエポキシ含有PEA組成物を用いて作製されたポリマー粒子もしくは医療機器の表面に付加していることを意味する。
【0023】
モノマー内の飽和または不飽和のアルキルジオールの残基の使用は、得られるポリマーの伸長特性を与える。任意でL-リシンベースの第二の「p」モノマーは、ポリマーの熱-力学的特性をさらに制御するために修飾され得る付加的な反応基(例えばペンディング(pending)C末端等)を導入するために、本発明のエポキシ含有PEAポリマー内に含まれ得る。
【0024】
不飽和基を含有する本発明の生分解性ポリマーは、種々の適用へのさらなる可能性を有する。例えば、不飽和基は、例えば生物活性剤の付加等のさらなる修飾に有用である別の官能基、例えばアルコール等に変換することができる。不飽和基を含有するポリマーの架橋結合は、例えば、本明細書で説明されるような、ポリマーの熱的および力学的特性を増強することができる。
【0025】
他のPEAポリマーのように、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物は、該組成物のポリマー中に分散した、少なくとも1種の生物活性剤をインビボで送達するために用いられ得る。本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物は、経時的な制御様式でポリマーから少なくとも1種の生物活性剤を放出するように、酵素作用によりインビボで生分解する。さらに、理論的には、本発明のエポキシ含有PEAポリマー内のビス(α-アミノ酸)-ジオール-ジエステルコモノマーは、それぞれのビス(α-アミノ酸)構成要素内に、本明細書で開示される多数のアミノ酸の異なる1つをそれぞれ含有し得ることから、本発明のPEAポリマー組成物は分解され、1つ〜複数の異なるこのようなα-アミノ酸を生じ得る。
【0026】
本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物を記載するために本明細書で用いられる、「生分解性」および「生体適合性」という用語は、ポリマーが、身体の正常機能に無害である生成物に分解され得ることを意味する。これは、PEAポリマーの製作に用いられるアミノ酸が生体L-α-アミノ酸である場合に、特にあてはまる。これらのPEAポリマー組成物は、生分解性を与える、エステル分解酵素により加水分解可能なエステル基および酵素的に切断可能なアミド連結を含み、かつ通常、大部分がアミノ基を末端とする鎖である。あるいは、ポリマーのアミノ末端は、本明細書で記載されるような、有機酸、生物不活性の生物製剤、および生物活性剤を非限定的に含むために、アセチル化されるか、またはそうでなければ任意の他の酸含有の生体適合性分子への複合によりキャップ形成され得る。一態様において、ポリマー組成物全体、およびそれから作製された、任意の粒子、コーティングもしくは医療機器は、実質的に生分解性および生体適合性である。
【0027】
1つの代替の態様において、本発明のエポキシ含有PEAポリマーの製作に用いられるα-アミノ酸の少なくとも1つは、生体α-アミノ酸である。例えば、R3がCH2Phである場合、合成で用いられる生体α-アミノ酸は、L-フェニルアラニンである。R3がCH2-CH(CH3)2である代替の態様において、ポリマーは、生体α-アミノ酸であるL-ロイシンを含有する。本明細書で記載されるコモノマー内のR3を変更することによって、他の生体α-アミノ酸、例えば、グリシン(R3がHである場合)、アラニン(R3がCH3である場合)、バリン(R3がCH(CH3)2である場合)、イソロイシン(R3がCH(CH3)-CH2-CH3である場合)もしくはメチオニン(R3が-(CH2)2SCH3である場合)、およびそれらの混合物も用いることができる。R3が-(CH2)3-(2-ピロリジンカルボン酸における場合のように)である場合、生体α-イミノ酸プロリンを用いることができる。さらに別の代替の態様において、本発明のエポキシ含有PEAポリマー内に含有される、種々のα-アミノ酸の全てが、本明細書で記載される生体α-アミノ酸である。
【0028】
「アリール」という用語は、本明細書で構造式に関して用いられ、フェニルラジカル、または少なくとも1つの環が芳香族である、約9〜10個の環原子を有するオルト-縮合二環式炭素環ラジカルを指す。特定の態様において、環原子の1個または複数が、ニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはトリフルオロメトキシの1個または複数で置換され得る。アリールの例としては、フェニル、ナフチル、およびニトロフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「アルケニレン」という用語は、本明細書で構造式に関して用いられ、主鎖内または側鎖内に少なくとも1つの不飽和結合を含有する、二価の分枝状または非分枝状炭化水素鎖を意味する。
【0030】
さらに、本発明の実施における使用のために適したエポキシ含有PEAポリマー組成物は、生物活性剤のポリマーへの共有結合的付加という選択肢を与える官能性を持つ。例えば、遊離カルボキシル基を持つポリマーは、アミノ部分と容易に反応することができ、それによって、得られるアミド基を介してペプチドとポリマーを共有結合的に結合させる。本明細書で記載されるように、生分解性ポリマーおよび生物活性剤は、生物活性剤を生分解性ポリマーに共有結合的に付加させるために用いることができる、多数の相補的官能基を含有してもよい。
【0031】
本発明の実施および合成方法における使用が意図されるPEAポリマーに関連する、PEAポリマーのさらなる例としては、米国特許第5,516,881号;同第5,610,241号;同第6,476,204号;および同第6,503,538号、ならびに米国特許出願第10/096,435号;同第10/101,408号;同第10/143,572号;同第10/194,965号;および同第10/362,848号に記載のものが挙げられる。
【0032】
特定の態様において、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物から作製されるかまたはこれを含有する、粒子、コーティングまたは医療機器は、本明細書で記載されるように、対象の内因性過程が組成物から粒子またはポリマー分子を徐々に放出することを可能にするのに十分な期間、ポリマーおよびその中に分散した任意の生物活性剤をその部位に保持することにより、埋め込み部位または使用部位での治療過程において能動的な役割を果たす。一方、対象の内因性過程は、ポリマー中に分散した生物活性剤を放出するように、ポリマーを生分解する。脆弱な任意の生物活性剤は、さらに遅く生分解するポリマーにより保護されており、使用部位、例えば埋め込み部位で、局所的に生物活性剤の半減期および存続期間を増加させる。
【0033】
生物活性剤をともなうポリマーの取り込みは安全であり、研究は、対象がポリマーの分解生成物を代謝/除去できることを示している。従って、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物は、埋め込み自体によりもたらされた任意の外傷を別として、埋め込み部位および全身性の両方で、対象に対して実質的に非炎症性である。
【0034】
本発明の生分解性ホモポリマーおよびコポリマーの組成物は、好ましくは15,000〜600,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有し、これらのポリマーおよびコポリマーは、通常、標準的な粘度測定法により測定された、0.15〜3.5の範囲、好ましくは0.4〜2.0の範囲の25℃でのインヘレント粘度(inherent viscosity)を有する。
【0035】
本明細書における分子量および多分散性は、ポリスチレン標準を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される。より詳細には、数平均分子量および重量平均分子量(MnおよびMw)は、例えば、高圧液体クロマトグラフィーポンプ、Waters 486 UV検出器およびWaters 2410示差屈折率検出器を装備した、Model 510ゲル浸透クロマトグラフィー(Water Associates, Inc.、ミルフォード、マサチューセッツ州)を用いて測定される。0.1% LiBrのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)溶液または0.1% LiClのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を溶離液(1.0 mL/分)として用いた。狭い分子量分布をもつ、ポリスチレン(PS)またはポリエチレングリコール(PEG)標準を、GPC曲線の較正のために用いた。
【0036】
一般式におけるα-アミノ酸を含有するPEAポリマーを作製するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、式 (I) のポリマーの態様に関して、α-アミノ酸は、例えば、α-アミノ酸を本明細書に記載されるジオールと縮合することにより、ビス(α-アミノ酸)-ジオール-ジエステルモノマーに変換され得る。結果として、エステル結合が形成される。次いで、ビス(α-アミノ酸)-ジオール-ジエステルを、例えばセバシン酸またはα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-アルカン二価酸等の二価酸との重縮合反応に加わらせて、エステル結合およびアミド結合の両方を有する最終ポリマーを得る。あるいは、二価酸の代わりに、活性二価酸誘導体、例えば、ジ-(p-ニトロフェニル)エステルを、化学構造 (I) のポリマーのために用いることができる。
【0037】
より詳細には、前記の構造 (I) または (IV) の生分解性ポリマーとして有用な、不飽和ポリ(エステル-アミド)(UPEA)の合成を、下に記載する:
例えば、

および/または (b) R3は-CH2-CH=CH-CH2-である。(a) が存在しかつ (b) が存在しない場合には、R3は-C4H8-または-C6H12-であり得る。(a) が存在せずかつ (b) が存在する場合には、R1は-C4H8-または-C8H16-であり得る。
【0038】
UPEAは、(1) ジオール残基内に少なくとも1つの二重結合を含む、ビス(α-アミノ酸)ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩、構造式 (III) のジオールを含む、ビス(α-アミノ酸)-アルキレン-ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩、および飽和ジカルボン酸のジ-(p-ニトロフェニル)エステル;あるいは、(2) ジオール残基内に二重結合を含まない、ビス(α-アミノ酸)アルキレン-ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩2つ、および不飽和ジカルボン酸のジ-(p-ニトロフェニル)エステル;あるいは、(3) ポリマーの一般構造式におけるジオール残基、構造式 (III) を有する他のジオール残基、および不飽和ジカルボン酸のジ-ニトロフェニルエステルの1つに少なくとも1つの二重結合を含む、ビス(α-アミノ酸)ジオール-ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩2つのいずれかの溶液重縮合により調製することができる。
【0039】
p-トルエンスルホン酸の塩は、アミノ酸残基を含有するポリマーの合成における使用に関して公知である。ビス(α-アミノ酸)アルキレン-ジエステルのアリールスルホン酸塩は、再結晶化により簡単に精製され、後処理(workup)中に安定なトシル酸アンモニウムとしてアミノ基を与えるということから、アリールスルホン酸塩が、塩遊離塩基の代わりに用いられる。重縮合反応において、求核性アミノ基は、例えばトリエチルアミン等の有機塩基の添加により容易に明らかとなり、そのためポリマー生成物は高収率で得られる。
【0040】
構造 (I または IV) の不飽和ポリマーに関して、不飽和ジカルボン酸のジ-(p-ニトロフェニル)エステルは、p-ニトロフェノールおよび不飽和ジカルボン酸クロリドから合成することができ、例えば、トリエチルアミンおよびp-ニトロフェノールをアセトンに溶解し、−78℃で攪拌しながら不飽和ジカルボン酸クロリドを滴下し、水に注ぎ込んで生成物を沈殿析出させることにより、合成することができる。適した酸クロリドとしては、フマル酸クロリド、マレイン酸クロリド、メサコン酸クロリド、シトラコン酸クロリド、グルタコン酸クロリド、イタコン酸クロリド、エテニル-ブタン二酸クロリドおよび 2-プロペニル-ブタン二酸クロリドが挙げられる。
【0041】
本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物への導入のための、治療用ジオールモノマーのビス(α-アミノ酸)ジエステルまたは治療用二価酸モノマーの活性ジエステルを調製するために用いることができる、適した治療用ジオール化合物としては、再狭窄および腫瘍増殖の防止に有用な、例えば17-β-エストラジオール、天然および内因性のホルモン等の天然の治療用ジオールが挙げられる(Yang, N.N.ら、Identification of an estrogen response element activated by metabolites of 17-β-estradiol and raloxifene. Science (1996) 273, 1222-1225;Parangi, S.ら、Inhibition of angiogenesis and breast cancer in mice by the microtubule inhibitors 2-methoxyestradiol and taxol, Cancer Res. (1997) 57, 81-86;およびFotsis, T.ら、The endogenous oestrogen metabolite 2- methoxyoestradiol inhibits angiogenesis and suppresses tumor growth. Nature (1994) 368, 237-239)。このような内因性に存在する治療用ジオール分子の安全性プロファイルは、同様の有用性を有する、合成分子および/または非内因性分子、例えばシロリムス等の安全性プロファイルよりも優れていると考えられている。
【0042】
PEAポリマーの骨格内への治療用ジオールの組み込みは、例えば、活性ステロイドホルモンである、第二級およびフェノール性の混合ヒドロキシルを含有する17-β-エストラジオールを用いて、達成することができる。粒子を製作するためにPEAポリマーが用いられ、かつ該粒子が、例えば、経皮経管冠動脈形成(PTCA)の後に患者に埋め込まれる場合、インビボで粒子から放出される17-β-エストラジオールは、患者における埋め込み後の再狭窄の予防に役立ち得る。しかしながら、17-β-エストラジオールは、本発明に従ってPEAポリマーの骨格内に組み込むことができる治療特性をもつジオールの単なる一例に過ぎない。一局面において、第一級、第二級またはフェノール性のヒドロキシルを含有する任意の生物活性ステロイド-ジオールを、この目的のために用いることができる。本発明における使用のための生物活性ステロイドジオールから作製され得る、多くのステロイドエステルは、欧州特許出願第0127 829 A2号に開示されている。
【0043】
本発明の組成物において用いられるエポキシ含有PEAポリマーの多用途性のために、ポリマー骨格内に組み込まれる治療用ジオールまたは二価酸の量は、ポリマーの構成要素の割合を変更することにより、制御することができる。例えば、PEAの組成物に応じて、最大45% w/wの17-β-エストラジオールの添加(loading)を達成することができる。種々の添加比率の17-β-エストラジオールをともなう、3種の規則性直鎖状PEAを、下記のスキーム1に図示する。

