説明

エリア判定装置及びその判定方法

【課題】 複数のエリアが重なり合う場合であっても、簡素な方法でエリアに対する進入あるいは退出を判定することが可能なエリア判定装置及びその判定方法を提供する。
【解決手段】 移動体が所定のエリアに進入したあるいは前記エリアから退出したことを判定するエリア判定装置は、所定時間毎に検出される前記移動体の測位位置を示す位置データに基づいて前記移動体がその内側に位置すると判定されるエリアを要素とする集合を算出し、現在の位置データに基づいて得られる第一の集合を全集合とする過去の位置データに基づいて得られる第二の集合の補集合に属する要素となるエリアに対して前記移動体が進入したと判定する制御手段4を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体が所定のエリアに進入したあるいは前記エリアから退出したことを判定するエリア判定装置及びその判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自己の現在位置を測位することができるGPS(Global Positioning System)等の位置検出手段の普及に伴い、前記位置検出手段を保持する移動体(人や自動車あるいは船舶等)が予め定められたエリアに進入したあるいは前記エリアから退出した場合に情報提供や機器制御を行うことが知られている(特許文献1参照)。情報提供及び機器制御の例としては、子供や老人が自宅周辺から退出した場合に保護者に警報を報知する、危険な交差点への進入を警告する、店舗に近接した車両のナビゲーション装置の画面上に広告をポップアップさせる、駐車場への進入/退出に応じてナビゲーション装置のマップマッチングを停止/起動させる等が上げられる。
【特許文献1】特開2004−212199号公報
【0003】
特定のエリアに対する進入/退出の判定方法としては、2つの時刻におけるエリアに対する内外判定によって行われる。すなわち、過去においてエリアの外側に位置すると判定され、現在においてそのエリアの内側に位置すると判定される場合は、前記移動体は前記エリアに進入したと判定することができる。また、過去においてエリアの内側に位置すると判定され、現在においてエリアの外側に位置すると判定される場合は、前記移動体は前記エリアから退出したと判定することができる。このように、従来の進入/退出判定方法にあっては、過去の内外判定結果を保持する必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記エリアが複数存在し、複数のエリア同士が重なり合う場合は、単一の管理テーブルによっては計算が破綻してしまい、複数のエリアが重ならないようにエリア設定を行うか、管理テーブルを複数用意する必要があり、進入/退出判定に要するプログラミングが複雑になってしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記の課題点に鑑みてなされたものであり、複数のエリアが重なり合う場合であっても、簡素な方法でエリアに対する進入あるいは退出を判定することが可能なエリア判定装置及びその判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエリア判定装置は、前記課題を解決するために、移動体が所定のエリアに進入したあるいは前記エリアから退出したことを判定するエリア判定装置であって、所定時間毎に検出される前記移動体の測位位置を示す位置データに基づいて前記移動体がその内側に位置すると判定されるエリアを要素とする集合を算出し、現在の位置データに基づいて得られる第一の集合を全集合とする過去の位置データに基づいて得られる第二の集合の補集合に属する要素となるエリアに対して前記移動体が進入したと判定する制御手段を有することを特徴とする。
【0007】
また、前記制御手段は、前記第二の集合を全集合とする前記第一の集合の補集合に属する要素となるエリアに対して前記移動体が退出したと判定することを特徴とする。
【0008】
本発明のエリア判定装置の判定方法は、移動体がエリアに進入したあるいは前記エリアから退出したことを判定するエリア判定装置の判定方法であって、所定時間毎に検出される前記移動体の測位位置を示す位置データに基づいて前記移動体がその内側に位置すると判定されるエリアを要素とする集合を算出し、現在の位置データに基づいて得られる第一の集合を全集合とする過去の位置データに基づいて得られる第二の集合の補集合に属する要素となるエリアに対して前記移動体が進入したと判定することを特徴とする。
【0009】
