説明

エマルション組成物、該エマルション組成物を含む食品及び化粧品

【課題】乳化粒子の粒子径が小さく乳化安定性に優れたエマルション組成物を提供する。
【解決手段】リン脂質と油性成分と界面活性剤とを含有すると共に食品又は化粧品に用いられるエマルション組成物において、前記界面活性剤の含有量が、前記油性成分の含有量に対して0.5倍量を超え2倍量以下であり、且つ、前記リン脂質の含有量に対して5倍量を超えるものであって、エマルション組成物に対して2〜15質量%であることを特徴とする食品又は化粧品に用いられるエマルション組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルション組成物、それを含む食品及び化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水性飲料、水性食品ならびに水性化粧品に油性成分を添加することは行われてきた。しかし、油性成分は水に対して不溶性または難溶性のため、乳化等の手段を用いて、油性成分をいわゆるエマルションとして水性媒体中に分散することが一般的であった。エマルションは、その粒径に依存して光を散乱するため、粒子径が大きい場合は、エマルションおよびそれを添加した食品や化粧品に濁りを生じ、外観上好ましくない場合が有り、光散乱が非常に小さくなるまでエマルションの粒径を微細化する事が望まれていた。
【0003】
また、エマルションは一般に準安定状態であり、保存中に粒径が大きくなったり、また長期保存をすると水相と油相が分離したりすることも大きな問題であった。飲料における油滴凝集物の器壁付着やネックリングは、こうしたエマルション中の油滴分離現象の一つである。
【0004】
上記の透明性及び経時安定性の改善について、レシチンのごとき両親媒性物質と界面活性剤とを水中で均一に分散させた後に乳化する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、上記の透明性及び経時安定性の改善について、45℃以下で固体の糖エステル又はエーテルである界面活性剤、分子量400を超える少なくとも一の油を用い、界面活性剤の量に対する油相の量の重量比が2〜10の範囲にあるナノエマルションが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、レシチンと脂質との比率及びその濃度、並びに含有するポリオール溶液の濃度が規定されたエマルション様水溶性濃縮物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、上記特許文献の技術でも、エマルション組成物の乳化粒子の粒子径及び乳化安定性については十分満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−78432号公報
【特許文献2】特開2000−178130号公報
【特許文献3】特表2006−513172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、乳化粒子の粒子径が小さく、乳化安定性に優れた、エマルション組成物を提供することを目的とする。
更に本発明は、乳化粒子の粒子径が小さく、乳化安定性に優れた前記エマルション組成物を含む食品及び化粧品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記実情に鑑み本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の手段により達成されるものである。
【0010】
<1>リン脂質と油性成分と界面活性剤とを含有すると共に食品又は化粧品に用いられるエマルション組成物において、前記界面活性剤の含有量が、前記油性成分の含有量に対して0.5倍量を超え2倍量以下であり、且つ、前記リン脂質の含有量に対して5倍量を超えるものであって、エマルション組成物に対して2〜15質量%であることを特徴とする食品又は化粧品に用いられるエマルション組成物。
【0011】
<2>前記界面活性剤の含有量が、前記リン脂質の含有量に対して5倍量を超え50倍量以下であることを特徴とする上記<1>に記載のエマルション組成物。
<3>前記油性成分としてカロチノイド類を含有することを特徴とする上記<1>又は<2>に記載のエマルション組成物。
【0012】
<4>前記カロチノイド類がアスタキサンチン類であることを特徴とする上記<3>に記載のエマルション組成物。
<5>前記界面活性剤がHLB10以上の非イオン性界面活性剤であることを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【0013】
<6>前記界面活性剤がショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選択される1種以上であることを特徴とする上記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【0014】
<7>前記油性成分の含有量が組成物の全質量に対して0.1〜50質量%であり、かつリン脂質の含有量が組成物の全質量に対して0.1〜10質量%であることを特徴とする上記<1>〜<6>のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【0015】
>前記油性成分が脂溶性のラジカル捕捉剤を含有することを特徴とする上記<1>〜<>のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
>前記ラジカル捕捉剤がビタミンE類を含むことを特徴とする上記<>に記載のエマルション組成物。
10>前記ラジカル捕捉剤がトコフェロール及びその酢酸エステル誘導体からなる群より選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする上記<>に記載のエマルション組成物。
11>前記ラジカル捕捉剤がトコトリエノール及びその酢酸エステル誘導体からなる群より選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする上記<>に記載のエマルション組成物。
【0016】
12>前記エマルションの粒子径が200nm以下であることを特徴とする上記<1>〜<11>のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【0017】
13>上記<1>〜<12>のいずれか1項に記載のエマルション組成物を含有してなる食品。
14> 上記<1>〜<12>のいずれか1項に記載のエマルション組成物を含有してなる化粧品。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、乳化粒子の粒子径が小さく、乳化安定性に優れたエマルション組成物と、これを含む食品及び化粧品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のエマルション組成物は、リン脂質と油性成分と界面活性剤とを含有するエマルション組成物において、前記界面活性剤の含有量が前記油性成分の含有量に対して0.5倍量を超え、且つ、前記リン脂質の含有量に対して5倍量を超えることを特徴とする。
このようにエマルション組成物における界面活性剤の量を、油性成分の含有量及びリン脂質の含有量に基づく上記の範囲に調整することによって、乳化粒子の粒子径を小さくすると共に乳化安定性を良好なものにすることができる。
更に好ましくは、前記界面活性剤の含有量が、前記油性成分の含有量に対して0.5倍量を超え2倍量以下であり、且つ、前記リン脂質の含有量に対して5倍量を超え50倍量以下であることが乳化粒子の粒子径をより小さく、乳化安定性により優れる点で好ましい。
本発明のエマルション組成物は水中油型のエマルションであり、油相及び水相に含まれる各構成成分について以下に、説明する。
【0020】
[リン脂質]
本発明のエマルション組成物が含有するリン脂質とは、複合脂質の内、脂肪酸、アルコール、燐酸、窒素化合物からなるエステルで、リン酸エステルおよび脂肪酸エステルを有する一群であり、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質をいう。以下、詳細に説明する。
