エンジンの燃料噴射制御装置
【課題】エンジン回転数が急速にアイドリング領域に突入したときに、O2フィードバックによる補正値更新処理の遅れで空燃比がオーバーリッチ傾向になるのを防止する。
【解決手段】補正量決定部25は、排気ガス中の酸素濃度に基づいて、エンジンの空燃比が理論空燃比に収斂するように、燃料の基本噴射時間を補正する補正量KO2を決定する。補正部26は、補正量KO2を使用して燃料噴射時間を算出する。補正量KO2は基準補正量に補正項を加減算して算出される。運転領域判定部20は、エンジン回転数Neが、所定回転数未満のA領域(アイドリング領域)にあるか、所定回転数以上のB領域にあるかを判定する。補正量決定部25が、エンジン回転数域がB領域からA領域へ移行後の所定時間、A領域での補正項として、B領域での第2の補正項より大きい第1の補正項を使用して補正量KO2を算出する。
【解決手段】補正量決定部25は、排気ガス中の酸素濃度に基づいて、エンジンの空燃比が理論空燃比に収斂するように、燃料の基本噴射時間を補正する補正量KO2を決定する。補正部26は、補正量KO2を使用して燃料噴射時間を算出する。補正量KO2は基準補正量に補正項を加減算して算出される。運転領域判定部20は、エンジン回転数Neが、所定回転数未満のA領域(アイドリング領域)にあるか、所定回転数以上のB領域にあるかを判定する。補正量決定部25が、エンジン回転数域がB領域からA領域へ移行後の所定時間、A領域での補正項として、B領域での第2の補正項より大きい第1の補正項を使用して補正量KO2を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃料噴射制御装置に関するものであり、特に、排気ガス中の酸素濃度に基づいて吸入混合気を理論空燃比に収斂させるフィードバック制御を含むエンジンの燃料噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃費や排気ガス成分の規制(エミッション規制)の観点から、排気系に設けた酸素センサによって排気中の酸素濃度を検出し、この検出値に基づいて求められた補正量により吸入混合気を適正な空燃比つまり理論空燃比に収斂させるフィードバック制御が行われている。一般に、このようなフィードバック制御は、エンジンの吸気負圧とエンジン回転数とによって燃料噴射量を決定するアイドル回転数付近、つまり低回転数領域で行われる。例えば、特許文献1に、酸素濃度センサの検出値に基づいて空燃比フィードバック制御を行う空燃比制御装置において、減速時には、エンジン回転数が所定値に低下するまでフィードバック制御を禁止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−81533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの減速時には、燃料噴射量を少なくするように補正量を小さくする制御が行われるが、走行中に急減速を行ってアイドル回転数付近に突入する時等には、エンジン回転数の急激な低下に対して補正量を小さくするフィードバック制御による処理が追従できず、空燃比がオーバーリッチ状態になりやすい。
【0005】
また、上述のような急減速時には、エンジンの燃焼時に発生したカーボンの影響で、吸気バルブの全閉時に生ずる隙間により、燃焼室から吸気管内に混合気が吹き戻されることもあり、この現象が前記アイドル回転数付近への突入と重なった場合には、より一層、空燃比がオーバーリッチ状態となる条件が作られやすい。
【0006】
特許文献1に記載された空燃比制御装置では、減速時は、エンジン回転数が所定値に低下するまでフィードバック制御を禁止し、エンジン回転数が所定値以下に低下してからフィードバック制御を行うようにしているので、フィードバック制御開始時にエンジンが急減速中である場合には、エンジン回転数の急激な低下に対してフィードバック制御の処理が追いつかず、空燃比がリッチ状態になりやすい。さらに、前述のようにカーボンによるバルブ隙間が生じた場合には、オーバーリッチを招く可能性がより一層高くなるため、適切なフィードバック制御を行うことのできる領域が少なくなるという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記課題に対して、エンジン回転数の急激な低下に対してフィードバック制御の追従性を向上させて適切なフィードバック制御を行うことができる領域を広げながら、前述のようにカーボンの影響が生じても空燃比がオーバーリッチになるのを防止することができるエンジンの燃料噴射制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明は、排気ガス中の酸素濃度に基づいて、エンジンの空燃比が理論空燃比に収斂するようにエンジンへ供給される燃料の噴射量を決定する基本噴射時間の補正量を決定する補正量決定手段と、該補正量と基本噴射時間とを使用してエンジンに対する燃料噴射時間を算出する燃料噴射量算出手段とを有し、前記補正量が、基準補正量に補正項を加減算して算出されるエンジンの燃料噴射制御装置において、エンジン回転数が、所定回転数未満の第1領域にあるか、前記所定回転数以上の第2領域にあるかを判定する運転領域判定手段を具備し、前記補正量決定手段が、エンジン回転数域が前記第2領域から前記第1領域へ移行後の所定時間、前記第1領域での補正項として、前記第2領域での第2の補正項より大きい第1の補正項を使用して前記補正量を算出するように構成されている点に第1の特徴がある。また、本発明は、前記運転領域判定手段で使用されるエンジンの所定回転数が、エンジンのアイドル運転域か否かを判定するための値である点に第2の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、エンジン始動後の所定時間は、エンジン回転数が前記第1領域および第2領域のいずれにあるかに拘わらず、前記補正項として固定値を使用して前記補正量を算出する点に第3の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、エンジン回転数域が、前記第2領域から前記第1領域へ移行してから所定時間経過後、前記補正項を、第1の補正項から第2の補正項へ切り替える点に第4の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、前記第1の補正項から前記第2の補正項への切り替えを行った後、エンジン回転数が前記第2領域になるまで補正項として第2の補正項を維持する点に第5の特徴がある。
【0012】
また、本発明は、前記第1の補正項から前記第2の補正項への切り替えを行うに際し、前記第1の補正項を漸減して前記第2の補正項へ収斂させていく点に第6の特徴がある。
【0013】
また、本発明は、前記第1の補正項から前記第2の補正項への切り替えを行うに際し、前記第1の補正項を所定量ずつ段階的に漸減して前記第2の補正項へ収斂させていく点に第7の特徴がある。
【0014】
さらに、本発明は、前記エンジンの吸気負圧の最新値と、1行程前の負圧値との偏差量を算出する偏差算出手段をさらに備え、前記基本噴射時間が、エンジン回転数と吸気負圧との関数として決定されるとともに、前記偏差算出手段で算出された偏差量が所定の偏差量よりも大きいときに、前記第1領域において前記第2補正量より大きい前記第1補正量を使用して前記補正量を算出する点に第8の特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
第1の特徴を有する本発明によれば、エンジン回転数が低い第1領域では、エンジン回転数が高い第2領域で使用されるものよりも大きい補正項が使用されて補正量が算出されるので、1回のフィードバック制御において基本噴射時間つまり基本噴射量が補正される量(フィードバック量)を大きくできる。したがって、例えば、エンジンが急減速されて第1領域に突入した場合に、フィードバック補正量の変化を大きくすることによって短時間で空燃比を理論空燃比(目標とする空燃比)に追従させることができ、フィードバック制御を行うことができる領域を広げることができるとともに、前述のようにカーボンの影響が生じた場合であっても、オーバーリッチを防止して燃費やエミッションの改善を図ることができる。さらに、補正項を大きくしている時間を制限しているので、大きい補正項を使用し続けることによる大きいフィードバック量によってエンジン回転数が変動するのを防止することもできる。また、第2の特徴を有する本発明によれば、上記効果が、第1領域が、特にオーバーリッチになりやすく注意を要するアイドル運転域に設定される場合に顕著となる。
