説明

オリゴマー被覆金属酸化物微粒子

【課題】塗料等に配合されたとき耐光性、耐候性等の物性を良好かつ持続的に発揮することができるオリゴマー被覆金属酸化物微粒子を提供する。
【解決手段】オリゴマー被覆金属酸化物微粒子は、酸化チタン等の金属酸化物微粒子の表面にシリケートオリゴマーによる被覆層が形成されたものである。シリケートオリゴマーとしては下記の化学式(1)で表される化合物であることが好ましい。


但し、Rはアルキル基、nは平均値として2〜30である。
さらに、ヒンダードアミン系光安定剤とシランカップリング剤とが結合されて構成されているシランカップリング剤含有光安定剤重合体が前記シリケートオリゴマーと反応して結合されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、樹脂組成物等に配合され、耐光性、耐候性、耐水性等の優れた物性を発揮することができるオリゴマー被覆金属酸化物微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料等には顔料として酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物微粒子が配合されて使用される。これらの金属酸化物は紫外線遮蔽性に優れているが、微粒子になると表面積が大きくなって光触媒活性が高くなることから、得られる塗膜が劣化しやすくなる。従って、塗膜の劣化を防止し、耐光性、耐候性等の物性を向上させる手段が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には表面がヒンダードアミン系光安定剤を含有するポリマーで被覆された金属酸化物微粒子が開示されている。すなわち、かかる金属酸化物微粒子を得るために、まず金属酸化物微粒子の水分散液を加熱し、そこにテトラエトキシシラン等を添加してシリカ被覆金属酸化物微粒子分散体が調製される。得られたシリカ被覆金属酸化物微粒子分散体の水性媒体中にシランカップリング剤を添加し、さらに重合性モノマー及び重合性二重結合を有するヒンダードアミン系光安定剤を加えて重合性モノマーの重合を行うことにより、所望のポリマー被覆金属酸化物微粒子が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−266472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているポリマー被覆金属酸化物微粒子では、シリカ被覆金属酸化物微粒子分散体を調製するために用いられるテトラエトキシシランが金属酸化物微粒子表面の水酸基と脱水縮合反応を行う場合、反応の確率が低いことから、シリカ被覆の被覆効率が悪いという欠点があった。そのため、光触媒活性を有する金属酸化物由来のラジカルを十分に遮蔽することができなかった。従って、シリカ被覆金属酸化物微粒子は、塗料等に配合されたとき耐光性、耐候性等の物性を良好に発揮することができず、さらにその物性が経時的に低下するという問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的とするところは、塗料等に配合されたとき耐光性、耐候性等の物性を良好かつ持続的に発揮することができるオリゴマー被覆金属酸化物微粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子では、金属酸化物微粒子の表面にシリケートオリゴマーによる被覆層が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子は、請求項1に係る発明において、前記シリケートオリゴマーは下記の化学式(1)で表される化合物であることを特徴とする。
【0009】
【化1】

但し、Rはアルキル基、nは平均値として2〜30である。
【0010】
請求項3に記載のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記金属酸化物微粒子は酸化チタンの微粒子であることを特徴とする。
請求項4に記載のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子は、請求項1から請求項3のいずれかに1項に係る発明において、ヒンダードアミン系光安定剤とシランカップリング剤とが結合されて構成されているシランカップリング剤含有光安定剤重合体が前記シリケートオリゴマーと反応して結合されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子は、請求項4に係る発明において、前記シランカップリング剤含有光安定剤重合体は、ラジカル重合性二重結合を有するヒンダードアミン系光安定剤とラジカル重合性二重結合を有するシランカップリング剤とが有機溶媒中でラジカル共重合して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子では、金属酸化物微粒子の表面にシリケートオリゴマーによる被覆層が形成されている。かかるシリケートオリゴマーは、そのシラノール基が金属酸化物微粒子表面の水酸基と脱水縮合反応して金属酸化物微粒子表面に結合される。このとき、シリケートオリゴマーは従来のテトラエトキシシランとは異なり、オリゴマー(高分子)であることから、前記脱水縮合反応の反応確率が高くなるものと推測され、金属酸化物微粒子表面での被覆効率が高くなる。そのため、光触媒活性を有する金属酸化物由来のラジカルをシリケートオリゴマーの被覆層によって十分に遮蔽することができる。
