説明

エレベータのドア異常報知装置

【課題】エレベータのドアが正常通りに閉じきらない異常が生じたときに、それを検出してエレベータの利用者に対して報知することが可能なドア異常報知装置を提供する。
【解決手段】エレベータのドア16が正常通りに閉じきらないときにそれを検出する戸閉検出器29と、戸閉検出器29によりドア16の閉じ切りが検出されない異常が生じたときに、エレベータの利用者に対してその異常を報知するブザー30、及びその異常の原因を取り除く旨のアナウンスを音声で報知するスピーカー26とを具備する。保守点検用の安全スイッチが操作されたときに、エレベータの運行を制御する制御手段の安全回路がオンして運行モードがノーマル運転から点検運転のモードに切り替わるエレベータであって、戸閉検出器29によりドア16の閉じ切りが検出されないときに、安全回路がオンしているか否かが判断され、オンであるときに、ブザー30が動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、エレベータのドアが正常通りに閉じ切らない異常が生じたときに、それを検出して報知するエレベータのドア異常報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、建屋の昇降路内に吊り下げられたかごを備え、このかごが巻上機により駆動されて昇降路内で上下に昇降移動する。巻上機及びかごの各機器は制御盤により制御される。制御盤により巻上機の動作が制御されることで、かごが昇降し、そのかごが目的階のエレベータホールに到達して着床停止したときに、かごドアとそのエレベータホールのホールドアとが連動して開き、利用客の乗り降りが可能となる。
【0003】
利用客の乗り降りが終了し、かご内のドア開ボタンが操作されたとき、あるいは戸開から所定時間が経過したときに、かごドア及びホールドアが戸閉方向に移動して戸閉し、その戸閉が戸閉検知器により検知され、その検知の信号が制御盤に送られて戸閉が確認された後にかごが次の目的階に向って移動する。かごドアはかごに設けられた敷居に沿って開閉動作し、ホールドアはエレベータホールに設けられた敷居に沿って開閉動作する。
【0004】
ところで、昇降路の最下部は、建屋の最下階のエレベータホールの床面よりも下方に落ち込むピット部となっており、このピット部の床部にバッファなどの各種の機器が設置されている。エレベータに対する保守点検の作業の一つとしてこのピット部内での作業がある。ピット部に対する出入口付近には、保守点検作業時にかごが不用意に移動するのを防止するための安全スイッチが設けられている。作業員がピット部内に入るときには、その安全スイッチを操作して制御盤の安全回路をオフにし、エレベータの運転モードをノーマル運転のモードから点検運転のモードに切り換える。そして作業が終了したときには、ピット部から作業員が出て、安全スイッチを再び操作して安全回路をオンにし、運転モードをノーマル運転のモードに戻す。なお、安全回路は、かご内の非常用停止ボタンが操作されたときや、回路が故障したときなどにもオンからオフに切り替わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−043175号公報
【特許文献2】特開平5−132274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かごドア及びホールドアがそれぞれ敷居に沿って移動して戸閉するときに、その敷居にごみ等の異物が挟まり込んでいて、その異物の介在でドアが完全に閉じきらないような場合がある。このような場合、戸閉検知器が動作せず、したがってかごの運行が停止してしまうことになる。
【0007】
しかしながら、エレベータの一般利用客は、なぜエレベータの運行が停止したのか分からないことが多く、戸惑ってしまうことになる。そして、エレベータが停止したことをエレベータの管理者等に通報し、その通報で管理者等が現場に到着して点検し、敷居の異物を取り除くことでエレベータを復旧させることになるが、それには相当の手間や時間がかかり、効率が悪い。
【0008】
この発明の実施形態は、このような課題を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、請求項1の発明は、エレベータのドアが正常通りに閉じきらないときにそれを検出する戸閉検出手段と、前記戸閉検出手段により前記ドアの閉じ切りが検出されない異常が生じたときに、エレベータの利用者に対してその異常の発生を音で報知する鳴動報知手段、及びその異常の原因を取り除く旨の情報を音声で報知する音声報知手段とを具備することを特徴としている。
【0010】
そして、請求項2の発明は、エレベータのかごが昇降する昇降路のピット部で保守点検の作業を行なう際に操作する安全スイッチを備え、その安全スイッチが操作されたときに、エレベータの運行を制御する制御手段の安全回路がオンしてエレベータの運行モードがノーマル運転から点検運転のモードに切り替わるエレベータであって、前記戸閉検出手段により前記ドアの閉じ切りが検出されないときに、前記安全回路がオンしているか否かが判断され、オンであるときに、前記鳴動報知手段が動作することを特徴としている。
【0011】
また、請求項3の発明は、前記鳴動報知手段がブザーを含み、前記音声報知手段がスピーカーを含む構成であることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施形態に係るエレベータの全体の構成を示す断面図。