【0016】
第3の特徴を有する本発明によれば、エンジン始動後所定時間の間は、大きい補正項を使用する処理が行われないので、エンジン始動直後にエンジン回転数が変動するのを防止することができ、始動性を向上させることができる。
【0017】
第4の特徴を有する本発明によれば、所定時間経過後は第1の補正項より小さい第2の補正項を使用するので、大きいフィードバック量によってエンジン回転数が変動するのを防止することができる。
【0018】
第5の特徴を有する本発明によれば、第1領域で第1の補正項から第2の補正項に切り替わった後、エンジン回転数が高い第2領域になるまでその小さい第2補正項を維持するので、所定時間経過後に使用される補正項によってエンジン回転数を安定化させて、エンジン回転数の変動が大きくなるのを回避することができる。
【0019】
第6の特徴を有する本発明によれば、補正項の急激な切り替えに伴うエンジンのショックを減らすことができるので、エンジン回転数の変動を抑制することができる。
【0020】
第7の特徴を有する本発明によれば、第1の補正項から第2の補正項への切り替え時に、漸次段階的に目標となる第2補正項へ精度良く補正項を小さくしていくことができる。
【0021】
第8の特徴を有する本発明によれば、エンジン回転数による判断に加え、吸気負圧も判断して補正項の切り替えを行うようにしたので、例えば、燃焼に伴って発生するカーボンが吸気バルブに噛み込んだ時等、吸気負圧が低下して、吸気負圧の関数として決定される基本噴射時間が長くなることによるオーバーリッチを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料噴射制御装置の機能を示すブロック図である。
【図2】補正量決定部に予め設定されている補正項の一例を示す図である。
【図3】補正項とエンジン回転数によって区分される領域との関係を示す概念図である。
【図4】O2センサの出力の変化と選択される補正項との対応を示す図である。
【図5】本実施形態にかかる制御の概要を示す減速時のタイミングチャートである。
【図6】O2フィードバック制御に係るフローチャートである。
【図7】フィードバック制御開始判定のフローチャートである。
【図8】補正項設定の処理を示すフローチャートである。
【図9】補正項の段階的な戻しの概念図である。
【図10】図5の要部拡大図である。
【図11】、吸気バルブへのカーボンの付着による吸気負圧PBの異常検出装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る燃料噴射制御装置のシステム構成を示すブロック図であり、特に、低回転領域であるアイドル回転領域での制御に係る構成を示す図である。同図において、燃料噴射制御装置1は、自動二輪車等の駆動源である内燃機関つまりエンジンに設けられる。燃料噴射制御装置1は、燃料噴射量決定部として機能する制御部2と、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ(以下、「Neセンサ」という)3と、エンジンの排気系に設けられ、酸素濃度検出手段としての機能を果たす酸素濃度センサ(以下、「O2センサ」という)4と、エンジンの吸気負圧PBを検出する負圧センサ(以下、「PBセンサ」という)5とを備える。制御部2で決定された燃料噴射量(つまり燃料噴射量を表す燃料噴射時間の指示)は噴射弁駆動部6に入力され、噴射弁駆動部6は、入力された燃料噴射時間の指示に従って燃料噴射弁7を駆動する。
【0024】
Neセンサ3、O2センサ4、およびPBセンサ5はいずれも周知の構成を有するものであり、エンジンへの取り付け位置も、周知の位置であればよいので、形状の図示および構成の詳細な説明は省略する。
【0025】
制御部2は、運転領域判定部20、基本噴射時間算出部21、基本噴射時間補正部22、およびPB−Ne制御マップ23を備える。さらに、基本噴射時間補正部22は、空燃比判定部24、補正量決定部25、および補正部26を含む。制御部2の各部の機能は、マイクロコンピュータによって実行されるコンピュータプログラムで実現することができる。
【0026】
PB−Ne制御マップ23は、Neセンサ3から入力されるエンジン回転数NeとPBセンサ5から入力される吸気負圧PBとによって基本噴射時間T0を出力するように、エンジン回転数Neと吸気負圧PBの関数としての基本噴射時間T0を記憶した記憶手段であり、マイクロコンピュータのメモリによって構成できる。
【0027】
PB−Ne制御マップ23は、エンジン回転数Neとスロットル開度とから判定される低回転領域において基本噴射時間T0を供給するために用いられるものである。エンジン回転数Neとスロットル開度とから判定される中速以上の領域では、エンジン回転数Neとスロットル開度とに基づいて基本噴射時間T0を供給するNe−TH制御マップが用いられる。中速以上の領域での制御は周知の手法で制御されるので、具体的な説明は省略する。
【0028】
運転領域判定部20は、Neセンサ3から入力されるエンジン回転数Neを、領域判定用の回転数値と比較してアイドル領域(以下「A領域」という)であるかアイドル領域以外のその他領域(以下、「B領域」という)であるかを判定する。判定された運転領域は、A領域かB領域かを示すデータとして補正量決定部25に入力される。
【0029】
空燃比判定部24は、O2センサ4から入力される酸素濃度検知データに基づいて、空燃比A/Fが理論空燃比に対してリッチ(濃い)か、リーン(薄い)かを判定してリッチまたはリーンを示すデータを補正量決定部25に入力する。
【0030】
補正量決定部25には、A領域かB領域かに対応して、それぞれ、空燃比A/Fがリッチ側およびリーン側の一方から他方に反転した直後で使用される値と、それ以外の、リッチ側およびリーン側の一方内で変化している間に使用される値とからなる補正項(PI補正項)が設定されている。したがって、補正量決定部25は、A領域かB領域か否かを示すデータと、空燃比A/Fがリッチ側およびリーン側の一方から他方に反転した直後か、それ以外のタイミングかに従って選択された補正項を加減算して補正量KO2を決定する。補正量KO2は、「基準補正量(1.0)±補正項」として決定される。補正項は、リッチ側では負、リーン側では正の値である。
【0031】
補正部26は、基本噴射時間T0に補正量KO2を乗算して燃料噴射時間Tiを算出し、噴射弁駆動部6に入力する。
【0032】
図2は、補正量決定部25に予め設定されている補正項の一例を示す図である。図2において、補正項は、空燃比A/Fが反転した直後では、それ以外のタイミングと比べて大きい値が選択される。図2に示す例では、エンジン回転数Neが大きいB領域では、空燃比A/Fの反転直後に使用される補正項(+PRおよび−PL)は、「0.01」であり、それ以外のタイミングで使用される補正項(+IRおよび−IL)は「0.001」である。
【0033】
一方、エンジン回転数Neが2500rpm未満のA領域では、空燃比A/Fの反転直後に使用される補正項(+PRおよび−PL)は、「0.1」であり、それ以外のタイミングで使用される補正項(+IRおよび−IL)は「0.02」である。このように、A領域においては、B領域に比べて、それぞれ10倍および20倍という極端に大きい値が選択される。つまり、エンジン回転数NeがA領域にある場合には、予め設定されている補正項中で最大となる補正項が選択されることになる。
【0034】
図3は、補正項と領域との関係を示す概念図である。図3に示すように、エンジン回転数Neが2500rpm未満のA領域では、それ以上のエンジン回転数であるB領域と比べて極端に大きい補正項が設定される。但し、エンジン回転数NeがA領域に、例えば10秒間留まっていた場合には、B領域と同じ補正項の値に戻される。これは、エンジン回転数NeがA領域に一時的に留まっている間に、A領域において使用される補正項KO2によるフィードバック制御によって、空燃比が理論空燃比に近づいたと推測できる
