説明

エポキシ系硬化性組成物及び電子部品の実装構造

【課題】 硬化時の空隙の発生が生じ難く、接合の信頼性を高めることを可能とするエポキシ系硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 エポキシ化合物と、結晶水を含む化合物であって、該結晶水が除去さる処理が施されている化合物とを含むエポキシ系硬化性組成物、並びに電子部品素子2と電子部品素子2が電気的に接続されている電極ランド5を表面に有する基板4とを備え、電子部品素子2が基板4上の電極ランド5に上記エポキシ系硬化性組成物を硬化することにより得られた硬化物6により接合されている電子部品1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体素子のような電子部品素子の接合に用いられるエポキシ系硬化性組成物及び電子部品素子の実装構造に関し、より詳細には、エポキシ系化合物の硬化反応を利用しており、信頼性に優れた接合を与えることを可能とするエポキシ系硬化性組成物及び電子部品素子の実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップでは、各種信頼性を高めるために、半導体チップがパッケージに収納されたり、パッケージ材に実装された構造などが用いられている。近年、小型化及び薄型化を果たすために、半導体チップをパッケージ化するに際し、フリップチップ実装法が広く用いられてきている。フリップチップ実装法では、半導体チップの回路形成面を下面とし、かつ該下面上にパッケージ側の電極ランドと電気的に接続するための金属バンプを下方に突出するように設けている。そして、下面側から半導体チップが基板上に実装され、かつ上記金属バンプが基板上の電極ランドに電気的に接続されている。また、最近では、素子の高集積化、高機能化、多ピン化、システム化、高速化及び低コスト化などに対応するために、CSP(Chip Size/Scale Package)と称されている様々な小型のパッケージが開発されている。このようなパッケージにおいても、実装効率、電気的特性及び多ピン化への対応性に優れているため、上記フリップチップ実装法が採用されてきている。
【0003】
フリップチップ実装法では、半導体チップの下面である回路形成面が十分に保護されないおそれがある。そのため、水分やイオン性不純物が侵入し易く、信頼性が低下するおそれがあった。そこで、従来、半導体チップの下面である回路形成面と基板との間の隙間に、アンダーフィル材として、エポキシ樹脂組成物を充填し、接合部の補強及び半導体チップの保護が図られている。この種の樹脂組成物を介在させる方法としては、種々の方法が存在する。一般には、液状のエポキシ樹脂組成物を、半導体チップ周辺に滴下し、毛細管現象により半導体チップの下面と基板との間の隙間に含浸させる方法が採用されている。
【0004】
しかしながら、この方法では生産性が非常に悪く、歩留まりが悪かった。そこで、下記の特許文献1には、上記アンダーフィル材を基板上に先に塗布し、しかる後、半導体チップを上方から圧接し、金属バンプによりアンダーフィル材を押し退けるとともに、金属バンプを基板上の電極に接合する方法が採用されている。この方法は、NCF工法(Non−Condactive Film工法)と称されている。この方法では、圧接時に金属バンプと、基板上の電極とが接触されて、導通が図られる。そして、圧接に際して熱プレスを利用することにより、熱硬化性のエポキシ樹脂組成物が硬化されている。
【0005】
また、半導体分野では、配線の狭ピッチ化が進んできている。そのため、配線に接触する上記アンダーフィル材のような接着剤では、基板などの膨張を抑制するために低い温度で速硬化され得ることが求められている。
【0006】
ところが、速硬化を果たすために、アンダーフィル材を低温から高温に一気に加熱すると、上記NCF工法では、加熱によりアンダーフィル材中に空隙が生じ易くなるという問題があった。
【0007】
これを、図2及び図3を参照して説明する。NCF工法では、図2に示すように、半導体チップ51が、基板52に、アンダーフィル材としての硬化性シート53を介して圧接される。半導体チップ51の下面には、複数の金属バンプ54が配置されている。また、
基板52の上面には、複数の電極ランド55が形成されている。シート53は、加熱により硬化する硬化性樹脂組成物からなる。
【0008】
NCF工法では、上記半導体チップ51をフェイスダウン方式で、基板52上に熱プレスにより圧接する。この際に、金属バンプ54により、シート53の一部が押し退けられ、図3に示すように、金属バンプ54が電極ランド55に接触し、導通が図られる。そして、熱プレスに際しての熱によりシート53が硬化する。従って、接合部が補強される。
【0009】