【図2】そのエレベータのかごの内部の外観を示す斜視図。
【図3】そのエレベータの制御回路の構成を示すブロック図。
【図4】そのエレベータの動作の流れの前半を示すフローチャート。
【図5】そのエレベータの動作の流れの後半を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1には、エレベータの全体の構成を示してあり、建物の昇降路1の上部には機械室2が設けられ、この機械室2内に駆動装置としての巻上機3が設置されている。巻上機3はトラクションシーブ4を備え、このトラクションシーブ4にメインロープ5が巻き掛けられている。メインロープ5の両端側は昇降路1内に引き落とされ、その一方側の端末にかご6が、他端側の端末につり合い重り7がそれぞれ連結され、これらかご6及びつり合い重り7が昇降路1内に吊り下げられている。そして巻上機3が起動し、トラクションシーブ4が回転してメインロープ5が走行することによりかご6とつり合い重り7が昇降路1内で互いに逆方向に昇降移動する。機械室2にはエレベータの運行を制御する制御手段としての制御盤10が設けられ、この制御盤10により前記巻上機3が制御されてかご6が昇降移動する。
【0015】
建物の各階のエレベータホール13には昇降路1に通じる乗降口14が設けられ、これら乗降口14にそれぞれホールドア15が設置され、これらホールドア15により乗降口14が開閉される。
【0016】
かご6の前面にはかごドア16が設けられている。図2にはかご6の内部をその奥側から前方側を見たときの外観を示してあり、かご6の前面には出入口17が設けられ、この出入口17の前面側にかごドア16が設置され、このかごドア16により出入口17が開閉される。
【0017】
図1に示すように、各エレベータホール13の乗降口14の下部及びかご6の出入口17の下部にはそれぞれ敷居18,19が取り付けられ、敷居18の上にホールドア15が、敷居19の上にかごドア16がそれぞれ設置され、これら敷居18,19に沿ってホールドア15,かごドア16が移動する。
【0018】
各エレベータホール13の乗降口14は、通常時にはホールドア15により閉鎖されている。そしてかご6が目的階のエレベータホール13に移動して停止する際に、かごドア16がそのエレベータホール13のホールドア15に係合し、この状態でかごドア16が図2に示す駆動源36により駆動され、かごドア16とホールドア15とが連動して戸開し、かご6に対する利用客の乗り降りが可能となる。利用客の乗り降りが終了した後には、かごドア16とホールドア15とが連動して戸閉し、かご6が次に目的階に向って移動する。
【0019】
かご6の内部には、図2に示すようにかご操作盤22が設けられ、このかご操作盤22に複数の行先階ボタン23、ドア開ボタン24a及びドア閉ボタン24b、非常停止用ボタン25並びに音声報知手段としてのスピーカー26が配設されている。
【0020】
また、かご6には、かごドア16がホールドア15と一体的に戸閉方向に移動して戸閉するときに、そのかごドア16が完全に閉じきったか否かを検出する戸閉検出器29が設けられ、さらにかご6の外側部には鳴動報知手段としてのブザー30が設けられている。
【0021】
一方、昇降路1の最下部のピット部32には、このピット部32内に作業員が入り込んで保守点検の作業を行なう際に操作する安全スイッチ33が設けられている。安全スイッチ33は、制御盤10に設けられた安全回路34をオンオフするスイッチで、安全回路34がオンのときには、エレベータがノーマル運転のモードで運行され、安全回路34がオフのときには、ノーマル運転のモードから点検運転のモードに切り替わる。
【0022】
図3に制御回路の構成を示してあり、各行先階ボタン23、ドア開ボタン24a、ドア閉ボタン24b、非常停止用ボタン25、戸閉検出器29の各信号は制御盤10に送られ、これらの信号に基づいて巻上機3を介してかご6の移動や駆動源36を介してかごドア16の開閉、並びにブザー30、スピーカー26に対する駆動がそれぞれ制御される。
【0023】
次に、この実施形態の作用について、図4、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0024】
通常時にエレベータはノーマル運転のモードで運行される(S1)。そしてかご6が目的階に向って移動し、目的階で停止すると(S2)、その信号に基づいて制御盤10による制御でかごドア16とホールドア15が連動して戸開する(S3)。この戸開で利用客の乗り降りが行なわれ、その後所定時間が経過し、あるいはかご6に乗り込んだ利用客がかご操作盤22のドア閉ボタン24bを操作するとかごドア16とホールドア15が連動して戸閉方向に移動する(S4)。次に、ドア15,16の戸閉方向の移動に応じて戸閉検出器29がオンしたか否かが判断される(S5)。
【0025】
S5において、ドア15,16が正常に移動して完全に閉じ切って戸閉検出器29がオンしたときには、その信号に基づいて制御盤10による制御でノーマル運転が継続され、かご6が次の目的階に向って移動する。
【0026】
これに対し、ドア15,16の移動をガイドする敷居18,19に異物としてのごみが挟まっていて、ドア15,16が完全に閉じ切らないとき、すなわち戸閉検出器29がオンしないときには、次に安全回路34がオンであるか否かが判断される(S6)。