同様に、ポリマー内への治療用ジオールの添加は、ポリマーの2つまたはそれ以上の構成要素の量を変更することにより、変えることができる。
【0044】
加えて、4-アンドロステン-3,17ジオール(4-アンドロステンジオール)、5-アンドロステン-3,17ジオール(5-アンドロステンジオール)、19-ノル5-アンドロステン-3,17ジオール(19-ノルアンドロステンジオール)等のテストステロンまたはコレステロールを主成分とした、合成ステロイドベースのジオールは、本発明によるPEAポリマーの骨格内に組み込むために適している。さらに、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物の調製における使用のために適した、治療用ジオール化合物としては、例えば、アミカシン;アムホテリシンB;アピサイクリン;アプラマイシン;アルベカシン;アジダンフェニコール;バンベルマイシン;ブチロシン;カルボマイシン;セフピラミド;クロラムフェニコール;クロルテトラサイクリン;クリンダマイシン;クロモサイクリン;デメクロサイクリン;ジアチモスルホン;ジベカシン;ジヒドロストレプトマイシン;ジリスロマイシン;ドキシサイクリン;エリスロマイシン;フォーチミシン;ゲンタマイシン;グルコスルホン ソラスルホン;グアメサイクリン(guamecycline);イセパミシン;ジョサマイシン;カナマイシン;ロイコマイシン;リンコマイシン;ルセンソマイシン;リメサイクリン;メクロサイクリン;メタサイクリン;ミクロノマイシン;ミデカマイシン;ミノサイクリン;ムピロシン;ナタマイシン;ネオマイシン;ネチルマイシン;オレアンドマイシン;オキシテトラサイクリン;パロマイシン;ピパサイクリン(pipacycline);ポドフィリン酸=2-エチルヒドラジン;プリマイシン(primycin);リボスタマイシン;リファミド(rifamide);リファンピン;ラファマイシンSV(rafamycin SV);リファペンチン;リファキシミン;リストセチン;ロキタマイシン;ロリテトラサイクリン;ラサラマイシン(rasaramycin);ロキシトロマイシン;サンサイクリン(sancycline);シソマイシン;スペクチノマイシン;スピラマイシン;ストレプトマイシン;テイコプラニン;テトラサイクリン;チアンフェニコール;チオストレプトン(theiostrepton);トブラマイシン;トロスペクトマイシン(trospectomycin);ツベラクチノマイシン;バンコマイシン;カンジシジン;クロルフェネシン;デルモスタチン(dermostatin);フィリピン;フンギクロミン;カナマイシン;ロイコマイシン;リンコマイシン;ルブセンソマイシン(lvcensomycin);リメサイクリン;メクロサイクリン;メタサイクリン;ミクロノマイシン;ミデカマイシン;ミノサイクリン;ムピロシン;ナタマイシン;ネオマイシン;ネチルマイシン;オレアンドマイシン;オキシテトラサイクリン;パラモマイシン;ピパサイクリン;ポドフィリン酸=2-エチルヒドラジン;プリイシン(priycin);リボスタマイシン(ribostamydin);リファミド;リファンピン;リファマイシンSV;リファペンチン;リファキシミン;リストセチン;ロキタマイシン;ロリテトラサイクリン;ロサラマイシン(rosaramycin);ロキシトロマイシン;サンサイクリン;シソマイシン;スペクチノマイシン;スピラマイシン;ストレプトン;オトブラマイシン(otbramycin);トロスペクトマイシン;ツベラクチノマイシン;バンコマイシン;カンジシジン;クロルフェネシン;デルモスタチン;フィリピン;フンギクロミン;メパルチシン(meparticin);ミスタチン;オリゴマイシン;エリマイシンA(erimycin A);ツベルシジン;6-アザウリジン;アクラシノマイシン;アンシタビン;アントラマイシン;アザシタジン;ブレオマイシン カルビシン;カルジノフィリンA;クロロゾトシン;クロモマイシン(chromomcin);ドキシフルリジン;エノシタビン;エピルビシン;ゲムシタビン;マンノムスチン;メノガリル;アトルバシ(atorvasi) プラバスタチン;クラリトロマイシン;ロイプロリン(leuproline);パクリタキセル;ミトブロニトール;ミトラクトール;モピダモール;ノガラマイシン;オリボマイシン;ペプロマイシン;ピラルビシン;プレドニムスチン;ピュロマイシン;ラニムスチン;ツベルシジン;ビネシン(vinesine);ゾルビシン;クメタロール;ジクマロール;エチルビスクムアセタート;エチリジンジクマロール;イロプロスト;タプロステン;チオクロマロール;アミプリロース;ロムルチド;シロリムス(ラパマイシン);タクロリムス;サリチルアルコール;ブロモサリゲニン(bromosaligenin);ジタゾール;フェプラジノール;ゲンチジン酸;グルカメタシン;オルサラジン;S-アデノシルメチオニン;アジトロマイシン;サルメテロール;ブデソニド;アルブテロール(albuteal);インジナビル;フルバスタチン;ストレプトゾシン;ドキソルビシン;ダウノルビシン;プリカマイシン;イダルビシン;ペントスタチン;メトキサントロン;シタラビン;リン酸フルダラビン;フロキシウリジン;クラドリビン(cladriine);カペシタビン(capecitabien);ドセタキセル;エトポシド;トポテカン;ビンブラスチン;およびテニポシド等が挙げられる。治療用ジオールは、飽和または不飽和のジオールのいずれでも選択され得る。
【0045】
本発明のPEAポリマー組成物におけるアミド連結を調製するために用いられ得る、適した天然および合成の治療用二価酸としては、例えば、バンベルマイシン(s);ベナゼプリル;カルベニシリン;カルジノフィリンA;セフィキシム;セフィニノクス(cefininox) セフピミゾール;セフォジジム;セフォニシド;セフォラニド;セフォテタン;セフタジジム;セフチブテン;セファロスポリンC;シラスタチン;デノプテリン(denopterin);エダトレキサート;エナラプリル;リシノプリル;メトトレキサート;モキサラクタム;ニフェジピン;オルサラジン;ペニシリンN;ラミプリル;キナシリン(quinacillin);キナプリル;テモシリン;チカルシリン;およびトムデキス(登録商標)(N-[[5-[[(1,4-ジヒドロ-2-メチル-4-オキソ-6-キナゾリニル)メチル]メチルアミノ]-2-チエニル]カルボニル]-L-グルタミン酸)等が挙げられる。天然の治療用二価酸の安全性プロファイルは、合成治療用二価酸の安全性プロファイルを凌駕すると考えられている。治療用二価酸は、飽和二価酸また不飽和二価酸いずれでもあり得る。
【0046】
前記治療用ジオールおよび二価酸の、腫瘍阻害剤、細胞障害性代謝拮抗剤、および抗生物質等としての化学特性および治療特性は、当技術分野において周知であり、それらの詳細な説明は、例えば、The Merck Index(Whitehouse Station, N.J., USA)の第13版に見出すことができる。
【0047】
飽和および不飽和のジオールのビス(α-アミノ酸)-ジエステルのジアリールスルホン酸塩は、α-アミノ酸、アリールスルホン酸(例えば、p-トルエンスルホン酸一水和物)および飽和もしくは不飽和のジオールをトルエン中で混ぜ、水の発生が最小になるまで還流温度に加熱して、次いで冷却することにより、調製することができる。不飽和ジオールとしては、例えば、2-ブテン-1,4-ジオールおよび1,18-オクタデカ-9-エン-ジオールが挙げられる。
【0048】
ジカルボン酸の飽和ジ-(p-ニトロフェニル)エステルおよびビス(α-アミノ酸)-アルキレン-ジエステルの飽和ジ-p-トルエンスルホン酸塩は、米国特許第6,503,538 B1号に記載されているように調製することができる。
【0049】
本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物は、前記の成分の重縮合により作製されたポリ(エステルアミド)(PEA)であるが、本発明において、該成分としては、ビス(α-アミノ酸)-1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩;ビス(α-アミノ酸)-脂肪族α,ω-ジオールジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩、および少なくとも1つの脂肪族エポキシ-二価酸もしくはジエポキシ-二価酸のジ-(p-ニトロフェニル)エステルが挙げられ得る。p-ニトロフェニルエステルが、縮合反応を促進して反応方程式の右側に動かすことができる非常によい脱離基であることから、ジカルボン酸のジ-(p-ニトロフェニル)エステルが用いられ、そのためポリマー生成物が高収率で得られる。加えて、ジ-(p-ニトロフェニル)エステルは、後処理の間、安定であり、開放大気中で取り扱い、かつ乾燥させることができる。
【0050】
不飽和PEAにおいて、以下が適用される。アミノキシルラジカル、例えば4-アミノTEMPOは、本明細書の実施例6で記載されるように付加され得る。任意で、本明細書で記載される生物活性剤は、二重結合官能性を介して、好ましくはポリマー骨格内の生物活性剤の残基には生じない二重結合官能性を介して付加させることができる。親水性は、必要に応じて、ポリ(エチレングリコール)ジアクリラートへ結合させることにより付与され得る。
【0051】
本明細書で記載されるアルキレン二価酸含有PEAポリマーは、15,000〜600,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有し、これらのポリマーおよびコポリマーは、通常、標準的な粘度測定法により測定された、0.25〜2.0の範囲、好ましくは0.4〜1.7の範囲の25℃での固有粘度を有する。
【0052】
本明細書における分子量および多分散性は、ポリスチレン標準を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される。より詳細には、数平均分子量および重量平均分子量(MnおよびMw)は、例えば、高圧液体クロマトグラフィーポンプ、Waters 486 UV検出器およびWaters 2410示差屈折率検出器を装備した、Model 510ゲル浸透クロマトグラフィー(Water Associates, Inc.、ミルフォード、マサチューセッツ州)を用いて測定される。0.1% LiClのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)溶液を溶離液(1.0 mL/分)として用いた。狭い分子量分布をもつ、ポリスチレン(PS)標準を、GPC曲線の較正のために用いた。
【0053】
本明細書で記載される脂肪族エポキシ二価酸含有PEAポリマーは、種々の分子量で、ならびに2つのビス(α-アミノ酸)-ジエステル含有単位および任意でL-リシンベースのモノマーの種々の相対比率で製作され得る。特定の使用のために適当な分子量は、本明細書に含まれる指針および開示された熱-力学的特性に基づいて、当業者により容易に決定される。従って、例えば適した分子量は、約15,000〜約600,000ダルトンのオーダー、例えば、約15,000〜約300,000、または約15,000〜約100,000であると考えられる。
【0054】
本発明の組成物において有用な、本発明のエポキシ含有PEAポリマー、および該組成物を含有する生分解性粒子もしくは医療機器は、酵素的に生分解可能であり、バルク分解ではなく表面での酵素作用により生分解される。従って、ポリマー、例えばその粒子は、インビボで、ポリマー中に分散した生物活性剤が、ポリマーの構造および表面の形状に依存して、長期間にわたって特定かつ一定である制御された放出速度で、表面から放出されるのに役立つ。さらに、PEAポリマーは、インビボで、有害な副生成物を生成することなく、酵素により分解するので、本発明の組成物および医療機器におけるポリマー、例えば、分解時に生体α-アミノ酸を生成するようなポリマー等は、実質的に非炎症性である。参考までに、本明細書で記載される高分子の構成要素の残基には、以下の標準的な名称が用いられる。
アジピン酸、R1=(CH2)4 -《4》
セバシン酸、R1=(CH2)8 -《8》
trans-エポキシコハク酸-《t-ES》
cis-エポキシコハク酸-《c-ES》
ビス-(L-フェニルアラニン)-1,6-ヘキシレンジエステル-《L-Phe-6》
ビス-(L-ロイシン)-1,6-ヘキシレンジエステル-《L-Leu-6》
コポリマー内のそれぞれの繰り返し単位のモル分配は、添字により示されている。例えば、8-L-Phe-6は、セバシン酸およびビス-(L-フェニルアラニン)-1,6-ヘキシレンジエステルを主成分とする、ホモポリ(エステルアミド)を示し;t-ES-L-Leu-6は、trans-エポキシコハク酸およびビス-(L-ロイシン)-1,6-ヘキシレンジエステルを主成分とする、ホモポリ(エステルアミド)を示し;[8-L-Phe-6]0.6-[c-ES-L-Phe-6]0.4は、60 mol.%の8-L-Phe-6繰り返し単位をおよび40 mol.%のc-ES-L-Phe-6繰り返し単位を含有する、コポリ(エステルアミド)を示す(ポリマーの例またはスキーム1を参照)。

【0055】
本発明のポリマーにおける可変量のエポキシ基の組み込みの多用途性を試験するために、種々のコポリ(エステルアミド)を、アジピン酸=ジ-(p-ニトロフェニル)もしくはセバシン酸酸=ジ-(p-ニトロフェニル)、およびエポキシ含有ビス-求電子性モノマーを用いた重縮合により製作した。前述した有益な特性をもつポリマーを提供することは別として、このアプローチは、エポキシ官能性を含有しないPEAのすでに確立されている有益な特性の保持を可能にし(G. Markosishviliら、(2002) Intern J .Dermatology 41:453およびS.H. Leeら、(2002) Coronary Artery Disease, 13 (4):237-241)、それと同時にこれらの特性の実質的改良を提供し、かつそれによりポリマーの使用の可能性の範囲を広げる。
【0056】
最大0.5〜0.6 dL/gの還元粘度(ηred)(表2.1参照)を有する高分子量の膜形成ホモポリマーおよびコポリマーの合成をもたらした、トランス異性体に対して、溶液活性重縮合の条件下のシス異性体は、低粘度(0.1 dL/g未満のηred、表2.1参照)をもつホモポリマーの合成をもたらした。シス異性体を用いて形成されたコポリマーは、僅かに高い粘度(最大0.22 dL/gのηred)を特徴とし、かつ膜形成特性を呈した。
【0057】
マレイン酸から誘導されたシス異性体を主成分とするポリマーの低粘度の特徴は、以下の因子に起因する可能性がある:
1. 重縮合の過程での5員環のエポキシスクシンイミド環の形成による、連鎖停止;
2. 文献から周知の分子内触媒のために起こる、隣接する(すなわち、1,2-位にある)アミド基の加水分解(本発明のエポキシ含有PEAは、この場合に沈澱剤として用いられたほぼ全ての有機溶媒に可溶であることにより、水中で完全に分離する);
3. cis-エポキシコハク酸の誘導体における、特に膜形成特性を呈するコポリマーの場合における、巨大鎖の流体力学的パラメータの特異性。
【0058】
これらの例示的なエポキシポリマー(DMF/LiBr 0.1%中のGPC)の分子量の特徴は、以下の通りである。
t-ES-L-Leu-6:Mw=66,960、Mn=41,120、Mw/Mn=1.63
t-ES-L-Phe-6:Mw=59,100、Mn=30,300、Mw/Mn=1.95
【0059】
cis-エポキシコハク酸=ジ-p-ニトロフェニル(V.5)を主成分とするポリマーにおける、低粘度およびより高いMwの最も可能性の高い理由は、1,2-アミド基の加水分解の相互の分子内触媒作用である。長期(3〜4週間)の水との接触は、低分子量である重縮合の副生成物からポリマーを精製するために不可避であって、該ポリマーは、大部分が水性p-ニトロフェノールへの可溶性が乏しく、この理由を特に可能性のあるものにする。溶媒DMAおよびトリエチルアミンのp-トルエンスルホン酸塩は、第1日目の水での処理の後、完全に除去される。
【0060】
(表1.1)活性重縮合により得られたエポキシ-ポリ(エステルアミド)