からである。
【0035】
図4は、O2センサ4の出力の変化と、選択される補正項との対応を示す図である。図4において、横軸は時間軸であり、縦軸はO2センサ4の出力VO2と補正項の値である。空燃比A/Fがリッチ側かリーン側かは、O2センサ4の出力VO2が、リッチかリーンかの判断のための閾値(リッチ/リーン判定電圧)以上か否かに従って判断される。そして、その判断結果がリッチ側かリーン側にある間の処理か、さらにはリッチ側およびリーン側の一方から他方への反転直後の処理かによって選択された補正項が使用されている。
【0036】
例えば、空燃比A/Fがリッチ側からリーン側に反転したタイミングt1の直後では、大きい正の補正項(+PR)が使用され、その補正項(+PR)は、タイミングt2で、小さい補正項(+IR)に切り替わり、その補正項(+IR)は空燃比A/Fがリーン側からリッチ側に反転するタイミングt3まで維持される。したがって、所定時間毎に更新される補正量KO2は、「1.0」から段階的に増大される。
【0037】
そして、空燃比A/Fがリッチ側に反転したタイミングt3の直後では、大きい負の補正項(−PL)が使用され、その補正項(−PL)は、タイミングt4で、小さい補正項(−IL)に切り替わり、その補正項(−IL)は空燃比がリッチ側からリーン側に反転するタイミングt5まで維持される。
【0038】
図5は、本実施形態にかかる制御の概要を示す減速時のタイミングチャートである。図5において、タイミングT1では、エンジン回転数Neおよびスロットル開度が所定値以下に低下し、燃料噴射時間を出力するNe−TH制御マップが、低回転用のPB−Ne制御マップに切り替えられる。ここで、O2センサ4の出力に基づくフィードバック制御が開始され、空燃比判定部24で判定された空燃比A/Fを理論空燃比に収斂するため、補正量KO2が制御される。
【0039】
Ne−TH制御マップからPB−Ne制御マップに切り替えられた後、エンジン回転数Neが2500rpmまで低下したタイミングT2で、補正項がB領域用からA領域用の値(図2参照)に切り替えられる。このA領域用の補正項は、所定時間(例えば、10秒)経過するタイミングT3まで維持される。すなわち、エンジン回転数Neが2500rpm未満に低下する以前と比べて、補正量KO2は大きく変化する。したがって、O2フィードバック制御は大きい応答速度で行われ、急減速の場合にも追従することができる。
【0040】
そして、所定時間経過後のタイミングT3では、補正項がA領域以外の領域であるB領域用の値(図2参照)に切り替えられる。A領域に入ってから所定時間経過後は、空燃比が安定してきたと推定できるので、O2フィードバックの速度を急減速時ではない通常時に戻すためである。
【0041】
図6は、O2フィードバック制御に係るフローチャートである。図6において、ステップS1では、O2フィードバック制御開始条件が満足されているか否かを判断する。この判断条件は、図8に関して後で詳述する。O2フィードバック制御開始条件が満足されていれば、ステップS2に進む。ステップS2では、運転領域判定部20の機能により、エンジン回転数Neに基づく領域がA領域か、B領域かを判断する。領域がA領域であれば、ステップS3に進み、領域がB領域であればステップS4に進む。
【0042】
ステップS3では、補正項マップ(図2参照)を使用して領域Aに対応する補正項を選択する。ステップS4では、A領域用の補正項を保持する時間を計測するタイマがセットされたときに「1」がセットされるタイムフラグに「0」をセットする。ステップS5では、補正項マップ(図2参照)を使用して領域Bに対応する補正項を選択する。
【0043】
図7は、フィードバック制御開始判定のフローチャートである。ステップS10では、エンジンの冷却水温TWが所定の暖機完了温度(例えば40℃)以上か否かによって暖機完了か否かを判断する。ステップS10が肯定となれば、ステップS11に進んで制御領域がPB−Ne制御マップを使用する領域か否かを判断する。ステップS11の判断はスロットル開度およびエンジン回転数Neが所定値以下か否かによって行うことができる。
【0044】
ステップS11が肯定となれば、ステップS12に進んでO2センサ4が活性化したか否かを判断する。O2センサ4が活性化されているか否かは、一般的には、エンジン始動からの経過時間またはO2センサ4の温度や水温等に基づいて判断される。エンジン始動からの経過時間は、O2センサ4が活性化されるまでに要する時間であり、実験結果等に基づいて予め設定する。
【0045】
ステップS12が肯定ならば、ステップS13に進んでエンジン回転数NeがO2フィードバック実行領域を示す値以内か否かを判断する。O2フィードバック実行領域を示すエンジン回転数Neは、例えば、1200rpm〜8000rpmの範囲である。
【0046】
このように、ステップS10〜ステップS13の判断がすべて肯定となれば、図6のステップS2に進む。したがって、エンジン始動後所定の時間が経過してO2センサ4が活性化するまでは、エンジン回転数Neによってエンジンの状態がA領域にあるとされる場合であっても、O2フィードバック制御は開始されず、図6のステップS2にも進まないので、エンジン状態がA領域であったとしても補正項を大きくしない固定値(補正項0)で運転される。
【0047】
図8は、ステップS3の詳細を示すフローチャートである。図8において、ステップS30では、タイムフラグが「1」であるか否かを判別する。A領域に入った直後は、タイムフラグは初期値「0」であるので、ステップS31に進み、A領域用に対応する補正項を補正量KO2の計算部(補正量決定部25の機能)にセットする。これにより、補正量決定部25では、「基準補正量(1.0)±補正項」が計算されて補正量が決定される。
【0048】
ステップS32では、A領域用の補正項を保持する時間(10秒)をタイマTAにセットする。ステップS33では、タイマTAがセットされたことを示すため、タイムフラグに「1」をセットする。ステップS34では、タイマTAにセットした時間が経過したか否かを判断する。
【0049】
タイマTAにセットした時間が経過するまでは図6のフローチャートに戻る。タイマTAにセットした時間が経過したならば、ステップS35に進んで、補正項をA領域用の補正項を段階的にB領域用の補正項に戻すため、補正項の目標値としてB領域用の補正項をセットする。ステップS36では、現在の補正項から予め設定した補正項減算値を減算する。徐々に補正項をB領域用の値に戻すためである。
【0050】
ステップS37では、ステップS36で計算された現在の補正項が、補正項の目標値未満であるか否かを判断する。ステップS37が肯定ならば、ステップS38に進んで補正項としてB領域用の補正項を維持する。つまり、前記補正量決定部25が、大きい補正項から小さい補正項への切り替えを行った後、エンジン回転数がB領域になるまで補正項としてこの小さい補正項を維持する。ステップS37が否定、つまり補正項がまだB領域用の補正項に戻っていないときは、ステップS39に進んで、ステップS36で計算された現在の補正項を補正量KO2の計算部にセットする。
【0051】
図9は、図8に関して説明した補正項の段階的な戻しの概念図である。図9では、時間の経過に伴う空燃比A/F、エンジン回転数Ne、補正量KO2の関係を示す。エンジン回転数Neが低下して所定回転数未満になった時点T2で補正項をA領域用に設定可能な最大値まで大きくする。これによって補正量KO2は最大値KO2maxに切り替えられる。この最大値KO2maxは、エンジン回転数NeがA領域にある間の所定時間TAだけ維持され、タイミングT3aから段階的に補正項が低減され、補正量KO2は徐々に小さくなる。そして、補正項が目標値まで小さくなったタイミングT3bから後は、補正項が目標値であるB領域用の値に維持される。この補正量KO2の変化に応じて空燃比A/Fは、大きく振れた状態から徐々に小さい振幅に収束される。
【0052】