【0027】
このとき、ピット部32で保守点検の作業が実施されているにもかかわらず、安全スイッチ33が操作されず、S6で安全回路34がオンの状態にあると判断されたときには、その信号に基づいて制御盤10による制御でかご6のブザー30が鳴動する(S7)。そしてこのブザー30の音が昇降路1内の全体に響き、ピット部32で作業している作業員に危険を知らせる警報となり、これにより安全を確保することができる。
【0028】
ブザー30の鳴動によりエレベータを利用する利用客は異常を感じ、かご6内のドア開ボタン24aあるいはエレベータホール13のドア開ボタン(図示せず)を操作してドア15,16を戸開させることになる(S8)。そしてドア15,16が戸開すると、その信号に基づいて制御盤10による制御でスピーカー26を通して、例えば『敷居にごみが挟まっています。取り除いてください。』というアナウンスが流れる(S9)。すなわち、ドア15,16の異常に関する情報が音声によりエレベータの利用者に報知される。
【0029】
そしてこの報知に基づいてエレベータの利用者が敷居18,19に挟まっているごみを取り除き、ドア閉ボタン24bを介して戸閉操作すると(S10)、ドア15,16が戸閉方向に移動する(S11)。このとき、敷居18,19のごみが除去されているから、ドア15,16は完全に閉じ切る位置にまで移動し、その閉じ切りが戸閉検出器29により検出され、戸閉検出器29がオンする(S12)。そしてこの戸閉検出器29の信号に基づいて制御盤10による制御でかご6が次の目的階に向って移動する。
【0030】
このように、敷居18,19にごみなどの異物が挟まってドア15,16が正常に閉じ切らなかったときには、その理由がエレベータの利用者に報知され、その報知に基づいて異物を取り除くことで、ドア15,16が正常に戸閉し、かご6が通常どおり移動し、したがってかご6が長時間停止することがなく、またエレベータの管理者の出動の必要もなく、エレベータを効率よく運行することが可能となる。
【0031】
なお、S6において、安全回路34がオフとなるのは、かご操作盤22の非常停止用ボタン25や安全スイッチ33が操作されとき、あるいは安全回路34に故障が生じたときであり、したがってこの場合はブザー30が鳴動せず、かご6が停止したまま保持され、その情報がエレベータの管理センターに報知される。
【0032】
以上述べたように、この発明の実施形態によれば、エレベータのドアが正常に閉じ切らない異常が生じたときに、それを検出してエレベータの利用者にブザー30及びスピーカー26を介して報知することができる。そして、その報知に基づいて異常の原因を取り除くことにより、エレベータの運行中断を防止して効率的な運行を達成することができる。さらに、エレベータの運行中に、昇降路1のピット部32内で安全スイッチ33を操作しないまま作業が行なわれているときに、前記ブザー30の鳴動音をその警告用の音として利用して安全を図ることができる。
【0033】
なお、以上において説明したこの発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この発明の新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1…昇降路
2…機械室
3…巻上機
6…かご
10…制御盤
15…ホールドア
16…かごドア
18.19…敷居
22…かご操作盤
23…行先階ボタン
24a…ドア開ボタン
24b…ドア閉ボタン
25…非常停止用ボタン
26…スピーカー
29…戸閉検出器
30…ブザー
32…ピット部
33…安全スイッチ
34…安全回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのドアが正常通りに閉じきらないときにそれを検出する戸閉検出手段と、
前記戸閉検出手段により前記ドアの閉じ切りが検出されない異常が生じたときに、エレベータの利用者に対してその異常の発生を音で報知する鳴動報知手段、及びその異常の原因を取り除く旨の情報を音声で報知する音声報知手段と、
を具備することを特徴とするエレベータのドア異常報知装置。
【請求項2】
エレベータのかごが昇降する昇降路のピット部で保守点検の作業を行なう際に操作する安全スイッチを備え、その安全スイッチが操作されたときに、エレベータの運行を制御する制御手段の安全回路がオンしてエレベータの運行モードがノーマル運転から点検運転のモードに切り替わるエレベータであって、
前記戸閉検出手段により前記ドアの閉じ切りが検出されないときに、前記安全回路がオンしているか否かが判断され、オンであるときに、前記鳴動報知手段が動作することを特徴とする請求項1に記載のエレベータのドア異常報知装置。
【請求項3】
前記鳴動報知手段はブザーを含み、前記音声報知手段はスピーカーを含む構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータのドア異常報知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−86978(P2012−86978A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237529(P2010−237529)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】