【0021】
本発明で用いることができるリン脂質であるグリセロリン脂質としては、例えば、ホスファチジン酸、ビスホスアチジン酸、レシチン(ホスファチジルコリン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセリン、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等が挙げられ、これらを含む大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物由来のものや、卵黄、牛等の動物由来のもの及び大腸菌等の微生物等由来の各種レシチンを挙げることができる。
本発明で用いることができるリン脂質であるスフィンゴリン脂質としては、例えば、スフィンゴミエリン等を挙げることができる。
【0022】
また、本発明においては、グリセロリン脂質として、酵素分解したグリセロリン脂質を使用することができる。
例えば、前記レシチンを酵素分解したリゾレシチン(酵素分解レシチン)は、グリセロリン脂質の1位または2位に結合した脂肪酸(アシル基)のいずれか一方が失われたものである。脂肪酸基を1本にすることにより、レシチンの親水性を改善し、水に対する乳化性、分散性を向上させることができる。
リゾレシチンは、酸、又はアルカリ触媒によるレシチンの加水分解により得られるが、ホスホリパーゼA、又はAを用いたレシチンの加水分解により得ることもできる。
このようなリゾレシチンに代表されるリゾ化合物を化合物名で示すと、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルグリセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルメチルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン(リゾレシチン)、リゾホスファチジルセリン等が挙げられる。
【0023】
また更に、上記のレシチンに代表されるグリセロリン脂質は、水素添加、又はヒドロキシル化されたものも、本発明において用いることができる。
前記水素添加は、例えば、レシチンを触媒の存在下に水素と反応させることにより行われ、脂肪酸部分の不飽和結合が水素添加される。水素添加により、レシチンの酸化安定性が向上する。
また、前記ヒドロキシル化は、レシチンを高濃度の過酸化水素と酢酸、酒石酸、酪酸などの有機酸と共に加熱することにより、脂肪酸部分の不飽和結合が、ヒドロキシル化される。ヒドロキシル化により、レシチンの親水性が改良される。
これらの水素添加、ヒドロキシル化されたレシチンは、化粧品用途への応用が特に好ましい。
【0024】
上記の中でも、乳化安定性の点で、グリセロリン脂質であるレシチン、リゾレシチン、が好ましく、更に、レシチンが好ましい。
【0025】
前記レシチンは、分子内に親水基と疎水基を有していることから、従来より、食品、医薬品、化粧品分野で、広く乳化剤として使用されている。
【0026】
前記レシチンの純度60質量%以上のものが産業的にはレシチンとして利用されているが、本発明においては、一般に「高純度レシチン」と称されるレシチン純度80質量%以上のものが好ましく、より好ましくは90質量%以上のものである。
このレシチン純度(質量%)は、レシチンがトルエンに溶解しやすくアセトンに溶解しない性質を利用して、トルエン不溶物とアセトン可溶物の重量を差し引くことにより求められる。
高純度レシチンは、リゾレシチンに比べて親油性が高く、そのためレシチンと油性成分との相溶性が高くなり、乳化安定性を向上させていると考えられる。
【0027】
本発明で用いるリン脂質は、単独又は複数種の混合物の形態で用いることが出来る。
【0028】
本発明のエマルション組成物において、リン脂質の含有量は組成物全体の0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%、更に好ましくは0.5〜2質量%である。
前記リン脂質の含有量を0.1質量%以上とすることにより、エマルション組成物の乳化安定性が良好となる傾向がある。また、前記含有量を10質量%以下とすることにより、過剰なリン脂質が油性成分から離れて水中にリン脂質分散体を形成することなく、エマルション組成物の乳化安定性の点から好ましい。
【0029】
[油性成分]
次に、本発明のエマルション組成物に使用される、油性成分について説明する。
本発明で使用することの出来る油性成分としては、水性媒体に溶解せず、油性媒体に溶解する成分であれば、特に限定は無いが、カロチノイド類、トコフェロール等の油溶性ビタミンを含むラジカル捕捉剤、またココナッツ油等の油脂類が好ましく用いられる。
【0030】
(カロチノイド類)
前記油性成分としては、天然色素を含むカロチノイド類を好ましく用いることができる。
本発明のエマルション組成物におけるカロチノイド類は、黄色から赤のテルペノイド類の色素であり、植物類、藻類、及びバクテリアのものを含む。
また、天然由来のものに限定されず、常法に従って得られるものであればいずれのものも、本発明におけるカロチノイドに含まれる。例えば、後述のカロチノイド類のカロチン類の多くは合成によっても製造されており、市販のβ−カロチンの多くは合成により製造されている。
【0031】
カロチノイド類としては、炭化水素類(カロチン類)及びそれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)が挙げられる。
カロチノイド類としては、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロチン、β−カロチン、”カロチン”(α−及びβ−カロチン類の混合物)、γ−カロチン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオレリトリン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類が挙げられる。
【0032】
カロチノイド類の多くは、シス及びトランス異性体の形で天然に存在するが、合成物はしばしばラセミ混合物である。
カロチノイド類は一般に植物素材から抽出することができる。これらのカロチノイド類は種々の機能を有しており、例えば、マリーゴールドの花弁から抽出するルテインは家禽の餌の原料として広く使用され、家禽の皮フ及び脂肪並びに家禽が産む卵に色を付ける機能がある。
【0033】
本発明において、特に好ましく用いられるカロチノイド類としては、酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果などを有し、黄色から赤色の範囲の着色料として知られるアスタキサンチン及び/又はアスタキサンキチンのエステル等の誘導体(以下、「アスタキサンチン類」と総称する。)である。
【0034】
アスタキサンチンは、476nm(エタノール)、468nm(ヘキサン)に吸収極大を持つ赤色の色素でカロチノイドの一種キサントフィルに属している(Davies, B.H. : In “Chemistry and Biochemistry of Plant Pigments”, T. W. Goodwin ed., 2nd ed., 38−165, Academic Press, NY, 1976.)。アスタキサンチンの化学構造は3,3’−dihydroxy−β,β−carotene−4,4’−dione (C4052、分子量596.82)である。
【0035】
アスタキサンチンは、分子の両端に存在する環構造の3(3’)−位の水酸基の立体配置により、3S,3S’−体、3S,3R’−体(meso−体)、3R,3R’−体の三種の異性体が存在する。また、さらに分子中央の共役二重結合のcis−、trans−の異性体も存在する。例えば全cis−、9−cis体と13−cis体などの如くである。
【0036】