【0013】
従って、本発明のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子によれば、塗料等に配合されたとき耐光性、耐候性等の物性を良好かつ持続的に発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
本実施形態のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子は、表面にシリケートオリゴマーによる被覆層が形成されて構成されている。金属酸化物としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、酸化セリウム(CeO)、酸化鉄(FeO、Fe、Fe)等が用いられる。これらの金属酸化物は、1種又は2種以上の混合物が適宜使用され、またこれらの複合酸化物も使用される。これらの金属酸化物のうち、紫外線の遮蔽性能が高い等の観点から酸化チタン、酸化亜鉛等が好ましい。金属酸化物微粒子の形状は特に制限されないが、例えば球体状、楕円体状、多角体状等が挙げられる。金属酸化物微粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜500nm、さらに好ましくは100〜400nm程度である。
【0015】
前記シリケートオリゴマーは、4官能性のシリケートモノマーを加水分解縮合反応することによって得られるオリゴマーである。このシリケートオリゴマーは、例えばメチルシリケート、エチルシリケート等のシリケートモノマーを加水分解縮合反応して平均2量体〜平均30量体にした化合物である。かかるシリケートオリゴマーとしては、下記の化学式(1)で表される化合物が好ましい。
【0016】
【化2】

但し、Rはアルキル基、nは平均値として2〜30である。
【0017】
Rのアルキル基としては、金属酸化物微粒子表面の水酸基とシリケートオリゴマーのシラノール基との脱水縮合反応の容易性の観点から、炭素数1〜4の低級アルキル基が好ましい。また、nは平均値として2〜20であることがより好ましく、2〜10であることが特に好ましい。nが1では従来のテトラエチルオルソシリケートのように金属酸化物微粒子表面の水酸基との脱水縮合反応の確率が低くなる一方、nが30を超えるとシリケートオリゴマーの製造が難しくなったり、粘性が高くなり過ぎたりして好ましくない。
【0018】
シリケートオリゴマーとして具体的には、メチルポリシリケート〔化学式(1)中のRがメチル基、nが5、コルコート(株)製、メチルシリケート51〕、メチルポリシリケート〔化学式(1)中のRがメチル基、nが7、コルコート(株)製、メチルシリケート53A〕、エチルポリシリケート〔化学式(1)中のRがエチル基、nが4、コルコート(株)製、エチルシリケート40〕、エチルポリシリケート〔化学式(1)中のRがエチル基、nが10、コルコート(株)製、エチルシリケート48〕等が挙げられる。
【0019】
続いて、シリケートオリゴマーが被覆された金属酸化物微粒子の製造方法について説明する。
まず、金属酸化物微粒子にアンモニア水等のアルカリ水溶液及びメタノール等の有機溶媒を加えて撹拌、混合し、金属酸化物微粒子を分散させる。得られた分散液にシリケートオリゴマーを滴下して混合することにより、表面にシリケートオリゴマーが被覆された金属酸化物微粒子を製造することができる。このとき、シリケートオリゴマーに由来するシラノール基が金属酸化物微粒子表面の水酸基と脱水縮合反応を行うことにより、シリケートオリゴマーが金属酸化物微粒子に結合される。かかる脱水縮合反応は、金属酸化物微粒子とシリケートオリゴマーを常温で混合するだけで十分に進行する。このようにして、金属酸化物微粒子表面に第1の被覆が施され、シリケートオリゴマー被覆金属酸化物微粒子が形成される。
【0020】
シリケートオリゴマー被覆金属酸化物微粒子の製造にあたり、金属酸化物微粒子に対するシリケートオリゴマーの質量比率は、シリケートオリゴマーの被覆効率などの点から1〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがさらに好ましい。
【0021】
次に、シリケートオリゴマー被覆金属酸化物微粒子表面に第2の被覆としてシランカップリング剤含有光安定剤重合体が被覆された金属酸化物微粒子について説明する。
シランカップリング剤含有光安定剤重合体は、ラジカル重合性二重結合を有するヒンダードアミン系光安定剤(反応性HALS)とラジカル重合性二重結合を有するシランカップリング剤(反応性シランカップリング剤)とがラジカル共重合して形成されている。
【0022】