このように、補正量KO2を徐々に小さくしていくことによって、補正量の切り替え直後に起きる空燃比の偏りを防止することができる。すなわち、補正量は「1.0」を中心に、補正項を加減算しているので、常に上下に振れている。したがって、例えば、補正量KO2の振れ幅が上の最大値にあるタイミングでB領域用の小さい補正項に戻すと、その直後に、空燃比は一旦リッチ方向に大きく偏る。また、例えば、補正量KO2の振れ幅が下の最大値にあるタイミングでB領域用の小さい補正項に戻すと、その直後に、空燃比は一旦リーン方向に大きく偏る。図8、図9に示した制御をすることによってこの空燃比の偏りを抑制することができる。
【0053】
本実施形態による効果を、図5の要部を拡大した図10を参照して説明する。なお、補正量KO2と空燃比A/Fとは区別して見やすいように上下にずらせて記載している。図10において、減速中、タイミングT1においてO2フィードバック制御が開始されると、O2センサ4の出力に応じて、補正量KO2が低減されて燃料噴射時間が短くなり、エンジン回転数Neの低下に応じた空燃比A/Fになるように制御される。しかし、エンジン回転数Neの低下が急激であると、1回ごとのフィードバック制御における補正量KO2が小さいので、点線で示すように補正量KO2が小さくなるのに時間がかかり、結果的に、空燃比A/Fは、図中点線で記載したように低下してオーバーリッチになっていくおそれがある。
【0054】
そこで、エンジン回転数Neが2500rpmまで低下したタイミングT2で1回ごとのフィードバック制御における補正項を大きくして補正量KO2の低減の程度を大きくする。これにより、タイミングT2直後で、補正量KO2はそれ以前よりも急激に小さくなり、その結果、空燃比A/FがタイミングT2から点線で示すように小さくなってオーバーリッチになるのが急速に抑制され、実線で示すように短時間で理論空燃比に収斂される。
【0055】
なお、補正項を大きくしてエンジンの低回転域における急激なエンジン回転数Neの低下に追随できるようにO2フィードバック速度を上げることによる効果は、エンジンの燃焼時に発生するカーボンが吸気バルブに付着したような場合にも、より良く発揮する。
【0056】
燃焼室で発生したカーボンが吸気バルブに付着すると、吸気バルブが完全に閉じないことがある。この場合、吸気負圧PBが正常時と比べて低下する。その結果、PB−Ne制御マップによって基本噴射時間を算出している制御では、長い基本噴射時間をマップから読み込んでしまい、空燃比A/Fはオーバーリッチになりやすい。
【0057】
そこで、本実施形態の燃料噴射量制御を適用すれば、空燃比A/Fがオーバーリッチになるのを防止することができる。
【0058】
図11は、吸気バルブへのカーボンの付着による吸気負圧PBの異常検出装置の機能ブロック図である。図11において、行程検出部10は、エンジンの圧縮行程から排気行程までの区間を検出して、その区間の間、所定間隔で行程検出信号を出力する。エンジンサイクルの各行程の判別は周知の手法によることができる。PB検出部11は、PBセンサ5で検出した吸気負圧PBを、前記行程検出信号に応答して取り込み、その区間での平均値を偏差検出部12に入力する。この平均値は、前回値記憶部13に記憶される。前回値記憶部13は、PB検出部11で吸気負圧PBの今回の平均値が算出されて出力される毎に、その今回値で更新される。
【0059】
偏差検出部12は、PB検出部11から入力される今回値および前回値記憶部13から読み出される前回値との差を計算し、異常検出部14に入力する。異常検出部14は、偏差算出部12で計算された差が、予め設定した値を越えているか否かで、吸気負圧PBが異常であるか否かを判定する。異常が検出された場合は、PB異常信号を出力する。
【0060】
このPB異常信号は、図7に関して説明したフィードバック制御開始判定処理における判定基準の一つとして加えることができる。例えば、図7のステップS10の直前に、PB異常信号の有無を判別する処理ステップを設け、PB異常信号が有ると判断されたときに、ステップS10に進むように構成する。これにより、カーボンが吸気バルブに噛み込んだ場合などに発生する吸気負圧PBの異常な低下を検出し、そのような異常が生じた場合の急減速時に空燃比A/Fがオーバーリッチとなることを防止できる。
【0061】
上述のように、本実施形態によれば、走行中から急減速を行って、エンジン回転数がアイドル回転数付近に突入した時に、エンジン回転数の急な減少に対して補正量KO2を小さくする処理が追いつかずにオーバーリッチを招くという現象を防止することができる。特に、吸気バルブへのカーボンの噛み込みによる吸気負圧PBの低下によるオーバーリッチにもよりよく対応できる。
【符号の説明】
【0062】
1…燃料噴射制御装置、 2…制御部(燃料噴射量決定部)、 3…Neセンサ、 4…O2センサ、 5…PBセンサ、 6…噴射弁駆動部、 7…燃料噴射弁、 10…行程検出部、 11…PB検出部、 12…偏差検出部、 20…運転領域判定部、 21…基本噴射時間算出部、 22…基本噴射時間補正部、 23…PB−Ne制御マップ、 24…空燃比判定部、 25…補正量決定部、 26…補正部、
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃料噴射制御装置に関するものであり、特に、排気ガス中の酸素濃度に基づいて吸入混合気を理論空燃比に収斂させるフィードバック制御を含むエンジンの燃料噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃費や排気ガス成分の規制(エミッション規制)の観点から、排気系に設けた酸素センサによって排気中の酸素濃度を検出し、この検出値に基づいて求められた補正量により吸入混合気を適正な空燃比つまり理論空燃比に収斂させるフィードバック制御が行われている。一般に、このようなフィードバック制御は、エンジンの吸気負圧とエンジン回転数とによって燃料噴射量を決定するアイドル回転数付近、つまり低回転数領域で行われる。例えば、特許文献1に、酸素濃度センサの検出値に基づいて空燃比フィードバック制御を行う空燃比制御装置において、減速時には、エンジン回転数が所定値に低下するまでフィードバック制御を禁止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−81533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの減速時には、燃料噴射量を少なくするように補正量を小さくする制御が行われるが、走行中に急減速を行ってアイドル回転数付近に突入する時等には、エンジン回転数の急激な低下に対して補正量を小さくするフィードバック制御による処理が追従できず、空燃比がオーバーリッチ状態になりやすい。
【0005】
また、上述のような急減速時には、エンジンの燃焼時に発生したカーボンの影響で、吸気バルブの全閉時に生ずる隙間により、燃焼室から吸気管内に混合気が吹き戻されることもあり、この現象が前記アイドル回転数付近への突入と重なった場合には、より一層、空燃比がオーバーリッチ状態となる条件が作られやすい。
【0006】
特許文献1に記載された空燃比制御装置では、減速時は、エンジン回転数が所定値に低下するまでフィードバック制御を禁止し、エンジン回転数が所定値以下に低下してからフィードバック制御を行うようにしているので、フィードバック制御開始時にエンジンが急減速中である場合には、エンジン回転数の急激な低下に対してフィードバック制御の処理が追いつかず、空燃比がリッチ状態になりやすい。さらに、前述のようにカーボンによるバルブ隙間が生じた場合には、オーバーリッチを招く可能性がより一層高くなるため、適切なフィードバック制御を行うことのできる領域が少なくなるという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記課題に対して、エンジン回転数の急激な低下に対してフィードバック制御の追従性を向上させて適切なフィードバック制御を行うことができる領域を広げながら、前述のようにカーボンの影響が生じても空燃比がオーバーリッチになるのを防止することができるエンジンの燃料噴射制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明は、排気ガス中の酸素濃度に基づいて、エンジンの空燃比が理論空燃比に収斂するようにエンジンへ供給される燃料の噴射量を決定する基本噴射時間の補正量を決定する補正量決定手段と、該補正量と基本噴射時間とを使用してエンジンに対する燃料噴射時間を算出する燃料噴射量算出手段とを有し、前記補正量が、基準補正量に補正項を加減算して算出されるエンジンの燃料噴射制御装置において、エンジン回転数が、所定回転数未満の第1領域にあるか、前記所定回転数以上の第2領域にあるかを判定する運転領域判定手段を具備し、前記補正量決定手段が、エンジン回転数域が前記第2領域から前記第1領域へ移行後の所定時間、前記第1領域での補正項として、前記第2領域での第2の補正項より大きい第1の補正項を使用して前記補正量を算出するように構成されている点に第1の特徴がある。