しかしながら、速硬化を果たすために昇温速度を高めた場合には、シート53が一気に加熱され、図3に示す空隙Aが生じ易くなるという問題があった。これは、アンダーフィル材としてのシート53が硬化時に高温にさらされるため、アンダーフィル材中または基板52中の揮発分により発泡することにより引き起こされる現象である。
【0010】
このような空隙Aが生じると、金属バンプ54と電極ランド55との導通が不十分となるおそれがあった。また、初期状態では導通が確保されていたとしても、耐熱衝撃試験や信頼性試験などを行った場合に空隙Aが膨張し、導通不良となるおそれがあった。さらに、導通不良が生じない場合であっても、上記空隙Aの存在により、半導体チップ51と電極ランド55との接合強度を補強する効果が十分に得られず、従って耐機械的衝撃性が低下するおそれもあった。
【0011】
なお、上記シート53を得るための樹脂組成物を予め真空加熱乾燥すれば、含まれている揮発分をある程度除去することはできる。しかしながら、シート53は、加熱により硬化されるものであるため、硬化剤を含んでいる。従って、シート53を使用前に真空加熱乾燥した場合には、硬化が進行してしまう。よって、上記硬化剤を添加する前に真空加熱乾燥しなければならず、そのような方法では、揮発分を確実に除去することはできなかった。
【特許文献1】WO2004/060996A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、硬化時の空隙の発生が生じ難く、従って、接合の信頼性を高めることを可能とするエポキシ系硬化性組成物、並びに該エポキシ系硬化性組成物を用いて得られており、該硬化性組成物からなる硬化物による接合の信頼性に優れた電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るエポキシ系硬化性組成物は、エポキシ化合物と、結晶水を含む化合物であって、該結晶水が除去される処理が施されている化合物とを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るエポキシ系硬化性組成物では、好ましくは、前記結晶水が除去される処理が施された化合物が、エポキシ化合物の硬化剤である。硬化剤としては、より好ましくは、イソシアヌル酸変性されたイミダゾールが用いられる。
【0015】
本発明に係るエポキシ系硬化性組成物のある特定の局面では、前記結晶水が除去される処理が施された化合物の配合割合が、前記エポキシ化合物100重量部に対し、0.1〜20重量部の範囲とされている。
【0016】
本発明に係るエポキシ系硬化性組成物では、好ましくは、導電性粉末をさらに含有されている。
【0017】
本発明に係る電子部品は、電子部品素子と、前記電子部品素子が電気的に接続される電極ランドを表面に有する基板とを備え、前記電子部品素子が、前記基板上の電極ランドに本発明に従って構成されたエポキシ系硬化性組成物を硬化することにより得られた硬化物により接合されている。
【0018】
本発明に係る電子部品のある特定の局面では、前記電子部品素子が金属バンプを有し、該金属バンプが前記硬化物により前記基板上の前記電極ランドに接合されている。
【0019】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0020】
(エポキシ化合物)
本発明のエポキシ系硬化性組成物において硬化成分として用いられるエポキシ系化合物とは、少なくとも1個のオキシラン環を有する有機化合物をいうものとする。上記エポキシ化合物としては、特に限定される訳ではないが、例えば、下記の様々なエポキシ樹脂及びエポキシ含有化合物が挙げられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等のような芳香族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、並びにこれらの水添化物や臭素化物;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、商品名「EHPE−3150」(軟化温度71℃、ダイセル化学工業社製)等のような脂環族エポキシ樹脂;1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数が2〜9個(好ましくは2〜4個)のアルキレン基を含むポリオキシアルキレングリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテル等のような脂肪族エポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のようなグリシジルエステル型エポキシ樹脂並びにこれらの水添化物;トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、m−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体等のようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂並びにこれらの水添化物;グリシジル(メタ)アクリレートと、エチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性モノマーとの共重合体;エポキシ化ポリブタジエン等のような、共役ジエン化合物を主体とする重合体またはその部分水添物の重合体の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの;エポキシ化SBS等のような、「ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック」と「共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックまたはその部分水添物の重合体ブロック」とを同一分子内にもつブロック共重合体の、共役ジエン化合物の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの;上記各種エポキシ基含有化合物にNBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴム等のゴム成分を含有させたゴム変成エポキシ樹脂;等、従来公知の各種エポキシ基含有化合物が挙げられる。
【0021】
上記エポキシ化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
上記エポキシ化合物の中でも、少なくとも、エポキシ基を多量に含むポリマーを用いることにより、本発明の硬化性組成物を硬化させることにより得られた硬化物における耐熱性を飛躍的に高めることができ、望ましい。このようなエポキシ基を多量に含むポリマーとしては特に限定されないが、エポキシ基含有アクリル系ポリマーが好適に用いられる。
【0023】
エポキシ基含有ポリマーの重量平均分子量は、5000〜200000の範囲が好ましく、より好ましくは10000〜100000の範囲である。重量平均分子量が5000未満では、耐熱性を向上させる効果が得られないことがあり、200000を超えると貯蔵安定性が低下することがある。
【0024】
上記エポキシ基含有ポリマーを用いる場合、上記エポキシ化合物全体を100重量部とした場合、100重量部中、1重量部〜10重量部の範囲で用いることが望ましい。1重量部よりも少ない場合には、耐熱性向上効果がさほど得られないことがあり、10重量部を超えると、硬化性組成物からなるペーストを作製した際の粘度が高くなりすぎ、また糸引などの不具合が生じ易くなるおそれがある。上記エポキシ基含有ポリマーのエポキシ当量としては200〜1000の範囲が好ましい。200〜1000の範囲のエポキシ当量のエポキシ基含有ポリマーは、他のエポキシ系モノマーと相溶性に優れ、従って得られる硬化物の耐熱性を高めることができ、望ましい。
【0025】
(結晶水を含む化合物であって、該結晶水が除去される処理が施されている化合物)
本発明においては、結晶水を含む化合物であって、該結晶水が除去される処理が施されている化合物がエポキシ系硬化性組成物に含有されている。このような化合物は有機物であってもよく、無機物であってもよく、特に限定されるものではない。好ましくは、通常のエポキシ樹脂系硬化物を得るための硬化性組成物に含まれる材料の一部が、上記結晶水を含む化合物であって、該結晶水が除去される処理が施されている化合物であることが望ましい。従って、本発明においては、好ましくは、結晶水を含む化合物であって、該結晶水が除去される処理が施されている化合物として、上記エポキシ化合物の硬化剤が用いられる。すなわち、エポキシ化合物の硬化剤として、結晶水を含む化合物であって、該結晶水が除去される処理が施されている化合物を用いることが望ましい。エポキシ化合物の硬化剤は、硬化のための反応基として多くの官能基を有しているため、一般的には高い極性を有する。従って、エポキシ化合物に対して、上記硬化剤は相溶性をさほど有せず、極性の高い溶媒である水に溶けることが多い。従って、上記硬化剤は、水分を吸着し易い性質を有する。
【0026】
