説明

エンジンの燃料改質装置

【課題】改質触媒の耐久性の低下を抑制し得る装置を提供する。
【解決手段】燃焼室(2)に開口して新気を導入する第1ポート(3A)と、この第1ポート(3A)を開閉する吸気弁(5A)と、この第1ポート(3A)に燃料を供給し得る第1燃料供給装置(31)と、燃焼室(2)に開口して水分を含んだガスを導入する第2ポート(3B)と、この第2ポート(3B)に配置され燃料を水素に改質する改質触媒(7)と、この改質触媒(7)に燃料を供給し得る第2燃料供給装置(32)と、第2ポート(3B)を開閉する改質弁(5B)とを備え、膨張行程もしくは排気行程中に改質弁(5B)を開いて燃焼ガスを第2ポート(3B)に噴き戻させ、改質触媒(7)を加熱すると共に、この加熱した改質触媒(7)に第2燃料供給装置(32)から燃料を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はエンジン(内燃機関)の燃料改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
改質触媒で例えばガソリン等の燃料の一部を水素へと改質し、この水素を含んだ燃料を燃焼室2に導入して燃焼させると、急速燃焼が可能となり、これによってノッキングの改善やリーン限界、EGR限界の拡大を図ることができる。このため、改質触媒を活性温度(例えば600℃程度)になり得る排気管に備えるものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−57625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、改質触媒がエンジンの運転中、継続して加熱される構成であるので、改質触媒の耐久性が低下してしまう。
【0005】
そこで本発明は、改質触媒の耐久性の低下を抑制し得る装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエンジンの燃料改質装置は、燃焼室に開口して新気を導入する第1ポートと、この第1ポートを開閉する吸気弁と、この第1ポートまたは燃焼室に燃料を供給し得る第1燃料供給装置と、燃焼室に開口して水分を含んだガスを導入する第2ポートと、この第2ポートに配置され燃料を水素に改質する改質触媒と、この改質触媒に燃料を供給し得る第2燃料供給装置と、前記第2ポートを開閉する改質弁とを備えている。そして、膨張行程もしくは排気行程中に前記改質弁を開いて燃焼ガスを前記第2ポートに噴き戻させ、前記改質触媒を加熱すると共に、この加熱した改質触媒に前記第2燃料供給装置から燃料を供給する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、膨張行程もしくは排気行程中以外では改質触媒を加熱する必要がなくなるので、改質触媒の耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態の燃料改質装置の概略構成図である。
【図2】第1実施形態の改質弁の開期間、吸気弁の開期間、改質燃料噴射弁の噴射タイミングを示すタイミングチャートである。
【図3】2つのカムプロフィールの説明図である。
【図4】副EGR弁及び改質燃料噴射弁の制御を説明するためのフローチャートである。
【図5】第2実施形態の燃料改質装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態のエンジン1の燃料改質装置の概略構成図である。図1において3つの各燃焼室2には2つの吸気側ポート3A、3Bと2つの排気側ポート4A、4Bが開口し、2つの各吸気側ポート3A、3Bを2つの各吸気弁5A、5Bが、2つの各排気側ポート4A、4Bを2つの各排気弁6A、6Bが開閉する。つまり、エンジン1の各燃焼室2には4弁を有している。
【0011】
2つの排気側ポート4A、4Bは排気マニフォルド9と接続され、排気マニフォルド9の集合部に一本の排気管10が接続されている。排気管10には排気マニフォルド9側に三元触媒11を備える。三元触媒11は排気の空燃比がストイキであるとき、排気中の有害成分(NOx、HC、CO)を無害の物質へと同時に転換し得るので、排気の空燃比を検出するO2センサ12を設けている。
【0012】