また、本発明は、前記運転領域判定手段で使用されるエンジンの所定回転数が、エンジンのアイドル運転域か否かを判定するための値である点に第2の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、エンジン始動後の所定時間は、エンジン回転数が前記第1領域および第2領域のいずれにあるかに拘わらず、前記補正項として固定値を使用して前記補正量を算出する点に第3の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、エンジン回転数域が、前記第2領域から前記第1領域へ移行してから所定時間経過後、前記補正項を、第1の補正項から第2の補正項へ切り替える点に第4の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、前記第1の補正項から前記第2の補正項への切り替えを行った後、エンジン回転数が前記第2領域になるまで補正項として第2の補正項を維持する点に第5の特徴がある。
【0012】
また、本発明は、前記第1の補正項から前記第2の補正項への切り替えを行うに際し、前記第1の補正項を漸減して前記第2の補正項へ収斂させていく点に第6の特徴がある。
【0013】
また、本発明は、前記第1の補正項から前記第2の補正項への切り替えを行うに際し、前記第1の補正項を所定量ずつ段階的に漸減して前記第2の補正項へ収斂させていく点に第7の特徴がある。
【0014】
さらに、本発明は、前記エンジンの吸気負圧の最新値と、1行程前の負圧値との偏差量を算出する偏差算出手段をさらに備え、前記基本噴射時間が、エンジン回転数と吸気負圧との関数として決定されるとともに、前記偏差算出手段で算出された偏差量が所定の偏差量よりも大きいときに、前記第1領域において前記第2補正量より大きい前記第1補正量を使用して前記補正量を算出する点に第8の特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
第1の特徴を有する本発明によれば、エンジン回転数が低い第1領域では、エンジン回転数が高い第2領域で使用されるものよりも大きい補正項が使用されて補正量が算出されるので、1回のフィードバック制御において基本噴射時間つまり基本噴射量が補正される量(フィードバック量)を大きくできる。したがって、例えば、エンジンが急減速されて第1領域に突入した場合に、フィードバック補正量の変化を大きくすることによって短時間で空燃比を理論空燃比(目標とする空燃比)に追従させることができ、フィードバック制御を行うことができる領域を広げることができるとともに、前述のようにカーボンの影響が生じた場合であっても、オーバーリッチを防止して燃費やエミッションの改善を図ることができる。さらに、補正項を大きくしている時間を制限しているので、大きい補正項を使用し続けることによる大きいフィードバック量によってエンジン回転数が変動するのを防止することもできる。また、第2の特徴を有する本発明によれば、上記効果が、第1領域が、特にオーバーリッチになりやすく注意を要するアイドル運転域に設定される場合に顕著となる。
【0016】
第3の特徴を有する本発明によれば、エンジン始動後所定時間の間は、大きい補正項を使用する処理が行われないので、エンジン始動直後にエンジン回転数が変動するのを防止することができ、始動性を向上させることができる。
【0017】
第4の特徴を有する本発明によれば、所定時間経過後は第1の補正項より小さい第2の補正項を使用するので、大きいフィードバック量によってエンジン回転数が変動するのを防止することができる。
【0018】
第5の特徴を有する本発明によれば、第1領域で第1の補正項から第2の補正項に切り替わった後、エンジン回転数が高い第2領域になるまでその小さい第2補正項を維持するので、所定時間経過後に使用される補正項によってエンジン回転数を安定化させて、エンジン回転数の変動が大きくなるのを回避することができる。
【0019】
第6の特徴を有する本発明によれば、補正項の急激な切り替えに伴うエンジンのショックを減らすことができるので、エンジン回転数の変動を抑制することができる。
【0020】
第7の特徴を有する本発明によれば、第1の補正項から第2の補正項への切り替え時に、漸次段階的に目標となる第2補正項へ精度良く補正項を小さくしていくことができる。
【0021】
第8の特徴を有する本発明によれば、エンジン回転数による判断に加え、吸気負圧も判断して補正項の切り替えを行うようにしたので、例えば、燃焼に伴って発生するカーボンが吸気バルブに噛み込んだ時等、吸気負圧が低下して、吸気負圧の関数として決定される基本噴射時間が長くなることによるオーバーリッチを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料噴射制御装置の機能を示すブロック図である。
【図2】補正量決定部に予め設定されている補正項の一例を示す図である。
【図3】補正項とエンジン回転数によって区分される領域との関係を示す概念図である。
【図4】O2センサの出力の変化と選択される補正項との対応を示す図である。
【図5】本実施形態にかかる制御の概要を示す減速時のタイミングチャートである。
【図6】O2フィードバック制御に係るフローチャートである。
【図7】フィードバック制御開始判定のフローチャートである。
【図8】補正項設定の処理を示すフローチャートである。
【図9】補正項の段階的な戻しの概念図である。
【図10】図5の要部拡大図である。
【図11】、吸気バルブへのカーボンの付着による吸気負圧PBの異常検出装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る燃料噴射制御装置のシステム構成を示すブロック図であり、特に、低回転領域であるアイドル回転領域での制御に係る構成を示す図である。同図において、燃料噴射制御装置1は、自動二輪車等の駆動源である内燃機関つまりエンジンに設けられる。燃料噴射制御装置1は、燃料噴射量決定部として機能する制御部2と、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ(以下、「Neセンサ」という)3と、エンジンの排気系に設けられ、酸素濃度検出手段としての機能を果たす酸素濃度センサ(以下、「O2センサ」という)4と、エンジンの吸気負圧PBを検出する負圧センサ(以下、「PBセンサ」という)5とを備える。制御部2で決定された燃料噴射量(つまり燃料噴射量を表す燃料噴射時間の指示)は噴射弁駆動部6に入力され、噴射弁駆動部6は、入力された燃料噴射時間の指示に従って燃料噴射弁7を駆動する。
【0024】
Neセンサ3、O2センサ4、およびPBセンサ5はいずれも周知の構成を有するものであり、エンジンへの取り付け位置も、周知の位置であればよいので、形状の図示および構成の詳細な説明は省略する。
【0025】
制御部2は、運転領域判定部20、基本噴射時間算出部21、基本噴射時間補正部22、およびPB−Ne制御マップ23を備える。さらに、基本噴射時間補正部22は、空燃比判定部24、補正量決定部25、および補正部26を含む。制御部2の各部の機能は、マイクロコンピュータによって実行されるコンピュータプログラムで実現することができる。
【0026】
PB−Ne制御マップ23は、Neセンサ3から入力されるエンジン回転数NeとPBセンサ5から入力される吸気負圧PBとによって基本噴射時間T0を出力するように、エンジン回転数Neと吸気負圧PBの関数としての基本噴射時間T0を記憶した記憶手段であり、マイクロコンピュータのメモリによって構成できる。
【0027】