*) DMF中、c=0.5 g/dLおよびt=25℃で測定した。
**)《+》- 可溶性、《±》- 部分可溶性
【0061】
得られるエポキシ含有PEAは、熱反応性材料であり、増強された力学的特徴をもつ生分解性ポリマーネットワークを調製するためには、興味深い材料であることが、IR研究(下記の実施例3を参照)から確認されている。本発明のポリマーは、例えば他のPEA、ポリ(エステル尿素)(PEU)およびポリ(エステルウレタン)(PEUR)等の、他の生分解性、生体適合性のポリマーの力学的特徴を改善するための添加物として用いることもできる。
【0062】
光化学硬化
本発明のエポキシ含有PEAは、UV照射後の光化学架橋結合(硬化)も受け、これは、照射前にポリマーが可溶である、例えばクロロホルム、エタノールおよびDMF等の有機溶媒への溶解性を失うということによって、確認されている。光化学反応は、高強度の広帯域UV曝露か、または一般に、通常のエポキシドの光化学的変換のために用いられる、特定の触媒(例えばカチオン性光開始剤等、例えば硫黄有機化合物またはリン有機化合物のオニウム塩)の存在下のいずれでも促進される。
【0063】
化学硬化:
上述のように、本発明のエポキシ含有PEAは、穏和な条件下で脂肪アミンと相互作用する。この反応は、穏和な条件(すなわち、室温)下でのこれらのポリマーの化学硬化のために用いられてきた。化学硬化のこの方法に関しては、0.1 gのエポキシポリマー‐t-ES-L-Leu-6 (I.1) および1,6-ヘキサメチレンジアミン(脂肪ジアミンとして、10 % w/w)を、2 mLのクロロホルムに溶解し、滑らかな疎水性表面上にキャストし、クロロホルムが蒸発して乾燥するまでの間、大気条件下で終夜放置した。クロロホルムに不溶な(膨潤するだけ)弾性膜が得られた。
【0064】
例えばコハク酸またはアジピン酸等の無毒の脂肪族二価酸から誘導される種々の脂肪族エポキシ二価酸が、出発化合物として本研究に取り入れられている。例えば、trans-およびcis-エポキシコハク酸が市販されている。本研究において、これらの酸は、フマル酸またはマレイン酸のそれぞれのエポキシ化反応により調製されている。そのように形成された二価酸は、それらのp-ニトロフェニルエステルにさらに変換され、本発明のエポキシ含有PEAを形成するための活性重縮合において活性モノマーとして用いられた。
【0065】
本発明のエポキシ含有PEAの合成における使用にために合成された、活性ジエステル(化合物V.1〜5)を、表1.1および表1.2にまとめる。

式中、R1
-(CH2)4-:アジピン酸=ジ-p-ニトロフェニル(化合物 V.1)
-(CH2)8-:セバシン酸=ジ-p-ニトロフェニル(化合物 V.2)