前記3(3’)−位の水酸基は脂肪酸とエステルを形成することができる。オキアミから得られるアスタキサンチンは、脂肪酸二個結合したジエステル(Yamaguchi,K., Miki,W., Toriu, N., Kondo,Y., Murakami,M., Konosu,S., Satake,M., Fujita,T. : The composition of carotenoid pigments in the antarctic krill Euphausia superba, Bull. Jap. Sos. Sci. Fish., 1983, 49, p.1411−1415.)、H. pluvialisから得られるものは3S,3S’−体で、脂肪酸一個結合したモノエステル体が多く含まれている(Renstrom, B., Liaaen−Jensen, S. : Fatty acids of some esterified carotenols, Comp. Biochem. Physiol. B, Comp. Biochem., 1981, 69, p.625−627.)。
【0037】
また、Phaffia Rhodozymaより得られるアスタキサンチンは、3R,3R’−体(Andrewes, A.G., Starr, M.P. : (3R,3’R)−Asttaxanthin from the yeast Phaffa rhodozyma, Phytochem., 1976, 15, p.1009−1011.)であり、通常天然に見出される3S,3S’−体と反対の構造を持っている。また、これは脂肪酸とエステル形成していないフリー体で存在している(Andrewes, A.G., Phaffia, H.J., Starr, M.P. : Carotenids of Phaffia rhodozyma, a red pigmented fermenting yeast, Phytochem., 1976, 15, p.1003−1007.)。
【0038】
アスタキサンチンおよび同エステル体はR. Kuhnらによってロブスター(Astacus gammarus L.)から初めて分離され、その推定構造が開示された(Kuhn, R., Soerensen, N.A. : The coloring matters of the lobster (Astacus gammarus L.), Z. Angew. Chem.,1938, 51, p.465−466.)。それ以来、アスタキサンチンが自然界に広く分布し、通常アスタキサンチン脂肪酸エステル体として存在すること、甲殻類などでたんぱく質と結合したアスタキサンチン蛋白(オボルビン、クラスタシアニン)としても存在することが明らかにされている(Cheesman, D.F. : Ovorubin, a chromoprotein from the eggs of the gastropod mollusc Pomacea canaliculata, Proc. Roy. Soc. B, 1958, 149, p.571−587.)。
【0039】
前記アスタキサンチン及び/又はそのエステル(アスタキサンチン類)は、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する天然物から分離・抽出したアスタキサンチン含有オイルとして、本発明のエマルション組成物に含まれていてもよい。このようなアスタキサンチン含有オイルとして、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌等を培養し、その培養物からの抽出物、南極オキアミ等からの抽出物を挙げることができる。
ヘマトコッカス藻抽出物(ヘマトコッカス藻由来色素)は、オキアミ由来の色素や、合成されたアスタキサンチンとはエステルの種類、及び、その含有率の点で異なることが知られている。
【0040】
本発明において用いることができるアスタキサンチン類は、前記抽出物、また更にこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また合成品であってもよい。
前記アスタキサンチン類としては、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(ヘマトコッカス藻抽出物ともいう。)が、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0041】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物の由来としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。
【0042】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻の培養方法は、特開平8−103288号公報等に開示された様々な方法を採用することができ、特に限定されるものではなく、栄養細胞から休眠細胞であるシスト細胞に形態変化していればよい。
【0043】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、上記の原料を、必要に応じて、例えば特開平5−68585号公報等に開示された方法により細胞壁を破砕して、アセトン、エーテル、クロロホルム及びアルコール(エタノール、メタノール等)等の有機溶剤や、超臨界状態の二酸化炭素等の抽出溶剤を加えて抽出することによって得られる。
また、本発明において、広く市販されているヘマトコッカス藻抽出物を用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−2.5 O、同−5 O、同−10 O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同 5F等、東洋酵素化学(株)製のBioAstin SCE7等が挙げられる。
【0044】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物中のアスタキサチン類の色素純分としての含有量は、エマルション組成物製造時の取り扱いの観点から、好ましくは0.001〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜25質量%である。
なお、本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、特開平2−49091号公報記載の色素同様色素純分としてはアスタキサンチンもしくはそのエステル体を含むが、エステル体を、一般的には50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90%モル以上含むものである。
さらに詳細な説明は「アスタキサンチンの化学」、平成17年、インターネット〈URL:http://www.astaxanthin.co.jp/chemical/basic.htm〉に記載されている。
【0045】
(油脂類)
前記油性成分における油脂類としては、常温で、液体の油脂(脂肪油)及び固体の油脂(脂肪)が挙げられる。
前記液体の油脂としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、月見草油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン、サラダ油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ウォルナッツ油、グレープシード油等が挙げられる。
また、前記固体の油脂としては、牛脂、硬化牛脂、牛脚脂、牛骨脂、ミンク油、卵黄油、豚脂、馬脂、羊脂、硬化油、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム硬化油、モクロウ、モクロウ核油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
上記の中でも、エマルション組成物の粒子径、安定性の観点から、中鎖脂肪酸トリグリセライドである、ココナッツ油が、好ましく用いられる。
【0046】
本発明において、前記油脂は市販品を用いることができる。また、本発明において、前記油脂は1種単独で用いても混合して用いてもよい。
【0047】
(ラジカル捕捉剤)
本発明における油性成分として、ラジカル捕捉の機能を有する脂溶性のラジカル捕捉剤(酸化防止剤)を含有することが好ましい。