反応性HALSとしては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート〔(株)ADEKA製、アデカスタブLA−82又は日立化成(株)製、ファンクリルFA−711MM〕、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート〔(株)ADEKA製、アデカスタブLA−87又は日立化成(株)製、ファンクリルFA−712HM〕等の4個又は5個のメチル基で置換された4−ピペリジルメタクリレートが好適に用いられる。さらに、反応性HALSとしては、次のような化合物を用いることもできる。すなわち、分子内に一つ以上のトリアジン骨格、及び二つ以上の2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格又はN−アルコキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を有し、イソシアネート基と反応しうる一つ以上の置換基を有する化合物(a)と、分子内に一つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基及び一つ以上のイソシアネート基を有する化合物(b)とを反応して得られる化合物である。イソシアネート基を有する化合物(b)としては、例えば2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等が用いられる。ここで、化合物(a)におけるイソシアネート基と反応しうる置換基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基及びアミノ基から選ばれる置換基である。
【0023】
化合物(a)としては、下記に示す化学式(2)で表される化合物が好ましい。
【0024】
【化3】

但し、2つのRは同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示し、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、一つ以上のヒドロキシル基を有する炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基、一つ以上のカルボキシル基を有するアリール骨格、炭素数2〜5の複素環骨格を有する置換基、炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基中に一つのアミノ基と一つのヒドロキシル基を有する化合物の脱水反応によって得られる化合物の残基、一つ以上のアミノ基を有する炭素数1〜20直鎖又は分岐アルキル基のいずれかを示し、2つのRは同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基、一つ以上のヒドロキシル基を有する炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基、シクロヘキシル、一つ以上のヒドロキシル基を有するシクロヘキシル、アリールのいずれかを示す。
【0025】
化合物(a)として具体的には、化学式(2)における2つのRがブチル基、Rが水素原子、RがCHCHOH、2つのRがシクロヘキシルである化合物が挙げられる。化合物(b)として具体的には、下記に示す化学式(3)又は化学式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0026】
【化4】

但し、Rは独立して水素原子又はメチル基を示す。
【0027】
【化5】

但し、Rは独立して水素原子又はメチル基を示す。
【0028】
また、反応性シランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン〔東レ・ダウコーニング(株)製、Z−6033又は信越化学工業(株)製、KBM502〕、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン〔東レ・ダウコーニング(株)製、Z−6036又は信越化学工業(株)製、KBE−503〕、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン〔エボニックデグサジャパン(株)製、Dynasylan MEMO、東レ・ダウコーニング(株)製、Z−6030又は信越化学工業(株)製、KBM−503〕、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン〔信越化学工業(株)製、KBE−502〕等のアルコキシシリル基を有するメタクリレートが好適に用いられる。アルコキシシリル基としては、メトキシシリル基又はエトキシシリル基が好ましい。
【0029】
続いて、シリケートオリゴマー・HALS重合体被覆金属酸化物微粒子の製造方法について説明する。
まず、有機溶媒を加熱し、そこへ反応性シランカップリング剤、反応性HALS、ラジカル重合性単量体及びラジカル重合開始剤を加えてラジカル重合反応を行い、シランカップリング剤含有光安定剤重合体溶液を調製する。このように、有機溶媒中でラジカル重合反応を行うことにより、重合体中に従来の乳化重合の場合のような乳化剤が残存することがないため、耐水性や耐候性を向上させることができる。
【0030】
次いで、前述したシリケートオリゴマー被覆金属酸化物微粒子にシランカップリング剤含有光安定剤重合体溶液を添加、撹拌し、分離、乾燥することによりシリケートオリゴマー・HALS重合体被覆金属酸化物微粒子を製造することができる。このとき、シランカップリング剤含有光安定剤重合体は、シリケートオリゴマー被覆金属酸化物微粒子のシリケートオリゴマーと脱水縮合反応して結合される。
【0031】