【0066】
脂肪族飽和および不飽和ジエステルの合成は、以前に記載されたように行われた(Guo K.ら、J. Polym. Sci: Part A: Polymer Chemistry (2005) 43:1463-1477およびこの中で引用された文献)。
【0067】
不飽和活性ジエステル、フマル酸=ジ-p-ニトロフェニル(R1=-HC=CH-、化合物 V.3)も、第二の戦略的アプローチに用いるエポキシモノマーの合成のための中間体生成物として、85〜90%の収率で得られた。例えば、このような試料化合物は、第三級アミン存在下でのp-ニトロフェノールとの塩化フマリルの反応により、有機溶媒(アセトン)の媒体中で合成された。アセトンからの再結晶化後、生成物の融点(m.p.)は、234〜235℃(アセトニトリルから得た、文献(上記Guoら)でのm.p.=238℃)であった。
【0068】
それらの不飽和前駆体二価酸(フマル酸およびマレイン酸)からの不飽和エポキシ酸の合成は、過酸化水素を用いることによって達成された。エポキシ化の間、加水分解により結果として生じる、オキシラン環の開裂が最小限となるように、当技術分野において公知であるような、および本明細書の実施例で例示したような、反応条件が選択された。
【0069】
特定の態様において、生物活性剤は、多種多様の適した官能基を介して、生分解性ポリマーに共有結合的に結合することができる。例えば、生分解性ポリマーがポリエステルである場合、カルボキシル基鎖末端を、例えばヒドロキシ、アミノおよびチオ等の、生物活性剤上の相補的部分と反応させるために用いることができる。多種多様の適した試薬および反応条件が、例えば、March 's Advanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms, and Structure, 第5版, (2001);およびComprehensive Organic Transformations, 第2版, Larock (1999)に開示されている。
【0070】
他の態様において、生物活性剤は、化学結合を形成せずに、ポリマー上への「添加」によりポリマー中に分散され得るか、または生物活性剤は、例えばアミン、ヒドロキシル(アルコール)またはチオール等の、ポリマー内の任意の遊離官能基と連結して、直接の連結を形成することができる。このような連結は、当技術分野において公知である合成手法を用いて、適切に官能基化された出発物質から形成され得る。
【0071】
例えば、本発明のポリマーは、ポリマーのカルボキシル基(例えば、COOH)を介して生物活性剤に連結され得る。具体的には、構造 (I および IV) の化合物は、生物活性剤のアミノ官能基または生物活性剤のヒドロキシル官能基と反応して、それぞれアミド連結またはエステル連結を介して付加された生物活性剤を有する、生分解性、生体適合性のポリマーを提供することができる。別の態様において、ポリマーのカルボキシル基は、ハロゲン化アシル、アシル無水物/「混合」無水物、または活性エステルに変換され得る。
【0072】
あるいは、生物活性剤は、リンカーを介してポリマーに付加されていてもよい。実際、生分解性ポリマーの表面疎水性を改善するため、生分解性ポリマーの酵素的活性化への接触性を改善するため、および生分解性ポリマー放出プロファイルを改善するために、リンカーを利用して、生物活性剤を生分解性ポリマーに間接的に付加させてもよい。特定の態様において、リンカー化合物としては、約44〜約10,000の分子量(Mw)、好ましくは44〜2000の分子量;例えばセリン等のアミノ酸;1〜100個の繰り返し単位をもつポリペプチド;および任意の他の適した低分子量のポリマーを有する、ポリ(エチレングリコール)が挙げられる。リンカーは、通常、ポリマーから生物活性剤を、約5オングストローム〜最大約200オングストローム隔てている。
【0073】
さらなる態様において、リンカーは、式W-A-Qの二価のラジカルであり、式中、Aは、(C1-C24)アルキル、(C2-C24)アルケニル、(C2-C24)アルキニル、(C2-C20)アルキルオキシ、(C3-C8)シクロアルキル、または(C6-C10)アリールであり、かつWおよびQは、それぞれ独立して、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)-、-C(=O)O、-O-、-S-、-S(O)、-S(O)2-、-S-S-、-N(R)-、-C(=O)-であり、式中、それぞれのRは、独立してHまたは(C1-C6)アルキルである。さらなる態様において、リンカーは、式W-A-Qの二価のラジカルであり、式中、Aは、(C1-C24)アルキル、(C2-C24)アルケニル、(C2-C24)アルキニル、(C2-C20)アルキルオキシ、(C3-C8)シクロアルキル、または(C6-C10)アリールであり、かつWおよびQは、それぞれ独立して、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)-、-C(=O)O、-O-、-S-、-S(O)、-S(O)2-、-S-S-、-N(R)-、-C(=O)-であり、式中、それぞれのRは、独立してHまたは(C1-C6)アルキルである。
【0074】
本明細書で用いられる、本明細書で記載されるリンカーに適用される「アルキル」という用語は、直鎖または分枝鎖の炭化水素基のことをいい、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、およびn-ヘキシル等を含む。
【0075】
本明細書で用いられる、本明細書で記載されるリンカーに適用される「アルケニル」という用語は、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を有する、直鎖または分枝鎖の炭化水素基のことをいう。
【0076】
本明細書で用いられる、本明細書で記載されるリンカーに適用される「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する、直鎖または分枝鎖の炭化水素基のことをいう。
【0077】
本明細書で用いられる、本明細書で記載されるリンカーに適用される「アリール」という用語は、6個〜最大14個の範囲の炭素原子を有する芳香族基のことをいう。
【0078】
特定の態様において、リンカーは、約2〜最大約25個のアミノ酸を有する、ポリペプチドであってもよい。使用が意図される、適したペプチドとしては、ポリ-L-リシン、ポリ-L-グルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-ヒスチジン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-トレオニン、ポリ-L-チロシン、ポリ-L-ロイシン、ポリ-L-リシン-L-フェニルアラニン、ポリ-L-アルギニン、およびポリ-L-リシン-L-チロシン等が挙げられる。
【0079】
リンカーは、最初にポリマーに、または生物活性剤に付加され得る。リンカーを介して間接的に付加した生物活性剤を有するポリマーの合成時に、該リンカーは、保護されていない形態か、または当業者に周知の種々の保護基を用いて保護された形態のどちらかであり得る。
【0080】
保護されたリンカーの場合、リンカーの保護されない末端は、最初にポリマーまたは生物活性剤に付加され得る。次いで、保護基は、飽和ポリマーに対してはPd/H2水素化分解を用いて、不飽和ポリマーに対しては弱酸もしくは塩基での加水分解を用いて、または当技術分野において公知である任意の他の一般的脱保護法を用いて、脱保護され得る。脱保護されたリンカーは、次いで、生物活性剤に付加され得る。ポリ(エチレングリコール)は、ポリマーと生物活性剤との間のリンカーとしても使用され得る。
【0081】
本発明によるポリマー組成物の合成の説明は、本明細書の実施例に見出される。
【0082】
別の態様において、本発明は、エポキシ含有PEAおよび多糖類の両方の反応性誘導体由来の生分解性三次元ハイブリッドネットワークを提供する。再活性化された、本発明のエポキシ含有PEAの誘導体の例は、例えば不飽和化合物PEA I.6等の、(メト)アクリロイル部分を含有するエポキシ含有PEAである。二成分の混合物が、例えばDMA等の適当な溶媒中で、基質上にキャストされ、乾燥され、三次元ヒドロゲルの形成をもたらすために十分な温度にかつ十分な時間で、例えば、約80℃〜約120℃の温度に、約6時間〜約10時間加熱される。本発明のエポキシ含有PEAの反応性誘導体は、例えば本明細書で実施例3に記載された化合物I.6等の、アクリル系ペンディング鎖を含有するように修飾された誘導体である。例えば、再活性化PEAに対するデキストランのw/w比率は、約95:5〜約50:50の範囲内、例えば、約90:10または約75:25のw/w比率であり得る。好ましくは、デキストランおよび活性エポキシ含有PEAの混合物をDMFに溶解し(10 mL中に1 g)、基質上にキャストして、溶媒を乾燥させ、加熱する前にその上に膜を形成させる。例えば過酸化ベンゾイル等のフリーラジカル開始剤が、添加され得る(MaDX+I.6の混合物の1 %)が、ヒドロゲルの形成のためには必要とされない。加熱した後に得られた膜は、水を吸収することができ、ポリマーに対する多糖類の比率に依存して、膨潤指数を約300 %〜約900 %変化させる(図1)。
【0083】
任意の生物活性剤は、ポリマー担体に化学的に連結することなく、ポリマーマトリックス中に分散され得るが、1種または複数種の生物活性剤または被覆分子は、多種多様の適した官能基を介して、生分解性ポリマーに共有結合的に結合できることも意図される。例えば、遊離のカルボキシル基は、例えばヒドロキシ基、アミノ基またはチオ基等の、生物活性剤または被覆分子上の相補的部分と反応させるために用いることができる。多種多様の適した試薬および反応条件が、例えば、March's Advanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms, and Structure, 第5版, (2001);およびComprehensive Organic Transformations, 第2版, Larock (1999)に開示されている。
【0084】
他の態様において、1種または複数種の生物活性剤は、アミド、エステル、エーテル、アミノ、チオエーテル、スルフィニル、スルホニル、またはジスルフィド連結を介して、構造 (I および IV) のポリマーのいずれかに連結することができる。このような連結は、当技術分野において公知である合成手法を用いて、適切に官能基化された出発物質から形成することができる。
【0085】
例えば、一態様において、ポリマーは、ポリマーの遊離カルボキシル基(例えば、COOH)を介して、生物活性剤に連結され得る。具体的には、構造 (I) および (IV) の化合物は、生物活性剤または補助剤のアミノ官能基またはヒドロキシル官能基と反応して、それぞれアミド連結またはエステル連結を介して付加された生物活性剤を有する生分解性ポリマーを提供することができる。別の態様において、ポリマーのカルボキシル基は、ベンジル化されるか、またはハロゲン化アシル、アシル無水物/「混合」無水物、もしくは活性エステルに変換され得る。他の態様において、生物活性剤が、ポリマーのカルボキシル基を介してのみ付加し、かつポリマーの遊離末端には付加しないことを確実にするために、ポリマー分子の遊離-NH2末端が、アシル化され得る。
【0086】
本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物は、種々の特性を提供するための粒子に製剤化され得る。該粒子は、2006年1月31日に出願された、同時係属中の米国特許出願第11/344,689号に全部記載されている方法を用いて、異なる治療目標および投与経路に対応するよう適した、種々の大きさおよび構造を有することができる。
【0087】
本明細書で記載される、例えばポリ(エチレングリコール)(PEG);ホスファチジルコリン(PC);ヘパリンを含むグリコサミノグリカン;キトサン、アルギナートおよびポリシアル酸を含む多糖類;ポリセリン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリリシンおよびポリアルギニンを含むポリ(イオン性または極性アミノ酸)等の水溶性被覆分子、ならびに例えば抗体、抗原、およびリガンド等の標的指向化分子は、生物活性剤によって占められていない活性部位を塞ぐため、または当技術分野において公知である特定の身体部位への粒子の送達を標的とするために、生産後の本発明のポリマー組成物から形成された、粒子または医療機器の外表面上のポリマーに複合することもできる、生物活性剤である。単一粒子上のPEG分子の分子量は、実質的に約200〜約200,000の範囲のいずれかの分子量であり、そのため粒子に付加した種々のPEG分子の分子量は多様であり得る。
【0088】
あるいは、生物活性剤または被覆分子は、リンカー分子を介して、ポリマーに付加することができる。実際、生分解性ポリマーの表面疎水性を改善するため、生分解性ポリマーの酵素的活性化への接触性を改善するため、および生分解性ポリマーからの生物活性剤の放出プロファイルを改善するために、リンカーを利用して、生物活性剤を生分解性ポリマーに間接的に付加させてもよい。特定の態様において、リンカー化合物としては、約44〜約10,000の分子量(Mw)、好ましくは44〜2000の分子量;例えばセリン等のアミノ酸;1〜100の繰り返し数をもつポリペプチド;および任意の他の適した低分子量のポリマーを有するポリ(エチレングリコール)が挙げられる。リンカーは、通常、ポリマーから生物活性剤を、約5オングストローム〜最大約200オングストローム隔てている。
【0089】
さらなる態様において、リンカーは、式W-A-Qの二価のラジカルであり、式中、Aは、(C1-C24)アルキル、(C2-C24)アルケニル、(C2-C24)アルキニル、(C2-C20)アルキルオキシ、(C3-C8)シクロアルキル、または(C6-C10)アリールであり、かつWおよびQは、それぞれ独立して、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)-、-C(=O)O、-O-、-S-、-S(O)、-S(O)2-、-S-S-、-N(R)-、-C(=O)-であり、式中、それぞれのRは独立して、Hまたは(C1-C6)アルキルである。
【0090】
前記リンカーを記載するために用いられる、「アルキル」という用語は、直鎖または分岐鎖の炭化水素基のことをいい、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、およびn-ヘキシル等を含む。
【0091】
前記リンカーを記載するために用いられる、「アルケニル」とは、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を有する、直鎖または分枝鎖のヒドロカルビル基のことをいう。
【0092】
前記リンカーを記載するために用いられる、「アルキニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する、直鎖または分枝鎖のヒドロカルビル基のことをいう。
【0093】
前記リンカーを記載するために用いられる、「アリール」とは、6個〜最大14個の範囲の炭素原子を有する芳香族基のことをいう。
【0094】
特定の態様において、リンカーは、約2〜最大約25個のアミノ酸を有するポリペプチドであってもよい。使用が意図される、適したペプチドとしては、ポリ-L-グリシン、ポリ-L-リシン、ポリ-L-グルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-ヒスチジン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-セリン、ポリ-L-トレオニン、ポリ-L-チロシン、ポリ-L-ロイシン、ポリ-L-リシン-L-フェニルアラニン、ポリ-L-アルギニン、およびポリ-L-リシン-L-チロシン等が挙げられる。
【0095】
一態様において、生物活性剤は、ポリマーと共有結合的に架橋結合することができる。すなわち、生物活性剤は、1個より多いポリマー分子に結合して、分子間架橋を形成する。この共有結合的な架橋結合は、生物活性剤を含有するリンカーを伴うか、またはリンカーを伴わずになされ得る。
【0096】
生物活性剤分子は、同じポリマー分子上の2つの部位の間の共有結合的付加により、分子内架橋内にも組み込まれ得る。
【0097】
直鎖状ポリマーポリペプチド複合体は、ポリペプチド骨格上の潜在的な求核基を保護すること、および反応基を1個だけ残すことにより作製され、ポリマーまたはポリマーのリンカー構成部に結合する。脱保護は、ペプチドの脱保護(例えば、BocおよびFmoc化学)に関する当技術分野において周知の方法に従って実施される。
【0098】
本発明の一態様において、生物活性剤は、レトロ-インバーソ(retro-inverso)ペプチドまたは部分的レトロ-インバーソペプチドとして提示されたポリペプチドである。
【0099】
他の態様において、生物活性剤は、マトリックス内のポリマーの光架橋結合することが可能な形と混合されてもよく、かつ架橋結合した後、材料は分散(粉砕)され、約0.1〜約10μmの範囲の平均直径を有する粒子を形成する。
【0100】
リンカーは、最初にポリマーに、または生物活性剤もしくは被覆分子に付加することができる。合成時に、該リンカーは、保護されていない形態か、または当業者に周知の種々の保護基を用いて保護された形態のどちらかであり得る。保護されたリンカーの場合、リンカーの保護されない末端は、最初にポリマー、または生物活性剤もしくは被覆分子に付加することができる。次いで、保護基は、飽和ポリマー骨格に対してはPd/H2水素化分解を用いて、不飽和ポリマーに対しては弱酸もしくは塩基での加水分解を用いて、または当技術分野において公知である任意の他の一般的脱保護法を用いて、脱保護され得る。脱保護されたリンカーは、次いで、生物活性剤もしくは被覆分子に、またはポリマーに付加することができる。
【0101】
本発明による生分解性ポリマーに実施される、例示的な複合体合成(ここで、ポリマーに付加される分子は、アミノ置換されたアミノキシルN-オキシドラジカルである)を、以下に説明する。本明細書における生分解性ポリマーは、N,N'-カルボニルジイミダゾールまたは適したカルボジイミドの存在下、アミノキシルラジカル含有化合物、例えば、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシと反応して、PEAもしくはUPEAのペンダントカルボン酸上、または記載されたポリエステルの鎖末端のどちらかにあるカルボキシル基内のヒドロキシル部分を、アミノキシル(N-オキシド)ラジカル含有基へのアミド連結と置き換えることができる。アミノ部分は、アミド結合が形成されるように、カルボニル残基の炭素に共有結合的に結合する。N,N'-カルボニルジイミダゾールまたは適したカルボジイミドは、ポリエステルの鎖末端にあるカルボキシル基内のヒドロキシル部分を、中間体活性化部分に変換し、該活性化部分が、アミノキシル(Nオキシド)ラジカル化合物のアミノ基、例えば4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシの4位のアミンと反応する。アミノキシル反応体は、通常、1:1〜100:1の範囲にある、ポリエステルに対する反応体のモル比で用いられる。アミノキシルに対するN,N'-カルボニルジイミダゾールまたはカルボジイミドのモル比は、好ましくは約1:1である。
【0102】
典型的な反応は以下の通りである。ポリエステルを反応溶媒に溶解し、反応は、その溶解に使用した温度で容易に実行される。反応溶媒は、その中にポリエステルが溶解すると考えられる、任意の溶媒であり得、この情報は、一般に、そのポリエステルの製造業者から入手可能である。ポリエステルがポリグリコール酸またはポリ(グリコリド-L-ラクチド)(50:50よりも大きい、L-乳酸に対するグリコール酸のモノマーモル比を有する)である場合、115℃〜130℃では、より高度に精製された(99.9+%純粋である)ジメチルスルホキシドが、または室温ではDMSOが、ポリエステルを好適に溶解する。ポリエステルが、ポリ-L-乳酸、ポリ-DL-乳酸またはポリ(グリコリド-L-ラクチド)(50:50または50:50よりも小さい、L-乳酸に対するグリコール酸のモノマーモル比を有する)である場合、室温から40〜50℃で、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン(DCM)およびクロロホルムが、ポリエステルを適切に溶解する。
【0103】
ポリマー‐生物活性剤の連結
一態様において、本明細書で記載される本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物を作製するために用いられるポリマーは、ポリマーに直接連結した、1種または複数種の生物活性剤を有する。ポリマーの残基は、1種または複数種の生物活性剤の残基に連結することができる。例えば、ポリマーの1個の残基は、生物活性剤の1個の残基と直接連結することができる。ポリマーおよび生物活性剤は、それぞれ1個の開原子価(open valence)を有することができる。あるいは、1種よりも多い生物活性剤、複数種の生物活性剤、または異なる治療的もしくは症状緩和的活性を有する生物活性剤の混合物は、ポリマーに直接連結することができる。しかしながら、それぞれの生物活性剤の残基は、対応するポリマーの残基に連結することができるため、1種または複数種の生物活性剤の残基の数は、ポリマーの残基上の開原子価の数に一致し得る。
【0104】
本明細書で用いられる「ポリマーの残基」とは、1個または複数の開原子価を有するポリマーのラジカルのことをいう。任意の合成で実施可能である、ポリマーの(例えば、ポリマー骨格またはペンダント基上の)原子または官能基は、ラジカルが生物活性剤の残基に付加している場合に、実質的に保持される。さらに、ラジカルが生物活性剤の残基に付加している場合に、骨格の生物活性剤の生物活性が実質的に保持されるという条件で、任意の合成で実施可能である官能基(例えば、カルボキシル)は、ポリマー上に(例えば、ペンダント基として、または鎖末端としてポリマー骨格上に)作られ、開原子価を提供することができる。望ましい連結に基づいて、当業者は、当技術分野において公知である手法を用いて、本発明で用いられるPEAポリマーを誘導体化するために用いることができる、適切に官能基化された出発物質を、選択することができる。
【0105】
本明細書で用いられる「構造式 (*) の化合物の残基」とは、1個または複数の開原子価を有する、本明細書で記載されるポリマー式 (I または IV) の化合物のラジカルのことをいう。任意の合成で実施可能である、化合物の(例えば、ポリマー骨格またはペンダント基上の)原子または官能基は、ラジカルが付加している場合に、骨格の生物活性剤の生物活性が実質的に保持されるという条件で除去され、開原子価を提供することができる。さらに、ラジカルが生物活性剤の残基に付加している場合に、骨格の生物活性剤の生物活性が実質的に保持されるという条件で、任意の合成で実施可能である官能基(例えば、カルボキシル)は、式 (I または IV) の化合物上に(例えば、ポリマー骨格またはペンダント基上に)作られ、開原子価を提供することができる。望ましい連結に基づいて、当業者は、当技術分野において公知である手法を用いて、式 (I または IV) の化合物を誘導体化するために用いることができる、適切に官能基化された出発物質を選択することができる。
【0106】
例えば、生物活性剤の残基は、式中、それぞれのRが、独立してHまたは(C1-C6)アルキルである、アミド(例えば-N(R)C(=O)-またはC(=O)N(R)-)、エステル(例えば-OC(=O)-または-C(=O)O-)、エーテル(例えば-O-)、アミノ(例えば-N(R)-)、ケトン(例えば-C(=O)-)、チオエーテル(例えば-S-)、スルフィニル(例えば-S(O)-)、スルホニル(例えば-S(O)2-)、ジスルフィド(例えば-S-S-)、または直接(例えばC-C結合)の連結を介して、構造式 (I および IV) の化合物の残基に結合することができる。このような連結は、当技術分野において公知である合成手法を用いて、適切に官能基化された出発物質から形成することができる。望ましい連結に基づいて、当業者は、当技術分野において公知である手法を用いて、構造式 (I、IV または V) の化合物の任意の残基を誘導体化するため、かつそれにより生物活性剤の所定の残基を複合するために適切に官能基化された出発物質を選択することができる。任意の生物活性剤の残基は、構造式 (I または IV) の化合物の残基上の、任意の合成で実施可能である位置に連結することができる。さらに、本発明は、構造式 (I または IV) の化合物に直接連結した、生物活性剤の1個より多い残基を有する化合物も提供する。
【0107】
ポリマー分子に連結することができる生物活性剤の数は、通常、ポリマーの分子量に依存する。例えば、式中、nが約5〜約150、好ましくは約5〜約70である、構造式 (I) の化合物に関して、生物活性剤をポリマーの末端基と反応させることにより、約300個までの生物活性剤分子(すなわち、それらの残基)を、ポリマー(すなわち、それらの残基)に直接連結することができる。一方、構造式 (IV) の化合物に関して、生物活性剤をリシン含有単位上のペンダント基と反応させることにより、さらに最大150個の生物活性剤を、ポリマーに連結することができる。不飽和ポリマーにおいて、付加的な生物活性剤は、ポリマー内の二重(または三重)結合と反応することもできる。
【0108】
粒子として、ポリマーデポー剤のインプラントの形態で用いられるか、または、例えば血管ステント等の生分解性医療機器を製作するため用いられるかに関わらず、本発明のエポキシ含有PEA組成物は、生物活性剤が化学的付加なしにポリマー中に分散または「添加」されるのではなく、生物活性剤に共有結合的に直接付加され得る。当技術分野で周知である、および本明細書の下記で記載される、いくつかの方法のいずれかは、化学的付加を形成するために用いることができる。生物活性剤の量は、一般的に、ポリマー組成物に対して、約0.1%〜約60%(w/w)の生物活性剤、より好ましくは約1%〜約25%(w/w)の生物活性剤、さらにより好ましくは約2%〜約20%(w/w)の生物活性剤である。生物活性剤の割合は、以下でより詳細に考察されるように、所望の用量および治療される状態に依存すると考えられる。
【0109】
埋め込み可能な粒子または埋め込み可能なポリマーデポー剤等の形態でインビボで直接投与される場合、生物活性剤のための独立型の送達系として役立つことに加えて、本発明のエポキシ含有PEA組成物は、各種の外科用機器の製作に用いることができる。この態様において、医療機器の製作に用いられる本発明のポリマー組成物は、例えば、共有結合的にその表面に付加された、本発明のポリマー組成物中に分散した任意の生物活性剤の周囲組織への制御された送達に有効である。
【0110】
従って、さらに別の態様において、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物は、例えば外科用縫合、外科用ネジ、埋め込み可能なプレート、および埋め込み可能なロッド(rod)等の内部固定機器、あるいは血管ステントおよび透析用シャントを含むがこれらに限定されない、生分解性、生体適合性の外科用機器の製作に用いられるために、十分な膜形成および架橋結合の特徴を有する。例えば鋳型キャスティングおよび鋳型架橋結合等による、ポリマー材料の医療機器への加工に関して当技術分野で公知である任意の方法は、固体を形成するために本明細書で記載される方法のいずれかを用いて架橋結合される本発明のエポキシ含有PEA組成物を用いて、生分解性外科用機器を製作するために用いることができる。このような生分解性、生体適合性の医療機器は、架橋結合度および機器の物理的大きさに応じて、例えば、約2週間〜約6ヶ月の期間にわたり、徐々に生分解し、実質的に生体適合性の分解生成物をもたらす。
【0111】
別の態様において、本発明は、生物活性剤を、それを必要とする対象に送達するための方法であって、組成物が徐々に生分解、例えば完全に生分解するように、内部の身体部位に本発明の組成物を埋め込む段階を含む方法を提供する。生分解する間、ポリマー中に分散した任意の生物活性剤は、例えば、そこでの治癒の促進および疼痛の緩和のために、埋め込み部位の周辺組織に徐々に放出されると考えられる。
【0112】