また、前記第二の集合を全集合とする前記第一の集合の補集合に属する要素となるエリアに対して前記移動体が退出したと判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、移動体が情報エリアに進入したあるいは前記情報エリアから退出したことを判定するエリア判定装置及びその判定方法に関し、複数のエリアが重なり合う場合であっても、簡素な方法でエリアに対する進入あるいは退出を判定することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を車両用の情報提供装置に適用した実施形態を添付図面に基づき説明する。
【0012】
図1を用いて情報提供装置の全体構成について説明する。情報提供装置Aは、通信手段1と、GPS受信部(位置検出手段)2と、操作手段3と、制御手段4と、報知手段5と、から主に構成されている。一方、情報提供装置Aに後で詳述する情報エリアデータを配信するシステムとして、サーバ6を有している。このサーバ6は、パーソナルコンピュータ(パソコン)7や携帯電話機、あるいは通信機能付きカーナビゲーションシステム等とアクセスして前記情報エリアデータを収集し、Bluetooth等の無線通信機能を有する携帯電話機8を介して情報提供装置Aに前記情報エリアデータを送信することが可能なものである。
【0013】
前記情報エリアデータは、情報エリアの座標及び報知すべき情報を少なくとも有するものであり、サーバ6内にハードディスク等の記録媒体に記録されるものである。なお、報知すべき情報としては、店舗の宣伝広告,観光情報あるいは運転の注意を促す警告情報等の特定の情報エリアに関する各種情報が上げられる。
【0014】
通信手段1は、携帯電話機8との無線通信が可能であり、前記情報エリアデータをサーバ6から携帯電話機8を介して制御手段4へダウンロードするものである。
【0015】
GPS受信部2は、GPS用受信アンテナを備え、前記受信アンテナで受信した人工衛星からの車両(移動体)の測位位置を制御手段4へ供給するものである。
【0016】
操作手段3は、報知手段5での報知内容等を選択,決定するものであり、操作スイッチやワイヤレスリモコン等の遠隔操作部からなるものである。
【0017】
制御手段4は、CPU,ROM,RAM及びI/O(入出力)インターフェイス等を有するマイクロコンピューターから主になるものである。制御手段4は、GPS受信部2によって受信した測位位置を示す位置データと、携帯電話機8を介してダウンロードされた前記情報エリアデータとをマッチング処理する。さらに制御手段4は、このマッチング処理結果に基づき車両が前記情報エリアに対して進入あるいは退出したか否かを判定し、この進入退出判定の結果に基づいて所定の情報を報知手段5によって提供するものである。なお、情報の提供方法としては、進入あるいは退出に応じて情報を提供するものであってもよく、また、進入に応じて情報を提供し、退出に応じて情報提供を停止するものであってもよい。また、制御手段4は、ダウンロードされた前記情報エリアデータを保存するためのフラッシュメモリ等の記録手段4aを有し、前記情報エリアデータを加工し、保存することが可能となっている。
【0018】
報知手段5は、例えばマトリクス型の液晶表示パネルや有機ELパネルからなり情報を表示する視覚情報確認手段である表示部5aと、情報を音声にて報知する聴覚情報確認手段であるスピーカ5bとを有し、制御手段4からの指示信号に応じて表示部5a及びスピーカ5bが動作する構成となっている。
【0019】
次に、図2を用いて制御手段4のエリア判定方法について説明する。
【0020】
制御手段4は、通信手段1によってサーバ6から情報エリアデータを入力する(ステップS1)。また、GPS受信部2を介して位置データを入力する(ステップS2)。そして、制御手段4は、入力した前記情報エリアデータと前記位置データとに基づいて、車両が情報エリアの内側に位置するか否かを判定する(内外判定、ステップS3)。かかる内外判定方法は、エリア形状の自由度によって決定される。自由度が少ない形状ほど内外判定方法は簡素化される。例えば、図3は情報エリアの形状を円状とした場合を示している。エリア形状を円状に設定する場合は、現在位置Pから情報エリアAの中心Cまでの距離r1と情報エリアAの半径rとを比較し、距離r1が半径rよりも小さい場合は(r1<r)、車両が情報エリアAの内側に位置すると判定し、距離r1が半径rより大きい場合は(r1>r)、車両が情報エリアAの外側に位置すると判定する。なお、距離r1が半径rと等しい場合(r1=r)は、境界上に位置するが、境界は、内と外のどちらか一方に属すると定義しておけばよい。また、エリア形状が円以外の形状からなる場合は、例えば複素関数論の回転数を算出する方法が知られている。