一方、2つの各吸気側ポート3A、3Bは上流で合流することなく独立に構成されている。すなわち、一方の各吸気側ポート3A(第1ポート)を一定量の容積を有する吸気コレクタ15に連通し、他方の各吸気側ポート3Bを主EGR通路21から分岐する副EGR通路24に連通する。他方の各吸気側ポート3Bには改質触媒7を備えている。改質触媒7としては、Co、Ni、Rhなどを用いる。Pt、Pdも用いられ得る。
【0013】
上記の吸気コレクタ15には一本の吸気管16が接続され、吸気管16の上流端には図示しないエアフィルタを備える。吸気管16にスロットル弁17が設けられ、スロットル弁17の開度によって各燃焼室2に導入される空気流量が調整される。スロットル弁17の開度によって調整される空気流量は、スロットル弁17の上流に設けたエアフローメータ18によって計測される。
【0014】
上記の主EGR通路21は、排気の一部をEGRガスとして吸気コレクタ15に戻す通路である。主EGR通路21には、吸気コレクタ15に近い位置に、EGR率を調整可能な主EGR弁22を、また主EGR弁22の上流にはEGRガスを冷却するEGRクーラ23を設けている。
【0015】
副EGR通路24にも、常閉の副EGR弁25を設けている。副EGR弁25は主EGR弁22と相違して、開状態と閉状態との2位置を取り得るON・OFF弁である。
なお、構成をシンプルにするため副EGR通路24にはEGRクーラを設けていない。副EGR通路24にEGRクーラを設けてもかまわない。副EGR通路24にEGRクーラを設けてEGRガスを冷却すれば、その分、燃焼室2に改質ガスを多く導入できるので、効果は増す。
【0016】
2つの各吸気側ポート3A、3Bに臨んで燃料噴射弁31、32(燃料供給装置)を備える。これら各燃料噴射弁31、32には燃料タンク33内の燃料を燃料供給ポンプ34で圧送する。ここでの燃料はガソリンである。ただし、燃料がガソリンである場合に限られるものでなく、燃料がアルコールであってもかまわない。
【0017】
吸気側ポート3Bに設ける燃料噴射弁32(第2燃料供給装置)からの燃料は改質触媒7を指向するようにする。改質触媒7ではこの燃料噴射弁32からの燃料と、副EGR通路24を介して導入されるEGRガスに含まれる水とを反応させて水素を生成する。燃料噴射弁32からの燃料の一部が水素に転換されるのであり、この転換された水素と転換されなかった燃料とが改質ガスとなり、吸気側ポート3Bを流れるEGRガスと混合しつつ燃焼室2に供給される。
【0018】
改質触媒7を用いて水素を生成させる目的は2つある。すなわち、ガソリンに比べ燃焼速度の早い水素を燃焼室2に導入して燃焼させることにより、ガソリンだけを燃焼させるときより急速な燃焼が可能になるのであり、これによってノッキングの改善やリーン限界、EGR限界の拡大を図ることができる。これが第1の目的である。この目的より、ノッキングが起こりやすい低回転速度高負荷運転時や高いEGR率での運転を行う低回転速度中負荷域で燃料噴射弁32から燃料を噴いて改質触媒7を働かせる。
【0019】
また、燃料が水と反応し、水素が生成される改質反応過程(水蒸気改質反応)において、燃料の総発熱量が反応前後で増加する。これは、排気の熱エネルギーを用いて燃料と水から水素を生成した効果によるものである。この水蒸気改質反応に伴う化学的排熱回収効果により、排気として捨てていたエネルギーを水素として回収し、水素を燃やして動力に変換することで、燃費を向上できる。これが第2の目的である。排熱回収量は排気温度が高いほど増える(つまり燃費が向上する)ので、排気温度が高い高回転速度、高負荷ほど燃料噴射弁32から燃料を噴いて改質触媒7により燃料改質を行わせる。
【0020】
上記第1の目的実現のためには、低回転速度高負荷運転時や低回転速度中負荷域が、また上記第2の目的実現のためには高回転速度、高負荷域が改質ガスを燃焼室2に供給することが要求される条件(以下、「改質ガス要求条件」という。)となる。
【0021】
燃料噴射弁32から改質触媒7に供給する燃料は改質用燃料であるので、吸気側ポート3Bに設ける燃料噴射弁32(第2燃料供給装置)を、以下「改質燃料噴射弁」という。一方、吸気側ポート3Aに設ける燃料噴射弁31(第1燃料供給装置)を、以下「主燃料噴射弁」という。なお、主燃料噴射弁31は燃焼室2に臨ませて設けてもかまわない。