別の態様において、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物は、任意の所望の表面積の、生分解性、生体適合性のパッド、シートまたはラップの形態で製作され得る。例えば、ポリマーは、ポリマーのナノ繊維を生産するための電気紡績(electrospinning)により、織り合わされるか、または無秩序な向きの繊維の薄いシートとして形成され得る。このようなパッド、シートおよびラップは、例えば、創傷部位での内因性治癒過程を促進することによる、種々の状態の治療のための多くの種類の創傷被覆材に用いることができる。創傷被覆材中のポリマー組成物は、経時的に生分解して、創傷部位中に吸収されるための生物活性剤を放出し、該創傷部位では、該生物活性剤が標的細胞の細胞基質内、核内または両方のいずれかで細胞内に作用するか、または生物活性剤が細胞表面の受容体分子に結合して、細胞に入ることなく細胞応答を惹起することができる。あるいは、生物活性剤は、本発明の組成物で部分的にコーティングされた少なくとも1つの表面を有する、例えば血管ステント等の外科用機器から放出され得、医療機器が埋め込まれている周囲と接触することにより、創傷部位での内因性治癒過程を促進する。PEAポリマーを用いて作製された、創傷被覆材、創傷治癒インプラントおよび外科用機器コーティングの詳細な説明は、2005年5月12日に出願された、同時係属中の米国特許出願第11/128,903号に見出される。
【0113】
本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物において用いられるポリマー中への分散を意図した生物活性剤としては、抗増殖薬、ラパマイシン、およびその類縁体もしくは誘導体のいずれか、パクリタキセル、またはそのタキセン類縁体もしくは誘導体のいずれか、エベロリムス、シロリムス、タクロリムス、またはその-リムスの名称(-limus named)の薬物ファミリーのいずれか、ならびに例えばシムバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン等のスタチン類、例えば17AAG(17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン)等のゲルダナマイシン;エポチロンDおよび他のエポチロン類、17-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシンおよび熱ショックタンパク質90(Hsp90)の他のポリケチド阻害剤、ならびにシロスタゾール等が挙げられる。
【0114】
本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物および粒子中への分散に適した生物活性剤は、例えば一酸化窒素等の、治療的な自然の創傷治癒剤の内因性産生を促進する生物活性剤であって、内皮細胞により内因的に産生される生物活性剤から選択することもできる。あるいは、分解中にポリマーから放出される生物活性剤は、内皮細胞による自然の創傷治癒過程の促進に直接有効であり得る。これらの生物活性剤は、一酸化窒素を供与するか、転移させるか、もしくは放出するか、一酸化窒素の内因性レベルを上昇させるか、一酸化窒素の内因性合成を刺激するか、または一酸化窒素合成酵素のための基質として働くか、または平滑筋細胞の成長を阻害する、任意の薬剤であり得る。このような物質としては、例えば、アミノキシル、フロキサン、ニトロソチオール、ニトラートおよびアントシアニン;例えばアデノシン等のヌクレオチド、ならびに例えばアデノシン二リン酸(ADP)およびアデノシン三リン酸(ATP)等のヌクレオチド;例えばアセチルコリンおよび5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン/5-HT)等の、神経伝達物質/神経調節物質;例えばアドレナリンおよびノルアドレナリン等の、ヒスタミンおよびカテコールアミン;例えばスフィンゴシン-1-リン酸およびリゾホスファチジン酸等の脂質分子;例えばアルギニンおよびリシン等のアミノ酸;例えばブラジキニン、サブスタンスPおよびカルシウム遺伝子関連ペプチド(CGRP)等のペプチド、ならびに例えばインスリン、血管内皮成長因子(VEGF)およびトロンビン等のタンパク質が挙げられる。
【0115】
種々の生物活性剤、コーティング分子、および生物活性剤のリガンドを、ポリマー粒子の表面に、例えば共有結合的に、付加することができる。例えば標的指向化抗体、ポリペプチド(例えば、抗原)および薬物等の生物活性剤を、ポリマー粒子の表面に共有結合的に複合させることができる。加えて、例えば、抗体もしくはポリペプチドの付加のためのリガンドとしてのポリエチレングリコール(PEG)、または粒子表面上の付加部位を遮断する手段としてのホスファチジルコリン(PC)等のコーティング分子は、該粒子に表面複合して、非標的生物分子および粒子が投与される対象における表面に、粒子が固着するのを防ぐことができる。
【0116】
例えば、細菌プロテインAのBドメインおよびプロテインGの機能的に等価な領域等の低分子タンパク質モチーフが、Fc領域で抗体分子に結合し、それにより抗体分子を捕捉することが知られている。このようなタンパク質モチーフは、生物活性剤として、本発明のポリマーおよび組成物に、特に、本明細書で記載されるポリマー粒子の表面に付加され得る。このような分子は、例えば、標的指向化リガンドとしての使用のための抗体に付加されるための、または血流からの前駆細胞を保持するか、もしくは細胞を捕捉するための抗体を捕捉するための、リガンドとして働くと考えられる。従って、プロテインAまたはプロテインGの機能領域を用いてポリマーコーティングに付加され得る抗体の種類は、Fc領域を含有する抗体である。捕捉抗体は、次いで、ポリマー表面近くにある、例えば始原細胞等の前駆細胞に結合して、これらを保持すると考えられ、それと同時に、好ましくはポリマー中の成長培地に浸漬されている前駆細胞が、種々の因子を分泌し、対象の他の細胞と相互作用する。加えて、ポリマー粒子中に分散した、1種または複数種の生物活性剤、例えばブラジキニン等は、前駆細胞を活性化し得る。
【0117】
加えて、ポリマー組成物が投与された対象の血流由来の前駆細胞に付加するための、または該血流由来の内皮始原細胞(PEC)を捕捉するための生物活性剤は、公知の前駆細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体である。例えば、内皮細胞の表面を修飾すると報告されている、相補的決定因子(CD)としては、CD31、CD34、CD102、CD105、CD106、CD109、CDw130、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147、およびCD166が挙げられる。これらの細胞表面マーカーは、様々な特異性のマーカーであり得、特定の細胞/発生の種別/段階に関する特異性の程度は、多くの場合、十分に特徴づけられていない。加えて、それに対する抗体が産生されているこれらの細胞マーカー分子は、特に同じ系統の細胞上、すなわち内皮細胞の場合には単球上のCDと重複する(抗体認識に関して)と考えられる。血中内皮始原細胞は、(骨髄)単球から成熟内皮細胞への発生経路をたどる、過程のどこかにある。CD 106、142および144は、いくらかの特異性をともなって成熟内皮細胞を示すと報告されている。CD34は、現在、内皮始原細胞に対して特異的であることが知られており、従って、目下のところ、ポリマー粒子が活性薬剤の局所送達のために植え込まれている部位における、血液からの内皮始原細胞を捕捉するために好ましい。このような抗体の例としては、単鎖抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント、Fabフラグメント、IgA、IgG、IgM、IgD、IgEおよびヒト化抗体、ならびにそれらの活性フラグメントが挙げられる。
【0118】
以下の生物活性剤および小分子薬物は、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物中への分散のために特に有効であると考えられる。本発明のエポキシ含有ポリマー組成物中に分散した生物活性剤、およびそれから作製された医療機器は、関心対象の創傷もしくは疾患、またはそれらの症状の治療において、あるいは細胞もしくは組織培養物におけるこのような作用のインビトロ試験のために、またはインビボのために計画された実験において、それらの適した治療的または症状緩和的効果のために選択されると考えられる。
【0119】
一態様において、適した生物活性剤は、徐放性様式で提示された場合創傷治癒を容易にするかまたはそれに寄与する、種々の分類の化合物を含むが、これらに限定されない。このような生物活性剤としては、本発明の組成物中の生分解性ポリマーにより保護されかつ送達され得る、ある特定の前駆細胞を含む創傷-治癒細胞が挙げられる。このような創傷治癒細胞としては、例えば、炎症治癒細胞だけでなく、周皮細胞および内皮細胞が挙げられる。このような細胞を、インビボでポリマーデポー剤の部位に動員するために、本発明および使用方法において用いられる、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物およびその粒子としては、特異的に「細胞接着分子」(CAM)に結合する、このような細胞に対するリガンド、例えば抗体およびより小分子のリガンド等が挙げられ得る。創傷治癒細胞に対する例示的なリガンドとしては、例えばICAM-1(CD54抗原)、ICAM-2(CD102抗原)、ICAM-3(CD50抗原)、ICAM-4(CD242抗原)およびICAM-5等の細胞間接着分子(ICAM);例えばVCAM-1(CD106抗原)等の血管細胞接着分子(VCAM);例えばNCAM-1(CD56抗原)等の神経細胞接着分子(NCAM);またはNCAM-2;例えばPECAM-1(CD31抗原)等の血小板内皮細胞接着分子PECAM;例えばLECAM-1等の白血球-内皮細胞接着分子(ELAM);またはLECAM-2(CD62E抗原)等に特異的に結合するリガンドが挙げられる。
【0120】
別の局面において、適した生物活性剤としては、細胞外基質タンパク質、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物において用いられるポリマー粒子中に分散することができる、例えば共有結合的または非共有結合的のいずれかで付加される高分子が挙げられる。有用な細胞外基質タンパク質の例としては、例えば、タンパク質に通常連結したグリコサミノグリカン(プロテオグリカン)、および線維性タンパク質(例えば、コラーゲン;エラスチン;フィブロネクチンおよびラミニン)が挙げられる。細胞外タンパク質の生体模倣体も用いることができる。これらは通常、非ヒトであるが、生体適合性のある糖タンパク質、例えばアルギナートおよびキチン誘導体等である。このような細胞外基質タンパク質および/またはそれらの生体模倣体の特異的フラグメントである創傷治癒ペプチドも用いることができる。
【0121】
タンパク質成長因子は、本明細書に記載される、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物および使用方法における分散に適した、別の範疇の生物活性剤である。このような生物活性剤は、創傷治癒の促進、および当技術分野において公知である他の疾患状態、例えば血小板由来成長因子-BB(PDGF-BB)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、上皮成長因子(EGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、サイモシンB4;ならびに、例えば血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、腫瘍壊死因子-β(TNF-β)およびインスリン様成長因子-1(IGF-1)等の種々の血管新生因子に有効である。これらのタンパク質成長因子の多くは、市販されているか、または当技術分野において周知の技術を用いた組換えにより産生することができる。
【0122】
あるいは、種々の生体分子をコードする遺伝子を組み込んでいる、ベクター、特にアデノウイルスベクターを含む発現系を、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物および徐放性送達のためのそれらのポリマー粒子中に分散させることができる。このような発現系およびベクターの調製法は当技術分野において周知である。例えば、タンパク質成長因子を、ポリマーデポー剤を形成するための大きさに作られた粒子の選択による局所送達のための所望の身体部位への、または循環に入る大きさの粒子の選択による全身性のいずれかでの、成長因子の投与のための本発明の生物活性組成物中に分散させることができる。例えばVEGF、PDGF、FGF、NGF等の成長因子や、進化的および機能的に関連する生物製剤、ならびに例えばトロンビン等の血管形成酵素も、本発明における生物活性剤として用いてもよい。
【0123】
小分子薬物は、本明細書に記載される、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物および使用方法における分散に適した、さらに別の範疇の生物活性剤である。このような薬物としては、例えば、例えばビタミンAおよび脂質過酸化物の合成阻害剤等のある特定の治癒促進剤だけでなく、抗菌剤および抗炎症剤が挙げられる。
【0124】
感染を防止または制御することによって自然な治癒過程を間接的に促進するために、種々の抗生物質を、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物中に生物活性剤として分散することができる。適した抗生物質としては、アミノグリコシド抗生物質もしくはキノロン、または例えばセファロスポリン等のβ-ラクタム等の多くの分類、例えば、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、エリスロマイシン、バンコマイシン、オキサシリン、クロキサシリン、メチシリン、リンコマイシン、アンピシリン、およびコリスチンが挙げられる。適した抗生物質は文献中に記載されている。
【0125】
適当な抗菌剤としては、例えば、Adriamycin PFS/RDF(登録商標)(Pharmacia and Upjohn)、Blenoxane(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、Cerubidine(登録商標)(Bedford)、Cosmegen(登録商標)(Merck)、DaunoXome(登録商標)(NeXstar)、Doxil(登録商標)(Sequus)、Doxorubicin Hydrochloride(登録商標)(Astra)、Idamycin PFS(登録商標)(Pharmacia and Upjohn)、Mithracin(登録商標)(Bayer)、Mitamycin(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、Nipen(登録商標)(SuperGen)、Novantrone(登録商標)(Immunex)およびRubex(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)が挙げられる。一態様において、ペプチドは糖ペプチドであり得る。「糖ペプチド」とは、例えばバンコマイシン等の、糖基(saccharide group)で置換されていてもよい多環ペプチドコア(core)を特徴とする、オリゴペプチド(例えば、ヘプタペプチド)抗生物質のことをいう。
【0126】
抗菌剤のこの範疇に含まれる糖ペプチドの例は、Raymond C. Rao および Louise W. Crandallによる「Glycopeptides Classification, Occurrence, and Discovery」(Marcal Dekker, Inc.により刊行された、Ramakrishnan Nagarajan編の「Bioactive agents and the Pharmaceutical Sciences」第63巻)に見出せる。糖ペプチドのさらなる例は、米国特許第4,639,433号;同第4,643,987号;同第4,497,802号;同第4,698,327号、同第5,591,714号、;同第5,840,684号;および同第5,843,889号に;EP 0 802 199;EP 0 801 075;EP 0 667 353;WO97/28812;WO 97/38702;WO 98/52589;WO 98/52592;ならびにJ. Amer. Chem. Soc. (1996) 118: 13107-13108;J. Amer. Chem. Soc. (1997) 119: 12041-12047;およびJ. Amer. Chem. Soc. (1994) 116: 4573-4590に開示されている。代表的糖ペプチドとしては、A477、A35512、A40926、A41030、A42867、A47934、A80407、A82846、A83850、A84575、AB-65、アクタプラニン、アクチノイジン、アルダシン、アボパルシン、アズレオマイシン(Azureomycin)、バルヒミエイン(Balhimyein)、クロロオリエンチエイン(Chloroorientiein)、クロロポリスポリン、デカプラニン(Decaplanin)、-デメチルバンコマイシン、エレモマイシン(Eremomycin)、ガラカルジン(Galacardin)、ヘルベカルジン(Helvecardin)、イズペプチン(Izupeptin)、キブデリン(Kibdelin)、LL-AM374、マンノペプチン(Mannopeptin)、MM45289、MM47756、MM47761、MM49721、MM47766、MM55260、MM55266、MM55270、MM56597、MM56598、OA-7653、オレンチシン(Orenticin)、パルボジシン(Parvodicin)、リストセチン、リストマイシン(Ristomycin)、シンモニシン(Synmonicin)、テイコプラニン、UK-68597、UD-69542、UK-72051、およびバンコマイシン等として同定されるものが挙げられる。本明細書で用いられる「糖ペプチド」または「糖ペプチド抗生物質」という用語は、糖部分がない前記で開示した糖ペプチドの一般的分類、すなわち糖ペプチドのアグリコン系列を含むことも意図される。例えば、バンコマイシン上のフェノールに付いている二糖部分を穏和な加水分解により除去すると、バンコマイシンアグリコンが得られる。同じく、「糖ペプチド抗生物質」という用語の範囲内には、前記で開示した糖ペプチドの一般的分類の合成誘導体が含まれ、アルキル化誘導体およびアシル化誘導体を含む。加えて、バンコサミンと同様の様式で、追加の糖残基、特にアミノグリコシドがさらに付いている、糖ペプチドも、この用語の範囲内である。
【0127】
「脂質付加糖ペプチド」という用語は、脂質置換基を含有するように合成修飾されている、糖ペプチド抗生物質のことを特にいう。本明細書で用いられる「脂質置換基」という用語は、5個またはそれより多い炭素原子、好ましくは10個〜40個の炭素原子を含有する、任意の置換基のことをいう。該脂質置換基は、ハロ、酸素、窒素、硫黄、およびリンより選択される1個〜6個のヘテロ原子を任意で含有してもよい。脂質付加糖ペプチド抗生物質は当技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,840,684号、同第5,843,889号、同第5,916,873号、同第5,919,756号、同第5,952,310号、同第5,977,062号、同第5,977,063号、EP 667,353、WO 98/52589、WO99/56760、WO 00/04044、WO 00/39156を参照されたく、これらの開示はそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0128】
抗炎症性生物活性剤も、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物および方法において用いられる、分散のために有用である。治療する身体部位および疾患に応じて、このような抗炎症性生物活性剤には、例えば、鎮痛剤(例えば、NSAIDSおよびサリチル酸エステル)、ステロイド、抗リウマチ剤、胃腸剤、痛風用製剤、ホルモン(グルココルチコイド)、鼻用製剤、眼用製剤、耳用製剤(例えば、抗生物質とステロイドの組み合わせ)、呼吸器用薬剤、および皮膚および粘膜用薬剤が含まれる。Physician's Desk Reference, 2005年版を参照。具体的には、抗炎症剤としては、デキサメタゾンを挙げることができ、これは化学的に(11θ,16I)-9-フルオロ-11,17,21-トリヒドロキシ-16-メチルプレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオンと命名されている。あるいは、抗炎症性生物活性剤は、シロリムス(ラパマイシン)であるかまたはこれを含むことができ、これはストレプトミセス・ハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)から単離された、トリエンマクロライド抗生物質である。
【0129】
本発明の組成物および方法に含まれるポリペプチド生物活性剤は、「ペプチド模倣物(peptide mimetic)」も含むことができる。本明細書で「ペプチド模倣物(peptide mimetic)」または「ペプチド模倣物(peptidomimetic)」と呼ばれる、このようなペプチド類縁体は、テンプレートペプチドの特性と類似した特性を伴って、製薬工業において一般的に用いられ(Fauchere, J. (1986) Adv. Bioactive agent Res., 15:29;Veber および Freidinger (1985) TINS, p.392;およびEvansら (1987) J. Med. Chem., 30:1229)、かつ通常はコンピューター分子モデリングを活用して開発される。一般的に、ペプチド模倣物は、典型的なポリペプチド(すなわち、生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、当技術分野において公知の方法および下記の参照文献にさらに記載されている方法によって、--CH2NH--、--CH2S--、CH2-CH2--、--CH=CH--(シスおよびトランス)、--COCH2--、--CH(OH)CH2--、および--CH2SO--からなる群より選択される連結で任意に置き換えられた、1つまたは複数のペプチド連結を有する:Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides, and Proteins, B. Weinstein編, Marcel Dekker, New York, p. 267 (1983) 中のSpatola, A.F.;Spatola, A.F., Vega Data (March 1983), Vol. 1, Issue 3, 「Peptide Backbone Modifications」(総説);Morley, J.S., Trends. Pharm. Sci., (1980) pp. 463-468(総説);Hudson, D. ら, Int. J. Pept. Prot. Res., (1979) 14:177-185(--CH2NH--, CH2CH2--);Spatola, A.F. ら, Life Sci., (1986) 38:1243-1249(--CH2-S--);Harm, M.M., J. Chem. Soc. Perkin Trans I (1982) 307-314(--CH=CH--、シスおよびトランス);Almquist, R.G. ら, J. Med. Chem., (1980) 23:2533(--COCH2--);Jennings-Whie, C. ら, Tetrahedron Lett., (1982) 23:2533(--COCH2--);Szelke, M. ら, European Appln., EP 45665 (1982) CA: 97:39405 (1982)(--CH(OH)CH2--);Holladay, M.W. ら, Tetrahedron Lett., (1983) 24:4401-4404(--C(OH)CH2--);およびHruby, V.J., Life Sci., (1982) 31:189-199(--CH2-S--)。このようなペプチド模倣物は天然ポリペプチドの態様を超える、例えば、より経済的な生産、より高い化学安定性、増強された薬理学的特性(半減期、吸収、効力、有効性等)、改変された特異性(例えば、広域スペクトルの生物活性)、低減された抗原性およびその他を含む、有意な利点を有し得る。
【0130】
加えて、ペプチド内の1つまたは複数のアミノ酸の置換(例えば、L-リシンの代わりにD-リシンでの)を、より安定なペプチドおよび内因性ペプチダーゼに抵抗性のペプチドを生成させるために用いてもよい。あるいは、生分解性ポリマーに共有結合的に結合した合成ポリペプチドを、インバーソペプチドと呼ばれるD-アミノ酸から調製することもできる。ペプチドを天然のペプチド配列と反対の方向で会合させる場合、これはレトロペプチドと呼ばれる。一般に、D-アミノ酸から調製したポリペプチドは酵素加水分解に対して非常に安定である。レトロ-インバーソまたは部分レトロ-インバーソポリペプチドに関する生物活性が維持されている多くの事例が報告されている(米国特許第6,261,569 B1号およびその中の参考文献;B. Fromme ら, Endocrinology (2003)144:3262-3269。
【0131】
少なくとも1種の生物活性剤の任意の適した有効量が、生分解性の内部固定機器、ステントもしくは透析用シャント中、またはインビボで導入されるその粒子から形成されるデポー剤中のものを含む、本発明のポリマー組成物から経時的に放出され得る。生物活性剤の適した有効量は、通常、例えば、特異的アルキレン二価酸含有PEAポリマー、ならびに存在する場合、粒子もしくはポリマー/生物活性剤の連結の種類に依存すると考えられる。通常、インビボで、最大約100%の生物活性剤が、本発明のポリマーから放出され得る。具体的には、その最大約90%、最大75%、最大50%、または最大25%が、ポリマーから放出され得る。ポリマーからの放出速度に通常影響をおよぼす因子は、ポリマー自体の化学構造だけでなく、ポリマー/生物活性剤の連結、ならびに製剤中に存在する追加物質の性質および量である。
【0132】
ヒトに加えて、本発明のエポキシ含有PEAポリマー組成物、ならびにそれから製作される粒子および医療機器には、例えばペット(例えば、ネコ、イヌ、ウサギ、およびフェレット)、家畜(例えば、ブタ、ウマ、ラバ、乳牛および肉牛)および競走馬等の、種々の哺乳動物患畜を含む、獣医学的診療における使用も意図されている。
【0133】
本発明の機器および送達方法で用いられる組成物は、1種または複数種の骨格生物活性剤の「有効量」、および関心対象の任意の生物活性剤を含み得る。すなわち、生物活性剤の量は、症状を予防、軽減または排除するために十分な治療的または症状緩和的反応をもたらすと考えられる量で、ポリマー中に組み込まれると考えられる。必要とされる正確な量は、いくつかある要因の中でも、組成物が投与されている対象;対象の年齢および全身状態;対象の免疫系の能力、所望の治療的または症状緩和的反応の程度;治療または研究されている状態の重症度;選択した特定の生物活性剤および組成物の投与様式に応じて変動すると考えられる。適当な有効量は、当業者により容易に決定され得る。従って、「有効量」は、手順の定まっている試験によって決定することができる、比較的広い範囲に収まると考えられる。例えば、本発明の目的に関して、有効量は、送達される生物活性剤が、通常、約1μg〜約100mg、例えば約5μg〜約1mg、または約10μg〜約500μgの範囲であると考えられる。
【0134】
以下の実施例は例示を意味するもので、本発明を限定するものではない。
【0135】
実施例1
trans-エポキシコハク酸=ジ-p-ニトロフェニルモノマーの合成
以前に記載されたように、触媒としてタングステン酸ナトリウムの存在下、過酸化水素でフマル酸を処理することにより、trans-エポキシコハク酸を合成した(Payne G.B., Williams P.H. J. Org. Chem. (1959) 24:54-55)。酸を収率60%で回収した(スキーム2.A)。元素分析:[C4H4O5] 計算値 C: 36.38 %, H: 3.05 %;実測値 C: 36.63 %, H: 3.45 %。