また、上記硬化剤の精製に際しては、再結晶法が広く用いられている。再結晶法を採用している場合には、溶媒として、極性の高い水が良溶媒として使用されることが多い。この場合、硬化剤が複雑な構造を有するため、結晶中に水分を含んだ形でパッキングされた構造をとることがある。例えば、市販の製品として、2,4−ジアミノ−6−〔2′−メチルイミダゾリル−(1)′〕−エチル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物の二水和物、または2−メチルイソシアヌル酸付加物の二水和物などのイソシアヌル酸変性されたイミダゾール系硬化剤の水和物が挙げられる。このような水亜物は、上記のように結晶水を含むが、水の沸点以上に加熱された際に、結晶水すなわち、水和水が徐々に抜け、乾燥されることになる。
【0027】
本発明では、このように、上記水和物すなわち結晶水を含むエポキシ化合物の硬化剤を、加熱・乾燥する。この乾燥の程度は、水和水を完全に除去するように行うことが望まし。従って、乾燥の温度及び時間については、水和水を除去し得る程度に、適宜選択すれば
よい。
【0028】
一端乾燥された上記硬化剤は、大気中に放置されたとしても、水分を吸湿しないが、水に浸漬されると、すぐに吸水し、粘土状となるため、高い吸水性を有する。従って、大気中に放置することは可能であるが、好ましくは、乾燥後に防湿包剤中で保管しておくことが望ましい。
【0029】
また、上記エポキシ化合物の硬化剤が、結晶水を含む化合物であって、上記のように該結晶水が除去される処理が施されている場合、その配合割合は、エポキシ化合物100重量部に対し、0.1〜20重量部であることが望ましい。0.1重量部未満では、速硬化させた場合の硬化物中の発生を抑制する効果が十分に得られないことがあり、20重量部を超えると、硬化物の物性が低下するおそれがある。より好ましくは、1〜10重量部の範囲とされる。
【0030】
また、本発明においては、上記結晶水を含む化合物であって、該結晶水が除去される処理が施されている化合物としては、上記エポキシ化合物の硬化剤に限定されず、硬化促進剤であってもよく、さらに通常のエポキシ系硬化性組成物に含まれていない成分が、結晶水を含む化合物であって、該結晶水が除去される処理が施されている化合物であってもよい。また、この化合物は、前述したように、無機化合物であってもよく、例えば、FeSO4・7H2O、BaCl22O、CaO2・8H2O、などの結晶水を有する無機化合物が用いられてもよい。このような無機化合物を用いる場合においても、上記エポキシ化合物100重量部に対し、結晶水が除去される処理が施されている化合物の配合割合は合計で0.1〜20重量部の割合で配合されていることが望ましい。
【0031】
(導電性粉末)
本発明に係る硬化性組成物には、必要に応じて、金属粉末などの導電性粉末がさらに含有されていてもよい。このような導電性粉末としては、Ag、Cu、Al、Auなどの金属粉末、あるいは合成樹脂粒子の表面に導電膜が形成された導電性粒子などを挙げることができ、特に限定されない。導電性粉末を含有させることにより、本発明に係る硬化性組成物の硬化により得られた硬化物に導電性を付与することができる。従って、上記硬化物を用いて、部材間の接合だけでなく、電気的接続も果たすことが可能となる。
【0032】
導電性粉末を含有させる場合には、上記硬化性組成物において、エポキシ化合物100重量部に対して導電性粉末は0.1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部の範囲で配合することが望ましい。0.1重量部未満では、十分な導電性が得られないことがあり、20重量部を超えると、硬化物の物性が低下するおそれがある。
【0033】
(その他の添加剤)
本発明に係るエポキシ系硬化性組成物には、本発明の課題を達成する上で阻害しない範囲で、必要に応じて他の添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、脂肪族水酸基含有化合物、熱可塑性樹脂、密着性向上剤、充填材、補強材、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、揺変剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、脱水剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、防黴剤などが挙げられる。これらの添加剤は1種のみがもちいられてもよく、2種以上が添加されてもよい。
【0034】
また、本発明に係るエポキシ系硬化性組成物には、他の樹脂成分として各種熱可塑性樹脂の1種または2種以上が配合されてもよい。
【0035】
(製造方法)
本発明に係るエポキシ系硬化性組成物の製造方法は特に限定されず、上記各種成分を均
一に分散・混合することにより得ることができる。この分散・混合方法は特に限定されないが、例えば、三本ロール、らいかい機、プラネタリーミキサーなどによる分散・混練方法を挙げることができる。混合に際し、必要に応じて減圧してもよい。また、遊星式の攪拌機を用いることにより、各成分を混合することが望ましく、それによって金属物の混入を避けつつ、各成分を均一にかつ容易に混合することができる。