【0022】
このように2つの各吸気側ポート3A、3B、改質触媒7、2つの各燃料噴射弁31、32を構成したとき、各吸気側ポート3Bからは各改質触媒7によって燃料の一部を水素に改質したガスである改質ガスが燃焼室2に導入される。つまり、各吸気側ポート3Bを開閉する吸気弁5Bは、改質ガスの導入・遮断を行うのであって、吸気(新気)の導入・遮断を行うのではない。従って、以下では各吸気側ポート3Aを「EGRガスポート」として、各吸気側ポート3Bを開閉する吸気弁を「改質弁」として再構成する。
【0023】
このように再構成したとき、各気筒の膨張行程もしくは排気行程中に各改質弁3Bを開くことで、燃焼室2内の燃焼ガスを各EGRガスポート3Bに噴き戻させ、各EGRガスポート3Bに設けてある改質触媒7を加熱して改質可能温度以上に上昇させることができる。なお、各改質弁3Bを各気筒の膨張行程もしくは排気行程中に開かせる機構については後述する。
【0024】
エンジンコントローラ41には、エアフローメータ18からの吸入空気流量の信号、クランク角センサ42からのクランク角位置の信号、アクセル開度センサ43からのアクセル開度の信号、O2センサ12からの信号が入力されている。エンジンコントローラ41では、アクセル開度とエンジン回転速度とに基づいて、ドライバの要求する車両駆動力を演算し、この車両駆動力が得られるように、スロットル弁17の開度及び主燃料噴射弁31からの燃料噴射量を制御する。また、EGR領域(NOxの多く発生する運転領域)になると、NOxの発生を抑制するため、EGRガスの割合(EGR率)、つまり主EGR弁22の開度を制御する。
【0025】
また、エンジンコントローラ41では、改質ガス要求条件を予め定めている。そしてこの改質ガス要求条件になると、副EGR弁25を開くと共に、改質弁3Bの動きに合わせて各気筒の膨張行程もしくは排気行程中に各改質燃料噴射弁32を開いて燃料を改質触媒7に供給する。
【0026】
改質ガス要求条件のとき、エンジンコントローラ41で行われる燃料改質の内容を、図2のタイミングチャートを参照してさらに説明する。図2は改質弁5Bの開期間、吸気弁5Aの開期間、改質燃料噴射弁32の燃料噴射タイミングがどうなるかをモデルで示したタイミングチャートである。なお、3つ気筒で行われる燃料改質の方法は同様であるので、図2では1つの気筒で代表させている。
【0027】
図2上方に示したように、改質弁5Bを排気行程終期にある第1クランク角CA1で開き、吸気行程の中央位置である第3クランク角CA3で閉じる。つまり、第1クランク角CA1から第3クランク角CA3までの期間が改質弁5Bの開期間である。改質弁5Bを排気行程終期にある第1クランク角CA1で開くのは、燃焼ガスを吸気側ポート3Bに噴き戻させて改質触媒7を改質可能温度以上に加熱するためである。改質弁5Bを吸気行程まで開き続けるのは、改質ガスを燃焼室2に導入するためである。
【0028】
一方、図2上方に示したように吸気弁5Aを排気行程終了タイミングである第2クランク角CA2で開き、圧縮行程前期にある第4クランク角CA4で閉じる。つまり、第2クランク角CA2から第4クランク角CA4までの期間が吸気弁5Aの開期間である。これは、吸気(新気)を燃焼室2に導入するためである。
【0029】
また、図2上方に示したように改質燃料噴射弁32の燃料噴射タイミングは第1クランク角CA1と第2クランク角CA2の間である。これは、排気行程後期に改質可能温度域まで昇圧された改質触媒7にタイミング良く改質のための燃料を供給するためである。
【0030】
この結果、吸気弁5Aの開期間と改質弁5Bの開期間とがずれることになる。このように、吸気弁5Aの開期間と改質弁5Bの開期間とを異ならせるには、それぞれの開期間に合わせたプロフィールを有する2つのカムを設ければよい。すなわち、従来周知の4弁エンジンでは、ダブルオーバーヘッド・カム(DOHC)型を採用し、1つの気筒に2つの同じプロフィールを有する吸気側カムを設けている。一方、本実施形態でも、ダブルオーバーヘッド・カム型を採用し、改質弁5Bを開閉する改質弁用カム8Bのプロフィールを、吸気弁5Aを開閉する吸気弁用カム8Aのプロフィールと異ならせ、改質専用カムとして設けるのである。つまり、本実施形態では、図3に示したように、改質弁用カム8Bと吸気弁用カム8Aとでカムプロフィールが異なっている。図3は改質弁用カム8Bと吸気弁用カム8Aとを重ねて示したもので、図示の方向にカムが回転するとき、改質弁用カム8Bが改質弁5Bを開くタイミングが吸気弁用カム8Aが吸気弁5Aを開くタイミングより早くなる。この場合に、燃焼ガスの噴き戻しによって改質触媒7が改質可能温度域まで昇温し得るように改質弁用カム8Bのカムプロフィールを予め定めておく。