PB−Ne制御マップ23は、エンジン回転数Neとスロットル開度とから判定される低回転領域において基本噴射時間T0を供給するために用いられるものである。エンジン回転数Neとスロットル開度とから判定される中速以上の領域では、エンジン回転数Neとスロットル開度とに基づいて基本噴射時間T0を供給するNe−TH制御マップが用いられる。中速以上の領域での制御は周知の手法で制御されるので、具体的な説明は省略する。
【0028】
運転領域判定部20は、Neセンサ3から入力されるエンジン回転数Neを、領域判定用の回転数値と比較してアイドル領域(以下「A領域」という)であるかアイドル領域以外のその他領域(以下、「B領域」という)であるかを判定する。判定された運転領域は、A領域かB領域かを示すデータとして補正量決定部25に入力される。
【0029】
空燃比判定部24は、O2センサ4から入力される酸素濃度検知データに基づいて、空燃比A/Fが理論空燃比に対してリッチ(濃い)か、リーン(薄い)かを判定してリッチまたはリーンを示すデータを補正量決定部25に入力する。
【0030】
補正量決定部25には、A領域かB領域かに対応して、それぞれ、空燃比A/Fがリッチ側およびリーン側の一方から他方に反転した直後で使用される値と、それ以外の、リッチ側およびリーン側の一方内で変化している間に使用される値とからなる補正項(PI補正項)が設定されている。したがって、補正量決定部25は、A領域かB領域か否かを示すデータと、空燃比A/Fがリッチ側およびリーン側の一方から他方に反転した直後か、それ以外のタイミングかに従って選択された補正項を加減算して補正量KO2を決定する。補正量KO2は、「基準補正量(1.0)±補正項」として決定される。補正項は、リッチ側では負、リーン側では正の値である。
【0031】
補正部26は、基本噴射時間T0に補正量KO2を乗算して燃料噴射時間Tiを算出し、噴射弁駆動部6に入力する。
【0032】
図2は、補正量決定部25に予め設定されている補正項の一例を示す図である。図2において、補正項は、空燃比A/Fが反転した直後では、それ以外のタイミングと比べて大きい値が選択される。図2に示す例では、エンジン回転数Neが大きいB領域では、空燃比A/Fの反転直後に使用される補正項(+PRおよび−PL)は、「0.01」であり、それ以外のタイミングで使用される補正項(+IRおよび−IL)は「0.001」である。
【0033】
一方、エンジン回転数Neが2500rpm未満のA領域では、空燃比A/Fの反転直後に使用される補正項(+PRおよび−PL)は、「0.1」であり、それ以外のタイミングで使用される補正項(+IRおよび−IL)は「0.02」である。このように、A領域においては、B領域に比べて、それぞれ10倍および20倍という極端に大きい値が選択される。つまり、エンジン回転数NeがA領域にある場合には、予め設定されている補正項中で最大となる補正項が選択されることになる。
【0034】
図3は、補正項と領域との関係を示す概念図である。図3に示すように、エンジン回転数Neが2500rpm未満のA領域では、それ以上のエンジン回転数であるB領域と比べて極端に大きい補正項が設定される。但し、エンジン回転数NeがA領域に、例えば10秒間留まっていた場合には、B領域と同じ補正項の値に戻される。これは、エンジン回転数NeがA領域に一時的に留まっている間に、A領域において使用される補正項KO2によるフィードバック制御によって、空燃比が理論空燃比に近づいたと推測できる
からである。
【0035】
図4は、O2センサ4の出力の変化と、選択される補正項との対応を示す図である。図4において、横軸は時間軸であり、縦軸はO2センサ4の出力VO2と補正項の値である。空燃比A/Fがリッチ側かリーン側かは、O2センサ4の出力VO2が、リッチかリーンかの判断のための閾値(リッチ/リーン判定電圧)以上か否かに従って判断される。そして、その判断結果がリッチ側かリーン側にある間の処理か、さらにはリッチ側およびリーン側の一方から他方への反転直後の処理かによって選択された補正項が使用されている。
【0036】
例えば、空燃比A/Fがリッチ側からリーン側に反転したタイミングt1の直後では、大きい正の補正項(+PR)が使用され、その補正項(+PR)は、タイミングt2で、小さい補正項(+IR)に切り替わり、その補正項(+IR)は空燃比A/Fがリーン側からリッチ側に反転するタイミングt3まで維持される。したがって、所定時間毎に更新される補正量KO2は、「1.0」から段階的に増大される。
【0037】
そして、空燃比A/Fがリッチ側に反転したタイミングt3の直後では、大きい負の補正項(−PL)が使用され、その補正項(−PL)は、タイミングt4で、小さい補正項(−IL)に切り替わり、その補正項(−IL)は空燃比がリッチ側からリーン側に反転するタイミングt5まで維持される。
【0038】
図5は、本実施形態にかかる制御の概要を示す減速時のタイミングチャートである。図5において、タイミングT1では、エンジン回転数Neおよびスロットル開度が所定値以下に低下し、燃料噴射時間を出力するNe−TH制御マップが、低回転用のPB−Ne制御マップに切り替えられる。ここで、O2センサ4の出力に基づくフィードバック制御が開始され、空燃比判定部24で判定された空燃比A/Fを理論空燃比に収斂するため、補正量KO2が制御される。
【0039】
Ne−TH制御マップからPB−Ne制御マップに切り替えられた後、エンジン回転数Neが2500rpmまで低下したタイミングT2で、補正項がB領域用からA領域用の値(図2参照)に切り替えられる。このA領域用の補正項は、所定時間(例えば、10秒)経過するタイミングT3まで維持される。すなわち、エンジン回転数Neが2500rpm未満に低下する以前と比べて、補正量KO2は大きく変化する。したがって、O2フィードバック制御は大きい応答速度で行われ、急減速の場合にも追従することができる。
【0040】
そして、所定時間経過後のタイミングT3では、補正項がA領域以外の領域であるB領域用の値(図2参照)に切り替えられる。A領域に入ってから所定時間経過後は、空燃比が安定してきたと推定できるので、O2フィードバックの速度を急減速時ではない通常時に戻すためである。
【0041】
図6は、O2フィードバック制御に係るフローチャートである。図6において、ステップS1では、O2フィードバック制御開始条件が満足されているか否かを判断する。この判断条件は、図8に関して後で詳述する。O2フィードバック制御開始条件が満足されていれば、ステップS2に進む。ステップS2では、運転領域判定部20の機能により、エンジン回転数Neに基づく領域がA領域か、B領域かを判断する。領域がA領域であれば、ステップS3に進み、領域がB領域であればステップS4に進む。
【0042】
ステップS3では、補正項マップ(図2参照)を使用して領域Aに対応する補正項を選択する。ステップS4では、A領域用の補正項を保持する時間を計測するタイマがセットされたときに「1」がセットされるタイムフラグに「0」をセットする。ステップS5では、補正項マップ(図2参照)を使用して領域Bに対応する補正項を選択する。
【0043】
図7は、フィードバック制御開始判定のフローチャートである。ステップS10では、エンジンの冷却水温TWが所定の暖機完了温度(例えば40℃)以上か否かによって暖機完了か否かを判断する。ステップS10が肯定となれば、ステップS11に進んで制御領域がPB−Ne制御マップを使用する領域か否かを判断する。ステップS11の判断はスロットル開度およびエンジン回転数Neが所定値以下か否かによって行うことができる。
【0044】
ステップS11が肯定となれば、ステップS12に進んでO2センサ4が活性化したか否かを判断する。O2センサ4が活性化されているか否かは、一般的には、エンジン始動からの経過時間またはO2センサ4の温度や水温等に基づいて判断される。エンジン始動からの経過時間は、O2センサ4が活性化されるまでに要する時間であり、実験結果等に基づいて予め設定する。
【0045】
ステップS12が肯定ならば、ステップS13に進んでエンジン回転数NeがO2フィードバック実行領域を示す値以内か否かを判断する。O2フィードバック実行領域を示すエンジン回転数Neは、例えば、1200rpm〜8000rpmの範囲である。
【0046】