シリケートオリゴマー・HALS重合体被覆金属酸化物微粒子の製造にあたり、金属酸化物微粒子に対する反応性HALS(HALS重合体)の質量比率は、反応性HALSの重合反応性や被覆効率などの点から0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0032】
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
(1)本実施形態のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子では、金属酸化物微粒子の表面にシリケートオリゴマーによる被覆層が形成されている。かかるシリケートオリゴマーは、そのシラノール基が金属酸化物微粒子表面の水酸基と脱水縮合反応して金属酸化物微粒子表面に結合される。このとき、シリケートオリゴマーは従来のテトラエトキシシランとは異なり、オリゴマーであることから、前記脱水縮合反応の反応確率が高くなり、金属酸化物微粒子表面での被覆効率が顕著に高められる。そのため、光触媒活性をもつ金属酸化物に由来するラジカルをシリケートオリゴマーの被覆層によって十分に遮蔽することができる。従って、シリケートオリゴマー被覆金属酸化物微粒子が塗料等に配合されたとき、樹脂の劣化を抑制することができる。
【0033】
よって、本実施形態のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子によれば、塗料等に配合されたとき耐光性、耐候性等の物性を良好かつ持続的に発揮することができる。その結果、このオリゴマー被覆金属酸化物微粒子を用いて得られる塗料、樹脂成形品の製品寿命を向上させることができる。
(2)シリケートオリゴマーは前記化学式(1)で表される化合物であることにより、金属酸化物微粒子表面の水酸基とシリケートオリゴマーのシラノール基との脱水縮合反応の反応確率を高めることができる。
(3)金属酸化物微粒子は酸化チタンの微粒子であることにより、紫外線の遮蔽性能を高めることができ、塗料等に配合されたとき耐光性、耐候性等の物性を向上させることができる。
(4)金属酸化物微粒子表面の第2被覆において、ヒンダードアミン系光安定剤とシランカップリング剤とが結合されて構成されているシランカップリング剤含有光安定剤重合体がシリケートオリゴマーと反応して結合されている。このため、ヒンダードアミン系光安定剤に基づいて金属酸化物由来のラジカルを遮蔽することができるとともに、外部からの光に対しても安定化効果を発揮することができる。従って、シリケートオリゴマー被覆金属酸化物微粒子が塗料等に配合されたとき、耐光性、耐候性等の物性を長期に渡って持続させることができる。
(5)金属酸化物微粒子の第2被覆において、シランカップリング剤含有光安定剤重合体は、ラジカル重合性二重結合を有するヒンダードアミン系光安定剤とラジカル重合性二重結合を有するシランカップリング剤とが有機溶媒中でラジカル共重合して形成されている。従って、ラジカル重合性二重結合を有するヒンダードアミン系光安定剤とラジカル重合性二重結合を有するシランカップリング剤とをラジカル共重合により容易に反応させて結合させることができるとともに、乳化剤による耐水性や耐候性の低下を回避することができる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。なお、各例において、部は質量部、%は質量%を意味する。
(実施例1、シリケートオリゴマー被覆酸化チタン微粒子の調製)
酸化チタン微粒子〔石原産業(株)製、CR95、汎用酸化チタン微粒子、平均粒子径280nm〕100部、25%アンモニア水50部、メタノール167部を混合し、サンドミルにて予備分散を行った。得られた分散液にシリケートオリゴマー〔前記化学式(1)におけるRがメチル基、nが5の化合物、コルコート(株)製、メチルシリケート51(MS51)〕10部を滴下し、シリケートオリゴマー被覆酸化チタン微粒子を得た。
【0035】
酸化チタン微粒子に対するシリケートオリゴマーの質量比率は10%であった。
(実施例2、シリケートオリゴマー・HALS重合体被覆酸化チタン微粒子の調製)
(光安定剤重合体の合成)
イソプロピルアルコール44部、テトラヒドロフラン20部を4つ口フラスコに仕込み、78℃まで加熱した。その78℃を保ったまま、二重結合を有するシランカップリング剤であるメタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル(エボニックデグサジャパン(株)製、Dynasylan MEMO)1.5部、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート〔(株)ADEKA製、反応性HALS LA82〕6部、メタクリル酸シクロヘキシル24部、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.1部を100分かけて滴下した。3時間かけて反応を終了し、シランカップリング剤含有光安定剤重合体溶液を得た。
【0036】
このシランカップリング剤含有光安定剤重合体溶液中における1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレートの含有量は6.28%であった。
(酸化チタンの表面被覆)
前記実施例1で得られたシリケートオリゴマー被覆酸化チタン微粒子に対し、上記光安定剤重合体溶液28部を添加し、2時間攪拌、遠心分離を行い、濾過、乾燥を行うことによりシリケートオリゴマー・HALS重合体被覆酸化チタン微粒子を得た。
