説明

オキセタニル基を有するシリコーン共重合体

【課題】
ArF露光のような短波長露光での透過性がよく、さらに、微細加工に使用される中間層材料として好適な新規シリコーン共重合体を提供する。
【解決手段】
(A)オキセタニル基を含有するシルセスキオキサン単位、(B)炭化水素基を含有するシルセスキオキサン単位を含むことを特徴とするシリコーン共重合体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料や微細加工の材料として有用なオキセタニル基を有する新規シリコーン共重合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の微細化が進むとともに、その製造に用いられるリソグラフィ工程についていっそうの微細化が求められるようになってきている。微細化が急速に発展してきた背景には、投影レンズの高NA化、レジストの性能向上、短波長化が挙げられる。
【0003】
特に露光波長の短波長化は大きな変革をもたらしてきたが、さらに微細化の要求は大きく、KrF(248nm)露光からArF(193nm)露光への短波長化が進んできている。
【0004】
微細パターンを作成するために、中間層を設ける三層レジストプロセスも考案されており、フェノール性水酸基をもつポリオルガノシルセスキオキサンの例は報告されている(特許文献1参照)。それらの共重合体では、フェノール性水酸基部位と架橋剤とを反応させることにより、熱硬化膜を形成する。よって、熱硬化膜を形成させるためにはフェノール部位が多く必要になるが、フェノールにはベンゼン環を有するため、ArF(193nm)のような遠紫外線波長での露光波長には樹脂自体の吸収が大きく、光が透過しない遠紫外線波長で使用することが難しい。また、光の透過率を上げるためにフェノール組成を少なくすると、フェノール性水酸基が少なくなることにより架橋剤と反応率が低く、中間層を設ける三層レジストプロセスとして使用できない。
【0005】
よって、樹脂自体の透過性を上げるため、ベンゼン環骨格がなく、フッ素原子により樹脂自体の透過性を上げるシリコーン重合体が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、アルコール部位がフッ素置換基に立体障害のため反応性が悪く、架橋剤と反応しないため、熱硬化膜として使用することができなかった。
【0006】
このことから、遠紫外線波長で使用でき、かつ熱硬化性置換基を有する新規シリコーン共重合体が求められていた。
【特許文献1】特開2004−341479公報
【特許文献2】特開2002−55456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ArF(193nm)のような遠紫外線露光波長でも透明性が良く、かつ、熱硬化性置換基を有するシリコーン共重合体を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ArF(193nm)のような遠紫外線露光波長でも透明性が良く、かつ熱硬化性置換基を有するシリコーン共重合体について種々検討を重ねた結果、特定の組成をもつシリコーン共重合体では、遠紫外線露光波長で使用でき、熱硬化性置換基を有することにより微細加工に使用される中間層材料になりうる好適な新規材料を見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)オキセタニル基を含有するシルセスキオキサン単位、(B)炭化水素基を含有するシルセスキオキサン単位を含むことを特徴とするシリコーン共重合体を提供することである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシリコーン共重合体の(A)部位には、フェノール性水酸基の代わりに熱硬化性オキセタニル基を使用することにより、ArF露光(193nm)のような250nm以下の遠紫外線領域での短波長の露光波長で透過性が良く、オキセタニル基を有することにより微細加工が可能な中間層材料として好適な材料となり、微細加工プロセスに導入することができる。また、(B)部位には炭化水素基を含有するシルセスキオキサン単位を導入することによりシリコーン共重合体を形成し、ベンゼン環を導入して遠紫外線の透過率を調整することができる。また、ベンゼン環を有しない炭化水素基では、エッチング等で有用なシリコン含有率(ポリマに対するSiOの含有率)を向上させることができる。
【0011】
また、本発明のシリコーン共重合体は、側鎖にオキセタニル基を有していることから、カチオン硬化性樹脂として使用することができる。よって、本発明のシリコーン共重合体は電子材料分野に限らず、塗料や接着剤等、幅広い分野で応用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のシリコーン共重合体は、(A)オキセタニル基を含有するシルセスキオキサン単位、(B)炭化水素基を含有するシルセスキオキサン単位を含むことを特徴とするシリコーン共重合である。
【0013】
さらに好ましくは、本発明のシリコーン共重合体は、(A)オキセタニル基を含有するシルセスキオキサン単位、(B)ベンゼン環を含む炭化水素基を含有するシルセスキオキサン単位、(C)ベンゼン環を含まない炭化水素基を含有するシルセスキオキサン単位を含むことを特徴とするシリコーン共重合体である。
【0014】
本発明のシリコーン共重合体は、好ましくは、下記一般式
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、Aは有機基、Bは水素または有機基を示す)
で示されるオキセタニル基を含有するシルセスキオキサン単位と下記一般式
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R1はベンゼン環を含む炭化水素基を示し、ベンゼン環に置換基が結合していても良い。)
で表されるシルセスキオキサン単位と下記一般式
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、R2はベンゼン環を含まない炭化水素基を示す)
で示されるシルセスキオキサン単位を含むシリコーン共重合体であり、より好ましくは、下記一般式
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、Aは有機基、Bは水素または有機基を示す。R1はベンゼン環を含む炭化水素基を示し、ベンゼン環に置換基が結合していても良い。R2はベンゼン環を含まない炭化水素基を示す。a、b、cはそれぞれモル%を示し、aは1〜99モル%、bは1〜99モル%、cは1〜99モル%、ただしa+b+c=100である。Aは、好ましくは、プロピレン基、Bは、好ましくは、エチル基であり、R1は、好ましくは、フェニル基またはヒドロキシフェネチル基であり、R2は、好ましくは、メチル基またはエチル基である。)
で示される繰り返し単位を有するシリコーン共重合体である。
【0023】
本発明のシリコーン共重合体は、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が500〜100000の範囲にあるものが好ましく、1000〜10000の範囲にあるものがさらに好ましい。分散度は1.0〜10.0の範囲にあるものが好ましく、1.1〜5.0の範囲にあるものがさらに好ましい。
【0024】
本出願での、本発明のシリコーン共重合体の下記骨格は
【0025】
【化5】