このように、ステップS10〜ステップS13の判断がすべて肯定となれば、図6のステップS2に進む。したがって、エンジン始動後所定の時間が経過してO2センサ4が活性化するまでは、エンジン回転数Neによってエンジンの状態がA領域にあるとされる場合であっても、O2フィードバック制御は開始されず、図6のステップS2にも進まないので、エンジン状態がA領域であったとしても補正項を大きくしない固定値(補正項0)で運転される。
【0047】
図8は、ステップS3の詳細を示すフローチャートである。図8において、ステップS30では、タイムフラグが「1」であるか否かを判別する。A領域に入った直後は、タイムフラグは初期値「0」であるので、ステップS31に進み、A領域用に対応する補正項を補正量KO2の計算部(補正量決定部25の機能)にセットする。これにより、補正量決定部25では、「基準補正量(1.0)±補正項」が計算されて補正量が決定される。
【0048】
ステップS32では、A領域用の補正項を保持する時間(10秒)をタイマTAにセットする。ステップS33では、タイマTAがセットされたことを示すため、タイムフラグに「1」をセットする。ステップS34では、タイマTAにセットした時間が経過したか否かを判断する。
【0049】
タイマTAにセットした時間が経過するまでは図6のフローチャートに戻る。タイマTAにセットした時間が経過したならば、ステップS35に進んで、補正項をA領域用の補正項を段階的にB領域用の補正項に戻すため、補正項の目標値としてB領域用の補正項をセットする。ステップS36では、現在の補正項から予め設定した補正項減算値を減算する。徐々に補正項をB領域用の値に戻すためである。
【0050】
ステップS37では、ステップS36で計算された現在の補正項が、補正項の目標値未満であるか否かを判断する。ステップS37が肯定ならば、ステップS38に進んで補正項としてB領域用の補正項を維持する。つまり、前記補正量決定部25が、大きい補正項から小さい補正項への切り替えを行った後、エンジン回転数がB領域になるまで補正項としてこの小さい補正項を維持する。ステップS37が否定、つまり補正項がまだB領域用の補正項に戻っていないときは、ステップS39に進んで、ステップS36で計算された現在の補正項を補正量KO2の計算部にセットする。
【0051】
図9は、図8に関して説明した補正項の段階的な戻しの概念図である。図9では、時間の経過に伴う空燃比A/F、エンジン回転数Ne、補正量KO2の関係を示す。エンジン回転数Neが低下して所定回転数未満になった時点T2で補正項をA領域用に設定可能な最大値まで大きくする。これによって補正量KO2は最大値KO2maxに切り替えられる。この最大値KO2maxは、エンジン回転数NeがA領域にある間の所定時間TAだけ維持され、タイミングT3aから段階的に補正項が低減され、補正量KO2は徐々に小さくなる。そして、補正項が目標値まで小さくなったタイミングT3bから後は、補正項が目標値であるB領域用の値に維持される。この補正量KO2の変化に応じて空燃比A/Fは、大きく振れた状態から徐々に小さい振幅に収束される。
【0052】
このように、補正量KO2を徐々に小さくしていくことによって、補正量の切り替え直後に起きる空燃比の偏りを防止することができる。すなわち、補正量は「1.0」を中心に、補正項を加減算しているので、常に上下に振れている。したがって、例えば、補正量KO2の振れ幅が上の最大値にあるタイミングでB領域用の小さい補正項に戻すと、その直後に、空燃比は一旦リッチ方向に大きく偏る。また、例えば、補正量KO2の振れ幅が下の最大値にあるタイミングでB領域用の小さい補正項に戻すと、その直後に、空燃比は一旦リーン方向に大きく偏る。図8、図9に示した制御をすることによってこの空燃比の偏りを抑制することができる。
【0053】
本実施形態による効果を、図5の要部を拡大した図10を参照して説明する。なお、補正量KO2と空燃比A/Fとは区別して見やすいように上下にずらせて記載している。図10において、減速中、タイミングT1においてO2フィードバック制御が開始されると、O2センサ4の出力に応じて、補正量KO2が低減されて燃料噴射時間が短くなり、エンジン回転数Neの低下に応じた空燃比A/Fになるように制御される。しかし、エンジン回転数Neの低下が急激であると、1回ごとのフィードバック制御における補正量KO2が小さいので、点線で示すように補正量KO2が小さくなるのに時間がかかり、結果的に、空燃比A/Fは、図中点線で記載したように低下してオーバーリッチになっていくおそれがある。
【0054】
そこで、エンジン回転数Neが2500rpmまで低下したタイミングT2で1回ごとのフィードバック制御における補正項を大きくして補正量KO2の低減の程度を大きくする。これにより、タイミングT2直後で、補正量KO2はそれ以前よりも急激に小さくなり、その結果、空燃比A/FがタイミングT2から点線で示すように小さくなってオーバーリッチになるのが急速に抑制され、実線で示すように短時間で理論空燃比に収斂される。
【0055】
なお、補正項を大きくしてエンジンの低回転域における急激なエンジン回転数Neの低下に追随できるようにO2フィードバック速度を上げることによる効果は、エンジンの燃焼時に発生するカーボンが吸気バルブに付着したような場合にも、より良く発揮する。
【0056】
燃焼室で発生したカーボンが吸気バルブに付着すると、吸気バルブが完全に閉じないことがある。この場合、吸気負圧PBが正常時と比べて低下する。その結果、PB−Ne制御マップによって基本噴射時間を算出している制御では、長い基本噴射時間をマップから読み込んでしまい、空燃比A/Fはオーバーリッチになりやすい。
【0057】
そこで、本実施形態の燃料噴射量制御を適用すれば、空燃比A/Fがオーバーリッチになるのを防止することができる。
【0058】
図11は、吸気バルブへのカーボンの付着による吸気負圧PBの異常検出装置の機能ブロック図である。図11において、行程検出部10は、エンジンの圧縮行程から排気行程までの区間を検出して、その区間の間、所定間隔で行程検出信号を出力する。エンジンサイクルの各行程の判別は周知の手法によることができる。PB検出部11は、PBセンサ5で検出した吸気負圧PBを、前記行程検出信号に応答して取り込み、その区間での平均値を偏差検出部12に入力する。この平均値は、前回値記憶部13に記憶される。前回値記憶部13は、PB検出部11で吸気負圧PBの今回の平均値が算出されて出力される毎に、その今回値で更新される。
【0059】
偏差検出部12は、PB検出部11から入力される今回値および前回値記憶部13から読み出される前回値との差を計算し、異常検出部14に入力する。異常検出部14は、偏差算出部12で計算された差が、予め設定した値を越えているか否かで、吸気負圧PBが異常であるか否かを判定する。異常が検出された場合は、PB異常信号を出力する。
【0060】
このPB異常信号は、図7に関して説明したフィードバック制御開始判定処理における判定基準の一つとして加えることができる。例えば、図7のステップS10の直前に、PB異常信号の有無を判別する処理ステップを設け、PB異常信号が有ると判断されたときに、ステップS10に進むように構成する。これにより、カーボンが吸気バルブに噛み込んだ場合などに発生する吸気負圧PBの異常な低下を検出し、そのような異常が生じた場合の急減速時に空燃比A/Fがオーバーリッチとなることを防止できる。
【0061】
上述のように、本実施形態によれば、走行中から急減速を行って、エンジン回転数がアイドル回転数付近に突入した時に、エンジン回転数の急な減少に対して補正量KO2を小さくする処理が追いつかずにオーバーリッチを招くという現象を防止することができる。特に、吸気バルブへのカーボンの噛み込みによる吸気負圧PBの低下によるオーバーリッチにもよりよく対応できる。
【符号の説明】
【0062】
