説明

エンジン

【課題】複数可変式過給システムを精度良く制御できるエンジンを提供する。
【解決手段】第一過給機10と、前記第一過給機10とは容量が異なり前記第一過給機10と並列に配置される第二過給機20と、を備える過給システム9と、第一ターボ回転数Nta_1を検出する第一ターボセンサー61と、第二ターボ回転数Nta_2を検出する第二ターボセンサー62と、前記第一過給機10の容量を調整する第一可動ベーン13と、前記第二過給機の容量を調整する第二可動ベーン23と、前記第一可動ベーン13の開度、及び前記第二可動ベーン23の開度を調整するECU60と、を具備し、前記ECU60は、過給圧及び前記第一ターボ回転数Nta_1に基づいて、前記第一可動ベーン13の開度を調整し、前記過給圧及び前記第二ターボ回転数Nta_2に基づいて、前記第二可動ベーン23の開度を調整するエンジン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数可変式過給システムを備えるエンジンの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの過給機が並列に配置される過給システムは公知である。例えば、常時ツインターボは、同容量の2台の過給機が並列に配置される過給システムである。また、シーケンシャル・ツインターボは、異なる容量である2台の過給機が並列に配置される過給システムである。特許文献1は、シーケンシャル・ツインターボを備えるエンジンを開示している。
【0003】
また、排気ガスの流量を変化させて加給効果を高める可変容量手段を備える過給機も公知である。ここで、2つの過給機が並列に配置され、かつ、過給機のうち少なくとも一つが可変容量手段を備えるような過給システムを、複数可変式過給システムと定義する。
【0004】
従来、例えば可変容量手段等の過給機の制御手段は、ブーストセンサーによって検出される過給圧をフィードバック値としていた。しかし、過給圧は、過給機の作動に対し、間接的な物理量であって、過給システムを精度良く制御できない点で不利であった。特に、複数可変式過給システムを備えるエンジンでは、過給圧をフィードバック値とする制御手段では、過給システムを精度良く制御できない点で不利であった。
【特許文献1】特開平5−288111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複数可変式過給システムを精度良く制御できるエンジンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、第一過給機と、前記第一過給機とは容量が異なり前記第一過給機と並列に配置される第二過給機と、を備える過給システムと、吸気マニホールドにおける過給圧を検出する過給圧検出手段と、前記第一過給機の過給機回転数を検出する第一過給機回転数検出手段と、前記第二過給機の過給機回転数を検出する第二過給機回転数検出手段と、前記第一過給機の容量を調整する第一可変容量手段と、前記第二過給機の容量を調整する第二可変容量手段と、前記第一可変容量手段の開度、及び前記第二可変容量手段の開度を調整する制御手段と、を具備し、前記制御手段は、前記過給圧及び前記第一過給機回転数に基づいて、前記第一可変容量手段の開度を調整し、前記過給圧及び前記第二過給機回転数に基づいて、前記第二可変容量手段の開度を調整するエンジンである。
【0008】
請求項2においては、第一過給機と、前記第一過給機とは容量が異なり前記第一過給機と並列に配置される第二過給機と、前記第一過給機の排気経路の上流側と前記第二過給機の排気経路の上流側とを接続するバイパス経路と、を備える過給システムと、吸気マニホールドにおける過給圧を検出する過給圧検出手段と、前記第一過給機の過給機回転数を検出する第一過給機回転数検出手段と、前記第二過給機の過給機回転数を検出する第二過給機回転数検出手段と、前記第一過給機の容量を調整する第一可変容量手段と、前記第二過給機の容量を調整する第二可変容量手段と、前記バイパス経路を通過するバイパス流量を調整するバイパス流量調整弁と、前記第一可変容量手段の開度、前記第二可変容量手段の開度、及び前記バイパス流量調整弁の開度を調整する制御手段と、を具備し、前記制御手段は、前記過給圧及び前記第一過給機回転数に基づいて、前記第一可変容量手段の開度を調整し、前記過給圧及び前記第二過給機回転数に基づいて、前記第二可変容量手段の開度を調整し、前記過給圧、前記第一過給機回転数、及び前記第二過給機回転数に基づいて、前記バイパス流量調整弁の開度を調整するエンジンである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、過給圧及び過給機回転数をフィードバック値として可変容量手段の開度を調整し、過給圧及び過給機回転数をフィードバック値としてバイパス流量調整弁の開度を調整するため、複数可変式過給システムを精度良く制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係るエンジンの全体的な構成を示した構成図、図2は同じく実施形態1である過給機制御のフローを示すフロー図、図3は同じく実施形態2である過給機制御のフローを示すフロー図である。