【0031】
なお、本発明は、改質専用カムを設ける場合に限られるものでない。例えば、1つの気筒に2つの同じプロフィールを有する吸気弁用カム及び改質弁用カムを設けると共に、改質弁用カムによって開閉する各改質弁3Bの開閉タイミングを進遅角させ得る機構(改質弁VTC機構)を備えさせる。そして、改質弁VTC機構の非作動時には、改質弁5Bの開閉タイミングを吸気弁5Aの開閉タイミングと同じにしておく。改質ガス要求条件になると、改質弁VTC機構を作動して改質弁5Bの開閉タイミングを進角させ、各気筒の膨張行程もしくは排気行程中に各改質弁3Bを開かせる。このものによれば、改質弁VTC機構に与える制御量(進角量)を制御することで燃焼ガスの噴き戻し量を調整することができる。
【0032】
図2中段左側には、排気行程終期に改質弁5Bのみを開いた直後のタイミングでのEGRガスポート3Bの様子を示している。排気行程終期に改質弁5Bを開くことによって燃焼室2内の高温の燃焼ガスが改質触媒7のある吸気側ポート3Bに吹き戻されている(白抜き矢印参照)。これによって改質触媒7が改質可能温度以上に加熱されることとなる。
なお、副EGR弁25が開かれEGRガスが導入されてはいるが、燃焼室2内の高温の燃焼ガスのほうが燃焼室2へ流れようとするEGRガスより圧力が高いので、燃焼ガスはEGRガスを押しのけて改質触媒7を加熱する。このように改質可能温度以上に加熱された改質触媒7に改質燃料噴射弁32を開いて燃料を噴射供給することで、改質触媒7により燃料の一部が水素へと転換される。
【0033】
一方、図2中段右側には、第3クランク角CA3手前のタイミングでの2つのポート3A、3Bの様子を示している。図示しないが、圧縮行程や膨張行程に主燃料噴射弁31を開いて燃料を吸気側ポート3Aに供給することで燃料の気化を促進している。ピストンの下動によって燃焼室2内の圧力が大気圧より低下する吸気行程で吸気弁5Aを開くことで、ほぼ大気圧に近い圧力の吸気側ポート3Aと、大気圧より低下している燃焼室2との間に圧力差が生じる。この圧力差で吸気側ポート3Aで気化しつつある燃料と新気とが混合しながら燃焼室2に吸い込まれる。一方、EGRガスポート3Bにおいては、噴き戻し後に燃焼ガスの圧力が弱まった後に、改質触媒7で生成された水素を含む燃料である改質ガスをEGRガスが燃焼室2へと押し流す(白抜き矢印参照)。吸気弁5Aが開いた後には、EGRガスポート3Bと燃焼室2との間にも大きな圧力差が生じるので、この圧力差で改質ガスが燃焼室2に吸引される。
【0034】
このようにして、吸気行程の直前に作られた改質ガスが吸気行程で即座に燃焼室2に供給される。
【0035】
図2下段には、本実施形態の改質触媒7の温度変化を実線で示している。本実施形態との比較のため、主EGR通路21に改質触媒7を設けた場合を参考例として、この参考例での改質触媒7の温度変化を図2下段に破線で重ねて示している。
【0036】
ガス温度は単純に燃焼室2内がもっとも高く、燃焼室2から離れるほど、配管(排気マニフォルド9や主EGR通路21)からの放熱により温度が低下する。主EGR通路21に改質触媒7を設けている参考例では、改質触媒7付近の排気温度(EGRガス温度)が低く、改質触媒7の温度が改質可能温度に到達せず(図2下段の破線参照)、改質できない回転速度負荷領域(運転域)が多いという問題がある。一方、本実施形態では、燃焼室2からすぐの位置(EGRガスポート3B)に改質触媒7を設けているので、高温の燃焼ガスで改質触媒7の温度を改質可能温度域まで容易に上昇させることが可能となっている(図2下段の実線参照)。つまり、図2下段にハッチングで示した領域に相当する熱エネルギーで燃料を水素へと改質できるのであり、本実施形態によれば、広い運転域で燃料を改質することが可能になる。
【0037】