ラジカル捕捉剤は油性成分として1種単独で用いても、また、他の油性成分の酸化を防止するために併用して用いることも好ましい態様である。
【0048】
前記ラジカル捕捉剤は、ラジカルの発生を抑えるとともに、生成したラジカルをできる限り速やかに捕捉し、連鎖反応を断つ役割を担う添加剤である(出典:「油化学便覧 第4版」、日本油化学会編 2001)。
【0049】
前記ラジカル捕捉剤としての機能を確認する直接的な方法としては、試薬と混合して、ラジカルを捕捉する様子を分光光度計やESR(電子スピン共鳴装置)によって測定する方法が知られている。これらの方法では、試薬として、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)や、ガルビノキシルラジカルが使用される。
本発明においては、以下の実験条件下で、油脂の自動酸化反応を利用して、油脂の過酸化物価(POV値)を60meq/kgに引き上げるまでに要する時間が、ブランクに対し2倍以上である化合物を「ラジカル捕捉剤」と定義する。油脂の過酸化物価(POV値)は常法により測定する。
【0050】
<条件>
油脂:オリーブ油
検体添加量:油脂に対し0.1質量%
試験方法:試料を190℃にて加熱し、時間を追ってPOV値を常法により測定し、60meq/kgとなる時間を算出した。
【0051】
本発明におけるラジカル捕捉剤は、エマルションの酸化に対する安定性の観点から、前記POV値60meq/kgになるまでに要する時間がブランクに対し5倍以上であるラジカル捕捉剤が好ましい。
【0052】
本発明のラジカル捕捉剤として使用できる化合物は、「抗酸化剤の理論と実際」(梶本著、三書房 1984)や、「酸化防止剤ハンドブック」(猿渡、西野、田端著、大成社 1976)に記載の各種酸化防止剤のうち、ラジカル捕捉剤として機能するものであれば良く、具体的には、フェノール性OHを有する化合物、フェニレンジアミン等のアミン系化合物、また、アスコルビン酸及びエリソルビン酸の油溶化誘導体等を挙げることができる。
【0053】
エマルション組成物におけるラジカル捕捉剤の含有量は一般的には0.001〜20.0質量%であり、好ましくは0.01〜10.0質量%、より好ましくは0.1〜5.0質量%である。
以下に好ましいラジカル捕捉剤を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
前記フェノール性OHを有する化合物として、ポリフェノール類(例えば、カテキン)、グアヤク脂、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、没食子酸エステル類、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、ビタミンE類およびビスフェノール類等が挙げられる。没食子酸エステル類として、没食子酸プロピル、没食子酸ブチルおよび没食子酸オクチルが挙げられる。
【0055】
アミン系化合物としてフェニレンジアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミンまたは4−アミノ−p−ジフェニルアミンが挙げられ、ジフェニル−p−フェニレンジアミンまたは4−アミノ−p−ジフェニルアミンがより好ましい。
【0056】
アスコルビン酸、エリソルビン酸の油溶化誘導体としては、ステアリン酸L−アスコルビルエステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸エリソルビルエステル、テトライソパルミチン酸エリソルビルエステル、などが挙げられる。
【0057】
以上の中でも、安全性、及び、酸化防止の機能に優れる観点から、特にビタミンE類が好ましく用いられる。
ビタミンE類としては、特に限定されず、例えばトコフェロール及びその誘導体からなる化合物群、並びにトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選ばれるものを挙げることができる。これらは単独で用いても、複数併用して用いてもよい。またトコフェノール及びその誘導体からなる化合物群とトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群からそれぞれ選択されたものを組み合わせて使用してもよい。
【0058】
トコフェロール及びその誘導体からなる化合物群としては、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等が含まれる。これらの内で、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、及び、これらの混合物(ミックストコフェロール)がより好ましい。また、トコフェロール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。
トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群としては、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が含まれる。また、トコトリエノール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。トコトリエノールは麦類、米糠、パーム油等に含まれるトコフェロール類似化合物で、トコフェロールの側鎖部分に二重結合が3個含まれ、優れた酸化防止性能を有する。
【0059】
これらのビタミンE類は、油溶性酸化防止剤として本エマルション組成物の特に油相に含まれていることが、効果的に油性成分の酸化防止機能を発揮することができるため好ましい。上記ビタミンE類の中でも酸化防止効果の観点から、トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選択されたものを少なくとも1種を含有することが更に好ましい。
【0060】
本発明のエマルション組成物における油性成分の含有量は、エマルション組成物の応用、及び、乳化粒子径・乳化安定性の観点から、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜25質量%、更に好ましくは0.2〜10質量%である。
油性成分の含有量を前記0.1質量%以上とすると、有効成分が少なくなることがなく、エマルション組成物の食品、化粧品への応用が容易となる傾向となり、50質量%以下であると、乳化粒子径の増大、乳化安定性の悪化が生じ難い傾向となる。
【0061】
[界面活性剤]
次に、本発明のエマルション組成物に使用される界面活性剤について説明する。
本発明における界面活性剤としては、水性媒体に溶解する界面活性剤乳化剤(親水性の界面活性剤)がエマルション組成物中の油相/水相の界面張力を大きく下げることができ、その結果、粒子径を細かくすることができる点で好ましい。
本発明における界面活性剤としては、乳化安定性の観点から、HLB8以上のものが好ましく、10以上のものがより好ましく、12以上のものが特に好ましい。またHLB値の上限値は、特に限定されないが、一般的には、20以下であり、18以下が好ましい。
【0062】
ここで、HLBは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。本発明においては、下記の川上式を採用する。
【0063】
HLB=7+11.7log(M/M
ここで、Mは親水基の分子量、Mは疎水基の分子量である。
【0064】
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の界面活性剤を得ることが出来る。
【0065】
本発明で使用することのできる界面活性剤には、カチオン性、アニオン性、両性、非イオン性の各界面活性剤を挙げることができ、特に制限は無いが、非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。また、上記の界面活性剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
【0066】