図1を用いて、本発明の実施形態であるエンジン100の構成について説明する。エンジン100は、直噴式6気筒ディーゼルエンジンであって、吸気経路3が接続される吸気マニホールド30と、排気経路41・42が接続される排気マニホールド40・40と、コモンレールに蓄圧された燃料をインジェクタによって各気筒に噴射するコモンレール式燃料噴射装置(以下、燃料噴射装置)8と、を備えている。
【0011】
また、エンジン100は、過給システム9を備えている。過給システム9は、第一コンプレッサ11と第一ターボ12とからなる第一過給機10と、第二コンプレッサ21と第二ターボ22とからなる第二過給機20と、を並列に配置して備えている。なお、第二過給機20は、第一過給機10よりも大きい容量の過給機である。
【0012】
ここで、第一過給機10は、可変容量手段を備える過給機である。可変容量手段とは、第一ターボ12の上流側に設けられる第一可動ベーン13のベーン開度を調整し、第一過給機10を通過する排気流量を調整し、第一過給機10の容量、すなわち加給効率を調整する手段である。また、第二過給機20は、可変容量手段を備える過給機である。可変容量手段とは、第二ターボ22の上流側に設けられる第二可動ベーン23のベーン開度を調整し、第二過給機20を通過する排気流量を調整し、第二過給機20の容量、すなわち加給効率を調整する手段である。
【0013】
第二過給機20は、第一過給機10よりも容量が大きいものの、第二可動ベーン23のベーン開度を調整し、第一過給機10と同じ容量の過給機として作動する。以下では、本実施形態のように、2つの過給機を並列に配置し、かつ、過給機のうち少なくとも一つが可変容量手段を備えるような過給システムを、複数可変式過給システムと定義する。
【0014】
吸気経路3は、上流側から吸気マニホールド30に向かって、第一コンプレッサ11と、第一コンプレッサ11で過給される空気を冷却するインタークーラー31と、を備える吸気経路と、第二コンプレッサ21と、第二コンプレッサ21で過給される空気を冷却するインタークーラー32と、を備える吸気経路と、から構成されている。
【0015】
排気マニホールド40・40は、それぞれ3つの気筒を包含するように設けられている。排気経路は、排気マニホールド40から下流側に向かって、第一ターボ12を備える排気経路41と、第二ターボ22を備える排気経路42と、から構成されている。
【0016】
バイパス経路5は、排気経路41における第一ターボ12の上流側と、排気経路42における第二ターボ22の上流側と、を接続する経路である。バイパス経路5には、バイパス経路5を通過するバイパス流量を調整するバイパス流量調整弁としてのバイバス弁24が設けられている。
【0017】
制御手段としてのEngine Control Unit(以下、ECU)60は、アンプ65を介して第一コンプレッサ11に設けられる第一ターボセンサー61と、アンプ65を介して第二コンプレッサ21に設けられる第二ターボセンサー62と、吸気マニホールド30に設けられるブーストセンサー63と、バイパス弁24と、燃料噴射装置8と、第一可動ベーン13と、第二可動ベーン23と、を接続して構成されている。以下では、ECU60によるバイパス弁24の開度の調整と、第一可動ベーン13のベーン開度の調整と、第二可動ベーン23のベーン開度の調整と、を過給機制御と定義する。
【0018】
[実施形態1]
図2を用いて、実施形態1である過給機制御について説明する。ECU60は、エンジン100が低回転数かつ低負荷であるとき、制御手段として、第一過給機10と第二過給機20とが同じ容量として作動するように、第一可動ベーン13のベーン開度と、第二可動ベーン23のベーン開度と、を調整する機能を有する。
まず、ECU60は、目標ターボ回転数ωctrg_hp及び目標ブースト圧Bpatrgを算出する(S110)。
目標ターボ回転数ωctrgは、第一過給機10及び第二過給機20について、最も効率良く作動する過給機回転数として、指令噴射量、エンジン回転数、及び目標ブースト圧Bpatrgに基づいて、予めECU60に記憶されているマップ(図示略)から算出される。
目標ブースト圧Bpatrgは、エンジン100の燃焼状態を最適にする過給圧として、指令噴射量、エンジン回転数、及び後述する目標ターボ回転数ωctrgに基づいて、予めECU60に記憶されているマップ(図示略)から算出される。