【0026】
シルセスキオキサン骨格を示し、各ケイ素原子が3個の酸素原子に結合し、各酸素原子が2個のケイ素原子に結合していることを示す。
【0027】
また、本発明のシリコーン共重合体は、例えば、下記一般式
【0028】
【化6】

【0029】
(式中、Aは有機基、Bは水素または有機基を示す。R1はベンゼン環を含む炭化水素基を示し、ベンゼン環に置換基が結合していても良い。R2はベンゼン環を含まない炭化水素基を示す。a、b、cはそれぞれモル%を示し、aは1〜99モル%、bは1〜99モル%、cは1〜99モル%、ただしa+b+c=100である。)
に示す構造式で示すことができる。
【0030】
また、本発明のシリコーン共重合体は、例えば、下記一般式
【0031】
【化7】

【0032】
(式中、Aは有機基、Bは水素または有機基を示す。R1はベンゼン環を含む炭化水素基を示し、ベンゼン環に置換基が結合していても良い。R2はベンゼン環を含まない炭化水素基を示す。a、b、cはそれぞれモル%を示し、aは1〜99モル%、bは1〜99モル%、cは1〜99モル%、ただしa+b+c=100である。)
で示されるラダー型シリコーン共重合体でも良い。
【0033】
ここで、本発明のシリコーン共重合体の好ましい形態である下記一般式
【0034】
【化8】

【0035】
(式中、Aは有機基、Bは水素または有機基を示す。R1はベンゼン環を含む炭化水素基を示しベンゼン環に置換基が結合していても良い。R2はベンゼン環を含まない炭化水素基を示す。a、b、cはそれぞれモル%を示し、aは1〜99モル%、bは1〜99モル%、cは1〜99モル%、ただしa+b+c=100である。)
のAで示される有機基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分枝状または環状の炭化水素が好ましく、環状炭化水素基でも良い。さらに炭化水素基に酸素原子を有しても良い。
【0036】
好ましい炭化水素基として、例えば、炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等の炭化水素基が挙げられる。分枝状炭化水素基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基等の炭化水素基が好ましい。環状炭化水素基として、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロヘプチレン基等の環状炭化水素基が好ましい。酸素原子を有する炭化水素基としては、オキシメチル基、オキシエチル基、オキシプロピル基等がより好ましい。
【0037】
これら有機基には透明性の観点から、不飽和結合を含まない化合物が好ましい。
【0038】
ここで、本発明のシリコーン共重合体の好ましい形態である下記一般式
【0039】
【化9】