【0037】
酸化チタン微粒子に対するシリケートオリゴマーの質量比率は10%、反応性HALSの質量比率は1.8%であった。
(比較例1)
特開2008−266472号公報記載の方法に準じた手法でシリカ被覆酸化チタン重合体被覆微粒子を得た。つまり、イオン交換水800部、酸化チタン微粒子〔石原産業(株)製、CR95、平均粒子径280nm〕120部を混合し、そこに滴下液(a)〔テトラエチルオルソシリケート(TEOS)28.6部、メタノール100部〕及び滴下液(b)(25%アンモニア水14.5部、イオン交換水14.5部)を同時に滴下し、温度を50℃に保ったまま5時間攪拌を行った。冷却後、遠心分離、濾過及び乾燥を行い、シリカ被覆酸化チタン微粒子を得た。
【0038】
一方、イオン交換水400部、分散安定剤〔(株)ADEKA製、アデカリアソープSR10〕2.5部、分散安定剤〔(株)ADEKA製、アデカリアソープER20〕2.5部を混合し、前記シリカ被覆酸化チタン100部を添加して攪拌を行った。フラスコを50℃に保ち、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル(エボニックデグサ社製、Dynasylan MEMO)5部、10%水酸化ナトリウム水溶液10部を30分かけて滴下した。50℃で5時間熟成を行い、室温まで冷却した。
【0039】
次に、メタクリル酸メチル7.5部、アクリル酸2−エチルヘキシル7.5部、メタクリル酸シクロヘキシル9.5部、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート〔(株)ADEKA製、反応性HALS LA82〕0.5部、分散安定剤〔(株)ADEKA製、アデカリアソープSR10〕1.5部、分散安定剤〔(株)ADEKA製、アデカリアソープER20〕1.5部、イオン交換水60部を予め乳化しておき、得られた乳化液の一部をフラスコに添加し、70℃まで加熱した。5%過硫酸カリウム水溶液1部を添加し、70℃で30分熟成を行った。次いで、先に得られた乳化液の全量を30分かけて滴下し、70℃を保ったまま5時間反応を行った。その後冷却し、遠心分離、濾過及び乾燥を経て、シリカ・HALS重合体で被覆された酸化チタン微粒子を得た。
【0040】
酸化チタン微粒子に対するシリカの質量比率は24%、反応性HALSの質量比率は0.5%であった。
(実施例3)
実施例1で得られたシリケートオリゴマー被覆酸化チタン微粒子に対し、実施例2で得られた光安定剤重合体溶液8.3部を添加し、2時間攪拌、遠心分離を行い、濾過及び乾燥を行うことによりシリケートオリゴマー・HALS重合体被覆酸化チタン微粒子を得た。
【0041】
酸化チタン微粒子に対するシリケートオリゴマーの質量比率は10%、反応性HALSの質量比率は0.5%であった。
(実施例4)
この実施例4では、前記実施例2において、シリケートオリゴマーとして前記化学式(1)におけるRがエチル基、nが5の化合物〔コルコート(株)製、エチルシリケート ES40〕を使用した以外は、実施例2と同様にしてシリケートオリゴマー・HALS重合体被覆酸化チタン微粒子を得た。
(実施例5)
実施例5では、前記実施例2において、シリケートオリゴマーとして前記化学式(1)におけるRがエチル基、nが10の化合物〔コルコート(株)製、エチルシリケート ES48〕を使用した以外は、実施例2と同様にしてシリケートオリゴマー・HALS重合体被覆酸化チタン微粒子を得た。
(実施例6)
実施例6では、前記実施例1において、シリケートオリゴマー〔前記化学式(1)におけるRがメチル基、nが5の化合物、コルコート(株)製、メチルシリケート51(MS51)〕に代えて、シリケートオリゴマーとして前記化学式(1)におけるRがエチル基、nが10の化合物〔コルコート(株)製、エチルシリケート ES48〕を使用した以外は、実施例1と同様にしてシリケートオリゴマー被覆酸化チタン微粒子を得た。
(実施例7)
実施例7では、前記実施例2において、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート〔(株)ADEKA製、反応性HALS LA82〕に代えて、下記に示すHALS A2を使用した以外は、実施例2と同様にしてシリケートオリゴマー・HALS重合体被覆酸化チタン微粒子を得た。
【0042】
HALS A2:化合物(a)として、「チヌビン152」〔チバスペシャリティケミカルズ(株)製の商品名、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペジリン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン〕を37.3g計量し、n−酢酸ブチル67.5gに完全に溶解させ、これを(f)液とした。その後、化合物(b)として「カレンズMOI」〔昭和電工(株)製の商品名、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート〕7.70gと、反応触媒としてジブチルチンジラウレート0.0265gとを前記(f)液中に入れ、30℃で8時間撹拌した。この反応液をHALS A2とした。
(比較例2)