【0021】
次いで、制御手段4は、ステップS3の内外判定において車両がその内側に位置すると判定された情報エリアを要素とする集合を算出する(ステップS4)。さらに、制御手段4は、現在の位置データに基づいて車両がその内側に位置すると判定された情報エリアを要素とする集合を第一の集合とし、過去(前回)の位置データに基づいて車両がその内側に位置すると判定された情報エリアを要素とする集合を第二の集合として、前記第一の集合を全集合とする前記第二の集合の補集合(以下、第一の補集合という)を算出し、また、前記第二の集合を全集合とする前記第一の集合の補集合(以下、第二の補集合という)を算出する(ステップS5)。そして、制御手段4は、前記第一の補集合に属する要素となる情報エリアに対して車両が進入したと判定し、また、前記第二の補集合に属する要素となる情報エリアに対して車両が退出したと判定する(進入退出判定、ステップS6)。
【0022】
図4は車両の重なり合う複数の情報エリアへの進入及び情報エリアからの退出の一例を示している。図4において、情報エリアA1,A2は互いに一部が重なり合って設定されている。車両10は所定時間間隔で測位される測位位置がP1からP5に移動する間に情報エリアA1,A2に対して進入及び退出をしている。測位位置P1からP5に基づいてステップS3における内外判定を行うと、測位位置P1,P5においては車両10はその内側に位置すると判定される情報エリアはなく、測位位置P2においては情報エリアA1に対して車両10がその内側に位置すると判定され、測位位置P3においては情報エリアA1,A2に対して車両10がその内側に位置すると判定され、測位位置P4においては情報エリアA2に対して車両10がその内側に位置すると判定される。
【0023】
その内外判定結果に基づいてステップS4における集合算出を行うと、測位位置P1,P5に基づいて得られる集合X1,X5={}(空集合)となり、測位位置P2に基づいて得られる集合X2={A1}となり、測位位置P3に基づいて得られる集合X3={A1,A2}となり、測位位置P4に基づいて得られる集合X4={A2}となる。
【0024】
さらに算出された集合X1〜X5に基づいてステップS5における補集合の算出を行う。情報エリアへの進入判定に用いられる前記第一の補集合の算出に際しては、車両10が測位位置P1から測位位置P2に移動した場合(現在位置が測位位置P2である場合)は、前記第一の補集合として補集合X2\X1={A1}\{}={A1}が算出され、ステップS6の進入退出判定において情報エリアA1に対して車両10が進入したと判定される。また、車両10が測位位置P2から測位位置P3に移動した場合(現在位置が測位位置P3である場合)は、前記第一の補集合として補集合X3\X2={A1,A2}\{A1}={A2}が算出され、ステップS6の進入退出判定において情報エリアA2に対して車両10が進入したと判定される。また、車両10が測位位置P3から測位位置P4に移動した場合(現在位置が測位位置P4である場合)は、前記第一の補集合として補集合X4\X3={A2}\{A1,A2}={}が算出され、ステップS6の進入退出判定において車両10が進入したと判定される情報エリアはない。また、車両10が測位位置P4から測位位置P5に移動した場合(現在位置が測位位置P5である場合)は、前記第一の補集合として補集合X5\X4={}\{A2}={}が算出され、ステップS6の進入退出判定において車両10が進入したと判定される情報エリアはない。
【0025】
また、情報エリアからの退出判定に用いられる前記第二の補集合の算出に際しては、車両10が測位位置P1から測位位置P2に移動した場合は、前記第二の補集合として補集合X1\X2={}\{A1}={}が算出され、ステップS6の進入退出判定において車両10が退出したと判定される情報エリアはない。また、車両10が測位位置P2から測位位置P3に移動した場合は、前記第二の補集合として補集合X2\X3={A1}\{A1,A2}={}が算出され、ステップS6の進入退出判定において車両10が退出したと判定される情報エリアはない。また、車両10が測位位置P3から測位位置P4に移動した場合は、前記第二の補集合として補集合X3\X4={A1,A2}\{A2}={A1}が算出され、ステップS6の進入退出判定において情報エリアA1に対して車両10が退出したと判定される。また、車両10が測位位置P4から測位位置P5に移動した場合は、前記第二の補集合として補集合X4\X5={A2}\{}={A2}が算出され、ステップS6の進入退出判定において情報エリアA2に対して車両10が退出したと判定される。