本発明に用いられる、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が2以上、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸とのエステルである。ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
これらの中でも、より好ましくは、デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル(HLB=13)、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB=14)、デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=16)などである。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL DGMS,NIKKOL DGMO−CV,NIKKOL DGMO−90V,NIKKOL DGDO,NIKKOL DGMIS,NIKKOL DGTIS,NIKKOL Tetraglyn 1−SV,NIKKOL Tetraglyn 1−O,NIKKOL Tetraglyn 3−S,NIKKOL Tetraglyn 5−S,NIKKOL Tetraglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn 1−L,NIKKOL Hexaglyn 1−M,NIKKOL Hexaglyn 1−SV,NIKKOL Hexaglyn 1−O,NIKKOL Hexaglyn 3−S,NIKKOL Hexaglyn 4−B,NIKKOL Hexaglyn 5−S,NIKKOL Hexaglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn PR−15,NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,NIKKOL Decaglyn 2−SV,NIKKOL Decaglyn 2−ISV,NIKKOL Decaglyn 3−SV,NIKKOL Decaglyn 3−OV,NIKKOL Decaglyn 5−SV,NIKKOL Decaglyn 5−HS,NIKKOL Decaglyn 5−IS,NIKKOL Decaglyn 5−OV,NIKKOL Decaglyn 5−O−R,NIKKOL Decaglyn 7−S,NIKKOL Decaglyn 7−O,NIKKOL Decaglyn 10−SV,NIKKOL Decaglyn 10−IS,NIKKOL Decaglyn 10−OV,NIKKOL Decaglyn 10−MAC,NIKKOL Decaglyn PR−20,三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル、L−7D、L−10D、M−10D、P−8D、SWA−10D、SWA−15D、SWA−20D、S−24D、S−28D、O−15D、O−50D、B−70D、B−100D、ER−60D、LOP−120DP、DS13W、DS3、HS11、HS9、TS4、TS2、DL15、DO13、太陽化学(株)社製サンソフトQ−17UL、サンソフトQ−14S、サンソフトA−141C、理研ビタミン(株)社製ポエムDO−100、ポエムJ−0021などが挙げられる。
上記の中でも、好ましくは、NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,リョートーポリグリエステル L−7D、L−10D、M−10D、P−8D、SWA−10D、SWA−15D、SWA−20D、S−24D、S−28D、O−15D、O−50D、B−70D、B−100D、ER−60D、LOP−120DPである。
【0067】
本発明に用いられる、ソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
これらのソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL SL−10,SP−10V,SS−10V,SS−10MV,SS−15V,SS−30V,SI−10RV,SI−15RV,SO−10V,SO−15MV,SO−15V,SO−30V,SO−10R,SO−15R,SO−30R,SO−15EX,第一工業製薬(株)社製の、ソルゲン30V、40V、50V、90、110、花王(株)社製の、レオドールAS−10V、AO−10V、AO−15V、SP−L10、SP−P10、SP−S10V、SP−S30V、SP−O10V、SP−O30Vなどが挙げられる。
【0068】
本発明に用いられる、ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられ、これらの中でも、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステルがより好ましい。
本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステル S−070、S−170、S−270、S−370、S−370F、S−570、S−770、S−970、S−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−070、P−170、P−1570、P−1670、M−1695、O−170、O−1570、OWA−1570、L−195、L−595、L−1695、LWA−1570、B−370、B−370F、ER−190、ER−290、POS−135、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルSS、F160、F140、F110、F90、F70、F50、F−A50、F−20W、F−10、F−A10E、コスメライクB−30、S−10、S−50、S−70、S−110、S−160、S−190、SA−10、SA−50、P−10、P−160、M−160、L−10、L−50、L−160、L−150A、L−160A、R−10、R−20、O−10、O−150等が挙げられる。
上記の中で、好ましくは、リュートーシュガーエステルS−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−1570、P−1670、M−1695、O−1570、L−1695、DKエステルSS、F160、F140、F110、コスメライクS−110、S−160、S−190、P−160、M−160、L−160、L−150A、L−160A、O−150である。
【0069】
本発明に用いられるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。またポリオキシエチレンのエチレンオキサイドの長さ(付加モル数)としては、2〜100が好ましく、4〜50がより好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ポリオキシエチレンモノカプリル酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセキステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL TL−10、NIKKOL TP−10V、NIKKOL TS−10V、NIKKOL TS−10MV、NIKKOL TS−106V、NIKKOL TS−30V、NIKKOL TI−10V、NIKKOL TO−10V、NIKKOL TO−10MV、NIKKOL TO−106V、NIKKOL TO−30V、花王(株)社製の、レオドールTW−L106、TW−L120、TW−P120、TW−S106V、TW−S120V、TW−S320V、TW−O106V、TW−O120V、TW−O320V、TW−IS399C、レオドールスーパーSP−L10、TW−L120、第一工業製薬(株)社製の、ソルゲンTW−20、TW−60V、TW−80V等が挙げられる。
【0070】