【0040】
(式中、Aは有機基、Bは水素または有機基を示す。R1はベンゼン環を含む炭化水素基を示しベンゼン環に置換基が結合していても良い。R2はベンゼン環を含まない炭化水素基を示す。a、b、cはそれぞれモル%を示し、aは1〜99モル%、bは1〜99モル%、cは1〜99モル%、ただしa+b+c=100である。)
のBで示される有機基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分枝状または環状の炭化水素が好ましい。好ましい炭化水素基として、例えば、炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等の炭化水素基が挙げられる。分枝状炭化水素基としては、イソプロピル基、イソブチル基等の炭化水素基が好ましい。環状炭化水素基として、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基等の環状炭化水素基が好ましい。
【0041】
これら炭化水素基は、透明性の観点から、不飽和結合を含まない化合物がより好ましく、炭化水素基に置換基が結合していてもよい
ここで、本発明のシリコーン共重合体の好ましい形態である下記一般式
【0042】
【化10】

【0043】
(式中、Aは有機基、Bは水素または有機基を示す。R1はベンゼン環を含む炭化水素基を示し、ベンゼン環に置換基が結合していても良い。R2はベンゼン環を含まない炭化水素基を示す。a、b、cはそれぞれモル%を示し、aは1〜99モル%、bは1〜99モル%、cは1〜99モル%、ただしa+b+c=100である。)
のR1で示される炭化水素基としては、ベンゼン環を含む炭化水素基を示し、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のベンゼン環にアルキル基が結合している形が好ましい。ベンゼン環にメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のエーテル基、アセトキシ基、エチルカルボニルオキシ基等のエステル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシベンジル基、ヒドロキシフェネチル基等の水酸基が結合していても良い。特にフェニル基、ベンジル基が合成上容易であり特に好ましい。
【0044】
本発明のシリコーン共重合体の好ましい形態である下記一般式
【0045】
【化11】

【0046】
(式中、Aは有機基、Bは水素または有機基を示す。R1はベンゼン環を含む炭化水素基を示し、ベンゼン環に置換基が結合していても良い。R2はベンゼン環を含まない炭化水素基を示す。a、b、cはそれぞれモル%を示し、aは1〜99モル%、bは1〜99モル%、cは1〜99モル%、ただしa+b+c=100である。)
のR2で示される炭化水素基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分枝状または環状の炭化水素基が好ましい。R2で示される好ましい炭化水素基の例として、炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭化水素基が挙げられる。分枝状炭化水素基としては、イソプロピル機、イソブチル基等の炭化水素基が好ましい。環状炭化水素基として、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の環状炭化水素基が好ましい。また、架橋環状炭化水素基として、下記構造式の架橋炭化水素基等が好ましい。
【0047】
【化12】

【0048】
特に、低級アルキル基であるメチル基、エチル基、n-プロピル基が特に好ましく、低級アルキル基を使用することにより、ポリマ自体のシリコン含有率(ポリマ中のSiOが占める割合)が高くなり、エッチングに対する耐性が高くなることからより好ましい。
【0049】
これら炭化水素基には透明性の観点から、不飽和結合を含まない化合物が好ましく、炭化水素基に置換基が結合していてもよい。
【0050】
特に好ましい化合物の例を下記に示す。
【0051】
【化13】

【0052】
(式中、R1はベンゼン環を含む炭化水素基を示し、ベンゼン環に置換基が結合していても良い。R2はベンゼン環を含まない炭化水素基を示す。nは0〜5の整数を示す。a、b、cはそれぞれモル%を示し、aは1〜99モル%、bは1〜99モル%、cは1〜99モル%、ただしa+b+c=100である。)
ここで、本発明のシリコーン共重合体の組成比としては、aは1〜99モル%、bは1〜99モル%、cは1〜99モル%、ただしa+b+c=100となる。
【0053】
ここで、a成分は熱硬化性オキセタニル基を含有する置換基を示す。a成分は、熱により硬化させるためには20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましい。
【0054】
また、b成分はベンゼン環骨格を有する置換基を示す。遠紫外線露光波長では、ベンゼン環自体に吸収があり光を通さないポリマとなる。b成分を含むことにより遠紫外線露光波長での吸収があるポリマとなり、光学特性的に好ましい。b組成は1〜50モル%が好ましく、1〜30モル%がさらに好ましい。
【0055】
c成分のRはアルキル基を含む組成である。c成分には、低級アルキルを使用することがより好ましい。ポリマ中のシリコン含有率(ポリマ中のSiOが占める割合)を向上させることから、c成分は、好ましくは、20モル%以上であり、30モル%以上がさらに好ましい。
【0056】
ここで、本発明のシリコーン共重合体の好ましい形態である下記一般式
【0057】
【化14】