【0026】
以上の処理を実行することによって、情報提供装置Aは、複数の情報エリアが互いに重なり合う場合であっても、情報エリアに対する車両の進入及び退出を判定することができる。
【0027】
かかる情報提供装置A及びそのエリア判定方法は、所定時間毎に検出される車両10の測位位置P1〜P5を示す位置データに基づいて車両10がその内側に位置すると判定されるエリアを要素とする集合X1〜X5を算出し、現在の位置データに基づいて得られる前記第一の集合における過去の位置データに基づいて得られる前記第二の集合の補集合たる前記第一の補集合に属する要素となる情報エリアに対して車両10が進入したと判定することを特徴とする。また、前記第二の集合における前記第一の集合の補集合たる前記第二の補集合に属する要素となる情報エリアに対して車両10が退出したと判定することを特徴とする。
【0028】
かかる特徴点により、複数の情報エリアが重なり合う場合であっても前記情報エリアに対する進入及び退出を判定することができ、情報エリアの設定の自由度を向上させることができるとともに、補集合の演算によってかかるエリア判定を行うことによって、管理テーブルを複数用意する等のプログラムの複雑化を抑制でき、より簡素な方法でエリア判定を実施することが可能となる。
【0029】
なお、本実施形態においては移動体は車両であったが、本発明における移動体は車両に限定されず、人や船舶等であってもよい。また、本実施形態は本発明を情報提供装置に適用したものであったが、本発明は、移動体が所定のエリアに進入したあるいは前記エリアから退出したことを判定するエリア判定装置に広く適用可能であり、進入あるいは退出に応じてナビゲーション装置等の制御を行うものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態における情報提供装置の全体構成を示す図である。
【図2】同上情報提供装置のエリア判定方法を説明するための図である。
【図3】同上情報提供装置における情報エリアを説明するための図である。
【図4】同上情報提供装置における複数の情報エリアを説明するための図である。
【符号の説明】
【0031】
A 情報提供装置
1 通信手段
2 GPS受信部
3 操作手段
4 制御手段
4a 記録手段
5 報知手段
5a 表示部
5b スピーカ
6 サーバ
7 パソコン
8 携帯電話機
10 車両
A,A1,A2 情報エリア
P,P1〜P5 測位位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が所定のエリアに進入したあるいは前記エリアから退出したことを判定するエリア判定装置であって、
所定時間毎に検出される前記移動体の測位位置を示す位置データに基づいて前記移動体がその内側に位置すると判定されるエリアを要素とする集合を算出し、現在の位置データに基づいて得られる第一の集合を全集合とする過去の位置データに基づいて得られる第二の集合の補集合に属する要素となるエリアに対して前記移動体が進入したと判定する制御手段を有することを特徴とするエリア判定装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第二の集合を全集合とする前記第一の集合の補集合に属する要素となるエリアに対して前記移動体が退出したと判定することを特徴とする請求項1に記載のエリア判定装置。
【請求項3】
移動体が所定のエリアに進入したあるいは前記エリアから退出したことを判定するエリア判定装置の判定方法であって、
所定時間毎に検出される前記移動体の測位位置を示す位置データに基づいて前記移動体がその内側に位置すると判定されるエリアを要素とする集合を算出し、現在の位置データに基づいて得られる第一の集合を全集合とする過去の位置データに基づいて得られる第二の集合の補集合に属する要素となるエリアに対して前記移動体が進入したと判定することを特徴とするエリア判定装置の判定方法。
【請求項4】
前記第二の集合を全集合とする前記第一の集合の補集合に属する要素となるエリアに対して前記移動体が退出したと判定することを特徴とする請求項3に記載のエリア判定装置の判定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−309768(P2007−309768A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138626(P2006−138626)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】