本発明のエマルション組成物における前記界面活性剤の量は、油性成分量に対して0.5倍量を超え、且つ、リン脂質量に対して5倍量を超える量が必要である。前記界面活性剤量が、油性成分量に対して0.5倍量以上とすることにより微細な粒子径の乳化物を得ることができ、またリン脂質量に対して5倍以上とすることにより乳化安定性を損なうことがない。このような界面活性剤の量は、特に、アスコルビン酸、クエン酸、又はそれらの塩等が本組成物中に同時に存在する場合に、乳化安定性を顕著に良好なものとすることができる。
前記油性成分量に対して前記界面活性剤量は、微細な粒子径を得るために、0.5倍量を超えることが必要であるが、2倍量以下が好ましく、1.5倍量以下がより好ましく、1倍量以下が特に好ましい。前記界面活性剤量が2倍量以下とすることにより、泡立ちがひどくなる等の問題がなくなる傾向となる点で好ましい。
また、リン脂質量に対して界面活性剤量は、乳化安定性を良好とするために、5倍量を超えることが必要であるが、50倍量以下が好ましく、30倍量以下がより好ましく、15倍量以下が特に好ましい。前記界面活性剤量が50倍量以下とすることにより、粒子径の微細化、乳化安定性に適切な量とすることができ、また、組成物の泡立ち等の問題発生の防止を抑制する傾向となり好ましい。
【0071】
前記界面活性剤の添加量は、エマルション組成物に対して、0.5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、2〜15質量%が更に好ましい。
前記界面活性剤量を0.5質量%以上とすることにより、油相/水相間の界面張力を下げ易く、また、30質量%以下とすることにより、過剰量とすることがなくエマルション組成物の泡立ちがひどくなる等の問題を生じ難い点で好ましい。
【0072】
[多価アルコール]
本発明のエマルション組成物は、粒子径、安定性、及び防腐性の観点から多価アルコールを含有することが好ましい。
多価アルコールは、保湿機能や粘度調整機能等を有している。また、多価アルコールは、水と油脂成分との界面張力を低下させ、界面を広がりやすくし、微細で、かつ、安定な微粒子を形成しやすくする機能も有している。
以上より、エマルション組成物が多価アルコールを含有することは、エマルション粒子径をより微細化でき、かつ該粒子径が微細な粒子径の状態のまま長期に亘り安定して保持できるとの観点から好ましい。
また、多価アルコールの添加により、エマルション組成物の水分活性を下げることができ、微生物の繁殖を抑えることができる。
【0073】
本発明に使用できる前記多価アルコールとしては、二価以上のアルコールであれば特に限定されず用いることができる。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、マルチトール、還元水あめ、果糖、ブドウ糖、蔗糖、ラクチトール、パラチニット、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、キシロース、グルコース、ラクトース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、イノシトール、ペンタエリスリトール、マルトトリオース、ソルビトール、ソルビタン、トレハロース、澱粉分解糖、澱粉分解糖還元アルコール等が挙げられ、これらを、単独又は複数種の混合物の形態で用いることが出来る。
【0074】
また、多価アルコールとしては、その1分子中における水酸基の数が、3個以上であるものを用いるのが好ましい。これにより、水系溶媒と油脂成分との界面張力をより効果的に低下させることができ、より微細で、かつ、安定な微粒子を形成させることができる。その結果、食品用途の場合は腸管吸収性を、化粧品用途の場合は経皮吸収性をより高いものとすることができる。
【0075】
上述したような条件を満足する多価アルコールの中でも、特に、グリセリンを用いた場合、エマルションの粒子径がより小さくなり、かつ該粒子径が小さいまま長期に亘り安定して保持されるため、好ましい。
【0076】
前記多価アルコールの含有量は、前述の粒子径、安定性、防腐性に加えて、エマルション組成物の粘度の観点から、エマルション組成物に対して10〜60質量%が好ましく、より好ましくは20〜55質量%、さらに好ましくは30〜50質量%である。
多価アルコールの含有量が10質量%以上であると、油脂成分の種類や含有量等によっても、十分な保存安定性が得られ易い点で好ましい。一方、多価アルコールの含有量が60質量%以下であると、最大限の効果が得られ、エマルション組成物の粘度が高くなるのを抑え易い点で好ましい。
【0077】
本発明のエマルション組成物は、必要に応じて、その他の添加物を添加することができる。
【0078】
本発明のエマルション組成物の粒子径は、特に限定されないが、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは150nm以下、最も好ましくは90nm以下である。
エマルション組成物の粒子径が200nm以下とすることにより、その乳化物を用いて製造した食品、化粧品等の透明性が悪化し難いし、又、体内、経皮吸収性が低下し難い点で好ましい。
【0079】
本発明のエマルション組成物の粒子径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。エマルションの粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
本発明における粒径範囲および測定の容易さから、本発明のエマルション粒径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
本発明における粒子径は、前記動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)を用いて測定した値とし、具体的には、以下のよう計測した値を採用する。
前記粒子径の測定方法は、油性成分の濃度が1質量%になるように純水で希釈を行い、石英セルを用いて測定を行う。粒子径は、試料屈折率として1.600、分散媒屈折率として1.333(純水)、分散媒の粘度として純水の粘度を設定した時のメジアン径として求めることができる。
【0080】
前記エマルション組成物の粒子径は、前述したエマルション組成物の成分以外に、後述するエマルション組成物の製造方法における攪拌条件(せん断力・温度・圧力)や、油相と水相比率、などの要因によって微細化することが出来る。
【0081】
<エマルション組成物の製造方法>
本発明のエマルション組成物の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、a)水性媒体(水等)に、界面活性剤を溶解させて、水相を得、b)前記油性成分(カロチノイド等)及びリン脂質(レシチン等)を混合・溶解して、油相を得、c)攪拌下で水相と油相を混合して、乳化分散を行い、エマルション組成物を得る、ステップからなる製造方法が好ましい。
前記製造方法における油相、水相に含有される成分は、前述の本発明のエマルション組成物の構成成分と同様であり、好ましい例及び好ましい量も同様であり、好ましい組合せがより好ましい。
【0082】
前記乳化分散における油相と水相との比率(質量)は、特に限定されるものではないが、油相/水相比率(質量%)として0.1/99.9〜50/50が好ましく、0.5/99.5〜30/70がより好ましく、1/99〜20/80が更に好ましい。
油相/水相比率を0.1/99.9以上とすることにより、有効成分が低くならないためエマルション組成物の実用上の問題が生じない傾向となり好ましい。また、油相/水相比率を50/50以下とすることにより、界面活性剤濃度が薄くなることがなく、エマルション組成物の乳化安定性が悪化しない傾向となり好ましい。
【0083】
前記乳化分散は、1ステップの乳化操作を行うことでもよいが、2ステップ以上の乳化操作を行うことが均一で微細な乳化粒子を得る点から好ましい。
具体的には、剪断作用を利用する通常の乳化装置(例えば、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式剪断装置等)を用いて乳化するという1ステップの乳化操作に加えて、高圧ホモジナイザー、超音波分散機等を通して乳化する等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのが特に好ましい。高圧ホモジナイザーを使用することで、乳化物を更に均一な微粒子の液滴に揃えることが出来る。また、更に均一な粒子径の液滴とする目的で複数回行っても良い。