【0136】
形成したエポキシ二価酸を、PCl5を用いて、対応する二塩化物に変換した(スキーム2.B)。減圧下で副生成物(POCl3)を除去した後、二塩化物を室温で結晶化した。軽質石油から再結晶化して、収率約80%(エポキシ二価酸当たりの)で二塩化物を得た;融点51〜53℃、文献値の融点50〜52℃(Campbell T.W および McDonald R.N. J. Polymer. Sci., A (1963) 1:2525-2535)。FTIRスペクトル(Nujol)は、COCl基の存在の裏づけを示す、強いカルボニル吸収を1766 cm-1(対応する二価酸での1709 cm-1に対して)に示した。
【0137】
二塩化物のクロロホルム溶液と、水中のp-ニトロフェノールおよびNa2CO3との界面反応による、Shotten-Bauman手法を用いて、目標モノマーであるtrans-エポキシコハク酸=ジ-p-ニトロフェニル(化合物V.4)を得た(スキーム3)。

融点182〜184℃(軽質石油から)をもつ生成物(化合物V.4)を、出発二塩化物当たりの収率約90%で得た。元素分析は、推定構造を裏づけた:[C16H10N2O9] 計算値 C: 51.35 %, H: 2.69 %, N: 7.49 %;実測値 C: 51.01 %, H: 2.43 %, N: 7.30 %。

FTIRスペクトル(Nujol)は、p-ニトロフェニルエステル基の存在を指示する、強いC=O吸収を1758 cm-1に示した。
【0138】
エステル形成のための他の公知の技術、例えば、N,N'-カルボニルジイミダゾール法も、スキーム4に表した化合物V.4の合成に関して実行した。

このスキームによるジエステル(化合物V.4)の収率は、二塩化物を経由して得られたジエステルの収率(二価酸当たり約72%)よりもいくらか高い、約82%であった。
【0139】
cis-エポキシコハク酸=ジ-p-ニトロフェニルモノマーの合成
cis-エポキシコハク酸=ジ-p-ニトロフェニル(化合物V.5)を、trans-異性体に関する前記の方法と類似した方法で合成した。最初に、前記のように、過酸化水素およびタングステン酸ナトリウムで処理することにより、cis-エポキシコハク酸をマレイン酸から調製した(Payne G.B. and Williams P.H., 上記参照)。El.分析:C4H4O5, 計算値C: 36.38 %, H: 3.05 %;実測値C: 36.57 %, H: 3.36 %
【0140】
上記参照のCampbell および McDonaldの手法に従い、得られたcis-エポキシコハク酸を、PCl5を用いて、対応する二塩化物に変換した(スキーム5)。

【0141】
二塩化物の四塩化炭素溶液を、p-ニトロフェノールおよび炭酸ナトリウムの水溶液と激しく攪拌して、界面相互作用により、目標のcis-エポキシコハク酸=ジ-p-ニトロフェニル(化合物V.5)を合成した。