実施例2においてシリケートオリゴマー被覆酸化チタンの調製に際し、シリケートオリゴマーに代えてテトラエチルオルソシリケート(TEOS)を用いた以外は実施例2と同様に実施し、シリカ・HALS重合体で被覆された酸化チタン微粒子を得た。
(比較例3)
実施例1においてシリケートオリゴマー被覆酸化チタン微粒子の調製に際し、シリケートオリゴマーに代えてテトラエチルオルソシリケート(TEOS)を用いた以外は実施例1と同様に実施し、シリケートオリゴマー被覆酸化チタン微粒子を得た。
(比較例4)
実施例1で用いた酸化チタン微粒子〔石原産業(株)製、CR95、汎用酸化チタン微粒子、平均粒子径280nm〕の表面を処理することなく、そのまま使用した。
(実施例8)
実施例8では、前記実施例2において、金属酸化物微粒子として酸化鉄の微粒子120−ED〔戸田ピグメント(株)製の商品名、平均粒子径300nm〕を使用した以外は、実施例2と同様にしてシリケートオリゴマー・HALS重合体被覆酸化鉄微粒子を得た。
(実施例9)
実施例9では、前記実施例1において、金属酸化物微粒子として酸化鉄の微粒子120−ED〔戸田ピグメント(株)製の商品名、平均粒子径300nm〕を使用した以外は、実施例1と同様にしてシリケートオリゴマー被覆酸化鉄微粒子を得た。
(比較例5)
この比較例5では、実施例8で用いた酸化鉄微粒子120−ED〔戸田ピグメント(株)製の商品名、平均粒子径300nm〕の表面を処理することなく、そのまま使用した。
(比較例6)
比較例6では、前記比較例2において、金属酸化物微粒子として酸化鉄の微粒子120−ED〔戸田ピグメント(株)製の商品名、平均粒子径300nm〕を使用した以外は、比較例2と同様にしてシリケートオリゴマー・HALS重合体被覆酸化鉄微粒子を得た。
(比較例7)
比較例7では、前記比較例3において、金属酸化物微粒子として酸化鉄の微粒子120−ED〔戸田ピグメント(株)製の商品名、平均粒子径300nm〕を使用した以外は、比較例3と同様にしてシリケートオリゴマー被覆酸化鉄微粒子を得た。
<評価>
(水性エマルションの合成)
アクリルエマルション〔日本触媒(株)製、アクリセットEX−102SI〕800部、ブチルセロソルブ15部、水15部及び25%アンモニア水4部を混合し、塗料用水性エマルションを得た。
(分散樹脂の合成)
4つ口フラスコにブチルセロソルブ300部、ブチルカルビトール100部を仕込み、90℃まで加熱した。これにスチレン230部、アクリル酸ブチル40部、メタクリル酸117部及び2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)8.6部を100分かけて滴下し、5時間攪拌して後反応を行った。冷却後、25%アンモニア水108部及び水道水93部を添加し、分散樹脂とした。
(着色塗料組成物の調製)
カーボンブラックの水分散体(顔料濃度20〜30%)〔御国色素(株)製、SAブラック5748〕13部、黄色酸化鉄の水分散体(顔料濃度50〜60%)〔御国色素(株)製、SAエローNF−117〕60部及び赤色酸化鉄(酸化第2鉄)の水分散体(顔料濃度50〜60%)〔御国色素(株)製、SAブラウン215A〕15部の割合で混合し、着色塗料組成物を調製した。
(下地塗料組成物)
アクリルエマルション〔日本触媒(株)製、アクリセットEX−103SI〕600部、ブチルセロソルブ42部、水270部及び25%アンモニア水1.5部を混合し、下塗り用水性エマルションとした。得られた水性エマルション570部、イオン交換水320部、酸化チタン微粒子〔石原産業(株)製、CR95、汎用酸化チタン、平均粒子径280nm〕100部、分散樹脂5部及び増粘剤〔日本触媒(株)製、アクリセットWR507〕1部を混合し、下地塗料組成物とした。
(基材)
スレート板上に下地塗料組成物をエアスプレーで塗装し、2分間その状態を保持した(セッティング)後、110℃で10分間の強制乾燥を行って基材を作製した。
(塗料の調製)
水性エマルション70部、分散樹脂1.7部、着色塗料組成物6.5部、前記各例のオリゴマー被覆酸化チタン微粒子(表面処理顔料)14部及び水道水7部を100mlの樹脂製容器に入れ、分散手段として直径3mmのペブルビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて1時間分散した。得られた塗料を8Milのアプリケータで基材に塗布し、室温で1分間保持した(セッティング)後、120℃で20分の強制乾燥を行って、耐候性試験板を得た。
(耐候性試験)
得られた耐候性試験板について耐候試験機(ダイプラメタルウェザオメータ)を用いた促進耐候性試験を行い、試験開始前及び240時間経過後における色変化(Δ*E)を測定し、塗膜の耐候性を評価した。
(感光性樹脂の合成)
感光性樹脂として、芳香環を有しないカルボキシル基含有樹脂を次のように合成した。撹拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロート及び窒素導入管を備えた2リットルセパラブルフラスコに、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル900g及び重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート〔日油(株)製パーブチルO〕21.4gを加えて90℃に加熱した。加熱後、そこへメタクリル酸309.9g、メタクリル酸メチル116.4g及びラクトン変性2−ヒドロキシルエチルメタクリレート〔ダイセル化学工業(株)製プラクセルFM1〕109.8gを、重合開始剤であるビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート〔日油(株)製パーロイルTCP〕21.4gと共に3時間かけて滴下して加え、さらに6時間熟成することにより、カルボキシル基含有共重合樹脂を得た。なお、反応は窒素雰囲気下で行った。