【0019】
ECU60は、条件(11)として、第一ターボセンサー61によって検出される第一ターボ回転数Nta_1と目標ターボ回転数ωctrgとの差の絶対値が所定値α11より小さいかどうか、条件(12)として、第二ターボセンサー62によって検出される第二ターボ回転数Nta_2と目標第二ターボ回転数ωctrgとの差の絶対値が所定値α12より小さいかどうか、条件(13)として、ブーストセンサー63によって検出されるブースト圧Bpaと目標ブースト圧Bpatrgとの差の絶対値が所定値α13より小さいかどうか、について判断する(S120)。
【0020】
ECU60は、S120において、条件(11)、条件(12)、及び条件(13)を満足する場合は、現在、第一ターボ回転数Nta_1及び第二ターボ回転数Nta_2は、過給システム20が最も効率良く作動する過給機回転数であって、ブースト圧Bpaは、エンジン100の燃焼状態を最適にする過給圧であると判断する。
【0021】
一方、ECU60は、S120において、条件(11)、条件(12)、及び条件(13)を満足しない場合は、現在、第一ターボ回転数Nta_1及び第二ターボ回転数Nta_2は、過給システム20が最も効率良く作動する過給機回転数ではない、或いは、ブースト圧Bpaは、エンジン100の燃焼状態を最適にする過給圧ではない、と判断する。
【0022】
そこで、ECU60は、条件(11)を満足するまで第一可動ベーン13のベーン開度を調整し、条件(12)を満足するまで第二可動ベーン23のベーン開度を調整する(S140)。次に、ECU60は、条件(13)を満足するまで第一可動ベーン13のベーン開度及び第二可動ベーン23のベーン開度を調整する(S150)。
【0023】
[実施形態2]
図3を用いて、実施形態2である過給機制御について説明する。ECU60は、制御手段として、エンジン100の回転数及び負荷が増加して第一過給機10が最も効率良く作動する過給機回転数のうちで最高回転数に到達した場合、第二過給機20が最も効率良く作動する過給機回転数となり、エンジン100の燃焼状態を最適にする過給圧となるようにバイパス弁24の開度を調整する機能を有する。
ECU60は、目標第一ターボ回転数ωctrg_1、目標第二ターボ回転数ωctrg_2、及び目標ブースト圧Bpatrgを算出する(S210)。
目標第一ターボ回転数ωctrg_1は、第一過給機10について、最も効率良く作動する過給機回転数のうちで最高回転数として、指令噴射量、エンジン回転数、及び目標ブースト圧Bpatrgに基づいて、予めECU60に記憶されているマップから算出される。
目標第二ターボ回転数ωctrg_2は、第二過給機20について、最も効率良く作動する過給機回転数として、指令噴射量、エンジン回転数、及び目標ブースト圧Bpatrgに基づいて、予めECU60に記憶されているマップから算出される。
目標ブースト圧Bpatrgは、エンジン100の燃焼状態を最適にする過給圧として、指令噴射量、エンジン回転数、目標第一ターボ回転数ωctrg_1、及び目標第二ターボ回転数ωctrg_2に基づいて、予めECU60に記憶されているマップから算出される。
【0024】
ECU60は、条件(21)として、第一ターボセンサー61によって検出される第一ターボ回転数Nta_1と目標第一ターボ回転数ωctrg_1との差の絶対値が所定値α21より小さいかどうか、条件(22)として、第二ターボセンサー62によって検出される第二ターボ回転数Nta_2と目標第二ターボ回転数ωctrg_2との差の絶対値が所定値α22より小さいかどうか、条件(23)として、ブーストセンサー63によって検出されるブースト圧Bpaと目標ブースト圧Bpatrgとの差の絶対値が所定値α23より小さいかどうか、について判断する(S220)。
【0025】
ECU60は、S220において、条件(21)、条件(22)及び条件(23)を満足する場合は、現在、第一ターボ回転数Nta_1及び第二ターボ回転数Nta_2は、過給システム20が最も効率良く作動する過給機回転数であって、ブースト圧Bpaは、エンジン100の燃焼状態を最適にする過給圧であると判断する。
【0026】
一方、ECU60は、S220において、条件(21)、条件(22)及び条件(23)を満足しない場合は、現在、第一ターボ回転数Nta_1及び第二ターボ回転数Nta_2は、過給システム9が最も効率良く作動する過給機回転数ではない、或いは、ブースト圧Bpaは、エンジン100の燃焼状態を最適にする過給圧ではない、と判断する。
【0027】
そこで、ECU60は、条件(21)及び条件(22)を満足するまでバイパス弁24の開度を調整する(S240)。次に、ECU60は、条件(23)を満足するまでバイパス弁24の開度を調整する(S250)。
【0028】