また、本実施形態では、排気行程後期にから吸気行程前期にかけての期間で改質触媒7を加熱するため、排気行程後期から吸気行程前期にかけての期間以外の期間では改質触媒7を改質可能温度域へと加熱する必要はない。改質触媒7が高温のガスに晒されている期間が参考例より短くなるのであり、その分、改質触媒7の耐久性が良好になる。
【0038】
エンジンコントローラ41で行われるこの制御の内容を、図4のフローチャートを参照して具体的に説明する。図4のフローは一定の周期(例えば10ms毎)で実行する。
【0039】
ステップ1では改質ガス要求条件である否かをみる。改質ガス要求条件は上記第1の目的や第2の目的に従って予め定めておく。改質ガス要求条件であるときにはステップ2に進み、副EGR弁25を全開状態とする。これによって、EGRガスがEGAガスポート3Bに供給される。
【0040】
ステップ3ではクランク角が改質燃料噴射弁32の噴射タイミングになったか否かをみる。改質燃料噴射弁32の燃料噴射タイミングは、図2で示したように排気行程終期に定められている。クランク角が改質燃料噴射弁32の燃料噴射タイミングになっていなければ、そのまま今回の処理を終了する。
【0041】
一方、ステップ3でクランク角が改質燃料噴射弁32の燃料噴射タイミングになったときにはステップ5に進んで改質燃料噴射弁32を開き、改質触媒7に向けて燃料を供給する。これによって、改質可能温度域まで昇温している改質触媒7では、燃料の一部を水素に改質する。この改質された水素を含んだ燃料である改質ガスは副EGR通路24を介して流れるEGRガスに運ばれて燃焼室2に導入される。
【0042】
一方、ステップ1で改質ガス要求条件でなくなると、ステップ5以降に進む。ステップ5では副EGR弁25を全閉状態とし、ステップ6で改質燃料噴射弁32の作動を停止する。
【0043】
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
【0044】
本実施形態では、燃焼室2に開口して新気を導入する吸気側ポート3A(第1ポート)と、この吸気側ポート3Aを開閉する吸気弁5Aと、この吸気側ポート3Aに燃料を供給し得る主燃料噴射弁31(第1燃料供給装置)と、燃焼室2に開口して水分を含んだガスを導入するEGRガスポート3B(第2ポート)と、このEGRガスポート3Bに配置され燃料を水素に改質する改質触媒7と、この改質触媒7に燃料を供給し得る改質燃料噴射弁32(第2燃料供給装置)と、EGRガスポート3Bを開閉する改質弁5Bとを備え、膨張行程もしくは排気行程中に改質弁5Bを開いて燃焼ガスをEGRガスポート3Bに噴き戻させ、改質触媒7を加熱すると共に、エンジンコントローラ41がこの加熱した改質触媒7に改質燃焼噴射弁32から燃料を供給する(図4のステップ3、4参照)。本実施形態によれば、膨張行程もしくは排気行程中に改質触媒7を加熱し、膨張行程もしくは排気行程中以外では改質触媒7を加熱する必要がなくなるので、改質触媒7の耐久性を向上できる。
【0045】
本実施形態では、水分を含んだガスを導入する第2ポートは、EGRガスを導入するEGRガスポート3Bであり、このEGRガスポート3Bにつながる副EGR通路24を開閉し得る常閉の副EGR弁25を備え、改質ガス要求条件(水素に改質されたガスが要求される条件)のとき、この副EGR弁25を開く(図4のステップ1、2参照)。本実施形態によれば、EGRガスに含まれる水を改質反応過程(水蒸気改質反応)に用いる、つまり排気として捨てていたエネルギーを水素として回収し、水素を燃やして動力に変換するので、燃費を向上できる。
【0046】
本実施形態によれば、改質弁5Bを開閉する改質弁用カム8Bを吸気弁5Aを開閉する吸気弁用カム8Aと独立に備え、改質弁用カム8Bが改質弁5Bをリフトするタイミングを吸気弁用カム8Aが吸気弁5Aをリフトするタイミングよりも早くするので(図2参照)、簡単な構成で改質弁5Bを膨張行程もしくは排気行程中に開かせることができる。
【0047】
(第2実施形態)
図5は第2実施形態で、第1実施形態の図1と置き換わるものである。図1と同一部分には同一番号を付している。
【0048】
第2実施形態は、第1実施形態を前提として、さらに各EGRガスポート3Bを吸気コレクタ15に連通し、かつ吸気コレクタ15との各連通部に常閉の開閉弁51を設けたものである。この各開閉弁51は、開状態と閉状態との2位置を取り得るON・OFF弁である。この各開閉弁51はエンジンコントローラ41によってエンジン高負荷時に開かせる。