【0043】
次に、得られたカルボキシル基含有共重合樹脂に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート〔ダイセル化学(株)製サイクロマーA200〕363.9g、開環触媒としてジメチルベンジルアミン3.6g、重合抑制剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル1.80gを加え、100℃に加熱し、撹拌することによりエポキシの開環付加反応を行った。16時間後、固形分の酸価が108.9mgKOH/g、重量平均分子量が25,000の、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂を53.8質量%(不揮発分)含む溶液を得た。
(感光性塗料の調製)
上記感光性樹脂12部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート25部、トリグリシジルイソシアヌレート〔日産化学(株)製、TEPIC−SP〕2部、酢酸エチル15部及び前記各例のオリゴマー被覆酸化チタン微粒子(表面処理顔料)21部を100mlの樹脂製容器に入れ、分散手段として直径2mmのジルコニアビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて2時間分散した。得られた塗料組成物5部に対し、アクリルモノマー〔東亞合成(株)製、アロニクスM400〕1部、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン〔チバスペシャリティケミカルズ(株)製、IRGACURE-907〕0.1部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2部を混合、攪拌し、試験用塗料とした。
【0044】
得られた塗料を8Milのアプリケータでガラス板に塗布し、室温で1分間保持した後、80℃で20分の強制乾燥を行って塗膜を形成した。この塗膜を小型UVドライヤー(アイグラフィックス社製、UB041-5A/B-60Hz用)にて600mJ/cmの積算光量で紫外線を露光し、その後150℃で1時間、熱風循環式乾燥炉で熱硬化を行うことにより耐光性試験板を得た。
(耐光性試験)
得られた試験板について前記小型UVドライヤーを用いて加速劣化試験を行い、試験開始前及び20J/cmの光照射後における色変化(Δ*E)を測定し、塗膜の耐光性を評価した。
(耐水性試験)
得られた耐候性試験板を70℃の脱イオン水に浸漬して30日後に取り出し、120℃で1時間乾燥した後の60度光沢保持率を評価した。なお、光沢保持率(%)は、(浸漬後の60度光沢値/浸漬前の60度光沢値)×100により算出した値を用いた。
【0045】
上記実施例1〜7の各試験の結果を表1に示した。また、上記比較例1〜4の各試験結果を表2に示した。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

表1及び表2に示したように、実施例1のシリケートオリゴマー被覆酸化チタンでは、酸化チタン表面が被覆されていない比較例4と比較して耐光性が優れるとともに、酸化チタンの表面をテトラエチルオルソシリケート(TEOS)で被覆した比較例3と比較しても耐光性が格段に優れていることが明らかになった。実施例2のシリケートオリゴマー・HALS重合体で被覆された酸化チタンでは、実施例1のシリケートオリゴマー被覆酸化チタンに比べて、耐光性が若干向上する結果が得られ、さらに耐候性及び耐水性にも優れていた。実施例3のシリケートオリゴマー・HALS重合体で被覆された酸化チタンでは、実施例2のシリケートオリゴマー・HALS重合体で被覆された酸化チタンに比べてHALS重合体の含有量を減少させたが、耐光性の低下は極わずかであるとともに、耐候性及び耐水性も良好であった。
【0048】
実施例4のシリケートオリゴマー・HALS重合体被覆酸化チタンでは、シリケートオリゴマーとしてエチルシリケートを使用したところ、メチルシリケートを用いた実施例2と同等の耐光性及び耐候性が得られた。実施例5のシリケートオリゴマー・HALS重合体被覆酸化チタンでは、シリケートオリゴマーとしてエチルシリケート〔前記化学式(1)におけるnが10の化合物〕を用いたが、メチルシリケートを用いた実施例2と同等の耐光性及び耐候性が得られた。実施例6のシリケートオリゴマー被覆酸化チタンでは、シリケートオリゴマーとしてエチルシリケートを使用したが、メチルシリケートを用いた実施例1と同等の耐光性及び耐候性が得られた。実施例7のシリケートオリゴマー・HALS重合体被覆酸化チタンでは、HALS重合体として、前記HALS A2を使用したが、HALS LA82を用いた実施例2と同等の耐光性及び耐候性が得られた。
【0049】