【0084】
本発明のエマルション組成物は、食品、または、化粧品などに広く使用することができる。ここで、食品としては、飲料、冷菓など、化粧品としてはスキン化粧料(化粧水、美容液、乳液、クリームなど)、口紅、日焼け止め化粧料、メークアップ化粧料などを挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
また、前記本発明の食品又は化粧品には、前記本発明のエマルション組成物を含有するが、必要に応じて、食品又は化粧品に添加可能な成分を適宜添加することができる。
【0085】
食品、化粧品などに対して用いられる本発明のエマルション組成物の添加量は、製品の種類や目的などによって異なり一概には規定できないが、製品に対して、0.01〜10質量%、好ましくは、0.05〜5質量%の範囲で用いることができる。
添加量が少なすぎる場合は目的の効果を出すことが出来ない場合があり、多すぎる場合は、過剰に添加されたエマルション組成物は効果の発揮に寄与することが出来ない場合がある。
本発明のエマルション組成物を、特に飲料(食品の場合)や化粧水、美容液、乳液、クリームパック・マスク、パック、洗髪用化粧品、フレグランス化粧品、液体ボディ洗浄料、UVケア化粧品、防臭化粧品、オーラルケア化粧品等(化粧品の場合)などの水性製品に使用した場合には、透明感のある製品が得られ、且つ、長期保存または滅菌処理などの苛酷条件下での不溶物の析出、沈殿またはネックリングなどの不都合な現象の発生を抑制することができる。
【0086】
本発明の食品又は化粧品は、例えば、前記本発明のエマルション組成物及び必要に応じて添加可能な成分を常法により混合等して得ることができる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)
下記の成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、水相組成物を得た。
・ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16) 33.0g
・モノオレイン酸デカグリセリル(HLB=12) 67.0g
・グリセリン 450.0g
・純水 300.0g
【0089】
また、下記成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、油相組成物を得た。
・ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチン類含有率20質量%) 37.5g
・ミックストコフェロール 9.5g
・ココナッツ油 93.0g
・レシチン(大豆由来) 10.0g
【0090】
上記水相組成物を70℃に保ったままホモジナイザー(機種名HP93、(株)エスエムテー社製)で攪拌し(10000rpm)、前記水相組成物へ上記油相組成物を添加して乳化物を得た。
続いて、得られた予備乳化物を約40℃まで冷却し、アルティマイザーHJP−25005((株)スギノマシン社製)を用いて、200MPaの圧力で高圧乳化を行った。
その後、平均孔径1μmのミクロフィルターでろ過して、アスタキサンチン類含有エマルション組成物EM−01を調製した。
組成を下記表1に従った以外は全て同様にして、アスタキサンチン類含有エマルション組成物EM−02〜10を得た。
なお、アスタキサンチン類含有エマルション組成物EM−04及びEM−05は、本発明の参考例である。
【0091】
【表1】

【0092】
表中、ショ糖ステアリン酸エステルは三菱化学フーズ株式会社製リョートーシュガーエステルS−1670(HLB=16)、S−770(HLB=7)、ショ糖ラウリン酸エステルは三菱化学フーズ株式会社製リョートーシュガーエステルL−1695(HLB=16)、モノオレイン酸デカグリセリルは日光ケミカルズ株式会社製NIKKOL Decaglyn 1−O(HLB=12)、モノオレイン酸ヘキサグリセリルは日光ケミカルズ株式会社製NIKKOL Hexaglyn 1−OV(HLB=9)、モノラウリン酸デカグリセリルは日光ケミカルズ株式会社製NIKKOL Decaglyn 1−L(HLB=15.5)を使用した。ヘマトコッカス抽出物は、武田紙器株式会社製ASTOTS−Sを使用した。ミックストコフェロールは、理研ビタミン株式会社製の理研Eオイル800を使用した。ココナッツ油は、花王株式会社のココナードMTを使用した。レシチン(大豆由来)は理研ビタミン株式会社製のレシオンP、リゾレシチンは理研ビタミン株式会社製のレシマールELを使用した。また、スフィンゴミエリンは日本油脂株式会社製のコトソームNM−70を使用した。
【0093】
(粒子径測定)
上記で得られたアスタキサンチン類含有エマルション組成物(EM−01〜10)1.0gを99.0gの純水に添加して、マグネッチックスターラーを用いて、10分間攪拌を行った。得られたエマルション組成物の水希釈液の粒子径を、動的光散乱粒径分散測定装置LB−550(株式会社堀場製作所社製)を使用して測定した。結果は、下記表2に示す。
具体的な測定法は、前述の通りである。
【0094】
(乳化安定性)
乳化安定性として、アスコルビン酸Na添加時、無添加時の粒子径の増大を調べた。
上記、エマルション組成物の水希釈液90gにアスコルビン酸Na(粉末)を10g添加し、スターラーを用いて、10分間攪拌を行った。得られた水溶液の粒子径を、上記と同様にLB−550を使用して測定した。
同様にして、アスコルビン酸Naの代わりに、クエン酸三Na(結晶)を添加して粒子径測定を行った。
また同様にして、アスコルビン酸Na(粉末)を10gの代わりに、カテキン1gを添加して粒子径測定を行った。カテキンは、株式会社ファーマフーズ社製のPF−TP80を使用した。結果は、下記表2に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
上記表2から明らかな通り、本発明のエマルション組成物は、その粒子径が微細であり、且つ、アスコルビン酸Na等の有機酸(塩)、カテキン等のポリフェノール類を添加した場合でも、非常に優れた乳化安定性を示すことが分かった。
【0097】
(実施例2)
下記の成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、水相組成物を得た。
・ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16) 33.0g
・モノオレイン酸デカグリセリル(HLB=12) 67.0g
・グリセリン 450.0g
・純水 300.0g
【0098】
また、下記成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、油相組成物を得た。
・ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチン類含有率20質量%) 37.5g
・トコトリエノール含有オイル(トコトリエノール含有率50質量%) 9.5g
・ココナッツ油 93.0g
・レシチン(大豆由来) 10.0g
【0099】
上記水相組成物を70℃に保ったままホモジナイザー(機種名HP93、(株)エスエムテー社製)で攪拌し(10000rpm)、前記水相組成物へ上記油相組成物を添加して乳化物を得た。
続いて、得られた予備乳化物を約40℃まで冷却し、アルティマイザーHJP−25005((株)スギノマシン社製)を用いて、200MPaの圧力で高圧乳化を行った。
その後、平均孔径1μmのミクロフィルターでろ過して、アスタキサンチン類含有エマルション組成物EM−21を調製した。
【0100】
組成を下記表3に従った以外は全て同様にして、アスタキサンチン類含有エマルション組成物EM−22〜24を得た。なお、EM−23は、実施例1におけるEM−01に相当する。
【0101】