【0049】
第1実施形態では、一方の吸気側ポート3Aだけを用いて吸気を燃焼室2に供給する構成であるので、エンジン1の高負荷時は吸気の燃焼室2への供給が不足し勝ちとなる。そこで、第2実施形態では、高負荷時に開閉弁51を開き、EGRガスポート3Bからも吸気を燃焼室2に供給することで、高負荷時に吸気が不足することないようにしたものである。
【0050】
第2実施形態によれば、吸気側ポート3A(第1ポート)が吸気コレクタ15と連通している場合に、EGRガスポート3B(第2ポート)をこの吸気コレクタ15と連通させると共に、EGRガスポート3Bの吸気コクレタ15への連通部に常閉の開閉弁51を設け、エンジン1の高負荷時にこの開閉弁51を開くので、エンジン1の高負荷時に充填効率を向上させることができる。
【0051】
実施形態では、主EGR通路から副EGR通路を分岐し、この副EGR通路にEGRガスポートを連通させた場合で説明したが、これに限られない。EGR率制御を行わないエンジンにおいて、改質ガスを生成させるためだけに、EGRガスをEGRガスポート3Bに導入するようにしてもかまわない。
【0052】
実施形態では、EGRガスに含まれる水分を改質反応過程(水蒸気改質反応)に用いているが、これに限られるものでない。水蒸気を別に作り水分を含んだガスを改質触媒に導入するようにしてもかまわない。
【符号の説明】
【0053】
1 エンジン
2 燃焼室
3A 吸気側ポート(第1ポート)
3B EGRガスポート(第2ポート)
5A 吸気弁
5B 改質弁
7 改質触媒
24 副EGR通路
25 副EGR弁
31 主燃料噴射弁(第1燃料供給装置)
32 改質燃料噴射弁(第2燃料供給装置)
41 エンジンコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室に開口して新気を導入する第1ポートと、
この第1ポートを開閉する吸気弁と、
この第1ポートまたは燃焼室に燃料を供給し得る第1燃料供給装置と、
燃焼室に開口して水分を含んだガスを導入する第2ポートと、
この第2ポートに配置され燃料を水素に改質する改質触媒と、
この改質触媒に燃料を供給し得る第2燃料供給装置と、
前記第2ポートを開閉する改質弁と
を備え、
膨張行程もしくは排気行程中に前記改質弁を開いて燃焼ガスを前記第2ポートに噴き戻させ、前記改質触媒を加熱すると共に、この加熱した改質触媒に前記第2燃料供給装置から燃料を供給することを特徴とするエンジンの燃料改質装置。
【請求項2】
前記水分を含んだガスを導入する第2ポートは、EGRガスを導入するEGRガスポートであり、
このEGRガスポートにつながるEGR通路を開閉し得る常閉のEGR弁を備え、
前記水素に改質されたガスが要求される条件のとき、このEGR弁を開くことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料改質装置。
【請求項3】
前記改質弁を開閉する改質弁用カムを前記吸気弁を開閉する吸気弁用カムと独立に備え、
改質弁用カムが前記改質弁をリフトするタイミングを吸気弁用カムが前記吸気弁をリフトするタイミングよりも早くすることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンの燃料改質装置。
【請求項4】
前記第1ポートが吸気コレクタと連通している場合に、前記第2ポートをこの吸気コレクタと連通させると共に、第2ポートの吸気コレクタへの連通部に常閉の開閉弁を設け、エンジンの高負荷時にこの開閉弁を開くことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載のエンジンの燃料改質装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−29088(P2013−29088A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167125(P2011−167125)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】