このようにして、第一ターボ回転数Nta_1、第二ターボ回転数Nta_2、及びブースト圧Bpaをフィードバック値として、第一可動ベーン13のベーン開度、第二可動ベーン23のベーン開度、及びバイパス弁24の開度を調整するため、複数可変式過給システムを精度良く制御できる。
すなわち、過給機の作動とは直接的な関係にある第一ターボ回転数Nta_1及び第二ターボ回転数Nta_2をフィードバック値とするため、エンジン負荷に応じて、それぞれが異なる容量である第一過給機10と第二過給機20とを、同じ容量として作動させる、或いは異なる容量として作動させる、といった2つの作動パターンを精度良く切り替えることができる。
【0029】
また、容量が小さい第一過給機10の過給機回転数の上限値を超えた場合に、バイパス弁24の開度を開くことで、第一過給機10の過回転を精度良く機械的に回避できる。
さらに、過給機の作動とは直接的な関係にある過給機回転数をフィードバック値とするため、第一過給機10及び第二過給機20の機械的なバラツキを考慮することなく、煩雑な流量調整を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンの全体的な構成を示した構成図。
【図2】同じく実施形態1である過給機制御のフローを示すフロー図。
【図3】同じく実施形態2である過給機制御のフローを示すフロー図。
【符号の説明】
【0031】
3 吸気経路
5 バイパス経路
9 過給システム
10 第一過給機
11 第一コンプレッサ
12 第一ターボ
13 第一可動ベーン
20 第二過給機
21 第二コンプレッサ
22 第二ターボ
23 第二可動ベーン
24 バイパス弁
30 吸気マニホールド
40 排気マニホールド
41 排気経路
42 排気経路
61 第一ターボセンサー
62 第二ターボセンサー
63 ブーストセンサー
100 エンジン
Bpa ブースト圧
Bpatrg 目標ブースト圧
ωctrg 目標ターボ回転数
Nta_1 第一ターボ回転数
ωctrg_1 目標第一ターボ回転数
Nta_2 第二ターボ回転数
ωctrg_2 目標第二ターボ回転数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一過給機と、前記第一過給機とは容量が異なり前記第一過給機と並列に配置される第二過給機と、を備える過給システムと、
吸気マニホールドにおける過給圧を検出する過給圧検出手段と、
前記第一過給機の過給機回転数を検出する第一過給機回転数検出手段と、
前記第二過給機の過給機回転数を検出する第二過給機回転数検出手段と、
前記第一過給機の容量を調整する第一可変容量手段と、
前記第二過給機の容量を調整する第二可変容量手段と、
前記第一可変容量手段の開度、及び前記第二可変容量手段の開度を調整する制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、
前記過給圧及び前記第一過給機回転数に基づいて、前記第一可変容量手段の開度を調整し、
前記過給圧及び前記第二過給機回転数に基づいて、前記第二可変容量手段の開度を調整するエンジン。
【請求項2】
第一過給機と、前記第一過給機とは容量が異なり前記第一過給機と並列に配置される第二過給機と、前記第一過給機の排気経路の上流側と前記第二過給機の排気経路の上流側とを接続するバイパス経路と、を備える過給システムと、
吸気マニホールドにおける過給圧を検出する過給圧検出手段と、
前記第一過給機の過給機回転数を検出する第一過給機回転数検出手段と、
前記第二過給機の過給機回転数を検出する第二過給機回転数検出手段と、
前記第一過給機の容量を調整する第一可変容量手段と、
前記第二過給機の容量を調整する第二可変容量手段と、
前記バイパス経路を通過するバイパス流量を調整するバイパス流量調整弁と、
前記第一可変容量手段の開度、前記第二可変容量手段の開度、及び前記バイパス流量調整弁の開度を調整する制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、
前記過給圧及び前記第一過給機回転数に基づいて、前記第一可変容量手段の開度を調整し、
前記過給圧及び前記第二過給機回転数に基づいて、前記第二可変容量手段の開度を調整し、
前記過給圧、前記第一過給機回転数、及び前記第二過給機回転数に基づいて、前記バイパス流量調整弁の開度を調整するエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−90779(P2010−90779A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260867(P2008−260867)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】