【0036】
(電子部品)
本発明に係る電子部品は、本発明に従って構成された上記エポキシ系硬化性組成物を硬化することにより得られた硬化物により、電子部品素子と、電子部品素子が電気的に接続される電極ランドを表面に有する基板の電極ランドに接合されていることを特徴とする。このような構造であれば特に限定されないが、好ましくは、電子部品素子が金属バンプを有し、該金属バンプが上記硬化物により基板上の電極ランドに接合されている構造を挙げることができる。このような構造は、前述したフリップチップ実装法で電子部品素子が基板に実装されている構造であり、例えば半導体チップのパッケージ基板の搭載などに広く用いられている。
【0037】
図1は、このような本発明の電子部品の一例を模式的に示す正面断面図である。電子部品1では、電子部品素子2は、下面に複数の金属バンプ3を有する。また、基板4の上面には、複数の電極ランド5が形成されている。ここでは、本発明に従って構成されたエポキシ系硬化性組成物を硬化させることにより得られたシート状硬化物6により、金属バンプ3と電極ランド5とが接合され、かつ電気的に接続されている。
【0038】
なお、接合方法は特に限定されないが、半硬化状態のシート状のエポキシ系硬化性組成物を基板4上に配置し、上方から電子部品素子2の金属バンプ3が形成されている側を下面として圧接させ、該圧接に際し加熱すればよい。圧接に際し、金属バンプ3によりシート状のエポキシ系硬化性組成物が押し退けられ、金属バンプ3が電極ランド5に搭設される。そして、加熱によりシート状の硬化性組成物が硬化し、シート状硬化物6が形成される。もっとも、本発明においては、上記金属バンプ3を有しない電子部品素子を基板上の電極ランドに接合してなる電子部品にも適応することができる。
【0039】
また、電子部品素子についても、半導体チップの他様々な能動部品もしくは受動部品を用いることができる。さらに、基板についても、様々な電子部品素子が実装される回路基板に限らず、パッケージ材などであってもよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係るエポキシ系硬化性組成物では、エポキシ化合物と、結晶水を含む化合物であって、該結晶水が除去される処理が施されている化合物とを含むため、上記化合物は、当初から結晶水を含まない化合物を用いた場合に比べて、加熱硬化に際しての空隙の発生を効果的に抑制することができる。よって、例えば、半導体チップなどの電子部品素子を基板に接合する用途に用いた場合、接合の信頼性を高めることができる。
【0041】
結晶水が除去される処理が施された化合物が、エポキシ化合物の硬化剤である場合には、通常のエポキシ系硬化性組成物に含有される成分を用いて、上記ボイドの発生を抑制することができる。
【0042】
硬化剤が、イソシアヌル酸変性されたイミダゾールである場合には、酸塩基との共存塩とできることから、高い貯蔵安定性と硬化性を両立することができる。
【0043】
結晶水が除去される処理が施された化合物の配合割合が、エポキシ化合物100重量部に対し、0.1〜20重量部の範囲とされている場合には、上記空隙の発生をより確実に
防止することができるとともに物性の良好な接合部分を構成することが可能となる。
【0044】
導電性粉末がさらに含有されている場合には、本発明に係るエポキシ系硬化性組成物の硬化物により電気的接続をも果たすことが可能となる。
【0045】
本発明の電子部品では、電子部品素子と基板上の電極ランドとが、本発明のエポキシ系硬化性組成物の硬化物により接合されているため、接合の信頼性に優れた電子部品を提供することができる。
【0046】
電子部品素子が金属バンプを有し、該金属バンプが硬化物により基板上の電極ランドに接合されている場合には、本発明に従ってフリップチップ実装法により電子部品素子を基板に接合するに際し、加熱硬化速度を高めたとしても、ボイドの発生を効果的に抑制することができ、しかも信頼性に優れた接合部分を構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0048】
(使用した材料)
以下のエポキシ化合物と、その他の化合物とを用意した。
【0049】
(エポキシ化合物)
エポキシ含有アクリル系ポリマー(日本油脂社製、品番:CP−30、重量平均分子量10000、エポキシ当量500)
ナフタレン型エポキシ樹脂(大日本インキ社製、品番:HP−4032D)
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ社製、品番:HP−7200)
【0050】
(他の化合物)
トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸(JER社製、品番:YH−307)
2,4−ジアミノ−6−〔2′−メチルイミダゾリル−(1)′〕−エチル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物(四国化成社製、品番:2MAOK−PW )
イソシアヌル酸付加2−メチルイミダゾール(四国化成社製、:2MZ−OK)
2,4−ジアミノ−6−〔2′−メチルイミダゾリル−(1)′〕−エチル−S−トリアジン(四国化成社製、品番:2MZ−A)
2,4−ジアミノ−6−〔2′−ウンデシルイミダゾリル−(1)′〕−エチル−S−トリアジン(四国化成社製、品番:C11Z−A)
1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成社製、品番:2E4MZ−CN )
なお、上記の内、イミダゾールシランカップリング剤(日鉱マテリアルズ社製、品番SP−1000)、2,4−ジアミノ−6−〔2′−メチルイミダゾリル−(1)′〕−エチル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物(四国化成社製、品番:2MAOK−PW)及びイソシアヌル酸付加2−メチルイミダゾール(四国化成社製、品番:2MZ−OK)のみが再結晶の際に使用した水が結晶中に二水和物として取り込まれている。
【0051】
2MAOK(分子量384.4、2水分子量36、含水率9.4%)
2MZOK(分子量587.5、2水分子量36、含水率6.1%)
上記2MAOK及び2MZOKの2種の化合物については、予め150℃のオーブン中で重量減少がなくるまで乾燥し、しかる後120℃付近での重量減少がなくなったことを、セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6000シリーズの示差熱熱重量測定装置により確認し、アルミ袋中で保管した。このようにして乾燥された2MAOKの乾燥品
及び2MZOKの乾燥品における含水率は、0である。
【0052】
また、上記150℃のオーブン中における乾燥時間を調整し、最終的に含水率が0.1重量%である2MAOK及び含水率が1.0重量%である2MAOKを別途用意した。なお、含水率は赤外水分計により評価した。
【0053】
(実施例1)
下記の表1に示すように、エポキシ基含有アクリルポリマー(CP−30)4重量部と、ナフタレン型エポキシ樹脂(HP−4032D)76重量部と、ジシクロペンタジンエン型エポキシ樹脂(HP−7200)20重量部と、エポキシ硬化剤としてトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸(YH−307)60重量部と、上記のようにして乾燥された2,4−ジアミノ−6−〔2′−メチルイミダゾリル−(1)′〕−エチル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物(2MAOK−PW)8重量部と、接着付与剤としてのイミダゾールシランカップリング剤(SP−1000)2重量部とを200mlの容器に計量し、遊星式攪拌機を用いて均一に攪拌し、ペーストを得た。このペーストを開口径20μmのポリエステルメッシュを用いて加圧濾過し、さらに10mlのシリンジ中に充填し、実施例1のエポキシ系硬化性組成物ペーストを得た。
【0054】
(実施例2〜4及び比較例1〜5)
使用した材料の組成を下記の表1に示すように変更したことを除いては、実施例1と同様にして、硬化性組成物ペーストを用意した。
【0055】
(評価)
上記のようにして用意した硬化性組成物ペーストについて、以下の要領で(1)DTA測定、(2)貯蔵安定性及び(3)空隙量定量評価を行った。
【0056】
(1)DTA測定
得られた硬化性組成物について、セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6000を用い、発熱ピークを測定した。アルミパン中に約10mgの硬化性組成物ペーストを量りとり、10℃/分の昇温速度で昇温し、200℃における重量減少率を測定し、それによって発熱ピーク温度を測定した。
【0057】
(2)貯蔵安定性
作製された硬化性組成物ペーストを作製直後に、東機産業社製、E型粘度計を用い、ローター回転数1rpmで25℃の温度で粘度を測定した。しかる後、5℃に保った冷蔵庫にペーストを保管し、一週間保管した後に、再度25℃の温度に1時間維持し、同様にして粘度を測定した。初期粘度に対する保管後の粘度の上昇率を求めた。結果を下記の表1に示す。なお、表1の評価記号の意味は以下の通りである。
【0058】
〇…粘度変化率が2倍未満
△…粘度変化率が2倍以上10倍以下
×…ゲル化または測定不能
【0059】