また、比較例1ではシリカとしてテトラエチルオルソシリケート(TEOS)を用い、乳化重合法で得られたシリカ・HALS重合体で被覆された酸化チタンを用いたことから、耐光性及び耐候性が低く、耐水性も悪い結果であった。
【0050】
さらに、上記実施例8、9及び比較例5〜7の各試験結果を表3に示した。
【0051】
【表3】

表3に示したように、実施例8のシリケートオリゴマー・HALS重合体被覆酸化鉄では、酸化鉄が有色顔料であることから酸化チタンに比べて色差が大きくなる傾向があり、酸化チタンを用いた実施例2に比較して耐光性及び耐候性が若干低下した。実施例9のシリケートオリゴマー被覆酸化鉄では、酸化チタンを用いた実施例1に比べて耐光性がわずかに低下した。しかしながら、実施例8のシリケートオリゴマー・HALS重合体被覆酸化鉄の場合には、同じ酸化鉄でテトラエチルオルソシリケート(TEOS)及びHALS LA82を使用した比較例6に比べると、耐光性及び耐候性がともに著しく改善されることが示された。さらに、実施例9のシリケートオリゴマー・HALS重合体被覆酸化鉄の場合には、同じ酸化鉄でテトラエチルオルソシリケート(TEOS)を用いた比較例7に比べると、耐光性及び耐候性が十分に改善された。
【0052】
また、比較例5では酸化鉄表面を被覆しなかったことから、実施例8及び9に比べて耐光性及び耐候性ともに悪化する結果を招いた。
なお、本実施形態を、次のように変更して実施することも可能である。
【0053】
・ シリケートオリゴマー被覆金属酸化物微粒子を得る際のアルカリ水溶液として水酸化ナトリウム水溶液等を使用することができ、また有機溶媒としてエタノール、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0054】
・ 前記シランカップリング剤に代えて、チタネート系カップリング剤等を用いることもできる。
・ シリケートオリゴマーとして、複数のポリシリケート例えばメチルポリシリケートとエチルポリシリケートとの混合物を使用することもできる。
【0055】
・ 金属酸化物微粒子として、酸化チタン微粒子と酸化鉄微粒子とを適宜の割合で配合した混合物を用いることも可能である。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記ラジカル重合性二重結合を有するヒンダードアミン系光安定剤は、4個又は5個のメチル基で置換された4−ピペリジルメタクリレートであることを特徴とする請求項5に記載のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子。このように構成した場合、請求項5に係る発明の効果に加えて、ラジカル重合性二重結合を有するヒンダードアミン系光安定剤とラジカル重合性二重結合を有するシランカップリング剤との共重合を良好に行うことができ、光安定剤としての効果を高めることができる。
(ロ)前記ラジカル重合性二重結合を有するシランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有するメタクリレートであることを特徴とする請求項5に記載のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子。このように構成した場合、請求項5に係る発明の効果に加えて、アルコキシシリル基を有するメタクリレートがラジカル重合性二重結合を有するヒンダードアミン系光安定剤と円滑に共重合できるとともに、シランカップリング剤含有光安定剤重合体がオリゴマー被覆金属酸化物微粒子に良好に結合することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物微粒子の表面にシリケートオリゴマーによる被覆層が形成されていることを特徴とするオリゴマー被覆金属酸化物微粒子。
【請求項2】
前記シリケートオリゴマーは下記の化学式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子。
【化1】

但し、Rはアルキル基、nは平均値として2〜30である。
【請求項3】
前記金属酸化物微粒子は酸化チタンの微粒子であることを特徴とする請求項1に記載のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子。
【請求項4】
ヒンダードアミン系光安定剤とシランカップリング剤とが結合されて構成されているシランカップリング剤含有光安定剤重合体が前記シリケートオリゴマーと反応して結合されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子。
【請求項5】
前記シランカップリング剤含有光安定剤重合体は、ラジカル重合性二重結合を有するヒンダードアミン系光安定剤とラジカル重合性二重結合を有するシランカップリング剤とが有機溶媒中でラジカル共重合して形成されていることを特徴とする請求項4に記載のオリゴマー被覆金属酸化物微粒子。

【公開番号】特開2011−256367(P2011−256367A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85588(P2011−85588)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(392007566)ナトコ株式会社 (42)
【Fターム(参考)】