1…燃料噴射制御装置、 2…制御部(燃料噴射量決定部)、 3…Neセンサ、 4…O2センサ、 5…PBセンサ、 6…噴射弁駆動部、 7…燃料噴射弁、 10…行程検出部、 11…PB検出部、 12…偏差検出部、 20…運転領域判定部、 21…基本噴射時間算出部、 22…基本噴射時間補正部、 23…PB−Ne制御マップ、 24…空燃比判定部、 25…補正量決定部、 26…補正部、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出される排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出センサ(4)と、前記酸素濃度検出センサ(4)によって検出される酸素濃度に基づいて、前記エンジンの空燃比が理論空燃比に収斂するように該エンジンへ供給される燃料の噴射量を決定する基本噴射時間を補正する補正量(KO2)を決定する補正量決定手段(25)と、該補正量(KO2)と前記基本噴射時間とを使用して前記エンジンへの燃料噴射時間を算出する燃料噴射量算出手段(26)とを有し、前記補正量(KO2)が、基準補正量に補正項を加減算して算出されるエンジンの燃料噴射制御装置において、
エンジン回転数が、所定回転数未満の第1領域(A領域)にあるか、前記所定回転数以上の第2領域(B領域)にあるかを判定する運転領域判定手段(20)を具備し、
前記補正量決定手段(25)が、エンジン回転数域が前記第2領域から前記第1領域へ移行後の所定時間、前記第1領域での補正項として、前記第2領域での第2の補正項より大きい第1の補正項を使用して前記補正量(KO2)を算出するように構成されていることを特徴とするエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項2】
前記運転領域判定手段(20)で使用されるエンジンの所定回転数が、エンジンのアイドル運転域か否かを判定するための値であることを特徴とする請求項1記載のエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項3】
前記補正量決定手段(25)が、エンジン始動後の所定時間は、エンジン回転数が前記第1領域および第2領域のいずれにあるかに拘わらず、前記補正項として固定値を使用して前記補正量(KO2)を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項4】
前記補正量決定手段(25)が、エンジン回転数域が、前記第2領域から前記第1領域へ移行してから所定時間経過後、前記補正項を、第1の補正項から第2の補正項へ切り替えるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項5】
前記補正量決定手段(25)が、前記第1の補正項から前記第2の補正項への切り替えを行った後、エンジン回転数が前記第2領域になるまで補正項として第2の補正項を維持するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項6】
前記補正量決定手段(25)が、前記第1の補正項から前記第2の補正項への切り替えを行うに際し、前記第1の補正項を漸減して前記第2の補正項へ収斂させていくように構成されていることを特徴とする請求項4または5に記載のエンジンの燃料噴射制制御装置。
【請求項7】
前記補正量決定手段(25)が、前記第1の補正項から前記第2の補正項への切り替えを行うに際し、前記第1の補正項を所定量ずつ段階的に漸減して前記第2の補正項へ収斂させていくように構成されていることを特徴とする請求項4または5に記載のエンジンの燃料噴射制制御装置。
【請求項8】
前記エンジンの吸気負圧(PB)を検出する負圧センサ(5)と、
前記負圧センサによって検出された最新の負圧値と、1行程前の負圧値との偏差量を算出する偏差算出手段(12)とをさらに備え、
前記基本噴射時間が、エンジン回転数(Ne)と吸気負圧(PB)との関数として決定されるとともに、
前記補正量決定手段(25)が、前記偏差算出手段(12)で算出された偏差量が所定の偏差量よりも大きいときに、前記第1領域において前記第2補正量より大きい前記第1補正量を使用して前記補正量(KO2)を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項1】
エンジンから排出される排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出センサ(4)と、前記酸素濃度検出センサ(4)によって検出される酸素濃度に基づいて、前記エンジンの空燃比が理論空燃比に収斂するように該エンジンへ供給される燃料の噴射量を決定する基本噴射時間を補正する補正量(KO2)を決定する補正量決定手段(25)と、該補正量(KO2)と前記基本噴射時間とを使用して前記エンジンへの燃料噴射時間を算出する燃料噴射量算出手段(26)とを有し、前記補正量(KO2)が、基準補正量に補正項を加減算して算出されるエンジンの燃料噴射制御装置において、
エンジン回転数が、所定回転数未満の第1領域(A領域)にあるか、前記所定回転数以上の第2領域(B領域)にあるかを判定する運転領域判定手段(20)を具備し、
前記補正量決定手段(25)が、エンジン回転数域が前記第2領域から前記第1領域へ移行後の所定時間、前記第1領域での補正項として、前記第2領域での第2の補正項より大きい第1の補正項を使用して前記補正量(KO2)を算出するように構成されていることを特徴とするエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項2】
前記運転領域判定手段(20)で使用されるエンジンの所定回転数が、エンジンのアイドル運転域か否かを判定するための値であることを特徴とする請求項1記載のエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項3】
前記補正量決定手段(25)が、エンジン始動後の所定時間は、エンジン回転数が前記第1領域および第2領域のいずれにあるかに拘わらず、前記補正項として固定値を使用して前記補正量(KO2)を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項4】
前記補正量決定手段(25)が、エンジン回転数域が、前記第2領域から前記第1領域へ移行してから所定時間経過後、前記補正項を、第1の補正項から第2の補正項へ切り替えるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項5】
前記補正量決定手段(25)が、前記第1の補正項から前記第2の補正項への切り替えを行った後、エンジン回転数が前記第2領域になるまで補正項として第2の補正項を維持するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項6】
前記補正量決定手段(25)が、前記第1の補正項から前記第2の補正項への切り替えを行うに際し、前記第1の補正項を漸減して前記第2の補正項へ収斂させていくように構成されていることを特徴とする請求項4または5に記載のエンジンの燃料噴射制制御装置。
【請求項7】
前記補正量決定手段(25)が、前記第1の補正項から前記第2の補正項への切り替えを行うに際し、前記第1の補正項を所定量ずつ段階的に漸減して前記第2の補正項へ収斂させていくように構成されていることを特徴とする請求項4または5に記載のエンジンの燃料噴射制制御装置。
【請求項8】
前記エンジンの吸気負圧(PB)を検出する負圧センサ(5)と、
前記負圧センサによって検出された最新の負圧値と、1行程前の負圧値との偏差量を算出する偏差算出手段(12)とをさらに備え、
前記基本噴射時間が、エンジン回転数(Ne)と吸気負圧(PB)との関数として決定されるとともに、
前記補正量決定手段(25)が、前記偏差算出手段(12)で算出された偏差量が所定の偏差量よりも大きいときに、前記第1領域において前記第2補正量より大きい前記第1補正量を使用して前記補正量(KO2)を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエンジンの燃料噴射制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−111904(P2011−111904A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266208(P2009−266208)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]