(3)空隙の定量
18μmの厚みの銅箔上に、ニッケルが5μmの厚みのメッキされており、さらにその上に金が0.3μmの厚みにメッキされた構造を有する配線が形成されている20mm×20mm×1.0mm厚のガラス−エポキシ系FR−4基板上に、硬化性組成物ペーストをディスペンサーを用いて吐出した。
【0060】
次に、硬化性組成物ペーストを介して10mm×10mmの平面形状を有し、下面に直
径100μm、突出高さが約50μmであるAuからなるスタッドパンプが周縁部分に172個配置されているICチップを、上記基板上に、78N/cm2の荷重を加えつつ、
熱プレスした。熱プレスは、硬化性組成物の実測温度が190℃となるようにし、30秒間プレスを行うことにより行った。しかる後、125℃で1時間養生し、導通接合体を作製した。なお、上記実測温度は、熱電対を硬化性組成物中に挿入することにより測定した。
【0061】
得られた導通接合体について、超音波剥離探傷機(日立建機ファインテック社製、miscope)にて、ICチップと硬化物界面における空隙の面積を求め、全界面の面積に対する空隙面積の割合を求めた。結果を下記の表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1から明らかなように、乾燥していない硬化促進剤を用いた比較例1〜4では、空隙がかなりの割合で発生したのに対し、実施例1〜3では、乾燥された硬化促進剤を用いているため、空隙の発生が非常に少なかった。
【0064】
また、硬化促進剤としての2MAOKの含水率が0.1重量%である実施例4及び1.0重量%である実施例4では、空隙の発生が僅かに見られたが、比較例1〜4に比べて、空隙の発生割合は非常に少なかった。
【0065】
また、含水率が1.0重量%である2MAOKを用いた比較例5では、比較例1〜4と同様に空隙かかなりの割合で発生していた。
【0066】
さらに、貯蔵安定性についても、比較例2〜4では保管により粘度の変化が認められたのに対し、実施例1〜3の硬化性組成物では、上記保管による変化が少なかった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明のエポキシ系硬化性組成物の硬化物により電子部品素子が基板に接合されている電子部品の一例を示す正面断面図。
【図2】従来の電子部品の製造方法において、エポキシ系硬化性組成物からなるシートを介してフリップチップ実装法により電子部品素子を基板に接合する工程を示す正面断面図。
【図3】図2に示したフリップチップ実装法において接合後に硬化物中に空隙が生じている状態を説明するための部分切欠拡大断面図。
【符号の説明】
【0068】
1…電子部品
2…電子部品素子
3…金属バンプ
4…基板
5…電極ランド
6…シート状硬化物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物と、結晶水を含む化合物であって、該結晶水が除去される処理が施されている化合物とを含むことを特徴とする、エポキシ系硬化性組成物。
【請求項2】
前記結晶水が除去される処理が施された化合物が、エポキシ化合物の硬化剤であることを特徴とする、請求項1に記載のエポキシ系硬化性組成物。
【請求項3】
前記硬化剤が、イソシアヌル酸変性されたイミダゾールである、請求項2に記載のエポキシ系硬化性組成物。
【請求項4】
前記結晶水が除去される処理が施された化合物の配合割合が、前記エポキシ化合物100重量部に対し、0.1〜20重量部の範囲とされていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ系硬化性組成物。
【請求項5】
導電性粉末をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ系硬化性組成物。
【請求項6】
電子部品素子と、前記電子部品素子が電気的に接続される電極ランドを表面に有する基板とを備え、前記電子部品素子が、前記基板上の電極ランドに請求項1〜5のいずれか1項に記載のエポキシ系硬化性組成物を硬化することにより得られた硬化物により接合されていることを特徴とする、電子部品。
【請求項7】
前記電子部品素子が金属バンプを有し、該金属バンプが前記硬化物により前記基板上の前記電極ランドに接合されていることを特徴とする、電子部品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−160952(P2006−160952A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357197(P2004−357197)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】