表中、ショ糖ステアリン酸エステルは三菱化学フーズ株式会社製リョートーシュガーエステルS−1670(HLB=16)、モノオレイン酸デカグリセリルは日光ケミカルズ株式会社製NIKKOL Decaglyn 1-Oを使用した。ヘマトコッカス抽出物は、武田紙器株式会社製ASTOTS−Sを使用した。トコトリエノール含有オイルはカロテック社製トコミン50%を使用した。ミックストコフェロールは、理研ビタミン株式会社製の理研Eオイル800を使用した。ココナッツ油は、花王株式会社のココナードMTを使用した。レシチン(大豆由来)は理研ビタミン株式会社製のレシオンPを使用した。
【0102】
【表3】

【0103】
(希釈)
得られたアスタキサンチン類含有エマルション組成物(EM−21〜24)1.0gを99.0gの純水に添加して、マグネッチクスターラーで5分間攪拌を行った。得られたエマルション組成物の水希釈液の評価を下記のように行った。結果は、下記表4に示してある。
なお、粒子径測定及び保存安定性については実施例1と同様に行った。
(アスタキサンチン類分解安定性評価)
エマルション組成物の水希釈液の吸光度測定を、NanoDrop Technologies,Inc.社製のND−1000Spectrophotometerを用いて行った(Ci)。エマルション組成物の水希釈液を蓋付きガラス瓶に入れて、50℃に保たれた恒温槽中に保管した。保管日数は、1、3、5、7、10、14日とした。それぞれの日数保管後、吸光度測定を行い、保管後の吸光度(Cf)を求め、アスタキサンチン残存率[%]=Cf/Ci×100を求めた。
横軸に保管日数を、縦軸にアスタキサンチン残存率をとり、グラフを作成し、このグラフからアスタキサンチン残存率が80%になる保管日数を読み取り、アスタキサンチン80%残存日数として評価した。
【0104】
【表4】

【0105】
本発明に係るエマルション組成物EM−21、EM−22、EM−23及びEM−24について、純水希釈後の油滴粒子径及び有機酸添加後の粒子径測定を実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
本発明に係るエマルション組成物EM−21〜EM−24はいずれも、実施例1のEM-01と同様に、アスコルビン酸Na等の有機酸(塩)、カテキン等のポリフェノール類を添加した場合でも、凝集等の見られない、良好な乳化安定性を示した。
また表4から明らかなように、本発明によるアスタキサンチン類含有エマルジョン組成物EM−21〜EM−24のうち、油溶性酸化防止剤(油溶性ラジカル捕捉剤)を添加したEM−21〜EM−23は、ラジカル捕捉剤を含有しないEM−24と比較して高い分解安定性を示し、中でもトコトリエノールを含有するEM−21は、特に良好な保存安定性を示した。このように、油溶性酸化防止剤としてトコトリエノールを選択することにより、より少量で効果的な保存安定が得られることから、油溶性酸化剤の添加量を減らして、機能性のある油性成分の量を増加したいときに特に有用であることがわかった。
【0106】
(実施例3):飲料
次に、実施例1で得られたエマルション組成物を使用して、下記の組成及び製法で飲料を調製した。
<組成>
(1)実施例1のエマルション組成物(EM−01) 20g
(2)果糖ブドウ糖液糖 120g
(3)ビタミンC(L−アスコルビン酸) 10g
(4)クエン酸 10g
(5)オレンジ香料 3g
(6)水 837g
合 計 1000g
【0107】
上記(2)〜(6)の成分を混合・溶解した後、(1)の成分を加えてさらに混合を行い、飲料液を調製した。これを瓶に充填して85℃で10分間加熱殺菌した。これを室温まで冷却し飲料を得た。
得られた飲料は、透明性に優れ、静置しても濁りやネックリング等の発生は認められなかった。
【0108】
(実施例4):化粧水
次に、実施例1で得られたエマルション組成物を使用して、下記の組成及び製法で化粧水を調製した。
<組成>
(1)1,3−ブタンジオール 60g
(2)グリセリン 40g
(3)オレイルアルコール 1g
(4)ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル 5g
(5)ポリオキシエチレン(15)ラウリルアルコールエーテル 5g
(6)エタノール 100g
(7)メチルパラベン 2g
(8)L−アスコルビン酸Na 10g
(9)実施例1のエマルション組成物(EM−01) 1g
(10)精製水 776g
合計 1000g
【0109】
(1)を(10)に添加・溶解させて水相を得た。次に、(6)に、(2)〜(5)、(7)、(8)を溶解し、上記水相と攪拌混合した。更に、(9)を加えて攪拌混合を行い、化粧水を得た。
得られた化粧水は、透明性に優れ、50℃で3ヶ月間静置保管しても濁りの発生は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質と油性成分と界面活性剤とを含有すると共に食品又は化粧品に用いられるエマルション組成物において、前記界面活性剤の含有量が、前記油性成分の含有量に対して0.5倍量を超え2倍量以下であり、且つ、前記リン脂質の含有量に対して5倍量を超えるものであって、エマルション組成物に対して2〜15質量%であることを特徴とする食品又は化粧品に用いられるエマルション組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤の含有量が、前記リン脂質の含有量に対して5倍量を超え50倍量以下であることを特徴とする請求項1に記載のエマルション組成物。
【請求項3】
前記油性成分がカロチノイド類を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のエマルション組成物。
【請求項4】
前記カロチノイド類がアスタキサンチン類であることを特徴とする請求項3に記載のエマルション組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤がHLB10以上の非イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤がショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項7】
前記油性成分の含有量が組成物の全質量に対して0.1〜50質量%であり、かつリン脂質の含有量が組成物の全質量に対して0.1〜10質量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項8】
前記油性成分が脂溶性のラジカル捕捉剤を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項9】
前記ラジカル捕捉剤がビタミンE類を含むことを特徴とする請求項に記載のエマルション組成物。
【請求項10】
前記ラジカル捕捉剤がトコフェロール及びその酢酸エステル誘導体からなる群より選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項に記載のエマルション組成物。
【請求項11】
前記ラジカル捕捉剤がトコトリエノール及びその酢酸エステル誘導体からなる群より選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項に記載のエマルション組成物。
【請求項12】
前記エマルションの粒子径が200nm以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のエマルション組成物を含有してなる食品。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のエマルション組成物を含有してなる化粧品

【公開番号】特開2009−209146(P2009−209146A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100691(P2009−100691)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【分割の表示】特願2007−231675(P2007−231675)の分割
【原出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】