【0142】
目標化合物V.5を、良好な収率(二塩化物当たり約90%)で得た。アセトンから再結晶化した後には、該収率は62%に減少し、融点は184〜186℃であり、この結果は、trans-異性体の融点(182〜184℃)に非常に近かった。これら2種の異性体の混合試料は、しかしながら、155〜160℃で融解し、該2種が異なる化合物であることを指示した。

【0143】
実施例2
溶液活性重縮合(APC)
trans-エポキシコハク酸=ジ-p-ニトロフェニルに基づいたエポキシ-PEA合成(表1.1)
新規活性ジエステルV.4と、ジ-p-トルエンスルホン酸塩との重縮合、例えば、ビス-(L-フェニルアラニン)-1,6-ヘキシレンジエステルおよび/またはビス-(L-ロイシン)-1,6-ヘキシレンジエステルとの重縮合、p-トルエンスルホン酸塩の受容体としてのトリエチルアミン存在下、N.N-ジメチルアセトアミド(DMA)中で実行した。V.4との反応を室温で実行した。α位にあるヘテロ原子が、ジカルボン酸のエステルの反応性を大幅に(例えば、メチルエステルの場合、約3桁まで)向上させることが公知である(R.D. Katsarava. (1991) Uspekhi Khimii (Russian Chem.Rev), 60:1419)ので、ジエステルV.4の反応性を向上させるために付与した、著しい発熱反応が認められた。
【0144】
cis-エポキシコハク酸=ジ-p-ニトロフェニルに基づいた合成(表1.1)
cis-異性体を主成分とするエポキシ-PEA合成を、前記trans-異性体と同様にして実行した。化合物V.5を、酸受容体としてのトリエチルアミン存在下、DMA中、室温で、ビス-(L-フェニルアラニン)-1,6-ヘキシレンジエステルおよび/またはビス-(L-ロイシン)-1,6-ヘキシレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩と反応させた。
【0145】
多数のジカルボン酸を主成分とする新規co-PEAも、同じ溶液重縮合条件下で合成した。例えば、cis-エポキシコハク酸=ジ-p-ニトロフェニル (V.5) (40 mol %)およびセバシン酸=ジ-p-ニトロフェニル(60 mol %)の反応混合物中のモノマー比率は、1H NMRにより決定した最終co-PEA組成物と一致した。
【0146】
全ての場合における反応液は、むしろ粘稠であったことに注目すべきである。しかしながら、水中で沈殿析出させた後、精製したcis-ポリマーの溶液の粘度は、表1.1に示した通りであった。
【0147】
cis-異性体の反応液中でゲルが形成されないのに対して、trans-エポキシPEAに関する縮合時間の延長の間に、部分的ゲル化が認められた。ゲル形成は、成長鎖の末端アミノ基とポリマー骨格のエポキシ基との相互作用に起因する可能性があり、3Dネットワークをもたらす。保護の末端アミノ基をもつエポキシ-PEAは、自己架橋結合を受け、反応液から分離してから約2週間後には、溶解性を失うことが分かった。架橋結合を避けるために、最終段階で酢酸=p-ニトロフェニルまたは無水酢酸を添加することにより、高分子の末端アミノ基を保護した。
【0148】
界面重縮合
本発明のエポキシ-PEAのcis-異性体を、疎水性有機溶媒と水との界面で進行する、「界面重縮合」として公知の方法のによっても合成した。この方法を、活性ジエステルの代わりに二価酸ジクロリドを適用する。この方法における反応は速く、5〜15分以内に完了する。得られたポリマーを表1.2にまとめた。
【0149】
界面方法が、cis-エポキシコハク酸を主成分とする高分子量のPEAを合成するためには、不適当であったことが分かった。しかしながら、cis-エポキシコハク酸ジクロリド(40 mol. %)と、もう1つの疎水性二価酸クロリドであるセバシン酸ジクロリド(60 mol. %)との混合物は、良好な膜形成特性をもつ、比較的高分子量のコポリマー(最大0.48 dL/gのηred;DMF, c=0.5 g/dL)を得た。ここでも、無保護の末端アミノ基をもつポリマーは、単離してから2週間後には、有機溶媒中での溶解性を失った(膨潤した)。ポリマーは、クロロホルム溶液中でより安定であって、4週間を超えた後、架橋結合は認められなかった。
【0150】
(表1.2)界面重縮合により得られたエポキシポリ(エステルアミド)1)

1) 最終co-PEA組成物中のモノマー比率の定量は行わなかった。
2) DMF中、c=0.5 g/dLおよびt=25℃で測定した。
3) 《+》- 可溶性、《±》- 部分可溶性
【0151】
実施例3
エポキシ-PEAの変換
アミンとの相互作用:モデル研究。第一級アミンとの相互作用。
エポキシ-PEAと第一級アミンとの相互作用を研究するために、「レポーティング基(reporting group)」を含有する、モノアミン-N-(6-アミノヘキシル)-2,4-ジニトロアニリン(化合物6)を調製した。レポーティング基である2,4-ジニトロアニリン発色基には、約360〜400 nmに強い吸収があり、光度計測により容易に測定することができる。

HFの受容体としてのトリエチルアミンの存在下、DMF中で、ヘキサメチレンジアミン(1.0モル)と2,4-ジニトロフルオロベンゼン(1.0モル)との相互作用により、化合物6を合成した。
【0152】
UVおよびVIS領域のスペクトルでの吸収がないことから、エポキシ-PEA、t-ES-L-Leu-6 (I.1) をこの研究のために選択した。反応の想定スキームを下記、スキーム7に示す。

ポリマーのDMF/DMS0混合溶液を100℃に加熱した。第一級アミノ基に対するエポキシ基のモル比は、1:2であった。これらの条件下で、反応は均一に進行した。しかしながら、室温に冷却した後、過剰の化合物6を晶出させた。透析袋内の溶液が黄褐色を保持する間は、意図したポリマー付加体の形成を間接的に示す結果である、外部の溶液が無色になるまで、上澄みを透析してDMFを分離した(スキーム7)。透析生成物を水中で沈殿析出させ、乾燥させた。複合ポリ(エステルアミド)のFTIRデータは、1740 cm−1(エステルのCO)および1660〜1665 cm−1(アミドのCO)に強い吸収帯を示した(出発のエポキシポリ(エステルアミド)t-ES-L-Leu-6のFTIRスペクトルと比較されたい)。この化合物のUVスペクトルが、アミン6のUVスペクトルと一致することは、PEA複合体 (I.3) の想定構造を表す。
【0153】
エポキシ含有PEAへの生物活性剤の共有結合的付加
PEA-t-ES-L-Leu-6ポリマーへの4-アミノ-TEMPOの共有結合的付加を行った。4-アミノ-TEMPOのフリーラジカルには、267 nmにかなり強いUV吸収があるのに対して、240〜280 nmのUV領域における吸収がないことから、このポリマーを選択した。
【0154】
共有結合的付加のために、4-アミノ-TEMPOおよびt-ES-L-Leu-6 (I.1) を、1.2:1.0モル比でDMFに溶解し(ポリマーによる10%溶液)、溶液を60℃で36時間攪拌した。反応の想定スキームを下記に示す(スキーム8)。

反応液を水に注ぎ込んで、沈殿析出したポリマーを、50%エタノールで入念に洗浄し、エタノール(95%)に溶解して、外部相の267 nmでの吸収が消失するまで透析してエタノールを分離した。透析袋の内容物を水に注ぎ込んで、沈殿したポリマーを乾燥させた。DMF溶液中でのt-ES-L-Leu-6-TEMPO (I.4) のUVスペクトルを記録した。イミノキシルラジカルに対応する267 nmでの強い吸収は、ポリマー-4-アミノ-TEMPO複合体 (I.4) の形成を裏づけた。
【0155】
付加体の形成に関する他の証拠を、屈折率(RI)および紫外線(UV)検出器の両方を用いた、ゲルクロマトグラフィ(0.1 N LiBrのDMF溶離液, c=1x10−3 モル/L)により得た。研究は、t-ES-L-Leu-6および4-アミノ-TEMPOをDMF溶液中で混合した後、付加体形成が室温で始まることを示した。複合は、相互作用の36時間後、60℃で完了した。
【0156】
実施例4
(メト)アクリロイル基でのエポキシ-PEAの修飾
アプローチ1:
架橋結合可能な(メト)アクリロイルペンダント基をもつPEAを、異なるアプローチを用いて合成した。最初のアプローチにおいて、官能性の感光性ポリマーを2工程の方法により生じさせた(スキーム9)。第一工程において、PEA t-ES-L-Leu-6は、第二級アミン、ジブチルアミンと相互作用して、側面のヒドロキシルおよびtert-アミノ基をもつポリ(エステルアミド)をもたらした。第二工程において、塩化アクリロイルを用いて、この分子をアシル化した。

通常の手法において、ポリマー (I.1) のDMF溶液(w/Vで20%溶液)を、50℃で24時間、ジブチルアミン(エポキシ基:ジブチルアミンのモル比=1:2、スキーム9)によって処理した。得られたポリマーを水中で沈殿析出させ、濾別し、乾燥させ、DMFに再溶解し、0〜5℃で、塩化アクリロイルで(ポリマーの基本単位:塩化アクリロイルのモル比=1:1.2)処理した。最終ポリマーを沈殿析出させ、水で洗浄し、乾燥させた。アクリル酸エステルの形成をUV分光法により確認した。塩化アクリロイルでの処理の後、アクリロイル基に関する特異的な結果である、265 nmに最大吸収が検出されたのに対して、出発ポリマーのt-ES-L-Leu-6 (I.1) およびその付加体t-ES-L-Leu-6/DBA (I.5) の両方とも、UV領域に吸収がなかった。
【0157】
アプローチ2:
不飽和側基をもつPEAの1工程合成を、PEA (I.1) と塩化アクリロイルとの直接相互作用により実行した。意図した付加体は、DMA溶液中、室温で12時間、t-ES-L-Leu-6を塩化アクリロイル(オキシラン/塩化アクリロイルのモル比1:2)で処理した後に形成され、それに続きポリマーを沈殿析出させ、Clイオンの陰性反応が認められるまで水で洗浄した。反応スキーム(スキーム10)は以下の通りである。

反応生成物PEA-アクリル酸エステル I.7 のUVスペクトルにおいて、265 nmにアクリル酸複合体の最大吸収が認められた。
【0158】
同時に、この生成物は、ポリマー分子内に共有結合的に結合した塩素の存在をおそらく示唆する、ハロゲンの陽性反応を与えた。元素分析は、ポリマー骨格のエポキシ基の約1/3が塩化アクリロイルと相互作用していたことを示した(元素Clの分析データを用いて計算した)。33%エポキシ基変換に関するEl.分析計算値:C: 58.84%, H: 7.91 %, N: 5.99%, Cl: 2.50 %;実測値 C: 58.29%, H: 7.82%, N: 5.74%, Cl: 2.14 %.
【0159】
可能性のある反応機構
下記の反応スキームに示したように、求核性反応機構は、オキシラン環の酸素原子と酸塩化物のカルボニル基との直接相互作用からなり、続いて目標付加体を形成させる。

求電子反応機構に従って、反応の第一段階で、塩化アクリロイルと溶媒(DMA)との錯体([C+] … Cl)が形成され、Clイオンの発生が引き起こされる。

次いで、Clイオンがオキシラン環を攻撃し、それを開環させる。形成したアルコキシドイオンは、カチオン[C+]で速やかにアシル化され、目標付加体の形成を引き起こす。

【0160】
アプローチ3
このアプローチにおいて、求電子反応機構がより効率的であることが想定された。従って、t-ES-L-Leu-6とメタクリル酸のナトリウム塩との相互作用を、DMF中、60℃で24時間実行した(スキーム11)。

【0161】
得られる反応液を水に注ぎ込み、分離したポリマーを、再度水で入念に洗浄して、残存メタクリル酸およびその塩を除去した。その後、ポリマーを乾燥させて、水中でDMFから再沈殿析出させて、再度乾燥させた。試験試料のUVスペクトルには、二重結合の吸収シグナルが存在し、かつ対照ポリマー (I.1) のスペクトルには存在しないことが、共有結合的な複合であることを裏づけた。
【0162】
実施例4で得られた全てのポリマーは、合成のスキームにかかわらず、(メト)アクリロイル反応基の分子における存在も示唆する結果である、ラジカル開始剤の存在下で架橋結合を受けた。
【0163】
エポキシ-PEAの別の修飾:
本発明のエポキシ-PEAの活性誘導体の合成も実行した。この目的に関して、ヒドロキシル基-t-ES-L-Leu-6/DBAをもつPEA(I.5、スキーム9)を、DMA溶液中、クロロギ酸=p-ニトロフェニル(p-NPC)で処理して、スキーム12の化合物I.10を得た。

【0164】
側面の活性カルボナート基を含有する、得られるポリマーI.10を、pH 3〜4に酸性化した水中での沈殿析出により反応液から分離し、ポリマーを濾別し、水で入念に洗浄し、減圧下室温で乾燥させた。
【0165】
活性カルボナート基をもつポリマーの形成は、UV分光光度計により、活性ポリマーI.10には、UV領域のスペクトルに吸収があり、一方出発ポリオールであるt-ES-L-Leu-6/DBAには、吸収がないと示すことにより確認した。
【0166】
下記スキーム13に示す通り、活性ポリマーI.10を、遊離イミノキシルラジカルである4-アミノ-TEMPOと相互作用させ、ウレタン連結を介してポリマーに結合させた。