【0058】
(式中、Aは有機基、Bは水素または有機基を示す。R1はベンゼン環を含む炭化水素基を示し、ベンゼン環に置換基が結合していても良い。R2はベンゼン環を含まない炭化水素基を示す。a、b、cはそれぞれモル%を示し、aは1〜99モル%、bは1〜99モル%、cは1〜99モル%、ただしa+b+c=100である。)
で示されるシリコーン共重合体を製造する場合、例えば、下記で示される合成法で
【0059】
【化15】

【0060】
(式中、Aは有機基、Bは水素または有機基を示す。R1はベンゼン環を含む炭化水素基を示し、ベンゼン環に置換基が結合していても良い。R2はベンゼン環を含まない炭化水素基を示す。Xはアルキル基を示す。a、b、cはそれぞれモル%を示し、aは1〜99モル%、bは1〜99モル%、cは1〜99モル%、ただしa+b+c=100である。)
合成することができる。
【0061】
すなわち、合成したい骨格を有するトリアルコキシシランモノマーを水で加水分解及び重縮合することにより、目的のポリマを合成することができる。ここで、トリアルコキシシランモノマーのOXとしては、加水分解性基を示し、アルコキシ基が挙げられる。Xとしてはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル等が好ましく、特にメチル、エチル等の低級アルキル基が好ましい。
【0062】
水による加水分解、重縮合反応は、オキセタン骨格が酸に弱いことからアルカリ性で行うことが好ましく、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどの水酸化アンモニウム塩や、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどのアミンを触媒として使用することが好ましく、特に触媒活性が高いテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを用いることが特に好ましい。この触媒使用量は原料モノマーのモル数に対して 0.01〜1.0当量が好ましく、0.02〜0.5当量がさらに好ましい。
【0063】
加水分解、重縮合条件としては、反応温度0〜100℃が好ましく、20〜60℃がより好ましい。反応温度が0℃より低いと反応速度が遅くなり、未反応原料が残ってしまう可能性がある。また、反応温度が100℃より高くなると、オキセタン骨格が熱により開裂する可能性があるため好ましくない。
【0064】
加水分解、重縮合には水が必要になるが、水は、原料モノマーのモル数に対して、3〜100当量使用することが好ましく、5〜20当量使用することが特に好ましい。この反応では有機溶媒を使用することが好ましく、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類や、他の極性溶媒を使用することができる。好ましくは、水に溶解するメタノール、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類がより好ましい。非極性溶媒を使用すると、反応系が均一にならず加水分解反応が十分に進行しないため、未反応原料が残ってしまい好ましくない。
【0065】
反応終了後は、非極性溶媒を添加して反応生成物と水とを分離して、有機溶媒に溶解した反応生成物を回収し、水で洗浄後に溶媒を留去することにより目的の生成物を得ることができる。
【0066】
このようにしてオキセタニル基をもつシリコーン共重合体を合成することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0068】
以下の実施例において、測定には下記装置を使用し、原料は試薬メーカーから購入した一般的な試薬を用いた。
【0069】
測定装置
NMR測定・・・日本電子製400MHz NMR測定器
IR測定・・・島津製IR Prestige-21
GPC測定・・・東ソー製HLC-8220
UV測定・・・島津製UV-2400PC(2×10-4mol/lのエタノール溶液を調製し、光路長10mmの角形石英セルに入れ25℃で50Wハロゲンランプを使用して測定した)。
【0070】
実施例1
下記構造式(3−エチル−オキセタン−3−イル−メトキシプロピルシルセスキオキサン・フェニルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体)の合成
【0071】
【化16】

【0072】
(構造式中の50、13、37は各組成のモル%を示す)
撹拌機、環流冷却器、滴下ろう斗及び温度計を備えた500mL4つ口フラスコに、10%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド7.9g(0.0087モル)と水8.6gを仕込み、3−エチル−(3−(トリエトキシシリル)プロピルオキシメチル)オキセタン33.8g(0.11モル)とフェニルトリエトキシシラン6.6g(0.027モル)とメチルトリエトキシシラン13.9g(0.078モル)の2−プロパノール50g溶液を60〜65℃で滴下した。滴下終了後、同温度で2時間熟成後に冷却後、トルエンを加えて抽出し、溶液が中性になるまで水で洗浄して、トルエン油層を回収した。ついでトルエン層を回収し、目的の化合物30.5gを得た。
【0073】
得られた共重合体のスペクトルデータを下記に示す。
【0074】
赤外線吸収スペクトル(IR)データ
1047-1123cm-1(Si-O)、1269 cm-1(-O-)、2866-2965 cm-1(-CH2-)
核磁気共鳴スペクトル(NMR)データ(1H-NMR溶媒:CDCl3
0.416ppm(bs)、0.904-1.117ppm(m)、1.886-1.929ppm(m)、3.619-3.750(m)、4.512-4.577(m)、7.438-7.867(m)ppm
GPC分析データ:Mw=2,140、Mw/Mn=1.33(ポリスチレン換算)。
【0075】
実施例2
下記構造式(3−エチル−オキセタン−3−イル−メトキシプロピルシルセスキオキサ
ン・フェニルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体)の合成
【0076】
【化17】

【0077】
(構造式中の65、13、22は各組成のモル%を示す)
実施例1に記載の原料である3−エチル−(3−(トリエトキシシリル)プロピルオキシメチル)オキセタンを43.9g(0.14モル)とフェニルトリエトキシシラン6.6g(0.027モル)とメチルトリエトキシシラン8.3g(0.046モル)に変更した以外は実施例1と同様の操作で目的の化合物32.6gを得た。
【0078】
赤外線吸収スペクトル(IR)データ
1018-1246cm-1(Si-O)、1269 cm-1(-O-)、2866-2965 cm-1(-CH2-)
核磁気共鳴スペクトル(NMR)データ(1H-NMR溶媒:DMSO-d6
0.417-0.440ppm(m)、0.908-1.116ppm(m)、1.885-1.945ppm(m)、3.427-3.747(m)、4.499-4.574(m)、7.419-7.884(m)ppm
GPC分析データ:Mw=1,770、Mw/Mn=1.15(ポリスチレン換算)。
【0079】
実施例3
下記構造式(3−エチル−オキセタン−3−イル−メトキシプロピルシルセスキオキサン・ベンジルシルセスキオキサン・エチルシルセスキオキサン共重合体)の合成
【0080】
【化18】

【0081】
(構造式中の65、13、22は各組成のモル%を示す)
実施例1に記載の原料である3−エチル−(3−(トリエトキシシリル)プロピルオキシメチル)オキセタンを43.9g(0.14モル)とベンジルトリエトキシシラン7.0g(0.027モル)とエチルトリエトキシシラン9.0g(0.046モル)に変更した以外は実施例1と同様の操作で目的の化合物33.5gを得た。
【0082】
赤外線吸収スペクトル(IR)データ
1018-1246cm-1(Si-O)、1269 cm-1(-O-)、2866-2965 cm-1(-CH2-)
核磁気共鳴スペクトル(NMR)データ(1H-NMR溶媒:DMSO-d6
0.416-0.445ppm(m)、0.910-1.120ppm(m)、1.880-1.975ppm(m)、3.421-3.790(m)、4.500-4.574(m)、7.419-7.890(m)ppm。
GPC分析データ:Mw=1,570、Mw/Mn=1.13(ポリスチレン換算)。
【0083】
実施例4
下記構造式(3−エチル−オキセタン−3−イル−メトキシプロピルシルセスキオキサン・3−ヒドロキシフェネチルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体)の合成
【0084】
【化19】

【0085】
(構造式中の50:13:37は各組成のモル%を示す)
実施例1に記載の原料である3−エチル−(3−(トリエトキシシリル)プロピルオキシメチル)オキセタンを34.5g(0.11モル)と3−アセトキシフェネチルトリエトキシシラン13.9g(0.080モル)とメチルトリエトキシシラン8.3g(0.046モル)に変更した以外は実施例1と同様の操作で目的の化合物24.5gを得た。
【0086】
赤外線吸収スペクトル(IR)データ
1018-1246cm-1(Si-O)、1269 cm-1(-O-)、2866-2965 cm-1(-CH2-)
核磁気共鳴スペクトル(NMR)データ(1H-NMR溶媒:DMSO-d6
0.417-0.440ppm(m)、0.902-1.122ppm(m)、1.883-1.955ppm(m)、3.425-3.743(m)、4.501-4.577(m)、7.421-7.889(m)ppm、8.995ppm(bs)
GPC分析データ:Mw=1,770、Mw/Mn=1.15(ポリスチレン換算)。
【0087】
実施例5
下記構造式(3−エチル−オキセタン−3−イル−メトキシプロピルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体)の合成
【0088】
【化20】