【0167】
この反応に関して、1 gの得られた活性ポリマー (I.10) を、室温で10 mLのDMFに溶解し、次いで0.5 gの4-アミノ-TEMPOを添加した。均一溶液を1時間攪拌し、終夜で室温に保った。得られるポリマーを蒸留水中で沈殿析出させ、水で洗浄し、減圧下室温で乾燥させた。イミノキシルラジカルの共有結合的付加を、2種の検出器(RlおよびUV)を用いたGPCにより確認した。
【0168】
エポキシ含有PEAの硬化
熱硬化:
エポキシ-PEAは、100〜150℃の範囲で加熱された後、溶解性を失い、かつ有機溶媒中でゲルを形成することにより確認されるような、架橋結合を受けることが分かった。エポキシ-PEAは、100〜150℃の範囲で加熱された後、溶解性を失い、かつ有機溶媒中でゲルを形成することにより確認されるような、架橋結合を受けることが分かった。
【0169】
エポキシ-PEAは、100〜150℃の範囲で加熱された後、溶解性を失い、かつ有機溶媒中でゲルを形成することにより確認されるような、架橋結合を受けることが分かった。
【0170】
エポキシ-PEAの熱硬化を、IR分光法を用いて研究した。反応を、オキシラン環に帰属される890 cm−1での吸収帯の強度の変化により観測した(L.J. Bellamy, The Infra-Red Spectra of Complex Molecules, (Russian translation, Izd. Inostrannoi Literatury, Moscow, 1963, p.590)。1460 および 1530 cm−1での吸収帯を内部標準として用いて、硬化度を評価した。
【0171】
得られたデータは、120℃で100時間加熱した場合に、約70%のエポキシ基が変換されたことを示した。溶解性試験は、架橋結合が比較的早い段階(6時間後)で起こったことを示した。
【0172】
光化学硬化
本発明のエポキシ-PEA膜は、例えばクロロホルム、エタノールおよびDMF等の有機溶媒への溶解性を失うことにより確認された、光、すなわちUV曝露後の硬化を受けた。
【0173】
強力な広帯域のUV光により惹起される、本発明のエポキシ-PEAの光化学反応は、エポキシモノマーおよびオリゴマーの光化学変換に対して通常用いられる、特定の触媒(価カチオン性光開始剤)を用いることなく架橋結合を受けた(S.K. Rajaramanら (1999). J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 37, 4007 および Z. Gomurashviliら (2001) J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 39, 1187-1197)。
【0174】
エポキシ含有PEAの無触媒光化学変換は、硬化ポリマーから除去することが困難である、毒性のある触媒を用いる必要がないため、薬剤適用において重要である。
【0175】
脂肪族ジアミンの存在下での化学硬化
0.1 gのエポキシポリマー (I.1) および1,6-ヘキサメチレンジアミン(脂肪アミンとして、10 % w/w)を2 mLのクロロホルムに溶解し、滑らかな疎水性表面上にキャストし、クロロホルムが蒸発して乾燥するまでの間、大気条件下に終夜放置した。クロロホルムに(膨潤するのみで)不溶な弾性膜を得た。
【0176】
実施例5
生分解性三次元ハイブリッドヒドロゲルネットワークの合成
生分解性三次元ハイブリッドヒドロゲルネットワークの合成に関して、PEAおよび多糖類の両方に反応性誘導体を有する必要はなかった。
【0177】
メタクリロイルデキストラン(MaDX)を、PEA (I.6) の活性パートナー(active partner)として選んだ。Chuら J Biomed Mater Res (2000) 49:517により記載されたように、MaDXを、メタクリル酸無水物に対して1:1の割合のデキストランのOH基をもつDMF/LiCl溶液中、デキストラン(DX)(ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来、Sigma Chemicals)とメタクリル酸無水物(Lancaster Chemicals)との相互作用により調製した。
【0178】
ハイブリッドヒドロゲルの調製に関して、90:10の重量比率でMaDXおよびポリメタクリロイル-PEA I.6 をDMFに溶解し、溶液をペトリ皿上にキャストし、乾燥するまで真空下で溶媒を蒸発させた。1つは開始剤なしで、2回目はMaDXおよびPEA I.6 の混合物当たり1% w/wの過酸化ベンゾイルを用いて、2回の実験を実施した。DMFの除去後に得られた膜を、80℃で8時間加熱した。どちらの場合においても、膜は、水に不溶で膨潤するのみとなり、三次元ネットワークの形成を指示した。ポリマーの混合物を、熱処理に供せずに水中に入れた場合、デキストランの完全溶解およびPEAの沈殿析出が認められた。
【0179】
PEA I.6 に対する他の重量比率のデキストランも、95:5、90:10、75:25および50:50で調製した。混合物を、1 % w/wの過酸化ベンゾイル存在下、DMFに溶解し(10 mL中に1 g)、ペトリ皿上にキャストし、乾燥するまで溶媒を蒸発させた。DMFの除去後、得られた膜を100℃で8時間加熱した。全ての場合に、水に不溶で膨潤するのみとなったポリマーが認められ、三次元ネットワークの形成を指示した。
【0180】
図1は、重量%での水の取り込みにより評価した、ゲルの膨潤度を示す。これらのデータからわかるように、PEA I.6の含有量が50 %までは、水の取り込みが多少高い。しかしながら、95:5および90:10の重量比率のMaDX:PEA I.6でのみ、透明なゲルが得られた。
【0181】
ヒドロゲルは、金属ナトリウムおよびナトリウムメチラート両方の存在下、エポキシ含有PEAとデキストラン(無修飾の)との直接相互作用によっても得られた。予備実験において、高い膨潤指数(最大300〜900 %)をもつが、低収率(6〜20%)であるヒドロゲルが得られた。
【0182】
実施例6
エポキシ-PEAのインビトロでの生分解
本発明のエポキシ-PEAのインビトロ生分解を、加水分解酵素の存在下で実行した。活性度300〜340 ATEE/mg酵素(ATEE−(Acetyl Tyrosine Ethyl Ester, Sigma Chemicals))をもつα-キモトリプシン(Fluka、バーゼル、スイス)、および活性度50〜60トリアセチン(単位/mg酵素)をもつリパーゼ(Wako Pure Chemicals、ワコー、テキサス州)をこれらの実験に用いた。直径4 cmで重量500〜600 mgのポリマーの円形ディスクを、37℃で、これらの酵素のどちらか4 mgを含有する、pH 7.4の0.2 Mリン酸緩衝液10 mLに入れた。ディスクを緩衝液から取り出し、水で入念に洗浄し、恒量になるまで50℃で乾燥させることによる、mg/cm2での重量減少により、生分解を観測した。その都度、新たに調製した酵素溶液を用いて、この手法を24時間毎に繰り返した(5回、120時間の総定温放置時間)。
【0183】
実験データを図2にまとめる。これらのデータから、エポキシ含有PEA t-ES-L-Phe-6 (I.1) が、脂肪族ポリ(エステルアミド) 8-L-Phe-6(図3)の生分解速度の約30%(α-キモトリプシンでの)および約50%(リパーゼでの)の速度で、酵素触媒性生分解を受けるという結論に達し得る。R1=(CH2)8、R3=CH2C6H5、およびR4=(CH2)6をもつ式 1のPEA 8-L-Phe-6は、同じ系統の試験したPEAの中で最も速い生分解速度を呈した(G.Tsitlanadze, 前記参照、およびG.Tsitlanadzeら J. Mater ScL: Mater in Medicine (2004) 15: 185-190)。エポキシ含有PEA t-ES-L-Phe-6 (I.1) が、α-キモトリプシン触媒性生分解よりも速い、生分解リパーゼ触媒性生分解を受けることにも留意すべきである。
【0184】
種々の度合いでの熱硬化前および熱硬化後のエポキシ-PEA膜の、インビトロ生分解を行った。図4および5にまとめた結果は、α-キモトリプシンおよびリパーゼの両方に関する酵素触媒加水分解の速度が、架橋結合の度合いが増加するとともに実質的に低下することを示す。生分解速度のこの減少は、架橋結合後の高分子の可動性が低減されたことが原因であるかもしれない。
【0185】
全ての刊行物、特許および特許文書は、参照により個々に組み入れられるように、参照により本明細書に組み入れられる。本発明は、種々の具体的で好ましい態様および技術に関して、記載してきた。しかしながら、本発明の精神および範囲内にある限り、多くの変更および改変を行ってもよいことが理解されるべきである。
【0186】
本発明を前記実施例に関して記載してきたが、改変および変更が本発明の精神および範囲内に包含されることが理解される。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般構造式 (I) で表される化学式を有する、ポリ(エステルアミド)(PEA)ポリマーを含む、生分解性ポリマー組成物:

式中、nは、約15〜約150の範囲であり;少なくとも1つの個々のn単位内のR1は、エポキシ-(C2-C12)アルキレンであり、一方その他のR1は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)ジケイ皮酸(dicinnamic acid)もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)ジケイ皮酸、下記式 (III) のα,ω-アルキレンジカルボキシラート、または治療用二価酸の飽和もしくは不飽和の残基より独立して選択され;一方、下記式 (III) におけるR5およびR6は、(C2-C12)アルキレンまたは(C2-C12)アルケニレンより独立して選択され;個々のn単位内のR3は、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より独立して選択され;かつR4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、下記構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、飽和もしくは不飽和の治療用ジオールの残基、およびそれらの組み合わせからなる群より独立して選択される;


または、下記構造式 (IV) で表される化学式を有する、PEAポリマーを含む、生分解性ポリマー組成物:

式中、nは、約15〜約150の範囲であり、mは、約0.1〜0.9の範囲であり;pは、約0.9〜0.1の範囲であり;少なくとも1つの個々のnもしくはmの単位内のR1は、エポキシ-(C2-C12)アルキレンであり、一方その他のR1は、(C2-C20)アルキレンおよび(C2-C20)アルケニレン、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)ジケイ皮酸、4'-(アルカンジオイルジオキシ)ジケイ皮酸、または上記構造式 (III) のα,ω-アルキレンジカルボキシラート、または治療用二価酸の飽和もしくは不飽和の残基より独立して選択され;
一方、上記式 (III) におけるR5およびR6は、(C2-C12)アルキレンまたは(C2-C12)アルケニレンより独立して選択され;それぞれのR2は、独立して水素、(C1-C12)アルキル、(C6-C10)アリール、または保護基であり;個々のmモノマー内のR3は、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より独立して選択され;R4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、上記構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、飽和もしくは不飽和の治療用ジオールの残基、およびそれらの組み合わせからなる群より独立して選択され;かつR7は、独立して(C2-C20)アルキルまたは(C2-C20)アルケニルである。
【請求項2】
少なくとも1つのR1が、(C2-C12)エポキシアルキレンである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
PEAがホモポリマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
PEAがコポリマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
エポキシを含有しない生体適合性ポリマーをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
エポキシを含有しない生体適合性ポリマーがPEAである、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
エポキシを含有しない生体適合性ポリマーがポリ(エステル尿素)またはポリ(エステルウレタン)である、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
nもしくはm単位の少なくとも1つにあるR1が、式 (III) のα,ω-アルキレンジカルボキシラートの残基であって、式 (III) におけるR5およびR6が、(C2-C12)アルキレンまたは(C2-C12)アルケニレンより独立して選択される残基より独立して選択されるか、あるいはnもしくはm単位の少なくとも1つにあるR1が、(C2-C20)アルキレンおよび(C2-C20)アルケニレン、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)ジケイ皮酸、4'-(アルカンジオイルジオキシ)ジケイ皮酸、または治療用二価酸の飽和もしくは不飽和の残基より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのR1が、治療用二価酸の飽和または不飽和の残基である、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
nまたはm単位のR3が、水素、CH2-CH(CH3)2、CH3、CH(CH3)2、CH(CH3)-CH2-CH3、CH2-C6H5、または(CH2)2SCH3より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
R3の全てが、水素、CH2-CH(CH3)2、CH3、CH(CH3)2、CH(CH3)-CH2-CH3、CH2-C6H5、-(CH2)3、または(CH2)2SCH3より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
生体酵素中で、約2週間の日数〜約6ヶ月の期間にわたり生分解する、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
PEAが不飽和であり、かつポリマーが約100℃〜約150℃の範囲での加熱に曝露されると架橋結合する、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
PEAが不飽和であり、かつポリマーが化学触媒を使用せずに光化学架橋結合する、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
光化学架橋結合が、UV光への曝露による架橋結合である、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
架橋結合した組成物が、生分解性埋め込み式医療機器の形態に加工される、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
医療機器が血管ステントである、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
ポリマーが、約15000ダルトン〜約600000ダルトンの範囲の分子量を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
ポリマー中に分散した、少なくとも1種の生物活性剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
ポリマー分子鎖当たり約5〜約150分子の生物活性剤を含む、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
生物活性剤が、生理的条件下で、約14日間〜約2年間より選択される時間にわたり組成物から放出される、請求項19記載の組成物。
【請求項22】
外科用機器が内部固定機器である、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
外科用機器が透析用シャントである、請求項21記載の組成物。
【請求項24】
組成物が生分解して、制御された速度で内部部位の周辺組織に生物活性剤を送達するように、組成物中に分散した生物活性剤をさらに含む請求項1記載の組成物を対象の内部部位に埋め込む段階
を含む、生物活性剤をそれを必要とする対象に送達するための方法。
【請求項25】
組成物が、外科用機器内に含有されるか、または少なくとも部分的に外科用機器をコーティングする、請求項24記載の方法。
【請求項26】
組成物が、約7日間〜約6ヶ月間以内に完全に生分解する、請求項24記載の方法。
【請求項27】
三次元ヒドロゲルを生産するために、光反応性多糖類およびオキシラン環に安定化置換基を含有するように修飾されている請求項1記載のPEAの誘導体を含む混合物を加熱する段階
を含む、生分解性ヒドロゲルを生産するための方法。
【請求項28】
加熱する段階の前に、混合物が基質上にキャストされて乾燥される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
加熱が約80℃〜約120℃である、請求項27記載の方法。
【請求項30】
安定化置換基が活性カルボナート基である、請求項27記載の方法。
【請求項31】
PEAが不飽和である、請求項27記載の方法。
【請求項32】
PEAが化合物PEA I.6である、請求項27記載の方法。
【請求項33】
ヒドロゲルに水性生物活性剤を注入する段階をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項34】
請求項27〜33のいずれか一項記載の方法により生産される、生分解性ヒドロゲル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−501647(P2010−501647A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524702(P2009−524702)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/018386
【国際公開番号】WO2008/021548
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(505323312)メディバス エルエルシー (12)
【Fターム(参考)】