【0089】
(構造式中の70、30は各組成のモル%を示す)
実施例1に記載の原料である3−エチル−(3−(トリエトキシシリル)プロピルオキシメチル)オキセタンを43.9g(0.14モル)とメチルトリエトキシシラン10.5g(0.059モル)に変更した以外は実施例1と同様の操作で目的の化合物30.2gを得た。
【0090】
赤外線吸収スペクトル(IR)データ
1018-1246cm-1(Si-O)、1269 cm-1(-O-)、2866-2965 cm-1(-CH2-)
核磁気共鳴スペクトル(NMR)データ(1H-NMR溶媒:DMSO-d6
0.416-0.445ppm(m)、0.910-1.120ppm(m)、1.880-1.975ppm(m)、3.421-3.790(m)、4.500-4.574(m)ppm
GPC分析データ:Mw=2,570、Mw/Mn=1.34(ポリスチレン換算)。
【0091】
実施例1、2、3、4、5で合成したシリコーン共重合体をエタノール溶液に溶解したときのUV測定結果(透過率)を次表に示す。193nm、248nmは遠紫外線の代表的な波長である。
【0092】
【表1】

【0093】
上表から、実施例5で得られたシリコーン共重合体は遠紫外線波長で代表的な193、248nmでは透過率が100%に近く、透過率が高い材料となる。一般に微細加工に使用される材料は、透過率が100%より低いほうが使いやすい材料である。しかしながら、実施例1、2、3、4に記載のシリコーン共重合体は、ベンゼン環を導入することにより透過率を小さくすることができる。この結果から、ベンゼン環の導入率を変えることにより透過率を調製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オキセタニル基を含有するシルセスキオキサン単位、(B)炭化水素基を含有するシルセスキオキサン単位を含むことを特徴とするシリコーン共重合体。
【請求項2】
(A)オキセタニル基を含有するシルセスキオキサン単位、(B)ベンゼン環を含む炭化水素基を含有するシルセスキオキサン単位、(C)ベンゼン環を含まない炭化水素基を含有するシルセスキオキサン単位を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコーン共重合体。
【請求項3】
下記一般式
【化1】

(式中、Aは有機基、Bは水素または有機基を示す)
で示されるオキセタニル基を含有するシルセスキオキサン単位と、下記一般式
【化2】

(式中、R1はベンゼン環を含む炭化水素基を示し、ベンゼン環に置換基が結合していてもよい。)
で示されるフェニル基を含有するシルセスキオキサン単位と、下記一般式
【化3】

(式中、R2はベンゼン環を含まない炭化水素基を示す。)
で示される炭化水素基を含有するシルセスキオキサン単位を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のシリコーン共重合体
【請求項4】
下記一般式
【化4】

(式中、Aは有機基、Bは水素または有機基を示す。R1はベンゼン環を含む炭化水素基を示し、ベンゼン環に置換基が結合していても良い。R2はベンゼン環を含まない炭化水素基を示す。a、b、cはそれぞれモル%を示し、aは1〜99モル%、bは1〜99モル%、cは1〜99モル%、ただしa+b+c=100である。)
で示される請求項1から3に記載のシリコーン共重合体。
【請求項5】
下記一般式
【化5】

(式中、R1はベンゼン環を含む炭化水素基を示し、ベンゼン環に置換基が結合していてもよい。R2はベンゼン環を含まない炭化水素基を示す。a、b、cはそれぞれモル%を示し、aは1〜99モル%、bは1〜99モル%、cは1〜99モル%、ただしa+b+c=100である。)
で示される請求項1から4に記載のシリコーン共重合体。
【請求項6】
下記一般式
【化6】

(式中、Aは有機基、Bは水素または有機基を示し、Xはアルキル基を示す。)
と下記一般式
【化7】

(式中、Xはアルキル基を示す。R1は、ベンゼン環を含む炭化水素基を示し、ベンゼン環に置換基が結合していても良い。)
と下記一般式
【化8】

(式中、Xはアルキル基を示す。R2は、ベンゼン環を含まない炭化水素基を示す。)
で表されるモノマーを加水分解することを特徴とする請求項1から5に記載のシリコーン共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2007−84799(P2007−84799A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222217(P2006−222217)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】